JP2009216608A - 試料調製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ヒドラジド基を有する物質Aと糖鎖および/または糖の誘導体とを結合させる糖鎖捕捉段階と、前記糖鎖捕捉段階で捕捉された物質Aと糖鎖および/または糖の誘導体との複合体に、アミノオキシ基またはヒドラジド基を有するビオチン誘導体Bを作用させて、前記複合体と前記ビオチン誘導体Bの間で生じるヒドラゾン−オキシム交換反応またはヒドラゾン−ヒドラゾン交換反応により、前記糖鎖および/または糖の誘導体を前記物質Aから切り離しつつ前記ビオチン誘導体Bに結合させる糖鎖遊離段階とを含む試料調製方法。
【選択図】図1
Description
また、これら生体高分子は、医学、細胞工学、臓器工学などのバイオテクノロジー分野において重要な役割を担っており、これら物質による生体反応の制御機構を明らかにすることはバイオテクノロジー分野の発展に繋がることになる。
この中でも、糖鎖は、非常に多様性に富んでおり、天然に存在する生物が有する様々な機能に関与する物質である。糖鎖は生体内でタンパク質や脂質などに結合した複合糖質として存在することが多く、生体内の重要な構成成分の一つである。生体内の糖鎖は細胞間情報伝達,タンパク質の機能や相互作用の調整などに深く関わっていることが明らかになりつつある。
なお、糖鎖とは、グルコース,ガラクトース,マンノース,フコース,キシロース,N−アセチルグルコサミン,N−アセチルガラクトサミン,シアル酸などの単糖およびこれらの誘導体がグリコシド結合によって鎖状に結合した分子の総称である。
例えば、糖鎖を有する生体高分子としては、細胞の安定化に寄与する植物細胞の細胞壁のプロテオグリカン、細胞の分化、増殖、接着、移動等に影響を与える糖脂質、及び細胞間相互作用や細胞認識に関与している糖タンパク質等が挙げられる。これらの生体高分子に含まれる糖鎖が、この生体高分子と互いに機能を代行、補助、増幅、調節、あるいは阻害しあいながら高度で精密な生体反応を制御する機構が次第に明らかにされつつある。さらに、このような糖鎖と細胞の分化増殖、細胞接着、免疫、及び細胞の癌化との関係が明確にされれば、この糖鎖工学と、医学、細胞工学、あるいは臓器工学とを密接に関連させて新たな展開を図ることが期待できる。
ビオチンはアビジンに対して高い親和性を持つことが知られており、ビオチン-アビジン複合体を用いたシステムはEIA(エンザイムイムノアッセイ)などの免疫学的測定や組織染色の分野で広く利用されている。例えば抗体やタンパク質にビオチンラベル化後、酵素標識または蛍光標識されたアビジン、ストレプトアビジンなどを反応させ、酵素反応により生じた可視色素や標識された蛍光色素を検出するといった方法が行われている。糖鎖分子にビオチン分子を結合することにより、上述と同様に、糖鎖と生体物質の相互作用の測定などに利用できると期待されるが、ビオチン化糖鎖を効率よく調製する方法はなく、解決する手段が求められていた。
(1)ヒドラジド基を有する物質Aと糖鎖および/または糖の誘導体とを結合させる糖鎖捕捉段階と、
前記糖鎖捕捉段階で捕捉された物質Aと糖鎖および/または糖の誘導体との複合体に、アミノオキシ基またはヒドラジド基を有するビオチン誘導体Bを作用させて、前記複合体と前記ビオチン誘導体Bの間で生じるヒドラゾン−オキシム交換反応またはヒドラゾン−ヒドラゾン交換反応により、前記糖鎖および/または糖の誘導体を前記物質Aから切り離しつつ前記ビオチン誘導体Bに結合させる糖鎖遊離段階と、
を含む試料調製方法、
(2)前記物質Aが下記の(式1)で表される構造を有するポリマー粒子である(1)記載の試料調製方法、
(3)前記物質Aが下記の(式2)で表される構造を有するポリマー粒子である(1)記載の試料調製方法、
(4)前記物質Aが下記の(式3)で表される構造を有するポリマー粒子である(1)記載の試料調製方法、
(測定に供する試料)
本発明において使用する糖鎖を含む試料は、例えば全血、血清、血漿、尿、唾液、細胞、組織などの生体試料を用いることができる。植物由来の試料を用いることもできる。また、精製された、あるいは未精製の糖タンパク質を用いることができる。試料は脱脂、脱塩、タンパク質分画などの方法により前処理されていてもよい。
糖鎖遊離手段を用いて上記生体試料に含まれる糖タンパク質から糖鎖を遊離させる。糖鎖を遊離させる手段としては、N-グリコシダーゼあるいはO-グリコシダーゼを用いたグリコシダーゼ処理、ヒドラジン分解、アルカリ処理によるβ脱離などの方法を用いることができる。N型糖鎖の分析を行う場合は、N-グリコシダーゼを用いる方法が好ましい。グリコシダーゼ処理に先立って、トリプシンやキモトリプシンなどを用いてプロテアーゼ処理を行ってもよい。
糖鎖は生体内物質のなかで唯一、アルデヒド基をもつ物質である。すなわち、糖鎖は水溶液などの状態で環状のヘミアセタール型と、非環状型のアルデヒド型とが平衡で存在する。タンパク質や核酸,脂質など糖鎖以外の生体内物質にはアルデヒド基が含まれていない。このことから、アルデヒド基と特異的に反応して安定な結合を形成する官能基を有する捕捉担体を利用すれば、糖鎖のみを選択的に捕捉することが可能である。
