以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物としてユニット式建物について具体化している。ユニット式建物は複数の建物ユニットを互いに連結することにより構成される建物である。建物ユニットは、複数の柱及び梁が互いに連結されることにより略直方体状に形成されたものである。図1は建物の外観を示す図である。なお、図1は建物を南側から見た図となっている。
図1に示すように、建物10は、基礎11と、その基礎11上に設けられた建物本体12と、建物本体12の上方に設けられた屋根部13とを備える。建物本体12は、一階部分14と二階部分15とを有する二階建てであり、複数の建物ユニットが互いに連結されることにより構成されている。
建物10の一階部分14には、その南面にアルコーブ18(凹所)が設けられている。アルコーブ18の奥側には玄関口16が設けられ、その玄関口16には玄関ドア17が設けられている。したがって、本建物10はいわゆる南入りの建物となっており、建物10の南面が建物正面となっている。また、建物10の二階部分15にはバルコニー19(ルーフバルコニー)が設けられている。
次に、建物10の一階部分14について図2に基づいて説明する。図2は建物10の一階部分14を示す平面図である。
図2に示すように、建物10の外周部には外壁部21〜23が設けられている。具体的には、建物10の北側には北側外壁部(図示略)が設けられ、建物10の東側には東側外壁部21が設けられ、建物10の南側には南側外壁部22が設けられ、建物10の西側には西側外壁部23が設けられている。
建物10の一階部分14には、屋内空間として、リビング26、和室27、玄関ホール28、アルコーブ18等が設けられている。リビング26と和室27とはいずれも南側外壁部22に隣接して設けられ、いわゆる南向きの部屋となっている。リビング26は、南側外壁部22に加え西側外壁部23にも隣接しており、南西向きの角部屋となっている。
和室27は、リビング26の東隣りに配置されており、その一部がリビング26よりも南側に張り出して形成されている。この場合、南側外壁部22では、和室27に隣接した外壁部分22aがリビング26に隣接した外壁部分22bに対して南寄りに配置されており、それら各外壁部分22a,22bが和室27西側の外壁部分22cを介して連続している。
南側外壁部22の各外壁部分22a,22cの間には出隅部31が形成されている。また、建物10の南面側(正面側)には、その他に南側外壁部22と西側外壁部23との間に出隅部32が形成され、二階部分15における南側外壁部22と東側外壁部21との間に出隅部33(図1参照)が形成されている。
玄関ホール28は、玄関口16を介してアルコーブ18と連通されている。アルコーブ18は、南側外壁部22を一部後退させることにより形成された凹状空間となっており、南側に向けて開放されている。
建物10には、リビング26の空調を行う空調装置41と、和室27の空調を行う空調装置42とが設けられている。空調装置41は、リビング26に設けられた室内機43と、屋外に設けられた室外機44とを備え、室内機43と室外機44とは空調用配管45を介して接続されている。室内機43はリビング26において西側外壁部23の屋内面に設置され、室外機44は屋外において西側外壁部23を挟んで室内機43とは反対側に設置されている。空調用配管45は、冷媒管等を含んで構成され、西側外壁部23に形成された貫通孔38を通じてリビング26から屋外に引き出されている。
空調装置42は、和室27に設けられた室内機46と、屋外に設けられた室外機47とを備え、室内機46と室外機47とは空調用配管48を介して接続されている。室内機46は和室27において南側外壁部22の外壁部分22cの屋内面に設置され、室外機47は屋外において外壁部分22cを挟んで室内機46とは反対側に設置されている。空調用配管48は、冷媒管等を含んで構成され、外壁部分22cに形成された貫通孔39を通じて和室27から屋外に引き出されている。
このように各空調装置41,42では、いずれも室外機44,47が屋外において建物10の西面側、すなわち建物10の正面(南面)側とは異なる側に配置されている。これにより、室外機44,47の設置によって建物10正面の外観が損なわれることが抑制されている。
建物10において南側(正面側)の各出隅部31〜33にはそれぞれ出隅カバー50〜52が設けられている(図1も参照)。これら各出隅カバー50〜52はいずれも、平面視略L字状をなしており、出隅部31〜33を覆うようにして設けられている。
