JP2014065690A - Trpa1の活性抑制剤およびtrpa1の活性抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】TRPA1の活性化を効果的に抑制することができるTRPA1の活性抑制剤およびTRPA1の活性抑制方法を提供すること。
【解決手段】TRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤、およびTRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物をTRPA1と接触させることを特徴とするTRPA1の活性抑制方法。
【選択図】なし
【解決手段】TRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤、およびTRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物をTRPA1と接触させることを特徴とするTRPA1の活性抑制方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、TRPA1の活性抑制剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、TRPA1の活性抑制剤およびTRPA1の活性抑制方法に関する。
皮膚外用剤、頭髪外用剤などの外用剤には、例えば、清涼化剤、パラベン類、アルカリ剤などが配合されている。これらの清涼化剤、パラベン類およびアルカリ剤は、一過性受容体電位チャネルの1つであるTRPA1を活性化し、活性化されたTRPA1を介して不快な刺激を引き起こすことが、本発明者らによって見出されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
しかしながら、近年、使用者の安全意識の高まりから、不快な刺激を与えないか、または不快な刺激が少ない外用剤が好まれる傾向にある。
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、TRPA1の活性を効果的に抑制するTRPA1の活性抑制剤およびTRPA1の活性抑制方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨は、
(1)TRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤、
(2)前記ビシクロヘプタンオール化合物が、式(I):
(1)TRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤、
(2)前記ビシクロヘプタンオール化合物が、式(I):
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R11およびR12はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。ただし、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10のうちの少なくとも1つの基は水酸基である)
で表される化合物である前記(1)に記載のTRPA1の活性抑制剤、
(3)TRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物をTRPA1と接触させることを特徴とするTRPA1の活性抑制方法、ならびに
(4)前記ビシクロヘプタンオール化合物が、式(I):
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R11およびR12はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。ただし、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10のうちの少なくとも1つの基は水酸基である)
で表される化合物である前記(3)に記載のTRPA1の活性抑制方法
に関する。
本発明のTRPA1の活性抑制剤およびTRPA1の活性抑制方法は、TRPA1の活性を効果的に抑制するという優れた効果を奏する。
本発明のTRPA1の活性抑制剤(以下、「活性抑制剤」という)は、TRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物を含有することを特徴とする。
前記水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物(以下、「ビシクロヘプタンオール化合物」という)は、TRPA1アゴニストによるTRPA1の活性化を抑制してTRPA1の活性を抑制する。したがって、本発明の活性抑制剤は、前記ビシクロヘプタンオール化合物を含有しているので、当該活性抑制剤をTRPA1と接触させることにより、TRPA1の活性を抑制することができる。
前記ビシクロヘプタンオール化合物としては、例えば、式(I):
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R11およびR12はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。ただし、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10のうちの少なくとも1つの基は水酸基である)
で表される化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
で表される化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基である。ただし、式(I)において、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10のうちの少なくとも1つの基が水酸基である。アルキル基の炭素数は、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、1以上であり、当該活性抑制剤をヒトに用いる場合において、ヒトの皮膚に対する十分な親和性を確保する観点から、4以下、好ましくは3以下である。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基およびtert−ブチル基が挙げられる。式(I)においては、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させるとともに、当該活性抑制剤をヒトに用いる場合において、ヒトの皮膚に対する十分な親和性を確保する観点から、R1およびR6のいずれかがメチル基であることが好ましい。
式(I)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。アルキル基は、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10におけるアルキル基と同様である。R11およびR12は、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させるとともに、当該活性抑制剤をヒトに用いる場合において、ヒトの皮膚に対する十分な親和性を確保する観点から、好ましくは水素原子またはメチル基である。
