JP2001504335A - ストレプトコッカス・ユベリスのラクトフェリン結合タンパク質 - Google Patents

ストレプトコッカス・ユベリスのラクトフェリン結合タンパク質

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Abstract

(57)【要約】 ストレプトコッカス・ユベリス(S.ユベリス)のウシラクトフェリン(bLF)結合タンパク質、並びにbLFをコードする遺伝子(lbp)を記載する。LF結合タンパク質は、S.ユベリス感染、特に乳腺症の予防および治療のためのワクチン組成物において、並びにS.ユベリス感染の存否を決定する診断方法において用いることができる。mgaと呼ばれるlbpに隣接した調節領域も開示する。

Description

【発明の詳細な説明】ストレプトコッカス・ユベリスのラクトフェリン結合タンパク質 技術分野 本発明は一般に細菌抗原に関する。より詳しくは、本発明はストレプトコッカ ス・ユベリス(Streprococcus uberis;S.uberis)由来のウシラクトフェリン 結合タンパク質の特徴づけおよび組換え生産並びにそれの利用に関する。本発明 はまた、ラクトフェリン結合タンパク質遺伝子の上流に置かれた調節領域mga の特徴づけにも関する。背景 乳腺の感染症である乳腺炎は、毎年酪農業に大きな経済損失を引き起こしてい る。ストレプトコッカス・ユベリス(Streprococcus uheris;S.uheris)は乳 牛の乳腺炎の症例の高比率の原因である環境的病原体であり、そして非泌乳期の 乳腺から単離される主な生物である〔Bramley,A.J.(1984)Br.Vet.J.140:32 8-335:Bramley & Dodd(1984)J.Dairy Res.51:481-512;Oliver,S.P.(1988 )Am.J.Vet.Res.49:1789-1793〕。S.ユベリスの感染から起こる乳腺炎は 通常無症状であり、白血球の流入によって体細胞数が増加した見かけ上正常な乳 汁により特徴付けられる。血液から乳汁へと塩化ナトリウムと炭酸水素ナトリウ ムが移動して分泌を抑制し、よりアルカリ性の方へとpHのシフトを引き起こす ため、乳汁の化学組成が変化する。S.ユベリス乳腺炎は、乳汁の変色や凝固お よび乳腺の腫大や硬化といった明らかな病気の徴候を伴う、急性臨床的症状の形 態をとることもある。臨床的疾患の症例には深刻なものもあり、発熱も起こりう る。S.ユベリス乳腺炎の臨床的症 状発現の概要については、Bramley(1991)Mastitis:physiologyor pathology. p.3-9;C.Burvenich,G.Vandeputte-van Messom & A.W.Hill編,New insights into the pathogenesis of mastitis.Rijksuniversiteit Gent,Gelgium;お よびSchalm他(1971)The mastitis complex-A brief summary.p.1-3,Bovine Mastitis.Lea & Febiger,Philadelphiaを参照のこと。 S.ユベリス感染の病因はあまり解明されていない。更に、宿主防御機構や乳 腺生理学に対するS.ユベリス毒性因子の影響は十分限定されていない。S.ユ ベリスに関連する既知の毒性因子としては、ヒアルロン酸莢膜、ヒアルロニダー ゼ、R様タンパク質、プラスミノーゲン活性化因子およびCAMP因子が挙げら れる。しかしながら、病原性におけるそれら毒性因子の役割についてはほとんど 知られていない。 ラクトフェリン(Lf)は多形核白血球(PMN)および種々の外分泌腺によ り分泌される哺乳類鉄結合性糖タンパク質である〔Baggiolini他(1990)J.Exp .Med.131:559-570;Masson他(1966)Clin.Chim.Acta 14:735-739〕。このタ ンパク質は乳汁中と粘膜表面に高濃度で見つかる〔Masson他,前掲;Reiter & O ram(1967)Nature 216:328-330〕。例えば、乳び管分泌液中のウシラクトフェ リン(bLf)濃度は、感染の発症度によって、急性ウシ乳腺炎の期間中30倍に まで増加し得る〔Harmon他(1976)Infect.Immun.13:533-542〕。 内皮表面へのPMNの付着、顆粒球−単球コロニー刺激因子のフィードバック 阻害および抗体産生の制御をはじめとする様々な生理学的経路におけるLfの制 御機能が提唱されている。上記経路において或る種の哺乳類細胞とLfとの特異 的相互作用が関係すると思われ、マクロファージ、単球、Bリンパ球、PMN、 活性Tリンパ 球および肝細胞上にLfに特異的なレセプターが同定されている〔Bennet & Dav is(1981)J.Immunol.127:1211-1216;Dehanne他(1985)Am.J.Physiol.248 :463-469;Maneva他(1983)Int.J.Biochem.15:981-984;Rochard他(1989)FE BS Lett.255:201-204;およびvan Snick & Masson(1976)J.Exp.Med.144:15 68-1580〕。 Lfは試験管内でE.コリや他の幾つかの微生物の増殖を抑制する〔Bullen他 (1972)Br.Med.J.1:69-75〕。このLf媒介抗菌作用は、主として細菌の鉄 剥奪能力によるとされている〔Arnold他(1977)Science 197:263-265;Law & Re iter(1977)J.Dairy Res.44:595-599;Oram & Reiter(1968)Biochim.Bioph ys.Acta 170:351-365〕。この点において、幾つかの例外を除いて、微生物増殖 には鉄が不可欠であることは周知である〔Weinberg,E.D.(1978)Microbiol. Rev.42:45-66〕。哺乳類組織内には鉄が豊富であるが、哺乳類の体内にある鉄 は事実上全てフェリチンとしてまたはヘム化合物として細胞内に保持され、侵入 微生物は通常そのプールに接近できない。その上、細胞外間隙中に存在する少量 の鉄は、高親和力鉄結合性宿主糖タンパク質(例えば血清やリンパ中に存在する トランスフェリン(Tf)、および分泌液や乳汁中に存在するLf)により効率 的にキレート化される〔Otto他(1992)Crit.Rev.Microbiol.18:217-233〕。 この欠乏を解消するために、細菌病原体は特異的鉄取込み機構を発達させた。 多くの細菌種ではそれらの機構が第二鉄イオン(FeIII)に対して高親和性を示 すシデロフォア(シデロクロム)と呼ばれる小化合物の合成と分泌を含む。シデ ロフォアは、TFまたはLfに結合した鉄を遊離させてフェリシデロフォア錯体 を形成することができ、次いでその錯体が特異的な鉄抑制性膜レセプターにより 認識され、そして細菌の中に取り込まれ、そこで鉄が放出される 〔Crosa,J.H.(1989)Microbiol.Rev.53:517-530〕。この鉄取込み機構は多数 のグラム陰性菌種について記載されている。グラム陰性菌の中には鉄欠乏環境の 中で増殖させると検出可能なシデロフォアを分泌しないものがあるが、しかしT fまたはLfに直接に且つ特異的に結合することによって細菌細胞への鉄輸送を 可能にする外膜タンパク質を生産する。 Tf結合は、細菌の外膜に存在する2つのタンパク質、すなわちトランスフェ リン結合タンパク質1と2(Tbp1とTbp2)の活性によって媒介されるよ うである〔Gonzalez他(1990)Mol.Microbiol.4:1173-1179;Ogunnariwo & Sch ryvers(1990)Infrect.Immun.58:2091-2097;Schryvers,A.B.(1989)J.Med .Microbiol.29:121-130;Schryvers & Lee(1989)Can.J.Microbiol.35:409 -415;Schryvers & Morris(1988)Mol.Microbiol.2:467-472〕。トランスフェ リン結合タンパク質はそれらの天然宿主のトランスフェリンに高度に特異的であ る性質を有する。 しかしながら、Lfからの鉄取込み機構は十分に特徴づけられていない。推定 105kDa(キロダルトン)のLfレセプターLbp1がアフィニティー単離により 淋菌において同定されている〔Schryvers & Lee前掲;Cornelissen他(1992)J .Bacteriol.174:5788-5797;Lee & Bryan(1989)J.Med.Microbiol.28:199- 204〕。Lbp1の構造遺伝子(lbpAと呼ばれる)も単離されている〔Biswa s & Sparling(1995)Infect.Immun.63:2958-2967〕。髄膜炎菌ラクトフェリ ンレセプター遺伝子も特徴づけられている〔Petterson他(1993)Infect.Immun .61:4724-4733;Petterson他(1994)J.Bacteriol.176:1764-1766;Petterson 他(1994)Microb.Pathog.17:395-408〕。淋菌と髄膜炎菌のlbpAのDN A配列およびLbp1の推定アミノ酸配列は高度に保存されている(94%同一) 。Lbp1は同じ淋菌株のTbp1と46%同一であるが〔Cornelissen他(1992 )J.Bacteriol.174:5788-5797〕、Tbp2とはわずか18%のみ同一である〔A nderson他(1994)J.Bacteriol.176:3162-3170〕と示されている。淋菌と髄膜 炎菌の両者が比較的良く保存されたFurボックスを含み、タンパク質はTonB依存 性レセプターファミリーに相同であり、それはTbp1には当てはまる(Cornel issen他、前掲)がTbp2には当てはまらない(Anderson他、前掲)。Lfレ セプタータンパク質であるLbp1とTfレセプタータンパク質であるTbp1 との間の著しい類似性は、細菌細胞へのLfの結合がTf結合と類似しているか もしれないことを示唆する。この仮説と一致するのは、lbpAの上流の転写解 読枠lbpBによりコードされる推定タンパク質がTbp2と広範囲の相同性を 示す〔Petterson他(1994)Microb.Pathog.17:395-408〕という事実である。 この事実は、Lfからの鉄獲得が、Tfからのと同様に、外膜中の2つの特定タ ンパク質を必要とすることを示唆する。 グラム陰性菌の鉄取込み機構の知見とは対照的に、グラム陽性病原体は細胞外 体液中での増殖中に鉄を獲得する機構に関する情報は比較的少ない。S.アウレ ウス(S.aureus)とコアギュラーゼ陰性ブドウ球菌の両者がシデロフォアを産 生すると報告されている〔Konetschny-Rapp他(1991)Eur.J.Biochem.191:65 -74;Meiwes他(1990)FEMS Microbiol.Lett.67:201-206〕。S.アウレウスは ヒトおよびウシLfとヒトTfの両方を結合できるようだ〔Naidu他(1991)J. Med.Microbiol.34:323-328;Naidu他(1991)J.Dairy Sci.74:1218-1226;Nai du他(1992)J.Med.Microbiol.36:177-183;Modun他(1994)Infect.Immun. 62:3850 -3858〕。LfとウシS.アガラクティエ(S.agalactiae)株との相互作用も報 告されている〔Rainard,P.(1992)FEMS Microbiol.Lett.98:235-240〕。しか しながら、それらのTfまたはLf結合タンパク質の鉄獲得機能は研究されてい ない。 A群連鎖球菌Mタンパク質は、ヒト食細胞による攻撃を妨げる能力があるため にこの生物の主な毒性因子の1つであると考えられる〔Lancefield,R.C.(1962 )J.Immunol.89:307-313〕。M分子に対して抗体が産生されるまで、細菌は感 染組織に居座る。Mタンパク質に対する型特異的抗体は該分子の抗食作用を逆転 させそして侵入生物を効率的にクリアランスすることができる。例えば、Mタン パク質は、食作用に対する耐性を媒介するのにそれらが関係していること〔Keho e,M.A.(1991)Vaccine 9:797-806〕と、それらが超抗原性によって潜在的に有 害な宿主免疫応答を誘導する能力があり且つ宿主交差反応性抗体応答を誘導する 能力があること〔Bisno,A.L.(1991)New Engl.J.Med.325:783-793;Froude 他(1989)Curr.Top.Microbiol.Immunol.145:5-26;Stollerman,G.H.(199 1)Clin.Immunol.Immunopathol.61:131-142〕から、S.ピオゲネス(S.pyo genes)の重要なビルレンス因子の1つである。 A群連鎖球菌(GAS)では、Mタンパク質遺伝子(emm)およびペプチダー ゼ遺伝子(scpA)並びに存在する場合、Mタンパク質関連IgGおよびIgA結合タン パク質をコードする遺伝子(それぞれfcrAおよびenn)が染色体上でクラスター を形成している〔Haanes他(1992)J.Bacteriol.174:4967-4976;Hollingshead 他(1993)Mol.Microbiol.8:707-717;Podbielski,A.(1993)Mol.Gen.Genet.237 :287-300〕。それらの毒性関連表面タンパク質の発現は、正式にはMryま たはVirRと呼ばれる、タンパク質Mga(これはA群連鎖球菌属の多遺伝子 調節因子を意味する)によって転写 レベルで同時制御されている〔Caparon & Scott(1987)Proc.Natl.Acad.Sci .USA 84:8677-8681;Chen他(1993)Mol.Gen.Genet.241:685-693;Haanes & C leary(1989)J.Bacteriol.171:6397-6408;Mclver他(1995)J.Bacteriol.1 77 :I.:6619-6624;Perez-Casal他(1991)J.Bacteriol.173:2617-2624;Podbie lski他(1995)Infect.Immun.63:9-20;Podbielski,A.(1992)Med.Microbiol .Immunol.181:227-240:Robbins他(1987)J.Bacteriol.169:5633-5640〕。 MgaはGAS中の極めて重要な調節系の一部、恐らく2成分調節系の第二成分 として機能するものであると思われる。 予防接種は、新たな感染に対する乳腺の抵抗力を増加させ且つ病気の臨床的発 症度を減らすための1つのアプローチである。従来の研究は、S.ユベリスによ る一次感染が同一株による二回目のチャレンジ後の感染率をかなり減少できるこ とを示した〔Hill,A.W.(1988)Res.Vet.Sci.44:386-387〕。S.ユベリス 死菌による局所予防接種は相同株による乳房内チャレンジに対してウシ乳腺を保 護する〔Finch他(1994)Infect.Immun.62:3599-3603〕。同様に、生存S.ユ ベリスによる皮下予防接種も同一株による乳腺炎の発病の大幅な改善を引き起こ すことが示された〔Hill他(1994)FEMS Immunol.Med.Microbiol.8:109-118 〕。こうして予防接種した動物はその乳汁中に少数の細菌しか発生せず且つ多く の四肢動物が感染しないままである。 しかしながら、生存菌または弱毒化菌を使った予防接種は受容体に対して危険 を及ぼす恐れがある。従って、S.ユベリスに対して使用するためのサブユニッ トワクチン組成物を提供することが望ましい。今まで、S.ユベリスのラクトフ ェリン結合タンパク質は特徴づけられておらず、そしてワクチン組成物にそれを 使用すること は記載されていない。発明の開示 本発明は、S.ユベリスからのウシラクトフェリン(bLf)結合タンパク質 (bLbp)の発見およびそれの特徴づけに基づく。bLf結合タンパク質をコ ードする遺伝子lbp、並びに前記遺伝子の上流調節因子mgaもクローニング した。bLf結合タンパク質、それの免疫原性断片および類似体、並びに/また はそれを含むキメラタンパク質は、単独でまたは別の抗原と組み合わせて、哺乳 動物宿主において細菌感染からの保護を提供する新規サブユニットワクチンにお いて使用することができる。 従って一態様では、本発明は、単離された免疫原性S.ユベリスbLf結合タ ンパク質、並びに免疫原性S.ユベリスbLf結合タンパク質のコード配列を含 んで成る核酸分子に向けられる。追加の態様では、本発明は前記核酸分子を含有 する組換えベクター、それらのベクターにより形質転換された宿主細胞、および S.ユベリスbLf結合タンパク質を組換え生産させる方法に向けられる。 別の態様では、本発明は医薬上許容される賦形剤と免疫原性S.ユベリスbL f結合タンパク質とを含んで成るワクチン組成物に向けられる。 更に別の態様では、本発明は哺乳動物被検体においてS.ユベリス感染、例え ば乳腺炎を治療または予防する方法に向けられる。この方法は前記被検体に上記 ワクチン組成物の治療有効量を投与することを含んで成る。 追加の態様では、本発明は(a)免疫原性S.ユベリスbLf結合タンパク質を 提供し;そして(b)該タンパク質を医薬上許容される賦形剤と混合することを含 んで成る、ワクチン組成物の製造方法に関する。 更なる態様では、本発明はS.ユベリスbLf結合タンパク質に対する抗体に 向けられる。 追加の態様では、本発明は生物学的試料中のS.ユベリス抗体を検出する方法 であって、 (a)生物学的試料を用意し; (b)生物学的試料中に存在する時、S.ユベリス抗体がS.ユベリスbLf 結合タンパク質に結合して抗原/抗体複合体を形成するような条件下で、前記生 物学的試料をS.ユベリスbLf結合タンパク質と反応させ;そして (c)前記複合体の存否を検出し、それによって前記試料中のS.ユベリス抗 体の存否を検出する ことを含んで成る方法に向けられる。 更に別の態様では、本発明はS.ユベリス感染を検出するための免疫診断試験 キットに向けられる。この試験キットは、S.ユベリスbLf結合タンパク質と 免疫診断試験を実施するための使用説明書を含んで成る。 他の態様では、本発明は単離されたS.ユベリスMgaタンパク質、並びにそ れのコード配列を含んで成る核酸分子に向けられる。 本発明の上記および他の態様は、本明細書中の開示を考慮すれば当業者が容易 に考えつくであろう。図面の簡単な説明 図1はlbpの制限酵素地図であり、bLfの進行性欠失と結合データの要約 を示す。白抜きの箱(p領域)はプロモーターとリボソーム結合部位を含む5’ 配列を表し、陰影を付けた箱(s領域)はシグナルペプチドをコードするlbp 配列を表し、そして斜線を引いた箱は成熟または先端が切り取られたタンパク質 をコードするlbp配列を表す。R1とR201(Rは残基を意味する)はそれぞ れ、pLBP5中の成熟タンパク質の最初のコドンとpTP51中の先端が切り取られたタ ンパク質の最初のコドンを示す。その他の数字は各タンパク質の最終コドンを示 す。lpbの上に制限部位が与えられている。各クローンのbLf結合能が右側 に示される。 図2A〜2C(配列番号1〜2)は、S.ユベリスウシLbpのヌクレオチド 配列と推定アミノ酸配列を示す。ヌクレオチドとアミノ酸は配列の右側に番号付 けられている。推定アミノ酸配列はヌクレオチド配列の下に一文字記号として示 される。232位と262位にある2つの可能なATG開始コドン、および1915位にあ るTAA終始コドンはボールド体で示される。2つの推定−35および−10プロモ ーター配列並びにシャイン−ダルガルノ配列(SD)が指摘されている。推定ロ ー(ρ)因子非依存性転写ターミネーター(T)には下線が引かれている。二重 の下線はORFのN末端にある推定シグナルペプチドの存在を示す。