本発明の下引き層は、下記式(C1)で示される構造、または下記式(C2)で示される構造を有する層(硬化層)であることを特徴とする。
本発明の下引き層を有する電子写真感光体がポジゴーストの低減を高いレベルで達成する効果を有する理由について、本発明者らは、以下のように推測している。
本発明の電子写真感光体は、下引き層が、メラミン化合物またはグアナミン化合物が、電子輸送物質および樹脂にそれぞれ結合してなる式(C1)または式(C2)で示される構造を有している。
式(C1)または(C2)で示される構造は、電子吸引性を示すトリアジン環とA1で示される電子輸送性部位が結合していることによって相互作用し、電子輸送性の要因と考えられる伝導準位が形成されると考えられる。この伝導準位を均一化することにより、電子がトラップされにくくなり、残留電荷が低減されると考えられる。
しかしながら、このような複数の成分を有する下引き層では、同一の構造を有する材料成分同士が凝集しやすい場合がある。本発明の下引き層は、電子輸送性部位と結合しているトリアジン環が、樹脂の分子鎖(式(i)で示される基)に結合していることにより、下引き層中での同一成分の凝集による偏在を抑制して、均一な伝導準位が形成される。これにより、電子がトラップされにくくなり、長期間の繰り返し使用時に残留電荷が低減され、ポジゴーストの発生が抑制されると考えられる。また、式(C1)または(C2)で示される構造を有する硬化物が形成されているので、電子輸送物質の溶出が抑制され、より高い水準のゴースト低減効果が得られると考えている。
本発明の電子写真感光体は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、および該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体である。感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層であることが好ましい。さらに、電子写真特性の観点から、積層型感光層は、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層であることが好ましい。
図4の(a)および(b)は、本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。図4の(a)および(b)中、101は支持体であり、102は下引き層であり、103は感光層であり、104は電荷発生層、105は電荷輸送層である。
一般的な電子写真感光体として、円筒状支持体上に感光層(電荷発生層、電荷輸送層)を形成してなる円筒状の電子写真感光体が広く用いられるが、ベルト状、シート状などの形状とすることも可能である。
〔下引き層〕
支持体または後述する導電層と、感光層との間に下引層が設けられる。下引き層には、下記式(C1)で示される構造、または下記式(C2)で示される構造を有する。換言すれば、下引き層は、下記式(C1)で示される構造、または下記式(C2)で示される構造を有する硬化物(重合体)を含有する。
式(C1)中、R11〜R16およびR22〜R25は、それぞれ独立に、水素原子、メチレン基、−CH2OR2で示される1価の基、下記式(i)で示される基、または下記式(ii)で示される基を示す。R11〜R16の少なくとも1つ、R22〜R25の少なくとも1つは、下記式(i)で示される基であり、R11〜R16の少なくとも1つ、R22〜R25の少なくとも1つは、下記式(ii)で示される基である。R2は、水素原子または炭素数が1〜10のアルキル基を示す。R21は、アルキル基、フェニル基、またはアルキル置換フェニル基を示す。
式(i)中、R61は、水素原子またはアルキル基を示す。Y1は、単結合、アルキレン基またはフェニレン基を示す。D1は、下記式(D1)〜(D4)のいずれかで示される2価の基を示す。アルキル基は、メチル基、エチル基が好ましく、アルキレン基は、メチレン基が好ましい。*は、上記式(C1)のN、または上記式(C2)のNに結合する側を表す。
式(ii)中、D2は、前記式(D1)〜(D4)のいずれかで示される2価の基を示す。αは、主鎖の原子数が1〜6のアルキレン基、炭素数が1〜6のアルキル基で置換された主鎖の原子数が1〜6のアルキレン基、ベンジル基で置換された主鎖の原子数1〜6のアルキレン基、アルコキシカルボニル基で置換された主鎖の原子数1〜6のアルキレン基、またはフェニル基で置換された主鎖の原子数が1〜6のアルキレン基を示す。アルキレン基の主鎖中の炭素原子の1つは、O、S、NHまたはNR1で置き換わっていてもよい。R1は、炭素数が1〜6のアルキル基である。βは、フェニレン基、炭素数が1〜6のアルキル置換フェニレン基、ニトロ置換フェニレン基、またはハロゲン置換フェニレン基を示す。γは、主鎖の原子数が1〜6のアルキレン基、または炭素数が1〜6のアルキル基で置換された主鎖の原子数が1〜6のアルキレン基を示す。l、mおよびnは、それぞれ0または1である。A1は、下記式(A1)〜(A9)のいずれかで示される2価の基である。*は、上記式(C1)のN、または上記式(C2)のNに結合する側を表す。
式(A1)から(A9)中、R101〜R106の2つ、R201〜R210の2つ、R301〜R308の2つ、R401〜R408の2つ、R501〜R510の2つ、R601〜R606の2つ、R701〜R708の2つ、R801〜R810の2つ、およびR901〜R908の2つは、単結合を示す。その他のR101〜R106、R201〜R210、R301〜R308、R401〜R408、R501〜R510、R601〜R606、R701〜R708、R801〜R810、およびR901〜R908は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換の複素環基を示す。該置換のアルキル基の置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、カルボニル基である。該置換のアリール基または該置換の複素環基の置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシ基、カルボニル基である。Z201、Z301、Z401、Z501は、それぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、または酸素原子を示す。Z201が酸素原子である場合はR209およびR210は存在せず、Z201が窒素原子である場合はR210は存在しない。Z301が酸素原子である場合はR307およびR308は存在せず、Z301が窒素原子である場合はR308は存在しない。Z401が酸素原子である場合はR407およびR408は存在せず、Z401が窒素原子である場合はR408は存在しない。Z501が酸素原子である場合はR509およびR510は存在せず、Z501が窒素原子である場合はR510は存在しない。
式(C1)で示される構造は、メラミン化合物に由来する部位を有し、式(C2)で示される構造は、グアナミン化合物に由来する部位を有する。メラミン化合物に由来する部位、またはグアナミン化合物に由来する部位は、式(i)で示される基、および式(ii)で示される基と結合している。式(i)で示される基は、樹脂に由来する部位である。式(ii)で示される基は、式(ii)中の(A1)〜(A9)のいずれかで示される電子輸送性部位である。
