JP2010078032A - 液封入式防振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】オリフィス部材の形状や部材強度およびオリフィス通路のシール性を長期間に亘って安定して維持しつつ、オリフィス部材の合成樹脂化を実現することが出来る、新規な構造の液封入式防振装置を提供することを、目的とする。
【解決手段】それぞれ液体が封入されて振動入力に際して相対的な圧力変動が及ぼされる第一の液室56と第二の液室58がオリフィス通路60によって相互に連通せしめられた構造の液封入式防振装置において、オリフィス通路60を形成するための樹脂製オリフィス部材42よりも吸水率の低い表面保護層54を樹脂製オリフィス部材54における液体に晒される面に形成した。
【選択図】図1
【解決手段】それぞれ液体が封入されて振動入力に際して相対的な圧力変動が及ぼされる第一の液室56と第二の液室58がオリフィス通路60によって相互に連通せしめられた構造の液封入式防振装置において、オリフィス通路60を形成するための樹脂製オリフィス部材42よりも吸水率の低い表面保護層54を樹脂製オリフィス部材54における液体に晒される面に形成した。
【選択図】図1
Description
本発明は、内部に封入された液体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした液封入式防振装置に係り、特に樹脂製のオリフィス部材を備えた液封入式防振装置に関するものである。
従来から、防振連結体や防振支持体等の防振装置、更には、制振装置の一種として、特許文献1乃至6に記載されているように、装置内部に水等の液体が封入された液封入式防振装置が知られている。かかる液封入式防振装置では、一般に、それぞれ液体が封入された第一の液室と第二の液室が形成されていると共に、これら第一の液室と第二の液室を相互に連通するオリフィス通路が設けられている。そして、振動入力時にオリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づいて、防振効果が発揮されるようになっている。
ところで、このような液封入式防振装置においては、近年、装置の軽量化や製造コストの低減等の目的で、オリフィス通路を形成するオリフィス部材を合成樹脂材料で形成することが検討されている。
しかしながら、合成樹脂製のオリフィス部材を採用した液封入式防振装置について検討したところ、オリフィス部材単体では要求される強度等を満足し得るものの、長期的な観点から問題があることが判った。即ち、合成樹脂製のオリフィス部材を採用した液封入式防振装置では、ある程度の時間が経過すると、オリフィス部材が変形したり、強度低下するおそれがあることが判った。更なる検討を重ねたところ、合成樹脂製のオリフィス部材が、防振装置内に封入された液を吸収して部分的に或いは全体が膨張することが原因であろうとの知見を得た。かかるオリフィス部材の膨張現象は、オリフィス部材に部分的な歪や応力の発生を伴い、オリフィス通路に隙間ができて目的とする防振効果が発揮されなくなったり、要求される部材強度が得られなくなったりする問題を発生するおそれがある。
なお、このような問題に対処するために、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の吸水率が低い合成樹脂材料でオリフィス部材を形成することも考えられる。ところが、それではオリフィス部材に採用できる合成樹脂材料の選択範囲が極めて狭くなり、部材強度や製造コスト等によって設計自由度が大幅に制限されてしまうという、実用上で大きな問題があった。
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、オリフィス部材の形状や部材強度およびオリフィス通路のシール性を長期間に亘って安定して維持しつつ、オリフィス部材の合成樹脂化を実現することの出来る、新規な構造の液封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明は、それぞれ液体が封入されて振動入力に際して相対的な圧力変動が及ぼされる第一の液室と第二の液室を備えていると共に、それら第一の液室と第二の液室を相互に連通するオリフィス通路が設けられた液封入式防振装置において、合成樹脂材料の成形品からなる樹脂製オリフィス部材を採用し、樹脂製オリフィス部材を利用してオリフィス通路を形成すると共に、樹脂製オリフィス部材には表面処理が施されており、樹脂製オリフィス部材における液体に晒される面に対して樹脂製オリフィス部材よりも吸水率の低い表面保護層が形成されていることを、特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた液封入式防振装置においては、樹脂製オリフィス部材よりも吸水率の低い表面保護層が樹脂製オリフィス部材における液体に晒される面に形成されていることから、樹脂製オリフィス部材における液体の吸収を抑えることが出来る。