以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の硬貨処理装置1を示し、この硬貨処理装置1は、例えば、自動販売機や両替機等の硬貨を扱う機器に搭載され、受け入れた硬貨の真偽および金種を識別して収容し、また、収容した硬貨を釣銭として払い出す装置である。本実施形態では、硬貨処理装置1を自動販売機に搭載した場合を例にとって説明するものとする。
硬貨処理装置1は、投入された硬貨の真偽を識別して金種毎に選別する硬貨選別部2と、選別された硬貨を金種毎に区別して収納しておく硬貨収納部3と、硬貨収納部3に収納した硬貨を選択して釣銭として支払う硬貨払出し部4とを備えている。
硬貨収納部3は、硬貨処理装置本体1Aの所定のセット位置1S(図4参照)に着脱可能に搭載される硬貨収納装置としてのカセット式コインチューブ31を有している。このカセット式コインチューブ31は、図2に示すように、釣銭として払い出す硬貨を金種別に積層して収納する5本の硬貨収納筒としてのコインチューブ32a〜32eを備えている。
カセット式コインチューブ31の5本のコインチューブ32a〜32eは、図2中奥側から手前側に向かって順に、10円サブチューブ32a、50円メインチューブ32b、10円メインチューブ32c、100円メインチューブ32dおよび500円メインチューブ32eとなっている。また、図2は、カセット式コインチューブ3の裏側を示しており、この裏側には5本のチューブ32a〜32eの側面を開放して硬貨を出し入れする蓋33が、ヒンジ33a、33bによって開閉自在に取り付けられている。
そして、カセット式コインチューブ3から各チューブ32a〜32eに収納された硬貨を回収するには、カセット式コインチューブ3を硬貨処理装置1から取り外した後、蓋33を開いて硬貨を回収する。また、販売を継続するために、必要な枚数の硬貨を各チューブ32a〜32eに残しておくようになっており、この残す硬貨の枚数は、それぞれの自動販売機の管理に従うことになる。
また、硬貨処理装置1には、カセット式コインチューブ31がセット位置1Sに装着された状態と、セット位置1Sから離脱された状態とを検知する着脱検知手段としてのセットスイッチSW(図3参照)が備わっている。
また、カセット式コインチューブ31内の硬貨が釣銭として十分な枚数であるか否かは、硬貨処理装置本体1A側にあって、各コインチューブ32a〜32eに対応するように設けられた図外のエンプティセンサと満杯検知センサの2つのセンサで判断される。
エンプティセンサは、近接センサであり、釣銭枚数の初期値を設定可能であり、このエンプティセンサからの信号によって、釣銭として払い出し可能な最低保証枚数が更新される。
また、満杯検知センサは、積層された硬貨に当接するレバーと、そのレバーに連動するインタラプタスイッチで構成される。そして、硬貨処理装置1が受け入れて金種別に振り分けた硬貨を該当するコインチューブ32a〜32eに収納するときに、上記インタラプタスイッチによって上記該当するコインチューブが収納可能か否かを判断することができる。
尚、満杯検知センサでコインチューブ32a〜32bが満杯であることを検知した後で受け入れた硬貨は、硬貨処理装置1の外部に備えられた図外の金庫へと導かれる。また、エンプティセンサが検知可能な枚数以上で満杯検知センサが検知する枚数以下の枚数が収納されている場合には、硬貨処理装置1の主制御部が、受け入れた枚数と払出した枚数から算出した値(以下、ソフトカウンタ値という。)を収納枚数として管理することになる。
ところで、カセット式コインチューブ31には、10円メインチューブ32c以外に10円サブチューブ32aが設けられているが、この10円サブチューブ32aのようなサブチューブは、多用されるチューブ(本実施形態では10円メインチューブ32c)の補助の役目を果たす。サブチューブは、その他の各メインチューブ32a〜32dと違って硬貨の自動補充ができないようになっており、また、サブチューブは、上述したエンプティセンサ及び満杯検知センサを対応させないことが一般的である。
次に、上述したカセット式コインチューブ31を備えた硬貨処理装置1の釣銭切れとなるまでの釣銭払出しの概略を説明すると次のようになる。この場合、釣銭として多用する硬貨(本実施形態の場合10円)についての払出しであり、メインチューブとサブチューブを有し、サブチューブにはエンプティセンサが設けられていない場合を説明する。