C末端の疎 水性膜貫通領域はイタリック体で示され、近くの表面固定モチーフはイタリック 体と二重下線により示される。中央部の反復アミノ酸配列はA,BおよびCの文 字により示される。 図3は、Lbpの二次構造、荷電残基および疎水性のプロフィールを示す。L bpの推定アミノ酸配列をNovotny-Auffray演算法により解析した。Turn、Beta およびAlphaと印したプロットは、それぞれβターン−ランダムコイル、βシー トおよびαヘリックス形成の可能性を示す。+/−プロットは、正電荷(上)お よび負電荷(下)を有する分子の領域を示す。疎水性(Hydro)プロットはタンパ ク質の疎水性領域を示す。アミノ酸位置が横軸に示される。 図4は、pLBP5iとpMGA14からのpMGA14Fの作製を示す。プラスミドpMGA14Fは、 pMGA14のSphI部位とNheI部位の間にpLBP5iの1.5kbSphI−NheI断片を挿入するこ とにより作製した。線はS.ユベリス DNAを示し、箱はベクタ-pTZ18Rの多重クローニング部位を示す。サザンブロ ットまたはノーザンブロット実験に使用するプローブ断片は、斜線を引いた棒に より示される。矢印はlbp,mga’およびmgaの転写解読枠の位置を示す 。 図5A〜5D(配列番号3〜12)は、mgaのヌクレオチド配列とMgaの推 定アミノ酸配列、並びにmgaの下流のORFを示す。ヌクレオチドとアミノ酸 の番号は配列の右側に示される。推定アミノ酸配列はヌクレオチド配列の下に一 文字記号として示される。可能なATG開始コドンはボールド体で示され、そし て終止コドンは“*”により示される。推定−35および−10プロモーター配列並 びにシャイン−ダルガルノ配列(SD)も示される。 図6は、ハイブリダイゼーション分析に使うプローブと、DNA配列分析から 構成したLbpの構造(最上部)に示す。シグナルペプチド、高プロリン領域お よび膜貫通領域がそれぞれS,ProおよびTMで示される。A,BおよびC反復 領域も示される。ハイブリダイゼーションで使用するプローブは斜線を引いた棒 により地図の下に示される。 図7はS.ユベリスへの125I−bLf結合の経時変化を示す。109個の細菌を 0.2mlのPBS−1%BSA中6.9nMの125I−bLfと共にインキュベートした 。指示した時間間隔で細菌をペレットにし、そして細菌細胞に結合した125I− bLfの量を測定した。 図8は、放射性標識リガンドおよび競合相手としてbLf(33%鉄飽和のもの )を使った競合結合アッセイの結果を示す。%結合値は、未標識bLfの非存在 下でのPBS−1%BSA中に懸濁した細菌への125I−bLf結合に対する、 増加する量の未標識bLfの存在下での125I−bLf結合の比率として計算し た。挿入図:S.ユベリスへの125I−bLfの結合のスキャッチャードプロッ トおよび親和性(Kd)。直線は線形回析により分析した時の最大近似を表す。 270nMの未標識bLfの濃度が125I−bLf結合の50%置換を引き起こした(点 線で示す)。 図9は、S.ユベリスによるラクトフェリン結合の発現に対する鉄キレート化 剤の影響を示す。EDDA、ジピリジルまたはデスフェリオキサミンメシレートの有 無のもとTHB-YE中で増殖させた細胞を、0.2mlのPBS−1%BSA中6.9nMの12 5 I−bLfと共に室温で2時間インキュベートした。3回洗浄した後、細胞に 結合した放射能を測定した。 図10は、実施例3においてLbpの発現に使用する組換えプラスミドの物理的 地図である。プラスミドpLBP5は、ベクターpTZ18R中に3.7kbのS.ユベリス由来 のkDNAを含む。pLBP5からのSphI−RsaI断片をベクターpGH433中にサブクローニ ングすることによりプラスミドpGHLBPを作製した。Ptacはtacプロモーターの位 置を示す。Lbp遺伝子はlpbと標示した矢印により示される。 図11は、S.ユベリスへの125I−標識bLf結合に対する組換えbLf結合 タンパク質の阻害を示す。増加する量のE.コリpLBP5(●)またはE.コリpTZ 18R(○)の上清(sup.)と全細胞溶解物の混合物(同容量での)を、109個のS .ユベリス細胞と混合し、そして0.2ml容量中の0.69nM 125I−bLfと共にイ ンキュベートした。E.コリ試料を全く含まないPBS−1%BSA中に懸濁し たS.ユベリスに対するbLf結合の相対比率として阻害値を算出した。具体的記載 本発明のプラクチスは、特に断らない限り、当業者の技術の範囲内である分子 生物学、微生物学、組換えDNA技術および免疫学の常用技術を使用する。その ような技術は文献中に詳しく説明されて いる。例えばSambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第I,IIおよびIII巻,第二版(1989);DNA Cloning,第IおよびII巻(D.N .Glover編,1985);Oligonucleo-tide Synthesis(M.J.Gait編,1984);Nucleic Acid Hybridiza-tion(B.D.Hames&S.J.Higgins編,1984);Animal CellCultu re(R.K.Freshney編,1986);Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,1986) ;Perbal,B.,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);双書のMethod s in Enzymology(S.Colowick & N.Kaplan編,Academic Press,Inc.);およ びHandbook of Experimantal Immunology,第I〜IV巻(D.M.Weir & C.C.Blackw ell編,1986,Blackwell Scientific Publications)を参照のこと。A.定義 本発明を説明する上で、次の用語を使用するが、それは下記に記載のように定 義される。 本明細書および請求の範囲で使用する時、単数形として示すものは、その内容 を具体的に規定しない限り、複数のものも包含することに注意すべきである。例 えば、単に「Lbp」として言及されるものは、2以上のLbpの混合物を包含 する。 「ラクトフェリン結合タンパク質」、「Lg結合タンパク質」および「Lbp 」(これらは相互に交換可能に使われる)またはそれをコードするヌクレオチド 配列は、それぞれ、S.ユベリスlbp遺伝子より誘導される、タンパク質また はヌクレオチド配列を意味する。代表的なS.ユベリスlbp遺伝子のヌクレオ チド配列およびこの遺伝子によりコードされるLf結合タンパク質の対応アミノ 酸配列は、図2A〜2C(配列番号1〜2)に表される。しかしながら、S.ユ ベリスには数種類のサブタイプが知られており、S. ユベリスの株間でLf結合タンパク質の変異が起こるだろうから、ここに定義さ れるLf結合タンパク質は図面に記載の配列に限定されない。 更に、誘導されるタンパク質またはヌクレオチド配列は、上述した遺伝子から 物理的に誘導される必要はなく、例えば、本明細書中に提供される情報に基づい た、化学合成、単離(例えばS.ユベリスから)または組換え生産によるものを はじめとする、任意の方法で生成することができる。更に、そのような用語は、 免疫活性および/またはラクトフェリン結合活性を示す、前記遺伝子によりコー ドされる連続アミノ酸配列に対して「実質的に相同である」(この用語は下記に 定義される)アミノ酸配列を有するタンパク質を意味する。 かくして、前記用語はタンパク質の全長配列だけでなく、免疫原性配列、先端 が切り取られた配列および部分配列、並びに活性類似体および前駆体形を意味す る。また、この用語には、遺伝子の少なくとも約8個の連続塩基対、より好まし くは少なくとも10〜20個の連続塩基対、最も好ましくは少なくとも約25〜50個以 上の連続塩基対を含む、遺伝子のヌクレオチド断片が包含される。そのような断 片は下記に詳しく記載するようにプローブとしておよび診断方法において有用で ある。 前記用語は、プロセシング形、欠失形、シグナル配列およびそれをコードする 核酸配列も包含する。その上、この用語は膜固定領域を欠くLf結合タンパク質 、およびそのような欠失をコードする核酸配列も意味する。そのような欠失は、 タンパク質の分泌を行うものではない系において望ましいだろう。更に、ほぼN 末端の200コドンの中に見つかるLf結合領域は存在してもしなくてもよい。例 えば、Lf結合タンパク質をLfの精製に使うならば、Lf結合領 域は保持されるだろう。該タンパク質をワクチン組成物に使うつもりならば、L f結合領域を含むかまたは含まない免疫原性エピトープが存在するだろう。 前記用語は、調製方法によって、天然形のタンパク質または塩基性塩もしくは 酸付加塩の形のタンパク質も包含する。そのような酸付加塩は遊離アミノ基を含 み、そして塩基性塩は遊離カルボキシルとで形成される。医薬上許容される塩基 性塩および酸付加塩は下記に記載する。更に、該タンパク質は、脂質(該分子と 一緒に天然に存在する脂質と免疫活性を破壊しない別の脂質の両方)や糖質など の別の生物学的物質との結合により、または側鎖の修飾(例えばアミノ基のアセ チル化、ヒドロキシル側鎖のリン酸化、スルフヒドリル基の酸化、アミノ酸残基 のグリコシル化)により、あるいはコードされる一次配列の別の修飾により修飾 されてもよい。 従って、前記用語は、ポリペプチドが本明細書に定義されるような免疫応答を 生じる機能を果たす限り、配列に欠失、付加および置換を含むものを意味する。 この点で特に好ましい置換は、本質的に保存的な置換、例えばアミノ酸のファミ リー内で行われる置換であろう。例えば、アミノ酸は一般に次の4つのファミリ ーに分けられる:(1)酸性…アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性…リ ジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)無極性…アラニン、バリン、ロイシン、イ ソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;およ び(4)無荷電で極性…グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン 、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは 時々芳香属アミノ酸として分類されることがある。例えば、ロイシンからイソロ イシンもしくはバリンへの個々の置換、またはその逆;アスパラギン酸からグル タミン酸への置換、またはその逆;スレオニンからセリンへの 置換、またはその逆;あるいは1つのアミノ酸から構造的に類似した別のアミノ 酸への保存的置換は、生物活性に重要な影響を及ぼさないだろうと合理的に推測 できる。タンパク質の免疫原性に実質的に影響を及ぼさないようなわずかなアミ ノ酸置換を有すること以外は、標準分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するタ ンパク質は、標準ポリペプチドの定義の中に含まれる。 「乳腺炎」とは、S.ユベリスの存在によって引き起こされる、雌牛、雌羊、 ヤギ、雌豚、雌馬などをはじめとする哺乳動物の乳腺の炎症を意味する。この感 染は乳腺への食細胞の浸潤によりその症状を発現する。一般に、乳腺炎には次の 4つの臨床的類型が知られている:(1)乳腺の腫大、熱、痛みおよび異常分泌に 関係し、そして発熱や顕著な抑うつ、速くて弱い脈、くぼみ目、虚弱および完全 な食欲不振といった他の全身的傷害の徴候を伴う、超急性乳腺炎;(2)上記と同 様な乳腺の変化を有するが、発熱、食欲不振および抑うつが軽度から中度である 、急性乳腺炎;(3)全身的変化はないが、乳腺の変化とその分泌の変化をわずか に示す、実質性乳腺炎;および(4)乳腺炎の標準試験によってのみ炎症反応が検 出可能である、潜在性乳腺炎。 乳腺炎の検出のための標準試験としては、非限定的な例として、カリフォルニ ア州乳腺炎試験、ウィスコンシン州乳腺炎試験、ナガセ試験、乳汁中の持続性の 高白血球数を検出するのに使われる電気的細胞計数法および体細胞計数法が挙げ られる。一般に、乳汁中の体細胞数が約300,000〜約500,000個/ml以上である場 合、感染の存在を示すだろう。よって、例えば乳汁中の体細胞数が約500,000個 /ml以下に維持されるならば、ワクチンが乳腺炎の治療および/または予防に有 効であると考えられる。乳腺炎およびその診断の考察については、例えばThe Me rck Veterinary Manual.A Handbook of Diagnosis,Therapy,and Disease Prevention and Control for the Veteri narian,Merck and Co.,Rahway,New Jersey,1991を参照のこと。 「単離された」核酸分子は、その分子が天然に見つかる完全生物体から分離さ れた核酸分子;または本来はそれに付随する配列の全部もしくは一部を除去した 核酸分子;または天然に存在するが、それに関連した非相同配列(下記に定義す る)を有する配列である。 「サブユニットワクチン組成物」とは、着目の病原体からの抗原に由来するか またはそれと相同である、必ずしも抗原全部ではない、少なくとも1つの免疫原 性ポリペプチドを含む組成物を意味する。そのような組成物は完全な病原体細胞 もしくは粒子、またはそのような細胞もしくは粒子の溶解物を実質的に含有しな い。「サブユニット抗原組成物」は、少なくとも部分的に精製した(好ましくは 実質的に精製した)、病原体からの免疫原性ポリペプチド、またはそれの組換え 類似体から調製される。サブユニット抗原組成物は、病原体からのその他の抗原 またはポリペプチドを実質的に含まない、1もしくは複数の着目のサブユニット 抗原を含むことができる。 「エピトープ」とは、特定のB細胞および/またはT細胞が応答する抗原また はハプテン上の部位を言う。この用語はまた「抗原決定基」または「抗原決定部 位」と互いに交換可能に使われる。同一エピトープを認識する抗体は、標的抗原 に対する別の抗体の結合を阻止する1抗体の能力を示す簡単なイムノアッセイに おいて同定することができる。 組成物またはワクチンに対する「免疫応答」は、着目の組成物またはワクチン に対する宿主の細胞性および/または抗体依存性免疫応答の発生である。通常、 「免疫応答」としては、非限定的例として、次の作用の1つまたは複数が挙げら れる:着目の組成物または ワクチンに含まれる1もしくは複数の抗原に対して特異的に向けられた、抗体、 B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞傷害性T細胞 および/またはγδT細胞の産生。好ましくは、宿主は新たな感染に対する乳腺 の抵抗力が増強されそして/または病気の臨床的発症度が減少されるような治療 的または防御的免疫応答を示すだろう。そのような防御は、感染宿主において通 常表れる症状の減少もしくは消失、回復時間の短縮および/または感染した四肢 動物からの乳中の体細胞数の減少により証明されるだろう。 「免疫原性」タンパク質またはポリペプチドという用語は、上述した免疫応答 を惹起するアミノ酸配列を言う。「免疫原性」タンパク質またはポリペプチドは 、本明細書中で使用する時、シグナル配列、膜固定領域および/またはLf結合 領域を有するかまたは有しない、Lf結合タンパク質の全長配列;それの類似体 ;またはそれの免疫原性断片を包含する。「免疫原性」断片とは、1もしくは複 数のエピトープを含み、そのため上述した免疫応答を惹起するLf結合タンパク 質の断片を意味する。そのような断片は当該技術分野で周知である多数のエピト ープマッピング技術を使って同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,第66巻(Glenn,E.Morris編,19 96)Humana Press,Totowa,New Jerseyを参照のこと。例えば、直鎖状エピトー プは固体支持体上で多数のペプチド(これらのペプチドはタンパク質分子の一部 に相当する)を同時に合成し、そしてペプチドがまだ支持体上に固定されている 状態でペプチドを抗体と反応させることにより、決定することができる。そのよ うな技術は当該技術分野で知られており、例えば米国特許第4,708,871号明細書 ;Geysen他(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998-4002;Geysen他 (1986)Molec.Immunol.23:709-715に記載されている。同様に、例えばX線結 晶学や二次元核磁気共鳴法によってアミノ酸のコンフォメーションを決定するこ とにより、コンホメーションエピトープも容易に同定される。例えばEpitope Ma pping Protocols(前掲)を参照のこと。 本発明の目的上の免疫原性断片は、Lbp分子の通常少なくとも約3個のアミ ノ酸、好ましくは少なくとも約5個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも約10 〜15個のアミノ酸、最も好ましくは25個以上のアミノ酸を含むだろう。該断片の 長さに関しての臨界的上限はなく、タンパク質配列のほぼ全長を含んでなること ができ、またはLbpのエピトープを2つ以上含んで成る融合タンパク質でもあ ることができる。 「生来の」タンパク質またはポリペプチドは、タンパク質が天然に存在する源 より単離されたタンパク質またはポリペプチドを言う。「組換え」ポリペプチド は、組換えDNA技術により製造されたポリペプチド、即ち所望のポリペプチド をコードする外因性DNA構成物により形質転換された細胞から生産されたポリ ペプチドを言う。「合成」ポリペプチドは化学合成により調製されたものである 。 「ベクター」はレプリコン、例えばプラスミド、ファージまたはコスミドであ り、結合したセグメントの複製をもたらすように、それに別のDNAセグメント が結合されてもよい。 DNA「コード配列」または特定のタンパク質を「コードするヌクレオチド配 列」は、適当な調節因子の調節下に置いた時に試験管内もしくは生体内で転写さ れそしてポリペプチドに翻訳されるDNA配列である。コード配列の境界は、5 ’(アミノ)末端の開始コドンと3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによ って決定される。コード配列としては、非限定的に、原核生物配列、真核生物m RNAからのcDNA、真核生物(例えば哺乳類)DNAからのゲノムDNA配 列、および更に合成DNA配列を挙げることができる。転写終結配列は通常コー ド配列の3’側に置かれるだろう。 DNA「調節要素」は、プロモーター、リボソーム結合部位、ポリアデニル化 シグナル、転写終結配列、上流調節領域、エンハンサーなどを集合的に言い、こ れは、集合的に宿主細胞中でのコード配列の転写および翻訳に備える配列である 。所望の遺伝子が転写され翻訳され得る限り、それらの調節配列の全てが必ずし も組換えベクター中に存在しなくてもよい。 「作用可能に連結された」とは、そのように記載される成分が通常の機能を果 たすように配置されている要素の配置のことを言う。よって、コード配列に作用 可能に連結された調節要素は、コード配列の発現を行うことができる。調節要素 は、それらがコード配列の発現を指令する働きをする限り、コード配列と連続し ている必要はない。よって、例えば、プロモーターとコード配列の間に、転写さ れるが翻訳されない介在配列が存在してもよく、そのような場合でもまだプロモ ーターがコード配列に「作用可能に連結した」と見なすことができる。 プロモーターのような「調節要素」は、RNAポリメラーゼがプロモーターに 結合しそしてコード配列をmRNAに転写し、次いでそれが該コード配列により コードされるポリペプチドへと翻訳される時、細胞内でコード配列の「転写を指 令する」。 