JP2014056791A - 燃料電池システム及び燃料電池システムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガス拡散層とCNT電極の界面部での抵抗成分の発生を抑制する。
【解決手段】燃料電池システムは、電解質膜と、電解質膜の両面に配置される第1と第2の燃料電池用電極と、第1と第2の燃料電池用電極のそれぞれの外面に配置され、第1と第2の燃料電池用電極にそれぞれ反応ガスを供給する第1と第2のガス拡散層と、第1と第2のガス拡散層のそれぞれの外面に配置される第1と第2のセパレータプレートと、を有する燃料電池と、燃料電池を締結する締結部材と、を備え、第1と第2の燃料電池用電極の少なくとも一方は、CNT電極を含んでおり、締結部材は、第1と第2のセパレータプレートの間に掛かる面圧を、燃料電池を使用するときの第1の面圧よりも高い第2の面圧に上げ、且つ、燃料電池の温度が95℃以上の条件下で、燃料電池を発電させる高面圧発電の実行後に、第1と第2のセパレータプレートの間を第1の面圧で挟持する。
【選択図】図5
【解決手段】燃料電池システムは、電解質膜と、電解質膜の両面に配置される第1と第2の燃料電池用電極と、第1と第2の燃料電池用電極のそれぞれの外面に配置され、第1と第2の燃料電池用電極にそれぞれ反応ガスを供給する第1と第2のガス拡散層と、第1と第2のガス拡散層のそれぞれの外面に配置される第1と第2のセパレータプレートと、を有する燃料電池と、燃料電池を締結する締結部材と、を備え、第1と第2の燃料電池用電極の少なくとも一方は、CNT電極を含んでおり、締結部材は、第1と第2のセパレータプレートの間に掛かる面圧を、燃料電池を使用するときの第1の面圧よりも高い第2の面圧に上げ、且つ、燃料電池の温度が95℃以上の条件下で、燃料電池を発電させる高面圧発電の実行後に、第1と第2のセパレータプレートの間を第1の面圧で挟持する。
【選択図】図5
Description
この発明は、カーボンナノチューブに触媒を担持させた燃料電池用電極を有する燃料電池を備える燃料電池システム及びその製造方法に関する。
燃料電池用膜電極接合体に用いられる触媒電極に、白金を担持させたカーボンナノチューブを用いる燃料電池の製造方法が開示されている(例えば特許文献1)。この製造方法では、先ず基板上に、複数のカーボンナノチューブを基板の表面に対して垂直に成長させる。その後、カーボンナノチューブに触媒金属塩溶液を滴下して、乾燥・焼成還元することによって、複数のカーボンナノチューブに触媒金属を担持させてカーボンナノチューブ電極を形成する。そして、カーボンナノチューブ電極にアイオノマ分散溶液を滴下して、乾燥させることによって、カーボンナノチューブ電極をアイオノマによって被覆する。その後、アイオノマによって被覆されたカーボンナノチューブ電極を電解質膜に熱転写する。
この製造方法では、電解質膜にカーボンナノチューブ電極を転写した後に、カーボンナノチューブ電極の上にガス拡散層を配置する。しかし、カーボンナノチューブ電極とガス拡散層の接合・密着については十分に考慮されていなかった。そのため、密着の仕方によっては、ガス拡散層が接する側のカーボンナノチューブ電極の先端部において、アイオノマが偏析し、抵抗成分が生じて、燃料電池の発電性能を低下させる場合があった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、燃料電池システムが提供される。この形態の燃料電池システムは、電解質膜と、触媒とアイオノマとを有する燃料電池用電極であって、前記電解質膜の両面に配置される第1と第2の燃料電池用電極と、前記第1と第2の燃料電池用電極のそれぞれの外面に配置され、前記第1と第2の燃料電池用電極にそれぞれ反応ガスを拡散して供給する第1と第2のガス拡散層と、前記第1と第2のガス拡散層のそれぞれの外面に配置される第1と第2のセパレータプレートと、を有する燃料電池と、前記燃料電池を締結する締結部材と、を備え、前記第1と第2の燃料電池用電極の少なくとも一方は、カーボンナノチューブ電極を含んでおり、前記締結部材は、前記第1と第2のセパレータプレートの間に掛かる面圧を、前記燃料電池を使用するときの第1の面圧よりも高い第2の面圧に上げた状態、且つ、前記燃料電池の温度が95℃以上の条件下で、前記燃料電池に反応ガスを供給して発電する高面圧発電の実行後に、前記第1と第2のセパレータプレートの間を前記第1の面圧で挟持する。この形態の燃料電池システムによれば、アイオノマの温度を上げるとともに発電により生じた生成水によりアイオノマを湿潤させて柔軟にし、柔軟になったアイオノマを用いて面圧によりカーボンナノチューブ電極とガス拡散層とをより密着させることができるので、抵抗成分の発生を抑制し、燃料電池の発電性能の低下を抑制することが可能となる。
(2)上記形態の燃料電池システムにおいて、前記第2の面圧は、1MPa以上であってもよい。この形態の燃料電池システムによれば、第2の面圧は、1MPa以上であるので、カーボンナノチューブ電極とガス拡散層とをより密着させることが可能となる。
(3)本発明の一形態によれば、燃料電池システムが提供される。この形態の燃料電池システムは、電解質膜と、触媒とアイオノマとを有する燃料電池用電極であって、前記電解質膜の両面に配置される第1と第2の燃料電池用電極と、前記第1と第2の燃料電池用電極のそれぞれの外面に配置され、前記第1と第2の燃料電池用電極にそれぞれ反応ガスを拡散して供給する第1と第2のガス拡散層と、前記第1と第2のガス拡散層のそれぞれの外面に配置される第1と第2のセパレータプレートと、を有する燃料電池と、前記燃料電池を締結する締結部材と、を備え、前記燃料電池の熱膨張率は、前記締結部材の熱膨張率よりも大きい。この形態の燃料電池システムによれば、燃料電池の熱膨張率は、締結部材の熱膨張率よりも大きいので、燃料電池を発電させたときに生じる熱を用いて、燃料電池を締結部材よりもより大きく熱膨張させ、この熱膨張により、2枚のセパレータプレートの間に掛かる面圧を上げることができる。
