JP2014047792A - 流体封入式防振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】衝撃荷重等の入力時における異音発生の原因となるキャビテーションを簡単に且つ効果的に抑制することの出来る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供すること。
【解決手段】オリフィス通路38で相互に連通された主液室34および副液室36を備えた流体封入式防振装置10において、かかる封入流体には、常温で大気圧の環境下において0.03容積%以上の溶存ガスを含有せしめると共に、対水接触角が90度以上とされた低接着エネルギー面58を表面に備える独立部材56を、主液室34の壁内面に取り付けた。
【選択図】図1
【解決手段】オリフィス通路38で相互に連通された主液室34および副液室36を備えた流体封入式防振装置10において、かかる封入流体には、常温で大気圧の環境下において0.03容積%以上の溶存ガスを含有せしめると共に、対水接触角が90度以上とされた低接着エネルギー面58を表面に備える独立部材56を、主液室34の壁内面に取り付けた。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば自動車のエンジンマウント等に用いられる流体封入式防振装置に係り、特に衝撃的荷重等の入力に伴って発生するキャビテーションに起因する異音に対して効果的で且つ簡便な解決策を提供することができる技術に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体の如き防振装置の一種として、内部に封入された流体の流動作用に基づいた防振効果を利用する流体封入式防振装置が知られている。かかる流体封入式防振装置は、例えば特開2005−337348号公報(特許文献1)に記載されているように、振動入力時に本体ゴム弾性体の変形に基づいて圧力変動が惹起される主液室と、振動入力時に該主液室との間で相対的な圧力変動が生ぜしめられる副液室とが、オリフィス通路で連通された構造とされる。そして、振動入力時に相対的な圧力変動が惹起される主液室と副液室との間でオリフィス通路を通じて流動せしめられる非圧縮性封入流体の流動作用に基づいて防振効果が発揮されるようになっている。
ところで、このような流体封入式防振装置では、衝撃的荷重の入力時に発生する異音や振動が問題になる場合がある。かかる異音等は、衝撃的荷重の入力で主液室の圧力が急激に低下して発生するキャビテーション気泡に起因すると考えられる。
このような問題に対して、特許4265613号公報(特許文献2)に記載されているように、主液室と副液室との間にリリーフバルブ等を備えた短絡流路を設けて、主液室における過大な負圧を速やかに解消させる構造も提案されている。
しかしながら、リリーフバルブや短絡流路などを特別に形成する必要があり、部材点数の増加や構造の複雑化が避けられないという問題があった。
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、衝撃的荷重等の入力に伴って発生するキャビテーションに起因する異音に対して簡便且つ効果的な解決策を提供することにある。
すなわち、本発明の第1の態様は、振動入力時に本体ゴム弾性体の変形に基づいて圧力変動が惹起される主液室と、振動入力時に該主液室との間で相対的な圧力変動が生ぜしめられる副液室と、それら主液室と副液室との間での封入流体の流動を許容するオリフィス通路とを、備えた流体封入式防振装置において、前記封入流体には、常温で大気圧の環境下において0.03容積%以上の溶存ガスが含有されていると共に、対水接触角が90度以上とされた低接着エネルギー面を表面に備えた独立部材が、前記主液室の壁内面に取り付けられていることを、特徴とする。
このような第1の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、常温で大気圧の環境下において0.03容積%以上の溶存ガスが非圧縮性流体である液体中に溶存されていることから、衝撃的荷重の入力により主液室の圧力が大きく低下すると、所謂キャビテーションといわれる蒸気性キャビテーションが発生する以前に、気体性キャビテーションであるエアレーションの現象が発生して、液体に溶解していたガスが気泡となって現れる。そして、このエアレーション気泡が特に表れやすい主液室の壁面には、対水接触角が90度以上とされた低接着エネルギー面が設けられていることから、現出した気泡が主液室の壁面上で拡張せずにレンズ状又は球状に近い形となる。その結果、主液室の圧力低下に際して気泡が一層安定して発現し且つ維持されて、かかる気泡が主液室における負圧の吸収軽減作用を発揮することとなり、主液室における著しい圧力低下が回避されることにより、キャビテーション(蒸気性キャビテーション)が防止されて、キャビテーションに起因する異音や振動が効果的に抑えられるのである。
特に、本発明では、主液室や副液室、オリフィス通路などの基本的構造に変更を加えることなく、表面に低接着エネルギー面を備えた独立部材を主液室の壁内面に取り付けることにより、主液室の壁内面の少なくとも一部に低接着エネルギー面を設けて、キャビテーションに起因する異音等を低減することが可能になる。それ故、流体封入式防振装置の設計完了後の段階でも、基本的な防振性能への悪影響を可及的に回避しつつ、キャビテーション異音に対して簡便に対策を講ずることもできるのである。