式(C1)で示される構造、式(C2)で示される構造は、式(i)で示される基、および式(ii)で示される基のそれぞれが少なくとも1つずつ結合する。式(i)で示される基または式(ii)で示される基と結合していない残りの基は、水素原子、メチレン基、または−CH2OR2で示される1価の基(R2は水素原子または炭素数が1〜10のアルキル基を示す)を示す。なお、メチレン基である場合は、メチレン基を介して、メラミン構造またはグアナミン構造に結合してもよい。
式(ii)中のA1以外の主鎖の原子数が12以下であると、トリアジン環と電子輸送性部位までの距離が適度であるため、相互作用によるスムーズな電子輸送性が発揮され、よりポジゴーストが低減されるため好ましい。さらに好ましくは、2以上9以下である。
式(ii)中、βが、フェニレン基であることが好ましい。また、αは、炭素数が1〜4のアルキル基で置換された主鎖の原子数が1から5のアルキレン基、または主鎖の原子数が1から5のアルキレン基であることが好ましい。
下引き層は、上記式(C1)で示される構造、上記式(C2)で示される構造を下引き層の全質量に対して、30質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。
下引き層中の上記式(C1)または(C2)で示される構造の含有量は、一般的な分析手法で解析可能である。以下に、分析手法の例を示す。上記式(C1)または(C2)で示される構造の含有量は、FT−IRを用い、KBr−tab法を用いる。KBr紛に対してメラミン添加量を変化させたサンプルでトリアジン環由来の吸収に基づいた検量線を作成することで、下引き層中の式(C1)または(C2)で示される構造の含有量を算出することができる。
さらに、式(C1)または(C2)で示される構造は、下引き層に対して、固体13C−NMR測定、質量分析測定、熱分解GC−MS分析によるMSスペクトル測定、赤外分光分析による特性吸収測定などの測定方法により確認することができる。たとえば、固体13C−NMR測定は、Chemagnetics社製CMX−300Infiniyを用い、観測核13C、基準物質ポリジメチルシロキサン、積算回数8192回、パルス系列CP/MAS、DD/MAS、パルス幅2.1μsec(DD/MAS)、4.2μsec(CP/MAS)、コンタクトタイム2.0msec、試料回転数10kHzの条件で測定した。
質量分析は質量分析計(MALDI−TOF MS:ブルカー・ダルトニクス(株)製 ultraflex)を用い、加速電圧:20kV、モード:Reflector、分子量標準品:フラーレンC60の条件で、分子量を測定した。得られたピークトップ値で確認した。
樹脂の分子量は、東ソー(株)製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー「HLC−8120」で測定し、ポリスチレン換算で計算した。
下引き層は、上記式(C1)または(C2)で示される構造以外にも、成膜性や電子写真特性を高めるために、有機粒子、無機粒子、金属酸化物粒子、レベリング剤、硬化促進の為の触媒などを含有してもよい。ただし、それらの含有量は、下引き層の全質量に対して50質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましい。また、下引き層の膜厚は0.1μm以上5.0μm以下が好ましい。
以下に、上記式(C1)または(C2)で示される構造の具体例を示すが、本発明は、これらに限定されない。また、各具体例において、式(ii)中、電子輸送性部位であるA1以外の主鎖の原子数を示す。下記の表1〜表27中、結合部位は破線で示す。単結合である場合は「単」と示す。また、式(i)で示される基、および式(ii)で示される基の左右の向きと表1〜表27の各構造の左右の向きは同じである。
上記式(C1)で示される構造、または上記式(C2)で示される構造を有する下引き層は、次のようにして形成する。すなわち、メラミン化合物またはグアナミン化合物、これらの化合物と反応可能な重合性官能基を有する樹脂、およびこれらの化合物と反応可能な重合性官能基を有する電子輸送物質とを含有する下引き層用塗布液を調製する。この下引き層用塗布液を塗布して、塗膜を形成し、得られた塗膜を熱硬化することで得られる。
〔メラミン化合物、グアナミン化合物〕
メラミン化合物、グアナミン化合物について説明する。メラミン化合物またはグアナミン化合物は、例えばメラミンまたはグアナミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法で合成される。
以下に、メラミン化合物、グアナミン化合物の具体例を示す。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、単量体のオリゴマー(多量体)を含有していても良い。ポジゴーストの抑制の観点から、前記単量体が、単量体と多量体とを合計した全質量に対して10質量%以上含有していることが、好ましい。前記多量体の重合度は2以上100以下であることが好ましい。また、前記多量体および単量体は、2種以上混合して用いる事ができる。メラミン化合物の一般的に購入可能なものとしては、例えば、スーパーメラミNo.90(日本油脂社製)、スーパーベッカミン(R)TD−139−60、L−105−60、L127−60、L110−60、J−820−60、G−821−60(DIC社製)、ユーバン2020(三井化学)、スミテックスレジンM−3(住友化学工業)、ニカラックMW−30、MW−390、MX−750LM(日本カーバイド社製)、などが挙げられる。グアナミン化合物の一般的に購入可能なものをしては、例えば、スーパーベッカミン(R)L−148−55、13−535、L−145−60、TD−126(DIC社製)、ニカラックBL−60、BX−4000(日本カーバイド社製)、などが挙げられる。
以下に、メラミン化合物の具体例を示す。
以下に、グアナミン化合物の具体例を示す。
上記メラミン化合物またはグアナミン化合物と反応可能な重合性官能基を有する電子輸送物質について説明する。電子輸送物質は、式(ii)中のA1で示される構造に由来する。電子輸送物質は、式(A1)〜(A9)のいずれかで示される電子輸送性部位を1つ有する単量体(モノマー)でもよいし、この電子輸送性構造を複数有するオリゴマーでもよい。オリゴマーの場合は、電子トラップを抑制する観点から、重量平均分子量(Mw)5000以下が好ましい。
次に電子輸送物質の例を以下に挙げる。上記式(A1)で示される構造を有する化合物の具体例を示す。
以下に上記式(A2)で示される構造を有する化合物の具体例を示す。
上記式(A3)で示される構造を有する化合物の具体例を示す。
上記式(A4)で示される構造を有する化合物の具体例を示す。
上記式(A5)で示される構造を有する化合物の具体例を示す。
上記式(A6)で示される化合物の具体例を示す。
上記式(A7)で示される化合物の具体例を示す。
上記式(A8)で示される化合物の具体例を示す。
上記式(A9)で示される化合物の具体例を示す。
(A1)の構造を有する誘導体(電子輸送物質の誘導体)は、例えば、米国特許第4442193号公報、米国特許第4992349号公報、米国特許第5468583号公報、Chemistry of materials,Vol.19,No.11,2703−2705(2007)に記載の公知の合成方法を用いて合成することが可能である。また、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)、またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能なナフタレンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体との反応で合成する事が出来る。
