JP2014095721A - 免疫原性連鎖球菌タンパク質 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前記組成物は、ストレプトコッカス・ウベリスに由来する少なくとも2つの組換え及び/又は単離タンパク質、及び/又は前記タンパク質の一方又は両方の免疫原性部分又は類似体又は誘導体を含む。本発明はさらに、前記タンパク質又はその免疫原性部分をコードする核酸分子、宿主細胞、及びそのような核酸分子を含む組換え担体、並びにワクチン、並びに前記タンパク質及び核酸を土台にする診断試験を開示する。
【選択図】図1A
Description
本発明は、少なくとも2つの連鎖球菌株に対して免疫応答を誘引することができる連鎖球菌タンパク質を識別する方法を提供する。前記方法は以下の工程を含む:
a)細菌のビルレンス因子と少なくとも50%の配列同一性を有する、分泌タンパク質、表面結合タンパク質及び/又はタンパク質の少なくとも一部を識別する工程;
b)少なくとも2つの連鎖球菌株で保存されている、工程a)で識別した少なくとも1つのタンパク質を選択する工程;及び
c)工程b)で選択した少なくとも1つのタンパク質、又はその免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体が、第一の連鎖球菌株に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞及び第二の連鎖球菌株に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞と特異的に結合することができるか否かを決定する工程。前記第一の連鎖球菌株及び前記第二の連鎖球菌株は好ましくは同じ連鎖球菌の種である。細菌のビルレンス因子と少なくとも50%の配列同一性を有する前記タンパク質は、好ましくは、細菌ビルレンス因子と少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、もっとも好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有する。
a)細菌のビルレンス因子と少なくとも50%の配列同一性を有する、分泌タンパク質、表面結合タンパク質及び/又はタンパク質の少なくとも一部を識別する工程;
b)少なくとも2つの連鎖球菌血清型で保存されている、工程a)で識別した少なくとも1つのタンパク質を選択する工程;及び
c)工程b)で選択した少なくとも1つのタンパク質、又はその免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体が、第一の連鎖球菌血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞及び第二の連鎖球菌血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞と特異的に結合することができるか否かを決定する工程。
連鎖球菌株は、当分野で周知のように、その形態学的、生化学的及び血清学的特徴によって同定することができる。連鎖球菌血清型は、その分類が特定の抗原性多糖類の存在を基準にする連鎖球菌のグループである。連鎖球菌血清型の分類はまた当分野で周知である。
細菌のビルレンス因子と少なくとも50%の配列同一性を有する、分泌タンパク質、表面結合タンパク質及び/又はタンパク質をコードする少なくとも1つの連鎖球菌遺伝子を識別したら、好ましくは、前記遺伝子の少なくとも1つが少なくとも2つの連鎖球菌株で保存されているか否かを決定する。第二の連鎖球菌株のゲノムが、前記第一の連鎖球菌株の前記遺伝子と少なくとも約60%の配列同一性を有する核酸配列を含むならば、第一の連鎖球菌株の遺伝子は少なくとも2つに連鎖球菌株で保存されている。前記核酸配列は、前記遺伝子と好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、もっとも好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。“配列同一性”という用語は、2つの核酸配列又はアミノ酸配列間の百分率同一性に該当する。2つの核酸配列は、当該2つの配列でアラインメントを実施し、必要ならば最大%の配列同一性を達成するためにギャップを導入した後で、前記配列が少なくとも60%の配列同一性を示すとき、互いに少なくとも60%の配列同一性を有する。アラインメントのための方法及びコンピュータプログラムは、当分野では周知である。候補配列が本定義に当てはまるか否かを決定する目的で使用又は適用することができるコンピュータプログラムは、ジェネンテック社(Genentech Inc.)が作製した“Align 2”(米国著作権局(Washington D.C. 20559)に1991年12月10日に使用者説明書とともに提出された)である。
好ましくは、前記遺伝子が少なくとも2つの連鎖球菌血清型で保存されているか否かを決定して、2つ以上の連鎖球菌血清型に対して免疫応答を誘引するその能力について試験できる良好な候補タンパク質を識別する。したがって、少なくとも2つの連鎖球菌株及び/又は血清型で保存されている遺伝子を選択する工程をさらに含む本発明の方法が好ましい。少なくとも2つの連鎖球菌株/血清型で保存された遺伝子を識別したら、好ましくは、前記遺伝子によりコードされるタンパク質を入手する。前記に加えて、又は前記に代わり、前記タンパク質の免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体を入手する。当技術分野は、遺伝子によりコードされるタンパク質、又はその免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体を入手する多様な方法を提供する。前記遺伝子は、例えば適切な発現系によって発現される。発現系の非限定的な例は、真核宿主細胞(例えば酵母)及び原核宿主細胞(例えば大腸菌(Escherichia coli))を含む。細菌のビルレンス因子と少なくとも50%の配列同一性を有する分泌タンパク質、表面結合タンパク質及び/又はタンパク質をコードする本発明の遺伝子(前記遺伝子は少なくとも2つの連鎖球菌株で保存されている)は、好ましくは原核細胞発現系で発現される。(原核細胞の)連鎖球菌タンパク質は原則として原核細胞発現系でより良好に発現されるので、原核細胞発現系が好ましい。さらにまた、原核細胞発現系がより容易にセットアップされ用いられる。
ある好ましい実施態様では、連鎖球菌に感染した動物の回復期血清に由来する抗体及び/又は免疫細胞が用いられる。回復期血清は、効果的にその感染に対抗した動物から得られる。したがって、連鎖球菌に感染した動物の回復期血清は、同じ連鎖球菌株によるチャレンジに対して前記動物を防御することができる抗体及び/又は免疫細胞を含む。したがって、本発明のタンパク質及び/又は免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体が防御的免疫応答を誘引することができるか否かを決定するために、回復期媒体とのインキュベーションが好ましい。
したがって、本発明のある実施態様は、以下の工程を含む、少なくとも2つの連鎖球菌株に対して免疫応答を誘引することができる連鎖球菌タンパク質を識別する方法を提供する:
−単離及び/又は組換え連鎖球菌タンパク質を入手する工程;
−前記タンパク質を、第一の連鎖球菌株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞、及び第二の連鎖球菌株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞とともにインキュベートする工程;及び
−タンパク質が、第一の連鎖球菌株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞、及び第二の連鎖球菌株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞と結合することができるか否かを決定する工程。
ある好ましい実施態様では、連鎖球菌タンパク質はポリアクリルアミドゲルで分離され、続いて、第一の連鎖球菌株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞、及び第二の連鎖球菌株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞とともにインキュベートされる。好ましくは、二次元ポリアクリルアミドゲルが用いられる。
本発明の連鎖球菌タンパク質又はその免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体は、連鎖球菌の少なくとも2つの株及び/又は血清型に対して免疫応答を誘引することができる。さらに広い範囲の免疫応答をも誘引するために、少なくとも2つの異なる連鎖球菌タンパク質、及び/又は前記タンパク質の少なくとも1つの免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体を識別することが好ましい。より好ましくは、少なくとも3つの異なる連鎖球菌タンパク質、及び/又は前記タンパク質の少なくとも1つの免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体を識別することが好ましい、等々。識別される本発明の連鎖球菌タンパク質及び/又は免疫学的部分、誘導体及び/又は類似体の数が大きければ大きいほど、より広範囲の免疫応答が誘引される。
別の好ましい実施態様では、少なくとも3つの連鎖球菌株に対して免疫応答を誘引することができる、少なくとも1つの連鎖球菌タンパク質及び/又は本発明の免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体が識別される。前記タンパク質及び/又は免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体は、ヒトの個体及び/又は非ヒト動物で広い免疫応答を誘引するために特に適切である。より好ましくは、少なくとも3つの連鎖球菌血清型に対して免疫応答を誘引することができる、少なくとも1つの連鎖球菌タンパク質及び/又は本発明の免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体が識別される。
タンパク質の免疫原性部分は少なくとも5アミノ酸残基を含む。前記免疫原性部分は、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも25、もっとも好ましくは少なくとも30の連続するアミノ酸を含む。前記免疫原性部分は、前記免疫原性部分が由来するタンパク質の種類に応じて、好ましくはせいぜい約500アミノ酸残基、より好ましくはせいぜい250アミノ酸残基を含む。
