JP2008106895A - 流体封入式防振装置 - Google Patents

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高伸 南野
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Abstract

【課題】受圧室内に正圧が生ぜしめられた場合における防振性能を損なうことなく、受圧室内で負圧が生ぜしめられた場合における異音や振動を効果的に防ぐことが出来る新規な構造の流体封入式防振装置を提供すること。
【解決手段】本体ゴム弾性体16よりも硬質で受圧室62に封入された非圧縮性流体よりも比重が小さい可動隔壁部材72を受圧室62に収容配置すると共に、防振連結される部材に装着された使用状態下で可動隔壁部材72の外周縁部が受圧室62の壁面を構成する本体ゴム弾性体16の内周面に対して全周に亘って当接し得るようになっており、可動隔壁部材72の外周縁部が本体ゴム弾性体16の内周面に当接することにより受圧室62が可動隔壁部材72で上下に仕切られるようになっていると共に、オリフィス通路70の受圧室62側の開口部を受圧室62における可動隔壁部材72よりも下側の領域に開口するようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、例えば自動車用のエンジンマウント等として好適に採用される流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体乃至は防振支持体として、防振連結される各部材に取り付けられる第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結した防振ゴムが各種分野に広く採用されている。また、このような防振装置の一種として、より優れた防振効果を得るために、封入した非圧縮性流体の共振作用等の流動作用を利用するようにした流体封入式防振装置が提案されている。かかる防振装置は、一般に、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室と、可撓性膜で壁部の一部が構成されて容積変化が許容される平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた構造とされている。
例えば、特許文献1〜3に開示されているものが、それであり、このような流体封入式防振装置は、例えば自動車用のエンジンマウントやボデーマウント等として適用されている。
ところが、このような流体封入式防振装置について検討を加えたところ、第一の取付部材と第二の取付部材の間に大きな振動荷重が入力されると、防振装置から異音や振動が発せられる場合のあることが確認された。具体的には、上述の如き従来構造の流体封入式防振装置をエンジンマウントとして採用した自動車では、凹凸のある波状路等を走行する際に、車室内で乗員が体感できる程の異音や衝撃を発する場合がある。
このような異音や振動の発生原因は、未だ充分に解明されていないが、衝撃的な振動の入力時において、オリフィス通路を通じて受圧室と平衡室の間で生じる流体流動が追従しきれず、受圧室内で局所的に瞬間的な著しい負圧が生ぜしめられることによると考えられる。即ち、このような負圧が生ぜしめられると、封入流体から気体が分離されてキャビテーションと解せられる気泡が形成される。更に、かかる気泡は、発生から成長に至る過程を経てから崩壊に至り、爆発的な微小噴流を形成する。これが水撃圧となって第一の取付部材や第二の取付部材に伝播し、自動車のボデー等に伝達されることによって前述の如き問題となる異音や振動が生ぜしめられるに至るものと考えられる。
このような問題に対処するために、例えば、特許文献4(特公平7−107416号公報)には、受圧室と平衡室を仕切る仕切ゴム膜を設けると共に、この仕切ゴム膜に切込みを形成した構造が提案されている。このような構造では、受圧室と平衡室の圧力差が大きくなった場合に、仕切ゴム膜が大きく弾性変形することに伴い、切込みが開口する。これにより、受圧室と平衡室の圧力差を解消することが可能とされている。
しかしながら、このような特許文献4において提案されている構造では、受圧室に負圧が生じた場合だけでなく、正圧が生じた場合でも仕切ゴム膜の切込みが開口することから、振動入力時に受圧室の圧力変動を充分に得ることが困難となる。その結果、オリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用等に基づく防振装置本来の防振効果が有効に発揮され難いという問題があった。
特開承7−9340号公報 特開平7−54131号公報 特開平10−184769号公報 特公平7−107416号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、受圧室内に正圧が生ぜしめられた場合における防振性能を損なうことなく、受圧室内で負圧が生ぜしめられた場合における異音や振動を効果的に防ぐことが出来る新規な構造の流体封入式防振装置を提供することを目的とする。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明は、防振連結される一方の部材に取り付けられる第一の取付部材を防振連結される他方の部材に取り付けられる第二の取付部材の筒状部における軸方向一方の開口側に離隔配置して、それら第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で弾性的に連結する一方、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室と壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室とを形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、該受圧室と該平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた流体封入式防振装置において、前記本体ゴム弾性体よりも硬質で前記受圧室に封入された非圧縮性流体よりも比重が小さい可動隔壁部材を該受圧室に収容配置すると共に、防振連結される部材に装着された使用状態下で該可動隔壁部材の外周縁部が該受圧室の壁面を構成する該本体ゴム弾性体の内周面に対して全周に亘って当接し得るようになっており、該可動隔壁部材の外周縁部が該本体ゴム弾性体の内周面に当接することにより該受圧室が該可動隔壁部材で上下に仕切られるようになっていると共に、前記オリフィス通路の該受圧室側の開口部を該受圧室における該可動隔壁部材よりも下側の領域に開口するようにしたことを特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、リバウンド方向(第一の取付部材と第二の取付部材が相対的に離隔せしめられる方向)に作用せしめられる過大な荷重の作用時に受圧室内で惹起される負圧によってキャビテーションによる異音や振動が生ぜしめられるのを有利に防ぐことが出来る。
すなわち、大きなリバウンド荷重が入力されると、第一の取付部材と第二の取付部材が相互に軸方向で離隔する方向に相対変位せしめられて、それに伴って本体ゴム弾性体が弾性変形せしめられる。その際、受圧室内に封入される非圧縮性流体よりも比重が小さい可動隔壁部材は、浮力によって受圧室の上側の壁面に当接せしめられる。これにより、少なくとも大きなリバウンド荷重の入力時において、受圧室が可動隔壁部材を挟んで上下に二分されるようになっている。加えて、リバウンド荷重の入力時において、受圧室内では、可動隔壁部材の軸方向下方(仕切部材側)よりも軸方向上方(第一の取付部材側)においてより大きな負圧が発生する。蓋し、本体ゴム弾性体は、軸方向下部が第二の取付部材で変形拘束されていること等により、軸方向上部の方が下部に比して変形量が大きくなるからである。このような受圧室の軸方向上側領域で生じる負圧によって可動隔壁部材の外周部分が本体ゴム弾性体の中間部分の内周面に対して吸着されるようにより安定して密着せしめられて、その結果、受圧室が可動隔壁部材によって有利に上下に二分される。なお、リバウンド荷重とは、第一の取付部材と第二の取付部材を相対的に離隔せしめる方向に作用する荷重を言う。
