JP2014173180A - 複合溶射被膜、溶射用複合粉体、複合溶射被膜の形成方法、及び、複合粉体溶射被膜部材 - Google Patents

複合溶射被膜、溶射用複合粉体、複合溶射被膜の形成方法、及び、複合粉体溶射被膜部材 Download PDF

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Abstract

【課題】サーメット成分を主成分として、金属ガラス成分を含有させることにより、耐摩耗性を始めとしたサーメット特有の機能に、金属ガラス特有の耐食性などの多機能性能をも同時に発揮できる複合溶射被膜を提供すること。
【解決手段】複合溶射被膜は、金属で固めた硬質粒子からなる溶射用第1粉体(サーメット粉体)、及び、アモルファス相の金属ガラスからなる溶射用第2粉体(金属ガラス粉体)を、同時に溶射形成されたものである。前記金属で固めた硬質粒子からなる第1被膜成分(サーメット成分)、及び、前記アモルファス相の金属ガラスからなる第2被膜成分(金属ガラス成分)を併せた全体に対し、前記第1被膜成分の構成割合が、40%を超え、95%以下である。
【選択図】 図5

Description

本発明は、硬質粒子、金属および金属ガラスを含む複合溶射被膜、その形成方法、複合溶射被膜を有する機械加工品などに関する。
溶射材料として実用化されている材料は、金属(純金属、合金を含む)、セラミックス、セラミックスと金属の複合体であるサーメットに大別される。サーメット(Cermet)はセラミックス(Ceramics)と金属(Metal)を合わせた造語であり、セラミックスの持つ硬さ、耐摩耗性、耐熱性、耐酸化性、耐化学薬品性と、金属の持つ粘り、靭性を兼ね備えた材料として開発され、このセラミックス材料としては炭化タングステン(WC)系、炭化クロム(Cr)系が多く用いられている。組成割合としては、一般的に硬質粒子であるセラミックスの含有量の方が多く、金属は主に硬質粒子間を繋ぐバインダー成分として使われる。金属の中にセラミックスが少量分散されたものは、サーメットには分類されない。
特開2002−220652号公報 特開2006−328496号公報 特許第3946226号公報
サーメットは、セラミックスと金属の長所を兼ね合わせた溶射材料として、すでに工業用ロールやボイラーチューブ、ガスタービン等、様々な分野・用途で実用化されているが、以下のような課題がある。最も代表的なサーメット材料であるWC/Coは、硬質粒子であるWCに、バインダー成分としてCoが8〜25%の割合で含有される。セラミックスであるWCは耐摩耗性、耐食性共に高いが、Coは耐食性に劣り、腐食性雰囲気や酸化雰囲気ではCoが選択的に腐食されてしまうため、耐食用途での適用が難しい。金属の中でも比較的耐食性の高いNiやNiCr等をバインダー成分として使ったサーメットもあるが、その耐食性能はNiやNiCrの耐食性に依存するため、その耐食性能には限界がある。一方で、バインダー成分の金属を増やすと、サーメット溶射被膜の靭性を向上させる事ができるが、硬度や耐摩耗性が大幅に低下してしまうといった問題があった。
さらに、サーメット粉体にCr、Ni等の金属粉体を3〜20%の範囲で混合して溶射することにより、耐衝撃性を改善する技術(特許文献1)や、WC系サーメット粉体にNiを主成分とする合金粉体を5〜40%程度混合して溶射する事により耐磨耗性・耐食性に優れた溶射被膜(特許文献2)が公開されているが、いずれも耐食性については混合する金属材料の組成と結晶構造に依存する事から、大幅な耐食性の改善を図る事は困難であった。
また、発明者らは、金属ガラスが有する高強度特性、硬度特性、低ヤング率特性、耐食性等を存分に発揮させ得る金属ガラスの溶射被膜の開発に長年取り組んできた(特許文献3参照)。そして、このような金属ガラスの溶射被膜を基礎として、さらに優れた特性を溶射被膜に付与させる開発を進めてきた。例えば、非特許文献1には、金属ガラスの溶射被膜の耐摩耗性の向上を図って、金属ガラスの溶射被膜中にセラミックス硬質粒子と金属からなる粉体(サーメット)を分散させることが開示されている。しかしながら、非特許文献1は、金属ガラスの溶射被膜について、その耐摩耗性の向上を目的とするものであり、本発明の課題のようなサーメット溶射被膜の耐食性の向上を図るものではなかった。
本発明の目的は、サーメット成分を主成分として、金属ガラス成分を含有させることが可能な複合溶射被膜の形成方法を見出し、耐摩耗性を始めとしたサーメット特有の機能に、金属ガラス特有の耐食性などの多機能性能をも同時に発揮できる複合溶射被膜を提供することである。
すなわち、本発明にかかる複合溶射被膜は、金属で固めた硬質粒子(サーメット)からなる溶射用第1粉体、及び、アモルファス相の金属ガラスからなる溶射用第2粉体、を同時に溶射形成された複合溶射被膜であって、
