以下、本発明の実施例を、オフセット作業機の一つである畦塗り機を例にして、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る畦塗り機の全体構成を示した説明図である。畦塗り機100は、走行機体190のリンク機構(例えば3点リンク機構)に装着される装着部110と、畦塗り作業を行う作業部120と、装着部110及び作業部120を連結する連結部130とを基本構成として備えている。
装着部110は、ロアリンク連結部111a、111bとトップリンク連結部112を備えると共に、連結部130が装着される支持部材113を備えている。また、装着部110は、走行機体190のPTO軸に、ユニバーサルジョイント等の伝動継手を介して接続される入力軸(図示せず)を備えており、この入力軸に伝達された動力を連結部130の伝動機構に伝達する機構も支持部材113内に備えている。
連結部130は、その一端が装着部110の支持部材113に支持され、他端が作業部120に取り付けられており、リンク部材131とオフセットフレーム132とを具備している。
リンク部材131は、一端が装着部110側に回動可能に支持され、他端が作業部120側に回動可能に支持された部材であり、作業部120の位置を制御するものである。
オフセットフレーム132は、作業部120側に動力を伝達する巻き掛け伝動手段を備えるとともに、垂直に設けられた伝動軸132a及び132bを有し、伝動軸132aの回りにオフセットフレーム132が回動可能に支持され、伝動軸132bの回りに作業部120が回動可能に支持されている。
オフセットフレーム132とリンク部材131とは平行に配置され、これらと支持部材123とで平行リンク機構を形成している。そのため、連結部130のオフセット角度θ方向の揺動に対して作業部120の作業方向が変化しない、すなわち、畦塗りの作業面を維持したまま作業部120のオフセット移動が可能となる。
本実施形態においては、後述するオフセットシリンダ140及び方向シリンダ141の制御を容易化するために平行リンク機構を採用しているが、本発明の実施態様としては、オフセットシリンダ140と方向シリンダ141を独立して制御するように構成することも可能であり、このような平行リンク機構を形成しない実施態様の場合でも以下の説明と同様の制御が可能である。
作業部120は、古い畦の一部を切り崩して土盛り作業を行う前処理部121と、この前処理部121によって前方に盛られた土を切り崩された古い畦に塗り付けて新しい畦を成形する整畦部122とを備え、これらが支持ケース(図示せず)に装着されており、伝動軸132bに伝達された動力を前処理部121と整畦部122とに振り分ける伝動機構を備えている。
ここで、前処理部121はロータリ爪を駆動軸に装着したロータリ耕耘型の前処理機構を採用することができ、必要に応じて古い畦の天場(上面)を削り取る天場処理機構(天場処理ローター)を付加したものであってもよい。また、整畦部122は、畦の上面を成形する円筒ドラム122aと畦の側面を成形する円錐傘状ドラム122bからなる整畦ドラムを採用することができる。
このような基本構成を備えた畦塗り機100には、作業部120の作業位置(オフセット位置)を調整するための作業位置調整機構としてのオフセットシリンダ140と、作業部120の作業方向(回転方向)を調整するための作業方向調整機構としての方向シリンダ141が装備されている。
また、作業部120の作業方向を検出する作業方向検出手段としての角度センサ150が装備されている。この角度センサ150は、連結部130に対する相対的な作業部120の方向変化を検出するものではなく、作業部120単独の圃場面に対する作業方向の変化を検出するものであり、例えば、ジャイロセンサ等を採用することができる。本実施例では、角度センサ150はオフセットフレーム132内の伝動軸132bの周囲に配備されており、後述する走行機体の旋回速度を検知する速度検出手段の機能を兼ねている。
また、作業部120の作業位置を検出する作業位置検出手段としての位置センサ151が装備されている。この位置センサ151は、支持ケース(図示せず)から取り付けアーム152を介して円筒ドラム122aの後方に配備されている。
位置センサ151は、図2に示すように、回転軸の回転変位を検出するポテンショメータを内蔵し、この回転軸にセンサロッド151aの一端が固定されている。センサロッド151aは長さを調整することで感度調整が可能な棒状部材であって、その先端に接触部151bが形成され、この接触部151bが新しい畦の側面に接するように付勢されて設置されている。そして、基準の位置に対して、図示のa側にセンサロッド151aが振れると、基準に対して作業部120が進行方向左側(作業部120が畦から離れる方向)に移動したことが検出され、図示のb側にセンサロッド151aが振れると、基準に対して作業部120が進行方向右側(作業部120が畦に近づく方向)に移動したことが検出される。