釣銭を払い出す場合、まず、自動販売機の主制御部から釣銭払出し命令が出され、硬貨処理装置1は釣銭を払い出す。このとき、まずメインチューブから払出し、メインチューブのエンプティセンサにて硬貨が所定枚数以下になったことを検知した後、継続される払出しはサブチューブからの払出しに切り替わる。そして、サブチューブの硬貨が無くなったら、更に継続される払出しは、再度メインチューブからの払出しに切り替わる。そして、硬貨処理装置1は釣銭として払出し可能な最低保証枚数を自動販売機の主制御部に送信する。その後、自動販売機の主制御部からの指示により硬貨処理装置1は硬貨の受け入れを禁止する。
エンプティセンサは、上述したように近接センサであり、釣銭切れとなったメインチューブにはエンプティセンサが検知できない枚数の硬貨が残っている。また、釣銭払出しを、まずメインチューブから行うのは、なるべくメインチューブに硬貨を自動補充して、受け入れた硬貨の多くを有効利用するためである。
また、硬貨処理装置1の周辺機器には釣銭補助機250(図10参照)がある。これは、上述したサブチューブの機能を有するものである。この釣銭補助機250を硬貨処理装置と併用する場合の釣銭払出しにあっても、前述したように釣銭切れとなるまでの払出しはサブチューブと同じ制御となる。ただし、釣銭補助機250は硬貨処理装置1とは別の装置であり、この釣銭補助機250は収納硬貨枚数が硬貨処理装置1よりも格段に多くなる。従って、釣銭補助機250から先に釣銭を払い出すように制御することも可能であり、また、メインチューブ32a〜32dが釣銭切れになってから釣銭補助機250から払い出すように制御することも可能である。
ところで、硬貨処理装置1は、前述したようにセットスイッチSWによってカセット式コインチューブ31の装着および離脱が検知されるが、硬貨処理装置1の稼働中に電源がOFFとなった場合は、その検知ができなくなる。
そのため、電源OFF状態で、カセット式コインチューブ31が、硬貨処理装置1のセット位置1Sに最初に装着された状態と、そのセット位置1Sから離脱された後に再装着された状態とを判断する必要がある。
そこで、本実施形態では、図3、図4に示すように、電源がOFF状態で動作するセット状態判断手段としての機械式の判断機構100を設けてある。この判断機構100は、電源がOFF状態で、カセット式コインチューブ31が、セット位置1Sに最初に装着された状態と、そのセット位置1Sから離脱された後に再装着された状態を判断できるようになっている。この場合、少なくとも、後者の離脱された後に再装着された状態を判断できれば足りる。
即ち、判断機構100は、図3、図4に示すように、セット位置1Sと硬貨処理装置1の内部とを隔成する内側板11(この内側板11は硬貨処理装置本体1Aに含まれる)のセット位置1Sとは反対側に設置される。尚、図3は、硬貨処理装置1の内部からカセット式コインチューブ31のセット位置1Sを見る方向で示してあり、同図では内側板11に設けた窓部12に、カセット式コインチューブ31の背面の一部が臨んでいる。
判断機構100は、カセット式コインチューブ31から突出する突出部110と、内側板11(硬貨処理装置本体1A)に対して移動可能な作動竿120と、作動竿120に取り付いて突出部110と係脱可能な係合部材130と、を備えて構成される。
突出部110は、カセット式コインチューブ31の背面から所定長さをもって突設されており、カセット式コインチューブ31をセット位置1Sに装着した際に、内側板11の貫通口13から作動竿120に向かって所定量突出するようになっている。
作動竿120は、貫通穴13から突出した突出部110の先端近傍を通るようにして上下方向に延在され、かつ、内側板11の面方向に沿って上下移動可能となっている。図4に示すように、作動竿120は、それの下部が上下摺動部121となり、かつ、その上下摺動部121の上方が係合部材130を取り付ける付部122となっている。
上下摺動部121および取付部122は、回転方向の変位を防止するためにそれぞれが断面矩形状に形成される。このとき、上下摺動部121は、内側板11とは反対側の外側面に低段部121aを設けて、取付部122の外側面よりも一段下がって形成されている。
また、内側板11には、作動竿120の上下摺動部121に対応した部位に、所定間隔をもって上下一対の座部140、141が突設され、かつ、これら座部140、141間に位置して、上下摺動部121を抱持するスナップ142が設けられている。そして、作動竿120の上下摺動部121の内側板11に面した内側面を座部140、141に当接しながら、上下摺動部121の外側面をスナップ142で抱持することにより、作動竿120が上下移動自在に内側板11に保持される。
