JP2002173758A - 溶射用粉末およびそれを用いて溶射皮膜された部品 - Google Patents

溶射用粉末およびそれを用いて溶射皮膜された部品

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JP2002173758A
JP2002173758A JP2000368279A JP2000368279A JP2002173758A JP 2002173758 A JP2002173758 A JP 2002173758A JP 2000368279 A JP2000368279 A JP 2000368279A JP 2000368279 A JP2000368279 A JP 2000368279A JP 2002173758 A JP2002173758 A JP 2002173758A
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Takeshi Itsukaichi
剛 五日市
Satoru Osawa
悟 大澤
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Fujimi Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐食性と耐摩耗性に優れた表面を溶射形成す
るための溶射用粉末およびそれを用いて溶射皮膜された
部品を提供する。 【解決手段】 粉末全体重量に対し、70〜95重量%
のセラミックス相と、5〜30重量%の金属相から構成
されており、前記セラミックス相は、その全重量に対
し、60〜99重量%のタングステンカーバイドと 、
1〜40重量%のクロムカーバイドを含み、また、前記
金属相は、その全重量に対し、40〜70重量%のNi
と、10〜35重量%のCr、および10〜25重量%
のMoを含む溶射用粉末、およびそれにより表面を溶射
された部品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、部品表面に溶射皮
膜を形成するための溶射粉末、および、前記溶射粉末に
よる、溶射皮膜が表面に形成された部品に関するもので
あり、さらに詳しくは、本発明は、摩耗及び腐食を受け
る化学処理用スラリーポンプのインペラーや、そのベア
リング表面などに代表されるような金属部品、つまり腐
食環境下において作動する耐摩耗部品の表面改質に使用
される溶射粉末および、前記溶射粉末を用いて優れた耐
食性、耐摩耗性の溶射皮膜を表面に形成された部品に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】各種産業機械や一般向け機械の金属製部
品において、求められる耐食性、耐摩耗性などの特性
は、その用途により多岐に亘っている。しかしながら、
金属製部品を構成する金属材料自体による対策では、そ
の要求特性を十分に満たされない場合が多く、これに換
わって、表面改質によりこの問題を解決しようとする場
合が多い。
【0003】溶射法は、物理的蒸着法や化学的蒸着法な
どとともに、実用化されている表面改質技術の一つであ
る。溶射法は、基材の寸法に制限がなく広い面積の基材
に対しても一様な皮膜を形成できること、皮膜の形成速
度が大きいこと、現場施工が容易であること、比較的容
易に厚い皮膜が形成できることなどの特徴を有するた
め、近年、各種の産業にその適用が拡大し、極めて重要
な表面改質技術となってきた。
【0004】通常、「溶射」と同様の意味で、「肉盛
り」や「スプレー」といった言葉が使用されることがあ
る。これらの言葉の明確な定義はなく、また、これらに
使用される粉末に関しても大きな区別はなく、溶射皮膜
形成用の粉末であっても溶射用に限定されるわけではな
い。従って、本発明における「溶射粉末」とは、「肉盛
り」や「スプレー」などの用途にも供されるものである
ことは言うまでもない。
【0005】タングステンカーバイド(以下、WCとい
う)は、硬度が極めて高く、耐摩耗性に優れているが、
WC単体での溶射は、次のような理由で非常に困難であ
る。即ち、溶射により皮膜を形成する場合、粉末を軟
化、もしくは溶融させる必要があり、WC単体の場合
は、減圧環境下もしくは不活性ガス雰囲気下での溶射に
おいて、軟化、溶融させるのに、2,500℃以上まで