(4)本発明の一形態によれば、燃料電池システムの製造方法が提供される。この形態の燃料電池システムの製造方法は、(a)基板の上に、カーボンナノチューブを形成する工程と、(b)前記カーボンナノチューブに燃料電池用触媒を担持させる工程と、(c)前記カーボンナノチューブをアイオノマで被覆させる工程と、(d)熱圧を掛けて前記カーボンナノチューブを電解質膜に接合させる工程と、(e)前記カーボンナノチューブの上にガス拡散層を配置する工程と、(f)前記ガス拡散層の上にセパレータプレートを配置して単セルを形成する工程と、(g)95℃以上の温度の条件下で前記燃料電池に反応ガスを供給して発電させている最中に前記2枚のセパレータプレートの間に掛かる面圧を、前記燃料電池を使用するときの第1の面圧よりも高い第2の面圧に上げる工程と、(h)前記発電の終了後、前記セパレータプレートに掛ける面圧を前記第1の面圧とする工程と、を備える。この形態の燃料電池システムの製造方法によれば、アイオノマの温度を上げるとともに発電により生じた生成水によりアイオノマを湿潤させて柔軟にし、柔軟になったアイオノマを用いて面圧によりカーボンナノチューブ電極とガス拡散層とをより密着させることができるので、抵抗成分の発生を抑制し、燃料電池の発電性能の低下を抑制することが可能となる。
(5)上記形態の燃料電池システムにおいて、前記工程(g)の前記第2の面圧は、1MPa以上であってもよい。この形態の燃料電池システムの製造方法によれば、第2の面圧は、1MPa以上であるので、カーボンナノチューブ電極とガス拡散層とをより密着させることが可能となる。
(6)本発明の一形態によれば、燃料電池システムの製造方法が提供される。この形態の燃料電池システムの製造方法は、(a)基板の上に、カーボンナノチューブを形成する工程と、(b)前記カーボンナノチューブに燃料電池用触媒を担持させる工程と、(c)前記カーボンナノチューブをアイオノマで被覆させる工程と、(d)熱圧を掛けて前記カーボンナノチューブを電解質膜に接合させる工程と、(e)前記カーボンナノチューブの上にガス拡散層を配置する工程と、(f)前記ガス拡散層の上にセパレータプレートを配置して単セルを形成する工程と、(g)前記単セルを積層して、積層体を形成する工程と、(h)前記単セルの熱膨張率よりも熱膨張率が小さい締結部材を用いて前記積層体を締結する工程と、(i)前記単セルを発電させて、発電により生じる熱により前記単セルを前記締結部材よりも膨張させて前記工程(h)における締結荷重による面圧よりも大きな面圧を前記セパレータプレートに掛ける工程と、を備える。この形態の燃料電池システムの製造方法によれば、燃料電池の熱膨張率は、締結部材の熱膨張率よりも大きいので、燃料電池を発電させたときに生じる熱を用いて、燃料電池を締結部材よりもより大きく熱膨張させ、この熱膨張により、2枚のセパレータプレートの間に掛かる面圧を上げることができる。
なお、本発明は種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池システムの他、燃料電池システムの製造方法、燃料電池の製造方法等の形態で実現することができる。
第1の実施形態:
図1は、第1の実施形態における燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。燃料電池システム10は、燃料電池スタック200と、燃料電池スタック200に供給する水素を貯蔵する水素タンク50と、燃料電池スタック200に圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサ60と、燃料電池システム10全体の制御をおこなう制御部80を含んでいる。
図1は、第1の実施形態における燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。燃料電池システム10は、燃料電池スタック200と、燃料電池スタック200に供給する水素を貯蔵する水素タンク50と、燃料電池スタック200に圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサ60と、燃料電池システム10全体の制御をおこなう制御部80を含んでいる。
燃料電池スタック200は、それぞれ長方形状を有する、単セル100と、エンドプレート210と、絶縁板220と、集電板230と、を備える。複数個の単セル100は積層されてスタック構造を形成している。積層された複数個の単セル100の積層方向両側には、それぞれ集電板230、絶縁板220およびエンドプレート210が、単セル100側から外側に向かってこの順に配置されている。2枚のエンドプレート210の間は、テンションロッド240及びナット250により、所定の締結力で締結されている。ナット250の少なくとも一方には、ナット250を回転させて締結力を調製するための駆動部255が設けられている。
単セル100は、それぞれが燃料電池として機能し、発電を行う単位モジュールである。単セル100としては種々の種類の燃料電池を用いることが可能であるが、本実施形態では、単セル100として固体高分子型燃料電池を用いている。単セル100は燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(空気に含まれる酸素)との電気化学反応により発電を行う。なお、本実施形態において、各単セル100の構成や仕様は互いに同一である。各単セル100の具体的な構成については、図2を用いて後述する。本実施形態では、長方形状を有する単セル100の長手方向を「x方向」、単セル100の短手方向を「y方向」、単セル100の積層方向を「z方向」とも呼ぶ。x方向、y方向、および、z方向は互いに直交する。
水素タンク50に貯蔵された燃料ガスとしての水素は、減圧弁51によって減圧された後に水素ガス供給路53に放出され、水素ガス供給路53に設けられた圧力調整弁52によって所定の圧力に調整されて、燃料電池スタック200に供給される。燃料電池スタック200に供給された水素を含有するガス(アノード供給ガス)は、燃料電池スタック200の内部に形成されるアノードガス供給マニホールド(図示せず)を介して各単セル100に供給され、各単セル100における発電に利用される。各単セル100において利用されなかった水素を含有するガス(アノード排ガス)は、燃料電池スタック200の内部に形成されるアノードガス排出マニホールド(図示せず)を介して集約され、アノード排ガス路54を介して燃料電池スタック200の外部に排出される。なお、燃料電池システム10は、アノード排ガスを供給側に再循環させる構成としてもよい。
