JP2014121790A - 積層体、セルロースエステルフィルム、セルロースエステルフィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】寸法変化率が小さく、密着性に優れた積層体を提供すること。
【解決手段】硬化樹脂層、セルロースエステルフィルム、及び親水性樹脂層をこの順に有する積層体であって、セルロースエステルフィルムは、硬化樹脂層側表面の可塑剤濃度が、親水性樹脂層側の可塑剤濃度の95質量%以下であり、25℃、相対湿度10%において24時間経時させた後を基準として、25℃、相対湿度80%において24時間経時させた後の任意の一辺に対して直行方向及び平行方向の少なくとも一方の寸法変化率が0.40%以下である、積層体。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層体、セルロースエステルフィルム、セルロースエステルフィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置に関する。より詳しくは、立体映像(3D映像)を表示でき、かつ二次元映像(2D映像)も表示できる2D−3D併用映像表示パネル及び映像表示システムと、該映像表示パネルに用いるパターン位相差フィルムに関する。
映し出された映像が浮き出るように立体視でき、迫力ある映像を楽しむことができる3D映像表示分野において、近年、3D映画が急速に一般に受け入れられたことに伴い、より身近な場面であるフラットパネルディスプレイにおける3D映像表示が大きな注目を浴び始めている。従来、立体表示(3D表示)には裸眼で立体視する種々の方式や専用眼鏡を用いる種々の方式が知られているが、3D映画を映画館で座って鑑賞する場合とは異なり、日常生活において動きのある中で映像を見ることができる観点から、専用眼鏡を用いる方式が注目されている。
一方、フラットパネルディスプレイ用の3D映像のコンテンツはいまだ十分とは言えないのが現状である。そのため、2D表示(二次元表示)と3D表示間の切り替えが容易に可能であり、かつ、2D映像及び3D映像がともに高画質で表示できるような映像表示方式が求められている。これらの要望を満たす方式として、眼鏡シャッター方式(アクティブ眼鏡方式)と偏光眼鏡方式(パッシブ眼鏡方式)の2つの方式が特に注目されている。また、近年高画質化が進んだフラットパネルディスプレイ分野においては、これら2つの方式しか従来のフラットパネルディスプレイにおける高画質を維持し、高品位な3D映像を提供することができないと考えられているのが実情であり、その中でも比較的低コストであって広く普及し得る観点から、偏光眼鏡方式のさらなる改良が求められている。
偏光眼鏡方式は、ディスプレイ上に左眼用画像と右眼用画像を表示し、ディスプレイから出射された左眼用画像光と右眼用画像光をそれぞれ異なる2種の偏光状態(例えば、右円偏光と左円偏光)とし、右円偏光透過偏光板と左円偏光透過偏光板から構成される偏光眼鏡を通して、ディスプレイを観察することで立体感を得るものである(特許文献1参照)。また、偏光眼鏡方式におけるディスプレイへの左眼用の画像と右眼用の画像の表示方法として、左眼用の画像と右眼用の画像について、それぞれ元画像の半分ずつをディスプレイの半分に表示する画面分割方式が採用されている。画面分割方式としては、ラインバイライン方式が広く採用されており、ディスプレイの走査線(以下、ラインとも言う)の奇数ラインと偶数ラインに、それぞれ左眼用の元画像の1ラインおきとなるように画素数を半分にした左眼用画像の半分と、右眼用の元画像の1ラインおきとなるように画素数を半分にした右眼用画像の半分を表示する方式である。また、ディスプレイから出射された左眼用の画像光と右眼用の画像光をそれぞれ異なる2種の偏光状態にする方法としては、ライン幅に合わせて異なる位相差が繰り返し帯状にパターニング配置されているパターン位相差フィルムをディスプレイ上に貼る方法が広く採用されている。
近年、このような映像表示装置のライン幅に合わせて異なる位相差が繰り返し帯状にパターニング配置されているパターン位相差フィルムについて、さらなる改良と製造コストの低下が3D映像表示装置の普及のために求められてきている。
ここで、このようなパターン位相差フィルムの製造方法として様々な方法が知られている(特許文献1〜5参照)。
特許文献1〜5等に記載されたポリマーフィルム上に作製されたパターン位相差フィルムを用いた3D表示装置では、パネルを点灯させた後にパターニング間隔と画素に経時的に生じるズレによって発生するクロストークが視認されることが判明し、その要因としてポリマーフィルムの膨張を抑制することで寸法変化を抑えることが特許文献6に記載されている。
特許文献6の記載では、セルロースエステルフィルムを1方向に延伸し、1方向の熱膨張係数及び湿度膨張係数を小さくすることにより、特定方向の寸法変化を抑えられるとされている。
米国特許第5,327,285号 特開2001−59949号公報 特開平10−161108号公報 特開平10−160933号公報 特開平10−153707号公報 国際公開第2011/102492号
近年、普及が拡大している3D−TVにはより高い耐久性や製造適性向上のため、さらに厳しい品質要求がなされており、特に視認側に配置される硬化樹脂層と支持体との密着性は最表面として用いられることを想定した場合に改善が求められている。
そのため本発明では、高湿環境下において生じる寸法変化を抑止して環境変化による影響が低減され、かつ、硬化樹脂層との密着性が改善された、硬化樹脂層と親水性樹脂層で挟持されたセルロースエステルフィルム積層体、および積層体に適したセルロースエステルフィルムを提供することである。
前述の様に特許文献6では、セルロースエステルフィルムを延伸処理することにより特定方向の寸法変化を抑える技術が提案されている。このように、これまでは、延伸処理によりポリマーを配向させることで、ポリマーフィルムの特定方向(例えば、配向方向と直交する方向)の寸法変化を抑制していた。
しかし、延伸処理をすることは寸法変化を抑制する反面、支持体と硬化樹脂層の密着性が低下してしまうため、従来以上の密着性の要求には応えられないという問題が判明した。
本発明者らは下記手段により、上述の寸法変化の抑止と密着性を両立できることを見出した。本発明者らは、セルロースエステルのポリマー分子鎖を延伸処理で配向させることで水分子の進入できる領域を低減させつつ膨張の方向を定めることにより可逆的寸法変化を抑制し、セルロースエステルフィルムの硬化樹脂層側の表面の可塑剤を低減させることで密着性を向上できると推測している。
即ち、上記課題は、以下の手段により解決される。
[1]
硬化樹脂層、セルロースエステルフィルム、及び親水性樹脂層をこの順に有する積層体であって、
上記セルロースエステルフィルムは、可塑剤を含有し、上記硬化樹脂層側表面の可塑剤濃度が、上記親水性樹脂層側の可塑剤濃度の95質量%以下であり、
上記セルロースエステルフィルムは、25℃、相対湿度10%において24時間経時させた後を基準として、25℃、相対湿度80%において24時間経時させた後の任意の一辺に対して直行方向及び平行方向の少なくとも一方の寸法変化率が0.40%以下である、積層体。
[2]
上記親水性樹脂がポリビニルアルコールを含んでなる[1]に記載の積層体。
[3]
上記親水性樹脂層の上記セルロースエステルフィルムを有する面とは反対の面上に、液晶性化合物の配向状態を固定してなる層を有する[1]又は[2]に記載の積層体。[4]
上記液晶性化合物の配向状態を固定してなる層は複数の位相差値を有する[3]に記載の積層体。
[5]
上記液晶性化合物の配向状態を固定してなる層は2種類の位相差値を有する帯状の領域が面内で交互に配置される[4]に記載の積層体。
[6]
上記帯状の領域が交互に配置される方向に対して直交する方向の寸法変化率が0.40%以下である[5]に記載の積層体。
[7]
上記硬化樹脂層は、熱又は光によって硬化する材料から形成された層である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の積層体。
[8]
上記硬化樹脂層は、ハードコート層、防眩層、及び反射防止層の少なくともいずれか1種である[1]〜[7]のいずれか一項に記載の積層体。
[9]
一方の表面側の可塑剤濃度が他方の表面側の可塑剤濃度の95%以下であり、25℃、相対湿度10%において24時間経時させた後を基準として、25℃、相対湿度80%において24時間経時させた後の任意の一辺に対して直行方向及び平行方向の少なくとも一方の寸法変化率が0.40%以下であるセルロースエステルフィルム。
[10]
セルロースアシレートを有機溶媒に溶解してドープを調製する工程、ドープを0℃以下に冷却した流延支持体上に流延する溶液流延製膜工程、及び流延方向と直交する方向にセルロースアシレートを配向させる工程を少なくとも有し、流延工程で表面の可塑剤を揮散させて流延支持体面側と空気界面側の可塑剤量を変化させる、[9]に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
[11]
[1]〜[8]のいずれか一項に記載の積層体、又は[9]に記載のセルロースエステルフィルムを有する偏光板。
[12]
[1]〜[8]のいずれか一項に記載の積層体、[9]に記載のセルロースエステルフィルム、又は[11]の偏光板を有する液晶表示装置。
本発明によれば、位相差フィルムの支持体の環境による寸法変化の小さいセルロースエステルフィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該セルロースエステルフィルム上に光学異方性層を有し、位相差フィルムとして用いることのできる積層体を提供でき、更に、該セルロースエステルや積層体を用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することである。特に3D併用映像表示パネルにおいては、ポリマーフィルム上に、互いに複屈折率が異なる第一位相差領域と第二位相差領域を有し、前記第一位相差領域と前記第二位相差領域が1ラインごとに交互にパターン化された光学異方性層を設けたパターン位相差フィルムを適用する場合、パターンと直交する方向でポリマーフィルムの収縮が起こると、位相差領域とパネルの画素との間にずれが生じてクロストークの原因となるが、本発明では効果的に防ぐことが可能となる。
さらに、硬化樹脂層と支持体との密着性と同等にすることで、湿度や熱による変形に対して高い密着性を有する積層体となる。
本発明の積層体の一例を示す概略図である。 本発明の積層体の一例を示す概略図である。 本発明における液晶性化合物の配向状態を固定してなる層の一例を示す概略図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「実質的に垂直」とは、厳密な垂直の角度よりも±20゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±15゜未満であることが好ましく、±10゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。更に屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。また、長手方向、幅手方向とは連続生産されるフィルムや積層体の長尺体を想定した場合に搬送する方向つまり長尺方向と、搬送する方向に直行する方向をそれぞれ指し、それぞれMD方向、TD方向と称することがある。
本明細書において、「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板及び液晶表示装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。
Figure 2014121790
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
式(A)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
式(B)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
