JP2014024741A - 光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境耐久性の悪いフツリン酸ガラス等を使用した光学素子であっても、製造時にガラス表面にクモリやキズの発生を抑制できる光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】フツリン酸ガラスからなる光学素材からプリフォームを形成し(S1)、プリフォームを純水又は弱アルカリ性の洗浄液で洗浄し(S2)、洗浄したプリフォームを光学素子形状にプレス成形し(S3)、プレス成形した光学素材の表面を、研磨剤により処理して変質層を除去し(S4)、変質層を除去した光学素材を弱アルカリ性の洗浄液で洗浄し(S5)、成形後の洗浄を経た光学素材の表面に、最外層が水不透過性の膜となる光学機能膜を形成し(S6)、光学機能膜を形成した光学素材の芯取りを行い(S7)、最後に芯取り後の光学素子を洗浄する(S8)、光学素子の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】フツリン酸ガラスからなる光学素材からプリフォームを形成し(S1)、プリフォームを純水又は弱アルカリ性の洗浄液で洗浄し(S2)、洗浄したプリフォームを光学素子形状にプレス成形し(S3)、プレス成形した光学素材の表面を、研磨剤により処理して変質層を除去し(S4)、変質層を除去した光学素材を弱アルカリ性の洗浄液で洗浄し(S5)、成形後の洗浄を経た光学素材の表面に、最外層が水不透過性の膜となる光学機能膜を形成し(S6)、光学機能膜を形成した光学素材の芯取りを行い(S7)、最後に芯取り後の光学素子を洗浄する(S8)、光学素子の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、光学素子の製造方法に係り、特に、フツリン酸ガラスを硝材として用いる際に、光学素子のクモリ、変質を抑制し、生産性を向上できる光学素子の製造方法に関する。
近年、光学素子を製造するのにガラス製の光学素材をプレス成形し、成形面を研磨等せずにそのまま使用可能とする直接プレス成形法が注目されている。
このプレス成形法に用いられる硝材は、プレス成形温度を低くして加工性を向上させる場合には、ガラス転移点が低くなるように組成が調整される。例えば、特に低いガラス転移点を実現するために、ガラスの組成系をシリカガラスからリン酸ガラスやフツリン酸ガラスに変更することで大幅な成形温度の低下が実現できることが知られている。
ところが、リン酸ガラスやフツリン酸ガラスを用いた場合には環境耐久性が著しく低下してしまい、これに対して、反射防止膜などの光学機能膜をガラス表面に成膜することで表面を保護して環境耐久性の低下を防止しようとする動きもある。
また、プレス成形用硝材に限らず光学ガラスの中には、光学性能を優先するためにリン酸を主成分としたリン酸ガラスや、さらにフッ素を添加したフツリン酸ガラスも存在する。これらは、光学性能を優先するため、環境耐久性については低いまま使用されており、この環境耐久性の低さが、製造上や実用上大きな問題となっている。
上記のように環境耐久性が悪い硝材を実用化する場合には、従来は、(1)反射防止膜の第1層をアルミナなどの緻密な膜にして、水分の進入を防止したり(例えば、特許文献1参照。)、(2)レンズの全面を反射防止膜などの膜でコートし、水分の影響を無くしたり(例えば、特許文献2参照。)、(3)反射防止膜の成膜方法を通常の真空蒸着ではなくIAD(イオンビームアシスト成膜)を使用した真空蒸着を用いたり、(4)プレス成形品の表面変質層に着目して1層目にSiO2を成膜し、ガラスと反射防止膜の密着性を高めたり(例えば、特許文献3参照。)、(5)光学機能膜の最表面層をリン酸と反応性の低い物質で形成したり(例えば、特許文献4参照)、する等の方法により改善を図ってきた。
しかしながら、特に、環境耐久性の悪いフツリン酸ガラスにおいては、光学素子の表面に反射防止膜を形成する等の上記対策を施しても、やわらかくて傷が入り易い、洗浄液に弱く傷や変質が発生し易い、等の特性のため光学素子を製造した時点でレンズ表面にクモリ等が生じてしまい、生産性が低下する場合があった。
そこで、本発明は、フツリン酸ガラスからなるガラス製の光学素子において、製造工程等を見直すことで、表面にクモリなどの劣化、変質が生じるのを抑制し、最終製品の生産性を改善した光学素子の製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記のような不具合の発生する要因を検討した結果、特に、その製造過程において、反射防止膜等の被膜を形成する前であって、素材表面に直接洗剤が接触する洗浄工程で不具合が生じることを見出した。このような不具合は、上記のような使用時の環境耐久性を向上させるという観点からは十分に抑制できない。さらに、反射防止膜等の機能膜を形成した後でも、その膜構成によっては洗浄における光学素材へのダメージを完全に抑えられず、不良が発生してしまう場合もあった。
そこで、本発明者らは、光学素子の製造過程における処理工程を見直し、上記課題を解消するために鋭意検討したところ、一連の新規な処理工程がフツリン酸ガラスの不具合を生じさせず、生産性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の光学素子の製造方法は、フツリン酸ガラスからなる光学素材を、目的とする光学素子形状に近似した形状に加工してプリフォームとするプリフォーム形成工程と、前記プリフォームを純水又は弱アルカリ性の洗浄液で洗浄するプリフォーム洗浄工程と、前記プリフォーム洗浄工程を経たプリフォームを、加熱して軟化させ、プレスにより光学素子形状とするプレス成形工程と、前記光学素子形状とされた光学素材の表面を、研磨剤により処理して変質層を除去する変質層除去工程と、前記変質層除去工程後、前記光学素材を弱アルカリ性の洗浄液で洗浄する成形後洗浄工程と、前記成形後洗浄工程を経た光学素材の表面に、最外層が水不透過性の膜となる光学機能膜を形成する光学機能膜形成工程と、前記光学機能膜形成工程の後、前記光学素材の芯取りを行い光学素子とする芯取り工程と、前記芯取り工程の後、前記光学素子を洗浄する芯取り後洗浄工程と、を有すること特徴とする。
