JP5423143B2 - 燃料電池用膜−電極接合体、その製造方法、および燃料電池 - Google Patents
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Description
[形態1]
燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、
触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、触媒インクを作製する第1の工程と、
前記第1の工程で作製した同じ前記触媒インクを基材上に塗布して、前記基材上に、アノードとなる触媒層およびカソードとなる触媒層を形成する第2の工程と、
高分子電解質から成る電解質膜の一方の面上に、前記基材上に形成した前記カソードとなる触媒層を、加熱および加圧しながら転写する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記電解質膜の他方の面上に、前記基材上に形成した前記アノードとなる触媒層を、前記第3の工程よりも低い温度での加熱および加圧を行ないながら転写する第4の工程と
を備える燃料電池用膜−電極接合体の製造方法。
[形態2]
燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、
触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、触媒インクを作製する第1の工程と、
前記第1の工程で作製した同じ前記触媒インクを基材上に塗布して、前記基材上に、アノードとなる触媒層およびカソードとなる触媒層を形成する第2の工程と、
高分子電解質から成る電解質膜の一方の面上に、前記基材上に形成した前記カソードとなる触媒層を、加熱および加圧しながら転写する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記電解質膜の他方の面上に、前記基材上に形成した前記アノードとなる触媒層を、前記第3の工程よりも短い時間の加熱および加圧によって転写する第4の工程と
を備える燃料電池用膜−電極接合体の製造方法。
[形態3]
燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、
触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、第1の触媒インクを作製する第1の工程と、
前記第1のインクと同じ組成のインクであって、前記電極材料を混合する時間が、前記第1の触媒インクを作製するときの混合時間よりも長い第2の触媒インクを作製する第2の工程と、
高分子電解質から成る電解質膜上に、前記第1の触媒インクを用いてアノードを形成し、前記第2の触媒インクを用いてカソードを形成する第3の工程と
を備える膜−電極接合体の製造方法。
形態1ないし3いずれかに記載の燃料電池用膜−電極接合体の製造方法によれば、各電極の体積に対する、高分子電解質に介在されて触媒担持粒子間に形成される細孔の容積の総量の割合である空隙率が、カソードよりもアノードの方が高い燃料電池用膜−電極接合体を得ることができる。そのため、このような燃料電池用膜−電極接合体を備える燃料電池を、氷点下の低温条件下において停止する際には、カソードに先駆けてアノードが損傷することになり、その結果、燃料電池全体の性能低下および耐久性の低下を抑制することができる。
燃料電池用膜−電極接合体であって、
電解質膜と、
前記電解質膜上に形成され、触媒金属を担持した導電性粒子から成る複数の触媒担持粒子と、高分子電解質と、を備えると共に、前記高分子電解質に介在された前記複数の触媒担持粒子間に細孔が形成された多孔質な一対の電極と、
を備え、
前記一対の電極の一方であるアノードは、前記一対の電極の他方であるカソードに比べて、各電極の体積に対する前記細孔の容積の割合である空隙率が高い
燃料電池用膜−電極接合体。
燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、第1の触媒インクを作製する第1の工程と、前記第1の触媒インクよりも、前記触媒担持粒子に対する前記高分子電解質の割合が高くなるように、前記触媒担持粒子と前記高分子電解質とを含む電極材料を混合して、第2の触媒インクを作製する第2の工程と、高分子電解質から成る電解質膜上に、前記第1の触媒インクを用いてアノードを形成し、前記第2の触媒インクを用いてカソードを形成する第3の工程と、を備える膜−電極接合体の製造方法。
燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、触媒インクを作製する第1の工程と、前記触媒インクを基材上に塗布して、前記基材上に、アノードとなる触媒層およびカソードとなる触媒層を形成する第2の工程と、高分子電解質から成る電解質膜の一方の面上に、前記基材上に形成した前記カソードとなる触媒層を、加熱および加圧しながら転写する第3の工程と、前記第3の工程の後に、前記電解質膜の他方の面上に、前記基材上に形成した前記アノードとなる触媒層を、前記第3の工程よりも低い温度での加熱および加圧を行ないながら転写する第4の工程とを備える燃料電池用膜−電極接合体の製造方法。
燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、触媒インクを作製する第1の工程と、前記触媒インクを基材上に塗布して、前記基材上に、アノードとなる触媒層およびカソードとなる触媒層を形成する第2の工程と、高分子電解質から成る電解質膜の一方の面上に、前記基材上に形成した前記カソードとなる触媒層を、加熱および加圧しながら転写する第3の工程と、前記第3の工程の後に、前記電解質膜の他方の面上に、前記基材上に形成した前記アノードとなる触媒層を、前記第3の工程よりも短い時間の加熱および加圧によって転写する第4の工程とを備える燃料電池用膜−電極接合体の製造方法。
燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、触媒インクを作製する第1の工程と、前記触媒インクを基材上に塗布して、前記基材上に、アノードとなる触媒層およびカソードとなる触媒層を形成する第2の工程と、高分子電解質から成る電解質膜の一方の面上に、前記基材上に形成した前記カソードとなる触媒層を、加熱および加圧しながら転写する第3の工程と、前記第3の工程の後に、前記電解質膜の他方の面上に、前記基材上に形成した前記アノードとなる触媒層を、前記第3の工程よりも低い圧力での加圧および加熱を行ないながら転写する第4の工程とを備える燃料電池用膜−電極接合体の製造方法。
燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、第1の触媒インクを作製する第1の工程と、触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を、前記第1の触媒インクを作製する際に前記電極材料を混合した時間よりも長い時間混合して、第2の触媒インクを作製する第2の工程と、高分子電解質から成る電解質膜上に、前記第1の触媒インクを用いてアノードを形成し、前記第2の触媒インクを用いてカソードを形成する第3の工程とを備える膜−電極接合体の製造方法。
図1は、本発明の好適な一実施例としての燃料電池用膜−電極接合体の製造方法により製造された膜−電極接合体を備える単セル10の概略構成を表わす断面模式図である。単セル10は、電解質膜20と、電解質膜20の各々の面上に形成された電極であるアノード21およびカソード22と、電極を形成した上記電解質膜20を両側から挟持するガス拡散層23,24と、ガス拡散層23,24のさらに外側に配設されたガスセパレータ25,26と、を備えている。
図2は、MEA30の製造方法を表わす工程図である。MEA30を製造する際には、まず、電解質膜20となる固体高分子電解質から成る膜を用意する(ステップS100)。本実施例では、既述したように、フッ素系の高分子電解質膜を用いている。
(1/2)O2+2H++2e- → H2O …(2)
H2+(1/2)O2 → H2O …(3)
図4は、氷点下の低温条件下において燃料電池を停止したときの、凍結の様子を模式的に表わす説明図である。図4においては、燃料電池内の様子として、MEA30の様子のみを示している。図4(A)は、燃料電池が備える電極が、既述した触媒担持カーボン粒子間に形成される細孔を備える様子を表わしている。固体高分子型燃料電池においては、電解質膜が水を含有すると共に、発電に伴ってカソードにおいて水が生じる。そのため、MEA30内は、ある程度の水分を含有する状態となっており、氷点下の低温条件下において燃料電池の発電が停止されると、電極内の細孔において、氷核が形成される(図4(B)参照)。このように細孔内で氷核が形成されると、主として電解質膜20中の水が電極へと染み出して氷核周辺に集まり、柱状の氷として成長する(いわゆる、凍上現象)。電極が有する細孔内で氷が成長する様子を、図4(C)に示す。このように細孔内で氷が成長することにより、電極内で上記凍上現象が生じた部位が、例えば部分的に浮き上がって、損傷する場合がある。なお、図4では、一方の電極が備える細孔において、氷の成長が進行する様子を例示しているが、このような現象は、いずれの電極においても生じ得る。