それ故、オリフィス部材の吸水に起因する歪や応力の問題を殆ど考慮することなく、オリフィス部材の材質選択範囲が広くされ得て、強度や耐久性、製造コスト等を考慮した設計自由度が大きくされる。その結果、合成樹脂製のオリフィス部材の実用化が図られ得るのである。
なお、本明細書中、吸水率は、ASTM規格D570の23℃、水中飽和値の測定値(単位:%)をいう。
また、本発明においては、樹脂製オリフィス部材に形成される表面保護層がメッキによる表面処理で形成されたメッキ層とされていても良い。メッキ層を採用することにより、一層高度な防水性能を容易に実現することが可能となる。
さらに、本発明においては、樹脂製オリフィス部材に形成される表面保護層が樹脂系の塗装膜とされていても良い。塗装膜を採用することにより、メッキ層の場合に比して製造設備も簡易となり、製造コストをより効果的に抑えることが可能となる。
更にまた、本発明においては、第一の取付部材を筒状の第二の取付部材の一方の開口部側に離隔配置して第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、第二の取付部材の他方の開口部を可撓性ゴム膜で覆蓋する一方、第二の取付部材の内周面に嵌着される筒状部とかかる筒状部における一方の開口を閉塞する上底壁を備えた樹脂製オリフィス部材を本体ゴム弾性体と可撓性ゴム膜の対向面間に配設して第二の取付部材で支持せしめることにより、樹脂製オリフィス部材を挟んだ一方の側に本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動が入力される受圧室を形成し且つ他方の側に可撓性ゴム膜で壁部の一部が構成されて容積変化が許容される平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に液体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を樹脂製オリフィス部材における筒状部を利用して形成し、更に、樹脂製オリフィス部材における上底壁の両面とオリフィス通路の内面を含む、液体との接触面に表面保護層を形成した構造が、好適に採用される。
このような構造の液封入式防振装置においては、樹脂製オリフィス部材を利用して受圧室と平衡室を仕切る隔壁が構成されており、樹脂製オリフィス部材は大きな表面積で受圧室および平衡室に晒されることとなる。ここにおいて、本発明に従い表面保護層が形成された樹脂製オリフィス部材を適用したことにより、大きな表面積で封入液に晒されても樹脂製オリフィス部材における歪や応力が抑えられる。その結果、樹脂製オリフィス部材を利用して、比較的大型部材である隔壁部材を安定して形成することが出来、防振装置の耐荷重性能や防振性能を安定して確保しつつ、従来の金属製隔壁等に比して、大幅な軽量化が可能となるのである。
なお、上述の如き筒状部と上底壁からなる略逆カップ形状の樹脂製オリフィス部材では、筒状部の一方の軸方向端部だけに上底壁が形成されて軸方向両側で樹脂容積が大きく相違する。それ故、仮に樹脂製オリフィス部材が吸水膨張すると、樹脂容積が大きい上底壁側の膨張と開口する下方側の膨張との間に差が発生して、樹脂製オリフィス部材に対して一層大きな歪や応力が発生する。かかる問題を回避するには、軸方向上下で略対称な形状とする等の特別な設計が必要となる。そこにおいて、本発明に従い表面保護層を備えた樹脂製オリフィス部材を採用すると、そのような特別な設計も不要となり、大きな設計自由度をもって、隔壁として機能する略逆カップ形状の樹脂製オリフィス部材を採用することが可能となるのである。
