JP3986054B2 - 被成形ガラス用洗浄水、それを用いた洗浄方法、及びガラス光学素子の製造方法 - Google Patents

被成形ガラス用洗浄水、それを用いた洗浄方法、及びガラス光学素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形工程を経て高精度のガラス光学素子に成形される被成形ガラスの洗浄に使用される、高度の清浄度が要求される洗浄水及びその製造方法に関する。特に、本発明は、光学ガラス、光学部品、光学レンズ等の被成形ガラス用に好適な洗浄水及びその製造方法に関する。さらに本発明は、上記洗浄水を用いたガラスの洗浄方法、洗浄ガラスの製造方法、及びガラス光学素子の製造方法に関する。本発明のガラス光学素子の製造方法は、特に、成形後に研削、研磨等の処理を行わない、精密プレスの分野で用いられる光学素子の製造方法である。
【0002】
【従来の技術】
光学部品の仕上がり状態を改善する目的で、光学部品を純水等で洗浄することが知られている(例えば、特開平6-230325号公報参照)。
また、ガラス光学素子の製造方法として、ガラス光学素子をプレス成形し、研削、研磨等の処理を行わない方法が広く実用されている。そして、この光学素子の製造方法に用いられるガラス光学素子素材をプレス成形前に洗浄することも知られている。例えば、特開平7−291638号公報には、成形用硝子素材を、10Pa以下の減圧下、ガラス転移点以上の温度で予備加熱し、ついでpH10以上のアルカリ性水溶液又はpH2〜4の酸性水溶液で洗浄することにより、ガラス素材の表面付近に予備加熱により付着堆積した揮発成分を除去し、精密成形による融着や曇りを防止することが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ガラス光学素子用被成形ガラスを洗浄する洗浄水は、ガラス光学素子の表面状態に悪影響を及ぼさないために高度な清浄度が要求される。その為、一般に、洗浄能力の高い、純水や、高純度のRO水(逆浸透膜を通過した水である逆浸透水)を用いる。また、ガラス光学素子用被成形ガラス表面に付着した汚れを落す為には、種々の市販の洗剤を、単独または組み合わせて使用することができる。これらの洗剤には、汚れを落す高い能力が要求されるとともに、ガラス光学素子用被成形ガラス表面にダメージを与えない工夫がなされている。例えば、特開2000−319699号公報等に、そのような洗浄組成物が記載されている。
【0004】
しかしながら、ガラス光学素子用被成形ガラスに付着したパーティクル汚れを洗い落す為の水洗工程や上記洗剤を洗い落すためのリンス工程などの水洗工程に、純度が高く洗浄能力の高い逆浸透水や純水を用いると、ガラス光学素子用被成形ガラス表面に変質層を形成させる。その結果、表面にダメージ(洗浄時の振動や接触により変質層の生じた表面が荒れたり剥離したりすること)や潜傷を与える為、プレス成形後のガラス光学素子に面精度不良を生じさせる原因となることがある。
【0005】
被成形ガラスを水によって洗浄する工程は、不可避であり、洗浄水の水質がガラスに与える影響は無視できない。そこで、ガラス光学素子用被成形ガラス表面に過度の変質や、ダメージ、潜傷を生じさせないように、洗浄条件(洗浄時間、超音波強度、洗剤の選択、洗剤濃度等)を工夫して洗浄することが考えられる。しかし、化学的耐久性の低いガラスの洗浄時間を短縮すれば、洗浄不良やリンス不良となる。また、化学的耐性の異なるガラス組成ごとに最適な洗浄条件を適用するのは煩雑である。
【0006】
特開平7−291638号公報には、ガラス光学素子用被成形ガラス表面の処理方法が記載されている。しかし、この方法では、融着や曇りは防止できても、レンズの面精度上の問題を解決することはできなかった。また、表面処理前後にパーティクル除去やリンスのための水洗が必要となり、このときに使用する水の水質によっては、変質層やダメージ、潜傷の原因となることがある。
【0007】
また、ガラス光学素子をプレス成形によって製造するときに、硝種によっては、カン、ワレが発生しやすい場合がある。しかし、そのようなカン、ワレの発生を抑える方法は知られていなかった。
【0008】
