以下、一実施形態について図1〜図8(B)に基づいて説明する。
図1には、一実施形態に係る露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、投影像の歪みを調整する機能を有するステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(スキャナ)である。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられており、以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される走査方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
露光装置100は、光源19及び照明光学系10を含む照明系IOP、レチクルRを保持するレチクルステージRST、レチクルステージRSTを駆動するレチクルステージ駆動系22、レチクルRに形成されたパターンを感応剤(レジスト)が塗布されたウエハW上に投影する投影光学系PL、ウエハWを保持して水平面(XY平面)内を移動するウエハステージWST、ウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系24、及びこれらの制御系等を備えている。
光源19としては、一例として真空紫外域(波長200nm〜170nm)の光を発するパルス光源であるArFエキシマレーザ(出力波長193nm)が用いられている。
照明光学系10は、照度均一化光学系21、照明系開口絞り板25、第1リレーレンズ28A、第2リレーレンズ28B、レチクルブラインド30A、可変スリット装置40、光路折り曲げ用のミラーM及びコンデンサレンズ33等を含む。
照度均一化光学系21は、例えば、照明光(露光光)ILの光路上に順次配置されたビーム整形光学系、エネルギ粗調器、オプティカルインテグレータ(フライアイレンズ、内面反射型インテグレータ、又は回折光学素子などであり、本実施形態ではフライアイレンズを用いているので、以下では「フライアイレンズ」とも呼ぶ)等(いずれも図示せず)によって構成される。
これを更に詳述すると、ビーム整形光学系は、光源19でパルス発光され、入射した照明光ILの断面形状を、光路後方に設けられたフライアイレンズに効率良く入射するように整形するもので、例えばシリンダレンズやビームエキスパンダ等で構成される。
また、エネルギ粗調器は、ビーム整形光学系後方の照明光ILの光路上に配置され、例えば透過率(=1−減光率)を100%から等比級数的に複数段階で切り換えることができるようになっている。このエネルギ粗調器の透過率の切り換えは、不図示の駆動装置を介して主制御装置50によって行われる。
前記フライアイレンズは、エネルギ粗調器から出た照明光ILの光路上に配置され、レチクルRを均一な照度分布で照明するためにその射出側焦点面に多数の点光源(光源像)から成る面光源、すなわち2次光源を形成する。
前記照明系開口絞り板25は、フライアイレンズの射出側焦点面(照明光学系の瞳面に相当)あるいはその近傍に配置されている。この照明系開口絞り板25は円板状部材から成り、ほぼ等角度間隔で、例えば通常の円形開口より成る開口絞り、小さな円形開口より成りコヒーレンスファクタであるσ値を小さくするための開口絞り、輪帯照明用の輪帯状の開口絞り、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置して成る変形照明用の開口絞り等が配置されている。この場合、主制御装置50によって駆動系41を介して照明系開口絞り板25が駆動され、いずれかの開口絞りが照明光ILの光路上に選択的に設定される。
なお、図示は省略されているが、照度均一化光学系21の内部には、フライアイレンズより光源19側にフライアイレンズに入射する照明光ILの断面形状を変更するズーム光学系などを含む光学ユニットが設けられており、主制御装置50が、照明系開口絞り板25の開口絞りの切り替えに応じてその光学ユニットを制御し、レチクルRの照明条件の変更に伴う光量損失を抑えるようになっている。
なお、本実施形態においては、照明系開口絞り板25を用いて照明条件を変更しているが、照明条件を変更する光学素子(光学系)はこれに限らない。例えば米国特許第6,563,567号明細書に開示されているような光学系を用いて照明条件を変更しても良い。
照明系開口絞り板25のいずれかの開口絞りから出た照明光ILの光路上に、レチクルブラインド30A及び可変スリット装置40を介在させて第1リレーレンズ28A及び第2リレーレンズ28Bを含むリレー光学系が配置されている。
レチクルブラインド30Aは、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置され、レチクルR上の照明領域IARを設定する矩形開口が形成されている。レチクルブラインド30Aは、例えば2枚のL字のプレート部材を有しており、この2枚のプレート部材を駆動することで、矩形開口の大きさ及び形状を任意の矩形状に調整可能である。レチクルブラインド30Aの2枚のプレート部材は、主制御装置50により制御される不図示のアクチュエータによって駆動される。
レチクルブラインド30Aの近傍に可変スリット装置40が配置されている。可変スリット装置40は、照明領域IAR内の照明光ILの強度分布(照度分布)を調整するために用いられる。この点については後述する。
第2リレーレンズ28B後方の照明光ILの光路上には、当該第2リレーレンズ28Bを通過した照明光ILをレチクルRに向けて反射する折り曲げミラーMが配置され、このミラーMの後方の照明光ILの光路上にコンデンサレンズ33が配置されている。
図2(A)には、可変スリット装置40の概略構成が示されている。可変スリット装置40は、レチクルブラインド30Aで設定されるレチクルR上でX軸方向に伸びるスリッット状の照明領域IARを必要に応じてさらに一部制限する装置である。ここで、照明領域IARは、図1からも分かるように、XY平面に平行な面内の領域であり、可変スリット装置40の一部を構成する一対の可動ブラインド30B1,30B2等が配置されるXZ平面に直交しているが、ここでは説明の便宜上から照明領域IARが、XZ平面に平行な領域として描かれている。照明光ILは、折り曲げミラーMによってその光路が垂直に折り曲げられるので、このような表現方法を採用しても特に支障はない。
