JP2014049199A - 電池用焼結体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結晶化ガラスの原料であるガラスおよび活物質材料を含む中間体を焼成する焼成工程を有する電池用焼結体の製造方法であって、上記結晶化ガラスは、上記ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成によりイオン導電率が高くなり得るものであり、上記中間体は、上記ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成により異相を生じ得るものであり、上記焼成工程は、上記中間体を、上記ガラスの結晶化温度以上の第1到達温度まで昇温した後、上記第1到達温度で保持するまたは上記第1到達温度までの昇温速度よりも遅い昇温速度で昇温する第1焼成工程と、上記第1焼成工程にて焼成された上記中間体を、上記第1到達温度よりも高い第2到達温度で焼成する第2焼成工程とを有する電池用焼結体の製造方法。
【選択図】図8
Description
一般的に、結晶化ガラスは、焼成温度が高いほど結晶性が高くなるためイオン伝導性が向上する傾向がある。しかしながら、上記のような電池用焼結体の製造方法では、焼結に伴って固体電解質と活物質との界面に異相が生じる場合があるため、イオン伝導性が低下するという問題がある。特に、焼成温度が高い場合には異相の発生はより顕著となるため、この問題は深刻さを増す。そのため、結晶化ガラスが有する高いイオン伝導性を電池用焼結体に有効に利用できていないのが実情である。
Li1+xM1xM22−x(PO4)3 (1)
(上記式(1)中、M1は、Al、Y、GaおよびInからなる群から選択される少なくとも1種、M2は、Ti、GeおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種、ならびにxは0≦x≦2である。)
Li1+xAlxGe2−x(PO4)3 (2)
(上記式(2)中、0≦x≦2である。)
また、「結晶化ガラスは、ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成によりイオン導電率が高くなり得るものである」とは、ガラスの結晶化温度以上でガラス単体を焼成した場合において、ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成により得られた結晶化ガラスのイオン導電率が、ガラスの結晶化温度での焼成により得られた結晶化ガラスのイオン導電率よりも高くなることをいう。すなわち、結晶化ガラスは、ガラスの結晶化温度以上の焼成温度において、焼成温度が高くなるにつれてイオン導電率が高くなるものである。
異相の有無は、X線回折(XRD)分析により判断することができる。すなわち、「中間体は、ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成により固体電解質材料と活物質材料との界面に異相を生じ得るものである」とは、ガラスの結晶化温度よりも高い温度で中間体を焼成した場合において、固体電解質材料と活物質材料との界面に、XRD法により分析したときに、固体電解質材料の成分および活物質材料の成分以外の成分が検出されることを意味する。
異相の有無は、具体的には、ガラスの結晶化温度よりも高い温度で焼成された中間体に対してXRD測定を行い、得られたピークの同定を行うことにより判断する。X線回折法は、既存の各種X線回折法と同様のものを用いることができる。例えば、CuKα線を用いる方法等を挙げることができる。また、XRD測定には、例えば、リガク製RINT UltimaIIIを用いることができる。
図1は、本発明の電池用焼結体の製造方法の一例を概念的に表す断面図である。図1においては、まず、ガラス11を含む固体電解質成形体層12と、活物質材料13を含む活物質層14とを備える積層体15(中間体)を準備する(図1(a))。その後、積層体15に所定の条件で2段階の焼成を行うことで、固体電解質材料(結晶化ガラス)1を含む固体電解質層2と、活物質材料3を含む活物質層4とを有し、電池用焼結体である積層体5を得ることができる(図1(b))。
図2は、本発明の電池用焼結体の製造方法の他の例を概念的に表す断面図である。図2においては、まず、ガラス11および活物質材料13を含み、ガラス11および活物質材料13が混合された状態にある混合成形体層16(中間体)を準備する(図2(a))。その後、混合成形体層16に所定の条件で2段階の焼成を行うことで、固体電解質材料(結晶化ガラス)1および活物質材料3を含み、電池用焼結体である活物質層6を得ることができる(図2(b))。
図4は本発明の電池用焼結体の製造方法における焼成工程の焼成プロファイルの他の例を示す図である。図4においては、まず、室温からガラスの結晶化温度以上の第1到達温度まで昇温した後、第1到達温度までの昇温速度よりも遅い昇温速度で昇温する。続いて、その昇温速度で第1到達温度から第1到達温度よりも高い第2到達温度まで昇温した後、第2到達温度で保持する。その後、第2到達温度から室温まで降温する。
