JP2008041596A - 燃料電池および燃料電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温条件下で燃料電池を起動する際の、液水の凍結に起因する起動性の低下を抑制する。
【解決手段】燃料電池の製造方法は、液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質と、光硬化性樹脂とを含有する不凍タンパク質含有ペーストを作製する第1の工程(ステップS110)を備える。また、固体高分子電解質膜上に、不凍タンパク質含有ペーストを塗布する第2の工程(ステップS120)を備える。また、光照射によって、第2の工程で塗布した前記不凍タンパク質含有ペースト中の光硬化性樹脂を硬化させて、燃料電池の電解質層を作製する第3の工程(ステップS130)を備える。
【選択図】図2

Description

この発明は、燃料電池および燃料電池の製造方法に関する。
一般に、燃料電池においては、電気化学反応に伴って一方の電極で水が生じる。例えば、固体高分子型燃料電池では、カソード電極において水が生じる。また、生じた水の一部は、電解質膜を介してアノード側へと移動する。このように燃料電池内で生じた水、あるいは、燃料電池に供給されるガス中の水蒸気が燃料電池内で凝縮すると、燃料電池内におけるガス流れが妨げられる可能性がある。そして、電極へのガスの供給が妨げられることによって、電池性能が低下する可能性がある。このような、凝縮水がガス流れを妨げることに起因する不都合を防止するための構成として、燃料電池の内部、例えばガスセパレータの表面にタンパク質などの親水性塗膜を設けることによって、水の滞留を抑える構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−20690号公報
しかしながら、このように液水の滞留を抑えて燃料電池内部におけるガス流れを確保する場合であっても、低温条件下においては、液水が凍結することに起因する不都合が生じる場合があった。例えば、0℃以下の低温条件下において燃料電池を起動する際には、発電により生じた水が、電極上やガス流路内で凍結する場合がある。電極上やガス流路内で水が凍結すると、燃料電池内におけるガス流れが妨げられて、発電が抑えられてしまう。また、電極で生じた水が凍結すると、電極と電解質層との間の結着性が低下して、電極と電解質層との間の接触抵抗の増大による電池性能の低下が生じる可能性がある。あるいは、固体高分子型燃料電池では、電解質膜内で水の凍結が起こる場合がある。電解質膜内で水が凍結すると、電解質膜内におけるプロトンの移動が抑えられて、発電が妨げられてしまう。
燃料電池が発電する際には電気化学反応に伴って熱が生じるため、通常は、発電が開始されると燃料電池の温度は次第に昇温し、やがて定常状態に達する。しかしながら、発電開始直後に生じた水が電解質膜内で凍結したり、ガス流路内で凍結すると、発電が抑えられて燃料電池の昇温が困難となり、燃料電池のスムーズな起動が妨げられることになる。燃料電池内部での水の凍結を防ぐためには、燃料電池を外部から加熱する構成も考えられるが、加熱は、燃料電池を備えるシステム全体のエネルギ効率の低下を引き起こすと共に、装置の大型化を伴うため、望ましくない。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、低温条件下において燃料電池を起動する際の、液水の凍結に起因する起動性の低下を抑制することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の燃料電池の製造方法は、
液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質と、光硬化性樹脂とを含有する不凍タンパク質含有ペーストを作製する第1の工程と、
固体高分子電解質膜上に、前記不凍タンパク質含有ペーストを塗布する第2の工程と、
光照射によって、前記第2の工程で塗布した前記不凍タンパク質含有ペースト中の前記光硬化性樹脂を硬化させて、前記燃料電池の電解質層を作製する第3の工程と
を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第1の燃料電池の製造方法によれば、光照射を行なうことで、光硬化性樹脂によって電解質膜に不凍タンパク質が固着される。したがって、不凍タンパク質を電解質膜に固着させるために、加熱を伴う工程を行なう必要がなく、不凍タンパク質を固着させる工程における不凍タンパク質に対する加熱を抑制することができる。これにより、不凍タンパク質の熱による劣化を抑えることができる。また、このようにして不凍タンパク質を備える電解質層を設けることにより、低温条件下において、発電に伴って生じる水の凍結を抑制可能な燃料電池を製造することができる。
本発明の第1の燃料電池の製造方法において、前記不凍タンパク質含有ペーストは、さらに、高分子電解質を含有することとしても良い。
このような構成とすれば、電解質層において、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備える部分におけるイオン伝導性の低下を抑えることができる。
本発明の第2の燃料電池の製造方法は、
触媒と、液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質と、光硬化性樹脂とを含有する電極ペーストを作製する第1の工程と、
所定の基材上に、前記電極ペーストを塗布する第2の工程と、
光照射によって、前記第2の工程で塗布した前記電極ペースト中の前記光硬化性樹脂を硬化させて、電極を作製する第3の工程と
