JP2014114512A - 透湿放出性に優れた編物、下着及び肌着 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表編地と裏編地とを含む編物であって、表編地及び裏編地に用いられる主たる糸10は、短繊維11に、該短繊維11よりも吸湿性が低い疎水性フィラメント12を混合した複合紡績糸である。ここで該編地全体の標準状態における水分率が7%以上であり、主たる糸10は標準状態における水分率が11〜60%である繊維を20〜90質量%含むことが好ましい。表編地及び裏編地を連結する連結糸をさらに含み、連結糸は標準状態における水分率が0〜5%である疎水性フィラメントを含むことが好ましい。
【選択図】図1
Description
従来より用いられている衣料用編地は、一般的に保温性が高いものは肉厚で目付が高いため、透湿性が低く蒸れ易い傾向がある。よって保温性を重視してインナーに肉厚且つ目付が高い衣料用編地を用いると、重ね着したときにゴワゴワした感触で重たく感じられる上、蒸れによる不快感を覚え易いという問題がある。
例えば、外気に直接さらされる外衣用の緯編地として、湿潤発熱性糸を両面編み、添え糸編み、もしくはこれらの共用編み組織とした編地が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明は以上のような従来の課題を考慮してなされたものであり、暖かく、吸湿性があり、且つ軽くて嵩張らず、さらに透湿放出性に優れた編物、下着及び肌着を提供することを目的とする。
また、本発明の編物において、該編地全体の標準状態における水分率が7%以上であり、前記主たる糸は、標準状態における水分率が11〜60%である繊維を20〜90質量%含んでいることが好ましい。
また、本発明の編物において、前記表編地及び前記裏編地を連結する連結糸として、標準状態における水分率が0〜5%である疎水性フィラメントを少なくとも含むことが好ましい。
また、本発明の編物において、前記主たる糸は、羊毛を20〜80質量%含む複合紡績糸であることが好ましい。
本発明の透湿放出性に優れた下着及び肌着は、上記いずれかの編物を用いた下着又は肌着である。
さらに、本発明に係る編物は、中間層に疎水性フィラメントを含むという特有の編み構造を備えるので、湿気を編地内部に溜め込むことなく、より透湿放出性に優れる編物を提供することができる。
三層構造編物は、汎用の2列の針列を有するダブルラッシェル機、ダブル丸編機、又は横編機等で編成することができる。表編地及び裏編地の組織は、ここでは平編の基本組織であるが、タック編、浮編、片畦編、レース編、及び添糸編等の変化組織であってもよいし、該変化組織に針抜きを組み合わせてもよい。
表編地及び裏編地に用いられる繊維としては、公知の各種繊維を用いることができ、例えば綿、羊毛等の天然繊維や、キュプラ、レーヨン、リヨセル等の再生繊維、アセテート、ポリオレフィン、アクリル、アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維のような半合成繊維や合成繊維である。なお、これらの公知の各種繊維を共重合したり、繊維改質したり、機能材を練り込むことにより所望の機能性を付与してもよい。
長短複合紡績糸の透湿放出性が高い理由は定かではないが、糸内部に疎水性フィラメントが存在することにより繊維内部に湿気を取込み過ぎなくなることや、毛羽が少なくなることにより通気性が向上すること等が要因であるものと推測される。
図1は、本発明に係る編物の表編地及び裏編地に使用される主たる糸の一例を示す糸断面の概略図である。
図1に示す主たる糸10は、短繊維11に、該短繊維11よりも吸湿性が低い疎水性フィラメント12を混合した長短複合紡績糸である。
標準状態における水分率が11〜60%の高吸湿繊維の場合には、20〜90質量%の混率で用いる必要があり、40〜90質量%での混率で用いるとより好ましい。高吸湿繊維の混率が20質量%未満であったり、90質量%を超えたりすると、本発明において期待する十分な透湿放出性が得られ難くなりやすい。
一方下着及び肌着は清潔に保つために頻繁に洗濯することが好ましいため、使用する羊毛は防縮加工を施された防縮ウールとすることが好ましい。
主たる糸10の総繊度は、好ましくは10〜800dtex、より好ましくは100〜500dtex、さらに好ましくは150〜400dtexである。総繊度が10〜800dtexの範囲であると、保温性、及び適度な吸湿性と透湿放出性とが得られる。総繊度が10dtex未満であると保温性が不足し易い。総繊度が800dtexを超えると、編物が分厚くなりすぎて着用感が悪くなる。