式(B)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。
なお、本明細書において、特に断らない限り、測定波長は550nmとする。
本発明の積層体は、硬化樹脂層、セルロースエステルフィルム、及び親水性樹脂層をこの順に有する積層体であって、
前記セルロースエステルフィルムは、可塑剤を含有し、前記硬化樹脂層側表面の可塑剤濃度が、前記親水性樹脂層側の可塑剤濃度の95質量%以下であり、
前記セルロースエステルフィルムは、25℃、相対湿度10%において24時間経時させた後を基準として、25℃、相対湿度80%において24時間経時させた後の任意の一辺に対して直行方向及び平行方向の少なくとも一方の寸法変化率が0.40%以下である。
本発明の積層体の一例の概略図を図1に示す。図1の積層体10は、硬化樹脂層1、セルロースエステルフィルム2、及び親水性樹脂層3をこの順に有してなる。
(セルロースエステルフィルム)
一般に、ポリマーフィルム上に光学異方性層を設けた位相差フィルムは、特に円偏光若しくは直線偏光メガネ方式の3Dディスプレイ用途として用いる時は、画素単位のパターニング周期を持たせる。この場合、例えばディスプレイ点灯時、バックライトの放熱によりディスプレイの表面温度は上昇し、その影響でポリマーフィルムの寸法は変化することがある。その寸法変化に伴って画素ずれがおこり、右目用画像が左目に認識される、若しくは、左目用画像が右目に認識されるという、いわゆるクロストークが発生する。したがって、ポリマーフィルムとしては、その寸法変化を抑制することが望ましい。
本発明のセルロースエステルフィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)では、幅手方向の音速の長手方向の音速に対する比が0.9以上1.1以下であることが好ましい。本発明のセルロースエステルフィルムは、幅手方向の湿度寸法変化率が0.4%以下である。
以下、本発明のフィルムについて、説明する。
<セルロースエステル>
本発明におけるセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルを含む。
前記セルロースエステルとしては、粉末や粒子状のものを使用することができ、また、ペレット化したものも用いることができる。
本発明におけるセルロースエステルフィルムは、1種類のセルロースエステルから構成してもよいし、2種類以上のセルロースエステルから構成してもよい。
セルロースエステルとしては、セルロースアシレートが好ましい。
本発明に用いられるセルロースアシレートは、特に定めるものではない。アシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて簡単に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位に位置するセルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
全アシル置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は1.5〜3.0であることが、好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましく、2.5〜3.0であることが更にまた好ましく、2.7〜3.0であることが更に好ましく、2.70〜2.98であることが特に好ましい。また、製膜性の観点からは場合により、2.80〜2.95であることが好ましく、2.85〜2.90であることが特にまた好ましい。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度である(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は全アシル置換度に対する6位のアシル置換度の割合であり、以下「6位のアシル置換率」とも言う。
これらセルロースに関しては、国際公開第2011/102492パンフレットの段落番号0034から0039の記載を参考にすることができる。
本発明に係るセルロースエステルは、吸湿率が0.5%以上であることが好ましい。ポリマーの吸湿率は親水性基や疎水性基の導入などによるポリマーの化学構造の調整や親水性または疎水性の添加剤等で制御することができ、吸湿率を適切に設定することによってフィルムの吸湿膨張係数を制御することが可能となる。吸湿率と吸湿膨張係数との関係は、例えば、結晶化度や分子量、絡み合いの度合いのような、フィルム中におけるポリマーの相互作用の大きさによって変化するため、一義的に対応させることはできないが、概して言えば、ポリマーの親水性を上げ、吸湿率を上げることによって、吸湿膨張係数を増大させることができる。
ポリマーの吸湿率は0.5%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.7%以上であり、更に好ましくは1.0%以上である。また、上限については特にないが、実用上の観点から、10%以下であることが好ましく、7.0%以下であることがより好ましい。
吸湿率の測定法は、25℃、相対湿度60%において24時間調湿したフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置“CA−03”及び“VA−05”{共に三菱化学(株)製}にてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
<添加剤>
本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、添加剤を添加することができ、これによって湿度寸法変化率の制御の一助とすることができる。添加剤の分子量は特に制限されないが、後述の添加剤を好ましく用いることができる。
添加剤を加えることによって、湿度寸法変化率の制御に加えて、フィルムの熱的性質、光学的性質、機械的性質の改善、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。
添加剤の添加量としては、上記種々の効果を発現させる観点から、セルロースエステルに対して5質量%以上であることが好ましく、9質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることが更に好ましい。上限としては、50質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることが好ましい。添加剤を2種類以上用いた場合には、その合計量が上記範囲にあることが好ましい。
(可塑剤)
本発明におけるセルロースエステルフィルムは可塑剤を含有する。
可塑剤の添加により、機械的な性質の制御等ができる。可塑剤としては、リン酸エステル、クエン酸エステル、トリメリット酸エステル、糖エステルなどの既知の各種エステル系可塑剤や国際公開第2011/102492パンフレットの段落番号0042から0068のポリエステル系ポリマーの記載を参考にすることができる。
また、光学的な性質の制御として、紫外線や赤外線の吸収能の付与には、国際公開第2011/102492パンフレットの段落番号0069から0072の記載を参考にすることができ、フィルムの位相差の調整や発現性制御のためには既知のレターデーション調整剤を用いることができる。
[セルロースエステルフィルムの製造方法]
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。以下、セルロースアシレートを例に説明するが、他のセルロースエステルの場合も同様に製膜することができる。
セルロースアシレートを含むフィルムは溶液流延製膜法又は溶融製膜法を利用して製膜することができる。以下に例として溶液流延製膜法の場合についての説明をする。
(ポリマー溶液)
溶液流延製膜方法では、前記セルロースアシレートや必要に応じて各種添加剤を含有するポリマー溶液(セルロースアシレート溶液)を用いてウェブを形成する。以下において、溶液流延製膜方法に用いることができる本発明におけるポリマー溶液(以下、適宜セルロースアシレート溶液と称する場合もある)について説明する。
本発明におけるポリマー溶液の主溶媒としては、セルロースアシレートの良溶媒である有機溶媒を好ましく用いることができる。このような有機溶媒としては、沸点が80℃以下の有機溶媒が乾燥負荷低減の観点からより好ましい。前記有機溶媒の沸点は、10〜80℃であることが更に好ましく、20〜60℃であることが特に好ましい。また、場合により沸点が30〜45℃である有機溶媒も前記主溶媒として好適に用いることができる。本発明においては、後述の溶媒群のうち、特にハロゲン化炭化水素を主溶媒として好ましく用いることができ、ハロゲン化炭化水素の中では塩素化炭化水素が好ましく、ジクロロメタン及びクロロホルムが更に好ましく、ジクロロメタンが最も好ましい。また、乾燥過程初期においてハロゲン化炭化水素とともに揮発する割合が小さく、次第に濃縮される沸点が95℃以上の溶媒を全溶媒に対し1〜15質量%含有する溶媒を用いることができ、1〜10質量%含有する溶媒を用いることが好ましく、1.5〜8質量%含有する溶媒を用いることがより好ましい。そして、沸点が95℃以上の溶媒は、セルロースアシレートの貧溶媒であることが好ましい。沸点が95℃以上の溶媒の具体例としては、後述する「主溶媒と併用される有機溶媒」の具体例のうち沸点が95℃以上の溶媒を挙げることができるが、中でもブタノール、ペンタノール、1,4−ジオキサンを用いることが好ましい。更に、本発明に用いられる本発明におけるポリマー溶液の溶媒はアルコールを5〜40質量%含有し、10〜30質量%含有することが好ましく、12〜25質量%含有することがより好ましく、15〜25質量含有することが更に好ましい。ここで用いるアルコールの具体例としては、後述する「主溶媒と併用される有機溶媒」のアルコールとして例示されている溶媒を挙げることができるが、中でもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールを用いることが好ましい。なお、前記の「沸点が95℃以上の溶媒」がブタノールなどのアルコールである場合は、その含有量もここでいうアルコール含有量にカウントする。このような溶媒を用いることにより、作製したセルロースアシレートフィルムの熱処理温度における力学強度を上昇させることができるため、熱処理中に必要以上に延伸されて、得られたフィルムが割れやすくなることを防ぐことができる。
このような主溶媒としては、ハロゲン化炭化水素を特に好ましく挙げることができ、場合により、エステル、ケトン、エーテル、アルコール及び炭化水素などが挙げることもでき、これらは分岐構造若しくは環状構造を有していてもよい。また、前記主溶媒は、エステル、ケトン、エーテル及びアルコールの官能基(即ち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれかを二つ以上有していてもよい。更に、前記エステル、ケトン、エーテル及びアルコールの炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。なお、本発明の製造方法に用いるセルロースアシレートフィルムの作製に用いられる本発明におけるポリマー溶液の主溶媒とは、単一の溶媒からなる場合には、その溶媒のことを示し、複数の溶媒からなる場合には、構成する溶媒のうち、最も質量分率の高い溶媒のことを示す。主溶媒としては、ハロゲン化炭化水素を好適に挙げることができる。
前記ハロゲン化炭化水素としては、塩素化炭化水素がより好ましく、例えば、ジクロロメタン及びクロロホルムなどが挙げられ、ジクロロメタンが更に好ましい。
前記エステルとしては、例えば、メチルホルメート、エチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートなどが挙げられる。
前記ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
前記エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