式(I)で表される化合物としては、例えば、式(I)において、R1、R11およびR12がメチル基であり、R2およびR3のいずれか一方が水酸基であり、他方が水素原子であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10が水素原子である化合物(以下、「ビシクロヘプタンオール化合物A」という);式(I)において、R1、R11およびR12がメチル基であり、R9およびR10のいずれか一方が水酸基であり、他方が水素原子であり、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が水素原子である化合物(以下、「ビシクロヘプタンオール化合物B」という);式(I)において、R1、R11およびR12がメチル基であり、R2およびR3のいずれか一方がメチル基であり、他方が水酸基であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10が水素原子である化合物(以下、「ビシクロヘプタンオール化合物C」という);式(I)において、R1、R11およびR12がメチル基であり、R9およびR10のいずれか一方がメチル基であり、他方が水酸基であり、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が水素原子である化合物(以下、「ビシクロヘプタンオール化合物D」という);式(I)において、R1、R4およびR5がメチル基であり、R2およびR3のいずれか一方が水酸基であり、他方が水素原子であり、R6、R7、R8、R9およびR10が水素原子である化合物(以下、「ビシクロヘプタンオール化合物E」という);式(I)において、R1、R4およびR5がメチル基であり、R9およびR10のいずれか一方が水酸基であり、他方が水素原子であり、R2、R3、R6、R7およびR8が水素原子である化合物(以下、「ビシクロヘプタンオール化合物F」という)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの化合物には、立体異性体も包含される。
式(I)で表される化合物の具体例としては、前記ビシクロヘプタンオール化合物Aの1つである式(Ia):
で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、前記ビシクロヘプタンオール化合物Aの1つである式(Ib):
で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、前記ビシクロヘプタンオール化合物Aの1つである式(Ic):
で表わされる化合物〔[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、前記ビシクロヘプタンオール化合物Aの1つである式(Id):
で表わされる化合物〔[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、前記ビシクロヘプタンオール化合物Cの1つである式(Ie):
で表わされる化合物〔(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕、前記ビシクロヘプタンオール化合物Cの1つである式(If):
で表わされる化合物〔(1R)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕、前記ビシクロヘプタンオール化合物Eの1つである式(Ig):
で表わされる化合物〔[1R,4S,(+)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、前記ビシクロヘプタンオール化合物Eの1つである式(Ih):
で表わされる化合物〔[1S,4R,(−)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記ビシクロヘプタンオール化合物のなかでは、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、式(I)で表わされる化合物が好ましく、ビシクロヘプタンオール化合物A、ビシクロヘプタンオール化合物B、ビシクロヘプタンオール化合物C、ビシクロヘプタンオール化合物D、ビシクロヘプタンオール化合物Eおよびビシクロヘプタンオール化合物Fがより好ましく、式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、式(Ic)で表わされる化合物〔[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、式(Id)で表わされる化合物〔[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、式(Ie)で表わされる化合物〔(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕、式(If)で表わされる化合物〔(1R)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕、式(Ig)で表わされる化合物〔[1R,4S,(+)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕および式(Ih)で表わされる化合物〔[1S,4R,(−)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕がより好ましい。
前記ビシクロヘプタンオール化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよく、ラセミ混合物であってもよい。
前記ビシクロヘプタンオール化合物の製造方法は、当該ビシクロヘプタンオール化合物の種類などによって異なることから、一概には決定することができないので、ビシクロヘプタンオール化合物の種類に応じて適宜選択することが好ましい。前記製造方法としては、例えば、タカサゴギク、竜脳樹、ラベンダーなどの植物の抽出物、藍藻類などの代謝産物などから単離する製造方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。例えば、式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕は、竜脳樹などのフタバガキ科植物、ウマノスグサ科植物、ヒノキ科植物、ニクズク科植物、ショウガ科植物などから得られる抽出物を蒸留することなどによって得ることができる。式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕は、タカサゴギクなどのキク科植物、フトモモ科植物、クスノキ科植物、オミナエシ科植物などから得られる抽出物を蒸留することなどによって得ることができる。式(Ic)で表わされる化合物〔[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕は、高圧水素添加法によって[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールを合成したときの副生成物を単離することなどによって得ることができる。式(Ie)で表わされる化合物〔(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕は、例えば、藍藻類の代謝産物を精製するこなどによって得ることができる。式(Ig)で表わされる化合物〔[1R,4S,(+)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕は、例えば、松科の植物精油またはフェンネル油を精製することなどによって得ることができる。本発明においては、ビシクロヘプタンオール化合物は、市販のものを用いることもできる。
本発明の活性抑制剤におけるビシクロヘプタンオール化合物の含有量は、ビシクロヘプタンオール化合物の種類、本発明の活性抑制剤の用途などによって異なることから、一概には決定することができないので、ビシクロヘプタンオール化合物の種類、本発明の活性抑制剤の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。本発明の活性抑制剤における前記ビシクロヘプタンオール化合物の含有量は、通常、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、ヒトの皮膚に対する十分な新和性を確保する観点から、好ましくは100質量%以下である。