各出隅カバー50〜52のうち、出隅カバー50は出隅部32に対して設けられ、一階部分14の下端部から二階部分15のバルコニー19の腰壁49上端までの範囲に亘って上下に延びている。出隅カバー51は出隅部31に対して設けられ、一階部分14及び二階部分15の高さ方向全域に亘って上下に延びている。出隅カバー52は出隅部33に対して設けられ、二階部分15の高さ方向全域に亘って上下に延びている。このように各出隅部31〜33に出隅カバー50〜52が設けられることで、建物10正面側の外観が重厚感のあるものとなっている。
ところで本実施形態では、これらの出隅カバー50〜52を用いて外壁部21〜23の外面(屋外側面)に沿って配設される空調用配管を覆い、それによって空調用配管の屋外への露出を防止するようにしている。具体的には、出隅カバー50によって空調用配管45を覆い、出隅カバー51によって空調用配管48を覆い、出隅カバー52によって二階部分15の空調用配管(図示略)を覆うようにしている。以下、かかる特徴を有する出隅カバー50〜52の構成について図3乃至図5を用いながら具体的に説明する。
なお、各出隅カバー50〜52はいずれも基本的構成が同じであるため、以下においては特に出隅カバー51を中心に説明をする。図3は出隅カバー51及びその周辺を示す平面図である。図4は出隅カバー51及びその周辺を示す縦断面図であり、図3のA−A線断面図に相当する。図5は出隅カバー51及び同カバー51を南側外壁部22に固定するための固定用フレームの構成を示す分解斜視図である。
図3及び図4に示すように、南側外壁部22の各外壁部分22a,22cにはそれぞれ屋外側に外壁パネル55が設けられ、その屋内側(和室27側)に内壁パネル56が設けられている。外壁パネル55は、外壁面(外面)を形成する外壁面材57と、その裏面側(屋内面側)に固定された外壁フレーム58とを備える。外壁面材57は例えば窯業系サイディングにより形成されている。なお、図4では便宜上、内壁パネル56の図示を省略している。
外壁フレーム58は、断面コ字状の軽量鉄骨材からなる縦フレーム材58a及び横フレーム材58bが矩形枠状に連結されることで構成されている。外壁フレーム58の各横フレーム材58bはその溝部を下方に向けた状態で配置されており、それら各横フレーム材58bのうち上下の横フレーム材58bはそれぞれ床梁35及び天井梁(図示略)にボルト92で固定されている。
南側外壁部22の各外壁部分22a,22cのコーナ部分には、出隅部31を形成するコーナ外壁面材63が設けられている。コーナ外壁面材63は、外壁面材57と同じく窯業系サイディングにより形成されており、上記コーナ部分に沿った断面L字状をなしている。コーナ外壁面材63は、各外壁部分22a,22cの外壁面材57を繋ぐように配設されており、柱36の外側面に固定されている。
内壁パネル56は、和室27の屋内面を形成する内壁面材59と、内壁面材59の裏面側(屋外面側)に固定された内壁フレーム60とを備える。内壁面材59は、例えば石膏ボードにより形成され、内壁フレーム60は、木製の角材からなる複数のフレーム材が矩形枠状に連結されることで構成されている。内壁フレーム60は、外壁フレーム58の屋内側面に設けられた木レンガ61にビス等で固定されている。これにより、内壁パネル56が外壁パネル55に固定されている。
南側外壁部22における各外壁部分22a,22cのコーナ部分には、その屋外側に出隅カバー51が設けられている。出隅カバー51は、平面視において上記コーナ部分に沿った略L字状をなしており、各外壁部分22a,22cの屋外側に跨がって設けられている。
出隅カバー51は、外壁部分22cの屋外側に設けられた平板状の第1カバー部51aと、外壁部分22aの屋外側に設けられた平板状の第2カバー部51bとを備える。それら各カバー部51a,51bは互いの幅方向の端部同士を接続することによりL字状に配置されている。この場合、各カバー部51a,51bによって頂部53(換言するとカバー出隅部)が形成されている。
また、出隅カバー51は、さらに第1カバー部51aにおいて頂部53とは反対側の端部と外壁部分22cとに跨がって設けられた繋ぎカバー部51cと、第2カバー部51bにおいて頂部53とは反対側の端部と外壁部分22aとに跨がって設けられた繋ぎカバー部51dとを備える。これにより、出隅カバー51と南側外壁部22(両外壁部分22a,22c)との間には、これら両者22,51(51a〜51d)によって囲まれた内側空間(後述する配管設置スペース77)が形成されている。