前記炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
これら主溶媒と併用される有機溶媒としては、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、アルコール及び炭化水素などが挙げられ、これらは分岐構造若しくは環状構造を有していてもよい。また、前記有機溶媒としては、エステル、ケトン、エーテル及びアルコールの官能基(即ち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれか二つ以上を有していてもよい。更に、前記エステル、ケトン、エーテル及びアルコールの炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。
前記ハロゲン化炭化水素としては、塩素化炭化水素がより好ましく、例えば、ジクロロメタン及びクロロホルムなどが挙げられ、ジクロロメタンが更に好ましい。
前記エステルとしては、例えば、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテートなどが挙げられる。
前記ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。
前記エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなどが挙げられる。好ましくは炭素数1〜4のアルコールであり、より好ましくはメタノール、エタノール又はブタノールであり、最も好ましくはメタノール、ブタノールである。
前記炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記2種類以上の官能基を有する有機溶媒としては、例えば、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルアセトアセテートなどが挙げられる。
本発明において、セルロースエステルフィルムを構成するポリマーは、水酸基やエステル、ケトン等の水素結合性の官能基を含むため、全溶媒中に5〜30質量%、より好ましくは7〜25質量%、更に好ましくは10〜20質量%のアルコールを含有することが流延支持体からの剥離荷重低減の観点から好ましい。
アルコール含有量を調整することによって、本発明の製造方法により製造されるセルロースアシレートフィルムのReやRthの発現性を調整しやすくすることができる。具体的には、アルコール含有量を上げることによって、熱処理温度を比較的低く設定したり、ReやRthの到達範囲をより大きくしたりすることが可能となる。
また、本発明においては、水を少量含有させることも溶液粘度や乾燥時のウェットフィルム状態の膜強度を高めたり、ドラム法流延時のドープ強度を高めるのに有効であり、例えば溶液全体に対して0.1〜5質量%含有させてもよく、より好ましくは0.1〜3質量%含有させてもよく、特には0.2〜2質量%含有させてもよい。
本発明におけるポリマー溶液の溶媒として好ましく用いられる有機溶媒の組み合せの例については、特開2009−262551号公報に挙げられている。
また、必要に応じて、非ハロゲン系有機溶媒を主溶媒とすることもでき、詳細な記載は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)に記載がある。
本発明におけるポリマー溶液中のセルロースアシレート濃度は、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%が更に好ましく、15〜30質量%が最も好ましい。
前記セルロースアシレート濃度は、セルロースアシレートを溶媒に溶解する段階で所定の濃度になるように調整することができる。また予め低濃度(例えば4〜14質量%)の溶液を調製した後に、溶媒を蒸発させる等によって濃縮してもよい。更に、予め高濃度の溶液を調製後に、希釈してもよい。また、添加剤を添加することで、セルロースアシレートの濃度を低下させることもできる。
添加剤を添加する時期は、添加剤の種類に応じて適宜決定することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムに用いられる添加剤の添加量増大に伴い、セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(Tg)低下や、フィルムの製造工程における添加剤の揮散問題を引き起こしやすくなるため、分子量3000以下の添加剤の添加量は、前記セルロースアシレートに対し0.01〜30質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましい。
(ポリマー溶液の調製)
本発明におけるポリマー溶液の調製は、例えば、特開昭58−127737号公報、同61−106628号公報、特開平2−276830号公報、同4−259511号公報、同5−163301号公報、同9−95544号公報、同10−45950号公報、同10−95854号公報、同11−71463号公報、同11−302388号公報、同11−322946号公報、同11−322947号公報、同11−323017号公報、特開2000−53784号公報、同2000−273184号公報、同2000−273239号公報に記載されている調製方法に準じて行うことができる。具体的には、ポリマーと溶媒とを混合攪拌し膨潤させ、場合により冷却や加熱等を実施して溶解させた後、これをろ過して本発明におけるポリマー溶液を得る。
本発明においては、ポリマーの溶媒への溶解性を向上させるため、ポリマーと溶媒との混合物を冷却及び/又は加熱する工程を含むことが好ましい。
溶媒としてハロゲン系有機溶媒を用い、セルロースアシレートと溶媒との混合物を冷却する場合、混合物を−100〜10℃に冷却する工程を含むことが好ましい。また、冷却工程より前の工程に−10〜39℃で膨潤させる工程を含み、冷却より後の工程に0〜39℃に加温する工程を含むことが好ましい。
溶媒としてハロゲン系有機溶媒を用い、セルロースアシレートと溶媒との混合物を加熱する場合、下記(a)又は(b)より選択される1以上の方法で溶媒中にセルロースアシレートを溶解する工程を含むことが好ましい。
(a)−10〜39℃で膨潤させ、得られた混合物を0〜39℃に加温する。
(b)−10〜39℃で膨潤させ、得られた混合物を0.2〜30MPaで40〜240℃に加熱し、加熱した混合物を0〜39℃に冷却する。
更に、溶媒として非ハロゲン系有機溶媒を用い、セルロースアシレートと溶媒との混合物を冷却する場合、混合物を−100〜−10℃に冷却する工程を含むことが好ましい。また、冷却工程よりも前の工程に−10〜55℃で膨潤させる工程を含み、冷却よりも後の工程に0〜57℃に加温する工程を含むことが好ましい。
溶媒としてハロゲン系有機溶媒を用い、セルロースアシレートと溶媒との混合物を加熱する場合、下記(c)又は(d)より選択される1以上の方法で溶媒中にセルロースアシレートを溶解する工程を含むことが好ましい。
(c)−10〜55℃で膨潤させ、得られた混合物を0〜57℃に加温する。
(d)−10〜55℃で膨潤させ、得られた混合物を0.2〜30MPaで40〜240℃に加熱し、加熱した混合物を0〜57℃に冷却する。
(ウェブの製膜)
本発明におけるウェブは、本発明におけるポリマー溶液を用いて溶液流延製膜方法により形成することができる。溶液流延製膜方法の実施に際しては、従来の方法に従って、公知の装置を用いることができる。具体的には、溶解機(釜)で調製されたドープ(本発明におけるポリマー溶液)を、ろ過後、貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製する。ドープは30℃に保温し、ドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延する(ドープ流延工程)。次いで、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブ)を金属支持体から剥離し、続いて乾燥ゾーンへ搬送し、ロール群で搬送しながら乾燥を終了する。溶液流延製膜方法の流延工程、乾燥工程の詳細については、特開2005−104148号公報の120〜146頁にも記載があり、適宜本発明にも適用することができる。
本発明においては、ウェブの製膜の際に用いる金属支持体として金属バンド又は金属ドラムを使用することができる。
(表裏面の可塑剤濃度調整)
表裏面の可塑剤濃度調整は前述のドープ流延工程時に行うことが好ましい。調整方法としては特開2001−151902号公報に記載されているように可塑剤濃度が異なる複数種のドープを積層することで一体のフィルムとする方法と、空気界面側の表面の可塑剤を揮散させる方法等で行うことができる。
前者は各層ごとに成分調整を独立に行うことができるため、設備的に煩雑となり成膜条件の制御も困難となるが、各層の組成の制御が行い易い。
一方で後者は使用できる可塑剤に選択肢は限られるものの、硬化樹脂層との界面となる空気界面側の表面のごく薄い領域の可塑剤を溶媒とともに揮散させれば、密着性改善効果への寄与は高まるため、後者の方法で行うことが好ましい。
空気界面側の表面の可塑剤を揮散させる方法とは、具体的には金属支持体上流延したドープに加熱した乾燥風を高風量で当てる等の方法で行うことができる。
本発明の効果を得るためには、前述の方法で、空気界面側の可塑剤濃度が流延支持体側の可塑剤濃度の95%以下となる様に乾燥風をあてる条件を調整することが好ましい。
なお、可塑剤の濃度の比は70〜95%に制御されることが好ましい。
後述の工程を経て成膜されたフィルムの流延支持体面側に親水性樹脂を配し、空気界面側に硬化樹脂層を配することで本発明の積層体を得ることができる。
(延伸工程)
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造方法は、セルロースエステルを含むフィルム全体を特定の方向に延伸する工程を含む。本発明に係るセルロースエステルフィルムは、延伸することによって、延伸方向の熱膨張係数と湿度寸法変化率を低減させることができる。延伸は、長手方向(フィルムを搬送する搬送方向に対応)と直交する幅手方向に10%以上40%以下延伸することが好ましい。更に、幅手方向と一致しない方向(例えば、長手方向)への延伸と組み合わせた二軸延伸でもよい。
幅手方向への延伸倍率は、10〜40%であることが好ましく、10〜30%であることがより好ましい。また、長手方向への延伸倍率は、0〜20%が好ましく、0〜10%がより好ましく、0〜5%が更に好ましい。
フィルムのヘイズを上昇させずに延伸して弾性率の異方性を制御する方法については、特定の条件で延伸する特開2007−176164等に記載の延伸方法や、一旦ヘイズを上昇させてからヘイズを低下させる特開2009−137289等の記載の延伸方法を好ましく用いることができる。また、フィルム中に溶媒を残した状態で延伸して弾性率の異方性を制御する方法については、特開2007−119717等に記載の延伸方法を好ましく用いることができる。
なお、本明細書でいう「延伸倍率(%)」とは、延伸方向でのフィルムの長さに関する以下の式により求められるものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
また、延伸工程におけるウェブの延伸速度は、特に限定されるものではないが、延伸適正(シワ、ハンドリングなど)の観点から、1〜1000%/minが好ましく、1〜100%/minが更に好ましい。延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。また、更に、搬送方向に対して直行する方向(横方向)に延伸を加えてもよい。
延伸工程を経たウェブは、続いて乾燥ゾーンへ搬送して延伸工程後に乾燥工程を実施してもよい。前記乾燥工程においてウェブは、テンターで両端をクリップされたり、ロール群で搬送したりしながら乾燥される。
[湿度寸法変化率]
本発明におけるセルロースエステルフィルムは、25℃、相対湿度10%において24時間経時させた後を基準として、25℃、相対湿度80%において24時間経時させた後の任意の一辺に対して直行方向及び平行方向の少なくとも一方の寸法変化率(湿度寸法変化率)が0.40%以下である。