本発明の活性抑制剤は、本発明の目的が妨げられない範囲内で、例えば、水、pH調整剤、キレート化剤、安定化剤などの他の成分を含有していてもよい。なお、本発明の活性抑制剤が前記成分を含有する場合、本発明の目的が妨げられない範囲で、本発明の活性抑制剤中において、前記ビシクロヘプタンオール化合物と前記成分とが複合体を形成していてもよい。
前記TRPA1は、刺激受容体としての機能を発現する一過性受容体電位チャネル(TRPチャネル)の1つである。前記TRPA1のアミノ酸配列は、配列番号:2(GenBankアクセッション番号NM_007332)に示される。なお、本発明においては、TRPA1は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの活性と同等の活性(以下、「TRPA1活性」という)を示すものであれば、配列番号:2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの変異体であってもよい。前記変異体としては、(A)配列番号:2に示される配列において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失または挿入を有し、前記TRPA1活性を示すポリペプチド、(B)配列番号:2に示される配列に対する配列同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、前記TRPA1活性を示すポリペプチドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、前記(A)において、前記「1個または数個」とは、1〜30個であるが、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1個または2個をいう。また、「配列同一性」は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列(参照配列)に対して、評価対象のアミノ酸配列(クエリー配列)を、Expect threshold:10、word size:3、Gap Costs(Existence 11、Extension 1)およびMatrix:BLSUM62の条件でBLASTアルゴリズムに基づくPROTEIN BLASTを用いてアライメントして算出された値をいう。前記(B)において、配列同一性は、前記TRPA1活性を示す範囲であればよく、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは100%である。
前記TRPA1活性としては、例えば、細胞におけるイオン流束の調節能、細胞における膜電位の調節能などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。細胞におけるイオン流束の調節能としては、例えば、細胞外から細胞内への陽イオンの輸送能などが挙げられる。また、細胞における膜電位の調節能としては、例えば、電流の発生能などが挙げられる。これらのTRPA1活性は、TRPA1アゴニストがTRPA1に結合して当該TRPA1が活性化することによって発現される。前記陽イオンとしては、例えば、カルシウムイオン、ナトリウムイオンなどが挙げられる。
前記TRPA1アゴニストとしては、例えば、メントール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アルカリ剤(例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、水酸化カリウムなど)、アリルイソチオシアネート、メチルパラベン、アリシン、イシリン、過酸化水素、ブラジキニン、アクロレイン、香油成分(例えば、シトラール、オイゲノール、シンナムアルデヒドなど)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記TRPA1の活性に対する本発明の活性抑制剤の抑制作用は、例えば、TRPA1を発現する細胞(以下、「TRPA1発現細胞」という)内におけるカルシウムイオン濃度、前記TRPA1発現細胞内における電流などに基づいて評価することができる。
TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度を用いる場合、前記抑制作用は、例えば、
(A1) TRPA1発現細胞と被験物質(活性抑制剤)とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度〔「カルシウムイオン濃度(A)」という〕を測定するステップ、
(A2) TRPA1発現細胞とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度〔「カルシウムイオン濃度(B)」という〕を測定するステップ、および
(A3) 前記ステップ(A1)で得られたカルシウムイオン濃度(A)と前記ステップ(A2)で得られたカルシウムイオン濃度(B)とを比較するステップ
を行なうことにより評価することができる(「評価法A」という)。前記ステップ(A3)において、カルシウムイオン濃度(B)と比べてカルシウムイオン濃度(A)が減少している場合、当該被験物質は、TRPA1の活性に対する抑制作用を有すると評価することができる。また、前記カルシウムイオン濃度(A)とカルシウムイオン濃度(B)との間の差が大きいほど、当該被験物質は、高い抑制作用を有すると評価することができる。
(A1) TRPA1発現細胞と被験物質(活性抑制剤)とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度〔「カルシウムイオン濃度(A)」という〕を測定するステップ、
(A2) TRPA1発現細胞とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度〔「カルシウムイオン濃度(B)」という〕を測定するステップ、および
(A3) 前記ステップ(A1)で得られたカルシウムイオン濃度(A)と前記ステップ(A2)で得られたカルシウムイオン濃度(B)とを比較するステップ
を行なうことにより評価することができる(「評価法A」という)。前記ステップ(A3)において、カルシウムイオン濃度(B)と比べてカルシウムイオン濃度(A)が減少している場合、当該被験物質は、TRPA1の活性に対する抑制作用を有すると評価することができる。また、前記カルシウムイオン濃度(A)とカルシウムイオン濃度(B)との間の差が大きいほど、当該被験物質は、高い抑制作用を有すると評価することができる。
前記カルシウムイオン濃度は、例えば、カルシウムキレート化剤に基づく蛍光試薬(以下、「蛍光カルシウム指示薬」ともいう)をTRPA1発現細胞に導入し、当該細胞内のカルシウムイオンに前記蛍光カルシウム指示薬を結合させ、カルシウムイオンと結合した蛍光カルシウム指示薬の蛍光強度を調べる方法などによって測定することができる。前記蛍光カルシウム指示薬としては、カルシウムイオンと結合し、蛍光カルシウム指示薬の量によってその蛍光特性が変化するのであればよく、例えば、FURA 2、FURA 2−AM、Fluo−3などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
TRPA1発現細胞内における電流を用いる場合、前記抑制作用は、例えば、
(B1) TRPA1発現細胞と被験物質(活性抑制剤)とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内における一定電位下での電流〔「電流(A)」という〕を測定するステップ、
