JP2014109627A - 映像表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】光漏れが少ない、高い映像品位を与える映像表示装置を提供すること。
【解決手段】本発明の映像表示装置は、一対の主面を持つ透光性部材(2a)及び当該透光性部材(2a)の一方の主面(2c)上に設けられた偏光分離層(2b)を備えた反射型偏光板(2)と、前記反射型偏光板(2)に映像光を与える表示素子(1)と、を具備し、偏光ビームスプリッタとして作用する前記反射型偏光板(2)の偏光分離層(2b)と表示素子(1)の間に透光性部材(2a)が配置され、前記透光性部材(2a)の厚み方向位相差値が|Rth|≦25nmであることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は映像表示装置に関し、特に、反射型偏光板を用いた映像表示装置に関する。
表示素子の一つに液晶表示素子があり、液晶表示素子には、入光する光源光を反射する前後で映像情報を付加する反射型液晶表示素子と、光源光を透過する際に映像情報を付加する透過型液晶表示素子とがある。これらの液晶表示素子においては、偏光の変調によって映像情報の付与が行われる。映像表示装置にこのような液晶表示素子を利用する場合、偏光を与える偏光板を利用することとなるため、光源を出光した光源光が非偏光の場合には、前記光源光の約50%が前記偏光板を透過できず、光源光の強度に比較して、映像光の強度が極端に低くなり、明るい投射映像が得られなかった。
そこで、明るい投影映像を得るために、偏光変換素子を利用する方法や、2つの液晶表示素子を用いて映像光を重畳する方法等が考案された。前者は、偏光変換素子の光学設計の観点から、光学系の小型化が難しく、また、高コストとなる傾向がある。後者は、特許文献1に見られるように、2つの液晶表示素子を利用して、液晶表示素子からの映像光を偏光ビームスプリッタで重畳し、明るい投射映像を得るというものであり、映像表示装置の小型化や、3D映像の表示も可能となる。したがって、明るい映像を投影できる映像表示装置を作製するためには、2つの液晶表示素子を利用し、その映像光を重畳することが有効といえる。なお、映像光を重畳するためには、前記偏光ビームスプリッタで映像光を透過及び反射させる必要がある。
特開2003−131203号公報
2つの液晶表示素子を利用し、その映像光を偏光ビームスプリッタで重畳する場合、従来の誘電体積層型偏光ビームスプリッタでは偏光化できる光の波長域は一般的に狭く、高偏光度化は難しい。また、映像表示装置の小型化に伴い、充分な光路長が得られ難くなり、光源光は拡散光となってしまうため、広角入光する光を偏光分離できる偏光ビームスプリッタが求められていた。このような、広角入光する光を高偏光分離できる偏光ビームスプリッタとして、固有の偏光軸を有した反射型偏光板の利用が検討されている。
このような反射型偏光板においては、偏光分離層を支持する支持体、あるいは偏光分離層を保護する保護層としての透光性部材を備える場合がある。前記透光性部材が厚み方向の位相差値(|Rth|)を有する場合、広角入光する偏光の偏光状態が面内で不均一に変調する、偏光分離層で偏光分離した偏光が変調してしまう等の現象が生じてしまい、暗表示(黒画面表示)が本来の黒色から灰色等になってしまう。これは、反射型偏光板で非透過とすべき偏光の偏光状態を高度に制御できず、透過させてしまうために生じる不具合(以下、光漏れと記載する。)であり、高い映像品位を求められる近年では、許容することが難しい。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、光漏れが少ない、高い映像品位を与える映像表示装置を提供することを目的とする。
本発明の映像表示装置は、一対の主面を有する透光性部材及び当該透光性部材の一方の主面上に設けられた偏光分離層を備えた反射型偏光板と、前記反射型偏光板に映像光を与える表示素子と、を具備し、偏光ビームスプリッタとして作用する前記反射型偏光板の偏光分離層と表示素子の間に透光性部材が配置され、前記透光性部材の厚み方向位相差値が|Rth|≦25nmであることを特徴とする。
本発明の映像表示装置は、一対の主面を有する透光性部材及び当該透光性部材の一方の主面上に設けられた偏光分離層を備えた反射型偏光板と、偏光分離後の光を前記反射型偏光板に与える偏光分離体と、を具備し、偏光ビームスプリッタとして作用する前記反射型偏光板の前記偏光分離層と前記偏光分離体の間に透光性部材が配置され、前記透光性部材の厚み方向位相差値が|Rth|≦25nmであることを特徴とする。
本発明の映像表示装置においては、前記表示素子は第1表示素子及び第2表示素子で構成されており、前記第1表示素子からの映像光が前記反射型偏光板に入光すると共に反射し、前記第2表示素子からの映像光が前記反射型偏光板を透過し、前記第1表示素子及び前記第2表示素子からの映像光を重畳して投射映像とすることが好ましい。
本発明の映像表示装置においては、前記表示素子に光を供給する光源を備え、前記光源からの光が前記反射型偏光板を透過して前記第1表示素子に与えられ、前記光源からの光が前記反射型偏光板で反射して前記第2表示素子に与えられることが好ましい。
本発明の映像表示装置は、光源と、一対の主面を持つ透光性部材及び当該透光性部材の一方の主面上に設けられた偏光分離層を備えた偏光ビームスプリッタとして作用する反射型偏光板と、前記反射型偏光板に映像光を与える表示素子と、前記表示素子からの映像光を位相変調する位相差板と、前記位相変調後の映像光を反射する反射部材と、偏光分離後の光を前記反射型偏光板に与える又は前記反射型偏光板からの光を偏光分離する偏光分離体と、を備え、前記透光性部材の厚み方向における位相差値が|Rth|≦25nmであり、前記反射型偏光板を透過又は反射した映像光が前記反射部材で反射されて往復する間に、前記反射型偏光板と前記反射部材との間に配置された前記位相差板で位相変調され、その後、前記反射型偏光板で反射又は透過して映像を投射することを特徴とする。
本発明の映像表示装置においては、前記反射型偏光板がワイヤグリッド構造面を有するワイヤグリッド型偏光子であることが好ましい。
本発明の映像表示装置においては、前記表示素子からの映像光が前記ワイヤグリッド型偏光子の前記ワイヤグリッド構造面で反射することが好ましい。
本発明の映像表示装置においては、前記反射型偏光板を支持する支持基板を有し、前記支持基板がガラス基板であり、前記反射型偏光板と前記ガラス基板の合計の厚みが1mm以下で、かつ、前記ガラス基板の厚みが0.3mm以上、かつ、前記反射型偏光板の厚みに対する前記ガラス基板の厚みが2倍以上であることが好ましい。
本発明によれば、光漏れが少ない、高い映像品位を与える映像表示装置を実現することが可能となる。
本発明の映像表示装置の一例を示す概略図である。 本発明の映像表示装置の他の例を示す概略図である。 本発明の実施の形態1に係る映像表示装置を示す概略図である。 本発明の映像表示装置に使用可能なワイヤグリッド型偏光子の一例であるワイヤグリッド型偏光板を示す横断面図である。 本発明の実施の形態2に係る映像表示装置の一例を示す概略図である。 本発明の実施の形態2に係る映像表示装置の他の例を示す概略図である。 比較例の映像表示装置を示す概略図である。
上述したように、反射型偏光板において透光性部材を備える場合、透光性部材が厚み方向において位相差値を持つときは、光漏れが生じて高い映像品位が得られないという問題がある。本発明者らは、この問題について鋭意検討した結果、偏光ビームスプリッタとして機能する平板状の反射型偏光板の透光性部材が有する厚み方向位相差値を25nm以下とすることにより、高品位な映像表示を与える映像表示装置を実現できることを見出し、本発明をするに至った。
