JP2014101941A - 捩り振動減衰装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性あるいは耐久性に優れ、かつ振動減衰特性の設定あるいは維持を容易にする。
【解決手段】トルクを受けて回転する回転体1の外周側の部分に、そのトルクが変動することにより往復動する転動体2を設け、転動体2を往復動できるように液密状態に収容し、かつ回転体1と一体に形成された収容室5を備えた捩り振動減衰装置において、収容室5の内部へ油を供給する供給油路7と、収容室内の油を排出する排出油路8とを備え、収容室5内の潤滑油9が遠心力によって収容室5の外周側の内壁面に向け押されて油層9aを形成している状態で回転体1が低回転領域で回転する場合、油層9aが転動体2に接触しない状態となるようにその油層9aの厚さを制御し、その油層9aを形成している状態で回転体1が高回転領域で回転する場合、油層9aが転動体2に接触する状態となるようにその油層9aの厚さを制御するように構成されている。
【選択図】図6
【解決手段】トルクを受けて回転する回転体1の外周側の部分に、そのトルクが変動することにより往復動する転動体2を設け、転動体2を往復動できるように液密状態に収容し、かつ回転体1と一体に形成された収容室5を備えた捩り振動減衰装置において、収容室5の内部へ油を供給する供給油路7と、収容室内の油を排出する排出油路8とを備え、収容室5内の潤滑油9が遠心力によって収容室5の外周側の内壁面に向け押されて油層9aを形成している状態で回転体1が低回転領域で回転する場合、油層9aが転動体2に接触しない状態となるようにその油層9aの厚さを制御し、その油層9aを形成している状態で回転体1が高回転領域で回転する場合、油層9aが転動体2に接触する状態となるようにその油層9aの厚さを制御するように構成されている。
【選択図】図6
Description
この発明は、トルクを受けて回転する回転部材の捩り振動を低減するための装置に関し、特に回転部材が回転することにより慣性質量体が相対的に振り子運動することを利用して回転部材の捩り振動を低減する装置に関するものである。
動力源で発生させたトルクを目的とする箇所もしくは部材に伝達するためのクランクシャフトや動力伝達軸や歯車などの回転部材は、入力されるトルク自体の変動や負荷の変動、あるいは摩擦などが原因となって、回転方向の振動である捩り振動をすることが避けられない。そして、その振動の周波数は回転数に応じて変化するとともに、二次振動以上の高次の振動も併せて発生するので、共振によって振幅が大きくなり騒音や耐久性低下などの原因となることがある。そのため、その共振を所定の質量体における振り子運動によって抑制するように構成した装置が知られている。
例えば、特許文献1には、回転数適用型の動吸振器であって、一または複数の慣性質量体が転動ローラを介して慣性質量体支持装置に対して相対的に運動可能に支承された遠心振り子装置が記載されている。その遠心振り子装置と、直列接続可能な少なくとも二つダンパとを含むダンパ装置をトルクコンバータ内に配置している。
また、特許文献2には、慣性質量体である転動マスと、その転動マスが内部に収容されている収容室の内面との間を潤滑油で潤滑するように構成された装置であって、自動車用エンジンのクランク室内に配置したものが記載されている。また、エンジンのクランク軸に取り付けられたハブに複数の収容室が形成され、その収容室の内面のうち外周側の内面が転動面とされている。そのクランク軸とともにハブが回転すると、収容室の内部に配置された転動マスが遠心力によってその転動面に押しつけられ、その状態でクランク軸のトルクが変動すると、転動マスが転動面上を往復移動し、ハブあるいはクランク軸に対して所定の振動数で揺動する。その収容室には給油孔が形成されており、クランク室内のオイルがその給油孔を介して収容室内に流入し、そのオイルによって収容室の内面と転動マスとの間が潤滑されるようになっている。
上記の各特許文献に記載された構成によれば、転動ローラもしくは転動マスと転動面との間をオイルで潤滑するので摩耗を低減できる。しかしながら、各特許文献に記載された構成では、その転動マスなどが転動面上を往復移動する際、転動マスがオイル中を移動することになるため、オイルが転動マスの往復移動あるいは揺動に対する抵抗となり、振動減衰特性が目標とする特性から外れてしまう可能性がある。
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、耐摩耗性あるいは耐久性に優れ、かつ振動減衰特性の設定あるいは維持が容易な捩り振動減衰装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、トルクを受けて回転する回転体の外周側の部分に、前記回転体が回転している状態で前記トルクが変動することにより前記回転体の回転方向に往復動する慣性質量体を設け、前記慣性質量体を前記回転体の回転方向に往復動できるように液密状態に収容し、かつ前記回転体と一体に形成された収容室を備えた捩り振動減衰装置において、前記収容室の内部へ油を供給する供給油路と、前記収容室内の油を排出する排出油路とを備え、前記収容室内の油が遠心力によって前記収容室の外周側の内壁面に向け押されて油層を形成している状態で前記回転体が低回転領域で回転する場合、前記油層が前記慣性質量体に接触しないように前記油層の厚さを制御し、前記油層を形成している状態で前記回転体が高回転領域で回転する場合、前記油層が前記慣性質量体に接触するように前記油層の厚さを制御するように構成されていることを特徴とするものである。
