以下、本発明の畦塗り機の連続整畦作業方法の好ましい実施の形態について、図1〜図19を参照しながら説明する。先ず、本発明の畦塗り機の連続整畦作業方法を説明する前に、この方法を使用する畦塗り機について説明する。なお、図1に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。
畦塗り機1は、図1、図2、図3に示すように、走行機体90(図1参照)の後部に設けられた三点リンク連結機構(図示せず)に連結されて、走行機体90の前進走行に伴って進行する。
畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90から伝達される動力が入力される入力軸11a(図1参照)を備えた装着部10と、装着部10に設けられた第1オフセットシリンダ13によって装着部10に対して装着部幅方向(左右方向)に揺動可能な第1オフセット機構部20と、第1オフセット機構部20の移動端側(後端側)に設けられた第2オフセットシリンダ31(図2参照)によって第1オフセット機構部20の移動端側に対して左右方向に揺動可能な第2オフセット機構部30と、第2オフセット機構部30の移動端側に垂直方向に延びる回転駆動軸40(図3参照)を回動支点として水平方向に回動可能に配設されて入力軸11aから伝達される動力によってオフセット作業を行なう作業部50とを有してなる。
装着部10の左右方向の中央下部にはギアボックス11(図1参照)が設けられ、このギアボックス11に前述した入力軸11aが設けられている。入力軸11aは、走行機体90のPTO軸(図示せず)からの動力を図示しない伝動軸を介して伝達されるようになっている。
第1オフセット機構部20は、前端側が装着部10に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム22と、オフセットフレーム22の左側に沿って並設されて前端側が装着部10の左側に回動自在に連結された第1リンク部材23を有する。第1リンク部材23の後端側には、オフセットフレーム22の後端部との間に連結された連結アーム部材25が回動自在に取り付けられている。第1オフセットシリンダ13は、装着部10とオフセットフレーム22との間に接続されている。第1オフセット機構部20は、オフセットフレーム22、第1リンク部材23、装着部10及び連結アーム部材25によって平行リンク機構を形成している。
オフセットフレーム22は、前述した第1オフセットシリンダ13の伸縮により左右方向に揺動可能であり、オフセットフレーム22の装着部10側に設けられた伝動軸24b及びオフセットフレーム22に設けられた動力伝達機構24(図2参照)を介してオフセットフレーム22の後端側に配設された従動軸22aを回転駆動させるようになっている。この従動軸22aは略垂直方向へ延び、その上部には、動力伝達機構24の一部であるスプロケット24a(図2参照)が設けられている。
第2オフセット機構部30は、連結アーム部材25と一体的に接続されてオフセットフレーム22の下方に配置され連結アーム部材25と並んで左右方向に延びる第1リヤフレーム33と、前端部が第1リヤフレーム33の右側端部に回動自在に連結されて後方側へ延びるリヤアーム34(図2参照)と、リヤアーム34の左側に沿って並設されて前端側が第1リヤフレーム33の左側に回動自在に連結された第2リンク部材35と、第2リンク部材35の後端部とリヤアーム34の後端部との間に連結された第2リヤフレーム36とを有してなる。第2オフセット機構部30は、第1リヤフレーム33、リヤアーム34、第2リンク部材35及び第2リヤフレーム36によって平行リンク機構を形成している。
リヤアーム34は、図4に示すように、その後端部が動力伝達軸37aを内蔵する軸ケース上部37の周面に接続されている。動力伝達軸37aは、従動軸22aから伝達される動力を受けて回転する。軸ケース上部37は略垂直方向に延びてリヤアーム34の揺動とともに移動する。軸ケース上部37の下側には、前述した第2リヤフレーム36を接続する軸ケース下部38が軸ケース上部37に対して回動自在に保持されている。さらに軸ケース下部38の下側には、作業部50が接続された回転軸ケース39が回動自在に保持されている。
軸ケース上部37の周面の前側と第1リヤフレーム33との間には前述した第2オフセットシリンダ31(図2参照)が接続されている。この第2オフセットシリンダ31の伸縮によって第2オフセット機構部30が左右方向に揺動可能である。
