JPH115191A - サーメット肉盛り金属部品及びその製造方法 - Google Patents

サーメット肉盛り金属部品及びその製造方法

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JPH115191A
JPH115191A JP10117295A JP11729598A JPH115191A JP H115191 A JPH115191 A JP H115191A JP 10117295 A JP10117295 A JP 10117295A JP 11729598 A JP11729598 A JP 11729598A JP H115191 A JPH115191 A JP H115191A
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cermet
layer
metal
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powder
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JP10117295A
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Kazuo Hamashima
和雄 浜島
Yasuo Shinozaki
泰夫 篠崎
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐熱性、耐摩耗性、耐食性及び耐衝撃性に優れ
かつ良好な施工性が良好なサーメット肉盛り金属部品と
その製造方法の提供。 【解決手段】Cr又はCr及びFeとMo及び又はWと
の複合硼化物を主体とするセラミックス相と、Feを主
体とする金属結合相とからなるサーメット層1Aと、サ
ーメット層の成分が金属母材と反応してなる中間層1B
からなる肉盛り層1を金属母材2表面に形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はサーメットが肉盛り
された耐熱性、耐摩耗性、耐食性及び耐衝撃性を有し、
かつ良好な施工性を有するサーメット肉盛り金属部品と
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼などの各種金属母材の表面に各種の
合金等を肉盛りし、金属母材と肉盛りする合金等を冶金
学的に反応させて比較的厚い被覆層を形成する手法は肉
盛り法として一般的によく知られている。肉盛り法は一
般に金属部品に耐摩耗性、耐熱性又は耐食性を付与する
ために行われており、例えば加熱された被加工部材と繰
り返し接触する熱間鍛造用パンチの表面に肉盛りを施し
てパンチの耐用の延長が図られている。
【0003】肉盛りに使用される合金として多く使用さ
れているのは、Ni基の自溶性合金やステライト合金に
代表されるCo基の合金である。これらの合金の耐摩耗
性や耐熱性は母材の鉄鋼より確かに優れるが、これらの
肉盛り合金はやはり金属であることから、たとえ固溶強
化や析出硬化によって材料特性を改善しても顕著な耐摩
耗性や耐熱性の向上は期待できず、また、改善された材
料特性も再加熱によって低減する場合が多い。
【0004】材料特性を顕著に改善するには、本質的に
高硬度で耐熱性に優れたセラミックスを利用する方法が
有用であり、比較的薄い皮膜を形成する物理的蒸着法
(PVD)、化学的蒸着法(CVD)、溶射法などが実
用化されている。しかし、その皮膜の厚さは最も厚い溶
射法でも最大1mm程度である。これらの皮膜の母材と
の密着力は小さく、例えば密着性を向上させるアンダー
コート層が設けてあっても厚い皮膜を形成すると機械的
な衝撃で皮膜が母材から容易に剥離するので、耐衝撃性
を必要とする用途には使用できない。
【0005】金属母材の肉盛り法では、金属母材の温度
も高くして肉盛り層と母材とを反応させ、中間層を形成
させて密着性を得ているが、セラミックスで1mmを超