前記金属で固めた硬質粒子からなる第1被膜成分、及び、前記アモルファス相の金属ガラスからなる第2被膜成分を併せた、全体に対する前記第1被膜成分の構成割合が、40%を超え、95%以下であることを特徴とする。
ここで、前記金属ガラスは、Ni基又はFe基であることが好ましい。
また、前記硬質粒子は、炭化物、窒化物、酸化物、硼化物のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、前記金属が、Ni、Cr、Co、Fe、Moのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
前記複合溶射被膜は、熱伝導率が、前記第2被膜成分のみの被膜の熱伝導率と比べて、10%以上、40%以下の範囲内の値まで低下していることを特徴とする。
また、前記複合溶射被膜は、1mol塩酸水溶液におけるアノード分極曲線測定において(温度25℃、参照電極SCE)、電位0から0.6Vの範囲で、前記複合溶射被膜に生じる電流密度が、前記第1被膜成分のみの被膜に生じる電流密度と比べて、低下していることを特徴とする。
一方、本発明にかかる溶射用複合粉体は、金属で固めた硬質粒子からなる溶射用第1粉体、及び、アモルファス相の金属ガラスからなる溶射用第2粉体を併せた全体に対し、前記溶射用第1粉体の配合割合を、40%を超え、95%以下として、均一に混合したものであることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる複合溶射被膜の形成方法は、上記の溶射用複合粉体を原料として用いて、前記溶射用複合粉体のうちの前記溶射用第2粉体の少なくとも一部を、溶融させることなく、過冷却液体状態で基材上に溶射することによって、
前記金属で固めた硬質粒子からなる第1被膜成分と前記アモルファス相の金属ガラスからなる第2被膜成分とをこれらの積層体中に均一に分散させることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる複合粉体溶射被覆部材は、基材の少なくとも一部の表面に前記複合溶射被膜が形成され、前記第1被膜成分と前記第2被膜成分を併せた全体に対し、前記第1被膜成分の構成割合が、45%を超え、90%以下でありことを特徴とする。
ここで前記複合粉体溶射被覆部材が金属製ロールであることが好ましい。
また、前記複合粉体溶射被覆部材が金型であることが好ましい。
以上の構成によれば、第1被膜成分(サーメット等)を主成分として、第2被膜成分(金属ガラス)が一定の構成割合で含まれているから、サーメット等の高い耐摩耗性等を発揮しつつ、金属ガラスに起因する耐食性などの多機能特性をも発揮し得る複合溶射被膜を提供することができる。
特に、主成分としてのサーメット等の構成割合を高比率にすることで、サーメット等に起因する高い耐摩耗性等を発揮しつつ、サーメット等と金属ガラスとの組合せにより下記特性を効果的に改善することができる。
(耐食性の向上)
金属ガラスのみの溶射被膜は、非常に優れた耐食性を示すことが知られている。一方で、サーメットのみの溶射被膜の耐食性は、バインダー成分である金属の耐食性に大きく依存する事が知られている。この耐食性については、アノード分極測定において溶射被膜の電流密度値によって判断される。通常、金属ガラスのみの溶射被膜の電流密度は、サーメットのみの溶射被膜の10分の1以下である(図5中の比較例参照)。本発明にかかる複合溶射被膜においては、図5に示すように、サーメット等を主成分として金属ガラスの構成割合をある範囲にすることで、サーメット等に起因する高い耐摩耗性を発揮させつつ、金属ガラスに起因する優れた耐食性をも発揮させることができる。このような複合溶射被膜が表面に形成された複合粉体溶射被覆部材、例えばロール若しくは金型に適用することで、優れた耐食性を具備したロール若しくは金型を提供することができる。
(断熱性の向上)
また、ZrOを主としたセラミックスの溶射被膜の熱伝導率は低いため、断熱性を必要とする金型若しくはロールに適用されているが、セラミックス単体の溶射被膜は靭性が低く耐衝撃性、耐剥離性等の機械的特性に劣るという課題がある。一方、金属ガラスのみの溶射被膜は、優れた強度・靭性を有するとともに、セラミックスには及ばないものの、非晶質構造である事に起因して結晶金属よりも低い熱伝導率を示す。本発明にかかる複合溶射被膜においては、ZrO系等の熱伝導率の低いセラミックスを含むサーメット等を主成分として金属ガラスの構成割合をある範囲にすることで、セラミックスに起因する優れた低熱伝導性を発揮させつつ、金属ガラスに起因する優れた靭性と低熱伝導性を発揮させることができる。このような複合溶射被膜が表面に形成された複合粉体溶射被覆部材、例えばロール若しくは金型に適用することで、優れた断熱性を具備したロール若しくは金型を提供することができる。