このように、畦塗り機100は、作業位置調整機構と作業方向調整機構とを駆動制御する制御手段と、前記作業部の作業方向を検出する作業方向検出手段と前記作業部の作業位置を検出する作業位置検出手段とを備えている。
そして、制御手段は、設定された作業方向の基準値と作業方向検出手段によって検出された作業方向の検出値との比較に応じて作業方向調整機構を調整駆動すると共に、設定された作業位置の基準値と作業位置検出手段によって検出された作業位置の検出値との比較に応じて作業位置調整機構を調整駆動する。
このようなオフセット作業機の制御装置によると、作業方向調整機構と作業位置調整機構とを調整駆動することで、走行機体の走行状況に拘わらず作業部に直線的な作業を行わせることができる。その際に、作業方向調整機構と作業位置調整機構とを調整駆動する制御手段は、作業方向調整機構に関しては、設定された作業方向の基準値と作業方向検出手段によって検出された作業方向の検出値との比較に応じた制御を行い、作業位置調整機構に関しては、設定された作業位置の基準値と作業位置検出手段によって検出された作業位置の検出値との比較に応じた制御を行うことにより、作業部の直進作業を維持する制御が可能になる。
また、制御手段は、作業位置調整機構と作業方向調整機構とを所定状態に維持する通常作業モードと、作業位置調整機構と作業方向調整機構とを調整駆動する自動直進作業制御モードとを選択設定可能であってもよい。
通常作業モードでは、作業部の作業位置と作業方向を所定状態に維持して、走行機体の走行に沿って作業部を作業させることができ、自動直進作業制御モードでは、作業部の作業位置と作業方向を設定された基準値に合わせる制御を行うことで、走行機体の走行状況に拘わらず作業部を直線的に作業させることが可能になる。
また、本発明の実施形態における湿田モードでは、圃場や元畦が湿田状態である場合に作業機の制御パラメータの設定を変更し、湿田状態に適した制御パラメータを用いた自動制御を行うことで、湿田状態であっても作業部を直線的に作業させることが可能になる。
湿田モードは、湿田状態の圃場において通常作業モード又は自動直進作業制御モードの制御を行うと、成形畦の法面に水分過多によって発生する凹凸が形成され、成形畦が圃場内部に曲がるなど、成形畦の直進性や仕上がりに悪影響があるという問題を解決するために用いられる。
すなわち、自動直進作業制御モードは、作業部の作業位置と作業方向を通常作業モードにおいて設定された基準値を用いて制御を行うものであり、当該基準値は、走行機体が通常想定される状態の圃場で旋回する場合を想定して最適な制御パラメータが設定されている。そして、通常想定される圃場よりも水分量が多い湿田状態の圃場で走行機体を旋回する場合に当該基準値を用いて当該制御を実行すると、図3に示すように、整畦部の円錐傘状ドラム(図2の122b参照)が水分過多状態の畦を押し込むため、成形畦157の法面に、畦のふくらみ(凸部157a)が発生することがある。この凸部157aの上に位置センサ151の接触部151bが乗ると、位置センサ151は、作業部が畦に近づく方向に逸れて進んだものと誤って判断し、作業機を畦から離す方向に制御してしまうため、成形後の畦の幅が徐々に大きくなり、成形後の畦の形状が圃場内部に曲がったり、成形畦の法面にウロコと呼ばれる凹凸が発生したりして、成形畦の直進性や仕上がりが悪くなる場合がある。
そこで、湿田モードは、作業機において成形畦の状態が水分過多状態であると判断した場合に、作業機の制御パラメータの設定を湿田状態に適したパラメータに自動的に切り替えることにより、湿田状態であっても成形畦の直進性を確保し、成形畦の仕上がりを向上させることを可能とする。
また、通常作業モード、自動直進作業制御モード、および湿田モードは、操作者の意志或いは走行機体の運転状況等による自動切り替えによって適時選択可能であるから、マニュアルによる作業位置,作業方向の設定や自動直進制御等を必要に応じて切り替えることが可能になる。
このように構成された畦塗り機100は、図4に示すように、角度センサ150からの検出値、位置センサ151からの検出値、後述する姿勢センサ153からの検出値が、リモートコントローラ180に送信される。各センサの検出値は、リモートコントローラ180に対して有線通信により送信されてもよいし、無線通信により送信されてもよい。オフセットシリンダ140及び方向シリンダ141の伸縮制御は、これら角度センサ150及び位置センサ151からの検出値に基づいて行われる。
