JP2014046319A - はんだ材料および実装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】Auフラッシュめっきが短時間で薄いめっきを施すためのフラッシュ処理によって施されたAu電極に対するはんだ付けにおいては、従来のはんだ材料は必ずしも十分に高い熱疲労特性を有しない。
【解決手段】Pを含むNiめっきを有するAu部品電極のはんだ付けに利用されるはんだ材料であって、
5.6〜6.8mass%のInと、
0.3〜4.0mass%のAgと、
0〜1.0mass%のBiと、
0.035〜0.7mass%のCoを含み、
残部は、87.5mass%以上のSnのみであることを特徴とする。
【選択図】図7

Description

本発明は、主として電子回路基板のはんだ付けに用いるソルダーペースト等におけるはんだ材料および実装体に関する。
電子回路基板においては、一般的に電極材質がCuであるCu基板電極が利用される場合が多い。また電子回路基板に実装される一般的な電子部品では、CuにSnめっきが施されたCu部品電極が利用される。しかしながら、電動コンプレッサ、DC/DCコンバータ、インバータ、ヘッドランプなどの車載商品においては、短時間で薄いめっきを施すフラッシュ処理によってAuフラッシュめっきが施されたAu部品電極が利用される場合がある。その理由は、Au部品電極とはんだ材料との接合面においては、濡れ性が良好となるため大きなフィレットが形成させ接合信頼性が上がるからである。一例として、Cu基板電極を有した電子回路基板と、Cu部品電極やAu部品電極を有した電子部品とがはんだ付けによって接合され実装体を形成している。その実装体の模式的な断面図を図9に示す。
実装体900は、Cu基板電極931、932を有する電子回路基板930と、Cu基板電極931にAu部品電極921を有する電子部品920、Cu基板電極932にCu部品電極941を有する電子部品940と、Sn−Ag−Bi−Inの組成を持ったはんだ材料を利用して形成されたはんだ部911および912によって構成されている。
ここで用いられる電子回路基板930と電子部品920、940のはんだ付けには、四種類の元素からなるSn−Ag−Bi−Inの組成を持ったはんだ材料などが利用されている。(たとえば、特許文献1参照)。このようなはんだ材料では、温度変化にともなう熱応力に起因して発生する疲労破壊に関する熱疲労特性が、固溶強化メカニズムと呼ばれる技術によって高められている。ここに、固溶強化メカニズムとは、格子状に並んでいる金属原子の一部を異種の金属原子に置き替えてそのような格子を歪ませることによりはんだ材料を劣化しにくくする技術である。
前述されたSn−Ag−Bi−Inの組成を持ったはんだ材料では、InがSnの格子に固溶させられており、熱疲労特性が高められ、具体的にはSn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6mass%Inなどの組成のはんだ材料が利用されている。ここに、AgおよびBiが添加されているが、Agは析出強化による合金強度の向上および低融点化のために添加されており、Biは低融点化のために添加されている。
特許第3040929号公報
しかしながら、Au部品電極921に対するはんだ付けの場合において、Sn−Ag−Bi−Inの組成を持ったはんだ材料は必ずしも十分に高い熱疲労特性を有しないことが判明した。一方、Cu部品電極941に対するはんだ付けの場合においては、熱疲労特性が高い状態で保たれていた。
本発明者らは、その理由をつぎのように分析している。すなわち、Sn−Ag−Bi−Inの組成を持ったはんだ材料では、熱疲労特性がIn含有率によって変化する。ここでの熱疲労特性は、温度サイクル試験が−40℃/150℃の試験条件(車載商品の信頼性試験条件)で実施された後に、はんだ付け接合部の断面観察でクラックの発生が確認されないサイクル数で示す。たとえば、はんだ付け後におけるはんだ材料の組成が、Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6mass%InとSn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−5.5mass%Inとを比較すると、温度サイクル試験のサイクル数は2300サイクルと2150サイクルとなり、Inの減少に伴いサイクル数(熱疲労特性)も減少する。
熱疲労特性に関連する合金強度は、In含有率が増大すると増大していくが、In含有率がおよそ6mass%であるときに最大となり、In含有率がこれを超えると減少していく。つまり、In含有率がおよそ6mass%であるときに、温度サイクル試験のサイクル数が高くなることから熱疲労特性が最も高い。よって、Inによる固溶強化メカニズムを有効に活用するためには、はんだ材料のIn含有率をより正確にコントロールすることが望ましい。
