JP2014118585A - ルテニウム含有アルカリ水溶液からのルテニウム回収方法 - Google Patents

ルテニウム含有アルカリ水溶液からのルテニウム回収方法 Download PDF

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将宗 大久保
Kenji Takeda
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Abstract

【課題】 ルテニウムを含有するアルカリ水溶液からルテニウムを分離回収する際に、危険物であって揮発性が高く、人体への有害性が強いメタノールやエタノールを使用することなく、簡単な操作で且つ経済的に、しかも高い回収率でルテニウムを分離回収する方法を提供する。
【解決手段】 ルテニウムを含有するアルカリ水溶液からルテニウムを分離回収する際に、液温を40℃以上60℃以下に保持したルテニウム含有アルカリ水溶液に還元剤として亜硫酸ナトリウムを添加することにより、ルテニウムを水酸化物の沈殿として分離回収する。40℃以上の液温においてルテニウムの回収率が99.90%以上となり、メタノールやエタノールでの還元よりも高いルテニウム回収率が得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ルテニウム(Ru)を含有するアルカリ水溶液から、ルテニウムを極めて高い収率で沈殿として分離回収する方法に関する。
従来から、ニッケルや銅の精錬工程で得られる貴金属濃縮物、あるいはリサイクルされたルテニウム含有廃棄物等から、ルテニウムを回収することが行われている。上記原料からルテニウムを分離精製する方法としては、主として酸化蒸留法が採用されており、一部において溶媒抽出法も利用されている。
酸化蒸留法は、ルテニウムをハロゲン等の強酸化剤を用いて酸化することにより、揮発性の酸化ルテニウム(VIII);RuOを生成させ、液を加熱してルテニウムを気体として分離し、吸収剤に捕集する方法である。しかし、酸化ルテニウム(VIII)は化学的に不安定であるため自己分解により爆発する恐れがあり、また強力な酸化作用があるため気体回収装置に高度の耐食性が不可欠であった。
一方、溶媒抽出法は、水相中のルテニウム化合物をペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸に変換した後、トリブチルフォスフェイトにより抽出する方法である。しかし、ルテニウム化合物をペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸に変換する方法として各種の方法が知られているが、操作が面倒であるうえ、経済的に不利であるなどの問題があった。
このような問題を解決する方法として、特許文献1には、ルテニウム含有原料を水酸化アルカリと混合した後、酸化剤として次亜塩素酸塩を添加してルテニウムを選択的に浸出し、その浸出液に還元剤としてメタノール又はエタノールを添加することにより、ルテニウムを水酸化物の沈殿として分離回収する方法が記載されている。
特許3733909号公報
上記特許文献1に記載されている方法は、ニッケルや銅の精錬工程で得られる貴金属濃縮物あるいはリサイクルされたルテニウム含有廃棄物等の原料から、ルテニウム化合物をアルカリ性にて酸化浸出し、得られたアルカリ水溶液からルテニウムをメタノール又はエタノールで還元する方法であり、簡単な操作で経済的にルテニウムを分離精製することができる。
しかしながら、ルテニウムを含有するアルカリ水溶液からルテニウムをメタノール又はエタノールで還元する場合、還元剤として用いるメタノール又はエタノールが危険物であって揮発性が高く、人体への有害性が強いという問題がある。そのため、アルカリ水溶液からルテニウムを還元分離する際には、作業雰囲気、薬品の保管及び取り扱い等に厳重に注意する必要があった。
本発明は、このような従来の事情に鑑み、ルテニウムを含有するアルカリ水溶液からルテニウムを還元して分離回収するに際して、危険物であって揮発性が高く、人体への有害性が強いメタノールやエタノールを使用することなく、簡単な操作で且つ経済的に、しかも高い回収率でルテニウムを分離回収する方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明が提供するルテニウムの分離回収方法は、ルテニウムを含有するアルカリ水溶液からルテニウムを分離回収する方法であって、液温を40℃以上60℃以下に保持したルテニウム含有アルカリ水溶液に亜硫酸ナトリウムを添加して還元することにより、ルテニウムを水酸化物の沈殿として分離回収することを特徴とする。
本発明によれば、危険物であって揮発性が高く、人体への有害性が強いメタノール及びエタノールを使用することなく、簡単な操作により安全に、しかもメタノールやエタノールを用いる場合に比べて高い収率で且つ経済的に、ルテニウムを含有するアルカリ水溶液からルテニウムを分離回収することができる。
本発明の実施例及び比較例におけるRu回収率と液温の関係を示すグラフである。実施例でのRu回収率はプロットで示し、比較例でのRu回収率は太線で示した。
本発明が出発原料とするルテニウム含有アルカリ水溶液は、特に限定されるものではなく、ルテニウムを含有するアルカリ水溶液であればよい。代表的な出発原料としては、例えば上記特許文献1に記載の浸出方法により、ニッケルや銅の精錬工程で得られる貴金属濃縮物あるいはリサイクルされたルテニウム含有廃棄物等を、水酸化アルカリと混合した後、次亜塩素酸塩などの酸化剤を添加してルテニウムを浸出した浸出液などがある。
