JP2014074083A - 高熱伝導性樹脂成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 無機化合物や繊維状強化材が均一に分散し、高熱伝導性を発現し、かつ高流動で高強度の熱可塑性樹脂組成物を製造すること。
【解決手段】 押出機が備えるシリンダの先端付近から下記(D)をサイドフィードし、かつダイス部樹脂圧力を50kgf/cm2以上とすることを特徴とする、
下記(A)〜(D)を含む高熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)、
テトラポッド形状でない無機化合物(B)、
高熱伝導性樹脂組成物全量に対して1〜10体積%のテトラポッド形状の無機化合物(C)、
繊維状強化材(D)
【選択図】 図1

Description

本発明は、高熱伝導性を発現し、高流動かつ高強度な熱可塑性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、高熱伝導性樹脂でありながら低密度であり、照明器具部材や携帯型電子機器等の軽量化に貢献し得る、各種用途、特に照明器具部材として好適な熱可塑性樹脂組成物に関する。
熱可塑性樹脂成形体をパソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、照明器具部材、携帯電話等の携帯型電子機器、等種々の用途に適用する際、プラスチックは金属材料等無機物と比較して熱伝導性が低いため、発生する熱を逃がし難いことが問題になることがある。このような課題を解決するため、高熱伝導性無機物を大量に熱可塑性樹脂中に配合することで、高熱伝導性樹脂組成物を得ようとする試みが広くなされている。高熱伝導性無機化合物としては、グラファイト、炭素繊維、低融点金属、アルミナ、窒化アルミニウム、等の高熱伝導性無機物が用いられ、通常は30体積%以上、更には50体積%以上もの高含有量で樹脂中に配合する必要がある。
更には、これらフィラーを高充填した熱可塑性樹脂組成物は、フィラー含量が高いが故に射出成形性が大幅に低下してしまい、実用的な形状の金型やピンゲートを有する金型では射出成形が非常に困難であるという課題がある。フィラーを高充填した高熱伝導性熱可塑性樹脂の射出成形性を向上させるため、例えば室温で液体の有機化合物を添加する方法が例示されている(特許文献1)。
しかしながらこのような方法では、射出成形時に液体の有機化合物がブリードアウトし、金型を汚染する等の課題がある。その他種々の成形性改良法が検討されているが、未だ有効な手法が見出されていないのが現状である。
特許文献2では、熱可塑性樹脂にウィスカー酸化亜鉛や板状形状の無機化合物を配合することで、高熱伝導かつ高流動性をもつ樹脂組成物が得られる方法が報告されている。高熱伝導性かつ高流動性のものは得られたが、曲げ強度や曲げ弾性率が不十分であり、パソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、照明器具部材に適用が困難である。また、窒化ホウ素と酸化亜鉛はかさ比重が低いため、樹脂組成物の混練不足が懸念され、強度低下を招くおそれがある。
上記の通り、高熱伝導性を発現させ、かつ高流動で高強度の高熱伝導性樹脂組成物を用いたものはなかった。
特許第3948240号公報 特開2011−132264号公報
従来の方法では、高熱伝導性を発現させ、かつ高流動で高強度の高熱伝導性樹脂組成物をつくることは困難であった。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、本発明を完成した。すなわち本発明は以下の通りである。
1)押出機が備えるシリンダの先端付近から下記(D)をサイドフィードし、かつダイス部樹脂圧力を50kgf/cm2以上とすることを特徴とする、下記(A)〜(D)を含む高熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)、
テトラポッド形状でない無機化合物(B)、
高熱伝導性樹脂組成物全量に対して1〜10体積%のテトラポッド形状の無機化合物(C)、
繊維状強化材(D)
2)高熱伝導性樹脂組成物の全量に対する(A)成分の使用量が30〜90体積%で、
高熱伝導性樹脂組成物の全量に対する(B)成分の使用量が10〜55体積%で、
高熱伝導性樹脂組成物の全量に対する(C)成分の使用量が1〜10体積%で、
高熱伝導性樹脂組成物の全量に対する(D)成分の使用量が5〜35体積%であることを特徴とする、上記1)記載の高熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、各成分が均一に混練され、高熱伝導性を発現し、かつ高流動で高強度となる高熱伝導性樹脂組成物となる。
本発明の製造方法によれば、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)、所定量のテトラポッド形状でない無機化合物(B)とテトラポッド形状の無機化合物(C)及び繊維状強化材(D)が均一に分散し、高熱伝導性を発現し、かつ高流動で高強度の熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法で使用する二軸押出機の一例を模式的に示す断面図
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)としては、例えば、非晶性脂肪族ポリエステル、非晶性半芳香族ポリエステル、非晶性全芳香族ポリエステルなどの非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂、結晶性脂肪族ポリエステル、結晶性半芳香族ポリエステル、結晶性全芳香族ポリエステルなどの結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂、液晶性脂肪族ポリエステル、液晶性半芳香族ポリエステル、液晶性全芳香族ポリエステルなどの液晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂、などを用いることができる。
