JP2003166042A - 溶射用粉末 - Google Patents

溶射用粉末

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JP2003166042A
JP2003166042A JP2001362806A JP2001362806A JP2003166042A JP 2003166042 A JP2003166042 A JP 2003166042A JP 2001362806 A JP2001362806 A JP 2001362806A JP 2001362806 A JP2001362806 A JP 2001362806A JP 2003166042 A JP2003166042 A JP 2003166042A
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chromium
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thermal spraying
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Takeshi Itsukaichi
剛 五日市
Satoru Osawa
悟 大澤
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Fujimi Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温環境下において優れた耐摩耗性と同時に
優れた耐衝撃性を発揮しうる溶射皮膜を形成することが
できる溶射用粉末を提供する。 【解決手段】 溶射用粉末は、クロムカーバイドとニッ
ケルを複合化したサーメット粉末又はクロムカーバイド
とニッケル基合金を複合化したサーメット粉末と、ニッ
ケル又はニッケルとクロムを含む金属粉末とを混合して
調製される。金属粉末がクロムを含まない場合は当該金
属粉末に含まれるニッケルの量は90重量%以上であ
り、金属粉末がニッケルとクロムを含む場合は当該金属
粉末に含まれるニッケルとクロムの合わせた量が90重
量%以上かつクロムの含有量が55重量%以下である。
一方、サーメット粉末を構成するクロムカーバイドの平
均粒子径は3〜30μmであり、金属粉末に含まれる炭
素の量は0.4重量%以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶射材料として用
いられる溶射用粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】溶射材料として用いられる溶射用粉末に
は多くの種類があるが、そのうちクロムカーバイドとニ
ッケル又はニッケル基合金を複合化したサーメット粉末
は、例えば火力発電所のボイラーチューブの表面に溶射
して使用されるなど、高温環境下における耐摩耗性の向
上を要求される用途で汎用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のサー
メット粉末を溶射してできる溶射皮膜は、高温環境下に
おいて優れた耐摩耗性を発揮する反面、機械的な衝撃に
弱いという問題がある。すなわち、例えば上記のように
火力発電所のボイラーチューブに適用した場合では、石
炭灰の塊(クリンカー)が落下したときの衝撃で溶射皮
膜に亀裂が生じたり溶射皮膜が剥離したりすることがあ
った。
【0004】本発明は、上記のような従来技術に存在す
る問題点に着目してなされたものである。その目的とす
るところは、高温環境下において優れた耐摩耗性と同時
に優れた耐衝撃性を発揮しうる溶射皮膜を形成すること
ができる溶射用粉末を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1に記載の発明は、クロムカーバイドとニ
ッケルを複合化したサーメット粉末又はクロムカーバイ
ドとニッケル基合金を複合化したサーメット粉末と、ニ
ッケル又はニッケルとクロムを含む金属粉末とを混合し
て調製されたことを要旨とする。
【0006】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