当業者は類似タンパク質化合物を容易に作りだすことができる。前記は例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニング又はペプチド変異プログラムによって実施される。本発明の類似体は、前記タンパク質と本質的に同じ性質の(量的には必ずしも同じではない)免疫特性を有する。本発明のタンパク質の類似体は、例えば融合タンパク質及び/又はキメラタンパク質を含む。
免疫応答を誘引することができるように、好ましくは、本発明の免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体には、抗体及び/又は免疫細胞を生成させることができる適切な特徴が提供される。前記特徴(当分野では周知である)には、例えば適切なフランキング配列及び/又はタンパク質切断部位が含まれる。前記とは別に、又は前記に加えて、本発明のタンパク質、免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体は好ましくは免疫原性担体とともに提供される。
分泌タンパク質は、細胞及び/又は生物体内で天然に生成され、少なくとも部分的に前記細胞及び/又は生物からその環境中に分泌されるタンパク質と定義される。したがって、連鎖球菌を培養する場合、分泌タンパク質は、少なくとも部分的には、培養液の少なくとも一部分に少なくともある時点で存在する。分泌タンパク質は、必ずしも持続的に生成及び/又は分泌される必要はない。分泌タンパク質は、例えば細菌の生活環の一定の相の間でのみ生成及び/又は分泌されてもよい。さらにまた、分泌タンパク質の生成及び分泌は必ずしも同時に生じる必要はない。例えば、いくつかの分泌タンパク質は先ず初めに細胞内に蓄積され、その後の時点で分泌される。
表面結合タンパク質は、天然には細胞表面の部分を形成するタンパク質、又は細胞表面に結合するタンパク質と定義される。前記表面結合細胞が細胞の表面と結合している場合、前記は直接的に又は間接的に結合する。間接的結合は、例えば少なくとも1つのリンカーを必要とする。
“組換えタンパク質”という用語は、単離及び/又は人工的発現系によって、好ましくは前記タンパク質をコードする核酸配列を用いて生成されるタンパク質を指す。前記核酸配列は、好ましくは少なくとも1つの調節配列(例えばプロモータ、エンハンサー及び/又はターミネータ)と作動できるように連結される。好ましくは、前記調節配列は誘導性であり、したがって前記タンパク質の発現の程度を制御することが可能である。ある実施態様では、前記核酸配列は外因性核酸配列を含む。外因性核酸配列とは、前記核酸配列が天然には存在しない生物のゲノム内のある部位に存在する核酸配列である。
少なくとも2つの連鎖球菌株及び/又は血清型に対して免疫応答を誘引することができる連鎖球菌タンパク質を本発明の方法によって識別した後で、好ましくは前記を製造する。製造したタンパク質は、例えば免疫原性組成物を作製するために、及び/又は少なくとも2つの連鎖球菌株及び/又は血清型に対する免疫応答を動物で誘引するために適している。上記に概略したように、タンパク質を製造するための、例えば組換え体製造のための多様な方法が当分野では知られている。したがって、本発明は、本発明の方法によって識別した少なくとも1つのタンパク質を製造する方法を提供する。本発明の方法によって入手することができる、連鎖球菌の少なくとも2つの株及び/又は血清型に対して免疫応答を誘引することができる連鎖球菌タンパク質もまた本明細書で提供される。
したがって、本発明の免疫原性組成物は、本発明の方法によって入手することができる、少なくとも2つの単離及び/又は組換えタンパク質、及び/又は少なくとも1つのその免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体を含む。より確実に逸出変異体を含まないために、本発明のタンパク質は好ましくは必須のタンパク質を含む。これは、連鎖球菌の代謝、生存及び/又は増殖に重要な(好ましくは必須の)タンパク質である。したがって、必須タンパク質が変異して生じる可能性がある逸出変異体は、もしあるとしても生存率は低い。
表5及び6は、本発明の方法によって識別したストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)タンパク質のリストを含む。これらのタンパク質、又はその少なくとも1つの免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体は、本発明の免疫原性組成物の製造に適切である。したがって前記タンパク質が表5及び/又は表6から選択される本発明の使用もまた、表5及び/又は表6に記載の単離及び/又は組換えタンパク質の少なくとも1つ、又は前記タンパク質の免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体を含む本発明の免疫原性組成物と同様に提供される。より広い防御をも提供するために、好ましくは、前記免疫原性組成物は、表5及び/又は表6に記載の少なくとも2つのタンパク質、及び/又はその免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体を含む。もっとも好ましくは、前記免疫原性組成物は、表5及び/又は表6に記載の少なくとも3つのタンパク質、及び/又はその免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体を含む。
さらに別の実施態様は、本発明の方法によって入手できる少なくとも1つのタンパク質、又は前記タンパク質の免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体をコードする少なくとも1つの核酸を含む、少なくとも2つの連鎖球菌の株及び/又は血清型に対して免疫応答を誘引することができる免疫原性組成物を提供する。前記免疫原性組成物の動物への投与に際して、前記核酸分子は動物の機構によって発現され、本発明の少なくとも1つのタンパク質及び/又は免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体の発現をもたらす。前記タンパク質及び/又は免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体の生成及び、場合によって細胞外分泌は免疫応答を生じる。
本発明はしたがって、本発明の方法によって入手できるか、及び/又は表5及び/又は6から選択される少なくとも2つの連鎖球菌タンパク質、及び/又は前記タンパク質の少なくとも1つの免疫原性部分をコードする核酸配列を、機能的に連結された調節配列(例えばプロモータ)の制御下に含む組換え核酸分子を提供する。本発明の方法によって入手できるか、及び/又は表5及び/又は6から選択される少なくとも2つのタンパク質、及び/又はその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む単離宿主細胞もまた本明細書で提供される。前記宿主細胞は、好ましくは原核宿主細胞を含む。
本発明の組換え担体は1つの連鎖球菌種を含む。このようにして、連鎖球菌に対する免疫応答は、前記担体によってコードされるタンパク質及び/又は免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体によって、及び前記組換え担体それ自体によって誘導される。連鎖球菌の莢膜遺伝子発現生成物はしばしば高度に免疫原性であり血清型特異的である。したがって、莢膜遺伝子発現生成物の存在は、異なる多様な連鎖球菌株及び/又は血清型に対する免疫応答の誘発を妨害する。したがってある実施態様では、本発明の組換え担体が連鎖球菌を含む場合、前記連鎖球菌は莢膜遺伝子発現生成物の少なくとも一部を欠いている。ある実施態様では、前記連鎖球菌は無莢膜連鎖球菌である。
組換え担体は、例えば適切な宿主細胞で製造される。したがって、本発明の組換え担体を含む単離宿主細胞もまた提供される。
本発明の組換え担体は、少なくとも2つの連鎖球菌株及び/又は血清型に対して免疫応答を誘引することができる免疫原性組成物の製造に適切である。したがって、本発明の組換え担体を含む、連鎖球菌に対して免疫応答を誘引することができる免疫原性組成物もまた本明細書で提供される。
本発明の免疫原性組成物をヒトの個体及び/又は非ヒト動物に投与した後で、連鎖球菌に対して免疫応答が誘引される。好ましくは、前記免疫応答は連鎖球菌関連疾患に少なくとも部分的に対抗することができる。したがって、医薬としての使用を目的とする本発明の免疫原性組成物もまた、連鎖球菌関連疾患に対する医薬の製造を目的とする本発明の免疫原性組成物の使用と同様に本明細書で提供される。
本発明の免疫原性組成物はまたワクチンの製造に適切である。好ましくは、前記ワクチンは、連鎖球菌関連疾患に対する防御を少なくとも部分的に提供することができる。好ましくは、前記ワクチンは、連鎖球菌感染に対する防御を提供することができる。したがって、本発明は、ワクチンの製造を目的とする本発明の免疫原性組成物の使用を提供する。
本発明の免疫原性組成物は、ヒトの個体及び/又は非ヒト動物で連鎖球菌に対して免疫応答を誘引することができ、それによって、前記個体及び/又は動物で連鎖球菌の数を減少させ及び/又は制御することができる。したがって、本発明は、ヒトの個体及び/又は非ヒト動物で連鎖球菌の数を減少させ及び/又は制御する方法を提供し、前記方法は、本発明の免疫原性組成物を前記個体及び/又は非ヒト動物に提供する工程を含む。
好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、連鎖球菌関連疾患に少なくとも部分的に対抗するか、及び/又は予防することができる。連鎖球菌関連疾患が既に存在する場合、本発明の免疫原性組成物は、好ましくは前記疾患に少なくとも部分的に対抗することができる。したがって、本発明の免疫原性組成物及び好ましくは適切な担体(例えばDiluvac Forte及び/又はSpecol)を含む医薬組成物もまた本明細書で提供される。
本発明のさらに別の実施態様は、連鎖球菌に対するヒトの個体及び/又は非ヒト動物の免疫度を測定する方法を提供し、前記方法は、本発明の方法によって入手できるか、及び/又は表5及び/又は6から選択されるタンパク質、又はその免疫原性部分に対する抗体及び/又は免疫細胞の存在を、前記個体及び/又は動物の少なくとも1つにサンプルで決定する工程を含む。本発明の方法によって入手できるか、及び/又は表5及び/又は6から選択される少なくとも1つのタンパク質、又はその免疫原性部分、並びに前記タンパク質又はその免疫原性部分と結合する抗体及び/又は免疫細胞を検出する手段を含む診断キットもまた本明細書で提供される。特に好ましい実施態様では、前記診断キットは表5及び/又は6から選択される少なくとも2つのタンパク質を含む。
ストレプトコッカス・ウベリスはウシ乳腺炎と密接に関係する。ウシ乳腺炎は、通常は細菌によって引き起こされる乳牛の乳房感染である。感染に続く炎症性応答は乳の収量及び質を低下させ、酪農産業にとって年間の主要な経済的損失となる。オランダの経済的損失は、およそ100ユーロ/乳牛/年と概算される。
