JP4946905B2 - オキシルアミノ基含有化合物および標識化された標的化合物 - Google Patents
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Description
中でも、高速液体クロマトグラフィーや質量分析機器による解析が盛んに行われているが、糖鎖の精製や標識化等に時間と工数のかかる作業が必要であり、ハイスループット解析が行える環境が整っていないのが現状である。
(1) 下記式(1)の構造を有するオキシルアミノ基含有化合物。
(2)(1)記載のオキシルアミノ基含有化合物によって標識化された糖鎖であることを特長とする標的化合物。
(3)(2)記載の標識化された標的化合物を作成する方法であって、糖鎖が糖鎖のアルデヒド基を介して結合している担体に対して、過剰量の前記オキシルアミノ基含有化合物を加える事によって成されるものである標識化された標的化合物を作成する方法。
(4)(2)記載の標識化された標的化合物を高速液体クロマトグラフィーにより検出する標的化合物の検出方法。
(5)前記検出方法が蛍光検出又はUV吸収検出である(4)記載の標的化合物の検出方法。
(6)(2)記載の標識化された標的化合物を質量分析機器により検出する標的化合物の検出方法。
(7)前記検出方法において、前記標識化された標的化合物が負電荷を有さない場合、質量分析機器のポジティブモードにて検出する(6)記載の標的化合物の検出方法。
(8)前記検出方法において、前記標識化された標的化合物が負電荷を有する場合、質量分析機器のネガティブモードにて検出する(6)記載の標的化合物の検出方法。
(9)前記負電荷を有する化合物がシアル酸、硫酸化糖又はリン酸化糖を含む負電荷を有する糖鎖である(8)記載の標的化合物の検出方法。
下記式(1)の構造を有するオキシルアミノ基含有化合物は、N−アミノオキシアセチル−トリプトファンメチルエステル(N−Aminooxyacetyl−tryptophanemetylester)である。該オキシルアミノ基含有化合物は、例えばトリプトファンメチルエステルを原料として合成する。以降、該化合物を、化合物Aと称す。
(工程1)生体試料中に含有する糖鎖を糖鎖のアルデヒド基を介して担体に捕捉する。
(工程2)生体試料中から糖鎖捕捉担体を取り出し、洗浄することで糖鎖以外の生体高分子を除去する。
(工程3)化合物Aを過剰に加えて反応させることにより化合物Aにて標識された糖鎖を得る。
工程3の過剰に加える化合物Aの量は、担体が有する糖鎖のアルデヒド基と特異的に反応する官能基量に対して、好ましくは1.5倍量以上、より好ましくは3倍量以上、さらに好ましくは5倍量以上であり、最も好ましくは10倍量以上である。置換するための反応系のpHは、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは2〜6である。pH調整のためには、各種緩衝液を用いることができる。反応系の温度は,4〜90℃が好ましく、好ましくは25〜90℃で、さらに好ましくは40〜90℃である。反応時間は、10分間〜24時間、好ましくは10分間〜8時間、より好ましくは10分間〜2時間である。開放系で行い溶媒を完全に蒸発させるのが好ましい。。
本発明化合物の合成例を説明する。
(a)Boc−NHOCH2CO−W−OMe(化合物B)の合成
Bocアミノオキシ酢酸100 mg(0.52 mmol)のTHF(2.5 mL)液を−20℃に冷却した。ついで4−メチルモルホリン(0.63mmol)、イソブチルクロロホルメート(0.63mmol)を添加し、15分攪拌することで混合酸無水物を調製した。反応溶液を0℃とし、THF:水=1:1の混合溶媒1 mLに溶解させたD−Tryptophan methyl ester・HCl(0.63 mmol)、炭酸水素ナトリウム(0.63 mmol)を添加した。、1時間攪拌後反応溶液を減圧濃縮し、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=20:1)により精製することで目的物である化合物B(Boc−NHOCH2CO−W−OMe、下式(2))を得た。MALDI−TOF−MS、目的物の[M+Na+]イオンをm/z:414に観測した。
(b)NH2OCH2CO−W−OMe(化合物A)の合成
化合物B30 mgを1 mLのメタノールに溶解させた後、4 M塩酸ジオキサン溶液1 mLを加え15分攪拌させた。反応液を減圧濃縮し、メタノールを加え共沸を繰り返してTFAを除去して、目的物である化合物A(NH2OCH2CO−W−OMe)を得た。MALDI−TOF−MSによる解析により、目的物の[M+Na+]イオンをm/z:314に観測した。
本発明の化合物Aによって標識化された標的化合物、及び検出方法を以下の実施例により説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例では、モデルケースとして糖タンパク質であるウシ血清由来フェチュインおよびウシ血清由来IgGの糖鎖を分析試料として調製する方法およびその測定方法を示す。