本発明におけるセルロースアシレートフィルムの湿度寸法変化率を測定する際には、フィルムの幅手方向を測定方向として、該測定方向に12cmの長さで、幅3cmのフィルム試料を切り出す。該試料に測定方向に沿って10cmの間隔でピン孔を空け、25℃、相対湿度10%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL0とする)。次いで、試料を25℃、相対湿度80%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL1とする)。これらの測定値を用いて下記式により湿度寸法変化率を算出することができる。
湿度寸法変化率[%]=(L1−L0)×100/L0
本発明のセルロースエステルフィルムの幅手方向の湿度寸法変率化は、0〜0.40%以下であることが好ましく、0〜0.38%以下であることがさらに好ましく、0〜0.35%が特に好ましい。
湿度寸法変化率の幅手方向ばらつきは、10%以下であることが好ましく、0〜7%がより好ましく、0〜5%が最も好ましい。
ここで、湿度寸法変化のばらつきは、幅手方向に等間隔になるように選んだ5箇所の湿度寸法変化を測定し、そのときの最大値と最小値の差を5箇所の平均値で割って算出する。
湿度寸法変化率のばらつきが大きいと湿度寸法変化の局所的な差が大きくなるため、積層する光学異方性層がその変形に追従してしまい、光学異方性層をパターン状に形成した場合にパターンの変形が起こりやすくなり表示性能の低下がより強調される。湿度寸法変化率のばらつきは、幅手方向延伸実施領域でのフィルム温度やフィルム中溶媒量にばらつきが原因となってフィルム内の分子鎖の状態が一様でない状態に起因すると推定している。本発明においては残留応力の抑制を目的として延伸条件を一様となる様にしているため(例えば、乾燥風量、乾燥風温度が幅手方向に均一にすることが好ましい)、フィルム中の分子鎖の状態に均一性が向上するために水分や溶媒等がとりこまれる自由体積のばらつきが低減され、湿度寸法変化率の幅手方向ばらつきが低減された結果、改善されると考えた。
[音速]
本発明においてセルロースエステルフィルムの幅手方向及び長手方向の音速は、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、配向性測定機(SST−2500:野村商事(株)製)を用いて測定できる。測定結果より、幅手方向の音速の長手方向の音速に対する比を算出することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、幅手方向の音速の長手方向の音速に対する比を0.9以上1.1以下とすることが好ましい。より好ましくは0.95以上1.10以下である。音速比がこの範囲にあるフィルムは、残留応力が抑制されており、湿熱寸法変化を抑制することができる。
[可塑剤表面存在比率]
本発明におけるセルロースエステルフィルムは、可塑剤を含有し、前記硬化樹脂層側表面の可塑剤濃度が、前記親水性樹脂層側の可塑剤濃度の95%以下である。
すなわち、可塑剤表面存在比率={(硬化樹脂層側表面の可塑剤濃度)/(親水性樹脂層側の可塑剤濃度)}×100が95%以下である
可塑剤表面存在比率は、以下のようにして算出する。
ナイフを用いてフィルムの両方の表面からそれぞれ10μm削りとり、質量を測定した後、これをアセトン中に溶解し、ここに含まれる可塑剤量をガスクロマトグラフィーにて定量分析を行なった。得られた結果から前記式を用いて可塑剤表面存在比率を算出した。
[セルロースエステルフィルムのレターデーション]
本発明のセルロースエステルフィルムは、面内位相差(面内のレターデーション)Reが0nm以上5nm以下であり、かつ、厚み方向位相差(厚さ方向のレターデーション)Rthが0nm以上50nm以下であることが、フィルム上にパターン位相差層を設けた場合に該パターン位相差層への光学的な影響を少なくできるので好ましい。
[セルロースエステルフィルムの幅]
本発明のセルロースエステルフィルムは、フィルムの幅が1.8m以上であることが好ましく、1.9〜4mであることがより好ましく、2.2〜3mであることが更に好ましい。
以上の方法によって得られたセルロースエステルフィルムは、硬化性樹脂と親水性樹脂の様な異なる物性を有する層に挟持されても、湿熱環境における変形は小さく高い密着性を有している。
樹脂層の変形によるカールへの耐性も有するため、偏光板保護フィルムとしても有用である。
(積層体)
本発明の積層体は、前記セルロースエステルフィルムの一方の表面上に硬化樹脂層を有し、他方の表面上に親水性樹脂層を有する。これら硬化樹脂層と親水性樹脂層の好ましい具体例としては以下のとおりである。
(硬化樹脂層)
本発明における硬化樹脂層は、硬化性化合物を硬化してなる層である。
硬化性化合物とは、光又は熱によって硬化する化合物であり、具体的にはビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、エポキシ基などを有する硬化性官能基を有する材料が一例として挙げることができる。
硬化性化合物は、低分子の化合物でも、オリゴマーでも、ポリマー(樹脂)でもよい。
硬化性化合物としては、より具体的には、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、ビニルベンゼン及びその誘導体、ビニルスルホン、(メタ)アクリルアミド、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂および多価アルコール等の、多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等が挙げられる。
(硬化樹脂層の鉛筆硬度)
硬化樹脂層を有するセルロースエステルフィルムを、25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、鉛筆硬度を評価した。具体的には、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆で硬化樹脂層表面を5回繰り返し引っ掻き、傷が1本までの硬度を測定した。実用上は、3H以上が好ましく、数値が高いほど、高硬度なため好ましい。
(親水性樹脂層)
親水性樹脂とは、水酸基等をはじめとする極性基を有する樹脂であり、具体的にはポリビニルアルコール(PVA)が挙げられる。ポリビニルアルコールは、種々の鹸化度のものが存在する。本発明では、鹸化度85〜99程度のものを用いるのが好ましい。市販品を用いてもよく、例えば、「PVA103」、「PVA203」(クラレ社製)等は、上記鹸化度のPVAである。
本発明の積層体では、親水性樹脂層のセルロースエステルフィルムを有する面とは反対の面上に、液晶性化合物の配向状態を固定してなる層を設けることができる。親水性樹脂層を配向膜として、液晶性化合物を配向させ、その配向状態を固定した光学異方性層を有する積層体が好ましい。
光学異方性層を有する本発明の積層体の一例の概略図を図2に示す。図2の積層体10は、硬化樹脂層1、セルロースエステルフィルム2、親水性樹脂層3、及び液晶性化合物の配向状態を固定してなる層4をこの順に有してなる。
この様な積層体は、位相差を有する光学フィルム(例えば、位相差フィルム)として用いることができる。さらに、この光学異方性層は、面内に異なる位相差領域を有するパターン位相差層とすることもできる。
前記液晶性化合物の配向状態を固定してなる層は複数の位相差値を有する層であることが好ましく、2種類の位相差値を有する帯状の領域が面内で交互に配置される層であることがより好ましい。前記帯状の領域が交互に配置される方向に対して直交する方向の寸法変化率が0.40%以下であることが好ましい。
(パターン位相差層)
前記光学異方性層の好ましい態様としては、屈折率が異なる複数の領域からなり、長手方向にパターン状に配置されてなる態様(この態様の光学異方性層をパターン位相差層とも言う)が挙げられる。
また、パターニングのパターンの長手方向(パターンの長辺の方向)は、セルロースエステルフィルムの音速最大方向に対して略直交でも略平行でも良いが、寸法変化抑制の観点からは、略直交であることが好ましい。
また、ロールトゥーロールが容易に可能であり、寸法変化が起きてもしわになりにくいという観点からは、略平行であることが好ましい。
前記パターン位相差層は、第一位相差領域(単に第一領域とも言う)と第二位相差領域(単に第二領域とも言う)とが、幅手方向に交互に配置されてなることが好ましい。第一位相差領域と第二位相差領域としては、互いに屈折率が異なる態様や遅相軸の方向が異なる態様が挙げられる。
図3に、本発明における液晶性化合物の配向状態を固定してなる層の一例を示す。図3は、液晶性化合物の配向状態を固定してなる層を平面視した概略図であり、帯状の第一位相差領域41と帯状の第二位相差領域42とが交互に配置されてなる。前記帯状の領域が交互に配置される方向に対して直交する方向(図3の矢印Aの指す方向)の寸法変化率が0.40%以下であることが好ましい。
(第一領域と第二領域の形状)
前記第一位相差領域と前記第二位相差領域が1ラインごとに交互にパターン化されていることが好ましい。前記第一領域と前記第二領域が、互いの短辺の長さがほぼ等しい帯状であり、かつ交互に繰り返しパターニングされていることが、3D映像表示システム用に用いる観点から好ましい。
本発明の積層体では、前記第一領域の遅相軸と前記第二領域の遅相軸が略直交することが、3D映像表示をするときに前記第一領域と前記第二領域を通過した光の偏光状態を直線偏光から円偏光、又は円偏光から直線偏光に変えることができる観点から好ましい。
また、本発明の積層体では、前記第一領域の遅相軸と前記第二領域の遅相軸が直交することが、3D映像表示をするときに前記第一領域と前記第二領域を通過した光の偏光状態を、楕円偏光させずに、直線偏光から円偏光、又は円偏光から直線偏光に変えることができる観点から、より好ましい。
本発明の積層体では、パターンの長辺の方向と、支持体の音速が最大となる方向とが略直交であることが、パターン領域と画素のずれを低減し、クロストークを抑制できる観点から好ましい。
(レターデーション)
前記のように直線偏光から円偏光、又は円偏光から直線偏光に変換する機能を有するパターン位相差層は波長の1/4のレターデーションを持つことが好ましい。一般に4分の1波長板と呼ばれ、可視光の波長550nmにおいてはRe=137.5nmが理想値となる。
また、直線偏光から円偏光、又は円偏光から直線偏光に変換するパターン位相差層は波長の1/4のレターデーションを有するものだけではない。例えば、波長の−1/4や3/4のレターデーションでもよく、一般式で表すと波長の1/4±n/2(nは整数)のレターデーションを有すればよい。
前記第一領域の遅相軸と前記第二領域の遅相軸が直交するパターニングは、波長の−1/4や1/4のレターデーションを有する領域を交互に形成すればよい。この時、互いの領域の遅相軸はほぼ直交する。また、波長の1/4と3/4のレターデーションをパターニングしてもよく、この時の互いの領域の遅相軸はほぼ平行になる。ただし、互いの領域の円偏光の回転方向は逆になる。
更に、波長の1/4と3/4のレターデーションのパターニングは、波長の1/4を全面に形成後、波長の1/2又は−1/2のレターデーションを形成してもよい。
本発明の積層体は、波長の1/4のレターデーションを持たせる場合、積層体中に含まれる前記第一領域のRe(550)値と、積層体中に含まれる前記第二領域のRe(550)値が30〜250nmであることが好ましく、50〜230nmであることがより好ましく、100〜200nmであることが特に好ましく、105〜180nmであることがより特に好ましく、115〜160nmであることが更に好ましく、130〜150nmであることがより特に好ましい。