さらに、本発明においては、吸水率が1.0%以下の材料によって表面保護層が形成されていると共に、吸水率が1.0%よりも大きい合成樹脂材料によって樹脂製オリフィス部材が形成されている態様が、好適に採用される。具体的には、例えば機械的特性に優れていると共に安価なポリアミド樹脂によって樹脂製オリフィス部材を形成することが出来る。より好適には、表面保護層の吸水率が0.5%以下とされる。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明に係る液封入式防振装置の第一の実施形態としての自動車用のエンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で弾性的に連結された構造とされており、第一の取付金具12が図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が図示しない自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、逆向きの略円錐台のブロック形状を有していると共に、大径側端面から上方に向かって突出する螺着部18が一体形成されており、この螺着部18に設けられたねじ穴20によって、第一の取付金具12が図示しないパワーユニットに固定的に取り付けられるようになっている。また、第一の取付金具12の大径側端部外周面には、径方向外方に向かって突出する鍔状のストッパ部22が一体形成されている。
一方、第二の取付金具14は、薄肉大径の略円筒形状を呈している。また、第二の取付金具14の軸方向上方の開口部分には、軸方向外方に向かって次第に拡開するテーパ状部24が設けられていると共に、このテーパ状部24の開口周縁部には、径方向外方に向かって広がるフランジ状部26が一体形成されている。更に、第二の取付金具14の軸方向下端部分には、軸方向下方に向かって延びるかしめ部28が一体形成されている。
このような第二の取付金具14は、アウタブラケット(図示せず)を介して車両ボデーに取り付けられるようになっている。
また、このような第二の取付金具14と略同一中心軸上で、軸方向上方に離隔して第一の取付金具12が配置されており、それら第一の取付金具12と第二の取付金具14の対向面間に本体ゴム弾性体16が介装されている。
本体ゴム弾性体16は、略円錐台形状とされており、軸方向上方に向かって次第に小径化するテーパ円筒形状の外周面を有している。そして、この本体ゴム弾性体16の小径側端面から軸方向下方へ差し込まれた状態で、第一の取付金具12が加硫接着されており、かかる本体ゴム弾性体16の小径側端面が、第一の取付金具12のストッパ部22の下面に対して重ね合わされて加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、第二の取付金具14が、そのテーパ状部24の内周面において重ね合わせられて加硫接着されている。
すなわち、本実施形態では、本体ゴム弾性体16が、第一の取付金具12の外周面と第二の取付金具14の内周面に対して、それぞれ加硫接着された一体加硫成形品とされているのである。
なお、第一の取付金具12のストッパ部22には、本体ゴム弾性体16と一体形成された緩衝ゴム30が軸方向上方に向かって突出するように固着されている。
また、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品においては、第二の取付金具14の軸方向上側の開口が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されている。これにより、軸方向下方に向かって開口する内部凹所32が形成されている。なお、第二の取付金具14の内周面には、その略全面に亘って本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層34が加硫接着されている。
更にまた、第二の取付金具14の軸方向下方の開口部には、可撓性ゴム膜としてのダイヤフラム36が配設されている。このダイヤフラム36は、変形容易なように撓みを持たせた略円板形状を呈する薄肉のゴム膜で形成されており、その外周縁部には略円環形状を有するリング金具38が加硫接着されている。
そして、このリング金具38が第二の取付金具14の下端開口部に内挿されて、かしめ部28でかしめ固定されることにより、ダイヤフラム36が第二の取付金具14に固定されている。これにより、第二の取付金具14の軸方向下方の開口がダイヤフラム36によって流体密に覆蓋されており、第二の取付金具14の軸方向両側をそれぞれ覆蓋する本体ゴム弾性体16とダイヤフラム36の軸方向対向面間において、液体が封入された流体室40が形成されている。
なお、流体室40に封入される液体としては,水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油、或いは、それらを混合したものなどが好適に採用される。特に、封入液体としては、後述するオリフィス通路を通じての流体の共振作用に基づく防振効果を有利に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性の液体を採用することが望ましい。