<リモートコントローラの構成>
図4は、畦塗り機100が備えるリモートコントローラ180に搭載される制御装置160の構成を示したブロック図である。制御装置160は、図4に示すように、記憶部161と比較演算部163と信号出力部162とを主要部として備えている。記憶部161には、作業位置基準値X0(161a)と作業方向基準値A0(161b)とが記憶されており、比較演算部163には、比較手段163a、163bが設けられている。
記憶部161に記憶される作業位置基準値X0(161a)と作業方向基準値A0(161b)は、通常作業モードにおいて、それぞれ角度センサ150及び位置センサ151の検出値に基づいて随時更新される。なお、随時送信される検出値の平均値を基準値として設定してもよいし、常に新しい検出値で置き換えてもよい。
また、記憶部161と比較演算部163との間には設定信号切換部165が設けられ、作業機100の制御モードに応じて記憶部161から比較演算部163に入力する信号を切り替えることが可能となっている。すなわち、自動直進作業制御スイッチ166がオンになり、自動直進作業制御モードが設定されると、その時点における作業位置基準値X0(161a)と作業方向基準値A0(161b)が比較演算部163に入力される。自動直進作業制御スイッチ166は、作業機100のリモートコントローラ180の操作による手動スイッチとしてもよいし、走行機体190のステアリング動作等と連動した自動スイッチや角度センサ150が所定値以上となった場合にオンとなる自動スイッチとしてもよい。
自動直進作業制御スイッチ166がオンになると、位置センサ151の検出値と作業位置基準値X0とが比較手段163aで比較され、その差を無くすように作業位置調整出力部162aからオフセットシリンダ140を駆動制御する制御信号が出力される。また、角度センサ150の検出値と作業方向基準値A0とが比較手段163bで比較され、その差を無くすように作業方向調整出力部162bから方向シリンダ141を駆動制御する制御信号が出力される。
さらに、制御装置160には、姿勢判断部164が設けられている。姿勢判断部164は、姿勢センサ153からの検出値に基づいて走行機体190に対する作業部120の姿勢を判断する。
姿勢センサ153は、図1に示すように、伝動軸132aの軸心を通り走行機体190の進行方向に直交する線をX、伝動軸132a、132bの軸心を通るY、伝動軸132bの軸心を通る整畦部122の回転中心軸線をZとすると、伝動軸132aに設けられて支持部材113に対するオフセットフレーム132の揺動角度α(直線XとYとのなす角度)を検出する揺動角センサ153aと、伝動軸132bに設けられて支持部材113に対する作業部120の回動角度β(直線YとZとのなす角度)を検出する回動角センサ153bとを有してなる。揺動角センサ153a及び回動角センサ153bはポテンショメータであり、これらのセンサからの検出値が図4に示す姿勢判断部164に送られる。
姿勢判断部164には、作業部120の複数の姿勢に対応する揺動角センサ153a及び回動角センサ153bで構成される姿勢センサ153の予測値が予め記憶されている。具体的には、姿勢判断部164には、作業部120が畦に沿った直進作業時に走行機体190の先端が圃場の隅部に到達したときの作業部120の姿勢に対応する姿勢センサ153の予測値と、走行機体190が圃場の隅部で旋回して停止する位置の直前位置に到達したときの作業部120の姿勢に対応する姿勢センサ153の予測値と、走行機体190が圃場の隅部で旋回して停止する位置の直前位置から停止位置に到達するまでの作業部120の姿勢に対応する姿勢センサ153の予測値と、走行機体190が圃場の隅部で旋回して停止する停止位置に到達したときの作業部120の姿勢に対応する姿勢センサ153の予測値と、走行機体190が圃場の隅部で停止した状態で、作業部120が畦の隅部の端まで作業を行ったときの作業部120の姿勢に対応する姿勢センサ153の予測値が記憶されている。
また、位置センサ151の検知結果に基づいて湿田状態判断部155が成形畦の状態を水分過多の湿田状態であると判断すると、湿田モード制御切り替え部156によって湿田モード制御がオンになり、制御装置160では、設定信号切換機165により制御プログラム161cの出力信号が比較演算部163への入力信号になるように切り替えられ、制御プログラム161cに従って作業位置調整機構および作業方向調整機構を駆動制御する。ここで、前記制御プログラム161cには、畦の状態が水分過多状態である場合(湿田モード)の制御プログラムが格納されている。