また、3D映像表示をするときに前記第一領域と前記第二領域を通過した光の偏光状態を直線偏光から円偏光、又は円偏光から直線偏光に変えることができる観点からの観点から、パターン位相差層とセルロースエステルフィルムとの全体のRe(550)が110〜165nmであることが好ましく、110〜155nmであることがより好ましく、120〜145nmであることが更に好ましい。特に、パターン位相差層とセルロースエステルフィルムとの全体のRe(550)が上記範囲であり、かつ第一領域と第二領域の遅相軸が略直交していることが精度良く右目用画像と左目用画像の偏光状態を変えることができる観点から好ましい。
(パターン形成方法)
前記第一領域と第二領域は様々な方法で形成が可能である。以下にその方法の例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
[パターン露光]
位相差層のパターニングのために、パターン露光を行うことができる。
パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を行うことを意味する。このときの「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は単に未露光部及び露光部のみを生じるパターン露光であってもよい。この場合、通常位相差を残したい領域を露光する。また、パターン露光は未露光部及び露光部の中間調となる1個以上の露光条件による露光部を含むパターン露光であってもよい。パターン露光は1回の露光によって行われても複数回の露光によって行われてもよい。例えば、領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、及び露光量が好ましく、露光照度、露光時間及び露光量が更に好ましい。パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なる位相差量を与える。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
[マスク露光]
露光条件の異なる露光領域を生じる手段として、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の元で同一時間の露光を行う事で異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
また、レーザーなどを用いた走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能である。
パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することが更に好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm程度、更に好ましくは10〜500mJ/cm程度、最も好ましくは10〜100mJ/cm程度である。
[加熱(ベーク)]
パターン露光された位相差層に対して50℃以上400℃以下でベークを行うことにより、上記パターン露光時の露光条件に応じたパターンで位相差量のパターニングが行われる。用いられた位相差層の露光前のレターデーション消失温度をT1[℃]、露光後のレターデーション消失温度をT2[℃]とした場合(レターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない場合はT2=250℃とする)、ベーク時の温度はT1℃以上T2℃以下が好ましく、(T1+10)℃以上(T2−5)℃以下がより好ましく、(T1+20)℃以上(T2−10)℃以下が最も好ましい。
レターデーション消失温度が上昇する位相差層を用いている場合、露光を行う事によりベークによって層中の未露光部のレターデーションが低下し、一方で露光部はレターデーションの低下が小さく、若しくは全く低下しないかあるいは上昇し、結果として未露光部のレターデーションが露光部のレターデーションに比較して小さくなり、軸の有無又は位相差量のパターンが作製される。
[軸方向のパターニング]
軸方向のパターニングの方法については、特に限定されないが、好ましくは配向層を利用して、位相差層の光軸(遅相軸)の方向のパターニングを行うことができる。
光配向層上に設けられた液晶性化合物を含む層、好ましくは光配向層上に直接設けられた液晶性化合物を含む層は、紫外光が照射されると、光配向層が作製された偏光紫外光の偏光方向に、液晶分子が配向する。同様に、ラビング配向層上に設けられた液晶性化合物を含む層、好ましくはラビング配向層上に直接設けられた液晶性化合物を含む層は、紫外光が照射されるとラビングされた方向に液晶分子が配向する。
従って、光配向層上にパターン位相差層を設ける際には、配向材料を含む光配向層形成用組成物から形成された層に上記のパターン位相差層の作製時に用いられるパターン露光の手法と同様の手法により、偏光紫外光をパターン照射し、この層の光配向性をパターニングする。得られた光配向層の上に液晶性化合物を含む組成物を塗布、乾燥等させた後、紫外光を照射することにより軸方向がパターニングされた位相差層を得ることができる。同様に、ラビング配向層上にパターン位相差層を設ける際には、ラビング配向層形成用組成物から形成されたラビング前の層にマスク等を介して、ラビングを行い、この層のラビング方向をパターニングする。得られたラビング配向層の上に液晶性化合物を含む組成物を塗布、乾燥等させた後、紫外光を照射することにより軸方向がパターニングされた位相差層を得ることができる。
本態様においても、前記光学異方性層を配向膜上に形成してもよい。即ち、あらかじめ配向膜を形成し、該配向膜の微細領域に、前記流体を吐出させてもよい。本実施の形態に利用可能な配向膜は、前記転写法の実施の形態に利用可能な配向膜の例と同様である。前記配向膜の形成方法については特に制限されないが、本実施の形態では、光学異方性層の形成と同様、インクジェット法により形成するのが好ましい。前記流体の吐出が完了した後、所望により該流体の層の乾燥を行い、液晶相を形成し、露光することによって硬化させて、光学異方性層を形成する。液晶相を形成するために、所望により加熱してもよく、その場合は、加熱装置を使用してもよい。
前記流体は、硬化可能であるのが好ましく、即ち、硬化性組成物を溶液等の流体として調製したものであるのが好ましい。硬化性組成物中に含有させる重合開始剤等については、転写方法の実施の形態にて説明した種々の重合開始剤を用いることができる。また、前記流体中には、配向制御剤等の添加剤を含有させてもよく、これらの例についても転写方法の実施の形態にて説明した種々の添加剤の例と同様である。また、前記流体の調製に使用する溶媒の例についても、転写法の実施の形態にて塗布液の調製に使用可能な溶媒の例と同様である。
前記光学異方性層を形成する際のインク等の射出条件については特に制限されないが、光学異方性層形成用の流体の粘度が高い場合は、室温あるいは加熱下(例えば、20〜70℃)において、インク粘度を下げて射出することが射出安定性の点で好ましい。インク等の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク等の温度をできるだけ一定に保つのが好ましい。
前記方法に用いられるインクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう)は、特に制限されず、公知の種々のものを使用することができる。コンティニアスタイプ、及びドットオンデマンドタイプが使用可能である。ドットオンデマンドタイプのうち、サーマルヘッドでは、吐出のため、特開平9−323420号公報に記載されているような稼動弁を持つタイプが好ましい。ピエゾヘッドでは、例えば、欧州特許A277,703号、欧州特許A278,590号などに記載されているヘッドを使うことができる。ヘッドは組成物の温度が管理できるよう、温調機能を持つものが好ましい。前記流体の射出時の粘度は5〜25mPa・sとなるよう射出温度を設定し、粘度の変動幅が±5%以内になるよう流体温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1〜500kHzで稼動することが好ましい。
本発明の積層体は、特に大画面液晶表示装置に用いるのに適している。大画面用液晶表示装置用の光学フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明の積層体には、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様のフィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光膜等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられたフィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
[偏光板]
本発明の偏光板は、少なくとも1枚の本発明のセルロースエステルフィルム又は積層体を保護フィルムとして用いたことを特徴とする。
前記偏光板は、従来公知の一般的な構成の偏光板を挙げることができ、前記偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。本発明の積層体は、一般的な偏光板の一方の面上に積層させ、偏光眼鏡方式の3D映像表示システムに用いることができるパターン位相差フィルムとすることができる。前記偏光板の態様は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、帯状、すなわち、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
[粘着層]
本発明の偏光板においては、セルロースエステルフィルム又は積層体と偏光膜とを粘着層を介して積層してもよい。
本発明において、セルロースエステルフィルム又は積層体と偏光膜との積層のために用いられる粘着層とは、例えば、動的粘弾性測定装置で測定したG’とG”との比(tanδ=G”/G’)が0.001〜1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。
[映像表示パネル]
映像表示パネルは、少なくとも1枚の本発明のセルロースエステルフィルム、積層体、又は偏光板を含むことで構成できる。好ましく態様は、本発明のセルロースエステルフィルム又は積層体が視認側に近い保護フィルムとして用いるである。これにより、例えば前記パターン位相差層を設けた場合、映像表示パネルからの光のうち、前記第一領域を通過した光と、前記第二領域を通過した光の偏光状態を変えることができ、3D立体映像表示を表示することができる映像表示パネルとなる。
本発明の映像表示装置に用いられる映像表示パネルは特に制限はなく、CRTであってもフラットパネルディスプレイであってもよいが、フラットパネルディスプレイであることが好ましい。フラットパネルディスプレイとしては、PDP、LCD、有機ELDなどを用いることができるが、本発明は前記映像表示パネルが液晶表示パネルである場合に特に好ましく適用することができる。前記映像表示パネルを液晶表示パネルとすることで、フラットパネルディスプレイの中でも高画質かつ安価な映像表示システムとすることができる。
前記液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であり、該偏光板の前記セルロースエステルフィルム又は前記積層体である保護フィルムが最も視認側に近い保護フィルムとなる様に配置することが好ましい。特に、IPS、OCB又はVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
前記液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できる。また、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
[映像表示システム]