高温に加熱しなければならず、脱炭によるW2C などの
脱炭相の生成も避けられない。また、WCを大気中で溶
射する場合、WCは軟化、溶融する前に大気中の酸素と
反応して、脱炭および酸化され、W2 やWを生成して
しまい、目的とする溶射皮膜を得ることができない。
【0006】そのため、通常はCoやNi等の金属、ま
たはそれらを含む合金を結合材として、WCと混合、も
しくは複合化したサーメット材料を使用している。なか
でも、結合材にNi合金を使用したWC−Ni合金溶射
粉末からなる溶射皮膜は、優れた耐食性・耐摩耗性を示
し、産業界で広く使われ始めている。サーメット(Ce
rmet)とは、CelamicとMetalのはじめ
の三文字をつなぎ合わせた合成語で、具体的には硬質の
セラミクス粒子を金属マトリックスで結合させた、高硬
度、高靱性を有した複合材料である。工具材料の分野で
は、TiC系およびTi(CN)系サーメットを指す
が、広義にはWC−Ni合金をはじめとするセラミック
ス−金属複合全般を含む。
【0007】これらの溶射粉末は、一般に以下のプロセ
スにより作製される。まず、各原料粉末を混合し、これ
に有機バインダー(例えばPVA:ポリビニルアルコー
ル)と水系溶媒(水またはアルコール等の溶剤)を加え
スラリー状態とする。次にそのスラリーを噴霧造粒機等
を用いて球形の顆粒粉末に造粒する。
【0008】更に、造粒した顆粒粉末を、有機バインダ
ーを完全に除去するため、脱脂を行った後、適度な機械
的強度を粉末に持たせるために真空またはアルゴンガス
雰囲気下において焼結する。原料粉末にNi、Co、C
rまたはそれらの合金などの金属粉末、Cr3C2、C
r7C3、Cr23C6などのクロムカーバイド(以
下、CrCという)や、WCなどの炭化物セラミックス
を使用する場合、焼結時にその酸化を起こさせないよう
にする必要があり、真空またはアルゴンガス雰囲気下で
焼結を行うことにより、この酸化の問題を排除すること
ができる。
【0009】更にまた、焼結の後、ボールミル等の解砕
機を用いて解砕する。この解砕を行うことにより、顆粒
一個々々が分離し、球形の粉末を得ることができる。次
に、解砕の後、使用する溶射装置の種類や出力に応じて
必要な粒度の溶射粉末を得るために分級を行う。この分
級の方法は、ふるいによる方法の他に、気流による分級
方法等が知られている。
【0010】例えば、特許第2,844,392号(以
下、引例1という)には、基板上の耐食性硬化肉盛り用
の焼結されたスプレー粉末が開示されており、この焼結
された粉末は、前記焼結された粉末の75〜90重量パ
ーセントの間の量のWCと、1.6〜7.5重量パーセ
ントの間の量のMoと、0〜2重量パーセントの間の量
のFeと、0.03重量パーセント以下の量のWC中に
結合されたC以外のCと、4.4重量パーセント以下の
量のCrと、0.25重量パーセント以下の量のMn
と、0.63重量パーセント以下の量のCoと、0.2
5重量パーセント以下の量のSiと、1.4重量パーセ
ント以下の量のWC中に結合されたW以外のWと、残り
はNiとより成り、前記焼結された粉末の少なくとも
3.4重量パーセントはNiであることを特徴とする焼
結されたスプレー粉末が開示されている。
【0011】また、特許第3,042,836号(以
下、引例2という)は、金属製ロールの表面に、WCと
TiC,NbCおよびTaCのうちから選ばれたいずれ
か1種以上の炭化物との複合炭化物96〜70wt%
と、Cr、Ni、Cr−Ni合金、Cr−Co合金のう
ちから選ばれたいずれか1種以上の金属成分4〜35w
t%とからなる複合炭化物サーメットの溶射皮膜を形成
したことを特徴とする電気めっき用コンダクターロール
を開示している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかし、発明者らは、
引例1および2に記載の各先行技術を用いて、基材に溶
射を行った硬化皮膜について、各種試験を行った結果、
以下に示すような欠点や問題点があることがわかった。
即ち、サーメットの耐食性を考える場合には、セラミッ
クス相、金属相それぞれの耐食性ばかりでなく、セラミ
ックス相と金属相との界面にある結合相の耐食性をも重
視しなければならないということである。
【0013】界面の結合相が腐食してしまうと、炭化物