具体的には、出隅カバー51は複数の壁面材66よりなり、それら各壁面材66が縦横に並べられる(割り付けられる)ことにより構成されている。各壁面材66は例えば窯業系サイディングにより形成されている。壁面材66は、一階部分14と二階部分15とにそれぞれ横並びに複数ずつ設けられており、本実施形態では5つずつ設けられている。
各壁面材66はそれぞれ南側外壁部22の各外壁部分22a,22cのコーナ部分に沿って横並びに配置され、図3では外壁部分22c側から外壁部分22a側にかけて順に壁面材66a、壁面材66b、壁面材66c、壁面材66d、壁面材66eが配置されている。
各壁面材66a〜66eについて詳しくは、壁面材66aは平面視L字状をなしており、繋ぎカバー部51cと第1カバー部51aの一部とを構成している。壁面材66bは平板状をなしており、第1カバー部51aの一部を構成している。壁面材66cは平面視L字状をなしており、第1カバー部51aの一部と第2カバー部51bの一部とを構成している。壁面材66dは平板状をなしており、第2カバー部51bの一部を構成している。壁面材66eは平面視L字状をなしており、繋ぎカバー部51dと第2カバー部51bの一部とを構成している。なお、図5では、各壁面材66a〜66eのうち、特に第1カバー部51aを構成している壁面材66a,66b,66cについて図示している。
出隅カバー51と南側外壁部22との間には、出隅カバー51を南側外壁部22に固定するための固定用フレーム65(以下、単にフレームという)が設けられている。フレーム65は、一階部分14と二階部分15とのそれぞれにおいて南側外壁部22の外壁部分22cと第1カバー部51aとの間、及び、外壁部分22aと第2カバー部51bとの間に配設されている。外壁部分22cと第1カバー部51aとの間に配置されるフレーム65(以下、フレーム65Aという)と、外壁部分22aと第2カバー部51bとの間に配置されるフレーム65(以下、フレーム65Bという)とは基本的に同じ構成となっており、以下においては各フレーム65A,65Bのうち特にフレーム65Aの構成について説明する。なお、図5ではフレーム65Aについて図示している。
フレーム65Aは、南側外壁部22の外壁部分22cの外面(屋外側面)に固定された複数の横フレーム材67と、出隅カバー51の裏面に固定された複数の縦フレーム材68と、それら各フレーム材67,68同士を互いに連結する連結材69とを備える。
横フレーム材67は、長尺平板状の鋼板よりなり、外壁部分22cの壁幅方向に延びるように設けられている。横フレーム材67は、上下方向に所定間隔をおいて複数(具体的には3つ)配置されている。詳しくは、各横フレーム材67はそれぞれ外壁フレーム58の横フレーム材58bに対応させて配置されており、各横フレーム材58bに対してそれぞれビス74により固定されている。なお、ビス74は外壁面材57を貫通した状態で横フレーム材58bに打ち付けられている。また、各横フレーム材67にはそれぞれ長手方向の一端部(詳しくは頂部53とは反対側の端部)に屋外側に向けて延びる取付板部72が設けられている。
縦フレーム材68は、長尺平板状の木材よりなる。縦フレーム材68は、各横フレーム材67に跨がるようにして上下に延びるように設けられている。縦フレーム材68は、外壁部分22cの壁幅方向に所定間隔をおいて複数(具体的には3つ)配置されている。各縦フレーム材68のうち、縦フレーム材68aは出隅カバー51において隣接する各壁面材66a,66bの裏面に跨がって設けられている。それら各壁面材66a,66bはそれぞれ縦フレーム材68aにビス75で固定されている。また、縦フレーム材68bは隣接する各壁面材66b,66cの裏面に跨がって設けられている。それら各壁面材66b,66cはそれぞれ縦フレーム材68bにビス75で固定されている。
連結材69は、断面コ字状をなす鋼板により形成されている。連結材69は、横フレーム材67と縦フレーム材68とが交差する各交差部においてそれら両フレーム材67,68の間にそれぞれ配設されている。連結材69は、そのウェブ69aを縦フレーム材68の屋内側面に当接させた状態で同フレーム材68にビスにより固定され、各フランジ69bの先端部を横フレーム材67の屋外側面に当接させた状態で同フレーム材67に溶接固定されている。これにより、各横フレーム材67と各縦フレーム材68とが連結材69を介して互いに連結されている。