さらに、複合紛体の溶射においては、溶射成膜時に、サーメットの硬質粒子で過冷却液体状態にある金属ガラスが更に叩かれることにより、金属ガラスに圧縮効果に類似した作用が生じ、より緻密な被膜が得られ、硬度等の特性が向上する。
また、溶射用第1粉体の溶射歩留りの高い複合溶射被膜を提供することができる。
本発明の試験例1−1に係る複合溶射被膜の断面および表面画像である。 本発明の試験例1−2に係る複合溶射被膜の断面および表面画像である。 本発明の実施例2−1に係る複合溶射被膜の断面画像である。 本発明の実施例2−2に係る複合溶射被膜の断面画像である。 本発明の実施例2に係るサーメット成分の構成割合を示すグラフである。 本発明の実施例3に係る複合溶射被膜のアノード分極測定における電流密度を示すグラフである。 本発明の実施例4に係る複合溶射被膜のアノード分極測定における電流密度を示すグラフである。 本発明の実施例5に係る複合溶射被膜の断面画像と、熱伝導率を示す図である。
以下、本発明における複合溶射被膜、溶射用複合粉体について説明する。本発明の複合溶射被膜は、異なる材料からなる複数の溶射用粉体を均一に混合したものを原料として、基材上に溶射形成されたものである。複数の粉体を、溶射用第1粉体、溶射用第2粉体と呼ぶ。
<溶射用第1粉体(サーメット粉体)>
溶射用第1粉体は、例えばサーメット粉体であり、以下のような複数の硬質粒子と、これら硬質粒子を結合するバインダーとして作用する金属とから、造粒−焼結法などの既存プロセスによって作製される。造粒工程で、原料の硬質粒子(セラミックス:WCなど)、及び、金属(Coなど)の結合材に、造粒用バインダー(例えばPVA)を加えて混合し、粒径を調整し球状の粉末を生成する。そして、焼結工程で、球状の粉末を焼結してPVA等を飛ばし、硬質粒子と金属の結合材からなるサーメット粉体を得る。このように、一般には金属バインダーの融点を超える加熱工程を経て複合化されている。
サーメット粉体中の硬質粒子は、一般に、炭化物、窒化物、酸化物、硼化物のうちの少なくとも1つを含むものである。また、バインダーとして機能する金属は、Ni、Cr、Co、Fe、Moのうちの少なくとも1つを含むものであり、様々なNi合金、Cr合金、Co合金などを利用できる。サーメット粉体としては、例えば、WC/12%Co、Cr32/25%NiCr、ZrO2−8%Y23/25%NiCrなどを採用するとよい。なお、サーメット粉体中の金属部分の配合率は、一般的に10〜50%である。また、サーメット粉体の粒度は、5〜70μmである。
<溶射用第2粉体(金属ガラス粉体)>
溶射用第2粉体は、アモルファス相の金属ガラスからなる。金属ガラスは、アモルファス相固体から加熱すると結晶化前に明瞭なガラス遷移と広い過冷却液体領域を示すことが一つの大きな特徴であり、熱的挙動において通常のアモルファス合金とは明確に区別される。本発明の金属ガラスにおいては、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す)の式で表される過冷却液体領域の温度間隔ΔTxが30℃以上、さらには50℃以上であることが好適である。このような大きなΔTxを有する金属ガラスは、非晶質形成能や加工性に優れ、後述するような緻密なアモルファス溶射被膜を得る上でも有利である。なお、通常のアモルファス合金ではΔTx≒0である。ガラス遷移温度Tgは、350〜700℃のものが好ましい。
特に、耐食性等に優れる金属ガラスとしては、Ni基としては、Ni80−xCr16[ただし、下付数字は原子%を示す。3≦x≦30原子%]で示される組成を有するもの等が挙げられる(Material Transactions,Vol.48,No.12(2007)pp.3176〜3180参照)。また、Fe基としては、Fe100-a-b-cCrTM(C1-XXyc[ただし、式中、TM=V,Nb,Mo,Ta,W,Co,Ni,Cuの少なくとも一種以上、a,b,c,x,yは、それぞれ5原子%≦a≦30原子%,5原子%≦b≦20原子%,10原子%≦c≦35原子%,25原子%≦a+b≦50原子%,35原子%≦a+b+c≦60原子%,0.11≦x≦0.85,0≦y≦0.57]で示される組成を有するもの等が挙げられる(特開2001−303218号公報参照)。例えば、Ni基の金属ガラスとしては、Ni65Cr15164を採用できる。また、Fe基の金属ガラスとしては、Fe43Cr16Mo161510、Fe43Cr16Mo1151510、を採用できる。