エアコンプレッサ60は、外部から取り込んだ酸化剤ガスとしての空気を加圧し、酸化ガス供給路61を介して燃料電池スタック200に供給する。燃料電池スタック200に供給された酸素を含む空気(カソード供給ガス)は、カソードガス供給マニホールド(図示せず)を介して各単セル100に供給され、各単セル100における発電に利用される。各単セル100において利用されなかった空気(カソード排ガス)は、カソードガス排出マニホールド(図示せず)を介して集約され、カソード排ガス路63を介して燃料電池スタック200の外部に排出される。
冷媒循環ポンプ71は、冷媒循環流路72を介して、燃料電池スタック200に冷媒を供給する。燃料電池スタック200で暖められた冷媒は、ラジエータ70で冷却され、再び燃料電池スタック200に供給される。冷媒は、冷媒供給マニホールド(図示せず)を介して各単セル100に導かれ、各単セル100を冷却する。各単セル100を冷却した後の冷媒は、冷媒排出マニホールド(図示せず)を介して集約され、冷媒循環流路73を介してラジエータ70に循環される。冷媒としては、水や、水とエチレングリコールとの混合液などの不凍水を用いることができる。本実施形態では、冷媒として液体を用いているが、冷媒として空気を用いる構成であってもよい。
制御部80は、図示しないCPUやメモリ等を備えたコンピュータである。制御部80は、燃料電池システム10の各部に配された温度センサや圧力センサ、電圧計等からの信号を受領し、受領した信号に基づき燃料電池システム10全体の制御を行う。
図2は、本発明の一実施形態としての燃料電池の概略構成を示す説明図である。図2では、単セル100の断面構造を模式的に示している。図示するように、この単セル100は、膜電極接合体110の両面を、アノードガス拡散層150とカソードガス拡散層160で挟持し、さらに、アノード側セパレータプレート170、および、カソード側セパレータプレート180で挟持することによって構成されている。
膜電極接合体110は、プロトン伝導性を有する電解質膜120の両面に、それぞれ、アノード触媒層130、および、カソード触媒層140を接合することによって構成されている。本実施形態では、電解質膜120として、ナフィオン(登録商標)を用いるものとした。電解質膜120として、プロトン伝導性を有する他の電解質膜を用いるようにしてもよい。また、本実施形態では、カソード触媒層140として、白金を担持したカーボンナノチューブ電極とアイオノマ(電解質)とを含む触媒層を用いるものとした。また、アノード触媒層130については、白金を担持したカーボン粒子電極とアイオノマ(電解質)とを含む触媒層を用いた。なお、アノード触媒層130についても、白金を担持したカーボン粒子電極とアイオノマ(電解質)とを含む触媒層の代わりに、白金を担持したカーボンナノチューブ電極とアイオノマ(電解質)とを含む触媒層を用いても良い。
アノード触媒層130の外面にはアノードガス拡散層150が配置され、カソード触媒層140の外面にはカソードガス拡散層160が配置されている。また、本実施形態では、ガス拡散層150、160として、カーボンクロスを用いるものとした。なお、ガス拡散層150、160として、カーボンペーパ、金属製多孔体等、ガス拡散性、および、導電性を有する他の材料を用いるものとしてもよい。
アノードガス拡散層150の外面には、アノード側セパレータプレート170が配置されている。アノード側セパレータプレート170におけるアノードガス拡散層150と当接する側の表面には、リブ、および、溝が形成されており、この溝は、燃料ガスとしての水素、および、アノードから排出されるアノード排ガスを流すためのアノードガス流路170pを構成する。また、カソードガス拡散層160の外面には、カソード側セパレータプレート180が配置されている。カソード側セパレータプレート180におけるカソードガス拡散層160と当接する表面にも、リブ、および、溝が形成されており、この溝は、酸化剤ガスとしての空気、および、カソードから排出されるカソード排ガスを流すためのカソードガス流路180pを構成する。なお、図示は省略しているが、アノード側セパレータプレート170、および、カソード側セパレータプレート180の外面には、それぞれ冷却水を流すための冷却水流路も形成されている。アノード側セパレータプレート170、および、カソード側セパレータプレート180の材料としては、カーボンや、金属など、導電性を有する種々の材料を適用可能である。
図3は、燃料電池の概略製造工程を示す説明図である。ステップS10では、膜電極接合体110を作製する。この工程については、後述する。ステップS20では、膜電極接合体110に、ガス拡散層150、160を配置し、さらに、セパレータプレート170、180を配置して、単セル100を作成する。ステップS30では、単セル100を積層して燃料電池スタック200を作成する。ステップS40では、燃料電池スタック200の締結力を上げて、単セル100のカソード触媒層140とカソードガス拡散層160との間に掛かる面圧を上げる。本実施形態では、燃料電池スタック200に、燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(空気)とを供給して発電させた状態で、カソード触媒層140とカソードガス拡散層160との間に、燃料電池スタック200の通常運転時における面圧以上の面圧を所定期間掛ける。
図4は、図3のステップS10の膜電極接合体作成工程を示す説明図である。ステップS100では、シリコン基板500上にカーボンナノチューブ142を成長させる。まず、シリコン基板500上に、カーボンナノチューブ142の成長核となる鉄触媒を、スパッタリング等によってほぼ均一に付着させる。この鉄触媒の厚さは、50〜200nm程度とすることが好ましい。なお、この鉄触媒の厚さは、カーボンナノチューブ142の芯間ピッチ、あるいはカーボンナノチューブ142の本数密度(単位面積当たりのカーボンナノチューブ142の本数)に影響を与える。例えば、鉄触媒の厚さが厚いほど、カーボンナノチューブ142の芯間ピッチを短く、あるいは、カーボンナノチューブ142の本数密度を大きくすることができる。なお、鉄触媒の厚さは、所望するカーボンナノチューブ142の芯間ピッチや本数密度との関係で実験的に決定することが好ましい。鉄触媒のスパッタリングの後、シリコン基板500を約700℃に加熱してアニール処理を行う。アニール処理は、シリコン基板500上の鉄触媒の状態を、均一に付着された状態から点状の成長核の状態に変化させる。