かかる二分状態下において、受圧室の可動隔壁部材よりも上側の領域では、本体ゴム弾性体の弾性変形に基づいて負圧が生ぜしめられるが、作用する負圧は比較的に小さく抑えられており、気相の分離が低減せしめられているものと考えられる。しかも、負圧によるキャビテーションが発生した場合にも、キャビテーションによる水撃圧は、本体ゴム弾性体の弾性変形やフローティング状態で配設される可動隔壁部材の変位等によって吸収されて、防振対象部材への伝達が効果的に防がれることから、キャビテーションに起因する異音や振動等の不具合が軽減乃至は解消されるものと考えられる。
また、受圧室の可動隔壁部材よりも下側の領域においては、本体ゴム弾性体の弾性変形量が小さく、容積変化が抑えられることから、発生する負圧が小さく抑えられて、キャビテーションによる異音や振動が軽減乃至は回避されるものと考えられる。しかも、可動隔壁部材が本体ゴム弾性体に対して独立変位可能な状態で受圧室内に収容配置されていることにより、受圧室に正圧を惹起する入力荷重から負圧を惹起する入力荷重に転じる際に、可動隔壁部材が入力振動に対して遅れ位相で変位せしめられる。これにより、受圧室の可動隔壁部材よりも軸方向下側の領域における容積の急激な変化が効果的に防がれて、過大な負圧によるキャビテーションの発生が有利に軽減乃至は回避されるものと考えられる。
なお、可動隔壁部材の外周部分は、車両等への装着前の初期状態において受圧室の壁面に当接するようになっていても良いし、装着前には離隔しており、装着状態(例えば、防振支持体に本発明を適用する場合には、被支持体重量が及ぼされた荷重状態。また、例えば、防振連結体に本発明を適用する場合には、被連結体間に作用せしめられる静的荷重の作用状態。)において当接するようになっていても良いし、或いは、使用状態下において大きなリバウンド荷重が作用せしめられた場合に当接するようになっていても良い。また、受圧室に封入される非圧縮性流体よりも比重が小さい可動隔壁部材としては、例えば、可動隔壁部材を非圧縮性流体よりも比重が小さな材料で形成しても良いし、可動隔壁部材を非圧縮性流体よりも比重の大きな材料で形成すると共に、中空構造を採用して部材全体としての比重を非圧縮性流体よりも小さくする等しても良い。要するに、本発明において、「受圧室に封入された非圧縮性流体よりも比重が小さい可動隔壁部材」とは、可動隔壁部材が全体として、非圧縮性流体が封入された受圧室内で浮く構成を意味する。
また、可動隔壁部材を硬質な部材とすることにより、受圧室内に生ぜしめられる正圧の圧力変動が、可動隔壁部材の変形等によって吸収されるのを有利に防ぐことが出来る。それ故、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に発揮せしめることが出来る。
また、本発明は、前記第二の取付部材で支持されて前記受圧室と前記平衡室を仕切る仕切部材を設けると共に、該仕切部材が弾性変形を許容される可動膜を有していることが望ましい。これによれば、可動膜の弾性変形によって受圧室内の圧力変動を緩和して、キャビテーションの発生を有利に防ぐことが出来る。
また、本発明は、前記受圧室の上側壁面を構成する前記本体ゴム弾性体の内周面が軸直角方向内方に向かって次第に軸方向上方に傾斜する傾斜面を有しており、該傾斜面に前記可動隔壁部材の外周縁部が当接せしめられるようになっていることが望ましい。これによれば、受圧室の上側壁面の少なくとも一部を傾斜面とすることにより、可動隔壁部材の外周縁部を安定して当接せしめることが出来る。特に、可動隔壁部材が径方向でずれた場合等にも、可動隔壁部材の受圧室壁面に対する安定した当接を効果的に実現することが出来る。なお、傾斜面は、略一定の傾斜で形成されていることが望ましく、これによって、より安定した当接状態を実現することが出来る。
また、本発明は、前記本体ゴム弾性体の内周面において前記可動隔壁部材が当接せしめられる部分には、該可動隔壁部材の外周縁部を位置決めする位置決め部が設けられていることが望ましい。これによれば、可動隔壁部材を一時的に本体ゴム弾性体に対して位置決めすることにより、可動隔壁部材の受圧室への収容配置を簡単な作業で行うことが出来る。なお、可動隔壁部材は、位置決め部によって小さな拘束力で位置決めされるようになっており、防振連結される部材に装着された使用状態下において振動が入力されると容易に位置決め状態が解除されるようになっている。
また、本発明は、前記可動隔壁部材の外径寸法が前記受圧室の軸方向内法寸法よりも大きいことが望ましい。これによれば、可動隔壁部材が受圧室内で回転等を生じるのを防いで、所定の配設状態に安定して維持することが出来る。それ故、可動隔壁部材を配設することによる種々の効果を有効に発揮せしめることが出来る。
また、本発明は、前記可動隔壁部材には中央部分で軸方向上方に向かって突出する中央当接部が設けられており、該中央当接部が前記受圧室の壁面と軸方向で重ね合わされていることが望ましい。これによれば、受圧室に正圧を生ぜしめる荷重の入力時において、第一の取付部材の変位を可動隔壁部材に対して直接的に伝達せしめて、受圧室内に正圧の液圧変動を有効に惹起せしめることが出来る。それ故、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等に基づく防振効果を有効に得ることが出来る。
なお、可動隔壁部材の中央当接部を受圧室の壁面と軸方向で重ね合わすことにより、可動隔壁部材が、第一の取付部材に対して直接的な当接状態で軸方向に重ね合わせられるようになっていても良いし、第一の取付部材に対してゴム層(本体ゴム弾性体の中央部分)等を介した間接的な当接状態で重ね合わせられるようになっていても良い。
また、本発明は、前記可動隔壁部材の中央部分が前記受圧室の壁面を構成する前記本体ゴム弾性体から軸方向で所定距離だけ離隔せしめられていても良い。これによれば、可動隔壁部材が、入力振動に対して所定の遅れ位相で変位することにより、負圧の入力荷重から正圧の入力荷重に転じる際、可動隔壁部材が、それよりも下側部分の液室に対して緩衝的なピストン作動を行うこととなり、急激な負圧から正圧への変化に起因する気相(気泡)の急激な消失とそれに伴う大きな衝撃の発生が軽減される効果が期待できるものと考えられる。
また、本発明は、前記可動隔壁部材の外周縁部には、少なくとも前記本体ゴム弾性体の内周面への当接部が円弧状断面とされた環状の外周当接部が形成されていることが望ましい。これによれば、可動隔壁部材を受圧室の上側壁面(本体ゴム弾性体の内周面)に対してより安定して当接せしめることが出来る。なお、外周当接部は、特に限定されるものではないが、例えば、外周当接部の内側における可動隔壁部材の軸方向寸法よりも大きな軸方向寸法で形成されて、軸方向で突出せしめられていることが望ましい。これにより、可動隔壁部の受圧室の上壁面への当接をより安定して実現することが出来る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、防振連結される一方の部材である図示しないパワーユニットに取り付けられる第一の取付部材としての第一の取付金具12と、防振連結される他方の部材である図示しない車両ボデーに取り付けられる第二の取付部材としての第二の取付金具14を、本体ゴム弾性体16で連結した構造とされている。なお、図1に示されたエンジンマウント10は、車両への装着状態を示しており、第一の取付金具12と第二の取付金具14の軸方向間にパワーユニットの静荷重が作用せしめられている。また、以下の説明において、上下方向とは、エンジンマウント10の車両への装着状態における鉛直上下方向である、図1中の上下方向を言うものとする。また、本発明における軸(或いは、中心軸)とは、マウント中心軸のことであり、防振すべき主たる振動荷重の入力方向であって、本実施形態におけるエンジンマウント10では、その弾性主軸の一つである図1に示されたマウント中心軸:Aに相当する。