本発明で用いる金属ガラスは、強度、耐食性、コストを考慮して、金属ガラスの主成分(すなわち、金属ガラスの構成元素のうちで原子%が最大である元素)がNi、あるいはFeであるものが好ましい。
また、金属ガラス中に結晶相が含まれると耐食性に悪影響を及ぼしやすいため、金属ガラス中における結晶相含有率はできるだけ低い方がよく、例えば、20%以下、さらには10%以下が好ましい。金属ガラスがアモルファス単一相であることがより好ましい。
<溶射用複合粉体の配合割合>
ここで、溶射用第1粉体のサーメット粉体と溶射用第2粉体の金属ガラス粉体からなる溶射用複合粉体の全体に対するサーメット粉体の配合割合は、40%を超え、95%以下である。好ましくは、45%以上、90%以下の配合割合である。より好ましくは、50%以上、80%以下の配合割合である。
<溶射方法>
まず、溶射用第1粉体のサーメット粉体と溶射用第2粉体のアモルファス相の金属ガラス粉体とを個別に作製して、所定の配合割合で均一に混合したものを溶射用複合粉体とする。この溶射用複合粉体を用いて、このうちの金属ガラス粉体の少なくとも一部を溶融させずに、当該金属ガラス粉体を過冷却液体状態にして、サーメット粉体と共に基材上に溶射する。これによって、アモルファス相の金属ガラス成分(第2被膜成分)と、40%を超え、95%以下の構成割合でサーメット成分(第1被膜成分)とが分散された複合溶射被膜を形成できる。
<溶射用第1粉体(サーメット粉体)単体の溶射方法>
サーメット粉体の溶射には、プラズマ溶射、爆発溶射、高速フレーム溶射などが用いられる。また、溶射用サーメットの硬質粒子材料としてセラミックスを使った、例えばWC系サーメットであるWC/12%Coが多く用いられる。高融点であるセラミックス材料単体を溶射する場合、高温のフレームとなるプラズマ溶射で行われている。しかしながら、WC系サーメットの場合、溶射温度が高温すぎると顕著な分解を生じ、WC等の脆い成分が出現する等、組成被膜の特性が著しく低下する場合がある。一方、爆発溶射、高速フレーム溶射は、フレーム速度が高く、フレーム温度はプラズマ溶射より低温である。低温かつ短い加熱時間により、セラミックス成分の分解や金属成分の酸化など被膜劣化の原因となる現象が起こりにくい。さらに高速な粒子が衝突して積層するため、被膜が緻密となり、基材界面や粒子間の密着性も高まり、剥離も起こりにくくなる。そのため、最近では、サーメット材料は爆発溶射や高速フレーム溶射で成膜されることが主流であり、特に装置が普及している高速フレーム溶射で成膜される。
<溶射用第2粉体(金属ガラス粉体)単体の溶射方法>
過冷却液体状態では、金属ガラスは粘性流動を示し、溶融体に比べて粘性が高い流動体となる。このため、過冷却液体状態にある金属ガラス粉体が基材表面に衝突すると、スプラッシュをほとんど生じずに瞬時に薄く潰れて基材表面に広がり、厚みが非常に薄い良好なスプラットを形成することができる。そして、このようなスプラットの堆積により、緻密でピンホールのない溶射被膜が形成される。また、スプラットは過冷却液体状態のまま冷却されるので、結晶相を生成せず、アモルファス相のみが得られる。このように、被膜中の金属ガラス成分は、アモルファス相であるとともに、気孔が少なく緻密でピンホールがないことから、耐食性に優れる。
また、一般に大気中での溶射の場合、溶射材料を溶融させて基材に衝突させるため、溶射材料の酸化物が被膜中に含まれてしまい、被膜の特性に悪影響を及ぼすが、アモルファス相の金属ガラス粉体を溶融させずに過冷却液体状態にまで加熱して衝突させるのであれば、大気中で溶射したとしても酸化の影響がほとんどない。
従って、アモルファス相の金属ガラス粒子を溶射により過冷却液体状態にまで加熱して基材表面で凝固及び積層させれば、均一な金属ガラスのアモルファス固体相からなり、気孔がほとんどなくピンホールのない溶射被膜を得るのに有利である。
一般的な溶射材料である結晶質合金では、溶融体から固体へ冷却された場合に、数%の凝固収縮を生じる。これに対して、金属ガラスが融点以下で溶融することなく過冷却液体状態から冷却された場合には凝固収縮が生じないため、結晶質合金を溶融体から冷却した場合と比べて収縮量が少なくなる。
よって、金属ガラスを溶融させずに過冷却液体状態で溶射すれば、基材と溶射被膜との接合面に発生する残留応力が非常に小さくなるので、溶射被膜の剥離の抑制、剛性の低い基材の場合での変形や破壊の防止に効果的である。
溶射方法としては、例えば、大気圧プラズマ溶射、減圧プラズマ溶射、フレーム溶射、高速フレーム溶射(HVOF、HVAF)、コールドスプレーなどがあり、特に制限されるものではない。しかし、複合溶射被膜で気孔が少なく緻密な非晶質の溶射被膜を得るには、金属ガラス粉体を過冷却液体状態に加熱でき、溶射粒子速度を300m/s以上にできる溶射方法が望ましい。好適な溶射方法の一つとして、高速フレーム溶射が挙げられ、高品位の溶射被膜を得ることができる。また、金属ガラス粉体を高速フレーム溶射と同等あるいはそれ以上の溶射粒子速度を付与可能な溶射法も好適に用いられる。近年では、大気プラズマ装置により、高速フレーム溶射と同等の速度・温度域で溶射可能な装置も開発されている。