本発明の映像表示装置は、図1Aに示すように、偏光ビームスプリッタとして機能する反射型偏光板2と、反射型偏光板2に映像光を与える表示素子1と、から主に構成されている。反射型偏光板2は、一対の主面を持つ透光性部材2aと、この透光性部材2aの一方の主面2c上に設けられた偏光分離層2bとを備えている、固有の偏光軸を有した平板状の偏光板である。表示素子1は、透光性部材の他方の主面2d側に配置されており、表示素子1と偏光分離層2bとの間に透光性部材2aが位置するように配置されている。また、反射型偏光板2は、光源を出光する光源光の進行方向(矢印方向)に対してその主面2c,2dを傾斜させて配置されている(光源光の光路の方向と反射型偏光板の主面2c,2dとが所定の角度θを持っている)。
このような構成を持つ映像表示装置においては、反射型偏光板2で、表示素子1からの光を偏光分離して、特定の直線偏光成分の光を透過すると共に、この特定の直線偏光成分と直交する成分の光を反射させて光路の進行方向を変える。そして、偏光分離された光が投射映像(映像情報)として得られる。すなわち、表示素子1からの映像光が反射型偏光板2で入光したときに、映像光が反射型偏光板2で透過して投射映像が得られる。
反射型偏光板の偏光分離層と表示素子との間に、反射型偏光板の透光性部材が配置される場合(光路が、例えば、表示素子→透光性部材→偏光分離層となる場合)、反射型偏光板の偏光分離層で偏光分離された光源光は、透光性部材に傾斜入光すると共に透過することとなる。特に、拡散光の場合には、光源光の偏光状態と入光方向及び入光角度次第で、透光性部材の厚み方向位相差が影響し、偏光状態が変化してしまう。このため、厚み方向位相差が感知されない水準(|Rth|≦25nm)とすることが好ましい。厚み方向位相差を実質的に感知されない水準にするとは、傾斜入光する光がどの方向から入光しても、付加される位相差が概略同等、かつ、概ね偏光状態への影響が無いことを意味する。したがって、透光性部材の厚み方向における位相差値を|Rth|≦25nmとすることにより、投射映像の暗表示(黒画面表示)時の光漏れを低減でき、光漏れの面内不均一性(面内ばらつき)を改善できる。
また、反射型偏光板の偏光分離層と偏光分離性を有する光学部材である偏光分離体との間に、反射型偏光板の透光性部材が配置される場合(光路が、例えば、偏光分離体→透光性部材→偏光分離層となる場合)、偏光分離体を出光した偏光は、上述同様に、透光性部材の厚み方向位相差が影響して偏光状態が変化してしまう場合がある。このため、厚み方向位相差が感知されない水準(|Rth|≦25nm)とすることが好ましいこととなる。すなわち、図1Aにおいて、表示素子1の代わりに、偏光分離後の光を前記反射型偏光板に与える偏光分離体を配置し、偏光ビームスプリッタとして作用する反射型偏光板の偏光分離層と偏光分離体の間に透光性部材が位置するような構成において、厚み方向位相差が感知されない水準(|Rth|≦25nm)とすることが好ましい。
なお、ここでいう厚み方向位相差とは、以下式(1)で算出される値であり、|Rth|とは、Rthの絶対値を意味する。
(式(1))
Rth(nm)=d×{(nx+ny)/2−nz}
三次元屈折率nx、ny及びnzは、アッベ屈折計等で測定したフィルムの平均屈折率(nave)と、遅相軸を傾斜回転軸として40度傾斜させて測定した位相差値(Re40)とから算出できる。dは透光性部材の厚みであり、これら値から厚み方向位相差が算出される。本明細書においては、王子計測器株式会社製KOBRA−WRを用いて算出することとし、波長550nmにおける値を記載した。
また、反射型偏光板2は、図1Bに示すように、一対の主面を持つ透光性の基材である透過性基材2fと、この透過性基材2fの一方の主面2c上に設けられた偏光分離層2bと、透過性基材2fの他方の主面2d上に設けられた支持基板2eと、から構成されていても良い。この場合において、透過性基材2fと支持基板2eとで透光性部材2aを構成する。
本発明の映像表示装置は、図2に示すように、偏光ビームスプリッタとして機能する反射型偏光板2と、2つの表示素子3a,3bと、から主に構成されていても良い。反射型偏光板2は、図1と同様に、透光性部材2aと、偏光分離層2bとを備えており、固有の偏光軸を有した平板状の偏光板である。ここで、表示素子3a,3bは、その主面3c,3dに対して垂直な方向が互いに直交するように配置でき、反射型偏光板2は、その主面3c,3dに対して垂直な方向が表示素子3a及び表示素子3bの主面に対して垂直な方向とそれぞれ概略45度の角度(θ)を持つように配置できる。このような構成において、表示素子3aからの映像光が反射型偏光板2に入光すると共に反射し、映像光の光路が90度変わり、表示素子3bからの映像光が反射型偏光板2を透過し、前記第1表示素子及び前記第2表示素子からの映像光が重畳して投射映像となる。この構成においては、偏光ビームスプリッタとして作用する反射型偏光板2の偏光分離層2bと表示素子3aとの間に透光性部材2aが配置されることとなるため、前記透光性部材の厚み方向位相差値を|Rth|≦25nmとすることが好ましい。なお、図2においては、反射型偏光板2が、その主面3c,3dに対して垂直な方向が表示素子3a及び表示素子3bの主面に対して垂直な方向とそれぞれ概略45度の角度(θ)を持つように配置されている場合について説明しているが、本発明においては、反射型偏光板2の偏光分離層2bと表示素子3aとの間に透光性部材2aが配置される構成であれば、角度(θ)は45度でなくても良い。
以下に、本発明の実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて種々変形して実施することができる。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る映像表示装置は、図3Aに示すように、表示素子として、第1表示素子5a及び第2表示素子5bを用いる。すなわち、実施の形態1に係る映像表示装置は、光源4と、偏光ビームスプリッタである反射型偏光板2と、反射型偏光板2に映像光を与える反射型液晶表示素子である第1及び第2表示素子(以下、第1及び第2反射型液晶表示素子)5a,5bと、を有する。
反射型偏光板2は、一対の主面を持つ透光性部材2aと、この透光性部材2aの一方の主面2c上に設けられた偏光分離層2bとを備えており、固有の偏光軸を有した平板状の偏光板である。第1反射型液晶表示素子5aは透光性部材2aの他方の主面2d側に配置されており、第1反射型液晶表示素子5aと偏光分離層2bとの間に透光性部材2aが位置するように配置されている。第1及び第2反射型液晶表示素子5a,5bは、その主面5c,5dに対して垂直な方向が互いに直交するように配置されており、反射型偏光板2は、その主面5c,5dに対して垂直な方向が第1及び第2反射型液晶表示素子5a,5bの主面に対して垂直な方向とそれぞれ概略45度の角度(θ)を持つように配置することができる。この構成において、透光性部材2aの厚み方向における位相差値を|Rth|≦25nmとすることが好ましい。
このような構成において、表示素子に光を供給する光源4からの光は反射型偏光板2に透過及び反射し、反射光が第1反射型液晶表示素子5aに向けて90度光路を変え、透過光が第2反射型液晶表示素子5bに与えられる。反射光は第1反射型液晶表示素子5aに与えられる。第1反射型液晶表示素子5aに与えられた光は変調されて映像情報が付与された映像光となる。この映像光は反射型偏光板2に向かい、反射型偏光板2を透過する。一方、透過光は第2反射型液晶表示素子5bに与えられる。第2反射型液晶表示素子5bに与えられた光は変調されて映像情報が付与された映像光となる。この映像光は反射型偏光板2に入光すると共に反射し、映像光の光路が90度変わる。このようにして、第1及び第2反射型液晶表示素子5a,5bからの映像光が重畳して投射映像となる。