照明領域IARは、その長さ(X軸方向に関する長さ)はD、幅(Y軸方向に関する長さ)はWである。可変スリット装置40は、一対の可動ブラインド30B1,30B2と、可動ブラインド30B1,30B2の駆動装置351,352、照明領域IARの一長辺に沿って(X軸方向に)配列された複数のブレード42k(k=1〜K、本実施形態ではK=42)、及び複数のブレード42kのそれぞれを照明領域IARの短辺方向に対応する方向(Z軸方向)に駆動するアクチュエータ(不図示)等と、を有する。
一対の可動ブラインド30B1,30B2は、照明領域IARの長さDに対応する長さより長く、幅Wに対応する幅より狭いプレート部材から成り、レチクルR(のパターン面)上の照明領域IARに共役な領域を照明領域IARの短辺方向に対応する方向(Z軸方向)に挟んで配置され、それぞれ、駆動装置351,352によって、照明領域IARの短辺方向に対応する方向(Z軸方向)に往復駆動される。一対の可動ブラインド30B1,30B2は、主制御装置50により、駆動装置351,352を介して駆動され、例えば、走査露光の開始時及び終了時に照明領域IARを更に制限することによって、不要な露光を防止する。
複数のブレード42kは、照明領域IARと共役な領域の−Z側に配置され、アクチュエータ(不図示)により、照明領域IARの短辺方向に対応する方向(Z軸方向)に個別に駆動され、照明領域IAR(に照射される照明光IL)を部分的に遮光する。例えば図2(B)に示されるように、ブレード4223〜4242を、−Z側の移動限界位置近傍に位置させたまま、ブレード421〜4220を+Z側の移動限界位置近傍まで駆動し、残りのブレード4221、4222を、それぞれ照明領域IARの2/3、1/3を覆う位置に位置決めすることにより、照明領域IAR(及びこれと共役な領域)における照明光ILの強度(すなわち照度)の分布は、図2(C)に示される曲線waのようになる。ここで、曲線waの台形部分の−X側の傾斜部は、レチクルブラインド30Aが、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置されていることから形成され、曲線waの台形部分の+X側の傾斜部は、ブレード4221、4222の位置調整の結果として形成されている。
ブレード421〜4242の配置を、図2(B)と光軸AXを中心として、左右対称に設定することで、照明領域IARにおける照度の分布は、図2(C)に示される曲線wbのようになる。
ここで、可変スリット装置40として、例えば米国特許第5,895,737号明細書に開示される可調節スリット装置と同様の構成の装置を用いることもできるし、あるいは米国特許出願公開第2009/0073404号明細書に開示される可変スリット装置と同様の構成の装置を用いることもできる。後者の米国特許出願公開第2009/0073404号明細書に開示される可変スリット装置では、複数のブレード42kと同様のブレードを含む第1、第2形状設定部が、本実施形態におけるレチクルR上の照明領域IARに共役な領域の+Z側、−Z側にそれぞれ配置される。
図1に戻り、レチクルステージRSTは、照明光学系10の下方に配置されている。ここで、レチクルステージRST上には、パターンが形成されたレチクルRが例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、レチクルステージ駆動系22により、水平面(XY平面)内で微小駆動可能で、且つ走査方向(Y軸方向)に所定のストローク範囲で所定の走査速度で駆動可能である。
レチクルステージRSTのXY平面内の位置はレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって、移動鏡15を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計16からのレチクルステージRSTの位置情報は主制御装置50に送られる。主制御装置50では、レチクルステージRSTの位置情報に基づいてレチクルステージ駆動系22を介してレチクルステージRSTを駆動(位置制御)する。
投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLとしては、例えば、レンズ鏡筒32の内部に光軸AX方向に沿って所定間隔で配置された複数枚のレンズエレメント27、29、33、31を含む両側テレセントリックな屈折光学系が用いられている。投影光学系PLの投影倍率はβ(βは、例えば、1/4、あるいは1/5)である。このため、照明系IOPからの照明光ILによってレチクルRが照明されると、その照明光ILの照射領域(照明領域)IAR内のレチクルRのパターンの像が、投影光学系PLにより縮小されてレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上に投影される。そして、ウエハW上の上記照明領域IARと共役な領域(露光領域)に、パターンの縮小像(部分倒立像)が形成される(レジストにパターンの潜像が形成される)。
露光装置100には、投影光学系PLの結像特性、例えば諸収差を補正する結像特性補正装置が設けられている。投影光学系PLの結像特性としては歪曲収差(ディストーション)、コマ収差(倍率の収差)、球面収差(結像位置の収差)、非点収差、像面湾曲等があり、結像特性補正装置は、これらの諸収差を補正する機能を有している。
結像特性補正装置は、ウエハW上の先行する特定レイヤ(例えば前レイヤ)のショット領域(区画領域)に転写されたパターンの歪み(伸び縮みを含む)に合わせてレチクルRのパターンの投影像を歪ませる働きをもつ。
図1において、投影光学系PLを構成する、レチクルRに最も近いレンズエレメント27は支持部材28に固定され、レンズエレメント27に続くレンズエレメント29,33,31,…は投影光学系PLのレンズ鏡筒32に固定されている。支持部材28は、伸縮自在の複数(ここでは3つ)の駆動素子(例えばピエゾ素子)11a、11b、11c(但し、図1では紙面奥側の駆動素子11cは図示せず)を介して投影光学系PLのレンズ鏡筒32と連結されている。駆動素子11a、11b、11cに印加される駆動電圧が結像特性制御部12によって独立して制御され、これによって、レンズエレメント27が光軸AXに直交する面に対して任意に傾斜及び光軸AX方向に移動可能な構成となっている。各駆動素子によるレンズエレメント27の駆動量は不図示の位置センサにより厳密に測定され、その位置はサーボ制御により目標値に保たれるようになっている。本実施形態では、結像特性制御部12、及び結像特性制御部12によってその位置及び/又は姿勢が制御されるレンズエレメント27等を含んで結像特性補正装置が構成されている。なお、投影光学系PLの光軸AXとはレンズエレメント29等の固定のレンズエレメントの共通の光軸を指すものとする。