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)のうち、液晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂として好ましい構造の具体例としは、
−O−Ph−CO− 構造単位(I)、
−O−R3−O− 構造単位(II)、
−O−CH2CH2−O− 構造単位(III)および
−CO−R4−CO− 構造単位(IV)
の構造単位からなる液晶性ポリエステルが挙げられる。
(ただし式中のR3
Figure 2014074083
から選ばれた1種以上の基を示し、R4
Figure 2014074083
から選ばれた1種以上の基を示す(ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す)。
上記構造単位(I)は、好ましくは、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
これらのなかでは、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステルを特に好ましく用いることができる。
熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)のうち、結晶性熱可塑性ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの結晶性共重合ポリエステル等が挙げられる。
これらの中では、入手が容易であるという点からは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、等を用いることが好ましい。これらの中でも、結晶化速度が最適である点などから、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等のポリアルキレンテレフタレート熱可塑性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
本発明で製造する熱可塑性樹脂組成物において、上記ポリエステル系樹脂(A)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、その組み合わせは特に限定されず、化学構造、分子量、結晶形態、などが異なる2種以上の成分を任意に組み合わせることができる。
本発明で製造する熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)以外の各種熱可塑性樹脂をさらに含有しても良い。上記熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(以下、単に(A)以外の熱可塑性樹脂ともいう)は、合成樹脂であっても自然界に存在する樹脂であっても良い。上記(A)以外の熱可塑性樹脂を用いる場合、その使用量は、成形性と機械的特性とのバランスを考慮すると、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0重量部を超え100重量部以下であることが好ましく、0重量部を超え、50重量部以下であることがより好ましい。
上記(A)以外の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレンなどの芳香族ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニルなどの塩素系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のポリメタアクリル酸エステル系樹脂やポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンや環状ポリオレフィン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂及びこれらの誘導体樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂やポリアクリル酸系樹脂及びこれらの金属塩系樹脂、ポリ共役ジエン系樹脂、マレイン酸やフマル酸及びこれらの誘導体を重合して得られるポリマー、マレイミド系化合物を重合して得られるポリマー、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアルキレンオキシド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、フェノキシ系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、液晶ポリマー、及びこれら例示されたポリマーのランダム・ブロック・グラフト共重合体、などが挙げられる。これら(A)以外の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上の複数を組み合わせて用いることができる。2種以上の樹脂を組み合わせて用いる場合には、必要に応じて相溶化剤などを添加して用いることもできる。これら(A)以外の熱可塑性樹脂は、目的に応じて適宜使い分ければよい。
これら(A)以外の熱可塑性樹脂の中でも、樹脂の一部あるいは全部が結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂であることが、得られた樹脂組成物の熱伝導率が高くなる傾向がある点や、テトラポッド形状でない無機化合物(B)とテトラポッド形状の無機化合物(C)を樹脂中に含有させることが容易である点から好ましい。これら結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂は、樹脂全体が結晶性であっても、ブロックあるいはグラフト共重合体樹脂の分子中における特定ブロックのみが結晶性や液晶性であるなど樹脂の一部のみが結晶性あるいは液晶性であっても良い。樹脂の結晶化度には特に制限はない。また(A)以外の熱可塑性樹脂として、非晶性樹脂と結晶性あるいは液晶性樹脂とのポリマーアロイを用いることもできる。樹脂の結晶化度には特に制限はない。