次に、シリコン基板500上の鉄触媒を成長核として、カーボンナノチューブ142を成長させる。本実施形態では、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、カーボンナノチューブ142を成長させる。まず、アニール処理が行われたシリコン基板500を石英管内に配置し、減圧下、ヘリウムガスを流しながら、石英管内の温度を約700℃まで上昇させる。その後、ヘリウムガスの一部をアセチレンガスに置換して、ヘリウムガスとアセチレンガスの混合ガスを流し、カーボンナノチューブ142を成長させる。一般に、ヘリウムガスとアセチレンガスの混合ガスを流す時間を長くすれば、カーボンナノチューブ142の長さを長くすることができる。なお、芯間ピッチが短い(本数密度が大きい)場合には、ヘリウムガスとアセチレンガスを流す時間が同じ長さでも、カーボンナノチューブ142の長さは短くなる。したがって、ヘリウムとアセチレンガスの混合ガスを流す時間は、カーボンナノチューブ142の長さと芯間ピッチの大きさを考慮して、実験的に求めることが好ましい。その後、混合ガスをヘリウムガスのみに切り替えて流し、カーボンナノチューブの成長を停止させ、自然冷却を行う。
CVD法でシリコン基板上にカーボンナノチューブ142を成長させる場合、隣接するカーボンナノチューブ142によりシリコン基板500の表面に沿った方向の成長が制限される。そのため、カーボンナノチューブ142は、シリコン基板500の法線に沿った方向に成長する。すなわち、カーボンナノチューブ142は、シリコン基板500に対して垂直成長し易い。本実施例では、炭素源としてアセチレンガスを用いたが、アセチレンの代わりに、メタンと水素の混合ガスを用いても良い。
ステップS110では、カーボンナノチューブ142に白金144を担持させる。例えば、ジニトロジアミン白金酸溶液をエタノールで希釈し、希釈した白金塩溶液をカーボンナノチューブ142に滴下する。その後、乾燥・焼成還元することによって、カーボンナノチューブ142に白金144を担持させる。なお、白金144の担持量が電極1平方センチメートル当たり0.1[mg]となるように、白金塩溶液の白金濃度を調製し、また、滴下回数を調整することが好ましい。
ステップS120では、カーボンナノチューブ142の表面にアイオノマ146を被覆させる。具体的には、アイオノマ146の分散溶液をカーボンナノチューブ142に滴下して乾燥させることにより、カーボンナノチューブ142の表面を、アイオノマ146により被覆させる。なお、アイオノマ146の分散溶液は、分散溶液中含まれるアイオノマ146の質量(I)と、被覆対象であるカーボンナノチューブ142の炭素の質量(C)との比であるアイオノマ/カーボン質量比(I/C)が1.5となるように調製する。I/Cの値を大きくすると、アイオノマ146の被覆厚さが厚くなり、I/Cの値を小さくすると、アイオノマ146の被覆厚さが薄くなる。
ステップS130では、カーボンナノチューブ142を電解質膜120に接合させて、カソード触媒層140を形成する。具体的には、カーボンナノチューブ142の先端側に電解質膜120を配置し、温度140[℃]で、5[MPa]の圧力を掛けて、カーボンナノチューブ142を電解質膜120に接合(熱転写)させる。これらの工程により、カソード触媒層140を形成する。
ステップS140では、電解質膜120の他方の面に触媒インクを塗布・乾燥させて、アノード触媒層130を形成する。まず、カーボン粒子(例えばカーボンブラック)にエタノールを加え、さらに、塩化白金酸水溶液を加えて攪拌する。その後、カーボン粒子を含む溶液を濾過することにより、カーボン粒子に白金を担持させて、白金担持カーボン粒子を得る。次に、白金担持カーボン粒子にエタノールと水とアイオノマを加えて、攪拌し、さらに超音波分散を行うことで、触媒インクを作成する。次に、触媒インクを電解質膜120の他方の面に塗布し、乾燥させることにより、アノード触媒層130を形成する。なお、図4において、ステップS140の膜電極接合体110の図は、ステップS130に示した図と、上下をひっくり返して表示している。以上の工程により、膜電極接合体110を作成する。なお、上記製造工程の説明では、アノード触媒層130について、白金担持カーボン粒子を含む触媒層として説明したが、アノード触媒層130について、カソード触媒層140と同様にカーボンナノチューブ電極を含む触媒層を用いても良い。この場合には、カソード触媒層140と同様に熱転写により、電解質膜120にアノード触媒層を形成しても良い。
図5は、図3のステップS40の面圧増加工程を説明する説明図である。ステップS410では、制御部80は、燃料電池スタック200に、燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(空気)とを供給して発電させる。その状態で、制御部80は、駆動部255(図1)を用いてナット250を締めさせ、締結加重を増加させる。制御部80は、燃料電池スタック200に所定時間発電をさせた後、発電を停止させる。発電時間としては、5秒以上1時間以下が望ましい。なお、発電中は、[(理論値電圧−セル電圧)×電流密度]の熱量が生じるので、制御部80は、この熱量と単セルの熱抵抗とを用いてカソード触媒層140の温度を計算し、カソード触媒層140の温度がガラス転移温度Tg以下となるように、冷却水を循環させることが好ましい。なお、単セル100の電気抵抗Rを監視できる構成を備えてもよい。この場合、制御部80は、R×(電流密度)2の演算により、単セル100の発熱量を算出し、カソード触媒層140の温度を計算することができる。また、燃料電池スタック200を構成する単セル100のうち特定の単セル100について、面内電流分布や面内電気抵抗分布を測定できる装置を備えても良い。カソード触媒層140の温度がガラス転移温度Tg以下であっても、発電反応により生じる生成水によりカソード触媒層140のアイオノマ146(図4)は軟化するので、カソード触媒層140の先端とカソードガス拡散層160との間を密着させることが可能となる。次のステップS420では、制御部80は、駆動部255(図1)を用いてナット250を緩めさせ、燃料電池スタック200の締結加重を燃料電池スタック200の形成時の締結荷重とする。