粒子の脱離が起こり耐食性が著しく低下することであ
り、また、セラミックス相がWC単体の場合には、この
界面の結合相にはWが固溶され、しかもWは、腐食環境
下で溶出しやすい傾向を持っていることがわかった。
【0014】引例1のスプレーパウダーに関しては、耐
摩耗性は良好であるが、セラミックス相がWC単体であ
るため、金属結合相中に固溶したWが腐食環境下で溶出
しやすい傾向にあり、充分な耐食性を得ることができな
いという問題点がある。
【0015】また、引例2のコンダクターロールに関し
ては、金属成分がCr、Ni、Cr−Ni合金、Cr−
Co合金のうちから選ばれた1種以上であるため、これ
らを用いた場合は、充分な耐食性を得ることができな
い。
【0016】更に、引例2においては、「焼結条件や金
属成分の種類、更に、その添加量によっては、生成する
炭化物は、例えば、Crを含有する場合、Cr32、C
73 、Cr236 などが生成する。」と、クロムカ
ーバイトの存在を示唆しているが、こうした現象は、W
Cの分解によるW2C の発生や、金属結合相の組成変化
を招き、これらは耐摩耗性、耐食性を劣化させるという
恐れがあることが明らかになった。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の主要な目的は、
前記各従来技術が抱えている欠点、問題点を解消するも
のであり、優れた耐食性・耐摩耗性を有する硬化皮膜を
形成するための溶射粉末を提供することである。また、
本発明の他の目的は、金属部品に優れた耐食性・耐摩耗
性を与えるべくその表面に前記溶射粉末を使用した溶射
硬化皮膜を形成した部品を提供することである。
【0018】即ち、本発明は、これらの課題を解決する
ものであり、粉末全体重量に対し、70〜95重量%の
セラミックス相と、5〜30重量%の金属相から構成さ
れており、前記セラミックス相は、セラミックス相の全
重量に対して、60〜99重量%のタングステンカーバ
イドと、1〜40重量%のクロムカーバイドを含み、ま
た、前記金属相は、金属相の全重量に対し40〜70重
量%のNiと、10〜35重量%のCr、および10〜
25重量%のMoを含む溶射用粉末である。
【0019】また、前記金属相を、金属相の全重量に対
し、40〜60重量%のNiと、20〜35重量%のC
r、および、15〜25重量%のMoを含むことを特徴
とする溶射用粉末であり、更に、前記金属相を、金属相
の全重量に対し、50〜70重量%のNiと、10〜2
0重量%のCrと、10〜20重量%のMoと、3〜5
重量%のW、および、1〜3重量%のCoを含むことを
特徴とする溶射用粉末である。
【0020】また、本発明は、皮膜の全体重量に対し、
70〜95重量%のセラミックス相と、5〜30重量%
の金属相から構成されており、前記セラミックス相は、
セラミックス相の全重量に対し、60〜99重量%のタ
ングステンカーバイドと、1〜40重量%のクロムカー
バイドを含み、また前記金属相は、金属相の全重量に対
し40〜70重量%のNiと、10〜35重量%のCr
および、10〜25重量%のMoを含む溶射皮膜を被覆
された部品により解決するものである。
【0021】更に、前記金属相を、金属相の全重量に対
し、40〜60重量%のNiと、20〜35重量%のC
rおよび、15〜25重量%のMoを含むことを特徴と
する溶射皮膜を被覆された部品により、更にまた、前記
金属相を、金属相の全重量に対し50〜70重量%のN
iと、10〜20重量%のCrと、10〜20重量%の
Moと、3〜5重量%のWおよび、1〜3重量%のCo
を含むことを特徴とする溶射皮膜を被覆した部品によ
り、これを解決する。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明における優れた耐食
性、耐摩耗性を有する溶射皮膜として使用される粉末、
および前記溶射粉末を使用して溶射皮膜を表面に形成さ
れた部品について説明する。本発明は、耐摩耗性に優れ
たWC、耐食性に優れた合金、及びそれらの界面結合相
の耐食性を向上させるためのクロムカーバイドの組み合
わせにより、耐食性と耐摩耗性を兼ね備えた皮膜を、そ
の表面に形成することができる溶射粉末である。
【0023】即ち、非常に高い耐食性を有するNi40
〜70重量%と、Cr10〜35重量%、および、Mo