より詳細には、第一の取付金具12は、アルミニウム合金等の硬質材で形成されており、全体として略円形ブロック形状を呈している。即ち、第一の取付金具12は、円柱形状で中心軸上にボルト穴18が形成された固定部20と、固定部20の軸方向下方に形成されて、軸方向下方に向かって次第に小径となるテーパ突出部22を一体的に備えている。また、固定部20の軸方向下端には、軸直角方向外方に広がるフランジ状のストッパ当接部24が一体形成されている。このような第一の取付金具12は、固定部20に形成されたボルト穴18に螺着される図示しない固定ボルトによって、同じく図示しない自動車のパワーユニットに対して固定的に取り付けられている。
また、第二の取付金具14は、第一の取付金具12と同様に硬質材で形成されて、薄肉大径の段付き円筒形状を呈しており、軸方向中間部分に形成された段差部26を挟んで軸方向上部が大径筒部28とされていると共に、軸方向下部が小径筒部30とされている。この第二の取付金具14は、図示しないブラケット等を介して図示しない自動車の車両ボデーに固定的に組み付けられている。
また、これら第一の取付金具12と第二の取付金具14は、同一中心軸上に配設されて径方向で所定距離を隔てていると共に、本実施形態では、第一の取付金具12が第二の取付金具14よりも軸方向上方に位置せしめられている。これにより、第一の取付金具12は第二の取付金具14の軸方向上方の開口側に軸方向および径方向で所定距離を隔てて配設されている。
また、第一の取付金具12と第二の取付金具14は、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。本体ゴム弾性体16は、円錐台形状を呈するゴム弾性体で形成されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側端部である下端部には、軸方向下方に向かって開口する大径の円形凹所32が形成されている。この円形凹所32は、逆向きの略すり鉢形状となっており、軸方向上方に向かって次第に小径となる傾斜面としてのテーパ面34を有していると共に、上底面の径方向中央部分には軸直角方向に広がる平坦面である当接面36が形成されている。これにより、本実施形態における本体ゴム弾性体16は、その内周面の外周部分がテーパ面34で構成されていると共に、内周面の中央部分が当接面36で構成されている。
そして、本体ゴム弾性体16の小径側端部には、第一の取付金具12が埋め込まれて加硫接着されている。即ち、第一の取付金具12は、本体ゴム弾性体16の小径側端面から軸方向下方に差し入れられるように配設されており、テーパ突出部22が本体ゴム弾性体16の小径側端部に埋設されて固着されていると共に、ストッパ当接部24の下面が本体ゴム弾性体16の小径側端面に重ね合わされて固着されている。また、本体ゴム弾性体16と一体形成されたストッパゴム38が、ストッパ当接部24の外周面および外周部上面を覆うように固着されている。
さらに、本体ゴム弾性体の大径側端部外周面には、スリーブ金具40が外挿状態で加硫接着されている。このスリーブ金具40は、金属などの硬質の材料で形成されており、第二の取付金具14よりも僅かに小径とされた薄肉大径の円筒形状を呈している。また、本体ゴム弾性体16の下端外周縁部には、軸方向下方に向かって突出する円筒状の被覆ゴム層42が一体形成されており、被覆ゴム層42がスリーブ金具40の内周面の下部に加硫接着されている。これにより、スリーブ金具40の内周面が本体ゴム弾性体16と被覆ゴム層42によって略全面に亘って覆われている。なお、被覆ゴム層42が本体ゴム弾性体16の外周縁部から軸方向下方に突出するように一体形成されることにより、円形凹所32は、その開口部から軸方向上方に向かって所定の領域に亘って略一定の断面形状とされていると共に、該所定の領域よりも軸方向上方の部分が軸方向上方に向かって次第に小径となるテーパ面34を有するすり鉢状とされている。
なお、上述の説明からも明らかなように、本実施形態における本体ゴム弾性体16は、第一の取付金具12とスリーブ金具40を備えた一体加硫成形品として形成されている。
さらに、本体ゴム弾性体16に加硫接着されたスリーブ金具40は、第二の取付金具14に嵌着固定されている。即ち、スリーブ金具40を第二の取付金具14の大径筒部28に対して軸方向上方から挿し入れると共に、大径筒部28に対して八方絞り等の縮径加工を施すことにより、スリーブ金具40が第二の取付金具14に内嵌固定されている。なお、第二の取付金具14の大径筒部28には、内周面を略全面に亘って覆うシールゴム層44が被着形成されており、大径筒部28に縮径加工を施すことによってシールゴム層44が第二の取付金具14とスリーブ金具40の径方向間で圧縮されて、第二の取付金具14とスリーブ金具40の重ね合せ面間がシールゴム層44で流体密にシールされるようになっている。
このように本体ゴム弾性体16に加硫接着されたスリーブ金具40に対して第二の取付金具14を固定的に組み付けることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16によって相互に連結されるようになっている。
また、第二の取付金具14の小径筒部30には、可撓性膜としてのダイヤフラム46が加硫接着されている。ダイヤフラム46は、充分な撓みを有する薄肉円板形状のゴム膜で形成されており、弾性変形が容易に許容されるようになっている。また、ダイヤフラム46の外周縁部には、円筒状の固着部48が一体形成されており、固着部48が第二の取付金具14の小径筒部30の内周面に加硫接着されることにより、ダイヤフラム46が小径筒部30に固着されている。なお、本実施形態では、第二の取付金具14の小径筒部30の内周面が、固着部48によって略全面に亘って被覆されるようになっている。
これにより、筒状とされた第二の取付金具14の軸方向上側の開口部が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞せしめられていると共に、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部がダイヤフラム46で流体密に閉塞せしめられている。そして、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム46の軸方向間には、外部空間に対して密閉されて非圧縮性流体が封入された流体封入領域50が形成されている。なお、流体封入領域50に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油、或いは、それらを混合したもの等が好適に採用される。特に、封入流体としては、後述するオリフィス通路を通じての流体の共振作用に基づく防振効果を有利に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
また、第二の取付金具14には、仕切部材としての仕切金具52が組み付けられている。仕切金具52は、略円板形状を呈しており、仕切金具本体54と蓋金具56を含んで構成されている。
仕切金具本体54は、薄肉の金属板にプレス加工を施す等して形成された薄肉円板形状の部材であって、径方向中間部分には、軸方向上方に開口する周溝58が周方向で所定の長さに亘って連続的に形成されている。また、仕切金具本体54において周溝58の外周側には、軸直角方向外方に向かって延び出す固定フランジ部60が一体形成されている。
また、蓋金具56は、薄肉の略円形平板形状を呈しており、仕切金具本体54の外径寸法と略同じ外径寸法で形成されている。
これら仕切金具本体54と蓋金具56は、軸方向で相互に重ね合わされる。即ち、仕切金具本体54に対して蓋金具56が軸方向上方から同一中心軸上で重ね合わされて、仕切金具52が構成されている。
このような仕切金具52は、流体封入領域50において軸直角方向で広がるように配設されて、第二の取付金具14で固定的に支持されている。即ち、仕切金具本体54の固定フランジ部60と蓋金具56の外周縁部を、第二の取付金具14の段差部26に軸方向上方から重ね合わせると共に、スリーブ金具40を蓋金具56に対して軸方向上側から組み付けて、スリーブ金具40を第二の取付金具14に対して嵌着固定することにより、仕切金具52を第二の取付金具14の段差部26とスリーブ金具40の軸方向間で挟み込んで、仕切金具52を第二の取付金具14で支持せしめている。また、仕切金具52は、周溝58の外周壁部が第二の取付金具14の小径筒部30に挿し入れられており、第二の取付金具14に対して固着部48を介して軸直角方向で密着せしめられている。