の溶射用粉末において、前記金属粉末がクロムを含まな
い場合は当該金属粉末に含まれるニッケルの量を90重
量%以上とし、前記金属粉末がニッケルとクロムを含む
場合は当該金属粉末に含まれるニッケルとクロムの合わ
せた量を90重量%以上かつクロムの含有量を55重量
%以下としたことを要旨とする。
【0007】請求項3に記載の発明は、請求項1又は請
求項2に記載の溶射用粉末において、前記サーメット粉
末を構成するクロムカーバイドの平均粒子径を3〜30
μmとしたことを要旨とする。
【0008】請求項4に記載の発明は、請求項1から請
求項3のいずれか一項に記載の溶射用粉末において、前
記金属粉末に含まれる炭素の量を0.4重量%以下とし
たことを要旨とする。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した実施形
態について説明する。本実施形態の溶射用粉末は、サー
メット粉末と金属粉末を混合して調製される。溶射用粉
末に含まれるサーメット粉末と金属粉末それぞれの量は
55〜92重量%と8〜45重量%が好ましく、65〜
85重量%と15〜35重量%がより好ましく、70〜
80重量%と20〜30重量%が最も好ましい。溶射用
粉末を構成するサーメット粉末と金属粉末のうちサーメ
ット粉末について以下説明する。
【0010】前記サーメット粉末はクロムカーバイドと
ニッケルを複合化したもの、又はクロムカーバイドとニ
ッケル基合金を複合化したものである。より具体的に
は、粉末状のクロムカーバイドを粉末状のニッケル又は
ニッケル基合金と混合して焼結したものである。
【0011】このサーメット粉末に含まれるクロムカー
バイドとニッケル(又はニッケル基合金)それぞれの量
は65〜90重量%と10〜35重量%が好ましく、7
0〜85重量%と15〜30重量%がより好ましく、7
5〜80重量%と20〜25重量%が最も好ましい。
【0012】また、前記粉末状のクロムカーバイドの平
均粒子径は3〜30μmが好ましく、5〜20μmがよ
り好ましく、7〜15μmが最も好ましい。この平均粒
子径が3μmよりも小さいと、溶射皮膜の靭性及び耐衝
撃性が低下するおそれがある。逆に30μmよりも大き
いと溶射効率が低下するほか、原料成分が均一に分散し
た顆粒を得ることが困難になると同時に、球状に造粒す
ることが困難になる。なお平均粒子径とは、レーザ回折
式粒度測定機(LA−300;株式会社堀場製作所製)
を用いて求められるD50の値をいう。
【0013】また、クロムカーバイドに含まれる遊離炭
素の量は0.1重量%以下が好ましい。遊離炭素の含有
量が0.1重量%を超えると溶射皮膜内部の結合力が低
下して靭性及び耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0014】なお、クロムカーバイドにはCr32、C
73、Cr236があるが、前記サーメット粉末を構
成するクロムカーバイドはCr32又はCr73が好ま
しく、Cr32がより好ましい。クロムカーバイドは高
温下にさらされたときに酸化及び/又は脱炭反応し、酸
化物が一部生成したりCr32はCr73へ、Cr73
はCr236へ、又はクロムリッチな準安定相へと結晶
相がそれぞれ変化すると言われている。サーメット粉末
製造時の焼結の際や溶射の際などに酸化及び/又は脱炭
反応によりクロム酸化物やクロムリッチな準安定相から
なる化合物が生成すると溶射皮膜の特性が低下するおそ
れがあるが、Cr32又はCr73であればその反応を
遅らせることができ、Cr32であればその効果を一段
と高めることができる。
【0015】一方、前記粉末状のニッケル又はニッケル
基合金の平均粒子径は5μm以下が好ましく、3μm以
下がより好ましい。この平均粒子径を5μm以下とすれ
ば、より球状に近く機械的強度が高く組成的に均一なサ
ーメット粒子を得ることができるとともに、目的とする
粒度分布のサーメット粉末が作製しやすくなるので製品
収率が向上する。また3μm以下とすればその効果を一
段と高めることができる。
【0016】以上説明したサーメット粉末は、造粒−焼
結法により以下のようにして製造される。まず、粉末状
のクロムカーバイドと粉末状のニッケル又はニッケル基
合金を混合したものに、バインダ(例えばポリビニルア