上記実施形態では、制御部80は、燃料電池スタック200を発電状態にした後に、燃料電池スタック200の締結力を上げているが、燃料電池スタック200の締結力を上げた後に、燃料電池スタック200を発電状態にしても良い。また、上記実施形態では、燃料電池スタック200を形成した後に、発電及び締結力の増大を行っているが、燃料電池スタック200の形成する前の単セル100の状態で、単セル100に対して発電を実行させると共に、単セル100の2枚のセパレータプレート170、180の間に掛かる面圧を増大させても良い。
ところで、本実施形態においては、略垂直配向したカーボンナノチューブ142を含むカソード触媒層140を用いる。この理由について、図6を用いて説明する。図6は、カーボン粒子電極を用いた触媒層の発電時の動作を示す説明図である。図6に示すように、白金144を担持したカーボン粒子148を被覆するアイオノマ149は、図4に示す垂直配向したカーボンナノチューブ142を被覆するアイオノマ146同様、電解質膜120側から移動してきたプロトンを本図上方、カソードガス拡散層160側(図示せず)に運搬する役割を果たす。しかしながら、このアイオノマ149は、カーボン粒子148同士を結合する接着剤としての役割をも果たしている。そのため、本工程によってカーボン粒子148を露出すると、露出したカーボン粒子148がバラバラとなってしまい触媒層構造を維持できない。
この点、図4に示す垂直配向したカーボンナノチューブ142は、カーボンナノチューブ142の成長の基端側(シリコン基板500側、カソードガス拡散層160側)から成長端側(電解質膜120側)まで連続した結晶体構造を有している。そのため、本工程によって垂直配向したカーボンナノチューブ142の先端を露出させたとしても、触媒層構造を維持できる。以上のことから、本実施形態では、垂直配向したカーボンナノチューブ142を電極としたカソード触媒層140を用いている。なお、燃料電池の触媒層は電解質膜120の両側に設けられるため、電解質膜120の片面にカーボンナノチューブ電極を含む触媒層を設け、反対面にカーボン粒子を用いた触媒層を設ける場合が考えられる。その場合、カーボンナノチューブ電極を含む触媒層側にのみ本工程を実施すればよい。
図7は、基板に成長させた垂直配向カーボンナノチューブの一例を示す断面模式図である。図7は、図4のステップS100の処理を終えた状態を示す。カーボンナノチューブ142は、第1のカーボンナノチューブ142Aと、第2のカーボンナノチューブ142Bとを含んでいる。第1のカーボンナノチューブ142Aは、シリコン基板500と連結し、且つ、シリコン基板近傍の直径が太い。第2のカーボンナノチューブ142Bは、シリコン基板500と連結せず、且つ、ほぼ全長に亘ってほぼ同じ直径である。図7に示すように、第1のカーボンナノチューブ142Aは、第2のカーボンナノチューブ142Bよりも長い。この様な構造は、例えば、カーボンナノチューブの炭素源としてメタンと水素を含む混合ガスを用い、カーボンナノチューブ142の成長時に以下のように制御することで実現が可能である。
シリコン基板500の温度を高く保持しつつ、炭素源(例えばメタン)及び、水素の供給を所定の時間止める。この場合、各カーボンナノチューブの成長反応の停止時期にバラツキが生じる。その結果、当該所定の時間内に成長した部分が、他の部分よりもカーボンナノチューブの存在が疎な部分となる。すなわち、成長が止まりシリコン基板500から外れたカーボンナノチューブが第2のカーボンナノチューブ142Bとなるのに対し、成長し続けてシリコン基板500から外れなかったカーボンナノチューブが第1のカーボンナノチューブ142Aとなる。なお、シリコン基板の温度を保持し、且つ炭素源及び、水素の供給をいずれも止める時間は、破断しやすい厚みの層を生成できる時間であれば特に限定されないが、5分から15分間とすることが好ましい。
上記工程の後、シリコン基板500との界面における第1のカーボンナノチューブ142Aの直径をより大きくする工程を有することが好ましい。この工程は、シリコン基板500の温度を保持し、且つ、炭素源を供給しつつ水素の供給を止めて、カーボンナノチューブを成長させることで実現することが出来る。水素は、カーボンナノチューブの成長工程においては、カーボンナノチューブをエッチングする作用を有する。したがって、カーボンナノチューブの成長工程において、いわゆるエッチング作用のある水素の供給を止めることにより、水素の供給を止めた所定の時間内に成長した部分のカーボンナノチューブの直径は、他の部分よりも大きくなる。なお、第2のカーボンナノチューブ142Bは、シリコン基板500から外れ、成長核となる鉄触媒を有していないので、成長しない。その結果、第1のカーボンナノチューブ142Aのシリコン基板500との界面の直径を大きくして破断し難くすることができる。そしてカーボンナノチューブ142を電解質膜120に熱転写する際に、触媒粒子(白金144)の脱落を防止できる略垂直配向したカーボンナノチューブ142を成長させたシリコン基板500を得ることが出来る。なお、水素の供給を止める時間は、カーボンナノチューブ142Aの成長速度にもよるが、1分〜10分間程度が好ましい。
図7に示すカーボンナノチューブの本数密度と太さは、以下の通りである。カーボンナノチューブの表層部(成長先端部)では、カーボンナノチューブ142の本数密度は3.24×109本/cm2であり、直径のピーク値は、19〜20nmである。カーボンナノチューブの中央部では、カーボンナノチューブ142の本数密度は3.23×109本/cm2であり、直径のピーク値は、19〜20nmである。なお、表層部と中央部では、カーボンナノチューブ142は、第1のカーボンナノチューブ142Aと第2のカーボンナノチューブ142Bとを含んでいる。シリコン基板500から5〜10μm離れた基板近傍部では、カーボンナノチューブ142の本数密度は1.89×109本/cm2であり、直径のピーク値は、19〜20nmである。この基板近傍部では、第1のカーボンナノチューブ142Aの数が多く、第2のカーボンナノチューブ142Bの数が少ないため、カーボンナノチューブ142の本数密度は、表層部と中央部における本数密度の約半分強となっているが、カーボンナノチューブ142の直径のピークは、表層部と中央部におけるカーボンナノチューブ142の直径のピークとほぼ同じである。シリコン基板500から0〜5μm離れた基板界面部では、カーボンナノチューブ142の本数密度は1.84×109本/cm2であり、直径のピーク値は、21〜22nmである。この基板界面部では、第1のカーボンナノチューブ142Aの数が多く、第2のカーボンナノチューブ142Bの数が少ないため、カーボンナノチューブ142の本数密度は、表層部と中央部における本数密度の約半分強であり、基板近傍部における本数密度とほぼ同じとなっているが、カーボンナノチューブ142の直径のピークは、表層部、中央部、基板近傍部におけるカーボンナノチューブ142の直径のピークよりも大きくなっている。