そこで本発明の目的は、ガラス光学素子用被成形ガラス等の洗浄に用いる洗浄水であって、充分な洗浄力を有し、ガラスへのダメージや潜傷の発生を防止し、洗浄水を用いて洗浄したガラスをプレス成形しても、面精度不良やカン、ワレの発生を防止できる洗浄水を提供することである。
さらに本発明の目的は、上記洗浄水の製造方法、上記洗浄水を用いた洗浄方法及びガラス光学素子用被成形ガラスの製造方法に関する。
加えて本発明は、上記洗浄水を用いた、プレス成形時に、ガラスの揮発成分が融着や曇りを誘発することを抑えることができるガラス光学素子の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して本発明の目的を達成するため本発明者らは種々の検討を行った。
純度が高く洗浄能力の高い逆浸透水や純水を用いて、被成形ガラス素材を洗浄すると、ガラス表面には変質層(青ヤケ層と呼ばれることがある)が形成される。これは、水中に含まれているオキソニウムイオン(H3O+)の働きによると考えられている。このH3O+イオンが、ガラス中の修飾イオン(例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属)とイオン交換を起こし、修飾イオンが溶出して、青ヤケが起きる。この層が、ガラス表面の変質層である。この変質層がある程度厚くなると、被成形ガラス表面にダメージを発生させ、光学素子の歩留り低下を起こすことが見出された。
【0010】
それに対して、水中にアルカリ金属イオン(例えばNaイオン)を適量添加すると、水中のH3O+イオンが減少し、上記イオン交換を抑制するとともに、ガラス骨格(SiO2など)を崩壊させる。そのため、変質層が成長しにくくなり、形成されても相対的に薄くなる。しかしながら、Naイオンの量が多くなりすぎると水がアルカリ性に傾き過ぎ、ガラス表面での骨格成分(SiO2など)の溶出が進行する。そのため、変質層が更に薄くなる一方、表面が劣化されて表面が荒れるという新たな問題が生じる。
【0011】
このような知見に基づいて、本発明では、洗浄水中のアルカリ金属イオン量とpHを適度な範囲に保つことにより、変質層の形成を制御し、適度な変質層を形成させると、ガラス表面が良好な状態となることを見いだした。
さらに本発明者は、カン、ワレの発生と、被成形ガラスの洗浄とに相関があるのではないかとも考え種々検討した。その結果、被成形ガラスの洗浄水を工夫することでカン、ワレの発生を抑制できることを見出した。
このような知見に基づいて本発明は完成された。
【0012】
本発明は、以下の通りである。
[請求項1]アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するガラスの洗浄に用いる洗浄水であって、電気伝導率が80〜220μS/cmの範囲になる量のアルカリ金属イオンを含有し、pHが7を超え8以下であり、かつ他の陽イオン(水分子から派生するものを除く)は実質的に含有しないことを特徴とする洗浄水。
[請求項2]アルカリ金属イオン含有量が、15〜50ppmである、請求項1の洗浄水。
[請求項3]アルカリ金属イオンがNaイオンである、請求項1または2記載の洗浄水。
[請求項4]アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するガラスがガラス光学素子用被成形ガラスである請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄水。
[請求項5]請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄水を、ガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄工程に用いることを特徴とするガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄方法。
[請求項6]洗浄したガラス光学素子用被成形ガラスの製造方法であって、ガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄に請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄水を用いることを特徴とする製造方法。