(A1)で示される化合物には、メラミン化合物またはグアナミン化合物と硬化(重合)することが可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基およびメトキシ基)を有する。(A1)の構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、直接重合性官能基を導入する方法、前記重合性官能基または、重合性官能基の前駆体と成り得る官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えばナフチルイミド誘導体のハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。ナフチルイミド誘導体のハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。ナフチルイミド誘導体のハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などが挙げられる。ナフチルイミド誘導体を合成する際の原料として、前記重合性官能基または、重合性官能基の前駆体と成り得る官能基を有するナフタレンテトラカルボン酸二無水物誘導体又はモノアミン誘導体を用いる方法がある。
(A2)の構造を有する誘導体は、例えば、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。また、フェナントレン誘導体またはフェナントロリン誘導体を基に、Chem.Educator No.6,227−234(2001)、有機合成化学協会誌,vol.15,29−32(1957)、有機合成化学協会誌,vol.15,32−34(1957)に記載の合成方法で合成することもできる。マロノニトリルとの反応によりジシアノメチレン基を導入することもできる。
(A2)で示される化合物は、メラミン化合物またはグアナミン化合物と重合することが可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基およびメトキシ基)を有する。(A2)の構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、直接重合性官能基を導入する方法、重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えば、フェナントレンキノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。フェナントレンキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法る方法。フェナントレンキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などが挙げられる。
(A3)の構造を有する誘導体は、例えば、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。また、フェナントレン誘導体またはフェナントロリン誘導体を基に、Bull.Chem.Soc.Jpn.,Vol.65,1006−1011(1992)に記載の合成方法で合成することもできる。マロノニトリルとの反応によりジシアノメチレン基を導入することもできる。
(A3)で示される化合物は、メラミン化合物またはグアナミン化合物と重合することが可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基およびメトキシ基)を有する。(A3)の構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、直接重合性官能基を導入する方法、重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えば、フェナントロリンキノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。フェナントロリンキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。フェナントロリンキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。
(A4)の構造を有する誘導体は、例えば、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。また、アセナフテンキノン誘導体を基にTetrahedron Letters,43(16),2991−2994(2002)、Tetrahedron Letters,44(10),2087−2091(2003)に記載の合成方法で合成することもできる。マロノニトリルとの反応により、ジシアノメチレン基を導入することもできる。
(A4)で示される化合物は、メラミン化合物またはグアナミン化合物と重合可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基およびメトキシ基)を有する。(A4)の構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、直接重合性官能基を導入する方法、重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えば、アセナフテンキノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。アセナフテンキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法る方法。アセナフテンキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などが挙げられる。
(A5)の構造を有する誘導体は、例えば、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。また、フルオレノン誘導体とマロノニトリルを用い、米国特許第4562132号公報に記載の合成方法を用いて合成することができる。また、フルオレノン誘導体およびアニリン誘導体を用い、特開平5−279582号公報、特開平7−70038号公報に記載の合成方法を用いて合成することもできる。
(A5)で示される化合物は、メラミン化合物またはグアナミン化合物と重合可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基およびメトキシ基)を有する。(A5)の構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、直接重合性官能基を導入する方法、重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えば、フルオレノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。フルオレノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。フルオレノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などが挙げられる。