また、連結材69は、各フレーム材67,68を外壁部分22cの壁厚み方向(以下、単に壁厚み方向という)において空調装置42の空調用配管48の外径よりも大きな間隔を隔てて連結している。また、連結材69は、その壁厚み方向の長さ(フランジ69b長さ)が各フレーム材67,68の壁厚み方向の長さすなわち各フレーム材67,68の厚みよりも十分大きくなっている。
各横フレーム材67の取付板部72の外側面には、各取付板部72に跨がって上下に延びる縦フレーム材71が固定されている。縦フレーム材71は、長尺状の木材よりなり、縦フレーム材71において取付板部72とは反対側の面には壁面材66a(詳細にはその繋ぎカバー部51c)がビスで固定されている。
なお、出隅カバー51は建物10の施工に際して、南側外壁部22の屋外側に取り付けられる(外付けされる)ものとなっている。この場合、まず南側外壁部22の各外壁部分22a,22cにフレーム65A,65Bを取り付け、その後各フレーム65A,65Bに壁面材66a〜66eを順次取り付けていくこととなる。このように、出隅カバー51を製造工場で建物ユニットに取り付けるのではなく施工現場で取り付けるようにすることで、建物ユニットの輸送に際してユニット寸法が輸送制限を超えてしまうことがないようになっている。
また、以下の説明では、出隅カバー51(各壁面材66)と、各フレーム65とを合わせたものを出隅壁部70ともいう。
出隅カバー51と南側外壁部22との間のスペースは、空調装置42の空調用配管48を配設するための配管設置スペース77となっている。配管設置スペース77は、平面視において出隅カバー51に沿った略L字状をなしており、南側外壁部22の各外壁部分22a,22cの屋外側に跨がって延びている。空調用配管48は、配管設置スペース77において外壁部分22cと第1カバー部51aとの間で上下方向に延びる向きで配設されている。
配管設置スペース77の下面側には、空調用配管48を同スペース77から屋外に引き出すための引出口81が設けられている。引出口81は、平面視において外壁部分22cと第1カバー部51aとの間に配置されており、換言すると建物10の西面側に配置されている。以下、この引出口81周辺の構成について図6乃至図8に基づいて説明する。なお、図6は引出口81周辺を示す断面図であり、図3のB−B線断面図に相当する。図7は引出口81周辺を示す底面図である。図8は引出口81周辺を示す斜視図である。
図6乃至図8に示すように、配管設置スペース77の下面側は開放されており、その開放部分のうちの一部が同スペース77内の空調用配管48を点検するための点検口80となっている。後述するように、配管設置スペース77の下方には張出基礎88が設けられるが、点検口80の下方には張出基礎88が設けられず無基礎領域91が形成されている。換言すると、点検口80は、配管設置スペース77の下面側の開放部分のうち無基礎領域91の上方(真上)領域によって形成されている。
点検口80には、当該点検口80を閉鎖する蓋部材82が設けられている。蓋部材82は、矩形平板状に形成されており、詳しくは2つ割りにされた各蓋部82a,82bよりなる。本実施形態では、蓋部材82が外壁材を用いて形成されている。外壁材としては、例えばサイディングや鋼材(望ましくは(表面)塗装あり)等が挙げられるが、必ずしもこれに限られるものではない。また、外壁材以外の材料を用いてもよい。
蓋取付部83は、各蓋部82a,82bの上面(裏面)にそれぞれ設けられ、蓋取付部83aの下面に蓋部82aがビス84で取り付けられ、蓋取付部83bの下面に蓋部82bがビス84で取り付けられている。この場合、各ビス84を取り外すことで蓋部材82の取り外しが可能となっている。
蓋部材82には、引出口81が形成されている。引出口81は、蓋部材82を板厚方向に貫通する円形状の孔部であり、各蓋部82a,82bに跨がって形成されている。引出口81は、その内径が空調用配管48の外径と同じか又はそれよりも若干大きい寸法に設定されている。引出口81には空調用配管48が挿通されており、その挿通状態で引出口81と空調用配管48との隙間にはシール材が充填されている。これにより、当該隙間から配管設置スペース77に鼠等の小動物が侵入するのが防止されている。
次に、出隅カバー51の設置部分周辺の基礎11の配置について図9に基づき説明する。図9は出隅カバー51の設置部分周辺における基礎11の配置状態を示す平面図である。なお、図9では出隅壁部70(出隅カバー51)を一点鎖線で示し、引出口81を二点鎖線で示している。