また、本発明の他の光学素子の製造方法は、フツリン酸ガラスからなる光学素材を、目的とする光学素子形状に近似した形状に加工してプリフォームとするプリフォーム形成工程と、前記プリフォームを純水、弱アルカリ性の洗浄液又は強アルカリ性の洗浄液で洗浄するプリフォーム洗浄工程と、前記プリフォーム洗浄工程の後、10Pa以下の減圧下、ガラス転位点(Tg)以上から屈服点(At)以下の温度で加熱する真空ベイク工程と、前記真空ベイク工程を経たプリフォームを、加熱して軟化させ、プレスにより光学素子形状とするプレス成形工程と、前記プレス成形工程を経た光学素材の表面を、研磨剤により処理して変質層を除去する変質層除去工程と、前記変質層除去工程後、前記光学素材を弱アルカリ性の洗浄液で洗浄する成形後洗浄工程と、前記成形後洗浄工程を経た光学素材の表面に、最外層が水不透過性の膜となる光学機能膜を形成する光学機能膜形成工程と、前記光学機能膜形成工程の後、前記光学素材の芯取りを行い光学素子とする芯取り工程と、前記芯取り工程の後、前記光学素子を洗浄する芯取り後洗浄工程と、を有することを特徴とする。
本発明の光学素子の製造方法によれば、環境耐久性の悪いフツリン酸ガラスを硝材とした光学素子の製造にあたって、その製造時に光学素子表面に生じるクモリやキズ等の不具合の発生を抑制できるため生産性を向上できる。
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態における光学素子の製造方法における、処理工程のフローチャートを示した図である。本発明の光学素子の製造方法は、上記及び図1に示したように、フツリン酸ガラスからなる光学素材を、目的とする光学素子形状に近似した形状に加工してプリフォームとするプリフォーム形成工程(S1)と、該プリフォームの表面を純水又は弱アルカリ性の洗浄液で洗浄するプリフォーム洗浄工程(S2)と、プリフォーム洗浄工程を経たプリフォームを、加熱して軟化させ、プレスにより光学素子形状とするプレス成形工程(S3)と、プレス成形工程を経た光学素材の表面を、研磨剤により処理して変質層を除去する変質層除去工程(S4)と、変質層除去工程後、光学素材を弱アルカリ性の洗浄液で洗浄する成形後洗浄工程(S5)と、成形後洗浄工程を経た光学素材の表面に、最外層が水不透過性の膜となる光学機能膜を形成する光学機能膜形成工程(S6)と、光学機能膜形成工程の後、前記光学素材の芯取りを行い光学素子とする芯取り工程(S7)と、芯取り工程の後、光学素子を洗浄する芯取り後洗浄工程(S8)と、を有する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態における光学素子の製造方法における、処理工程のフローチャートを示した図である。本発明の光学素子の製造方法は、上記及び図1に示したように、フツリン酸ガラスからなる光学素材を、目的とする光学素子形状に近似した形状に加工してプリフォームとするプリフォーム形成工程(S1)と、該プリフォームの表面を純水又は弱アルカリ性の洗浄液で洗浄するプリフォーム洗浄工程(S2)と、プリフォーム洗浄工程を経たプリフォームを、加熱して軟化させ、プレスにより光学素子形状とするプレス成形工程(S3)と、プレス成形工程を経た光学素材の表面を、研磨剤により処理して変質層を除去する変質層除去工程(S4)と、変質層除去工程後、光学素材を弱アルカリ性の洗浄液で洗浄する成形後洗浄工程(S5)と、成形後洗浄工程を経た光学素材の表面に、最外層が水不透過性の膜となる光学機能膜を形成する光学機能膜形成工程(S6)と、光学機能膜形成工程の後、前記光学素材の芯取りを行い光学素子とする芯取り工程(S7)と、芯取り工程の後、光学素子を洗浄する芯取り後洗浄工程(S8)と、を有する。
これらの各工程を、以下、詳細に説明する。なお、ここで用いるフツリン酸ガラスは、リン酸を主成分とし、さらにフッ素を添加したガラスである。光学特性を優先するために環境耐久性は著しく劣悪である。その成分は、例えば、P2O5 0〜7質量%、NaF 0〜2質量%、AlF3 12〜32質量%、MgF2 5〜11質量%、CaF2 15〜17質量%、SrF2 19〜26質量%、Al(PO3)3 0〜27質量%である。
別の組成の1例としては、P5+ 10〜60カチオン%、Al3+ 0〜35カチオン%、Mg2+ 0〜20カチオン%、Ca2+ 0〜25カチオン%、Sr2+ 0〜30カチオン%、Ba2+ 0〜30カチオン%、Li+ 0〜30カチオン%、Na+ 0〜10カチオン%、K+ 0〜10カチオン%、Y3+0〜15カチオン%、La3+ 0〜5カチオン%、Gd3+ 0〜5カチオン%、Yb3+ 0〜5カチオン%、B3+ 0〜15カチオン%、F− 30〜60アニオン%、O2− 40〜70アニオン%である。
また屈折率ndは、1.43〜1.59、アッベ数νdは70〜96の範囲である。
本件のフツリン酸ガラスは上述の組成に限定されるものではなく、フッ素をガラス成分として含み、摩耗度が200以上のガラスであればよい。
別の組成の1例としては、P5+ 10〜60カチオン%、Al3+ 0〜35カチオン%、Mg2+ 0〜20カチオン%、Ca2+ 0〜25カチオン%、Sr2+ 0〜30カチオン%、Ba2+ 0〜30カチオン%、Li+ 0〜30カチオン%、Na+ 0〜10カチオン%、K+ 0〜10カチオン%、Y3+0〜15カチオン%、La3+ 0〜5カチオン%、Gd3+ 0〜5カチオン%、Yb3+ 0〜5カチオン%、B3+ 0〜15カチオン%、F− 30〜60アニオン%、O2− 40〜70アニオン%である。