10〜25重量%を含み、更に好ましくは、Ni、C
r、Moの合計重量が90重量%以上である合金(以
下、耐食性Ni基合金という)を使用することにより、
溶射皮膜の耐食性を向上させるものである。
【0024】更に、前記耐食性Ni基合金は、それがい
かなる用途に利用されるかによって、より好ましい組成
が存在する。例えば、塩酸や硫酸等による腐食の激しい
環境において使用される場合には、それらの厳しい環境
で優れた耐食性を示す、例えば、Ni−15.5Cr−
16.0Mo−3.7W−1.5Co合金粉末のような
ものが好ましい。更にまた、高温での酸化性、耐浸性な
どに対処する場合には、例えば、Ni−28.0Cr−
20.0Mo合金粉末のようなものが好ましいものとな
る。
【0025】なお、合金粉末が、合金粉末の製造課程に
おいて混入する不純物、また微粉末化をしやすくするた
め、およびその他の目的のための添加物として、例えば
B、C、Fe、Mn、Si、Al、Tiのようなものを
それぞれ0〜3重量%程度含むこともあるが、本発明の
溶射粉末は、これらを含んでいても、同様の性能、効果
を得ることができる。
【0026】なお、前記の合金中における数字は、それ
ぞれの金属の含有量を重量%で示したものであり、例え
ば、Ni−20Cr−10Co合金とは、20重量%の
Crと10重量%のCoを含み、残部がNi、つまり7
0重量%のNiを含む合金であることを示す。
【0027】また、本発明は、界面の結合相中へのWの
固溶を、耐食性の高いCrに置き換えて固溶させること
により、耐食性を向上させるものである。即ち、Cr3
2、Cr73、Cr236 などのクロムカーバイト
(以下、CrCという)を添加することにより、耐食性
を向上させることができる。
【0028】CrCは、セラミックス相の1重量%を占
める程度の添加で、Wの結合相への固溶を大幅に抑制す
ることができるため、耐食性は大きく向上する。本発明
においては、セラミックス相はセラミックス相の全重量
の60〜99重量%のWCとセラミックス相の全重量の
1〜40重量%のCrCで構成される。
【0029】WCがセラミックス相の全重量の60重量
%未満であり、CrCがセラミックス相の全重量の40
重量%を超えると、溶射効率が低下し、更に溶射により
形成される被膜が著しく低下し、充分な耐摩耗性を得る
ことができない恐れがある。また、WCがセラミックス
相の全重量の99重量%を超え、CrCがセラミックス
相の全重量の1重量%未満であると、界面の結合相に固
溶されるW量が多くなり、腐食環境下における結合相中
のWが溶出し、セラミックス粒子の脱離を招き、充分な
耐食性が得られない。
【0030】本発明における粉末は、WC、CrCを含
むセラミックス相が溶射粉末の全体重量の70〜95重
量%、耐食性Ni基合金からなる金属相が溶射粉末全体
重量体の5〜30重量%で構成される。セラミックス相
が溶射粉末の全体重量の70重量%未満であり、金属相
が溶射粉末全体重量の30重量%を超えると、溶射によ
り形成される皮膜の硬度と耐摩耗性が著しく低下して、
実用に供せられない恐れがある。
【0031】また、セラミックス相が溶射粉末全体重量
の95重量%を超え、金属相が溶射粉末全体の5重量%
未満であると、セラミックス粒子のバインダーとして作
用する金属相の量が不足し、溶射により形成される皮膜
の靭性が低下するとともに、基材との密着性も低下し
て、剥離しやすくなる。
【0032】本発明の溶射粉末は、その製造方法には特
に制限はないが、前記[従来の技術]段落における例で
も示したように、各原料粉末を混合、造粒した球形の顆
粒粉末を、脱脂、焼結、解砕、分級して得ることができ
る粒径の揃った球形の粉末が好ましい。その際、焼結は
900℃以上で、5時間以上行うことが好ましい。実際
の焼結温度は、組成により適切な設定が必要であるが、
焼結時間を一定温度で5時間以上焼結することにより、
均一で硬質な球状粒子を得ることができる。
【0033】また、造粒して得られる顆粒の粒度分布
は、5〜75μmであることが好ましい。即ち、粒度分
布5〜75μmの顆粒を焼結し、解砕、分級することに
より、高速フレーム溶射に適した粒度分布が6〜63μ
mの溶射粉末を得ることができる。また、条件を変更す
ることにより必要に応じて、粒度分布6〜38μm、1