このように仕切金具52を流体封入領域50内で軸直角方向に広がるように配設して第二の取付金具14で支持せしめることにより、流体封入領域50が仕切金具52で軸方向上下に二分されている。これにより、仕切金具52を挟んだ軸方向上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、圧力変動が生ぜしめられる受圧室62が形成されていると共に、仕切金具52を挟んだ軸方向下側には、壁部の一部がダイヤフラム46で構成されて、容積変化が許容される平衡室64が形成されている。
また、仕切金具本体54と蓋金具56を重ね合わせることにより、仕切金具本体54に形成された周溝58の開口部が蓋金具56によって覆蓋されており、周溝58を利用して周方向に所定の長さで延びるトンネル状の流路が形成されている。
さらに、周溝58を利用して形成されるトンネル状の流路の周方向端部は、受圧室62と平衡室64にそれぞれ連通せしめられている。即ち、トンネル状流路の周方向一方の端部において、蓋金具56には厚さ方向で貫通する連通孔66が形成されており、連通孔66を通じてトンネル状流路の一方の端部が受圧室62に連通せしめられている。また、トンネル状流路の周方向他方の端部において、仕切金具本体54の周溝58の内周側壁部を構成する部分には、仕切金具本体54を径方向で貫通する連通孔68が形成されており、連通孔68を通じてトンネル状流路の他方の端部が平衡室64に連通せしめられている。
これにより、受圧室62と平衡室64がトンネル状流路によって相互に連通せしめられており、トンネル状流路を利用して本実施形態におけるオリフィス通路70が形成されている。なお、本実施形態では、周溝58の周方向での長さや断面形状を調節することによって、オリフィス通路70の通路長や通路断面積を調節して、オリフィス通路70を通じて流動せしめられる流体の共振作用等に基づく高減衰効果が、エンジンシェイクに相当する10Hz前後の低周波数域の振動入力に対して発揮されるように設定されている。また、受圧室62と平衡室64は、オリフィス通路70によって常時連通状態となっている。
また、受圧室62には、可動隔壁部材72が配設されている。可動隔壁部材72は、合成樹脂材料等で形成された本体ゴム弾性体16よりも硬質な部材とされていると共に、受圧室62内に封入された非圧縮性流体よりも比重の小さい材料で形成されており、受圧室62内にフローティング状態で収容されている。また、可動隔壁部材72は、その径方向での最大径寸法が、受圧室62における軸方向での最大内法寸法よりも大きくなっており、受圧室62内での回転が制限されている。また、可動隔壁部材72は、略円板形状の隔壁部74と、隔壁部74の径方向中央部分から軸方向上方に向かって突出する円柱形状の中央当接部としての中央押圧部76を一体的に有している。
隔壁部74は、受圧室62内において軸直角方向に広がる略円板形状とされており、その外周縁部には全周に亘って連続して延びる外周当接部78を一体的に備えている。外周当接部78は、略一定の円形断面を有する環状とされており、図1に示されているように、断面半径が隔壁部74の軸方向厚さ寸法よりも大きく設定されている。そして、可動隔壁部材72の外周縁部に形成された外周当接部78は、本体ゴム弾性体16の内周面である円形凹所32のテーパ面34に対して全周に亘って当接せしめられている。なお、外周当接部78は、本体ゴム弾性体16の内周面(受圧室62の内側壁面)への当接面が曲面で構成されている。
一方、中央押圧部76は、略円柱形状を呈しており、隔壁部74の径方向中央部分から軸方向上方に向かって所定の長さで突出せしめられている。また、中央押圧部76は、可動隔壁部材72が受圧室62内でフロートせしめられて、隔壁部74の外周縁部(外周当接部78)が本体ゴム弾性体16のテーパ面34に当接せしめられた状態下において、本体ゴム弾性体16の径方向中央下面に形成された当接面36に当接せしめられるようになっている。即ち、本実施形態における可動隔壁部材72は、車両に装着された静置状態下において、隔壁部74の外周縁部に一体形成された外周当接部78と、隔壁部74の中央部に一体形成された中央押圧部76の上端面が、本体ゴム弾性体16の内周面である円形凹所32の壁面、換言すれば、受圧室62の壁面にそれぞれ当接せしめられている。
このような可動隔壁部材72が受圧室62内にフローティング状態で収容されて、可動隔壁部材72が受圧室62の壁面を構成する本体ゴム弾性体16の内周面(テーパ面34)に当接せしめられることにより、受圧室62が可動隔壁部材72を挟んで上下に二分されている。即ち、可動隔壁部材72を挟んで軸方向上側には、第一の流体室80が形成されていると共に、可動隔壁部材72を挟んで軸方向下側には、第二の流体室82が形成されている。なお、オリフィス通路70の受圧室62側の開口部は、第二の流体室82に開口せしめられている。また、可動隔壁部材72が本体ゴム弾性体16に対して相対変位可能に配設されることから、可動隔壁部材72の変位によって第一の流体室80と第二の流体室82が相互に連通される場合もある。
このような本実施形態に従う構造とされた自動車用エンジンマウント10において、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動が入力されて、第一の取付金具12と第二の取付金具14が軸方向で接近するように相対変位せしめられると、受圧室62内には正圧の圧力変動が及ぼされる。かかる圧力変動によって、受圧室62と平衡室64に相対的な圧力差が生ぜしめられ、かかる圧力差に基づいて両室62,64間においてオリフィス通路70を通じての流体流動が生ぜしめられる。これにより、オリフィス通路70を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づいて、優れた防振効果が発揮される。
特に本実施形態では、受圧室62内に収容配置される可動隔壁部材72が硬質の部材とされている。それ故、可動隔壁部材72が変形によって受圧室62内の液圧変動を吸収するのを回避することが出来る。従って、オリフィス通路70を通じて流動せしめられる流体の量を充分に確保して、防振装置本来の防振性能を有効に発揮せしめることが出来る。
さらに、本実施形態では、中央押圧部76が本体ゴム弾性体16の径方向中央部分を介して第一の取付金具12に間接的に当接せしめられており、第一の取付金具12の軸方向下方への変位に伴って可動隔壁部材72が一体的に軸方向下方へ変位せしめられるようになっている。それ故、可動隔壁部材72の位相遅れの変位によって受圧室62に惹起される圧力変動が吸収されるのを防ぐことが出来て、オリフィス通路70を通じて両室62,64間を流動せしめられる流体量を充分に確保することが出来る。それ故、オリフィス通路70における流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得ることが出来る。
さらに、可動隔壁部材72が本体ゴム弾性体16に対して相対変位可能なフローティング状態で受圧室62内に収容配置されていることから、第一の取付金具12が第二の取付金具14に対して軸方向下方に変位せしめられると、中央押圧部76が第一の取付金具12によって軸方向下方に押し下げられると共に、外周当接部78が本体ゴム弾性体16から離隔せしめられて軸方向下方に相対変位せしめられる。それ故、第一の取付金具12の第二の取付金具14に対する相対変位が可動隔壁部材72によって妨げられるのを回避出来る。なお、第一の取付金具12が第二の取付金具14に対して軸方向で接近する方向に変位せしめられる場合には、可動隔壁部材72の外周当接部78が本体ゴム弾性体16から軸方向下方に離隔せしめられることにより、第一の流体室80と第二の流体室82が相互に連通される。
また、自動車用エンジンマウント10に入力される振動によって、第一の取付金具12と第二の取付金具14が相対的に離隔するように変位せしめられると、本体ゴム弾性体16の弾性変形によって受圧室62の容積が大きくなる。このような受圧室62の容積変化は、本体ゴム弾性体16の下端部が第二の取付金具14によって拘束されて弾性変形を生じ難いことから、主として受圧室62の上部壁面を構成する本体ゴム弾性体16の上部が弾性変形せしめられることによって生ぜしめられる。
