JP2014105388A - サーメット被覆材および射出成型機用部材 - Google Patents

サーメット被覆材および射出成型機用部材 Download PDF

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裕記 矢永
Hirobumi Tashiro
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Abstract

【課題】基材と、基材上に形成されたサーメット溶射層とを良好に密着させ、高温環境下での耐久性に優れたサーメット被覆材を提供すること。
【解決手段】基材にサーメット溶射層を被覆してなるサーメット被覆材であって、基材の表面に化学エッチングを施した後、前記基材の前記化学エッチングが施された面に、サーメット溶射層を形成してなることを特徴とするサーメット被覆材を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、サーメット被覆材および射出成型機用部材に関する。
近年、基材の耐食性や耐摩耗性などの表面特性を向上させるための方法として、溶射法が広く用いられている。溶射法においては、基材の表面に金属、セラミックス、またはサーメットなどの粉末を溶射することにより、基材上に、耐食性および耐摩耗性に優れた溶射層を形成することができる。
このような溶射法として、たとえば、特許文献1では、Mo(Ni,Cr)B型の複硼化物を含有した合金粉末を用いて溶射を行うことにより、得られた溶射層の耐食性および耐摩耗性を向上させる技術が開示されている。
特開2009−68052号公報
一方、上述した特許文献1の方法などにより形成される溶射層を有する部材については、その耐食性および耐摩耗性をより優れたものとするために、溶射層と基材との密着性を向上させることが求められている。これに対し、従来より、基材と溶射層との密着性を向上させるために、予め基材にブラスト処理を施すことにより基材表面を粗面化する方法が用いられている。
しかしながら、基材に対してブラスト処理を施す際には、メディアとして用いるアルミナなどの異物が基材の表面に残存してしまう場合があり、このような基材上に溶射層を形成すると、残存した異物により基材と溶射層との密着が阻害されてしまうという問題がある。また、表面に異物が残存した状態の基材に溶射層を形成してなる部材は、たとえば、射出成型機用のスクリュやスクリュヘッドなどの高温環境下で使用される機械の部品として用いた場合には、高温に晒された際に、異物の部分を起点として、基材と溶射層との界面にクラックが発生してしまうという問題もある。
特に、上述した特許文献1の方法では、溶射に用いる合金粉末は、WC(炭化タングステン)からなる超硬粉末などと比較して比重が小さく、また硬質粒子の含有割合も低いため、ブラスト処理を施した後に溶射を行った場合には、合金粉末がブラスト処理用のメディアなどの異物を弾き飛ばすような効果も得られず、依然として基材の表面に異物を残存させてしまうという問題がある。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、基材と、基材上に形成されたサーメット溶射層とを良好に密着させ、高温環境下での耐久性に優れたサーメット被覆材を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなサーメット被覆材を用いて形成される射出成型機用部材を提供することも目的とする。
本発明者等は、基材の表面に化学エッチングを施した後、該基材上にサーメット溶射層を形成することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、基材にサーメット溶射層を被覆してなるサーメット被覆材であって、基材の表面に化学エッチングを施した後、前記基材の前記化学エッチングが施された面に、サーメット溶射層を形成してなることを特徴とするサーメット被覆材が提供される。
本発明のサーメット被覆材において、好ましくは、前記基材が、前記化学エッチングにより、その表面に実質的に異物が存在しない状態で粗面化されたものである。
本発明のサーメット被覆材において、好ましくは、前記基材のロックウェル硬さ(HRC)が35〜62である。
本発明のサーメット被覆材において、好ましくは、前記サーメット溶射層が、MM’B型(M、M’は互いに異なる金属原子)の複硼化物を含む硬質相を35〜90重量%の割合で含み、残部が、M’を主成分として含有する合金を含む結合相からなる。