える厚い皮膜を形成すると、セラミックスの融点が高い
ことと金属母材との物性差が大きいことのために母材と
の反応が進まず、密着性が不足して剥離しやすく、セラ
ミックスの肉盛り材料としての活用は実現していない。
【0006】そこでセラミックス単身ではなく、金属と
複合させたサーメットを肉盛りすることによって密着性
の高い肉盛りを実現する試みがなされている。例えばW
C−Co系超硬合金の鉄鋼部品への肉盛りが行われてい
るが、WCはCoやFeに比べて比重が大きく、肉盛り
層中で沈降しやすい。このため肉盛り層中に配するWC
は100μmを超えるような大きな粒子としなくてはな
らず、これらのWC粒子をつなぐ金属相個々の大きさも
これに見合った大きさとしなくてはならない。金属層が
大きくなると、微粒子が関与する摩耗では金属相の選択
的な摩耗が生じ、結果的にWC粒子の脱落が生じる欠点
があり、今のところごく限られた用途にのみ使用されて
いる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】これらの問題を解決す
るために、発明者らはFe、Ni、Coから選ばれる1
種以上の元素とMo及びWとの複合硼化物を主体とする
セラミックス相と、Fe、Ni、Coから選ばれる1種
以上の元素を主体とする金属結合相からなるサーメット
相と、前記サーメット層の成分が前記金属母材と反応し
てなる中間層と、が形成されていることを特徴とする耐
熱性、耐摩耗性、耐食性及び耐衝撃性サーメット肉盛り
を提案した(特開平9−13177)。このサーメット
肉盛り材料中のセラミックスと金属は比重の差が小さ
く、20〜30μm以下のセラミックスを配しうるた
め、微粒子による摩耗に対しても有効である。また、セ
ラミックス相が硼化物であると、炭化物である場合に比
べて、高温での硬さや耐酸化性の点で優れる。
【0008】しかし、さらに検討を進めると、前記提案
のサーメット肉盛りは施工性があまり良好でないことが
判明した。すなわち望む特性を有するこのサーメット肉
盛りを得るためには、母材の予熱温度、肉盛り原料の状
態や種々の施工条件をきわめて狭い範囲で制御しなくて
はならない。施工時に付与する熱量が所定の値より多く
なると、肉盛り相中のセラミックス粒子は急激に粒成長
したり、母材金属の肉盛り相中への拡散が激しくなり、
極端な場合はセラミックス相が分解・消失する。一方、
前記提案のサーメット肉盛りは、金属母材の予熱温度を
低くすると冷却時に割れが生じやすく、肉盛り作業中に
は、金属母材を500℃以上に保たなくてはならない。
【0009】結果的に、前記提案のサーメット肉盛り
を、様々な形状や大きさの金属母材の上に、期待どおり
の特性を発揮する肉盛り相として形成することはかなり
困難である。上述のように、従来提供されているセラミ
ックスと金属を複合した肉盛りは、いずれも広範な用途
で効果を充分に発揮するには、多くの問題がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の課題を
解決すべくなされたものであり、金属母材の表面に、C
r又はCr及びFeとMo及び又はWとの複合硼化物を
主体とするセラミックス相と、Feを主体とする金属結
合相とからなるサーメット層と、前記サーメット成分が
前記金属母材と反応してなる中間層とが形成されている
ことを特徴とするサーメット肉盛り金属部品を提供す
る。
【0011】また、Cr又はCr及びFeとMo及び又
はWとの複合硼化物を主体とするセラミックスの粉末又
は該セラミックスを生成しうる組成の粉末と、Feを主
体とする金属粉末とからなる複合粉末を、金属母材の表
面に供給し、前記金属母材の表面を溶融するとともに上
記複合粉末を溶融しつつ前記金属母材と一体化すること
によって、前記金属母材の表面に、Cr又はCr及びF
eとMo及び又はWとの複合硼化物を主体とするセラミ
ックス相と、Feを主体とする金属結合相とからなるサ
ーメット層と、前記サーメット成分が前記金属母材と反
応してなる中間層とを形成することを特徴とするサーメ
