JP2014101470A - 糖鎖精製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】生体試料中に含有する糖鎖を精製する方法であって、(a)生体試料から糖鎖を特異的に捕捉する物質である糖鎖捕捉物質に糖鎖を捕捉する工程、(b)糖鎖を捕捉した糖鎖捕捉物質を洗浄する工程(c)糖鎖捕捉物質から糖鎖を遊離させる工程、を含み、(a)、(b)、(c)の工程を同一の反応容器内で連続して行い、(b)の工程では、(a)の工程で糖鎖が捕捉された糖鎖捕捉物質を、界面活性剤を添加した水溶性洗浄液で洗浄することを特徴とする糖鎖精製方法。当該界面活性剤が、非イオン性界面活性剤で、特にドデシル硫酸ナトリウムを有する界面活性剤であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
この中でも、糖鎖は、非常に多様性に富んでおり、天然に存在する生物が有する様々な機能に関与する物質である。糖鎖は生体内でタンパク質や脂質などに結合した複合糖質として存在することが多く、生体内の重要な構成成分の一つである。生体内の糖鎖は細胞間情報伝達, タンパク質の機能や相互作用の調整などに深く関わっていることが明らかにな
りつつある。
N− アセチルグルコサミン, N − アセチルガラクトサミン, シアル酸などの単糖およびこれらの誘導体がグリコシド結合によって鎖状に結合した分子の総称である。
例えば、糖鎖を有する生体高分子としては、細胞の安定化に寄与する植物細胞の細胞壁のプロテオグリカン、細胞の分化、増殖、接着、移動等に影響を与える糖脂質、及び細胞間相互作用や細胞認識に関与している糖タンパク質等が挙げられる。これらの生体高分子に含まれる糖鎖が、この生体高分子と互いに機能を代行、補助、増幅、調節、あるいは阻害しあいながら高度で精密な生体反応を制御する機構が次第に明らかにされつつある。さらに、このような糖鎖と細胞の分化増殖、細胞接着、免疫、及び細胞の癌化との関係が明確にされれば、この糖鎖工学と、医学、細胞工学、あるいは臓器工学とを密接に関連させて新たな展開を図ることが期待できる。
上述した課題を解決する技術として、例えば特許文献1 に記載された特定の糖鎖捕捉物
質を用いて実現される試料調整方法が挙げられる。
(1)生体試料中に含有する糖鎖を精製する方法であって、(a)生体試料から糖鎖を特異的に捕捉する物質である糖鎖捕捉物質に糖鎖を捕捉する工程、(b)糖鎖を捕捉した糖鎖捕捉物質を洗浄する工程(c)糖鎖捕捉物質から糖鎖を遊離させる工程、を含み、(a)、(b)、(c)の工程を同一の反応容器内で連続して行い(b)の工程では、(a)の工程で糖鎖が捕捉された糖鎖捕捉物質を、界面活性剤を添加した水溶性洗浄液で洗浄し、当該界面活性剤が、硫酸直鎖アルキルエステル塩であることを特徴とする糖鎖精製方法。
(2)硫酸直鎖アルキルエステル塩の濃度が0.05〜5重量%である(1)に記載の糖鎖精製方法。
(3)前記硫酸直鎖アルキルエステル塩がドデシル硫酸ナトリウムである(1)または(2)に記載の糖鎖精製方法。
(4)(a)の工程において、糖鎖捕捉物質が糖鎖のアルデヒド基と特異的に反応する官能基を有する担体である(1)乃至(3)いずれか1項に記載の糖鎖精製方法。
(5)前記官能基が、ヒドラジド基又はアミノオキシ基である(4)記載の糖鎖精製方法。
(6)前記糖鎖捕捉物質が下記の(式1)で表される架橋型ポリマー構造を有するものである(5)記載の糖鎖精製方法。
(R1,R2は−O−,−S−,−NH−,−CO−,−CONH−で中断されてもよい炭素数1〜20の炭化水素鎖,R3,R4,R5はH,CH3,または炭素数2〜5の炭化水素鎖を示す。m,nはモノマーユニット数を示す。)
(7)前記糖鎖捕捉物質が下記の(式2)で表される架橋型ポリマー構造を有するものである(6)記載の糖鎖精製方法。
(m,nはモノマーユニット数を示す。)
(8)(c)の工程において、糖鎖捕捉物質に酸処理を行なう工程を有する(1)乃至(7)いずれか1項に記載の糖鎖精製方法。
(9)(a)および(c)の工程において、反応溶媒を蒸発させる工程を有する(1)乃至(8)いずれか1項に記載の糖鎖精製方法。
(a)生体試料から糖鎖を特異的に捕捉する物質である糖鎖捕捉物質に糖鎖を捕捉する工程、
(b)糖鎖を捕捉した糖鎖捕捉物質を洗浄する工程
(c)糖鎖捕捉物質から糖鎖を遊離させる工程、
を含み、(a)、(b)、(c)の工程を同一の反応容器内で連続して行う糖鎖精製方法である。