ルコール)を各種溶媒(水又はアルコールなどの溶剤)
に分散させたものを添加してスラリを調製する。次に前
記スラリを噴霧造粒機等を用いて造粒した後、脱脂・焼
結し、焼結後の粉末をボールミル等の粉砕機を用いて解
砕する。こうして得られた粉末を、用途に応じた所定の
粒度分布となるように分級すれば本実施形態のサーメッ
ト粉末が得られる。
【0017】この造粒−焼結法における焼結の際の条件
として、焼結温度は900℃以上が好ましく、焼結時間
は5時間以上が好ましい。焼結時間を5時間以上とすれ
ば、一般に均一で硬質な球状粒子を得ることができる。
【0018】ちなみに噴霧造粒機等を用いて造粒する際
に粒度分布が5〜75μmとなるようにすれば、高速フ
レーム溶射に適した6〜63μmの粒度分布を有するサ
ーメット粉末を容易に得ることができる。また、造粒、
解砕及び分級の条件を適宜に変更すれば、用途に応じた
適切な粒度分布を有するサーメット粉末を得ることがで
きる。
【0019】なお粒度分布の下限の値は、レーザ回折式
粒度測定機(LA−300)を用いて求められる値であ
って、その値以下の粒度を有する粒子の割合が5%以下
となるような値である。また、粒度分布の上限の値は、
ロータップ法(JIS R6002)を用いて求められ
る値であって、その値以上の粒度を有する粒子の割合が
5%以下となるような値である。すなわち粒度分布が5
〜75μmであれば、レーザ回折式粒度測定機を用いて
求められる5μm以下の粒子の割合が5%以下であり、
ロータップ法を用いて求められる75μm以上の粒子の
割合が5%以下であることを示す。
【0020】次に、前記サーメット粉末とともに溶射用
粉末を構成する金属粉末について以下説明する。前記金
属粉末には、ニッケルを90重量%以上含有する金属粉
末、又はニッケルとクロムを合わせて90重量%以上含
有しクロムの含有量が55重量%以下である金属粉末が
用いられる。前者の金属粉末でニッケルの含有量が90
重量%未満のとき、又は後者の金属粉末でニッケルとク
ロムを合わせた含有量が90重量%未満のときには、溶
射皮膜の靭性及び耐衝撃性が低下する。また、クロムの
含有量が55重量%を超えると、溶射皮膜の靭性及び耐
衝撃性が大きく低下する。なお、金属粉末に含まれるク
ロムの量を5〜30重量%とすれば、溶射皮膜の耐食性
及び耐摩耗性の低下を招くことなく靭性及び耐衝撃性を
向上させることができる。
【0021】また、金属粉末に含まれる炭素の量は0.
4重量%以下が好ましく、0.2重量%以下がより好ま
しい。さらに、金属粉末に含まれるケイ素、ホウ素、ア
ルミニウム、マンガン、チタン、鉄、硫黄及びモリブデ
ン(以下、これら八種の元素をケイ素等という)を合わ
せた量は10重量%以下が好ましく、3重量%以下がよ
り好ましい。炭素の含有量が0.4重量%を超える場合
やケイ素等を合わせた含有量が10重量%を超える場合
には、溶射皮膜の靭性及び耐衝撃性が低下するおそれが
ある。なお、これら金属粉末に含まれる炭素及びケイ素
等は、金属粉末の調製工程で不純物として混入する炭素
及びケイ素等、アトマイズ時の微粉末化やその他の目的
で添加される炭素及びケイ素等、並びに金属地金中に不
純物として含まれる炭素及びケイ素等に由来するもので
ある。
【0022】以上説明した金属粉末は、水アトマイズ法
やガスアトマイズ法などのアトマイズ法により製造され
る。なお金属粉末の粒度分布は、上記サーメット粉末の
粒度分布と同等であることが好ましい。
【0023】上記のサーメット粉末と金属粉末を混合し
て調製される溶射用粉末は、フレーム溶射法、プラズマ
溶射法などあらゆる溶射法に適用可能であるが、その中
でも高速フレーム溶射法に適用した場合に特に効果的で
ある。また高速フレーム溶射法の中でも、溶射装置とし
てPRAXAIR/TAFA社製のJP−5000又は
UNIQUECOAT TECHNOLOGIES社製
のINTELLI−JET HVAFを用いた高速フレ
ーム溶射法が特に好ましい。
【0024】本実施形態によって得られる効果につい
て、以下に記載する。 ・ 本実施形態の溶射用粉末によれば、優れた耐摩耗
性、特に高温環境下において優れた耐摩耗性を発揮しう
る溶射皮膜を形成することができる。これは、耐摩耗性