連結糸は、表編地と裏編地とを連結する機能を有しており、例えば、表編地と裏編地との間にループ状の編み目を形成してもよいし、表編地と裏編地との間でタック組織状に引っかけるような構造でもよい。
また連結糸には、主たる糸10と同一の長短複合紡績糸を用いてもよいが、比較的水分率が低い疎水性合繊フィラメントを単独で用いる方がより好ましい。ここで疎水性合繊フィラメントには、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6及びナイロン66等のポリアミド系繊維、アクリル系繊維、あるいはポリオレフィン系繊維等を用いることができる。
すなわち表編地と裏編地との中間に位置する連結糸を疎水性の繊維にすると、肌側の面で吸収した湿気が外気側に、より放出され易くなるため湿気を編地内部に溜め込むことなくなり、より透湿放出性に優れる編物となる。
なお、疎水性合繊フィラメントは、生糸のままで用いてもよいが、仮撚加工糸等の糸加工を行ってもよいし、別のフィラメントと混繊して用いてもよい。
連結糸は疎水性フィラメント単独でも、複合糸として用いてもよいが、連結糸の総繊度は、好ましくは10〜500dtex、より好ましくは20〜390dtex、さらに好ましくは30〜110dtexである。総繊度が10〜500dtexの範囲であると、繊維内空隙の径が小さくなりデッドエアーが多くなって、熱の逃散阻止能力が向上すると共に透湿放出効果が高まる。総繊度が10dtex未満であると中間層のデッドエアーが少な過ぎて保温性や透湿放出性が不足する。総繊度が500dtexを超えると、編物が分厚くなりすぎて着用感が悪くなる。
連結糸に含まれる疎水性フィラメントの総繊度は、好ましくは10〜200dtex、より好ましくは20〜150dtex、さらに好ましくは30〜110dtexである。総繊度が10dtex未満であると透湿放出性が不足する。総繊度が200dtexを超えると、連結糸の総繊度が太くなりすぎて、透湿放出性が低下したり、編物が分厚くなりすぎて着用感が悪くなる。
連結糸に含まれる疎水性フィラメントの単糸繊度は、好ましくは0.1〜5dtex、より好ましくは0.3〜3dtex、さらに好ましくは0.5〜2.0dtexである。単糸繊度が0.1〜5dtexの範囲であると繊維内空隙の径が小さくなり、デッドエアーが多くなって熱の逃散阻止能力が向上すると共に、透湿放出効果が高まる。単糸繊度が0.1dtex未満であると透湿放出性が不足する。単糸繊度が5dtexを超えると、繊維が硬くなりすぎて、着用したときにチクツキ感が出易くなる。
本発明の表編地と裏編地とを含む編物には、例えば丸編では、タックリバース、鹿子リバース、ダブルフェイス、及びダンボールニット等のダブルニット組織がある。この中で三層構造の編物としてはダンボールニット等の組織がある。
タックリバース、鹿子リバース、及びダブルフェイスのような組織は、片側の層を構成する糸がもう一方の層の組織にタックで編込まれて連結する。例えばタックリバース組織は、図2に示すように、F1で編まれた糸が一方の層(例えば表層)となり、F2で編まれた糸がもう一方の層(例えば裏層)となる。例えばF1のシリンダー針No.1でニット組織を編んだ表層を構成する糸に、裏層を構成する糸がF2のシリンダー針No.1でタック組織として編まれて連結する。このときF2で編まれた糸が裏層と連結糸とを兼ねる。
編機のゲージや編機口径は使用目的によって適宜選定すればよく、例えば10〜40ゲージを使用することができる。編成糸長も編組織と使用する糸に合わせて適宜設定することができる。
三層構造編物の厚さや目付は希望に応じて適宜選定すればよく、例えば、厚みは2〜20mm程度、好ましくは3〜10mm程度であり、目付は80〜1200g/m2程度、好ましくは150〜500g/m2程度である。また、三層構造編物は必要に応じて所望のサイズに裁断したり、裁断後の編地片を縫製又は熱成形により所望の形状にして用いてもよい。
また本発明の三層構造編物の保温性は、見掛けのclo値が0.8〜1.9であり、透湿放出性は13〜25である。
短繊維と疎水性フィラメントとの複合方法は、例えば短繊維の粗糸を作製して粗糸と疎水性フィラメントとを精紡工程において複合して紡績糸を作る方法、短繊維のみの紡績糸を作りこれを疎水性フィラメントと交撚する方法、及び紡績糸に疎水性フィラメントをカバーリングする方法等用いることができる。本発明では、この中で精紡工程において複合する方法が最も好ましい。