ここで、上述の結像特性補正装置では、説明の便宜上から、レンズエレメント27のみが、移動可能である場合について説明したが、実際には、投影光学系PLでは、複数枚のレンズエレメント、あるいはレンズ群が、上記レンズエレメント27と同様にして移動可能に構成されている。
ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方に配置されている。ウエハステージWSTの上面の中央に、ウエハWとほぼ同じ大きさのウエハホルダ9が固定されている。
ウエハホルダ9は、平面視円形の板状のベース部、該ベース部の上面の外周部近傍の所定幅の環状領域を除く中央部の所定面積の領域に所定の間隔で設けられた複数の突起状のピン部、これら複数のピン部が配置された前記領域を取り囲む状態で外周縁近傍に設けられた環状の凸部(以下、「リム部」と称する)等を備えている。
ウエハホルダ9は、低膨張率の材料、例えばセラミックス等より成り、全体として円盤状のセラミックス等の材料の表面をエッチングすることによって、底面部を構成するベース部と、このベース部上面に凸設されたリム部及び複数のピン部が一体的に形成されている。リム部は、その外径がウエハWの外径よりも僅かに小さく、例えば1〜2mm程度小さく設定され、その上面は、ウエハWが載置された際に、ウエハWの裏面との間に隙間が生じないよう、水平且つ平坦に加工されている。
ピン部は、それぞれの先端部分がリム部とほぼ同一面上に位置するようにされた突起状の形状を有している。
ベース部には、複数の排気口が、ベース部の中心部近傍から放射方向(ほぼ120°の中心角の間隔を有する3本の半径の方向)に沿って、所定間隔で形成されている。これらの排気口は排気路及び排気管を介して不図示のバキュームポンプに接続されている。
ウエハホルダ9に載置され、複数のピン部及びリム部によって下方から支持されたウエハWが、バキュームポンプによって複数のピン部及びリム部それぞれの上端面(上端部)に対して吸着保持されている。
ウエハステージWSTは、例えば磁気浮上型の平面モータ等を含むウエハステージ駆動系24により、X軸方向、Y軸方向に所定ストロークで駆動されるとともに、Z軸方向、θz方向、θx方向及びθy方向に微小駆動される。従って、ウエハホルダ9は、ウエハステージ駆動系24により、投影光学系PLの最良結像面に対し、任意方向に傾斜可能で、かつ光軸AX方向(Z軸方向)に微動が可能で、さらに光軸AXに平行なZ軸回りに回転可能に構成されている。なお、ウエハステージWSTに代えて、XY平面内で移動(θz方向の回転を含む)可能なステージと、該ステージ上でウエハホルダ9を保持してZ軸方向、θx方向及びθy方向に微動可能なテーブルとを用いることとしても良い。
ウエハステージWSTのXY平面内の位置(ヨーイング(θz方向の回転)を含む)及びXY平面に対する傾斜(ピッチング(θx方向の回転)及びローリング(θy方向の回転))はウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」と呼ぶ)18によって、移動鏡17を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出されている。ウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)は主制御装置50に送られ、主制御装置50では、その位置情報(又は速度情報)に基づいてウエハステージWSTのXY平面内の位置(θz方向の回転を含む)をウエハステージ駆動系24を介して制御する。
また、ウエハステージWST上には、基準マーク板FMが固定されている。基準マーク板FMの表面は、ウエハWの表面とほぼ同一高さに設定されている。基準マーク板FMの表面には、レチクルアライメント用の第1基準マーク及び後述するアライメント系のベースライン計測用の第2基準マークなどが所定の位置関係で形成されている。
投影光学系PLの側面には、ウエハW上の各ショット領域に付設されたアライメントマーク(ウエハマーク)及び基準マーク板FM上の第2基準マークを検出するためのアライメント系8が設けられている。アライメント系8としては、例えば、画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。アライメント系8の検出結果は、アライメント信号処理系(不図示)を介して主制御装置50に送られる。
また、投影光学系PLの下端部の近傍には、前述の露光領域内及びその近傍の複数の検出点におけるウエハWのZ軸方向に関する位置情報(面位置情報)を検出する多点焦点位置検出系(13,14)が設けられている。多点焦点位置検出系として、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示される斜入射方式の検出系が用いられている。多点焦点位置検出系は、投影光学系PLの最良結像面に向けて結像光束を光軸AXに対して斜めに射出する照射光学系13と、ウエハWの表面からの反射光束をスリットを介して受光する受光光学系14と、を含む。多点焦点位置検出系(13、14)で検出されるウエハの面位置情報は、主制御装置50に供給される。多点焦点位置検出系(13、14)を用いたウエハWの平面度計測、すなわちフォーカスマッピングについては、分割露光動作とともに後述する。
この他、露光装置100には、レチクルステージRSTの上方に、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに開示されるような一対のレチクルアライメント系(図示省略)が設けられている。レチクルアライメント系は、一例として照明光ILと同じ波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から構成されている。レチクルアライメント系の検出信号は、不図示のアライメント信号処理系を介して主制御装置50に供給される。
主制御装置50は、例えば、マイクロコンピュータ(あるいはワークステーション)から構成され、露光装置100の構成各部を統括制御する。