以下に詳細に説明する。まず、Cu部品電極とSn−Ag−Bi−Inの組成を持ったはんだ材料との組み合わせでは、CuとInとは反応性が高くないので、熱疲労特性の向上に寄与するSnの格子に固溶させられているInについてのIn含有率ははんだ付けの際に変化しないため、熱疲労特性が高い状態で保たれる。
一方、Au部品電極は、膜厚1〜5μmを持ったNiめっきがCu電極の上に施され、更に、膜厚0.03〜0.07μmを持ったAuフラッシュめっきがNiめっきの上に施された構造を有し、Auが加熱をともなうはんだ付けの際にSn−Ag−Bi−Inの中に溶け込み、Niめっきが露出する。そして、Niめっきは90mass%Niおよび10mass%Pの組成を持っており、InとPとは反応性が高いので、InはPと反応してIn−Pの組成を持った化合物InPを生成する。すると、熱疲労特性の向上に寄与する、Snの格子に固溶させられているInが減少し、実質的なIn含有率は減少する。
ここで、はんだ付け後のIn含有率が減少するAu部品電極の熱疲労特性を高めるために、はんだ付け前のSn−Ag−Bi−Inのはんだ材料のIn含有率を増加させた場合には、Au部品電極の熱疲労特性は高まる。しかしながら、1つの電子回路基板に実装される電子部品のはんだ付けに対して、作業性を考慮して同じはんだ材料を使用した場合、電子部品のCu部品電極では、はんだ付け前のはんだ材料のIn含有率からInの増加分によっては、逆に熱疲労特性が減少する。このように、単にAu部品電極のはんだ付け後のIn減少を防止するために、はんだ付け前のはんだ材料のIn含有率を増加させたとしても、逆にCu部品電極の熱疲労特性が減少することから、Inの添加以外の手段を検討することが必要となった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電子回路基板に実装されるAu部品電極を有した電子部品とのはんだ付け後の実装体においても、Au部品電極の熱疲労特性を満たすことが可能なはんだ材料および実装体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1の本発明は、Pを含むNiめっきを有するAu部品電極のはんだ付けに利用されるはんだ材料であって、5.6〜6.8mass%のInと、0.3〜4.0mass%のAgと、0〜1.0mass%のBiと、0.035〜0.7mass%のCoを含み、残部は、87.5mass%以上のSnのみであることを特徴とする、はんだ材料である。
第2の本発明は、Au部品電極を有する電子部品と、基板電極を有する電子回路基板とが、第1の発明のはんだ材料によって接合されていることを特徴とする、実装体である。
上記第1の発明の構成により、はんだ付け後の電子回路基板に実装されるAu部品電極の熱疲労特性を満たすことが可能なはんだ材料を提供することができる。
また、上記第2の発明の構成により、はんだ付け後の電子回路基板に実装されるAu部品電極が熱疲労特性を満たした実装体を提供することができる。
本発明における実施の形態1のはんだ材料を説明するための、Inが添加されたSn−3.5mass%Ag−0.5mass%Biの組成を持った合金の信頼性試験結果を示すグラフ 試料として準備したAu電極の構成を示す模式的な構成図 試料として準備したCu電極やAu電極とSn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成を持った合金との接合後におけるIn含有率を測定する概略説明図 本発明における実施の形態1のはんだ材料を説明するための、Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成を持った合金を利用して、Cu電極およびAu電極に対するはんだ付けが行われた後の、それぞれのはんだ内部におけるIn含有率の分析結果を示すグラフ 本発明における実施の形態1のはんだ材料を説明するための、90mass%Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成に対してCoが添加された合金を利用して、Au電極に対するはんだ付けが行われた後の、はんだ内部におけるIn含有率の分析結果を示すグラフ 本発明における実施の形態1のはんだ材料を説明するための、90mass%Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成に対してCoが添加された合金の固相線および液相線を示すグラフ 本発明における実施の形態の実装体の模式的な断面図 はんだ接合前後の基板電極とはんだ材料と部品電極との組成を示す模式的な構成図 従来のはんだ材料を使用した実装体の模式的な断面図
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