(A6)の構造を有する誘導体は、例えばChemistry Letters,37(3),360−361(2008)、特開平9−151157号公報に記載の合成方法を用いて合成することが出来る。また、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。
(A6)で示される化合物は、メラミン化合物またはグアナミン化合物と重合することが可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基およびメトキシ基)を有する。(A6)の構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、ナフトキノン誘導体に重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。この方法は、例えば、ナフトキノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。ナフトキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法る方法。ナフトキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などが挙げられる。
(A7)の構造を有する誘導体は、特開平1−206349号公報、PPCI/Japan Hard Copy’98 予稿集p.207(1998)に記載の合成方法を用いて合成することができる。また、東京化成工業(株)またはシグマアルドリッチジャパン(株)から購入可能なフェノール誘導体を原料として合成することができる。
(A7)で示される化合物は、メラミン化合物またはグアナミン化合物と重合することが可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基およびメトキシ基)を有する。(A7)の構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。この方法としては、例えば、ジフェノキノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。ジフェノキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法る方法。ジフェノキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などが挙げられる。
(A8)の構造を有する誘導体は、例えば、Journal of the American chemical society,Vol.129,No.49,15259−78(2007)に記載の公知の合成方法を用いて合成することができる。また、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能なペリレンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体との反応で合成する事が出来る。
(A8)で示される化合物は、メラミン化合物またはグアナミン化合物と重合可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基およびメトキシ基)を有する。(A8)の構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、直接重合性官能基を導入する方法、重合性官能基または重合性官能基の前駆体と成り得る官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えば、ペリレンイミド誘導体のハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用いる方法、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用いる方法がある。ペリレンイミド誘導体を合成する際の原料として、前記重合性官能基または重合性官能基の前駆体と成り得る官能基を有するペリレンテトラカルボン酸二無水物誘導体又はモノアミン誘導体を用いる方法がある。
(A9)の構造を有する誘導体は、例えば、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)またはジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。
(A9)で示される化合物は、メラミン化合物またはグアナミン化合物と重合可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基およびメトキシ基)を有する。(A9)の構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、購入可能なアントラキノン誘導体に重合性官能基もしくは重合性官能基の前駆体となる官能基を有する構造を導入する方法がある。この方法としては、例えば、アントラキノンのハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法。アントラキノンのハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法。アントラキノンのハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などが挙げられる。
〔樹脂〕
メラミン化合物またはグアナミン化合物と反応可能な重合性官能基を有する樹脂について説明する。上述の樹脂は、式(i)中に示される基を有する。この樹脂は、例えばシグマアルドリッチジャパン(株)や東京化成工業(株)から購入可能な、重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基およびメトキシ基)を有するモノマーを重合する事で得られる。
また、樹脂として、一般的に購入することも可能である。購入可能な樹脂としては、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製AQD−457、AQD−473、三洋化成工業(株)製サンニックスGP−400、GP−700などのポリエーテルポリオール系樹脂、日立化成工業(株)製フタルキッドW2343、DIC(株)製ウォーターゾールS−118、CD−520、ベッコライトM−6402−50、M−6201−40IM、ハリマ化成(株)製ハリディップWH−1188、日本ユピカ社製ES3604、ES6538などのポリエステルポリオール系樹脂、DIC(株)製、バーノックWE−300、WE−304などのポリアクリルポリオール系樹脂、(株)クラレ製クラレポバールPVA−203などのようなポリビニルアルコール系樹脂、積水化学工業(株)製BX−1、BM−1、KS−1、KS−5などのポリビニルアセタール系樹脂、ナガセケムテックス株式会社製トレジンFS−350などのポリアミド系樹脂、日本触媒(株)製アクアリック、鉛市(株)製ファインレックスSG2000などのカルボキシル基含有樹脂、DIC(株)製 ラッカマイドなどのポリアミン樹脂、東レ(株)製QE−340Mなどのポリチオール樹脂などが挙げられる。これらの中でもポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂などが重合性、下引き層の均一性の観点からより好ましい。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000〜400000の範囲であることが好ましい。より好ましくは、5000〜300000の範囲である。