(B2) TRPA1発現細胞とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内における前記(1)における電位と同じ電位下での電流〔「電流(B)」という〕を測定するステップ、および
(B3) 前記ステップ(B1)で得られた電流(A)と前記ステップ(B2)で得られた電流(B)とを比較するステップ
を行なうことにより評価することができる(「評価法B」という)。前記ステップ(B3)において、電流(B)と比べて電流(A)が小さい場合、当該被験物質は、TRPA1の活性に対する抑制作用を有すると評価することができる。また、前記電流(A)と電流(B)との間の差が大きいほど、当該被験物質は、高い抑制作用を有すると評価することができる。前記電流は、例えば、パッチクランプ法などによって測定することができる。
(B1) TRPA1発現細胞と被験物質(活性抑制剤)とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内における一定電位下での電流〔「電流(A)」という〕を測定するステップ、
(B2) TRPA1発現細胞とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内における前記(1)における電位と同じ電位下での電流〔「電流(B)」という〕を測定するステップ、および
(B3) 前記ステップ(B1)で得られた電流(A)と前記ステップ(B2)で得られた電流(B)とを比較するステップ
を行なうことにより評価することができる(「評価法B」という)。前記ステップ(B3)において、電流(B)と比べて電流(A)が小さい場合、当該被験物質は、TRPA1の活性に対する抑制作用を有すると評価することができる。また、前記電流(A)と電流(B)との間の差が大きいほど、当該被験物質は、高い抑制作用を有すると評価することができる。前記電流は、例えば、パッチクランプ法などによって測定することができる。
前記ビシクロヘプタンオール化合物によれば、TRPA1の活性発現を抑制することができる。本発明のTRPA1の活性抑制方法(以下、「活性抑制方法」という)は、TRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、前記ビシクロヘプタンオール化合物をTRPA1と接触させることを特徴とする。
本発明の活性抑制方法によれば、前記ビシクロヘプタンオール化合物が用いられているので、例えば、ヒトの皮膚に存在する感覚神経に含まれるTRPA1、口腔などの粘膜下に存在する感覚神経に含まれるTRPA1などの活性を効果的に抑制することができる。
前記ビシクロヘプタンオール化合物のなかでは、TRPA1の活性を効果的に抑制する観点から、式(I)で表わされる化合物が好ましく、ビシクロヘプタンオール化合物A、ビシクロヘプタンオール化合物B、ビシクロヘプタンオール化合物C、ビシクロヘプタンオール化合物D、ビシクロヘプタンオール化合物Eおよびビシクロヘプタンオール化合物Fがより好ましく、式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、式(Ic)で表わされる化合物〔[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、式(Id)で表わされる化合物〔[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、式(Ie)で表わされる化合物〔(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕、式(If)で表わされる化合物〔(1R)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕、式(Ig)で表わされる化合物〔[1R,4S,(+)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕および式(Ih)で表わされる化合物〔[1S,4R,(−)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕がより好ましい。
前記ビシクロヘプタンオール化合物とTRPA1との接触は、TRPA1を含む部位、例えば、皮膚を構成する細胞に前記ビシクロヘプタンオール化合物を供給することによって行なうことができる。
前記TRPA1と接触させる前記ビシクロヘプタンオール化合物の量は、本発明の活性抑制方法の適用対象などによって異なることから、一概には決定することができないので、本発明の活性抑制方法の適用対象などに応じて適宜設定することが好ましい。前記TRPA1と接触させる前記ビシクロヘプタンオール化合物の量は、例えば、本発明の活性抑制方法の適用対象が皮膚に存在する感覚神経に含まれるTRPA1である場合、通常、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、皮膚10cm2あたり、好ましくは10μg以上、より好ましくは100μg以上であり、皮膚への負荷を抑制する観点から、好ましくは100mg以下、より好ましくは10mg以下である。
TRPA1の活性に対する本発明の活性抑制方法による抑制作用は、前記活性抑制剤によるTRPA1の活性に対する抑制作用の評価と同様の手法によって評価することができる。
本発明の活性抑制方法は、皮膚における不快な刺激感との関連性があるTRPA1の活性を抑制することから、例えば、当該活性抑制方法を皮膚と接触したときに不快な刺激を与える可能性がある成分を含む外用剤を使用するときに、前記ビシクロヘプタンオール化合物と前記外用剤とを併用して当該活性抑制方法を行なうことにより、皮膚における細胞に含まれるTRPA1の活性を抑制し、不快な刺激を抑制することができる。したがって、本発明のTRPA1の活性抑制方法は、敏感肌を有するヒトが前記外用剤の使用する際に適用するのに好適である。
また、本発明の活性抑制剤によれば、皮膚における不快な刺激感との関連性があるTRPA1の活性を抑制することから、皮膚における不快な刺激を抑制することができる。したがって、本発明の活性抑制剤は、前記TRPA1アゴニストなどのTRPA1を活性化する成分が配合された外用剤において、前記成分によるTRPA1の活性化を抑制する有効成分として用いることができる。
前記外用剤は、TRPA1を活性化する成分が配合された外用剤であって、前記成分によるTRPA1の活性化を抑制する有効成分として前記TRPA1の活性抑制剤を含有することを特徴とする。したがって、かかる外用剤によれば、TRPA1を活性化する成分による不快な刺激などのTRPA1の活性化に基づく不快な刺激を低減することができる。