しかも、低接着エネルギー面を備えた独立部材が、主液室の壁面を構成する他の部材(本体ゴム弾性体や仕切部材等)とは別体とされていることから、主液室の壁面を構成する他の部材の材質を限定することなく、主液室の壁内面に低接着エネルギー面を設けることができる。それ故、要求される防振特性や耐久性、重量の制限等に高度に対応しつつ、キャビテーション異音の低減を実現することが可能となる。
なお、本発明において、常温とは、少なくとも使用開始または製造工程において加熱や冷却を加えない状態の温度であって通常は25℃とされる。また、大気圧とは、少なくとも使用開始または製造工程において加圧や減圧もしていない状態の圧力であって通常は標準大気圧とされる。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記低接着エネルギー面が、前記独立部材の表面に設けられた表面処理層によって形成されているものである。
第2の態様によれば、表面処理層で低接着エネルギー面を形成することにより、例えば独立部材の全体の材質を変更する場合等に比して、より容易に且つ効率的に本発明が実施可能とされる。なお、低接着エネルギー面を形成する表面処理は、例えば部材の表面に対して、対水接触角が90度以上の物性を有する材質層を積層成形したり、別体成形後に積層固着すること等も可能であるが、部材の表面に皮膜コーティングしたり、表面処理することにより、目的とする低接着エネルギー面を簡単に形成することができる。具体的には、例えばフッ素系樹脂のコーティングや、放射線の照射処理などによって、低接着エネルギー面を得ることも可能である。
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記独立部材が周方向に延びており、該独立部材が前記主液室の周壁内面に重ね合わされて取り付けられているものである。
第3の態様によれば、主液室の壁内面に取り付けられた独立部材の表面積を効率的に大きく得ることができて、主液室の壁内面における低接着エネルギー面の面積が大きく確保される。その結果、気泡の安定した保持等によるキャビテーション異音の低減作用がより効果的に発揮される。しかも、主液室の内周部分には独立部材の取付け構造や独立部材の配設スペースが要求されないことから、液圧吸収機構や負圧低減用のリリーフ弁機構等といった種々のデバイスを配設することが可能となる。
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記独立部材が周方向に延びるように弾性的に湾曲変形された状態で前記主液室に収容されており、該独立部材がそれ自体の弾性によって該主液室の周壁内面に押し当てられて取り付けられているものである。
第4の態様によれば、特別な固定手段を要することなく、独立部材がそれ自体の弾性によって主液室の周壁内面に押し当てられて取り付けられることから、構造の簡略化が実現されると共に、流体封入式防振装置の設計完了後の段階においてキャビテーション異音に対してより簡便に対策を講ずることもできる。
本発明の第5の態様は、第3の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記独立部材が環状とされており、該独立部材が前記主液室の周壁内面に嵌入されて取り付けられているものである。
第5の態様によれば、環状の独立部材が主液室の周壁内面に対して嵌入されることで、独立部材が主液室の周壁内面に押し当てられて保持される。それ故、独立部材が特別な固定手段を要することなく取り付けられて、構造の簡略化やキャビテーション異音に対するより簡便な対策手段の提供が実現される。
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記主液室の壁内面に対する前記独立部材の相対変位を制限する位置決め手段が設けられているものである。
第6の態様によれば、主液室の壁内面に対する独立部材の位置ずれや脱落が位置決め手段によって防止されることから、目的とする防振特性や異音の低減作用を安定して得ることができる。特に、独立部材を主液室の壁内面に取り付けるための取付け手段とは別に位置決め手段が設けられて、それら取付け手段と位置決め手段が組み合わせて採用されることによれば、主液室の壁内面に対する独立部材の位置決めがより効果的に実現される。
本発明の第7の態様は、第1〜第6の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、振動伝達系を構成する各一方の部材に取り付けられる第一の取付部材および第二の取付部材を前記本体ゴム弾性体で連結せしめて、該第二の取付部材で支持された仕切部材の一方の側に該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された前記主液室を形成すると共に、該仕切部材の他方の側に前記副液室を形成し、更に、該仕切部材における該主液室に晒される面に前記独立部材を取り付けたものである。
第7の態様によれば、独立部材が仕切部材に取り付けられることから、振動入力時に積極的に弾性変形する本体ゴム弾性体に取り付けられる場合に比して、独立部材の位置ずれや脱落等といった不具合が生じ難くなる。
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記仕切部材が熱可塑性の合成樹脂で形成されているものである。