を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第2の燃料電池の製造方法によれば、光照射を行なうことで、光硬化性樹脂によって、不凍タンパク質を備える電極が成形される。したがって、不凍タンパク質を備える電極を作製するための加熱を伴う工程を削減することができ、不凍タンパク質に対する加熱を抑制することができる。これにより、不凍タンパク質の熱による劣化を抑えることができる。また、このようにして不凍タンパク質を備える電極を設けることにより、低温条件下において、発電に伴って生じる水の凍結を抑制可能な燃料電池を製造することができる。さらに、光硬化性樹脂を用いて電極を成形することにより、電極全体の強度および耐久性を向上させ、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
本発明の第2の燃料電池の製造方法において、前記所定の基材は、前記電解質層であることとしても良い。
このような構成とすれば、不凍タンパク質を備える電極を、電解質層上に直接形成することができる。そのため、電極を電解質層に固着させるために不凍タンパク質に加えられる熱を削減することができる。また、光硬化性樹脂を用いて電極を電解質層に固着させるため、電解質層に対する電極の結着強度を向上させ、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
本発明の第3の燃料電池の製造方法は、
液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質と、光硬化性樹脂とを含有する混合体を作製する第1の工程と、
表面に電極が形成された電解質層上に配置されて、前記電極に供給および/または排出するためのガスの流路を形成するガス流路形成部上に、前記混合体を配置する第2の工程と、
光照射によって、前記第2の工程で配置した前記混合体中の前記光硬化性樹脂を硬化させる第3の工程と
を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第3の燃料電池の製造方法によれば、光照射を行なうことで、光硬化性樹脂によって、ガス流路形成部上に不凍タンパク質が固着される。したがって、ガス流路形成部上に不凍タンパク質を固着させるための加熱を伴う工程を削減することができ、不凍タンパク質に対する加熱を抑制すると共に、不凍タンパク質の熱による劣化を抑えることができる。また、このようにして不凍タンパク質を備えるガス流路形成部を設けることにより、低温条件下において、発電に伴って生じる水の凍結を抑制可能な燃料電池を製造することができる。
本発明の第3の燃料電池の製造方法において、前記ガス流路形成部は、前記電極に供給および/または排出するためのガスが流れる多数の細孔が形成された多孔質体であることとしても良い。
このような構成とすれば、ガス流路形成部内に形成される多数の細孔によって形成されるガスの流路において、水の凍結を抑制することができる。
本発明の第4の燃料電池の製造方法は、
液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質と、光硬化性樹脂とを含有する混合体を作製する第1の工程と、
表面に電極が形成された電解質層上に配置されて、前記電極に供給および/または排出するためのガスの流路の壁面の一部を形成するガスセパレータにおける前記壁面を形成する表面に、前記混合体を配置する第2の工程と、
光照射によって、前記第2の工程で配置した前記混合体中の前記光硬化性樹脂を硬化させる第3の工程と
を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第4の燃料電池の製造方法によれば、光照射を行なうことで、光硬化性樹脂によって、ガスセパレータ表面に不凍タンパク質が固着される。したがって、ガスセパレータ上に不凍タンパク質を固着させるための加熱を伴う工程を削減することができ、不凍タンパク質に対する加熱を抑制すると共に、不凍タンパク質の熱による劣化を抑えることができる。また、このようにして不凍タンパク質を備えるガスセパレータを設けることにより、低温条件下において、発電に伴って生じる水の凍結を抑制可能な燃料電池を製造することができる。
本発明の燃料電池は、
高分子電解質から成る電解質層と、
前記電解質層を挟持する電極と、
前記電極上に配置されると共に、前記電極に供給および/または排出するためのガスの流路を形成するガス流路形成部と、
前記ガス流路形成部上に配置されると共に、前記ガスの流路の壁面の一部を形成するガスセパレータと
を備え、
前記電解質層と、前記電極と、前記ガス流路形成部の表面と、前記ガスセパレータにおける前記壁面を形成する表面と、のうちの少なくともいずれかにおいて、液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質が、光硬化性樹脂によって固着されていることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の燃料電池によれば、電解質層と、電極と、ガス流路形成部の表面と、ガスセパレータにおけるガス流路壁面を形成する表面と、のうちの少なくともいずれかにおいて、光硬化性樹脂によって不凍タンパク質が固着されているため、不凍タンパク質の固着のためには光照射が行なわれており、不凍タンパク質を固着させるために不凍タンパク質に加えられる熱が削減されている。したがって、不凍タンパク質の熱による劣化が抑えられている。また、このようにして不凍タンパク質を備えることにより、本発明の燃料電池では、低温条件下において、発電に伴って生じる水の凍結を抑制することができる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、本発明の燃料電池の製造方法によって製造された燃料電池、あるいは、低温条件下での燃料電池の起動時における燃料電池内部の凍結防止方法などの形態で実現することが可能である。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.燃料電池の構成:
B.電解質層20の製造方法:
C.第2実施例:
D.第3実施例:
E.第4実施例:
F.変形例:
A.燃料電池の構成:
図1は、第1実施例の燃料電池を構成する単セル10の概略構成を現わす断面模式図である。単セル10は、電解質層20と、電解質層20両方の面上にそれぞれ形成された電極であるアノード21およびカソード22と、電極を形成した上記電解質層20を両側から挟持するガス拡散層23,24と、ガス拡散層23,24のさらに外側に配設されたガスセパレータ25,26とを備えている。
本実施例の燃料電池は、固体高分子型燃料電池であり、電解質層20は、湿潤状態でプロトン伝導性を示す固体高分子電解質を備えている。さらに、本実施例の電解質層20は、光硬化性樹脂によって電解質層20表面に固着された不凍タンパク質を備えている。電解質層20が備える不凍タンパク質および光硬化性樹脂については、後に詳しく説明する。
アノード21およびカソード22は、触媒として、例えば白金、あるいは白金合金を備えている。より具体的には、アノード21およびカソード22は、上記触媒を担持したカーボン粒子と、電解質層20を構成する高分子電解質と同様の電解質とを備えている。このような触媒を作製するには、例えば、上記触媒担持カーボンおよび高分子電解質を含有する電極ペーストを作製し、この電極ペーストを、電解質層20上、あるいはガス拡散層23,24上に塗布し、乾燥・固着させればよい。ガス拡散層23,24は、ガス透過性を有する導電性部材、例えば、カーボンペーパやカーボンクロス、あるいは金属メッシュや発泡金属によって形成することができる。本実施例のガス拡散層23,24は、いずれも、平坦な板状部材として形成されている。このようなガス拡散層24は、電気化学反応に供されるガスの流路となると共に、集電を行なう。
ガスセパレータ25,26は、ガス不透過な導電性部材、例えば圧縮カーボンやステンレス鋼から成る部材によって形成される。ガスセパレータ25,26は、それぞれ所定の凹凸形状を有している。この凹凸形状によって、ガスセパレータ25とガス拡散層23との間には、水素を含有する燃料ガスが流れる単セル内燃料ガス流路27が形成される。また、上記凹凸形状によって、ガスセパレータ26とガス拡散層24との間には、酸素を含有する酸化ガスが流れる単セル内酸化ガス流路28が形成される。
さらに、単セル10の外周部には、単セル内燃料ガス流路27および単セル内酸化ガス流路28におけるガスシール性を確保するために、ガスケット等のシール部材が配置されている(図示せず)。また、本実施例の燃料電池は、単セル10を複数積層したスタック構造を有しているが、このスタック構造の外周部には、単セル10の積層方向と平行であって燃料ガスあるいは酸化ガスが流通する複数のガスマニホールドが設けられている(図示せず)。これら複数のガスマニホールドのうちの燃料ガス供給マニホールドを流れる燃料ガスは、各単セル10に分配され、電気化学反応に供されつつ各単セル内燃料ガス流路27内を通過し、その後、燃料ガス排出マニホールドに集合する。同様に、酸化ガス供給マニホールドを流れる酸化ガスは、各単セル10に分配され、電気化学反応に供されつつ各単セル内酸化ガス流路28内を通過し、その後、酸化ガス排出マニホールドに集合する。
B.電解質層20の製造方法:
既述したように、本実施例の燃料電池が備える電解質層20は、不凍タンパク質を備えており、これによって、低温条件下における電解質層20の凍結を抑制可能となっている。不凍タンパク質(Antifreeze Protein: AFP)とは、0℃以下の低温条件下で、氷結晶(氷核)の表面の特定部位に吸着して所定方向への氷結晶の成長を抑えることによって、水溶液の凍結を抑制するタンパク質である。具体的には、不凍タンパク質が吸着することにより、氷結晶は、例えば、六方晶柱型の結晶からバイピラミッド型の結晶へと成長すると共に、この形状で氷結晶の成長が停止することにより、液全体の凍結が抑えられる。このような不凍タンパク質は、種々の魚や甲虫、植物、カビあるいは細菌類に含まれることが知られている。不凍タンパク質としては、例えば、アラニン−スレオニン−アラニンから成るトリペプチドと、N−アセチルガラクトサミンとガラクトースから成る2糖が結合した構造の糖ペプチドを繰り返した構造を有する糖タンパク質を挙げることができる。不凍タンパク質の安定性を考慮して、用いる不凍タンパク質の種類の選択および燃料電池の運転温度の設定を行なえば良い。また、複数種類の不凍タンパク質を混合して用いても良い。本実施例で用いる不凍タンパク質としては、魚などの天然物由来の精製物であっても良く、人工的な合成物であっても良い。また、不凍タンパク質は、粉末状で用意しても良く、あるいは液体状で用意しても良い。
さらに、本実施例の燃料電池が備える電解質層20は、既述したように、不凍タンパク質を固着させる光硬化性樹脂を備えている。光硬化性樹脂とは、光エネルギの作用により液状から固体へと変化する樹脂をいう。光硬化性樹脂は、例えば、エポキシ系光硬化性樹脂や、ウレタンアクリレート系光硬化性樹脂から選択することができる。
図2は、電解質層20の製造工程の概略を現わす説明図である。電解質層20を作製するには、まず、固体高分子電解質から成る膜を用意する(ステップS100)。ステップS100で用意する固体高分子電解質から成る膜は、電解質層20の基盤を成す膜であり、例えば、パーフルオロスルホン酸基を有して湿潤状態でプロトン伝導性を示すフッ素系樹脂によって形成される膜とすることができる。
また、固体高分子電解質から成る膜とは別に、不凍タンパク質と光硬化性樹脂とを含むペーストを作製する(ステップS110)。このペーストは、光硬化性樹脂のモノマーやオリゴマーの他に、光を吸収して励起し、光重合反応を開始させる光重合開始剤を含む。また、上記ペーストは、樹脂を安定化するための安定剤や、強度などの樹脂性能を向上させるためのフィラーをさらに含んでも良い。