軸ケース上部37に内蔵された動力伝達軸37aの下部には、作業部50の回動中心軸となる回転駆動軸40が動力伝達軸37aと同軸上に連結されている。回転駆動軸40の外側にはこれを覆う回転軸ケース39が設けられている。
リヤアーム34の上方には、リヤアーム34を補強する補強板42が設けられている。この補強板42は、オフセットフレーム22の後端側上部と軸ケース上部37の上方との間に接続されて、リヤアーム34の作業部50の支持を補強している。この補強板42のオフセットフレーム側の端部には前述した従動軸22aに接続されたスプロケット24aが設けられ、補強板42の軸ケース上部側の端部にもスプロケット37bが設けられ、これらのスプロケット24a、37b間に掛け回される図示しないチェーンを介して動力伝達軸37a及び回転駆動軸40への動力伝達が可能である。
軸ケース下部38は、その後側に第2リヤフレーム36が固着されている。第2リヤフレーム36は、図2に示すように、その右側端部が軸ケース下部38の後側周面に固着され、その左側が畦塗り機1の幅方向左側へ延びる。この第2リヤフレーム36の左側端部と第1リヤフレーム33との間に前述した第2リンク部材35が接続されている。軸ケース下部38の前側には、前方側へ突出する接続アーム38aが設けられ、この接続アーム38aに作業部50を回動させる方向シリンダ43の一端側が接続されている。方向シリンダ43の接続の詳細は後述する。
回転軸ケース39の下部には作業部50が接続されている。作業部50は、図4及び図5に示すように、進行方向前側から後側に向かって旧畦の天場を処理する天場処理部51と、旧畦の一部を切り崩して土盛り作業を行う前処理部53と、この前処理部53によって前方に盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付けて新しい畦を整畦する整畦部55とを備える。前処理部53及び整畦部55は回転軸ケース39の下部から延びる動力伝達ケース45に装着されている。回転駆動軸40に伝動された動力は、動力伝達ケース45内の動力伝達機構を介して天場処理部51、前処理部53、整畦部55に伝達される。
天場処理部51は、回転軸ケース39の上部に一端側が接続されて前側へ延びる支持フレーム46の先端部に上下位置調整機構47を介して上下方向に位置調整可能に支持されている。この支持フレーム46に前述した方向シリンダ43の他端側が接続されている。このため、第2オフセットシリンダ31の伸縮を規制した状態で方向シリンダ43を伸縮させると、作業部50を回動させることができる。
ここで、天場処理部51は、必要に応じて取り外してもよい。前処理部53はロータリ爪を駆動軸に装着したロータリ耕耘型の前処理機構である。また、整畦部55は、図3に示すように、畦の上面を成形する円筒ドラム55aと畦の側面を成形する円錐傘状ドラム55bからなる整畦ドラムである。
このような基本構成を備えた畦塗り機1は、第1オフセットシリンダ13及び第2オフセットシリンダ31が作業部50の作業位置を調整するための作業位置調整機構として機能し、方向シリンダ43が作業部50の作業方向を調整するための作業方向調整機構として機能する。
また、畦塗り機1には、作業部50の作業方向を検出する作業方向検出手段としての角度センサ58が装備されている。この角度センサ58は、第2オフセット機構部30に対する相対的な作業部50の方向変化を検出するものではなく、作業部50単独の圃場面に対する作業方向の変化を検出するものであり、例えば、ジャイロセンサ等を採用することができる。本実施例では、角度センサ58は第2オフセット機構部30の回転駆動軸40の周囲に配備されている。
また、作業部50には、この作業位置を検出する作業位置検出手段としての位置センサ60が装備されている。この位置センサ60は、図示省路の支持ケースから取付アーム61を介して整畦部55の円筒ドラム55aの後方に配備されている。
位置センサ60は、図6に示すように、回転軸の回転変位を検出するポテンショメータを内蔵し、この回転軸にセンサロッド60aの一端が固定されている。センサロッド60aは長さを調整することで感度調整が可能な棒状部材であって、その先端に接触部60bが設けられ、この接触部60bが新畦Snの側面に接するように付勢されている。そして、基準の位置に対して、図示のa側にセンサロッド60aが振れると、基準に対して作業部50が進行方向左側に移動したことが検出され、図示のb側にセンサロッド60aが振れると、基準に対して作業部50が進行方向右側に移動したことが検出される。