なお、このような方法により複合される長短複合紡績糸の一例を挙げると、疎水性長繊維を芯にしたコアスパンヤーン形態や、図1に示すような短繊維11と疎水性フィラメント12とが実質的に均一に混合されてなる紡績形態が好ましい形態である。ここで「実質的に均一に混合される」とは、コアヤーンや交撚糸のようにフィラメントが一部分に集中して存在する状態とは異なり、短繊維11と疎水性フィラメント12とがそれぞれ分散して存在する状態を意味する。
(1)パーン1に捲かれた疎水性フィラメントA1が、ガイド2を経て電極3を用いて静電気が印加されて開繊されて開繊フィラメントA2となり、環状ガイド4に通して開繊幅及び供給位置を規制されつつフロントローラ5cに供給される。
(2)梳毛粗糸B1をバックローラ5aに供給し、クレードル5b、フロントローラ5c間でドラフトされてフリース状の短繊維フリースB2となり、フロントローラ5cに供給される。
(4)フロントローラ5cを通過した開繊フィラメントA2と短繊維フリースB2とは加撚されて、均一混合層を形成する特異な糸構造をなす長短複合紡績糸C1が生成される。
(5)長短複合紡績糸C1が、スネルワイヤ6を経てリングトラベラ7により管糸8に捲き取られる。
(1)水分率%(ワタ、紡績糸及び編物)
1.試料の絶乾質量の測定
試料を温度90℃の乾燥機中に3時間静置後、絶乾質量(W0)(単位:g)を測定する。
2.試料の湿潤質量の測定
試料を温度20℃相対湿度(A)%RHの恒温恒湿漕に24hr以上静置後、試料の質量(WA)(単位:g)を測定する。
3.水分率の算出
以下の(式1)より水分率(HA)%を算出する。
水分率(HA)%={(WA−W0)/W0}×100 ・・・(式1)
ASTM−D1518法に準拠して測定する。株式会社大栄化学精器製作所製、保温性試験機を用い測定する。20℃65%RH、風速0.3m/sec以下の環境下において、36℃一定温度で制御した熱板(25cm×25cm)を50cm×50cmの試料で覆い、2時間静置中、熱板温度を36℃に保つために熱板に電力供給された積算時間(sec)を用い(式2)により、Iclo値を算出する。
Iclo値=((Ts−Ta)×A)/(0.18×W)×(72000/S)
・・・(式2)
Ts:熱板温度=36℃
Ta:環境温度=20℃
A:熱板面積=0.0625m2
W:熱板供給電力=34.4kcal/h
S:熱板に供給された積算時間(sec)
0.18:定数、1clo=0.18m2・℃・h・kcal−1
吸水率:JIS L1018メリヤス生地試験方法に準じる。
但し、ローラー絞り機に替えて、遠心脱水機1000G、10分間絞りとする。
発汗シミュレーション測定装置を用い、水供給量:200g/m2・h、熱板温度:37℃、試料−熱板間隔:1cm、環境温湿度:15℃50%RH、発汗パターン:試験開始より無発汗で10分経過した後、5分発汗を実施、測定項目:発汗開始直後から発汗5分後までの湿度上昇度(%RH)を測定する。
編物を平面上に張力が掛らないように拡げた状態で、ルーペを用いて編物表面もしくは編物裏面における1inch2面積中に存在するニードルループの数を目視で数える。
(5)編物の目付
JIS L1018 8.4.2により標準状態における単位面積あたりの質量に準じて測定する。
(6)編物の厚み(mm)
JIS L1018 8.5.1により編地の厚さに準じて測定する。
メリノウールを原料として20.0MICの防縮加工トップを生成した。東洋紡製モイスケア(アクリレート繊維、繊度2.2dtex、繊維長76mm、標準状態での水分率50.8%)と、防縮加工トップを混綿及びリコームして、常法の通り前紡工程までを行い梳毛粗糸B1(番手1/5.0Nm、羊毛80質量%、モイスケア20質量%)を生成した。
一方、疎水性フィラメントA1としてポリエステルフィラメント56デシテックス/24フィラメント(丸断面、セミダル、標準状態での水分率0.4%を用い、ガイド2を経て開繊電極3へ供給した。
次いで開繊フィラメントA2をリングトラベラ7に通して、開繊幅をフリースの最大幅の150%程度に広げ、短繊維フリースB2の中心に開繊フィラメントA2の中心が重なる様に、開繊フィラメントA2と短繊維フリースB2との供給位置を規制しつつ、フロントローラ3に供給した。
フロントローラ5cを通過した開繊マルチフィラメントA2と短繊維フリースB2とを撚数510T/m(Z撚り)に加撚して、ポリエステル23質量%/モイスケア15質量%/羊毛62質量%、番手1/52Nmの長短複合紡績糸C1を生成し、管糸8に巻き上げた。この長短複合紡績糸C1を2本交撚して2/52Nm(約385dtex)の長短複合紡績双糸C2として使用した。