また屈折率ndは、1.43〜1.59、アッベ数νdは70〜96の範囲である。
本件のフツリン酸ガラスは上述の組成に限定されるものではなく、フッ素をガラス成分として含み、摩耗度が200以上のガラスであればよい。
本発明におけるプリフォーム成形工程(S1)は、光学素子の製造方法を実施するにあたって、まず、光学素子の母材となる光学素材を用意し、その形状を加工してプリフォームを形成する工程である。
ここで用意する光学素材は、ガラスをるつぼで溶解し、るつぼに設けたノズルから所望の体積のガラスを滴下して得られたフツリン酸ガラスゴブを使用する場合と、フツリン酸ガラスからなる板材から素材を切り出し、これを常法により研削、研磨、芯取りを行いプリフォームとする場合がある。このプリフォームの形状は、後述するプレス成形が可能であれば、その形状は特に限定されないが、効率よくプレス成形できるように、製造する光学素子に近似した形状が好ましい。
なお、今回対象としているフツリン酸ガラスは摩耗度が高く、かつ、もろいガラスであるため、プリフォーム形状とする際の研磨加工においては傷が入りやすく、研磨工程おいては、その他の光学素材と比べて、丁寧に研磨する必要がある。
丁寧に研磨するには、例えば、研磨時の負荷圧を0.3〜0.5N/cm2に下げたり、使用する研磨材を、多くの光学素材で使用される酸化セリウムから研磨キズがより生じにくいジルコニアに変更したり、さらに、研磨時間を、他の研磨の容易な光学素材に比べて1.5〜2倍程度の時間をかけたり、等のキズを低減する対策のいずれか、又はそれらを組み合わせて行えばよい。
本発明におけるプリフォーム洗浄工程(S2)は、上記のように得られたプリフォームの表面を所定の洗浄液を使用して洗浄する工程である。この工程において主として除去するのは、プリフォーム形成工程(S1)で使用した研磨剤である。
上記のプリフォーム形成において、研磨処理を行っているため、得られたプリフォームの表面には研磨剤が残存する。この研磨剤が残ったまま後述するプレス成形をしてしまうと、プレス時の加熱により研磨材の残存部分が白濁した汚れとなって光学素子の表面がクモリ、製品としては不良(NG)となってしまう。
そのため、本工程では、この研磨剤を除去するために洗浄する。この洗浄は、洗浄液として純水又は弱アルカリ性の洗浄液を使用する。また、洗浄時は洗浄機で使用している超音波洗浄を同時に機能させることが好ましい。なお、フツリン酸ガラスは耐水性、耐アルカリ性も良くないため、これらの洗浄液を使用する場合には、細心の注意を払わなければならない。
例えば、洗浄液として純水を用いた場合、温度条件によっては硝材がクモったり、キズが入ることがある。特に、40℃以上の温水で洗浄した場合には多数のキズが入る可能性が高く、光学素子の品質への影響が大きくなるため、純水の温度を、30℃以下となるよう温度管理しながらの洗浄が好ましい。純水洗浄における純水の温度は、20℃以下がより好ましく、10℃以下が特に好ましい。
また、弱アルカリ性の洗浄液を使用する場合、研磨剤の除去効率は純水に比べて良好になるものの、上記のように耐水性が低く、耐アルカリ性も低い硝材であるため、条件によってはキズが多量に発生し、プレス成形しても表面にそのキズが残り、製品として不良(NG)となる可能性が高くなる。
したがって、本工程において超音波洗浄を行う場合には、洗浄機で使用している超音波振動子の設定を定格出力0.6kW、発振周波数を5〜10kHzと低負荷とした洗浄操作が好ましい。
なお、強アルカリ性の洗浄液は、光学素子の製造において一般的に使用される洗浄液であるが、本工程においては、プリフォーム表面へのキズが多量に、かつ、深いものが発生する可能性が高い。そのため、使用する場合は浸漬時間を短くするなど工夫をすることで使用が可能になるが、研磨材を除去する力は低下してしまう。強アルカリ性の洗浄液を使用する場合、その浸漬時間は例えば、3〜5秒程度とすればよい。
なお、弱アルカリ性又は強アルカリ性の洗浄液を使用した場合は、その後、純水により洗浄してリンスし、必要に応じてイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥させる。
本発明におけるプレス成形工程(S3)は、プリフォーム洗浄工程を経たプリフォームを、加熱して軟化させ、プレスにより光学素子形状とする工程である。この工程は、公知のプレス成形によってプリフォームを光学素子形状とすればよい。プレス成形には、1つのポジションでプレス成形する型固定方式と、複数のポジションで加熱、プレス、冷却の各工程をそれぞれ分担する型移動方式とがあるが、いずれの方式でもよい。すなわち、まず、上記した光学素材を加工するのに十分な高温条件まで加熱し、プレス時にはその加熱状態を維持しながら圧力をかけてプレスし、プレス後は、所望の形状に変形した光学素材を冷却して固化させて光学素子形状とする。
例えば、型移動方式の成形装置における加熱、プレス、冷却の各工程は、個々の処理工程が所定の温度に管理されている。各処理工程は、一般に、内部にカートリッジヒータを設けた上下一対のプレートで構成されており、これら上下一対のプレートは、通常、四角い平板状のプレート内部に複数本の棒状のカートリッジヒータを水平方向に所定の間隔に配置して構成されている。
本発明で使用するフツリン酸ガラスにおいては、プレス温度を屈伏点(At)〜屈伏点(At)+50℃程度、プレス時の圧力は0.2〜1.5N/mm2程度とする。また、加熱する際には加熱速度を100〜200℃/分、冷却する際には冷却速度を150〜200℃/分とするのが好ましい。
本発明における変質層除去工程(S4)は、プレス成形工程(S3)を経た光学素材の表面を、研磨剤により研磨処理して変質層を除去する工程である。