はじめに、図1を参照しながら、本実施の形態1のはんだ材料に関する原理について説明する。
なお、図1は、本発明における実施の形態1のはんだ材料を説明するための、Inが添加されたSn−3.5mass%Ag−0.5mass%Biの組成を持った合金の信頼性試験結果を示すグラフである。
図1において、横軸のIn含有率は、はんだ付け後にはんだに固溶している、より具体的には、Snの格子に固溶させられている実質的なIn含有率である。
縦軸の試験サイクル数は、1608サイズ(1.6mm×0.8mm)のチップコンデンサが実装された、FRグレード(Flame Retardant Grade)がFR−5グレードであるFR5基板において、温度サイクル試験が−40℃/150℃の試験条件で実施された後に、はんだ付け接合部の断面観察でクラックの発生が確認されなかったサイクル数である。
自動車のエンジン近傍に搭載する車載商品の信頼性試験においては、2000サイクル以上のサイクル数が要求仕様において求められる。(ここでは、2000サイクル以上のサイクル数の場合を熱疲労特性が満たされていることとする。)。
同サイクル数は、はんだ付け後にはんだに固溶しているIn含有率が5.5mass%(2150サイクル)、6.0mass%(2300サイクル)および6.5mass%(2200サイクル)である場合は2000サイクル以上であるが、In含有率が5.0mass%以下または7.0mass%以上である場合は2000サイクル未満である。
近似曲線が、上記の数値データを用いることによって得られる二次関数
(数1)
(試験サイクル数)
=−410.7×(In含有率)2+4919.6×(In含有率)−12446
のグラフとして図示されている。
したがって、車載基準である2000サイクル以上のサイクル数を確保することができるIn含有率の範囲はおよそ5.2〜6.8mass%であり、管理幅はおよそ±0.8mass%である。
そして、大量生産におけるはんだ合金のIn含有率の変動幅はおよそ±0.5mass%であるので、In含有率は4.7(=5.2−0.5)mass%以上7.3(=6.8+0.5)mass%以下でも良いが、5.7(=5.2+0.5)mass%以上6.3(=6.8−0.5)mass%以下であることがより望ましい。
つぎに、図2〜図4を主として参照しながら、Niめっきに含まれるPの影響について説明する。
ここで使用するAu電極およびCu電極は、測定用に準備された試料を用いる。
図2は、試料として準備したAu電極の構成を示す模式的な構成図であり、図3は試料として準備したCu電極やAu電極とSn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成を持った合金との接合後におけるIn含有率を測定する概略説明図である。
試料として準備したAu電極は、Cu電極が膜厚35μmを持ったCu箔であり、膜厚1〜5μmを持ったNiめっきが電気めっきのように通電を要しない無電解めっきとしてCu電極の上に施され、膜厚0.03〜0.07μmを持ったAuフラッシュめっきがNiめっきの上に施された構造を有している。
たとえば、Niめっきの膜厚は3μmであり、Auフラッシュめっきの膜厚は0.05μmである。
Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成を持ったはんだ材料は、直径5mmおよび厚さ0.15mmの形状でこれらCu電極およびAu電極の上にそれぞれ供給され、240℃のホットプレートの上で30秒間加熱され、室温で徐冷される。
このようにして作成された試料は縦断面が出現するように研磨された断面の中央部が、EDX(Energy Dispersive X−ray spectroscopy)を利用する方法で分析され、In含有率が測定される。
ここに、中央部とは、はんだの厚さの1/2の位置であって、はんだのぬれ広がり幅の1/2の位置に対応する部分である。
図4は、Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成を持った合金を利用して、Cu電極およびAu電極に対するはんだ付けが行われた後の、それぞれのはんだ内部におけるIn含有率の分析結果を示すグラフである。
測定された、熱疲労特性の向上に寄与するSnの格子に固溶させられているInについての実質的なIn含有率は、当初のIn含有率である6.0mass%から減少しており、Cu電極については5.9mass%であり、Au電極についてはより小さい5.1mass%である。
Au電極については、Auが加熱の際にはんだ内部へ拡散し、Auフラッシュめっきの下に形成されている90mass%Niおよび10mass%Pの組成を持ったNiめっきが露出する。