0〜45μm、15〜45μm、15〜53μm、20
〜63μmの各溶射粉末を作製し、溶射装置の種類や出
力に応じて使い分けることができる。尚、ここでいう
「粒度分布」とは、レーザ回折式粒度測定機を用いて求
められたD5 〜D95の値を示す。
【0034】このようにして、粒度分布が15〜45μ
mであり、組成がセラミックス相(WC80重量%、C
rC20重量%)85重量%、金属相(Ni−15.5
Cr−16.0Mo−3.7W−1.5Co−0.9S
i−0.2Mn−0.1C)15重量%である溶射粉末
を作製し、TAFA社製の高速フレーム溶射装置である
JP−5000において溶射された皮膜のビッカース硬
度は1,100〜1,300kg/mm2に達し、良好
な耐摩耗性、耐食性を示す。この本発明の溶射粉末を用
いて、高速フレーム溶射を行うことにより、溶射皮膜中
の気孔率は1%以下と少なく、緻密な溶射皮膜を得るこ
とができる。
【0035】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に
説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定
されるものではない。 <溶射粉末の作製>表1に示す組成の溶射粉末(実施例
1〜6、比較例1〜9)を、造粒、焼結した後、解砕、
分級を行い、粒度範囲が15〜45μmとなるように粒
度調整を行った。作製条件は以下の通りである。
【0036】 作製条件: 造粒装置 噴霧型造粒機 造粒後の粉末の粒度範囲 5〜75μm 脱脂、焼結装置 真空脱脂焼結炉 焼結条件 Ar雰囲気下で1,250℃にて5時間 解砕装置 ボールミル式解砕機 分級装置 振動式篩い機、気流分級機
【0037】
【表1】
【0038】実施例1〜6は、本発明に適合する実施例
である。比較例1〜4は、CrCの添加量が本発明の適
用範囲を外れた場合である。比較例5、6引例1に準じ
た組成物である。比較例7は、市販されているWC−2
0%CrC−7%Niに準じた組成物である。比較例
8、9は、引例3に準じた組成物である。
【0039】<溶射皮膜の特性測定および評価>実施例
1〜6および比較例1〜9において、溶射皮膜の特性
は、下記の方法により測定および評価した。 A.硬度測定および評価 下記の溶射条件(1)で形成された溶射皮膜を切断、断
面を研磨により鏡面加工し、溶射皮膜断面のビッカース
硬度を測定した。試験機には、島津製作所製ビッカース
硬度試験機HMV−1を用いた。圧子はダイヤモンド製
正四角錐で、対面角は136°である。圧子の試験荷重
は0.2kgf、負荷後の保持時間は15秒とした。
【0040】試験用皮膜の溶射条件および評価基準は、
下記の通りである。 a)溶射条件(1) 溶射機 TAFA社製HVOF溶射機JP−5000 酸素流量 1900scph 灯油流量 5.1gph 基材 SS400鋼板 溶射皮膜厚さ 300μm b)評価基準(1) ○:ビッカース硬度(Hv0.2)の値が、1,100
以上 ×:ビッカース硬度(Hv0.2)の値が、1,100
未満
【0041】B.耐食試験(塩酸)および評価 下記の溶射条件(2)で形成された溶射皮膜を基材から
切り離し、溶射皮膜のみから成る15mm×15mm×
0.3mmの試験片を作製し、50容量%塩酸(濃塩
酸:水=1:1)中に240時間浸漬し、浸漬後の試験
片の重量を浸漬前のそれで除することにより、原重量か
らの損失重量比を測定した。溶液の温度は60℃に保っ
た。
【0042】試験用皮膜の溶射条件および評価基準は、
下記の通りである。 a)溶射条件(2) 溶射機 TAFA社製HVOF溶射機JP−5000 酸素流量 1900scph 灯油流量 5.1gph 基材 SS400鋼板 溶射皮膜厚さ 300μm b)評価基準(2) ○:損失重量比(%)の値が、1.5未満 ×:損失重量比(%)の値が、1.5以上
【0043】C.耐食試験(塩水)および評価 下記の溶射条件(3)で形成された溶射皮膜を塩水噴霧
試験(JIS Z 2371)を行い、240時間後の
外観を目視により観察し、赤錆の発生状態を調査した。
本試験は、腐食の進行により貫通気孔が形成される
と、基材と塩水の反応により赤錆が発生する原理を利用
したものである。
【0044】試験用皮膜の溶射条件および評価基準は、