ット肉盛り金属部品の製造方法を提供する。
【0012】また、Cr又はCr及びFeとMo及び又
はWとの複合硼化物を主体とするセラミックス相と、F
eを主体とする金属結合相とからなるサーメット成形体
を金属母材上に配置し、前記金属母材の表面層を溶融す
るとともに、前記サーメット成形体を溶融して前記金属
母材と一体化することによって、前記金属母材の表面
に、Cr又はCr及びFeとMo及び又はWとの複合硼
化物を主体とするセラミックス相と、Feを主体とする
金属結合相とからなるサーメット層と、前記サーメット
成分が前記金属母材と反応してなる中間層と、を形成す
ることを特徴とするサーメット肉盛り金属部品の製造方
法を提供する。
【0013】Cr又はCr及びFeとMo及び又はWと
の複合硼化物を主体とするセラミックス相と、Feを主
体とする金属結合相とからなるサーメットは、様々な用
途分野において超硬合金に代わり得る材料であり、耐熱
性、耐摩耗性、耐食性及び耐衝撃性に優れた材料であ
る。
【0014】このサーメットの高温における硬度、強度
などはNi基自溶性合金やCo基合金に比べ充分に大き
く、その熱膨張係数はセラミックスや超硬合金よりも鉄
鋼材料などの金属に近い。このため、このサーメットか
らなる皮膜を鉄鋼材料などの金属材料上に形成すれば、
硬くかつ耐熱強度や耐食性に優れた金属部品が形成でき
ると期待される。しかし、このサーメットの被覆層を直
接に母材である鉄鋼材料等の金属材料等上に形成しただ
けでは、衝撃力が加わった際にサーメット層と母材の界
面に亀裂が生じやすく、サーメット層は容易に剥離す
る。
【0015】本発明においては、サーメット層の成分が
母材と反応してなる中間層をサーメット層と金属母材と
の間に形成しているため、この中間層が外部からの衝撃
力からの緩衝層として機能し、サーメット層が剥離する
のを防止している。このようなサーメット層と中間層を
有するサーメット肉盛り金属部品は、肉盛り法によって
形成できるものであり、母材への熱投入量が比較的少な
い溶射法では実現できない。
【0016】本発明においては、肉盛り時に熱投入量が
多少変動しても、期待した特性を有するサーメット肉盛
り層が得られる。すなわち、肉盛り施工時に熱投入量が
望ましい量よりも多くなっても、Cr又はCr及びFe
とMo及び又はWとの複合硼化物は、異方性が少ないた
め、急激に粒成長することが少なく、Feを主体とする
金属層に母材の金属成分が多量に拡散することもない。
したがって、本発明によれば、耐熱性、耐摩耗性、耐食
性のみではなく耐衝撃性にも優れた種々の金属部品を得
ることができる。その結果、例えば熱間鍛造型のよう
に、きわめて大きい機械的及び熱的衝撃を繰り返して受
ける部品として好適に使用できる。
【0017】さらに本発明によれば、肉盛り作業に際し
て肉盛りする金属母材を、あまり高い温度に予熱してお
く必要がない。一般的に、本発明が提供するような、高
硬度の肉盛り層を形成する場合には、肉盛りされる金属
母材全体を予熱する必要がある。その温度は肉盛り層の
種類によって異なり、500℃、さらには700℃まで
の予熱が必要な場合もあるが、本発明が提供するCr又
はCr及びFeとMo及び又はWとの複合硼化物を主体
とするセラミックスとFeを主体とする金属から構成さ
れる肉盛り層は、耐熱衝撃性に優れるため、予熱温度は
比較的低い300〜400℃で充分である。
【0018】本発明において、サーメット層を構成する
セラミックス相のうち、85重量%以上がCr又はCr
及びFeとMo及び又はWとの複合硼化物であることが
望ましい。85重量%未満であるとサーメット層の耐熱
強度が低下し、高温に晒された場合サーメット層の変
形、脱落が生じやすい。
【0019】本発明の肉盛り金属部品のサーメット層の
成分のうち、セラミックス相は30〜85重量%である
ことが好ましく、40〜70重量%であることがより好
ましい。セラミックス相が30重量%未満では、複合硼
化物の優れた性質をサーメット層に付与できず硬度や高
温強度が低下する。さらにセラミックス相が85重量%