細菌種の中でとりわけストレプトコッカス属の多様な種が乳腺炎にもっとも一般的に付随し、ストレプトコッカス・ウベリス(型未分類)、ストレプトコッカス・アガラクチアエ(agalactiae)(ランスフィールド(Lancefield)Bグループ)、ストレプトコッカス・ディスガラクチアエ(dysgalactiae)(ランスフィールドCグループ)、ストレプトコッカス・ズーエピデミクス(zooepidemicus)、及びランスフィールドD、G、L及びNグループ連鎖球菌が含まれる。これらの種のいくつかは接触伝染性であり(例えばS. agalactiae)、一方、他のものは環境性病原体と考えられる(例えばS. dysgalactiae及びS. uberis)。
乳腺炎は、感染によってもたらされる臨床的影響にしたがって重症度が変動する。乳腺炎の軽症型は、体温のいくらかの上昇及び/又は乳房温度の上昇を引き起こしえる。より重症例では、S.ウベリス乳腺炎はまた急性臨床症状型をとることがあり、例えば乳の凝塊又は変色及び乳腺の腫脹又硬結のような明白な疾病の徴候を示す。臨床症状のいくつかの症例は重度であり、発熱も提示されえる。S.ウベリス乳腺炎の臨床所見の概括のためにはBramley(1991)及びSchalm et al.(1971)を参照されたい。
通常的な抗菌的制御方法(例えば乳首の浸漬及び抗生物質療法)は、多くの接触伝染性乳腺炎型の制御に有効であるが、全ての家畜小屋で典型的に見出される環境性生物はそのような手段に対してしばしば耐性を示す。したがって、これらの手段は、環境性病原体、例えばストレプトコッカス・ウベリス及び大腸菌(今や95%を超える乳腺炎の原因である)によって引き起こされる乳腺炎の発生率に影響を与えなかった。これら2つの種では、英国(Hillerton et al. 1993)、ニュージーランド(McDougall, 1998)、米国(Hogan et al. 1989)およびオランダ(Animal Health Service, 2000)で実施された調査で示されたように、S.ウベリスがもっとも重要な環境性病原体である。さらにまた、いったん環境から感染が発生すると、S.ウベリスは感染牛から感受性を有する動物に直接伝播できることを示す証拠が存在する(Neave et al. 1969;Oliver et al. 1999;Zadoks et al. 2001)。毒性及び抗原性が異なるいくつかのS.ウベリス株が存在する。
S.ウベリスの制御を目的とする従来方法の失敗は、代替制御手段、例えばより有効なワクチンの検索につながった。いくつかのタイプのワクチンが今日までに開発され、乳牛で試験された。
生菌S.ウベリスによる免疫は同じ(同種)株による実験的チャレンジに対して部分的防御を誘発した(Finch et al. 1997)。防御は、オプソニン化活性の非存在下及び好中球が大量に流入しない状態で達成された。しかしながら、ワクチンは他のS.ウベリス株に対して防御を示すようには見えなかった。これらの全細胞ワクチンによる成功率の相対的な低さは、通常の完全細菌ワクチンを用いてS.ウベリスに対して動物を防御することが困難であることを示している。
さらに最近、S.ウベリスの1つのタンパク質を土台にしたサブユニットワクチンが製造された(Fontain et al. 2002)。前記サブユニットワクチンの発表は今日までフォローアップされることはなく、このことは、S.ウベリスのいくつかの型に対して動物を防御するただ1つのタンパク質を発見するチャンスは少なく、この種のサブユニットワクチンは一般的にはS.ウベリス乳腺炎を制御するという課題の答えにはならないという結論をもたらした。
要約すれば、S.ウベリスによって引き起こされる乳腺炎は、完全な生菌若しくは死菌又は1つのタンパク質を含むサブユニットワクチンによるワクチン接種では効果的に予防も治癒もできない。
本発明は、少なくとも2つのストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は型に対して免疫応答を誘引することができるストレプトコッカス・ウベリスタンパク質を識別する方法を提供する。前記方法は以下の工程を含む:
a)細菌のビルレンス因子と少なくとも50%の配列同一性を有する、分泌タンパク質、表面結合タンパク質及び/又はタンパク質の少なくとも一部を識別する工程;
b)少なくとも2つのストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は型で保存されている、工程a)で識別した少なくとも1つのタンパク質を選択する工程;及び
c)工程b)で選択した少なくとも1つのタンパク質、又はその免疫原性部分、誘導体及び/又は類似体が、第一のストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞並びに第二のストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞と特異的に結合することができるか否かを決定する工程。細菌のビルレンス因子と少なくとも50%の配列同一性を有する前記タンパク質は、細菌のビルレンス因子と好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、もっとも好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有する。
対象者又は動物で免疫応答を誘引するために、好ましくはタンパク質の免疫原性部分が前記対象は又は動物に提示される。本発明では、“免疫原性部位”という用語は、“免疫原性部分”という用語と相互に用いられる。“免疫原性部分又は部位”とは、タンパク質の部分を意味し、前記は対象者で免疫応答を誘引することができる。好ましくは、前記タンパク質の免疫原性部分は1つ又は2つ以上のエピトープを含み、したがって免疫学的応答を誘引する。免疫原性部分は少なくとも5アミノ酸、好ましくは少なくとも10−15、及びもっとも好ましくは25以上の連続するアミノ酸を含む。したがって別の実施態様で、本発明は、本発明の核酸によってコードされるタンパク質様分子の連続する30アミノ酸の少なくとも1ストレッチを含むタンパク質又はその免疫原性部分を提供する。コンフォメーションエピトープは、適所で折りたたまれ、さらにタンパク質がその三次元構造をとるとき一緒になって1つのエピトープを形成する数ストレッチの連続するアミノ酸によって形成される。本発明はまた、コンフォメーションエピトープの免疫原性部分としての使用を開示する。
ある実施態様では、本発明の免疫原性組成物は、少なくとも2つの組換え若しくは単離表面タンパク質又は誘導体又は類似体、及び/又は前記の免疫原性部分を含む組成物を含み、この場合、対象者又は動物(好ましくは乳牛)への前記組成物の投与は、前記表面タンパク質又はその免疫原性部分に対する液性及び/又は細胞性免疫応答の出現をもたらす。
免疫学的応答は、対象者又は動物(好ましくは乳牛)における前記タンパク質又はその免疫原性部分に対する液性及び/又は細胞性免疫応答を含む。液性免疫応答は、対象者又は動物での抗体の産生をもたらし、一方、細胞性免疫応答は、主として反応性免疫細胞の形成を強化する。一般的には、免疫応答の両部分が免疫原性タンパク質又はその部分の投与によって誘引される。S.ウベリスに対する好ましい免疫応答は抗体産生である。
好ましくは、前記免疫応答は乳腺炎を予防及び/又は緩和し、及び/又は乳房におけるS.ウベリス菌の数を減少させる。本発明は、前記抗体応答を誘引するためのタンパク質及び/又はエピトープを選択及び製造する方法を開示する。S.ウベリスに対する別の好ましい免疫応答は細胞性免疫応答である。本発明はまた、表面タンパク質のT-細胞エピトープを選択し、さらに、例えば予め選択した多様なT-細胞エピトープを連結ビーズのように連結することによって(例えばVan der Burg ら(WO97/41440)が記載)、T-細胞反応性の強化を引き起こすT-細胞エピトープを製造する方法を開示する。
本発明のある実施態様では、前記免疫原性組成物は、感染期間を短縮し及び/又は重症度を緩和させるか、及び/又はS.ウベリス感染に対する動物の耐性を高めることができる。
“組換えタンパク質”という用語は、組換えDNA技術によって生成されたタンパク質、すなわち所望のタンパク質をコードする核酸構築物によって形質転換された細胞によって生成されたタンパク質に該当する。前記核酸構築物は、発現配列を制御する調節配列(例えばプロモータ及び/又はターミネータ配列及び/又はエンハンサー配列)を有する組換えDNA構築物である。
好ましくは、本発明の免疫原性組成物又はその免疫原性部分は、少なくとも2つの異なるS.ウベリス菌のタンパク質を含む。なぜならば、得られる広い免疫応答は交差防御を示すから、すなわち異なる型のS.ウベリスに対抗するからである。さらにまた、少なくとも2つの型のS.ウベリス株の免疫原性タンパク質又はその免疫原性部分の使用は、S.ウベリス菌の逸出変異体出現の機会を低下させる。細菌の逸出変異体は、一般的には環境的ストレス、例えば抗生物質の存在下、前記生物のエピトープに対する抗体の存在下で出現する。生物集団における例えば低い変異頻度で生じる天然の変動によって、前記集団のいくつかの生物はそれらの複製が他のものよりも強く抑制され、それらの生物は前記抗体の存在による阻害作用から逸出して増殖を続け、それによって新しい集団で支配的な役割を得る。いくつかの異なるエピトープについて同時に逸出変異体が出現する機会は、ただ1つのエピトープについて逸出変異体が出現する機会よりも少ない。免疫原性組成物及び/又はその免疫原性部分は、好ましくは少なくとも2つのタンパク質に対して免疫応答を誘引し、好ましくは感染に対する広い防御及び乳腺炎の臨床徴候の減少を引き起こす。したがって、本出願は、少なくとも1つのストレプトコッカス・ウベリス株に由来する少なくとも2つの組換え及び/又は単離表面タンパク質、及び/又は前記タンパク質の一方若しくは両方の免疫原性部分又は類似体又は誘導体を含む、ストレプトコッカス・ウベリスに対して免疫応答を誘引することができる免疫原性組成物を提供する。
S.ウベリスの莢膜抗原は、乳牛(S.ウベリス乳腺炎を克服した乳牛)の回復期血清によって容易に検出されるので一般的に良好な免疫原性エピトープである。前記免疫原性特性は、関連するS.ウベリスの免疫原性エピトープに対する免疫応答を強化することができる。したがって、別の実施態様では、莢膜抗原は免疫原性組成物に対する免疫応答を高めるので、免疫原性組成物は免疫原性タンパク質に加えて少なくとも1つの莢膜抗原を含む。
本特許出願は、S.ウベリス由来であり、S.ウベリスの種々の株に対して免疫応答を誘引するその能力について選択された好ましい組換え及び/又は単離表面タンパク質を表5及び表6に開示する。したがって、本出願は、本発明の免疫原性組成物、及び/又は前記タンパク質の一方若しくは両方の免疫原性部分又は類似体又は誘導体を提供し、この場合、少なくとも2つのタンパク質は表5及び/又は表6から選択される。