請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記収容室内の油量を変化させることにより前記油層の厚さを制御するように構成さてれいることを特徴とする捩り振動減衰装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1または2の発明において、前記供給油路は、油圧回路に接続され、前記回転体の回転数に応じて前記供給油路における油圧を制御することにより前記収容室の内部へ供給される油量を制御するように構成されていることを特徴とする捩り振動減衰装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかの発明において、前記回転体の回転数に応じて前記収容室内から排出される油量を制御するように構成されていることを特徴とする捩り振動減衰装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかの発明において、油の流れを生じさせる駆動側インペラと、前記油の流れによって駆動される従動側インペラとを備えた流体伝動装置の内部に配置され、前記回転体は、前記従動側インペラと一体となって回転するように構成されていることを特徴とする捩り振動減衰装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1から4のいずれかの発明において、油の流れを生じさせる駆動側インペラと、前記油の流れによって駆動される従動側インペラとを備えた流体伝動装置の外部に配置され、前記回転体は、前記駆動側インペラと一体となって回転するように構成されていることを特徴とする捩り振動減衰装置である。
請求項7に係る発明は、請求項1から6のいずれかの発明において、前記排出油路は、油圧回路に接続され、前記回転体の回転数に応じて前記排出油路における油圧を制御することにより前記収容室内から排出される油量を制御するように構成されていることを特徴とする捩り振動減衰装置である。
請求項8に係る発明は、請求項1から7のいずれかの発明において、前記慣性質量体は、前記トルクの変動によって転動する転動体を含み、前記収容室の内部には、前記転動体が遠心力によって押しつけられる転動面が設けられていることを特徴とする捩り振動減衰装置である。
請求項1の発明によれば、振動減衰能を発揮すべき低回転領域において、油層が慣性質量体に接触しない油層の厚さに制御することができる。ゆえに、その低回転領域では、油層が慣性質量体の往復動の妨げとはならない。そのため、所期通りの振動減衰特性を示すことができる。また、振動減衰能を発揮しなくてもよい高回転領域において、油層が慣性質量体に接触する油層の厚さに制御するので、油層が慣性質量体の往復動の妨げとなり、その慣性質量体と回転体との摩耗を防止できる。さらに、その油層が慣性質量体に接触する場合があるので、油膜を形成し、回転体と慣性質量体との摩耗もしくは摩擦を低減させることができるので、耐摩耗性あるいは耐久性を向上できる。
請求項2の発明によれば、回転体の回転数に応じて収容室内の油量を制御することによりその収容室内の油層の厚さを変化させることができる。
請求項3の発明によれば、供給油路における油圧を制御することにより収容室内へ供給する油量を制御することができる。さらに、回転体の回転数に応じて収容室内の油量を制御でき、その回転数に応じた油層の厚さとなるように制御することができるようになる。
請求項4の発明によれば、回転数に応じて収容室から排出する油量を制御することができ、収容室内の油量を制御することができる。そのため、その収容室の油量に応じた油層の厚さに制御することができる。また、回転体の回転数に応じて変化する遠心力により生じる収容室内の油圧と、その供給油路の油圧との大小関係により、収容室内の油層の厚さを制御することができるようになる。
請求項5の発明によれば、捩り振動減衰装置を流体伝動装置の内部に収容することができる。そのため、回転部材である従動側インペラにおけるトルクの変動による捩り振動を減衰させることができる。
請求項6の発明によれば、捩り振動減衰装置を流体伝動装置の外部に設けることができ、その流体伝動装置の入力側となる駆動側インペラにおけるトルクの変動による捩り振動を減衰させることができる。
請求項7の発明によれば、回転体に回転数に応じて排出油路の油圧を制御することにより、収容室からの排出量を制御でき、収容室内の油量を制御することができるようになる。また、回転体の回転数に応じて変化する遠心力により生じる収容室内の油圧と、その排出油路の油圧との大小関係により、収容室内の油層の厚さを制御することができるようになる。
請求項8の発明によれば、回転体のトルクが変動することにより転動体が転動面を転動する場合、収容室内の油層がその転動体に接触しない高さになっていれば、その転動体の往復動が油層により妨げられず、所期通りの振動減衰能を発揮することができる。さらに、転動面に油膜が形成されるため、転動面の摩耗や摩擦を低減でき、転動体および回転体の耐摩耗性あるいは耐久性を向上させることができる。
以下、この発明を具体的に説明する。この発明に係る捩り振動減衰装置は、いわゆるダイナミックダンパであって、回転体がトルクを受けて回転するとともに、そのトルクの変動により捩り振動(回転方向の振動)する回転体に対して慣性質量体を振り子運動させることによって、その捩り振動を低減もしくは減衰させるように構成されている。その振り子運動は、慣性質量体を回転体に支持軸によってその回転方向に揺動自在に連結するように構成することにより生じさせ、あるいは回転体に設けた所定の転動面に沿って慣性質量体を転動させるように構成することにより生じさせることができる。また、この発明に係る捩り振動減衰装置は、慣性質量体を揺動可能に収容する収容室の内部に油を供給し、その回転体の回転数に応じて収容室内の油面の高さを制御するように構成されている。なお、以下に述べる説明において、「円周方向」とは「回転部材の回転方向」、「外周側」とは「半径方向外側」、「内周側」とは「半径方向内側」、「軸線方向」あるいは「厚さ方向」とは「回転部材の回転中心軸線と平行な方向」、「側面」とは「軸線方向と直交する方向に形成された面」のことである。さらに、「慣性質量体」を「転動体」と記載して説明する。