に優れたクロムカーバイドの性質に主に基づいて溶射皮
膜の耐摩耗性が大きく向上するためと推察される。
【0025】・ 本実施形態の溶射用粉末によれば、優
れた靭性及び耐衝撃性、特に高温環境下において優れた
靭性及び耐衝撃性を発揮しうる溶射皮膜を形成すること
ができる。これは、以下に説明する金属粉末に由来する
構造が溶射皮膜の内部に形成されることによって、溶射
皮膜の靭性及び耐衝撃性が大きく向上するためと推察さ
れる。本実施形態の溶射用粉末を溶射してできる溶射皮
膜を観察すると、金属粉末成分が適度な厚みを有した状
態で積層し比較的大きな金属相として点在した構造が内
部に確認される。この金属相が、溶射皮膜に外力が加わ
ったときに緩衝材として機能して外力を吸収分散するよ
うに作用することにより、溶射皮膜の靭性及び耐衝撃性
が大きく向上するものと推察される。
【0026】なお、従来の溶射用粉末を溶射してできる
溶射皮膜には上記のような金属相はほとんど認められ
ず、またあったとしても十分に緩衝材として機能するこ
とができないような薄い金属相しか認められない。ま
た、本実施形態では金属粉末をサーメット粉末と混合さ
せて用いているが、その金属粉末を、サーメット粉末の
原料となる粉末状のクロムカーバイドと粉末状のニッケ
ル又はニッケル基合金と合わせて複合化する、すなわち
それらを混合し焼結してサーメット粉末を作製したとし
ても、そのサーメット粉末を溶射してできる溶射皮膜に
は上記のような金属相はほとんど認められず、またあっ
たとしても十分に緩衝材として機能することができない
ような薄い金属相しか認められない。そして、これらの
溶射皮膜では優れた靭性及び耐衝撃性、特に高温環境下
において優れた靭性及び耐衝撃性が発揮されない。
【0027】・ 本実施形態の溶射用粉末によれば、高
速フレーム溶射法で溶射してできる溶射皮膜において特
に耐衝撃性の向上をより確実に図ることができる。高速
フレーム溶射法の場合、他の溶射法の場合に比べて溶射
用粉末が大きく加速されるため基材に対し強く衝突す
る。また、燃焼炎中の滞留時間が短いため他の溶射法の
場合に比べて溶射用粉末の加熱される時間が短い。こう
したことから高速フレーム溶射法で溶射してできる溶射
皮膜には、溶射皮膜内部に形成される上記した金属粉末
に由来する構造が確実に形成されやすく、このため耐衝
撃性の向上をより確実に図ることができる。また高速フ
レーム溶射法の中でも、溶射装置としてPRAXAIR
/TAFA社製のJP−5000又はUNIQUECO
AT TECHNOLOGIES社製のINTELLI
−JET HVAFを用いた高速フレーム溶射法では、
その効果を一段と高めることができる。
【0028】・ 本実施形態の溶射用粉末によれば、優
れた耐食性、特に高温環境下において優れた耐食性を発
揮しうる溶射皮膜を形成することができる。これは、耐
食性に優れたクロムカーバイド及びニッケル(又はニッ
ケル基合金)の性質に主に基づいて溶射皮膜の耐食性が
向上するためと推察される。
【0029】・ 溶射用粉末に含まれるサーメット粉末
と金属粉末の量がそれぞれ55〜92重量%と8〜45
重量%であるので、溶射皮膜中に点在して溶射皮膜の靭
性及び耐衝撃性を向上させる金属相の占める割合と、耐
食性及び耐摩耗性に優れたセラミックス成分の占める割
合のバランスが良い。従って、靭性及び耐衝撃性並びに
耐食性及び耐摩耗性に関してバランスの良い溶射皮膜を
形成することができる。
【0030】・ 本実施形態の溶射用粉末によれば、優
れた耐酸化性、特に高温環境下において優れた耐酸化性
を発揮しうる溶射皮膜を形成することができる。これ
は、耐酸化性に優れたクロムカーバイド及びニッケル
(又はニッケル基合金)の性質に主に基づいて溶射皮膜
の耐酸化性が向上するためと推察される。
【0031】・ 金属粉末に含まれるクロムの量が55
重量%以下であるので、クロムに起因する溶射皮膜の靭
性及び耐衝撃性の低下を防止することができる。 ・ 金属粉末に含まれる炭素の量が0.4重量%以下で
あるので、炭素に起因する溶射皮膜の靭性及び耐衝撃性
の低下を防止することができる。
【0032】・ 造粒−焼結法によりサーメット粉末を
製造しているので、より球状に近く比較的粒度の揃った
サーメット粉末を得ることができる。このため、良好な