樹脂の一部あるいは全部が結晶性あるいは液晶性を有する(A)以外の熱可塑性樹脂の中には、結晶化させることが可能であっても、単独で用いたり特定の成形加工条件で成形したりすることにより場合によっては非晶性を示す樹脂もある。このような樹脂を用いる場合には、テトラポッド形状でない無機化合物(B)とテトラポッド形状の無機化合物(C)の添加量や添加方法を調整したり、延伸処理や後結晶化処理をするなど成形加工方法を工夫したりすることにより、樹脂の一部あるいは全体を結晶化させることができる場合もある。
また、上記(A)以外の熱可塑性樹脂として、弾性を有する樹脂(弾性樹脂)を用いても良い。弾性樹脂を用いることで、熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度を改善しうる。
上記弾性樹脂としては、得られる樹脂組成物の衝撃強度改良効果に優れていることから、その少なくとも1つのガラス転移点が0℃以下であることが好ましく、−20℃以下であるものがより好ましい。
上記弾性樹脂として特に限定されず、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、(メタ)アクリル酸アルキルエステル−ブタジエンゴム等のジエン系ゴム;アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、シロキサンゴム等のゴム状重合体;ジエン系ゴム及び/又はゴム状重合体10〜90重量部に対して、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1つのモノマー10〜90重量部、並びに、これらと共重合可能な他のビニル系化合物10重量部以下を重合してなるゴム状共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種ポリオレフィン系樹脂;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、などのエチレン−αオレフィン共重合体;プロピレン−ブテン共重合体、等のオレフィン共重合体;エチレン−エチルアクリレート共重合体等の、各種共重合成分により変性された共重合ポリオレフィン系樹脂;エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−グリシジルメタクリレート共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、等の、各種官能成分により変性された変性ポリオレフィン系樹脂;スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−ブテン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体、等のスチレン系熱可塑性エラストマー、等が挙げられる。
上記弾性樹脂を添加する場合、その添加量は、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)の合計100重量部に対して、通常150重量部以下であり、好ましくは0.1〜100重量部であり、より好ましくは0.2〜50重量部である。150重量部を超えると、剛性、耐熱性、熱伝導性、等が低下する傾向がある。
(A)成分の使用量は、通常、本発明の高熱伝導性樹脂組成物の全量に対して30〜90体積%であるが、35〜70体積%であることがより好ましい。
(B)テトラポッド形状でない無機化合物
上記テトラポッド形状でない無機化合物(B)としては特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物に配合しうる公知の無機化合物であればよいが、本発明で製造する熱可塑性樹脂組成物が、高熱伝導率の成形品を得るための樹脂組成物である場合には、上記テトラポッド形状でない無機化合物(B)は、高熱伝導性無機化合物であることが好ましい。なお、本発明において、高熱伝導性無機化合物とは、単体での熱伝導率が3.0W/m・K以上のものをいう。
上記高熱伝導性無機化合物は、産地、不純物の種類に関しては、特に制限はなく、よく知られた種々の高熱伝導性無機化合物を用いることが可能である。具体的には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、マグネシウム、ニッケル、等の金属およびこれら金属の合金、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅、等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、カーボン、グラファイト、ダイヤモンド、等の炭素材料、等が挙げられる。また、本発明において、上記テトラポッド形状でない無機化合物(B)の形状は、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体、など種々の形状を例示することができる。上記テトラポッド形状でない無機化合物(B)は、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)とテトラポッド形状でない無機化合物(B)との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、等従来公知のものを使用することができる。中でもエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン、等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。テトラポッド形状でない無機化合物(B)の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。上記例示した種類の範疇であれば、1種以上を選択すれば良い。