ここにおいて、本実施形態では、受圧室62内に収容配置された可動隔壁部材72の比重が、受圧室62に封入された非圧縮性流体の比重よりも小さくされており、可動隔壁部材72が受圧室62にフローティング状態で収容配置されている。これにより、可動隔壁部材72の外周縁部に形成された外周当接部78が受圧室62の壁面に当接せしめられて、受圧室62が可動隔壁部材72を挟んで上下に二分されている。それ故、受圧室62において、可動隔壁部材72の隔壁部74よりも軸方向上側の領域である第一の流体室80に大きな容積変化が生ぜしめられる一方、隔壁部74よりも軸方向下側の領域である第二の流体室82は、容積変化が比較的に小さく抑えられる。
これにより、オリフィス通路70によって平衡室64と連通せしめられた第二の流体室82では、容積変化による負圧が抑えられて、キャビテーションが軽減乃至は回避される。それ故、キャビテーションに起因する異音や振動の発生が効果的に回避されるようになっている。
一方、第一の流体室80においても負圧を比較的低減せしめることが出来る。即ち、本実施形態においては、オリフィス通路70の受圧室62側の開口部が第二の流体室82に開口するように形成されている。それ故、第一の流体室80には、本体ゴム弾性体16の変形に基づく容積変化による負圧だけが作用せしめられることから、負圧を低減せしめることが出来るのである。
また、容積変化による負圧によって、第一の流体室80で封入流体中に溶存する気体が分離した場合においても、第一の流体室80の壁部が、ゴム弾性体で形成された本体ゴム弾性体16と、受圧室62内に浮遊状態で配設された可動隔壁部材72によって構成されていることから、第一の流体室80内で発生したキャビテーションによる衝撃が第一の流体室80の壁部で吸収されて、第二の取付金具14に固定される車両ボデーに伝達され難くなっている。それ故、第一の流体室80内でのキャビテーションの発生に起因する異音や振動が実質的に回避されているものと考えられる。特に本実施形態では、第一の流体室80内で発生する水撃圧が第一の取付金具12に比して伝達され難い第二の取付金具14を車両ボデー側に固定することにより、第一の流体室80内で生じる衝撃波による乗り心地の悪化を有利に防ぐことが出来る。
なお、第一の流体室80内に負圧が生ぜしめられると、可動隔壁部材72は、第一の流体室80と第二の流体室82の圧力差によって第一の取付金具12側(軸方向上側)に向かって付勢される。それ故、図2にも示されているように、第一の取付金具12が第二の取付金具14に対して軸方向で相対的に変位せしめられる場合には、可動隔壁部材72の外周縁部に設けられた外周当接部78が、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に位置する本体ゴム弾性体16の中間部分の内周面に吸着されるように押し付けられて密着せしめられている。これにより、第一の流体室80と第二の流体室82が可動隔壁部材72によって二分されて、局所的な負圧の発生が有利に防がれるようになっているものと考えられる。
また、図3には、本発明の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウント84が示されている。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同一の部材乃至部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
本実施形態に従う構造とされた自動車用エンジンマウント84は、防振連結される一方の部材である図示しないパワーユニットに取り付けられる第一の取付部材としての第一の取付金具86と、防振連結される他方の部材である図示しない車両ボデーに取り付けられる第二の取付部材としての第二の取付金具88を、本体ゴム弾性体16で連結した構造とされている。なお、以下の説明において、上下方向とは、エンジンマウント84の車両への装着状態における鉛直上下方向である、図3中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具86は、前記第一の実施形態と同様に、金属材で形成されており、略円柱形状を呈している。また、第一の取付金具86の径方向中央部分には、中心軸上を延びるボルト穴18が形成されている。更に、第一の取付金具86の軸方向上端部には、軸直角方向外方に向かって広がるフランジ部90が一体形成されている。
また、第二の取付金具88は、薄肉大径の略円筒形状を呈している。また、第二の取付金具88の下端部には、径方向外方に広がるかしめ部92が一体形成されている。
これら第一の取付金具86と第二の取付金具88は、相互に離隔して同一中心軸上で配置されると共に、本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されている。より詳細には、第一の取付金具86が略円錐台形状とされた本体ゴム弾性体16の小径側端面から軸方向下方に差し込まれた状態で、軸方向上端面を除く略全面が本体ゴム弾性体16に加硫接着されている。また、第二の取付金具88は本体ゴム弾性体16の大径側端部に外挿された状態で、かしめ部92を除く内周面の略全面が本体ゴム弾性体16に加硫接着されている。即ち、本実施形態における本体ゴム弾性体16は、第一の取付金具86と第二の取付金具88を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
また、第二の取付金具88には、ダイヤフラム94が組み付けられている。このダイヤフラム94は、前記第一の実施形態と同様に、薄肉ドーム状のゴム膜で形成されており、その外周縁部には固定金具96が加硫接着されている。固定金具96は、軸方向上方に向かって次第に大径となるテーパ筒形状であって、軸方向下端部にダイヤフラム94が加硫接着されていると共に、軸方向上端部には全周に亘って軸直角方向外方に広がる取付フランジ部98が一体形成されている。そして、取付フランジ部98が第二の取付金具88の下端部に形成されたかしめ部92に対して軸方向下方から重ね合わされかしめ固定されることにより、ダイヤフラム94が第二の取付金具88に固定的に組み付けられている。なお、本実施形態に係る固定金具96は、ダイヤフラム94と一体形成された被覆ゴム層100によって内周面と外周面が何れも被覆されており、取付フランジ部98が被覆ゴム層100から露出されていると共に、固定金具96の他の部分が被覆ゴム層100によって全面に亘って覆われている。
そして、上述の如くして第二の取付金具88の軸方向上方の開口部が本体ゴム弾性体16で閉塞せしめられると共に、第二の取付金具88の軸方向下方の開口部がダイヤフラム94で閉塞せしめられることにより、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム94の軸方向対向面間には、外部空間に対して密閉されて非圧縮性流体が封入された流体封入領域50が形成されている。
さらに、かかる流体封入領域50には、仕切部材102が収容配置されている。そして、この仕切部材102で流体封入領域50が仕切られることにより、受圧室62と平衡室64が形成されている。受圧室62は、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で形成されており、振動入力時に圧力変動が生ぜしめられるようになっている。一方、平衡室64は、壁部の一部がダイヤフラム94で形成されており、容積変化が容易に許容されて圧力変動が速やかに解消されるようになっている。また、仕切部材102の外周部分にはオリフィス通路104が形成されており、このオリフィス通路104によって受圧室62と平衡室64が相互に接続されている。
仕切部材102は、全体として厚肉の略円板形状を有しており、ゴム弾性体によって成形されている。また、仕切部材102の外周部分は、特に厚肉とされており、周方向の全周に亘って連続して略一定の断面形状をもって延びる円環ブロック形状のオリフィス形成部106とされている。そして、このオリフィス形成部106には、下端外周角部において周方向に一周弱の長さで延びる矩形断面の切欠周溝108が形成されている。即ち、かかる切欠周溝108は、周上の一箇所に形成された仕切壁部110によって分断されており、この仕切壁部110を挟んで、切欠周溝108の周方向両端部が周方向に対峙せしめられている。