係合部材130の取付部122は、図4に示すように、内側板11に対向する内側面に、係合部材130を摺動自在に嵌合する所定深さの凹部123が設けられている。そして、この凹部123に係合部材130を嵌合することにより、係合部材130は、内側板11に対向する方向の移動が許容されながら上下方向の移動が阻止されるようになっている。
係合部材130は、上下方向の断面形状が略コ字状をなしている取付部122によって抱持されており、凹部123の深さの範囲内で係合部材130の移動が許容されるようになっている。また、係合部材130の内側板11に対向する側壁の内側にガイド突起131が突設され、かつ、取付部122の凹部123の底部には、ガイド突起131を摺動自在に挿入するガイド孔124が設けられている。そして、係合部材130が凹部123に嵌合される際に、ガイド突起131がガイド孔124に挿入され、これらガイド突起131とガイド孔124によって係合部材130が移動案内される。
更に、係合部材130と凹部123の底部との間には、図7に示すように、ガイド突起131を囲繞するように圧縮コイルばね132が縮設され、この圧縮コイルばね132の付勢力で、係合部材130は内側板11方向に常時押圧付勢される。
また、係合部材130の内側板11側の先端面には、上方に向かって内側板11から遠ざかる方向に傾斜する傾斜面133が形成されており、かつ、突出部110の先端面には、上記傾斜面133と同方向に傾斜する傾斜面111が形成されている。このとき、係合部材130の傾斜面133の水平面に対する傾斜角は、突出部110の傾斜面111の同傾斜角よりも大きくなっている。
突出部110の傾斜面111は、図3に示すように、突出部110の水平方向幅の先端中央部を凹設して形成され、その傾斜面111の形成部分では、突出部110は逆U字状の断面形状となって強度が確保されるようになっている。
そして、このように突出部110の先端中央部を凹設して傾斜面111を形成した場合にも、その傾斜面111の水平方向幅は係合部材130の水平方向幅よりも広くなっている。これにより、突出部110の先端凹設部内を、係合部材130が相対的に上下移動できるようになっている。
このように、係合部材130は、取付部122の凹部123に嵌合された状態で、ガイド突起131がガイド孔124に挿入されて作動竿120に取り付いており、この取り付き状態で係合部材130は凹部123内を出没自在となっている。
そして、カセット式コインチューブ31が硬貨処理装置本体1Aのセット位置1Sに最初に装着された状態では、図3、図4に示すように、突出部110の先端部上面に、係合部材130の先端部下面が係合して、作動竿120の下降が阻止されており、この状態が作動竿120の待機状態となる。
また、作動竿120は、図3、図4に示す待機状態で、カセット式コインチューブ31をセット位置1Sから離脱すると、このカセット式コインチューブ31に伴って突出部110が貫通口13から引き抜かれる。すると、図5に示すように、係合部材130は突出部110との係合が解除されるため、作動竿120は自由落下により下方に移動する。そして、落下(移動)する作動竿120は、図外のストッパー部材に当接した時点で停止され、このように作動竿120が下方移動して停止した状態が作動竿120の移動状態となる。
また、このように作動竿120の移動状態で、図6に示すように、カセット式コインチューブ31をセット位置1Sに再装着した場合、貫通口13から突出する突出部110の先端部は、係合部材130の下面よりも上方に位置するようになっている。従って、突出部110と係合部材130とは係合関係には無く、作動竿120は下方に移動した移動状態が維持される。
つまり、突出部110と係合部材130との係合関係は、カセット式コインチューブ31がセット位置1Sに最初に装着された状態では、突出部110と係合部材130とが互いに係合された第1の係合位置(図4参照)となる。また、カセット式コインチューブ31がセット位置1Sから離脱された後に再装着された状態では、突出部110と係合部材130とが非係合となる第2の係合位置(図6参照)となっている。
このとき、作動竿120の上部には、作動竿120の移動位置を検知する位置検知センサ150が設けられ、この位置検知センサ150によって作動竿120(判断機構100)が待機状態(図3、図4参照)にあるか、若しくは、移動状態(図5参照)にあるかを検知できるようになっている。