本発明の製造方法により製造される熱可塑性樹脂組成物において、上記テトラポッド形状でない無機化合物(B)の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは10〜60体積%である。上記テトラポッド形状でない無機化合物(B)の含有量が10体積%よりも少なくなると、総無機化合物量が少なく、本件の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて成形体を作製した場合に、得られた成形体のテトラポッド形状でない無機化合物(B)の分布量が少なくなる。そのため、無機化合物として高熱伝導性無機化合物を使用した場合に、熱伝導性が発生しにくくなることがある。一方、上記テトラポッド形状でない無機化合物(B)の含有量が60体積%よりも多くなると、総無機化合物量が多すぎるため、本発明の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて成形体を作製した場合、得られた成形体は機械特性が大幅に低下してしまう。上記テトラポッド形状でない無機化合物
(B)成分の使用量は、通常、本発明の高熱伝導性樹脂組成物の全量に対して10〜55体積%であるが、15〜45体積%であることがより好ましい。
(C)テトラポッド形状の無機化合物
本発明で用いる上記テトラポッド形状の無機化合物(C)は、形状がテトラポッド形状であれば良く、また熱伝導率が3W/m・K以上のものであれば、産地、不純物の種類に関しては、特に制限はなく、よく知られた種々のテトラポッド形状の無機化合物を用いることが可能である。具体的には、例えば酸化亜鉛等が挙げられる。上記テトラポッド形状の無機化合物(C)は、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)とテトラポッド形状の無機化合物(C)との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、等従来公知のものを使用することができる。中でもエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン、等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。テトラポッド形状の無機化合物(C)の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
本発明の製造方法により製造される熱可塑性樹脂組成物において、(C)成分であるテトラポッド形状の無機化合物の使用量は、通常、本発明の高熱伝導性樹脂組成物の全量に対して1〜10体積%であるが、1〜5体積%であることがより好ましい。
上記テトラポッド形状の無機化合物(C)の使用量が1体積%よりも少なくなると、テトラポッド形状の無機化合物(C)の分布量が少ないが故に、テトラポッド形状による、テトラポッド形状でない無機化合物(B)や繊維状強化材(D)の配向緩和効果による高強度化や高流動性化が損なわれる。一方、上記テトラポッド形状でない無機化合物(C)の使用量が10体積%よりも多くなると、配向緩和効果が低下し、本発明の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて成形体を作製した場合、得られた成形体は強度が低下してしまう。
(D)繊維状強化材
本発明で用いる上記繊維状強化材(D)は、繊維状の強化材であり、熱伝導率が0.1〜1.5W/m・Kの範囲であるものであり、形状に特に制限はない。
(D)成分である上記繊維状強化材の使用量は、通常、本発明の高熱伝導性樹脂組成物の全量に対して5〜35体積%である。上記範囲にあると、ダイス部樹脂圧力を50g/cm2以上まで加圧し、多量に無機化合物を含有した状態の組成物を均一に混練することができるからである。
これに対して、上記繊維状強化材(D)の配合量が5体積%未満では、繊維状強化材(D)の絶対量が少なすぎるために、ダイス部樹脂圧力が上がりきらず、混練不足となることがある。また、上記繊維状強化材(D)の配合量が35体積%よりも多いと、ダイス部樹脂圧力が上がりすぎて、ストランド孔の根詰まりが発生し、生産性が低下することがある。また、樹脂組成物中の総フィラー量〔テトラポッド形状でない無機化合物(B)、テトラポッド形状の無機化合物(C)及び繊維状強化材(D)の合計量〕が過剰となる場合、本発明の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて成形体を作製した場合、成形体が脆くなってしまう恐れがある。これらの繊維状強化材はクロス状などに二次加工されていても良い。
また、上記繊維状強化材(D)は単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。これらの充填剤は各種シランカップラーやチタンカップラーなどで処理されていても良い。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記繊維状強化材(D)の他に本発明の目的を損なわない範囲で、板状、クロス状などの各種形態を有する他の繊維状強化材が含まれていても良い。
本発明の製造方法では、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)、テトラポッド形状でない無機化合物(B)、テトラポッド形状の無機化合物(C)及び繊維状強化材(D)に加えて、更に必要に応じ、造核剤などの結晶化促進剤を配合してもよい。これにより製造された熱可塑性樹脂組成物の成形性をさらに工場させることができる。
上記結晶化促進剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、尿素誘導体、ソルビトール系化合物、高級脂肪酸塩、芳香族脂肪酸塩等が挙げられ、これらは1種又は2種以上用いることができる。なかでも結晶化促進剤としての効果が高いことから、高級脂肪酸アミド、尿素誘導体、ソルビトール系化合物が好ましい。
上記高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N−ステアリルベヘン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸とセバシン酸の重縮合物等が挙げられ、特にベヘン酸アミドが好ましい。