好ましい実施態様では、表5及び/又は表6の精選タンパク質は、P15、P16、P17、P19、P20、P22、P27、P54、P28、P63、P64、P68、P75、P81、P93、P100及びP105から成る群から選択されたタンパク質を含む。上記で述べたように、これらのタンパク質はS.ウベリス感染動物の血清に存在する抗体によって認識されるか(これらのタンパク質がin vivoで発現され、乳牛で免疫原性であることを示している)、又は表5に記載のS.ウベリスの少なくとも2つの株間で交差反応性である。
実施例11で識別されるタンパク質が免疫応答の誘引に特に有用である。さらに好ましい実施態様では、したがって、表5及び/又は表6の精選タンパク質は、P15、P16、P20、P27、P54、P28、P63、P68、P93及びP105から成る群から選択されるタンパク質を含む。もっとも好ましくは、表5及び/又は表6の精選タンパク質は、P15、P16、P54、P28、P63及びP105から成る群から選択されるタンパク質を含む。上記で述べたように、後者の精選タンパク質は、実施例11の対応する感染を引き起こす全てのS.ウベリス株によって発現され、感染中ずっと宿主で発現され、さらに高度に免疫原性である。上記のタンパク質(例えば表5でその特徴が示されている)の番号は、例えば表1、2及び3(S.ウベリスの共通表面タンパク質の非限定例を示す)に記載のタンパク質に当てはまる。さらにまた、図4は、S.ウベリスのこれら推定的な選別表面タンパク質/ビルレンス因子の核酸及びアミノ酸配列の非限定例を示す。
本発明によって提供されるS.ウベリス由来の組換え及び/又は単離表面タンパク質は、ある実施態様では、原核細胞又は真核細胞を用いる生成系によって製造される。組換えタンパク質の生成のために好ましい開発宿主/ベクター系を用いる細胞の例は、例えば細菌についてはエシェリキア(Escherichia)、バシルス(Bacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)、セラチア(Serratia)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)及びラクトバシルス(Lactobacillus)であり、酵母についてはサッカロミセス(Saccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ジゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、トリコスポロン(Trichosporon)、ロドスポリジウム(Rhododporidium)、ハンセヌラ(Hansenula)、ピキア(Pichia)及びカンジダ(Candida)であり、菌類についてはニューロスポラ(Neurospora)、アスペルギルス(Aspergillus)、セファロスポリウム(Cephalosporium)及びトリコデルマ(Trichoderma)である。
別の実施態様では、2つ、3つ、又は4つ、また時にはそれより多い表5及び/又は表6のタンパク質又はその免疫原性部分をコードするDNA構築物が前記生成系に提供される。
さらに別の実施態様では、少なくとも2つのDNA構築物が前記生成系に提供され、各々は表5及び/又は表6の少なくとも1つのタンパク質又はその免疫原性部分をコードする。
好ましい実施態様では、表5及び/又は表6の前記タンパク質は、P15、P16、P17、P19、P20、P22、P27、P54、P28、P63、P64、P68、P75、P81、P93、P100及びP105から成る群から選択される。さらに好ましくは、表5及び/又は表6の前記タンパク質は、P15、P16、P20、P27、P54、P28、P63、P64、P68、P93及びP105から成る群から選択される。もっとも好ましくは、表5及び/又は表6の前記タンパク質は、P15、P16、P54、P28、P63及びP105から成る群から選択される。
本発明の別の実施態様では、前記核酸構築物は、液性及び/又は細胞性免疫応答を強化するように改変されたエピトープをコードする。したがって、本出願は、細胞に組換えベクターを提供する工程を含む、ストレプトコッカス・ウベリスに対して免疫応答を誘引することができるS.ウベリスの少なくとも2つのタンパク質を含む免疫原性組成物を製造する方法を提供し、前記ベクターは、表5及び/又は表6に列挙された少なくとも2つのタンパク質、及び/又は前記タンパク質の一方若しくは両方の免疫原性部分又は類似体又は誘導体をコードする核酸を含む。核酸から組換えタンパク質を製造するために、好ましくは、前記タンパク質の発現を強化することができる誘導性調節配列の制御下に前記核酸を置き、好ましくはより高いタンパク質収量を得る。好ましくは、前記組換えタンパク質又はその免疫原性部分の蓄積は細胞質であるか(例えば生成された組換えタンパク質が細胞から採集される場合)、又は前記タンパク質は分泌される(例えば生成タンパク質が培養液から採集されるとき)。したがって、前記免疫原性タンパク質をコードする組換え構築物に、適切な調節配列及び/又は細胞内又は細胞外蓄積のために機能的に連結されたプロモータが提供される。
したがって、本発明は組換え分子を提供し、前記分子は、表5及び/又は表6に列挙された少なくとも2つのタンパク質、及び/又は前記タンパク質の一方若しくは両方の免疫原性部分又は類似体又は誘導体をコードする核酸配列を、機能的に連結されたプロモータの制御下に含む。好ましい実施態様では、表5及び/又は6に列挙された前記タンパク質は、P15、P16、P17、P19、P20、P22、P27、P54、P28、P63、P64、P68、P75、P81、P93、P100及びP105から成る群から選択される。さらに好ましくは、表5及び/又は6に列挙された前記タンパク質は、P15、P16、P20、P27、P54、P28、P63、P64、P68、P93及びP105から成る群から選択される。もっとも好ましくは、表5及び/又は6に列挙された前記タンパク質は、P15、P16、P54、P28、P63及びP105から成る群から選択される。
本出願はさらに単離宿主細胞を含み、前記細胞は、表5及び/又は表6に列挙された1つ又は2つ以上のタンパク質、及び/又は前記タンパク質の一方若しくは両方の免疫原性部分又は類似体又は誘導体をコードする核酸配列を、機能的に連結されたプロモータの制御下に含む。単離宿主細胞は、例えば細菌細胞(例えば、エシェリキア、バシルス、シュードモナス、セラチア、ブレビバクテリウム、コリネバクテリウム、ストレプトコッカス・ウベリス、ストレプトコッカス・スイス、ラクトバシルス)、又は酵母(例えばサッカロミセス、クルイベロミセス、シゾサッカロミセス、ジゴサッカロミセス、ヤロウィア、トリコスポロン、ロドスポリジウム、ハンセヌラ、ピキア、カンジダ)、又は菌類(例えばニューロスポラ、アスペルギルス、セファロスポリウム及び/又はトリコデルマ)を含む。
前記核酸の宿主細胞での発現によって本発明の免疫原性タンパク質が提供される。好ましくは、前記免疫原性タンパク質は本発明の免疫原性組成物に取り込まれる。したがって、本発明は、ストレプトコッカス・ウベリスに対して免疫応答を誘引することができる免疫原性組成物を提供し、前記組成物は本発明の単離及び/又は組換えタンパク質様分子を含む。
本発明の前記組換えタンパク質は宿主細胞によって生成される。宿主細胞として、細菌種(例えば大腸菌及び/又は酵母)又は菌類又は親核細胞が製造のために用いられる。
本発明の免疫原性タンパク質又はその部分の投与、又は本発明の前記タンパク質をコードする核酸の投与は免疫応答を誘引する。前記核酸は、乳牛に投与されたとき前記乳牛の細胞内で発現され、前記乳牛の免疫系によって認識される。それによって、前記核酸は、例えば乳腺炎に対するDNAワクチンのように免疫原性組成物として機能する。したがって、本発明は、ストレプトコッカス・ウベリスに対して免疫応答を誘引することができる免疫原性組成物を提供し、前記組成物は本発明の核酸を含む。
本発明の免疫原性組成物は、動物(好ましくは乳牛)で免疫応答を誘引するので、本発明のタンパク質は乳腺炎関連疾患を緩和し、前記乳牛の健康状態を改善し、それによって乳牛を他の(二次的)感染に対してはるかに抵抗性にする。したがって、本発明は、医薬として使用される本発明の免疫原性組成物を提供する。
好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、ストレプトコッカス・ウベリスによって引き起こされる乳腺炎の結果としての固有の疾患を緩和する、ストレプトコッカス・ウベリス乳腺炎に対する医薬の製造に用いられる。したがって、本発明は、ストレプトコッカス・ウベリス乳腺炎に対する医薬の製造のための、本発明の免疫原性組成物の使用を提供する。
別の実施態様では、好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、乳中及び/又は乳牛の乳房のS.ウベリス菌の数の減少及び/又は制御に用いられる。酪農場での搾乳プロセスは、病気の乳牛から別の乳牛へS.ウベリス菌を伝播させる潜在的危険をはらんでいる。したがって、S.ウベリス菌の数の減少は、乳首から乳首へ及び/又は動物から動物への感染の拡大を抑えるためにもっとも適切である。
対象動物への本発明の免疫原性組成物の投与のために、タンパク質若しくはその免疫原性部分又は宿主細胞を適切な担体と混合することは、免疫原性組成物の対象動物による受容を促進し、前記組成物の免疫原性作用を高める。本発明の適切な担体は、例えば、前記免疫原性組成物の免疫効果を高める適切なアジュバントを含む。多くの適切なアジュバント(油を基剤とするもの及び水を基剤とするものの両方)が当業者に公知で、例えばDiluvacforte(商標)アジュバント又はSpecol(商標)アジュバントである。ある実施態様では、細菌又はタンパク質若しくはその免疫原性部分を希釈するために、前記適切な担体は、例えば食塩水のような溶液を含む。したがって、本発明は、本発明の免疫原性組成物及び適切な担体を含む医薬組成物を開示する。
好ましい実施態様では、表5及び/又は6のタンパク質の前記少なくとも1つは、P15、P16、P17、P19、P20、P22、P27、P54、P28、P63、P64、P68、P75、P81、P93、P100及びP105から成る群から選択される。より好ましくは、表5及び/又は6タンパク質の前記少なくとも1つは、P15、P16、P20、P27、P54、P28、P63、P68、P93、及びP105から成る群から選択される。もっとも好ましくは、表5及び/又は6のタンパク質の前記少なくとも1つは、P15、P16、P54、P28、P63、及びP105から成る群から選択される。
したがって、本発明は、表5及び/又は6から選択される少なくとも1つのタンパク質又はその免疫原性部分、及び前記タンパク質又はその免疫原性部分と結合する抗体を検出する手段を含む診断キットを開示する。そのような診断キットはELISA試験、又は血清のスクリーニングに適した任意の他の試験である。好ましくは、前記検査キットは多数の血清のスクリーニングに適している。