下記の通りである。 a)溶射条件(3) 溶射機 TAFA社製HVOF溶射機JP−5000 酸素流量 1900scph 灯油流量 5.1gph 基材 SS400鋼板(50mm×70mm×2.3mm) 溶射皮膜厚さ 100μm b)評価基準(3) ○:皮膜表面の変化なし ×:皮膜表面に腐食による赤錆が発生
【0045】D.乾式耐摩耗試験および評価 下記の溶射条件(4)で形成された溶射皮膜をスガ式摩
耗試験機(JIS H8682に記載)を用いて摩耗試
験を行った。評価方法は基準試料の摩耗量(mm3)に
対する試料の摩耗量(mm3)の体積比を摩耗比として
算出した。使用した研磨紙はSiC#180、試験荷重
は3.15kgf、摺動回数は400回とした。
【0046】試験用皮膜の溶射条件および評価基準は、
下記の通りである。 a)溶射条件(4) 溶射機 TAFA社製HVOF溶射機JP−5000 酸素流量 1900scph 灯油流量 5.1gph 基材 SS400鋼板(50mm×70mm×2.3mm) 溶射皮膜厚さ 300μm b)評価基準(4) ○:摩耗比(%)の値が、15未満 ×:摩耗比(%)の値が、15以上
【0047】E.湿式耐摩耗試験および評価 下記の溶射条件(5)で作製した溶射皮膜を特開200
0−180331号公報に記載の湿式摩耗試験機を用い
て評価した。研磨材にはA#8(JIS R6111)
を使用した。これに水を加えてスラリー濃度を80重量
%とした。基準試料には機械構造用炭素鋼鋼管STKM
12Cを用いた。溶射皮膜厚さは、300μmとした。
評価方法は、基準試料とするSS400鋼板(50mm
×70mm×2.3mm)の摩耗量(mm3)に対する
試料の摩耗量(mm3)の体積比を摩耗比として算出し
た。試験時間は、200時間(摺動距離:5.67×1
5m)とした。
【0048】試験用皮膜の溶射条件および評価基準は、
下記の通りである。 a)溶射条件(5) 溶射機 TAFA社製HVOF溶射機JP−5000 酸素流量 1900scph 灯油流量 5.1gph 基材 機械構造用炭素鋼鋼管STMK12C(25φ×高さ75mm) 溶射皮膜厚さ 300μm b)評価基準(5) ○:摩耗比(%)の値が、10未満 ×:摩耗比(%)の値が、10以上
【0049】各試験による評価結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】実施例1〜6は全ての試験において良好な
結果であった。耐食性、耐摩耗性が求められる湿式摩耗
試験においては、両特性を兼ね揃えた実施例2、5が特
に良い結果となった。比較例1、3はCrCの添加量が
少ないため、耐摩耗性は高いが、耐食性には問題がある
結果となった。全くCrCを含まない比較例5、6に関
しては、更にその傾向が強く耐食性が著しく低下してい
る。
【0052】また、比較例2、4は、CrCの添加量が
多すぎるため、硬度が低下し、耐摩耗性も著しく低下し
ている。比較例7、8、9は、金属相が純Niもしくは
NiCr合金であるためと考えられるが、耐塩酸、塩水
噴霧試験での耐食性が低いことが問題である。
【0053】
【発明の効果】本発明の溶射粉末およびそれを用いて溶
射皮膜された部品は、つぎの効果を有している。即ち、
1)粉末全体重量に対し、70〜95重量%のセラミッ
クス相と、5〜30重量%の金属相から構成されてお
り、前記セラミックス相は、セラミックス相の全重量に
対して、60〜99重量%のタングステンカーバイド
と、1〜40重量%のクロムカーバイドを含み、また、
前記金属相は、金属相の全重量に対し40〜70重量%
のNiと、10〜35重量%のCr、および10〜25
重量%のMoを含む溶射用粉末により、耐食性、耐摩耗
性に優れた溶射皮膜の生成が可能となった。
【0054】2)前記金属相を、金属相の全重量に対
し、50〜70重量%のNiと、10〜20重量%のC
rと、10〜20重量%のMoと、3〜5重量%のW、
および、1〜3重量%のCoを含むものとする溶射用粉
末により、界面結合相の耐食性を向上させた、耐食性、
耐摩耗性に優れた溶射皮膜の生成が可能となった。
【0055】3)前記金属相を、金属相の全重量に対
し、50〜70重量%のNiと、10〜20重量%のC
rと、10〜20重量%のMoと、3〜5重量%のW、
および、1〜3重量%のCoを含むものとする溶射用粉
末により、より安定した状態で、界面結合相の耐食性を