本実施例では、基板近傍部、すなわち、電解質膜120への転写後においてカソードガス拡散層140と接する部分におけるカーボンナノチューブ142の本数密度が小さい。このようなカーボンナノチューブ142の本数密度が小さい領域には、他の領域に比べてアイオノマ146が多く付着し偏析する。アイオノマ146はプロトン電導性を有しているが電子電導性自体は有していないので、電子電導性を有するカーボンナノチューブ142よりも電気抵抗が大きい。本実施例では、発電による加熱と生成水により、アイオノマ146を軟化させ、面圧を高めることでカーボンナノチューブ142とカソードガス拡散層160との間をより密着させ、アイオノマ146の偏析による電気抵抗の増加を抑制することができる。
また、本実施例では、シリコン基板の基板近傍部から基板界面部におけるカーボンナノチューブ142の本数密度が、表層部から中央部におけるカーボンナノチューブ142の本数密度よりも小さいことに加えて、基板界面部におけるカーボンナノチューブ142の直径が基板近傍部におけるカーボンナノチューブ142の直径よりも大きく形成されている。そのため、カーボンナノチューブ電極を電解質膜120に熱転写するときに、基板近傍部のカーボンナノチューブ142は、基板界面部のカーボンナノチューブ142、あるいは、表層部から中央部にかけてのカーボンナノチューブ142よりも破断しやすい。その結果、カーボンナノチューブ電極の電解質膜120への熱転写時には、基板近傍部のカーボンナノチューブ142が切れ易く、シリコン基板500には、成長核となる鉄触媒が残理易くなり、シリコン基板500の再利用が可能となる。
図8は、カーボンナノチューブ電極を用いた燃料電池について、発電中に締結力を増大させる処理を行う前後の電流密度とセル電圧との関係を示す説明図である。図9は、カーボン粒子電極を用いた燃料電池について、発電中に締結力を増大させる処理を行う前後の電流密度とセル電圧との関係を示す説明図である。図8、9の横軸は電流密度であり、縦軸はセル電圧である。また、発電中に締結力を増大させる処理後の電流密度とセル電圧は、締結荷重を元の状態に戻した状態で測定されている。
発電中に締結力を増大させる処理を行う前後を比較すると、同じ電流密度で引いた場合、処理後では、カーボンナノチューブ電極を用いた場合には、図8に示すように、より大きなセル電圧を得ることができることがわかる。すなわち、カーボンナノチューブ電極を用いる場合には、発電中に締結力を増大させる処理を行うことにより、発電性能の向上を実現することが可能となる。これに対し、カーボン粒子電極を用いた燃料電池では、図9に示すように、発電中に締結力を増大させる処理の前後で、有意差はなかった。したがって、カーボン粒子電極を用いた燃料電池では、発電中に締結力を増大させる処理を行うことは特に必要ではないが、カーボンナノチューブ電極を用いる場合には、発電中に締結力を増大させる処理を行うことが好ましい。
図10は、発電中に締結力を増大させる処理を行う前後のコールコールプロットを示す説明図である。図10では、2.0A/cm2の電流密度で電流を流したときのコールコールプロットを示している。図10の横軸はインピーダンスの抵抗成分(Re[mΩ])を示し、縦軸はインピーダンスの容量成分(Im[mΩ])を示している。燃料電池の直流抵抗成分を比較すると、図10に示すように、カーボンナノチューブ電極を用いた場合には、処理前に比べ処理後では27mΩ・cm2減少していることがわかる。これに対し、カーボン粒子電極を用いた場合では、処理前と処理後では、燃料電池の直流抵抗成分に有意差が無いことがわかる。
図11は、65℃におけるIV特性を示す説明図である。図12は、セル電圧0.6V時における電流密度を示す説明図である。本実施例では、発電中に電極に掛かる面圧(締結力)を1.0MPa、1.5MPa、2.0MPaとし、発電中の燃料電池の温度を、70℃、95℃、105℃として、カーボンナノチューブ電極とガス拡散層とを密着させる処理を行った。なお、発電中に電極に掛かる面圧1.0MPaは、燃料電池スタックを締結するときの締結力にほぼ等しい値であり、カーボンナノチューブ電極とガス拡散層とを密着させる処理において、締結加重を増加させていない。また、燃料電池の温度70℃は、燃料電池の通常運転時の温度である。
発電中の電極に掛かる面圧を1.0MPaとした場合、図11に示すように、発電中の燃料電池の温度を70℃あるいは、95℃としたときよりも、105℃としたときの方が、同じ電流密度ではセル電圧が上昇した。また、図12に示すように、セル電圧を同じ0.6Vとしたときには、燃料電池の温度を70℃あるいは、95℃としたときよりも、105℃としたときの方が、発生させる電流密度の値が大きくなった(1.3A/cm2→1.8Acm2)。また、発電中に電極に掛かる面圧を1.0MPaとした場合、図11に示すように、燃料電池の温度が、70℃から90℃、105℃と上がるにつれて、セル電圧が大きくなり、図12に示すように、燃料電池の温度が、70℃から90℃、105℃と上がるにつれて、セル電圧0.6V時の電流密度が大きくなった。
発電中の燃料電池の温度を70℃とした場合、発電中の電極に掛かる面圧を上げてもセル電圧は上昇せず、セル電圧0.6Vにおける電流密度も大きくならなかった。発電中の燃料電池の温度を95℃あるいは、105℃とすると、発電中の電極に掛かる面圧を上げると、セル電圧は上昇し、セル電圧0.6Vにおける電流密度は大きくなった。ただし、発電中の燃料電池の温度が105℃の場合には、発電中の電極に掛かる面圧を1.5Mpa以上に上げても、有意差がなかった。なお、本実施例で用いたカソード触媒層140のアイオノマ146(図4)のガラス転移温度は、約180℃である。なお、ガラス転移温度が120℃のアイオノマを用いても良い。なお、アイオノマ146がガラス転移するとアイオノマ146の結晶性が崩れ、所定の出力を得るためのアイオノマ物性が得られなくなるので、燃料電池の温度はガラス転移温度以上に上げないことが望ましい。