次に、ステップS110で作製したペーストを、ステップS100で用意した固体高分子電解質から成る膜上に塗布する(ステップS120)。なお、ペーストを塗布することによって固体高分子電解質膜上に配置する不凍タンパク質および光硬化性樹脂の量は、ステップS110で調製するペーストにおける不凍タンパク質および光硬化性樹脂の濃度や、ステップS120で塗布するペースト量によって調節すればよい。固体高分子電解質膜上に配置する不凍タンパク質の量を多くするほど、電解質層20の凍結を抑える効果が高まるが、不凍タンパク質はプロトン伝導性を実質的に有していないため、電解質層20表面におけるプロトン伝導性が低下する。また、固体高分子電解質膜上に配置する光硬化性樹脂の量を多くするほど、不凍タンパク質を電解質膜に固着させる結着力が強まり電解質層20の耐久性が向上するが、光硬化性樹脂はプロトン伝導性を実質的に有していないため、電解質層20表面におけるプロトン伝導性が低下する。得られる凍結防止効果や耐久性の向上効果、あるいはプロトン伝導性が受ける影響を考慮して、電解質膜上に配置する不凍タンパク質および光硬化性樹脂量を適宜設定すればよい。
その後、ペーストを塗布した電解質膜上に光照射を行ない(ステップS130)、電解質層20を完成する。照射する光は、例えば紫外線レーザを用いることができ、照射する光の波長は、用いる光硬化性樹脂あるいは光重合開始剤に応じて、適宜選択すればよい。ステップS130の光照射によって、光硬化性樹脂が硬化し、硬化した光硬化性樹脂によって、不凍タンパク質が電解質膜上に固着される。なお、電解質膜上に塗布したペーストが含有する溶媒などの液体成分は、光照射の前、または後において、乾燥工程を行なうことで除去すればよい。このような乾燥工程は、上記液体成分が除去されれば良く、できるだけ低い温度、例えば室温で行なうことが望ましい。
以上のように構成された本実施例の燃料電池によれば、0℃以下の低温条件下において燃料電池を起動させ、発電の開始と共にカソード22において水が生じ始めたときに、電解質層20表面に備えられた不凍タンパク質により電解質層20中の水の凍結が抑えられる。したがって、電解質層20内でのプロトンの移動が、電解質層20の凍結によって妨げられることがなく、電解質層20において凍結に起因するプロトン導電性の低下を抑制することができ、低温条件下であっても、燃料電池の発電を支障なく開始し継続することができる。発電が支障なく継続されることにより、燃料電池は次第に昇温し、定常状態に達することができる。
また、低温条件下で燃料電池を起動する際に、電解質層20内で水が凍結すると、電解質層20内で応力が生じ、電解質層20が損傷する可能性がある。しかしながら本実施例の燃料電池によれば、電解質層20が不凍タンパク質を備えることで、電解質層20内における氷結晶の成長が抑制され、凍結により生じる応力が分散・抑制されるため、凍結に起因する電解質層20の損傷を防止することができる。
特に、本実施例では、光硬化性樹脂を用いて、電解質膜上に不凍タンパク質を固着させているため、不凍タンパク質の固着のためには、光照射を行なうだけでよい。したがって、不凍タンパク質を電解質膜に固着させるために、加熱を伴う工程、例えば熱圧着を行なう必要がなく、不凍タンパク質を固着させる工程における不凍タンパク質に対する加熱を抑制することができる。これにより、不凍タンパク質を固着する工程における不凍タンパク質の熱による劣化を抑えることができる。
なお、ステップS110で作製するペーストは、さらに、高分子電解質を含有していても良い。不凍タンパク質および光硬化性樹脂と共に高分子電解質を含有するペーストを塗布することにより、ペーストを塗布することに起因する電解質層20表面におけるプロトン伝導性の低下を抑えることができる。用いる高分子電解質は、例えば、ステップS100で用意する電解質膜を構成する高分子電解質と同様の高分子電解質、すなわち、パーフルオロスルホン酸系の高分子や、あるいは、パーフルオロカルボン酸系の高分子を用いることができる。ここで、パーフルオロスルホン酸系の高分子は、例えば、テトラフルオロエチレンと、フルオロスルホニル基を含有するパーフルオロビニルエーテルと、を共重合した後、加水分解することによって作製することができる。また、パーフルオロカルボン酸系の高分子は、例えば、テトラフルオロエチレンと、カルボン酸基を含有するパーフルオロビニルエーテルと、を共重合体した後、加水分解することによって作製することができる。
上記第1実施例では、電解質層20の表面に、光硬化性樹脂を用いて不凍タンパク質を固着させたが、異なる構成としても良い。例えば、電解質層20を複数の層から成る多層構造に形成して、その内の中程に配置された一部の層のみにおいて、光硬化性樹脂を用いて不凍タンパク質を固着させることとしても良い。具体的には、例えば、電解質層20を三層構造に形成して、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備える層を、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えない層によって両側から挟持する構成とすることができる。このような場合には、ステップS100で用意した膜と同様の固体高分子電解質から成る膜を2枚用意すると共に、ステップS110で作製したものと同様のペースト、あるいはさらに高分子電解質を含有するペーストを接着剤として用いて、上記2枚の電解質膜を貼り合わせ、その後、光照射すればよい。これにより、光硬化性樹脂によって固着された不凍タンパク質を含有する層を中程に有する電解質層を作製することができる。このような構成とすれば、電解質層20の中程に不凍タンパク質が配置されるため、低温条件下で燃料電池を起動する際に、電解質層20の含水量が増加し始めたときに、電解質層20中の水の凍結を効果的に抑えることができる。このとき、電解質層20内において不凍タンパク質を固着させるために光硬化性樹脂を用いているため、例えば乾燥工程によって不凍タンパク質と電解質膜との間の結着性を確保する場合に比べて、不凍タンパク質が受ける熱の影響を削減することができる。
複数の層から成る電解質層のその他の作製方法として、複数の層を予め所定のフィルム基材上に別々に作製し、その後、各層を基材から剥がしつつ互いに重ね合わせて貼り合わせる方法がある。この場合にも、所定の基材上に電解質の層を予め作製する際に、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備える層を光照射により成形することができ、成形のために加熱乾燥等を行なう必要がなく、不凍タンパク質に加わる熱を削減することができる。ただし、電解質層を形成するための全行程を考慮すると、既述したように不凍タンパク質および光硬化性樹脂から成るペーストを接着剤として用いた方が、最終的な積層の工程においても不凍タンパク質に対する加熱を抑えられて有利である。