樹脂中の官能基の定量法は、以下のような方法が挙げられる。例えば水酸化カリウムを用いたカルボキシル基の滴定、亜硝酸ナトリウムを用いたアミノ基の滴定、無水酢酸と水酸化カリウムを用いた水酸基の滴定、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)を用いたチオール基の滴定などの方法。または、官能基導入比率を変化させた試料のIRスペクトルから得られる検量線法が挙げられる。
続いて、以下に、樹脂の具体例を示す。
メラミン化合物、グアナミン化合物が有する官能基と、樹脂および上記電子輸送物質の重合性官能基を合計した官能基との比は、1:0.5〜1:3.0が、反応する官能基の割合が高くなるため好ましい。
下引き層用塗布液を調製するための溶媒としては、例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の有機溶剤を用いることができる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
下引き層の硬化性の確認は以下のように行った。メラミン化合物またはグアナミン化合物、樹脂、および電子輸送物質を含有する下引き層用塗布液の塗膜をアルミシート上にマイヤーバーを用いて形成し、この塗膜を160℃40分加熱乾燥させ、下引き層を形成した。得られた下引き層を、シクロヘキサノン/酢酸エチル=1/1の混合溶剤に2分間浸漬し、160℃5分で乾燥させた。浸漬前後の下引き層の重量を確認した。実施例においては、浸漬することで下引き層の成分の溶出が無いこと(重量差±2%以内)を確認した。
〔支持体〕
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)であることが好ましく、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄などの金属または合金製の支持体を用いることができる。ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ガラスなどの絶縁性支持体上にアルミニウム、銀、金などの金属の薄膜を形成した支持体、または酸化インジウム、酸化スズなどの導電性材料の薄膜を形成した支持体が挙げられる。
支持体の表面には、電気的特性の改善や干渉縞の抑制のため、陽極酸化などの電気化学的な処理や、湿式ホーニング処理、ブラスト処理、切削処理などの処理を施してもよい。
支持体と、後述の下引き層との間には、導電層を設けてもよい。導電層は、導電性粒子を樹脂に分散させた導電層用塗布液の塗膜を支持体上に形成し、乾燥させることで得られる。導電性粒子としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラックや、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀のような金属粉や、導電性酸化スズ、ITOのような金属酸化物粉体が挙げられる。
また、樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂およびアルキッド樹脂が挙げられる。
導電層用塗布液の溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤および芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。導電層の膜厚は、0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、さらには5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
〔感光層〕
下引き層上には、感光層が設けられる。
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、アントラキノン誘導体、アントアントロン誘導体、ジベンズピレンキノン誘導体、ピラントロン誘導体、ビオラントロン誘導体、イソビオラントロン誘導体、インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン顔料や、ビスベンズイミダゾール誘導体などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、またはフタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましい。
感光層が積層型感光層である場合、電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどのビニル化合物の重合体および共重合体や、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、ポリビニルアセタールがより好ましい。
電荷発生層において、電荷発生物質と結着樹脂との比率(電荷発生物質/結着樹脂)は、10/1〜1/10の範囲であることが好ましく、5/1〜1/5の範囲であることがより好ましい。電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
電荷発生層の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましい。
正孔輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物、トリフェニルアミンなどが挙げられる。また、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマーも挙げられる。
感光層が積層型感光層である場合、電荷輸送層(正孔輸送層)に用いられる結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。また、これらの重量平均分子量(Mw)は、10,000〜300,000の範囲であることが好ましい。
電荷輸送層において、電荷輸送物質と結着樹脂との比率(電荷輸送物質/結着樹脂)は、10/5〜5/10の範囲であることが好ましく、10/8〜6/10の範囲であることがより好ましい。電荷輸送層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましい。電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
なお、支持体と上記下引き層との間や上記下引き層と感光層との間に、本発明に係る重合体を含有しない第2の下引き層などの別の層を設けてもよい。
また、感光層(電荷輸送層)上には、導電性粒子または電荷輸送物質と結着樹脂とを含有する保護層(表面保護層)を設けてもよい。保護層には、潤滑剤などの添加剤をさらに含有させてもよい。また、保護層の結着樹脂自体に導電性や電荷輸送性を有させてもよく、その場合、保護層には、当該樹脂以外の導電性粒子や電荷輸送物質を含有させなくてもよい。また、保護層の結着樹脂は、熱可塑性樹脂でもよいし、熱、光、放射線(電子線など)などにより重合させてなる硬化性樹脂であってもよい。