本発明では、独立部材が仕切部材とは別体で形成されて取り付けられることから、低接着エネルギー面を設けるために仕切部材の材質が限定されるのを回避できる。それ故、第8の態様のように、成形性に優れ且つ軽量の熱可塑性合成樹脂で仕切部材を形成しながら、独立部材にはフッ素系樹脂の焼付け等によって強固な低接着エネルギー面を形成するといったことも可能となる。
本発明によれば、エアレーションで主液室に現出する溶存ガス気泡が低接着エネルギー面上で効果的に維持されることにより、かかる気泡による負圧の吸収軽減作用が発揮されて、キャビテーションに起因する異音や振動が効果的に抑えられる。しかも、主液室に露呈する面の少なくとも一部に低接着エネルギー面を備えた独立部材を取り付けることで発明効果を得ることができることから、流体封入式防振装置の設計完了後の段階でも基本的な防振性能への悪影響を回避しつつ、キャビテーション異音に対する対策が実現可能になる。加えて、低接着エネルギー面が主液室の壁面を構成する部材とは別体の独立部材に設けられており、その独立部材を後付けすることで主液室の壁内面に対して低接着エネルギー面が付与されることから、主液室の壁面を構成する部材の材質が低接着エネルギー面を設けるために制限されるのを回避できる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。そして、第一の取付部材12と第二の取付部材14との一方がパワーユニット側に取り付けられると共に他方が車両ボデーに取り付けられることにより、自動車において車両ボデーに対してパワーユニットを防振支持するようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として図1中の上下方向であってエンジンマウント10の中心軸である弾性主軸が延びる方向をいう。
より詳細には、第一の取付部材12は、上下方向に延びる円形短柱形状を有しており、軸方向下端部分が下方に向かって小径化された逆円錐台形状とされている。また、第一の取付部材12の中心軸上には、上端面に開口する固定ボルト穴18が設けられており、この固定ボルト穴18に螺着される固定ボルトによって第一の取付部材12がパワーユニットに固着されるようになっている。
第二の取付部材14は、上下方向に延びる大径の略円筒形状を有しており、例えば図示しない取付ブラケットを介して、車両ボデーに固着されるようになっている。また、第二の取付部材14には、上端部近くに周溝状の括れ部20が設けられていると共に、軸方向上側の開口周縁部にはフランジ部が一体形成されている。また、括れ部20の周壁部は、上側開口部側に向かって次第に拡径するテーパ筒部とされている。そして、第二の取付部材14の軸方向上方に離隔して、第一の取付部材12が、略同一中心軸上に配置されており、第一の取付部材12の逆円錐台形状の外周面と、第二の取付部材14のテーパ筒部の内周面とが、互いに対向位置せしめられている。
さらに、本体ゴム弾性体16は、略円錐台形状を有しており、その小径側端部の中央部分に第一の取付部材12が埋入状態で固着されている一方、その大径側端部の外周面に第二の取付部材14の上端部分の内周面が固着されている。そして、第一の取付部材12の外周面と第二の取付部材14の上端部の内周面との対向面間が、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。なお、本体ゴム弾性体16は、第一及び第二の取付部材12,14を有する一体加硫成形品とされている。また、本体ゴム弾性体16には、大径側端面に開口する逆向き略すり鉢状の中央凹所21が形成されている。更に、第二の取付部材14の内周面には、略全面を覆うシールゴム層22が、本体ゴム弾性体16から軸方向下方に延び出すようにして本体ゴム弾性体16と一体形成されている。
また、第二の取付部材14の下側の開口部分には、薄肉ゴム製の可撓性膜24が配設されている。可撓性膜24の外周面にはリング形状の嵌着金具26が加硫接着されており、この嵌着金具26が第二の取付部材14の下側開口部分に嵌着固定されることにより、第二の取付部材14の下側開口が可撓性膜24で流体密に封止されている。
これにより、第二の取付部材14の内部には、本体ゴム弾性体16と可撓性膜24との対向面間において、外部空間に対して密閉されて非圧縮性の封入流体が充填された液封領域が画成されている。なお、封入流体としては、一般に水の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール等が好適に採用され、0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。
さらに、本実施形態では、かかる封入流体として、常温で且つ大気圧の環境下で0.03〜61200容量%の溶存ガスを含有するものが採用されている。溶存ガスとしては、空気の他、アンモニア、塩化水素、二酸化炭素、一酸化窒素、酸素、一酸化炭素、水素、窒素、ネオン、ヘリウムからなる群から選択される少なくとも一つが好適に採用される。特に、空気、又は空気よりも親水性の大きい溶存ガスが、好適に採用されることとなり、それにより、極性の液体を封入流体とする場合における溶媒への親和性の向上と共に、後述する低接着エネルギー面58に対する気泡の接触角を大きくして気泡を球状に近づけて消失し難くする作用にも有利となる。