超では、サーメット層の耐衝撃性が低下し、サーメット
層内に亀裂が生じやすくなる。
【0020】また、サーメット層を構成する金属相の成
分のうち50重量%以上、特には60重量%以上、がF
eであることが好ましい。金属相中にFeが50重量%
以上含まれていると好ましからざる性質を付与する第三
相の生成を制御でき、60重量%以上であると安定して
優れた特性を示す肉盛り層が得られる。
【0021】複合硼化物においてCrは金属結合層中の
Feと共働し、施工性の良好な肉盛り金属部品を提供す
るが、CrとFeは任意の割合で互いに置換できるので
セラミックス相中のCrの一部をFeに置換しても有効
である。さらに、Crが含まれていることによって皮膜
の耐食性と硬度も向上するが、Crは複硼化物中に存在
するとともに金属結合層中にも含まれることになり、C
rの量が多くなりすぎるとサーメット全体が脆くなる。
このため、Crの含有量はサーメット層中のCrとFe
との合計量に対し、10〜70重量%が好ましく、20
〜50重量%がより好ましい。
【0022】また、複合硼化物においてはWとMoは任
意の割合で互いに置換でき、Wが含まれていることによ
って皮膜の強度と硬度が向上する。しかし、Wは比重が
大きく高価な原料でもあるので、Wの含有量は複合硼化
物中のMoとWとの合計量に対し、40重量%以下が好
ましい。この場合添加されたWは同時に金属結合相中に
も一部固溶し、サーメット相の強度を向上させる。
【0023】このように、本発明において複硼化物を構
成するB以外の成分の組合せは、Cr−Mo、Cr−
W、Cr−Mo−W、Cr−Fe−Mo、Cr−Fe−
W及びCr−Fe−Mo−Wである。また、サーメット
層の金属相中の1〜15重量%、特には2〜10重量
%、がMoであることが好ましい。該金属相中にMoが
1重量以上%固溶していると、サーメット肉盛り層と金
属母材との界面においての拡散が制御される。しかし、
該金属相中のMoが15重量%を超えると、金属相自体
が脆弱になる。
【0024】このような本発明の肉盛り金属部品のサー
メット層のなかでもその構成として好ましい材質は、セ
ラミックス相の70重量%以上がMox (Cr,Fe)
y2 又は(Mo,W)x (Cr,Fe)y2 (ただ
しx=1.8〜2.2、y=0.9〜1.1)であり、
金属結合相の70重量%以上がFeからなるものであ
る。なお、サーメット層の組成が上記xとyで表わされ
る範囲内にあるとき、サーメット層のX線回折パターン
はほとんど変化しない。
【0025】また、本発明の肉盛り金属部品において
は、サーメット層の厚さが0.5〜5.0mmであるこ
とが好ましく、中間層の厚さが0.05〜1.0mmで
あることが好ましい。サーメット層の厚さを0.5mm
以上とすることによって肉盛り層にサーメットの好まし
い特性が付与されている。しかし、5mmを超えて厚く
することは施工の点でも難しくコストの点でも好ましく
ない。また、中間層の厚さを0.1〜3.0mmとする
ことによって優れた密着性が得られる。より好ましい厚
さはそれぞれ1.0〜3.0mm及び0.05〜1.0
mmである。
【0026】図1に本発明によって提供される肉盛り金
属部品の肉盛り層の組織を模式図で示す。図1(a)は
肉盛り層断面の全体を示しており、表面のサーメット層
1Aと中間層1Bとの複層構造になっている。図1
(b)は図1(a)中で符号bで示したサーメット層1
Aの部分の拡大図であり、Fe合金中に主にMox (C
r,Fe)y2 又は(Mo,W)x (Cr,Fe)y
2 からなるセラミックスの粒子が分散している。
【0027】また、中間層1Bは、サーメット層1Aと
母材2との反応層であり、基本的にはCrを固溶したF
e合金相である。Crの固溶量はサーメット層側から母
材側に向かって減少しており、サーメット層近傍ではC
rとFeの金属間化合物が生じていることもある。
【0028】本発明のサーメット肉盛り部品を得るに
は、肉盛り用材料を調製する工程とその肉盛り材料を使