「宿主」細胞は、外因性核酸分子により形質転換されているか、または形質転 換することができる細胞である。 外因性DNAが細胞膜の内側に導入された時、細胞はそのような外因性DNA によって「形質転換」されている。外因性DNAは細胞のゲノムを構成している 染色体DNAに組み込まれてもよく(共 有結合で連結される)、組み込まれなくてもよい。原核生物や酵母では、例えば 外因性DNAはエピソーム要素、例えばプラスミド上に維持され得る。真核細胞 に関しては、安定して形質転換された細胞は、外因性DNAが染色体の複製を通 して娘細胞に遺伝するように、外因性DNAが染色体中に組み込まれた状態にな った細胞である。この安定性は、真核細胞が外因性DNAを含む娘細胞の集団か ら成る細胞系またはクローンを確立できることにより証明される。 「相同性」は、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド成分間の同 一性の比率を言う。ある成分から別の配列への配列間の一致は、当該技術分野で 既知の方法によって決定することができる。例えば、配列情報を整列しそして容 易に利用可能なコンピュータープログラム、例えばALIGN 〔Dayhoff,M.O.(197 8)Atlas of Protein Sequence and Structure :増補3,National Biomedica l Research Foundation,Washington,DC〕を使うことにより、2つのポリペプ チド分子間の配列情報の直接比較により、相同性を決定することができる。 あるいは、相同領域間で安定な二本鎖を形成する条件下で、ポリヌクレオチド をハイブリダイゼーションし、次いで一本鎖特異的ヌクレアーゼで消化し、そし て消化断片をサイズ測定することにより、相同性を決定することができる。2つ のDNA配列、または2つのポリペプチド配列は、上述した方法を使って調べた 時にそれらの2つの配列が分子の限定した長さに渡って少なくとも約80%〜85% 、好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%〜98%の配列 同一性を示す場合、互いに「実質的に相同」である。本明細書中で使用する時、 実質的に相同とは、特定のDNA配列またはポリペプチド配列に対して完全な同 一性を示す配列に対しても言う。実質的に相同であるDNA配列は、例えば、特 定の系について 限定されているように、緊縮条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験によ り同定することができる。適当なハイブリダイゼーション条件を限定することは 当業者の技術の範囲内である。例えば、Sambrook他(前掲);DNA Cloning(前 掲);Nucleic Acid Hybridization(前掲)を参照のこと。 「機能的に等価」という用語は、標準のLf結合タンパク質と同一であるLf 結合タンパク質により惹起される応答に比較して、あるLf結合タンパク質のア ミノ酸配列が実質的に同等のまたは増強された上記の免疫応答を惹起するもの、 またはそれの免疫原性部分であることを意味する。 DNA構成物の「非相同」領域は、本来は別のDNA分子と関連して見つから ないような別のDNA分子に連結されたまたはその中に含まれる同定可能なDN Aセグメントである。よって、非相同領域が細菌遺伝子をコードする時、該遺伝 子は通常、起源の細菌のゲノム中では該細菌遺伝子に隣接していないDNAによ って隣接されるだろう。非相同コード配列の別の例は、コード配列それ自体が天 然に見つからない構成物である(例えば、生来の遺伝子とは異なるコドンを有す る合成配列)。対立遺伝子変異または自然の突然変異現象は、本明細書中で使用 されるDNAの非相同領域をもたらさない。 本明細書中で使用する「処置」という語は、(i)感染もしくは再感染の防止( 予防)、または(ii)着目の病気の症状の軽減もしくは除去(治療)のいずれかを 指す。 本明細書中で使用する時、「生物学的試料」とは、非限定的例として血液、血 漿、血清、糞便、尿、骨髄、胆汁、髄液、リンパ液、皮膚試料、皮膚、呼吸器管 、腸管および生殖器管の外分泌液、涙液、唾液、乳汁、血液細胞、器官、生検材 料をはじめとする、被検体か ら単離された組織または体液の試料、並びに非限定的例として培地中での細胞お よび組織(例えば組換え細胞および細胞成分)の増殖から得られた順化培地をは じめとする試験管内細胞培養成分の試料のことを言う。 本明細書中で使用する時、「標識」および「検出可能な標識」という語は、非 限定的例として、放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、酵素、酵素基質、酵 素補因子、酵素阻害剤、発色団、色素、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例え ばビオチンまたはハプテン)等をはじめとする、検出可能な分子を指して言う。 「蛍光物質」とは、検出可能な領域で蛍光を発することができる物質またはその 部分を言う。本発明において使用することができる標識の具体例としては、フル オレセイン、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ルミ ノール、NADPHおよびαまたはβ−ガラクトシダーゼが挙げられる。B.一般法 本発明の中心は、S.ユベリスのウシLf結合タンパク質の発見である。S. ユベリスbLf結合タンパク質の遺伝子(“lbp”)を単離し、特徴づけ、そ してそれによりコードされるタンパク質を配列決定した。S.ユベリスbLf結 合タンパク質の完全DNA配列およびアミノ酸配列は図2A〜2C(配列番号1 〜2)に示される。特に、実施例において記載するように、561アミノ酸残基を コードする図2A〜2C(配列番号1〜2)の残基232〜1914に示される1683bp の単一ORFが、それぞれ76kDaおよび165kDaの分子量を有する、ウシラクトフ ェリンを結合できる2つのタンパク質種を与える。尿素処理の結果単一バンドを 生じ、そしてS.ユベリスにおいてだけでなく、Lf結合タンパク質をコードす る構成物に より形質転換された組換えE.コリにおいても、ノーザンブロット分析が単一の 主要転写物を示すことから、165kDaタンパク質は多分76kDaタンパク質の二量体 であろう。 S.ユベリスのウシLF結合タンパク質は、約50アミノ酸の推定N末端シグナ ルペプチドを含む(翻訳開始が図2Aの最初のATGコドンで始まるとすると) 。シグナルペプチドを含む全長ウシLf結合タンパク質は、図2A〜2C(配列 番号1〜2)のアミノ酸位置1〜561(ヌクレオチド位置232〜19141によりコー ドされる)に見つかる。シグナルペプチドを含まない成熟タンパク質は、図2A 〜2Cのアミノ酸位置52〜561(ヌクレオチド位置445〜1914)に見つかる。図2 A〜2C(配列番号1〜2)に示されるように、C末端に膜固定モチーフも存在 する。ウシLf結合領域は、分子中の200コドンN末端領域に存在する。このタ ンパク質はジスルフィド結合を含まないようである。 実施例に示される通り、S.ユベリスへの125I−bLfの結合は時間依存性 であり、そして未標識のbLFにより置換可能であった。アポbLfは、鉄飽和 bLfと同じくらい効率的に125I−bLf結合を阻害する。ウシトランシフェ リン、ヒトラクトフェリンおよびヒトトランスフェリンはbLf結合を妨害しな い。スキャッチャードプロットは直線状であり、そして約7800の結合部位が1.0 ×10-7Mの親和力で各細菌細胞により発現される。鉄利用能の減少はbLfによ るS.ユベリスの飽和を有意に変更しない。ヒトLfがウシLfの結合を有意に 阻害しないようであることから、本明細書中に記載のbLf結合タンパク質はラ クトフェリン種特異的である。 S.ユベリスのLf結合タンパク質は、Tbp1およびTbp2と呼ばれる2 種類の別個のトランスフェリン結合タンパク質から成 りそして株によって分子量が68〜105kDaと異なるヘモフィルス(Haemophilus) やナイセリア(Neisseria)種のトランスフェリンレセプターとは異なる。同様 に、S.アウレウス(S.aureus)のウシLfレセプターは、92kDaと67kDaの推 定分子量を有する2種類のbLf結合タンパク質から成り〔Naidu他(1991)J. Dairy Sci.74:1218-1226〕、従って本明細書中に記載のレセプターとは異なる と思われる。また、本明細書中に記載の連鎖球菌Lf結合タンパク質は、還元SD S-PAGEゲル条件下で67kDaと62kDaの2成分に分かれる約450kDaタンパク質である S.アウレウスヒトLf結合タンパク質とも異なるようである。 S.ユベリスbLf結合タンパク質の一次および二次構造の分析は、それがM 様タンパク質であることを示唆する。特に、MおよびM様タンパク質の正の調節 因子であるA群連鎖球菌mgaと相同の遺伝子が、lbpの上流の隣接領域に見 つかった。サザンブロット分析はlbpを含む試験した全てのS.ユベリス株に おいてmgaが存在することを示す。 S.ユベリスmgaの配列およびそれからのタンパク質生成物は図5A〜5D (配列番号3〜12)に与えられる。ヌクレオチド361〜363のATG開始コドンか ら始まりそしてヌクレオチド1858〜1860のTAAコドンで終わる推定遺伝子産物 Mgaは、58,454Daの計算分子量を有する499アミノ酸残基から成る。Mgaの N末端はシグナルペプチドの特徴を持たず、それが細胞質タンパク質であること を示唆する。mgaの開始コドンより上流に推定リボソーム結合部位AGGAGAがあ る。図5A〜5D(配列番号3〜12)に示されるように、−35および−10プロモ ーターモチーフに似た配列も同定された。 S.ユベリスLf結合タンパク質、それの免疫原性断片またはそ れを含むキメラタンパク質は、哺乳類、例えばウシ、ウマ、ヒツジおよびヤギ種 において、S.ユベリスにより引き起こされる細菌感染(乳腺炎を含む)を治療 または予防するためのサブユニットワクチンとして提供することができる。ワク チン組成物における使用に加えて、そのようなタンパク質およびそれの断片、そ れに対する抗体、並びにそれをコードする遺伝子は、哺乳類被検体において感染 の存在を検出するための診断薬として使用することができる。同様に、該タンパ ク質をコードする遺伝子はクローニングすることができ、そして別の細菌株にお いて相同遺伝子を検出および単離するためのプローブをデザインするのに使用す ることができる。例えば、少なくとも約15〜20ヌクレオチド、より好ましくは約 20〜50ヌクレオチド、最も好ましくは約60〜100以上のヌクレオチドを含んで成 る断片をそれらの態様において利用することができるだろう。S.ユベリスLf 結合タンパク質は、それを発現する連鎖球菌種および組換え宿主細胞からウシL fを精製するのにも利用できる。 S.ユベリスLf結合タンパク質は単独でまたは別の細菌、真菌、ウイルスも しくは原核生物の抗原と組み合わせてワクチン組成物に使用することができる。 それらの抗原は、別々にまたは1もしくは複数のそれらの抗原に融合されたLf 結合タンパク質の1もしくは複数のエピトープを含んで成る融合タンパク質とし て提供することができる。例えば、S.ユベリスからの別の免疫原性タンパク質 、例えばCAMP因子、ヒアルロン酸莢膜、ヒアルロニダーゼ、R様タンパク質およ び活性化因子を、Lf結合タンパク質と一緒に投与することができる。更に、乳 腺炎に関係する別の生物からの免疫原性タンパク質、例えば、スタフィロコッカ ス属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属、ノカルジア属、クロストリジ ウム属、マイミコバクテリア属、マイコプラズマ属、パスツレラ属、プロトセカ 属、 別の連鎖球菌属、大腸菌、並びに酵母菌からの免疫原性タンパク質を、本明細中 に記載のbLf結合タンパク質と一緒に投与することができる。例えば、スタフ ィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ アガラクテイエ(Streprococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガ ラクテイエ(Streprococcus dysgalactiae)、ストレプトコッカス・ズウエピデ ミカス(Streptococcus zooepidemicus)、コリネバクテリウム・ピオゲネス(C orynebacterium pyogenes)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aer uginosa)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、クロストリ ジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、エシェリキア・コ リ(Escherichia coli)、エンテロバクター・エロゲネス(Fnterohacter aerog enes)およびクレブシエラ(Klehsiella)種からの免疫原性タンパク質を、本発 明のbLf結合タンパク質と一緒に投与することができる。 LF結合タンパク質の製造 上述したLF結合タンパク質並びにそれから誘導される活性断片、類似体およ びキメラタンパク質は様々な方法により製造することができる。具体的には、L F結合タンパク質はそれを発現する細菌から直接単離することができる。これは まず細胞成分と数種類の外来のタンパク質を含まない粗抽出物を調製することに より達成される。次いで所望のタンパク質を、例えばカラムクロマトグラフィー 、HPLC、免疫吸着技術または当該技術分野において周知である他の常法により、 更に精製することができる。 あるいは、本明細書中に記載されるようにして該タンパク質を組換え生産する ことができる。上記に説明したように、それらの組換え生産物は、部分タンパク 質配列、全長配列、シグナルペプチドを 含む前駆体形、シグナルペプチドを含まない成熟形、または融合タンパク質(例 えば、組換え宿主のための適当なリーダー配列との融合タンパク質、あるいはス トレプトコッカスまたは別の病原体のための別のサブユニット抗原配列との融合 タンパク質)の形をとることができる。 本発明のlbp遺伝子は、LFを結合するタンパク質生成物の能力に基づいて 、後述するようなLF結合アッセイを使って単離することができる。こうして、 遺伝子ライブラリーを作製し、得られたクローンを用いて適当な宿主細胞を形質 転換せしめることができる。コロニーをプールし、LF結合活性を有するクロー ンについてスクリーニングすることができる。また、LF結合タンパク質に対す るポリクローナル血清またはモノクローナル抗体を使って、コロニーをスクリー ニングすることもできる。 あるいは、アミノ酸配列が決定されれば、その決定されたアミノ酸配列の一部 に対するコドンを含むオリゴヌクレオチドプローブを調製し、そのプローブを用 いて目的のタンパク質をコードする遺伝子についてゲノムライブラリーまたはc DNAライブラリーをスクリーニングすることができる。オリゴヌクレオチドプ ローブおよびcDNAライブラリーの調製の基本方法、並びに核酸ハイブリダイ ゼーションによるそれらのスクリーニングは、当業者に周知である。例えばDNA Cloning:第I巻(前掲);Nucleic Acid Hybridization(前掲);Oligonucleot ide Synthesys(前掲);Samblook他(前掲)を参照のこと。スクリーニングし たライブラリーから陽性ハイブリダイゼーションによって1つのクローンが同定 されれば、制限酵素分析およびDNA配列分析により、特定のライブラリー挿入 断片がLF結合タンパク質遺伝子またはそれの相同物を含むことを確認すること ができる。次いで標準技術を使って、そして所望であれ ば全長配列の一部を削除するためにPCR法または制限酵素を使って、該遺伝子 を単離することができる。 同様に、既知技術、例えばフェノール抽出を使って、細菌から遺伝子を直接単 離し、そして配列を更に操作して任意の所望の変更を行うことができる。DNA を獲得しそして単離するのに使われる技術の説明については、例えば、Sambrook 他(前掲)を参照のこと。 あるいは、着目のタンパク質をコードするDNA配列をクローニングするので はなくて合成により調製することができる。特定のアミノ酸配列をコードする適 当なコドンを用いてDNA配列をデザインすることができる。一般に、その配列 を発現に使うつもりであれば、意図する宿主に好ましいコドンが選択されるだろ う。標準法により調製した重複するオリゴヌクレオチドから完全な配列を集成し て完全なコード配列を構築することができる。例えば、Edge(1981)Nature 292 :756;Nambair他(1984)Science 223:1299;Jay他(1984)J.Biol.Chem.259:6 311を参照のこと。 所望のタンパク質のコード配列が調製または単離されたら、それらを適当なベ クターまたはレプリコン中でクローニングすることができる。多数のクローニン グベクターが当業者に知られており、適当なクローニングベクターの選択は好み の問題である。クローニング用の組換えDNAベクターおよびそれらにより形質 転換することができる宿主細胞の例としては、バクテリオファージλ(E.コリ )、pBR322(E.コリ)、pACYC177(E.コリ)、pKT230(グラム陰性菌)、pG Y1106(グラム陰性菌)、pLAFR1(グラム陰性菌)、pME290(E.コリ以外のグ ラム陰性菌)、pHV14(E.コリおよびバシラス・サチリス)、pBD9(バシラス )、pIJ61(ストレプトマイセス)、pUC6(ストレプトマイセス)、YIp5(サッ カロミセス)、YCp19(サッカロミセス)およびウシ乳頭腫ウイルス(哺乳動物 細 胞)が挙げられる。Sambrook他(前掲);DNA Cloning(前掲):B.Perbal(前 掲)を参照のこと。 所望のタンパク質をコードするDNA配列が、この発現構成物を含むベクター により形質転換された宿主細胞中でRNAに転写されるように、遺伝子をプロモ ーター、リボソーム結合部位(細菌発現用)および場合によりオペレーター(本 明細書中では総称的に「調節」要素と呼ばれる)の調節下に置くことができる。 コード配列はシグナルペプチドまたはリーダー配列を含んでも含まなくてもよい 。シグナル配列が含まれるならば、それは生来の配列、相同配列、または非相同 配列であることができる。例えば、S.ユベリスLF結合タンパク質のシグナル 配列(図2Aに示される)はそれの分泌に用いることができ、当該技術分野で周 知である多数の他のシグナル配列も同様に用いることができる。リーダー配列は 翻訳後プロセシングにおいて宿主により除去され得る。例えば、米国特許第4,43 1,739号;同第4,425,437号;同第4,338,397号明細書を参照のこと。 宿主細胞の増殖に関係するタンパク質配列の発現の調節に備える別の調節配列 も望ましいことがある。調節配列は当業者に知られており、その例としては化学 的または物理的剌激物質(例えば調節化合物の存在)に応答して遺伝子の発現を 開始または停止させるものが挙げられる。 調節配列および別の制御配列は、ベクター(例えば上述のクローニングベクタ ー)中に挿入される前にコード配列に連結されてもよい。あるいは、既に調節配 列と適当な制限部位を含む発現ベクター中にコード配列を直接クローニングせし めることができる。 コード配列が適当な方向で調節配列に結合されるように、すなわち正しい読み 枠を維持するように、コード配列を修飾することが必要なことがある。LF結合 タンパク質の変異体または類似体を産生 せしめることが望ましいこともある。変異体または類似体は、タンパク質をコー ドする配列の一部の除去、或る配列の挿入および/または該配列中の1もしくは 複数のヌクレオチドの置換により調製することができる。