上記尿素誘導体としては、ビス(ステアリルウレイド)ヘキサン、4,4’−ビス(3−メチルウレイド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(3−シクロヘキシルウレイド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(3−シクロヘキシルウレイド)ジシクロヘキシルメタン、4,4’−ビス(3−フェニルウレイド)ジシクロヘキシルメタン、ビス(3−メチルシクロヘキシルウレイド)ヘキサン、4,4’−ビス(3−デシルウレイド)ジフェニルメタン、N−オクチル−N’−フェニルウレア、N,N’−ジフェニルウレア、N−トリル−N’−シクロヘキシルウレア、N,N’−ジシクロヘキシルウレア、N−フェニル−N’−トリブロモフェニルウレア、N−フェニル−N’−トリルウレア、N−シクロヘキシル−N’−フェニルウレア等が例示され、特にビス(ステアリルウレイド)ヘキサンが好ましい。
上記ソルビトール系化合物としては、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール 、1,3−ベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−プロピルベンジリデン)ソルビトール 、1,3,2,4−ジ(p−i−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−s−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−t−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エトキシベンジリデン)ソルビトール 、1,3−ベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、及び1,3,2,4−ジ(p−クロルベンジリデン)ソルビトール 等が挙げられる。これらの中で、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトールが好ましい。
上記結晶化促進剤の配合量は、製造される樹脂組成物の成形性の観点から、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、0.03〜4重量部がより好ましく、0.05〜3重量部がさらに好ましい。0.01重量部未満では、結晶化促進剤としての効果が不足する可能性があり、一方、5重量部を超えると、効果が飽和する可能性があることから経済的に好ましくなく、場合によっては、得られた成形体の外観や物性が損なわれる可能性がある。
また、本発明の製造方法では、得られる熱可塑性樹脂組成物をより高性能なものにするため、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤等の熱安定剤等を、単独又は2種類以上を組み合わせて添加することが好ましい。更に必要に応じて、一般に良く知られている、安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、リン系以外の難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤等を、単独又は2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、これらの原料を押出機で混練することにより、熱可塑性樹脂組成物を製造する。上記押出機は特に限定されず、単軸押出機であってもよいし、多軸押出機であってもよいが、二軸押出機が好ましい。
図1は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法で使用する二軸押出機の一例を模式的に示す断面図である。
二軸押出機10は、スクリュ12及びシリンダ11と、シリンダ11の根元に配設された第一供給口13と、シリンダ11の先端15付近に配設された第二供給口(サイドフィーダー)14とを備える。
本発明の製造方法では、第一供給口13から、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)及びテトラポッド形状でない無機化合物(B)をシリンダ11内に投入し、スクリュ12の回転に伴って、これらを搬送、溶融、混練する。これとともに、第二供給口14から、繊維状強化材(C)を投入し、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)及びテトラポッド形状でない無機化合物(B)とテトラポッド形状の無機化合物(C)の混合物に混練する。そして、充分に混練された混合物は、ダイス18を介してストランド孔16より押出される。これにより、熱可塑性樹脂組成物のストランドをえることができる。なお、図1中、17は駆動モーターである。
本発明の製造方法では、上記繊維状強化材(D)をシリンダ11の先端付近からサイドフィードすることが重要である。ここで、シリンダの先端付近とは、シリンダ長さをL1、第二供給口からシリンダの先端までの距離をL2とした際に、L1/L2が2.0以上3.0以下となる位置が好ましい。さらに好ましくは、2.2以上2.8以下となる位置が好ましい。L1/L2が2.0よりも小さくなると、ダイス部までに熱可塑性樹脂組成物が充分に混練されない場合や、第二供給口からサイドフィードされた繊維状強化材(D)が破砕され、強度低下等を招く恐れがある。また、L1/L2が3.0よりも大きいと、第二供給口からサイドフィードされた繊維状強化材(D)が充分に混練されない場合がある。
また、本発明の製造方法では、ダイス部樹脂圧力を50kgf/cm2以上とする。上記ダイス部樹脂圧力が50kgf/cm2未満では、繊維状強化材(D)が樹脂組成物中に均一に混練されないからである。上記ダイス部樹脂圧力の好ましい上限は200kgf/cm2である。200kgf/cm2を超えると、ダイス部の樹脂圧力が高すぎることによって、樹脂組成物に因る根詰まりが発生する場合がある。また、押出機のトルクオーバーとなり、生産性もよくない。