また、仕切部材102の中央部分は、可動膜としての可動ゴム板部112とされている。この可動ゴム板部112は、所定厚さの円板形状とされていると共に、外周縁部が下方に向かって次第に径方向外方に傾斜したテーパ形状とされており、全体として逆向きの略皿形状を有している。そして、可動ゴム板部112は、オリフィス形成部106の中心孔内で軸直角方向に広がるように配設されており、可動ゴム板部112の外周面とオリフィス形成部106の軸方向中間部分の内周面とが繋がって、可動ゴム板部112とオリフィス形成部106が一体的な加硫成形品とされている。また、このことからも明らかなように、オリフィス形成部106の中心孔は、可動ゴム板部112によって流体密に閉塞されている。
更にまた、仕切部材102には、支持金具114が固着されている。かかる支持金具114は、全体として薄肉の円環板形状を有している。また、支持金具114には、周上の一箇所において、内周側に向かって延び出す補強部116が形成されている。この補強部116は、仕切部材102の周方向に略1/3周の長さを有しており、軸直角方向に広がる横板部分118と、横板部分118の内周縁部から屈曲して軸方向下方に延びる縦板部分120とから構成されている。また、横板部分118には、周方向一方の側に偏倚して図示しない連通孔が貫設されている。一方、縦板部分120の下端縁部は、僅かに内周側にカールされて補強されていると共に、縦板部分120の周方向他端側の下端部には、切欠形状の図示しない連通窓が形成されている。
さらに、支持金具114において、補強部116が形成された部分を除く、周方向に略2/3周の長さに亘る部分には、内周縁部が上方に向かってカール状に湾曲して突出する補強リブ122が、周方向に連続的に延びるようにして一体形成されている。なお、支持金具114の内周縁部には、補強リブ122の形成を容易とする等の目的をもって、補強部116の周方向両端部分に図示しない一対の縁切部が、円弧形状の切欠構造をもって形成されている。
そして、このような支持金具114は、図3に示されているように、仕切部材102のオリフィス形成部106に対して一部が埋設された状態で加硫接着されている。要するに、仕切部材102は、支持金具114を備えた一体加硫成形品によって構成されているのである。
また、支持金具114は、オリフィス形成部106における切欠周溝108の上壁部分である受圧室側隔壁部124に対して固着されている。そして、支持金具114の外周縁部が、その全周に亘って、仕切部材102から径方向外方に突出せしめられており、この突出した環状の外周縁部が固着部126とされている。また、支持金具114の内周部分は、受圧室側隔壁部124の下面に重ね合わされた状態で固着されている。換言すれば、支持金具114の上面が、略全面に亘って仕切部材102を形成する所定厚さのゴム弾性体で覆われていると共に、支持金具114の外周側に一体形成された固着部126が該仕切部材102を形成する所定厚さのゴム弾性体よりも外周側に突出せしめられている。なお、支持金具114は、切欠周溝108の全幅に亘って配設されていても良いが、本実施形態では、切欠周溝108の全幅には至らない径方向寸法で支持金具114が受圧室側隔壁部124に配設固着されている。
また一方、支持金具114の補強部116は、その横板部分118が切欠周溝108の全幅を覆うようにして受圧室側隔壁部124に被着されている。なお、本実施形態では、図示しない連通孔が形成されている位置には、受圧室側隔壁部124が設けられておらず、横板部分118が露出せしめられており、それによって、受圧室側隔壁部124は連通孔が形成された位置において周方向に分断されている。また、縦板部分120は、オリフィス形成部106における切欠周溝108の内周壁部分である平衡室側隔壁部128に対して埋設状態で固着されている。なお、縦板部分120の下端は、平衡室側隔壁部128の下端部までは僅かに達しない長さで下方に延び出しており、縦板部分120の下端が平衡室側隔壁部128を形成するゴム弾性体で被覆されている。
また、支持金具114は、仕切部材102に対して、補強部116が仕切壁部110の形成部位に位置せしめられるように、相互に周方向で位置合わせされている。これにより、仕切壁部110の上側部分および内周側部分が補強部116で連続的に補強されている。
更にまた、仕切部材102における切欠周溝108の周方向一方の端部に対して、補強部116の図示しない連通孔が位置合わせされており、この連通孔を通じて切欠周溝108の一方の端部が上方に向かって開口せしめられている。また、仕切部材102における切欠周溝108の周方向他方の端部に対して図示しない連通窓が位置合わせされており、この連通窓を通じて切欠周溝108の他方の端部が径方向内方に向かって開口せしめられている。
このような構造とされた仕切部材102は、流体封入領域50に収容され、第二の取付金具88の下端開口部において軸直角方向に広がって配設されている。そして、仕切部材102に加硫接着された支持金具114の外周縁部、即ち、固着部126が第二の取付金具88のかしめ部92に重ね合わされて、かしめ部92により、固定金具96の取付フランジ部98と共に、第二の取付金具88の下端開口部に対して流体密にかしめ固定されている。このように仕切部材102が第二の取付金具88の下端開口部に対してかしめ固定された状態下において、オリフィス形成部106の下端、即ち、平衡室側隔壁部128の下端が、固定金具96の軸方向中間部分に形成された段差部130に重ね合わせられている。なお、本実施形態では、固定金具96の内周面側に被着されている被覆ゴム層100のうち段差部130付近に被着されている部分が厚肉とされており、かかる厚肉部分によって形成された環状の重ね合わせ面に対して平衡室側隔壁部128の下端が重ね合わされている。これにより、平衡室側隔壁部128の内周側と外周側が流体密に仕切られることとなる。また、固着部126がかしめ固定されることで受圧室側隔壁部124の上側と下側が流体密に仕切られることとなる。
さらに、流体封入領域50の外周部分には、オリフィス形成部106と固定金具96の対向面間において周方向に延びる環状領域132が形成されており、この環状領域132が仕切壁部110によって周上の一カ所で流体密に仕切られることによって周方向の一周弱の長さで略一定の断面形状をもって延びている。そして、かかる環状領域132が、その周方向一端部において、図示しない連通孔を通じて受圧室62に接続されていると共に、その周方向他端部において、図示しない連通窓を通じて平衡室64に接続されており、以て、受圧室62と平衡室64を相互に連通せしめるオリフィス通路104が形成されている。
さらに、可動ゴム板部112は、流体封入領域50内で軸直角方向に広がるようにして配設されており、その上面には受圧室62の圧力が及ぼされるようになっている一方、その下面には、平衡室64の圧力が及ぼされるようになっている。これにより、可動ゴム板部112は、受圧室62と平衡室64の圧力差に基づいて弾性変形せしめられるようになっている。
また、受圧室62には、可動隔壁部材134が配設されている。可動隔壁部材134は、合成樹脂材料等で形成された硬質な部材とされていると共に、受圧室62内に封入された非圧縮性流体よりも比重の小さい材料で形成されており、受圧室62の壁面に対して自由に離隔変位可能とされたフローティング状態で受圧室62内に収容配置されている。また、可動隔壁部材134は、全体として略円錐台形状を呈しており、車両装着状態下における受圧室62の上側内壁面(円形凹所32の上底壁面)に沿った形状の外周面および上底壁面(上端面)を有している。また、特に本実施形態では、可動隔壁部材134の上底面が上方に向かって凸となるように僅かに湾曲せしめられた曲面で形成されており、上端面の中央部分が受圧室62の上側内壁面の中央部分に当接せしめられている。