上記映像表示装置においては、映像光の偏光状態は変化しないため、投射される映像が光漏れすることなく、高品位の投射映像を提供することが可能となる。特に、映像表示装置の小型化においては、充分な光路長が得られ難く、光源光及び映像光は拡散光となってしまうため、厚み方向位相差値を|Rth|≦25nmとすることよる入光方向に依存した偏光状態変化の防止効果は大きなものとなる。
光源としては、特に制限されず、例えば、蛍光ランプ、ナトリウムランプ、LED、有機EL素子、無機EL素子等を用いることができる。映像表示装置を小型化するという観点から、光源としてはLEDを適用することが好ましく、白色LEDや、異なる波長の光を発する複数のLEDを組み合わせて用いることもできる。
反射型偏光板としては、固有の偏光軸を有した反射型偏光板であれば特に制限は無く、例えば、複屈折性樹脂の積層体からなる反射型偏光板や、ワイヤグリッド型偏光子を用いることができる。ここでは、反射型偏光板としてワイヤグリッド型偏光子を用いる場合について説明する。本発明においては、ワイヤグリッド型偏光子の基材が透光性部材であり、微細凹凸構造及び金属ワイヤが偏光分離層である。
ワイヤグリッド型偏光子を作製する方法としては、基材表面に導電体の薄膜を作製し、前記薄膜上にポリマー層を形成した後、干渉露光法や電子線描画法などにより作製したパターンを有する金型を用いてポリマー層上にパターンを形成し、ポリマー層のパターンを用いて導電体の薄膜をドライエッチング法等で金属細線を作製する方法や、微細凹凸形状を有する基材に対して、斜め蒸着法を利用して、基材の凸部の側面に導電体を蒸着する方法が知られている。後者の製造方法にて作製されたワイヤグリッド型偏光子を、以下、ワイヤグリッド偏光板とし、例示する。ワイヤグリッド偏光板は、図4(横断面図)に示すように、基材20と、この基材20の表面に設けられた微細凹凸構造20aと、微細凹凸構造の少なくとも凸部に形成された金属ワイヤ(導電体)21と、を有する。微細凹凸構造20aは、ワイヤグリッド偏光板の基準面の面内方向(図4の左右方向及び奥行方向)に連続して延在するように設けられた複数の凸部A及び複数の凹部Bを有する。なお、ワイヤグリッド偏光板において、基材20を構成する材料と金属ワイヤ21との密着性向上のため、両者の間に両者と密着性が高い誘電体材料を含んでなる誘電体層(図示せず)を設けても良い。このようなワイヤグリッド偏光板は、微細凹凸構造を表面に有する基材に対して、斜め蒸着法を利用して、微細凹凸構造の凸部の側面に選択的に導電体を蒸着することにより作製することができる。
ワイヤグリッド偏光板は、一般的に、金属細線のピッチが入光する光の波長よりも十分に小さい場合、入光する光のうち、金属細線の延在方向と直交する電場ベクトルを有する直線偏光成分の光は透過させ、金属細線の延在方向の電場ベクトルを有する直線偏光成分の光を反射する特性を有する。このようなワイヤグリッド偏光板は、広角に入光する光を低角度依存性で偏光分離できるため、映像表示装置を小型化するために重要な、広角に入光する光を高偏光分離することができる。このため、ワイヤグリッド偏光板は、偏光ビームスプリッタとして好ましい。
<基材>
基材20としては、例えば、ガラス等の無機材料や樹脂材料を用いることができる。中でも樹脂材料を用いて基材を形成することは、ロールプロセスが可能になる、ワイヤグリッド偏光板にフレキシブル性(屈曲性)を持たすことができる、厚みを薄くしても製造工程への適用が可能である等のメリットがあることから、好ましい。基材として用いることができる樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂;アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線(UV)硬化型樹脂;熱硬化型樹脂が挙げられる。
基材20としては、上記材料で構成された基材を単独で用いても良く、UV硬化型樹脂や熱硬化型樹脂で構成された基材と、ガラス等の無機基材、上記熱可塑性樹脂基材、トリアセテート樹脂基材とを組み合わせて用いても良い。また、基材20の主面上に金属ワイヤ21との間の密着性を向上させるための層を予め設けても良い。
基材20の微細凹凸構造20aは所定のピッチPを有する。ピッチPは特に限定されないが、金属ワイヤ21に要求される光学特性に対応させることが望ましい。微細凹凸構造20aのピッチPは、等間隔であることが好ましいものの、実質的に等間隔であればよく、±20%程度までのばらつきは許容できる。一般にワイヤグリッド構造を有する偏光板は、金属ワイヤ(導電体)21の間隔(周期)小さくなるほど幅広い波長帯域で良好な偏光特性を示す。金属ワイヤ21が空気(屈折率1.0)と接し、接着性物質で包埋されない場合には、金属ワイヤ21のピッチを対象とする光の波長の1/4〜1/3とすることで、実用的に十分な偏光特性を示すことになるが、金属ワイヤ21を接着性物質で包埋する場合までを考慮するのであれば、対象とする光の波長の1/5〜1/4の周期とすることが、さらに好ましいといえる。このため、可視光領域の光の利用を考慮する場合、ピッチPを150nm以下とすることが好ましく、さらに好ましくは130nm以下とすることであり、最も好ましくは100nm以下とすることである。ピッチPの下限は製造工程上50nmである。
微細凹凸構造20aの凸部Aの断面形状としては、例えば、台形、矩形、方形、プリズム状や、半円状などの正弦波状等が挙げられる。ここで、正弦波状とは、凹部Bと凸部Aの繰り返しからなる曲線部をもつことを意味する。なお、曲線部は湾曲した曲線をであればよく、例えば、凸部Aにくびれがある形状も正弦波状に含める。透過率の観点から凸部Aの断面形状は矩形又は正弦波状であることが好ましい。
また、基材20は、被偏光光の波長領域において実質的に透明であれば良い。なお、ワイヤグリッド型偏光子の基準面の面内方向(図4の左右方向及び奥行方向)に連続して延在するとは、微細凹凸構造20aが面内方向に実質的に延在していればよく、微細凹凸構造20aの凹部と凸部の各々が厳密に平行に延在している必要はない。
なお、図4に示す構造においては、基材20の表面上に微細凹凸構造20aが設けられているが、基材20上に凹凸構造層を設け、その凹凸構造層に微細凹凸構造を設けても良い。
基材20の表面上に微細凹凸構造20aを設ける方法は特に限定されない。例えば、本件出願人の特許第4147247号公報に記載の方法を挙げることができる。特許第4147247号公報によれば、干渉露光法を用いて作製した微細凹凸構造を有する金属スタンパを用いて、微細凹凸構造を熱可塑性樹脂製部材に熱転写し、微細凹凸構造を付与した熱可塑性樹脂製部材の微細凹凸構造の凸部又は凹部の延在方向と平行な方向に自由端一軸延伸加工を施す。その結果、熱可塑性樹脂製部材に転写された微細凹凸構造のピッチが縮小され、微細凹凸構造を有する樹脂板(延伸済み)が得られる。そして、この樹脂板(延伸済み)から、電解メッキ法などを用いて、微細凹凸構造を有する金属スタンパを作製する。
また、半導体製造で用いるフォトリソグラフィ技術を応用して微細凹凸構造を作製したシリコン系基板等を用いる方法がある。この方法においては、まず、微細凹凸構造を有するシリコン系基板を鋳型として、微細な凹凸構造を表面に有する樹脂板を作製する。続いて、得られた微細凹凸構造を表面に有する樹脂板から、電解メッキ法などを用いて、微細凹凸構造を有する金属スタンパを作製する。この金属スタンパにより、基材表面に微細凹凸構造を転写、形成することで、微細凹凸構造を有する基材を得る。
ここで、微細な凹凸構造を半導体製造のフォトリソグラフィ技術の応用により作製したシリコン系基板等を用いる際に、可視光を照射するとムラが観察される場合がある。すなわち、露光時の継ぎ目に光学的なムラが発生する場合がある。前記シリコン系基板等表面の微細凹凸構造を作製する際、隙間をあけることなくレチクルのパターンを隣接させるようにシリコン系基板上に順次、転写(露光)する方法を挙げることができるが、上述した手法で作製されたシリコン系基板等表面のムラ(以下、露光ムラともいう。)は、隣接する露光領域の境界(継ぎ目)周辺に観察されることがある。本文中では、以降、露光ムラともいう。これは、特定の一方向に微細凹凸構造が整列し、且つ、隣接する凸部の間隔が150nm以下である微細凹凸構造を作製する場合に、特に生じ易い光学的なムラである。この露光ムラを解消するためには、露光位置を高精度に制御することが重要であるが、例えば、シリコン系基板、あるいは当該シリコン系基板の微細凹凸構造を転写したものの、微細凹凸構造を有する面に、例えば、反応性イオンエッチング等の表面処理を施すことによっても、露光ムラを軽減ないし解消できる。