図1は、この発明に係る捩り振動減衰装置の一例を示し、その捩り振動減衰装置は転動面に沿って転動体を往復動させるように構成されている。その捩り振動減衰装置の回転体1は、円板状の回転部材であって、車両のエンジンから出力されたトルクを伝達する動力伝達経路中に設けられた所定の回転部材と一体となって回転するように構成されている。具体的には、回転体1は、図示しないエンジンのクランクシャフトや変速機の回転軸、あるいはトルクコンバータのポンプインペラやタービンランナなどと一体回転するように構成される。
その回転体1の外周側の部分には、複数の転動体2が円周方向に一定の間隔を空けて取り付けられている。図1に例示するように、回転体1の外周側の部分に、複数の転動体2に対応して、厚さ方向に貫通した貫通部が半径方向に所定の幅で開口し円周方向に長く複数形成されている。転動体2は、図3(b)などに示すように、回転体1の板厚より僅かに長い支持軸2aの両端部に、支持軸2aの外径より大きい外径の円板部2bを設け、その軸線方向の断面形状がH字状を成す部材である。また、回転体1の貫通部における半径方向の開口幅は、転動体2における支持軸2aの外径より大きく、かつ転動体2における円板部2bの外径より小さい幅に設定されている。したがって、円板部2bの内壁面が回転体1の側面に引っ掛かって転動体2が貫通部から抜け出ないようになっている。その回転体1における貫通部の外周側の内壁面は、遠心力によって転動体2が押しつけられる面であって、その形状は回転体1の回転中心から半径方向で外周側にずれた所定の点を中心とした円弧面、あるいは円弧面に近似した面、例えば軸線方向に直交する方向の断面形状がサイクロイド状の曲面に形成されている転動面4である。したがって、回転体1に形成された複数の貫通部は転動体2が転動する転動面4を備えた転動室3を形成し、その転動室3の内部に揺動自在に転動体2が収容されている。
また、図1に例示するように、転動面4のうち長手方向での中央部が、回転体1の回転中心から最も外周側に形成され、ここが中立点Nとなっている。すなわち、その中立点Nから左右にずれるほど転動面4は回転体1の回転中心に次第に近づくようになっている。例えば、転動面4がサイクロイド状の曲面として形成されている場合には、中立点Nを始点とした左右の両側に対称な転動面4が形成される。このように、転動面4がサイクロイド状に形成されていることにより、回転体1が回転して転動体2に遠心力が作用すると、転動体2は転動面4における中立点Nに押しつけられ、この状態で回転体1のトルクが変動することにより転動体2が中立点Nを挟んで往復動する。このように転動体2が転動面4に沿って往復動するので、回転体1の中心から転動面4の曲率中心までの距離を「R」とし、転動面4の曲率半径(振り子の腕の長さ)を「L」とした場合、往復動次数nは、「n=(R/L)1/2」で表され、これに対応した次数の振動が減衰される。
さらに、この捩り振動減衰装置には、複数の転動体2を往復動可能に一括して収容する収容室5が、回転体1およびカバー6によって液密構造に形成されている。そのカバー6は、環状に形成された部材であり、回転体1の外径より大きい内径となる円弧状の内周面6aを有する外周側壁部と、軸線方向で回転体1の側面および転動体2の側面(円板部2bの外側面)と対向する内面(内側面)を有する側壁部と、回転体1の両側面に液密状態に取り付けられる内周側壁部とを備えている。また、カバー6は、複数の転動体2および転動室3を一括して完全に覆う形状を成している。具体的には、カバー6における内周側壁部が回転体1の両側面に液密状態に取り付けられ、カバー6の内部に複数の転動体2および転動室3が一括して収容されている。すなわち、収容室5は、カバー6により区画されている。そのため、カバー6における外周側壁部の内周面6aが、収容室5の外周側の内壁面となる。さらに、収容室5の軸線方向の厚さは、転動体2の軸線方向の長さより僅かに大きく形成されている。そして、転動体2は軸線方向に幾分移動できるから、その円板部2bの内側面が回転体1の側面に接触し、あるいは円板部2bの外側面がカバー6の内側面に接触することがある。また、転動体2が揺動する場合、収容室5の外周側の内壁面が回転体1の回転中心を中心とした円弧面であるのに対して転動面4はそれより大きい曲率の円弧状もしくはサイクロイド状に形成されているため、その転動体2が転動面4の中立点Nから離れるほど収容室5の外周側の内壁面から離隔する。なお、この説明において、収容室5の内部とカバー6の内部とを同義として記載し説明する場合がある。
上述したように転動体2は、その往復動の過程で回転体1やカバー6の内側面に接触することがあるので、その接触箇所もしくは摺動箇所の潤滑を行う必要がある。そのため、この捩り振動減衰装置では、回転体1に設けられた供給油路7から収容室5の内部に潤滑油9が供給されるように構成されている。具体的には、図1に例示するように、供給油路7の一方の開口部が回転体1の側面のうち可及的に外周側に形成され、収容室5の内部に開口するように構成されている。より詳細には、供給油路7の開口部は、半径方向で回転体1の側面における外周縁と、中立点Nに位置する転動体2における円板部2bの外周側の端部との間に配置されている。言い換えれば、供給油路7の開口部は、転動体2よりも外周側に配置され、かつ軸線方向で転動体2の円板部2bと重ならないように構成されている。さらに、その供給油路7は、図示しない油圧回路と接続されており、収容室5の内部に圧油を供給するように構成されている。また、カバー6の外周側壁部には、収容室5内の潤滑油9を外部へ排出する排出油路8が形成されている。すなわち、この捩り振動減衰装置は、収容室5内の潤滑油9の量を変化させるように構成されている。なお、図1には収容室5内の潤滑油9の記載を省略してある。