ヌクレオチド配列を修 飾する技術、例えば部位特異的突然変異誘発は、例えばSambrook他(前掲);DN A Cloning(前掲);Nucleic Acid Hybridization(前掲)を参照のこと。 次いで発現ベクターを用いて適当な宿主細胞を形質転換せしめる。多数の哺乳 動物細胞系が当該技術分野において知られており、そのような細胞系としてはア メリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能な不死化細 胞系、例えば非限定的例として、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Hera 細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞 (例えばHep G2)、マディン−ダービィ(Madin-Darhy)ウシ腎臓(MDBK)細胞 などが挙げられる。同様に、細菌宿主、例えばE.コリ(E.coli)、バシラス・ サチリス(Bacillus subtilis)およびストレプトコッカス(Streptococcus)種 も本発明の発現構成物と共に使用されるだろう。本発明において有用な酵母宿主 としては特に、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、カ ンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・マルトーサ(Candida Ealtosa)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロ ミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロミセス・ラクティ ス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・ギレリモンディ(Pichia guillerimondi i)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ( Schizosaccharomyces pombe)およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipo lytica)が挙げられる。バキュロウイルス発現ベクターと共に用いられる昆虫細 胞としては、特に、ネッタイ シマカ(Aedes aegypti)、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa cali fornica)、カイコガ(Bombyx mori)、キイロショウジョウバエ(Drosophila m elanogaster)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)および トリコプルシア・ニイ(Trichoplusia ni)が挙げられる。 選択される発現系と宿主に依存して、本発明のタンパク質は、上述した発現ベ クターにより形質転換された宿主細胞を着目のタンパク質か発現される条件下で 培養することにより調製される。次いで宿主細胞からタンパク質を単離しそして 精製する。発現系がタンパク質を増殖培地中に分泌するのであれば、該タンパク 質を培地から直接精製することができる。タンパク質が分泌されないのであれば 、それは細胞溶解物から単離される。適当な増殖条件および回収方法の選択は当 業者の技術の範囲内である。 本発明のタンパク質は、着目の遺伝子のDNA配列から誘導されるアミノ酸配 列または既知のアミノ酸配列を使って、固相ペプチド合成のような化学合成によ り製造してもよい。そのような方法は当業者に周知である。例えば、固相ペプチ ド合成技術については、J.M.Stewart & J.D.Young,Solid Phase Peptide Sy nthesis,第2版,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL(1984)とG.Barany & R .B.Merrifield,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,E.Gross & J .Meienhofer編,第2巻,Academic Press,New York(1980)3-254頁を;典型 的な液相合成については、M.Bondansky,Principles of Peptide Synthesis,S pringer-Verlag,Berlin(1984)とE.Gross & J.Meienhofer編,The Peptides:A nalysis,Synthesis,Biology,前掲,第1巻を参照のこと。問題の抗原の小断 片が着目の被検体において免疫応答を惹起することができる場合には、ペプチド の化学合成が好ましいかもしれない。 本発明のLF結合タンパク質またはそれらの断片を使って、ポリクローナル抗 体とモノクローナル抗体の両方を生産せしめることができる。ポリクローナル抗 体を所望するならば、特定の哺乳類(例えばマウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど) を本発明の抗原、それの断片または変異抗原で免疫処置する。既知の方法に従っ て、免疫処置動物から血清を収集しそして処理する。例えば、Jurgens他(1985 )J.Chrom.348:363-370を参照のこと。ポリクローナル抗体を含む血清を使用 するならば、既知の方法を使って免疫アフィニティークロマトグラフィーにより ポリクローナル抗体を精製することができる。 LF結合タンパク質およびその断片に対するモノクローナ抗体も、当業者によ り容易に調製することができる。ハイブリドーマ技術を使ったモノクローナル抗 体の調製の一般的方法論は周知である。細胞融合により、あるいは腫瘍遺伝子D NAによるBリンパ球の直接形質転換またはエプスタイン−バー(Epstein-Barr )ウイルスによるトランスフェクションといった他の技術により、不死化された 抗体産生細胞系を作製することができる。例えば、M.Schreier他,Hybridoma T echniques(1980);Hammerling他,Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridom as(1981);Hennett他,Monoclonal Antibodies(1980);更には米国特許第4,341, 761号、同第4,399,121号、同第4,427,783号、同第4,444,887号、同第4,452,570 号、同第4,466,917号、同第4,472,500号、同第4,491,632号および同第4,493,890 号明細書を参照のこと。 LF結合タンパク質またはそれの断片に対して産生されたモノクローナル抗体 のパネルを、様々な性質、即ちイソタイプ、エピトープ、親和性などについてス クリーニングすることができる。モノクローナル抗体は、免疫アフィニティー技 術を使って、それらの抗体 が向けられる個々の抗原を精製するのに有用である。ポリクローナル抗体とモノ クローナル抗体は共に受動免疫処置にも使うことができ、または免疫応答を増強 するためにサブユニットワクチン製剤と組み合わせることができる。ポリクロナ ール抗体とモノクローナル抗体は両者とも診断目的に有用である。 ワクチン製剤および投与 本発明のLF結合タンパク質は、単独でまたは別の抗原と組み合わせて、後述 のように被検体を免疫処置するために使われるワクチン組成物に製剤化すること ができる。そのような製剤の調製方法は、例えばRemington's Pharmaceutical S ciences,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,第18版,1990に記 載されている。典型的には、本発明のワクチンは、液体溶液または懸濁液の注射 剤として調製される。注射前に液体賦形剤中に溶解または懸濁するのに適当な固 体形を調製してもよい。該製剤は乳化されてもよくまたはリポソーム賦形剤中に 活性成分が封入されてもよい。一般に免疫原性活性成分は、適合性の医薬賦形剤 、例えば水、塩類溶液、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなどおよびそれら の混合物と混合される。所望であれば、更に、賦形剤は少量の補助物質、例えば 湿潤剤、乳化剤およびpH緩衝剤を含んでもよい。 ワクチンの効能を高めるアジュバントをワクチン製剤に添加してもよい。アジ ュバントとしては、例えば、ムラミルジペプチド、アブリジン、水酸化アルミニ ウム、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、油、水中油型乳濁液、 サポニン、サイトカイン、および当業界で既知である他の物質が挙げられる。 LF結合タンパク質はその免疫原性を増強するために担体(キャリヤー)に連 結することができる。適当な担体としては、血清アルブミン、アオガイヘモシア ニン、免疫グロブリン分子、チログロブ リン、オボアルブミンおよび当業者に周知の他のタンパク質をはじめとするタン パク質;多糖類、例えばセファロース、アガロース、セルロース、セルロースビ ーズなど;アミノ酸ポリマー、例えばポリグルタミン酸、ポリリジンなど;アミ ノ酸コポリマー;および不活性ウイルス粒子、のようなゆっくり代謝される巨大 分子が挙げられる。 LF結合タンパク質は生来の形で使用されてもよく、あるいはそれらに含まれ る官能基成分が例えばリジン残基のスクシニル化により、またはCys−チオラク トンとの反応により、修飾されてもよい。例えばアミノ機能と2−イミノチオラ ンまたは3−(4−ジチオピリジル)プロピオネートのN−ヒドロキシスクシン イミドエステルとの反応により、担体(または抗原)中にスルフヒドリル基が組 み込まれてもよい。ペプチドの付着のために適当な担体を修飾してスペーサーア ーム(例えばヘキサメチレンジアミンまたは同様な大きさの他の二価性分子)を 組み込んでもよい。 本発明のLF結合タンパク質に適当な他の担体としては、米国特許第5,071,65 1号明細書に開示されたようなロタウイルスのVP6ポリペプチドまたはそれの 機能性断片が挙げられる。米国特許第4,722,840号明細書に開示された方法によ り調製されたウイルスタンパク質と目的の免疫原との融合生成物も有用である。 更に別の適当な担体としては、細胞の形での提示が被検体の生来の提示形態を模 倣し、免疫状態をもたらすので、細胞、例えばリンパ球が挙げられる。あるいは 、本発明のタンパク質は赤血球、好ましくは被検体自身の赤血球に結合させるこ とができる。ペプチドをタンパク質または細胞に結合させる方法は当業者に周知 である。 更に、LF結合タンパク質(またはそれの複合体)は、中性の形でまたは塩の 形でワクチン組成物に製剤化することができる。医薬 上許容される塩としては、活性ポリペプチドの遊離アミノ基とで形成される酸付 加塩、および無機酸(例えば塩酸もしくはリン酸)とまたは酢酸、シュウ酸、酒 石酸、マンデル酸などのような有機酸とで形成される酸付加塩が挙げられる。遊 離カルボキシル基から形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリ ウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機 塩基から、およびイソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエ タノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から誘導されてもよい 。 ワクチン製剤は、活性成分の「治療有効量」、即ち組成物を投与した被検体に 免疫応答を惹起せしめることができる量を含むだろう。乳腺炎の治療および予防 においては、例えば「治療有効量」は、好ましくは新たな感染に対する乳腺の抵 抗力を高めそして/または該病気の臨床的発症度を減少させる量であろう。その ような保護は感染宿主に通常表れる症状の減少もしくは消失、回復時間の短縮お よび/または感染宿主からの乳汁中の体細胞数の低下のいずれかにより証明され るだろう。例えば、乳汁中の体細胞数(SCC)を、国際酪農連盟(Internatio nal Daiyr Federation)により設定された閾値(限界値)である約500,000細胞 /mlより低く(これ以上では動物が臨床上乳腺炎を有すると見なされる)保持ま たは誘導する組成物の能力が、治療効果の指標であろう。 正確な量は、標準試験を使って当業者により容易に決定される。LF結合タン パク質濃度は、典型的には組成物の約1%〜約95%(w/w)の範囲内であるが、 適当ならばそれより高くても低くてもよい。本発明のワクチン製剤では、動物あ たり1〜3mlの量を投与する時、注射液1mlあたり20〜500μgの活性成分が免疫 応答を生じさせるのに適当であろう。 被検体を免疫処置するために、ワクチンは通常非経口的に、普通は筋肉内注射 により投与される。しかしながら、皮下、腹腔内および静脈内注射のような別の 投与方法も受け入れられる。投与すべき量は、処置する予定の動物、抗体を合成 する動物の免疫系の容量、および所望される保護の程度に依存する。有効量は、 用量応答曲線を作成する日常的試験を通して当業者が容易に決定することができ る。少なくとも1用量で、好ましくは2用量でワクチンを投与することにより被 検体を免疫処置する。更に、感染に対する免疫の状態を維持するために要求され るのと同じくらいの用量を動物に投与してもよい。 別の投与方法に適当な追加のワクチン製剤としては、坐剤、ある場合にはエー ロゾル剤、経鼻製剤、経口製剤および徐放性製剤が挙げられる。坐剤の場合には 、ワクチン組成物は典型的な結合剤と担体、例えばポリアルカリングリコールま たはトリグリセリドを含むだろう。そのような坐剤は、約0.5%〜約10%(w/w)、 好ましくは約1%〜約2%の範囲の活性成分を含有する混合物から調製すること ができる。経口賦形剤としては、例えば、医薬品用のマンニトール、ラクトース 、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンセルロースナトリウム、炭 酸マグネシウム等のような常用の佐剤が挙げられる。それらの経ロワクチン組成 物は液剤、懸濁液剤、錠剤、ピル剤、カプセル剤、徐放性製剤または粉剤の剤形 をとることができ、そして約10%〜約95%、好ましくは約25%〜約70%の活性成 分を含むことができる。 経鼻製剤は通常、鼻粘膜に刺激を引き起こさず且つ繊毛機能を有意に妨害しな い賦形剤を含むだろう。水、食塩水または他の既知の物質のような希釈剤を本発 明において使用することができる。経鼻製剤は保存剤、例えば非限定的例として クロロブタノールおよび塩 化ベンザルコニウムを含んでもよい。鼻粘膜による目的タンパク質の吸収を増加 させるために界面活性剤が存在してもよい。 徐放性または持続性製剤は、リポソーム、非再吸収性不透性ポリ コポリマー)、膨潤性ポリマー(例えばヒドロゲル)または再吸収性ポリマー( 例えばコラーゲンおよび或る種の多酸もしくはポリエステル、例えば再吸収性縫 合を行うのに使われるもの)のような担体または賦形剤中にタンパク質を導入す ることにより製造される。LF結合タンパク質は、当業界で周知の埋没型ミニポ ンプを使って提供することもできる。 本発明のLF結合タンパク質は、それを発現するキャリヤーウイルスを介して 投与することもできる。本発明において使用されるであろうキャリヤーウイルス としては、非限定的例として、ワクシニアウイルスおよび他のポックスウイルス 、アデノウイルス、並びにヘルペスウイルスが挙げられる。一例として、新規タ ンパク質を発現するワクシニア組換えウイルスは次のようにして作製することが できる。まず、特定のタンパク質をコードするDNAを、それがワクシニアプロ モーターおよび隣接ワクシニアDNA配列〔例えばチミジンキナーゼ(TK)を コードする配列〕に隣接するように、適当なベクター中に挿入する。次いで、こ のベクターを用いて細胞をトランスフェクトせしめると同時に細胞をワクシニア に感染させる。相同組換えが、ワクシニアプロモーターと着目のタンパク質をコ ードする遺伝子をウイルスゲノム中に挿入する働きをする。細胞を5−ブロモデ オキシウリジンの存在下で培養しそしてそれに耐性であるウイルスプラークを摘 み取ることにより、生成したTK-組換え体を選択することができる。 別の投与経路は、遺伝子治療または核酸免疫処置を含む。目的の LF結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(および付随の調節要素)を 、それの生体内翻訳のために被検体に直接投与することができる。あるいは、被 検体の細胞または組織を生体外でトランスフェクトし、そして宿主中に形質転換 物質を再導入することにより、遺伝子伝達を行うことができる。DNAは例えば 注射により、宿主生物に直接導入することができる〔国際出願公開No.WO 90/1 1092;およびWolff他(1990)Science 247:1465-1468を参照のこと〕。リポソー ム媒介遺伝子伝達も既知の方法を使って行うことができる。例えば、Hazinski他 (1991)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.4:206-209;Brigham他(1989)Am.J .Med.Sci.298:278-281;Canonico他(1991)Clin.Res.39:219A;およびNabel 他(1990)Scicence 249:1285-1288を参照のこと。標的指向物質、例えば特定の細 胞型の表面上に発現された表面抗原に対して向けられた抗体をリポソーム表面に 共有結合せしめて、感染に対し感受性である特異的組織および細胞に核酸を伝達 することができる。 診断アッセイ 上述した通り、本発明のLF結合タンパク質は、S.ユベリス感染の存否を調 べるために生物学的試料中のS.ユベリスの反応性抗体の存在を検出する診断薬 としても利用することができる。例えば、LF結合タンパク質と反応性である抗 体の存在は、標準的電気泳動技術および免疫診断技術、例えばイムノアッセイ、 例えば競合アッセイ、直接反応アッセイまたはサンドイッチ型アッセイを使って 検出することができる。そのようなアッセイとしては、非限定的例として、ウエ スタンブロット;凝集試験;酵素標識および酵素媒介イムノアッセイ、例えばEL ISA;ビオチン/アビジン型アッセイ;放射免疫アッセイ;免疫電気泳動法;免 疫沈澱法などが挙げられる。反応は一般的に標識、例えば蛍光標識、化学発光標 識、放射性標識、 酵素標識または色素分子の検出、あるいは抗原およびそれと反応する1または複 数の抗体の間の複合体の形成を検出する別の方法を含む。 上述したアッセイは、通常、抗原−抗体複合体が結合している固相支持体から 液相中の未結合抗体を分離することを必要とする。本発明の実施に使用すること ができる固体支持体としては、ニトロセルロース(例えば膜またはマイクロタイ ターウエルの形の);ポリ塩化ビニル(例えばシートまたはマイクロタイターウ エルの形の);ポリスチレンラテックス(例えばビーズまたはマイクロタイター プレートの形の);ポリフッ化ビニリデン;ジアゾ紙;ナイロン膜;活性ビーズ ;磁気性ビーズなどが挙げられる。 典型的には、まず固体支持体を、固相成分が該支持体に十分に固定化されるよ うな適当な結合条件下で、固相成分(例えば1または複数のLF結合タンパク質 )と反応させる。はじめに抗原を良好な結合性を有するタンパク質に結合させる ことにより、支持体への抗原の固定化を増強することができる場合がある。適当 な結合用タンパク質としては、非限定的に、巨大分子、例えば血清アルブミン〔 ウシ血清アルブミン(BSA)を含む〕、アオガイヘモシアニン、免疫グロブリ ン分子、チログロブリン、オボアルブミン、および当業者に周知である他のタン パク質が挙げられる。