そして前述のように、InはPと反応して化合物InPを生成するので、Snの格子に固溶させられているInが減少し、Au電極の場合の実質的なIn含有率はCu電極の場合と比較してより大きく減少してしまう。
このため、車載基準に対応したIn含有率の範囲は前述されたようにおよそ5.2〜6.8mass%であるので、上記のAu電極は車載基準を満足しない。
なお、Niめっきの比重は7.9g/cm3であるので、Niめっきに含まれるPの重量は、Niめっきの膜厚TおよびNiめっきの面積Sを利用して、7.9×T×S×0.1により算出することができ、Niめっきに含まれるPの重量はNiめっきの膜厚Tに比例して変動する。
このような現象を踏まえて、本発明者等は、Pに対してInよりも容易に反応しやすい元素の添加がIn含有率の減少を抑制するために有効であることを見出した。
数多くの元素の中からそのような元素として見出された元素が、以下で説明される、Pと反応してCo2P、CoPなどの化合物を生成する、Co(コバルト)である。
ここで、図5および6を参照しながら、本実施の形態であるはんだ材料について具体的に説明する。
なお、図5は、本発明における実施の形態1のはんだ材料を説明するための、90mass%Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成に対してCoが添加された合金を利用して、Au電極に対するはんだ付けが行われた後の、はんだ内部におけるIn含有率の分析結果を示すグラフである。
また、図6は、本発明における実施の形態1のはんだ材料を説明するための、90mass%Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成に対してCoが添加された合金の固相線601および液相線602を示すグラフである。
まず、図5を主として参照しながら、Co含有率の下限について説明する。
ここでは、分析が前述された方法と同様な方法で行われ、Au電極とのはんだ付けが行われた後のIn含有率の測定が行われる。
同試料は、つぎのようにして作成される。
89.9gのSnが、セラミック製のるつぼ内に投入され、温度が500℃に調整されている電気式ジャケットヒータの中に静置される。
6.0gのInはSnが溶融したことが確認された後に投入され、3分間の撹拌が行われる。
0.5gのBiが投入され、3分間の撹拌がさらに行われる。
3.5gのAgが投入され、3分間の撹拌がさらに行われる。
0.1gのCoが投入され、3分間の撹拌がさらに行われる。
その後、るつぼは電気式ジャケットヒータから取り出されて25℃の水が満たされた容器に浸漬され、冷却が行われる。
In含有率は、(1)Co含有率がゼロである場合は5.1mass%であるが、(2)Co含有率が増大すると、Inの減少が抑制されるので、増大していき、(3)Co含有率が0.2mass%である場合は5.59mass%となり、そして(4)Co含有率が0.4mass%になるとほぼ6.02mass%になる。引き続き(5)Co含有率が0.5mass%、0.6mass%、0.7mass%、0.8mass%としても、In含有率にほとんど変化は見られない。
Co含有率が0mass%から0.4mass%であるときの数値を用いて近似直線を描くと、一次関数
(数2)
(In含有率)
=2.29×(Co含有率)+5.122
のグラフが得られる。
したがって、車載基準をAu電極との組み合わせにおいても満足するために必要な5.2mass%以上のIn含有率を確保するためには、Co含有率が0.035mass%以上であることが望ましい。Co含有率が0.035mass%以上であれば、Au電極との組み合わせにおいても、はんだ付け後のIn含有率が5.2mass%以上となり、車載基準の信頼性を満たすことができる。
ただし、大量生産におけるはんだ合金のIn含有率の変動幅はおよそ±0.5mass%であるので、In含有率がそのために少し減少する場合がある。
このような場合においては、近似直線は、(数2)のグラフが大量生産における変動幅の下限である−0.5mass%に相当する下方移動を受けた一次関数
(数3)
(In含有率)
=2.29×(Co含有率)+4.622
のグラフ(一点鎖線で図示されている)となり、In含有率はCo含有率が0.035mass%である場合は4.7mass%である。
したがって、大量生産における変動幅の下限が考慮されると、5.2mass%以上のIn含有率を確保するためには、Co含有率が少し余裕をもって0.26mass%以上(この数値は、(5.2−4.622)/2.29=0.252≒0.26により算出)であることがより望ましい。
以上においては90mass%Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成を持った合金が利用される場合について説明したが、Inの含有率とCoの含有率とは一定の比率で変わるので、In含有率が異なる場合もそれに応じて取り扱うことができる。