そこで、図2には、収容室5の内部に潤滑油9がある場合の捩り振動減衰装置の一例を示し、その潤滑油9を記載してある。なお、図2に記載する潤滑油9は、図示しない油圧回路に接続された供給油路7を介して収容室5内に供給された油である。その図2に例示するように、転動体2を転動面4に押しつけるほどの遠心力が生じるように回転体1が回転すると、潤滑油9は遠心力によって収容室5の外周側の内壁面に向けて押しつけられ、その内壁面の形状に応じた潤滑油9の層(油層)9aを形成する。その回転体1が回転した場合に生じる遠心力Fは、回転中心からの距離が等しければ円周方向のいずれの箇所でも同じであるから、回転体1の中心から収容室5の外周側の内壁面までの距離が等しければ、潤滑油9は収容室5における外周側の内壁面に沿って均等に広がろうとする。したがって、この実施形態では、収容室5の外周側の内壁面が回転体1の回転中心を中心とする円弧状であるため、油層9aが一定の厚さに形成され、その油層9aの厚さは収容室5の内部にある潤滑油9の量に応じたものとなる。すなわち、収容室5内の潤滑油9の量に応じて油層9aの厚さが変化する。なお、油層9aの厚さとは、底部となる収容室5の外周側の内壁面から半径方向内方への油面高さであるため、この説明では、油層9aの厚さを油面の高さと記載して説明する場合がある。
さらに、回転体1が回転することにより油層9aが形成される場合、油層9aには遠心力による油圧(遠心油圧)が生じている。その遠心油圧は、遠心力に依存する、すなわち回転速度と回転中心からの距離とに因り変化する。例えば、回転中心からの距離が等しい円周方向のいずれの箇所では、同一の遠心力が働くため、回転速度に応じて遠心油圧が変化し、回転速度が増大した場合には遠心油圧が増大し、回転速度が減少した場合には遠心油圧が減少する。これに対して、回転速度が一定の場合、回転中心から距離が長くなるにつれてその箇所における遠心油圧は大きくなる。そのため、油層9a内であっても回転中心からの距離が異なれば遠心油圧が相違することになる。しかしながら、ここでの説明では、説明の便宜上、その回転中心からの距離を考慮せずに収容室5内に油層9aを形成している潤滑油9の油圧を遠心油圧P3と記載して説明する。すなわち、ここで記載する遠心油圧P3は回転速度に応じて変化するものである。そして、この発明に係る捩り振動減衰装置では、回転体1の回転速度(回転数)に応じて、収容室5内の潤滑油9における油層9aの厚さを変化させるように制御する構成を備えている。具体的には、その捩り振動減衰装置は、回転体1の回転数が低回転領域である場合の油層9aの厚さと、その回転数が高回転領域である場合の油層9aの厚さとを相違させるように構成されている。
例えば、油層9aを形成する状態で回転体1が相対的に低回転する場合、図3(a),(b)に例示するように、遠心力Fによって転動面4に押しつけられている転動体2の円板部2bが油層9aに接触しない、あるいは図示しないが僅かに接触するように、収容室5内の油層9の厚さを制御する。すなわち、転動体2が転動面4の中立点Nを通過する場合でもその円板部2bに触れない、あるいは僅かに接触する油面高さとなるようにその油量を制御する。
ここで、油層9aが転動体2に接触しないとは、油層9aが一定の厚さに形成される場合、転動面4に沿って転動する転動体2と収容室5の外周側の内壁面との最短距離がその油層9aの厚さより大きいということである。つまり、転動体2がトルク変動によって往復動した場合のいずれの箇所においても、その外周側に形成されている油層9aに円板部2bが接触せず、また当然に円板部2bの外周部が油層9aに浸ることがないように、潤滑油9の量すなわち油層9aの厚さを制御している。これに対して、僅かに接触するとは、転動体2が往復動する範囲、もしくは振り子運動する振幅の範囲の中のいずれかで、円板部2bの一部が油層9aに接触し、あるいは僅か浸ることである。言い換えれば、当該範囲の全体に亘っては、円板部2bが油層9aに接触したり、浸ったりすることがないということである。したがって、僅かに接触するとしてもその接触の程度は、振動次数や振幅比に大きな影響が生じない程度の接触状態あるいは接触量である。
一方、油層9aを形成する状態で回転体1が相対的に高回転する場合、図4(a),(b)に例示するように、その転動体2の円板部2bが油層9aに接触し、あるいは円板部2bおよび転動面4が油層9aに接触するような油層9aの厚さとなるようその油量を制御する。この場合の油層9aの厚さは、転動面4の中立点Nに位置する転動体2の円板部2bと必ず接触する油面高さとなるように制御されるものの、必ずしもその往復動の全範囲に亘って円板部2bと接触する油面高さとなるように制御されなくてもよい。言い換えれば、転動面4のうち転動体2が転動する全範囲が油層9aと接触する油面高さに制御されてもよい。
つぎに、車両の動力伝達経路中の所定の回転部材に上述した捩り振動減衰装置が設けられた例について説明する。図5は、動力伝達経路中のトルク増幅作用のある流体伝動装置の内部に捩り振動減衰装置が設置された例を示している。その図5に例示するように、その流体伝動装置としてのトルクコンバータ20は、従来車両に広く搭載されているトルクコンバータと同様の構成を備えている。具体的には、入力側(駆動側)の部材であるポンプインペラ21は、環状に配列されたポンプブレードをハウジング24の内面に取り付けて構成されており、そのポンプインペラ21に対向してタービンランナ22が配置されている。このタービンランナ22は、ポンプインペラ21とほぼ対称となる形状を有するものであって、環状もしくは半ドーナツ状をなすシェルの内面に、環状に配列した多数のタービンブレードを固定して構成されている。したがって、これらポンプインペラ21とタービンランナ22とは同一軸線上で対向して配置されている。