上述した金属スタンパは、基材表面に微細凹凸構造が転写、形成できさえすれば、その外形に制限は無く、平板状、円筒状あるいはその他の形状とすることができる。量産性を考慮すると、円筒状が好ましく、これにより、前記円筒状の金属スタンパを版材として版胴に備え、凹凸形状を連続して形成するロールプロセスが可能となる。円筒状の金属スタンパを作製する方法としては、例えば、平板状の金属スタンパを円筒状に丸め、端部を接合する手法を挙げることができる。ここで、この接合部の表面が粗い場合、ロールプロセスで凹凸形状が形成された基材表面のうち、前記接合部表面が転写された部分は粗面となってしまい、前記凹凸形状が形成された基材は巻いてロール状にされるが、前記粗面部分が重畳する巻内側及び巻外側の基材を押してしまう。なお、ここでいう接合部の表面が粗いとは、うねりや凹凸がある様を意味し、目視した場合、(表面が粗いために)反射が不均一な(鏡面ではない)様を意味する。本発明のワイヤグリッド偏光板の微細凹凸構造は、ピッチが120nm以下と非常に微細であるため、前記粗面部分が重畳する巻外側及び巻内側の基材を押してしまうと、巻外側及び巻内側の基材に形成された微細凹凸構造は変形してしまい、欠陥となってしまう。このような欠点を防止する方法としては、ロールの巻き圧力の調整や、間紙や層間材の利用、基材の硬度調整等を挙げることができるが、特に、円筒状の金属スタンパの接合部表面を研磨することが好ましい。前記接合部表面を、鏡面となるように滑らかにすることにより、微細凹凸構造の変形を防止できる他、微細凹凸構造形成時の基材と金属スタンパの密着性が向上するため、欠陥の発生を低減できる。
<金属ワイヤ>
金属ワイヤ21は、基材20の微細凹凸構造20aに設けられる。金属ワイヤ21は、微細凹凸構造20aの凸部Aの一方の側面に接し、微細凹凸構造20aの概略最低部から最高部に伸びるように設けることが好ましく、また、金属ワイヤ21の少なくとも一部が、微細凹凸構造20aの凸部Aの最高部より上方に位置することが好ましい。
金属ワイヤ21は、所定方向に延在する基材20の表面の微細凹凸構造20aの凸部Aと概略平行に所定ピッチPをもって直線状に形成される。このとき、前記直線状の金属ワイヤ21(金属細線)の周期が可視光の波長よりも小さい場合、金属ワイヤ21の延在方向に対して平行方向に振幅する偏光成分を反射し、垂直方向に振幅する偏光成分は透過する偏光分離部材となる。金属ワイヤ21の材料としては、アルミニウム、銀、銅、白金、金又はこれらの各金属を主成分とする合金を使用することができる。特に、アルミニウムもしくは銀を用いて金属ワイヤ21を形成することにより、可視域光の吸収損失を小さくすることができるため好ましい。
<金属ワイヤの形成方法>
金属ワイヤ21の形成方法は、生産性や光学特性等を考慮し、微細凹凸構造20aを有した基材20の表面の垂直方向に対して傾斜した方向から蒸着を行う、斜め蒸着法を用いることが好ましい。斜め蒸着法とは、基材の断面視において、蒸着源が基材表面の垂直方向に対して、所定の入射角度を持ちながら金属を蒸着、積層させていく方法である。入射角度は、微細凹凸構造の凸部と作製する導電体の断面形状から好ましい範囲が決まり、一般には、5度〜45度が好ましく、より好ましくは5度〜35度である。さらに、蒸着中に積層した金属の射影効果を考慮しながら、入射角度を徐々に減少又は増加させることは、金属ワイヤの高さ等の断面形状を制御する上で好適である。なお、基材表面が湾曲している場合には、基材表面の法線方向に対して傾斜した方向から蒸着を行っても良い。
具体的には、特定方向に所定ピッチをもって概略平行に延在する微細凹凸構造を表面に有した基材表面の被蒸着領域の中心における垂直方向に対して5度以上45度未満となる方向に蒸着源が位置した状態で微細凹凸構造上に金属ワイヤを形成する。さらに好ましくは、基材表面の被蒸着領域の中心における垂直方向に対して5度以上35度未満となる角度方向に蒸着源が位置した状態で微細凹凸構造上に金属ワイヤを形成する。これにより、金属ワイヤを、基材表面の微細凹凸構造の凸部のいずれか一方の側面に選択的に設けることが可能となる。なお、基材を搬送しながら蒸着する場合には、ある瞬間における被蒸着領域の中心と蒸着源の中心が上述した条件となるように蒸着を行ってもよい。
上述した斜め蒸着法を用いた場合、微細凹凸構造の凸部と金属ワイヤの延在方向は等しくなる。本実施の形態におけるワイヤグリッド偏光板の金属ワイヤの形状を達成するための金属蒸着量は、微細凹凸構造の凸部の形状によって決まるが、一般には、平均蒸着厚みは50nmから200nm程度である。ここでいう平均厚みとは、平滑なガラス基板上にガラス面に垂直方向から物質を蒸着させたと仮定した時の蒸着物の厚みのことを指し、金属蒸着量の目安として使用する。
また、光学特性の観点から、不要な金属ワイヤはエッチングにより除去することが好ましい。エッチング方法は、基材や後述する誘電体層に悪影響を及ぼさず、金属ワイヤ部分が選択的に除去できる方法であれば特に限定はないが、生産性の観点及び金属ワイヤの形状制御の観点からは、等方性エッチングが好ましく、例えば、アルカリ性の水溶液に浸漬させるエッチング方法が好ましい。また、等方性エッチングを用いた場合、露光ムラを有したシリコン系基板から作製したワイヤグリッド偏光板の、露光ムラが原因の外見上の欠点を軽減ないし解消できる。本実施の形態におけるワイヤグリッド偏光板のピッチは小さいため、シリコン系基板を利用する場合には、上述した露光ムラの問題が生じやすく、したがって、露光ムラが原因の欠点を軽減ないし解消できる等方性エッチングを用いることは、非常に好適となる。
<誘電体層>
本実施の形態で示すワイヤグリッド偏光板において、基材20を構成する材料と金属ワイヤ21との密着性向上のため、両者の間に両者と密着性が高い誘電体材料を含んでなる誘電体層を好適に用いることができる。例えば、二酸化珪素などの珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はその複合物(誘電体単体に他の元素、単体又は化合物が混じった誘電体)や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)等の金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はそれらの複合物を用いることができる。誘電体材料としては、透過偏光性能を得ようとする波長領域において実質的に透明な材料であればよい。誘電体材料の積層方法には特に限定は無く、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を好適に用いることができる。
<支持基板>
微細凹凸構造20aを有する基材20を保持するものとして、支持基板2eを用いることも可能である。支持基板2eとしては、ガラスなどの無機材料や樹脂材料を用いることができるが、ロールプロセスによるワイヤグリッド偏光板の製造が可能であり、他光学部材との接着が容易な平板状の樹脂材料を用いることが好ましい。また、支持基板2eにより基材20を保持する方法としては、特に制限はなく、例えば、接着性物質の使用や、加熱による融着などを挙げることができる。