流動性を有するサーメット粉末を得ることができる。ま
た造粒−焼結法により製造されるサーメット粉末は、多
孔質で比表面積が大きく溶融しやすいので溶射効率が高
いという利点も有する。
【0033】なお、前記実施形態を次のように変更して
構成することもできる。 ・ 前記実施形態ではサーメット粉末として造粒−焼結
法により得られるものを用いたが、焼結−粉砕法又は溶
融−粉砕法により得られるものを用いてもよい。
【0034】焼結−粉砕法によるサーメット粉末の製造
は次のようにして行われる。すなわち、粉末状のクロム
カーバイドと粉末状のニッケル又はニッケル基合金を混
合して焼結し、得られた焼結体を機械的に粉砕した後、
用途に応じた所定の粒度分布となるように分級する。こ
うして得られるサーメット粉末の顆粒は緻密で強固であ
り、粉砕粉末特有のエッジを有した角状あるいは塊状の
形状を有する。なお工業的には、原料粉末を混合した
後、より緻密な焼結体を得ることを目的にプレス成形等
の手法が採られることもある。
【0035】また溶融−粉砕法によるサーメット粉末の
製造は次のようにして行われる。すなわち、所定量のク
ロムカーバイドとニッケル又はニッケル基合金を混合し
て加熱溶融し、冷却後、得られた固化物(インゴット)
を機械的に粉砕した後、分級する。こうして得られるサ
ーメット粉末の顆粒は均質であるとともに、前記焼結−
粉砕法で得られる粉末よりもさらに緻密で強固である。
また顆粒の形状は、前記焼結−粉砕法で得られるそれと
よく似た角状あるいは塊状である。なお、原料の加熱溶
融には工業的にはアーク炉が使用される。また、インゴ
ットの粉砕にはドロップハンマーやハンマーリング等が
使用され、粗粉砕、中粉砕、微粉砕を行うこともある。
【0036】
【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさ
らに具体的に説明する。表1に示す組成を有し下記のよ
うにして調製されるサーメット粉末と金属粉末をV型混
合装置にて混合して溶射用粉末を調製した(但し、比較
例1〜6の溶射用粉末はサーメット粉末と金属粉末のい
ずれか一方のみで構成される)。この溶射用粉末を溶射
してできる溶射皮膜について、下記のようにして硬度、
耐摩耗性及び耐衝撃性に関して評価を行った。その結果
を表1に合わせて示す。
【0037】<サーメット粉末の調製>粉末状のクロム
カーバイドと粉末状のニッケル又はニッケル基合金を混
合し、これに3.6%PVA水溶液を添加してスラリを
調製した。次に前記スラリを噴霧造粒機を用いて粒度分
布が5〜75μmとなるように造粒し、真空脱脂焼却炉
にてアルゴン雰囲気下で脱脂した後、1200℃で5時
間焼結を行った。焼結後の粉末をボールミルを用いて解
砕し、次いで振動式篩機及び気流式分級機を用いて15
〜45μmの粒度分布となるように分級して目的のサー
メット粉末を調製した。
【0038】<金属粉末の調製>アトマイズ法により作
製される金属粉末を15〜45μmの粒度分布となるよ
うに分級して目的の金属粉末を調製した。
【0039】<溶射皮膜の評価> (A.硬度(常温))下記の溶射条件(A)で形成され
た溶射皮膜を切断し、その断面を研磨により鏡面加工を
行い洗浄、乾燥後、ビッカース硬度試験機HMV−1
(株式会社島津製作所製)により下記の測定条件(A)
で溶射皮膜断面のビッカース硬度(Hv200g)を測
定した。10回行った試験結果を平均化することでビッ
カース硬度を求め、下記の評価基準(A)で評価した。
【0040】1)溶射条件(A) 溶射機:PRAXAIR/TAFA社製HVOF溶射機
JP−5000、バレル:4インチ(=10.16c
m)、酸素流量:1500scfh、灯油流量:6.0
gph、基材:SS400板(50mm×70mm×
2.3mm)、溶射皮膜厚:200μm 2)測定条件(A) 圧子:ダイヤモンド製正四角錐、対面角:136°、圧
子荷重:0.2kgf(=1.96N)、負荷後保持時
間:15秒、測定温度:常温 3)評価基準(A) ◎:ビッカース硬度が801以上、○:ビッカース硬度
が651〜800、△:ビッカース硬度が400〜65
0、×:ビッカース硬度が400未満 (B.耐摩耗性(常温))下記の溶射条件(B)で形成