このように構成された畦塗り機1には、図3に示すように、角度センサ58からの検出信号及び位置センサ60からの検出信号に基づいて、第1オフセットシリンダ13、第2オフセットシリンダ31及び方向シリンダ43の伸縮制御を行う制御装置70が備えられている。
図7は、この制御装置70の構成を示したブロック図である。制御装置70は、図7に示すように、記憶部71と比較演算部73と信号出力部75とを主要部として備えている。記憶部71には、作業位置基準値Xo(71a)と作業方向基準値Ao(71b)と制御プログラム71cとが記憶されており、比較演算部73には、比較手段73a,73bが設けられている。
記憶部71と比較演算部73との間には設定信号切換機77が設けられている。この設定信号切換機77は、制御装置70に設けられた自動直進作業制御スイッチ79、隅部直線仕上げ作業制御スイッチ80、隅部円弧仕上げ作業制御スイッチ81、畦寄せ走行制御スイッチ83の操作に応じた後述する制御モードに切り替え可能になっている。
隅部円弧仕上げ作業制御スイッチ81には、自動直進作業が終了した後に圃場の隅部の端を比較的に大きな円弧を形成する際に操作される大円弧仕上げスイッチ81aが設けられている。これらの制御スイッチは、走行機体90(図1参照)の運転キャビン内に設けられて運転キャビン内に搭乗した作業者によって操作される。信号出力部75には、作業位置調整出力部75aと作業方向調整出力部75bとが設けられている。なお、これらの制御スイッチは、走行機体90(図1参照)のステアリング動作等と連動させた自動スイッチや角度センサ58の検出値が許容値以上になった場合に作動する自動スイッチ等によることもできる。
記憶部71に記憶される作業位置基準値Xo(71a)及び作業方向基準値Ao(71b)は、制御装置70が後述する制御モードに対応した自動制御を実行するのに予め設定される。詳細は後述する。そして、角度センサ58の検出信号と作業方向基準値Aoとが比較手段73bで比較され、その差を無くすように作業方向調整出力部75bから方向シリンダ43を駆動制御する制御信号が出力される。また、位置センサ60の検出信号と作業位置基準値Xoとが比較手段73aで比較され、その差を無くすように作業位置調整出力部75aから第1オフセットシリンダ13及び第2オフセットシリンダ31を駆動制御する制御信号が出力される。
また、制御装置70には、姿勢判断部85、ブザー音出力部86が設けられている。姿勢判断部85は、後述する姿勢センサ63からの検出信号に基づいて走行機体90に対する作業部50の姿勢を判断する。姿勢センサ63は、図3に示すように、オフセットフレーム22の装着部10側に配設された伝動軸24bに設けられ装着部10に対するオフセットフレーム22の揺動角度αを検出する第1揺動角センサ63aと、オフセットフレーム22に配設された従動軸22aに設けられオフセットフレーム22に対するリヤアーム34の揺動角度βを検出する第2揺動角センサ63bと、第2オフセット機構部30の動力伝達軸37aに設けられてリヤアーム34(図2参照)に対する作業部50の回動角度γを検出する回動角センサ63cとを有してなる。第1揺動角センサ63a、第2揺動角センサ63b、回動角センサ63cはポテンショメータであり、これらのセンサからの検出信号が図7に示す姿勢判断部85に送られる。
なお、揺動角度αは、走行機体90の進行方向に対して左右方向に延びる仮想線Xと、オフセットフレーム22の延びる方向の仮想線Yとのなす角度を示す。また、揺動角度βは、オフセットフレーム22の延びる方向の仮想線Yに対してリヤアーム34(図2参照)の延びる方向の仮想線Zとのなす角度を示す。また、回動角度γは、整畦部55の回転中心軸線と同軸上に延びる仮想線Qとリヤアーム34の延びる方向の仮想線Zとのなす角度を示す。
図7に示す姿勢判断部85には、作業部50の複数の姿勢に対応する第1揺動角センサ63a、第2揺動角センサ63b、回動角センサ63c(以下、これらをまとめて「姿勢センサ63」と記す。)の検出信号が予め記憶されている。