樹脂材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)等や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線(UV)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂が挙げられる。また、UV硬化型樹脂や熱硬化型樹脂で構成された部材と、ガラスなどの無機基板、熱可塑性樹脂製基板等とを組み合わせても良い。なお、支持基板の材料にUV吸収剤等の機能性添加物を加えても良いが、高透光性として光の吸収に伴う熱の発生を低減するためにUV吸収剤等の機能性添加物の添加を控えても良く、特に、大光量の光が照射される場合には有効である。
支持基板2eの面内位相差は、偏光度低下を避けるため、所定の波長における面内位相差値を低くすることが好ましく、例えば、可視光の利用を考えるのであれば、波長550nmにおける位相差値を30nm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、15nm以下である。また、ワイヤグリッド偏光板が与える偏光の偏光度の面内ムラ発生を防止するため、支持基板面内の任意の2点における位相差値管理が必要であり、例えば、可視光の利用を考えるのであれば、波長550nmにおける面内位相差値差が10nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは位相差値差5nm以下である。このような特性を有する支持基板としては、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)、シクロオレフィン樹脂(COP)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などがあり、これらの樹脂材料を用いることが好ましい。
ワイヤグリッド偏光板においては、金属ワイヤ21と、基材20の微細凹凸構造20aとが偏光分離層となる。また、基材20が透光性部材となる。なお、基材を支持基板が保持する構成においては、基材及び支持基板、あるいは支持基板が透光性部材となる。なお、透光性部材が少なくとも1層の基材及び支持基板からなる積層構造の場合、前記積層構造全体として、厚み方向の位相差を|Rth|≦25nmとすることが好ましい。
さらに本発明者らは、上述した実施の形態1において、反射型偏光板をワイヤグリッド型偏光子とした場合に、ワイヤグリッド型偏光子の一例であるワイヤグリッド偏光板の好適な配置があることを見出した。
光源からの光は偏光ビームスプリッタであるワイヤグリッド偏光板に入光して偏光分離される。偏光分離されてワイヤグリッド偏光板を反射した光が入光する反射型液晶表示素子を第1反射型液晶表示素子とし、偏光分離されてワイヤグリッド偏光板を透過した光源光が入光する反射型液晶表示素子を第2反射型液晶表示素子とした場合、第2反射型液晶表示素子とワイヤグリッド偏光板の微細凹凸構造及び金属ワイヤが設けられた面(ワイヤグリッド構造面)とが面するよう、配置することが好ましい。
第1反射型液晶表示素子からの映像光はワイヤグリッド偏光板を透過し、第2反射型液晶表示素子からの映像光はワイヤグリッド偏光板を反射して映像を投射する。この際、ワイヤグリッド偏光板のワイヤグリッド構造面が第1反射型液晶表示素子と面するように配置した場合、第2反射型液晶表示素子からの映像光は、ワイヤグリッド偏光板の透光性部材(例えば、基材)と偏光分離層(ワイヤグリッド構造面、微細凹凸構造及び金属ワイヤ)で反射する恐れがあり、映像の二重化が生じる可能性がある。したがって、ワイヤグリッド偏光板のワイヤグリッド構造面を第2反射型液晶表示素子と面するように配置することが好ましいといえる。
また、ワイヤグリッド偏光板は、収差の影響を考慮して、厚みを薄くすることが好ましい。しかしながら、ガラス基板を基材とした場合、薄くすることによる割れの問題が生じ易くなってしまい、ワイヤグリッド偏光板の製造効率低下等の問題が生じてしまう。したがって、ワイヤグリッド偏光板の基材は樹脂材料を含むことが好ましい。さらに好ましくは、基材に樹脂材料を含み、且つ、支持基板をガラス基材とすることである。このような構成を採ることにより、樹脂材料を含む薄い基材を有したワイヤグリッド偏光板を効率良く生産することができ、このワイヤグリッド偏光板を所定の厚みを有したガラス基板に貼着することにより、生産効率の向上と、薄くすることに伴うガラス基板の割れ易さ低減、(金属ワイヤの)自立性及び鏡面性確保といった、様々な効果が期待できる。なお、偏光ビームスプリッタとして用いるワイヤグリッド偏光板の総厚みは、収差等の光学的な影響を考慮して、1mm以下とすることが好ましく、前記ワイヤグリッド偏光板が樹脂材料を含む基材とガラス基板(支持基板)を有する構成の場合には、ガラス基板の厚みが0.3mm以上、且つ、前記ワイヤグリッド偏光板(反射型偏光板)の厚みに対する前記ガラス基板の厚みが2倍以上であることが、長期信頼性やハンドリング性の観点から、好ましい。
実施の形態1に係る映像表示装置は、反射型偏光板としてワイヤグリッド偏光板を用いても良い。反射型偏光板としてワイヤグリッド偏光板を用いた構成について図3Bを用いて説明する。
図3Bに示すように、表示素子として、第1表示素子5a及び第2表示素子5bを用いる。すなわち、実施の形態1に係る映像表示装置は、光源4と、偏光ビームスプリッタであるワイヤグリッド偏光板6と、反射型液晶表示素子である第1及び第2表示素子(以下、第1及び第2反射型液晶表示素子)5a,5bと、を有する。
ワイヤグリッド偏光板6は、一対の主面を持つ基材6bと、この基材6bの一方の主面6c上に設けられた偏光分離作用を持つ金属ワイヤ6aとを備えている。第1反射型液晶表示素子5aは基材6bの他方の主面6d側に配置されており、第1反射型液晶表示素子5aと金属ワイヤ6aとの間に基材6bが位置するように配置されている。第1及び第2反射型液晶表示素子5a,5bは、その主面5c,5dに対して垂直な方向が互いに直交するように配置されており、ワイヤグリッド偏光板6は、その主面5c,5dに対して垂直な方向が第1及び第2反射型液晶表示素子5a,5bの主面に対して垂直な方向とそれぞれ概略45度の角度(θ)を持つように配置することができる。この構成において、基材6bの厚み方向における位相差値を|Rth|≦25nmとすることが好ましい。
このような構成において、光源4からの光は、ワイヤグリッド偏光板6で透過及び反射し、反射光が第1反射型液晶表示素子5aに向けて90度光路を変え、透過光が第2反射型液晶表示素子5bに向かう。反射光は第1反射型液晶表示素子5aに与えられる。第1反射型液晶表示素子5aに与えられた光は変調されて映像情報が付与された映像光となる。この映像光はワイヤグリッド偏光板6に向かい、ワイヤグリッド偏光板6を透過する。一方、透過光は第2反射型液晶表示素子5bに与えられる。第2反射型液晶表示素子5bに与えられた光は変調されて映像情報が付与された映像光となる。この映像光はワイヤグリッド偏光板6で反射し、映像光の光路が90度変わる。このようにして、第1及び第2反射型液晶表示素子5a,5bからの映像光が重畳して投射映像となる。
(実施の形態2)
実施の形態2に係る映像表示装置は、図5Aに示すように、光源4と、光源4からの光を直線偏光にする偏光分離体7と、偏光ビームスプリッタである反射型偏光板2と、反射型偏光板に映像光を与える反射型液晶表示素子である表示素子(以下、反射型液晶表示素子)5と、反射型液晶表示素子5からの映像光を位相変調する位相差板9と、位相変調後の映像光を反射する反射部材8と、を有する。
反射型偏光板2は、一対の主面を持つ透光性部材2aと、この透光性部材2aの一方の主面2c上に設けられた偏光分離層2bとを備えており、固有の偏光軸を有した平板状の偏光板である。反射型偏光板2は、その主面2c,2dに対して垂直な方向が反射型液晶表示素子5の主面5c、偏光分離体7の主面7a、及び位相差板9の主面9aに対して垂直な方向とそれぞれ概略45度の角度(θ)を持つように配置することができる。また、反射部材8は、位相差板9の外側に(位相差板9の主面9b側に)配置されている。また、反射型液晶表示素子5の主面5cと位相差板9の主面9aとが対向するように配置することができる。この構成において、透光性部材2aの厚み方向における位相差値を|Rth|≦25nmとすることが好ましい。