タービンランナ22の外周側を覆うハウジング24は、後述するロックアップクラッチ25が係合するフロント壁部24aの外面の中心部分には軸部26が突出して形成され、その軸部26が図示しないエンジンのクランクシャフトに連結されている。また、円筒軸27が、ハウジング24と一体回転するように設けられており、図示しないオイルポンプに連結されている。その円筒軸27の内部には、その円筒軸27の内径より小さい外径の固定軸28が挿入されている。この固定軸28は、オイルポンプを保持している図示しない固定壁部と一体に形成された中空軸状の部分であって、この固定軸28の外周面と円筒軸27の内周面との間が油路29となっている。その油路29が、トルクコンバータ20内に油圧(係合油圧)を供給する供給用油路となる。
さらに、固定軸28の先端部は、ハウジング24で区画されたトルクコンバータ20の内部にまで延びており、具体的には、タービンランナ22の内周側もしくはポンプインペラ21とタービンランナ22との間の部分の内周側に位置している。この固定軸28の先端部に図示しない一方向クラッチのインナーレースがスプライン嵌合させられている。また、その一方向クラッチのアウターレースには、ポンプインペラ21の内周部とこれに対向するタービンランナ22の内周部との間に配置されたステータ23が取り付けられている。すなわち、ポンプインペラ21とタービンランナ22との速度比が小さい状態では、タービンランナ22から流出したオイルがステータ23に作用してもステータ23の回転を一方向クラッチによって阻止し、その結果、オイルの流動方向を変化させてポンプインペラ21にオイルを送り込むように構成されている。一方、その速度比が大きくなってステータ23のいわゆる背面に向けてオイルが当たる状態では、ステータ23を回転させてオイルの流動方向を変化させない、すなわちオイルの流れを乱さないように構成されている。
また、固定軸28の内周側には、出力軸30が回転自在に挿入されており、その先端部は軸線方向で固定軸28の先端部から突き出てハウジング24の内面近くまで延びている。そして、捩り振動減衰装置の回転体1と、タービンランナ22と、後述するロックアップピストン25aとが、出力軸30と一体回転するように連結されている。なお、出力軸30は、図示しない変速機の入力軸となる。
その回転体1とハウジング24のフロント壁部24aとの間に、ロックアップクラッチ(直結クラッチ)25が設けられている。このロックアップクラッチ25は、従来知られているものと同様に、流体を介することなく駆動側の部材と従動側の部材との間でトルクを伝達するためのものであり、図5に示す例では、出力軸30とハウジング24とを連結するように構成されている。すなわち、ロックアップクラッチ25は、上述した捩り振動減衰装置とハウジング24のフロント壁部24aの内面との間に配置された円盤状のロックアップピストン25aを主体として構成されており、そのロックアップピストン25aは出力軸30に、軸線方向には移動自在でかつ回転方向には一体となるように連結されている。また、そのロックアップピストン25aにおけるハウジング24のフロント壁部24aに対向する側面のうち、可及的に外周側の箇所に、そのフロント壁部24aに押しつけられて摩擦力を生じる摩擦材25bが取り付けられている。したがって、ロックアップピストン25aは、図5の右方向に押されてその摩擦材25bがハウジング24に接触することにより係合状態(直結状態)となってハウジング24と出力軸30との間で流体を介さないトルク伝達をし、また図5の左方向に押し戻されることによりその摩擦材25bがハウジング24から離れて解放状態となってそのトルク伝達を遮断するように構成されている。
そのロックアップクラッチ25を係合あるいは解放させるためのトルクコンバータ20内の油圧(係合油圧)を排出する排出用油路として、出力軸30にはその中心軸線に沿って油路31が形成されており、この油路31は軸線方向で出力軸30の先端部に開口している。また、ハウジング24の内面(フロント壁部24aの内面)とロックアップピストン25aとの間には軸線方向で僅かな隙間が空いており、したがって油路31はその隙間に開口して連通している。一方、ロックアップピストン25aの背面側の部分、すなわちタービンランナ22が収容されている部分には、円筒軸27と固定軸28との間に形成された係合圧供給用の油路29が連通している。さらに、出力軸30には、回転体1に形成された供給油路7と連通する油路32が形成されている。その油路32は、図示しない油圧回路に接続されている。したがって、この発明に係る捩り振動減衰装置において、収容室5の内部には、供給油路7を介して圧油を供給するように構成されている。すなわち、図示しない調圧弁などの調圧機能を有する装置により供給油路7の油圧(供給油圧)P1を制御するように構成されている。
さらに、この捩り振動減衰装置は、図6に例示するように、カバー6の外周側壁部に、回転体1の回転状態に応じて排出油路8における開口部を自動で開閉することのできる自動開閉機構41が設けられている。その自動開閉機構41は、収容室5の内部に排出油路8の開口部を開閉するための質量体であるチェックボール41aと、そのチェックボール41aとカバー6の外周側壁部とを連結する弾性体であるバネ41bとを備えている。そのバネ41aは、収容室5の外周側の内壁面あるいは排出油路8の開口部を形成するカバー6の壁面に連結されている。また、チェックボール41aはバネ41aにより半径方向内方に付勢力を作用される。したがって、自動開閉機構41は、そのバネ41bを介して排出油路8の開口部とチェックボール41aとが連結されているため、収容室5の内部の油圧とその外部の油圧との差圧により、あるいはチェックボール41aに働く遠心力Fにより、排出油路8の開口部を開閉させるように構成されている。なお、チェックボール41aが排出油路8の開口部に接触することにでその開口部を閉じるように構成されている。すなわち、チェックボール41aが弁体として機能し、排出油路8の開口部に形成された弁座を備える構成であってもよい。