具体的には、姿勢判断部85には、図14(d)に示すように、走行機体90が圃場の隅部Hnで旋回して停止する位置の直前位置に到達したときの作業部50の姿勢に対応する姿勢センサ63の検出値(以下、「θ1」と記す。)と、図15(g)に示すように、走行機体90が圃場の隅部Hnで旋回前進して停止した状態で、作業部50が畦の隅部Hnの端まで直線作業を行ったときの作業部50の姿勢に対応する姿勢センサ63の検出値(以下、「θ2」と記す。)と、図16(i)、図18(i)に示すように、走行機体90が旋回前進して圃場の隅部Hnで停止した状態で、作業部50が畦の隅部Hnの端の一端から円弧作業を行って他端に到達したときの作業部50の姿勢に対応する姿勢センサ63の検出値(以下、「θ3」と記す。)と、図19(m)に示すように、走行機体90が次の畦Ub側に接近しながら前進走行して次の畦Ubに沿ったときの作業部50の姿勢に対応する姿勢センサ63の検出値(以下、「θ4」と記す。)が記憶されている。
ブザー音出力部86は、図7に示すように、姿勢判断部85により姿勢センサ63の検出値が所定値(θ1〜θ4)のいずれかであると判断されると、スピーカ65からブザー音を出力させる。なお、ブザー音は、姿勢センサ63の検出値に応じて音色が異なるものでもよいし、姿勢センサ63の検出値に応じた音声パターンでもよい。スピーカ65は、走行機体90(図1参照)の運転キャビン内に設けられる。
次に、このように構成された制御装置70の作動内容について、図7〜図19を参照しながら説明する。図8〜図12は、本実施例の制御装置70における制御フローを示した説明図である。図8は通常作業モードにおける制御フロー、図9は自動直進作業制御モードにおける制御フロー、図10は隅部仕上げ制御モード(隅部直線仕上げ作業制御モード)における制御フロー、図11は隅部仕上げ制御モード(隅部円弧仕上げ作業制御モード)における制御フロー、図12は畦寄せ走行制御モードにおける制御フローを示している。
また、図13、図14は自動直進作業制御モードにおける制御状態図、図15は隅部直線仕上げ作業制御モードにおける制御状態図、図16、図17、図18は隅部円弧仕上げ作業制御モードにおける制御状態図を示し、図19は畦寄せ走行制御モードにおける制御状態図を示している。
先ず、通常作業モードについて図7及び図8を参照しながら説明する。通常作業モードは、畦に沿って走行機体90が前進走行しながら畦塗り機1が畦塗り作業を行う場合の作業方法である。図7及び図8に示すように、先ず、作業が開始されて(S10)、制御装置70の電源がONになると(S11)、角度センサ58及び位置センサ60が作動して検出が開始される(S12A,S12B)。ここでは、第1オフセットシリンダ13と第2オフセットシリンダ31と方向シリンダ43は所定状態に維持されており、走行機体90を直進走行させながら、作業部50によって直線的な畦塗作業を進める。
この通常作業モードでは、角度センサ58及び位置センサ60の検出値が制御装置70の記憶部71に送られ、作業位置基準値Xo(71a)及び作業方向基準値Ao(71b)の設定がなされる(S13)。この作業位置基準値Xo及び作業方向基準値Aoの設定は、随時送られてくる検出値から平均値を求めて基準値を算出するようにしても良いし、送られてくる検出値と記憶されている基準値とを置き換えて随時更新するようにしても良い。
この基準値設定(S13)は、通常作業モードの作業終了(S14,S16)まで続けられ、その間に、自動直進作業制御スイッチ79がONになると(S15)、通常作業モードが終了し(S17)、図8に示した自動直進作業制御モードに移行する(S21)。
次に、自動直進作業制御モードについて、図7及び図9を参照しながら説明する。図7及び図9に示すように、自動直進作業制御スイッチ79がONになると(S22)、予め設定された制御プログラムAに対応する所定の動作で、更に圃場の隅部まで作業部50が進行する。先ず、その時点で設定されている作業位置基準値Xo及び作業方向基準値Aoを自動直進作業制御モードの基準値に設定する(S23)。
自動直進作業制御モードに移行して、走行機体90の旋回操作がなされると(S24)、制御プログラムAに対応する所定の動作で、更に圃場の隅部まで作業部50が直線状に進行する。具体的には、角度センサ58による方向検出と位置センサ60による位置検出がなされる(S25A,S25B)。そして、制御装置70で、角度センサ58の検出値Atと設定された作業方向基準値Aoとの比較がなされ、比較手段73bにおいて、制御偏差|At−Ao|が求められ(S26A)、それがゼロになるまで方向シリンダ43に作業方向調整出力部75bから制御信号が送られて方向制御がなされる(S27A)。また、位置センサ60の検出値Xtと設定された作業位置基準値Xoとの比較がなされ、比較手段73aにおいて、制御偏差|Xt−Xo|が求められ(S26B)、それがゼロになるまで第1オフセットシリンダ13に作業位置調整出力部75aから制御信号が送られて位置制御がなされる(S27B)。そして、自動直進作業制御スイッチ79がOFFになったところで自動直進作業制御モードを終了し(S28)、その後に自動直進作業を終了する(S29)。そして、圃場隅部に残存する未作業部分を畦塗り作業する場合には、隅部仕上げ作業制御モードへ移行する(S30、S59)。