図9に示すように、基礎11は、鉄筋コンクリート造りの布基礎により構成されている。基礎11は、外壁部21〜23の下方に設けられており、当該外壁部21〜23(換言すると建物外周部)に沿って建物外周部全域に亘って配設されている。図示は省略するが、基礎11上には建物ユニットの各柱36が立設されており、それら各柱36を介して基礎11上に建物10の荷重が作用するようになっている。
出隅壁部70の下方には、張出基礎88が設けられている。張出基礎88は、基礎11の外側面から屋外側(換言すると出隅壁部70の下方)に張り出して設けられており、平面視において出隅壁部70に沿ったL字状をなしている。また、張出基礎88は、その屋外側の端部が出隅カバー51(詳細にはその内側面)とほぼ同位置に位置している。なお、この場合張出基礎88が張出基礎部に相当する。
張出基礎88は、鉄筋コンクリートにより形成されており、基礎11の外側面に複数のアンカー89を介して固定されている。アンカー89は異形鉄筋よりなり、その一部が張出基礎88内に予め埋設され、張出基礎88から露出した部分が基礎11内部に打ち込まれている。また、張出基礎88上には、出隅カバー51及びフレーム65(すなわち出隅壁部70)が載置されておらず、そのため張出基礎88上には出隅壁部70の荷重が作用しないようになっている。
なお、張出基礎88は、基礎11の打設に際し当該基礎11と一体に形成するようにしてもよい。また、張出基礎88上に出隅壁部70を載置して、出隅壁部70の荷重を張出基礎88上に作用させるようにしてもよい。
引出口81の下方には、張出基礎88が設けられていない無基礎領域91が形成されている(図6及び図8も参照)。具体的には、無基礎領域91は、蓋部材82とその下方の地盤面93との間に形成された無基礎スペースとなっている。この場合、出隅壁部70の下方領域のうち、蓋部材82の下方が無基礎領域91とされ、それ以外の領域に張出基礎88が設けられている。これにより、出隅壁部70(配管設置スペース77)の下方に張出基礎88を設けながらも、空調用配管48を配管設置スペース77から引出口81を通じて下方に引き出すことが可能となっている。
無基礎領域91は、出隅壁部70の下方領域において南側外壁部22の外壁部分22c(詳細にはその下方の基礎11)の西面側に形成されており、詳しくは同西面側における北寄りの一部に形成されている。この場合、同西面側において無基礎領域91の南側つまり建物10正面側には張出基礎88が配設されている。そのため、無基礎領域91は建物10正面側から張出基礎88によって覆われた状態となっている。
なお、図示は省略するが、出隅部32に設けられた出隅カバー50の下方にも張出基礎が設けられ、引出口の下方には張出基礎が存在しない無基礎領域が形成されている。したがって、空調装置41の空調用配管45についても引出口から下方に引き出すことが可能となっている。
ところで、建物10には、その外周部に沿って水切部材95と防鼠部材96とが設けられている。以下、これら各部材95,96の設置構成について図10及び図11に基づいて説明する。なお、図10は水切部材95及び防鼠部材96の配設経路を示す平面図である。図11は、水切部材95及び防鼠部材96の設置構成を示す断面図であり、(a)が図10のC−C線断面に相当し、(b)が図10のD−D線断面に相当し、(c)が図10のE−E線断面に相当する。
図10に示すように、水切部材95と防鼠部材96とはいずれも建物外周部に沿って同外周部全域に亘って配設されている。水切部材95は、外壁部21〜23(外壁パネル55)の壁幅方向に沿った長尺状に形成されており、例えばアルミニウム製の押し出し成形品からなる。防鼠部材96は、外壁部21〜23(外壁パネル55)の壁幅方向に沿った長尺状に形成されており、例えば鋼板よりなる。水切部材95と防鼠部材96とはいずれも外壁部21〜23と基礎11との境界高さに配設され、水切部材95が屋外側、防鼠部材96が屋内側に配置されている。
また、図示は省略するが、防鼠部材96には、板厚方向に貫通する複数の通気孔が形成されており、その通気孔を通じて床下空間の換気を行うことが可能となっている。なお、これらの通気孔は、鼠等の小動物の侵入を阻止できる程度の大きさで形成されている。
