JP2014025131A - 熱間プレス鋼板部材、その製造方法と熱間プレス用鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.10〜0.34%、Si:0.5〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001〜1.0%以下およびN:0.01%以下を含む化学組成と、表面から深さ15μmまでの表層部におけるフェライトの面積率が前記表層部を除いた部位である内層部におけるフェライトの面積率の1.20倍超であり、前記内層部が、面積%で、10〜70%のフェライトと30〜90%のマルテンサイトとを含み、フェライトおよびマルテンサイトの合計面積率が90%以上である鋼組織と、引張強度が980 MPa以上である機械特性とを有する熱間プレス鋼板部材。
【選択図】 なし
Description
(1)質量%で、C:0.10%以上0.34%以下、Si:0.5%以上2.0%以下、Mn:1.0%以上3.0%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001%以上1.0%以下およびN:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成と、表面から深さ15μmまでの表層部におけるフェライトの面積率が、前記表層部を除いた部位である内層部におけるフェライトの面積率の1.20倍超であり、前記内層部が、面積%で、フェライト:10%以上70%以下、マルテンサイト:30%以上90%以下、フェライトおよびマルテンサイトの合計面積率:90%以上である鋼組織と、引張強度(TS)が980MPa以上である機械特性と、を有することを特徴とする、熱間プレス鋼板部材。
1.化学組成
本発明に係る熱間プレス鋼板部材(以下、単に「鋼板部材」ともいう。)および熱間プレス用鋼板の化学組成を上述のように規定した理由を説明する。以下の説明において、各合金元素の含有量を表す「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
Cは、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度を主に決定する、非常に重要な元素である。C含有量が0.10%未満では、焼入れ後の強度で980MPa以上の引張強度を確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.10%以上とする。一方、C含有量が0.34%超では、溶接性の劣化が顕著となる。したがって、C含有量は0.34%以下とする。なお、熱間圧延および冷間圧延時における生産性の観点からは、C含有量を0.30%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは0.25%以下である。
Siは、鋼の延性を向上させて、かつ焼入れ後の強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。Si含有量が0.5%未満では、上記作用を得ることが困難である。なお、溶接性を向上させる観点からは、Si含有量を0.7%以上とすることが好ましい。一方、Si含有量が2.0%超では、上記作用による効果は飽和して経済的に不利となるうえに、めっき濡れ性の低下が著しくなり、不めっきが多発する。したがって、Si含有量は2.0%以下とする。また、熱間プレス鋼板部材の表面欠陥を抑える観点からは、Si含有量を1.8%以下にすることが好ましい。
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度を確保するために、非常に効果のある元素である。Mn含有量が1.0%未満では、焼入れ後の強度で980MPa以上の引張強度を確保することが非常に困難となる。したがって、Mn含有量は1.0%以上とする。上記作用をより確実に得るには、Mn含有量を1.1%以上とすることが好ましい。一方、Mn含有量が3.0%超では、焼入れ後の組織が顕著なバンド状になり、曲げ性の劣化が顕著になる。したがって、Mn含有量は3.0%以下とする。なお、熱間圧延および冷間圧延時における生産性の観点からは、Mn含有量を2.5%以下とすることが好ましい。
Pは、一般には鋼に不可避的に含有される不純物であるが、固溶強化により鋼の強度を高める作用を有するので、積極的に含有させてもよい。しかし、P含有量が0.05%超では、溶接性の劣化が著しくなる。したがって、P含有量は0.05%以下とする。好ましくは0.018%以下である。上記作用をよる効果をより確実に得るには、P含有量を0.003%以上とすることが好ましい。
Sは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、溶接性の観点からは、低いほど好ましい。S含有量が0.01%超では、溶接性の低下が著しくなる。したがって、S含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.003%以下、さらに好ましくは0.0015%以下である。
Alは、鋼を脱酸して鋼材を健全化する作用を有する元素である。sol.Al含有量が0.001%未満では、上記作用を得ることが困難となる。したがって、sol.Al含有量は0.001%以上とする。好ましくは0.015%以上である。一方、sol.Al含有量が1.0%超では、溶接性の低下が著しくなるとともに、酸化物系介在物が増加し、表面性状の劣化が著しくなる。したがって、sol.Al含有量は1.0%以下とする。好ましくは0.080%以下である。