[請求項7]請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄水を用いて、ガラス光学素子用被成形ガラスを洗浄し、洗浄された被成形ガラスを加熱軟化し、成形型によってプレス成形する工程を含む、ガラス光学素子の製造方法。
[請求項8]洗浄水が、逆浸透水にアルカリ金属イオンを添加する工程を含む方法で調製された水である、請求項7に記載の製造方法。
[請求項9]アルカリ金属イオンの添加工程が、アルカリ性の軟水を、逆浸透水に添加することによって行われる請求項8に記載の製造方法。
[請求項10]アルカリ性の軟水が、原水をアルカリ金属イオン型陽イオン交換樹脂でイオン交換した水である請求項9記載の製造方法。
【0013】
[洗浄水]
本発明の洗浄水は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するガラスの洗浄に用いる洗浄水であって、電気伝導率が80〜220μS/cmの範囲になる量のアルカリ金属イオンを含有し、pHが7を超え8以下であり、かつ他の陽イオン(水分子から派生するものを除く)は実質的に含有しないことを特徴とする。
【0014】
「アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するガラス」には特に制限はなく、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含有するガラスであれば、対象となる。特に化学的耐久性の小さいガラスであっても、ダメージを生じずに有効に適用することができる。
【0015】
さらに、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するガラスがガラス光学素子用被成形ガラスであることができる。ガラス光学素子用被成形ガラスとしては、バリウムホウケイ酸塩ガラス、ランタン系ガラスなどが適用できる。例えば、ガラス素材の組成が、重量%で、SiO2 28〜55%、B23 5〜30%、SiO2+B23 46〜70%、SiO2/B23 1.3〜12.0(重量比)、Li2O 5〜12%、Na2O 0〜5%、K2O0〜5%、Li2O+Na2O+K2O 5〜12%、BaO 0〜40%、MgO 0〜10%、CaO 0〜23%、SrO 0〜20%、ZnO 0〜20%、BaO+MgO+CaO+SrO+ZnO 10〜44%、SiO2+B23+Li2O+BaO+CaO 72%以上、Al23 1〜7.5%、P250〜3%、La230〜15%、Y23 0〜5%、Gd23 0〜5%、TiO2 0〜3%、Nb25 0〜3%、ZrO2 0〜5%、La23+Y23+Gd23 1〜15%、Sb23 0.5%以下のガラスが、例として挙げられる。
【0016】
ガラス光学素子用被成形ガラスは、特に、Ba又はCaを含有しているガラス、さらには、Ba、Caを酸化物に換算して15wt%以上含有しているガラスであることができる。また、ヘーズ値の高いガラス、例えば、65℃90%RH環境14日放置でヘーズ値6%以上のガラスであることもできる。
【0017】
本発明の洗浄水は、電気伝導率が80〜220μS/cmの範囲になる量のアルカリ金属イオンを含有する。アルカリ金属イオンの含有量が、電気伝導率が80〜220μS/cmの範囲になる量とすることで、ガラス表面に過度の変質層が形成することを防止して、このガラスをプレスする場合、有利な厚さ(例えば、4〜12nm)の変質層を制御して形成できる。
【0018】
本発明の洗浄水に含まれるアルカリ金属イオンとしては、例えば、Naイオン、Kイオン等を挙げることができるが、好ましくはNaイオンである。アルカリ金属イオンは複数種類含まれていてもよく、その場合にも、アルカリ金属イオンの合計含有量は、電気伝導率が80〜220μS/cmの範囲になる量とする。
【0019】
上記電気伝導率が220μS/cmを越えると、アルカリ金属イオンによるガラスに含まれるSiO2などガラス骨格の崩壊速度が速くなりすぎるため好ましくない。また、上記電気伝導率が80μS/cm未満では、変質層が過度に形成されるため好ましくない。電気伝導率は、好ましくは100〜200μs/cmの範囲である。
【0020】
本発明の洗浄水は、pHが7を超え8以下である。pHが7以下では、変質層が過度に形成して好ましくない。一方、pHが8を超えるとアルカリ金属によるガラス骨格の崩壊速度が大きくなりすぎるため好ましくない。