本発明においては、出発原料であるルテニウム含有アルカリ水溶液に、還元剤として亜硫酸ナトリウムを添加して還元することにより、ルテニウムを水酸化物の沈殿として分離回収する。亜硫酸ナトリウムを還元剤として用いることによって、還元反応が緩慢に進むため、高位酸化物の形態で溶解しているルテニウム以外のイオンの還元沈殿を抑制することができる。
加えて、本発明では、還元の際にルテニウム含有アルカリ水溶液を積極的に加熱して、その液温を40℃以上60℃以下に管理することが重要である。室温(加熱が無い状態)のルテニウム含有アルカリ水溶液に亜硫酸ナトリウムを添加しても、ルテニウム水酸化物の回収率は97%付近と極めて悪い。還元時の液温が高いほど亜硫酸ナトリウムによる還元反応が促進され、40℃以上になると99.9%以上の極めて高い回収率でルテニウム水酸化物の沈殿を回収することができる。但し、液温が60℃を超えても回収率は100%近くで飽和するうえ、経済的な面で不利になるため、上限を60℃とした。
具体的な操作としては、ルテニウム含有アルカリ水溶液を加熱して40〜60℃の所定の液温に管理しながら、還元剤の亜硫酸ナトリウムを添加して撹拌混合する。還元反応の終点は酸化還元電位で管理し、例えば−50mV(Ag−AgCl電極)程度まで還元することが好ましい。還元反応の終了後に、得られた沈殿を分離してルテニウムの水酸化物を回収する。このようにして、メタノール又はエタノールを還元剤とする場合と同等又はそれ以上の回収率で、ルテニウムの水酸化物を沈殿として分離回収することができる。
沈殿として分離回収したルテニウムの水酸化物は、硝酸に難溶性であるのに対して、不純物として共存するベースメタル類の多くは硝酸に可溶性であることから、硝酸での洗浄処理によって精製することができる。また、ルテニウムの水酸化物を塩酸に溶解したルテニウム(IV)イオンのクロロ錯体は、アルカリ金属の一部やアンモニウム塩と反応して水に難溶性の塩を形成することを利用して、より一層の精製を行なうこともできる。
以下の実施例及び比較例により、本発明のルテニウム含有アルカリ水溶液からのルテニウムの分離回収方法を更に詳しく説明する。ルテニウム含有アルカリ水溶液としは、下記表1に示す組成のものを使用した。
Figure 2014118585
上記組成のルテニウム含有アルカリ水溶液150mlを反応容器に入れ、加熱なしでの17℃(室温状態)、並びに、加熱して30℃、40℃、50℃の液温にそれぞれ保持しながら、亜硫酸ナトリウムを添加混合することにより、酸化還元電位−50mV(Ag−AgCl電極)まで還元した。
得られた沈殿を濾過して回収すると共に、濾液200mlを得た。この濾液として得られたルテニウム還元後液を組成分析して、Ruの回収率を求めた。得られた結果を、液温及び還元剤である亜硫酸ナトリウムの添加量と共に、下記表2に示した。
Figure 2014118585
[比較例]
上記表1に示す組成のルテニウム含有アルカリ水溶液150mlを反応容器に入れ、18℃(加熱なしの室温状態)でメタノール2.1mlを添加混合することにより、酸化還元電位−50mV(Ag−AgCl電極)まで還元した。
得られた沈殿を濾過して回収すると共に、濾液200mlを得た。この濾液として得られたルテニウム還元後液を組成分析して、Ruの回収率を求めた。得られた結果を、液温及び還元剤であるメタノールの添加量と共に、下記表3に示した。
Figure 2014118585
上記実施例で得られた表2に示す試料1〜4のRu回収率、及び比較例で得られた表3に示す試料5のRu回収率を、それぞれ図1に図示した。尚、実施例で得られた試料1〜4のRu回収率はプロットで示し、比較例で得られた試料5のRu回収率は、液温による変動がほとんどないことが確認されたため、一定値として太線で示した。
本発明における亜硫酸ナトリウムでの還元によるルテニウム回収率は、図1から液温40℃以上においてメタノールでの還元によるルテニウム回収率を上回ることが分かる。また、亜硫酸ナトリウムでの還元によるルテニウム回収率は液温50℃でほぼ100%となり、それ以上の液温、例えば60℃を超える液温に加熱しても回収率を上げることはできなかった。
また、実施例における液温40℃での還元に要した亜硫酸ナトリウム量と比較例での還元に要したメタノール量を比較すると、亜硫酸ナトリウムの0.36gに対してメタノールは2.1mlであることから、一般的な亜硫酸ナトリウムの重量当たり単価とメタノールの容量当たりの単価を考慮すると、還元に要するコストは亜硫酸ナトリウムがメタノールの約1/3〜1/2となり、亜硫酸ナトリウムでの還元の方が有利であることが分かる。

Claims (1)

  1. ルテニウムを含有するアルカリ水溶液からルテニウムを分離回収する方法であって、液温を40℃以上60℃以下に保持したルテニウム含有アルカリ水溶液に亜硫酸ナトリウムを添加して還元することにより、ルテニウムを水酸化物の沈殿として分離回収することを特徴とするルテニウムの分離回収方法。
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Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005097695A (ja) * 2003-09-26 2005-04-14 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 白金族元素の相互分離方法
JP2011102418A (ja) * 2009-11-11 2011-05-26 Eco-System Recycling Co Ltd 白金とルテニウムとの分離方法

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