例えば、回転体1が回転する場合、自動開閉機構41のチェックボール41aにはバネ41aからの付勢力に抗する遠心力Fが働き、その遠心力Fの方が付勢力よりも大きくなると、そのチェックボール41aが半径方向で外側に向かい、ひいては排出油路8の開口部を閉じるように作用する。したがって、その遠心力Fは回転体1の回転数に応じるため、自動開閉機構41では、回転体1の回転数に応じて排出油路8の開口部を開閉させる。
ここで、エンジン回転数に応じて収容室5内の油面高さを制御する例について説明する。なお、エンジン回転数が低回転領域とは700rpm〜1500rpmであり、エンジン回転数が高回転領域とは1500rpm以上である。図6(a)は、エンジン回転数が低回転領域の場合における収容室5内の油層9aの油面の高さを示している。エンジン回転数が低回転領域である場合には、転動体2を往復動させて振動減衰能を発揮させる必要があるため、油層9aが転動体2の往復動の抵抗とならないにように、収容室5内の油層9aが転動体2に接触しない油面高さに制御する。具体的には、低回転領域では、排出油路8の開口部が自動開閉機構41により開かれている状態で、油層9aが転動体2の円板部2bに接触しない油面高さとなるように、その油面高さで供給油路7の供給油圧P1と収容室5内の遠心油圧P3とが等しくなり油面高さを維持するように構成されている。
また、図6(b)に例示するように、エンジン回転数が低回転領域から高回転領域に移行する場合には、その高回転領域では転動体2を往復動させて振動減衰能を発揮させる必要がないため、油層9aが転動体2の往復動の抵抗となるように、収容室5内の油層9aが転動体2に接触するようにその油面高さを上昇させる。具体的には、排出油路8の開口部が自動開閉機構41により閉じられ、供給油路7の供給油圧P1の方が収容室5内の遠心油圧P3より大きくなるように制御することで、収容室5内の潤滑油9の量を増大させる。
そして、図6(c)に例示するように、エンジン回転数が高回転領域である場合には、収容室5内の油層9aが転動体2に接触する油面高さとなる状態を維持するように制御される。具体的には、排出油路8の開口部が自動開閉機構41により閉じられた状態で、供給油路7の供給油圧P1が収容室5内の遠心油圧P3と等しくなるように制御することで、その油面高さを維持するように収容室5内の潤滑油9の量が制御される。
また、図6(d)に例示するように、エンジン回転数が高回転領域から低回転領域に移行する場合には、上述した振動減衰能を発揮するために、収容室5内の油層9aが転動体2と接触しない油面高さに制御される。すなわち、収容室5内の潤滑油9の量を減少させその油面高さを下降させるように制御する。具体的には、排出油路8の開口部が自動開閉機構41により開かれ、収容室5内の潤滑油9を排出する量(排出量)の方が収容室5に内部へ潤滑油9を供給する量(供給量)より多くなるように制御する。
上述したように実施形態によれば、エンジンの回転速度(回転数)に応じて、収容室5内の潤滑油9における油層9aの厚さを変化させることができる。そのため、エンジンの回転数が低回転領域である場合の油層9aの厚さと、その回転数が高回転領域である場合の油層9aの厚さとを相違させるように制御することができる。
また、この発明に係る捩り振動減衰装置では、排出油路8の開口部を開閉させるチェックボール41aを含む自動開閉機構41に加えて、その排出油路8を介した収容室5内外への油の流れを規制するための構成を備えてもよい。具体的には、その排出油路8を介して油が流通する方向を収容室5内からトルクコンバータ20内への流れに規制するように構成されている。その一例として、排出油路8に差圧により流量を制御するオリフィスを設ける。この場合、自動開閉機構41が排出油路8の開口部を開いている状態であっても、収容室5内の遠心油圧P3とトルクコンバータ20内の油圧との差圧により排出油路8内の流量を制御するオリフィスによって、その排出油路8内を流通する油の流れは収容室5内からトルクコンバータ20内へと向かう流れとなるように構成される。
さらに、この発明に係る捩り振動減衰装置では、上述した自動開閉機構41を設けずに、収容室5内から排出油路8を介して潤滑油9が排出されることを制御するように構成することができる。例えば、図7に示すように、収容室5の外周側壁部に貫通孔10aが形成され、その差圧により流量を制御するオリフィス10により収容室5の外部への排出量を制御するように構成される。すなわち、排出油路8としてのオリフィス10を備える構成である。この場合、収容室5の内部とトルクコンバータ20の内部とが常に連通しており、収容室5内の潤滑油9が流出することを許容するものであり、収容室5外へオリフィス10を介した排出量と供給油路7からの供給量との関係に基づいて収容室5内の油面高さを制御するように構成されている。
つぎに、図8を参照して、他の実施形態における捩り振動減衰装置について説明する。なお、この実施形態の説明において、上述した捩り振動減衰装置と同様の構成については説明を省略し、その参照符号を引用して説明する。この実施形態の捩り振動減衰装置は、上述した捩り振動減衰装置とは異なり、図8に例示するように、回転体1に設けられた排出油路11から収容室5の外部へ潤滑油9を排出するように構成されている。具体的には、排出油路11の開口部が回転体1の側面のうち可及的に外周側に形成され、収容室5の内部に開口するように構成されている。その排出油路11の開口部は、半径方向で回転体1の側面における外周縁と中立点Nに位置する転動体2の円板部2bの最外周側の端部との間に位置するように形成されている。この実施形態では、供給油路7の開口部の方が排出油路11の開口部よりも半径方向で外周側に配置されている。さらに、排出油路11は、図示しない油圧回路と接続されており、収容室5内の圧油を排出するように構成されている。