抗原を支持体に結合するために利用することができる他の 分子としては、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミ ノ酸コポリマーなどが挙げられる。そのような分子とそれらの分子を抗原にカッ プリングさせる方法は当業者に周知である。例えば、Brinkley,M.A.,Bioconj ugate Chem.(1992)3:2-13;Hashida他,J.Appl.Biochem(1984)6:56-63;およ びAnjaneyulu & Staros,Interna-tional J.of Peptide and Protein Res.(19 87)30:117-124を参 照のこと。 固相支持体を固相成分と反応させた後、固定化されない固相成分を洗浄によっ て支持体から除去し、次いで支持体に結合した成分を、適当な結合条件下で、リ ガンド成分(例えば固定化抗原に対する抗体)を含むと思われる生物学的試料と 接触させる。結合しなかったリガンドを除去するために洗浄した後、結合したリ ガンドに選択的に第二の結合剤が結合することができるような適当な結合条件下 で、第二の結合剤成分を添加する。次いで、当該技術分野で周知の技術を使って 、第二の結合剤の存在を検出することができる。 より詳しくは、マイクロタイタープレートのウエルをLF結合タンパク質でコ ーティングしたELISA法を利用することができる。抗LF結合タンパク質免疫グ ロブリン分子を含むかまたは含むと思われる生物学的試料を、コーティングした ウエルに添加する。抗体を固定化抗原に結合させるのに十分なインキュベーショ ン期間の後、プレートを洗浄して未結合成分を除去し、そして検出可能に標識さ れた第二の結合分子を添加する。第二の結合分子を捕捉された任意の試料抗体と 反応させた後、プレートを洗浄し、そして当該技術分野で周知の方法を使って第 二の結合分子の存在を検出する。 特定の一態様では、生物学的試料からの結合した抗LF結合抗原リガンドの存 在は、抗体リガンドに対して向けられた抗体を含んで成る第二の結合剤を使って 、容易に検出することができる。多数の抗ウシ免疫グロブリン(Ig)分子が当 該技術分野で知られており、当業者に周知の方法を使って、それを検出可能な酵 素標識、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはウ レアーゼに容易に接合することができる。適当な酵素基質を用いて検出可能なシ グナルを生成せしめる。別の関連の態様では、当業者に既知の方法を使って競合 型ELISA技術を実施することができる。 アッセイは、LF結合タンパク質とそのタンパク質に特異的な抗体とが沈澱条 件下で複合体を形成するように、溶液中で実施することもできる。特定の一態様 では、当業者に既知のカップリング技術を使って、例えば直接化学カップリング または間接カップリングにより、LF結合タンパク質を固相粒子(例えばアガロ ースビーズなど)に付着させることができる。次いで、抗原をコーティングした 粒子を、適当な結合条件下で、LF結合タンパク質に対する抗体を含むと思われ る生物学的試料と接触させる。結合抗体同士での架橋結合が粒子−抗原−抗体複 合体凝集物の形成を引き起こし、その凝集物を沈澱させそして洗浄および/また は遠心分離を用いて試料から分離することができる。多数の標準法のいずれかを 使って、例えば上述した免疫診断法を使って、反応混合物を分析して抗体−抗原 複合体の存否を決定することができる。 更に別の態様では、抗LF結合分子を含むと思われる生物学的試料からの抗体 のポリクローナル集団が支持体に固定化される、免疫アフィニティー母材を提供 することができる。この場合には、固定化抗原を使って試料の初期アフィニティ ー精製を実施することができる。得られた試料調製物は抗S.ユベリス成分のみ を含み、アフィニティー支持体の潜在的非特異的結合性を回避するだろう。高収 率で且つ抗原結合活性の良好な保持率で免疫グロブリン(完全な断片または特定 断片)を固定化する方法が当該技術分野で多数知られている。特定の方法により 限定されることなく、固定化プロテインAまたはプロテインGを使って免疫グロ ブリンを固定化することができる。 従って、免疫グロブリン分子が固定化されて免疫アフィニティー母材が提供さ れたら、適当な結合条件下で、標識LF結合タンパク質が結合抗体と接触せしめ られる。非特異的に結合した抗原を免疫 アフィニティー支持体から洗い流した後、当該技術分野で既知の方法を使って標 識についてアッセイすることにより、結合した抗原の存在を測定することができ る。 LF結合タンパク質またはそれに対する抗体をはじめとする上述したアッセイ 試薬は、適当な使用説明書や上述のイムノアッセイをおこなうために必要な他の 試薬と一緒に、キットの形で提供することができる。このキットは更に、使用す る特定のイムノアッセイに応じて、適当な標識、並びに包装した他の試薬および 材料(即ち洗浄緩衝液など)も含むことができる。これらのキットを使って、上 述したような標準イムノアッセイを実施することができる。 下記に本発明を実施するための具体的態様の例を示す。この実施例は例示目的 にのみ与えられるのであって、決して本発明の範囲を限定するものではない。 C.実験 実施例1 S.ユベリス中のウシラクトフェリン結合タンパク質の同定 材料と方法 菌株と培養条件 アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC 9927)からのS.ユ ベリス株(su-1)を実験に使用した。細菌をベース#2ヒツジ血液寒天プレート (PML Microbiologicals)上で37℃にて18時間増殖させた。鉄制限条件は、800 μM EDDA、800μMジピリジルまたは100μMデスフェリオキサミンメシレートの添 加により、0.3%酵母エキスが捕捉されたTodd-Hewittブロス(THB-YE)中で達成 された。鉄キレート化剤はいずれもSigmaから入手した。細菌細胞壁の調製 S.ユベリスの細胞壁成分をBaker他(1976)J.Exp.Med.143: 258-270により記載された通りに抽出した。20枚のベース#2血液寒天プレートに S.ユベリスを接種し、そして37℃で18時間インキュベートした。細菌細胞を収 集し、200mlの0.85%食塩水で1回洗浄し、そして50mlの抽出緩衝液(0.05M Na2 HPO4,0.15M NaCl,0.01M EDTA,pH7.4)中に再懸濁した。ガラスビーズ(直径 4mm)と共に37℃で20時間振盪することにより細胞壁を抽出した。48,300gで20 分間遠心した後、上清(細胞壁抽出物)を収集し、濾過し(0.22μm Nalgeneフ ィルター)、蒸留水に対して透析し、凍結乾燥し、そして1mlの蒸留水中に再懸 濁した。鉄結合タンパク質の調製 bLf(牛乳から)、ウシトランスフェリン(bTf)、ヒトラクトフェリン (hLf)およびヒトトランスフェリン(hTf)を包含する全ての鉄結合タン パク質は、大部分が鉄遊離形でSigmaから購入した。鉄飽和タンパク質およびア ポタンパク質は、以前に記載された方法〔Mazurier & Spik(1980)Biochem.Bi ophys.Acta629:399-408〕により調製した。 125 I−標識bLfの調製 Thorell & Johanson(1971)Biochim.Biophys.Acta 251:363-368のラクトペ ルオキシダーゼ法により、ウシLfをヨウ素化した。約70μgのbLf(33%鉄 飽和)をヨウ素化に使用した。セファデックスG-25カラム上でのクロマトグラフ ィーにより、125I−標識タンパク質を遊離のNa125Iから分離した。標識タンパ ク質をアリコートに分け、使用直前まで−70℃で保存した。ラクトペルオキシダ ーゼはBoehringer-Mannheimから購入し、Na125IはAmershamから購入した。ラクトフェリン結合アッセイ 結合アッセイは以下文献に記載の通り実施した〔Naidu他(1990) J.Clin.Microbiol.28:2312-2319;Naidu他(1991)J.Med.Microbiol.34:32 3-328;Naidu他(1991)J.Dairy Sci.74:1218-1226;Naidu他(1992)J.Med.M icrobiol.36:177-183〕。培地から細菌細胞を収穫し、0.1Mリン酸塩緩衝化食塩 溶液(PBS)pH7.2中で1回洗浄し、そして1%ウシ血清アルブミン含有PB S(PBS−1%BSA)中に再懸濁して1010個の細菌/ml(c.OD600=1.5 )の濃度とした。飽和時間を測定するために、109個の細菌(PBS−1%BS A0.1ml中)を0.1mlの125I−bLf溶液(PBS−1%BSA中6.9nM)と混合 し、そして5,10,15,20,25,30,60,90,120,150分間室温でインキュベー トした。細菌をペレット化し、そして0.1% Tween 20を含む氷冷PBS1mlで3 回洗浄した。細菌ペレットに結合した放射能をγカウンター中で測定した。競合 結合実験では、109個の細菌を系列希釈した未標識bLFの存在下で2×105cpm の125I−bLFと混合し、そして室温で2時間インキュベートした。総投入量 、細胞に結合したタンパク質量および遊離タンパク質量を計算し、そしてスキャ ッチャード分析〔Scatchard,G.(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660-672〕に かけた。125I−bLf結合に対するbLf、アポbLf、bTf、hLfおよ びhTfの阻害作用を評価する時、未標識タンパク質を5.5nMの濃度で使用した 。全ての試料を三重反復試験し、そして各実験を少なくとも2回繰り返した。与 えられるデータは2つの別々の実験の平均値である(特に断らない限り)。S.ユベリスのタンパク質分解および熱処理 細菌(1010細胞を含む1ml)をプロテアーゼで37℃にて2時間処理した。トリプ シン(Sigma)加水分解は100mM Tris-HCl(pH8.0)中で、2,500U/mlの最終酵素濃 度で行い、そしてフェニルメチルスルホニルフルオリド(500μg/ml)の添加に より反応を停止させた。 ペプシン(Sigma)消化は100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)中で、1,000U/mlの 酵素濃度で行い、そして反応混合物のpHを7.4まで上昇させて加水分解を停止さ せた。プロテインキナーゼK(Boehringer Mannheim)処理は40mMリン酸カリウ ム緩衝液(pH7.5)中で行い、そしてフェニルメチルスルホニルフルオリド(500 μg/ml)の添加により消化を阻害した。熱処理には、細菌懸濁液(1010細胞/ml )を湯浴中で次の各温度で1時間インキュベートした:50℃、80℃および100℃ 。酵素処理した細胞と熱処理した細胞の両方をPBS中で1回洗浄し、次いで結 合実験を行う前にPBS−1%BSA中に再懸濁した。PAGE およびウエスタンブロット分析 タンパク質のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)はLaemmliにより 記載された方法〔Laemmli,U.K.(1970)Nature 227:680-685〕を使って行った。 試料を2−メルカプトエタノールの不在下で37℃で30分間試料緩衝液中に可溶化 させるか(非還元条件)、または1%2−メルカプトエタノールの存在下で100 ℃で5分間試料緩衝液中に可溶化させた(還元条件)。供給業者(Bio-Rad)によ り推奨される通りにタンパク質を電気泳動によりニトロセルロース膜に移行し、 そしてTBS−1%BSAでブロックした。 推定bLf結合タンパク質を同定するために、次のようにウエスタンブロット を125I−bLFで探査した。125I−bLFをTBS−1%BSA中80ng/mlの 最終濃度になるように膜に添加し、そして室温で2時間インキュベートした。0. 05% Tween 20を含むTBSで3回洗浄した後、膜を室温で24時間X線フィルム にさらした。125I−bLF結合と競合させるためには、125I−bLFとインキ ュベートする前に、移行した膜を35μg/mlの未標識bLFと共に2時間インキュ ベートした。結果 S.ユベリスへのbLfの時間依存性結合 S.ユベリス株su-1を125I−標識タンパク質結合アッセイにおいてbLf結 合について試験した。S.ユベリスと125I−bLfとの結合の反応速度論を研 究するために、結合を様々な時間間隔で測定した(図7)。経時変化は、125I −bLfが時間依存形式でS.ユベリスに結合でき、100%飽和には約90分を必 要とすることを示した。この結合飽和時間は、後の結合実験におけるインキュベ ーション時間を決定するための基準であった。bLfレセプター飽和度、親和性およびコピー数 放射性リガンドと競合物質の両方としてbLf(33%鉄飽和)を使って競合結 合実験を行い、そしてS.ユベリスによるbLf結合の特異性を証明した(図8 )。未標識bLfは、用量依存形式でS.ユベリスへの125I−bLfの結合を 効率的に置換した。約270nMの未標識bLfの濃度が、125I−bLf取込みの50 %阻害を引き起こした(点線により示される)。スチャッチャードプロット分析 は直線性を示し、すなわち1つのbLf結合成分の証明が期待される。スキャッ チャードプロットから計算したS.ユベリスの細胞1個あたり結合したbLf分 子の数は約7800であり、親和性(Kd)は1.0×10-7Mであった。 bLf鉄飽和がレセプター結合に影響を及ぼし得るかどうかを調べるために、125 I−bLf結合アッセイにおいて競合物質としてアポbLfを使った。結果 は、アポbLfが125I−bLf結合を鉄飽和bLfト同じくらい効率的に阻害 できることを示し(表1)、このことはアポbLfと鉄飽和bLfが共にS.ユ ベリス細胞上に同じ結合レセプターを有することを示唆する。 結合の特異性を更に調べるために、S.ユベリス細胞への125I −bLfの結合を阻害するbTF、hLfおよびhTFの能力も評価した(表1 )。それらのタンパク質のいずれもS.ユベリスへの125I−bLfの結合を妨 害しなかった。前記結果は、この結合がbLf特異的であることを示唆している 。bLf結合に対する鉄制限条件の影響 S.ユベリスのbLf結合性が鉄調節細菌成分により媒介されるのかどうかを 調べる試みにおいて、EDDA、ジピリジルまたはデスフェリオキサミンメシレート をTHB−YEブロス中に含め、鉄の利用性を低下させた。それらの鉄制限条件 からの細胞は、正常な培養条件からのものよりも高い125I−bLf結合を示さ なかった(図9)。このことは、鉄制限条件がbLfによるS.ユベリスの飽和 を大きくは変えないことを示す。 表1.S.ユベリスへの125I−bLf結合に対する未標識タンパ ク質および細菌の酵素処理または熱処理の阻害作用 1阻害値は阻害剤の非存在下でPBS中に懸濁した細菌へのbLf結合の相対比 率として計算した。2 結合の減少は、何も処理してない細菌へのbLf結合の相対比率として計算し た。プロテアーゼ加水分解と熱処理に対するbLf結合成分の感受性 S.ユベリス細胞のペプシン、トリプシンおよびプロテイナーゼKは、bLf 結合を阻止することができ(表1)、それは表面上に暴露された細胞壁タンパク 質が結合に関与していることを示唆する。細菌の熱処理が或る程度結合を減少さ せたことから(表1)、このタンパク様成分は温度に感受性であった。細胞壁bLf結合タンパク質の同定 S.ユベリスの細胞壁調製物中に機能的に活性なbLf結合タンパク質(bL f-binding protein;Lbp)が存在することが、125I−bLfを用いて探査 したウエスタンブロットにより検出された。非還元条件下では、それぞれ165kDa と76kDaの見かけ分子量を有する2成分がS.ユベリスのbLf結合タンパク質 として同定された。還元条件下では両タンパク質がbLf結合活性を大幅に失っ た。未標識bLfの存在がこの結合を有効に阻害したことから、これらのタンパ ク質バンドは125I−bLfへの特異的結合から生じたものであると証明された 。 考察 S.ユベリスがbLfに特異的なレセプターを発現できるかどうかを証明する ために、本発明者らは生物学的レセプターの主な前提条件、即ち、リガンド特異 性と濃度依存性飽和度を満たすことができるかどうかについて調べようと努めた 。S.ユベリスへのウシLf結合は時間と濃度に依存し(未標識リガンドが結合 を目当てに125I−bLfと競争できることにより証明される)、このことは細 胞表面上の結合レセプターが限定数存在することを示唆する。スキャッチャード プロット分析により、細胞あたり7800個のbLf結合部位があると推定された。 bLfに対する連鎖球菌レセプターの親和性(1.0×10-7M)は、Naidu他(1991 )J.Dairy Sci.74: 1218-1226によりS.アウレウスのbLfレセプターについて記載されたもの(7 .1×10-8M)よりわずかに低い。 競合結合アッセイにおいてウシアポbLfと鉄飽和Lfの両形態とも125I− bLf結合を阻害する効率が同じくらいであったので、S.ユベリスはそれらの 両形態を区別しなかった。この観察結果は、N.メニンジティディス(N.menin gitidis)Lfレセプターについて記載されたもの〔Schryvers & Morris(1988 )Infect.Immun.56:44-1149〕と同様であるが、Tfレセプターについてのも のとは対照的である。 グラム陰性菌のトランスフェリン結合タンパク質の研究から思いついた共通の 特徴は、それらの天然宿主のトランスフェリンに対する顕著な特異性である。競 合結合アッセイでは、本明細書中に記載の連鎖球菌レセプターは、ヒトLfがウ シLfの結合を有効に阻害できないという点で、或るラクトフェリン種特異性も 証明した。S.アウレウスLfレセプターがヒトとウシの両起源からのラクトフ ェリンを結合すると示されていることが興味深い〔Naidu他(1990)J.Clin.Mi crobiol.28:2312-2319;Naidu他(1991)J.Med.Microbiol.34:323-328;Naidu 他(1991)J.Dairy Sci.74:1218-1226;Naidu他(1992)J.Med.Microbiol.3 6 :177-183〕。このような状況においては、S.ユベリスが排他的にウシ病原体 であり、S.アウレウスがヒトとウシの両方において感染を引き起こすとすれば 、ラクトフェリンに対する特異性はそれらの細菌の宿主特異性にも貢献し得る。 その上、ウシトランスフェリンとヒトトランスフェリンのどちらも、S.ユベリ スのラクトフェリンレセプターへの125I標識ウシラクトフェリンの結合を阻害 することができなかった。この観察結果は、S.アウレウスのラクトフェリンレ セプターへのヒトまたはウシラクトフェリン結合をヒトまたはウシトランス フェリンによって阻害できなかったという、Naidu他(1991)J.Dairy Sci.74. :1218-1226;Naidu他(1992)J.Med.Microbiol.36:177-183により報告された 結果と類似している。 N.メニンジティディス(N,meningitidis)やH.インフルエンザ(H.infl uenza)のようなグラム陰性菌のトランスフェリンおよびラクトフェリンレセプ ターの大部分の発現は鉄により調節されるけれども、S.ユベリスレセプター活 性は増殖培地の鉄利用性により調節されなかった。この結果は、TfへのS.ア ウレウスの結合およびLfへのS.アガラクティエの結合が鉄により調節されな いことを示したModun他(1994)Infect.Immun.62:3850-3858およびRainard,P .(1992)FEMS Microbiol.Lett.98:235-240の所見と一致する。 S.ユベリス上のウシラクトフェリンレセプターの存在が証明されたので、本 発明者らはそれに関係する細菌細胞壁成分を同定しようと努めた。S.ユベリス 細胞の熱処理およびタンパク質分解酵素処理は、ラクトフェリン結合を阻止した 。