別の実施態様では、本発明の核酸は、本発明の免疫原性組成物又はワクチンを用いてワクチン接種した動物の集団で、野生型S.ウベリス株に感染した動物の検出に用いられる。この検出は例えばPCRを用いることによって達成される。
本特許出願は、本発明の有効な免疫原性タンパク質は、細菌の表面で抗体と接近することができ、さらに多くのS.ウベリス株に共通であるタンパク質様分子及び/又はタンパク質であることを開示する。例として、表面タンパク質は、41-241株及びO140J株のゲノム配列から、グラム陽性細菌の表面タンパク質で一般的に見出される1つ又は2つ以上の配列を含む遺伝子について選別することによって識別された。前記配列は、例えば、タンパク質と細胞壁との付着に必要なLPXTGソーターゼモチーフ、又はリポタンパク質に必要な脂質結合モチーフ、又はそのコードタンパク質が表面に局在することが予想されるシグナル配列又はトランスメンブレン領域である。
本出願は、上記のように選択した遺伝子から入手したPCR生成物をプローブとして用いて多くのS.ウベリス株の染色体DNAを精査することによって試験した、S.ウベリス株の選別タンパク質の存在を開示する。
本発明をさらに下記の実施例で説明する。これらの実施例は本発明の範囲を制限せず、単に本発明を明確にするために役立つ。多くの代替態様を実施することができ、それらは本発明の範囲内に存在する。
DNA配列の分析:S.ウベリス41-241株のDNA配列は2xカバレッジにより決定した。シークェンシングデータを集め、1815のORFを含む572の連続配列を得た。S.ウベリスO140J株(Hill, 1988)はSangerセンターで配列が決定された。2002年4月にSangerの現場で入手可能な配列データを同様に集め、1938のORFを含む61の連続配列を得た。
共通表面抗原の選択:有効なワクチン抗原は、細菌の表面で抗体と接近することができ、さらに多くのS.ウベリス株に共通である。表面タンパク質は、グラム陽性細菌の表面タンパク質で一般的に見出されるシグナチャーモチーフ(M&M参照)を形成する1つ又は2つ以上の配列を含む遺伝子を選択することによって、41-241株及びO140J株のゲノム配列から識別された。分析した全てのORFの中で、17のORFが、タンパク質を細胞壁に付着させるために必要なLPXTGソーターゼモチーフを含んでいた(表1)。これら17のタンパク質の4つ(P12、P23、P24及びP25)が41-241株でもっぱら見出された。31のORFは、リポタンパク質に必要な脂質結合モチーフを含んでいた(表2)。これらのタンパク質の全てが41-241株と同様にO140J株で見出された。さらにまた、コードされるタンパク質が表面に局在することが予想されるシグナル配列又はトランスメンブレン領域を含む87のORFを選択した(表3)。これらのタンパク質は41-241株と同様にO140J株で見出された。
種々のS.ウベリスで選択遺伝子の存在を試験するために、スポットハイブリダイゼーション実験を実施した。この実験では、99の選択遺伝子から得たPCR生成物をプローブとして用いて相当な数のS.ウベリス臨床株の染色体DNAが調べられた。データ(表4)は、選択遺伝子の大半がほとんどのS.ウベリス株とハイブリダイズし、選択遺伝子の大半が種々のS.ウベリス株で共通して存在することが示唆された。対照的に、試験した99遺伝子のうち4つが限られた数の株とのみハイブリダイズした。これら遺伝子のいずれも41-241株に存在し、細胞壁にタンパク質を付着させるために必要なLPXTGソーターゼモチーフを有するタンパク質をコードする。
ワクチン候補物として当該タンパク質の役割を評価するために、115の選択遺伝子によってコードされたタンパク質をクローニングし、ポリヒスチジンタグとともに大腸菌で発現させた。これら遺伝子のうち106の生成物が有効にクローニングされ、大腸菌で発現された。続いて、S.ウベリス感染乳牛及びホルマリン死滅又は超音波処理S.ウベリス細胞で免疫したウサギから入手した血清を、前記発現タンパク質に対する特異的抗体の存在についてウェスタンブロット分析によって試験した。結果(表5)は、発現タンパク質のうち19が、S.ウベリス感染動物の血清に存在する抗体によって認識され、これらのタンパク質がin vivoで発現され、さらに乳牛で免疫原性であることを示した。さらにまた、発現タンパク質の30が、ホルマリン死滅又は超音波処理S.ウベリス細胞で免疫したウサギの血清に存在する抗体によって認識された。発現タンパク質の12が、S.ウベリス感染乳牛から得られた血清及びホルマリン死滅又は超音波処理S.ウベリス細胞で免疫したウサギの血清の両方によって認識された。これらデータは、前記タンパク質の大半が抗原性であることを示している。表5はまた、いくつかのタンパク質はまた41-241及びO140Jの両株による実験的感染後に誘発された抗血清によって認識されることを示している。しかしながら、他のタンパク質は、O140J株に感染後に得られた血清又は41-241株に感染後に得られた血清とのみ陽性反応を示した。これは、おそらくin vivoでのタンパク質発現又は前記タンパク質の免疫系への接近能力における2つの株の相違を示している。
ワクチン候補物として当該タンパク質の役割をさらに評価するために、感染乳牛の血清によって及び/又は免疫ウサギの血清によって認識される36タンパク質の全てを精製した。さらにまた、ソーターゼモチーフを含むが両血清と反応しない4タンパク質も精製した。40の選択した組換えタンパク質のうち31が可溶型で有効に過剰発現され、自然の条件下で精製することができたが、一方、5タンパク質は不溶性の封入体として発現された。これらのタンパク質は変性条件を用いて精製し、精製後に再度折畳んだ。4タンパク質については、免疫に必要な量を精製することができなかった。続いて、36の精製タンパク質の全てをマウスの免疫に用いた。ウェスタンブロットで示されたように、いずれのタンパク質も免疫前のマウスから得た血清とは反応しなかった。しかしながら対照的に、これらタンパク質はマウスから得た免疫血清と強く反応し(表5)、これらタンパク質はマウスで高度に免疫原性であることを示した。誘発された抗体の特異性は、S.ウベリス細胞の溶解物(又はプロトプラスト上清)に対するイムノブロッティングによって確認した。これらの結果は、誘発抗体の大半が、想定分子量を有するS.ウベリスタンパク質と特異的に反応することを明示し、これらのタンパク質は、マウスで免疫応答を誘発することができる(表面)タンパク質であることが示された。
我々はマウス血清をFACS分析で用いて、莢膜で包まれたS.ウベリス全細胞(Todd-Hewittで増殖)と抗体との結合を調べた。図1で示すように、免疫前のマウスから得た血清のいずれも全S.ウベリス細胞とは結合しなかった。しかしながら対照的に、免疫血清のうち8つ(P11、P15、P17、P20、P25、P26、P27、P63タンパク質に対して誘発された血清)は全細菌細胞と強く結合したが、一方、血清のうち2つ(P17、P18に対して誘導)は全細菌細胞と弱い結合を示した。このことは、これら血清によって認識されるタンパク質はS.ウベリス細菌細胞の増殖に用いられた条件下で発現され、抗体との結合のために接近することができることを明示している。さらにまた、図1は、タンパク質の発現及び/又は表面接近能力は2つの使用株で異なることを明瞭に示している。発現及び/又は表面接近能力はタンパク質のうち3つ(P17、P19及びP20)で保存されていた。対照的に、P11及びP63はO140J株を用いることによってもっぱら検出され、一方、P15、P18、P25及びP26は41-241株を用いることによってもっぱら検出された。P27は41-241及びO140J株の両方の表面で暴露されていたが、41-241でのみ抗血清によって弱く認識された。
総合すれば、これらのデータは、選択抗原のうちの10がin vitroで増殖させた細菌の表面で発現され、無傷の莢膜保有細胞上で抗体との結合に利用されえることを明瞭に示した。これらのタンパク質のうちの3つが2つの使用株で保存されていた。
S.ウベリスワクチン候補物を識別するためのまた別のアプローチとして、血清学的プロテオームの分析を利用した。THブロスで増殖させたS.ウベリスのタンパク質を2Dゲル電気泳動によって分離し、S.ウベリス感染動物の血清に存在する抗体をプローブとして調べた。多数の高度に免疫原性のS.ウベリスタンパク質を識別した(データは示されていない)。3つのスポットが、クマシーブリリアントブルーで染色した2Dゲルに存在するタンパク質とはっきりと一致した(図2)。これらのタンパク質のトリプシン消化生成物をQ-TOFによって分析し、得られたペプチド集団のフィンガープリントを、41-241及びO140J株のゲノム配列の分析から想定される全タンパク質のin silico作製ペプチド集団フィンガープリントと比較した。さらにまた、各フィンガープリントから選択した2つの主要なトリプシン消化ペプチドをタンデムMSのために用いた。このペプチドから得られたアミノ酸配列を続いてS.ウベリスゲノム配列から想定される配列と比較した。3つのタンパク質全てがこの方法で確かに一致した。識別したタンパク質の特性は表6に列挙されている。これらワクチン候補の1つはゲノムによるアプローチを用いて確認された(P63)。このことはワクチン候補としての本タンパク質の重要性を強調する。
P93及びP105は両株の培養上清で強く認識され、これらタンパク質は細菌により分泌されることが示された。
実施例5の方法を踏襲し、乳に類似する培地中で増殖させたS.ウベリス細胞と抗体との結合を試験した。
選択タンパク質の発現の保存及び抗体の接近能力をFACSにより様々なS.ウベリス単離株で調べた。これらの調査は、多様なS.ウベリスに対抗するワクチン候補の選択を可能にする。
非ワクチン接種動物の実験的感染:S.ウベリスO140J及び41-241株の毒性を実験的感染後に決定した。乳房を4つの部分(一般的には四半分と称される)に分ける。各四半分は乳分泌細胞、乳管、乳槽及び乳首を含む。この実験では、各四半分を乳首の乳管から乳槽内で個々に感染させる。O140J株を接種した8つの四半分のうち6つで感染が成立した(図3、表7)。S.ウベリスO140Jの純培養がこれらの四半分から得た乳から単離され、体細胞数(SCC)レベルの増加が検出された。2つの四半分(2頭の別個の乳牛;乳牛6717及び6719;図3A及び3B)で、チャレンジ後に感染が検出できなかった。両方の四半分は実験中ずっと細菌学的に陰性を維持した。この2つの四半分の1つで、わずかなSCCの増加が観察された。対照的に、41-241株でチャレンジした8つの四半分の全てで、感染が成立した(図3A及び3C;表7)。これらの四半分の4つ(乳牛6721及び6723)に5x102 cfuの用量の41-241を接種し、一方、他の4つの四半分に5x103 cfuの用量の41-241を接種した(乳牛6720及び6722)。高用量の接種後にいっそう重度の影響が観察された。すなわち、乳牛の体温はより顕著に上昇し、より重度の臨床症状(乳中の凝塊及び乳房の硬結)が観察された(表7;図3A及び3C)。しかしながら乳腺炎の臨床症状は、5x102 cfuの接種用量の41-241株を用いてもまた誘発された。同様なデータがO140Jについて以前に観察された(Hill, 1988)。