向上させた、耐食性、耐摩耗性に優れた溶射皮膜の生成
を可能とした。
【0056】4)皮膜の全体重量に対し、70〜95重
量%のセラミックス相と、5〜30重量%の金属相から
構成されており、前記セラミックス相は、セラミックス
相の全重量に対し、60〜99重量%のタングステンカ
ーバイドと、1〜40重量%のクロムカーバイドを含
み、また前記金属相は、金属相の全重量に対し40〜7
0重量%のNiと、10〜35重量%のCrおよび、1
0〜25重量%のMoを含む溶射皮膜を被覆した部品に
より、腐食環境下において作動し、かつ厳しい耐摩耗性
の要求に適応し得る部品を提供することができる。
【0057】5)前記金属相が、金属相の全重量に対
し、40〜60重量%のNiと、20〜35重量%のC
rおよび、15〜25重量%のMoを含むことを特徴と
する溶射皮膜を被覆した部品により、安定した状態で、
より苛酷な腐食環境下において作動し、かつ厳しい耐摩
耗性の要求に適応し得る部品を提供することができる。
【0058】6)前記金属相が、金属相の全重量に対し
50〜70重量%のNiと、10〜20重量%のCr
と、10〜20重量%のMoと、3〜5重量%のWおよ
び、1〜3重量%のCoを含むことを特徴とする溶射皮
膜を被覆した部品により、より安定した状態で、より厳
しい耐食性と耐摩耗性の要求に適応し得る部品を提供す
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大澤 悟 愛知県西春日井郡西枇杷島町地領2丁目1 番地の1 株式会社フジミインコーポレー テッド内 Fターム(参考) 4K018 AD06 BA11 BD09 4K031 CB02 CB10 CB14 CB21 CB22 CB23 CB45

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 皮膜形成に用いる溶射用粉末において、 粉末全体重量に対し、70〜95重量%のセラミックス
    相と、5〜30重量%の金属相から構成されており、前
    記セラミックス相は、セラミックス相の全重量に対し
    て、60〜99重量%のタングステンカーバイドと、1
    〜40重量%のクロムカーバイドを含み、また、前記金
    属相は、金属相の全重量に対し40〜70重量%のNi
    と、10〜35重量%のCr、および10〜25重量%
    のMoを含むことを特徴する溶射用粉末。
  2. 【請求項2】 前記金属相が、金属相の全重量に対し、
    40〜60重量%のNiと、20〜35重量%のCr、
    および、15〜25重量%のMoを含むことを特徴とす
    る請求項1に記載の溶射用粉末。
  3. 【請求項3】 前記金属相が、金属相の全重量に対し、
    50〜70重量%のNiと、10〜20重量%のCr
    と、10〜20重量%のMoと、3〜5重量%のW、お
    よび、1〜3重量%のCoを含むことを特徴とする請求
    項1に記載の溶射用粉末。
  4. 【請求項4】 表面上に溶射皮膜を形成してなる部品で
    あって、前記溶射皮膜が、皮膜の全体重量に対し、70
    〜95重量%のセラミックス相と、5〜30重量%の金
    属相から構成されており、前記セラミックス相は、セラ
    ミックス相の全重量に対し、60〜99重量%のタング
    ステンカーバイドと、1〜40重量%のクロムカーバイ
    ドを含み、また前記金属相は、金属相の全重量に対し4
    0〜70重量%のNiと、10〜35重量%のCrおよ
    び、10〜25重量%のMoを含むことを特徴する部
    品。
  5. 【請求項5】 前記金属相が、金属相の全重量に対し、
    40〜60重量%のNiと、20〜35重量%のCrお
    よび、15〜25重量%のMoを含むことを特徴とする
    請求項4に記載の部品。
  6. 【請求項6】 前記金属相が、金属相の全重量に対し5
    0〜70重量%のNiと、10〜20重量%のCrと、
    10〜20重量%のMoと、3〜5重量%のWおよび、
    1〜3重量%のCoを含むことを特徴とする請求項4に
    記載の部品。
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