本発明のサーメット被覆材において、好ましくは、前記硬質相に含まれる前記複硼化物が、Mo(Ni,Cr)B型の複硼化物であり、前記結合相に含まれる前記合金が、Ni基合金である。
本発明によれば、上記いずれかのサーメット被覆材を用いて形成される射出成型機用部材が提供される。
また、本発明によれば、上記いずれかのサーメット被覆材を用いて形成される射出成型機用スクリュが提供される。
本発明によれば、基材と、基材上に形成されたサーメット溶射層とを良好に密着させ、高温環境下での耐久性に優れたサーメット被覆材を提供することができる。また、本発明は、このようなサーメット被覆材を用いて形成される射出成型機用部材を提供することもできる。
図1は、実施例および比較例のサーメット被覆材を切断した断面におけるSEM写真である。 図2は、実施例および比較例のサーメット被覆材について、鋼材とサーメット溶射層との界面における破壊靱性を測定する方法を説明するための図である。
以下、本発明のサーメット被覆材について説明する。
本発明のサーメット被覆材は、予め基材に化学エッチングを施し、該基材上にサーメット溶射層を被覆することにより形成されることを特徴とする。
<基材>
基材としては、サーメット溶射層を形成するための母材となるものであればよく、特に限定されず、各種金属材料を用いることができるが、材料強度に優れるという点より、SCM鋼、SKD鋼、SKH鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、および粉末ハイス鋼などの鋼板や、これらの焼入れ鋼などが挙げられ、なかでも、硬度が高く、得られるサーメット被覆材の耐久性を向上させることができるという点より、SCM鋼、SKD鋼、およびSKH鋼のいずれかの焼入れ鋼が好ましく用いられる。
基材の硬度としては、ロックウェル硬さ(HRC)が、好ましくは35〜62、より好ましくは45〜60、さらに好ましくは55〜60である。基材のロックウェル硬さを上記範囲とすることにより、得られるサーメット被覆材を耐久性に優れたものとすることができ、たとえば、射出成型機用の部材であるスクリュやスクリュヘッドのように高トルク負荷が加わる部分に用いられる部材として好適に用いることができる。
また、基材としては、予めその表面に化学エッチングが施されたものを用いる。本発明によれば、基材の表面に化学エッチングを施すことにより、基材が清浄化され、基材の表面を、異物が存在しない状態で粗面化することができるため、基材上に形成するサーメット溶射層を、基材に対して良好に密着させることができ、得られるサーメット被覆材を耐久性に優れたものとすることができる。特に、本発明によれば、このような化学エッチングによる清浄化により、得られるサーメット被覆材を、基材とサーメット溶射層との界面に異物が存在しない状態とすることができ、その結果として、サーメット被覆材が高温に晒された場合においても、異物とサーメット被覆材との線膨張係数差に起因するサーメット被覆材のクラックの発生を有効に防止することができる。
なお、本発明においては、上記異物とは、基材を構成する材料やサーメット溶射層を構成する材料と実質的に異なる材料から構成されるものを意味し、たとえば、基材表面の粗面化をブラスト処理により行った場合に、基材の表面に混入してしまうメディアなどが挙げられる。なお、このような異物は、基材やサーメット溶射層を構成する材料とは実質的に異なる材料から構成されるものであるため、線膨張係数も異なることとなり、高温に晒された際に、基材やサーメット溶射層との線膨張係数差による、サーメット被覆材のクラックの発生原因となってしまうことが多い。特に、ブラスト処理用のメディア(たとえば、アルミナなど)は、基材やサーメット溶射層との線膨張係数差が大きく、サーメット被覆材のクラックが発生する蓋然性は顕著となる。
これに対し、本発明によれば、基材表面の粗面化を化学エッチングにより行うため、ブラスト処理用のメディアに由来する異物や、その他の異物が基材の表面に混入してしまうことを防止することができ、得られるサーメット被覆材において、このようなクラックの発生を有効に防止することができる。
一方、上記異物とは異なり、基材やサーメット溶射層との線膨張係数差が小さく、上述したクラックを発生させないような物質であれば、基材の表面に混入してもよい。このような物質としては、たとえば、基材が摩耗して発生した粒子や、サーメット溶射層を形成するための溶射用の合金粉末などが挙げられる。なお、これらの物質は、その粒径や体積が小さい方が好ましい。粒径や体積が大きすぎると、基材とサーメット溶射層との接触面積を減少させる原因となってしまい、基材とサーメット溶射層との密着性を低下させてしまうおそれがある。