湿田状態判断部155は、後述するように、位置センサ151のセンサロッド151aのオフセット幅の伸縮方向における移動平均値(センサロッド151a及び接触部151bの、図3のc側又はd側への移動距離の平均値)が一定以上であるか否かに基づいて湿田状態か否かを判断している。
また、湿田状態判断部155によって湿田状態であることを表す信号が送信されると、湿田モード制御切り替え部156は、湿田モード制御をオンにする信号を制御装置160に送信し、制御装置160の比較演算部163に入力される制御プログラム161cを湿田モードの制御プログラムに変更する。
図5、図6、図7は、本実施例の制御装置160における制御フローを示した説明図であり、図5が通常作業モードにおける制御フロー、図6が自動直進作業制御モードにおける制御フロー、図7が湿田モードにおける制御フローを示している。図5に示すように、まず、作業が開始されて(S10)、制御装置160の電源がオンになると(S11)、角度センサ150及び位置センサ151が作動して検出が開始される(S12a,S12b)。ここでは、オフセットシリンダ140と方向シリンダ141は所定状態に維持されており、走行機体を直進走行させながら、作業部120によって直線的な畦塗作業を進める。
この通常作業モードでは、角度センサ150及び位置センサ151の検出値が随時制御装置160の記憶部161に送られ、作業位置基準値X0(161a)及び作業方向基準値A0(161b)の設定がなされる(S13)。この作業位置基準値X0及び作業方向基準値A0の設定は、随時送られてくる検出値から平均値を求めて基準値を算出するようにしてもよいし、送られてくる検出値と記憶されている基準値とを置き換えて随時更新するようにしてもよい。
この基準値設定(S13)は、通常作業モードの作業終了(S14,S16)まで続けられ、その間に、自動直進作業制御スイッチ166がオンになると(S15)、図6に示した自動直進作業制御モードに移行する(S21)。
自動直進作業制御スイッチ166がオンになると(S21)、図6に示すように、その時点で設定されている作業位置基準値X0及び作業方向基準値A0を自動直進作業制御モードの基準値に設定する(S22)。この際の自動直進作業制御スイッチ166は、手動のスイッチによることもできるし、走行機体のステアリング動作等と連動させた自動スイッチや角度センサ150の検出値が許容値以上になった場合に作動する自動スイッチ等によることもできる。
自動直進作業制御モードに移行して、走行機体の旋回操作がなされると(S23)、角度センサ150による方向検出と位置センサ151による位置検出がなされる(S24a,S24b)。そして、前述したように制御装置160で、角度センサ150の検出値Atと設定された作業方向基準値A0との比較がなされ、比較手段163bにおいて、制御偏差|At−A0|が求められ(S25a)、それがゼロになるまで方向シリンダ141に作業方向調整出力部162bから制御信号が送られて方向制御がなされる(S26a)。また、位置センサ151の検出値Xtと設定された作業位置基準値X0との比較がなされ、比較手段163aにおいて、制御偏差|Xt−X0|が求められ(S25b)、それがゼロになるまでオフセットシリンダ140に作業位置調整出力部162aから制御信号が送られて作業位置制御がなされる(S26b)。そして、自動直進作業制御スイッチ166がオフになったところで自動直進作業制御モードを終了し(S27)、その後に自動直進作業を終了する(S28)。
なお、実際の旋回では、圃場の走行条件やステアリング操作の仕方等によって、旋回中に旋回中心が移動することが考えられる。このような旋回中心の移動に伴う作業位置の変位を位置センサ151で検出して、前述した制御偏差|Xt−X0|の加算によって制御量の補正を行う。これによると、走行車輪の滑り等で旋回中心が移動した場合にも、自動直進作業制御モード移行時に設定された作業位置(基準値X0)が旋回中にも常に維持されることになり、走行機体を旋回させながら作業部120の直進作業を継続させることが可能になる。
具体的には、自動直進作業制御モードの設定中に走行機体の旋回中の旋回中心が移動すると、旋回中心の移動に伴う作業位置の変位を作業位置検出手段で検出し、自動直進作業制御モード移行時に旋回中心が移動しない場合の作業部の作業位置Xtと自動直進作業制御モード移行時に設定された作業位置(基準値X0)との制御偏差|Xt−X0|を加算して、制御量の補正を行い、補正した制御偏差がゼロになるように作業位置調整機構の作動を制御してもよい。
図8(a)は、曲線Aによって自動直進作業制御モード時のオフセット角度θの挙動を示した制御状態線図である。