結晶化ガラスは、ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成によりイオン導電率が高くなり得るものであり、焼成温度が高いほど結晶性が高くなりイオン導電率が高くなることから、より高温での焼成が可能になればイオン導電率を向上させることができる。
したがって、異相の発生を伴うことなくイオン導電率向上のために第2焼成工程の第2到達温度を高くすることができる。よって、異相の発生を抑制しつつ、イオン導電率の高い電池用焼結体を得ることができる。
本発明における中間体準備工程は、固体電解質材料としての結晶化ガラスの原料であるガラスと、活物質材料とを含む中間体を準備する工程である。
以下、ガラス、活物質材料および中間体準備方法について説明する。
本発明におけるガラスは、固体電解質材料としての結晶化ガラスの原料であり、結晶化ガラスは、ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成によりイオン導電率が高くなり得るものである。また、ガラスは、ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成により固体電解質材料と活物質材料との界面に異相を生じ得る中間体を構成するものである。
ここで「ガラス」および「結晶化ガラス」については上述の通りである。
酸化物系固体電解質ガラスとしては、例えば、NASICON型酸化物、ペロブスカイト酸化物、LISICON型酸化物、ガーネット型酸化物等が挙げられる。
上記M1の金属は、上記の中でも、Al、YおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Alがより好ましい。また、上記M2の金属は、上記の中でも、GeおよびTiからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Geがより好ましい。さらには、M1の金属はAlであり、かつ、M2の金属はGeであることが好ましい。すなわち、一般式(2)Li1+xAlxGe2−x(PO4)3(式(2)中、0≦x≦2である。)で表される化合物が好ましい。ナシコン型リン酸化合物の中でも上記式(2)で表される化合物から得られる結晶化ガラスはイオン伝導性が高いからである。
また、上記xの範囲は、上記の中でも、0.1≦x≦1.9であることが好ましく、0.3≦x≦0.7であることがより好ましい。特に、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3が好ましい。
本発明における活物質材料は、ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成により固体電解質材料と活物質材料との界面に異相を生じ得る中間体を構成するものである。
上記M4としては、遷移金属元素であれば特に限定されるものではない。さらに、一般的な遷移金属元素は、1つまたは複数の価数を取ることにより、多様な酸化状態を示すことができるが、上記M4としては、取り得る最大価数を有するものである。ここで「取り得る最大価数」とは、化合物中で、各遷移金属元素が安定に存在している状態における価数のうち、最大となる価数をいう。そのため、遷移金属元素が安定に存在する化合物として過酸化物等は含まれない。
なお、上記式で表される遷移金属酸化物については、国際公開第2012/043566号パンフレットに記載のものを用いることができる。
中でも、Nb2O5、WO3、MoO3、Ta2O5が好ましい。
上記M5の金属は、上記の中でも、Ni、Co、Feからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、中でも、Niが好ましい。上記xの範囲は、上記の中でも、0≦x≦1.5であることが好ましく、0≦x≦1.0であることがより好ましい。特に、スピネル型酸化物は、LiNi0.5Mn1.5O4であることが好ましい。
中間体の構造は、目的とする電池用焼結体の構造に応じて異なるものである。例えば、図1(b)のように、積層体である電池用焼結体を得る場合には、積層体の中間体を準備する。一方、図2(b)のように、活物質層である電池用焼結体を得る場合には、混合成形体層の中間体を準備する。
本発明における焼成工程は、上記中間体を焼成し、上記ガラスを結晶化させて上記結晶化ガラスを得る工程であり、上記中間体を、上記ガラスの結晶化温度以上の第1到達温度まで昇温した後、上記第1到達温度で保持するまたは上記第1到達温度までの昇温速度よりも遅い昇温速度で昇温する第1焼成工程と、上記第1焼成工程にて焼成された上記中間体を、上記第1到達温度よりも高い第2到達温度で焼成する第2焼成工程とを有する。
以下、第1焼成工程および第2焼成工程に分けて説明する。