また、露光装置100では、例えばウエハWの交換時、又はウエハステージWSTの露光動作等の移動時に、ウエハホルダ9のウエハWとの接触面(多数のピン部及びリム部の上面)にウエハの裏面に付着したレジストなどの異物が付着することがある。また、ウエハホルダ9のウエハとの接触面から取り除かれたパーティクル等の異物がウエハホルダのピン部とピン部との間の凹部に落ち込み、ウエハ交換時その他のときに空気の乱れ等によって空中に浮遊し、ウエハホルダ9のウエハWとの接触面に再付着することがある。
例えば、多数のピン部の一部の上面にパーティクル等の異物が付着すると、その異物がウエハホルダ9とウエハWとの間に挟み込まれることがある。このような場合、ウエハWの面の一部が他の部分に比べて盛り上がり、その異物が裏面に存在するウエハ上のショット領域及びその近傍のショット領域の平面度が、他のショット領域に比べて悪化する(図3(A)に示されるウエハW1参照)。この平面度の悪化のレベルが許容レベルを超えると、スキャン露光の際に、そのショット領域の表面をレチクルパターンの像面に合焦させること、すなわち投影光学系PLの焦点深度の範囲内に一致させることが困難になる。このような場合、デフォーカスによる露光不良が発生する。
図3(B)には、図3(A)中の円Aで囲まれた平面度の悪化した1つのショット領域Skが示されている。図3(B)中の二点鎖線は、等高線を表している。
本実施形態に係る露光装置100では、ウエハWに対する露光は、通常のスキャナと同様に、ステップ・アンド・スキャン方式で行われる。露光に際し、主制御装置50は、例えば図3(B)に示されるショット領域Skのような平坦度の悪化したショット領域がウエハW上に存在しても、そのショット領域に対しては、後述する分割露光を行い、その他のショット領域に対しては通常のスキャン露光を行う。これにより、露光を中断することなく、可能な限り続行することが可能になる。
次に、本実施形態に係る露光装置100で行われる一連の処理について、主制御装置50内(のCPU)の制御アルゴリズムを示す図4及び図5のフローチャートに沿って説明する。以下では、適宜、図3(A)に示されるウエハW1を露光対象とする場合の具体例を加えて、説明を行う。
まず、図4のステップ102では、主制御装置50は、所定の準備作業を行う。具体的には、主制御装置50は、レチクル搬送系(不図示)を用いてレチクルRをレチクルステージRST上にロードする。また、主制御装置50は、ウエハ搬送系(不図示)を用いてウエハWをウエハステージWST(ウエハホルダ9)上にロードする。ロード後、レチクルアライメント、アライメント系8のベースライン計測、及びウエハアライメント(例えばEGA)等の準備作業を行う。なお、レチクルアライメント、ベースライン計測等については、米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されている。また、EGAについては、米国特許第4,780,617号明細書などに詳細に開示されている。ここで、EGAとは、ショット内の複数のウエハアライメントマークの位置検出データを用いて例えば上記米国特許明細書に開示される最小2乗法を利用した統計演算によりウエハW上の全てのショット領域の配列座標を求めるアライメント手法を意味する。
次に、ステップ104では、主制御装置50は、ウエハWの平面度情報の計測を行う。本実施形態では、ウエハWの平面度情報の計測として、主制御装置50は、多点焦点位置検出系(13,14)を用いて、ウエハWの全面に渡って設定された複数の検出位置(検出位置)で、ウエハ表面のZ位置(面位置)情報を検出する、いわゆるフォーカスマッピングを行う。
ここで、本実施形態に係る露光装置100で行われるフォーカスマッピングについて説明する。このフォーカスマッピングに際しては、主制御装置50は、ウエハ干渉計18の計測値に基づいてウエハホルダ9(ウエハステージWST)のXY平面内の位置を管理している。
そして、この状態で、主制御装置50は、EGAによって得られた各ショット領域の配列座標を考慮して、ウエハステージWSTを、X軸方向のステップ移動を挟んで、−Y方向及び+Y方向へ高速スキャンさせることを交互に繰り返し、その高速スキャン中にウエハ干渉計18で計測されるウエハホルダ9(ウエハステージWST)のX軸方向及びY軸方向に関する位置情報と、多点焦点位置検出系(13,14)で検出される各検出点におけるウエハW表面のZ軸方向に関する位置情報(面位置情報)とを、所定のサンプリング間隔で取り込み、その取り込んだ各情報を相互に対応付けて不図示のメモリに逐次格納する。
そして、主制御装置50は、上記のサンプリングを終了する。これにより、ウエハWの全てのショット領域について、そのショット領域の平面度の情報、すなわち面位置の分布情報が不図示のメモリ内に格納される。
例えば、ウエハW1を露光対象とする場合、上記のフォーカスマッピングにより、その一部に図3(B)に等高線にて示されるショット領域Sk内の面位置(Z位置)の分布データ(平面度情報)を含む、ウエハW1の全てのショット領域についての面位置の分布データ(平面度情報)が、不図示のメモリ内に格納される。
次に、主制御装置50は、ステップ106〜ステップ120で、ウエハ上の全てのショット領域のうち、分割露光の対象とすべきショット領域についてのみ、分割領域を決定する。
まず、ステップ106で、主制御装置50は、ショット領域番号を示すカウンタiを初期化する(i←1)。次のステップ108で、ショット領域Siの面位置の分布データに基づいて、そのショット領域Siの凹凸が許容レベルか否かを判断する。具体的には、そのショット領域Si内の各検出点での面位置(Z位置)の最大値と最小値との差が、予め定めた閾値を超えるか否かを判断する。
そして、このステップ108における判断が否定された場合には、ステップ120にジャンプし、ショット領域数をNとした場合、i≧Nであるか否かを判断することで、全てのショット領域について分割領域の決定の要否判断、及びその決定の処理が終了したか否かを確認する。ここでは、i=1であるから、ステップ122でカウンタiを1インクリメントし(i←i+1)、ステップ108に戻る。一方、ステップ108の判断が肯定された場合には、ステップ112に進む。
例えば、ウエハW1を露光対象とする場合、ショット領域Sk以外は、上記ステップ108の判断が否定され、ショット領域Skについては、上記ステップ108の判断が肯定されてステップ112に進む。