本発明の製造方法において、上記ダイス部樹脂圧力は、スクリュ回転数にて制御することが可能である。スクリュ回転数を上げることによって、熱可塑性樹脂組成物の粘度を下げることで、ダイス部樹脂圧力を低減させることができる。スクリュ回転数の下限は50rpmで、これより低い回転数で押出すと、ダイス部樹脂圧力が高圧となり、吐出量が落ちてしまい生産性が低下してしまう。また、ダイス部の根詰まりが発生する場合があり、こちらも生産性が低下してしまう。上限は300rpmで、これより高回転で混練してしまうと、樹脂組成物中のテトラポッド形状でない無機化合物(B)やテトラポッド形状の無機化合物(C)が破砕されてしまい、熱伝導性・機械特性が低下してしまい、好ましくない。
なお、上記ダイス部樹脂圧力は、シリンダ先端15に配設したセンサ(図示せず)により測定することができる。
本発明の製造方法で使用する押出機は、L1/D(シリンダー長さ/スクリュ径)が、40以上であることが好ましい。また、上記押出機には、ベント部が設けられていることが好ましく、また、上記押出機のスクリュには、ニーディングディスクが一箇所以上設けられていることが好ましい。また、本発明の製造方法において、シリンダ内の搬送部、溶融部及び混練部の温度は、通常設定される温度であればよく、例えば、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)の溶融温度に対して、供給ゾーンで+30℃以内、溶融ゾーンで+30℃以内、混練ゾーンで+30℃以内であることが好ましい。+30℃を超えて設定すると、ダイス部より出てくる際の樹脂温度が300℃を超えてしまうことがあり、その際に樹脂劣化してしまうことがある。
また、本発明の製造方法では、第一供給口から熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)及びテトラポッド形状でない無機化合物(B)とテトラポッド形状の無機化合物(C)を投入する場合、両者を低い位置から投入することが好ましく、特に3m以下の高さから投入することが好ましい。これにより、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)及びテトラポッド形状でない無機化合物(B)とテトラポッド形状の無機化合物(C)がより均一に混練されるからである。
また、ここまで説明した製造方法では、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)及びテトラポッド形状でない無機化合物(B)とテトラポッド形状の無機化合物(C)をシリンダの根元に配設された第一供給口から供給しているが、本発明の製造方法において、上記テトラポッド形状でない無機化合物(B)やテトラポッド形状の無機化合物(C)は、必ずしもシリンダの根元から供給する必要はなく、繊維状強化材(D)より上流側で供給するのであれば、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)の供給位置より下流側の任意の位置から供給すればよい。
また、本発明の製造方法において、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)、テトラポッド形状でない無機化合物(B)、テトラポッド形状の無機化合物(C)及び繊維状強化材(D)に加えて、結晶化促進剤や熱安定剤等の他の成分を配分する場合、これらの他の成分のシリンダへの供給位置は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)又はテトラポッド形状でない無機化合物(B)やテトラポッド形状の無機化合物(C)と同じ位置であることが好ましい。
このように、本発明の製造方法では、繊維状強化材(D)を除く、全ての配合物が繊維状強化材(D)より上流側で投入されることが好ましく、特に、繊維状強化材(D)の投入位置まで搬送されてきた配合物は、繊維状強化材(D)を除く全ての配合物が充分に混練されていることが好ましい。
熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)及びテトラポッド形状でない無機化合物(B)とテトラポッド形状の無機化合物(C)や他の配合物が充分に混練された状態にあるシリンダの先端付近から繊維状強化材(D)をサイドフィードせず、繊維状強化材(D)を熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)及びテトラポッド形状でない無機化合物(B)と同じ位置からフィードすると、繊維状強化材(D)は、ダイスに搬送されるまでに破損してしまい、その結果、充分なダイス部樹脂圧力を保持することができないこととなる。
この場合、製造された熱可塑性樹脂組成物において、テトラポッド形状でない無機化合物(B)とテトラポッド形状の無機化合物(C)や繊維状強化材(D)等が均一に分散されず、ストランド切れが発生したり、ストランドの外観が羽毛状等の不良な外観を有したりすることとなる。そして、このような熱可塑性樹脂組成物を用いて成形体を作製した場合には、その成形体は機械的強度に劣るものとなる。また、繊維状強化材(D)を熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)と同じ位置でシリンダ内にフィードすると、押出機にかかる負荷トルクが高くなりすぎてしまい、吐出量が上がらず生産性が低下してしまう原因となる。
各種原料のフィード箇所としては、樹脂をダイス部とは反対のトップ部(根元)からフィードすることが好ましい。熱伝導性無機化合物のフィード箇所は、トップ部(根元)からでも良いし、トップ部より下流、繊維状強化材よりも上流であっても良い。その他添加剤等も熱伝導性無機化合物と同様なフィード箇所であることが好ましい。繊維状強化材のフィード箇所としては、樹脂中に熱伝導性無機化合物やその他添加剤が練りこまれた後、すなわち、繊維状強化材を除いた他全ての原料フィードよりも下流側であるダイス部付近でフィードされることが好ましい。樹脂と熱伝導性無機化合物やその他添加剤が練りこまれた後のダイス付近でフィードせず、樹脂等と同様な方法でフィードしてしまうと、ダイスまでに繊維状強化材が破損してしまい、ダイス付近で十分な樹脂圧が保持できずに、得られる樹脂組成物のペレット中の熱伝導性無機化合物や添加剤、繊維状強化材が均一に分散されない。また、樹脂と同様にフィードしてしまうと、押出機にかかる負荷トルクが高くなりすぎてしまい、吐出量が上がらず生産性が低下してしまう原因となる。