また、溶存ガスの含有量を大きくすることは、キャビテーション防止に有効であることから、提供される封入流体において、常温で且つ大気圧の環境下で自然に溶存するガス含有量を越えて更に大きなガス溶存量を設定することが望ましい。具体的には、例えば常温で且つ大気圧の環境下で0.10容量%以上の溶存ガスを含有する封入流体が好適に採用され得る。
ここにおいて、大きなガス溶存量を容易に実現するには、ガスを発生する物質を、固体や液体の状態で、溶媒に添加することも有効である。具体的には、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムの粉状体(粉末や粉体)が好適であるが、その他、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ドライアイスおよび過酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一つの発泡性又は無発泡性の粉状体が、添加物として採用され得る。また、塩化アンモニウムとあわせて水酸化カルシウムを添加することで、溶媒中で容易にアンモニアが発生することから、アンモニアを溶媒に溶存することも可能である。
このような封入流体が充填された液封領域には、仕切部材28が収容配置されている。仕切部材28は、鉄やアルミニウム合金といった金属や、熱可塑性又は熱硬化性の合成樹脂等で形成された硬質の部材であって、本実施形態では優れた成形性や重量の低減等を考慮して熱可塑性の合成樹脂で形成されている。また、仕切部材28は、何れも略円板形状の上仕切板30と下仕切板32が重ね合わされて構成されており、全体として所定厚さの略円板形状を有している。なお、仕切部材28の形成材料となる熱可塑性合成樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、酢酸セルロース等が好適に採用され得る。
この仕切部材28は、第二の取付部材14に対して嵌め込まれて軸方向中間部分で軸直角方向に広がる状態で組み付けられており、仕切部材28の外周面が、第二の取付部材14の内周面に対してシールゴム層22を介して嵌着固定されている。これにより、液封領域が、仕切部材28によって上下両側に仕切られており、仕切部材28の上方には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて圧力変動が惹起される主液室34が形成されている。また、仕切部材28の下方には、壁部の一部が可撓性膜24で構成されて、容積変化が容易に許容されることで圧力変動が回避されて略大気圧に保たれる副液室36が形成されている。なお、主液室34の圧力変動によって、主液室34と副液室36の間で相対的な圧力変動が生じるようになっている。
また、仕切部材28には、外周部分を周方向に所定長さで延びるオリフィス通路38が形成されており、主液室34と副液室36の間で、オリフィス通路38を通じての流体流動が許容されるようになっている。なお、本実施形態では、上仕切板30の外周部分において外周面に開口して周方向に一周弱の長さで延びる上溝40と、下仕切板32の外周部分において上面に開口して周方向に一周弱の長さで延びる下溝42とが、各一方の周方向端部で相互に連通されることにより、全体として一周弱の長さで延びるオリフィス通路38が形成されている。
また、仕切部材28の中央部分には、収容空所44が形成されており、収容空所44に可動部材としての可動膜46が配設されている。可動膜46は、略円板形状を呈するゴム膜であって、外周端部を全周に亘って上下の仕切板30,32で上下に挟持されている。そして、可動膜46の上面には上透孔48を通じて主液室34の液圧が及ぼされていると共に、下面には下透孔50を通じて副液室36の液圧が及ぼされており、主液室34と副液室36の相対的な圧力変動によって可動膜46が弾性変形することで、液圧吸収作用が発揮されるようになっている。
また、上仕切板30の中央部分には、上方に向かって開口する大径の円形凹所52が形成されており、オリフィス通路38の主液室34側の開口部54が、径方向で開口形成されて円形凹所52に連通されている。
ここにおいて、主液室34に露呈される面である円形凹所52の周壁内面には、独立部材としての撥水部材56が取り付けられており、円形凹所52の周壁内面に低接着エネルギー面58が設けられている。
より詳細には、撥水部材56は、図4に示されているように、長手矩形板状の部材であって、鉄やアルミニウム合金等の金属、或いは熱硬化性樹脂等で形成されており、本実施形態ではステンレス鋼によって形成されることで厚さ方向の変形に対して優れた弾性が付与されている。また、撥水部材56は、主液室34の壁面を構成する本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品や仕切部材28に対して独立して別体で形成されている。
さらに、撥水部材56の表面には、疎水性材料(非極性物質)のコーティング層が形成されており、撥水部材56の表面が対水接触角が90度以上とされた低接着エネルギー面58とされている。なお、撥水部材56の全体を疎水性材料で成形することで低接着エネルギー面58を得ることも可能であるが、好適には撥水部材56にコーティング処理等の表面処理を施して、撥水部材56の表面に疎水性材料の表面処理層(コーティング層)を形成することで低接着エネルギー面58が形成され得る。このように低接着エネルギー面58を撥水部材56に対する表面処理で形成すれば、撥水部材56の材質の選択自由度が大きく確保される。