化学エッチングの方法としては、特に限定されないが、たとえば、ディップ式、スプレー式、スピン式などのウェットエッチングによる方法を用いることができる。ウェットエッチングによる方法を用いる場合には、基材表面を部分的に粗面化する部分エッチング、および基材表面を全体的に粗面化する全面エッチングのいずれを採用してもよいが、基材表面を適度に粗面化できるという点より、部分エッチングが好ましい。なお、部分エッチングの方法としては、特に限定されず、基材表面をマスキングした後に化学エッチングを施す方法が挙げられるが、基材の表面に微細な加工パターンを形成することができ、基材表面における粗面化の程度を制御し易いという点より、フォトエッチングが好ましい。
基材にフォトエッチングを施す方法としては、たとえば、基材上にフォトレジストを塗布し、塗布したフォトレジスト上にマスク用のポジフィルムを密着させた後に露光し、露光した部分を有機溶剤などの現像液を用いて溶解した後、洗浄および乾燥を行い、スプレー式などの方法によりエッチングを行う方法を用いることができる。
なお、ウェットエッチングを行う場合におけるエッチング液としては、たとえば、塩酸や硫酸などの酸性水溶液、塩化第二鉄水溶液、水酸化カリウム水溶液などを用いることができる。エッチング液の濃度や液温については、特に限定されず、基材の種類によって適宜設定すればよい。
<サーメット溶射層>
基材を被覆するサーメット溶射層は、基材上に合金粉末を溶射することで形成される層であり、サーメット溶射層の硬度、すなわち耐摩耗性に寄与する硬質相と、硬質相を結合するためのマトリックスを形成する結合相とから構成される。
サーメット溶射層の硬質相は、耐摩耗性に寄与する硬質成分を含有したものであればよく、特に限定されないが、MM’B型の複硼化物を硬質成分として含有する相が好ましい。ここで、MM’B型の複硼化物において、M、M’は互いに異なる金属原子を示し、Mの具体例としては、Mo,Wなどのうち少なくとも1種の元素が挙げられ、M’の具体例としては、Ni,Cr,Fe,V,Coなどのうち少なくとも1種の元素が挙げられる。これらのなかでも、サーメット溶射層をより耐摩耗性に優れるものとすることができるという観点より、MがMoであり、M’がNiおよびCrであるMo(Ni,Cr)B型の複硼化物や、MがMoであり、M’がFeであるMoFeB型の複硼化物が好ましく、Mo(Ni,Cr)B型の複硼化物が特に好ましい。
なお、Mo(Ni,Cr)B型の複硼化物としては、Moの一部が、W,Nb,Zr,Ti,Ta,Hfなどの他の元素で置換されたものであってよく、さらには、NiまたはCrの一部が、Fe,V,Coなどの他の元素で置換されたものであってもよい。同様に、MoFeB型の硼化物としては、Moの一部が、W,Nb,Zr,Ti,Ta,Hfなどの他の元素で置換されたものであってよく、さらには、Feの一部が、Ni,Cr,V,Coなどの他の元素で置換されたものであってもよい。
サーメット溶射層における硬質相の含有割合は、好ましくは35〜90重量%、より好ましくは40〜68重量%、さらに好ましくは45〜65重量%である。硬質相の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるサーメット被覆材の耐食性および耐摩耗性を向上させることができる。硬質相の含有割合が低すぎると、サーメット溶射層が柔らかくなり過ぎてしまい、耐摩耗性が低下する。一方、硬質相の含有割合が高すぎると、硬質相の分散性が悪くなり過ぎてしまい、強度が低下する。
サーメット溶射層の結合相は、硬質相を結合するためのマトリックスを形成するものであればよく、たとえば、上述した硬質相にMM’B型の複硼化物が含まれる場合には、結合相としては、M’合金を含む相とすることができる。具体的には、硬質相がMo(Ni,Cr)B型の複硼化物を含有するものである場合には、M’がNiおよびCrであるため、結合相に含まれる合金としては、Ni基合金またはCr基合金とすることができ、なかでもNi基合金が好ましい。同様に、硬質相がMoFeB型の複硼化物を含有するものである場合には、M’がFeであるため、結合相に含まれる合金としては、Fe基合金とすることができる。
サーメット溶射層の結合相に含有させるM’合金のうち、Ni基合金としては、たとえば、Niと、Cr,Fe,Co,Mo,Wから選択される少なくとも1種との合金が挙げられる。また、Cr基合金としては、たとえば、Crと、Ni,Fe,Co,Mo,Wから選択される少なくとも1種との合金が挙げられる。あるいは、Fe基合金としては、たとえば、Feと、Ni,Cr,Co,Mo,Wから選択される少なくとも1種との合金が挙げられる。