用して金属母材にサーメット層を肉盛りする工程が必要
である。肉盛り用材料の形態は粉末のほか、棒又は板な
どの任意の成形体であってもよいが、プラズマアークや
ガス炎中に供給しやすい粉末や成形体としては、棒状又
は板状のものが好ましい。
【0029】肉盛り材料が粉末の場合は、Cr又はCr
及びFeとMo及び又はWとの複合硼化物を主体とする
セラミックスの粉末又は該セラミックスを生成しうる組
成の粉末と、Feを主体とする金属粉末とからなる複合
粉末を、被覆する金属母材の表面に送り、好ましくはア
ーク又はガス炎によって金属母材の表面を溶融するとと
もに複合粉末を溶融しつつ金属母材と一体化することに
よってサーメット層及び中間層からなる肉盛り層が金属
母材上に形成される。
【0030】この肉盛り材料としての粉末を得るための
工程は、例えば次のとおりである。MoB、CrB等の
硼化物粉末及びMo、ステンレス等の金属粉末を秤取
し、これらを回転ボールミルやアトリションミル等を用
いて、エタノールなどの有機溶媒中で混合粉砕して得ら
れたスラリーに有機バインダーを添加し、このスラリー
を非酸化雰囲気中でにおいてスプレードライヤー等を用
いて造粒し、好ましくは真空、又はAr等の非酸化雰囲
気中において1000〜1200℃でゆるく焼結した
後、解砕しておおむね球形の粒子とする。ただし、この
焼結工程は省略でき、造粒した粒子をそのまま肉盛り用
粉末として用いることもできる。
【0031】肉盛りに用いる原料粉末は必ずしも前述の
ように硼化物粉末と金属粉末の組み合わせであることを
要せず、例えば、CrB合金とMo粉、W粉及びFe粉
との組み合わせ、又はアトマイズ法やその他の方法で合
成した複合硼化物粉末と金属粉末の組み合わせ、さらに
はFe、Mo、Cr等の単体の金属粉末とB粉末の組み
合わせであってもよい。一般的にこれらの原料粉末はで
きるだけ純度が高く、微細である方が優れた特性の肉盛
り層を得るうえで有利である。特に肉盛り用粉末を用い
て形成する肉盛り層の均質性を確保するために、硼化物
粉末の平均粒径は10μm以下とするのが好ましい。
【0032】回転ボールミル等で混合粉砕した粉末は微
細であり、そのままでは肉盛り用粉末としてはあまり好
ましくないため、有機バインダーを添加して造粒処理を
行うことが好ましい。有機バインダーは加熱処理により
除去されやすいものが好ましく、アクリル樹脂やポリエ
チレングリコール等を使用できる。
【0033】造粒処理を行った粉末は一般に球形であ
り、流動性が良い。この造粒粉末をそのまま肉盛り用粉
末として使用できるが、造粒粉末があらかじめ合成した
複合硼化物粉末と金属粉末の組み合わせでない場合は、
肉盛り作業時の熱投入量が少ないと肉盛り層中の硼化物
の量が好ましい量とならず不足することがある。この不
足を生じさせないためには、造粒粉末をあらかじめ真空
中などの非酸化雰囲気中で1000〜1200℃に加熱
し、肉盛り作業前に複合硼化物を充分生成させておくの
が好ましい。
【0034】肉盛り用材料が棒状又は板状である場合
は、CrとMo及び又はWとの複合硼化物を主体とする
セラミックス相と、Feを主体とする金属結合相とから
なる棒状又は板状サーメットの先端を金属母材上に配置
し、アーク又はガス炎によって被覆される前記金属母材
の表面を溶融するとともに、前記棒状又は板状サーメッ
トの先端を前記金属母材の上で溶融して、前記金属母材
と一体化させることによって、サーメット相及び中間相
からなる肉盛り層が金属母材上に形成される。このよう
に、肉盛り用材料が棒状又は板状などの成形体である場
合も、あらかじめ焼結して複合硼化物をセラミックス相
を生成させてあることが好ましい。
【0035】本発明のサーメット金属肉盛り部品を得る
ためにの肉盛り作業は、熱源としてガス炎、イナートガ
スアークやプラズマアーク等を用いて行うことができ
る。これらの方法のなかでも、プラズマアークを用いる
のがより好ましい。特に、肉盛り材料として粉体を用い
る場合には、プラズマアークにより肉盛りするのが最も
好ましい。粉体を用いるプラズマアークによる肉盛り法