なお、低接着エネルギー面58を与えるコーティング層としては、例えば四フッ化エチレン樹脂(PTFE)や四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)、四フッ化エチレン・バーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、三フッ素化樹脂(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、PTFE/PFA複合塗料などのフッ素系樹脂やシリコーン樹脂が、優れた耐久性をもって良好な疎水性を与え得ることから、好適に採用される。特に、このようなフッ素系樹脂等は、撥水性と共に撥油性も発揮することから、本発明において一層好適に採用され得る。
すなわち、液封領域に充填された封入流体としては、一般に水の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール等の有機溶剤からなる極性(親水性)の液体が採用されることとなり、かかる極性の液体を溶媒として更に極性の物質が溶質として必要に応じて添加されることが好ましい。しかし、要求特性によっては、かかる極性の液体に対して無極性(疎水性)の物質が添加されることもあり、何れの場合でも、更に無極性の溶媒を封入流体に採用する場合でも、フッ素系樹脂を用いることにより低接着エネルギー面58を得ることが可能になる。
かくの如き低接着エネルギー面58を備えた撥水部材56は、図4に示されているように厚さ方向で弾性的に湾曲変形されて周方向に延びるC環形状とされた状態で、図5に示されているように、上仕切板30の円形凹所52に挿入されている。これにより、撥水部材56は、それ自体の弾性に基づいて円形凹所52の周壁内面に押し当てられて、上仕切板30に取り付けられており、主液室34の周壁内面に当接状態で重ね合わされて、周方向に延びるように配設されている。
本実施形態では、円形凹所52の周壁内面から内周側に突出する円柱状の係止突起60が設けられていると共に、撥水部材56の長手方向一方の端部付近には厚さ方向に貫通する円形の係止孔62が形成されており、係止突起60が係止孔62に挿通係止されることで、撥水部材56の円形凹所52からの抜けが防止されている。要するに、本実施形態では、仕切部材28の係止突起60と撥水部材56の係止孔62との係止によって、主液室34の壁内面を構成する仕切部材28の表面に対する撥水部材56の相対変位を制限して位置決め保持する位置決め手段が構成されている。
上述の如き構造とされたエンジンマウント10においては、車両への装着状態下で第一の取付部材12と第二の取付部材14との間に主として上下方向の振動が入力されると、主液室34と副液室36の間に惹起される相対的な圧力変動に基づいてオリフィス通路38を通じての流体流動が生ぜしめられる。そして、オリフィス通路38を流動する流体の共振作用などを利用して、例えばエンジンシェイクに対する高減衰効果などの目的とする防振効果が発揮されることとなる。
ところで、車両の段差乗り越え等に際して衝撃的荷重がエンジンマウント10に入力されると、主液室34に過大な圧力変化が急激に発生し、それに起因するキャビテーションによる異音等が問題になり易い。ここにおいて、本実施形態のエンジンマウント10では、封入流体に溶存ガスが含有されていることから、キャビテーションに至る前にエアレーションが発生して溶存ガスの気泡が現出せしめられる。
そして、この現出した気泡によって主液室34の圧力変化量が吸収されて緩和されることから、主液室34の著しい圧力低下が軽減されることとなり、その結果、キャビテーションが防止され、ひいてはキャビテーションに起因すると解される異音や振動の低減効果が発揮されることとなる。特に本実施形態のエンジンマウント10では、溶存ガスの気泡が現出し易い主液室34の内面において、対水接触角の小さい低接着エネルギー面58が形成されていることにより、かかる低接着エネルギー面58上に現出した気泡が一層効果的に維持されて、主液室34の圧力変化の緩和によるキャビテーション防止効果が一層安定して発揮されるのである。
すなわち、図6(a)に示されているように、低接着エネルギー面58上に現出した気泡64について、その接触角θは、低接着エネルギー面58の物性および表面状態に応じた値とする。そして、本実施形態では、対水接触角を90度以上としたことにより、撥水性が付与された低接着エネルギー面58とされていることで、かかる気泡64の接触角θも大きくされる。特に好適には、封入流体中における低接着エネルギー面58上の気泡64の接触角θが90度以上となるように設定される。
その結果、低接着エネルギー面58上に発現した気泡64が、レンズ状又は球状に近い形とされて、例えば図6(b)示されているように接触角θ′が小さくて扁平な拡張形状の気泡64′に比して、現出した気泡64が安定して維持され易くなる。なお、図6(a)に示すレンズ状又は球状に近い形の気泡64が、図6(b)の如き扁平な拡張形状の気泡64′に比して、主液室34の圧力変動に際しても消失し難く、安定して維持され易いことの理由としては、以下の如く推定される。即ち、図6(c)に示されているように、次式で表されるヤング・ラプラスの式から求められる気泡内部圧力Piと外部圧力Poおよび気泡表面の界面張力と気泡形態から定まるΔPとの関係が、下式のように示されるときに気泡64は維持、成長しやすくなる。