標準的なプラズマ溶射は、粒子速度が150〜300m/s、フレーム温度は10,000〜15,000Kの範囲であり、プラズマジェット(フレーム)は熱源から40mm程度の距離でも約5,000Kである。フレーム溶射は、粒子速度が100〜200m/s、フレーム温度は2,300〜2,900Kの範囲である。アーク溶射は、粒子速度が180〜220m/s、フレーム温度は約4,000Kであり、速度はフレーム溶射と同等である。コールドスプレーは常温または573〜773K程度に加熱したガスで粒子を加速し、粒子の衝突速度を500m/s以上とする。
一方、高速フレーム溶射(HVOF、HVAF)は、フレーム温度はフレーム溶射と同等であり、粒子速度は300m/s以上で、標準的なフレーム溶射の2倍以上にもできる。このため、一般的な溶射材料金属を溶射した場合の気孔率は、フレーム溶射で12%程度、アーク溶射で8%程度、プラズマ溶射で7%程度であるのに対し、高速フレーム溶射では4%程度となり、密着性も高速フレーム溶射は優れる。
<溶射用第1紛体と第2粉体の複合紛体の溶射方法>
上記のとおり、溶射用第1紛体であるサーメット粉体も溶射用第2紛体である金属ガラスも単体の場合は、いずれも高速フレーム溶射で成膜されている。高速フレーム溶射は、高速のフレームを通過した溶射粒子を半溶融もしくは高速での衝突による塑性変形可能な比較的柔らかい固相状態で衝突させて変形し積層させる。
サーメット粉体の高速フレーム溶射では、セラミックス成分の分解や酸化などを抑えつつ、金属成分が半溶融もしくは、塑性変形可能な軟化した状態となるような溶射条件を選択する必要がある。例えばサーメット粉体がWC/Coの場合、バインダー成分であるCoの液相が生じる温度は約1320℃であるから、1000℃程度の半溶融状態にする条件で溶射される。この条件は金属ガラスが軟化する過冷却液体域(例えばFe43Cr16Mo161510のガラス遷移温度Tgは603℃)よりも、数百℃高い。サーメット材料のみを考慮した条件で複合紛体を溶射した場合、金属ガラスの結晶化や酸化、溶融粒子の溶射バレルへの付着による閉塞など、金属ガラスの溶射条件としてはとしては適切でない状態となる。
逆に金属ガラスの過冷却液体状態のみを考慮した条件で溶射を行った場合、サーメットにとっては粒子へ与える温度が低すぎたり、粒子速度が低すぎたりすることにより、サーメット粒子の結合が弱く、サーメット被膜としての適切な機能を発揮できない場合や、軟化や変形が足りずに複合される歩留まりが極端に低くなる場合がある。
そこで、粒子へ与える速度と温度を組合せた最適な条件を探索し、溶射用第1紛体であるサーメット材料の歩留まりの低下を抑えつつ、溶射用第2紛体の金属ガラス材料を過冷却液体状態に維持することで、サーメットとアモルファス相の金属ガラスが分散した被膜ができる溶射条件を見出した。
本実施形態におけるサーメット粉体の歩留まり向上の効果は、非特許文献1との比較において明らかである。非特許文献1には、金属ガラス粉体(FeCrMoCB)にサーメット粉体(WC/12%Co)を0、5、10、20%の配合比で混合して成膜した複合溶射被膜が示されている。断面の微細構造の光学画像を明部と暗部に2値化した画像に基づいて、断面に占めるサーメット成分の合計面積を算出し、被膜中のサーメット成分の体積比を得ている。それによると、金属ガラスの被膜中にはそれぞれ0、2、4、8%のサーメット成分が包含され、溶射前のサーメット配合比のおおよそ4割に相当するサーメット成分が金属ガラスの被膜中に取り込まれると説明されている。つまり、サーメット粉体の配合率を高めたとしても、被膜に占めるサーメット成分は、せいぜい40%程度が限界であることが推定される。これに対して、本実施形態においては、最適な溶射条件を見出した結果、ほぼ二倍のサーメット粉体の溶射歩留りで、サーメット成分が40%を越える高い複合溶射被膜を形成することができる。
溶射用第1紛体であるサーメット紛体、および溶射用第2紛体である金属ガラス粉体の粒子径は、溶射被膜を緻密にするため、1〜65μmが望ましい。さらには5〜45μmがより好ましい。粒子径が小さすぎると溶射のバレル内に溶融粒子が付着しやすくなったり、所望の膜厚とするのに溶射回数が増えるなど生産性が低下する。また、バレル内に付着凝固した粒子がバレルから剥がれて溶射されると、溶射被膜の被膜欠陥の原因となる。