41-241株と比較して、O140J株(5x102 cfuの接種用量及び16日間の実験)を用いて得られた乳腺炎の臨床症状はより重度であるように思われた(図3B及び3C)。4つの四半分のうち3つでO140J株により感染が成立し、3つ全てが感染後少なくとも16日間乳腺炎の臨床症状を示した。これら四半分のうち2つが、感染後16日間細菌学的に陽性を維持し(図3B)、1つの四半分で、SCCのレベル上昇が35日間検出された(データは示されていない)。41-241株を感染させた4つの四半分の全てが接種後10−13日間乳腺炎の臨床症状を示したが、13日目以降では臨床症状は陰性であった(図3C )。これら四半分の2つ(乳牛6723)は、実験中ずっと(16日間)細菌学的に陽性を維持し、乳腺中でのS.ウベリスの存続を示した(図3C)。
感染後3−5日で採集した乳房材料の組織学的試験は臨床観察と全般的に一致した。41-214株に感染した両乳牛及びO140Jに感染した1頭の乳牛は、腺全体にわたって多形核顆粒球の多発性乳槽内蓄積、乳槽内上皮層の巣状崩壊及び軽度の単核球の間質内浸潤を伴う軽度から重度の乳腺炎を示した(データは示されていない)。O140J株に感染させた第二の乳牛は軽度の多発性カタル性乳腺炎を示した。
総合すれば、これらのデータは、O140J及び41-241の両株は乳牛にとって病原性であることを示している。
乳牛の免疫:S.ウベリスタンパク質に対するポリクローナル抗体を乳牛で作製した。皮下接種及び/又は筋肉内及び/又は乳房内接種を用い、乳牛を種々の免疫スケジュールで免疫した。
免疫原性組成物は、例えばリン酸緩衝食塩水のような溶媒及びアジュバント(例えば油中水アジュバント又は油抜きのアジュバント)とともに処方した。
免疫後、血液サンプルを収集し、S.ウベリスに対する抗体について血清を試験した。
ワクチン接種動物の実験的感染:ワクチン接種及びワクチン非接種乳牛をS.ウベリスO140J株の500 cfuでチャレンジ感染させた。各乳房四半分に乳首内の入管から個々に感染させた。
チャレンジ後、本発明の免疫原性組成物でワクチン接種した乳牛は、より軽度の乳腺炎臨床症状、乳のより小さな変化、より低いSCCレベル、乳腺炎のより短い臨床期間、より軽度の発熱を示した。臨床スコア及び乳房の組織学的証拠は、本発明の免疫がS.ウベリスによって引き起こされる乳腺炎に対して有効であることを明瞭に示している。
多数の選択タンパク質(P15、P16、P20、P22、P27、P54、P28、P63、P68、P75、P93及びP105)の回復期抗体誘発能力を、最近のS.ウベリス感染から回復した14頭の乳牛から入手した野外血清を用いてウェスタンブロット分析によって試験した。選択した12の抗原のうち6つ(P15、P16、P54、P28、P63、P105)が、用いた14の回復期血清の全てによって認識された。これらのデータは、これらの抗原は対応する感染を引き起こす全てのS.ウベリス株によって発現されること、これらの抗原は感染の間ずっと宿主で発現されること、及びこれらの抗原は高度に免疫原性であることを示している。抗原のうち5つ(P68、P27、P20、P93及びP22)は回復期血清の8、9、10、11又は12によってそれぞれ認識された。抗原のうちの1つに関しては、回復期血清のいずれとも反応が検出できなかった(P75)。
多様なS.ウベリス株に対する防御を付与する抗原の適切性を指摘するために、最近単離された野外株(35株)の収集物における12の選択抗原(P15、P16、P20、P22、P27、P54、P28、P63、P68、P75、P93及びP105)の保存及び発現を決定した。抗原の発現は、精製抗原に対するマウス免疫血清によるウェスタンブロットをスクリーニングすることによって提示した。12の抗原のうち5つ(P15、P16、P28、P75及びP105)が被検血清の>97%で発現され、抗原のうち2つ(P27、P63)が94%の株で発現され、抗原のうち4つ(P20、P22、P54、P93)が81−92%の株で発現された。これらのデータは、大半の抗原の発現が多様なS.ウベリス株において保存されることを示した。
材料と方法
細菌株及び増殖条件:S.ウベリスの1つの株41-241が、S.ウベリス乳腺炎の大流行が観察された、オランダの企業酪農場から1998年に単離された(Hill, 1988)。41-241株は、流行時に特定の群れでもっぱら見出されたRAPDフィンガープリント型Bを示した(Zadoks et al. 2003)。前記株は、少なくとも2ヶ月間S.ウベリスに感染した乳牛から単離された。感染の開始は無症状であったが、その後多くの症状が一挙に発生した。
S.ウベリスのO140J及びEF20株はDr. J. Leigh(Institute for Animal Health, Compton, England)からの寄贈であった。他のS.ウベリス及びS.パラウベリス(S. parauberis)株(オランダの種々の酪農場での乳腺炎の臨床症例から単離)は、Dr. D. Mevius(CICD, Lelystad、オランダ)、Dr. O. Sampimon(Animal Health Service, Deventer、オランダ)又はDr. Dierenartsen Praktijk(Diessen、オランダ)から提供された。他の連鎖球菌種はいずれもASG(Lelystad、オランダ)の院内収集物に由来した。連鎖球菌株はTodd-Hewittブロス(コードCM189、Oxoid)で増殖させ、特段の指示がなければ6%(v/v)のウマ血液及び0.1%エスクリンを含むコロンビア(Columbia)血液寒天ベース(コードCM331、Oxoid)で平板培養した。大腸菌株はルリア(Luria)ブロス(18)で増殖させ、さらに1.5%(w/v)の寒天を含むルリアブロスで平板培養した。必要ならば、50μg/mLのカナマイシンを添加した。
ホエーの調製:大量乳は、S.ウベリス感染歴が無い酪農場から入手した(Waiboerhoeve, Lelystad、オランダ)。前記乳を12,800xgで30分遠心し、脂肪を除去した。続いて、40μg/mLのレンニン(Lactoferm, Brouwland、ベルギー)を添加し、乳を規則的に攪拌しながら37℃で2時間インキュベートした。ふるいに掛けて凝固乳を除き、残余の上清を12,800xgで30分間遠心した。清澄な上清を0.2μmのSartobran Pフィルター(Sartonus, Goettingen、ドイツ)でろ過滅菌した。
乳サンプル及び血清:乳サンプル及び血清は、オランダの種々の酪農場の臨床症状のあるS.ウベリス乳腺炎症例から入手した(Dr. O. Sampimon(Animal Health Service, Deventer、オランダ))。サンプルの収集前には、前記動物のいずれも抗生物質で処置されていない。さらにまた、S.ウベリスO140J及び41-241株による実験的感染後の種々の時点で、乳牛から乳及び血清を収集した。
ウサギ抗血清:ホルマリン死滅全S.ウベリス細胞、及び超音波処理S.ウベリスに対するポリクローナル抗体をウサギで作製した。水中油での2−4x109の死細胞を用いてウサギを皮下で免疫した。接種は2、3、及び4週間後に繰り返した。6週間後にウサギを殺し、血清を収集した。
抗原を調製するために、S.ウベリス株をTodd-Hewittブロスで16時間増殖させた。1Lの予め温めたTodd-Hewittブロスで培養を10倍に希釈し、光学濃度(600nm)が0.5に達するまで細胞を増殖させた。この培養を10,000xgで15分間遠心し、ペレットを100mLのPBS(136.89mLのNaCl、2.68mMのKCl、8.1mMのNa2HPO4、2.79mMのKH2PO4(pH7.2))に溶解させた。続いて光学濃度(600nm)をPBSで1.0に調整した。ホルマリン固定細胞を調製するために、これら細胞の10mL部分を10,000xgで20分間遠心し、ペレットを2.5mLのPBSに再懸濁させた。この懸濁物に250μLの3%ホルマリンを添加し、室温で16時間維持した。懸濁物をコロンビア寒天プレートで平板培養することによって、生菌が存在しないことを確認した。ホルマリンを除去するために、細胞を2回PBSで洗浄した。超音波処理細胞を調製するために、前記細胞の10mL部分を10,000xgで20分間遠心し、ペレットを250μLのPBSに再懸濁した。チップソニファイアーを出力100%、機関効率50%で用いて細胞を超音波処理した。超音波処理後、細胞をPBSで10倍に希釈した。両抗原をSpecolと1:1で混合して、油中水エマルジョンを調製した。
ゲノムのシークェンシング:ゲノムDNAは文献(Sambrook et al. 1989)の記載にしたがってS.ウベリス41-241株から単離した。DNAをせん断し、プラスミドライブラリーの作製に用いた。染料-ターミネータ化学を用いてランダムクローンのシークェンシングを実施し、ABI PRISM3700 DNAアナライザー(Applied Biosystems, Warrington, GB)を用いて分析した。シークェンシングデータを集め、572の連続配列を得た。オープンリーディングフレーム(ORF)の開始セットは、GLIMMER及びGENEMARKソフトにより識別した。遺伝子におけるトランスメンブレンへリックス及び細胞内分布は、www.cbs.dtu.dk/services/TMHMMで入手可能なTMHHHと称されるコンピュータプログラムを用いて予想した。シグナルペプチドの存在について各ORFを検索するために、プログラムSignalPを用いた(Nielsen et al. 1999)。また別には、シグナルペプチドの予想は、http://psort.nib.ac.jpで入手可能なプログラムPSORT、及びhttp://www.biology.wustl.edu/gcg/spscan.htmlで入手可能なGCG-SPSと称されるプログラムを用いて実施した。リポタンパク質は、以下の表示を用いてGCG-Findpatternsプログラムによって見出した:PS00013:
〜(D,E,R,K)6(L,I,V,M,F,W,S,T,A,G)2(L,I,V,M,F,Y,S,T,A,G,C,Q)(A,G,S)C;g-lpp:<(M,V)X{0,13}(R,K)〜(D,E,R,K,Q){6,20}(L,I,V,M,F,E,S,T,A,G)(L,V,I,A,M)(I,V,M,S,T,A,F,G)(A,G)C及びg-lpp_rvh:
(M,V,L)X{0,13}(R,K)〜(D,E,R,K,Q){6,20}(L,I,V,M,F,E,S,T,A,G)(L,V,I,A,M)(I,V,M,S,T,A,F,G)(A,G)C。細胞壁アンカードメインを含むタンパク質はInterProアクセッションIPR001899を用いて識別した。BLASTプログラムを用いて、演繹アミノ酸配列に対して配列同一性を有するタンパク質配列を検索した。