本発明の製造方法で製造した熱可塑性樹脂組成物は、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂成形体などさまざまな形態で、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料、等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。
また、本発明の製造方法で製造した熱可塑性樹脂組成物は、現在広く用いられている一般的なプラスチック用射出成形機が使用可能であるため、複雑な形状を有する成形体の取得も容易である。
特に、本発明の製造方法で製造した熱可塑性樹脂組成物が高熱伝導性無機化合物を含有する場合、成形加工性及び熱伝導性に極めて優れるとの特性を併せ持つことから、発熱源を内部に有する携帯電話、ディスプレー、コンピューターなどの筐体用樹脂として、非常に有用である。
また、本発明の製造方法にておいて、熱可塑性樹脂組成物の形状をペレット状にすることで、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品、等の射出成形体等に好適に用いることができる。さらには、発熱源を内部に有するファン等による強制冷却が困難な電子機器において、内部で発生する熱を外部へ放熱するために、これらの機器の外装材として好適に用いられる。
これらの中でも特に好ましい用途としては、ノートパソコンなどの携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ、等の小型あるいは携帯型電子機器類の筐体、ハウジング、外装材用樹脂等が挙げられる。また、自動車や電車等におけるバッテリー周辺用樹脂、家電機器の携帯バッテリー用樹脂、ブレーカー等の配電部品用樹脂、モーター等の封止用材料等も挙げられる。
本発明の製造方法では、テトラポッド形状でない無機化合物(B)として高熱伝導性無機化合物を用い、テトラポッド形状の無機化合物(C)含有することで高熱伝導性を発現させ、かつ高流動で高強度、を有する高熱伝導性樹脂組成物のペレットを得ることができ、該ペレットを使用すると、流動性の観点で成形性が良く、高強度かつ熱伝導性が良好であり、上記の用途における部品あるいは筐体として有用な特性を有するものである。
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
熱可塑性ポリエステル系樹脂(A−1):ポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱化学(株)製 ノバペックス PBKII/溶融温度260℃)に、フェノー
ル系安定剤であるAO−60((株)ADEKA製)、高熱伝導性無機化合物(B−1):燐片形状六方晶窒化ホウ素(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製 PT110)とテトラポッド形状の無機化合物(C−1):テトラポッド形状酸化亜鉛((株)アムテック性 パナテトラWZ−0501L)を混合したものを準備した(配合原料1)。別途、繊維状強化材(D):ガラスチョップドストランド(日本電気硝子(株)製 ECS03T−187HPL)を準備した。(配合原料2)。
配合原料1と配合原料2を別々の重量式フィーダーにセットし、(A−1)/(B−1)/(B−2)/(C−1)/(D−1)の体積比が55/10/25/5/10となるようにフィーダー吐出量をセットした後、同方向噛み合い型二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44XCT)のスクリュ根本より配合原料1を、シリンダの先端付近を投入位置として配合原料2を投入し、ダイスを介して押出すことで熱可塑性樹脂組成物のストランドを成形し、ストランドをシャワーミストで冷却した後、切断することにより、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
なお、配合原料2の投入位置は、L1/L2(シリンダ長さ/配合原料1の供給口からシリンダの先端までの距離)が2.5となる位置である。
設定温度は供給口近傍が250℃で、順次設定温度を上昇させ、押出機スクリュ先端部温度を280℃に設定した。よって、実施例では、供給ゾーンの温度が250〜260℃、溶融ゾーンの温度が260〜280℃、混練ゾーンの温度が270〜280℃である。
また、本実施例におけるダイス部樹脂圧力は、120kgf/cm2で、高熱伝導性を持ち、かつ高強度で高流動性の高熱伝導性樹脂組成物が得られた。熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率、スパイラルフローの結果を表1に示す。
(実施例2)
配合原料の種類や量を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、ペレットを得た。本実施例における製造時のダイス部樹脂圧力は130kgf/cm2であった。熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率、スパイラルフローの結果を表1に示す。
(実施例3)
配合原料の種類や量を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、ペレットを得た。本実施例における製造時のダイス部樹脂圧力は110kgf/cm2であった。熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率、スパイラルフローの結果を表1に示す。
(実施例4)