ショット領域Sk内では、ほぼ中心のZ位置(面位置)が、ショット領域Sk内の平均平面(中心部を除く残りの部分によって形成されるXY平面にほぼ平行な面)のZ位置からの乖離量が最大になっている。そこで、主制御装置50は、ステップ112において、i番目のショット領域Si(この場合、ショット領域Sk)を、平均平面からの乖離量最大のZ位置を含む境界線、例えば図3(B)中に示される境界線Bを境として2つの部分領域Sa,Sbに2分割すると仮に決定した後、ステップ114に進む。
ステップ114では、主制御装置50は、その仮に決定した2つの部分領域Sa,Sbそれぞれの全面を像面に合焦させることができるか否かを判断する。具体的には、XY平面に対するθy方向の傾斜が最も大きい部分を走査露光中に投影光学系PLの像面に合致させることができるかどうかの判断を、ウエハステージWSTのθy方向の最大傾斜可能量(及び投影光学系PLの像面の最大傾斜可能量)を考慮して行う。そして、この判断が肯定された場合には、ステップ116に進んで、その仮に決定した2つの部分領域Sa,Sbを最終的な分割領域として決定する。
この一方、上記ステップ114における判断が否定された場合は、ステップ118に移行する。ステップ118では、主制御装置50は、XY平面に対するθy方向の傾斜が最も大きい部分を走査露光中に投影光学系PLの像面に合致させることができる分割領域の組み合わせとなるように、非走査方向の分割領域の数を増やす。これにより、ショット領域を非走査方向に関して分割した3以上の分割領域が決定される。ウエハW1を露光対象とする場合、例えば、幅の狭い中央の帯状領域とその領域を挟む中央の帯状領域に比べて幅の広い非走査方向の両端部の帯状の領域との3つの分割領域が決定される。
ここでは、ステップ114における判断は肯定され、ステップ116で、2つの部分領域Sa,Sbが分割領域として決定されるものとする。
ステップ116又はステップ118で、分割領域を決定後、処理は、ステップ120に移行する。
以後、ステップ120の判断が肯定されるまで、上記ステップ122→ステップ108〜ステップ120の処理を繰り返す。
そして、ステップ120の判断が肯定されると、図5のステップ124に移行する。
ウエハW1を露光対象とする場合、上記ステップ120の判断が肯定された段階で、ウエハW上のショット領域Skについてのみ、2つの部分領域Sa,Sbが最終的な分割領域として決定されている。この場合、不図示のメモリ内には、分割露光対象のショット領域として、ショット領域Skが記憶されるとともに、そのショット領域Skの分割領域として、部分領域Sa、Sbの情報が記憶されている。
図5のステップ124〜ステップ130で、主制御装置50は、上で分割領域が決定された各ショット領域について、分割露光を行う。
まず、ステップ124において、ウエハW上の複数のショット領域のうち、分割領域が決定された未露光のショット領域を、メモリ内に記憶された情報に基づいて検索する。ウエハW1を露光対象とする場合、ショット領域Skが見つけられる。
次に、主制御装置50は、ステップ126において、ステップ124において検索されたショット領域について、決定された分割領域に対応してレチクルパターンを分割した部分パターンを決定する。
ウエハW1を露光対象とする場合、部分領域Sa,Sbに対応して、図6(A)に示されるように、レチクルR上のパターン領域PA内のパターンを部分パターンPAa,PAbに2分割することが決定される。なお、図6(A)において、レチクルR側とウエハW側とで別々の照明領域IARが存在するかのように図示されているが、これは、レチクルのパターンの倒立像がウエハW上に投影される様子を模式的に示したものである。図6(B)〜図6(D)、及び図7(A)〜図7(D)においても同様である。
次いで、ステップ128において、主制御装置50は、ステップ126において決定された部分パターンの像を、対応する分割領域にそれぞれ形成するための、走査露光を繰り返す、すなわち、分割露光を行う。
ここで、ステップ128における分割露光について、ウエハW1を露光対象とし、ショット領域Skの部分領域Sa、Sbに対して、それぞれ部分パターンPAa、PAbの像を形成する場合を例として説明する。
なお、レチクルRのパターン(この場合部分パターンPAa、PAb)の像をウエハW上の露光対象領域(この場合、部分領域Sa、Sb)に形成するための露光開始直前及び露光終了直後には、可動ブラインド30B1,30B2が、主制御装置50の指示に応じ、駆動装置351,352により駆動され、不要な露光が防止されるが、以下では、この点についての説明は省略する。
まず、主制御装置50は、レチクルアライメント、ベースライン計測、及びウエハアライメントの結果に基づいて、レチクル干渉計16とウエハ干渉計18の計測結果を監視して、図6(A)に示されるように、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとをそれぞれの走査開始位置(加速開始位置)に移動させる。このとき、ウエハステージWSTは、ウエハW上のショット領域Skの露光のための加速開始位置に移動される。次に、主制御装置50は、可変スリット装置40のブレード421〜4242を図2(B)に示されるように駆動する。これにより、レチクルR上では、図6(A)に示されるように、光軸AXの+X側でレチクルR上の照明領域IARの+X側の半部が遮光され、照明領域IARの−X側の半部のみが照度分布wa(図2(C)参照)で照明される。
可変スリット装置40を用いた照明領域の調整の後、主制御装置50は、走査露光により、部分パターンPAaをウエハW上の部分領域Saに転写する。
そして、主制御装置50は、両ステージRST,WSTをY軸方向に、ただし互いに逆向き(それぞれ+Y方向、−Y方向)に、相対駆動する。ここで、両ステージRST,WSTがそれぞれの目標速度に達すると、図6(B)に示されるように、照明光ILによってレチクルRの部分パターンPAaが照明され始め、ウエハW上の部分領域Saに対する走査露光が開始される。