された溶射皮膜について、スガ式摩耗試験機(JIS
H8682に記載)を用いて試験条件(B)で乾式摩耗
試験を行った。基準試料の摩耗量(mm3)に対する試
料の摩耗量(mm3)の体積比を摩耗比として算出し、
3回行った試験結果を平均化することで摩耗比を求め、
下記の評価基準(B)で評価した。
【0041】1)溶射条件(B) PRAXAIR/TAFA社製HVOF溶射機JP−5
000、バレル:4インチ(=10.16cm)、酸素
流量:1500scfh、灯油流量:6.0gph、基
材:SS400板(50mm×70mm×2.3m
m)、溶射皮膜厚:200μm 2)試験条件(B) 研磨紙:SiC#180、荷重:3.15kgf(=3
0.87N)、摺動回数:400回、基準試料:SS4
00板(50mm×70mm×2.3mm)、測定温
度:常温 3)評価基準(B) ◎:摩耗比が0.40%以下、○:摩耗比が0.41〜
0.50%、△:摩耗比が0.51〜0.70%、×:
摩耗比が0.71%以上 (C.耐衝撃性(常温))下記の溶射条件(C)で形成
された溶射皮膜について、落球衝撃試験機を用いて常温
下において剥離耐久試験を行った。剥離耐久試験では、
1mの高さより内径29.3mmのガイドパイプを通し
て、溶射皮膜に対して60°の角度で、一回の試験にお
いて500個の鋼球(直径:9.5mm、重量:3.3
2g)を連続的に落下、衝突させ、溶射皮膜表面を観察
し、亀裂や剥離を生じるまでの耐久回数をカウントし
た。4回の試験結果を平均化することで耐久回数を求
め、下記の評価基準(C)で評価した。
【0042】1)溶射条件(C) 溶射機:PRAXAIR/TAFA社製HVOF溶射機
JP−5000、バレル:4インチ(=10.16c
m)、酸素流量:1500scfh、灯油流量:6.0
gph、基材:S45C板(100mm×100mm×
20mm)、溶射皮膜厚:100μm 2)評価基準(C) ◎:耐久回数が51回以上、○:耐久回数が26〜50
回、△:耐久回数が15〜25回、×:耐久回数が15
回未満 (D.硬度(高温))下記の溶射条件(D)で形成され
た溶射皮膜の表面を研磨により鏡面加工を行い洗浄、乾
燥後、高温ビッカース硬さ試験システムAVK−HF
(株式会社アカシ製)により下記の測定条件(D)で溶
射皮膜表面のビッカース硬度(Hv5kg)を測定し
た。10回行った試験結果を平均化することでビッカー
ス硬度を求め、下記の評価基準(D)で評価した。
【0043】1)溶射条件(D) 溶射機:PRAXAIR/TAFA社製HVOF溶射機
JP−5000、バレル:4インチ(=10.16c
m)、酸素流量:1500scfh、灯油流量:6.0
gph、基材:SS400板(50mm×70mm×
2.3mm)、溶射皮膜厚:200μm 2)測定条件(D) 圧子:ダイヤモンド製正四角錐、対面角:136°、圧
子荷重:5kgf(=49N)、負荷後保持時間:15
秒、Ar雰囲気、測定温度:500℃ 3)評価基準(D) ◎:ビッカース硬度が600以上、○:ビッカース硬度
が500以上600未満、△:ビッカース硬度が400
以上500未満、×:ビッカース硬度が400未満
【0044】
【表1】 表1に示すように、比較例1〜6の溶射用粉末を溶射し
てできる溶射皮膜は、常温下における耐摩耗性及び耐衝
撃性の評価の少なくともいずれか一方が不良(△又は
×)であった。特に高温環境下における耐摩耗性の向上
を要求される用途で従来汎用されている比較例1〜3の
溶射用粉末の場合は、常温下において高い耐摩耗性を有
する反面、常温下における耐衝撃性が悪いことが示され
た。それに対し実施例1〜12の場合はいずれも、常温
下における耐摩耗性が良好なまま常温下における耐衝撃
性が大きく向上しており、常温下における耐摩耗性及び
耐衝撃性の評価が良好(◎又は○)であった。このこと
から、実施例1〜12の溶射用粉末を溶射してできる溶
射皮膜は、常温下において高い耐摩耗性及び耐衝撃性を
発揮しうることはもちろん、高温環境下においても高い
耐摩耗性及び耐衝撃性を発揮しうると推察される。ま
た、常温下における硬度と常温下における耐摩耗性の結
果を比較すると両者の間に相関が認められることから、
高温環境下における硬度と高温環境下における耐摩耗性
の間にも相関があるものと推察される。従って実施例1