また、本明細書において、「TRPA1を活性化する成分」とは、TRPA1アゴニストのうち、外用剤に用いることができる成分をいう。かかるTRPA1を活性化する成分としては、例えば、前記評価法Aと同様の操作を行なったときに、ステップ(A3)において、カルシウムイオン濃度(B)と比べ、カルシウムイオン濃度(A)が増加していることを示す成分、前記評価法Bを行なったときに、ステップ(B3)において、電流(B)と比べ、電流(A)が大きいことを示す成分などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記TRPA1を活性化する成分としては、例えば、メントール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アルカリ剤(例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、水酸化カリウムなど)、アリルイソチオシアネート、メチルパラベン、アリシン、イシリン、過酸化水素、アクロレイン、香油成分(例えば、シトラール、オイゲノール、シンナムアルデヒドなど)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記外用剤中の前記活性抑制剤に含まれる前記ビシクロヘプタンオール化合物のなかでは、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、式(I)で表わされる化合物が好ましく、ビシクロヘプタンオール化合物A、ビシクロヘプタンオール化合物B、ビシクロヘプタンオール化合物C、ビシクロヘプタンオール化合物D、ビシクロヘプタンオール化合物Eおよびビシクロヘプタンオール化合物Fがより好ましく、式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、式(Ic)で表わされる化合物〔[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、式(Id)で表わされる化合物〔[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、式(Ie)で表わされる化合物〔(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕、式(If)で表わされる化合物〔(1R)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕、式(Ig)で表わされる化合物〔[1R,4S,(+)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕および式(Ih)で表わされる化合物〔[1S,4R,(−)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕がより好ましい。
外用剤の剤形は、外用剤の用途などに応じて適宜選択することができる。外用剤の剤形としては、例えば、ローション、クリーム、フォーム、乳液、ジェル、パック、粉剤、エアゾール剤、貼付剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記外用剤には、皮膚に直接適用される化粧料などの皮膚外用剤、皮膚に接触することがある頭髪外用剤などが包含される。前記外用剤は、好ましくは不快な刺激を感じやすい敏感肌用の外用剤である。
本明細書において、「敏感肌」とは、皮膚のバリア機能が低下しており、平均的な肌では反応しない物質、刺激などに対しても過敏に反応し、肌のかゆみ、肌のかさつきなどの状態が生じやすい傾向がある肌をいう。
前記皮膚外用剤としては、例えば、ボディーローション、デオドラント化粧料(例えば、デオドラントローション、デオドラントジェル、デオドラントスプレー、デオドラントロールオン、デオドラントペーパーなど)、化粧水、乳液、スキンケアクリーム、トニック、スティック化粧料、リップ、皮膚脱色剤(ボディーブリーチング剤)、洗浄料(例えば、ボディーシャンプー、クレンジング剤、洗顔剤、固形石鹸など)、シート化粧料(例えば、拭き取り用シート、シートパック剤など)、貼付剤(例えば、パップ剤など)、髭剃り用化粧料(例えば、シェービングジェルなど)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、前記頭髪外用剤としては、例えば、洗髪用化粧料(例えば、シャンプー、リンスなど)、育毛剤、ヘアカラー、ヘアブリーチ、パーマ液、ヘアスタイリング剤(例えば、ヘアトニックなど)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記外用剤における前記活性抑制剤の含有量は、前記TRPA1を活性化する成分の種類およびその量、前記TRPA1活性抑制剤の種類、外用剤の用途などによって異なることから、一概には決定することができないので、前記TRPA1を活性化する成分の種類およびその量、前記TRPA1活性抑制剤の種類、外用剤の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。通常、前記外用剤における前記活性抑制剤の含有量は、当該外用剤における式(I)で表される化合物の含有量が、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上となり、皮膚に対する負荷を抑制する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下となるように調整されることが望ましい。
前記TRPA1を活性化する成分に対する前記活性抑制剤の量は、前記TRPA1を活性化する成分の種類や量、前記TRPA1活性抑制剤の種類、外用剤の用途などによって異なることから、一概には決定することができないので、前記TRPA1を活性化する成分の種類や量、前記TRPA1活性抑制剤の種類、外用剤の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。通常、前記TRPA1を活性化する成分に対する前記活性抑制剤の量は、前記TRPA1を活性化する成分100質量部あたりの式(I)に示される化合物の量が、前記TRPA1を活性化する成分による不快な刺激を抑制する観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上となり、適度な冷感を得る観点から、好ましくは500質量部以下、より好ましくは200質量部以下となるように調整されることが望ましい。
前記外用剤には、上記「TRPA1を活性化する成分」の他に、本発明の目的が妨げられない範囲で、例えば、TRPA1を活性化する成分以外の高級アルコール、ロウ、炭化水素油、脂肪酸、油脂、エステル油、シリコーン油などの油剤;陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤;TRPA1を活性化する成分以外の多価アルコール、糖、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体などの保湿剤;増粘剤、酸化防止剤、キレート剤、TRPA1を活性化する成分以外のpH調整剤、TRPA1を活性化する成分以外の香料、色素、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン、アミノ酸、TRPA1を活性化する成分以外の防腐剤、水などの成分が配合されていてもよい。
なお、前記活性抑制剤に含まれるビシクロヘプタンオール化合物が、式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、式(Ic)で表わされる化合物〔[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、式(Id)で表わされる化合物〔[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、式(Ig)で表わされる化合物〔[1R,4S,(+)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕または式(Ih)で表わされる化合物〔[1S,4R,(−)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕である場合、前記活性抑制剤は、TRPA1の活性化に基づく不快な刺激を抑制し、しかもヒトの皮膚に清涼感を与えることができる。したがって、式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、式(Ic)で表わされる化合物〔[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕、式(Id)で表わされる化合物〔[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕、式(Ig)で表わされる化合物〔[1R,4S,(+)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕または式(Ih)で表わされる化合物〔[1S,4R,(−)]−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕を含有する活性抑制剤は、前記外用剤において、メントールなどのTRPA1を活性化する成分の代わりに清涼化剤として用いることもできる。