図13、図14は、前述した自動直進作業制御モードにおける走行機体旋回時の制御状態、並びに自動直進作業制御状態を示した状態図である。例えば、図13(a)、図13(b)、図13(c)、図14(d)、図14(e)に示すように、畦塗り機1が装着された走行機体90が、圃場の隅部Hnで不動の旋回中心Crの回りに旋回して、畦塗り作業が行われた畦Uに対して交差(図面では略直交)する次の畦Ubに沿った位置に移動する場合、走行機体90の進行方向に対して第1オフセット機構部20が進行方向に対して左側へ回動するとともに作業部50が右側方向へ回動する(図13(a)、図13(b)、図13(c)、図14(d)参照)。そして、第1オフセット機構部20のオフセットフレーム22の揺動角度αが所定の角度になるように走行機体90を前進させて停止させる(図14(e)参照)。
このため、走行機体90の先端部が圃場の隅部Hnの端の周辺に移動したときに、自動直進作業制御モードが選択操作されると、畦塗り機1の作業部50によって畦の隅部Hnの端の付近まで直線状の畦塗り作業を自動的に行うことができる。但し、自動直進作業制御モードが終了した時点で、圃場の隅部Hnに残存する未作業部分An(図14(d)参照)を畦塗り作業する場合には、隅部仕上げ制御モードに移行する。
次に、圃場の隅部Hnに残存する未作業部分Anに対して直線状の畦塗り作業を行う場合の隅部仕上げ制御モードについて、図7及び図10を参照しながら説明する。なお、本実施例では、隅部仕上げ制御モードにおいて、隅部を直線状に仕上げるモード(隅部直線仕上げ作業制御モード)と、円弧状に仕上げるモード(隅部円弧仕上げ作業制御モード)の2種類が設定されている。隅部円弧仕上げ作業制御モードの詳細については後述する。
図7及び図10に示すように、隅部直線仕上げ作業制御スイッチ80がONになると(S31)、予め設定された制御プログラムBに対応する所定の動作で、更に圃場の隅部の端まで作業部50が進行する。具体的には、隅部直線仕上げ作業制御スイッチ80がONの状態になると(S31)、隅部直線仕上げ作業制御スイッチ80が操作された時点で設定されている作業位置基準値Xo及び作業方向基準値Aoを隅部直線仕上げ作業制御モードの基準値に設定する(S32)。
基準値が設定されると、角度センサ58による方向検出と位置センサ60による位置検出がなされる(S33A,S33B)。そして、前述したように制御装置70で、角度センサ58の検出値Atと設定された作業方向基準値Aoとの比較がなされ、比較手段73bにおいて、制御偏差|At−Ao|が求められ(S34A)、それがゼロになるまで方向シリンダ43に作業方向調整出力部75bから制御信号が送られて方向制御がなされる(S35A)。また、位置センサ60の検出値Xtと設定された作業位置基準値Xoとの比較がなされ、比較手段73aにおいて、制御偏差|Xt−Xo|が求められ(S34B)、それがゼロになるまで第1オフセットシリンダ13及び第2オフセットシリンダ31に作業位置調整出力部75aから制御信号が送られて位置制御がなされる(S35B)。なお、これら作業位置制御及び作業方向制御は段階的に変化する間歇動作である。そして、隅部直線仕上げ作業制御スイッチ80がOFFになったところで隅部直線仕上げ作業制御モードを終了し(S36)、その後に隅部直進仕上げ作業を終了する(S37)。そして、畦塗り作業を行った畦Uと公差する次の畦Ubを畦塗り作業をする場合には、隅部円弧仕上げ作業制御モードに移行する(S59)。
図15は、隅部直線仕上げ作業制御モードにおける畦塗り機1の制御状態、並びに隅部直線仕上げ作業制御状態を示した状態図である。例えば、図15(f)、図15(g)に示すように、畦塗り機1が装着された走行機体90が、畦塗り作業を行った畦Uと交差(図面では略直交)する次の畦Ubに沿った位置に停止している状態で、自動直進作業制御モードの終了時の作業位置P0(図14(e)参照)を起点として、第1オフセット機構部20が走行機体90の幅方向右側へ回動するとともに、第2オフセット機構部30が走行機体90の幅方向右側に回動する。そして、第1オフセット機構部20が畦Uに対して略直交する方向に伸びると、第1オフセット機構部20が走行機体90の幅方向右側へ回動するとともに、第2オフセット機構部30が走行機体90の幅方向左側に回動する(図15(f)、図15(g)参照)。従って、作業部50は方向を維持したまま畦Uの隅部Hnの端まで直線状に移動しながら畦塗り作業を行う。