糖タンパクの一種であるウシ血清由来フェチュインおよびウシ血清由来IgGそれぞれ1 mgを100mM重炭酸アンモニウム50μLにDTT(ジチオスレイトール)を加え60℃で30分間反応させた後、IAA(ヨードアセトアミド)を加えて遮光下、室温で1時間反応させた。続いてトリプシンによるプロテアーゼ処理して、タンパク質部分をペプチド断片化し、グリコシダーゼFによる処理を行って糖鎖をペプチドから遊離させて、予備処理済の生体試料を得た。
より簡便に生体試料中の糖鎖に本発明化合物Aを結合させるために、体試料中に含有する糖鎖をアルデヒド基を介して担体に捕捉させた。その際、質量分析用の試料(ポジティブモード測定)はシアル酸の脱離を防ぐためにカルボン酸をメチルエステル化させた。質量分析用(ネガティブ測定)および高速液体クロマトグラフィー用の試料はシアル酸の情報を維持しておくためメチルエステル化は行わなかった。
(メチルエステル化あり) 予備処理済の各生体試料の懸濁物20μLをヒドラジド基を有するビーズ5mg(住友ベークライト BS−X4104S)に添加し、80℃で1時間反応させた。グアニジン溶液、水、メタノール、トリエチルアミン溶液にてビーズを洗浄後、無水酢酸を添加し、室温で30分間反応させヒドラジド基をキャッピングした。キャッピング後、メタノール、塩酸水溶液、水、1,4−ジオキサンにてビーズを洗浄した。100mMの1−メチル−3−p−トリルトリアゼン(MTT)(東京化成 No.M0641)を20μL加え、60℃で1時間反応させシアル酸残基のカルボン酸をメチルエステル化した。反応後、メタノール、水、ジオキサンにてビーズを洗浄した。
(メチルエステル化なし)
予備処理済の各生体試料の懸濁物20μLをヒドラジド基を有するビーズ5mg(住友ベークライト BS−X4104S)に添加し、80℃で1時間反応させた。グアニジン溶液、水、メタノール、トリエチルアミン溶液にてビーズを洗浄後、無水酢酸を添加し、室温で30分間反応させヒドラジド基をキャッピングした。キャッピング後、メタノール、塩酸水溶液、水にてビーズを洗浄した。
上記各ビーズに実施例1で得られた化合物A(N−Aminooxyacetyl−tryptophanemetylester)を20mMに調整した溶液を20μL加え、80℃で1時間反応させた。この反応にて、例えばグルコースがビーズに付加していた場合、下式(3)に示したような反応が起き、糖鎖がビーズから遊離、標識化される。標識化された糖鎖を水50μLに溶解して回収した。
(質量分析機器による解析)
得られた糖鎖サンプル(メチルエステル化あり)をマトリックス支援レーザーイオン化−飛行時間型質量分析器(MALDI−TOF MS)(Bruker社製 autoflex III)によりポジティブモードにて分析した。マトリックスには2,5−ジヒドロキシ安息香酸を用いた。測定結果を図1に示す。上段はウシ由来フェツイン、下段はウシ由来IgGを測定した結果である。どちらにおいても目的の糖鎖に化合物Aが付加した分子量に該当する場所にシャープなピークが得られた。
また、シアル酸含有糖鎖を持つフェツイン糖鎖サンプル(メチルエステル化なし)を同装置を用いてネガティブモードにて測定した。測定結果を図2に示す。レーザーにより一部シアル酸が失われた分子量のものも検出されたが、目的の糖鎖に化合物Aが付加した分子量に該当する場所にシャープなピークが得られた。
(高速液体クロマトグラフィーによる解析) 得られた糖鎖サンプル(メチルエステル化なし)を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。ウシフェツイン由来糖鎖はアミノカラム(Shodex Asahipak NH2P−50)、ウシ由来IgGはアミドカラム(TSK−GEL Amide−80)にて励起波長280 nm、蛍光波長350 nmにて検出した。測定結果を図3に示す。目的の糖鎖が化合物Aの蛍光にて検出された。
Claims (9)
- 下記式(1)の構造を有するオキシルアミノ基含有化合物。
- 請求項1記載のオキシルアミノ基含有化合物によって標識化された糖鎖であることを特長とする標的化合物。
- 請求項2記載の標識化された標的化合物を作成する方法であって、糖鎖が糖鎖のアルデヒド基を介して結合している担体に対して、過剰量の前記オキシルアミノ基含有化合物を加える事によって成されるものである標識化された標的化合物を作成する方法。
- 請求項2記載の標識化された標的化合物を高速液体クロマトグラフィーにより検出する標的化合物の検出方法。
- 前記検出方法が蛍光検出又はUV吸収検出である請求項4記載の標的化合物の検出方法。
- 請求項2記載の標識化された標的化合物を質量分析機器により検出する標的化合物の検出方法。
- 前記検出方法において、前記標識化された標的化合物が負電荷を有さない場合、質量分析機器のポジティブモードにて検出する請求項6記載の標的化合物の検出方法。
- 前記検出方法において、前記標識化された標的化合物が負電荷を有する場合、質量分析機
器のネガティブモードにて検出する請求項6記載の標的化合物の検出方法。 - 前記負電荷を有する化合物がシアル酸、硫酸化糖又はリン酸化糖を含む負電荷を有する糖鎖である請求項8記載の標的化合物の検出方法。
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