このような構成において、光源4からの光は偏光分離体である偏光分離体7で直線偏光になり、この直線偏光が反射型偏光板2に入光し、反射して光路が90度変えられ、反射型液晶表示素子5に与えられる。反射型液晶表示素子5に与えられた偏光は変調されて映像情報が付与された映像光となる。この映像光は反射型偏光板2を透過した後に位相差板9で変調され、反射部材8で反射される。反射した映像光は位相差板9で変調された後に、反射型偏光板2で反射され光路を90度変えられて投射映像となる。図5Aにおいては、反射型偏光板2の偏光分離層2bと偏光分離体7の間に透光性部材2aが配置されている。ここで、透光性部材2aの厚み方向の位相差値を|Rth|≦25nmとした場合、偏光分離体7を透過した光源4からの偏光の偏光状態は大きく変調することはなく、前記偏光分離体7を透過した光源4からの偏光の一部が反射型偏光板2を反射して光漏れが生じることを防止できる。なお、図5Aにおいて、反射型偏光板2で反射され投射映像となる光を偏光分離体(特に、クリーンアップ偏光板という。)に入光させることによって、明暗比の高い映像を得ることは可能であり、少なくとも、前記偏光分離体7(特に、光源と反射型偏光板の間に配置する偏光分離体をプレ偏光板という。)とクリーンアップ偏光板のうち少なくとも一方を用いることが好ましい。
図5Aにおいては、偏光分離体7が光源4と反射型偏光板2の透光性部材2aとの間に配置されている場合(偏光分離体7をプレ偏光板として用いる場合)について説明しているが、本発明はこれに限定されず、偏光分離体7が、反射型偏光板2で反射され光路を90度変えられて反射型偏光板2を出光した投射映像を受ける位置(図5Aにおいて反射型偏光板2の紙面向って右側(反射型偏光板2の後段))に配置されていても良い。この場合においても、図5Aに示す構成における効果を発揮することができる。
また、実施の形態2に係る映像表示装置は、図5Bに示すような構成でも良い。この映像表示装置は、光源4と、光源4からの光が与えられる偏光ビームスプリッタである反射型偏光板2と、反射型偏光板に映像光を与える反射型液晶表示素子である表示素子(以下、反射型液晶表示素子)5と、反射型液晶表示素子5からの映像光を位相変調する位相差板9と、位相変調後の映像光を反射する反射部材8と、反射型偏光板2からの光を偏光分離する偏光分離体7と、を有する。
反射型偏光板2は、一対の主面を持つ透光性部材2aと、この透光性部材2aの一方の主面2c上に設けられた偏光分離層2bとを備えており、固有の偏光軸を有した平板状の偏光板である。反射型偏光板2は、その主面2c,2dに対して垂直な方向が反射型液晶表示素子5の主面5c、偏光分離体7の主面7a、及び位相差板9の主面9aに対して垂直な方向とそれぞれ概略45度の角度(θ)を持つように配置することができる。また、反射部材8は、位相差板9の外側に(位相差板9の主面9b側に)配置されている。また、反射型液晶表示素子5の主面5cと偏光分離体7の主面7aとが対向するように配置されている。この構成において、透光性部材2aの厚み方向における位相差値を|Rth|≦25nmとする。なお、図5Bにおいては、反射型偏光板2が、その主面2c,2dに対して垂直な方向が反射型液晶表示素子5の主面5c、偏光分離体7の主面7a、及び位相差板9の主面9aに対して垂直な方向とそれぞれ概略45度の角度(θ)を持つように配置されている場合について説明しているが、本発明においては、反射型偏光板2の偏光分離層2bと表示素子5との間に透光性部材2aが配置される構成であれば、角度(θ)は45度でなくても良い。
このような構成において、光源4からの光は反射型偏光板2に入光し、透過して反射型液晶表示素子5に与えられる。反射型液晶表示素子5に与えられた偏光は変調されて映像情報が付与された映像光となる。この映像光は反射型偏光板2で反射して光路が90度変えられ、位相差板9に向けられ、位相差板9で変調され、反射部材8で反射される。反射した映像光は位相差板9で変調された後に、反射型偏光板2を透過した後に偏光分離体7を透過して投射映像となる。
光源4は、レーザーやLED等の光源を用いることが可能であるものの、光源が直線偏光性(偏光度)の高い偏光を発する場合には、偏光分離体7を包含した光源と同義となり、偏光分離体7を除くことが可能となる(図5Aに示す構成の場合)。
図5A及び図5Bに示す映像表示装置の偏光分離体7は直線偏光板であることが好ましく、広角入光する光源光を高偏光度に偏光分離可能な、固有の偏光軸を有した平板状の直線偏光板を用いることが、さらに好ましい。また、反射部材8は、例えば、反射鏡を用いることができ、反射鏡としては平面鏡や湾曲した鏡を用いることができる。湾曲した鏡を用いた場合、映像の拡大が可能となる。また、反射型偏光板2は平板状であるため、ガラス等からなる三角柱を2つ合わせたキューブ型の偏光ビームスプリッタを用いた場合に生じる、見かけ上の長光路化が発生しないため、本実施の形態2における構成では、効率良く映像の拡大が達成でき、これは、映像表示装置の小型化に寄与することとなる。また、位相差板9は、反射部材8と反射型偏光板2の間に配置され、位相変調機能を有していればよく、反射部材8の表面あるいは反射型偏光板2に貼合することが可能であり、所望の特性に応じた位相差板を、所望の配置で用いることができる。
偏光分離体7と反射型偏光板2の偏光分離層2bとの間に透光性部材2aが位置する場合、透光性部材2aの厚み方向の位相差値は|Rth|≦25nmであることが好ましい。また、透光性部材としては、反射型偏光板2の透光性部材2a、反射型偏光板2を支持する支持基板2e、偏光分離体7を保護する基材や支持基板が該当するが、透光性部材が複数存在する場合にはこれらを積層状態(透光性部材が直接積層されておらず、間隔をおいて積層する場合も含む)と見なし、積層状態全体の厚み方向の位相差を|Rth|≦25nmとすることが好ましい。厚み方向の位相差が|Rth|>25nmとなった場合、偏光分離体7を透過した光源4からの偏光の偏光状態が変調することなり、前記偏光分離体7を透過した光源4からの偏光の一部が反射型偏光板2を透過ないし反射できるようになるため光漏れが生じてしまう。
ここで、図5Bにおいて、透光性部材2aの厚み方向の位相差値を|Rth|≦25nmとした場合であって、光源4の後段にプレ偏光板を設けた場合、プレ偏光板を透過した光源4からの偏光の偏光状態は大きく変調することはなく、前記プレ偏光板を透過した光源4からの偏光の一部が反射型偏光板2を反射して光漏れが生じることを防止できる。なお、反射型偏光板2を透過した投射映像を高明暗比とするためにプレ偏光板を用いることは可能であり、少なくとも、前記プレ偏光板とクリーンアップ偏光板のうち少なくとも一方を用いることが好ましい。
また、実施の形態2に係る映像表示装置は、図6に示すように、反射型偏光板としてワイヤグリッド偏光板6を用いても良い。この映像表示装置は、光源4と、光源4からの光を直線偏光にする偏光分離体7と、偏光ビームスプリッタであるワイヤグリッド偏光板6と、ワイヤグリッド偏光板6に映像光を与える反射型液晶表示素子である表示素子(以下、反射型液晶表示素子)5と、反射型液晶表示素子5からの映像光を位相変調する位相差板9と、位相変調後の映像光を反射する反射部材8と、を有する。