能基を有していることが好ましい。官能基としてはヒドラジド基又はオキシルアミノ基であることがより好ましい。
このような糖鎖捕捉物質としては、下記(式1)又は(式2)で表される構造を有する架橋型ポリマーを担体として用いることが好ましい。
(R1,R2は−O−,−S−,−NH−,−CO−,−CON H−で中断されてもよい
炭素数1〜20の炭化水素鎖,R3,R4,R5はH,CH3,または炭素数2〜5の炭化水素鎖を示す。m , n はモノマーユニット数を示す。)
R 1 は、−O−,−S−,−NH−,−CO−,−CONH−で中断されてもよい炭素
数1〜20の炭化水素鎖を示し、例えば下記のものを挙げることができる。なお式中、a、b、dは1から5の整数を表し、cは1から10の整数を表す。
その他市販のヒドラジド基含有架橋粒子、例えば、アフィゲルHz(BIO−RAD、153−6047)、CarboLink(TM)CouplingGel(PIERCE、20391)、UltraLink(R)HydrazideGel(PIERCE、53149)などを用いても良い
糖鎖以外の生体由来物質を除去する方法としては、例えば、疎水結合を解離する能力のあるカオトロピック試薬であるグアニジン水溶液や、単純に純水や水溶性緩衝液で洗浄する場合が多いが、本発明者は、界面活性剤、特に硫酸直鎖アルキルエステルナトリウム塩を、カオトロピック試薬等との併用でなく、単独で用いることが効果的であることを見出した。
り扱いの容易さより、sodium dodecyl sulfate(ドデシル硫酸ナトリウム、SDSと略)を用いることが好ましい。
ここで使用する緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、トリス緩衝液等を使用することができる。ドデシル硫酸ナトリウム水溶液の濃度としては、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。
洗浄工程における洗浄条件としては、温度が4〜40℃、洗浄時間が10秒〜30分である。
例えば、遠心チューブ内にビーズを入れ、洗浄液を加え、ビーズを自然沈降、または、遠心分離により強制的に沈降させた後、上清を除去する操作を繰り返すことで洗浄することができる。前記洗浄操作は3〜6回行うことが好ましい。
プレートの場合は、各ウェル内に洗浄液を分注、吸引除去を繰り返すことで簡便に洗浄することができる。また、必要に応じてプレートを遠心可能な遠心分離機を用いても良い。
くは0.1%〜80%、さらに好ましくは0.1%〜50%である。水の代わりに水性緩衝液を含有しても良い。緩衝液の濃度は好ましくは0.1mM〜1M、より好ましくは0.1mM〜500mM、さらに好ましくは1mM〜100mMである。反応溶液のpHは好ましくは2〜9、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは2〜6である。使用する酸は例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、クエン酸、リン酸、硫酸が好ましく、より好ましくは酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、さらに好ましくは酢酸、トリフルオロ酢酸である。反応温度に関しては4〜90℃が好ましく、好ましくは25〜90℃で、さらに好ましくは40〜90℃である。反応時間は、10分間〜24時間、好ましくは10分間〜8時間、より好ましくは10分間〜3時間である。反応は、糖鎖を遊離させる反応を効率よく行う観点から、開放系で行って溶媒を完全に蒸発させることが好ましい。
糖鎖捕捉担体から糖鎖を遊離する方法には、還元的アミノ化法と交換反応法がある。
還元アミノ化法は、例えばアミノ基を有する物質を過剰に加えることにより還元的アミノ化反応を惹起し、糖鎖捕捉担体より糖鎖を遊離する方法である。
また、交換反応法とは、ヒゾラゾン結合からオキシム試薬を用いたオキシム交換反応を利用した糖鎖を遊離する方法である。