【0021】
本発明の洗浄水中のアルカリ金属イオン含有量は、例えば、15〜50ppmであることが、電気伝導率を80から220μS/cmの範囲とし、かつpHが7を超え8以下である洗浄水を得るという観点から好ましい。
【0022】
本発明の洗浄水は、水分子から派生するイオン及びアルカリ金属イオン以外の陽イオンを実質的に含有しない。本発明の洗浄水は、アルカリ金属以外の陽イオン(例えばCa、Mg、Feなど)は、実質的に含有しない。実質的に含有しないとは、これらのイオン濃度が、例えば、1ppm未満であることを意味する。アルカリ金属以外の陽イオン、例えばアルカリ土類金属が存在すると、電気伝導率には寄与するが、これらはSiO2などガラス骨格を崩壊する働きをせず、更に他の陰イオンと結合し不溶塩を形成するため、本発明で言うところの、適度な変質層の形成には寄与しない。
【0023】
本発明の洗浄水は、水分子から派生するイオン及びアルカリ金属イオン以外の陽イオンを実質的に含有せず、アルカリ金属イオンを電気伝導率が80から220μS/cmの範囲となる量で含有し、pHを7を超え8以下とすることにより、例えば、ガラス光学素子用被成形ガラスを洗浄する場合、その表面の過度の変質層が形成されることを防止でき、プレス成形に有利な厚さの変質層を制御して形成できる。
【0024】
適度な変質層の形成は、プレス成形におけるカン、ワレを防止する効果がある。これは、変質層(ガラスの骨格成分の濃度が高い部分)があるために、ガラス中の反応成分がプレス中に成形型表面と接触し、反応することが抑制され、成形型とガラスの間の融着や付着が防止されるためとみられる。これにより、プレス成形工程、特に、離型時に割れやすい硝種や形状の光学素子を製造する際にカン、ワレを防止できるという顕著な効果が得られる。
【0025】
[洗浄水の製造方法]
本発明の洗浄水は、例えば、逆浸透水にアルカリ金属イオンを添加する工程を含む方法で製造することができる。逆浸透水は、RO水とも呼ばれ、逆浸透膜を通過させた水であり、常法により得ることができる。
本発明に用いられる逆浸透水は、公知の逆浸透膜を通過させたものを使用できる。逆浸透膜としては、セルロースアセテート、芳香属ポリアミド、薄膜組成物によるものなどが公知のものから適宜選択できる。
【0026】
この逆浸透水は、水分子から派生するイオン以外のイオンの濃度が1ppm以下であり、水分子から派生するイオン以外の陽イオンを実質的に含有しない。
【0027】
この逆浸透水に、適量のアルカリ金属イオンを添加することで、本発明の洗浄水が得られる。アルカリ金属イオンの添加工程は、アルカリ性の軟水を、逆浸透水に添加することによって行うことができる。アルカリ性の軟水は、原水をアルカリ金属イオン型陽イオン交換樹脂でイオン交換した水であることができる。ここで、原水とは、水道水、工業用水等であることができる。
【0028】
Naイオンを添加する水は、逆浸透水に限定されず、逆浸透水の代わりに、例えば、パーティクルフィルター、活性炭、イオン交換樹脂などによって逆浸透水の純度を更に上げた純水を用いても良い。
【0029】
具体的には逆浸透水とアルカリ性の軟水を、適切な比率で混合することで本発明の洗浄水を調製できる。アルカリ性の軟水は、イオン交換法による軟水化装置を通過した水であることができ、上述のように、例えば、原水をアルカリ金属イオン型陽イオン交換樹脂でイオン交換した水である。この方法では、Ca、Mg、Fe、Mnなどの硬水成分を、イオン交換樹脂を通過させることにより除去する。例えば、NaClを再生剤として含有する樹脂を通過させ、Naイオンに置き代えることによって軟水を得る。軟水化を施す原水は、フィルター等で、不要物を取り除いておくことが好ましい。
この方法により、大掛かりな設備や高価な装置を導入せずに、本発明の洗浄水を容易に得られる。
【0030】
[洗浄方法、洗浄ガラスの製造方法]
本発明は、上記本発明の洗浄水を、ガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄工程に用いることを特徴とするガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄方法、及び洗浄したガラス光学素子用被成形ガラスの製造方法であって、ガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄に上記本発明の洗浄水を用いることを特徴とする製造方法を包含する。