ワイヤグリッド偏光板6は、基材6bと、この基材6bの主面6c上に設けられた微細凹凸構造及び金属ワイヤ6aとを備えている。ワイヤグリッド偏光板6は、その主面6c,6dに対して垂直な方向が反射型液晶表示素子5の主面5c、偏光分離体7の主面7a、及び位相差板9の主面9aに対して垂直な方向とそれぞれ概略45度の角度(θ)を持つように配置することができる。また、反射部材8は、位相差板9の外側に(位相差板9の主面9b側に)配置されている。また、反射型液晶表示素子5の主面5cと位相差板9の主面9aとが対向するように配置されている。また、ワイヤグリッド偏光板6は、基材6bが反射型液晶表示素子5側を向き、微細凹凸構造及び金属ワイヤ6aが位相差板9側を向くように配置されている。この構成において、基材6bの厚み方向における位相差値を|Rth|≦25nmとする。
このような構成において、光源4からの光は偏光分離体7で直線偏光になり、この直線偏光がワイヤグリッド偏光板6で反射して光路が90度変えられ、反射型液晶表示素子5に与えられる。反射型液晶表示素子5に与えられた偏光は変調されて映像情報が付与された映像光となる。この映像光はワイヤグリッド型偏光子6を透過した後に位相差板9で変調され、反射部材8で反射される。反射した映像光は位相差板9で変調された後に、反射型偏光板2で光路を90度変えられて投射映像となる。
なお、本実施の形態に係る映像表示装置は、可視光の領域にとどまらず、近赤外光、そして赤外光の領域においても用いることができる。また、上述した実施の形態は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
まず、実施例中の測定値の測定方法について説明する。
<透過率の測定>
透過率の測定には、日本分光株式会社製VAP−7070を用いた。VAP−7070は、光源近傍に測定用偏光子を備えており、測定サンプルに直線偏光の測定光を入光させて分光測定を行うことができる。
<位相差値の測定>
位相差値の測定機器として、王子計測機器社製偏光解析装置KOBRA−WRを用いた。面内位相差値の測定は平行ニコル法を用い、測定光の波長を550nmとして、入光角度が0度の場合の位相差値を面内位相差値とした。
<屈折率の測定方法>
屈折率の測定には、屈折率測定装置(メトリコン社製、レーザー屈折率測定モデル2010)を用いた。硬化型樹脂の測定を行う場合には、硬化処理を行った後に屈折率を測定した。屈折率測定装置による波長532nm、633nm及び824nmの屈折率の測定結果から、コーシーの分散式を利用して屈折率の波長分散図を求め、波長550nmの屈折率を求めた。
次に、本実施例で用いたワイヤグリッド偏光板の作製方法について以下に説明する。
(金型の作製)
微細凹凸構造が面内の一方向に延在し、微細凹凸構造の延在方向と垂直な断面(以下、断面視ともいう。)における微細凹凸構造のピッチが100nmであるシリコン系基板を、フォトリソグラフィ技術により作製した。シリコン系基板の、微細凹凸構造の凸部の最高部から凹部の最低部までの高さは概略100nmであった。
PETフィルム(A−4300、東洋紡社製)上にアクリル系UV硬化型樹脂(屈折率1.52)を約3μm塗布し、各シリコン系基板の微細凹凸構造面がUV硬化型樹脂と接するようにして、それぞれを重畳した。中心波長が365nmであるUVランプを用いて、PETフィルム側から1000mJ/cmのUV照射を行い、シリコン系基板の微細凹凸構造をPETフィルム上に転写した。PETフィルムの表面と断面視における微細凹凸構造をSEMで観察したところ、微細凹凸構造が面内の一方向に延在し、そのピッチは100nmであり、シリコン系基板の微細凹凸構造が転写できていることを確認した。上述した上記PETフィルムの微細凹凸構造面に、導電化処理として、スパッタリングにより白金パラジウムで微細凹凸構造を被覆した後、それぞれにニッケルを電気メッキし、微細凹凸構造を表面に有するニッケルスタンパを作製した。なお、ピッチが100nmであるシリコン系基板から作製したニッケルスタンパを、以下金型と記載する。
(UV硬化型樹脂を用いた凹凸構造転写フィルムの作製)
上述した金型を用いて、表面に微細凹凸構造を有する転写フィルムの作製を行った。基材は、厚み80μmのトリアセチルセルロース樹脂からなるTACフィルム(TD80UL、富士フィルム社製、以下基材A)、厚み80μmのトリアセチルセルロース樹脂からなるTACフィルム(TD80SL、富士フィルム社製、以下基材B)、厚み60μmのトリアセチルセルロース樹脂からなるTACフィルム(ZRD60SL、富士フィルム社製、以下基材C)、厚み188μmのシクロオレフィン樹脂からなるCOPフィルム(アートン、JSR社製、以下基材D)とし、基材A,B,C,Dの面内位相差値及び厚み方向の位相差を調べた。その結果を下記表1に示す。なお、基材Aは概略波長400nm以下の光を吸収するUV吸収機能を有していたが、基材B,C,DはUV吸収機能を有していなかった。
Figure 2014109627
上述した基材A,B,C,Dにアクリル系UV硬化型樹脂(屈折率1.52)を約3μm塗布し、金型を重畳した。中心波長が365nmであるUVランプを操作して、基材側から1000mJ/cmのUV照射を行い、金型の微細凹凸構造をUV硬化型樹脂上に転写した。基材を金型から剥離し、UV硬化型樹脂からなる基材表面に微細凹凸構造を転写した転写フィルムを作製した。
前記転写フィルムの表面と断面視における微細凹凸構造をSEMで観察したところ、隣接する2つの凸部の間隔(ピッチ)は100nmで、微細凹凸構造の凸部の最高部から凹部の最低部までの高さの差である凸部高さは95nmであった。
(スパッタリング法を用いた誘電体層の形成)
次に、転写フィルムの微細凹凸構造を有する基材表面に、スパッタリング法により誘電体層として二酸化珪素を成膜した。スパッタリング装置条件は、Arガス圧力0.2Pa、スパッタリングパワー770W/cm、被覆速度0.1nm/sとし、転写フィルム上の誘電体厚みが平膜換算で3nmとなるように成膜した。
(斜め蒸着法を用いた金属ワイヤの形成)
次に、転写フィルムの微細凹凸構造を有する基材表面に、真空蒸着によりアルミニウム(Al)を成膜した。Alの蒸着条件は、常温下、真空度2.0×10−3Pa、蒸着速度40nm/sとした。断面視において、基材の垂直方向に対する蒸着角を18度とし、Al平均厚みが110nmとなるようにAlを蒸着した。なお、Al平均厚みとは、表面が平滑なガラス基板を転写フィルムと共に蒸着装置内に挿入し、蒸着された平滑ガラス基板上のAl厚みを測定したものであり、平滑ガラス基板上に垂直方向から物質を蒸着させたと仮定した時の蒸着物の厚みのことを指し、蒸着量の目安として使用している。
(不要Alの除去)
不要Alの除去のため、Alを蒸着した転写フィルムを0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液に室温下で浸漬し、その後すぐに水洗してフィルムを乾燥させることで、平行透過率が約84%であるワイヤグリッド偏光板を作製した。なお、基材Aからなるワイヤグリッド偏光板をワイヤグリッド偏光板A、基材Bのものをワイヤグリッド偏光板B、基材Cのものをワイヤグリッド偏光板C、基材Dのものをワイヤグリッド偏光板Dとした。
各ワイヤグリッド偏光板A,B,C,Dの、断面視における微細凹凸構造及び金属ワイヤの形状をSEMにて観察したところ、金属ワイヤは、基材上の微細凹凸構造の凸部の一方の側面に偏在していた。また、金属ワイヤは、微細凹凸構造の概略最低部から最高部に伸び、且つ、少なくともその一部が前記微細凹凸構造の凸部の最高部より上方に設けられていた。
<映像表示装置>
次に、上述したワイヤグリッド型偏光子を用いた映像表示装置の実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
図6に示す構成で、偏光ビームスプリッタとしてワイヤグリッド偏光板Cを用いて実施例1の映像表示装置を作製した。実施例1の映像表示装置においては、ワイヤグリッド偏光板Cは、ワイヤグリッド構造面(微細凹凸構造及び金属ワイヤ)で映像光を反射するよう、ワイヤグリッド構造面が反射部材8と面するように配置した。なお、光源4としては非偏光を発するLEDを用い、偏光分離体7としてはヨウ素を含む二色性染料からなる吸収型偏光板を用い、位相差板9としては、波長550nmでの面内位相差値が140nmのシクロオレフィン樹脂からなる位相差板を用い、反射部材8としては反射鏡を用いた。なお、本実施例では、反射鏡として、二軸に湾曲したものを用いて映像の拡大を行った。