配合原料の種類や量を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、ペレットを得た。本実施例における製造時のダイス部樹脂圧力は120kgf/cm2であった。熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率、スパイラルフローの結果を表1に示す。
(実施例5)
配合原料の種類や量を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、ペレットを得た。本実施例における製造時のダイス部樹脂圧力は140kgf/cm2であった。熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率、スパイラルフローの結果を表1に示す。
(実施例6)
配合原料の種類や量を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、ペレットを得た。本実施例における製造時のダイス部樹脂圧力は110kgf/cm2であった。熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率、スパイラルフローの結果を表1に示す。
(比較例1)
配合原料の種類や量を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしたが、低強度かつ低流動性となった。ダイス部樹脂圧は100kgf/cm2であった。
(比較例2)
配合原料の種類や量を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしたが、低強度かつ低流動性となった。ダイス部樹脂圧は110kgf/cm2であった。
(比較例3)
配合原料の種類や量を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしたが、低強度かつ低流動性となった。ダイス部樹脂圧は45kgf/cm2であった。
Figure 2014074083
なお、実施例及び比較例に用いた原料は、下記の通りである。
熱可塑性ポリエステル系樹脂(A):
(A−1):ポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱化学(株)製 ノバペックス PBKII)
非ポリエステル系熱可塑性樹脂:
(A−2):ポリフェニレンスルファイド樹脂(DIC(株)製 C−201)
テトラポッド形状でない無機化合物(B):
(B−1):鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製 PT110 数平均粒子径50μm)
(B−2):板状タルク(日本タルク(株)製 MS−KY 数平均粒子径23μm)
(B−3):天然黒鉛(中越黒鉛(株)製 CPB−80 数平均粒子径309μm)
(C−1):テトラポッド形状酸化亜鉛((株)アムテック製 パナテトラWZ−0501L)
繊維状強化材(D):
(D−1):ガラス繊維(日本電気硝子(株)製 ECS03T−187H/PL)
その他添加剤:
(F−1):臭素系難燃剤(アルべマール日本(株)製 BT−93W)
(F−2):難燃助剤(日本精鉱(株)製 三酸化アンチモン PATOX−P)
(評価)
(1)熱伝導率
実施例及び比較例で得られたペレットを140℃で4時間乾燥後、75t射出成形機にて、平板の面中心部分にゲートサイズ0.8mmΦで設置されたピンゲートを通じて、150mm×80mm×厚み1.0mmの平板形状試験片に成形し、高熱伝導性樹脂成形体を得た。
得られた厚み1.0mmの成形体を切り出し、12.7mmΦの円板上サンプルを作製した。サンプル表面にレーザー光吸収用スプレ(ファインケミカルジャパン(株)製、ブラックガードスプレーFC−153)を塗布し、乾燥させた後、XeフラッシュアナライザーであるNETZSCH製、LFA447Nanoflashを用い、厚み方向及び面方向の熱拡散率を測定した。
また、熱拡散率測定で使用した円板状サンプルからDSC(JIS K 7123に準拠)にて比熱容量を測定した。そして、測定した熱拡散率及び比熱容量の値から面方向熱伝導率(W/m・K)を算出した。
(2)曲げ強度・曲げ弾性率
ASTM D790に準拠して、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。結果を表1に示した。
(3)スパイラルフロー(流動性評価)
型締力100tの射出成形機、スパイラルフロー金型を用い、シリンダ温度2
80℃(ノズル部)、金型温度100℃、金型厚み1.0mm、射出速度100mm/s、射出圧120MPaの条件にて、流動性の指標となるスパイラルフローを測定した。
10 二軸押出機
11 シリンダ
12 スクリュ
13 第一供給口
14 第二供給口(サイドフィーダー)
15 シリンダの先端
16 ストランド孔
17 駆動モーター
18 ダイス

Claims (2)

  1. 押出機が備えるシリンダの先端付近から下記(D)をサイドフィードし、かつダイス部樹脂圧力を50kgf/cm2以上とすることを特徴とする、
    下記(A)〜(D)を含む高熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
    熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)、
    テトラポッド形状でない無機化合物(B)、
    高熱伝導性樹脂組成物全量に対して1〜10体積%のテトラポッド形状の無機化合物(C)、
    繊維状強化材(D)
  2. 高熱伝導性樹脂組成物の全量に対する(A)成分の使用量が30〜90体積%で、
    高熱伝導性樹脂組成物の全量に対する(B)成分の使用量が10〜55体積%で、
    高熱伝導性樹脂組成物の全量に対する(C)成分の使用量が1〜10体積%で、
    高熱伝導性樹脂組成物の全量に対する(D)成分の使用量が5〜35体積%であることを特徴とする、請求項1記載の高熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
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