上記プレス成形工程(S3)を経た光学素材には、成形時の加熱によってその表層に変質層が形成される。この変質層は肉眼では観察が困難であるが、表層だけ、ガラスの組成が異なっており、屈折率の測定では硝材そのものの持っている屈折率と異なるものとなる。このままの状態で反射防止膜等を形成しても、最終製品である光学素子の屈折率等の特性が目標とする値とは異なるケースが生じたり、この変質層に起因する膜の剥離が生じたりする場合がある。特に、フツリン酸ガラスの製造においては、プレス成形時にフッ素が揮発するため、他の硝材と比較して厚い変質層が発生していると考えられる。
また、この変質層は、一般的には、反射防止膜を形成する前に、強アルカリ性の洗浄液で光学素材の表面を洗浄して変質層を除去しているが、本発明において強アルカリ性の洗浄液を使用すると、変質層の除去だけではなく、光学素材の表面全面にキズが入り、白くクモってしまう。本工程はプレス成形後の工程であり、この段階で表面にキズが生じるとその影響が製品にそのまま残ってしまうため、ここで強アルカリ性の洗浄液は浸漬時間を調節する必要があり、十分な変質層の除去ができないおそれがある。
そこで、本発明における変質層除去工程(S4)は、研磨剤を使用して光学素材の表面を研磨する工程とした。ここで使用する研磨剤としては、光学素子の製造時に使用されている公知の酸化セリウム、ジルコニア、ベンガラ等の研磨剤が挙げられる。
ただし、酸化セリウムは、研削レートが高く、光学素材の表面を傷つけないように特に注意する。例えば、酸化セリウムによる研磨は、研磨時の負荷圧を0.001〜0.01N/cm2 で5秒以内の研磨を行う。
また、ジルコニア研磨剤は、通常、上記の酸化セリウム研磨剤に比べて研削レートが大幅に落ちるが、フツリン酸ガラスの摩耗度が高いため十分な研削レートを得ることができる。さらに、酸化セリウムのようなケミカルポリッシュではなく、メカニカルポリッシュに基づく研磨となるため、その後に研磨剤を除去する際、強アルカリ性の洗浄液を使用しなくても容易に除去できるという利点がある。
ただし、酸化セリウムは、研削レートが高く、光学素材の表面を傷つけないように特に注意する。例えば、酸化セリウムによる研磨は、研磨時の負荷圧を0.001〜0.01N/cm2 で5秒以内の研磨を行う。
また、ジルコニア研磨剤は、通常、上記の酸化セリウム研磨剤に比べて研削レートが大幅に落ちるが、フツリン酸ガラスの摩耗度が高いため十分な研削レートを得ることができる。さらに、酸化セリウムのようなケミカルポリッシュではなく、メカニカルポリッシュに基づく研磨となるため、その後に研磨剤を除去する際、強アルカリ性の洗浄液を使用しなくても容易に除去できるという利点がある。
上記のとおり、摩耗度の高いフツリン酸ガラスが硝材であるため、本工程における研磨はジルコニア研磨剤による研磨が好ましく、その研磨条件は、10〜15秒、典型的には20秒前後、という比較的短時間での表面研磨を行う。また、ここでの研磨も、上記プリフォーム形成工程(S1)での研磨と同様に、研磨時の負荷圧を0.001〜0.01N/cm2と比較的低いものとし、光学素材の形状を崩すことのないように、かつ、光学素材表面にキズが生じないように注意して行う。この研磨により、光学素材の表面へのダメージを抑えつつ、数nmレベルの研磨ができ、表層の変質層だけを除去できる。
本発明の成形後洗浄工程(S5)は、変質層除去工程後、光学素材を弱アルカリ性の洗浄液で洗浄する工程である。
この工程では、変質層除去工程で使用した研磨剤や、その他光学素材表面に付着したごみやほこりを除去できる。また、強アルカリ性の洗浄液を使用しなくても済むため光学素材表面のキズの発生を抑制できる。この洗浄工程においては、弱アルカリ性の洗浄液をリンスするために、その後、純水での洗浄及びイソプロピルアルコール(IPA)洗浄を行い、乾燥させてもよい。
なお、上記プレス成形工程(S3)の後、後述する反射防止膜の形成前に、上記光学素子形状とされた光学素材を加熱して歪みを除去するアニール処理してもよく、上記プレス成形工程(S3)直後にアニール処理することが好ましい。このとき、アニール処理における加熱温度はガラス転位点(Tg)−40℃〜ガラス転位点(Tg)とし、加熱時間は15〜20時間とすればよい。
このアニール処理については、他の硝材との差はあまりなく、アニール条件は公知の条件で設定すればよい。このとき、屈折率を所定の数値、例えば、目標値としてnd 1.49725 の場合、それに合わせるように温度履歴を設定する。この設定は他の硝材とほぼ差がなく、特別にアニールの条件設定を変更することなく対応が可能である。
ただし、上記のとおりフツリン酸ガラスは、耐水性が悪い硝材であるため、アニール処理後において光学素子の外観がくもる現象が起きることもある。したがって、アニール処理で使用するアニール炉に注入する空気は、乾燥したドライエアーが好ましい。ドライエアーを使用することで炉内雰囲気は水分の少ない状況となり、光学素子の表面のクモリを抑制できる。
本発明の光学機能膜形成工程(S6)は、成形後洗浄工程を経た光学素材の表面に、最外層が水不透過性の膜となる光学機能膜を形成する工程である。
本工程は、通常、後述する芯取り工程、洗浄工程を経た後、最後に行う工程であるが、本発明においては、芯取り工程前に行う。これは、繰り返しの記載になるが、フツリン酸ガラスが耐水性、耐アルカリ性が低いために、芯取り後の洗浄による光学素材へのキズの発生を抑制しようとするものである。
また、ここで形成する光学機能膜は、その最外層(最表面)が、水不透過性の膜となるように形成する。当然、この水不透過性の膜を含め、製品となる光学素子が、所望の光学特性を有するように膜設計を行う。
ここで、水不透過性の膜としては、後述する芯取り後の洗浄に用いる洗浄液が光学素材の光学面と接触しないようにするもので、水分の透過性が十分に低いものであればよく、例えば、SiO2、Al2O3、Y2O3、La2O3、HfO2、Ta2O5,TiO2、ZrO2、Nb2O5、TiO2等の酸化物が挙げられる。これら例示した酸化物は高純度かつガス放出が少ない良質な蒸着材料であり、安定して良好な光学特性を得ることができる。