基材としては、特に限定されるものではないが、金属、特に工具鋼、ステンレス、鋳鋼などの鋼材が好ましい。また、基材は、複合溶射被膜の接合性を高めるために、通常はブラスト処理など公知の方法により基材表面の粗面化処理を施して使用することが好適である。
複合溶射被膜は、様々な形状の基材表面に形成することができ、例えば凹凸形状を有するものや、円筒状、パイプ状、ロール状、シート状であってもよい。
複合溶射被膜の厚みは5μm以上、好ましくは10μm以上、更には100μm以上とすることができる。上限は特に制限されないが、厚くなりすぎると経済性が低下するので、典型的には200μm程度であるが、最大300μmもあれば耐食性には十分である。
溶射用複合粉体の飛行中の温度は、金属ガラス粉体のガラス遷移温度Tg以上、結晶化開始温度未満に設定されるため、金属ガラス粉体は過冷却液体状態となって、基材に衝突する。そして基材上で冷却されてアモルファス状態のまま基材に衝突する。
一方、サーメット粉体の金属部分は、半溶融の軟化状態で衝突する。従って、一定割合以上のサーメット粉体が、アモルファス相の金属ガラスに分散した複合溶射被膜が得られ、サーメット成分によって良好な耐摩耗性が発揮され、金属ガラス成分によって低ヤング率・優れた耐食性・高強度を発揮する。
成膜プロセスにおいて、サーメット粉体中の金属部分が半溶融の軟化状態になるため、その一部が過冷却液体状態の金属ガラスに取り込まれて、アモルファス相を構成する成分になることもあり得る。金属ガラスがアモルファス相を形成し得る組成の範囲には、ある程度の広がりがあるため、金属ガラス粉体を作製する際に、成膜プロセスで金属成分が混入することを考慮して、その組成が決められる。
<ロール、金型への適用>
本実施形態の複合溶射被膜は、例えば、製鉄、製紙、印刷、シート成形用のロールやプラスチック成型用金型の表面に形成される被膜として好適に用いられる。特に、複合溶射被膜におけるサーメット成分の構成割合が、45%を超え、90%以下であれば、耐摩耗特性に加え靱性及び耐食性に優れたロールや金型を形成することができる。また、アノード分極測定での基準電位印加時の複合溶射被膜に生じる電流密度を、サーメットのみの被膜に生じる電流密度と比べて、20%以上、90%以下の範囲内の値まで低下させることができて、耐食性に優れたロールや金型を形成できる。さらに、複合溶射被膜の熱伝導率を、金属ガラスのみの被膜の熱伝導率と比べて、10%以上、40%以下の範囲内の値まで低下させることができ、断熱性に優れたロールや金型を形成することができる。
また、既存のサーメット溶射被膜では達成できなかったレベルの耐摩耗性を有する。特に、耐フレッティング摩耗(転動等の疲労摩耗に対する耐久性)の特性が向上する。フレッティング摩耗は、滑り・転がり・叩き・振動などの微振動を繰り返し受けるような接触面に生じる摩耗を指す。例えば、製鉄、製紙、印刷用ロールやベアリング軸受け等に好適である。
以下、具体例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、各試験方法は次の通りである。
<測定方法>
(硬さ)
ビッカース硬さ試験機(島津製作所製HMV−2000)を用いて、試験荷重300gにて圧痕の大きさを測定することにより、硬さを得た。
(表面粗さ)
表面粗さRaは、JIS B0601に規定する算術平均粗さであり、その測定は、(株)ミツトヨ製 表面粗さ測定器SV−514(評価長さ:4.0mm、カットオフ値:0.8mm)で行った(n=3)。
(アノード分極測定)
測定は、ポテンショスタット(北斗電工製HZ−5000)を用い、溶射被膜を約10mm露出させ、他の部分はエポキシ樹脂でマスキングしたものを、1mol塩酸中で50mV/minで電位(電圧)を掃引したときの電流密度(単位面積当りの電流量、つまりイオン移動量)を計測した。
(熱伝導率)
試料に黒化材を塗布した後、試料にパルスレーザーを照射して、温度変化を放射温度計にて測定することにより比熱容量を求めた。また、CFP法にて熱拡散率を求めた。これらの値から熱伝導率を計算した(レーザーフラッシュ法)。
(サーメット成分の含有率)
複合溶射被膜のサーメットおよび金属ガラス成分の割合は、非特許文献1と同様に、被膜層の任意の断面を光学顕微鏡(オリンパスDP70)にて画像解析し、明部(金属ガラス成分)、暗部(サーメット成分)に2値化した後、当該断面に占めるサーメット成分の合計面積を算出し、被膜中のサーメット成分の含有率を得た。
(試料)
試験に用いたサーメット粉体、金属ガラス粉体の原料仕様を以下に示す。まず、サーメット粉体として、
WC/12%Coは、株式会社フジミインコーポレーテッド製、粒度5〜25μm、
Cr32/25%NiCrは、日本ユテク株式会社製、粒度15〜45μm、
ZrO2−8%Y23/25%NiCrは、株式会社フジミインコーポレーテッド製、粒度15〜53μmを使用した。