なお、このような硬質相および結合相から構成されるサーメット溶射層の組成は、特に限定されないが、硬質相がMo(Ni,Cr)B型の複硼化物を含み、結合相がNi基合金を含むものである場合には、B:3〜6.5重量%、Mo:24〜66重量%、Cr:7.5〜20重量%であり、残部がNiおよび不可避的元素からなるものであることが好ましい。
B(ホウ素)は、硬質相となる複硼化物を形成するための元素である。Bの含有割合を上記範囲とすることにより、サーメット溶射層を、適度にMM’B型の複硼化物が形成され、耐摩耗性や強度に優れたものとすることができる。Bの含有割合が低すぎると、硬質相の含有割合が低くなってしまい、これにより耐摩耗性が低下するおそれがある。一方、Bの含有割合が高すぎると、硬質相同士の接触率が高くなってしまい、結果として、機械的強度が低下してしまう。
Mo(モリブデン)は、Bとともに、硬質相となる複硼化物を形成するための元素であるとともに、Moの一部は結合相に固溶し、これにより耐食性を向上させる効果を有する。Moの含有割合が低すぎると、耐摩耗性および耐食性が低下するおそれがある。一方、Moの含有割合が高すぎると、第三相を形成し、機械的強度が低下してしまう。
Ni(ニッケル)は、BおよびMoと同様に、複硼化物を形成するための元素である。また、結合相を構成する主な元素であり、優れた耐食性に寄与する。Ni含有量が10重量%未満の場合は、十分な液相が出現せず緻密なサーメット溶射層が得られず、強度の低下を招いてしまうため、Ni含有量は10重量%以上であることが好ましい。
Cr(クロム)は、複硼化物中のNiと置換固溶し、複硼化物の結晶構造を正方晶に安定化させる効果を有する。また添加したCrは、結合相中にも固溶し、サーメット溶射層の耐食性、耐摩耗性、高温特性、および機械的特性を大幅に向上させる。Cr含有量が多くなりすぎると、Cr53などの硼化物を形成し、強度が低下してしまう。
あるいは、サーメット溶射層を構成する硬質相がMoFeB型の複硼化物を含み、結合相がFe基合金を含むものである場合には、サーメット溶射層の組成は、B:3〜6.5重量%、Mo:24〜66重量%、Cr:7.5〜20重量%、Ni:0〜10重量%、Fe:残部であることが好ましい。
Fe(鉄)は、B,Moとともに、硬質相粒子となる複硼化物を形成するための元素であるとともに、結合相の主成分を構成する。Fe含有割合が10質量%未満の場合は、十分な液相が出現せず緻密なサーメット溶射層が得られず、強度の低下を招くおそれがある。一方、Fe含有割合が高すぎると、第三相を形成し、機械的強度が低下するおそれがある。
<サーメット被覆材>
本発明のサーメット被覆材は、上述した予め化学エッチングを施した基材上に、上述したサーメット溶射層を形成することにより得られる。
本発明においては、サーメット被覆材を構成することとなる基材に、予め化学エッチングを施すことにより、基材の表面を、異物が存在しない状態で粗面化することができるため、これにより、得られたサーメット被覆材を、基材とサーメット溶射層とが良好に密着した、耐久性に優れたものとすることができる。
<サーメット被覆材の製造方法>
次に、本発明におけるサーメット被覆材の製造方法について、説明する。
まず、サーメット被覆材を形成するための基材を準備し、上述したように、基材に化学エッチングを施すことにより、基材の表面を、異物が存在しない状態で粗面化する。
次いで、サーメット溶射層を形成するための合金粉末を製造する。合金粉末は、サーメット溶射層を構成することとなる各原料を合金化することで得ることができる。たとえば、合金粉末を製造する方法としては、サーメット溶射層を構成することとなる各原料を混合した原料粉末にバインダーおよび有機溶剤を添加し、これらをボールミルのような粉砕装置を用いて混合粉砕を行い、混合粉砕後の原料粉末をスプレードライヤーなどにより造粒し、造粒した粉末を焼結した後に分級する方法が挙げられる。
製造する溶射用の合金粉末としては、溶射を行い易いという点より、粒子径が10〜100μmであることが好ましく、20〜75μmであることがより好ましい。
次いで、製造した合金粉末を、溶射法により基材に溶射することでサーメット溶射層を形成する。溶射法としては、サーメット溶射層形成時の熱影響が小さいフレーム溶射、高速フレーム溶射のいずれを採用してもよいが、合金粉末の速度が速く緻密な膜が形成できるという点より、高速フレーム溶射が好ましい。
形成するサーメット溶射層の厚みは、好ましくは100μm〜500μmであり、より好ましくは200μm〜400μmである。形成するサーメット溶射層の厚みを上記範囲とすることにより、耐食性および耐摩耗性に優れたサーメット溶射層を形成することができる。なお、サーメット溶射層の厚みは、たとえば、電磁式膜厚計により測定することができる。