なお、第1実施例の燃料電池における電解質層20は、固体高分子電解質としてフッ素系の電解質を備えることとしたが、異なる種類の電解質を備えることとしても良い。例えば、炭化水素系の固体高分子電解質から成る電解質膜上に、光硬化性樹脂を用いて不凍タンパク質を固着させても良い。異なる種類の電解質を備える電解質層であっても、湿潤状態でイオン伝導性を示す固体高分子電解質を備える層であれば、電解質層の凍結を抑制する効果と共に、不凍タンパク質の熱による劣化の抑制の効果を、同様に得ることができる。
C.第2実施例:
第1実施例の燃料電池は、電解質層が、光硬化性樹脂によって固着される不凍タンパク質を備えることとしたが、異なる構成としても良い。以下に、第2実施例として、電解質層上に形成される電極であるアノードおよびカソードが、光硬化性樹脂によって固着される不凍タンパク質を備えた燃料電池について説明する。第2実施例の燃料電池は、第1実施例の燃料電池における電解質層20に代えて、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えない通常の電解質層を備えると共に、アノード21およびカソード22に代えて、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えるアノードおよびカソードを備えている。
図3は、第2実施例の燃料電池における電極の製造工程を表わす説明図である。電極を作製するには、まず、電解質層を用意する(ステップS200)。ここで用意する電解質層は、第1実施例のステップS100で用意したものと同様の固体高分子電解質膜である。
次に、触媒担持カーボンおよび電解質に加えて、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備える電極ペーストを作製する(ステップS210)。触媒担持カーボンおよび電解質は、第1実施例のアノード21およびカソード22が備えるものと同様のものを用いればよい。すなわち、触媒担持カーボンは、例えばカーボンブラックなどのカーボン粒子を、白金化合物の溶液(例えば白金硝酸塩や塩化白金酸の水溶液)中に分散させて、含浸法や共沈法、あるいはイオン交換法によって、カーボン粒子上に白金を担持させて作製すればよい。このような触媒担持カーボンと、高分子電解質を所定の溶媒中に分散させた分散液と、第1実施例と同様の不凍タンパク質および光硬化性樹脂とを混合して、電極ペーストを作製する。
その後、作製した電極ペーストを、ステップS200で用意した電解質層上に塗布する(ステップS220)。電解質層上に電極ペーストを塗布する方法としては、例えば、スプレー塗布、あるいは、インクジェット塗布を行なうことができる。また、電極ペーストを予め粒子状に造粒すると共に、この粒子を帯電させつつ、電界を形成した電解質層上に放出することによって、静電塗布を行なっても良い。
電極ペーストを電解質層上に塗布した後は、光照射を行ない(ステップS230)、電極を完成する。光照射を行ない、光硬化性樹脂を硬化させることで、この光硬化性樹脂によって、触媒担持カーボンと電解質と不凍タンパク質とを、電解質層上に固着させることができる。ステップS220においてスプレー塗布やインクジェット塗布を行なった場合には、電極ペースト中に含まれる溶媒などの液体成分は、上記光照射の前あるいは後に、乾燥工程を行なうことで除去すればよい。このような乾燥工程は、上記液体成分が除去されれば良く、できるだけ低い温度、例えば室温で行なうことが望ましい。なお、ステップS220の電極ペーストの塗布工程、および、ステップS230の光照射の工程は、電解質膜の両面に対してそれぞれ行なえば良く、これにより、アノードおよびカソードを作製することができる。
以上のように構成された本実施例の燃料電池によれば、0℃以下の低温条件下において燃料電池を起動させ、発電の開始と共にカソードにおいて水が生じ始めたときに、カソード内に備えられた不凍タンパク質によりカソード中の水の凍結が抑えられる。したがって、カソードへの酸化ガスの供給が、カソード内で生じた氷によって妨げられることが無い。また、カソードで生じた水の一部は、電解質層を介してアノードへと移動するが、アノードもまた不凍タンパク質を備えることにより、アノード内での水の凍結が抑えられる。そのため、アノードへの燃料ガスの供給が、アノード内で生じた氷によって妨げられることが無い。このように、低温条件下であっても、燃料電池の発電を支障なく開始し継続することができるため、燃料電池は次第に昇温し、定常状態に達することができる。
特に、本実施例では、光硬化性樹脂を用いて、電極内において不凍タンパク質を固着させているため、不凍タンパク質の固着のためには、光照射を行なうだけでよい。したがって、不凍タンパク質を電極に固着させるために、加熱を伴う工程、例えば熱乾燥を行なう必要がなく、不凍タンパク質を固着させる工程における不凍タンパク質に対する加熱を抑制することができる。これにより、不凍タンパク質を固着する工程における不凍タンパク質の熱による劣化を抑えることができる。さらに、本実施例では、光硬化性樹脂を用いて不凍タンパク質を含む電極を電解質層上に成形しているため、塗布した電極ペーストを例えば熱乾燥によって成形する場合に比べて、電解質層に対する電極の結着強度、あるいは、電極全体の強度および耐久性を向上させることができる。したがって、燃料電池全体の耐久性を向上させることができる。
また、第2実施例では、別々に用意した触媒担持カーボンと高分子電解質と不凍タンパク質と光硬化性樹脂とを混合して電極ペーストを作製したが、異なる構成としても良い。第2実施例の変形例として、例えば、電極ペーストの作製に先立って、予め、触媒担持カーボンあるいは触媒を担持しないカーボン粒子上に、光硬化性樹脂を用いて不凍タンパク質を担持させ、このようなカーボン粒子を用いて電極ペーストを作製しても良い。この場合にも、光硬化性樹脂を用いることにより、カーボン粒子上に不凍タンパク質を固着させる際に、乾燥の工程だけにより不凍タンパク質を固着させる場合に比べて、不凍タンパク質に加えられる熱を削減することができる。