本発明のセルロースエステルフィルム、積層体、偏光板、又は液晶表示装置は、映像表示システムに用いることもできる。これにより、例えば前記パターン位相差層を設けた場合、左眼用画像と右眼用画像を映像表示パネルに入力し、映像表示パネルから左眼用画像と右眼用画像を本発明の光学フィルムに向けて出射し、本発明に係る前記パターン位相差層の前記第一領域を通過した該左眼用画像(又は右眼用画像)と、前記第二領域を通過した該右眼用画像(又は左眼用画像)の偏光状態を変えさせることができる。更に前記第一領域を通過した該左眼用画像のみを透過する偏光板付き左眼用レンズと、前記第二領域を通過した該右眼用画像のみを透過する偏光板付き右眼用レンズを備えた偏光眼鏡を併用することで、左右の眼にそれぞれ左眼用画像と右眼用画像のみを入射させ、3D映像表示を観察することができる映像表示システムを得ることができる。
このような映像表示システムについては、米国特許5,327,285号公報に記載がある。また、偏光眼鏡については、特開平10−232365に例が記載されている。
また、市販の映像表示システムの内、パターン位相差フィルムを剥がして、本発明の光学フィルムと差し替えてもよい。
本発明において、好ましい映像表示システムとしては、下記の液晶表示装置が挙げられる。即ち、該液晶表示装置は、少なくとも一方に電極を有し対向配置された一対の基板と、該一対の基板間の液晶層と、該液晶層を挟んで配置され、偏光膜と該偏光膜の少なくとも外側の面に設けられた保護膜とを有し、光源側に配置される第一偏光板と、視認側に配置される第二偏光板とを有し、更に、第二偏光板の視認側に、偏光膜と少なくとも一枚の保護膜とを有する第三偏光板を通じて画像を視認する液晶表示装置であって、第二偏光板として、本発明の積層体を有する偏光板を用いた液晶表示装置である。本発明の積層体は温度変化に伴う寸法変化の小さい支持体を用いているので、経時後もクロストークのない良好な3D表示性能を得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
(アセチル置換度)
セルロースアシレートのアセチル置換度については以下の方法で測定した。
アセチル置換度は、ASTM D−817−91に準じて測定した。粘度平均重合度は宇田らの極限粘度法{宇田和夫、斉藤秀夫、「繊維学会誌」、第18巻第1号、105〜120頁(1962年)}により測定した。
1.位相差フィルムの作製
(フィルム1の準備)
(1)中間層用ドープ1の調製
下記組成の中間層用ドープ1を調製した。
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ドープ1の組成
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・セルロースアセテート 100質量部
(アセチル化度2.86、数平均分子量88000)
・メチレンクロライド(第1溶媒) 320質量部
・メタノール(第2溶媒) 83質量部
・1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
・トリフェニルフォスフェート 7.6質量部
・ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.8質量部
具体的には、以下の方法で調製した。
攪拌羽根を有する4000Lのステンレス性溶解タンクに、上記混合溶媒をよく攪拌・分散しつつ、セルロースアセテート粉体(フレーク)、トリフェニルフォスフェート及びビフェニルジフェニルフォスフェートを徐々に添加し、全体が2000kgになるように調製した。なお、溶媒は、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。まず、セルロースアセテートの粉末は、分散タンクに粉体を投入して、攪拌剪断速度を最初は5m/sec(剪断応力5×10kgf/m/sec)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および、中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×10kgf/m/sec)で攪拌する条件下で30分間分散した。分散の開始温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、セルロースアセテートフレークを膨潤させた。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。またドープ中の水分量は0.5質量%以下であることを確認し、具体的には0.3質量%であった。
膨潤した溶液をタンクからジャケット付配管で50℃まで加熱し、更に2MPaの加圧化で90℃まで加熱し、完全溶解した。加熱時間は15分であった。
次に36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を通過させドープを得た。この際、濾過1次圧は1.5MPa、2次圧は1.2MPaとした。高温にさらされるフィルター、ハウジング、及び配管はハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有する物を使用した。
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧のタンク内でフラッシュさせて、蒸発した溶剤を凝縮器で回収分離した。フラッシュ後のドープの固形分濃度は、21.8質量%となった。なお、凝縮された溶剤は調製工程の溶剤として再利用すべく回収工程に回された(回収は蒸留工程と脱水工程などにより実施されるものである)。フラッシュタンクには中心軸にアンカー翼を有するものを用いて、周速0.5m/secで攪拌して脱泡を行った。タンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内の平均滞留時間は50分であった。このドープを採集して25℃で測定した剪断粘度は剪断速度10(sec−1)で450(Pa・s)であった。
次に、このドープに弱い超音波照射することで泡抜きを行った。その後、1.5MPaに加圧した状態で、最初に公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルターを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルターを通過させた。それぞれの一次圧は、1.5、1.2MPaであり、二次圧は1.0、0.8MPaであった。濾過後のドープ温度は、36℃に調整して2000Lのステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有するものを用いて、周速0.3m/secで常時攪拌することで、中間層用ドープ1を得た。なお、濃縮前ドープからドープを調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
続いてストックタンク内のドープ1を1次増圧用のギアポンプで高精度ギアポンプの1次側圧力が0.8MPaになるようにインバーターモーターによりフィードバック制御を行い送液した。高精度ギアポンプは容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であった。また、吐出圧力は1.5MPaであった。
(2)支持体層用ドープ2の調製
マット剤(二酸化ケイ素(粒径20nm))と剥離促進剤(クエン酸エチルエステル(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチルエステル混合物))と前記中間層用ドープ1を、静止型混合器を介して混合させて支持体層用ドープ2を調製した。添加量は、全固形分濃度が20.5質量%,マット剤濃度が0.05質量%,剥離促進剤濃度が0.03質量%となるように行った。
(3)エアー層用ドープ3の調製
マット剤(二酸化ケイ素(粒径20nm))を静止型混合器を介して前記中間層用ドープ1に混合させて、エアー層用ドープ3を調製した。添加量は、全固形分濃度が20.5質量%,マット剤濃度が0.1質量%となるように行った。
(4)共流延による製膜
流延ダイとして、共流延用に調整したフィードブロックを装備して、主流のほかに両面にそれぞれ積層して3層構造のフィルムを成形できるようにした装置を用いた。以下の説明において、主流から形成される層を中間層と称し、支持体面側の層を支持体層と称し、反対側の面をエアー層と称する。なお、ドープの送液流路は、中間層用、支持体層用、エアー層用の3流路を用いた。
上記中間層用ドープ、支持体層用ドープ2、及びエアー層用ドープ3を流延口から−5℃に冷却したドラム上に共流延した。このとき、厚みの比がエアー層/中間層/支持体層=4/73/3となるように各ドープの流量を調整した。流延したドープ膜をドラム上で34℃の乾燥風を230m/分で当てることにより乾燥させ、残留溶剤が150%の状態でドラムより剥離した。剥離の際、搬送方向(長手方向)に8%の延伸を行った。その後、フィルムの幅方向(流延方向に対して直交する方向)の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で把持しながら、幅手方向に10%の延伸処理を行った。さらに、熱処理装置のロール間を搬送することによりさらに乾燥し、フィルム1を製造した。作製したセルロースアシレートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、厚みは80μmであった。
(フィルム2の準備)
フィルム1の製膜時において、製膜後のフィルムの厚みが60μm、ドラム上での乾燥風が200m/分となるように調整した以外はフィルム1と同様に製膜を行ってフィルム2を作製した。
(フィルム3の準備)
フィルム2の製膜時において、ドラム上での乾燥風が260m/分となるように調整した以外はフィルム2と同様に製膜を行ってフィルム3を作製した。
(フィルム4の準備)
フィルム2の製膜時において、ドラム上での乾燥風が250m/分、製膜後のフィルムの厚みが66μm、ピンテンター把持時の幅手方向の延伸倍率を0%とした以外はフィルム2と条件は変えず、未延伸フィルムを作製した。前記未延伸フィルムの幅手方向をテンタークリップで把持し、175℃に加熱した上で幅手方向に10%の延伸を実施して、厚みが60μmのフィルム4を作製した。
(フィルム5の準備)
フィルム3の製膜時において、ピンテンター把持時の幅手方向の延伸倍率を20%となるように調整した以外はフィルム3と同様に製膜を行ってフィルム5を作製した。
(フィルム6の準備)
フィルム2の製膜時において、製膜後のフィルムの厚みが40μmとなるように調整した以外はフィルム2と同様に製膜を行ってフィルム6を作製した。
(フィルム7の準備)
フィルム1の製膜時において、搬送方向への延伸を3%、製膜後のフィルムの厚みが25μmとなるように調整した以外はフィルム1と同様に製膜を行ってフィルム7を作製した。
(フィルム8の準備)
(エア層用セルロースエステル溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、エア層用セルロースエステル溶液を調製した。
エア層用セルロースエステル溶液の組成
・セルロースエステル(アセチル置換度2.86) 100質量部
・式(I)の糖エステル化合物 3質量部
・式(II)の糖エステル化合物 1質量部
・紫外線吸収剤 2.4重量部
・シリカ粒子分散液(平均粒径16nm) “AEROSIL R972”、日本アエロジル(株)製
0.026質量部
・メチレンクロライド 339質量部
・メタノール 74質量部
・ブタノール 3質量部
式(I)
Figure 2014121790
式(II)
Figure 2014121790
紫外線吸収剤
Figure 2014121790
(ドラム層用セルロースエステル溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、ドラム層用セルロースエステル溶液を調製した。
ドラム層用セルロースエステル溶液の組成
・セルロースエステル(アセチル置換度2.86) 100質量部
・式(I)の糖エステル化合物 3質量部
・式(II)の糖エステル化合物 1質量部
・紫外線吸収剤 2.4重量部
・シリカ粒子分散液(平均粒径16nm) “AEROSIL R972”、日本アエロジル(株)製
0.091質量部
・メチレンクロライド 339質量部
・メタノール 74質量部
・ブタノール 3質量部