図11(a)には、建物外周部において出隅カバー51が設けられていない領域(以下、通常領域107という)における水切部材95と防鼠部材96との設置構成が示されている。なお、図11(a)は、建物外周部を通常領域107で切断した断面図となっている。同図11(a)に示すように、外壁パネル55において外壁フレーム58の下端部に配された横フレーム材58bはその溝部を下方に向けて配設されており、その配設状態において屋外側のフランジ部99の一部が外壁面材57の下端よりも下方にはみ出してはみ出し部99aとなっている。このはみ出し部99aの屋外側面には、水切部材95(95a)と防鼠部材96(96a)とが共通のビス97により固定されている(換言すると共締めされて一体とされている)。
水切部材95aと防鼠部材96aとはいずれも通常領域107において基礎11(詳細にはその屋外側縁部)と外壁面材57(外壁部21〜23の屋外側縁部)との境界部に沿って配設されている。この場合、水切部材95aは外壁面材57の屋外面を流下する水を基礎11よりも屋外側に導き排出する。また、防鼠部材96aは、基礎11の天端と外壁面材57の下端部との間を閉鎖するように設けられ、それら両者11,57の間を通じて鼠等の小動物が基礎11の内側空間(すなわち床下空間)へ侵入するのを防止している。
続いて、建物外周部のうち出隅カバー51が設けられている領域(以下、カバー配設領域108という)における水切部材95及び防鼠部材96の設置構成について説明する。カバー配設領域108では、出隅壁部70の下方に張出基礎88が設けられている領域(以下、基礎配設領域109という)と、張出基礎88が設けられていない領域(以下、基礎非配設領域110という)とで水切部材95及び防鼠部材96の設置構成が相違している。以下、これら各領域109,110における水切部材95及び防鼠部材96の設置構成について説明する。
まず、基礎配設領域109における設置構成について説明する。図11(b)は、建物外周部を基礎配設領域109で切断した断面図となっている。同図11(b)に示すように、基礎配設領域109では、出隅カバー51(詳しくは壁面材66)の裏面下部に平板状の取付プレート101が接着等により固定されている。取付プレート101は、壁面材66の幅方向に沿った長尺状とされ、その一部が壁面材66の下端部よりも下方にはみ出してはみ出し部101aとなっている。このはみ出し部101aの屋外側面には水切部材95(95b)と防鼠部材96(96b)とがそれぞれ共通のビス102により固定されている(換言すると共締めされて一体とされている)。
水切部材95bと防鼠部材96bとはいずれも張出基礎88の屋外側縁部と出隅カバー51(換言すると出隅壁部70の屋外側縁部)の下端部との境界部に沿って配設されている。この場合、水切部材95bは、出隅カバー51の屋外面を伝って流下する水を張出基礎88よりも屋外側に導き排出する。また、防鼠部材96bは、張出基礎88の天端と出隅カバー51の下端部との間を閉鎖するように設けられ、それら両者51,88の間を通じて鼠等の小動物が床下空間及び配管設置スペース77に入り込むのを防止している。
また、張出基礎88の天端と外壁面材57の下端部との間にはゴム材よりなる止水材103が配設されている。これにより、床下空間に水が入り込むのをより確実に防止している。
続いて、基礎非配設領域110における水切部材95及び防鼠部材96の設置構成を説明する。図11(c)は、建物外周部を基礎非配設領域110で切断した断面図となっている。同図11(c)に示すように、基礎非配設領域110では、水切部材95(95b)が出隅カバー51の下端部に沿って配設されているのに対し、防鼠部材96(96a)が基礎11(詳細にはその屋外側縁部)と外壁面材57(南側外壁部22の屋外側縁部)の下端部との境界部に沿って配設されている。水切部材95bは、取付プレート101のはみ出し部101aの屋外側面にビス105により固定されており、防鼠部材96aは、横フレーム材58bのフランジ部99(はみ出し部99a)の屋外側面にビス106により固定されている。
この場合、水切部材95bは、出隅カバー51の屋外面に沿って流下する水を基礎11よりも屋外側に導いて排出する。また、防鼠部材96aは、基礎11の天端と外壁面材57の下端部との間を閉鎖するように設けられ、それら両者11,57の間を通じて鼠等の小動物が床下空間に入り込むのを防止している。
また、通常領域107とカバー配設領域108(基礎非配設領域110)との境界部には同境界部に沿って水切部材95(95c)が配設され、基礎配設領域109と基礎非配設領域110との境界部には同境界部に沿って防鼠部材96(96c)が配設されている。図6には、これら各境界部に配設された水切部材95c及び防鼠部材96cの設置構成が示されている。同図6に示すように、出隅カバー51の繋ぎカバー部51cの裏面には取付プレート86が接着等により固定されている。取付プレート86には、出隅カバー51の下端部よりも下方にはみ出したはみ出し部86aが設けられ、そのはみ出し部86aの屋外側面に水切部材95cがビス87により固定されている。この場合、水切部材95cは、繋ぎカバー部51cの屋外面に沿って流下する水を屋外側に導き排出する。