また、金属ガラス粉体として、
Fe43Cr16Mo161510は、粒度10〜38μm、
Fe43Cr16Mo1151510は、粒度15〜45μm、
Ni65Cr15164は、粒度25〜53μm、
を使用した。金属ガラス粉体は、いずれもトピー工業株式会社製で、まず、高周波溶解炉で母合金作製し、ガスアトマイズ装置で粉体を作製した後、超音波振動篩にて所定粒度に分けたものである。
サーメット粉体と金属ガラス粉体のブレンドには、ターブラー・シャーカー・ミキサー(シンマルエンタープライゼス、T2F型)を使用した。
基材にSUS304を使用し、PRAXAIR−TAFA製・HVOF(JP−5000)を用いて、まず、厚さ250μmまで溶射形成し、約200μmに研磨仕上げしたものを試料とした。
試験例1 複合溶射被膜の硬さ
Cr32/25%NiCrとFe43Cr16Mo161510をブレンドした溶射用複合粉体(1−1)およびCr32/25%NiCrとFe43Cr16Mo1151510をブレンドした溶射用複合粉体(1−2)を使って、複合溶射被膜を形成した。配合比は、いずれも80:20とした。比較例として、Cr32/25%NiCr粉末単体(比較1)と、Fe43Cr16Mo161510 粉末単体(比較2)、Fe43Cr16Mo1151510粉末単体(比較3)を使って、前記溶射用第1紛体及び第2粉体単体の溶射方法で溶射被膜を作成した。
図1に、試験例1−1の複合溶射被膜の断面画像(A、B)および表面画像(C)を示す。図2に、試験例1−2の複合溶射被膜の断面画像(A、B)および表面画像(C)を示す。
[表1]
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
No. 表面粗さ(μm) 断面硬さ 表面硬さ
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
(研磨前) (研磨後)
1−1 Ra: 3.385 0.021 934.0HV 977.2HV
Ry: 21.273 0.256 (866.7〜1043.2HV) (832.6〜1127.5HV)
Rz: 14.703 0.164
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
1−2 Ra: 3.620 0.023 880.3HV 953.2HV
Ry: 23.161 0.391 (675.6〜1115.3HV) (817.2〜1056.3HV)
Rz: 15.602 0.200
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
比較1 Ra: 4.021 0.017 960.0HV 927.3HV
Ry: 25.492 0.159 (743.5〜1126.9HV) (815.7〜1133.0HV)
Rz: 17.083 0.120
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
比較2 Ra: 4.752 0.026 608.0HV 642.7HV
Ry: 30.568 0.754 (555.0〜686.8HV) (522.0〜778.4HV)
Rz: 19.957 0.305
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
比較3 Ra: 4.766 − 801.5HV 821.7HV
Ry: 29.000 − (635.7〜1062.3HV) (636.2〜1084.6HV)
Rz: 18.817 −
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
試験例2 (サーメット成分の含有率の向上)
WC/12%CoとFe基金属ガラスをそれぞれ50:50、75:25の配合比でブレンドした溶射用複合粉体について、溶射前のサーメット粉体の配合率(横軸)と、溶射後のサーメット成分の含有率(縦軸)との関係を調べた。
まず、図3に示すように、配合比を50:50とした複合溶射被膜(2−1)の断面画像を処理して、被膜面積に占めるサーメット成分の面積を計算した。図3(A)〜(C)のように、1つの断面画像中の異なる3つの領域(四角形で囲んだ領域)について画像処理し、それぞれの領域に占めるサーメット成分の面積の割合を求めた。3つの領域の平均値を溶射後のサーメット成分の含有率として図5のグラフにプロット(2−1)した。
図4に示すように、配合比を75:25とした複合溶射被膜(2−2)の断面画像を処理して、同様に、被膜面積に占めるサーメット成分の面積を計算した。図4(A)〜(C)に示す3つの領域の平均値を溶射後のサーメット成分の含有率として図5のグラフにプロット(2−2)した。
