JP2014112617A - 超電導コイルおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超電導コイル10は、少なくとも超電導層を含む超電導テープ20および絶縁テープ30を積層させて巻回させたパンケーキコイル50と、巻回の中心軸方向に積層される複数のパンケーキコイル50の間に設けられ、室温から液体窒素温度までの径方向の熱収縮率値εが0.3%〜3%の絶縁体である絶縁部材40と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
この場合、単純にパンケーキコイルを積層するとパンケーキコイル間で電気的に接触し短絡の生じるおそれがある。
超電導磁気エネルギー貯蔵器、限流器および変圧器のような高電圧の機器でこの超電導コイルを用いる場合は、隣接するパンケーキコイル間で絶縁破壊が起こりうる。
この絶縁部材は、超電導コイル全体にかかる圧力や冷却性の観点から、パンケーキコイルに接合されていることが多い。
この時、常伝導体に流れる電流によって熱が発生し、この熱によりさらに常伝導体化が進み、超電導コイルの焼き切れや冷却材の一瞬の気化が起こりうる(クエンチ現象)。
クエンチ現象は、その他種々の要因で起こり、例えば、超電導コイルに交流電流を流すことによる交流損失などでも起こりうる(例えば、特許文献1から特許文献3参照)。
このような超電導テープを構成する複数の層は、互いに剥離しやすいことが知られている。
そして、超電導テープ自体に着目した剥離の防止のための改良発明がなされている(例えば、特許文献2参照)。
この熱収縮の際、接合された絶縁部材およびパンケーキコイルのそれぞれの熱収縮率値の差により、パンケーキコイルの径方向に外向きの応力が働く場合がある。
超電導テープを形成する複数の層どうしは、前述のように剥離しやすく、この応力で剥離による超電導性の不安定化などの劣化がおこりうるという課題があった。
図1(A)は、本発明の各実施形態にかかる超電導コイル10の上面図、図1(B)は本発明の各実施形態にかかる超電導コイル10のI−I断面の断面図である。
図2(A)は、本発明の第1実施形態にかかる超電導コイル10の絶縁部材40の上面図、図2(B)は、絶縁部材40のII−II断面の断面図である。
第1実施形態にかかる超電導コイル10は、図1または図2に示されるように、少なくとも超電導層25(図3)を含む超電導テープ20および絶縁テープ30を積層させて巻回させたパンケーキコイル50と、巻回の中心軸方向に積層される複数のパンケーキコイル50の間に設けられ、室温から液体窒素温度まで(以下、単に「冷却時」という)の径方向の熱収縮率値ε(以下、単に「熱収縮率値ε」という)が0.3%〜3%の絶縁体である絶縁部材40と、を備える。
さらに、絶縁部材40のいくつかには、その内部に、外部の冷却器(図示せず)に接続された冷却板41が配置される。
この冷却板41は、すべての電気絶縁層42の内部に配置される必要はない。
ただし、冷却板41が設けられていない絶縁部材40では、伝熱の観点からパンケーキコイル50が絶縁部材40に確実に接合される必要性が高くなる。
パンケーキコイル50は、図3で示されるような超電導層25を含む超電導テープ20および絶縁テープ30の積層を、さらに巻回させたものである。
これら超電導テープ20を構成する層は剥離しやすいことが知られている。
熱収縮の際、接合された絶縁部材40およびパンケーキコイル50の熱収縮率値εの差により、パンケーキコイル50に径方向の外向きに応力が働くことがある。
すると、超電導テープ20を形成する複数の層どうしは前述のように剥離し、超電導性が不安定化する。
なお、複数のパンケーキコイル50どうしは、超電導コイル10の作製工程の中で、巻回の最内側または最外側で電気的に接続される。
図4に示されるように、2つのパンケーキコイル50が、巻回の最内側で予め電気的に接続されて対となって市販されているダブルパンケーキコイル51を用いることもできる。
ダブルパンケーキコイル51の場合、電気的な接続箇所を減らせるので、接続工程の作業負担が軽減される。
層厚は、電圧に合わせておよそ数百μm〜数十mm程度である。
なお、第1実施形態においては、電気絶縁層42は、接合層43と同様に熱収縮率値εが0.3%〜3%程度である。
電気絶縁層42および接合層43は、材質を同一にして一体にさせて絶縁部材40としてもよい。
これらの材質で電気絶縁層42を形成すれば、電気絶縁層42および接合層43を一体とした絶縁部材40が得られる。