さらに、第二の取付金具14には、オリフィス部材としての仕切部材42が組み付けられている。仕切部材42は、図2及び図3にも示されているように、全体として円形ブロック形状を呈しており、特に本実施形態では、径方向中央部分において、上面に開口する上側中央凹所44と、下面に開口する下側中央凹所46が形成されており、中央部分が外周縁部よりも薄肉とされている。
また、仕切部材42の外周部分には、周方向に螺旋状に延びる周溝48が形成されており、周溝48の両端部が、仕切部材42の上端部と下端部にそれぞれ形成された切欠状の各連通窓50,52に接続されている。
そこにおいて、仕切部材42は、合成樹脂材料によって形成されている。耐熱性や耐荷重性、耐液性等を考慮して各種材料が選択可能であり、例えば、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂の他、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等が何れも採用され得る。また、繊維補強樹脂等も採用可能である。この仕切部材42の形成材料として採用される合成樹脂材料は、特に好適に採用されるポリアミド樹脂等において、吸水率が1.0%よりも大きくても良い。
また、かくの如き合成樹脂製の仕切部材42の表面には、表面処理が施されて表面保護層54が形成されている。本実施形態では、表面保護層54が樹脂系の塗装膜で構成されている。なお、本実施形態では、表面保護層54が、仕切部材42の表面の全体を覆うようにして形成されている。
かかる表面保護層54を仕切部材42の表面の全体に形成するには、公知の塗装方法が何れも採用可能である。例えば、スプレー塗装やディッピング塗装,電着塗装等が採用可能である。
また、かかる表面保護層54(樹脂系の塗装膜)の形成に際しては、仕切部材42の表面と表面保護層54(樹脂系の塗装膜)の密着性を向上させるために、例えば、特開2003−238710号公報等に記載されているように、仕切部材42の表面にケイ酸化炎,チタン酸化炎又はアルミニウム酸化炎を吹き付ける前処理等を採用しても良い。なお、仕切部材42が、ポリアミド系樹脂を含んで形成されている場合には、特公平5−75009号公報等に記載されているように、塩酸,硫酸,リン酸,硝酸,ギ酸及びプロピオン酸よりなる群から選ばれた酸の30重量%以下の溶液により仕切部材42を20〜80℃で5秒〜5分間接触処理したり、特開平6−192842号公報等に記載されているように、所定範囲の表面抵抗値が得られる無電解メッキ被膜を形成する前処理等をしても良い。
樹脂系の塗料としては、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂,ポリイミド系樹脂,環状ポリオレフィン系樹脂,ノルボルネン系樹脂等の塗料が、仕切部材42を形成する合成樹脂材料との関係を考慮して、適宜、選択される。
すなわち、樹脂系の塗料膜からなる表面保護層54の吸水率が仕切部材42の吸水率よりも小さくなるように、仕切部材42の形成材料の種類に応じて、樹脂系の塗料が選択される。因みに、仕切部材42の形成材料がポリアミド樹脂を含む場合には、表面保護層54は、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂の塗料を採用することが望ましい。より好適には、表面保護層54の吸水率が1.0%よりも小さくされる。
このような仕切部材42は、ダイヤフラム36の第二の取付金具14への組み付けに先立って、第二の取付金具14の下方の開口部から軸方向に嵌め込まれて、仕切部材42の上端外周部分が本体ゴム弾性体16の内部凹所32の開口端面に重ね合わせられている。また、仕切部材42の下端外周部分には、第二の取付金具14に嵌め込まれたダイヤフラム36のリング金具38が重ね合わせられている。この状態で、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、仕切部材42は、流体室40内で軸直角方向に広がるように収容配置される。即ち、仕切部材42は、内部凹所32の開口端面に重なっている部分とシールゴム層34に重なっている部分とリング金具38に重なっている部分を除く、略全体が封入液体に晒されているのである。