図5のグラフから明らかなように、本発明により、従来よりもサーメットを高い割合で含む複合溶融被膜の形成が可能になった。
試験例3、4 (耐食性の向上)
図6に、Cr32/25%NiCrとFe43Cr16Mo161510をそれぞれ50:50、75:25の配合比でブレンドした溶射用複合粉体について、アノード分極測定における電流密度を測定した結果を示す(3−2、3−3)。同様に、図7に、WC/12%CoとNi65Cr15164をそれぞれ50:50、75:25の配合比でブレンドした溶射用複合粉体について、電流密度を測定した結果を示す(4−2、4−3)。なお、図6の(3−1、3−4)および図7の(4−1、4−4)は比較例である。いずれの複合溶射被膜も、非常に広い電位域に渡って、電流密度の低い状態を保っており、耐食性能が高いことが確認された。
試験例5 (断熱性の向上)
図8に、ZrO2−8%Y23/25%NiCrとNi65Cr15164をそれぞれ50:50、75:25の配合比でブレンドした溶射用複合粉体について、断面画像(図8(A)、(B))と、熱伝導率を測定した結果とを示す(図8(C)の5−2、5−3)。金属ガラスのみの溶射被膜(5−1)と比較して、熱伝導率が低下しており、断熱性の改善が確かめられた。

Claims (11)

  1. 金属で固めた硬質粒子からなる溶射用第1粉体、及び、
    アモルファス相の金属ガラスからなる溶射用第2粉体、を、
    同時に溶射形成された複合溶射被膜であって、
    前記金属で固めた硬質粒子からなる第1被膜成分、及び、
    前記アモルファス相の金属ガラスからなる第2被膜成分を併せた全体に対し、前記第1被膜成分の構成割合が、40%を超え、95%以下であることを特徴とする複合溶射被膜。
  2. 請求項1記載の複合溶射被膜であって、前記金属ガラスが、Ni基又はFe基であることを特徴とする複合溶射被膜。
  3. 請求項1又は2記載の複合溶射被膜であって、前記硬質粒子が、炭化物、窒化物、酸化物、硼化物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする複合溶射被膜。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の複合溶射被膜であって、前記金属が、Ni、Cr、Co、Fe、Moのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする複合溶射被膜。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の複合溶射被膜であって、
    前記複合溶射被膜の熱伝導率が、前記第2被膜成分のみの被膜の熱伝導率と比べて、10%以上、40%以下の範囲内の値まで低下していることを特徴とする複合溶射被膜。
  6. 請求項1〜4の何れかに記載の複合溶射被膜あって、
    1mol塩酸水溶液におけるアノード分極曲線測定において(温度25℃、参照電極SCE)、電位0から0.6Vの範囲で、前記複合溶射被膜に生じる電流密度が、前記第1被膜成分のみの被膜に生じる電流密度と比べて、低下していることを特徴とする複合溶射被膜。
  7. 金属で固めた硬質粒子からなる溶射用第1粉体、及び、アモルファス相の金属ガラスからなる溶射用第2粉体を併せた全体に対し、前記溶射用第1粉体の配合割合を、40%を超え、95%以下として、均一に混合したものであることを特徴とする溶射用複合粉体。
  8. 請求項7記載の溶射用複合粉体を原料として用いて、
    前記溶射用複合粉体のうちの前記溶射用第2粉体の少なくとも一部を、溶融させることなく、過冷却液体状態で基材上に溶射することによって、
    前記金属で固めた硬質粒子からなる第1被膜成分と前記アモルファス相の金属ガラスからなる第2被膜成分とをこれらの積層体中に均一に分散させることを特徴とする複合溶射被膜の形成方法。
  9. 基材の少なくとも一部の表面に請求項1〜6の何れかに記載の複合溶射被膜が形成された複合粉体溶射被覆部材であって、
    前記複合溶射被膜は、前記第1被膜成分と前記第2被膜成分を併せた全体に対し、前記第1被膜成分の構成割合が、45%を超え、90%以下でありことを特徴とする複合粉体溶射被覆部材。
  10. 請求項9に記載の複合粉体溶射被覆部材において、複合粉体溶射被覆部材が金属製ロールであることを特徴とする複合粉体溶射被覆部材。
  11. 請求項9に記載の複合粉体溶射被覆部材において、複合粉体溶射被覆部材が金型であることを特徴とする複合粉体溶射被覆部材。
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