では、他の肉盛り法に比べ、肉盛り用材料の母材による
希釈が比較的少なく、アーク特性を精密に制御できるた
め、サーメット層と中間層の組成制御を行いやすく、さ
らに、アルゴンガスでシールされたアークを用いると複
合硼化物や金属の酸化が生じ難く、意図した好ましい特
性を有する肉盛り層が容易に得られる。
【0036】
【実施例】以下に本発明の実施例(例1〜5)及び比較
例(例6〜14)を説明するが、本発明はこれらの実施
例に限定されない。
【0037】(例1)CrB粉末(純度約99.5重量
%、平均粒径5μm)13重量%、MoB粉末(純度約
99.5重量%、平均粒径4μm)22重量%、Mo粉
末(純度約99.8重量%、平均粒径7μm)22重量
%及びSUS430粉末(純度約99.6重量%、平均
粒径10μm)43重量%からなる原料を、混合・粉
砕、造粒、焼成、解砕、篩い分けの工程を経て、平均粒
子径160μmの肉盛り用合金粉末とした。
【0038】この合金粉末を用い合金工具鋼(SKD6
1)母材2の表面に、プラズマアークを用い、(Mo,
W)2 (Cr,Fe)B2 とFe合金を主体とするサー
メット層とこのサーメット層と母材との反応層である中
間層とからなる肉盛り層1を形成し、図2に示す鍛造用
パンチ10を作製した。また、このときの肉盛り施工条
件はプラズマ電流140A、原料送給量25g/分、プ
ラズマの移行速度100mm/分及び予熱温度300℃
であった。
【0039】なお、図2の肉盛り層の厚さは表面のサー
メット層と中間層(約0.3mm)と合わせて約3mm
であり、サーメット層の平均ビッカース硬さは830k
g/mm2 であった。また、中間層の厚さは約0.8m
mであり、そのビッカース硬さは200〜300kg/
mm2 であったが、金属母材との界面は相互拡散により
明確ではなかった。
【0040】この肉盛りパンチ10を、機械加工により
所定の形状に仕上げ、SUJ2製機械部品の鍛造工具に
用いた。SUJ2の加熱温度は900℃、鍛造の間隔は
約4秒、カーボン/水系潤滑材をスプレーして用いた
が、肉盛り層に生じた亀裂のために、パンチ10が使用
できなくなるまでに、48,200回の鍛造ができた。
この使用回数は同一条件で肉盛り層のない合金工具鋼
(SKD61)製パンチを用いた場合の約5.5倍であ
った。
【0041】(例2〜5)例1で使用したと同一の肉盛
り原料粉末を用い、プラズマアークにより、(Mo,
W)2 (Cr,Fe)B2 とFe合金を主体とするサー
メット層とこのサーメット層と母材との反応層である中
間層とからなる肉盛り層1を形成し、図2に示す鍛造用
パンチ10を作製した。ただし、このときの肉盛り施工
条件は、プラズマ電流を表1のように変化させ、原料送
給量、プラズマの移行速度及び予熱温度は例1と同様に
した。このとき得られた肉盛り層の厚さと平均ビッカー
ス硬度は表1に示すとおりであった。これらの肉盛りパ
ンチ10を、機械加工により所定の形状に仕上げ、例1
と同一の鍛造工具に用い、その鍛造可能回数と鍛造終了
の原因となったパンチ損傷の種別を表1にまとめた。
【0042】(例6〜8)(Mo,W)2 NiB2 複硼
化物を主体とするセラミックス層と、Niを主体とする
金属からなる肉盛り用粉体原料を用い、例1〜5と同様
にプラズマアークにより、サーメット層とこのサーメッ
ト層と母材との反応層である中間層とからなる肉盛り層
1を形成し、図2に示す鍛造用パンチ10を作製した。
ただし、このときの肉盛り施工条件は、プラズマを変化
させ、原料送給量、プラズマの移行速度及び予熱温度は
例1と同様にした。このとき得られた肉盛り層の厚さと
平均ビッカース硬度は表1に示すとおりであった。これ
らの肉盛りパンチ10を、機械加工により所定の形状に
仕上げ、例1と同一の鍛造工具に用い、その鍛造可能回
数と鍛造終了の原因となったパンチ損傷の種別を表1に
まとめた。
【0043】(例9〜11)Mo2 FeB2 複硼化物を
主体とするセラミックス層と、Feを主体とする金属か