そして、仕切部材42が流体室40内で軸直角方向に広がるように配設されることにより、流体室40が仕切部材42の上下に二分されており、仕切部材42の軸方向上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて圧力変動が惹起せしめられる第一の液室としての受圧室56が形成されている一方、仕切部材42の軸方向下側には、壁部の一部がダイヤフラム36で構成されて、ダイヤフラム36の変形に基づく容積変化が容易に許容される第二の液室としての平衡室58が形成されている。
また、上述の如く仕切部材42が流体室40内に配設された状態で、仕切部材42の外周面に形成された周溝48の開口が第二の取付金具14で流体密に閉塞されてトンネル状の流路が形成されている。そして、かかるトンネル状の流路によって、仕切部材42の外周部分を周方向に延びて、受圧室56と平衡室58を相互に連通するオリフィス通路60が形成されている。これにより、オリフィス通路60を通じて受圧室56と平衡室58が常時連通状態とされており、オリフィス通路60を通じて受圧室56と平衡室58の間で封入流体の流動が生ぜしめられるようになっている。
なお、本実施形態では、オリフィス通路60の通路長や通路断面積を調節することによって、オリフィス通路60を通じて流動せしめられる流体の共振作用などに基づく高減衰効果が、エンジンシェイクに相当する低周波数域の振動入力に対して発揮されるようにされている。
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント10では、仕切部材42の表面の全体に亘って、仕切部材42の吸水率よりも小さな吸水率の表面保護層54が形成されていることから、仕切部材42において封入液体と接触する部分が表面保護層54で覆われていることになる。これにより、仕切部材42が液体を吸収して仕切部材42が部分的に膨張することに基づく仕切部材42の部分的な変形を回避することが出来る。その結果、仕切部材42に歪が発生することを防止して、仕切部材42の形状や部材強度を長期間に亘って安定して確保することが可能となり、仕切部材42の外周部分に形成されるオリフィス通路60を通じて流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果を長期間に亘って安定して確保することが可能となる。
そこにおいて、仕切部材42の形成材料としてポリアミド樹脂が採用されている場合には、仕切部材42のコストを抑えることが可能となる。その結果、エンジンマウント10の製造コストを抑えることが出来る。
また、図4及び図5には、本発明に係る液封入式防振装置の第二の実施形態としての自動車用キャブマウント70が示されている。このキャブマウント70は、軸部材としての内筒金具72と、外筒部材としての外筒金具74が、互いに径方向に所定距離を隔てて配設されていると共に、それらの間に介装された本体ゴム弾性体76によって連結されている。そして、内筒金具72と外筒金具74が、図示しないキャビンと車体フレームにそれぞれ取り付けられることにより、キャビンを車体フレームに対して防振支持せしめるようになっている。なお、内筒金具72と外筒金具74は、僅かに偏心配置されており、装着状態下で車体フレーム重量が及ぼされて本体ゴム弾性体76が弾性変形することにより、内外筒金具72,74が略同軸的に位置せしめられるようになっていると共に、防振すべき主たる振動が内外筒金具72,74の略偏心方向に入力されるようになっている。
より詳細には、内筒金具72は、小径の円筒形状を呈しており、その径方向外方には、所定距離を隔てて且つ僅かに偏心して略大径円筒形状の中間スリーブとしての金属スリーブ78が配設されている。
この金属スリーブ78には、内筒金具72との偏心方向における離隔距離の大なる側に、周方向の略半周弱に亘って開口する第一の窓部80が設けられている一方、内筒金具72との偏心方向の小なる側に、周方向の略半周弱に亘って開口する第二の窓部82が設けられている。そこにおいて、本実施形態では、第二の窓部82には、周方向の中間部分を軸方向に横切るようにして延びる補強連結部84が一体形成されており、この補強連結部84によって第二の窓部82が実質的に二つの窓部に等分割されている。
また、第一の窓部80と第二の窓部82の周方向隔壁部分は、軸方向中央部分が所定幅で凹陥されており、それぞれ、窓部間に亘って周方向に延びる凹溝86,88が形成されている。そして、これら内筒金具72と金属スリーブ78の径方向対向面間に、本体ゴム弾性体76が介装されており、内筒金具72の外周面と金属スリーブ78の内周面に対してそれぞれ加硫接着された一体加硫成形品とされている。