主制御装置50は、走査露光中、Y軸方向についてのレチクルステージRSTの速度VrとウエハステージWSTの速度Vwとを投影光学系PLの投影倍率に対応する速度比に維持するように、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを同期して駆動する。この同期駆動中、主制御装置50は、通常と同様、多点焦点位置検出系(13,14)で検出されるウエハの面位置情報に基づいて、ウエハステージ駆動系24を介して、ウエハW上面の部分領域Sa部分が部分パターンPAaの像の投影光学系PLによる結像面と常に合致する(焦点深度の範囲内となる)ようにウエハステージWSTをZ軸方向、θy方向及びθx方向に微小駆動する。すなわち、主制御装置50は、通常の走査露光と同様に、多点焦点位置検出系(13,14)を用いてウエハWのフォーカス・レベリング制御(ただし、合焦の対象はショット領域Skの部分領域Sa部分)を行う。
そして、図6(C)に示されるように、レチクルRとウエハWとがY軸方向に移動してレチクルRの部分パターンPAaの異なる領域が紫外パルス光で逐次照明され、同時にウエハWがレチクルRと逆方向に移動することにより、図6(D)に示されるように、部分領域Saの走査露光が終了する。露光終了後、主制御装置50は、ウエハWとレチクルRとを減速させて停止する。
ここで、部分領域Saの走査露光に際して行われる、上述したウエハWのフォーカス・レベリング制御により、部分領域SaのY軸方向の両端部の露光中には、部分領域Saと部分パターンPAaの像面Ipとの関係は、おおよそ図8(A)に示されるようになり、部分領域SaのY軸方向の中央部の露光中には、部分領域Saと部分パターンPAaの像面Ipとの関係は、おおよそ図8(B)に示されるようになる。これら図8(A)及び図8(B)からわかるように、部分領域SaはY軸方向の全長に渡って投影光学系の焦点深度の範囲内にあり、デフォーカスなく露光が行われている。
上述した部分領域Saに対する走査露光が終了すると、主制御装置50は、ウエハWとレチクルRとの減速を開始するととともに可変スリット装置40のブレード421〜4242を、図2(B)に示される配置と光軸AXに関して左右対称となる配置に駆動する。これにより、レチクルR上では、図7(A)に示されるように、レチクルR上の照明領域の−X側の半部(光軸AXの−X側)が遮光され、照明領域の+X側の半部のみが照度分布wb(図2(C)参照)で照明される。
可変スリット装置40を用いた照明領域の調整の後、主制御装置50は、走査露光により、部分パターンPAbをウエハW上の部分領域Sbに転写する。
部分領域Saに対する露光のための相対走査が終了して停止した時点では、図7(A)に示されるように、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとは、部分領域Sbの露光のためのそれぞれの走査開始位置(加速開始位置)に位置している。そして、両ステージRST,WSTを、部分パターンPAaを用いた露光時とは逆方向に、Y軸方向に沿って、ただし互いに逆向き(−Y方向、+Y方向)に、相対駆動する。これにより、図7(B)に示されるように、照明光ILによってレチクルRの部分パターンPAbが照明され始め、ウエハW上の部分領域Sbに対する走査露光が開始される。そして、図7(C)に示されるように、レチクルRとウエハWとがY軸方向に移動してレチクルRの部分パターンPAbの異なる領域が紫外パルス光で逐次照明され、同時にウエハWがレチクルRと逆方向に移動することにより、図7(D)に示されるように、部分領域Sbの走査露光が終了する。この同期駆動中、主制御装置50は、前述と同様のウエハWのフォーカス・レベリング制御を行い、ウエハW上面の部分領域Sb部分を部分パターンPAbの投影光学系PLによる結像面と常に合致させる(焦点深度の範囲内となるようにする)。露光終了後、主制御装置50は、ウエハWとレチクルRとを減速させて停止する。
部分領域Sa,Sbに対する2回の分割露光では、ウエハステージWSTは、X軸方向に駆動(ステッピング駆動)されることなく、Y軸に平行な同一の直線経路上を往復駆動される。従って、2回の分割露光により、部分パターンPAa,PAbが繋ぎ合わされてウエハW上のショット領域Sk内に転写される。すなわち、パターン領域PA内の全パターンがショット領域Skへ転写される。部分領域Sa,Sbに対する露光の際に、それぞれ設定される台形の照度分布(曲線)wa、wb(図2(C)参照)が、両者の境界部分で、ともに斜辺となっており、かつ、その境界部のいずれのX位置においても、wa、wbの和がともに1(正規化後の値)となっている。従って、ショット領域Sk内における露光量はほぼ均一である。
上述のようにして、ステップ128の処理、すなわちステップ126において決定された部分パターンの像を、対応する分割領域にそれぞれ形成するための分割露光が終了すると、ステップ130に進む。
ステップ130では、メモリ内の情報に基づいて、分割露光対象の未露光のショット領域があるか否かを判断する。
そして、この判断が否定された場合には、ステップ124に戻り、以後、ステップ130における判断が肯定されるまで、ステップ124〜ステップ130の処理、判断を繰り返し、ステップ130の判断が肯定されると、ステップ132に進む。
ウエハW1を露光対象とする場合、ショット領域Skに対する露光が終了すると、ステップ130の判断は肯定され、ステップ132に進む。
ステップ132では、分割露光の対象ではない残りのショット領域を、ステップ・アンド・スキャン方式で露光する。
ウエハW1を露光対象とする場合、ステップ132の処理は、次の通りである。主制御装置50は、ウエハステージWSTをショット領域S1に対する走査開始位置(加速開始位置)へ移動させる。そして、主制御装置50は、可変スリット装置40のブレード421〜4242を全て−Z側の移動限界位置に移動させた後、ショット領域S1に対する通常の(すなわち分割露光でない)走査露光を行い、レチクルのパターン領域PA内のパターンをショット領域S1に転写する。以後、ウエハステージWSTのステッピング駆動と走査露光とを交互に繰り返して、ショット領域S1、Skを除く残りのショット領域について、ステップ・アンド・スキャン方式で露光を行う。上記のショット領域S1等の走査露光に際しても主制御装置50は、ウエハWのフォーカス・レベリング制御を行う。
しかる後、一連の処理を終了する。これにより、ウエハW上の全てのショット領域にレチクルRのパターンの像がデフォーカスに起因する露光不良を伴うことなく形成される。