らなる肉盛り用粉体原料を用い、例1〜5と同様にプラ
ズマアークにより、サーメット層とこのサーメット層と
母材との反応層である中間層とからなる肉盛り層1を形
成し、図2に示す鍛造用パンチ10を作製した。ただ
し、このときの肉盛り施工条件は、プラズマを変化さ
せ、原料送給量、プラズマの移行速度及び予熱温度は例
1と同様にした。このとき得られた肉盛り層の厚さと平
均ビッカース硬度は表1に示すとおりであった。これら
の肉盛りパンチ10を、機械加工により所定の形状に仕
上げ、例1と同一の鍛造工具に用い、その鍛造可能回数
と鍛造終了の原因となったパンチ損傷の種別を表1にま
とめた。
【0044】(例12〜14)(Mo,W)CoB複硼
化物を主体とするセラミックス層と、Coを主体とする
金属からなる肉盛り用粉体原料を用い、例1〜5と同様
にプラズマアークにより、サーメット層とこのサーメッ
ト層と母材との反応層である中間層とからなる肉盛り層
1を形成し、図2に示す鍛造用パンチ10を作製した。
ただし、このときの肉盛り施工条件は、プラズマを変化
させ、原料送給量、プラズマの移行速度及び予熱温度は
例1と同様にした。このとき得られた肉盛り層の厚さと
平均ビッカース硬度は表1に示すとおりであった。これ
らの肉盛りパンチ10を、機械加工により所定の形状に
仕上げ、例1と同一の鍛造工具に用い、その鍛造可能回
数と鍛造終了の原因となったパンチ損傷の種別を表1に
まとめた。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】本発明のサーメット肉盛り金属部品が有
する、Cr又はCr及びFeとMo及び又はWとの複合
硼化物を主体とするセラミックス相と、Feを主体とす
る金属結合相とからなるサーメット層と、サーメット層
の成分が金属母材と反応してなる中間層との復層構造か
らなる肉盛り層は、高温・高圧用バルブ、粉砕機、熱間
鍛造金型などに多用されているステライトなどのCo基
合金や、メカニカルシールやポンプスリーブに汎用され
ている(Bの含有量が少なくサーメットではない)Ni
CrB自溶性合金の肉盛り層と比べ、格段に大きい高温
強度や硬度を有し、密着性、耐食性や耐熱衝撃性におい
て遜色がない。
【0047】また、本発明のサーメット肉盛り金属部品
が有するサーメット層とサーメット層の成分が金属母材
と反応してなる中間層とからなる肉盛り皮膜の密着力
は、溶射法によるサーメット層のみからなる皮膜の密着
力と比べて顕著に大きい。さらに、本発明の肉盛り金属
部品を期待する特性が大きな効果の得られるものとする
ための、肉盛り施工条件は比較的広い幅を持っている。
すなわち、母材の予熱温度が低い場合、付与する熱量が
大量でない場合など広い条件で施工できる。したがっ
て、本発明による肉盛りは、様々な形状や種々の大きさ
を有する金属部品に適用できる。
【0048】このため、本発明によるサーメット肉盛り
金属部品は、熱間鍛造金型、赤熱した鋼の剪断刃物や粉
砕機等に代表されるような、耐摩耗性と強度が要求され
るのみではなく、熱的及び又は機械的衝撃力が繰り返し
印加される用途において、優れた耐用を示し、これらの
機器のコストパフォーマンスを大幅に改善する。また、
本発明のサーメット肉盛り金属部品は、高い耐食性を有
し、摺動性にも優れるため、さらに広範な用途において
製品の品質とコストの低減で大きな改善効果をもたらす
と考えられ、その産業上の利用価値は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサーメット肉盛り金属部品の肉盛り層
の断面の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例及び比較例を説明するための図
である。
【符号の説明】
1:肉盛り層 1A:サーメット層 1B:中間層 2:合金工具鋼 10:鍛造用パンチ

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属母材の表面に、Cr又はCr及びFe