還元アミノ化法は、糖鎖が捕捉された糖鎖捕捉物質から糖鎖を遊離させる、すなわち糖鎖を糖鎖捕捉物質から切り出す反応である。この工程では、酸と有機溶媒の混合溶媒あるいは酸と水と有機溶媒の混合溶媒にて、糖鎖捕捉物質に酸処理を行うのが好ましい。酸と水と有機溶媒の混合溶媒の場合、水の含有率は好ましくは0.1%〜90%、より好ましくは0.1%〜80%、さらに好ましくは0.1%〜50%である。水の代わりに水性緩衝液を含有しても良い。緩衝液の濃度は好ましくは0.1mM〜1M、より好ましくは0.1mM〜500mM、さらに好ましくは1mM〜100mMである。反応溶液のp H は好ましくは2〜9、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは2〜6である。使用する酸は例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、クエン酸、リン酸、硫酸が好ましく、より好ましくは酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、さらに好ましくは酢酸、トリフルオロ酢酸である。反応温度に関しては4〜90℃が好ましく、好ましくは25〜90℃で、さらに好ましくは40〜90℃である。反応時間は、10分間〜24時間、好ましくは10分間〜8時間、より好ましくは10分間〜3時間である。反応は、糖鎖を遊離させる反応を効率よく行う観点から、開放系で行って溶媒を完全に蒸発させることが好ましい。
に比べて、シアル酸残基の脱離など糖鎖の加水分解などを引き起こすことを抑制することができるようになる。
標識化の方法は、アミノ基を有する化合物により、例えば還元的アミノ化反応を用いて任意のアミノ化合物で標識化する反応であることが好ましい。反応系においてp H が酸性から中性の条件であるのが好ましく、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜7である。反応温度に関しては4〜90℃が好ましく、好ましくは25〜90℃ で、さらに好ましくは40〜90℃である。アミノ化合物の濃度は、1m
M 〜10Mであるのが好ましく、還元剤の濃度は、1mM〜10Mであるのが好ましい
。反応時間は、10分間〜24時間、好ましくは10分間〜8時間、より好ましくは10分間〜 3時間である。
8−Aminopyrene−1,3,6−trisulfonate,8−Aminonaphthalene−1,3,6−trisulphonate,7−amino−1,3−naphtalenedisulfonicacid,2−Amino9(10H)−acridone,5−Aminofluorescein,Dansylethylenediamine,2−Aminopyridine,7−Amino−4−methylcoumarine,2−Aminobenzamide,2−Aminobenzoicacid,3−Aminobenzoicacid,7−Amio−1−naphthol,3−(Acetylamino)−6−aminoacrdine,2−Amino−6−cyanoethylpyridine,Ethylp−amino
benzoate,p−Aminobenzonitrile,及び7−aminonaphthalene−1,3−disulfonicacid。
分間〜24時間、好ましくは10分間〜8時間、さらに好ましくは1時間〜3時間である。
また、還元剤は例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、メチルアミンボラン、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ピコリンボラン、ピリジンボランなどが使用可能であるが、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを使用するのが反応性の面から考えて好ましい。
O−benzylhydroxylamine; O-phenylhydroxylamine; O−(2,3,4,5,6−pentafluorobenzyl)hydroxylamine; O−(4−nitrobenzyl)hydroxylamine;
2−aminooxypyridine; 2−aminooxymethylpyr
idine; 4−[(aminooxyacetyl)amino]benzoic a
cid methyl ester; 4−[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid ethyl ester; 4−[(aminooxyacetyl)amino]benzoic acid n−butylester.