スポットブロッティング、サザンブロッティング及びハイブリダイゼーション:染色体DNAは文献(Sambrook et al. 1989)の記載にしたがって単離した。スポットブロッティングのために、1μgの染色体DNAをGenescreen Plusメンブレン上にスポットした。このメンブレンを0.4M NaOH-1M NaCl中で室温にて10分インキュベートしてDNAを変性させ、さらに0.6M NaCl、0.06Mクエン酸ナトリウム(pH7.0)中で10分インキュベートして中和した。サザンブロッティングのためには、文献(Sambrook et al. 1989)の記載にしたがってDNAフラグメントを0.8%アガロースゲルで分離し、Gene-Screen Plusメンブレン(NEN)に移した。DNAプローブは、ランダムプライミング標識キット(Boehringer)を使用し[α-32P]dCTP(3000Ci mmol-1;Amersham)で標識した。Gene Screen Plusメンブレンの供給業者の推奨にしたがって、ブロット上のDNAを適切なDNAプローブと緩衝液(0.5Mリン酸ナトリウム、1mMのEDTA及び7%ドデシル硫酸ナトリウムを含む(pH7.2))中で65℃にてハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションの後で、メンブレンを溶液(40mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、1mM EDTA、5%SDS)で65℃にて30分間2回洗浄し、さらに溶液(40mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、1mM EDTA、1%SDS)で65℃にて30分間2回洗浄した。シグナルは蛍光体映像装置(Storm; Molecular Dynamics)で検出した。
選択タンパク質のクローニング及び発現:選択ORFを固有のオリゴヌクレオチドプライマーを用いPCRによって増幅し、pET200/D-TOPO(Invitrogen)にてクローニングした。タンパク質は仮定的シグナルペプチド又は推定トランスメンブレン領域無しでクローニングした。組換えタンパク質のために、大腸菌BL21 Star(DE3)(Invitrogen)を構築物で形質転換させた。
PCR反応(25μL)のために、白金Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を供給業者が記載するように用いた。DNA増幅はPerkin Elmer 9700サーマルサイクラー及び以下から成るプログラムで実施した:94℃で5分のインキュベーション、94℃で15秒、57℃で30秒及び68℃で2分の35サイクル、さらに68℃で5分。
発現抗原の免疫検出:XCell SureLockミニセルシステム(Invitrogen)を用いタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。ゲル中のタンパク質は、SYPRO-オレンジ(Molecular Probes, Sunnyvale, Calif)染色を用い、製造業者の推奨にしたがって可視化した。シグナルは蛍光体映像装置(Storm; Molecular Dynamics)で検出した。
タンパク質は標準的な方法(19)によってニトロセルロースメンブレンに移した。このメンブレンを、4%脱脂乳、5%ウシ胎児血清及び0.05% Tween20を含むBlotto:トリス緩衝食塩水(TBS)(50mMトリス-HCl(pH7.5)、150mMNaCl)で室温(RT)にて16時間ブロッキングした。組換え抗原を検出するために、6xHISタグに対するモノクローナル抗体(Clontech, Palo Alto, CA)とともにメンブレンをインキュベートした。結合抗体は、アルカリホスファターゼ連結抗マウス抗体及びニトロ-ブルー-テトラゾリウム/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェートを用い文献(Sambrook et al. 1989)に記載されたように検出及び可視化した。
発現された抗原の免疫原性は、S.ウベリスに顕性又は不顕性感染した乳牛から得た血清サンプルを用いることによって、又はウサギ抗S.ウベリス抗血清を用いることによって試験した。結合抗体は、アルカリホスファターゼを結合させたウサギ抗乳牛又はヤギ抗ウサギ免疫グロブリン(Jackson Immunoresearch)を用いて検出し、さらに文献(Sambrook et al. 1989)に記載されたように、ニトロ-ブルー-テトラゾリウム/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェートを用いて可視化した。
タンパク質の精製:タンパク質は、製造業者(Qiagen)の記載にしたがい、Ni-ニトリロ三酢酸(Ni2+-NTA)カラムクロマトグラフィーを用い可溶化させた細胞ペレットから精製した。略記すれば、細胞を指数関数的に増殖させ、1mMのIPTGを添加し、さらに4時間37℃で細胞を増殖させた。続いて、細胞を採集し溶解した。清澄にした上清をNi2+-NTAアガロースカラムにロードした。カラムを洗浄し、タンパク質を溶出させた。異なる緩衝液を天然のままの精製又は変性精製のために用いた。変性条件下で精製したタンパク質は、6M−0M尿素リニアグラディエント(286.89mM NaCl、2.68mM KCl、8.1mM Na2HPO4、2.79mM KH2PO4(pH7.2)にて)を用いて透析することによって再生させた。精製タンパク質はさらにAmicon Ultra-45000 MWCOフィルター(Millipore)を用いて濃縮した。
タンパク質濃度:サンプル中のタンパク質濃度は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動後に決定した。ゲル中のタンパク質はSYPRO-オレンジ(Molecular Probes, Sunnyvale, Calif)染色を用い、製造業者の推奨にしたがって可視化した。シグナルは蛍光体映像装置(Storm; Molecular Dynamics)で検出した。既知のウシ血清アルブミン濃度範囲を標準物として用い、ゲルに存在するタンパク質量を算出した。算出にはMolecular Dynamicsプログラムを用いた。
精製タンパク質の免疫原性:フロイントの完全アジュバント中の精製タンパク質20μgを用い、OF1マウスを皮下で免疫した。3週間後にフロイントの不完全アジュバント中の精製タンパク質20μgを用い、接種を繰り返した。2回目の接種後3週間でマウスを殺し血清を収集した。
FACS分析:S.ウベリス細胞をOD600が0.5に達するまでTodd-Hewittブロスで増殖させた。遠心によって細胞を収集し、FACS緩衝液(PBS-13(pH7.2)[137mM NaCl、2.68mM KCl、8.1mM Na2HPO4、2.8mM KH2PO4]−0.5%BSA)中で1回洗浄し、細胞濃度をOD600=約1.0にFACS緩衝液中で調整した。細胞(250μL)を遠心により収集し、50μLのFACS緩衝液(マウス抗血清を1:50希釈で含む)に再懸濁させた。このサンプルを氷上で45分間インキュベートした。未結合抗体を除くために、細胞を2回250μLのFACS緩衝液で洗浄した。続いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識ウサギ抗マウス二次抗体(1:100希釈;DAKO A/S, Glostrup, Denmark)を含む50μLのFACS緩衝液とともに細胞を30分間氷上でインキュベートした。細胞を250μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、100μLのFACS緩衝液に再懸濁させ、結合抗体を蛍光活性化細胞仕分け装置(FACS Calibur, Benton Dickinson, Franklin Lakes, USA)で検出した。
全細胞ELISA:指数関数的に増殖しているS.ウベリス細胞を遠心により収集し、コーティング緩衝液(pH9.6)(0.05M NaHCO3、0.05M Na2CO3)に再懸濁し、細胞濃度をOD600=約1.0に調整した。高結合性96ウェルプレートをウェル当たりこの懸濁液の100μLで16時間4℃にて被覆した。ウェルをELISA緩衝液(5% Tween-80、0.02%アジ化ナトリウム)で4回洗浄し、血清(PBS-13(0.05% Tween-80、2% NaCl、及び5%ウシ胎児血清を含む)中で1:20に希釈)を添加し、さらにプレートを37℃で1時間インキュベートした。未結合抗体を除くために、ウェルをELISA緩衝液で4回洗浄した。続いてPBS-13(0.05% Tween-80、2% NaCl、及び5%ウシ胎児血清を含む)中で1:250に希釈した二次抗体(100μLのセイヨウワサビペルオキシダーゼ連結ウサギ抗マウス(DAKO))を添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートした。ウェルを再びELISA緩衝液で4回洗浄し、100μLのテトラメチルベンジジン(TMB)(CeDi-Diagnostics, Lelystad、オランダ)を用い室温で結合抗体を検出した。15分後にウェル当たり100μLの0.5M H2SO4を添加することによって反応を停止させた。ELISAリーダー(Thermo Labsystems, Franklin, USA)を用い、450nmで吸収を読み取った。
二次元ゲル電気泳動のためのサンプル調製:S.ウベリス株を100mLのTodd-Hewittブロスで16時間増殖させた。1Lの予め温めたTodd-Hewittブロスで培養を20倍に希釈し、光学濃度(600nm)が0.5に達するまで細胞を増殖させた。この培養を10,000xgで20分間遠心し、ペレットを等体積の250mMシュクロース/25mMトリス(pH8.0)で1回、さらに等体積のスーパーQで1回洗浄した。得られたペレットを5mLのスーパーQに溶解させた。チップソニファイアー(Branson sonifier 250、50%インターバル、アンプリチュード3)を用いてこれらの懸濁物の1.5mL部分を15分間超音波処理した。続いて、この懸濁物をDNAse I及びMgCl2(それぞれ最終濃度6.5μg/mL及び10mM)で37℃にて10分間処理した。プロテアーゼ阻害剤ペプスタチンA、ロイペプチン、ペファブロック及びアプロチニンをそれぞれ最終濃度2.5μg/mL、5μg/mL、25μg/mL及び1μg/mLで添加した。尿素、ジチオスレイトール及びTriton-X100をそれぞれ最終濃度9M、70mM及び2%で添加した。サンプルを10,000xgで30分間遠心して上清を収集し、RC DCタンパク質アッセイ(BioRad)を製造業者の指示にしたがって用いサンプル中のタンパク質濃度を決定した。