このことは、細胞表面上の1または複数のタンパク質が関与している可能性を 示唆した。S.ユベリスの細胞壁抽出物を調製し、そして非還元条件下でSDS-PAGE 試料緩衝液中に可溶化した。SDS-PAGEとニトロセルロースへの移行後の125I− bLf結合の結果、165kDaと76kDaの分子量を有する2つのラクトフェリン結合 タンパク質が同定された。S.ユベリスがただ1つのbLf結合成分を有するこ とをスキャッチャードプロット分析が示したので、165kDaタンパク質は76kDaの 二量体形であるようだ。 S.ユベリスのラクトフェリン結合タンパク質は、種によって68〜105kDaの分 子量で異なるTbp1およびTbp2と称する2種類のトランスフェリン結合タ ンパク質から成るヘモフィラス種やナ イセリア種のトランスフェリンレセプターとは異なっている。S.ユベリスLb pは上記2つの菌種のラクトフェリンレセプターとも異なっている。今日まで、 98〜105kDaの分子量を有するラクトフェリン結合タンパク質はただ1つだけ上記 の菌種から同定されており、そして淋菌のラクトフェリンタンパク質(Lbp1 )が機能的に関連した淋菌Tbp1と特徴を共有することが示されている(Bisw as & Sparling,1995)。S.アウレウスのウシラクトフェリンレセプターは92k Daと67kDaの推定分子量を有する2つの異なるbLf結合タンパク質から成り〔N aidu他(1991)J.Daury Sci.74:1218-1226〕、従って本明細書に記載のレセプ ーとは異なると思われる。また、本明細書に記載の連鎖球菌Lbpは、還元SDS- PAGEゲル条件下で67kDaと62kDaの2成分に分かれる1つの約450kDaタンパク質と して同定されたS.アウレウスのヒトラクトフェリン結合タンパク質とも異なる ようである。 実施例2 S.ユベリスLbp遺伝子およびその上流のMgaの のクローニングおよび特徴づけ 材料と方法 菌株、プラスミドおよび培地 使用するS.ユベリス株を下記の表2に列挙する。細菌はベース#2ヒツジ血液 寒天プレート(PML Microbiologicals)上で37℃にて18時間、または0.3%酵母 エキスが捕捉されたTodd-Hewittブロス(THB-YE)中で37℃にて一晩増殖させた 。E.コリ細胞はLuriaブロス中またはLuriaブロス−寒天プレート上で増殖させ た。組換えプラスミドを含むE.コリ株の増殖には50μg/mlの濃度でアンピリシ ンを使った。使用するクローニングベクターはpTZ18Rであった〔Mead他(1986) Protein Eng.1:67-74〕。細菌細胞壁、細胞膜、周縁細胞質、全細胞溶解物および培養上清の調製 S.ユベリスの細胞壁成分は実施例1に記載の通り抽出した。外膜および内膜 は、ショ糖密度勾配遠心分離によりE.コリ細胞から単離した。E.コリ周縁細 胞質タンパク質は、冷却浸透圧ショック法により調製した。 E.コリ形質転換体の全細胞溶解物を調製するために、細菌を一晩増殖させ、 収集し、0.1Mリン酸塩緩衝化食塩溶液(PBS)pH7.2中で1回洗浄し、水に再 懸濁し、1回の凍結−解凍サイクルにかけ、そして2分間音波処理した。6000× gで20分間遠心分離した後、上清(全細胞溶解物)を収集し、凍結乾燥し、そし て1/100培養容量の水に再懸濁した。 組換えE.コリの100倍濃縮培養上清は、10%トリクロロ酢酸(TCA)を使 った沈澱により得た。鉄飽和bLfおよび125I−標識bLfの調製 実施例1に記載の通りに33%鉄飽和ウシラクトフェリンを調製し、そしてヨウ 素化した。ラクトフェリン結合アッセイ 細菌細胞を培地から回収し、0.1M PBS(pH7.2)中で1回洗浄し、そして1 %ウシ血清アルブミンを含むPBS(PBS−1%BSA)中に1010個の細菌/ ml(c.OD600=1.5)の密度になるように再懸濁した。組換えタンパク質のb Lf結合能を評価するために、増加する量のE.コリ細胞溶解物+上清を約109 個のS.ユベリスと混合し、そして200μlの総容量で1.0×104cpmの125I−b Lfと共にインキュベートした。室温で2時間インキュベートした後、細菌細胞 をペレット化し、0.1% Tween 20を含む氷冷PBS1mlで3回洗浄した。細菌ペ レット中に存在する放射能 をγ−カウンター中で測定した。全試料を三重反復試験し、全実験を2回繰り返 した。与えるデータは、2つの別々の実験の平均値±標準偏差である。抗血清の調製 S.ユベリスの組換えLbpに対する血清は、完全フロイントアジュバント中 の組換えE.コリのTCA沈澱済細胞上清0.5mlをウサギに皮下注射することに より惹起せしめた。不完全フロイントアジュバント中の試料を同量で2回、各動 物の皮下にブースター注射した。PAGE およびウエスタンブロッティング タンパク質のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)はLaemml iにより記載された通りに行った〔Laemmli,U.K.(1970)Nature 227:680-685 〕。還元および非還元条件下の試料は実施例1に記載の通り調製した。3M尿素 を含む試料緩衝液中に溶かした試料をゲルに負荷する前に30分間煮沸した。125 I−bLfで探査するウエスタンブロットは、実施例1に記載した通りに実施し た。組換えLbpに対するウサギ抗血清を使ってプローブする免疫ブロッティン グは下記の通りに行った。まず、タンパク質を製造業者(Bio-Rad)により推奨 されるようにニトロセルロース膜上に電気ブロッティングした。TBS(10mM T ris-HCl,pH7.5,140mM NaCl)−1%ウシ血清アルブニン(BSA)中でのイン キュベーションにより、非特異的結合をブロックした。ブロットをTBS−1% BSA中に1:200希釈した抗体と共に室温で1時間インキュベートした。0.05 %Tween 20を含有するTBS中で3回洗浄した後、TBS−1%BSA中1:50 00のアルカリホスファターゼ接合ヤギ抗マウス(またはウサギ)IgG(Kirkegaard & Perry Laboratories,Inc.)を使って血清反応性タンパク質を検出した。ア ルカリホスフ ァターゼ活性は、製造業者(Promega)により記載されたニトロブルーテトラゾ リウム−5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェートトルイジニウム 系を使って検出した。組換えDNA技術 プラスミドDNAはSambrook他(前掲)により記載された通りに精製した。必 要な時、Gene Cleanキット(Bio/can Scientific)を使ってアガロースゲルから DNA断片を単離した。 S.ユベリスの遺伝子ライブラリーを作製するために、以前に記載された通り に〔Caparon & Scott(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:8677-8681〕染色 体DNAを調製し、そしてSau3AIで部分消化した。ショ糖密度勾配遠心分離(Sa mbrook他,前掲)の後、2,000〜5,000bpの断片を回収した。それらの断片の末端 をdGTPとdATPを使って部分的にフィルインし、SalIで切断されdTTPとdCTPを使っ て部分的にフィルインされたたpTZ18Rに連結せしめた。E.コリ DH αコンピテ ント細胞の形質転換は、製造業者(GIBCO BRL,Gaithersburg,MD)により推奨 される通りに行った。Lf結合クローンを同定するために、形質転換体をニトロ セルロースディスク(Schleicher & Schuell,Keene,NH)上でレプリカ複製し 、そしてクロロホルム蒸気中で溶解させた。TBS−1%BSAとのインキュベ ーションにより非特異的結合をブロックした。実施例1に記載の通りに膜を更に125 I−bLfと共にインキュベートした。 制限エンドヌクレアーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼIクレ ノウ断片およびウシ腸アルカリホスファターゼは、製造業者(Pharmacia Canada Ltd.,Quebec,Canada)の指示に従って使用した。 DNA配列は、Sanger他(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463-5467 のジデオキシチェーンターミネーション法により、T7 配列決定キット(Pharmacia Canada Ltd.)を使って、二本鎖プラスミド鋳型上 で決定した。RNA分析 E.コリ株からのRNAは、追加のRNアーゼ不含有DNアーゼI消化を使っ て以前に記載された通りに単離した〔Lloubes他(1986)Nucleic Acid Res.14: 2621-263〕。 S.ユベリスからのRNAは次の通りに調製した。まず、10mlの培養物(OD600 =0.6)からの細胞ペレットを、500Uのムタノリシン(Sigma)を含むTE緩衝 液(pH8.0)250μl中に再懸濁し、そして37℃で30分間インキュベートした。溶 解緩衝液(250μl)(60mM Tris-HCl,pH7.4,200mM NaCl,10mM EDTA,2% SDS )と100μg/ml(最終濃度)のプロテイナーゼKを加え、インキュベーションを 1時間続けた。試料を65℃のフェノール(水で飽和したもの、pH4.0)で1回抽 出し、室温のフェノールで2回抽出した。エタノール沈澱によりRNAを回収し 、そしてDNアーゼI(Pharmacia Canada Ltd.)で処理した。 ノーザンブロット分析はSambrook他(前掲)により記載された通りに実施した 。結果 lbp遺伝子のクローニングと発現 S.ユベリス(su-1)からの染色体DNAを使ってpTZ18R中に遺伝子ライブラ リーを作成した。125I−bLfを用いたコロニーブロッティングにより、bL f結合タンパク質(Lbp)の発現について5000個の形質転換体をスクリーニン グした。最強のシグナルを有する1つのコロニーと弱いシグナルを有する6つの コロニーを選択し、それを使って全細胞溶解物を調製し、それを更に非還元条件 下で125I−bLfを結合する能力について試験した。最強のシグ ナルを有するクローン、E.コリ pLBP5が3本の主要バンドを生成した。そのう ちの2本が、S.ユベリスのものとサイズが非常に近似している165kDaと76kDa の分子量を有した。未開裂のシグナルペプチドを有する前駆体形である可能性が ある、165kDaよりわずかに大きい1本のバンドも観察された。宿主株対照E.コ リpTZ18Rの全細胞溶解物からは対応するバンドが全く観察されなかった。E.コ リpLBP5の周縁細胞質と上清からも組換えLbpが検出されたが、外膜または内 膜からは検出されなかった。このことは、E.コリ DH5αにおいて発現されたL bpが膜に局在化されておらず、代わりに細胞から分泌される可能性があること を示した。 競合阻害アッセイを行うことにより、E.コリ pLBP5の細胞溶解物と上清中に 遊離のおよび機能的に活性な組換えLbpの存在も検出された。E.コリ pLBP5 細胞溶解物と上清の混合物は、用量依存形式でS.ユベリス細胞への125I−b Lf結合を効率的に阻害したが、E.コリpTZ18Rからの試料は125I−bLf結 合を阻害しなかった(図11)。 165kDaの分子量を有するタンパク質が76kDa分子の二量体であるかどうかを証 明するために、2−メルカプトエタノールまたは尿素で処理した試料を、E.コ リ pLBP5の上清に対するウサギ抗血清を使ったウエスタンブロティングにより分 析した。メルカプトエタノール処理はS.ユベリスまたは組換えE.コリのいず れのLbpの電気泳動移動度に対して何も影響がなかったが、一方で尿素処理は 165kDaと75kDaのバンドの消失と105kDaの見かけ分子量を有する新たなバンドの 出現をもたらした。このデータは、165kDaタンパク質が76kDaサブユニットの二 量体らしいことを示唆する。二量体は尿素によって単量体に解離され、それが更 に変性されほぐされて、76kDaから105kDaへの見かけ分子量増加をもたらしたよ う だ。別の研究者らによってナイセリア・メニンジティディス(Neisseria mening itidis)において尿素処理後のTbp2の見かけ分子量の有意な増加が観察され ている〔Vonderharr他(1994)J.Bacteriol.176:6207-6213〕。上記データも また、オリゴマーの形成にジスルフィド結合が必須ではないことを示している。ヌクレオチド配列決定および分析 Lbp遺伝子の配列を決定するために、pLBP5のHincII,HindIII,SacI,SphI およびXbaI断片(図1)の各々を個別にpTZ18Rの対応部位中にクローニングした 。万能プライマーと逆プライマーを使って、各断片を両方向で配列決定した。そ れにより得られた配列情報に基づいてその後のプライマーを合成した。 pLBP5から2つの転写解読枠(ORF)が見つかった(図1)。1つはLbp をコードする遺伝子lbpであり、サクブローンpLBP5L中のそれの存在はbLf 結合表現型をもたらした。相補的DNA鎖上のもう1つのORFは不完全であっ た。GenBankデータベース検索は、推測上のORF遺伝子産物がA群連鎖球菌に おけるVirRおよびMry正の調節因子に対して有意な相同性を有することを 示した。よって、このORFをmga’と命名した(図1)。完全mga遺伝子 のクローニングと配列決定は後述する。 lbp配列はDNA配列の232位と262位に2つの潜在的な翻訳開始コドン(A TG)を含んだ。両方とも推定SD配列に関連している(図2A〜2C)。それ らの開始点はそれぞれ62.857および61.454の推定サイズを有するタンパク質を与 えるだろう。これらの推定サイズは76kDa分子量タンパク質に匹敵する。このタ ンパク質の実測分子量と計算分子量の間の不一致の理由は明らかでない。翻訳後 修飾、例えば脂質修飾が起こり、SDS-PAGE測定による見かけ分子量を増加させた のかもしれない。グラム陰性菌において観察され る同様な差はタンパク質脂質修飾により生じると証明されている〔Theisen他(1 992)Infect.Immun.60:826-831;Theisen他(1993)Infect.Immun.61:1793-1 798〕。 DNA配列は、2つの推定−10および−35プロモーター領域が最初のATGか ら−88位と−102位に存在することを示す。lbpの下流には潜在的ρ−非依存 性転写ターミネーターがある(図2A〜2C)。 Lbpの推定配列のN末端の分析は、シグナル配列に特徴的なアミノ酸〔Simo nen & Palva(1993)Microbiol.Rev.57:109-137〕を示した(図2A〜2C) 。該配列の特徴は、KおよびR残基に富む正電荷を有するN末端に続いて、アミ ノ酸25〜48の疎水性領域(図3)および49〜50位のシグナルペプチダーゼ開裂部 位VKA(A残基の後ろで開裂が起こる)である。この推定シグナル配列の存在 は、LbpがS.ユベリスの細胞質膜の外側に輸送されることを示唆する。 GenBankデータベース検索は、LbpのC末端が連鎖球菌Mタンパク質、プラ スミノーゲン結合タンパク質、フィブリノーゲンおよびIgG結合タンパク質のC 末端に高度に相同であることを明らかにした。それは、グラム陽性菌の表面タン パク質について十分に確立された一般的特徴の全てを示す〔Fischetti他(1991 )Common characteristics of the surface proteins from Gram-positive cocc i,p.290-294.G.M.Dunny,P.P.Cleary & L.L.McKay編,Genetics and molec ular biology of stereptococci,lactococci,and enterococci.American Soc iety for Microbiology,Washington,D.C.〕。それらの特徴は、C末端の4つ の荷電アミノ酸から成る小さなクラスターに続いて21アミノ酸から成る疎水性領 域の存在を含む(図2A〜2Cおよび図3)。隣接する疎水性領域は共通 膜固定モチーフLPSTGDである。次の50アミノ酸領域は、プロリンとグリシンの高 比率(12%)により特徴づけられる細胞壁関連領域である。GenBankデータベー ス検索もLbpが哺乳類ミオシン重鎖およびキネシン重鎖に相同であることを示 した。それはそれらの2つの原繊維タンパク質とそれぞれ48%および46%の全配 列相同性を有した。 膜固定モチーフおよび高プロリン/グリシン領域の後ろの領域は、内在的相同 性を有することがわかった3つのアミノ酸ブロックを有する(図2A〜2C)。 A1ブロックはA2ブロックに相同である52アミノ酸を含み、B1ブロックはB 2ブロックに相同である13アミノ酸を含み、そして59アミノ酸のC1ブロックは C2ブロックに相同である。 翻訳されたタンパク質の二次構造の分析は、高プロリン/グリシン領域からシ グナル配列の開裂部位の近くのβ−シートおよびターン領域まで広がる広範囲の α−ヘリックス領域を示した(図3)。LbpのLf結合領域の局在化 LbpのLf結合領域を局在化するために、遺伝子欠失体を作製した(図1) 。pLBP5Lの制限酵素部位HincII,StuI,XbaIおよびXmnIにおいて3’欠失体pTP3 1,pTP32,pTP33およびpTP34を作製した。pLBP5Lの643bp HindIII-XbaI断片を除 去することにより、5’欠失体pTP51を作製した。これらの欠失体は全てlbp プロモーターを含んだ。先端が切り取られたLbpをE.コリ中で生産させ、そ してSDS-PAGE、ニトロセルロースへの移行および特異的ウサギ抗血清または125 I−bLfとの反応の後に可視化した。前記実験では非還元条件下で全ての試料 を試験した。bLf結合結果を図1に要約する。全長Lbpと同様に、E.コリ pTP31,pTP32およびpTP33からの先端が切り取られたタンパク質は単量体形と二 量体形 の両方のbLfを結合することができた。それらのクローンからの幾つかの分解 生成物も結合活性を有した。E.コリ pTP34またはpTP51からは1つもバンドが 検出されなかった。これらのデータは、bLfの結合に関係するLbpの最初の 領域が22kDaのN末端断片にあることを示す。完全mga遺伝子のクローニングおよび配列決定 上述したように、プラスミドpLBP5はlbpに加えて不完全なmga’遺伝子 を含んだ。便宜上、pLBP5分子を反転させてpLBP5i(図4)にして記載した。 完全mga遺伝子を得るために、mga’からの991bpのStyI断片(図4中の VP1)をプローブとして放射性標識(32P)し、そしてS.ユベリス遺伝子ラ イブラリーをスクリーニングするのに使った。陽性のE.コリ DH5αクローンを 得、プラスミドpMGA14の制限酵素地図を図4に示す。pMGA14のヌクレオチド配列 を決定するために、pMGA14のBamHI,HincII,HindIIIおよびKpnI制限断片(図4 )を個別にpTZ18Rの対応部位中にクローニングし、そして万能プライマーと逆プ ライマーを使って両方向で配列決定した。それから得られた配列情報に基づいて その後のプライマーを合成した。プラスミドpMGA14はMgaの完全ORFを含ん だ。しかしながら、関連するプロモーター領域は存在しなかった。pLBP5iの1.5k b SphI-NheI断片はmga’の5’領域の大部分と完全なプロモーター領域を含 んだので、それをpMGA14のSphI部位とNheI部位の間に挿入して、プロモーターを 有する完全なmga遺伝子を含むpMGA14Fを作製した(図4)。 pMGA14Fの3558bp DNA断片の配列を図5A〜5Dに与える。ヌクレオチド36 1〜363位のATGコドンで始まりそしてヌクレオチド1858〜1860位のTAAコド ンで終わる推定遺伝子産物Mgaは、 58,454Daの計算分子量を有する499アミノ酸残基から成る。