【0031】
本発明のガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄方法及び洗浄したガラス光学素子用被成形ガラスの製造方法は、例えば、以下の方法で行うことができる。
ガラス光学素子用被成形ガラス素材の洗浄は、例えば市販の水系洗浄機に市販の水系洗浄剤を組み合わせて、行うことができる。洗浄工程の例としては、以下の▲1▼〜▲6▼の工程からなるものがある。
▲1▼パーティクル除去用水洗
▲2▼洗剤による洗浄
▲3▼洗剤リンスのための洗浄
▲4▼純水による洗浄
▲5▼IPA(イソプロピルアルコールによる洗浄
▲6▼IPAベーパー乾燥
【0032】
本発明の洗浄水は、例えば上記▲3▼の工程に使用できる。
ガラス光学素子用被成形ガラス素材の洗浄工程としては、上記以外の工程を含んでも良く、組み合わせても良い。また、必要に応じて、例えば▲2▼と▲3▼を繰り返しても良い。ここでは、乾燥の前に純水で洗浄を行っているが、これは必ずしも必要でない。好ましくは、本発明の洗浄水をパーティクル除去用水洗浄槽及び洗剤リンス槽に用いるのが良い。
【0033】
本発明の洗浄水に、ガラスが浸漬されている時間は、ガラスの組成によって異なるが、好ましくは、トータルで30分以内、更には20分以内が好ましい。30分以上だと、変質層が厚くなりすぎる懸念がある。
【0034】
そして、表面の適度な変質層とは、ガラスに含まれる揮発成分(例えばB2O3)及び反応性成分(例えば、アルカリ金属及びBa、Caなどのアルカリ土類金属)が少なく、Si等のガラスの骨格を形成する成分を主体とする層のことである。適度な変質層は、プレス成形における融着や曇りを防止する効果もある。本発明の洗浄水による洗浄により形成される変質層の厚みは、およそ4〜12nmであることが好ましい。変質層のみはXPSにより測定することができる。
【0035】
本発明の洗浄水を用いることで、短時間で簡便に、プレス成形に有利な表面変質層を、ガラス光学素子用被成形ガラス表面に形成することができる。
また、特開平7-291638号に開示されている、ガラス中の揮発成分が起因してプレス時の融着や曇りを起こす場合にも、本発明の洗浄水をもちいることで、洗浄水中のアルカリ金属イオンの働きにより、表面近傍の揮発成分を除去する一方、変質層が厚くなりすぎないように制御して洗浄を行うことができる。また、洗浄中のオキソニウムイオンの働きにより、ガラス表面近傍の反応性成分を溶出することによる融着、曇り防止効果もある。
【0036】
[ガラス光学素子の製造方法]
本発明は、上記本発明の洗浄水を用いて、ガラス光学素子用被成形ガラスを洗浄し、洗浄された被成形ガラスを加熱軟化し、成形型によってプレス成形する工程を含む、ガラス光学素子の製造方法を包含する。
本発明の洗浄水によって、洗浄された被成形ガラスは、公知の方法によってプレス成形を行い、ガラス光学素子を得ることができる。成形後に研削、研磨を必要としない精密プレスにおいては、プレス後の光学素子の面精度や外観が品質を左右するため、本発明が有効に適用される。
【0037】
被成形ガラスの成形は、公知のプレス成形装置を用いて行う事ができる。具体的には、必要なレンズ形状、表面状態に加工された被成形ガラスに対向する成形面を持つ上型、下型、この上型、下型を必要とする位置に保つ為の案内型を用いてプレス成形することにより行われる。例えば案内型中に保たれた下型、上型の間に被成形ガラスを保ち、ガラス軟化点より高い必要とする温度に型と被成形ガラスを保った後、上型を押し込むことにより、上型と下型の距離を必要とする値まで縮めて成形し、成形されたレンズ、型を冷却し、しかる後に取り出すことにより必要とするレンズを得ることができる。
【0038】