最外層には、上記した物質の少なくとも1種からなる材質で形成される。すなわち、上記物質の1種類を用いた層でもよいし、2種以上を混合した材質の層でもよく、中でも、SiO2、Al2O3、TiO2及びZrO2から選ばれた少なくとも1種の物質を用いることが好適である。
なお、ここで水不透過性の膜とは、石英ガラスに成膜し温度90℃の純水に100時間浸けて、質量変化が認められないものをいう。すなわち水を透過する膜では上述の条件では膜中に水が浸入して質量が増加する。
このような膜を最外層に設けることで、その後の光学素材へのダメージを抑制できる。さらに、安定した光学機能膜が形成でき、使用開始後の環境耐久性も良好となる。
ここで、光学機能膜3としては、反射防止膜、IRカットフィルター、反射膜、保護膜、バンドパスフィルター、ローカットフィルター等が挙げられ、所望の機能を発揮するように公知の材質を用いて、所定の規格に適合するように構成すればよい。また、この光学機能膜3は、単層あるいは2層以上の膜を積層しても形成してもよい。
なお、光学機能膜3は、光学素材2の光学機能面に形成され、その側面(コバ部)には形成されていない。そのため、光学素材2表面は、全てが光学機能膜で被覆されてはおらず、部分的に光学機能膜3が形成された状態となっている。このようにすれば、光学機能膜が必要な光学機能面のみに形成され、光学的に意味のない側面には形成しないようにして、製造に際してコスト、手間を軽減できる。
より具体的な膜構成について、表1、表2に反射防止膜の構成を例として示す。なお、以下に記載した表中において、光学素材2に直接形成される膜を第1層とし、順次第2層、第3層、…第N層と積層する順番に番号を付与した。最大数となる第N層が最表面層であり、AIRは空気(最表面層が空気と接触していること)を表わす。
ここで、表中にH4とあるのは、メルク社製の蒸着材料の商品名であり、La2O3とTiO2との混合物である。
本発明の光学素子の製造方法において、反射防止膜を形成するには、公知の薄膜形成方法を用いればよい。例えば、抵抗加熱、電子ビーム等により蒸着原料を気化させる真空蒸着成膜法により膜形成を行うのがコスト的に有利である。また、真空蒸着により膜形成を行うに際しては、プラズマアシスト又はイオンアシスト蒸着成膜法が膜形成を効率良くできる点で好ましい。また、次に挙げるように、真空蒸着以外にもスパッタリング、CVD等の公知の成膜方法を使用できる。複数種の膜を積層して形成し反射防止膜とするには、光学素材の表面から順番に異なる種類の膜を積層していけばよい。
以下、図2及び図3を参照しながら、光学素子形状である光学素材2に真空蒸着成膜法により反射防止膜3を形成する方法を説明する。ここで、図2は、本発明により製造される光学素子1の構成を示した断面図であり、図3は、真空蒸着装置の概略構成を示した図である。
光学素材2に反射防止膜3を形成するには、まず、成膜用のドームに膜形成の対象となる変質層を除去した光学素材2をセットし、真空チャンバー11内に載置する。真空排気口14からチャンバー内を真空排気しながら、加熱ヒータ12より光学素材2を150℃〜350℃に加熱する。加熱する温度はフツリン酸のガラス転移点に応じて選択すればよく、ガラス転移点よりも100℃以上(例えば、200〜300℃)低い温度とすればよい。
なお、成膜時に加熱する理由は、膜の緻密性を上げるためであり、加熱しない場合には膜がぼそぼその状態になり好ましくない。真空チャンバー11内部の真空度が1×10−3Pa以下になるまで排気した後、蒸発源16である各種物質を電子銃17により蒸発させ、光学素材2の表面に反射防止膜3となる薄膜を形成する。なお、ガス導入口15からは、蒸着する物質が酸化物の場合に酸化物が所望の酸化状態となるように、必要に応じて成膜中に酸素を導入する。膜構成は、通常のレンズに要求される特性を満たすように、かつ、反射防止膜としての機能を十分に発揮できるように予め設計して決定する。
この最外層の物質の膜厚は、反射防止膜を含む光学機能膜の性能を損なわない範囲で任意に設定できる。好ましくは、5nm以上450nm以下であり、光学機能膜の特性が最も良くなる範囲となるため8nm以上200nm以下がより好ましい。5nm未満では、反応を防止する特性が十分でなく、450nmを超えると変質抑制の効果が悪化するとともに、膜にクラックが発生しやすく好ましくない。また、成膜に時間がかかり経済的にも問題となる。
このとき、最外層の膜厚は、赤外域の光を透過させる場合には400nm以下の厚さが好ましく、可視域の光を通過させる場合には300nm以下の厚さが好ましい。
それ以外の領域、たとえば紫外域で使用する場合や特定の波長をカットするフィルターなどには、前述の膜厚範囲に限らず適宜光学機能膜の構成と膜厚を調整して対応できる。
本発明の芯取り工程(S7)は、光学機能膜形成工程の後、光学素材の芯取りを行い光学素子とする工程である。
この工程は、プレス成形により光学素材の外周に形成された余肉部を削り、光学素子の光軸を揃えて、最終的な製品形状とするもので、光学素子の中心部を設定するために、例えば、真鍮製の冶具に挟んで光学素子を回転させる動作を2〜3回繰り返すという、従来公知の芯出し作業をすることで達成できる。
なお、本発明においては、すでに光学素子の表面に光学機能膜が付着しているため、芯取り工程においては、真鍮製冶具で光学素子を挟んだときに、反射防止膜に傷をつけないように気を付ける。また、光学機能膜が存在するために芯出し作業中に光学素子がうまく滑らないことから、偏芯レベルが悪化する傾向がある。これを防止するために、芯出し工程の前に、予め光学素子の表面に潤滑剤を塗布しておくと好ましい。
本発明で使用するフツリン酸ガラスは、上記のとおり、脆く、欠けやすいガラスであるため、この芯取り工程における芯取り時間は、他の硝材で製造している条件よりも時間をかけて丁寧に行うことが好ましい。