既述した実施例に則して実験例のMEAを作製し、比較例1,2のMEAと共に、低温処理による電極損傷の程度を評価した。各MEAは、電極を形成するための触媒インクにおける電解質/カーボン値のみが異なっている。各MEAの作製条件は、以下の通りである。
ステップS100では、既述したように、パーフルオロカーボンスルホン酸を備えるフッ素系樹脂から成る電解質膜20を用意した。ステップS110では、電解質溶液として、ナフィオン溶液(デュポン社製)を用い、触媒担持カーボン粒子としては、白金の担持量が50wt%である白金担持カーボン粒子を用いた。このステップS110では、電解質溶液と触媒担持カーボン粒子と溶媒とを混合・攪拌して、第1および第2の触媒インクを調製した。このとき、アノード21を作製するための第1の触媒インクは、電解質/カーボン値が0.75となるように調製し、カソード22を作製するための第2の触媒インクは、電解質/カーボン値が1.0となるように調製した。
比較例1のMEAは、ステップS110において、第1の触媒インクのみを用意し、この第1の触媒インクによって両方の電極を形成したこと以外は、上記実験例のMEAと同様にして作製した。すなわち、比較例1のMEAは、電解質/カーボン値が0.75である触媒インクを用いて、アノードおよびカソードを形成した。
比較例2のMEAは、ステップS110において、第2の触媒インクのみを用意し、この第2の触媒インクによって両方の電極を形成したこと以外は、上記実験例のMEAと同様にして作製した。すなわち、比較例2のMEAは、電解質/カーボン値が1.0である触媒インクを用いて、アノードおよびカソードを形成した。
既述したように、実際の燃料電池の発電停止時における電解質膜では、カソード側の表面近傍の方がアノード側の表面近傍よりも水分量が多く、アノードに対してよりもカソードに対して、電解質膜から水が染み出しやすい状態となっている。そのため、本実施例のようにアノードの空隙率をカソードの空隙率よりも高めることによって、アノードで優先的に氷の成長を起こさせる場合には、その効果を高めるために、低温停止時の燃料電池中の電解質膜において、カソード側からアノード側への水の移動を促す構成を設けることが望ましい。電解質膜内においてカソード側からアノード側への水の移動を促す構成の一例として、以下に、燃料電池スタックのカソード側端部を加熱する構成について説明する。
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
実施例では、アノード21を形成する第1の触媒インクと、カソード22を形成する第2の触媒インクとの間で、電解質/カーボン値を異ならせることによって、両電極の空隙率を異ならせたが、異なる構成としても良い。例えば、アノードおよびカソードを形成するために、同じ触媒インクを用いて基材上に電極層を形成し、基材上に形成した電極層を電解質膜上に熱圧接合する際の条件を異ならせることによって、アノードとカソードの空隙率を異ならせることとしても良い。異ならせるべき熱圧接合の際の条件としては、プレス温度、プレス時間、あるいはプレス圧力を挙げることができる。
実施例では、基材上に形成した電極層を電解質膜上に転写することによって電極を形成したが、異なる構成としても良い。例えば、触媒インクを、電解質膜上あるいはガス拡散電極上に直接塗布することによって、電極を形成することもできる。この場合にも、アノードを形成するための第1の触媒インクと、カソードを形成するための第2の触媒インクとで、電解質/カーボン値や、攪拌の程度を異ならせることにより、アノードの空隙率をカソードの空隙率よりも高めることができる。触媒インクを電解質膜上やガス拡散電極上に塗布する方法としては、触媒インクを基材上に塗布するための既述した方法と同様の方法を用いることができる。