ここで、図9を参照して、この実施形態における捩り振動減衰装置が、動力伝達経路中のトルク増幅作用のある流体伝動装置の外部に設けられた例について説明する。図9に例示するように、その捩り振動減衰装置が動力伝達経路中のトルクコンバータ20の入力側、すなわちトルクコンバータ20と図示しないエンジンとの間に設けられている。具体的には、捩り振動減衰装置の回転体1がトルクコンバータ20におけるハウジング24の軸部26と一体となって回転するように構成されている。また、収容室5がカバー6により液密構造に形成され、そのカバー6には収容室5内とトルクコンバータ20内とを連通させる流路が形成されていない。
また、図10を参照して、エンジン回転数に応じて収容室5内の油層9aの油面高さを制御する例について説明する。図10(a)は、エンジン回転数が低回転領域の場合における収容室5内の油層9aの油面の高さを示している。図10(a)に例示するように、エンジン回転数が低回転領域である場合、収容室5内に形成されている油層9aの油面高さは、転動体2に接触しないように制御される。具体的には、その非接触となる油面高さの状態において、供給油路7の供給側油圧P1と、収容室5内の潤滑油9の遠心油圧P3と、排出油路11の排出側油圧P2とが同じ油圧となるように供給油路7および排出油路11の油圧P1,P2を制御する。すなわち、エンジン回転数が低回転領域における収容室5内の遠心油圧P3に応じた供給側油圧P1および排出側油圧P2に制御することにより、その油面高さを保つように収容室5内の潤滑油9の量を制御する。
エンジン回転数が低回転領域から高回転領域に移行した場合、図10(b)に例示するように、収容室5内の油層9aの油面高さを上昇させ、油層9aが転動体2に接触するように制御する。すなわち、その高回転領域では低回転領域に比べて、収容室5内の潤滑油9の量を増大させる。具体的には、その回転状態における遠心油圧P3と等しくなるように排出側油圧P2を制御するともに、供給側油圧P1がその遠心油圧P3よりも大きくなるように制御する。これにより、排出油路11からは収容室5内の潤滑油9が排出されず、かつ、供給油路7からは収容室5内に潤滑油9が供給される。したがって、収容室5内の潤滑油9の量は、エンジン回転数が低回転領域に比べて増大するので、その油層9aの油面高さを上昇させることができる。
そして、エンジン回転数が高回転領域である場合、図10(c)に例示するように、収容室5内の油層9aが転動体2に接触する状態でその油層9aの油面高さを維持するように制御する。具体的には、その接触する油面高さとなる状態において、供給側油圧P1と、遠心油圧P3と、排出側油圧P2とが同じ油圧となるように、供給油路7および排出油路11の油圧P1,P2を制御する。すなわち、エンジン回転数が高回転領域における収容室5内の遠心油圧P3に応じた供給側油圧P1および排出側油圧P2に制御することにより、そのような油面高さを保つように収容室5内の潤滑油9の量を制御する。
さらに、エンジン回転数が高回転領域から低回転領域に移行した場合、図10(d)に例示するように、収容室5内の油層9aの油面高さを下降させ、油層9aが転動体2に接触しないように制御する。すなわち、その低回転領域では高回転領域に比べて、収容室5内の潤滑油9の量を減少させる。具体的には、その回転状態における遠心油圧P3と等しくなるように供給側油圧P1を制御するともに、排出側油圧P2がその遠心油圧P3よりも小さくなるように制御する。これにより、供給油路7から収容室5内へ潤滑油9が供給されず、かつ排出油路11からは収容室5内の潤滑油9がその外部へ排出される。したがって、収容室5内の潤滑油9の量は、エンジン回転数が低回転領域に比べて減少するので、その油層9aの油面高さを下降させることができる。
また、回転体1の側面に形成された供給油路7の開口部および排出油路11の開口部を開閉させる構成を備えた捩り振動減衰装置とすることができる。例えば、その捩り振動減衰装置は、図11に例示するように、供給油路7の開口部を差圧により自動で開閉させる供給側の自動開閉機構42と、排出油路11の開口部を差圧により自動で開閉させる排出側の自動開閉機構43とを備えている。供給側の自動開閉機構42は、軸線方向へ向けて開口する供給油路7の開口部を開閉するための質量体であるチェックボール42aと、そのチェックボール42aと回転体1の側面とを連結する弾性体であるバネ42bとを備えている。また、排出側の自動開閉機構43は、軸線方向へ向けて開口する排出油路11の開口部を開閉するための質量体であるチェックボール43aと、そのチェックボール43aと回転体1の側面とを連結する弾性体であるバネ43bとを備えている。つまり、供給側のチェックボール42aはバネ42aにより、あるいは排出側のチェックボール43aはバネ43aにより軸線方向に付勢力を作用されている。したがって、供給側の自動開閉機構42では、供給油路7の供給側油圧P1が収容室5内の遠心油圧P3以下の油圧となれば供給油路7の開口部を閉じるように動作する。一方、排出側の自動開閉機構43では、排出油路11の排出側油圧P2が収容室5内の遠心油圧P3以上の油圧となれば排出油路11の開口部を閉じるように動作する。なお、供給側の自動開閉機構42は、チェックボール42aが供給油路7の開口部に接触することにでその開口部を閉じるように構成されている。すなわち、チェックボール42aが弁体として機能し、供給油路7の開口部に形成された弁座を備える構成であってもよい。この点、排出側の自動開閉機構43についても同様である。
以上説明したように、この発明に係る捩り振動減衰装置によれば、回転体が回転して収容室内の潤滑油に遠心力が作用することにより、その潤滑油が収容室の外周側の内壁面に向けて押しつけられて、回転体の回転中心を中心とし、かつ内周側の大気層に積層する境界面(油面)を有する環状の油層を形成することができる。その状態において、回転体の回転数に応じて、収容室内の潤滑油の量、すなわちその油層の油面高さ(厚さ)を制御することができる。これにより、振動減衰能を発揮すべき回転状態と振動減衰能を発揮しなくてもよい回転状態とに分けて、収容室内の油層が転動体に接触する状態と接触しない状態とに制御することができる。