(コア層用セルロースエステル溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、コア層用セルロースエステル溶液を調製した。
コア層用セルロースエステル溶液の組成
・セルロースエステル(アセチル置換度2.86) 100質量部
・式(I)の糖エステル化合物 8.3質量部
・式(II)の糖エステル化合物 2.8質量部
・紫外線吸収剤 2.4重量部
・メチレンクロライド 266質量部
・メタノール 58質量部
・ブタノール 2.6質量部
(共流延による製膜)
流延ダイとして、共流延用に調整したフィードブロックを装備して、3層構造のフィルムを成形できるようにした装置を用いた。上記エア層用セルロースエステル溶液、コア層用セルロースエステル溶液、及びドラム層用セルロースエステル溶液を流延口から−7℃に冷却したドラム上に共流延した。このとき、厚みの比がエアー層/中間層/支持体層=7/90/3となるように各ドープの流量を調整した。
直径3mのドラムである鏡面ステンレス支持体上に流延した。ドラム上で34℃の乾燥風を200m/分で当てた。
そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースエステルフィルムをドラムから剥ぎ取った後、両端をピンテンターでクリップした。剥離の際、搬送方向(長手方向)に8%の延伸を行った。
ピンテンターで保持されたセルロースエステルウェブを乾燥ゾーンに搬送した。初めの乾燥では45℃の乾燥風を送風し、次に110℃で5分乾燥した。このとき、セルロースエステルウェブを幅手方向に倍率を10%で延伸しながら搬送した。
ピンテンターからウェブを離脱させたあと、ピンテンターで保持されていた部分を連続的に切り取り、ウェブの幅方向両端部に15mmの幅で10μmの高さの凹凸をつけた。このときのウェブの幅は1610mmであった。搬送方向に210Nのテンションをかけながら140℃で10分乾燥した。さらに、ウェブが所望の幅になるように幅方向端部を連続的に切り取り、膜厚60μmのフィルム8を作製した。このとき、140℃乾燥後に切り取られる幅方向端部とウェブ中央部の膜厚は同じであった。
(フィルム9の準備)
フィルム8の製膜時において、ドラム上での乾燥風が300m/分となるように調整した以外はフィルム8と同様に製膜を行ってフィルム9を作製した。
(フィルム10の準備)
フィルム8の製膜時において、ドラム上での乾燥風が250m/分、製膜後のフィルムの厚みが66μm、ピンテンター把持時の幅手方向の延伸倍率を0%とした以外はフィルム8と条件は変えず、未延伸フィルムを作製した。前記未延伸フィルムの幅手方向をテンタークリップで把持し、195℃に加熱した上で幅手方向に10%の延伸を実施して、厚みが60μmのフィルム10を作製した。
(フィルム11の準備)
フィルム8の製膜時において、ピンテンター把持時の幅手方向の延伸倍率を20%、ドラム上での乾燥風が300m/分となるように調整した以外はフィルム8と同様に製膜を行ってフィルム11を作製した。
(フィルム12の準備)
フィルム9の製膜時において、ウェブ搬送時のテンションを130Nとした以外はフィルム9と同様に製膜を行ってフィルム12を作製した。
(フィルム13の準備)
フィルム12の製膜時において、エア層用ドープとして以下の代替セルロースエステル溶液を使用した以外はフィルム12と同様に製膜を行ってフィルム13を作製した。
(代替用セルロースエステル溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、エア層用セルロースエステル溶液を調製した。
エア層用セルロースエステル溶液の組成
・セルロースエステル(アセチル置換度2.86) 100質量部
・式(I)の糖エステル化合物 3質量部
・式(II)の糖エステル化合物 1質量部
・紫外線吸収剤 2.4重量部
・シリカ粒子分散液(平均粒径16nm) “AEROSIL R972”、日本アエロジル(株)製
0.026質量部
・メチレンクロライド 377質量部
・メタノール 61質量部
・ブタノール 2.6質量部
(フィルム14の準備)
フィルム13の製膜時において、140℃乾燥後に切り取られる幅方向端部の平均厚みをウェブ中央部に比べて6μm厚くなるように調整した以外はフィルム13と同様に製膜を行ってフィルム14を作製した。
(フィルム15の準備)
フィルム13の製膜時において、140℃乾燥時のウェブ幅が1650mmとなるように調整した以外はフィルム13と同様に製膜を行ってフィルム15を作製した。
(フィルム16の準備)
フィルム13の製膜時において、110℃乾燥後にウェブ端部につける凹凸の高さを30μmに調整した以外はフィルム13と同様に製膜を行ってフィルム16を作製した。
(フィルム21の準備)
フィルム1の製膜時において、搬送方向への延伸を15%、ピンテンター把持時の幅手方向の延伸倍率を0%、ドラム上での乾燥風が150m/分となるように調整した以外はフィルム1と同様に製膜を行ってフィルム21を作製した。
(フィルム22の準備)
フィルム1の製膜時において、ドラム上での乾燥風が150m/分となるように調整した以外はフィルム1と同様に製膜を行ってフィルム22を作製した。
(フィルム23の準備)
フィルム2の製膜時において、搬送方向への延伸を15%、ピンテンター把持時の幅手方向の延伸倍率を0%、ドラム上での乾燥風が150m/分となるように調整した以外はフィルム2と同様に製膜を行ってフィルム23を作製した。
(フィルム24の準備)
フィルム23の製膜時において、ドラム上での乾燥風が200m/分となるように調整した以外はフィルム23と同様に製膜を行ってフィルム24を作製した。
(フィルム25の準備)
フィルム2の製膜時において、ドラム上での乾燥風が150m/分となるように調整した以外はフィルム2と同様に製膜を行ってフィルム25を作製した。
(フィルム26の準備)
フィルム6の製膜時において、搬送方向への延伸を15%、ピンテンター把持時の幅手方向の延伸倍率を0%、ドラム上での乾燥風が140m/分となるように調整した以外はフィルム6と同様に製膜を行ってフィルム26を作製した。
(フィルム27の準備)
フィルム6の製膜時において、ドラム上での乾燥風が140m/分となるように調整した以外はフィルム6と同様に製膜を行ってフィルム27を作製した。
(フィルム28の準備)
フィルム7の製膜時において、搬送方向への延伸を11%、ピンテンター把持時の幅手方向の延伸倍率を0%、ドラム上での乾燥風が120m/分となるように調整した以外はフィルム7と同様に製膜を行ってフィルム28を作製した。
(フィルム29の準備)
フィルム7の製膜時において、ドラム上での乾燥風が120m/分となるように調整した以外はフィルム7と同様に製膜を行ってフィルム29を作製した。
(フィルム30の準備)
フィルム8の製膜時において、搬送方向への延伸を11%、ピンテンター把持時の幅手方向の延伸倍率を0%、ドラム上での乾燥風が150m/分となるように調整した以外はフィルム8と同様に製膜を行ってフィルム30を作製した。
(フィルム31の準備)
フィルム8の製膜時において、搬送方向への延伸を11%、ピンテンター把持時の幅手方向の延伸倍率を0%となるように調整した以外はフィルム8と同様に製膜を行ってフィルム31を作製した。
(フィルム32の準備)
フィルム8の製膜時において、ドラム上での乾燥風が150m/分となるように調整した以外はフィルム8と同様に製膜を行ってフィルム32を作製した。
上記のように作製したフィルム1〜16、21〜32について、フィルムの性能を下記表1に示す。
なお、実施例として挙げているフィルム1〜16についてTD方向湿度寸法変化率の幅方向ばらつきを測定したところいずれのフィルムも10%以下を満たしていた。
(湿度寸法変化率)
フィルムの幅手方向を測定方向として、該測定方向に12cmの長さで、幅3cmのフィルム試料を切り出す。該試料に測定方向に沿って10cmの間隔でピン孔を空け、25℃、相対湿度10%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長した(測定値をL0とする)。次いで、試料を25℃、相対湿度80%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長した(測定値をL1とする)。これらの測定値を用いて下記式により湿度寸法変化率を算出した。
湿度寸法変化率[%]=(L1−L0)×100/L0
[可塑剤表面存在比率]
ナイフを用いてフィルムの両方の表面からそれぞれ10μm削りとり、質量を測定した後、これをアセトン中に溶解し、ここに含まれる可塑剤量をガスクロマトグラフィーにて定量分析を行なった。得られた結果から下記式を用いてフィルム表面の可塑剤比率を算出した。
フィルム表面の可塑剤比率=(空気界面側表面の可塑剤量)/(流延支持体側表面の可塑剤含有量)
なお、セルロースアシレートフィルムの空気界面側表面には硬化樹脂層を塗設し、流延支持体側表面には親水性樹脂層を塗設する。
Figure 2014121790
ハードコート層塗布液1の調製
ハードコート層塗布液1は固形分濃度55質量%であり、モノマーとUV開始剤は53.5/1.5の質量比となるようにしている。また、モノマーとして日本化薬(株)のPET30を用い、溶媒として酢酸エチルを用いた。UV開始剤としてはチバジャパン(株)のIRGACURE127を使用した。
ハードコート層の塗設
上記で得られたフィルム1〜16、21〜32に対し、硬化樹脂層であるハードコート層の塗設を以下の態様で行った。ハードコート層塗布液の塗布条件は番手8のバーコーターによる手塗布後、100℃で60秒乾燥し窒素0.1%以下の条件で紫外線)を1.5kWのメタルハライドランプで300mJにて照射し硬化させた。硬化後のハードコート硬度はいずれのサンプルも3H以上の硬度であった。
なお、セルロースアシレートフィルムの空気界面側表面に硬化樹脂層1を塗設した。
((a)イオン伝導性化合物IP−15の合成)
特許第4600605号公報の合成例2と同様に実施し、該特許文献の(A−2)に対応する化合物として、エチレンオキサイド鎖を有する4級アンモニウム塩基含有ポリマーであるIP−15(30質量%エタノール溶液)を合成した。
((a)イオン伝導性化合物IP−16の合成)
特許第4678451号公報の合成例5と同様に実施し、該特許文献の(A−5)に対応する化合物として、エチレンオキサイド鎖を有する4級アンモニウム塩基含有ポリマーであるIP−16(30質量%エタノール溶液)を合成した。
((a)イオン伝導性化合物IP−17の合成)
反応時間を70℃6時間に変更した以外は、特許第4678451号公報の合成例6と同様に実施し、該特許文献の(A−6)に対応する化合物として、エチレンオキサイド鎖を有する4級アンモニウム塩基含有ポリマーであるIP−17(30質量%エタノール溶液)を合成した。GPCで測定した重量平均分子量は、約6万であった。
((a)イオン伝導性化合物IP−18の合成)
反応時間を70℃6時間に変更した以外は、特許第4678451号公報の合成例7と同様に実施し、該特許文献の(A−7)に対応する化合物として、エチレンオキサイド鎖を有する4級アンモニウム塩基含有ポリマーであるIP−18(30質量%エタノール溶液)を合成した。GPCで測定した重量平均分子量は、約6万であった。
(帯電防止性ハードコート層用塗布液の調製)
下記表2に記載の帯電防止性ハードコート層用塗布液A−1の組成となるように各成分を添加し、得られた組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して帯電防止性ハードコート層塗布液A−1とした。
帯電防止性ハードコート層用塗布液A−1と同様の方法で、各成分を下記表2のように混合して溶剤に溶解して表2記載の組成比率になるように調整し、帯電防止性ハードコート層用塗布液A−2〜A−4を作製した。
Figure 2014121790
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
A−TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)NKエステル)