本発明における第1焼成工程は、上記中間体を、上記ガラスの結晶化温度以上の第1到達温度まで昇温した後、上記第1到達温度で保持するまたは上記第1到達温度までの昇温速度よりも遅い昇温速度で昇温する工程である。
ここで、結晶化温度は、示差熱・熱重量同時測定(TG−DTA)により測定されるものであり、その測定条件は昇温速度:10℃/minであり、得られた発熱ピークにより定義されるものである。
ここで、固体電解質材料と活物質材料との界面に異相が生じない温度については、第1焼成工程にて得られた中間体に対してXRD測定を行い、得られたピークの同定を行うことで決定することができる。
ここで「第2昇温速度」とは、第1到達温度からの昇温速度をいう。すなわち、第1到達温度からの昇温速度が第1到達温度までの昇温速度よりも遅ければよい。そのため、中間到達温度からの昇温速度は、第1昇温速度よりも速くてもよく遅くてもよい。
中間体を焼成する方法としては、例えば焼成炉を用いる方法を挙げることができる。
本発明における第2焼成工程は、上記第1焼成工程にて焼成された上記中間体を、上記第1到達温度よりも高い第2到達温度で焼成する工程である。
中でも、第2到達温度は、上記第1焼成工程にて結晶化ガラス(固体電解質材料)と活物質材料との界面に異相が生じ得る温度であることが好ましい。本発明においては所定の条件で2段階の焼成を行うことにより固体電解質材料と活物質材料との界面に異相が発生するのを抑制することができるため、第2到達温度が、上記第1焼成工程にて結晶化ガラス(固体電解質材料)と活物質材料との界面に異相が生じ得る温度である場合であっても、第2焼成工程にて固体電解質材料と活物質材料との界面での異相の発生を抑制することができる。したがって、イオン伝導性の向上のために第2到達温度を高温に設定することができる。
ここで、固体電解質材料と活物質材料との界面に異相が生じない温度については、得られた電池用焼結体に対してXRD測定を行い、得られたピークの同定を行うことで決定することができる。
一方、図3、図6(b)に例示するように第1到達温度から第2到達温度まで昇温する際の昇温速度、および、図5、図6(a)に例示するように中間到達温度から第2到達温度まで昇温する際の昇温速度は、結晶化ガラス(固体電解質材料)と活物質材料との界面に異相が生じない程度に適宜調整される。昇温速度が遅すぎると、結晶化ガラスおよび活物質材料が反応するおそれがある。昇温速度が速すぎると、結晶性が十分に向上せず、高いイオン導電率が得られない可能性がある。具体的に、昇温速度は1℃/分〜20℃/分の範囲内であることが好ましく、1℃/分〜10℃/分の範囲内であることがより好ましい。
上記第2到達温度で保持する保持時間は、所望の電池用焼結体を得ることができれば特に限定されるものではなく、固体電解質材料と活物質材料との界面に異相が生じない程度に適宜調整される。保持時間が長すぎると、固体電解質材料と活物質材料との界面に異相が生じるおそれがある。保持時間が短すぎると、結晶性が十分に向上せず、高いイオン導電率が得られない可能性がある。具体的には、保持時間は0.1時間〜48時間の範囲内であることが好ましく、1時間〜12時間の範囲内であることがより好ましい。
本発明において「電池用焼結体」とは、電池に用いられ、焼結により得られる固体電解質材料および活物質材料を含む物体を意味する。ここで「焼結」とは、固体粉末の集合体を加熱すると、固まって緻密な物体になる現象のことをいう。電池用焼結体は、電池の部材として用いられる焼結体であれば特に限定されるものではない。ここで「焼結体」とは、固体粉末の集合体を加熱することにより、固まった緻密な物体のことをいう。
なお、焼結が十分に進行したか否かは、例えば、焼結体の表面にセロテープ(登録商標)を貼り付けて、はがした時に焼結体の成分が転写されるか否かにより判断することができる。はがしたセロテープ(登録商標)に焼結体の成分が転写されると、焼結が十分に進行していないと判断することができる。また、焼結が十分に進行したか否かは、焼成後の部材が、圧粉処理では到達できない密度(充填率、空隙率)を有しているか否かでも判断することができる。
なお、活物質層における活物質材料の含有量、活物質層の厚さおよび空隙率等については、上述の積層体の中間体の場合の活物質層と同様である。
本発明により得られる電池用焼結体は、全固体リチウム電池に好適に用いられる。
図7は、本発明の全固体リチウム電池の一例を概念的に示す断面図である。図7における全固体リチウム電池30は、正極活物質層31と、負極活物質層33と、正極活物質層31および負極活物質層33の間に形成された固体電解質層32とを有する。全固体リチウム電池において、例えば図1(b)に示したように、電池用焼結体が固体電解質層2および活物質層4の積層体5である場合、この活物質層4は、図7における正極活物質層31であってもよく、負極活物質層33であってもよい。同様に、図2(b)に例示したように、電池用焼結体が活物質層6である場合、この活物質層6は、図7における正極活物質層31であってもよく、負極活物質層33であってもよい。