そのため、回転体の回転数あるいはエンジンの回転数が低回転領域である場合、収容室内の潤滑油の量は転動体の円板部は油層に接触しない油面高さとなるように制御されるので、転動体は油層には接触せず、もしくは接触するとしても中立点の近傍の僅かな範囲で接触するのみであるから、転動体は、回転体に生じる振動のうち減衰させる次数の振動と共振する振動数で振り子振動する。そのため、その低回転領域において、転動体が設計上設定した往復運動あるいは振り子運動を行い、所期の次数の振動を低減することができる。すなわち所期通りの振動減衰特性を示す。言い換えれば、その低回転領域での潤滑油の量は、転動体の往復動作もしくは振動減衰動作に対して過度の抵抗にならず、したがって振動次数や振幅比を大きく変化させることのない量に制御することができる。さらに、その振動減衰能を発揮する必要がある低回転領域では、潤滑油の影響をほとんど受けないので、潤滑油の粘度を考慮した設計を行う必要がなく、そのため、容易かつ正確に振動減衰特性を設定することができる。
また、回転体の回転数あるいはエンジンの回転数が高回転領域である場合、振動減衰能を発揮しなくてもよいので、収容室内の油層が転動体の円板部に接触する油面高さに制御することで、油層が転動体の往復運動あるいは振り子振動の抵抗となり、その運動の妨げとなることで回転体と転動体との摩耗を低減することができる。さらに、転動体あるいは転動面に油膜を形成することによって、摩擦あるいは摩耗が防止もしくは抑制させることができ、振動減衰特性を長期に亘って維持することができるので、耐久性を向上させることができる。
なお、上述した実施形態の説明において、回転体の回転数と記載して説明している場合があるが、その回転体が動力伝達経路中の所定の回転部材と一体回転するように構成されている場合には、その回転体の回転数と記載した箇所をエンジン回転数と読み替えてもよい。また、上述した説明では、排出油路が収容室の外周側壁部に形成された捩り振動減衰装置をトルクコンバータの内部の配置する例と、排出油路が回転体に形成された捩り振動減衰装置がトルクコンバータの外部に配置された例とに分けて説明したが、この発明に係る捩り振動減衰装置はこれに限定されない。すなわち、排出油路がカバーに設けられたか回転体に設けられたかに拘わらず、その捩り振動減衰装置をトルクコンバータの内部あるいは外部のいずれにも配置することができる。
1…回転体、 2…転動体(慣性質量体)、 2a…支持軸、 2b…円板部、 3…転動室、 4…転動面、 5…収容室、 6…カバー、 6a…内周面、 7…供給油路、 8…排出油路、 9…潤滑油、 9a…油層。
Claims (8)
- トルクを受けて回転する回転体の外周側の部分に、前記回転体が回転している状態で前記トルクが変動することにより前記回転体の回転方向に往復動する慣性質量体を設け、前記慣性質量体を前記回転体の回転方向に往復動できるように液密状態に収容し、かつ前記回転体と一体に形成された収容室を備えた捩り振動減衰装置において、
前記収容室の内部へ油を供給する供給油路と、
前記収容室内の油を排出する排出油路とを備え、
前記収容室内の油が遠心力によって前記収容室の外周側の内壁面に向け押されて油層を形成している状態で前記回転体が低回転領域で回転する場合、前記油層が前記慣性質量体に接触しないように前記油層の厚さを制御し、
前記油層を形成している状態で前記回転体が高回転領域で回転する場合、前記油層が前記慣性質量体に接触するように前記油層の厚さを制御するように構成されている
ことを特徴とする捩り振動減衰装置。 - 前記収容室内の油量を変化させることにより前記油層の厚さを制御するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の捩り振動減衰装置。 - 前記供給油路は、油圧回路に接続され、
前記回転体の回転数に応じて前記供給油路における油圧を制御することにより前記収容室の内部へ供給される油量を制御するように構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の捩り振動減衰装置。 - 前記回転体の回転数に応じて前記収容室内から排出される油量を制御するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の捩り振動減衰装置。 - 油の流れを生じさせる駆動側インペラと、前記油の流れによって駆動される従動側インペラとを備えた流体伝動装置の内部に配置され、
前記回転体は、前記従動側インペラと一体となって回転するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の捩り振動減衰装置。 - 油の流れを生じさせる駆動側インペラと、前記油の流れによって駆動される従動側インペラとを備えた流体伝動装置の外部に配置され、
前記回転体は、前記駆動側インペラと一体となって回転するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の捩り振動減衰装置。 - 前記排出油路は、油圧回路に接続され、
前記回転体の回転数に応じて前記排出油路における油圧を制御することにより前記収容室内から排出される油量を制御するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の捩り振動減衰装置。 - 前記慣性質量体は、前記トルクの変動によって転動する転動体を含み、
前記収容室の内部には、前記転動体が遠心力によって押しつけられる転動面が設けられている
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の捩り振動減衰装置。
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