電子写真感光体を構成する各層を形成する方法としては、各層を構成する材料を溶剤に溶解および/または分散させて得られた塗布液を塗布する。そして、得られた塗膜を乾燥および/または硬化させることによって形成する方法が好ましい。塗布液を塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法などが挙げられる。これらの中でも、効率性および生産性の観点から、浸漬塗布法が好ましい。
〔プロセスカートリッジおよび電子写真装置〕
図1に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面(周面)は、帯電手段3(一次帯電手段:帯電ローラーなど)により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、次いで現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。次いで、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上記の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などから、複数のものを選択して、容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成する。そして、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。まず、本発明に係る電子輸送物質の合成例を示す。
(合成例1)
ジメチルアセトアミド200部に、窒素雰囲気下で、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(東京化成工業(株)製)5.4部および2−メチル−6−エチルアニリン(東京化成工業(株)製)4部、2−アミノ−1−ブタノール3部を加え、室温で1時間撹拌し、溶液を調製した。溶液を調製後、8時間還流を行い、析出物を濾別し、酢酸エチルで再結晶を行い、化合物A1−8を1.0部得た。
(合成例2)
ジメチルアセトアミド200部に、窒素雰囲気下で、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.4部および2−アミノ酪酸(東京化成工業(株))5部を加え、室温で1時間撹拌し、溶液を調製した。溶液を調製後、8時間還流を行い、析出物を濾別し、酢酸エチルで再結晶を行い、化合物A1−42を4.6部得た。
(合成例3)
ジメチルアセトアミド200部に、窒素雰囲気下で、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.4部および2,6−ジエチルアニリン(東京化成工業(株))4.5部、4−アミノベンゼンチオール4部を加え、室温で1時間撹拌し、溶液を調製した。溶液を調製後、8時間還流を行い、析出物を濾別し、酢酸エチルで再結晶を行い、化合物A1−39を1.3部得た。
(合成例4)
トルエン100部およびエタノール50部の混合溶媒へ、4−(ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸(アルドリッチ社製)2.8部およびフェナントレンキノン(シグマアルドリッチジャパン(株)社製)から窒素雰囲気下でChem. Educator No.6,227−234(2001)に記載の合成方法で合成した3,6−ジブロモ−9,10−フェナントレンジオン7.4部を加え、20%炭酸ナトリウム水溶液100部を滴下した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を0.55部添加した後、2時間還流させた。反応後有機相をクロロホルムで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥を行った。溶媒を減圧下で除去した後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製を行い、化合物A2−24を3.2部得た。
(合成例5)
3−アミノフェニルボロン酸1水和物2.8部およびフェナントロリンキノン(シグマアルドリッチジャパン(株)社製)を窒素雰囲気下で、合成例4と同様に2,7−ジブロモ−9,10−フェナントロリンキノン7.4部を合成した。トルエン100部およびエタノール50部の混合溶媒に、2,7−ジブロモ−9,10−フェナントロリンキノン7.4部を加え、20%炭酸ナトリウム水溶液100部を滴下した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を0.55部添加した後、2時間還流させた。反応後、有機相をクロロホルムで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥を行った。溶媒を減圧下で除去した後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製を行い、化合物A3―18を2.2部得た。
(合成例6)
ジメチルアセトアミド200部に、窒素雰囲気下で、ペリレンテトラカルボン酸二無水物(東京化成工業(株)製)7.4部および2,6ジエチルアニリン(東京化成工業(株)製)4部、2−アミノフェニルエタノール4部を加え、室温で1時間撹拌し、溶液を調製した。溶液を調製後、8時間還流を行い、析出物を濾別し、酢酸エチルで再結晶を行い、化合物A8−3を5.0部得た。
(合成例7)
ジメチルアセトアミド200部に、窒素雰囲気下で、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.4部およびロイシノール(東京化成工業(株)製)5.2部を加え、室温で1時間撹拌後、7時間還流を行った。ジメチルアセトアミドを減圧蒸留で除いた後、酢酸エチルで再結晶を行い、化合物A1−54を5.0部得た。
(合成例8)
ジメチルアセトアミド200部に、窒素雰囲気下で、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.4部およびロイシノール2.6部、2−(2−アミノエチルチオ)エタノール(和光純薬工業(株)製)2.7部を加え、室温で1時間撹拌後、7時間還流を行った。得られた黒褐色溶液からジメチルアセトアミドを減圧蒸留で除いた後、酢酸エチル/トルエン混合溶液に溶解した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒酢酸エチル/トルエン)で分離後、目的物を含有するフラクションを濃縮し、得られた結晶をトルエン/ヘキサン混合溶液で再結晶を行い、化合物A1−55を2.5部得た。 次に、電子写真感光体の作製および評価について示す。
(実施例1)
長さ260.5mmおよび直径30mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
次に、酸素欠損型酸化スズが被覆されている酸化チタン粒子(粉体抵抗率:120Ω・cm、酸化スズの被覆率:40%。)50部、フェノール樹脂(プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60%。)40部、溶剤(分散媒)としてのメトキシプロパノール50部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、3時間分散処理することによって、導電層用塗布液(分散液)を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が28μmの導電層を形成した。