MgaのN末端は記 載されたような〔Simonen & Palva(1993)Microbiol.Rev.57:109-137〕シグ ナルペプチドの特徴を欠いており、これはMgaが細胞質タンパク質であること を示唆する。mgaの開始コドンの前には推定リボソーム結合部位AGGAGA がある。−35および−10プロモーターモチーフに似た配列も同定された。 GenBankデータベースの検索から、mgaの推定タンパク質がVirRおよび Mryタンパク質〔Chen他(1993)Mol.Gen.Genet.241:685-693;Perez-Casa l他(1991)J.Bacteriol.173:2617-2624〕に対して34%の全配列同一性を有す ることがわかった。A群連鎖球菌Mタンパク質のそれらの正の調節因子がヘリッ クス−ターン−ヘリックスDNA結合領域を含むことが示され、それらの領域を 介して、調節因子が特異的DNA配列と直接相互作用して転写活性に影響を及ぼ し得ると考えられる(Chen他、前掲;Perez-Casal他、前掲)。PCGENEソフトウ エアを使った外観検査および分析による類似のDNA結合領域を同定する試みは 、S.ユベリスのMga中にそのようなモチーフを検出することができなかった 。しかしながら、アミノ酸残基106〜125の領域(図5A〜5D)は、VirR49 〔Podbielski他(1995)Infect.Immun.63:9-20〕のDNA結合領域の配列と90 %の一致を示した。mgaの後に、それぞれ181,85,78および128アミノ酸残基 を有する更に4つのORFが存在する(図5A〜5D)。GenBankから有意な配 列整列は見つからない。lbpおよびmga転写物のノーザンブロット分析 lbpおよびmga転写物を分析するために、S.ユベリス(su-1)、E.コ リ DH5α(pLBP5)、E.コリ DH5α(pLBP5L)、E.コリ DH5α(pMGA14F)およびE .コリ DH5α(pTZ18R)からRNAを調 製し、そして2つのノーザンブロットに使用した。1つのブロットはlbpの1. 5kb HindIII-HpaI中間部断片(図6中のLP1)を使って探査した。S.ユベリ ス(su-1)、E.コリ DH5α(pLBP5)およびE.コリ DH5α(pLBP5L)からのRN Aを含むレーンには2.0kbバンドが検出されたが、E.コリ DH5α(pTZ18R)から のRNAを含む試料には欠けていた。このデータは、組換えE.コリ並びに生来 のS.ユベリスにおいてはlbpにより唯一の主要転写物だけが生産されること を示す。第二のブロットは、mgaの1.0kb NcoI-NheI中間部断片(図4中のN P2)を使って探査した。E.コリDH5α(pLBP5)およびE.コリ DH5α(pMGA14F )からのRNAを含む試料においてそれぞれ1.8kbバンドが検出された。S.ユベ リスおよびE.コリ DH5α(pTZ18R)のRNA試料からは全くバンドが検出されな かった。組換えE.コリにおいてmgaおよびmga’遺伝子が転写され、そし てmga’遺伝子の転写の間にベクターの終止コドンが使用されたのに違いない 。しかしながら、S.ユベリス試料に可視ハイブリダイゼーションバンドが欠け ているのが遺伝子転写物の量が少なかったためかまたはmga遺伝子が不活性で あったためかは不明である。S.ユベリス株におけるlbpおよびmga分布のサザンブロット分析 5つのATCC株と42の野外分離株を含むS.ユベリスの集団(表2)をサザンハ イブリダイゼーション実験に使った。染色体DNAを調製し、制限エンドヌクレ アーゼHindIIIで消化し、そしてアガロースゲル上で分離した。lbp遺伝子分 布を分析するために、Lbpをコードする領域からの大部分のDNA配列を含む 1.5kb HindIII-HpaI断片(図6中のLP1)をプローブとして使った。このプロ ーブは47分の42(42/47)の株からのDNAとハイブリダイズした (表2)。この結果は、lbpがS.ユベリス株の大部分と相同性領域を共有す ること、またはそれらの株の中にlbpプローブに相同である様々なlbp遺伝 子の領域があることのいずれかを意味する。相同領域をより詳細に局在化するた めに、このlbpプローブを更に小さい断片に細分割した(図6)。lbp遺伝 子のコード領域のN末端部分と中央部分をそれぞれ包含する643bp HindIII−Xba I断片(LP2)および437bp XbaI−StuI断片(LP3)の2つのプローブは、 lbp遺伝子を最初にクローニングした株であるsu-1とのみハイブリダイズした 。一方で、C末端領域からの409bp StuI−HpaI断片(LP4)は、プローブLP 1とハイブリダイズした株の全部とハイブリダイズした。C反復配列の一部、提 唱される細胞壁結合領域および膜固定領域のコード配列を含むlbp遺伝子の領 域が、S.ユベリス株間で保存され、一方N末端部分をコードする領域は大きく 異なることは明らかなようだ。lbpプローブとハイブリダイズした様々な株か らの染色体制限断片のサイズの多様性は、それらの株間に或る程度の制限部位不 均質性(HindIII部位が異なる位置にある)があることを示す。 表2.S.ユベリス株並びにLPプローブおよびVPプローブとの DNAハイブリダイゼーション表2(続き) a5つのATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)株を除く全て の株が現場分離株である。b ハイブリダイズする断片のサイズ(キロ塩基)。c ハイブリダイゼーションせず。 別のS.ユベリス株中にmga関連遺伝子が存在するかどうかを調べるために 、前に作製したブロットをストリップし、そしてmga遺伝子の5’領域を含む 572bp HindIII断片(図4中のVP3)を使って再探査した。lbp遺伝子との 相同性を示した全てのS.ユベリス株においてハイブリダイゼーションが検出可 能であった(表2)。各株においてmgaプローブと反応した特異的バンドを表 2に列挙する。 考察 125I−bLfを使ったコロニーブロッティングにより遺伝子ライブラリーを スクリーニングした後、S.ユベリスのLbp遺伝子をE.コリ中にクローニン グした。E.コリ形質転換体は、S.ユベリスにより生産される生来のタンパク 質と同様な、76kDaと165kDaの分子量を有する機能的に活性なbLf結合タンパ ク質を生産した。S.ユベリスとbLfとの一親和性結合現象を考えると、165k Daタンパク質が76kDa分子の二量体だろうかと考えた。還元剤β−メルカプトエ タノールでの処理は、それらのタンパク質の移動度に全く影響を及ぼさなかった 。このことは、タンパク質構造中にジスルフィド結合が無いことを示す。配列決 定データが入手できた後でこれを確認した。すると、このタンパク質中には適当 なシステイン残基は1つもなかった。3M尿素の存在下で30分間煮沸した後、タ ンパク質を完全に変性した。この処理は、二量体の解離から生じるのであろう、 165kDaタンパク質の分子量の有意な減少を引き起こし、そしてタンパク質の変性 から生じる76kDaタンパク質の分子量の増加を引き起こした。低濃度の尿素処理 または短い煮沸時間では165kDaバンドの移動度を変えることができなかったので 、二量体構造は非常に安定であると思われる。S.ユベリス細胞壁調製物中に単 量体と二量体のLbpが両方存在することは、細菌表面 上に両方の形態が存在することを暗示するのかもしれない。しかしながら、細菌 細胞上に二量体形のみが存在し、ガラスビーズ処理によって引き起こされる部分 的細胞溶解のために細胞質から単量体が出てくることもあり得る。試料調製の間 の二量体から単量体への解離は、二量体の安定性のためにあまり起こりそうにな いように見える。 S.ユベリスLbpの複雑な性質をヌクレオチド配列分析から更に確認した。 予想通り、2つのLbpは1,683bpの単−ORFによりコードされていた。2コ ピーの翻訳産物が互いに相互作用して同種二量体を形成することも十分可能であ る。サブユニット間の相互作用は広範囲であり、且つ高いα−ヘリックス含量の 存在のため分子の長さ全体に渡ることができる。Mタンパク質〔Fuschetti,V.A .(1989)Clin.Microbiol.Rev.2:285-314〕と同様に、Lbpは多数のα− ヘリックスコイル構造を含む哺乳類原繊維タンパク質、例えばヒトミオシン重鎖 およびキネシン重鎖とかなりの配列相同性を共有する。 Lbpの推定アミノ酸配列は、細菌細胞の外側に現れるタンパク質に予想され るように、N末端に50アミノ酸のシグナルペプチド(最初のATC開始コドンで 翻訳が始まるとすると)の存在を示した。このシグナルペプチドの構造は、以前 に記載されたグラム陽性菌からのタンパク質中のシグナルペプチドの共通構造と 等価である〔Simonen & Palva(1993)Microbiol.Rev.57:109-137;Goward他( 1993)Trends Biochem.Sci.18:136-140;Perlman & Halvorson(1983)J.Mol.B iol.167:391-409;von-Heijne,G.(1983)Eur.J.Biochem.133:17-21;von-He ijne,G.(1986)Nucleic.Acids Res.14;4683-4690〕。 LbpのC末端分析は、グラム陽性菌からの多数の他のタンパク 質において見つかる膜固定モチーフ〔Fischetti他(1991)Common characterist ics of the surface proteins from Gram-positive cocci,p.290-294.G.M.Du nny,P.P.Cleary & L.L.McKay編、Genetics and molecular biology of strep tococci,lactococci and enterococci.American Society for Microbiology, Washington,D.C.〕に典型的なアミノ酸の存在を明らかにした。そのような領域 はタンパク質を細胞壁に固定する役割を果たす〔Pancholi & Fischetti(1988) J.Bacteriol.170:2618-2624;Schneewind他(1992)Cell 70:267-281;Schneewi nd他(1993)Embo.J.12:4803-4811〕。Lbpが膜表面に固定化されるように なるのは恐らくC末端アミノ酸によってであろう。周縁細胞質に卓越的に見つか る連鎖球菌M6.1タンパク質(Fischetti他、1994)と同様に、E.コリ中で発現 されたLbpは大部分分泌されたので、本明細書に記載の膜固定モチーフはE. コリ中では何も機能を持たない。 lbp遺伝子への5’および前進的3’欠失により、bLfを結合できるN末 端の大領域(約200コドン)の限定が可能になった。この領域をナイセリアから のTbp2のトランスフェリン結合領域〔vonder Haar他(1994)J.Bacteriol .176:6207-6213〕と比較すると全く有意な相同性を示さなかった。また、本明 細書中で報告されるbLf結合領域はアクチノバシラス・プリュロニューモニエ (Actinobacillus Pleuroneumoniae)のトランスフェリン結合タンパク質(Tf bA)中に見つかるトランスフェリン結合活性を有する領域〔Strutzberg他(19 95)Infect.Immun.63:3846-3850〕のいずれも含まなかった。実施例1に示す ように、ウシまたはヒトトランスフェリンはS.ユベリスへのウシラクトフェリ ンの結合を阻害できなかったことから、これは驚くべきことではない。これは、 bLf結合領域とTf結合領域との相違を示す。第二のORFの mgaがlbp遺伝子領域に隣接して見つかった。この遺伝子の推定産物(499 アミノ酸残基を含む)は、A群連鎖球菌のMタンパク質の正の調節因子であるV irR12(499残基)およびMry(530残基)〔Chen他(1991)Mol.Gen.Gene t.241:685-693;Perez-Casal他(1991)J.Bacteriol.173:2617-2624〕と同等 の分子の大きさおよび配列を有する。しかしながら、MryとVirR12はそれ らに対して98%の相同性を有した(Chen他、前掲)のに対して、Mgaはわずか 34%の相同性しか示さなかった。これは種の違いに起因するのかもしれない。同 様に、OF+GASのVirR49は、OF-GASのVirRやMryとは低い相 同性(76%)を示した〔Podbielski他(1995)Infect.Immun.63:9-20〕。 Mgaが細胞質に位置することは推定タンパク質のN末端にシグナルペプチド が無いことにより示唆された。潜在的−10および−35プロモーターが見つかった 。 mryが自己超調節されそしてCO2のレベルに応答して環境的に調節される ことが研究により示されている〔Okada他(1993)Mol.Microbiol.7:893-903〕 。CO2濃度を増加させることによりmryの発現が刺激された。我々の実験で は、CO2の追加の補足を行わない条件下でS.ユベリス細胞を培養した。刺激 環境の不在は、非常に低レベルのmga発現を引き起こした。これは、ノーザン ブロット分析がS.ユベリスからmga転写物を検出しなかった理由であろう。 組換えE.コリ中では、感受性タンパク質のような別の調節成分がないために、 mgaは環境シグナルによって調節されないだろうと予想される。 mgaがlbpの発現を調節するかどうかを知ることが興味深い。MおよびM 様タンパク質遺伝子のプロモーター中に存在する潜在的VirR結合ボックス〔 Podbielski他(1992)Mol.Microbiol.6: 2253-2265;Podbielski他(1995)Infect.Immun.63:9-20〕は、相同性比較によ りlbpの−35領域のすぐ上流部分に全く見つからなかった。この連鎖球菌属に おけるmgaの分布およびlbpとの関連を調べるために、47のS.ユベリス株 をmgaおよびlbp特異的プローブを使ってブロットした。結果は、lbp陽 性である全ての菌株がmgaを含むことを示した。 サブゲノムプローブを使ったS.ユベリス株中のlbpのサザンブロット分析 は、C末端配列が株間で保存されており、一方でN末端領域は大きな変動を示す ことを明らかにした。この現象は、A群連鎖球菌のMタンパク質について記載さ れたものと類似している。M6タンパク質構造遺伝子からのプローブを使ったD NAハイブリダイゼーションにより、Scott他(1986)Infect.Immun.52:609-6 12は、C末端領域が異なるM血清型の株間で高度に保存されておりそしてN末端 領域が高度に可変的であることを示した。これと一致して、詳細なアミノ酸比較 と抗体反応性は、保存されたC末端領域内の限定的相違と、N末端の大きな可変 性を明らかにした〔Bessen & Fischetti(1990)J.Exp.Med.172:1757-1764;B essen他(1989)J.Exp.Med.169:269-283;Kehoe(1991)Vaccine 9:797-806 〕。しかしながら、S.ユベリスのLf結合タンパク質の場合、限定された配列 と血清学的データしか比較に利用できない。Mタンパク質では、N末端領域が連 鎖球菌細胞表面から遠位であり、よって免疫学的選択圧に大部分暴露される分子 の領域であると予想されるだろう。従って、異なる血清型のMタンパク質間でN 末端領域の配列が異なることは驚くべきことではない。対照的に、分子のC末端 領域の配列は、連鎖球菌の表面への結合を確実にするために進化論的に保存され ているべきである。LbpはMタンパク質のものに類似した構造を有するので、 そのC末端配列が株 間で保存され、一方でN末端領域が可変性を示すという発見は驚くべきことでは ない。 LbpのN末端部分がS.ユベリス株間で可変的であるので、分子のこの部分 がLf結合を担うという我々の発見は驚くべきことでる。同様な観察結果はアク チノバシラス・プリュロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)に おいても報告されている。異なるA.プリュロニューモニエ血清型からのトラン スフェリン結合タンパク質(Tbp2)の2つのイソ型タンパク質は、可変的N 末端半分と保存的C末端半分を含んでおり〔Bunka他(1995)Cloning and seque ncing of the transferrin-binding protein genes of Actinobacillus pleurop neumoniae,biotype 1-serotype 5 and biotype 2-serotype 2.未公開;GenBan k受入れ番号Z46774;Gerlach他(1992)Infect.Immun.60:3253-3261;Gerlach他 (1992)Infect.Immun.60:892-898〕そして該分子のN末端半分がトランスフ ェリン結合を担っている〔Strutzberg他(1995)Infect.Immun.63:3846-3850 〕。 実施例3 S.ユベリスによるチャレンジに対する 組換えラクトフェリン結合タンパク質の防御能の評価 材料と方法 菌株、ベクターおよび培地 S.ユベリス株su-1(ATCC 9927)はウシ乳腺炎の臨床症例から入手した。細菌 細胞はトリプシン処理大豆ブロス中で増殖させ、アリコートに分け、そして必要 となるまで血液ビーズ上で−70℃で保存した。E.コリ株 DH5αは全ての形質転 換実験に使用した。E.コリ細胞をLuria培地中で培養し、そして形質転換体の 増殖培地に50μg/mlのアンピシリンを補足した。プラスミドpGH433〔Anderson他 (1991)Infect.Immun.59:4110-4116〕はIPTG(イソプロピルβ-D−チオガラ クトピラノシド)誘導性プロモーターの調節下で組換えタンパク質を発現させる のに使った。PAGE およびウエスタンブロッティング Lbp封入体を4M尿素の存在下で試料緩衝液に溶かし、そして4M尿素を含 むSDS-PAGEゲル上で泳動した。su-1に感染したウシからの回復期血清清の1:75 希釈液とアルカリホスファターゼ接合ヤギ抗ウシIgGの1:5000希釈液を使って 、ウエスタンブロッティングを行った。タンパク質精製 E.コリ形質転換体の培養物(1l)を660nmでの吸光度が0.5となるまで増殖 させ、そして2mM IPTGを使って誘導した。37℃で2時間連続して激しく振盪し た後、細胞を収集し、Gerlach他(1992)Infect.Immun.60:892-898により記載 された通りにタンパク質封入体を調製した。30℃で増殖した中間対数期ブロス培 養物(1l)を、タンパク質誘導のため激しく振盪しながら42℃で2時間培養し た。遠心分離により細胞を収穫し、5mlの25%ショ糖+50mM Tris-HCl緩衝液(pH 8.0)中に再懸濁し、そして−70℃で凍結した。250mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)中 に溶かした1mgのリゾチームの添加、氷上での10分間のインキュベーション、25m lの界面活性剤混合物(20mM Tris-HCl緩衝液,pH7.4,300mM NaCl,2%デオキ シコール酸,2% Nonidet P-40を5部と100mM Tris-HCl緩衝液,pH8.0,50mM EDT A,2% Triton X-100を4部)の添加、および音波処理により、細胞を溶解した。 封入体を15,000×gで30分間の遠心分離により収穫し、そして5〜10mg/mlの濃度 になるように水に再懸濁した。ELISA用の抗原は、SDS-PAGEゲルまたは4M尿素 /SDS-PAGEゲルから溶出することにより精製した。タンパク質純度および濃度の測定 タンパク質純度は、SDS-PAGEとその後のクーマシーブルー染色により評価した 。