    とMo及び又はWとの複合硼化物を主体とするセラミッ
    クス相と、Feを主体とする金属結合相とからなるサー
    メット層と、前記サーメット成分が前記金属母材と反応
    してなる中間層とが形成されていることを特徴とするサ
    ーメット肉盛り金属部品。
  2. 【請求項2】前記セラミックス相の85重量%以上が、
    Cr又はCr及びFeとMo及び又はWとの複合硼化物
    である請求項1記載のサーメット肉盛り金属部品。
  3. 【請求項3】前記サーメット層中に前記セラミックス相
    が30〜85重量%含まれている請求項1又は2記載の
    サーメット肉盛り金属部品。
  4. 【請求項4】前記セラミックス相の70重量%以上がM
    x (Cr,Fe)y2 又は(Mo,W)x (Cr,
    Fe)y2 (ただしx=1.8〜2.2、y=0.9
    〜1.1)であり、前記金属結合相の60重量%以上が
    Feである請求項1又は3記載のサーメット肉盛り金属
    部品。
  5. 【請求項5】前記サーメット層中のCrの含有量が、C
    rとFeとの合量に対し、10〜70重量%である請求
    項1〜4のいずれかに記載のサーメット肉盛り金属部
    品。
  6. 【請求項6】前記サーメット層の厚さが0.5〜5.0
    mm、前記中間層の厚さが0.1〜3.0mmである請
    求項1〜5のいずれかに記載のサーメット肉盛り金属部
    品。
  7. 【請求項7】Cr又はCr及びFeとMo及び又はWと
    の複合硼化物を主体とするセラミックスの粉末又は該セ
    ラミックスを生成しうる組成の粉末と、Feを主体とす
    る金属粉末とからなる複合粉末を、金属母材の表面に供
    給し、前記金属母材の表面を溶融するとともに上記複合
    粉末を溶融しつつ前記金属母材と一体化することによっ
    て、前記金属母材の表面に、Cr又はCr及びFeとM
    o及び又はWとの複合硼化物を主体とするセラミックス
    相と、Feを主体とする金属結合相とからなるサーメッ
    ト層と、前記サーメット成分が前記金属母材と反応して
    なる中間層とを形成することを特徴とするサーメット肉
    盛り金属部品の製造方法。
  8. 【請求項8】Cr又はCr及びFeとMo及び又はWと
    の複合硼化物を主体とするセラミックス相と、Feを主
    体とする金属結合相とからなるサーメット成形体を金属
    母材上に配置し、前記金属母材の表面層を溶融するとと
    もに、前記サーメット成形体を溶融して前記金属母材と
    一体化することによって、前記金属母材の表面に、Cr
    又はCr及びFeとMo及び又はWとの複合硼化物を主
    体とするセラミックス相と、Feを主体とする金属結合
    相とからなるサーメット層と、前記サーメット成分が前
    記金属母材と反応してなる中間層と、を形成することを
    特徴とするサーメット肉盛り金属部品の製造方法。
  9. 【請求項9】前記溶融をアーク又はガス炎によって行う
    請求項7又は8記載のサーメット肉盛り金属部品の製造
    方法。
  10. 【請求項10】使用するアークがプラズマアークである
    請求項9記載のサーメット肉盛り金属部品の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013027523A1 (ja) * 2011-08-19 2013-02-28 東洋鋼鈑株式会社 溶接棒およびその製造方法
WO2013115131A1 (ja) * 2012-01-31 2013-08-08 東洋鋼鈑株式会社 金型部品および金型部品用材料、ならびにこれらの製造方法
JP2013154384A (ja) * 2012-01-31 2013-08-15 Toyo Kohan Co Ltd 肉盛溶接部材の製造方法

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