前紡工程まで実施例1と同様にして得られた梳毛粗糸B1(番手1/5.0Nm)に、疎水性フィラメントA1としてポリエステルフィラメント糸56デシテックス/24フィラメント(丸断面、セミダル、標準状態での水分率0.4%)を精紡工程において混繊し、ポリエステルフィラメントが収束して紡績糸内部に混紡されている番手1/52Nmのコアスパン長短複合紡績糸を生成した。このコアスパン長短複合紡績糸を実施例1と同様に2本交撚してコアスパン長短複合紡績双糸とした。さらに編物組織を図3のようなダンボールニットに変更し、該コアスパン長短複合紡績双糸を100%使用して製編した後、一般的な染色加工を施して仕上げた。実施例2の編物の評価結果を表1に示す。
実施例1において生成した長短複合紡績双糸C2を表層、及び裏層に100%使用し、編物組織を図3のようなダンボールニットにし、ダンボールニットの連結糸を、ポリエステルフィラメント84デシテックス/36フィラメント(丸断面、セミダル、標準状態での水分率0.4%)にして製編した後、一般的な染色加工を施して仕上げた。実施例3の編物の評価結果を表1に示す。
実施例1において生成した長短複合紡績双糸C2を表層、及び裏層に100%使用し、連結糸(図4のF1、4)としてポリエステルフィラメント84デシテックス36フィラメント(丸断面、セミダル、標準状態での水分率0.4%)を使用し、実施例1と同様にダブルフェイス組織で編上げた。このときF2、3、5、6に番手2/52Nmの長短複合紡績糸を配置し、F1、4にポリエステルフィラメントを配置した。次いで編上げた編物に一般的な染色加工を施して仕上げた。実施例4の編物の評価結果を表1に示す。
実施例1において長短複合紡績双糸C2を、オーストラリア綿100%英式番手30/1s紡績糸に変更し、その他の部分は実施例1と同様にダブルフェイス組織で編上げた。次いで編上げた編物に一般的な染色加工を施して仕上げた。比較例1の編物の評価結果を表1に示す。
前紡工程まで実施例1と同様にして得られた梳毛粗糸B1(番手1/5.0Nm)に、疎水性フィラメントA1を混紡せず、そのままドラフトをかけて番手1/52Nmの紡績糸を生成した。この紡績糸を実施例1と同様に2本交撚して紡績双糸とし、該紡績双糸を100%使用して製編した後、一般的な染色加工を施して仕上げた。比較例2の編物の評価結果を表1に示す。
11 短繊維
12 疎水性フィラメント
Claims (8)
- 表編地と、裏編地とを含む編物であって、
前記表編地及び前記裏編地に用いられる主たる糸は、短繊維からなる紡績糸に、該紡績糸よりも吸湿性が低い疎水性フィラメントを混合した複合紡績糸であることを特徴とする編物。 - 該編地全体の標準状態における水分率が7%以上であり、
前記主たる糸は、標準状態における水分率が11〜60%である繊維を20〜90質量%含む請求項1に記載の編物。 - 前記主たる糸は、
標準状態における水分率が17〜60%であるアクリレート繊維が5〜40質量%混合された紡績糸である請求項1または2に記載の編物。 - 前記表編地及び前記裏編地を連結する連結糸として、標準状態における水分率が0〜5%である疎水性フィラメントを少なくとも含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の編物。
- 前記裏編地(裏側)の表面に用いられている複合紡績糸が作る編ループの1インチあたりのコース数に比べて、前記表編地(表側)の表面に用いられている複合紡績糸による1インチあたりのコース数が90〜300%であり、前記裏編地(裏側)の表面に用いられている複合紡績糸による1インチあたりのウェール数に比べて、前記表編地(表側)の表面に用いられている複合紡績糸による1インチあたりのウェール数が20〜100%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の編物。
- 前記主たる糸は、
羊毛を20〜80質量%含む複合紡績糸である請求項1〜5のいずれか1項に記載の編物。 - 前記主たる糸に混合されている疎水性フィラメントは、実質的に均一に混合されてなる紡績形態である請求項1〜6のいずれか1項に記載の編物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の編物を用いた下着又は肌着。
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