以上説明したように、前記外用剤は、ヒトの皮膚に対する不快な刺激を低減することができることから、不快な刺激を感じやすい敏感肌用の外用剤として有用である。
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物の1つである式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕と式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕とのラセミ混合物をその濃度が5mMとなるように25℃で溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコースおよび10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕に溶解させ、活性抑制剤を得た。
水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物の1つである式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕と式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕とのラセミ混合物をその濃度が5mMとなるように25℃で溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコースおよび10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕に溶解させ、活性抑制剤を得た。
(実施例2)
実施例1において、式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕と式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕とのラセミ混合物を用いる代わりに、式(Ic)で表わされる化合物〔[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕と式(Id)で表わされる化合物〔[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕とのラセミ混合物を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行なうことにより、活性抑制剤を得た。
実施例1において、式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕と式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕とのラセミ混合物を用いる代わりに、式(Ic)で表わされる化合物〔[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕と式(Id)で表わされる化合物〔[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕とのラセミ混合物を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行なうことにより、活性抑制剤を得た。
(実施例3)
実施例1において、式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕と式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕とのラセミ混合物を用いる代わりに、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物の1つである式(Ie)で表わされる化合物〔(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行なうことにより、活性抑制剤を得た。
実施例1において、式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕と式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕とのラセミ混合物を用いる代わりに、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物の1つである式(Ie)で表わされる化合物〔(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール〕を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行なうことにより、活性抑制剤を得た。
(比較例1)
1,8−シネオールをその濃度が5mMとなるように25℃で溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコースおよび10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕に溶解させ、試料を得た。
1,8−シネオールをその濃度が5mMとなるように25℃で溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコースおよび10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕に溶解させ、試料を得た。
(比較例2)
比較例1において、1,8−シネオールを用いる代わりに、TRPA1の活性との関連性がないグリセリンを用いたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、試料を得た。
比較例1において、1,8−シネオールを用いる代わりに、TRPA1の活性との関連性がないグリセリンを用いたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、試料を得た。
(製造例1)
ヒトTRPA1をコードするcDNA〔配列番号:1(GenBankアクセッション番号:NM_007332)に示される塩基配列の63位〜3888位のポリヌクレオチド〕を、哺乳動物細胞用ベクター〔インビトロジェン社製、商品名:pcDNA3.1(+)〕のクローニングサイトに挿入し、ヒトTRPA1発現ベクターを得た。得られたヒトTRPA1発現ベクター1μgと、遺伝子導入用試薬〔インビトロジェン社製、商品名:PLUS Reagent(プラスリージェント)、カタログ番号:11514−015〕6μLとを混合し、混合物Iを得た。また、遺伝子導入用カチオン性脂質〔インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミン(登録商標)、カタログ番号:18324−012〕4μLと、血清使用量低減培地〔インビトロジェン社製、商品名:OPTI−MEM(登録商標)I Reduced−Serum Medium(カタログ番号:11058021)〕200μLとを混合し、混合物IIを得た。