しかし、同じGFRPあるいはCFRPであっても繊維を厚み方向に配向させ、この厚みに合わせて長さが切断されることで熱収縮率値εが0.3%以上である電気絶縁層42にすることができる。
図5に示されるコイルA(比較例)は繊維方向を電気絶縁層42の面方向に配向させたGFRP、コイルB(実施例)はエポキシ樹脂で電気絶縁層42を形成している。
接合層43はいずれもエポキシ樹脂であり、コイルBにおいては、電気絶縁層42と一体化しており区別する必要はない。
そして、パンケーキコイル50の室温から液体窒素温度まで下げた際の熱収縮率値εも、0.3%で同じである。
測定の結果、冷却時の最大径方向応力σは、コイルAは14MPaであるのに対してコイルBは4.7MPaと、コイルBの方が小さくなっていることがわかる。
この効果は大きく、この最大径方向応力σの減少によって、超電導コイル10の剥離による劣化が生じる割合を大幅に減らすことができる。
よって、接合の劣化を招かない3%程度が絶縁部材40の熱収縮率値εの上限となる。
よって、絶縁部材40の熱収縮率値εは、好適には、0.3%〜3%程度である。
より好ましくは0.3%〜1.2%、さらに好ましくは0.3%〜0.8%である。
図11は本発明の第1実施形態にかかる超電導コイル10の製造手順を示すフローチャートである。
まず、超電導層25を含む超電導テープ20および絶縁テープ30を積層させ、さらに巻回させてパンケーキコイル50を作成する(ステップS11)。
接合層43の上に、ポリエステルなどの電気絶縁層42を形成させる(ステップS13)。
なお、電気絶縁層42は、液状であってもすでに固体であってもよい。
なお、ダブルパンケーキコイル51を用いる場合は、すでにそのパンケーキコイル50どうしは予め最内側で接続されているので、隣り合うダブルパンケーキコイル51どうしを最外側でのみ接続すればよい。
すべてのパンケーキコイル50が積層されたら(ステップS18;YES)、製造を終了する。
なお、冷却板41を配置する場合、予め電気絶縁層42に埋め込んでおくのがよい。
図6(A)は、本発明の第2実施形態にかかる超電導コイル10の絶縁部材40の上面図、図6(B)は、絶縁部材40のIII−III断面の断面図、図6(C)は、絶縁部材40のIV−IV断面の断面図である。
図6(A)においては、接合層43の図示を省略している。
熱伝達部材44が設けられている冷却領域60は、図6(A)で示すように、一部分であってもよいし、絶縁部材40の全体であってもよい。
また、第1実施形態に引き続き、電気絶縁層42は、接合層43と同様に熱収縮率値εが0.3%〜3%程度である。
図面においても、共通の構成または機能を有する領域は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
なお、図2(B)に示される冷却板41は図6から図10において省略しているが、第2実施形態以降においても、適宜設けてもよい。
熱伝達部材44は、銅、真鍮またはジュラルミンなどであってもよい。
熱伝達部材44に使用されるアルミニウムは、熱伝性の観点から純度はより高いものがよく、好適には99%以上である。
熱伝達部材44は、超電導コイル10の冷却性の観点から、特に、冷却板41が設けられていない絶縁部材40に設けるのがよい。
よって、冷却時の超電導層25の剥離を防止することができる。
図7(A)は、本発明の第3実施形態にかかる超電導コイル10の絶縁部材40の上面図、図7(B)は、絶縁部材40のV−V断面の断面図、図7(C)は、絶縁部材40のV−V断面の変形例の断面図である。
図7(A)においては、接合層43の図示を省略している。
なお、接合層43は、第1実施形態と同様に、熱収縮率値εが0.3%〜3%のものが使用される。
図面においても、共通の構成または機能を有する領域は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
非接合層71は、例えば、接合層43とパンケーキコイル50の接合面にポリテトラフルオロエチレンで被膜を形成し、絶縁部材40とパンケーキコイル50との接合を防ぐ。
非接合層71を備える非接合領域70は、冷却時にパンケーキコイル50への径方向の外向きの応力を生じさせない。
非接合領域70は、被膜に限らず、例えば図7(C)に示されるように、電気絶縁層42の表面に凹凸を持たせて実現することも可能である。
図8(A)は、本発明の第4実施形態にかかる超電導コイル10の絶縁部材40の上面図、図8(B)は、絶縁部材40のVI−VI断面の断面図である。