フレーム65A下端部に配された横フレーム材67aには、張出基礎88の無基礎領域91側の端部上に配置された連結材69が設けられており、その連結材69に対して防鼠部材96cが取り付けられている。なお、図12には、横フレーム材67a及びその周辺部材が示されている。具体的には、当該連結材69では、各フランジ69bのうち一方が張出基礎88と無基礎領域91との境界部(換言すると、基礎配設領域109と基礎非配設領域110との境界部)上に配置されており、当該一方のフランジ69bの一部が横フレーム材67aの下端よりも下方にはみ出してはみ出し部69cを形成している。そのはみ出し部69cには防鼠部材96cがビス94により固定されている。この場合、防鼠部材96cは張出基礎88の天端における無基礎領域91側の端縁部とフランジ69b(上記一方のフランジ69b)の下端部との間を閉鎖するように設けられ、それら両者88,69bの間を通じて鼠等の小動物が配管設置スペース77に侵入するのを防止している。
ところで、本実施形態では、図13に示すように、リフォームにより事後的にリビング26と和室27との間の間仕切壁111に出入口112を形成し、その出入口112に引き戸113を設置している。そして、かかる引き戸113の設置に伴い、引き戸113が空調装置42の室内機46と干渉するのを回避すべく、室内機46の設置位置を南側外壁部22の外壁部分22cから外壁部分22aへと変更している。
この場合、かかる室内機46の設置変更に伴い、外壁部分22aに空調用配管48を挿通するための貫通孔115を新たに形成し、その貫通孔115を通じて空調用配管48を和室27から配管設置スペース77に導いている。そして、配管設置スペース77において空調用配管48を貫通孔115から引出口81まで両外壁部分22a,22cに跨がって配設している。これにより、事後的に室内機46の設置位置が変更された場合でも、空調用配管48を出隅カバー51により覆うことができ同配管48の屋外への露出を防止することができる。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
南側外壁部22において出隅部31を形成する両外壁部分22a,22cの屋外側に跨がって出隅カバー51を設け、その出隅カバー51と両外壁部分22a,22cとの間に空調用配管48を配設するための配管設置スペース77を形成した。この場合、配管設置スペース77が外壁部22の2面に跨がって形成されるため、同スペース77において空調用配管48を外壁部22に沿って2面に跨がり配設することができる。これにより、空調用配管48の露出を防止するにあたり、同配管48の配設に関する自由度を高めることができる。
基礎11の外側面から配管設置スペース77の下方に張り出すように張出基礎88を設けたため、南側外壁部22に出隅カバー51を外付けする構成にあって基礎と建物との一体感を高めることができる。
配管設置スペース77の下面側に同スペース77から空調用配管48を引き出すための引出口81を設け、その引出口81の下方に張出基礎88が存在しない無基礎領域91を形成した。この場合、配管設置スペース77の下方に張出基礎88を設けた構成にあって、空調用配管48を配管設置スペース77から下方に引き出すことができる。これにより、出隅カバー51に引出口を形成し同引出口から空調用配管48を側方に引き出す場合と比べ、建物10の美観が損なわれるのを抑制することができる。
配管設置スペース77の下面側において無基礎領域91の上方には、同スペース77内に配設された空調用配管48を点検するための点検口80を設け、その点検口80には、当該点検口80を閉鎖する蓋部材82を取り外し可能に設けた。これにより、配管設置スペース77の下方に張出基礎88を設けた構成にあって、空調用配管48の点検が可能となる。
点検口80を閉鎖するための蓋部材82に引出口81を形成したため、引出口81を点検口80と異なる場所に別途設ける必要がなく、構成の簡素化が図れる。また、この場合、引出口81が点検口80と同位置にあるため、空調用配管48は点検口80を通って配設される。そのため、点検口80から空調用配管48を点検する際に点検し易い。