以上詳細に説明したように、本第1の実施形態に係る露光装置100によると、主制御装置50は、露光に先立って、ウエハアライメント等の通常の準備作業に加えて、ウエハWの平面度計測(前述のフォーカスマッピング)を行い、その平面度計測により得られたウエハW上の複数(例えばN個)のショット領域Si(i=1、2、…、k-1、k、k+1、…N−1、N)のそれぞれについて、分割露光の対象となるか(必要性があるか)を判断する。そして、分割露光の対象と判断されたショット領域(本実施形態ではショット領域Sk)について、分割領域の決定を、そのショット領域の平面度情報(面位置の分布情報)を用いて、前述したようにして行う。
そして、主制御装置50は、決定された分割領域のそれぞれ(本実施形態では、部分領域Sa、Sbのそれぞれ)に対して、対応するレチクルRのパターン領域PAのパターンが分割された部分パターン(本実施形態では、部分パターンPAa、PAb)の像(部分像)をそれぞれ転写すべく、前述の走査露光を繰り返す(図6(A)〜図7(D)参照)。主制御装置50は、各走査露光において、ウエハWのフォーカス・レベリング制御が行われる。この結果、部分パターン(PAa、PAb)の像が繋ぎ合わされたパターン領域PA内のパターンの像がデフォーカスによる露光不良を伴うことなく、ウエハWの分割露光対象のショット領域(Sk)に形成される。この場合、分割露光対象のショット領域(Sk)については、レチクルRのパターン領域PAのパターン全体の像を一度の露光で形成する場合に比べて、部分パターン(PAa、PAb)の像それぞれのデフォーカス量が小さい良好な露光が行われる。
一方、分割露光対象でない他のショット領域に対しては、通常の走査露光によって、レチクルRのパターン領域PAのパターンの像がデフォーカスによる露光不良を伴うことなく形成される。
従って、本実施形態に係る露光装置100によると、ウエハWとウエハホルダ9との間にパーティクルが挟み込まれ、ウエハWの平面度が悪化した場合であっても、露光を中断することなく、露光を続行して、レチクルRのパターンを、デフォーカスによる露光不良を伴うことなく、ウエハW上の複数のショット領域に転写することが可能になる。また、ウエハW上の全てのショット領域を分割露光対象とする場合に比べて、高スループットである。また、上記の露光処理が可能な限り、ウエハホルダ9のクリーニング作業が不要になるので、そのための露光中断時間がなくなる。
なお、上記実施形態では、分割対象のショット領域SkをX軸方向に分割して露光する分割露光について説明したが、図9に示されるように、更にY軸方向に分割して露光しても良い。すなわち、主制御装置50は、最初に平面度が所定の許容範囲内に収まっている部分領域Sc(ショット領域の+Y側端部近傍及び−Y側端部近傍)を露光し、その後上述の方法と同様に部分領域Sa’,Sb’を露光しても良い。部分領域Scの露光は、通常の走査露光により行われ、部分領域Sa’,Sb’にレチクルRのパターンが転写されるのを防止するため、その走査露光の途中の所定区間、可変スリット装置40で照明光ILがレチクルRに照射されないようにする。この場合において、先に部分領域Sa’,Sb’を露光し、その後部分領域Scを露光しても良い。
なお、上記実施形態では、パターンを非走査方向に均等に2分割し、それらの分割パターンを2回に分けて分割露光する場合について例示した。しかし、パターンを非走査方向に2分割する場合、その分割位置は、前述のステップ126において、前述のステップ112〜ステップ116でのウエハW上の分割露光対象のショット領域の分割領域の設定に応じて定まるので、パターンの分割は、必ずしも均等に行われるものではない。例えば、図10に示されるように、ウエハW上面の分割対象のショット領域SkのY軸方向中央位置かつ+X側端からショット領域の非走査方向のサイズの1/3の距離の位置が上に盛り上がっている場合、ショット領域Sk内では、その位置のZ位置(面位置)が、ショット領域Sk内の平均平面(その部分を除く残りの部分によって形成されるXY平面にほぼ平行な面)のZ位置からの乖離量が最大になっている。そこで、主制御装置50は、前述のステップ112において、ウエハW上のショット領域Skを、図10中に示される境界線Cを境として2つの部分領域Sa,Sbに2分割して露光すると仮に決定した後、その仮に決定した2つの部分領域Sa,SbそれぞれのXY平面に対するθy方向の傾斜が最も大きい部分を走査露光中に投影光学系PLの像面に合致させることができる場合に、ステップ116で本決定する。主制御装置50は、ステップ126で、この決定した2つの部分領域に対応するレチクルR上のパターン領域PA内のパターンを2分割した部分パターンPAa,PAbを決定する。そして、主制御装置50は、決定した部分パターンPAa,PAbに対応するように、可変スリット装置40のブレード421〜4242をそれぞれ位置調整した後に、部分パターンPAa,PAbを部分領域Sa,Sbそれぞれに転写するための分割露光を行う。
なお、上記実施形態では、ウエハW上の分割対象のショット領域に対する分割露光を行った後に、分割対象でない残りのショット領域に対する通常露光を行うものとしたが、分割対象でないショット領域に対する通常露光を、分割対象のショット領域に対する分割露光の先に行なっても良い。また、上記実施形態では、露光時に多点焦点位置検出系(13,14)を用いて、リアルタイムにウエハWのフォーカス・レベリング制御を行う場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示される、露光位置とは離れた位置にウエハWの直径より一方向(例えばX方向)のサイズが大きい検出領域を有する多点焦点位置検出系を備えた露光装置に上記実施形態に係る分割露光を適用しても良い。この米国特許出願公開明細書では、露光に先立って、ウエハテーブルの上面の位置をZ位置検出系で検出しつつ、ウエハを保持するウエハテーブルをその検出領域に対して例えばY方向にスキャンすることで一度にウエハ全面のフォーカスマッピングを行うシーケンスが採用されている。従って、ウエハの平面度を計測するための工程を、新たに追加する必要がない。