位置検知センサ150は、作動竿120の上端部から一旦水平方向に突出した後に上方に向かって突出するL字状突起部151と、このL字状突起部151の先端部で開閉(透過および遮断)されるインタラプタスイッチ152とによって構成される。
インタラプタスイッチ152は、作動竿120が待機状態(上昇位置)にあるとき、L字状突起部151で遮断されてOFFとなる。一方、作動竿120が移動状態(下降位置)にあるとき、インタラプタスイッチ152からL字状突起部151が外れることにより透過状態となってONとなる。
尚、位置検知センサ150は、硬貨処理装置1の電源がOFFされているときは作動せず、電源がONされることにより作動し、電源がONされた後に、インタラプタスイッチ152のON・OFF信号を自動販売機の主制御部200(図10参照)に送るようになっている。このように、インタラプタスイッチ152のON・OFF信号が自動販売機の主制御部200に送られることにより、自動販売機の管理者はそれを知ることができる。
従って、電源のOFF状態でカセット式コインチューブ31が再装着されていた場合は、作動竿120が移動状態を維持してインタラプタスイッチ152がONとなっているため、このON信号を、電源回復後に主制御部200に送ることにより、カセット式コインチューブ31が再装着されたことを判断できる。
また、本実施形態の判断機構100は、カセット式コインチューブ31の離脱により移動状態にある作動竿120を、待機状態に復帰移動させる駆動手段としてのソレノイド160が設けられる。
ソレノイド160は、円筒状の励磁コイル161と、この励磁コイル161内に摺動自在に嵌合されるプランジャ162とを備えて構成される。本実施形態では、ソレノイド160は、プランジャ160の摺動方向が上下方向となるように配置される。従って、プランジャ162は、励磁コイル161に通電して励磁することにより上方に吸引され、また、励磁コイル161が消磁することにより吸引力が無くなって下降される。
ソレノイド160は、作動竿120の上端部に設置され、プランジャ162の下端部が作動竿120の上端部に係合されて互いに連動されるようになっている。このとき、励磁コイル161は内側板11に固定されている。
従って、判断機構100の作動竿120が下降した移動状態にあるとき、ソレノイド160に通電して励磁コイル161を励磁すると、上方に吸引されるプランジャ162によって作動竿120が持ち上げられる。すると、図7〜図9の過程を経て作動竿120は移動状態から待機状態へと移行される。
即ち、図7は、カセット式コインチューブ31が再装着されて作動竿120が移動状態となった状態を示し、このときは、係合部材130が突出部110に接触していないため、係合部材130は、圧縮コイルばね132の付勢力によって最も突出した状態となっている。
図8は、作動竿120が持ち上がる途中を示し、係合部材130の傾斜面133が突出部110の先端に押し込まれながら上昇する。このため、係合部材130は、圧縮コイルばね132の付勢力に抗して凹部123内に引っ込みながら突出部110を乗り越えていく。
図9は、作動竿120が待機状態に復帰完了した状態を示し、係合部材130の傾斜面133が突出部110を完全に乗り越えることにより、係合部材130は圧縮コイルばね132の付勢力で再突出する。すると、係合部材130の先端部下面が突出部110の先端部上面に係合して、作動竿120は待機状態に復帰される。
ところで、本実施形態では、セット状態判断手段を機械式の判断機構100としたことにより、硬貨処理装置1の電源がOFFになった状態で、カセット式コインチューブ31がセット位置1Sから離脱された後に再装着された状態を判断することができる。しかし、このように電源のOFF状態でカセット式コインチューブ31の再装着を判断できるとしても、硬貨枚数情報が、カセット式コインチューブ31をセット位置1Sから離脱する前と再装着した後とで異なる虞がある。
そこで、本実施形態では、図10に示すように、カセット式コインチューブ31が最初に装着された状態で硬貨処理装置1の電源がOFFになった時に、カセット式コインチューブ31に収納された硬貨枚数情報を記憶する記憶手段としての第2の記憶部240を設けてある。この第2の記憶部240は不揮発性メモリが用いられる。