本発明の芯取り後洗浄工程(S8)は、芯取り工程の後、光学素子を洗浄する工程である。
この工程により、芯取りした後の光学素子は、芯取り工程で生じた研磨カスや、芯取り工程時に付着した芯取り油等が付着するため、これを除去し、光学素子の表面を清浄にする。
この芯出し後洗浄工程では、その前段で光学素子の表面に光学機能膜が形成されているため、上記した他の洗浄工程と異なり、洗剤が直接硝材に接触して性能を劣化させる等の可能性が低い。ここでは、フツリン酸ガラスであることを気にせず、他の硝材で行っている洗浄処理と同等の処理で洗浄できる。
例えば、ここでの洗浄は、芯取り油を除去する必要もあるため、光学素子を炭化水素系洗浄剤で脱脂作業を行い、その後、強アルカリ性又は弱アルカリ性の洗浄液で洗浄し、さらに、純水洗浄、IPA洗浄、最後に乾燥させて、光学素子が得られる。なお、この段階ではガラス表面に水分を透過しない膜が成膜されおり、この膜はアルカリに対する耐性も一般的に強いので強アルカリでの洗浄も可能である。
一般的なレンズ製造工程における流れとしては、プレス成形後のレンズについては芯取り工程を行い、場合によっては上記の変質層除去工程、アニール処理を行い、光学機能膜形成工程を行うのが一般的な工程の流れである。その理由としては、光学機能膜形成工程を先に行い、芯取りを後で行うと、折角形成した光学機能膜にキズが入るおそれがあること、さらに膜があることで、芯取りで使用するホルダーとのすべりがなくなるために芯取り工程においてレンズの偏芯精度が悪化する傾向にあるためである。しかし、フツリン酸ガラスについては耐水性が悪いため、芯取り後洗浄や、光学機能膜形成後の洗浄と洗浄回数が増加するほど洗浄において無数の傷が発生する可能性が高まり、製品歩留まりは低下してしまう。
その改善方法として、本発明の光学素子の製造方法においては、先に光学機能膜を形成しておき、その後、芯取り工程を行う順番とした。また、本発明では、フツリン酸ガラスの製造において、プレス成形後の変質層除去を研磨剤による低負荷圧での研磨とすることで、これまでのように強アルカリ性の洗浄液を含む洗剤を使用した工程を経ずに、反射防止膜を光学素材表面に形成できる。
そして、光学機能膜を形成しておくと光学素子の光学面が保護され、その後の工程においては、従来の洗浄工程を行っても問題ないものとした。
すなわち、上記構成により、強アルカリ性又は弱アルカリ性の洗浄液によって光学素材表面に付着したごみやほこりを除去する洗浄を行い、その後、純水での洗浄を行って強アルカリ性又は弱アルカリ性の洗浄液をリンスする。さらに、イソプロピルアルコール(IPA)洗浄、乾燥を行い、光学素子の表面を清浄にして最終製品としての光学素子が製造できる。
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態における光学素子の製造方法における、処理工程のフローチャートを示した図である。本実施形態は、この図4に示したように、S11〜S19の各工程を順番に実施してなる光学素子の製造方法である。ここでは、S11〜S12は、第1の実施形態のS1〜S2に、S14〜S19は第1の実施形態のS3〜S8にそれぞれ対応している。すなわち、本実施形態においては、プリフォームの洗浄が終わった後、S13の真空ベイク工程を行うか否かが大きく異なる点であり、その他の工程は第1の実施形態と同様に行えばよい。以下、第1の実施形態との相違点のみについて説明する。
図4は、本実施形態における光学素子の製造方法における、処理工程のフローチャートを示した図である。本実施形態は、この図4に示したように、S11〜S19の各工程を順番に実施してなる光学素子の製造方法である。ここでは、S11〜S12は、第1の実施形態のS1〜S2に、S14〜S19は第1の実施形態のS3〜S8にそれぞれ対応している。すなわち、本実施形態においては、プリフォームの洗浄が終わった後、S13の真空ベイク工程を行うか否かが大きく異なる点であり、その他の工程は第1の実施形態と同様に行えばよい。以下、第1の実施形態との相違点のみについて説明する。
本発明における真空ベイク工程(S13)は、プリフォーム洗浄工程(S12)で得られたプリフォームに対し、プレス成形前に、減圧下、加熱して処理する工程である。この処理において、圧力は100Pa以下の減圧状態とし、光学素材のガラス転移点(Tg)以上屈伏点(At)以下の温度で、1時間以上、例えば1〜4時間、保持するものである。
このような処理により、光学素材の表面においては、前段の洗浄工程でキズが発生してしまった場合でも、本工程での処理により、最表面が軟化してキズが埋まってなくなったり、深さが浅くなり目立たなくなったりして、この処理をすることにより、プレス後の製品歩留まりを向上できる。
したがって、第1の実施形態におけるプリフォーム洗浄工程(S2)では、純水を温度管理しながら又は弱アルカリ性の洗浄液を注意深く使用して洗浄し、キズを多量に発生することを抑制しており、ここで強アルカリ性の洗浄液を使用する場合には非常に注意して条件を設定しなければならなかった。
ところが、上記の真空ベイク工程(S13)を行う場合には、その前段で多少のキズが発生しても、大部分のキズを浅くしたり、無くしたりできるため、本実施形態のプリフォーム洗浄工程(S12)においては、強アルカリ性の洗浄液の使用が容易となる。強アルカリ性の洗浄液の使用は、プリフォーム形成工程で使用した研磨剤を、容易に、かつ、効率良く除去できるため好ましい。
さらに、真空ベイク工程(S13)で処理した光学素材は、プレス成形工程(S14)において、光学素材と成形型との張り付きを防止する効果もある。これは、上記の真空ベイク処理により、光学素材中から揮発性のガスをプレス成形前に除去できるためである。事前にプリフォームの表層のガスを揮発しておくと、次に述べるような不具合が抑制できる。