つぎに、図6を主として参照しながら、Co含有率の上限について説明する。
すなわち、Co含有率が大きすぎると、液相線温度が上昇するので、溶融性が低下してぬれ広がり性が悪くなりやすい。
より具体的に説明すると、固相線601によって表される固相線温度は210〜220℃の範囲にあって安定しているが、液相線602によって表される液相線温度は、Co含有率が0.7mass%を超えると上昇し、Co含有率が0.9mass%である場合は320℃であり、Co含有率が1.6mass%である場合は500℃である。
ここに、固相線温度は固体の状態から加熱された合金が溶け始める温度であり、液相線温度は固体の状態から加熱された合金がすべて溶け終わる温度である。
表1はCo含有率とぬれ広がりとの関係をCo含有率が0.1mass%、0.2mass%、・・・、1.6mass%である場合について説明しており、ぬれ広がりについての評価が行われている(その他の表についても同様であるが、数値データに付随する単位はmass%である)。
ここでは、Niめっきの膜厚が下限に接近してPの含有量は最小であり、ぬれ広がり性はこの観点からは良好でないと想定されており、Niめっきの膜厚が1μmであるように作成された試料について、ぬれ広がり率の測定がJIS Z 3197「はんだ付け用フラックス試験方法」において規定されている広がり試験方法で行われる。
Figure 2014046319
ぬれ広がりの評価に関しては、○はぬれ広がり率が90%以上であることを示しており、△はぬれ広がり率が85%以上で90%未満であることを示しており、×はぬれ広がり率が85%未満であることを示している。
したがって、良好なはんだ付けにとって重要な90%以上のぬれ広がり率を保証するためには、Co含有率が0.7mass%以下であることが望ましい。
表2は、はんだ付け前のはんだ材料の各種組成と、はんだ付け後におけるはんだ材料のIn含有率変化との関係を組成1〜4および比較例について説明しており、信頼性が判定されている。
Figure 2014046319
In含有率変化についての残量は、Au電極に対するはんだ付けが行われた後の、はんだ内部におけるIn含有率の分析を、EDXを利用して行うことにより測定される。
In含有率変化についての判定に関しては、○ははんだ付けが行われた後のIn含有率が5.2〜6.8mass%の範囲に含まれていることを示しており、×はIn含有率が5.2mass%未満の範囲であることを示している。
信頼性判定に関しては、車載商品の信頼性試験においての温度サイクル試験のサイクル数を2000サイクル以上の要求仕様を満たしていることを基準として、○は基準が満足されることを示しており、×は基準が満足されないことを示している。
組成1〜4の信頼性判定から、Sn−Ag−Bi−Inの組成を持ったはんだ材料にCoが含有されることにより、In含有率の減少が抑制されたことがわかる。
比較例においては、In含有率の減少を抑制するために有効な元素の添加が行われていないので、はんだ付け後のIn含有率が5.1mass%(In含有率変化は−0.9mass%)であったことからそれについての判定は×である。
次に表3は、Biを含有していないはんだ材料の各種組成とIn含有率変化との関係を組成5〜8について説明しており、信頼性が判定されている。各種判定に関しては、前述の表2と同様である。
Figure 2014046319
この表3の組成5〜8においては、信頼性判定の結果が全て基準を満足しているから、はんだ材料にBiが含有されていなくとも、In含有率の変化に影響を与えないことがわかる。
はんだ材料のBiは、合金の溶融温度を調整するために加えられており、はんだ材料の熱疲労特性にBi量は影響を与えない。
表2、表3の組成1〜8に信頼性判定の結果から、Au電極に対するはんだ付けにおいても車載商品の信頼性評価を満足するためには、Co含有率が0.035mass%以上0.7mass%以下であることが望ましく、大量生産における変動幅の下限が考慮されると、Co含有率が少し余裕をもって0.26mass%以上0.7mass%以下であることがより望ましい。
また、実施の形態におけるはんだ材料を構成するAgの含有率は、以下の理由により決定している。前述にも説明しているが、熱疲労特性は、Snに対するInの固溶強化作用により向上されているため、In量によって熱疲労特性は大きく変化する。しかしながらAgはSnに固溶しないため熱疲労特性は大きく変化しない。
また、Ag量は、はんだ材料の融点に影響を与えることから、Agの含有率が4mass%を超えると融点が235℃以上になり、はんだ付け時のぬれ広がりが悪くなるため使用できない。よって、Ag含有率の最大値は4mass%とした。また、Agの含有率が小さくなると、Ag3SnのSn相への析出量が少なくなり、機械的強度の特性が低下するため、Ag含有率の最小値は0.3mass%とした。