また、内筒金具72と金属スリーブ78の間には、それらの偏心方向における離隔距離の小なる側において、軸方向に貫通する貫通空所90が、周方向に略半周に亘って形成されており、本体ゴム弾性体76が、実質的に、内筒金具72と金属スリーブ78の間において、それらの偏心方向における離隔距離の大なる側にだけ介装されている。
さらに、本体ゴム弾性体76には、外周面に開口する第一のポケット部92が設けられており、金属スリーブ78の第一の窓部80を通じて外周面に開口せしめられている。更にまた、第一のポケット部92には、内筒金具72から径方向外方に突出して固設された支柱94が底部中央から突設されており、その先端部分に対して、軸直角方向に広がるプレート形状の傘金具96がかしめ固定されている。また、この傘金具96の表面は、被覆ゴム98で被覆されている。そして、かかる傘金具96の外周縁部と第一のポケット部92の内周面との間には、環状の狭窄流路100が形成されている。
一方、貫通空所90には、袋状ゴム弾性体102が収容配設されている。この袋状ゴム弾性体102は、略一定肉厚のゴム弾性膜で形成されており、外周面に開口する袋形状乃至は皿形状を呈している。
そして、袋状ゴム弾性体102の開口周縁部が金属スリーブ78における第二の窓部82の周縁部に加硫接着されている。そこにおいて、袋状ゴム弾性体102の周方向中央部分は金属スリーブ78の補強連結部84に対して加硫接着されており、かかる補強連結部84によって、軸方向全長に亘って補強されると共に拘束されている。これにより、袋状ゴム弾性体102によって、金属スリーブ78の第二の窓部82を通じて外周面に開口する第二及び第三のポケット部104,106が形成されている。なお、この補強連結部84には径方向内方に凹陥され、両分割窓部間に跨って周方向に一定幅で延びる凹溝108が形成されている。
また、このような本体ゴム弾性体76の一体加硫成形品には、一対のオリフィス部材110,110が外周面上に組み付けられている。これら一対のオリフィス部材110,110は、それぞれ、図6及び図7に示されているように、金属スリーブ78の凹溝86,88,108に略対応した断面形状をもって本体ゴム弾性体76の一体加硫成形品の外周面上を周方向に略半周の長さで延びる半円筒形状を呈している。また、オリフィス部材110には、周方向一方の端部から周方向他方の端部近くまで延びて、かかる周方向端部近くで折り返して、再び周方向端部近くまで延びる第一のオリフィス溝112と、周方向一方の端部から周方向他方の端部近くにまで延びる第二のオリフィス溝114が、外周面に開口して形成されている。
また、本実施形態のオリフィス部材110は、第一の実施形態の仕切部材(42)と同様な合成樹脂材料によって形成されており、特に本実施形態においても、オリフィス部材110の吸水率は1.0%よりも大きくされている。
更にまた、本実施形態のオリフィス部材110には、第一の実施形態の仕切部材(42)と同様に、その表面の全体に亘って表面保護層116が形成されている。そこにおいて、本実施形態の表面保護層116は、メッキによる表面処理で形成されたメッキ層で構成されている。このメッキ層からなる表面保護層116は、1.0%よりも充分に小さい吸水率を有している。
表面保護層116を形成するメッキ方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法,無電解メッキ法等の従来から公知のメッキ方法が採用され得る。また、メッキによる表面処理の前には、オリフィス部材110に対して、化学的乃至は物理的手法によるエッチング処理を行っても良い。このエッチング処理により、オリフィス部材110の表面に凹凸が形成されて、金属被膜のアンカー効果及び接触面積の増加による密着性向上効果を得ることが出来る。なお、化学的手法によるエッチング処理とは、例えば、特開昭57−100139号公報等に記載されているように、塩酸等の酸の水溶液で表面に凹凸を形成する方法である。また、物理的手法によるエッチング処理とは、例えば、プラズマ処理である。
このような構造とされた一対のオリフィス部材110,110は、一方のオリフィス部材110が、本体ゴム弾性体76の一体加硫成形品に対して、第一の窓部80の径方向外方から外周面上に組み付けられると共に、他方のオリフィス部材110が、本体ゴム弾性体76の一体加硫成形品に対して、第二の窓部82の径方向外方から外周面上に組み付けられる。