第2の実施形態:
図13は、第2の実施形態における面圧増加工程を示す説明図である。第1の実施形態と第2の実施形態とは、図3のステップS40の工程が異なっている。第2の実施形態では、ステップS410aにおいて、制御部80は、燃料電池スタック200に対して発電をさせるが、締結荷重を積極的に増加させない。制御部80は、一定時間発電状態を維持した後、ステップS420aにおいて、燃料電池スタック200に対して発電を終了させる。第1の実施形態では、図5のステップS410に示すように、発電中に締結荷重を増加させている。これに対し、第2の実施例では、発電中に直接的に締結荷重を増加させるのではなく、燃料電池スタック200を構成する材料の熱膨張率を、燃料電池スタック200を締結する部材の熱膨張率よりも大きくすることにより、発電により生じる熱を用いて燃料電池スタック200をより膨張させて、膨張力により単セル100のカーボンナノチューブ電極とカソードガス拡散層160との間に掛かる面圧を間接的に増加させている点が異なる。
図13は、第2の実施形態における面圧増加工程を示す説明図である。第1の実施形態と第2の実施形態とは、図3のステップS40の工程が異なっている。第2の実施形態では、ステップS410aにおいて、制御部80は、燃料電池スタック200に対して発電をさせるが、締結荷重を積極的に増加させない。制御部80は、一定時間発電状態を維持した後、ステップS420aにおいて、燃料電池スタック200に対して発電を終了させる。第1の実施形態では、図5のステップS410に示すように、発電中に締結荷重を増加させている。これに対し、第2の実施例では、発電中に直接的に締結荷重を増加させるのではなく、燃料電池スタック200を構成する材料の熱膨張率を、燃料電池スタック200を締結する部材の熱膨張率よりも大きくすることにより、発電により生じる熱を用いて燃料電池スタック200をより膨張させて、膨張力により単セル100のカーボンナノチューブ電極とカソードガス拡散層160との間に掛かる面圧を間接的に増加させている点が異なる。
図14は、第2の実施形態における燃料電池スタック200aの概略構成を示す斜視図である。燃料電池スタック200の上面及び側面にテンションロッド240が配置されている。テンションロッド240の両端は、エンドプレート210を貫通しており、ナット250により、所定の締結力となるように止められている。2枚のエンドプレート210の間には、複数の単セル100と、2枚の絶縁板220と、2枚の集電板230と、が挟持されている。
制御部80が燃料電池スタック200に燃料ガスと酸化剤ガスを供給して燃料電池スタック200の単セル100に発電を行わせると、単セル100は温度が上昇して膨張する。しかし、テンションロッド240を形成する材料の熱膨張率を単セル100の熱膨張率よりも小さくする、あるいは、単セル100を形成する材料の熱膨張率をテンションロッド240の熱膨張率よりも大きくすることにより、テンションロッド240の伸張よりも、単セル100の膨張をより大きくすることができる、その結果、単セル100のカーボンナノチューブ電極とカソードガス拡散層160との間に掛かる面圧を間接的に増加させることが可能となる。
第2の実施形態では、燃料電池スタックを締結する締結部材を形成する材料の熱膨張率を、単セル100の熱膨張率よりも小さくする、あるいは、単セル100を形成する材料の熱膨張率を、燃料電池スタックを締結する締結部材の熱膨張率よりも大きくすればよく、これを実現するための構成は、以下にいくつかの例を列挙するが、様々な構成が考えられる。
図15は、第2の実施形態の変形例を示す説明図である。この変形例の燃料電池スタック200bでは、燃料電池スタック200bの上面と下面において、テンションロッド240を交差させて締結している。なお、図15では、下面については、テンションロッド240の図示を省略している。また、エンドプレート210及びナット250についても図示を省略している。
図16は、第2の実施形態の変形例を示す説明図である。この変形例の燃料電池スタック200cでは、燃料電池スタック200cの上面と下面において、テンションロッド240を平行に配置して締結している。なお、図16では、ナット250について図示を省略している。
図17は、第2の実施形態の変形例を示す説明図である。この変形例の燃料電池スタック200dでは、燃料電池スタック200dの上面と下面とエンドプレート210の外面を帯状に囲う締結部材260を備えている。締結部材260は、例えば柔軟性があるが、熱膨張係数の小さい炭素繊維などの材料で構成することが可能である。
図18は、第2の実施形態の変形例を示す説明図である。この変形例は、図15に示す変形例の燃料電池スタック200cのさらに変形例である。図15に示す燃料電池スタック200cでは、交差したテンションロッド240が燃料電池スタック200cの上面と下面にのみ配置される構成であるが、図18に示す燃料電池スタック200eでは、交差したテンションロッド240が燃料電池スタック200eの6面の全てに配置されている点が異なる。なお、テンションロッド240が、燃料電池スタックの上面、下面、側面の計4面に配置される構成であってもよい。
図19は、第2の実施形態の変形例を示す説明図である。この変形例では、燃料電池スタック200fが、スタックケース270により収納されて全面拘束されている。スタックケース270の材料としては、熱膨張係数が小さく、熱伝導性の大きな炭素繊維強化プラスチックなどを用いることができる。
以上、いくつかの実施形態に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
10…燃料電池システム
50…水素タンク
51…減圧弁
52…圧力調整弁
53…水素ガス供給路
54…アノード排ガス路
60…エアコンプレッサ
61…酸化ガス供給路
63…カソード排ガス路
70…ラジエータ
71…冷媒循環ポンプ
72…冷媒循環流路
73…冷媒循環流路
80…制御部
100…単セル
110…膜電極接合体
120…電解質膜
130…アノード触媒層
140…カソード触媒層
142…カーボンナノチューブ
142A…第1のカーボンナノチューブ
142B…第2のカーボンナノチューブ
144…白金
146…アイオノマ
148…カーボン粒子
149…アイオノマ
150…アノードガス拡散層
160…カソードガス拡散層