ヒトTRPA1をコードするcDNA〔配列番号:1(GenBankアクセッション番号:NM_007332)に示される塩基配列の63位〜3888位のポリヌクレオチド〕を、哺乳動物細胞用ベクター〔インビトロジェン社製、商品名:pcDNA3.1(+)〕のクローニングサイトに挿入し、ヒトTRPA1発現ベクターを得た。得られたヒトTRPA1発現ベクター1μgと、遺伝子導入用試薬〔インビトロジェン社製、商品名:PLUS Reagent(プラスリージェント)、カタログ番号:11514−015〕6μLとを混合し、混合物Iを得た。また、遺伝子導入用カチオン性脂質〔インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミン(登録商標)、カタログ番号:18324−012〕4μLと、血清使用量低減培地〔インビトロジェン社製、商品名:OPTI−MEM(登録商標)I Reduced−Serum Medium(カタログ番号:11058021)〕200μLとを混合し、混合物IIを得た。
また、5体積%二酸化炭素雰囲気中、37℃に維持された直径35mmのシャーレ上の10質量%FBS含有DMEM培地中において、5×105細胞のHEK293細胞を70%のコンフルエンシーになるまで培養した。
得られた細胞培養物に、前記混合物Iと混合物IIとを添加することにより、HEK293細胞に前記ヒトTRPA1発現ベクターを導入し、TRPA1発現細胞を得た。
(試験例1)
製造例1で得られたTRPA1発現細胞を、細胞内カルシウムイオン測定用試薬であるFURA 2−AM(インビトロジェン社製)を最終濃度5μMで含む10質量%ウシ胎仔血清含有DMEM培地中、室温で60分間インキュベーションすることにより、前記TRPA1発現細胞にFURA 2−AMを導入し、FURA 2−AM導入TRPA1発現細胞を得た。
製造例1で得られたTRPA1発現細胞を、細胞内カルシウムイオン測定用試薬であるFURA 2−AM(インビトロジェン社製)を最終濃度5μMで含む10質量%ウシ胎仔血清含有DMEM培地中、室温で60分間インキュベーションすることにより、前記TRPA1発現細胞にFURA 2−AMを導入し、FURA 2−AM導入TRPA1発現細胞を得た。
得られたFURA 2−AM導入TRPA1発現細胞を循環定温チャンバー付蛍光測定装置〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:ARGUS−50〕の各チャンバーに入れた。その後、チャンバー中のFURA 2−AM導入TRPA1発現細胞を、溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコースおよび10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕で洗浄した。
つぎに、洗浄後のFURA 2−AM導入TRPA1発現細胞が入ったチャンバーにTRPA1のアゴニストを入れ、FURA 2−AM導入TRPA1発現細胞と前記アゴニストとを混合した。なお、前記アゴニストとして、1mMメントールを含有する溶媒Aを用いた。
その後、チャンバーにおいて、励起波長340nmにおけるTRPA1発現細胞に導入され、かつ細胞内のカルシウムイオンに結合したFURA 2−AMに基づく蛍光の強度(以下、「蛍光強度340nm」という)および励起波長380nmにおけるTRPM1発現細胞に導入されたFURA 2−AMに基づく蛍光の強度(以下、「蛍光強度380nm」という)を測定した。
測定された蛍光強度340nmおよび蛍光強度380nmから、Δ蛍光強度比アゴニストを算出した。前記Δ蛍光強度比試料は、式(II):
に基づいて算出した。なお、前記対照は、溶媒Aである。
また、前記アゴニストを単独で用いる代わりに、被験試料として、実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤、実施例2で得られたTRPA1活性抑制剤、実施例3で得られたTRPA1活性抑制剤、比較例1で得られた試料または比較例2で得られた試料を用いたことを除き、前記アゴニストを用いた場合と同様にして蛍光強度340nmおよび蛍光強度380nmを測定した。
測定された蛍光強度340nmおよび蛍光強度380nmから、Δ蛍光強度比被験試料を算出した。前記Δ蛍光強度比被験試料は、式(III):
に基づいて算出した。
算出されたΔ蛍光強度比アゴニストとΔ蛍光強度比被験試料とから、TRPA1の活性に対する抑制率を算出した。なお、抑制率は、式(IV):
抑制率(%)=(Δ蛍光強度比アゴニスト−Δ蛍光強度比被験試料)/Δ蛍光強度比アゴニスト×100 (IV)
にしたがって算出した。
試験例1において、被験試料の種類と抑制率との関係を調べた結果を図1に示す。図中、1は被験試料として実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPA1活性抑制率、2は被験試料として実施例2で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPA1活性抑制率、3は被験試料として実施例3で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPA1活性抑制率、4は被験試料として比較例1で得られた試料を用いたときのTRPA1活性抑制率、5は被験試料として比較例2で得られた試料を用いたときのTRPA1活性抑制率を示す。
図1に示された結果から、実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPA活性抑制率(図1中、1)、実施例2で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPA1活性抑制率(図1中、2)および実施例3で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPA1活性抑制率(図1中、3)は、それぞれ、約90%、約92%および91%であることがわかる。一方、対照としてのグリセリンが含まれた比較例2で得られた試料を用いたときの抑制率(図中、5)は、0%以下であることから、実施例1で得られた活性抑制剤に含まれる式(Ia)で表わされる化合物〔[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オール〕と式(Ib)で表わされる化合物〔[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オール〕とのラセミ混合物、実施例2で得られた活性抑制剤に含まれる[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物および実施例3で得られた活性抑制剤に含まれる(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールは、いずれも、ブロッカーとして働き、メントールによって引き起こされるTRPA1の活性化によって発現するTRPA1の活性を抑制することが示唆される。また、比較例1で得られた試料を用いたときのTRPA1活性抑制率は、約71%であることから、実施例1で得られた活性抑制剤に含まれる[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物、実施例2で得られた活性抑制剤に含まれる[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物および実施例3で得られた活性抑制剤に含まれる(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールは、1,8−シネオールと比べ、TRPA1の活性をより効果的に抑制することがわかる。