即ち、図10は、硬貨処理装置1の制御系の概略構成を示し、この硬貨処理装置1は、自動販売機の主制御部200との間で信号を遣り取りしながら制御する。つまり、硬貨処理装置1は、受け入れた硬貨の金種および枚数などの情報を自動販売機の主制御部200に送信し、その主制御部200は釣銭払出しなどの指令信号を硬貨処理装置1に送信するようになっている。
硬貨処理装置1の主制御部210は、制御部220と、第1の記憶部(RAM)230と、第2の記憶部(不揮発性メモリ)240とを備えている。尚、主制御部210を説明するにあたって、カセット式コインチューブ31をカセットチューブとして説明するものとする。
制御部220は、受け入れた硬貨の真偽を識別する硬貨識別部221と、識別後の硬貨を金種毎に振り分ける振り分け制御部222と、振り分けた硬貨を金種毎に収納したカセット式コインチューブ31から釣銭として払い出す払出し制御部223と、受け入れた硬貨枚数と払出した硬貨枚数から収納枚数を算出するエンプティ枚数カウンタ(ソフトカウンタ)224を有している。
第1の記憶部230は、釣銭として払出し可能な最低保証枚数である払出し可能枚数231と、判断機構100の判断結果から電源OFF中にカセットチューブが外されたフラグ232と、各コインチューブの払出し可能枚数を確定するための払出し可能枚数記憶バッファ233とを記憶するようになっている。
第2の記憶部240は、上述したように不揮発性メモリを用いて、電源がOFFになったときの各コインチューブの払出し可能枚数241が記憶される。
また、制御部220には、硬貨選別センサ225、受け入れ検知センサ226、満杯検知センサ227およびエンプティセンサ228からの信号が入力され、かつ、制御部220から硬貨振り分け手段229に指令信号を出力するようになっている。
更に、制御部220には、払出し硬貨検知センサ234およびカセットチューブ外れ(離脱)検知スイッチ235からの信号が入力され、かつ、制御部220から硬貨払出し手段236に指令信号を出力するようになっている。また、制御部220には、電源OFF中のカセットチューブ外れ検知スイッチ242からの信号が入力され、かつ、制御部220からカセットチューブ装着確認ソレノイド243に指令信号を出力するようになっている。
また、硬貨処理装置1には、釣銭補助機250が備わっており、この釣銭補助機250の払出し硬貨検知センサ251からの信号が制御部220に入力され、かつ、この制御部220から釣銭補助機250の硬貨払出し手段252に指令信号が出力されるようになっている。
そして、本実施形態の硬貨処理装置1の制御部220では、第2の記憶部240で硬貨枚数情報を記憶した後に電源がONになった時に、判断機構100でカセット式コインチューブ31が最初に装着された状態であると判断した場合に、第2の記憶部240が記憶した硬貨枚数情報によってカセット式コインチューブ31に収納された釣銭払出し可能枚数を決定する。また、第2の記憶部240で硬貨枚数情報を記憶した後に電源がONになった時に、判断機構100でカセット式コインチューブ31が再度装着された状態であると判断した場合に、第2の記憶部240が記憶した硬貨枚数情報をクリアするようになっている。
次に、本実施形態の硬貨処理装置1が実行する払出し可能枚数取得処理の一例を説明する。この可能枚数取得処理を実行するにあたって、まず、以下のような条件を設定する。
本例では、硬貨処理装置1は、図2に示すように、10円、50円、100円、500円の硬貨が使用可能であって、10円サブチューブ32a、50円メインチューブ32b、10円メインチューブ32c、100円メインチューブ32dおよび50円メインチューブ32eを備えるものとする。
また、エンプティセンサ(釣銭最低枚数検知センサ)は、10円メインチューブ32cと100円メインチューブ32dの2箇所に備え、他の500円メインチューブ32e、50円メインチューブ32bおよび10円サブチューブ32aには備えていないものとする。
尚、図10では釣銭補助機250が設けられているが、本例では、説明を簡素化するために釣銭補助機250が装備されていないものとする。また、待機状態として、各コインチューブ32a〜32eには、釣銭となる硬貨枚数は十分に収納されているものとする。
図11は、払出し可能枚数取得処理のフローチャートであり、このフローチャートを説明するにあたって、図中、カセット式コインチューブ31をカセットと表記するものとする。
このフローチャートでは、判断機構100の待機状態で通電されると、第2の記憶部240に記憶した払出し可能枚数情報を読み出す(ステップS1)。このとき、カセット式コインチューブ31をセット位置1Sに最初に装着した後の通電では、第2の記憶部240に記憶した払出し可能枚数241の情報が無いが、通電前に可動していた場合には、その稼働時の情報を記憶し、通電時にその記憶した情報を読み出す。