すなわち、このような揮発性のガスは、フツリン酸ガラスではその発生量が多いため、真空ベイク処理をしないと、プレス成形時に多量のガスが発生し、これが光学素材と成形型の間に溜まって光学素材の表面にポツ状の形状不良を発生させたり、ガスが成形型表面に付着し、その部分が光学素材との張り付きを生じさせたりして、生産性が低下することがあった。ところが、上記の真空ベイク工程(S13)により、上記の不具合を解消できるため、プレス成形時に不良形状となるのを有効に抑制し、さらなる歩留まりの向上が可能となる。
なお、この真空ベイク処理の効果は、この処理を施していないと、1プレスごとに成形型への張り付きが発生し離型操作をしなければならなかったのが、真空ベイク処理を施したところ、100プレスを実施しても張り付かずに自然に離形できるという効果を確認している。
以下、実施例を参照して、本発明についてより詳細に説明する。
<プリフォームの準備>
ガラス成分として、リン、酸素及びフッ素を含むフツリン酸光学ガラスのブロック(板材)から素材を切り出し、常法により研削、研磨(0.4N/cm2)、芯取りを行い、外径φ8.2mm、中心肉厚4.2mm、表裏の曲率半径が5.5mmと12mm、(コバ厚:1.644mm)、(体積0.157cc)の両凸レンズ形状の研磨プリフォームを用意した。プリフォームの研磨後は、5秒強アルカリ洗浄液に浸漬し、その後純水でのリンス洗浄を行った。このリンス洗浄においては洗浄機で使用している超音波振動子の設定を定格出力0.6kW、発振周波数を5kHzと低負荷としながら洗浄した。
なお、ここで用いたフツリン酸ガラスの特性は、ガラス転移点(Tg)458℃、屈伏点(At) 489℃である。
ガラス成分として、リン、酸素及びフッ素を含むフツリン酸光学ガラスのブロック(板材)から素材を切り出し、常法により研削、研磨(0.4N/cm2)、芯取りを行い、外径φ8.2mm、中心肉厚4.2mm、表裏の曲率半径が5.5mmと12mm、(コバ厚:1.644mm)、(体積0.157cc)の両凸レンズ形状の研磨プリフォームを用意した。プリフォームの研磨後は、5秒強アルカリ洗浄液に浸漬し、その後純水でのリンス洗浄を行った。このリンス洗浄においては洗浄機で使用している超音波振動子の設定を定格出力0.6kW、発振周波数を5kHzと低負荷としながら洗浄した。
なお、ここで用いたフツリン酸ガラスの特性は、ガラス転移点(Tg)458℃、屈伏点(At) 489℃である。
<真空ベイク処理>
得られた研磨プリフォームを10Pa、475℃で1時間処理して、表面のキズを目立たなくするとともに、プリフォーム中のガスを揮散させた。
得られた研磨プリフォームを10Pa、475℃で1時間処理して、表面のキズを目立たなくするとともに、プリフォーム中のガスを揮散させた。
<プレス成形処理>
次いで、得られた真空ベイク処理済のプリフォームを、型移動方式の成形装置を使用し、500℃、0.3kN/m2で70秒間(押切時間45秒)プレス成形処理して、外径φ8.0mm、中心肉厚2.7mm、曲率半径が6.55mm、13mm、(コバ厚:1.744mm)の光学素子形状に成形し光学素材2とした。さらに、得られた光学素材の表面を、ジルコニア研磨剤を使用し、負荷圧0.005N/cm2でその表面に形成された変質層を除去し、次いで、pH11の弱アルカリ性の洗浄液を使用し洗浄機で使用している超音波振動子の設定を定格出力0.6kW、発振周波数を5kHzと低負荷とした洗浄を実施し光学素材表面に付着したごみやほこりを除去し、その後、純水で洗浄機で使用している超音波振動子の設定を定格出力0.6kW、発振周波数を5kHzと低負荷とした洗浄で弱アルカリ性の洗浄液をリンスした。さらに、イソプロピルアルコール(IPA)洗浄、乾燥を行った。
次いで、得られた真空ベイク処理済のプリフォームを、型移動方式の成形装置を使用し、500℃、0.3kN/m2で70秒間(押切時間45秒)プレス成形処理して、外径φ8.0mm、中心肉厚2.7mm、曲率半径が6.55mm、13mm、(コバ厚:1.744mm)の光学素子形状に成形し光学素材2とした。さらに、得られた光学素材の表面を、ジルコニア研磨剤を使用し、負荷圧0.005N/cm2でその表面に形成された変質層を除去し、次いで、pH11の弱アルカリ性の洗浄液を使用し洗浄機で使用している超音波振動子の設定を定格出力0.6kW、発振周波数を5kHzと低負荷とした洗浄を実施し光学素材表面に付着したごみやほこりを除去し、その後、純水で洗浄機で使用している超音波振動子の設定を定格出力0.6kW、発振周波数を5kHzと低負荷とした洗浄で弱アルカリ性の洗浄液をリンスした。さらに、イソプロピルアルコール(IPA)洗浄、乾燥を行った。
<アニール処理>
次いで、上記プレス成形工程(S3)の後、素子形状とされた光学素材を加熱して歪みを除去するアニール処理をした。このとき、アニール処理における加熱温度はガラス500℃とし、加熱時間は17時間実施する。
次いで、上記プレス成形工程(S3)の後、素子形状とされた光学素材を加熱して歪みを除去するアニール処理をした。このとき、アニール処理における加熱温度はガラス500℃とし、加熱時間は17時間実施する。
<反射防止膜の形成>
図3に示す真空蒸着装置により反射防止膜を形成した。図2は本発明の光学素子の一実施形態を示した断面図であり、光学素材2は上記した光学ガラスよりなり、光学機能膜3は、表2に示した構成のマルチコートの反射防止膜とした。
図3に示す真空蒸着装置により反射防止膜を形成した。図2は本発明の光学素子の一実施形態を示した断面図であり、光学素材2は上記した光学ガラスよりなり、光学機能膜3は、表2に示した構成のマルチコートの反射防止膜とした。
この反射防止膜を形成するには、まず、成膜用のドーム13に光学素材2をセットし、真空チャンバー11内に載置した。真空排気口14から真空排気しながら、加熱ヒータ12より光学素材を270℃に加熱した。