このため、走行機体90の先端部が圃場の隅部Hnの端の周辺に移動したときに、隅部直線仕上げ作業制御モードが選択操作されると、畦塗り機1の作業部50によって畦の隅部Hnの端まで畦塗り作業を自動的に行うことができる。
次に、隅部円弧作業制御モードについて、図7及び図11を参照しながら説明する。図11に示すように、隅部円弧仕上げ作業制御スイッチ81がONになると(S60)、予め設定された制御プログラムCに対応する所定の動作で、作業部50が圃場の隅部Hnの端を円弧状に移動する。具体的には、隅部円弧仕上げ作業制御スイッチ81がONの状態になると(S60)、隅部直線仕上げ作業制御スイッチ80が既に操作された状態にあれば(S61)、隅部直線作業が終了した時点の作業位置を起点として、作業部50が比較的に小さな一定の半径で移動するように、角度センサ58の検出値Atと位置センサ60の検出値Xt(S)から第1オフセットシリンダ13、第2オフセットシリンダ31及び方向シリンダ43の伸縮を制御する曲線作業制御を行う(S62)。そして、隅部円弧仕上げ作業制御スイッチ81がOFFになったところで隅部円弧仕上げ作業制御モードを終了する(S63)。その後に隅部円弧仕上げ作業を終了する(S71)。
一方、S61において、隅部直線仕上げ作業制御スイッチ80が非操作状態であって、自動直進作業制御モードが終了した状態にある場合に、大円弧仕上げスイッチ81aが操作された状態になると(S64)、自動直進作業制御モードの終了時の作業位置を基準位置に設定する(S65)。そして、制御装置70で、この基準位置を起点として直線作業制御、即ち、前述した図10のS33A,S33B〜S35A、S35Bの作業位置制御及び作業方向制御が行われる(S66)。
そして、第1オフセット機構部20が畦Uに対して略直交する方向に延びる位置に移動して直線作業を終了すると(S67)、直線作業が終了した位置を円弧作業の基準値として設定する(S68)。そして、この基準位置を起点として、作業部50が一定の半径で移動するように曲線作業制御を行う(S69)。即ち、角度センサ58の検出値Atと位置センサ60の検出値Xt(S)から第1オフセットシリンダ13及び方向シリンダ43の伸縮を制御する(S69)。なお、これら作業位置制御及び作業方向制御は段階的に変化する間歇動作である。そして、大円弧仕上げスイッチ81aがOFFになったところで隅部円弧仕上げ作業制御モードを終了し(S70)、その後に隅部円弧仕上げ作業を終了する(S71)。そして、畦塗り作業を行った畦Uと交差する次の畦Ubを畦塗り作業をする場合には、畦寄せ走行制御モードに移行する(S48)。
図16は、隅部円弧仕上げ作業制御モードにおいて圃場の隅部の端を小径の曲線作業する場合の畦塗り機1の制御状態、並びに隅部円弧仕上げ作業制御状態を示した状態図である。図16(h)、図16(i)に示すように、畦塗り機1が装着された走行機体90が、畦塗り作業が行われた畦と交差(図面では略直交)する次の畦Ubに沿った位置に停止している状態で(図15(g)参照)、隅部直線仕上げ作業制御モードの終了時の作業位置を起点として、第1オフセット機構部20の走行機体幅方向右側への回動とともに、作業部50の走行機体幅方向左側への回動により、作業部50が畦Uの隅部Hnの端において円弧状に移動しながら畦塗り作業を行う。
このため、走行機体90が圃場の隅部Hnで旋回前進して停止したとき(図14(e)参照)に、隅部円弧仕上げ作業制御モード並びに隅部直線仕上げ作業制御モード(スイッチ)が選択操作されると、畦塗り機1の作業部50によって畦の隅部Hnの端を小径の円弧状に形成する畦塗り作業を自動的に行うことができる。
図17及び図18は、隅部円弧仕上げ作業制御モードにおいて圃場の隅部の端を比較的大径の曲線作業する場合の畦塗り機1の制御状態、並びに隅部円弧仕上げ作業制御状態を示した状態図である。図17(f)、図17(g)、図17(h)、図18(i)に示すように、畦塗り機1が装着された走行機体90が、畦塗り作業が行われた畦Uと交差(図面では略直交)する次の畦Ubに沿った位置に停止している状態で(図14(e)参照)、自動直進作業制御モードの終了時の作業位置P0を起点として、第1オフセット機構部20及び第2オフセット機構部30の走行機体幅方向右側への回動により、作業部50が方向を維持したまま畦Uに沿って直線状に移動しながら畦塗り作業を行う。