タンパク質濃度は、供給業者により記載されたようなBio-Rad DCタンパク質ア ッセイを使って測定した。ウシ血清アルブミン(Pierce Chemical Co.,Rockfor d,IL)を標準物質として使用した。クーマシーブルー染色したSDS-PAGEをBio-R ad 620デンシトメーターでスキャンした後、標的タンパク質の量対全タンパク質 の量を測定した。ワクチン調製および予防接種 ワクチンは、0.1M PBS,pH7.2で希釈したアジュバントVSA3中に乳化したタン パク質から成った。ワクチンの各2ml用量は、VSA(0.67ml),PBS(1.33ml),およ び4M塩酸グアニジン5〜10μl中に溶かしたタンパク質抗原50μgを含んだ。ペ ンシルベニア州立大学乳腺炎リサーチ集団(Pennsylvania State Universitty M astitis Research Herd)からの15頭の健康な乳牛を、乾乳した時と再び28日後 に筋肉内に予防接種した。5頭の牛から成るグループにLbpまたはアジュバン トのみを投与した。チャレンジ 細菌チャレンジ培養物は、5%全血を含むエスクリン血液寒天プレート上でス トックビーズ培養物を回転することにより調製した。37℃で24時間インキュベー トした後、単一コロニーを100mlの超高温滅菌処理(UHT)乳に接種し、そして37℃ で12時間インキュベートした。24時間培養物をよく混合し、100μlアリコート を取り出して第二の100mlのUHT乳に接種した。第二の37℃での9時間のインキュ ベーションの後、培養物を無菌食塩水を使って10倍増分で系列希釈した。各希釈 液1mlあたりのコロニー形成単位(CFU)を分光光度計上での吸光度により測 定し、そして血液寒天プレート上に 塗布することにより確認した。1mlの食塩水中200CFUのS.ユベリスを泌乳 4日目に4分の1の乳房内に注入することにより、動物をチャレンジした。サンプリング 表3に記載の時期に乳汁および血液試料を採取した。 表3.免疫処置、チャレンジおよびサンプリングスケジュール 抗体価 Lbp抗原の全Ig力価を間接ELISAにより測定した。炭酸塩緩衝液中の抗原 でNunc Immulon-2プレートをコーティングした。使用前に、プレートをTBST (100mM Tris-HCl,pH8.0,150mM NaCl,0.05% Tween-20)と3%BSAで1時 間ブロックした。ブロックした後、プレートを蒸留水で洗浄した。血清と乳汁試 料を1%BSAを含むTBSTで3倍ずつ系列希釈した。Lbp抗原に対するウ サギ抗血清も希釈し、それを陽性対照として使用した。陰性対照試料は1%BS Aを含むTBSTであった。コーティングしたプレートに希釈試料と対照を移し 、そして室温で1時間インキュベー トした。プレートを蒸留水で徹底的に洗浄し、全てのウエルを1%BSAを含む TBST中に1:2000希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼーヤギ抗Ig接合体と 共にインキュベートした。室温で1時間インキュベートした後、プレートを蒸留 水で洗浄した。次いで試料中に存在する抗体の量を、ABTS基質を使って視覚 化した。各試料の抗体価は495nmの参照波長と405nmでの吸光度の読みに基づいた 。試料の陽性の読みとは、吸光度がブランク(陰性対照)の吸光度の2倍である ものであった。抗体価は、陽性の読みを与える最後の希釈率の逆数をとることに より測定した。アッセイプレート間の一致性は、陽性対照の吸光度の読みにより モニタリングした。乳汁組成分析 Fossomatic Cell and Milk Analyzer(A/S Foss Electric,Hillerod,Denmar k)を使って、乳汁pH値、総体細胞数、脂肪、タンパク質および乳糖を測定し た。DNA操作 全ての分子技術は、供給業者(Pharmacia Canada Ltd.)により推奨される通 りまたはSambrook他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(1989) に記載の通りであった。必要な場合、Gene Cleanキット(Bio/can Scientific) を使ってアガロースゲルからプラスミドDNA断片を単離した。 結果 tac プロモーターの調節下でのLbpの発現 pLBP5からの1.8kb SphI-RsaI断片をpGH433(図10)のBamHI部位に挿入して、1 2アミノ酸リーダーペプチドとIPTG誘導性tacプロモーターを提供することにより 、プラスミドpGH-LBPを作製した。連結前に、挿入断片をマングビーンヌクレア ーゼで処理して、SphIにより生じた末端から3’突出末端を除去し、そしてBamH Iで切断 したベクターをクレノウ断片でフィルインして平滑末端にした。pGH-LBPは、pGH 433により提供された12アミノ酸リーダーペプチドとtacプロモーターの下流に、 Lbp遺伝子(lbp)の96%カルボキシ末端を含んだ。融合部位のヌクレオチ ド配列の分析は、図1に与えられるlbpの配列との一致を示した。組換えタンパク質の精製 pGH-LBPを使ってE.コリ DH5α中でS.ユベリスのLbpを発現させた。こ の系では、組換えタンパク質の発現は正常の増殖条件下では抑制された。IPTG誘 導により、組換えタンパク質が凝集形で生産された。82kDaと90kDaのLbpが全 タンパク質の36%を占めた。単離したタンパク質凝集物を4M塩酸グアニジン中 に溶かし、そしてワクチン製剤に使った。Lbpを4M尿素−SDS-PAGEゲルから 精製し、それをELISA用の抗原として使った。凝集形Lbpと精製済Lbpの両 方が、S.ユベリスに感染したウシからの回復期血清を使ったウエスタンブロッ ティングにより、抗原として活性であると証明された。実験的細菌チャレンジ後の乳汁中の体細胞数 非予防接種対照動物のチャレンジ後の四半分からの乳汁中の平均体細胞数は、 チャレンジ後3日目に3,000,000細胞/mlまで増加した。Lbpで予防接種した 動物のチャレンジ後の四半分からのものは、対照グループのものに近似する平均 SCCの迅速な増加を示した。Lbp特異的抗体価の予防接種の効果 対照動物の血清および乳汁中のLbp特異的抗体の平均レベルは、実験的チャ レンジの前には低かった。1回の試行では、Lbpで予防接種した動物の血清お よび乳汁中のLbp特異的抗体レベルは、予防接種前レベルまたは対照動物のレ ベルと比較して有意に増加し なかった。その次の試行では、抗体応答が認められた。チャレンジ後の乳汁のpH値および主成分の変化 プラシーボ(偽薬)およびLbpで予防接種した動物からの乳汁の平均pH値 は、チャレンジ後に同様なパターンで変化した。免疫処置したまたは免疫処置し てない動物からの乳汁中の脂肪、乳糖およびタンパク質の百分率も、チャレンジ 後に同様なパターンで変化した。それらの値の明白な減少は起こらなかった。 考察 S.ユベリスLbpの表面暴露は、乳汁中のオプソニン抗体レベルを上昇させ そして乳腺中へのPMN漸増の速度を加速させることにより、Lbpを潜在的ワ クチン候補にする。更に、上記実施例は、LbpがS.ユベリス感染から回収さ れた動物からのウシ血清により認識されることを証明した。このことは、該タン パク質が生体内で発現されそしてウシがそれに免疫応答したことを示す。それら の考えに基づいて、S.ユベリスによるチャレンジに対する組換えLbpの感染 防御能を乳牛において試験した。 Lbpは使用する発現系において、大量の純粋な組換えタンパク質の精製を容 易にする封入体として生産された。一研究では、Lbpは免疫処置したウシにお いて高レベルの特異抗体を誘導しなかったが、これは多分製剤パラメーターのせ いと思われる。それらの動物では、細菌チャレンジが乳腺炎の徴候である高い体 細胞数を引き起こした。従って、Lbpでの予防接種は乳腺炎の発生を防がなか った。しかしながら、予防接種に対する血清学的応答が貧弱であり、従ってこの 研究からLbpの防御能に関する何らかの結論を引き出すことはできない。 次の研究では、免疫処置したウシにおいてLbpが抗体応答を惹起した。保護 研究は現在進行中であり、予備結果はLbpが乳腺炎 から被検体を保護するのに有効であることを示している。 乳房内または皮下経路でのS.ユベリス死菌による予防接種後のS.ユベリス 乳腺炎に対する保護に乳腺リンパ球が関係している可能性がどこかに示唆されて いる〔Finch他(1994)Infect.Immun.62:3599-3603〕。最近の所見は、S.ユ ベリスにより引き起こされた乳腺炎に対する保護が特異抗体のレベルに関係しな いようであることを指摘している。乾乳期でのS.ユベリスの乳房内または皮下 投与は、次の泌乳期の間の同一株でのチャレンジ後に乳汁から回収される細菌の 数および臨床的乳腺炎の発生率を大きく減少させることが証明されている〔Finc h他(1994)前掲;Hill他(1994)FEMS Immunol.Med.Microbiol.1:109-118〕 。予防接種後にS.ユベリス特異的免疫グロブリンのレベルに有意な増加があっ たが、血清および乳汁中のオプソニン活性にはまったく増加が見られなかった。 更に、S.ユベリスが細菌表面に結合したIgの存在にかかわらず、好中球の殺 菌活性に抵抗できることが証明されている〔Leigh & Field(1994)Infect.Imm unn.62:1854-1859〕。従って、S.ユベリス乳腺炎に対する予防接種方法を評 価する時、抗体応答の評価と同等に細胞性免疫応答の評価が重要であるだろう。 我々のワクチン試験の間、免疫処置または非免疫処置動物においてチャレンジ 後に明らかな乳腺炎の臨床的徴候は全く観察されなかった。従って、乳汁のpH 値および主成分に影響されなかったことは驚くべきことではない。 S.ユベリスラクトフェリン結合タンパク質、それの調製方法および使用方法 が開示される。本発明の好ましい態様を幾分詳細に記載してきたけれども、請求 の範囲により定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく明らかな 変更を行い得ることは理解されよう。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項 【提出日】平成10年3月17日(1998.3.17) 【補正内容】 請求の範囲 1. 単離された免疫原性ストレプトコッカス・ユベリス(Streptococcus uher is)ウシラクトフェリン結合タンパク質。 2. 図2A〜2C(配列番号1〜2)のアミノ酸位置1〜561に示されるアミ ノ酸配列に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成る 請求項1のラクトフェリン結合タンパク質、または少なくとも約10アミノ酸を含 んで成るそれの免疫原性断片。 3. 図2A〜2C(配列番号1〜2)のアミノ酸位置52〜561に示されるアミ ノ酸配列に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成る 請求項1のラクトフェリン結合タンパク質、または少なくとも約10アミノ酸を含 んで成るそれの免疫原性断片。 4. 免疫原性ストレプトコッカス・ユベリス(Streptococcus uberis)ウシラ クトフェリン結合タンパク質のコード配列を含んで成る、単離された核酸分子。 5. 前記分子が図2A〜2C(配列番号1〜2)のヌクレオチド位置232〜191 4に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも約80%の同一性を有するヌク レオチド配列を含んで成る請求項4の核酸分子、または少なくとも約15ヌクレオ チドを含んで成るそれの断片。 6. 前記分子が図2A〜2C(配列番号1〜2)のヌクレオチド位置445〜191 4に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも約80%の同一性を有するヌク レオチド配列を含んで成る請求項4の核酸分子、または少なくとも約15ヌクレオ チドを含んで成るそれの断片。 7. 組換えベクターであって、 (a) 請求項4〜6のいずれか一項に記載の核酸分子;および (b) 前記コード配列を宿主細胞中で転写しそして翻訳することができる前記核 酸分子に作用可能に連結された調節要素であって、前記調節要素の少なくとも1 つが前記コード配列に対して非相同である調節要素 を含んで成る組換ベクター。 8. 請求項7の組換えベクターにより形質転換された宿主細胞。 9. 組換えウシラクトフェリン結合タンパク質の生産方法であって、 (a) 請求項8に記載の宿主細胞の集団を用意し;そして (b) 前記細胞集団を、前記組換えベクター中に存在するコード配列によりコー ドされるウシラクトフェリン結合タンパク質が発現されるような条件下で培養す る ことを含んで成る方法。 10.請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫原性ウシラクトフェリン結合タ ンパク質と医薬上許容される賦形剤を含んで成るワクチン組成物。 11.アジュバントを更に含んで成る、請求項10のワクチン組成物。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 16/12 C07K 16/12 C12N 1/15 C12N 1/15 1/19 1/19 1/21 1/21 5/10 C12P 21/02 C C12P 21/02 G01N 33/569 F G01N 33/569 C12N 5/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG ,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT ,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA, CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F I,GB,GE,GH,HU,ID,IL,IS,JP ,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR, LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,M W,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD ,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR, TT,UA,UG,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 マクラクラン,フィリップ ロナルド カナダ国,サスカッチェワン エス7エイ チ 5エル8,サスカトゥーン,テイト プレイス 309シー―207

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 単離された免疫原性ストレプトコッカス・ユベリス(Streptococcus uher is)ウシラクトフェリン結合タンパク質。 2. 図2A〜2C(配列番号1〜2)のアミノ酸位置1〜561に示されるアミ ノ酸配列と少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成る請求項 1のラクトフェリン結合タンパク質、または少なくとも約10アミノ酸を含んで成 るそれの免疫原性断片。 3. 図2A〜2C(配列番号1〜2)のアミノ酸位置52〜561に示されるアミ ノ酸配列と少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成る請求項 1のラクトフェリン結合タンパク質、または少なくとも約10アミノ酸を含んで成 るそれの免疫原性断片。 4. 免疫原性ストレプトコッカス・ユベリス(Streptococcus uheris)ウシラ クトフェリン結合タンパク質のコード配列を含んで成る、単離された核酸分子。 5. 前記分子が図2A〜2C(配列番号1〜2)のヌクレオチド位置232〜191 4に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約80%の同一性を有するヌクレオチ ド配列を含んで成る請求項4の核酸分子、または少なくとも約15ヌクレオチドを 含んで成るそれの断片。 6. 前記分子が図2A〜2C(配列番号1〜2)のヌクレオチド位置445〜191 4に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約80%の同一性を有するヌクレオチ ド配列を含んで成る請求項4の核酸分子、または少なくとも約15ヌクレオチドを 含んで成るそれの断片。 7. 組換えベクターであって、 (a) 請求項4〜6のいずれか一項に記載の核酸分子;および (b)前記コード配列を宿主細胞中で転写しそして翻訳することができる前記核 酸分子に作用可能に連結された調節要素であっ て、前記調節要素の少なくとも1つが前記コード配列に対して非相同である調節 要素 を含んで成る組換えベクター。 8. 請求項7の組換えベクターにより形質転換された宿主細胞。 9. 組換えウシラクトフェリン結合タンパク質の生産方法であって、 (a) 請求項8に記載の宿主細胞の集団を用意し;そして (b) 前記細胞集団を、前記組換えベクター中に存在するコード配列によりコ ードされるウシラクトフェリン結合タンパク質が発現されるような条件下で培養 する ことを含んで成る方法。 10.請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫原性ウシラクトフェリン結合タ ンパク質と医薬上許容される賦形剤を含んで成るワクチン組成物。 11.アジュバントを更に含んで成る、請求項10のワクチン組成物。 12.ワクチン組成物の調製方法であって、 (a) 請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫原性S.ユベリスウシラクト フェリン結合タンパク質を用意し;そして (b) 前記ラクトフェリン結合タンパク質を医薬上許容される賦形剤と混合す る ことを含んで成る方法。 13.哺乳類被検体において乳腺炎を治療または予防するのに有用な組成物の製 造のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載のウシラクトフェリン結合タン パク質の使用。 14.請求項1〜3のいずれか一項に記載のストレプトコッカス・ユベリスウシ ラクトフェリン結合タンパク質に対して向けられた抗体。 15.前記抗体がポリクローナルである、請求項14の抗体。 16.前記抗体がモノクローナルである、請求項14の抗体。 17.生物学的試料中のストレプトコッカス・ユベリス抗体を検出する方法であ って、 (a) 生物学的試料を用意し; (b) 前記生物学的試料中にS.ユベリス抗体が存在する時、S.ユベリス抗 体が請求項1〜3のいずれか一項に記載のS.ユベリスウシラクトフェリン結合 タンパク質に結合して抗体/抗原複合体を形成するような条件下で、前記生物学 的試料を前記S.ユベリスウシラクトフェリン結合タンパク質と反応させ;そし て (c) 前記複合体の存否を検出し、それにより前記試料通のS.ユベリス抗体 の存否を検出する ことを含んで成る方法。 18.ストレプトコッカス・ユベリス感染を検出するための免疫診断試験キット であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載のS.ユベリスウシラクトフェリ ン結合タンパク質、および前記免疫診断試験を実施するための使用説明書を含ん で成る試験キット。 19.単離されたストレプトコッカス・ユベリスウシMgaタンパク質。 20.ストレプトコッカス・ユベリスウシMgaタンパク質のコード配列を含ん で成る、単離された核酸分子。
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