次に、実施の形態におけるはんだ材料を構成するBiの含有率は、以下の理由により決定している。最小値は、表3で説明したように、はんだ材料の熱疲労特性に影響を与えないことからゼロも可能である。またBiははんだ合金内部で偏析する性質を持つことから1mass%を超えると偏析量が多くなり、合金が脆くなるために使用できない。よってBi含有率の最大値は1mass%とした。
以上からAgとBiははんだ材料の熱疲労特性に影響を与えないため、Sn−Ag−Bi−InでのIn含有率の効果は、Sn−Ag−InやSn−Bi−Inでも同様に扱うことができると考える。
なお、はんだ材料の組成については、図5、図6において「Co(例えば0.1mass%)が添加された90mass%Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%Inの組成」と表記しているが、これを表2、表3におけるはんだ材料の組成表記に置き換えると、「89.9mass%Sn−3.5mass%Ag−0.5mass%Bi−6.0mass%In−0.1mass%Co」となり、Coの添加によりSnの含有量を減少させている。Inの含有率の変化にSnの微量の増減は影響を与えないと考えている。
以上の説明から明らかであるように、本発明のはんだ材料は、Pを含むNiめっきを有するAu部品電極のはんだ付けに利用されるはんだ材料であって、5.6〜6.8mass%のInと、0.3〜4.0mass%のAgと、0〜1.0mass%のBiと、0.035〜0.7mass%のCoを含み、残部は、87.5mass%以上のSnのみであることを特徴とする。
本発明の実装体は、Au部品電極を有する電子部品と、基板電極を有する電子回路基板とが、前述のはんだ材料によって接合されていることを特徴とし、はんだ付け後の電子回路基板に実装されるAu部品電極の熱疲労特性を満たすことが可能な実装体を提供することができる。
また、含まれているCoの量は、Niめっきが含むPの量に応じた量であることが望ましい。
また、Cu電極とSn−Ag−Bi−In−Coの組成を持ったはんだ材料を利用して形成されたはんだ部は、CuとCoで金属間化合物を形成することがないため、熱疲労特性の影響度は小さいと考えられる。
本発明における実施の形態の実装体の模式的な断面図を図7に示す。実装体700は、Cu基板電極731、732を有する電子回路基板730と、基板電極731にAu部品電極721を有する電子部品720、基板電極732にCu部品電極741を有する電子部品740と、Sn−Ag−Bi−In−Coの組成を持ったはんだ材料を利用して形成されたはんだ部711および712によって接合されている。このような構成の実装体700は、車載商品の信頼性試験の要求仕様を満たしたものである。
また、基板電極731および732がAu電極であっても良い。
また、Au部品電極721とSn−Ag−Bi−In−Coの組成を持ったはんだ材料を利用して形成されたはんだ部711と基板電極731とのはんだ付け前後の模式的な構成図を図8に示す。図8の左側に示した図がはんだ付け前の構成を示し、矢印の先にある右側の図がはんだ付け後を示す。Pを含むNiめっきを有するAu部品電極は、はんだ付け後にはんだ部に小さな丸印で示したCoPの化合物が生成されている。このCoPの化合物が生成されることにより、はんだ材料中のIn含有率の低下を防ぐことに役立つ。
また今回は、Sn−Ag−Bi−Inの組成を持ったはんだ材料にCoを添加したが、このCoに代わってMo(モリブデン)やGa(ガリウム)を用いても、はんだ材料中のIn含有率の低下を防ぐことに役立つ。
本発明におけるはんだ材料および実装体は、Au部品電極に対するはんだ付けにおいても熱疲労特性を満たすことが可能であり、たとえば、電子回路基板のはんだ付けに用いるソルダーペースト等に利用するために有用である。
601 固相線
602 液相線
700 実装体
711、712 はんだ部
720、740 電子部品
721 Au部品電極
730 電子回路基板
731、732 Cu基板電極
741 Cu部品電極

Claims (2)

  1. Pを含むNiめっきを有するAu部品電極のはんだ付けに利用されるはんだ材料であって、
    5.6〜6.8mass%のInと、
    0.3〜4.0mass%のAgと、
    0〜1.0mass%のBiと、
    0.035〜0.7mass%のCoを含み、
    残部は、87.5mass%以上のSnのみであることを特徴とする、はんだ材料。
  2. Au部品電極を有する電子部品と、基板電極を有する電子回路基板とが、請求項1に記載のはんだ材料によって接合されていることを特徴とする、実装体。
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