Pi > Po + ΔP
ΔP=γ(1/r1+1/r2)
但し、γは界面張力であり、r1,r2は楕円の主曲率半径であって、球形の場合にはr1=r2=最小値となる。
そのため、気泡64は、球状に近いほうが表面積が小さくなることで外部圧力の作用面積が小さくなって気泡64に作用する総合的な外圧が抑えられて、気泡64が安定して維持され易いものと考えられる。
また、低接着エネルギー面58の臨界界面張力が低いことも、気泡64の維持に寄与しているものと推定される。
Pi > Po + ΔP
ΔP=γ(1/r1+1/r2)
但し、γは界面張力であり、r1,r2は楕円の主曲率半径であって、球形の場合にはr1=r2=最小値となる。
そのため、気泡64は、球状に近いほうが表面積が小さくなることで外部圧力の作用面積が小さくなって気泡64に作用する総合的な外圧が抑えられて、気泡64が安定して維持され易いものと考えられる。
また、低接着エネルギー面58の臨界界面張力が低いことも、気泡64の維持に寄与しているものと推定される。
そして、このような理論が正しいことは、エンジンマウントの透明モデルを用いた加振実験での気泡の発生と消失の状況を目視することによって確認できている。
そこにおいて、エンジンマウント10では、低接着エネルギー面58が仕切部材28とは別体で形成された部材である撥水部材56の表面に設けられており、撥水部材56を仕切部材28の主液室34に晒される面に取り付けることにより、主液室34の壁内面に低接着エネルギー面58が設けられている。このように低接着エネルギー面58を流体封入式防振装置の基本的な構成部品とは別の部品に形成することで、主液室34の壁内面における任意の部位に低接着エネルギー面58を簡単に設けることが可能とされる。特に、従来構造の流体封入式防振装置においてキャビテーション異音に対する対策が要求される場合に、撥水部材56の取付工程を追加するだけで有効な対策を簡便に施すことが可能となる。
しかも、焼き付けによるコーティング等の表面処理によって低接着エネルギー面58を設ける場合にも、仕切部材28の形成材料として表面処理が可能なものを選択する必要がなく、例えば成形性等に優れた熱可塑性の合成樹脂等を採用することも可能となる。
また、本実施形態では、撥水部材56が単体で帯状の矩形平板とされており、厚さ方向に弾性的に湾曲変形された状態で円形凹所52に挿入されることにより、撥水部材56自体の弾性によって円形凹所52の周壁内面に押し当てられている。これにより、弾性的な保持力が発揮されて、撥水部材56が仕切部材28に対して非接着で取り付けられるようになっている。しかも、低接着エネルギー面58が撥水部材56の表面処理によって設けられており、撥水部材56の形成材料が必要以上に限定されるのを防止できることから、ステンレス鋼等の優れた弾性を有する材料で形成することで、撥水部材56を仕切部材28に対して充分な保持力で取り付けることが可能になる。
さらに、撥水部材56が円形凹所52の周壁内面に沿って周方向に延びるC字状に湾曲変形された状態で配設されることから、撥水部材56の内周側の領域に可動膜46を用いた液圧吸収機構等を設けることもできる。このように、仕切部材28の中央部分には任意の防振機構やリリーフ機構等を採用することが可能とされることから、優れた防振性能等を発揮するエンジンマウント10をスペース効率良くコンパクトに実現することができる。
また、エンジンマウント10では、撥水部材56の弾性だけでなく、仕切部材28の係止突起60と撥水部材56の係止孔62との係止によっても、撥水部材56が仕切部材28に対して所定の位置に位置決め保持される。尤も、位置決め手段の構造は、このような係止突起60の係止孔62への挿通による係止に限定されるものではなく、例えば、図7,図8に示されているように、仕切部材65に設けられた一対の係止突起66,66と、撥水部材67に設けられた一対の係止凹部68,68との係止によっても、実現され得る。
すなわち、係止突起66は、図7〜図9に示されているように、円形凹所52の周壁の上端部から内周側に向かって略矩形断面で突出しており、開口部54を挟んだ周方向両側に一対が形成されている。なお、本実施形態では、一対の係止突起66,66が仕切部材65を構成する上仕切板30と一体で形成されている。
係止凹部68は、帯状の矩形平板とされた撥水部材67の上面に開口して、撥水部材67の厚さ方向全長に亘って延びる切欠き状とされており、撥水部材67の長手方向両端部分にそれぞれ設けられることで、撥水部材67がC字状に湾曲変形された状態でその周方向両端部分に設けられて、周方向に所定の距離を隔てて配置されている。
そして、撥水部材67が湾曲変形された状態で円形凹所52に挿入されると共に、一対の係止凹部68,68が一対の係止突起66,66に下方から嵌め合わされることによって、撥水部材67の周方向両端部分において円形凹所52からの抜けと周方向での位置ずれが防止されるようになっている。これにより、一対の係止突起66,66と一対の係止凹部68,68との係止によって位置決め手段が構成されている。なお、円形凹所52の周上で更に1つ乃至は複数の係止突起66を設けると共に、撥水部材67の中間部分に更に1つ乃至は複数の係止凹部68を設けて、それら係止突起66と係止凹部68の係止によって周方向中間部分で位置決め作用が発揮されるようにしても良い。なお、位置決め手段は必須ではなく、例えば、独立部材がそれ自体の弾性のみによって主液室34の壁内面に対して充分に位置決めされる場合には、上記の如き特別な位置決め手段を設ける必要はない。