この状態で、一方のオリフィス部材110に形成された第二のオリフィス溝114の開口端が他方のオリフィス部材110に形成された第一のオリフィス溝112の一方の開口端に接続されていると共に、他方のオリフィス部材110に形成された第二のオリフィス溝114の開口端が一方のオリフィス部材110に形成された第一のオリフィス溝112の一方の開口端に接続されており、更に、一方のオリフィス部材110に形成された第一のオリフィス溝112の他方の開口端が、他方のオリフィス部材110に形成された第一のオリフィス溝112の他方の開口端に接続されている。これにより、上述の如く組み付けられた一対のオリフィス部材110,110で構成された筒状オリフィス部材118の外周面を蛇行しながら略三周に亘って延びるオリフィス溝120が形成されている。なお、本実施形態では、オリフィス溝120は、周方向一端側において、第一及び第二の連通孔122,124を通じて第一のポケット部92に開口せしめられている一方、周方向他端側において、第一の連通孔122を通じて第二のポケット部104に開口せしめられていると共に、第二の連通孔124を通じて第三のポケット部106に開口せしめられている。
さらに、上述の如くオリフィス部材110が組み付けられた本体ゴム弾性体76の一体加硫成形品には、外筒金具74が外挿され、八方絞り加工等によって金属スリーブ78に外嵌固定されている。これにより、金属スリーブ78における第一及び第二の窓部80,82や筒状オリフィス部材118に形成されたオリフィス溝120が、それぞれ、外筒金具74によって流体密に覆蓋されている。そして、第一のポケット部92と第二のポケット部104と第三のポケット部106が、それぞれ、外部空間に対して密閉されている。その結果、それぞれ内部に所定の液体が封入された受圧室126と平衡室128が形成されていると共に、受圧室126と平衡室128を相互に連通するオリフィス通路130が形成されている。
そこにおいて、受圧室126は、壁部の一部が本体ゴム弾性体76で形成されており、内外筒金具72,74間への振動入力時には、本体ゴム弾性体76の弾性変形に基づいて内圧変動が生ぜしめられるようになっている。また、平衡室128は、壁部の一部が袋状ゴム弾性体102で構成されており、袋状ゴム弾性体102の弾性変形が容易に許容されることによって、平衡室128の容積変化が許容されて圧力変化が吸収されるようになっている。
このような構造とされたキャブマウント70においても、オリフィス部材110の表面において封入液体と接触する部分に表面保護層116が形成されていることから、第一の実施形態と同様な効果を得ることが出来る。
また、本実施形態では、表面保護層116がメッキ層によって形成されていることから、高い防水性を得ることが出来る。
続いて、本発明に係る液封入式防振装置の第三の実施形態としてのエンジンマウント132について、図8に基づいて、説明する。なお、以下の説明において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、図中に、第一の実施形態と同一の符号を付すことにより、それらの詳細な説明を省略する。
本実施形態のエンジンマウント132は、第一の実施形態のエンジンマウント(10)に比して、オリフィス部材としての仕切部材134の形状が異なっている。即ち、本実施形態の仕切部材134は、第二の取付金具14の内周面に重ね合わせられる筒状部136と、かかる筒状部136の軸方向一方の開口を覆蓋する上底壁138を備えた構造とされている。また、筒状部136には、第一の実施形態と同様に、外周面に開口して螺旋状に延びる周溝48が形成されている。
そこにおいて、仕切部材134は、第一の実施形態と同様な合成樹脂材料によって形成されている。また、仕切部材134の表面全体には、第一の実施形態と同様に、樹脂系の塗装膜からなる表面保護層54が形成されている。
このような仕切部材134は、第一の実施形態と同様に、ダイヤフラム36の第二の取付金具14への組み付けに先立って、第二の取付金具14の下方の開口部から軸方向に嵌め込まれて、仕切部材134の外周部分が本体ゴム弾性体76の内部凹所32の開口端面とリング金具38に挟まれている。この状態で、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、仕切部材134は、流体室40内で軸直角方向に広がるように収容配置されて、第二の取付金具14に嵌着支持せしめられている。
このような構造とされたエンジンマウント132においても、仕切部材134において液体に晒される部分に表面保護層54が形成されていることから、第一の実施形態と同様な効果を得ることが出来る。