なお、上記実施形態では、レチクルRのパターンの像を、デフォーカスに起因する露光不良なくウエハWの全てのショット領域に形成することを目的として、平面度が許容レベルを超えて悪化したショット領域についてのみ、前述の分割露光を適用する場合について例示した。しかしながら、ウエハWの凹凸変形は、ショット領域の水平面内(X軸方向及びY軸方向)の歪みの要因ともなる。そこで、分割露光の対象のショット領域について凹凸変形量(Z軸方向の変形量)から水平面内(X軸方向及びY軸方向)の歪みを算出し、部分パターンの像を、分割領域の変形に合わせて変形させることで、レチクルRのパターンの像とウエハW上のショット領域に形成されたパターンとの重ね合わせ精度を向上させても良い。例えば、主制御装置50が、結像特性補正装置を用いて投影光学系PLの歪曲収差を補正する、及び/又は走査露光中のレチクルRとウエハWとの同期状態を調整するなどを行えば良い。上述の重ね合わせ精度の向上を目的とする場合、分割露光の対象のショット領域について凹凸変形量(Z軸方向の変形量)から水平面内(X軸方向及びY軸方向)の歪みの算出に代えて、あるいは加えて、前述のEGAに代わりに、ショット内の複数のウエハアライメントマークの位置検出データを用いて例えば米国特許第6,876,946号明細書に開示される最小2乗法を利用した統計演算によりウエハW上の全てのショット領域の配列座標及び各ショットの倍率を含む変形量を求めるショット内多点EGAを採用しても良い。ショット内多点EGAにより、通常のEGAにより得られる6種類のウエハ誤差パラメータ(X軸方向及びY軸方向に関するウエハ(中心位置)のオフセット(平行移動)、ステージ座標系(又はショット配列)の直交度誤差、ウエハの残存回転誤差、ウエハのX軸方向及びY軸方向に関する線形伸縮)に加えて、ウエハW上の各ショット領域の、X軸方向(非走査方向)に関する倍率(線形伸縮)(非スキャン方向倍率)、Y軸方向(走査方向)に関する倍率(線形伸縮)(スキャン方向倍率)、残存回転誤差、及び直交度誤差が定められる。従って、これらのショット領域の誤差パラメータに基づいて、投影光学系PLのディストーション等を調整するようにしても良い。
なお、ウエハW上の各ショット領域に形成されているパターンの歪みの程度が投影光学系PLの結像特性の調整等で対応できる限界を超えている場合にも、上記の分割露光は有効である(例えば、特開2011-155040号公報参照)。そこで、上記実施形態において、分割対象とならなかったショット領域については、パターンの歪みに対応するため、必要な場合に、分割露光を行うようにしても良い。
また、上記実施形態では、投影光学系PLによるパターンの結像面に、ウエハWの被露光領域(照明光ILが照射されるショット領域の一部の領域)を一致させる(焦点深度の範囲内に位置させる)ため、ウエハステージWSTを、Z軸、θx及びθyの少なくとも一方向に駆動する、及び/又は結像特性補正装置により投影光学系PLの像面を変形、変位又は傾斜させるものとした。しかし、これに限らず、例えばウエハホルダ9の複数の突起状のピン部をZ軸方向に駆動可能に構成する、あるいはピン部とは別にウエハをZ軸方向及び/又は傾斜方向に駆動可能な駆動機構を設ける、又はウエハホルダ9のベース部の下面にピエゾ素子などの駆動素子を設けるなどしても良い。そして、これら複数の突起状のピン部の駆動、駆動機構によるウエハのZ軸方向及び/又は傾斜方向の駆動、及び駆動素子によるベース部を介してのピン部の駆動の少なくとも1つを、前述のウエハステージWSTの駆動、及び/又は結像特性補正装置による投影光学系PLの像面の変位又は傾斜等に代えて、あるいは加えて実行することで、投影光学系PLによるパターンの結像面に、ウエハWの被露光領域を一致させることとしても良い。
なお、上記実施形態では、仮に決定した2つの部分領域Sa,SbそれぞれのXY平面に対するθy方向の傾斜が最も大きい部分を走査露光中に投影光学系PLの像面に合致させることができるかどうかの判断の結果に応じて、前述のように非走査方向の分割領域の数を3つ以上に増やすものとした。この場合において、その2つ以上の分割領域の数が、ある数以上になる場合には、ウエハWのクリーニング作業を行うようにしても良い。
また、上記実施形態では、投影光学系PLの一部を構成する光学素子を駆動して投影光学系PLの光学特性(パターンの投影像の形成状態(例えば歪み))を調整(補正)する結像特性補正装置を、露光装置が備えているものとした。しかし、これに限らず、結像特性補正装置としては、投影光学系PLの一部を構成する光学素子を駆動する構成に代えて、あるいは加えて、投影光学系PL内の一部の気密空間内のガス圧を制御してその屈折率を調整する構成、及び/又は照明光ILの波長を調整する構成を採用しても良い。
なお、上記実施形態では、可変スリット装置が、一対の可動ブラインド30B1,30B2と、複数のブレード42kとを含んで構成された場合について例示したが、一対の可動ブラインド30B1,30B2は必ずしも設けられていなくても良い。また、非走査方向に関するパターンの分割に応じて、照明領域IAR内の非走査方向に関する照度分布を変更する装置は、上記実施形態のような可変スリット装置に限らず、例えば液晶などの非発光型空間光変調器を用いても良い。
なお、上記実施形態では、露光装置100が、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置である場合について説明したが、これに限らず、光学系と液体とを介してウエハの露光を行う液浸型の露光装置に上記実施形態を適用しても勿論良い。
また、上記実施形態の投影露光装置の投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系は屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
また、上記実施形態では、露光装置の照明光としては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に上記実施形態を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記実施形態は適用できる。
また、上記実施形態の露光装置100では、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
また、例えば国際公開第01/35168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)を、露光装置100として採用することができる。
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置に、上記実施形態を適用しても良い。
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態に係る露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。