Nは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、溶接性の観点からは、低いほど好ましい。N含有量が0.01%超では、溶接性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.006%以下である。
これらの元素は、いずれも焼入れ後の強度を安定して確保するために効果のある元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、Ti、NbおよびVについては、それぞれ0.20%を超えて含有させると、熱間圧延および冷間圧延が困難になるだけでなく、逆に、強度を安定して確保することが困難になる。CrおよびMoについては、1.0%を超えて含有させると、熱間圧延および冷間圧延が困難になる。CuとNiは、それぞれ1.0%を超えて含有させても、上記作用による効果は飽和して経済的に不利となるうえに、熱間圧延や冷間圧延が困難になる。そのため、各元素の含有量はそれぞれ上記のとおりとする。上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.003%以上、Nb:0.003%以上、V:0.003%以上、Cr:0.005%以上、Mo:0.005%以上、Cu:0.005%以上およびNi:0.005%以上の少なくとも一つを満足させることが好ましい。
これらの元素は、いずれも介在物制御、特に、介在物の微細分散化に寄与し、低温靭性を高める作用を有する元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、いずれも0.01%を超えて含有させると、表面性状の劣化が顕在化する場合がある。そのため、各元素の含有量はそれぞれ上記のとおりとする。上記作用による効果をより確実に得るには、これらの元素の少なくとも一つの含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
Bは、鋼板の低温靭性を高める作用を有する元素である。したがって、Bを含有させてもよい。しかし、Bは0.01%を超えて含有させると、熱間加工性が劣化して、熱間圧延が困難になる。そのため、B含有量は0.01%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るには、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
Biは、組織を均一にし、鋼板の低温靭性を高める作用を有する元素である。したがって、Biを含有させてもよい。しかし、Biは0.01%を超えて含有させると、熱間加工性が劣化して、熱間圧延が困難になる。そのため、Bi含有量は0.01%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るには、Bi含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
本発明に係る熱間プレス鋼板部材は、その表層部および内層部の鋼組織が下記の条件を満たす。ここで、熱間プレス鋼板部材の表層部とは、表面から深さ15μmまでの表面部位を意味し、内層部とはこの表層部を除いた部位を意味する。内層部の鋼組織は、表層部を除いた鋼板の厚み方向の全体についての平均をとるが、簡便には、厚み方向において平均的な鋼組織を示す、表面から鋼板厚みの1/4の深さの地点での鋼組織を採用することができる。本発明では、この1/4深さ位置で測定したフェライト面積率およびマルテンサイト面積率をそれぞれ内層部のフェライト面積率およびマルテンサイト面積率とする。
内層部に比して表層部におけるフェライトの面積率を高めることにより、表層部が延性に富むようになり、980MPa以上という高い引張強度を有する場合であっても、延性と曲げ性とに優れた熱間プレス鋼板部材を得ることができる。表層部におけるフェライトの面積率が内層部におけるフェライトの面積率の1.20倍以下では、微小なクラックが表層部に発生しやすくなり、曲げ性が劣化する。したがって、表層部におけるフェライトの面積率は内層部におけるフェライトの面積率の1.20倍超とする。
適量のフェライトを鋼中に形成させることにより、延性を向上させることができる。そのため、内層部のフェライトの面積率(以下、単にフェライトの面積率という。)を規定する。フェライトの面積率が10%未満では、フェライトの殆どが孤立し、鋼の延性を向上させることができない。したがって、フェライトの面積率は10%以上とする。一方、フェライトの面積率が70%超では、強化相であるマルテンサイトの面積率を確保できなくなり、焼入れ後の強度で980MPa以上の引張強度を確保することが困難となる。したがって、フェライトの面積率は70%以下とする。
マルテンサイトを鋼中に形成させることにより、焼入れ後の強度を高めることができる。そのため内層部のマルテンサイトの面積率(以下、単にマルテンサイトの面積率という。)も規定する。マルテンサイトの面積率が30%未満では、焼入れ後の強度で980MPa以上の引張強度を確保することが困難となる。したがって、マルテンサイトの面積率は30%以上とする。一方、マルテンサイトの面積率が90%超では、フェライトの面積率が10%未満となり、上述したように、鋼の延性を向上させることができない。したがって、マルテンサイトの面積率は90%以下とする。
本発明に係る熱間プレス鋼板部材の内層部は、フェライトおよびマルテンサイトからなる組織を有すること基本とするが、製造条件によっては、フェライトおよびマルテンサイト以外の相または組織として、ベイナイト、残留オーステナイト、セメンタイトおよびパーライトの1種または2種以上が混入する場合がある。この場合、フェライトおよびマルテンサイト以外の相または組織が10%を超えると、これらの相または組織の影響により、目的とする特性が得られない場合がある。したがって、内層部におけるフェライトおよびマルテンサイト以外の相または組織の混入は10%以下とする。すなわち、内層部のフェライトおよびマルテンサイトの合計面積率は90%以上とする。