ガラス状のLi1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3(ホソカワミクロン社製、LAGP)を一軸プレスを用いて10MPaで成形した後、CIP(冷間等方圧加圧法)によりφ13mmのペレットを作製した。次に、ペレットを、大気雰囲気、540℃〜750℃で2時間焼成した。この焼結体の両面にAuを蒸着し、交流インピーダンスにより抵抗値を測定した。そして、インピーダンスとサンプルサイズから、導電率を算出した。その結果、540℃で2時間焼成したときに結晶化により高い導電率を示し、750℃で2時間焼成したときに高い結晶性と粒成長により最も高い導電率を示した。
ガラス状のLi1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3(ホソカワミクロン社製、LAGP)と、活物質材料としてNb2O5(アルドリッチ製)とを用意した。これらを体積比50/50で乳鉢により混合し、得られた混合粉末を一軸プレスを用いて10MPaで成形した後、CIP(冷間等方圧加圧法)によりφ13mmのペレットを作製した。次に、ペレットを、大気雰囲気、昇温速度4℃/分で600℃まで昇温し2時間保持した後、昇温速度4℃/分で625℃まで昇温し2時間保持した。その後、降温速度10℃/分で降温し、電池用焼結体を得た。
焼成条件について、昇温速度4℃/分で600℃まで昇温し2時間保持した後、降温速度10℃/分で降温したこと以外は、実施例1と同様にして電池用焼結体を得た。
焼成条件について、昇温速度4℃/分で625℃まで昇温し2時間保持した後、降温速度10℃/分で降温したこと以外は、実施例1と同様にして電池用焼結体を得た。
(X線回折測定)
実施例1、比較例1および比較例2で得られた電池用焼結体を、乳鉢で粉砕し、X線回折(XRD)測定を行った。XRD測定には、リガク製RINT UltimaIIIを用い、CuKα線を用いた。その結果を下記表1に示す。
実施例1、比較例1および比較例2で得られた電池用焼結体について、両面にAuを蒸着し、交流インピーダンスにより抵抗値を測定した。そして、インピーダンスとサンプルサイズから、導電率を算出した。その結果を図8に示す。
2 … 固体電解質層
3、13 … 活物質材料
4、6、14 … 活物質層
5、15 … 積層体
11 … ガラス
12 … 固体電解質成形体層
16 … 混合成形体層
30 … 全固体リチウム電池
31 … 正極活物質層
32 … 固体電解質層
33 … 負極活物質層
Claims (4)
- 固体電解質材料としての結晶化ガラスの原料であるガラスと、活物質材料とを含む中間体を準備する中間体準備工程と、
前記中間体を焼成し、前記ガラスを結晶化させて前記結晶化ガラスを得る焼成工程と
を有する電池用焼結体の製造方法であって、
前記結晶化ガラスは、前記ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成によりイオン導電率が高くなり得るものであり、
前記中間体は、前記ガラスの結晶化温度よりも高い温度での焼成により前記固体電解質材料および前記活物質材料との界面に異相を生じ得るものであり、
前記焼成工程は、
前記中間体を、前記ガラスの結晶化温度以上の第1到達温度まで昇温した後、前記第1到達温度で保持するまたは前記第1到達温度までの昇温速度よりも遅い昇温速度で昇温する第1焼成工程と、
前記第1焼成工程にて焼成された前記中間体を、前記第1到達温度よりも高い第2到達温度で焼成する第2焼成工程と
を有することを特徴とする、電池用焼結体の製造方法。 - 前記ガラスは、ナシコン型リン酸化合物であることを特徴とする請求項1に記載の電池用焼結体の製造方法。
- 前記ガラスは、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項2に記載の電池用焼結体の製造方法。
Li1+xM1xM22−x(PO4)3 (1)
(上記式(1)中、M1は、Al、Y、GaおよびInからなる群から選択される少なくとも1種、M2は、Ti、GeおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種、ならびにxは0≦x≦2である。) - 前記ガラスは、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項3に記載の電池用焼結体の製造方法。
Li1+xAlxGe2−x(PO4)3 (2)
(上記式(2)中、0≦x≦2である。)
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WO2012043566A1 (ja) * | 2010-09-28 | 2012-04-05 | トヨタ自動車株式会社 | 電池用焼結体、電池用焼結体の製造方法、及び全固体リチウム電池 |
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