ADTMP:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(新中村化学工業(株)NKエステル)
Irg.127:光重合開始剤、イルガキュア127(チバ・ジャパン(株)製)
Figure 2014121790
Figure 2014121790
Figure 2014121790
Figure 2014121790
Figure 2014121790
なお、実施例で使用した導電性ポリマーであるIP−15、IP−16、IP−17、及びIP−18の重量平均分子量はいずれも2万〜50万の範囲内であることを確認した。
帯電防止性ハードコート層の作製
上記に示す通りに、帯電防止性ハードコート層用塗布液A−1〜A−4を調製し、下記表3に従い上記で得られたフィルム13〜16にそれぞれ帯電防止性ハードコート層A−1〜A−4を形成して、ハードコート層付きフィルムNo.41〜44を作製した。帯電防止性ハードコート層用塗布液の塗布条件は番手11のバーコーターによる手塗布後、60℃で60秒乾燥し、窒素0.1%以下の条件で紫外線を160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400W/照度400mW/cm、照射量60mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ約10μmの帯電防止性ハードコート層が積層されたハードコート付きフィルムを作製した。
硬化後のハードコート硬度はいずれのサンプルも3H以上の硬度であった。
なお、セルロースアシレートフィルムの空気界面側表面に帯電防止性ハードコート層を塗設した。
Figure 2014121790
〔反射防止フィルムの作製〕
(パーフルオロオレフィン共重合体P−1の合成)
特開2010−152311号公報に記載のパーフルオロオレフィン共重合体(1)と同様の方法で、パーフルオロオレフィン共重合体P−1を調製した。得られたポリマーの屈折率は1.422であった。
Figure 2014121790
上記構造式中、50:50はモル比を表す。
(中空シリカ分散液A−1の調製)
特開2007−298974号公報に記載の分散液A−1と同様の方法を用いて条件を調整し、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ粒子の屈折率1.31の中空シリカ粒子分散液A−1(固形分濃度18.2質量%)を調製した。
(低屈折率層形成用組成物A−1の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、低屈折率層形成用組成物A−1(固形分濃度5質量%)とした。
パーフルオロオレフィン共重合体P−1 14.8質量部
エチルメチルケトン 157.7質量部
DPHA 3.0質量部
中空シリカ粒子分散液A−1 21.2質量部
イルガキュア127 1.3質量部
X22−164C 2.1質量部
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・ DPHA : ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
・ X22−164C : 反応性シリコーン(信越化学(株)製)
・ イルガキュア127 : 光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製)
(低屈折率層の作製)
作製したハードコート付きフィルムNo.41のハードコート層上に低屈折率層形成用組成物A−1をグラビアコーターを用いて塗布し、反射防止機能の付いたハードコート付きフィルムNo.51を得た。乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm、照射量600mJ/cmの照射量とした。低屈折率層の膜厚は95nmとした。
同様に、反射防止機能の付いたハードコート付きフィルムNo.42〜No.44に対しても低屈折率層形成用組成物A-1を塗布し、反射防止フィルム試料No.52〜No.54を得た。
(ハードコート密着性評価)
光照射後の密着性評価を、下記の方法で行った。
JIS K 5600に準処した碁盤目試験を行った。具体的には紫外線硬化後のハードコート層付きフィルムのハードコート層表面上に1mm間隔で縦横に11本の切れ込みを入れて1mm角の碁盤目を100個作った。この上に透明感圧付着テープ(セロテープ(登録商標 ニチバン(株)製)CT405AP−12)を貼り付け、素早く剥がし剥がれた箇所を目視観察により密着評価した。サンプルは密着評価前に温度25℃湿度60%の部屋で2時間以上調湿した後に評価した。
Xeを150W/m、48時間照射後に密着評価した結果を表4に示す。
密着性 A:剥がれ箇所0〜10マス
密着性 B:剥がれ箇所11〜49マス
密着性 C:剥がれ箇所50マス〜99マス
密着性 D:剥がれ箇所100マス以上(テープを貼った部分全部)
Xeの照射にはスガ試験機株式会社製のスーパーキセノンウェザーメーターSX75を用いた。
[位相差フィルムの作製]
特開2009−223001号公報の実施例1の「部位2」及び「部位5」を参考に、Re=137.5nmで、遅相軸の向きがパターンの長辺の方向に対して45度の部位(第1領域)と135度の部位(第2領域)とが300μm周期で繰り返しとなるようにパターニングされたパターン位相差層Aを塗布によりガラス基板上に作製した。上記で作製したハードコート層付きセルロースアシレートフィルムのハードコート層と逆側の面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水/メタノール溶液(PVA103(4.0g)を水72g及びメタノール24gに溶解させた、粘度4.35cp、表面張力44.8dyne)を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させ成膜した。
前記セルロースアシレートフィルムのPVA塗布面にパターン位相差層Aを転写して、位相差フィルム1〜16、21〜26、41〜44、51〜54を作成した。フィルムとハードコート層付きフィルムと位相差フィルムの対応を表3にまとめた。
位相差フィルム1〜16、21〜32、41〜44、51〜54について以下の評価を行った。
(3Dディスプレイの作製)
LW5700(LG製)のフロント偏光板の視認側に粘着剤で貼合されている位相差フィルムをはがし、代わりに位相差フィルム1〜16、21〜32、41〜44、51〜54を、位相差領域の長手方向が水平方向となり、ハードコート層が視認側となるように貼合した。
(クロストークの評価)
上記で作製した3Dディスプレイを48時間連続点灯後、右目用画素は白、左目用画素は黒のパターンを表示させ、目の位置に分光放射輝度計(SR−3 トプコン製)をおき、右目用/左目用の円偏光メガネをそれぞれ通して、輝度を測定した。
右目用円偏光メガネを通した時の輝度をYRR、左目用円偏光メガネを通した時の輝度をYRLとする。
右目用画像が左目に、左目用画像が右目に入ると3D感が失われるため、クロストーク度合いをCRO=(YRR−YRL)/(YRR+YRL)と定義し、評価した。点灯直後のCROをCRO_0、48時間点灯後のCROをCRO_48とし、連続点灯時の表示性能について100×CRO_48/CRO_0の値に基づき以下の基準で評価した。
A:95%以上
B:95%未満から92.5%以上
C:92.5%未満から90%以上
D:90%未満
許容される評価値としては「A」が最も好ましく、「B」が次に好ましく、「C」がその次に好ましい。「D」は改善が必要であり、許容されない評価値である。
結果を下記表4に示す。表4の結果から本発明のセルロースエステルフィルムを用いた位相差フィルムが3Dディスプレイの連続点灯におけるクロストークに効果があることが明確になった。これは、セルロースエステルフィルムの経時での寸法変化が抑制されたためと考えられる。
なお、位相差フィルム3を湿度寸法変化率の測定環境下に放置してその変化を観察したところ、位相差フィルムの変形(カール)の発生は実用上の許容される程度であり、視認性においても変化がなかった。
同様に、前述のフィルム3及びハードコート層付きフィルム3を、VAモード用偏光板において液晶セルの反対側に設ける保護フィルムとしてVA用位相差フィルム(特開2012−108452号公報のフィルム8)と組み合わせて使用したところ、吸収軸と直交する方向の偏光板のカールが低減し位相差フィルムと同様に抑制され、本発明のセルロースエステルフィルムは偏光板保護フィルム用途としても良好な結果が得られたることが分かった。
Figure 2014121790
1 硬化樹脂層
2 セルロースエステルフィルム
3 親水性樹脂層
4 液晶性化合物の配向状態を固定してなる層
41 帯状の第一位相差領域
42 帯状の第二位相差領域
10 積層体
A 帯状の位相差領域が配置される方向に対して直交する方向

Claims (12)

  1. 硬化樹脂層、セルロースエステルフィルム、及び親水性樹脂層をこの順に有する積層体であって、
    前記セルロースエステルフィルムは、可塑剤を含有し、前記硬化樹脂層側表面の可塑剤濃度が、前記親水性樹脂層側の可塑剤濃度の95質量%以下であり、
    前記セルロースエステルフィルムは、25℃、相対湿度10%において24時間経時させた後を基準として、25℃、相対湿度80%において24時間経時させた後の任意の一辺に対して直行方向及び平行方向の少なくとも一方の寸法変化率が0.40%以下である、積層体。
  2. 前記親水性樹脂がポリビニルアルコールを含んでなる請求項1に記載の積層体。
  3. 前記親水性樹脂層の前記セルロースエステルフィルムを有する面とは反対の面上に、液晶性化合物の配向状態を固定してなる層を有する請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記液晶性化合物の配向状態を固定してなる層は複数の位相差値を有する請求項3に記載の積層体。
  5. 前記液晶性化合物の配向状態を固定してなる層は2種類の位相差値を有する帯状の領域が面内で交互に配置される請求項4に記載の積層体。
  6. 前記帯状の領域が交互に配置される方向に対して直交する方向の寸法変化率が0.40%以下である請求項5に記載の積層体。
  7. 前記硬化樹脂層は、熱又は光によって硬化する材料から形成された層である請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層体。
  8. 前記硬化樹脂層は、ハードコート層、防眩層、及び反射防止層の少なくともいずれか1種である請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体。
  9. 一方の表面側の可塑剤濃度が他方の表面側の可塑剤濃度の95%以下であり、25℃、相対湿度10%において24時間経時させた後を基準として、25℃、相対湿度80%において24時間経時させた後の任意の一辺に対して直行方向及び平行方向の少なくとも一方の寸法変化率が0.40%以下であるセルロースエステルフィルム。
  10. セルロースアシレートを有機溶媒に溶解してドープを調製する工程、ドープを0℃以下に冷却した流延支持体上に流延する溶液流延製膜工程、及び流延方向と直交する方向にセルロースアシレートを配向させる工程を少なくとも有し、流延工程で表面の可塑剤を揮散させて流延支持体面側と空気界面側の可塑剤量を変化させる、請求項9に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  11. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層体、又は請求項9に記載のセルロースエステルフィルムを有する偏光板。
  12. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層体、請求項9に記載のセルロースエステルフィルム、又は請求項11の偏光板を有する液晶表示装置。
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