以上のようにして、本発明のサーメット被覆材は製造される。
本発明によれば、製造されたサーメット被覆材は、予め化学エッチングを施した基材を用いて形成されたものであるため、上述したように、基材とサーメット溶射層との密着性に優れ、耐久性に優れたものとなる。
なお、基材とサーメット溶射層との密着性の向上を図る方法としては、従来より、基材にブラスト処理を施し、基材の表面を粗面化する方法が用いられている。しかしながら、基材に対してブラスト処理を施す場合には、メディアとして用いるアルミナなどの異物が基材の表面に残存してしまう場合があり、このような基材上にサーメット溶射層を形成すると、残存した異物により基材とサーメット溶射層との密着が阻害されてしまうという問題がある。また、表面に異物が残存した状態の基材上にサーメット溶射層を形成して得られる部材は、高温環境下で使用される機械の部品として用いられた場合に、高温に晒されると、基材およびサーメット溶射層と異物との線膨張係数差により、クラックが発生してしまうという問題もある。
これに対し、本発明によれば、基材の表面を異物が存在しない状態で粗面化することができるため、得られたサーメット被覆材を、基材とサーメット溶射層とが良好に密着したものとすることができる。これにより、本発明のサーメット被覆材は、高温に晒された際においても、基材とサーメット溶射層との界面におけるクラックの発生を有効に防止することができ、高温環境下での耐久性が要求される用途、たとえば、350℃程度の高温環境下で使用される射出成型機用部材(射出成型機用のスクリュやスクリュヘッドなど)の用途として好適に用いることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
<実施例1>
B:5重量%、Mo:51重量%、Cr:17.5重量%、Ni:残部の比率で混合してなる原料粉末100重量部に対して、5重量部のパラフィンを加え、これをアセトン中で、振動ボールミルにより25時間湿式粉砕を行った。次いで、作製した粉砕粉を、窒素雰囲気下において150℃で18時間乾燥した。そして、乾燥した粉砕粉を、アセトンと1:1の重量割合で混合した後に、スプレードライヤーによって造粒し、造粒した粉末を真空にて1150℃で1時間保持して焼結させ、これを分級することにより、溶射用の合金粉末を得た。
次いで、ビッカース硬さ(HV)が730(ロックウェル硬さ(HRC)換算で61)であり、ヤング率が206000MPaであるSKD11鋼の鋼材を準備し、準備した鋼材のサーメット溶射層を形成することとなる面に、前処理としてフォトエッチングを施した。なお、フォトエッチングは、鋼材上にフォトレジストを塗布し、塗布したフォトレジスト上に、マスク用のポジフィルムを密着させた後に露光し、次いで、露光した部分を有機溶剤で溶解した後、洗浄および乾燥を行い、スプレー式により化学エッチングを施すことにより行った。これにより、表面が清浄化および粗面化され、表面の算術平均粗さRaが6.7μmである鋼材を得た。
そして、化学エッチングを施した鋼材に対し、高速フレーム溶射機(TAFA社製、JP−5000)を用いて、上記にて調製した溶射用の合金粉末を溶射することで、鋼材上にサーメット溶射層を形成し、サーメット被覆材を得た。なお、サーメット溶射層の形成は、溶射距離(基材と溶射ガンの距離):300mm、灯油量:6gph、酸素流量:1850scfhの条件で行った。また、これにより形成されたサーメット溶射層のビッカース硬さ(HV)は1050であった。溶射層のヤング率については、測定が困難であったため、焼結体のヤング率を代用し300000MPaとした。そして、形成されたサーメット溶射層は、Mo(Ni,Cr)B型の複硼化物を含む硬質相を62重量%の割合で含み、残部がNi基合金の結合相からなるものであった。
次いで、得られたサーメット被覆材を切断し、切断した面における鋼材とサーメット溶射層との界面部分を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−840A)により測定することで、図1(A)に示すSEM写真を得た。その後、サーメット被覆材を、温度:350℃、時間:100hrの条件で熱処理し、再度、鋼材とサーメット溶射層との界面部分を走査型電子顕微鏡により測定することで、図1(B)に示すSEM写真を得た。