そして、第1オフセット機構部20が畦Uに対して略直行する方向に伸びたところで(図17(f)参照)、作業部50の直線作業が終了し、直線作業の終了位置を起点として、第1オフセット機構部20の走行機体幅方向右側への回動とともに、作業部50の走行機体幅方向左側への回動により、作業部50が圃場の隅部を一定の半径で円弧状の畦塗り作業を行う(図17(g)、図17(h)、図18(i)参照)。
なお、図示はしないが、畦塗り機1が装着された走行機体90が、畦塗り作業が行われた畦Uと交差(図面では略直交)する次の畦Ubに沿った位置に停止している状態で(図14(e)参照)、自動直進作業制御モードの終了時の作業位置P0を起点として、第1オフセット機構部20の走行機体幅方向右側への回動とともに、作業部50の走行機体幅方向左側への回動により、作業部50が圃場の隅部を一定の半径で円弧状の畦塗り作業を行うこともできる。
このため、走行機体90が圃場の隅部Hnで旋回前進して停止したとき(図14(e)参照)に、隅部円弧仕上げ作業制御モード並びに大円弧仕上げスイッチ81a(図7参照)が選択操作されると、畦塗り機1の作業部50によって畦の隅部Hnを比較的に大きな円弧状に形成する畦塗り作業を自動的に行うことができる。なお、図7に示す隅部円弧仕上げ作業制御スイッチ81は、大円弧仕上げスイッチ81aの操作時に円弧の半径を調整可能に構成されてもよい。
次に、畦Uの隅部Hnの端を円弧状に形成した後に、次の畦Ubを直線状に畦塗りする場合には、畦寄せ走行作業モードを選択操作する。畦寄せ走行作業モードは、走行機体90が次の畦Ubに対して内側に離れた位置で停止している場合に用いられる。
畦寄せ走行制御モードについて、図7及び図12を参照しながら説明する。図7及び図12に示すように、畦寄せ走行制御スイッチ83がONになると(S49)、予め設定された制御プログラムDに対応する所定の動作で、走行機体90が次の畦Ubに接近しながら前進走行するとともに、作業部50が次の畦Ubに沿って直線状に移動する。具体的には、畦寄せ走行制御スイッチ83がONの状態になると(S49)、この畦寄せ走行制御スイッチ83が操作された時点で設定されている作業位置基準値Xo及び作業方向基準値Aoを、畦寄せ走行制御モードの基準値に設定する(S50)。そして、走行機体90が次の畦Ub側に接近移動しながら前進走行するように畦寄せ走行操作が行われる(S51)。
基準値が設定された状態で走行機体90が前進走行すると、角度センサ58による方向検出と位置センサ60による位置検出がなされる(S52A,S52B)。そして、前述したように制御装置70で、角度センサ58の検出値Atと設定された作業方向基準値Aoとの比較がなされ、比較手段73bにおいて、制御偏差|At−Ao|が求められ(S53A)、それがゼロになるまで方向シリンダ43に作業方向調整出力部75bから制御信号が送られて方向制御がなされる(S54A)。また、位置センサ60の検出値Xtと設定された作業位置基準値Xoとの比較がなされ、比較手段73aにおいて、制御偏差|Xt−Xo|が求められ(S53B)、それがゼロになるまで第1オフセットシリンダ13に作業位置調整出力部75aから制御信号が送られて作業位置制御がなされる(S54B)。そして、畦寄せ走行制御スイッチ83がOFFになったところで畦寄せ走行制御モードを終了し(S55)、その後に畦寄せ走行作業を終了する(S56)。
図19は、畦寄せ走行制御モードにおける畦塗り機1の制御状態、並びに畦寄せ走行制御状態を示した状態図である。図19(k)及び図19(l)に示すように、畦塗り機1が装着された走行機体90が、次の畦Ubから離れた状態で前進しながら次の畦Ub側に接近移動すると、第2オフセット機構部30が走行機体90の幅方向左側に回動して、作業部50が次の畦Ubに沿って直線状に移動しながら畦塗り作業を行う。そして、走行機体90が次の畦Ubに接近して沿った状態で前進走行すると、図19(m)に示すように、第1オフセット機構部20を走行機体90の幅方向左側に回動して、作業部50は直線状の移動が維持されながら畦塗り作業を行う。
このように、走行機体90が圃場の隅部Hnで次の畦Ubから離れた位置に移動した状態で、畦寄せ走行制御モードが選択操作されると、作業部50の向きを直線状に維持したままで走行機体90を次の畦Ubに接近させながら前進走行させることができる。最終的に走行機体90が畦Ubに接近して沿った状態で前進走行すると、安定した走行ができ、より精度の高い畦塗り作業を行うことができる。