(糖鎖サンプルの調整)
ウシ血清由来IgG(SIGMA、I5506)1 mgを100mM重炭酸アンモニウ
ム(和光純薬、017−02875)50μLに溶解させた後、120mM DTT(ジ
チオスレイトール、SIGMA、D9779)を5μL加え、60℃で30分間反応させた。反応終了後、123mM IAA(ヨードアセトアミド、和光純薬、093−02152)10μLを加えて遮光下、室温で1時間反応させた。続いて400Uのトリプシン(SIGMA、T0303)によってプロテアーゼ処理をし、タンパク質部分をペプチド断片化した。反応溶液を90℃で5分処理した後、5UのグリコシダーゼF(Roche、1−365−193)による処理を行って糖鎖をペプチドから遊離させ、予備処理済の生体試料を得た。
糖鎖捕捉用の担体であるヒドラジド基を有する粒子5mg(BlotGlyco(R))、住友ベークライト株式会社製、BS−45603)が入ったディスポカラムに上記糖鎖溶液20μLおよび180μLの2%酢酸/アセトニトリル溶液を加え、80℃で1時間反応させた。反応は開放系で行い、溶媒が完全に蒸発し粒子が乾固した状態であることを
目視で確認した。0.5%SDS水溶液で洗浄後、さらに水、トリエチルアミン溶液にて粒子を洗浄した。続いて10%無水酢酸/メタノールを添加し、室温で30分間反応させ、未反応のヒドラジド基をキャッピングした。キャッピング後、水にて粒子を洗浄した。
ル溶液180μLを加え、70℃で1.5時間反応させ、糖鎖捕捉用担体から糖鎖を遊離した。反応は開放系で行い、溶媒が完全に蒸発し粒子が乾固した状態であることを目視で確認した。
乾固した粒子に水50μLを加え、溶液のみを回収した。同様の操作をさらに2回実施し、合計150μLの糖鎖溶液を得た。
得られた糖鎖溶液を得られた糖鎖サンプルをマトリックス支援レーザーイオン化−飛行時間型質量分析器(MALDI-TOF-MS)(MALDI-TOF-MS, Bruker社製 'autoflex III')によ
り分析した。マトリックスには2,5-ジヒドロキシ安息香酸を用いた。測定結果を図1(下段)に示す。
(糖鎖サンプルの調整)
実施例と同様に実施。
粒子の洗浄に用いる洗浄液を0.5%SDS水溶液からグアニジン塩酸塩水溶液に変更した以外は実施例に同じ。
実施例と同様に実施。
実施例と同様に実施。測定結果を図1の上段に示す。
グアニジン塩酸塩水溶液による洗浄では除き切れなかった、夾雑物ピークをSDSによる洗浄によって排除することができる。
Claims (9)
- 生体試料中に含有する糖鎖を精製する方法であって、
(a)生体試料から糖鎖を特異的に捕捉する物質である糖鎖捕捉物質に糖鎖を捕捉する工程、
(b)糖鎖を捕捉した糖鎖捕捉物質を洗浄する工程
(c)糖鎖捕捉物質から糖鎖を遊離させる工程、
を含み、(a)、(b)、(c)の工程を同一の反応容器内で連続して行い
(b)の工程では、(a)の工程で糖鎖が捕捉された糖鎖捕捉物質を、界面活性剤を添加した水溶性洗浄液で洗浄し、
当該界面活性剤が、硫酸直鎖アルキルエステル塩であることを
特徴とする糖鎖精製方法。 - 硫酸直鎖アルキルエステル塩の濃度が0.05〜5重量%である請求項1に記載の糖鎖精製方法。
- 前記硫酸直鎖アルキルエステル塩がドデシル硫酸ナトリウムである請求項1または2に記載の糖鎖精製方法。
- (a)の工程において、糖鎖捕捉物質が糖鎖のアルデヒド基と特異的に反応する官能基を有する担体である請求項1乃至3いずれか1項に記載の糖鎖精製方法。
- 前記官能基が、ヒドラジド基又はアミノオキシ基である請求項4記載の糖鎖精製方法。
- 前記糖鎖捕捉物質が下記の(式1)で表される架橋型ポリマー構造を有するものである請求項5記載の糖鎖精製方法。
(R1,R2は−O−,−S−,−NH−,−CO−,−CONH−で中断されてもよい炭素数1〜20の炭化水素鎖,R3,R4,R5はH,CH3,または炭素数2〜5の炭化水素鎖を示す。m,nはモノマーユニット数を示す。) - 前記糖鎖捕捉物質が下記の(式2)で表される架橋型ポリマー構造を有するものである請求項6記載の糖鎖精製方法。
(m,nはモノマーユニット数を示す。) - (c)の工程において、糖鎖捕捉物質に酸処理を行なう工程を有する請求項1乃至7いずれか1項に記載の糖鎖精製方法。
- (a)および(c)の工程において、反応溶媒を蒸発させる工程を有する請求項1乃至8いずれか1項に記載の糖鎖精製方法。
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