図10には、本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウント70が示されている。このエンジンマウント70では、独立部材としての撥水部材72が、主液室34の壁内面を構成する本体ゴム弾性体16の内周面に取り付けられている。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。なお、本実施形態のエンジンマウント70を構成する仕切部材74では、第一の実施形態の仕切部材28に対して、液圧吸収機構を構成するための収容空所44と上下の透孔48,50、可動膜46が何れも省略されている。
すなわち、撥水部材72は、略一定の矩形断面で全周に亘って連続して延びる環状とされており、表面が低接着エネルギー面58とされている。そして、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対する仕切部材74の組付け前に、本体ゴム弾性体16の中央凹所21に挿入されている。なお、撥水部材72は、その外径寸法が中央凹所21の開口部分の内径寸法よりも大きくされており、本体ゴム弾性体16を径方向に押し広げながら嵌入されることで、本体ゴム弾性体16の弾性によって取付け状態に保持されている。また、撥水部材72の本体ゴム弾性体16への装着後に仕切部材74および可撓性膜24が第二の取付部材14に固定されることで、撥水部材72の下面が仕切部材74の上端面に当接されており、撥水部材72の下方への抜けが防止されている。
このようなエンジンマウント70においても、別体の撥水部材72が本体ゴム弾性体16の内周面に重ね合わされた状態で取り付けられることにより、主液室34の壁内面に低接着エネルギー面58が設けられている。それ故、第一の実施形態のエンジンマウント10と同様に、キャビテーション異音の発生が簡便に防止されると共に、仕切部材74および本体ゴム弾性体16の形成材料や形状等の自由度が確保される。
本実施形態からも明らかなように、低接着エネルギー面58を備えた独立部材(撥水部材)の取付位置は、主液室34の壁内面を構成する部分であれば、仕切部材74の表面に限定されるものではなく、本体ゴム弾性体16の表面であっても良い。また、本実施形態の如く撥水部材72が本体ゴム弾性体16に取り付けられる場合には、例えば、上仕切板が薄肉円板形状の金属プレートとされて円形凹所52が省略されていても、撥水部材72を主液室34の周壁内面に取り付けることが可能であり、仕切部材の構造をより自由に設定することができる。
図11には、本発明の第三の実施形態としてのエンジンマウント80が示されている。エンジンマウント80では、独立部材としての撥水部材82が、円形凹所52の底面に重ね合わされて取り付けられている。
より詳細には、撥水部材82は、円板形状を有しており、径方向中央を厚さ方向に貫通する円形の挿通孔84が形成されている。また、撥水部材82は、フッ素系樹脂によるコーティング等といった表面処理が施されることにより、表面に対して低接着エネルギー面58が形成されている。
そして、撥水部材82は、図11,図12に示されているように、上仕切板30における円形凹所52の底壁部に重ね合わされており、円形凹所52の底壁中央から上方に突出する支持突部86が挿通孔84に挿通されることにより、上仕切板30の中央上面に固定的に保持されている。これにより、主液室34の壁内面を構成する円形凹所52の底壁面において、低接着エネルギー面58が設けられている。なお、支持突部86は、基端部分が先端部分よりも小径とされていると共に、先端部分が上方に向かって次第に小径となるテーパ形状とされており、挿通孔84に対して下方から挿通可能とされていると共に、撥水部材82の上方への抜けが防止されている。
このように、低接着エネルギー面を備えた独立部材は、必ずしも周方向に延びる形状に限定されず、取付部位も主液室34の壁内面であれば周壁には限定されない。なお、撥水部材82を支持するための支持突部は、本体ゴム弾性体16や第一の取付部材12に一体形成されて、中央凹所21の上底壁面から突出するように設けられていても良く、撥水部材82が本体ゴム弾性体16に重ね合わされて配置されていても良い。
図13には、本発明の第四の実施形態としてのエンジンマウント90が示されている。エンジンマウント90は、本体ゴム弾性体16と仕切部材74の間に独立部材としての撥水部材92が挟持された構造を有している。
より詳細には、撥水部材92は、略一定断面で周方向に連続する円環板形状を有しており、表面に低接着エネルギー面58が設けられている。この撥水部材92は、図14に示されているように、円形凹所52よりも外周側の厚肉部分(上溝40が形成された外周部分)の上面に重ね合わされている。なお、撥水部材92は、仕切部材74の上面に対して載置されるだけでも良いが、接着や係止等の手段によって位置決めすれば、後述する本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品への取付け作業が容易になる。