170…アノード側セパレータプレート
170p…アノードガス流路
180…カソード側セパレータプレート
180p…カソードガス流路
200、200a〜200f…燃料電池スタック
210…エンドプレート
220…絶縁板
230…集電板
240…テンションロッド
250…ナット
255…駆動部
260…締結部材
270…スタックケース
500…シリコン基板
50…水素タンク
51…減圧弁
52…圧力調整弁
53…水素ガス供給路
54…アノード排ガス路
60…エアコンプレッサ
61…酸化ガス供給路
63…カソード排ガス路
70…ラジエータ
71…冷媒循環ポンプ
72…冷媒循環流路
73…冷媒循環流路
80…制御部
100…単セル
110…膜電極接合体
120…電解質膜
130…アノード触媒層
140…カソード触媒層
142…カーボンナノチューブ
142A…第1のカーボンナノチューブ
142B…第2のカーボンナノチューブ
144…白金
146…アイオノマ
148…カーボン粒子
149…アイオノマ
150…アノードガス拡散層
160…カソードガス拡散層
170…アノード側セパレータプレート
170p…アノードガス流路
180…カソード側セパレータプレート
180p…カソードガス流路
200、200a〜200f…燃料電池スタック
210…エンドプレート
220…絶縁板
230…集電板
240…テンションロッド
250…ナット
255…駆動部
260…締結部材
270…スタックケース
500…シリコン基板
Claims (6)
- 燃料電池システムであって、
電解質膜と、
触媒とアイオノマとを有する燃料電池用電極であって、前記電解質膜の両面に配置される第1と第2の燃料電池用電極と、
前記第1と第2の燃料電池用電極のそれぞれの外面に配置され、前記第1と第2の燃料電池用電極にそれぞれ反応ガスを拡散して供給する第1と第2のガス拡散層と、
前記第1と第2のガス拡散層のそれぞれの外面に配置される第1と第2のセパレータプレートと、
を有する燃料電池と、
前記燃料電池を締結する締結部材と、
を備え、
前記第1と第2の燃料電池用電極の少なくとも一方は、カーボンナノチューブ電極を含んでおり、
前記締結部材は、前記第1と第2のセパレータプレートの間に掛かる面圧を、前記燃料電池を使用するときの第1の面圧よりも高い第2の面圧に上げた状態、且つ、前記燃料電池の温度が95℃以上の条件下で、前記燃料電池に反応ガスを供給して発電する高面圧発電の実行後に、前記第1と第2のセパレータプレートの間を前記第1の面圧で挟持する、燃料電池システム。 - 請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記第2の面圧は、1MPa以上である、燃料電池システム。 - 燃料電池システムであって、
電解質膜と、
触媒とアイオノマとを有する燃料電池用電極であって、前記電解質膜の両面に配置される第1と第2の燃料電池用電極と、
前記第1と第2の燃料電池用電極のそれぞれの外面に配置され、前記第1と第2の燃料電池用電極にそれぞれ反応ガスを拡散して供給する第1と第2のガス拡散層と、
前記第1と第2のガス拡散層のそれぞれの外面に配置される第1と第2のセパレータプレートと、
を有する燃料電池と、
前記燃料電池を締結する締結部材と、
を備え、
前記燃料電池の熱膨張率は、前記締結部材の熱膨張率よりも大きい、燃料電池システム。 - 燃料電池システムの製造方法であって、
(a)基板の上に、カーボンナノチューブを形成する工程と、
(b)前記カーボンナノチューブに燃料電池用触媒を担持させる工程と、
(c)前記カーボンナノチューブをアイオノマで被覆させる工程と、
(d)熱圧を掛けて前記カーボンナノチューブを電解質膜に接合させる工程と、
(e)前記カーボンナノチューブの上にガス拡散層を配置する工程と、
(f)前記ガス拡散層の上にセパレータプレートを配置して単セルを形成する工程と、
(g)95℃以上の温度の条件下で前記燃料電池に反応ガスを供給して発電させている最中に前記2枚のセパレータプレートの間に掛かる面圧を、前記燃料電池を使用するときの第1の面圧よりも高い第2の面圧に上げる工程と、
(h)前記発電の終了後、前記セパレータプレートに掛ける面圧を前記第1の面圧とする工程と、
を備える、燃料電池の製造方法。 - 請求項4に記載のシステムの製造方法において、
前記工程(g)の前記第2の面圧は、1MPa以上である、燃料電池システムの製造方法。 - 燃料電池システムの製造方法であって、
(a)基板の上に、カーボンナノチューブを形成する工程と、
(b)前記カーボンナノチューブに燃料電池用触媒を担持させる工程と、
(c)前記カーボンナノチューブをアイオノマで被覆させる工程と、
(d)熱圧を掛けて前記カーボンナノチューブを電解質膜に接合させる工程と、
(e)前記カーボンナノチューブの上にガス拡散層を配置する工程と、
(f)前記ガス拡散層の上にセパレータプレートを配置して単セルを形成する工程と、
(g)前記単セルを積層して、積層体を形成する工程と、
(h)前記単セルの熱膨張率よりも熱膨張率が小さい締結部材を用いて前記積層体を締結する工程と、
(i)前記単セルを発電させて、発電により生じる熱により前記単セルを前記締結部材よりも膨張させて前記工程(h)における締結荷重による面圧よりも大きな面圧を前記セパレータプレートに掛ける工程と、
を備える、燃料電池システムの製造方法。
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JP2012202240A JP2014056791A (ja) | 2012-09-14 | 2012-09-14 | 燃料電池システム及び燃料電池システムの製造方法 |
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JP (1) | JP2014056791A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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2012
- 2012-09-14 JP JP2012202240A patent/JP2014056791A/ja active Pending
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