あるいは、第2実施例の他の変形例として、電極ペーストを所定のフィルム基材上に塗布することによって、電極を電解質層とは別体で作製し、その後、作製した電極を基材から剥がしつつ電解質層に重ね合わせて貼り合わせることとしても良い。あるいは、所定の基材上に形成した電極を、ガス拡散層上に貼り合わせても良い。この場合にも、所定の基材上に電極を予め作製する際に、光照射により成形を行なうことができ、成形のために加熱乾燥等を行なう必要がなく、成形の際に不凍タンパク質に加わる熱を削減することができる。
ただし、既述した第2実施例の電極製造方法では、電極を作製するための途中の工程だけでなく、最終的に電極全体を成形する(固める)ために、光硬化性樹脂を利用可能となっている。そのため、電極を形成するための全行程を考慮すると、第2実施例のように、不凍タンパク質および光硬化性樹脂をカーボン粒子とは別に加えて作製した電極ペーストを、直接電解質層上に塗布する方が、不凍タンパク質に対する加熱を抑える効果が高く有利である。
D.第3実施例:
以下に、第3実施例として、ガス拡散層における電極との接触面に、光硬化性樹脂によって固着される不凍タンパク質を備えた燃料電池について説明する。第3実施例の燃料電池は、第1実施例の燃料電池における電解質層20に代えて、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えない通常の電解質層を備えると共に、ガス拡散層23,24に代えて、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えるガス拡散層を備えている。
図4は、第3実施例の燃料電池におけるガス拡散層の製造工程を表わす説明図である。ガス拡散層を作製するには、まず、ガス透過性を有する導電性部材を用意する(ステップS300)。ここで用意する導電性部材は、第1実施例の燃料電池が備えるガス拡散層23,24を構成する部材と同様の部材である。
次に、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えるペーストを作製する(ステップS310)。不凍タンパク質および光硬化性樹脂は、第1実施例と同様のものを用いればよく、これらを、水あるいは所定の溶媒に分散させて、ペーストを作製する。
その後、作製したペーストを、ステップS300で用意したガス透過性を有する導電性部材上に塗布する(ステップS320)。導電性部材上にペーストを塗布する方法としては、例えば、スプレー塗布、あるいは、インクジェット塗布を行なうことができる。
ペーストを導電性部材上に塗布した後は、光照射を行ない(ステップS330)、ガス拡散層を完成する。光照射を行ない、光硬化性樹脂を硬化させることで、この光硬化性樹脂によって、不凍タンパク質を、導電性部材表面に固着させることができる。ステップS320においてスプレー塗布やインクジェット塗布を行なった場合には、ペースト中に含まれる液体成分は、上記光照射の前あるいは後に、乾燥工程を行なうことで除去すればよい。このような乾燥工程は、上記液体成分が除去されれば良く、できるだけ低い温度、例えば室温で行なうことが望ましい。なお、燃料電池を組み立てる際には、上記ペーストを塗布した側の表面が電極に接するように、ガス拡散層を配置すれば良い。
以上のように構成された本実施例の燃料電池によれば、0℃以下の低温条件下において燃料電池を起動させ、発電の開始と共にカソードにおいて水が生じ始めたときに、ガス拡散層表面に備えられた不凍タンパク質により、電極と接するガス拡散層表面における水の凍結が抑えられる。したがって、電極へのガスの供給が、ガス拡散層表面で生じた氷によって妨げられることが無い。このように、低温条件下であっても、燃料電池の発電を支障なく開始し継続することができるため、燃料電池は次第に昇温し、定常状態に達することができる。
特に、本実施例では、光硬化性樹脂を用いて、ガス拡散層表面に対して不凍タンパク質を固着させているため、不凍タンパク質の固着のためには、光照射を行なうだけでよい。したがって、不凍タンパク質をガス拡散層に固着させるために、加熱を伴う工程、例えば熱乾燥を行なう必要がなく、不凍タンパク質を固着させる工程における不凍タンパク質に対する加熱を抑制することができる。これにより、不凍タンパク質を固着する工程における不凍タンパク質の熱による劣化を抑えることができる。
上記第3実施例では、ガス拡散層表面に不凍タンパク質を固着させるために、不凍タンパク質と光硬化性樹脂とを含有するペーストを用いたが、異なる構成としても良い。例えば、不凍タンパク質と光硬化性樹脂とを粉体の状態で混合した混合粉体を作製し、この混合粉体を、ステップS300で用意した導電性部材上に塗布して、その後、光照射を行なっても良い。
また、第3実施例では、不凍タンパク質と光硬化性樹脂とからなるペーストを用いたが、導電性部材表面に塗布するペーストは、さらに他の成分を含有していても良い。例えば、カーボン粒子等の導電性粒子をさらに含有することとしても良い。これにより、ガス拡散層と電極との間の集電性を高めると共に、ガス拡散層表面に不凍タンパク質および光硬化性樹脂を配置することに起因する導電性の低下、すなわち接触抵抗の増大を抑えることができる。あるいは、撥水性物質、例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂をさらに含有させて、ガス拡散層における電極との接触面に対して撥水性を付与しても良い。
なお、第3実施例では、ガス拡散層23,24において電極と接する側の表面に、光硬化性樹脂を用いて不凍タンパク質を固着させたが、電極側の面に加えて、あるいは電極側の面に代えて、ガスセパレータ側の表面に不凍タンパク質を固着させても良い。
E.第4実施例:
以下に、第4実施例として、ガスセパレータ表面に、光硬化性樹脂によって固着される不凍タンパク質を備えた燃料電池について説明する。第4実施例の燃料電池は、第1実施例の燃料電池における電解質層20に代えて、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えない通常の電解質層を備えると共に、ガスセパレータ25,26に代えて、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えるガスセパレータを備えている。
第4実施例のガスセパレータは、図4に示した第3実施例のガス拡散層と同様にして製造することができる。すなわち、ステップS300に代えて、第1実施例の燃料電池が備えるガスセパレータ25,26を構成する部材と同様の、ガス不透過な導電性部材を用意する工程を行なう。次にステップS310と同様に、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えるペーストを作製する。その後、作製したペーストを、用意したガス不透過な導電性部材上に塗布し(ステップS320)、光照射を行なって(ステップS330)、ガスセパレータを完成する。
以上のように構成された本実施例の燃料電池によれば、0℃以下の低温条件下において燃料電池を起動させ、発電の開始と共にカソードにおいて水が生じ始めたときに、ガスセパレータに備えられた不凍タンパク質により、ガスセパレータ表面における水の凍結が抑えられる。したがって、単セル内ガス流路を流れるガスの流れが、ガスセパレータ表面で生じた氷によって妨げられることが無く、電極に供給されるガス流れを確保することができる。このように、低温条件下であっても、燃料電池の発電を支障なく開始し継続することができるため、燃料電池は次第に昇温し、定常状態に達することができる。
特に、本実施例では、光硬化性樹脂を用いて、ガスセパレータ表面に対して不凍タンパク質を固着させているため、不凍タンパク質の固着のためには、光照射を行なうだけでよい。したがって、不凍タンパク質をガスセパレータに固着させるために、加熱を伴う工程、例えば熱乾燥を行なう必要がなく、不凍タンパク質を固着させる工程における不凍タンパク質に対する加熱を抑制することができる。これにより、不凍タンパク質を固着する工程における不凍タンパク質の熱による劣化を抑えることができる。
なお、表面に所定の凹凸形状が形成されたガスセパレータにおいては、単セル内燃料ガス流路27および単セル内酸化ガス流路28を形成する凹部の表面のみに不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えさせることが望ましい。これにより、ガスセパレータとガス拡散層との間の、不凍タンパク質および光硬化性樹脂に起因する接触抵抗の増大を抑えることができる。このような場合には、上記凹部のみにペーストを塗布しても良いし、導電性部材の表面全体にペーストを塗布した後に、ガス拡散層と接触する部位の表面を削り取ることとしても良い。
上記第4実施例では、ガスセパレータ表面に不凍タンパク質を固着させるために、不凍タンパク質と光硬化性樹脂とを含有するペーストを用いたが、異なる構成としても良い。例えば、不凍タンパク質と光硬化性樹脂とを粉体の状態で混合した混合粉体を作製し、この混合粉体を、ステップS300で用意した導電性部材上に塗布して、その後、光照射を行なっても良い。
また、第4実施例では、不凍タンパク質と光硬化性樹脂とからなるペーストを用いたが、導電性部材表面に塗布するペーストは、さらに他の成分を含有していても良い。例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂のような撥水性物質をさらに含有させて、ガスセパレータの表面に対して撥水性を付与し、ガスセパレータ表面で液水を弾かせることによって、単セル内ガス流路からの排水性を向上させても良い。あるいは、ガスセパレータを構成するガス不透過な導電性部材の構成材料よりも親水性の高い材料をさらに含有させて、ガスセパレータの表面に対して親水性を付与し、ガスセパレータ表面に沿って液水を導くことによって、単セル内ガス流路からの排水性を向上させても良い。
なお、第1ないし第4実施例において不凍タンパク質を備えることによる凍結防止効果は、特に低温条件下における起動時に顕著に得られる。しかしながら、不凍タンパク質を備えることによる凍結防止効果は、燃料電池の起動時に限るものではなく、低温条件下において広く、ガス流路内での水の凍結を抑え、水の凍結に起因するガス流れの阻害を抑制し、燃料電池性能を確保することができる。
F.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
F1.変形例1:
第2ないし第4実施例では、カソード側およびアノード側の双方の、電極、ガス拡散層あるいはガスセパレータにおいて、不凍タンパク質および光硬化性樹脂を備えることとしたが、いずれか一方のみが備えることとしても良い。例えば、電極で生成水が生じるカソード側だけが備えることとしても良い。いずれか一方であっても、光硬化性樹脂によって固着された不凍タンパク質を備える電極、ガス拡散層あるいはガスセパレータにおいては、既述した効果が得られる。
F2.変形例2:
第1ないし第4実施例では、それぞれ、電解質層、電極、ガス拡散層、ガスセパレータのいずれかにおいて、光硬化性樹脂によって固着された不凍タンパク質を備えることとしたが、複数の部位において備えても良い。電解質層、電極、ガス拡散層およびガスセパレータから選択される1以上の部位において、実施例と同様に光硬化性樹脂によって固着された不凍タンパク質を備えるならば、不凍タンパク質を設けた部位において既述した効果が得られる。
F3.変形例3:
燃料電池を構成する各部材の形状は、図1に示した実施例の燃料電池の形状とは異なっていても良い。図5は、異なる形状の燃料電池の一例である単セル110の構成を示す説明図である。単セル110は、図1の単セル10のガスセパレータ25,26に代えてガスセパレータ125,126を備えると共に、さらに多孔質部材130,131を備える以外は単セル10と同様の構造を有している。図1と共通する部分には、図5において同じ参照番号を付しており、詳しい説明を省略する。ガスセパレータ125,126は、単セル内ガス流路の流路壁を形成する表面が、凹凸を有しない平坦面として形成されている。また、多孔質部材130,131は、ガスセパレータと電極との間に配置される平板状部材であり、例えば、発泡金属や金属メッシュによって形成される。単セル110では、上記多孔質部材130,131内に形成される多数の細孔からなる空間によって、それぞれ、単セル内燃料ガス流路127あるいは単セル内酸化ガス流路128が形成される。このような燃料電池では、上記多孔質部材の少なくとも一方の表面に、光硬化性樹脂を用いて不凍タンパク質を固着させることにより、低温条件下において、水の凍結に起因するガス流れの阻害を抑制することができる。上記多孔質部材130,131やガス拡散層23,24のように、電極とガスセパレータとの間に配置されて、電極に給排するためのガスの流路を形成するガス流路形成部であれば、その表面に、光硬化性樹脂を用いて不凍タンパク質を固着させることで、実施例と同様の効果が得られる。
F4.変形例4:
第1および第4実施例では、燃料電池は固体高分子型燃料電池としたが、異なる種類の燃料電池に対して本発明を適用しても良い。発電に伴って水が生じると共に、0℃未満の低温条件下で起動することが可能な燃料電池であれば、本発明を適用することにより同様の効果が得られる。
単セル10の概略構成を現わす断面模式図である。 電解質層20の製造工程の概略を現わす説明図である。 第2実施例の燃料電池における電極の製造工程を表わす説明図である。 第3実施例の燃料電池におけるガス拡散層の製造工程を表わす説明図である。 単セル110の構成を示す説明図である。
符号の説明
10,110…単セル
20…電解質層
21…アノード
22…カソード
23,24…ガス拡散層
25,26…ガスセパレータ
27,127…単セル内燃料ガス流路
28,128…単セル内酸化ガス流路
125,126…ガスセパレータ
130,131…多孔質部材

Claims (9)

  1. 燃料電池の製造方法であって、
    液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質と、光硬化性樹脂とを含有する不凍タンパク質含有ペーストを作製する第1の工程と、
    固体高分子電解質膜上に、前記不凍タンパク質含有ペーストを塗布する第2の工程と、
    光照射によって、前記第2の工程で塗布した前記不凍タンパク質含有ペースト中の前記光硬化性樹脂を硬化させて、前記燃料電池の電解質層を作製する第3の工程と
    を備える燃料電池の製造方法。
  2. 請求項1記載の燃料電池の製造方法であって、
    前記不凍タンパク質含有ペーストは、さらに、高分子電解質を含有する
    燃料電池の製造方法。
  3. 燃料電池の製造方法であって、
    触媒と、液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質と、光硬化性樹脂とを含有する電極ペーストを作製する第1の工程と、
    所定の基材上に、前記電極ペーストを塗布する第2の工程と、
    光照射によって、前記第2の工程で塗布した前記電極ペースト中の前記光硬化性樹脂を硬化させて、電極を作製する第3の工程と
    を備える燃料電池の製造方法。
  4. 請求項3記載の燃料電池の製造方法であって、
    前記所定の基材は、前記電解質層である
    燃料電池の製造方法。
  5. 燃料電池の製造方法であって、
    液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質と、光硬化性樹脂とを含有する混合体を作製する第1の工程と、
    表面に電極が形成された電解質層上に配置されて、前記電極に供給および/または排出するためのガスの流路を形成するガス流路形成部上に、前記混合体を配置する第2の工程と、
    光照射によって、前記第2の工程で配置した前記混合体中の前記光硬化性樹脂を硬化させる第3の工程と
    を備える燃料電池の製造方法。
  6. 請求項5記載の燃料電池の製造方法であって、
    前記ガス流路形成部は、前記電極に供給および/または排出するためのガスが流れる多数の細孔が形成された多孔質体である
    燃料電池の製造方法。
  7. 燃料電池の製造方法であって、
    液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質と、光硬化性樹脂とを含有する混合体を作製する第1の工程と、
    表面に電極が形成された電解質層上に配置されて、前記電極に供給および/または排出するためのガスの流路の壁面の一部を形成するガスセパレータにおける前記壁面を形成する表面に、前記混合体を配置する第2の工程と、
    光照射によって、前記第2の工程で配置した前記混合体中の前記光硬化性樹脂を硬化させる第3の工程と
    を備える燃料電池の製造方法。
  8. 燃料電池であって、
    請求項1ないし7いずれか記載の方法により製造された
    燃料電池。
  9. 燃料電池であって、
    高分子電解質から成る電解質層と、
    前記電解質層を挟持する電極と、
    前記電極上に配置されると共に、前記電極に供給および/または排出するためのガスの流路を形成するガス流路形成部と、
    前記ガス流路形成部上に配置されると共に、前記ガスの流路の壁面の一部を形成するガスセパレータと
    を備え、
    前記電解質層と、前記電極と、前記ガス流路形成部の表面と、前記ガスセパレータにおける前記壁面を形成する表面と、のうちの少なくともいずれかにおいて、液水からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タンパク質が、光硬化性樹脂によって固着されている
    燃料電池。
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