真空チャンバー11内部の真空度が1×10−3Pa以下になるまで排気した後、蒸発源である各種物質を電子銃17により蒸発させ、光学素材2上に表2に示した順番となるように、膜を順次積層していき、最外層にSiO2膜を形成して、反射防止膜とした。
<芯取り工程>
得られた反射防止膜3付の光学素材2を、ダイアモンド砥石により余肉部分を研削、研磨すると同時に、表裏の光軸が合うように芯取りを行い、その後、弱アルカリ性の洗浄液によって光学素材表面に付着したごみやほこりを除去する洗浄を行い、その後、純水で洗浄してpH11の弱アルカリ性洗浄液をリンスした。この時洗浄機で使用している超音波振動子の設定を定格出力0.6kW、発振周波数を5kHzと低負荷とした洗浄を実施した。さらに、イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄、乾燥し、光学素子を得た。
得られた反射防止膜3付の光学素材2を、ダイアモンド砥石により余肉部分を研削、研磨すると同時に、表裏の光軸が合うように芯取りを行い、その後、弱アルカリ性の洗浄液によって光学素材表面に付着したごみやほこりを除去する洗浄を行い、その後、純水で洗浄してpH11の弱アルカリ性洗浄液をリンスした。この時洗浄機で使用している超音波振動子の設定を定格出力0.6kW、発振周波数を5kHzと低負荷とした洗浄を実施した。さらに、イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄、乾燥し、光学素子を得た。
研磨剤使用による成形レンズの変質層除去をせず、真空蒸着装置で表2で示した膜構成で最表層にSiO2膜を実施しない6層構成の反射防止膜とした以外は上記実施例と同様の操作により製造した光学素子(比較例)においては芯取り後洗浄においてクモリが発生し良品採取できず製造歩留まりが0%であったが、上記実施例で得られた光学素子は、フツリン酸ガラスの表面にクモリやキズ等の不具合が抑制され、良品となる割合が向上し、製造歩留まり90%以上を達成することが可能となった。
本発明はプレス成形によるガラスレンズの製造に有用である。
1…光学素子、2…光学素材、3…反射防止膜、11…真空チャンバー、12…加熱ヒータ、13…ドーム、14…真空排気口、15…ガス導入口、16…蒸発源、17…電子銃
Claims (7)
- フツリン酸ガラスからなる光学素材を、目的とする光学素子形状に近似した形状に加工してプリフォームとするプリフォーム形成工程と、
前記プリフォームを純水又は弱アルカリ性の洗浄液で洗浄するプリフォーム洗浄工程と、
前記プリフォーム洗浄工程を経たプリフォームを、加熱して軟化させ、プレスにより光学素子形状とするプレス成形工程と、
前記プレス成形工程を経た光学素材の表面を、研磨剤により処理して変質層を除去する変質層除去工程と、
前記変質層除去工程後、前記光学素材を弱アルカリ性の洗浄液で洗浄する成形後洗浄工程と、
前記成形後洗浄工程を経た光学素材の表面に、最外層が水不透過性の膜となる光学機能膜を形成する光学機能膜形成工程と、
前記光学機能膜形成工程の後、前記光学素材の芯取りを行い光学素子とする芯取り工程と、
前記芯取り工程の後、前記光学素子を洗浄する芯取り後洗浄工程と、
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。 - フツリン酸ガラスからなる光学素材を、目的とする光学素子形状に近似した形状に加工してプリフォームとするプリフォーム形成工程と、
前記プリフォームを純水、弱アルカリ性の洗浄液又は強アルカリ性の洗浄液で洗浄するプリフォーム洗浄工程と、
前記プリフォーム洗浄工程の後、前記光学素材のガラス転移点(Tg)以上屈伏点(At)以下の温度で加熱する真空ベイク工程と、
前記真空ベイク工程を経たプリフォームを、加熱して軟化させ、プレスにより光学素子形状とするプレス成形工程と、
前記プレス成形工程を経た光学素材の表面を、研磨剤により処理して変質層を除去する変質層除去工程と、
前記変質層除去工程後、前記光学素材を弱アルカリ性の洗浄液で洗浄する成形後洗浄工程と、
前記成形後洗浄工程を経た光学素材の表面に、最外層が水不透過性の膜となる光学機能膜を形成する光学機能膜形成工程と、
前記光学機能膜形成工程の後、前記光学素材の芯取りを行い光学素子とする芯取り工程と、
前記芯取り工程の後、前記光学素子を洗浄する芯取り後洗浄工程と、
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。 - 前記研磨剤が、ジルコニア研磨剤である請求項1又は2記載の光学素子の製造方法。
- 前記真空ベイク工程の前段における前記プリフォーム洗浄工程で使用する洗浄液が、強アルカリ性の洗浄液である請求項2又は3記載の光学素子の製造方法。
- 前記水不透過性の膜が、SiO2膜である請求項1〜4のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
- 前記水不透過性の膜の厚さが、1μm以上100μm以下である請求項1〜5のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
- 前記プレス成形工程後、光学素子形状とされた前記光学素材を加熱して歪みを除去するアニール工程を有する請求項1〜6のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
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JPWO2015129129A1 (ja) * | 2014-02-26 | 2017-03-30 | コニカミノルタ株式会社 | 広帯域反射防止膜を有する光学部材 |
-
2012
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