上述した化学組成及び鋼組織を有し、引張強度が980MPa以上である本発明に係る熱間プレス鋼板部材は、下記の方法により製造することができる。
熱間プレス用鋼板には、上記化学組成を有し、表面から深さ100μmまでの領域におけるフェライトの面積率が30%以上90%以下である鋼組織を有する鋼板を用いる。この鋼板は、例えば、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき冷延鋼板のいずれでもよい。上記鋼組織を有する熱間プレス用鋼板を後述するような条件で熱間プレスを施すことによって、表層部における脱炭が促進され、熱間プレス後において、所望の鋼組織を有し、引張強度が980MPa以上であり、延性と曲げ性に優れた熱間プレス鋼板部材が得られる。
熱間プレスに供する鋼板の加熱は、720℃以上で、下記実験式(i)により規定されるオーステナイト単相になるAc3点(℃)以下の温度域において行う。
11×Cr−20×Cu+700×P+400×Al+50×Ti ・・・ (i)
ここで、上記式中における元素記号は、鋼板の化学組成における各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
一般に、熱間プレス用鋼板は、熱間プレスに供するに際して加熱炉等で加熱された後、熱間プレス装置まで搬送される。この際に、例えば、加熱炉からの抽出時や、熱間プレス装置への搬送時あるいは投入時などに、熱間プレス用鋼板は少なくとも一部において空冷状態に曝される。
次いで、熱間プレス用鋼板に熱間プレスを施し、ベイナイト変態等の拡散型変態が起きないように、10℃/秒以上500℃/秒以下の平均冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却する。平均冷却速度が10℃/秒未満では、ベイナイト変態が過度に進行してしまい、強化相であるマルテンサイトの面積率を確保できなくなり、焼入れ後の強度で980MPa以上の引張強度を確保することが困難となる。したがって、上記温度域における平均冷却速度は10℃/秒以上とする。一方、上記平均冷却速度が500℃/秒超では、部材の均熱を保つことが極めて困難となり、強度が安定しなくなる。したがって、上記平均冷却速度は500℃/秒以下とする。
(1)400℃到達直後に、熱容量の異なる金型または室温状態の金型に移動させて、冷却速度を変える;
(2)水冷金型の場合、400℃到達直後に金型中の流水量を変化させて、冷却速度を変える;
(3)400℃到達直後に、金型と部材との間に水を流すこと、或いはさらにその水量を変化させることで、冷却速度を変える。
Claims (7)
- 質量%で、C:0.10%以上0.34%以下、Si:0.5%以上2.0%以下、Mn:1.0%以上3.0%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001%以上1.0%以下およびN:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成と、
表面から深さ15μmまでの表層部におけるフェライトの面積率が、前記表層部を除いた部位である内層部におけるフェライトの面積率の1.20倍超であり、前記内層部が、面積%で、フェライト:10%以上70%以下、マルテンサイト:30%以上90%以下、フェライトおよびマルテンサイトの合計面積率:90%以上である鋼組織と、
引張強度(TS)が980MPa以上である機械特性と、
を有することを特徴とする、熱間プレス鋼板部材。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.20%以下、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1に記載の熱間プレス鋼板部材。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1または請求項2に記載の熱間プレス鋼板部材。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.01%以下を含有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の熱間プレス鋼板部材。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Bi:0.01%以下を含有する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の熱間プレス鋼板部材。
- 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の化学組成を有する鋼板であって、表面から深さ100μmまでの領域におけるフェライトの面積率が30%以上90%以下である鋼組織を有することを特徴とする、熱間プレス用鋼板。
- 請求項6に記載の鋼板を、720℃以上Ac3点以下の温度域に加熱し、前記加熱の終了から熱間プレスの開始までの間に鋼板が空冷に曝される時間を5秒間以上50秒間以下として熱間プレスを施し、10℃/秒以上500℃/秒以下の平均冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却することを特徴とする、熱間プレス鋼板部材の製造方法。
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