また、本実施形態では、仕切部材134が軸方向で非対称な形状とされており、上底壁138が封入液体を吸収すると、仕切部材134の全体に亘って歪が発生しやすくなる。加えて、仕切部材134が軸方向上下で非対称とされており、容積が大きく相違することから、上底壁138側に偏って大きな膨張変形が発生することで歪や応力が大きくなるおそれがある。ここにおいて、本実施形態では、仕切部材134に表面保護層54が形成されていることから、仕切部材134における吸水に起因する歪等が効果的に防止されて、歪や応力の問題が回避され得る。
以上、本発明の幾つかの実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記第一乃至第三の実施形態では、仕切部材42,134やオリフィス部材110の表面全体に表面保護層54,116が形成されていたが、表面保護層は部分的に形成されていても良い。例えば、仕切部材42において第二の取付金具14に対して密着される外周面等の液に晒されない部分には、表面保護層を形成しなくても、本発明の効果が発揮される。また、そのようにオリフィス部材の表面に部分的に表面保護層を形成しない領域を設けても良い場合には、かかる領域を、塗装やメッキの処理に際してオリフィス部材を把持等する作業領域として利用することも可能である。
また、本発明は、各種の液封入式防振装置であって封入液に晒されるオリフィス部材を備えたものに広く適用可能であり、具体的な構造やオリフィス部材の形状、オリフィス通路の数やチューニング周波数などによって、何等限定されるものでないことは、言うまでもない。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
10:エンジンマウント,42:仕切部材,54:表面保護層,56:受圧室,58:平衡室,60:オリフィス通路
Claims (5)
- それぞれ液体が封入されて振動入力に際して相対的な圧力変動が及ぼされる第一の液室と第二の液室を備えていると共に、それら第一の液室と第二の液室を相互に連通するオリフィス通路が設けられた液封入式防振装置において、
合成樹脂材料の成形品からなる樹脂製オリフィス部材を採用し、該樹脂製オリフィス部材を利用して前記オリフィス通路を形成すると共に、該樹脂製オリフィス通路部材には表面処理が施されており、該樹脂製オリフィス部材における前記液体に晒される面に対して該樹脂製オリフィス部材よりも吸水率の低い表面保護層が形成されていることを特徴とする液封入式防振装置。 - 前記表面保護層がメッキによる表面処理で形成されたメッキ層とされている請求項1に記載の液封入式防振装置。
- 前記表面保護層が樹脂系の塗装膜とされている請求項1に記載の液封入式防振装置。
- 第一の取付部材を筒状の第二の取付部材の一方の開口部側に離隔配置して該第一の取付部材と該第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該第二の取付部材の他方の開口部を可撓性ゴム膜で覆蓋する一方、該第二の取付部材の内周面に嵌着される筒状部とかかる筒状部における該本体ゴム弾性体側の開口を閉塞する上底壁を備えた前記樹脂製オリフィス部材を該本体ゴム弾性体と該可撓性ゴム膜の対向面間に配設して該第二の取付部材で支持せしめることにより、該樹脂製オリフィス部材を挟んだ一方の側には該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動が入力される受圧室を形成し且つ他方の側には該可撓性ゴム膜で壁部の一部が構成されて容積変化が許容される平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に前記液体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を該樹脂製オリフィス部材における該筒状部を利用して形成し、更に、該樹脂製オリフィス部材における該上底部の両面と該オリフィス通路の内面を含む、前記液体との接触面に前記表面保護層を形成した請求項1乃至3の何れか1項に記載の液封入式防振装置。
- 吸水率が1.0%以下の材料によって前記表面保護層が形成されていると共に、吸水率が1.0%よりも大きい合成樹脂材料によって前記樹脂製オリフィス部材が形成されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の液封入式防振装置。
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- 2008-09-25 JP JP2008245938A patent/JP2010078032A/ja active Pending
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