この導電層用塗布液における酸素欠損型酸化スズが被覆されている酸化チタン粒子の平均粒径を、(株)堀場製作所製の粒度分布計(商品名:CAPA700)を用い、テトラヒドロフランを分散媒とし、回転数5000rpmにて遠心沈降法で測定した。その結果、平均粒径は0.31μmであった。
次に、化合物(A1−8)5部、メラミン化合物(C1−3)3.5部、樹脂(B1)3.4部、触媒としてのドデシルベンゼンスルホン酸0.1部を、ジメチルアセトアミド100部とメチルエチルケトン100部の混合溶媒に溶解し、下引き層用塗布液を調製した。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で加熱し、硬化(重合)させることによって、膜厚が0.5μmの下引き層を形成した。また、固体13C−NMR測定、質量分析測定、熱分解GC−MS分析によるMSスペクトル測定、赤外分光分析による特性吸収測定で確認された構造を表29に示す。
次に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する。)10部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部およびシクロヘキサノン250部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、1.5時間分散処理した。次に、これに酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
電荷発生層用塗布液を、下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.18μmの電荷発生層を形成した。
次に、ポリアリレート樹脂(下記式(16−1)で示される繰り返し構造単位と、下記式(16−2)で示される繰り返し構造単位を5/5の割合で有し、重量平均分子量(Mw)が100000である。)10部、下記構造式(15)で示されるアミン化合物(正孔輸送物質)8部をジメトキシメタン40部およびo−キシレン60部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が15μmの電荷(正孔)輸送層を形成した。
このようにして、支持体上に導電層、下引き層、電荷発生層および電荷輸送層を有する電子写真感光体を製造した。
(評価)
製造した電子写真感光体を、23℃、50%RHの環境下にて、キヤノン(株)製のレーザービームプリンター(商品名:LBP−2510)の改造機(一次帯電:ローラー接触DC帯電、プロセススピード120mm/秒、レーザー露光)に装着して、出力画像の評価を行った。詳しくは以下のとおりである。
(ポジゴースト評価)
上記レーザービームプリンターのシアン色用のプロセスカートリッジを改造し、現像位置に電位プローブ(model6000B−8:トレック・ジャパン(株)製)を装着した。そして、電子写真感光体の中央部の電位を表面電位計(model344:トレック・ジャパン(株)製)を使用して測定した。また、暗部電位(Vd)が−500V、明部電位(Vl)が−150Vになるよう、画像露光の光量を設定した。
続いて、上記レーザービームプリンターのシアン色用のプロセスカートリッジに、製造した電子写真感光体を装着して、そのプロセスカートリッジをシアンのプロセスカートリッジのステーションに装着し、画像を出力した。
まず、ベタ白画像1枚、ゴースト評価用画像5枚、ベタ黒画像1枚、ゴースト評価用画像5枚の順に連続して画像出力を行った。
次に、A4サイズの普通紙で、5,000枚のフルカラー画像(各色印字率1%の文字画像)の出力を行い、その後、ベタ白画像1枚、ゴースト評価用画像5枚、ベタ黒画像1枚、ゴースト評価用画像5枚の順に連続して画像出力を行った。
ゴースト評価用画像は、図2に示すように、画像の先頭部に「白画像」中に四角の「ベタ画像」を出した後、図3に示す「1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像」を作成したものである。なお、図2中、「ゴースト」部は、「ベタ画像」に起因するゴーストが出現し得る部分である。
ポジゴーストの評価は、1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像の画像濃度と、ゴースト部(の画像濃度との濃度差を測定することで行った。分光濃度計(商品名:X−Rite504/508、X−Rite(株)製)で、1枚のゴースト評価用画像中で濃度差を10点測定した。この操作をゴースト評価用画像10枚すべてで行い、合計100点の平均を算出し、初期画像出力時のマクベス濃度差(初期)を評価した。次に、5,000枚の出力後のマクベス濃度差と初期画像出力時のマクベス濃度差の差(変化分)を算出して、マクベス濃度差の変動分を求めた。マクベス濃度差が小さいほど、ポジゴーストが抑制されたことを意味する。そして5,000枚の出力後のマクベス濃度差と初期画像出力時のマクベス濃度差との差が小さい程、ポジゴーストの変動変化が小さい事を意味する。結果を表29に示す。
(実施例2〜115)
実施例1において、電子輸送物質、樹脂(樹脂B)、メラミン化合物、グアナミン化合物の種類と含有量を表29〜表31に示すように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、同様にポジゴーストの評価を行った。結果を表29〜表31に示す。
(実施例116)
実施例1において、導電層用塗布液、下引き層用塗布液および電荷輸送層用塗布液の調整を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、同様にポジゴーストの評価を行った。結果を表31に示す。
導電層用塗布液の調整を以下のように変更した。金属酸化物粒子としての酸素欠損型酸化スズ(SnO2)が被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子214部、結着樹脂としてのフェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325)132部、および、溶剤としての1−メトキシ−2−プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。
ガラスビーズを除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して10質量%になるように、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、平均粒径2μm。)を分散液に添加した。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製。)を分散液に添加して撹拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
次に、下引き層用塗布液の調製を以下のように変更した。化合物(A1−54)5部、メラミン化合物(C1−3)3.5部、樹脂(B25)3.4部、ドデシルベンゼンスルホン酸(触媒)0.1部を、ジメチルアセトアミド100部とメチルエチルケトン100部の混合溶媒に溶解し、下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で加熱し、硬化(重合)させることによって、膜厚が0.5μmの下引き層を形成した。また、固体13C−NMR測定、質量分析測定、熱分解GC−MS分析によるMSスペクトル測定、赤外分光分析による特性吸収測定で確認された構造を表31に示す。