また、本実施形態に係る可動隔壁部材134は、その下端外周部分に外周当接部136を有しており、外周当接部136において可動隔壁部材134が本体ゴム弾性体16の内周面に当接せしめられている。外周当接部136は、全周に亘って略一定の断面形状で延びる円環形状とされており、径方向外方に向かって僅かに径方向下方に傾斜して延び出している。また、本実施形態における外周当接部136は、その表面が凸形状の曲面によって構成されており、本体ゴム弾性体16の内周面に対する安定した当接状態を実現出来るようになっている。なお、本実施形態においては、可動隔壁部材134が、上端面の中央部分と、外周当接部136において本体ゴム弾性体16に対して当接せしめられていると共に、その他の部分(例えば、テーパ状の外周面)が本体ゴム弾性体16から僅かに離隔せしめられている。
このような可動隔壁部材134の配設状態下において、受圧室62は可動隔壁部材134を挟んで上下に二分されており、軸方向上側が第一の流体室80とされていると共に、軸方向下側が第二の流体室82とされている。
また、可動隔壁部材134は、振動の非入力状態下において、本体ゴム弾性体16と一体形成された位置決め部としての保持リップ138によって位置決めされている。保持リップ138は、本体ゴム弾性体16の内周側に形成されたテーパ面34において周上の複数箇所に形成されており、軸方向下方に向かって突出せしめられている。また、保持リップ138は、円周上に配置されており、その内径寸法が可動隔壁部材134の外径寸法よりも僅かに小さくされている。これにより、可動隔壁部材134を保持リップ138の内周側に嵌め込むことにより、可動隔壁部材134の外周縁部を本体ゴム弾性体16に対して係止せしめて、可動隔壁部材134を小さな拘束力で位置決め固定することが出来る。
このような本実施形態に従う構造とされた自動車用エンジンマウント84の車両への装着状態下において、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動が入力されて、第一の取付金具86と第二の取付金具88が相対的に接近せしめられると、前記第一の実施形態と同様に、オリフィス通路104を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が有効に発揮される。なお、本実施形態においても、可動隔壁部材134の比重が、受圧室62に封入される非圧縮性流体の比重よりも小さくされており、可動隔壁部材134が浮力によって本体ゴム弾性体16に当接せしめられていることから、受圧室62内の圧力変動が有効に生ぜしめられる。
また、入力振動によって第一の取付金具86と第二の取付金具88が相対的に離隔変位せしめられた場合には、前記第一の実施形態と同様に、第一の流体室80および第二の流体室82内に生ぜしめられる負圧が比較的小さく抑えられて、キャビテーションによる異音や振動の発生が低減乃至は回避される。
また、第一の流体室80においてキャビテーションによる気泡が発生した場合にも、第一の流体室80の壁面が衝撃を吸収し易い弾性体である本体ゴム弾性体16と、流体中にフローティング状態で収容配置された可動隔壁部材134で構成されていることから、気泡の消失時に生じる衝撃は車両ボデーには伝達され難く、かかる衝撃に起因して異音や振動が発生するのを低減乃至は回避することが出来る。
特に本実施形態では、仕切部材102がゴム弾性体で構成されていると共に、仕切部材102を第二の取付金具88に連結支持せしめる支持金具114の受圧室62側の面が、略全面に亘って仕切部材102を構成するゴム弾性体で被覆されている。それ故、第二の流体室82内でキャビテーションによる水撃圧が生じた場合にも、車両ボデーへの伝達を低減して、異音や振動を防ぐことが出来るようになっている。
さらに、本実施形態においては、仕切部材102の径方向中央部分に可動ゴム板部112が設けられており、第二の流体室82における液圧変動が可動ゴム板部112の弾性変形によって吸収されるようになっている。それ故、第二の流体室82におけるキャビテーションの発生をより有利に防ぐことが出来る。特に、受圧室62において、車両ボデー側に対してキャビテーションによる衝撃が伝達され易い可動隔壁部材134よりも下側の領域における負圧を吸収できることから、キャビテーションによる異音や振動を有利に低減乃至は回避することが出来る。
また、本実施形態においては、可動隔壁部材134を予め本体ゴム弾性体16に小さな拘束力で支持せしめる保持リップ138が、本体ゴム弾性体16に一体形成されている。それ故、第二の取付金具88にダイヤフラム94と仕切部材102を組み付ける際に、可動隔壁部材134を受圧室62内に容易に収容配置せしめることが出来る。なお、保持リップ138への係止による可動隔壁部材134の拘束力は充分に小さく設定されており、可動隔壁部材134が振動入力によって保持リップ138の内周側から容易に抜け出すようにされている。これにより、可動隔壁部材134の本体ゴム弾性体16に対する一時的な固定によって組立て作業性の向上を図りつつ、可動隔壁部材134を実質的にフローティング状態で受圧室62内に収容配置することが出来る。
なお、異音の発生レベルの測定によって、キャビテーション対策を施していない従来構造の流体封入式防振装置において動ばね換算値で100N以上であったキャビテーションに伴う異音の発生レベルが、本発明に従う構造の可動隔壁部材を備えた流体封入式防振装置を採用することにより、動ばね換算値で12〜19Nにまで低減せしめることが出来ることを確認した。また、キャビテーション対策として極めて有効であることが知られているリリーフバルブを備えた流体封入式防振装置(受圧室内の負圧レベルに応じて開閉作動するバルブを設けることによって、受圧室内に生じる負圧を制限してキャビテーション異音を低減乃至は回避するようにした流体封入式防振装置)において、異音の発生レベルが動ばね換算値で12N程度であるという実験データがあり、キャビテーション対策として本発明が有効であることは明らかである。しかも、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、オリフィス通路を通じて発揮される低周波振動に対する減衰効果等の本来の防振性能に殆ど影響を及ぼすことがなく、異音の低減と優れた防振効果の維持を両立して実現出来ることを実験によって確認した。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、可動隔壁部材は、前記第一又は第二の実施形態に示された具体的な構造によって何等限定されるものではなく、種々なる構造が採用され得る。具体的には、例えば、可動隔壁部材は、皿形状やカップ形状とされて、その内周側に第一の流体室が形成されるようになっていても良い。
また、前記第一又は第二の実施形態では、本体ゴム弾性体16がテーパ面34を有しており、該テーパ面34に対して可動隔壁部材72,134の外周縁部が当接せしめられるようになっているが、本体ゴム弾性体は必ずしも内周面の少なくとも一部にテーパ面を有していなくても良いし、可動隔壁部材の外周縁部は必ずしもテーパ面に当接せしめられていなくても良い。具体的には、例えば、図4に示されているエンジンマウント140のように、本体ゴム弾性体142の内周面が軸方向中間部分に段差部144を有する段付き形状とされており、受圧室62における上側領域の軸直角方向での内法寸法が、下側領域の軸直角方向での内法寸法に比して小さくなっていると共に、段差部144に対して可動隔壁部材146の外周縁部が軸方向下方から重ね合わされて当接せしめられるようになっていても良い。また、前記第一の実施形態において、本体ゴム弾性体16の内周面は、テーパ面34と当接面36を含んで構成されていたが、当接面36は必ずしも必要ではなく、例えば、本体ゴム弾性体16の内周面の外周部分と中央部分の両方が傾斜面で構成されていても良い。
また、前記第一又は第二の実施形態では、可動隔壁部材72,134の径方向中央部分が本体ゴム弾性体16の径方向中央部分(当接面36)に対して当接せしめられているが、可動隔壁部材は、外周縁部が本体ゴム弾性体の内周面(受圧室の上側壁面)に対して当接せしめられ得るようになっていれば良く、図4に示されているように、可動隔壁部材146が円形の平板形状とされており、可動隔壁部材146の外周部分が本体ゴム弾性体142の段差部144に軸方向下方から重ね合わされて当接せしめられていると共に、径方向中央部分が車両への装着状態下において本体ゴム弾性体142から所定距離だけ離隔せしめられていても良い。このような構造を採用することにより、可動隔壁部材146を入力振動に対して位相遅れで変位せしめて、受圧室62における可動隔壁部材146よりも下側の領域に対して緩衝的にピストン効果を及ぼすことが出来る。これにより、気泡の急激な消失を防いで、キャビテーションによる異音や振動の発生をより有利に低減乃至は回避することが出来る。