二次元ゲル電気泳動:50−100μgのタンパク質を含むサンプルを450μLのサンプル緩衝液(8M尿素、2%CHAPS、0.5%IPG緩衝液3-10、70mMジチオスレイトール及び微量のブロモフェノールブルー)に溶解させた。タンパク質は、製造業者の指示にしたがい、Immobiline 18cm DryStrip(3-10 NL Amersham Pharmacia Biotech)を前記ストリップの再水和後にIPGphor(Amersham Pharmacia Biotech)で用い等電点電気泳動により一次元で分離した。続いてフォーカシング後直ちに、前記ストリップを、10mg/mLジチオスレイトールを含む平衡緩衝液(6M尿素、30%グリセロール、2%SDS、50mMトリス-HCl(pH8.8)、微量のブロモフェノールブルー)で15分間、さらに25mg/mLのヨードアセトアミドを含む平衡緩衝液で15分間平衡化させた。タンパク質は、製造業者の指示にしたがい、Ettan DALT12システム(Amersham Pharmacia Biotech)にて12.5%のプレカストEttan DALTゲル(Amersham Pharmacia Biotech)でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により二次元で分離した。
染色:ゲル中のタンパク質は、PlusOneTM銀染色キット(Amersham Pharmacia Biotech)を製造業者の指示にしたがって用い銀で染色するか、又は文献(Sambrook et al. 1989)の記載のようにクマシーブルーを用い、ゲルのプラスチックバッキングのためにインキュベーション時間を延長させて染色した。
2Dゲルのタンパク質の消化:クマシー染色ゲルで識別されたタンパク質スポットを手作業で削り出した。ゲル片は使用まで0.1%酢酸中で-80℃で凍結した。ゲル中のタンパク質は文献(Li et al. 2003)の記載にしたがいトリプシンで消化した。
2Dゲルのトリプシン消化タンパク質スポットの質量分析:Micromass Q-TOF質量分析計を用いて、文献(Li et al. 2003)の記載にしたがい、トリプシン消化タンパク質スポットの質量を分析した。
実験的感染実験
動物:臨床的に健康なホルスタイン-フリーシャン乳牛(最初の授乳期の2−4週間)を感染に用いた。乳牛は1日に2回午前7.00時及び午後4.00時に搾乳した。全ての乳牛で体細胞数(SCC)は2.0x105細胞/mL未満であり、感染前の最後の14日間に繰り返し実施した微生物学検査で乳腺炎病原体は陰性であり、さらに乳腺炎の病歴は無かった。
接種物の調製及び接種:接種物としてS.ウベリスO140J及び41-241株を用いた。6%ウマ血液(v/v)及び0.1%エスクリン(w/v)を含むColumbia寒天プレートで増殖させた単一コロニー を90mLのTodd-Hewittブロス(Oxoid)に移し、37℃で一晩培養した。一晩培養を同じ培養液で1:10に希釈し、細菌をほぼ3x108 cfu/mL(ログ期増殖)の濃度に増殖させた。続いて細胞を遠心によって収集し、PBSに再懸濁し希釈した。
各乳牛の2つ四半分に、5mLのPBS中の5x102 cfu(O140J株又は41-241株)又は5x103 cfu(41-241株)のどちらかを乳槽内に接種した。コントロールの四半分には5mLのPBSを接種した。注射は午後の搾乳の直後に使い捨ての乳首用カニューレを用いて実施した。接種前に乳首をアルコールで清拭した。上方に向けてマッサージして接種物を乳腺槽に送り込んだ。4頭の乳牛を含む1つのグループを5x102 cfu/mLのO140J株でチャレンジした。4頭の乳牛を含む別のグループを41-241株でチャレンジした。これらの乳牛のうち2頭を5x102 cfuで、さらに2頭の乳牛を5x103 cfuでチャレンジした。乳牛を2つの一貫した実験で用い、1つの実験は45から80時間で終了し、第二の実験は16日後に終了した。
サンプル採取及び臨床スコア:各搾乳時に四半分の全てから無菌的に乳サンプルを収集した。6%ウマ血液(v/v)及び0.1%エスクリン(w/v)を含む血液寒天プレートでサンプルを細菌学的に調べ、さらに標準的な方法(International Dairy Federation, 1981)を用いてSCCを決定した。さらにまた、抗体応答についての分析まで乳サンプルを-20℃で保存した。各搾乳時に、乳牛の体温及び乳生産量を測定し、乳腺炎の症状(乳房の硬さ及び乳中の凝塊)について乳牛をモニターした。週に1回、血清における抗体応答の分析のために血液サンプルを収集した。
病理学:組織学的試験のために。3つの異なる水平横断面、すなわち腺の基底、基底と乳槽の中間及び乳腺槽の種々の部位から各四半分の乳腺組織のサンプルを採取した。組織サンプルを4%のホルマリン緩衝液で固定し、パラフィンに包埋した。組織学的試験のために、組織切片を切り出しヘマトキシリン/エオシン染色で染色した。
Claims (12)
- 以下の工程を含む、少なくとも2つのストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は血清型に対して免疫応答を誘引することができるストレプトコッカス・ウベリスタンパク質を同定する方法:
a)分泌タンパク質、表面結合タンパク質及び/又は配列番号110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、又は190のタンパク質と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質を同定する工程;
b)少なくとも2つのストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は血清型で保存されている、工程a)で同定した少なくとも1つのタンパク質を選択する工程;及び
c)工程b)で選択した少なくとも1つのタンパク質から、第一のストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞並びに第二のストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞と特異的に結合することができる少なくとも1つのタンパク質を選択する工程。 - 前記分泌タンパク質及び/又は表面結合タンパク質が、ストレプトコッカス・ウベリスのゲノム配列において、分泌及び/又は表面結合タンパク質のモチーフを含む遺伝子を同定することによって同定される、請求項1に記載の方法。
- 配列番号110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、又は190のタンパク質と少なくとも80%の配列同一性を有する前記タンパク質が、ストレプトコッカス・ウベリスのゲノム配列において、配列番号110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、又は190のタンパク質と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質を同定することによって同定される、請求項1又は2に記載の方法。
- 配列番号110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、又は190のタンパク質と少なくとも80%の配列同一性を有する前記タンパク質が、配列番号109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、又は189の完全長ヌクレオチド配列と、0.5Mリン酸ナトリウム、1mM EDTA及び7%ドデシル硫酸ナトリウムを有するpH7.2の緩衝液中で65℃にてハイブリダイズする遺伝子を、ストレプトコッカス・ウベリスのゲノム配列において同定することによって同定される請求項1、2又は3に記載の方法であって、
前記核酸分子が、40mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、1mM EDTA及び5%ドデシル硫酸ナトリウムを含む緩衝液で65℃にて30分間2回洗浄し、さらに40mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、1mM EDTA及び1%ドデシル硫酸ナトリウムを含む緩衝液で65℃にて30分間2回洗浄した後でハイブリダイズしたままである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 - 少なくとも2つのストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は血清型で保存されている遺伝子を選択する工程をさらに含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記遺伝子によってコードされるタンパク質を入手する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
- 前記遺伝子が原核細胞発現系で発現される、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 以下の工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法:
−単離及び/又は組換えストレプトコッカス・ウベリスタンパク質を入手する工程;
−前記タンパク質を、第一のストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞、並びに第二のストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞とともにインキュベートする工程;及び
−タンパク質が、第一のストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞、並びに第二のストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は血清型に感染した動物の抗体及び/又は免疫細胞と結合することができるか否かを決定する工程。 - 前記タンパク質をコードする核酸配列を用いて、前記タンパク質を発現させる工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
- 前記抗体及び/又は免疫細胞が回復期血清に由来する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ストレプトコッカス・ウベリスタンパク質がオプソニン食菌作用誘発抗体を誘引することができる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 少なくとも2つのストレプトコッカス・ウベリス株及び/又は血清型に対して免疫応答を誘引することができる少なくとも2つのストレプトコッカス・ウベリスタンパク質が同定される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
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