次に電荷輸送層用塗布液の調製を以下のように変更した。樹脂として、ポリエステル樹脂F(下記式(24)で示される繰り返し構造単位、下記式(26)で示される繰り返し構造単位と下記式(25)で示される繰り返し構造単位を7:3の比で有する。重量平均分子量90,000)3部、ポリエステル樹脂H(下記式(27)で示される繰り返し構造単位と下記式(28)で示される繰り返し構造単位を5:5の比で含有する。重量平均分子量120,000)7部、式(15)で示される電荷輸送物質9部、および下記式(18)で示される電荷輸送物質1部を、ジメトキシメタン30部およびo−キシレン50部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。なお、ポリエステル樹脂Fにおける、下記式(24)で示される繰り返し構造単位の含有量が10質量%であり、下記式(25)、式(26)で示される繰り返し構造単位の含有量が90質量%であった。
この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを1時間120℃で乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層を形成した。形成された電荷輸送層には電荷輸送物質とポリエステル樹脂Hを含むマトリックス中にポリエステル樹脂Fを含むドメイン構造が含有されていることが確認された。
(実施例117)
実施例116において、電荷輸送層用塗布液の調製を以下のように変更した以外は、実施例116と同様に電子写真感光体を製造し、同様にポジゴーストの評価を行った。結果を表31に示す。
電荷輸送層用塗布液の調整を以下のように変更した。樹脂としてポリカーボネート樹脂I(下記式(29)で示される繰り返し構造を有する。重量平均分子量70,000)10部、ポリカーボネート樹脂J(下記式(29)で示される繰り返し構造単位、下記式(30)で示される繰り返し構造単位および、末端の少なくともいずれか一方に下記式(31)で示される構造を有する。重量平均分子量40,000)0.3部、式(15)で示される電荷輸送物質9部、および式(18)で示される電荷輸送物質1部を、ジメトキシメタン30部およびオルトキシレン50部混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。なお、ポリカーボネート樹脂Jにおける、下記式(30)、(31)で示される繰り返し構造単位の合計質量が30質量%であった。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを1時間120℃で乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層を形成した。
(実施例118)
実施例117の電荷輸送層用塗布液の調製において、ポリカーボネート樹脂I(重量平均分子量70,000)10部の代わりに、ポリエステル樹脂H(重量平均分子量120,000)10部とした。それ以外は実施例117と同様に電子写真感光体を製造し、同様にポジゴーストの評価を行った。結果を表31に示す。
(実施例119〜121)
実施例116〜118において、導電層用塗布液の調製を以下のように変更した以外は、実施例116〜118と同様に電子写真感光体を製造し、同様にポジゴーストの評価を行った。結果を表31に示す。
金属酸化物粒子としてのリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO2)で被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子207部、結着樹脂としてのフェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325)144部、および、溶剤としての1−メトキシ−2−プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。
ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して15質量%になるように、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120)を分散液に添加した。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA)を分散液に添加し、撹拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
(実施例122,123)
実施例116において、電子輸送物質の種類と含有量を表31に示すように変更した以外は、実施例116と同様に電子写真感光体を製造し、同様にポジゴーストの評価を行った。結果を表31に示す。
(比較例1〜5)
実施例1において、樹脂を含有せず、電子輸送物質、メラミン化合物、グアナミン化合物の種類と含有量を表32に示すように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、同様にポジゴーストの評価を行った。結果を表32に示す。
(比較例6〜10)
電子輸送物質として下記式(Y−1)で示される化合物に変更し、メラミン化合物、グアナミン化合物と樹脂の種類と含有量を表32に示すように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、同様にポジゴーストの評価を行った。結果を表32に示す。
(比較例11)
実施例1において、下記構造式で示されるブロック共重合体(特表2009−505156号公報に記載の共重合体)、ブロックイソシアネート化合物および塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を用いて下引き層を形成した。それ以外は実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。マクベス濃度の初期は0.048、マクベス濃度の変化分は0.065だった。
実施例と比較例1〜5の比較から、本発明に比べて、特開2003−330209号公報および特開2008−299344号公報に記載された構成では、繰り返し使用時のポジゴーストの変動の低減に十分な効果が得られない場合があることがわかる。これは、樹脂が存在しない為、トリアジン環や、電子輸送物質の下引き層中の偏在を引き起こし、繰り返し使用により電子が滞留し易くなっていると思われる。また、実施例と比較例11との比較により、特表2009−505156号公報に記載された構成でも、繰り返し使用時のポジゴーストの変動の低減に十分に高い効果は得られない場合があることがわかる。実施例と比較例6〜10との比較により、樹脂と電子輸送物質とが結合せず、溶剤に溶解後、分散した状態では、初期のポジゴーストおよび繰り返し使用時のポジゴーストの変動の低減に十分な効果が得られないことが分かる。これは、トリアジン環との結合によるポジゴースト低減効果が得られないためと思われる。下引き層上に電荷発生層を形成する際に、電子輸送物質が上層(電荷発生層)に移行したため、下引き層中の電子輸送物質が減少し、上層に電子輸送物質が混入することで電子の滞留が生じているためであると思われる。