図8(A)においては、接合層43の図示を省略している。
図9(A)は、本発明の第4実施形態の変形例、図9(B)は、絶縁部材40のVII−VII断面の断面図、図9(C)は、絶縁部材40のVII−VII断面の変形例の断面図である。
図10(A)は、本発明の第4実施形態の変形例、図10(B)は、絶縁部材40のVIII−VIII断面の断面図、図10(C)は、絶縁部材40のVIII−VIII断面の変形例の断面図である。
ただし、スリットの形状は上述の形状に限られるものではない。
一方、接合層43は、第1実施形態と同様に、熱収縮率値εが0.3%〜3%のものが使用される。
図面においても、共通の構成または機能を有する領域は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
このように、電気絶縁層42にスリットを入れることによって、絶縁部材40の全体としての熱収縮率値εを実質0.3%〜3%であるのと同様の効果を得ることができる。
また、接合層43は、図9(C)および図10(C)に示すようにスリットを埋めるように配置させてもよい。
すなわち、電気絶縁層42の露出領域は非接合領域70と同様に、冷却時にパンケーキコイル50への径方向の外向きの応力を生じさせない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (11)
- 少なくとも超電導層を含む超電導テープおよび絶縁テープを積層させて巻回させたパンケーキコイルと、
前記巻回の中心軸方向に積層される複数の前記パンケーキコイルの間に設けられ、室温から液体窒素温度までの径方向の熱収縮率値が0.3%〜3%の絶縁体である絶縁部材と、を備えることを特徴とする超電導コイル。 - 前記絶縁部材は、
ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、繊維方向を前記絶縁部材の厚み方向に配向させたGFRP、前記絶縁部材の厚み方向に配向させたCFRP、熱可塑性樹脂およびガラスクロスから選ばれた少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の超電導コイル。 - 前記絶縁部材の少なくとも一部に、前記パンケーキコイルの前記接合を防ぐ非接合領域を設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超電導コイル。
- 前記絶縁部材は、
短絡を防止する電気絶縁層と、
前記パンケーキコイルおよび前記電気絶縁層を接合する接合層と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超電導コイル。 - 前記接合層は、
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂および熱可塑性樹脂から選ばれた少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項4に記載の超電導コイル。 - 前記絶縁部材はさらに、
前記パンケーキコイルよりも熱伝達係数の大きい熱伝達部材を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超電導コイル。 - 前記熱伝達部材は、
アルミニウムを主成分とすることを特徴とする請求項6に記載の超電導コイル。 - 前記絶縁部材は、
スリットが入れられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の超電導コイル。 - 前記スリットの形状は、
径方向に沿う形状、同心円形状および渦形状のうちのいずれかであることを特徴とする請求項8に記載の超電導コイル。 - 隣り合う2つの前記パンケーキコイルは、
前記巻回の最内側で予め電気的に接続されて対を成すダブルパンケーキコイルであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の超電導コイル。 - 少なくとも超電導層を含む超電導テープおよび絶縁テープを積層させて巻回させたパンケーキコイルを作成するステップと、
前記巻回の中心軸方向に積層される前記パンケーキコイルの積層面に、室温から液体窒素温度までの径方向の熱収縮率値が0.3%〜3%の絶縁体である絶縁部材を設けるステップと、を含むことを特徴とする超電導コイルの製造方法。
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