(実施例2)
図6に示す構成で、偏光ビームスプリッタとしてワイヤグリッド偏光板Dを用いること以外は実施例1と同様にして実施例2の映像表示装置を作製した。実施例2の映像表示装置においては、ワイヤグリッド偏光板Dは、ワイヤグリッド構造面(微細凹凸構造及び金属ワイヤ)で映像光を反射するよう、ワイヤグリッド構造面が反射部材8と面するように配置した。
(比較例1)
図6に示す構成で、偏光ビームスプリッタとしてワイヤグリッド偏光板Aを用いること以外は実施例1と同様にして比較例1の映像表示装置を作製した。比較例1の映像表示装置においては、ワイヤグリッド偏光板Aは、ワイヤグリッド構造面(微細凹凸構造及び金属ワイヤ)で映像光を反射するよう、ワイヤグリッド構造面が反射部材8と面するように配置した。
(比較例2)
図6に示す構成で、偏光ビームスプリッタとしてワイヤグリッド偏光板Bを用いること以外は実施例1と同様にして比較例2の映像表示装置を作製した。比較例2の映像表示装置においては、ワイヤグリッド偏光板Bは、ワイヤグリッド構造面(微細凹凸構造及び金属ワイヤ)で映像光を反射するよう、ワイヤグリッド構造面が反射部材8と面するように配置した。
(比較例3)
図7に示す構成で、偏光ビームスプリッタとしてワイヤグリッド偏光板Dを用いて比較例3の映像表示装置を作製した。比較例3の映像表示装置においては、ワイヤグリッド偏光板Dは、ワイヤグリッド構造面が偏光分離体7や反射型液晶表示素子5と面するように配置した。なお、光源4としては非偏光を発するLEDを用い、偏光分離体7としてはヨウ素を含む二色性染料からなる吸収型偏光板を用い、位相差板9としては、波長550nmでの面内位相差値が140nmのシクロオレフィン樹脂からなる位相差板を用い、反射部材8としては反射鏡を用いた。なお、本実施例では、反射鏡として、二軸に湾曲したものを用いて映像の拡大を行った。
上記実施例1,2、比較例1〜3の映像表示装置について映像評価を行った。
実施例1,2、比較例1〜3の映像表示装置によりスクリーン上に投射表示する映像を目視で観察した。各映像表示装置がスクリーン上に白画面、黒画面及び黒画面に白色の碁盤目状格子を表示するように映像表示設定を行い、また、同一スクリーン上に各映像表示装置の映像表示ができるように各映像表示装置の調整を行った。その状態で、各映像表示装置の表示画面は左右方向に横長であり、前記表示画面を左右方向に4等分した左右1/4の映像表示領域を目視観察した。
白画面表示時には、すべての映像表示装置に大きな差異は観察されなかったものの、黒画面に白色の碁盤目状格子を表示したところ、比較例3の映像表示装置のみ、白色の碁盤目状格子が二重化した。また、実施例1,2及び比較例1,2の映像表示装置に黒画面を表示させたところ、比較例1の映像表示装置では面内で濃淡の異なる暗赤色となり、比較例2の映像表示装置では全体的に明灰色となった。一方、実施例1及び実施例2の映像表示装置では面内で概略均一の黒色となった。すなわち、比較例3の映像表示装置では映像の二重化が起こり、比較例1及び比較例2の映像表示装置では光漏れが確認された。
黒画面に白色の碁盤目状格子を表示した際に、実施例1及び実施例2の映像表示装置には映像の二重化が発生していなかったことから、映像光が偏光ビームスプリッタであるワイヤグリッド偏光板を透過及び反射する光学系においては、前記ワイヤグリッド偏光板のワイヤグリッド構造面で映像光を反射することによって、映像の品位向上が可能になったといえる。また、実施例1及び実施例2の映像表示装置では、用いたワイヤグリッド型偏光子の基材の厚み方向位相差が感知されない水準(|Rth|≦25nm)であったため、投射映像の黒画面表示時の光漏れが低減でき、また、光漏れの面内不均一性を効果的に向上できたといえる。
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。また、上述した本発明の態様及び微細凹凸構造の実施の形態等は適宜組み合わせて実施することが可能である。その他、本発明は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
1,3a,3b,5 表示素子
2 反射型偏光板
2a 透光性部材
2b 偏光分離層
2f 透過性基材
4 光源
6 ワイヤグリッド偏光板
7 偏光分離体
8 反射部材
9 位相差板

Claims (8)

  1. 一対の主面を有する透光性部材及び当該透光性部材の一方の主面上に設けられた偏光分離層を備えた反射型偏光板と、前記反射型偏光板に映像光を与える表示素子と、を具備し、偏光ビームスプリッタとして作用する前記反射型偏光板の偏光分離層と表示素子の間に透光性部材が配置され、前記透光性部材の厚み方向位相差値が|Rth|≦25nmであることを特徴とする映像表示装置。
  2. 一対の主面を有する透光性部材及び当該透光性部材の一方の主面上に設けられた偏光分離層を備えた反射型偏光板と、偏光分離後の光を前記反射型偏光板に与える偏光分離体と、を具備し、偏光ビームスプリッタとして作用する前記反射型偏光板の前記偏光分離層と前記偏光分離体の間に透光性部材が配置され、前記透光性部材の厚み方向位相差値が|Rth|≦25nmであることを特徴とする映像表示装置。
  3. 前記表示素子は第1表示素子及び第2表示素子で構成されており、前記第1表示素子からの映像光が前記反射型偏光板に入光すると共に反射し、前記第2表示素子からの映像光が前記反射型偏光板を透過し、前記第1表示素子及び前記第2表示素子からの映像光が重畳して投射映像となることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
  4. 前記表示素子に光を供給する光源を備え、前記光源からの光が前記反射型偏光板を透過して前記第1表示素子に与えられ、前記光源からの光が前記反射型偏光板で反射して前記第2表示素子に与えられることを特徴とする請求項3に記載の映像表示装置。
  5. 光源と、一対の主面を持つ透光性部材及び当該透光性部材の一方の主面上に設けられた偏光分離層を備えた偏光ビームスプリッタとして作用する反射型偏光板と、前記反射型偏光板に映像光を与える表示素子と、前記表示素子からの映像光を位相変調する位相差板と、前記位相変調後の映像光を反射する反射部材と、偏光分離後の光を前記反射型偏光板に与える又は前記反射型偏光板からの光を偏光分離する偏光分離体と、を備え、
    前記透光性部材の厚み方向における位相差値が|Rth|≦25nmであり、前記反射型偏光板を透過又は反射した映像光が前記反射部材で反射されて往復する間に、前記反射型偏光板と前記反射部材との間に配置された前記位相差板で位相変調され、その後、前記反射型偏光板で反射又は透過して映像を投射することを特徴とする映像表示装置。
  6. 前記反射型偏光板がワイヤグリッド構造面を有するワイヤグリッド型偏光子であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の映像表示装置。
  7. 前記表示素子からの映像光が前記ワイヤグリッド型偏光子の前記ワイヤグリッド構造面で反射することを特徴とする請求項6に記載の映像表示装置。
  8. 前記反射型偏光板を支持する支持基板を有し、前記支持基板がガラス基板であり、前記反射型偏光板と前記ガラス基板の合計の厚みが1mm以下で、且つ、前記ガラス基板の厚みが0.3mm以上、且つ、前記反射型偏光板の厚みに対する前記ガラス基板の厚みが2倍以上であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の映像表示装置。
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