このように、本願の畦塗り機1は、畦Uに繋がる次の畦Ubまで畦塗り作業を行う場合、複数の制御モード(自動直進作業制御モード、隅部直線仕上げ作業制御モード、隅部円弧仕上げ作業制御モード、畦寄せ走行制御モード)を選択操作するだけで、畦Uの端まで直線作業をし、また畦Uの端において円弧作業をし、そして、畦Uに繋がる次の畦Ubの畦の畦塗り作業を自動的に行うことができる。このため、畦Uから畦Uに繋がる次の畦Ubまで連続的な前進作業が可能であり、作業能率を向上させることができる。
また、本願の畦塗り機1は、各種の制御モードを選択操作した場合、走行機体90に搭乗した作業者に対する制御モードの実行終了時期等をブザー音で告知するように構成されている。
次に、このブザー音の制御内容について、図7、図14(d)、図15(g)、図16(i)、図18(i)、図19(m)を参照しながら説明する。自動直進作業制御モードに移行した場合、図14(d)に示すように、走行機体90が圃場の隅部Hnで旋回して作業部50が隅部Hnの端の近傍まで直線作業を行ったときに、姿勢判断部85(図7参照)によって姿勢センサ63(図7参照)の検出値がθ1にあると判断されると、スピーカ65(図7参照)から「ピーピー・・・」というブザー音が鳴る。このブザー音によって走行機体90に搭乗した作業者は自動直進作業制御モードが終了したことを知ることができる。
また、隅部直線仕上げ作業制御モードに移行した場合、図15(g)に示すように、作業部50が圃場の隅部Hnの端まで直線作業を行ったときに、姿勢判断部85(図7参照)によって姿勢センサ63(図7参照)の検出値がθ2にあると判断されると、スピーカ65(図7参照)から「ピーピー・・・」というブザー音が鳴る。このブザー音によって走行機体90に搭乗した作業者は隅部直線仕上げ作業制御モードが終了したことを知ることができる。
また、隅部円弧仕上げ作業制御モードに移行した場合、図16(i)、図18(i)、に示すように、作業部50が圃場の隅部Hnの端を円弧状にする作業を行ったときに、姿勢判断部85(図7参照)によって姿勢センサ63(図7参照)の検出値がθ3にあると判断されると、スピーカ65(図7参照)から「ピーピー・・・」というブザー音が鳴る。このブザー音によって走行機体90に搭乗した作業者は隅部円弧仕上げ作業制御モードが終了したことを知ることができる。
また、畦寄せ走行制御モードに移行した場合、図19(m)に示すように、作業部50が次の畦Ubに沿って直線状に移動しながら走行機体90が次の畦Ub側に接近移動しているときに、姿勢判断部85(図7参照)によって姿勢センサ63(図7参照)の検出値がθ4にあると判断されると、スピーカ65(図7参照)から「ピーピー・・・」というブザー音が鳴る。このブザー音によって、走行機体が次の畦Ubに沿った位置に移動して畦寄せ走行制御モードが終了していることを、走行機体90に搭乗した作業者は知ることができる。
このように、本発明の畦塗り機1は、自動直進作業制御モード、隅部直線仕上げ作業制御モード、隅部円弧仕上げ作業制御モード、畦寄せ走行制御モードのいずれかが選択操作されると、姿勢センサ63の検出値に応じてスピーカ65から各制御モードの終了をブザー音で知らせる。このため、次の制御モードスイッチの操作時期や走行機体のバック走行時期が明確になり、圃場の隅部を含めた畦塗り作業を連続的に確実に行うことができ、作業効率をより向上させることができる。
なお、前述した実施例では、スピーカ65からブザー音が出力される場合を示したが、各制御モードに対応した音声案内でもよい。また、前述した実施例では、作業位置調整手段として、平行リンクを形成する第1オフセット機構部及び第2オフセット機構部を示したが、これに限るものではない。作業位置調整手段として、例えば、平行リンク機構、走行機体幅方向に揺動自在なオフセットアーム、走行機体幅方向に揺動自在な伸縮部材、或いはこれらの手段を組み合わせたものでもよい。
また、前述の実施例の設定信号切換機77は、図7に示すように、自動直進作業制御スイッチ79、隅部直線仕上げ作業制御スイッチ80、隅部円弧仕上げ作業制御スイッチ81、畦寄せ走行制御スイッチ83の操作に応じて制御モードを切り替え可能にする場合を示したが、これらのスイッチのうち、隅部円弧仕上げ作業制御スイッチ81あるいは隅部直線仕上げ作業制御スイッチ80と位置合わせ制御スイッチ82を備えない場合や、作業部50の位置及び方向から自動的に制御モードを実行するようにして、これらのスイッチを備えないようにしてもよい。