〜12の場合、高温環境下における硬度が高いので、こ
のことからも高温環境下において高い耐摩耗性を発揮し
うるものと推察される。
【0045】次に、前記実施形態から把握できる技術的
思想について以下に記載する。 ・ 前記サーメット粉末と前記金属粉末をそれぞれ55
〜92重量%と8〜45重量%含有することを特徴とす
る請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の溶射用
粉末。このように構成すれば、靭性及び耐衝撃性並びに
耐食性及び耐摩耗性に関してバランスの良い溶射皮膜を
形成することができる。
【0046】・ 前記サーメット粉末が造粒−焼結法に
より製造されるものである請求項1から請求項4のいず
れか一項に記載の溶射用粉末。このように構成すれば、
サーメット粉末の流動性を向上させることができるとと
もに、溶射用粉末の溶射効率を向上させることができ
る。
【0047】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成されている
ため、次のような効果を奏する。請求項1に記載の発明
によれば、高温環境下において優れた耐摩耗性と同時に
優れた耐衝撃性を発揮しうる溶射皮膜を形成することが
できる。
【0048】請求項2に記載の発明によれば、請求項1
に記載の発明の効果を一層高めることができる。請求項
3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載
の発明の効果に加え、クロムカーバイドの平均粒子径に
起因する溶射皮膜の耐衝撃性の低下を防止することがで
きる。
【0049】請求項4に記載の発明によれば、請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の発明の効果に加
え、金属粉末に含まれる炭素に起因する溶射皮膜の耐衝
撃性の低下を防止することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大澤 悟 愛知県西春日井郡西枇杷島町地領2丁目1 番地の1 株式会社フジミインコーポレー テッド内 Fターム(参考) 4K018 AD01 BA11 BB04 BC06 BC11 BC13 BC15 BD09 DA11 DA21 4K031 AA01 AA08 AB02 AB08 CB02 CB14 CB18 CB22 CB32 CB36 CB45 CB50 DA01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロムカーバイドとニッケルを複合化し
    たサーメット粉末又はクロムカーバイドとニッケル基合
    金を複合化したサーメット粉末と、 ニッケル又はニッケルとクロムを含む金属粉末とを混合
    して調製されたことを特徴とする溶射用粉末。
  2. 【請求項2】 前記金属粉末がクロムを含まない場合は
    当該金属粉末に含まれるニッケルの量を90重量%以上
    とし、前記金属粉末がニッケルとクロムを含む場合は当
    該金属粉末に含まれるニッケルとクロムの合わせた量を
    90重量%以上かつクロムの含有量を55重量%以下と
    したことを特徴とする請求項1に記載の溶射用粉末。
  3. 【請求項3】 前記サーメット粉末を構成するクロムカ
    ーバイドの平均粒子径を3〜30μmとしたことを特徴
    とする請求項1又は請求項2に記載の溶射用粉末。
  4. 【請求項4】 前記金属粉末に含まれる炭素の量を0.
    4重量%以下としたことを特徴とする請求項1から請求
    項3のいずれか一項に記載の溶射用粉末。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006183091A (ja) * 2004-12-27 2006-07-13 Fujimi Inc 溶射用粉末
JP2012207282A (ja) * 2011-03-30 2012-10-25 Kansai Electric Power Co Inc:The 溶射材料

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