また、前記第一又は第二の実施形態において可動隔壁部材72,134の外周部分に設けられている外周当接部78,136は、図4にも示されているように、なくても良い。更に、外周当接部は、前記第一又は第二の実施形態に示されているような曲面によって構成された表面形状を有している必要はなく、本体ゴム弾性体との当接を有効に実現出来る形状を適宜に選択して形状を設定すれば良い。具体的には、例えば、本体ゴム弾性体のテーパ面に沿った傾斜面を有する略一定の四角形断面(例えば、菱形断面等)で周方向に延びる外周当接部等も採用可能である。
また、前記第一, 第二の実施形態において、可動隔壁部材72,134の径方向中央部分は、第一の取付金具12に対して本体ゴム弾性体16の径方向中央部分を介して間接的に当接せしめられるようになっていたが、例えば、第一の取付金具12の下端面によって受圧室62の壁部の一部(上側壁面の中央部分)を構成して、第一の取付金具12の下端面と可動隔壁部材72,134の中央部分が直接的に当接せしめられるようになっていても良い。これによれば、可動隔壁部材が入力振動に対して位相遅れの変位を生じるのをより有利に防ぐことが出来る。
また、前記第一,第二の実施形態においては、可動隔壁部材は、受圧室の上側の壁部を構成する本体ゴム弾性体16に当接せしめられるようになっている一方、受圧室の下側の壁部を構成する仕切金具52(仕切部材102)からは軸方向で離隔せしめられている。しかしながら、例えば、可動隔壁部材は、受圧室の上側壁面と下側壁面の両方に同時に当接せしめられるようになっていても良く、第一の取付部材と第二の取付部材に支持された仕切部材の軸方向間で挟み込まれて両方に当接することにより、第一の取付部材と第二の取付部材の相対的な接近変位を制限するバウンド方向(第一の取付部材と第二の取付部材が相対的に接近せしめられる方向)でのストッパ機構を構成することも出来る。なお、可動隔壁部材を利用してバウンドストッパを構成する場合には、第一の取付部材や仕切部材において可動隔壁部材との当接面を構成する部位に対して、緩衝ゴム層を形成しても良い。
また、可動隔壁部材は、非圧縮性流体よりも比重が小さい材料を選択しても良いし、例えば、本体ゴム弾性体よりも比重が大きい合成樹脂や金属等の材料を採用しても良い。要するに、可動隔壁部材は、部材全体として非圧縮性流体よりも比重が小さくなっていれば良く、具体的な材料や構造等は、適宜に選択して採用することが出来る。
また、前記第二の実施形態においては、位置決め部として、本体ゴム弾性体と一体形成されて、軸方向下方に突出する複数の保持リップが採用されているが、位置決め部は、前記第二の実施形態における具体的な説明によって何等限定されるものではない。具体的には、例えば、本体ゴム弾性体の内周面に開口する凹所状や凹溝状であっても良く、可動隔壁部材に形成された突起や突条等が該凹所や凹溝に係止される等して可動隔壁部材が本体ゴム弾性体に対して位置決めされるようになっていても良い。また、前記第二の実施形態においては、周方向で離隔せしめられた複数の保持リップが形成されている例を示したが、例えば、周方向に連続して延びる突条によって保持リップを実現することも出来る。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウントを示す縦断面図。 図1に示された自動車用エンジンマウントにおいて、第一の取付金具と第二の取付金具が相対的に離隔変位せしめられた状態を示す縦断面図。 本発明の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウントを示す縦断面図。 本発明の別の一実施形態としての自動車用エンジンマウントを示すたて断面図。
符号の説明
10:自動車用エンジンマウント、12:第一の取付金具、14:第二の取付金具、16:本体ゴム弾性体、34:テーパ面、36:当接面、46:ダイヤフラム、62:受圧室、64:平衡室、70:オリフィス通路、72:可動隔壁部材、74:隔壁部、76:中央押圧部、78:外周当接部、80:第一の流体室、82:第二の流体室、112:可動ゴム板部、138:保持リップ

Claims (8)

  1. 防振連結される一方の部材に取り付けられる第一の取付部材を防振連結される他方の部材に取り付けられる第二の取付部材の筒状部における軸方向一方の開口側に離隔配置して、それら第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で弾性的に連結する一方、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室と壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室とを形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、該受圧室と該平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた流体封入式防振装置において、
    前記本体ゴム弾性体よりも硬質で前記受圧室に封入された非圧縮性流体よりも比重が小さい可動隔壁部材を該受圧室に収容配置すると共に、防振連結される部材に装着された使用状態下で該可動隔壁部材の外周縁部が該受圧室の壁面を構成する該本体ゴム弾性体の内周面に対して全周に亘って当接し得るようになっており、該可動隔壁部材の外周縁部が該本体ゴム弾性体の内周面に当接することにより該受圧室が該可動隔壁部材で上下に仕切られるようになっていると共に、前記オリフィス通路の該受圧室側の開口部を該受圧室における該可動隔壁部材よりも下側の領域に開口するようにしたことを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記第二の取付部材で支持されて前記受圧室と前記平衡室を仕切る仕切部材を設けると共に、該仕切部材が弾性変形を許容される可動膜を有している請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記受圧室の上側壁面を構成する前記本体ゴム弾性体の内周面が軸直角方向内方に向かって次第に軸方向上方に傾斜する傾斜面を有しており、該傾斜面に前記可動隔壁部材の外周縁部が当接せしめられるようになっている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記本体ゴム弾性体の内周面において前記可動隔壁部材が当接せしめられる部分には、該可動隔壁部材の外周縁部を位置決めする位置決め部が設けられている請求項1乃至3の何れか一項に記載の記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記可動隔壁部材の外径寸法が前記受圧室の軸方向内法寸法よりも大きい請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  6. 前記可動隔壁部材には中央部分で軸方向上方に向かって突出する中央当接部が設けられており、該中央当接部が前記受圧室の壁面と軸方向で重ね合わされている請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  7. 前記可動隔壁部材の中央部分が前記受圧室の壁面を構成する前記本体ゴム弾性体から軸方向で所定距離だけ離隔せしめられている請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  8. 前記可動隔壁部材の外周縁部には、少なくとも前記本体ゴム弾性体の内周面への当接部が円弧状断面とされた環状の外周当接部が形成されている請求項1乃至7の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
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