読み出した情報は、第1の記憶部230の払出し可能枚数記憶バッファ233に蓄えられ(ステップS2)、後述する各コインチューブ32a〜32eの払出し可能枚数取得処理(ステップS6〜S10)に備える。
その後、判断機構100で電源OFF中にカセット式コインチューブ31が外されたか否かを判断し(ステップS3)、YESの場合はカセット式コインチューブ31が外された結果をフラグA=1として記憶する(ステップS4)。その後、判断機構100をリセット、つまり、ソレノイド160によって作動竿120を待機状態に戻す(ステップS5)。その後、各コインチューブ32a〜32eの払出し可能枚数取得を行い(ステップS6〜S10)、釣銭払出しの準備が完了する。
次に、図12は、メインチューブの払出し可能枚数取得処理のフローチャートを示す。この場合、10円メインチューブ32cに対する処理を例にとって説明するが、他のメインチューブ32a、32b、32dにあっても同様の処理が実行される。
この図12のフローチャートは、図11のフローチャートのステップS4で判断機構100の結果を示すフラグAの有無を判断して記憶した後、ステップS5で判断機構100をリセットすると、まず、10円メインチューブ32cのエンプティセンサの硬貨検知結果を確認する(ステップS11)。
このとき、エンプティセンサON(最低硬貨枚数有り)の場合には、10円メインチューブ32cの払出し可能枚数を11枚に設定する(ステップS12)。一方、エンプティセンサOFF(最低硬貨枚数無し)の場合には、フラグAの有無を判断し(ステップS13)、フラグAが有り(フラグA=1)の場合、つまり、無通電時にカセット式コインチューブ31が離脱されたと判断すれば、10円メインチューブ32cの払出し可能枚数を0枚に設定する(ステップS14)。
そして、フラグAが無し(フラグA=0)の場合、つまり、無通電時にカセット式コインチューブ31は離脱されていないと判断すると、第2の制御部240に記憶されていた10円メインチューブ32cの払出し可能枚数(Nc)を確認する(ステップS15)。その払出し可能枚数が11枚以上であった場合(11≦Nc)にはステップS14に進んで、10円メインチューブ32cの払出し可能枚数を0枚に設定する。一方、10円メインチューブ32cの払出し可能枚数(Nc)が11枚未満であった場合(Nc<11)には、10円メインチューブ32cの払出し可能枚数をNc枚に設定する(ステップS16)。
つまり、以上説明した硬貨処理装置1では、払出し可能枚数はエンプティセンサの硬貨検知によって変わる。本実施形態ではエンプティセンサON(最低硬貨枚数有り)の場合には11枚であり、エンプティセンサOFF(最低硬貨枚数無し)の場合には0枚である。そして、硬貨が1枚ずつ払い出されることで、エンプティセンサがONからOFFに切り替わった時の払出し可能枚数は、10枚、9枚、8枚・・・・としている。
エンプティセンサがONからOFFになったら0枚としないのは、エンプティセンサOFF、すなわち釣銭切れ状態であることを自動販売機の主制御部200に送信しても、商品価格によっては釣銭を出すことができる販売が可能と判断される場合には、販売を行うことで売上げを得るためである。
払出し可能枚数を11枚とし、釣銭が払出されてエンプティセンサがOFFになったら、エンプティ枚数カウンタによってカウントされ、11枚が10枚、9枚、8枚・・・・と1枚ずつ減っていく。この11枚未満の数値の時に電源が遮断された場合には、電源遮断時の払出し可能枚数が第2の記憶部240の不揮発性メモリに記憶されるので、上述した(11≦Nc)や(Nc<11)の場合が発生することになる。
以上説明したように、無通電時にカセット式コインチューブ31が本体から離脱され、その後、再度装着された後に通電された場合にあっても、カセット式コインチューブ31が離脱したことを判断することができ、もって、釣銭不足を解消し、更に、無通電時のカセット式コインチューブ31の取扱いについて、作業者への人的管理を明確にすることができる。
また、本実施形態の硬貨処理装置1の説明で、電源OFF時に各コインチューブの払出し可能枚数を不揮発性メモリに記憶する処理を、図13のフローチャートによって説明する。