次いで、熱処理を施したサーメット被覆材について、鋼材とサーメット溶射層との界面における界面破壊靱性の測定を行った。すなわち、界面破壊靱性の測定は、サーメット被覆材を切断し、切断面をラッピングにより研磨した後、図2に示すように、鋼材とサーメット溶射層との界面に、ビッカース硬度計(AKASHI社製、型番:MVK−G2)を用いてダイヤモンド圧子を荷重49Nで押し込み、界面にき裂が発生した際の荷重Pおよびき裂長さ2aを測定し、下記式(1)および式(2)に示すLesageとChicotの評価式にしたがい、界面破壊靱性Kを求めることで行った。ここで、界面破壊靱性Kは、界面に荷重を加えた際における、き裂伝播に対する耐性を示す値であり、界面破壊靱性Kが5MPa・m1/2以上である場合には、鋼材とサーメット溶射層は、界面にき裂が入り難く、界面における密着性に優れているものと判断した。
なお、上記式(1)中、Eは鋼材のヤング率、Eはサーメット溶射層のヤング率、Hは鋼材のビッカース硬さ、Hはサーメット溶射層のビッカース硬さ(HV)である。結果を表1に示す。
<比較例1>
鋼材に対する前処理として、フォトエッチングに代えてブラスト処理を行った点以外は、実施例1と同様にサーメット被覆材を作製した。なお、ブラスト処理は、粒度#24のホワイトアルミナを、噴射圧力:5kg/cm、噴射時間:10minの条件にて鋼材に吹き付けることで行い、これにより、表面の算術平均粗さRaが6.1μmである鋼材を得た。そして、このようにして得られたサーメット被覆材について、実施例1と同様に、鋼材とサーメット溶射層との界面部分を走査型電子顕微鏡により測定し、界面破壊靱性Kの測定を行った。熱処理前の断面のSEM写真を図1(C)に、熱処理後の断面のSEM写真を図1(D)にそれぞれ示し、界面破壊靱性Kの測定結果を表1に示す。
図1(A)および図1(B)に示すように、鋼材に対する前処理を化学エッチング(フォトエッチング)により行うことでサーメット被覆材を得た実施例1においては、化学エッチングにより鋼材の表面の清浄化および粗面化が適切に行われたため、鋼材とサーメット溶射層との界面に異物の存在は確認されず、サーメット被覆材を熱処理した後において、界面におけるクラックの発生は見られなかった。また、表1に示すように、実施例1のサーメット被覆材は、界面破壊靱性Kが5MPa・m1/2以上であり、この結果より、鋼材とサーメット溶射層との密着性に優れるものと判断することができる。
一方、図1(C)および図1(D)に示すように、鋼材に対する前処理をブラスト処理により行うことでサーメット被覆材を得た比較例1においては、鋼材とサーメット溶射層との界面にブラスト処理で用いたホワイトアルミナが残存してしまい、サーメット被覆材を熱処理した後において、界面にクラックが発生してしまったことが確認された。また、表1に示すように、比較例1のサーメット被覆材は、界面破壊靱性Kが5MPa・m1/2未満となってしまい、この結果より、鋼材とサーメット溶射層との密着性に劣るものであると判断することができる。

Claims (7)

  1. 基材にサーメット溶射層を被覆してなるサーメット被覆材であって、
    基材の表面に化学エッチングを施した後、前記基材の前記化学エッチングが施された面に、サーメット溶射層を形成してなることを特徴とするサーメット被覆材。
  2. 前記基材が、前記化学エッチングにより、その表面に実質的に異物が存在しない状態で粗面化されたものであることを特徴とする請求項1に記載のサーメット被覆材。
  3. 前記基材のロックウェル硬さ(HRC)が35〜62であることを特徴とする請求項1または2に記載のサーメット被覆材。
  4. 前記サーメット溶射層が、MM’B型(M、M’は互いに異なる金属原子)の複硼化物を含む硬質相を35〜90重量%の割合で含み、残部が、M’を主成分として含有する合金を含む結合相からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサーメット被覆材。
  5. 前記硬質相に含まれる前記複硼化物が、Mo(Ni,Cr)B型の複硼化物であり、
    前記結合相に含まれる前記合金が、Ni基合金であることを特徴とする請求項4に記載のサーメット被覆材。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のサーメット被覆材を用いて形成されることを特徴とする射出成型機用部材。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のサーメット被覆材を用いて形成されることを特徴とする射出成型機用スクリュ。
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