実施例では、触媒担持カーボン粒子と高分子電解質と共に溶媒を含有する触媒インクを形成し、この触媒インクを塗布することによって電極となる層を形成したが、異なる構成としても良い。例えば、粉体状の電極材料を用いることとしても良い。具体的には、例えば、触媒担持カーボン粒子と高分子電解質とを用いて実施例と同様の触媒インクを作製し、この触媒インクを用いて例えばスプレードライ法によって造粒することによって、多孔質な粉体状の電極材料を作製する。そして、得られた粉体状の電極材料を、静電スクリーン法あるいは静電スプレー法などの静電的な方法で電解質膜上に塗布し、加熱や加圧を行なうことにより、電解質膜上に電極を定着することができる。このとき、上記造粒の条件や塗布の条件を適宜設定することにより、アノードの空隙率をカソードの空隙率よりも高めるならば、実施例と同様の効果を得ることができる。
実施例では、各電極は、触媒担持カーボン粒子を備えることとしたが、触媒担持粒子として、異なる種類の導電性粒子を用いることとしても良い。例えば、電子伝導性を有するセラミック(金属酸化物)微粒子上に、触媒を担持させることとしても良い。また、実施例では、電解質膜20および電極が備える電解質として、パーフルオロスルホン酸系電解質を用いたが、異なる種類の固体高分子電解質を用いても良い。例えば、炭化水素系固体高分子電解質を用いることができる。このような場合にも、本発明を適用して電極を形成することで、燃料電池の性能低下を抑制して耐久性を向上させる同様の効果が得られる。
20…電解質膜
21…アノード
22…カソード
23,24…ガス拡散層
25,26…ガスセパレータ
30…MEA
47…単セル内燃料ガス流路
48…単セル内酸化ガス流路
Claims (6)
- 燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、
触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、触媒インクを作製する第1の工程と、
前記第1の工程で作製した同じ前記触媒インクを基材上に塗布して、前記基材上に、アノードとなる触媒層およびカソードとなる触媒層を形成する第2の工程と、
高分子電解質から成る電解質膜の一方の面上に、前記基材上に形成した前記カソードとなる触媒層を、加熱および加圧しながら転写する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記電解質膜の他方の面上に、前記基材上に形成した前記アノードとなる触媒層を、前記第3の工程よりも低い温度での加熱および加圧を行ないながら転写する第4の工程と
を備える燃料電池用膜−電極接合体の製造方法。 - 燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、
触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、触媒インクを作製する第1の工程と、
前記第1の工程で作製した同じ前記触媒インクを基材上に塗布して、前記基材上に、アノードとなる触媒層およびカソードとなる触媒層を形成する第2の工程と、
高分子電解質から成る電解質膜の一方の面上に、前記基材上に形成した前記カソードとなる触媒層を、加熱および加圧しながら転写する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記電解質膜の他方の面上に、前記基材上に形成した前記アノードとなる触媒層を、前記第3の工程よりも短い時間の加熱および加圧によって転写する第4の工程と
を備える燃料電池用膜−電極接合体の製造方法。 - 燃料電池用膜−電極接合体の製造方法であって、
触媒金属を担持した導電性粒子である触媒担持粒子と、高分子電解質と、を含む電極材料を混合して、第1の触媒インクを作製する第1の工程と、
前記第1のインクと同じ組成のインクであって、前記電極材料を混合する時間が、前記第1の触媒インクを作製するときの混合時間よりも長い第2の触媒インクを作製する第2の工程と、
高分子電解質から成る電解質膜上に、前記第1の触媒インクを用いてアノードを形成し、前記第2の触媒インクを用いてカソードを形成する第3の工程と
を備える膜−電極接合体の製造方法。 - 燃料電池用膜−電極接合体であって、
請求項1ないし3いずれか記載の膜−電極接合体の製造方法により製造された膜−電極接合体。 - 請求項4記載の燃料電池用膜−電極接合体を備える燃料電池。
- 請求項5記載の燃料電池であって、
前記燃料電池の発電停止時において、少なくとも氷点下の低温条件下では、前記燃料電池内でカソード側の方がアノード側よりも高温となるように温度勾配を形成する温度勾配形成部を備える
燃料電池。
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