まず、電源がOFFされた場合の電圧低下を判断し(ステップS17)、電圧低下を検知した場合、各コインチューブの払出し可能枚数を不揮発性メモリに記憶し(ステップS18)、その後、電源OFF待ちとなる(ステップS19)。
一方、ステップS17で電圧低下が検知されない場合、つまり、電源がOFFされない場合は、判断機構100が待機状態にあるときの通常の処理が行われる(ステップS20)。
以上説明したように、本実施形態の硬貨処理装置1によれば、判断機構100によってカセット式コインチューブ31が、電源のOFF状態で、少なくともセット位置1Sから離脱された後に再装着された状態を判断することができる。これにより、電源がOFF状態であっても、カセット式コインチューブ31の再装着を確実に判断できるため、メンテナンス時に解除キーが不要となり、作業者は解除キーを携帯する必要が無くなる。従って、カセット式コインチューブ31がカセット式であることの有効性を損なうことなく、作業性およびメンテナンス性を向上でき、また、取扱作業者の人的管理を行い易くできる。
また、本実施形態によれば、判断機構100を、カセット式コインチューブ31から突出する突出部110と、移動可能な作動竿120と、突出部110と係脱可能な係合部材130とを備えて機械式として構成することができる。従って、判断機構100を、電気系統の故障等の外因を排除して確実に動作させることができ、電源のOFF状態で、カセット式コインチューブ31が最初に装着された状態か、離脱された後に再装着された状態かを精度良く検知することができる。
更に、本実施形態によれば、作動竿120にソレノイド160を設けて、移動状態にある作動竿120を待機状態に復帰移動させるようになっている。これにより、カセット式コインチューブ31が離脱された後に再装着された状態を作動竿120の移動状態で判断した後は、ソレノイド160によって作動竿120を待機状態に復帰させることにより、判断機構100の再利用が可能となる。
更にまた、本実施形態によれば、突出部110と係合部材130との係合関係は、カセット式コインチューブ31が最初に装着された状態では、突出部110と係合部材130とが互いに係合された第1の係合位置となる。これにより、作動竿120の移動を確実に阻止できるため、カセット式コインチューブ31が最初に装着された状態を確実に判断することができる。また、カセット式コインチューブ31が離脱された後に再装着された状態では、突出部110と係合部材130とが非係合となる第2の係合位置となる。これにより、作動竿120が移動状態となるため、カセット式コインチューブ31が離脱された後に再装着された状態を確実に判断することができる。
また、本実施形態によれば、作動竿20の駆動手段としてソレノイド160を用いたので、構造を簡素化することができる。また、セット状態判断手段でカセット式コインチューブ31の装着状態を判断した後は、電源をONしてソレノイド160を駆動することにより、作動竿120の待機状態への復帰を簡単に行うことができる。
更に、本実施形態によれば、カセット式コインチューブ31が最初に装着された状態で硬貨処理装置1の電源がOFFになった時に、カセット式コインチューブ31に収納された硬貨枚数情報を第2の記憶部240に記憶しておく。そして、第2の記憶部240で硬貨枚数情報を記憶した後に電源がONになった時に、判断機構100でカセット式コインチューブ31が最初に装着された状態であると判断した場合に、第2の記憶部240が記憶した硬貨枚数情報によって釣銭払出しが可能となる。従って、硬貨処理装置1の電源がOFFになった後でも、第2の記憶部240が記憶した硬貨枚数情報によって、カセット式コインチューブ31内の収納硬貨を釣銭として有効活用することができる。一方、第2の記憶部240で硬貨枚数情報を記憶した後に電源がONになった時に、判断機構100でカセット式コインチューブ31が再度装着された状態であると判断した場合に、第2の記憶部240が記憶した硬貨枚数情報をクリアする。これにより、稼働中に電源がOFFとなり、そのOFF状態の期間内でカセット式コインチューブを本体から外され、その後、元に戻された場合に、カセット式コインチューブ内の硬貨が紛失してしまったとしても、再度、エンプティスイッチ状態から払出し可能枚数を設定し直すことで、正確な釣銭情報を自動販売機の主制御部へ送信することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能である。例えば、本実施形態の硬貨処理装置1は、自動販売機に限ることなく両替機などの硬貨を扱う機器にあっても適用できる。