物質Aとしては、ポリマー粒子を用いることが好ましい。ポリマー粒子は、少なくとも表面の一部にヒドラジド基を有した固体あるいはゲル粒子であることが好ましい。ポリマー粒子としては、式1、式2、又は式3で表される構造のものが好ましい。ポリマー粒子が固体粒子あるいはゲル粒子であれば、ポリマー粒子に糖鎖を捕捉させたのち、遠心分離やろ過などの手段によって容易に回収することができる。また,ポリマー粒子をカラムに充填して用いることも可能である。カラムに充填して用いる方法は、特に連続操作化の観点から重要となる。反応容器としてフィルタープレート(例えばMillipore社製 MultiScreen Solvinert Filter Plate)を用いることにより、複数のサンプルを同時に処理することが可能となり、例えばゲルろ過に代表されるカラム操作による従来の精製手段と比較して、糖鎖精製のスループットが大幅に向上される。
ポリマー粒子に結合した糖鎖を別の化合物であるビオチン誘導体Bに置換する工程に関して説明する。糖鎖が結合しているポリマー粒子に対してアミノオキシ基またはヒドラジド基を有するビオチン誘導体Bを過剰量加えることで置換が成される。すなわち、糖鎖はポリマー粒子から切り離され、それと同時に糖鎖にビオチン誘導体Bが付加する(糖鎖は「ビオチン化」される)。過剰に加えるビオチン誘導体Bの量は、好ましくはポリマー粒子が有する糖鎖と特異的に反応する官能基量の1.5倍量以上、より好ましくは3倍量以上、さらに好ましくは5倍量以上であり、最も好ましくは10倍量以上である。反応系のpHは、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは2〜6である。pH調整のためには、各種緩衝液を用いることができる。反応系の温度は,好ましくは4〜90℃,より好ましくは4〜70℃、さらに好ましくは30〜80℃であり,最も好ましくは40〜80℃である。
(糖鎖試料の調製)
糖タンパク質としてフェツインまたはアシアロフェツインを試料として用いた。糖タンパク質10mgを容器に取り、50mM重炭酸アンモニウム溶液に溶解させた。120mMジチオスレイトール溶液25μLを加えて60℃で30分インキュベートしたのち、123mMヨードアセトアミド溶液50μLを加え、室温で1時間静置した。さらにトリプシン400Uを加え、37℃で16時間静置した。90℃で5分間処理してトリプシンを失活させたのち、N-glycosidase F(Roche社製)10unitを添加し、37℃で16時間インキュベートすることで糖鎖を遊離させた。
得られた遊離糖鎖溶液20μL(糖タンパク質100μg相当)を、(式3)の構造を有するヒドラジド基含有ポリマー粒子(住友ベークライト株式会社製、BS-X4104S)5mgに添加し、2%酢酸を含むアセトニトリル180μLを加えたのち、80℃で1時間反応させ、乾固させた。2Mグアニジン塩酸塩溶液、水、メタノール、1%トリエチルアミン溶液にてポリマー粒子を洗浄後、10%無水酢酸/メタノール溶液を添加し、室温で30分間反応させヒドラジド基をキャッピングした。キャッピング後、メタノール、10mM塩酸水溶液、水、1,4‐ジオキサンにてポリマー粒子を洗浄した。100mM の1−メチル−3−p−トリルトリアゼン(MTT)(東京化成 No.M0641)を20μL加え、60℃で1時間反応させ、シアル酸残基のカルボン酸をメチルエステル化した。反応後、メタノール、水、ジオキサンにてポリマー粒子を洗浄した。
(式5)で表されるアミノオキシビオチン(Biotinum社製、aminooxy-biotin trifluoroacetate salt)を少量のDMSOに溶解し、これを純水で希釈することにより20mM溶液を調製した。上記で調製した糖鎖担持ポリマー粒子に、アミノオキシビオチン溶液を20μL、2%酢酸を含むアセトニトリルを180μLを加えたのち、80℃で1時間反応させ、乾固させた。純水50μLを加えてポリマー粒子をリンスし、上清を回収した。
得られた溶液をマトリックス支援レーザーイオン化−飛行時間型質量分析器(MALDI-TOF-MS)(Bruker社製 'autoflex III')により分析した。溶液をマトリックス溶液(2,5-ジヒドロキシ安息香酸の10mg/mL水溶液)で10倍希釈したのち、1μLを試料台にスポット、乾燥・結晶化させたのち測定した。測定はポジティブイオン検出モード、リフレクトロンモードにて行い、シグナルはナトリウムイオン付加体([M+Na]+)で検出された。
表中の略称は下記の通りである。
Hex:ヘキソース、HexNAc:N-アセチルヘキソサミン、NeuAc:N-アセチルノイラミン酸、Man:マンノース、GlcNAc:N-アセチルグルコサミン
Claims (6)
- ヒドラジド基を有する物質Aと糖鎖および/または糖の誘導体とを結合させる糖鎖捕捉段階と、
前記糖鎖捕捉段階で捕捉された物質Aと糖鎖および/または糖の誘導体との複合体に、アミノオキシ基またはヒドラジド基を有するビオチン誘導体Bを作用させて、前記複合体と前記ビオチン誘導体Bの間で生じるヒドラゾン−オキシム交換反応またはヒドラゾン−ヒドラゾン交換反応により、前記糖鎖および/または糖の誘導体を前記物質Aから切り離しつつ前記ビオチン誘導体Bに結合させる糖鎖遊離段階と、
を含む試料調製方法。
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