畦塗り機100を3点リンク機構に装着した走行機体が、圃場の隅部で旋回した場合には、オフセット角度θは図8(a)の曲線Aで示した制御状態が得られる。図8(a)においては、横軸は制御時間t(s)、縦軸はオフセット角度θ(deg)を示している。
通常作業モードにより走行機体を圃場の一辺に沿って直進走行させて直線的な畦塗作業を行い、走行機体の先端が隅部に到達して、ステアリング操作がなされて走行機体が旋回を始める直前に自動直進作業制御モードが開始される(t=0(s))。
図8(a)に示したオフセット角度θの挙動の例では、オフセット角度θは、制御時間t=0におけるオフセット角度θを最大値θmaxとして、走行機体が旋回するに従い、制御時間t1に至るまで曲線Aに沿ってオフセット角度θは徐々に減少して、制御時間t1で最小値θminになる。そして、更に走行機体が旋回するに従い、所定の制御時間t2になるまでは、オフセット角度θが徐々に増加することになり、制御時間t2におけるオフセット角度θlstで自動直進作業制御モードが終了する。
ただし、曲線Aは、走行機体の種類(旋回半径等)、車速、旋回開始時のオフセット角度θmaxの値等によって異なる曲線になる。
図8(b)は、湿田モード時の制御状態を示した状態図である。図8(b)において直線Bは円筒ドラム122aと円錐傘状ドラム122bからなる整畦ドラム(整畦部122)の旋回角度を示す。
図8(b)及び図7に示すように、湿田モードは、自動直進作業制御スイッチ166がオンになっている状態で、位置センサの移動平均値が一定以上である場合にオン状態になり、制御パラメータを湿田状態に適したものに変更するものである。
具体的には、自動直進作業制御モードがオンの状態において(S31)、位置センサ151のセンサロッド151aのオフセット幅の伸縮方向における移動平均値(センサロッド151a及び接触部151bの、図3のc側又はd側への移動距離の平均値)が一定以上である場合に(S33)、成形畦の状態が水分過多状態であると判断され、自動的に湿田モードがオンになる(S34)。湿田モードがオンになるか否かの基準となる移動平均値の値は、成形畦の状態が水分過多状態となって成形畦157の法面に畦のふくらみ(凸部157a)が発生した場合に、接触部151bが基準位置から凸部157aの上(図3のdの位置)に移動する距離を考慮して設定されてもよい。
このように湿田モードがオンになると、自動直進作業制御モードで用いられる作業方向基準値A0及び作業位置基準値X0における制御パラメータを変更して(S35)、位置センサ151のセンサロッド151aのオフセット幅の伸縮方向における不感帯の範囲を、従来のパラメータによる制御よりも広くする(鈍感にする)ように変更する。湿田モードにおける不感帯の範囲のパラメータ設定は、成形畦157の法面に畦のふくらみ(凸部157a)が発生した場合に、接触部151bが基準位置から凸部157aの上の位置(図3のdの位置)に移動する場合の移動距離を含むように設定される。
これにより、センサロッド151aのセンシング精度が設定変更前より鈍感になり、センサロッド151aが凸部157aを検知しないようにすることができる。すなわち、成形畦の状態が水分過多状態となって成形畦157の法面に畦のふくらみ(凸部157a)が発生した場合に、接触部151bが基準位置から凸部157aの上の位置(図3のdの位置)に移動しても、当該移動距離は湿田モードにおける不感帯の範囲内であるため、位置センサ151によって、作業部の進行方向が畦に近づく方向に逸れたものと誤って判断され、作業機が畦から離れる方向に制御されてしまうことを防ぐことができる。
これにより、圃場の状態に応じて作業機の制御パラメータの設定を自動的に変更し、湿田状態に適した自動直進作業制御を行うことで、圃場の状態に拘わらず作業部を直線的に作業させる自動直進作業制御を行うことができる。
本発明に係る畦塗り機は、このような構成を有することにより、圃場や元畦に含まれる水分量が多い湿田状態であっても、圃場条件に応じた最適な自動制御を行うことができるので、安定した制御を実現することができ、作業の直進性を向上させることができる。
また、本発明に係る畦塗り機は、このような構成を有することにより、湿田状態において畦塗り機を走行させる場合に成形畦の法面に発生する凹凸を減少させることができ、成形畦の仕上がりを向上させることができる。
また、本発明に係る畦塗り機は、このような構成を有することにより、圃場が湿田状態であると判断すると、自動的に湿田状態に応じた最適な制御に移行するので、誰でも容易に最適な制御を行うことができる。
ここで、本実施形態の作業機100が備えるリモートコントローラ180の外観図を図8及び図9に示す。