引出口81を、配管設置スペース77の下面側において建物10正面側(南面側)とは異なる側(西面側)に配置し、その引出口81の下方に無基礎領域91を形成した。この場合、配管設置スペース77より空調用配管48を建物10正面側とは異なる側で引き出すことができるため、建物10正面側の美観が損なわれるのを抑制することができる。
また、無基礎領域91を建物10正面側から覆うようにして張出基礎88を設けたため、引出口81から無基礎領域91に引き出される空調用配管48を建物10正面側から覆い隠すことができる。これにより、建物10正面側の美観が損なわれるのを大いに抑制することができる。
出隅カバー51をフレーム65を介して外壁部分22a,22cに固定したため、出隅カバー51を外壁部分22a,22cの屋外側に安定した状態で設置することができる。また、フレーム65において縦フレーム材68と横フレーム材67とをそれら両者67,68間ごとに配設した連結材69を介して連結し、具体的には連結材69により各フレーム材67,68を空調用配管48の外径よりも大きな間隔を隔てて連結した。これにより、配管設置スペース77において空調用配管48を縦横いずれの向きにも配設し易くその取り回しを好適に行うことができる。
出隅カバー51を、複数の壁面材66a〜66eを並設することにより構成したため、出隅カバー51を南側外壁部22に外付けする際には、重量の小さい壁面材66単位で取付作業をすることができる。これにより、出隅カバー51の取り付けに際し作業負担の軽減を図ることができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、出隅カバー50〜52を略L字状に形成したが、出隅カバーの形状は必ずしもL字状に限定されない。例えば、建物に、平面視で外壁面から屋外側に突出するように矩形状の凸状部分が形成されている場合、その凸状部分の3面を覆うようにコ字状の出隅カバーを設けることが考えられる。その場合、出隅カバーは凸状部分に形成された2つの出隅部を跨いで配置されることとなる。
(2)上記実施形態では、建物10の南面側(正面側)の出隅部31〜33に対して出隅カバー50〜52を設けたが、建物10の北面側や西面側等、建物正面側とは異なる側の出隅部に出隅カバーを設けてもよい。すなわち、建物10において美観を高めたい面や、建物10における配管の設置位置などに応じて出隅カバーの設置位置を適宜設定すればよい。
(3)上記実施形態では、空調用配管48の引出口81を配管設置スペース77の下面側に設けたが、引出口を配管設置スペース77の側面側に設けてもよい。すなわち、出隅カバー51を厚み方向に貫通することで引出口を設けてもよい。この場合でも、引出口を出隅カバー51の下端側に設定すれば、引出口を屋外側から覆うように室外機47を設置できるため、引出口や空調用配管48が屋外に露出するのを防止することができる。
また、上記実施形態では、引出口81を建物10の西面側に設けたが、建物10の南面側(建物正面側)に設けてもよい。また、引出口を建物10の西面側及び南面側の両方に設けてもよい。
(4)上記実施形態では、配管設置スペース77の下方領域の一部に張出基礎88の存在しない無基礎領域91を形成したが、配管設置スペース77の下方領域の全部に張出基礎88を設けてもよい。ただ、この場合、上記(3)で説明したように、引出口81を配管設置スペース77の側面側に設ける必要がある。また、配管設置スペース77の下方に張出基礎88を設けないようにしてもよい。
(5)上記実施形態では、フレーム65において横フレーム材67を南側外壁部22に固定し、縦フレーム材68を出隅カバー51に固定したが、これを逆にして、縦フレーム材68を南側外壁部22に固定し、横フレーム材67を出隅カバー51に固定してもよい。
(6)上記実施形態では、配管設置スペース77(配設スペース)に空調用配管48を配設するようにしたが、同スペース77に給水配管や排水配管、雨樋などその他の配管を配設するようにしてもよい。また、配設スペースを配管設置スペースではなく、配線を配設するための配線設置スペースとして用いてもよい。例えば、電気自動車を屋外で充電可能とするために建物外周部に充電設備を設置する場合には、その充電設備まで商用電力を供給する給電用配線を外壁部に沿って配設することが考えられるが、その場合にかかる給電用配線を配線設置スペースに配設するようにしてもよい。
(7)上記実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物等、他の構造の建物にも本発明を適用してもよい。