また、ビシクロヘプタンオール化合物として、[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物、[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物または(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールを用いる代わりに、当該[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物、[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物または(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール以外のビシクロヘプタンオール化合物を用いたときも、[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物、[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物および(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールを用いたときと同様の傾向が見られる。
(試験例2)
試験例1において、メントールの代わりに、TRPA1に対する既知のアゴニストであるアリルイソチオシアナートを用い、当該アリルイソチオシアナートの濃度が20μMとなるように調整したことを除き、試験例1と同様の操作を行ない、実施例1で得られた活性抑制剤、実施例2で得られた活性抑制剤および実施例3で得られた活性抑制剤それぞれを用いたときの抑制率を算出する。その結果、実施例1で得られた活性抑制剤に含まれる[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物、実施例2で得られた活性抑制剤に含まれる[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物および実施例3で得られた活性抑制剤に含まれる(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールは、いずれも、ブロッカーとして働き、アリルイソチオシアナートによって引き起こされるTRPA1の活性化により発現するTRPA1の活性を抑制することが示唆される。
試験例1において、メントールの代わりに、TRPA1に対する既知のアゴニストであるアリルイソチオシアナートを用い、当該アリルイソチオシアナートの濃度が20μMとなるように調整したことを除き、試験例1と同様の操作を行ない、実施例1で得られた活性抑制剤、実施例2で得られた活性抑制剤および実施例3で得られた活性抑制剤それぞれを用いたときの抑制率を算出する。その結果、実施例1で得られた活性抑制剤に含まれる[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物、実施例2で得られた活性抑制剤に含まれる[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物および実施例3で得られた活性抑制剤に含まれる(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールは、いずれも、ブロッカーとして働き、アリルイソチオシアナートによって引き起こされるTRPA1の活性化により発現するTRPA1の活性を抑制することが示唆される。
また、ビシクロヘプタンオール化合物として、[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物、[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物または(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールを用いる代わりに当該[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物、[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物または(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール以外のビシクロヘプタンオール化合物を用いたときも、[1R,2S,4R,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1S,2R,4S,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物、[1S,2S,4S,(+)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2β−オールと[1R,2R,4R,(−)]−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2α−オールとのラセミ混合物または(1S)−1,2,7,7−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールを用いたときと同様の傾向が見られる。
以上の結果から、式(I)で表わされる化合物などの水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物は、TRPA1の活性を抑制することから、TRPA1の活性抑制剤として有用であることが示唆される。また、前記ビシクロヘプタンオール化合物は、TRPA1を介する不快な刺激を抑制することができることから、メントールなどのTRPA1を活性化する成分を含む外用剤において、当該成分によるTRPA1の活性化を抑制する有効成分として有用であることが示唆される。
Claims (4)
- TRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤。
- 前記ビシクロヘプタンオール化合物が、式(I):
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R11およびR12はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。ただし、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10のうちの少なくとも1つの基は水酸基である)
で表される化合物である請求項1に記載のTRPA1の活性抑制剤。 - TRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、水酸基を有するビシクロヘプタン構造を有するビシクロヘプタンオール化合物をTRPA1と接触させることを特徴とするTRPA1の活性抑制方法。
- 前記ビシクロヘプタンオール化合物が、式(I):
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R11およびR12はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。ただし、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10のうちの少なくとも1つの基は水酸基である)
で表される化合物である請求項3に記載のTRPA1の活性抑制方法。
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JP2016152789A (ja) * | 2015-02-20 | 2016-08-25 | 株式会社マンダム | 被験物質の評価方法および低浸透圧刺激抑制剤 |
WO2018180460A1 (ja) | 2017-03-30 | 2018-10-04 | 株式会社マンダム | Trpa1の活性抑制剤 |
-
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