図8は、リモートコントローラ180の正面図である。リモートコントローラ180の表面側筐体181aには、操作部182、スピーカー183が設けられている。操作部182には、作業機100を操作するための各種スイッチが設けられており、作業者は、各種スイッチを操作することにより、作業部120のオフセット位置の調整、作業部120の回動、制御モードの切り替え等の遠隔操作を行うことができる。スピーカー183は、操作部182を介して作業機100に与えられた作業者の操作入力に応じて、音声による操作案内又はブザー音による操作案内を出力するものである。なお、操作部182、スピーカー183は、それぞれ図3における操作部169、案内出力部170に対応する。
また、図示していないが、リモートコントローラ180の表面側筐体181aには、湿田モード制御状態表示部が設けられていてもよい。湿田モード制御状態表示部は、ランプの点灯や点滅又は色の変化等の表示内容等によって、制御の状態を表示するものでもよい。例えば、湿田モード設定がオンである場合は、湿田モード制御状態表示部のランプを点灯し、湿田モード設定時において制御パラメータの変更が行われている場合は湿田モード制御状態表示部のランプを点滅して現在の制御状態を表示するものでもよい。これにより、作業者は手元のリモートコントローラの表示によって一目で現在の制御状態が分かるようになる。
図9は、リモートコントローラ180の背面図である。リモートコントローラ180の背面側筐体181bには、案内表示ラベル184、蓋体185が設けられている。蓋体185と筐体181bとで形成された閉空間には、整畦部122の位置の微調整操作手段や音量調整操作手段を設けることができる。
案内表示ラベル184は、作業に応じた操作部182の操作方法を表示するものであり、ここでは4つの作業について案内表示している。勿論、これは一例であり、案内表示の態様は、適宜変更することができる。
第1の案内表示184aは、図1に示す整畦部122のオフセット位置を制御装置160内の記憶部(図示せず)に記憶させる制御を実行する操作を示すものであり、該制御は、電源ボタン182aを押して電源を一度切った後、作業ボタン182bと電源ボタン182aとを同時に押すことにより実行される。
第2の案内表示184bは、音声ガイダンスを連続再生する制御を実行する操作を示すものであり、該制御は、電源ボタン182aを押して電源を一度切った後、自動角塗りボタン182cと電源ボタン182aとを同時に押すことにより実行される。音声ガイダンスの連続再生とは、自動角塗り制御を行う際の手順を最初から最後まで通して音声案内として確認できる機能である。
第3の案内表示184cは、音声による操作案内(音声ガイダンス)とブザー音による操作案内(ブザー)とを切り替えるための制御を実行する操作を示すものであり、該制御は、電源ボタン182aを押して電源を一度切った後、ドラム旋回用左ボタン182dと電源ボタン182aとを同時に押すことにより実行される。
第4の案内表示184dは、低速モード設定のオンとオフとを切り替えるための制御を実行する操作を示すものであり、該制御は、電源ボタン182aを押して電源を一度切った後、ドラム旋回用右ボタン182eと電源ボタン182aとを同時に押すことにより実行される。ここで、「低速モード」とは、走行機体190の車速が一定速度より遅くなったときに作業機100の制御パラメータの設定を変更し、低速時に適した畦塗り制御を実行するための制御モードである。
これらの各案内表示は、あくまで一例であって、これに限定されるものではない。しかし、電源ボタンと他のボタンとを同時に押すといった通常の操作ではない操作を割当てることにより、通常操作時における誤動作を防ぐことができる。また、本実施形態では、作業中にリモートコントローラの操作に集中すると危険であるため、本実施形態では、電源を一度切った後に、各種操作を行う構成としている。
以上のように、本実施形態の作業機は、リモートコントローラ180に、作業機100から各種センサの検出値を受け取り、該検出値に応じた制御を行う制御装置160を搭載している。
なお、本実施形態においては、制御装置160をリモートコントローラ180に搭載したものを示したが、もちろん、作業機100に制御装置160の主たる機能を搭載し、リモートコントローラ180は、それを操作するための操作信号を発するように構成してもよい。
なお、以上の実施形態では畦塗り機について説明したが、本発明はこれに限らず他のオフセット作業機(例えば溝掘機等)にも適用可能である。また、この際には、各センサは、前述したものに限定されるものではなく、各オフセット作業機の形態に適した形状・構造・機能を備えるものを採用すればよい。