そして、撥水部材92と仕切部材74が第二の取付部材14に挿入されて、仕切部材74が第二の取付部材14に対する八方絞り等の縮径加工によって第二の取付部材14に固定されると共に、撥水部材92の外周部分が本体ゴム弾性体16の下面と仕切部材74の上面との間で全周に亘って挟持される。なお、撥水部材92は、本体ゴム弾性体16と仕切部材74の間で挟持された状態において、内周部分が中央凹所21の開口部上に突出しており、内周部分が主液室34の壁内面上に配置されることから、低接着エネルギー面58が撥水部材92の配設によって主液室34の壁内面に設けられている。
このように撥水部材92が本体ゴム弾性体16と仕切部材74の間に挟持された構造を有するエンジンマウント90においても、第一の実施形態に係るエンジンマウント10と同様に、キャビテーション異音の低減を簡便に実現することができる。しかも、撥水部材92がより安定して所定の位置に保持されることから、撥水部材92の位置ずれや脱落による防振特性や異音低減効果への悪影響が防止されて、安定した性能を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、低接着エネルギー面を備えた独立部材が1つだけ配設された構造が例示されているが、互いに独立した複数の独立部材が主液室の壁内面に配設されて、複数の低接着エネルギー面が主液室の壁内面に設けられていても良い。
また、低接着エネルギー面58は、主液室34に晒される面において任意の位置に任意の形状や大きさで形成することが可能であり、例えば、独立部材がオリフィス通路38に入り込むように配設されて、低接着エネルギー面58がオリフィス通路38の内面にまで広がっていても良い。
さらに、例えば、仕切部材の径方向中間部分に、主液室に向かって突出する突部を形成して、その突部に低接着エネルギー面を備えた環状の独立部材を外嵌することで、主液室の壁内面に低接着エネルギー面を設けることも可能である。
また、低接着エネルギー面58は、独立部材の表面全体に設けられていても良いが、主液室34に晒される面だけに設けられる等、独立部材の表面に対して部分的に設けられていても良い。
本発明の適用範囲は、必ずしもエンジンマウントに限定されず、ボデーマウントやサブフレームマウント、デフマウント等、各種の流体封入式防振装置に適用され得る。また、本発明は自動車に用いられる流体封入式防振装置に限定されず、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等に用いられる流体封入式防振装置にも好適に適用可能である。
10,70,80,90:エンジンマウント(流体封入式防振装置)、12:第一の取付部材、14:第二の取付部材、16:本体ゴム弾性体、28,65,74:仕切部材、34:主液室、36:副液室、38:オリフィス通路、56,67,72,82,92:撥水部材(独立部材)、58:低接着エネルギー面、60:係止突起(位置決め手段)、62:係止孔(位置決め手段)、66:係止突起(位置決め手段)、68:係止凹部(位置決め手段)
Claims (8)
- 振動入力時に本体ゴム弾性体の変形に基づいて圧力変動が惹起される主液室と、振動入力時に該主液室との間で相対的な圧力変動が生ぜしめられる副液室と、それら主液室と副液室との間での封入流体の流動を許容するオリフィス通路とを、備えた流体封入式防振装置において、
前記封入流体には、常温で大気圧の環境下において0.03容積%以上の溶存ガスが含有されていると共に、
対水接触角が90度以上とされた低接着エネルギー面を表面に備えた独立部材が、前記主液室の壁内面に取り付けられていることを特徴とする流体封入式防振装置。 - 前記低接着エネルギー面が、前記独立部材の表面に設けられた表面処理層によって形成されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
- 前記独立部材が周方向に延びており、該独立部材が前記主液室の周壁内面に重ね合わされて取り付けられている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
- 前記独立部材が周方向に延びるように弾性的に湾曲変形された状態で前記主液室に収容されており、該独立部材がそれ自体の弾性によって該主液室の周壁内面に押し当てられて取り付けられている請求項3に記載の流体封入式防振装置。
- 前記独立部材が環状とされており、該独立部材が前記主液室の周壁内面に嵌入されて取り付けられている請求項3に記載の流体封入式防振装置。
- 前記主液室の壁内面に対する前記独立部材の相対変位を制限する位置決め手段が設けられている請求項1〜5の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
- 振動伝達系を構成する各一方の部材に取り付けられる第一の取付部材および第二の取付部材を前記本体ゴム弾性体で連結せしめて、該第二の取付部材で支持された仕切部材の一方の側に該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された前記主液室を形成すると共に、該仕切部材の他方の側に前記副液室を形成し、更に、該仕切部材における該主液室に晒される面に前記独立部材を取り付けた請求項1〜6の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
- 前記仕切部材が熱可塑性の合成樹脂で形成されている請求項7に記載の流体封入式防振装置。
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