プレス成形に用いる被成形レンズの推奨できる温度範囲としては、例えば、530〜680℃の範囲を挙げることができ、硝種、レンズ形状などに応じて適宜選択できる。上型、下型、案内型の温度に関しては、被成形ガラスと同じ温度にしてプレスすれば良い(等温プレス)。あらかじめ被成形ガラスを、成形型とは別に加熱しておく適当な処置が取られていれば、上型、下型、案内型の温度を被成形ガラスの温度より低くしてプレスすることも可能である。この場合、被成形ガラスの温度は等温プレスで用いられる温度より高くしておくことが望ましい。成形型としては、例えばCVD法にて作成されたSiCを必要とする形状に加工し、被成形ガラスに対向する面に硬質炭素膜を形成したものを使用できる。この他型材としてはSi34、Moなども使用可能である。この硬質炭素膜としてはスパッタリング法にて形成したもの、イオンプレーティング法にて形成したもの、イオンプレーティング法にて形成した炭素膜の上にスパッタリング法にて形成した2重構造のものを、硝種、レンズ形状に応じて使用することができる。ここで硬質炭素膜とは、マイクロビッカース硬さが1000kg/mm2以上の炭素膜を言う。
【0039】
上述のように、ガラス光学素子用被成形ガラス表面は、逆浸透水、純水等の純度の高い水により洗浄すると、ヤケが発生し、変質層が生じる。従来のように、逆浸透水、純水等の純度の高い水を使用して洗浄する場合、ガラス光学素子用被成形ガラス表面には、過度の変質層が形成し、プレス成形によって不都合な面精度不良が起きる。しかしながら、本発明の洗浄水を用いることにより、ガラス光学素子用被成形ガラスの中で、特に化学的耐久性の弱いガラス組成であっても、洗浄不良を防ぎ充分な洗浄力が得られ、適度な変質層によるダメージや潜傷を無くし、プレス成形に有利な表面を制御して形成できる。また、カン、ワレも抑制できる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
本発明による洗浄水を、逆浸透水と軟水の混合により調整した。調整割合を変えることにより、5種類の電気伝導率(5、100、200、300、600μS/cm)の洗浄水を作り、2種類の組成のガラス光学素子用被成形ガラス(バリウムホウケイ酸ガラス、ランタン系光学ガラス)を洗浄し、その表面状態を調べた後、実際にプレス成形を行った。尚、上記5種類の洗浄水は、逆浸透水の混合比率が高いものほど、電気伝導率が低い。
【0041】
[ガラス光学素子用被成形ガラスの組成]
ガラス組成1:
基本組成:SiO2 37.8、 B2O3 24.0、 Al2O3 5.3、 Li2O 8.5、 C aO 5.0、BaO 16.1、 La2O3 3.3、 As203 0.5、 Sb2O3 0.2 ( 各wt%))
ガラス組成2:
基本組成:SiO2 19.5、 B2O3 17.9、 Li2O 9.5、 CaO 18.4、 La2O3 11.2、 ZrO2 5.2、 TiO2 4.9、 Nb2O5 13.4 (各wt%))
[洗浄工程]
▲1▼パーティクル除去用水洗 → ▲2▼洗剤による洗浄 → ▲3▼洗剤リンスのための洗浄 → ▲4▼純水による洗浄 → ▲5▼IPAによる洗浄 → ▲6▼IPAベーパー乾燥
【0042】
洗浄試験には、上記2種類のガラスレンズ用被成形ガラスを市販の水系洗浄機と水系洗浄剤を用い、上記5種類の洗浄水を、パーティクル除去用水洗浄槽および洗浄剤リンス槽に用いて行った。尚、洗剤は逆浸透水で希釈した。洗浄後のガラス光学素子用被成形ガラス表面の状態確認を行い、さらにバリウムホウケイ酸塩系ガラスについては、プレス成形を行い、以下の基準で評価した。結果を、表1及び2に示す。
【0043】
[プレス成形工程]
案内型中に保たれた上型、下型が炭化ケイ素からなり、その成形面を炭素膜で被覆された、公知のガラスモールドレンズ用成形型を用い、ガラス光学素子を成形した。すなわち、前記組成の被成形ガラスのプリフォームを型にセットし、非酸化性雰囲気で成形型とともにプリフォームをガラス粘度が107.6ポアズに相当する温度に加熱し、その温度で上型を100kg/cm2の圧力で50秒押圧し、その後成形型内で80℃/minの冷却速度でTg以下になるまで冷却し、さらにその後急冷して得られたレンズを取出した。このレンズはプレス径13mm、中心肉厚3mmの両凸レンズだった。
【0044】
[評価]
[洗浄後の清浄度]
◎:表面が非常に清浄であり、外観に全く異常が認められない。
○:表面が清浄であり、外観にほとんど異常が認められない。
△:表面に若干の汚れが残り、外観に若干のダメージが認められる。
×:表面に汚れが残り、外観にダメージが認められる。
【0045】
[洗浄後-外観]
◎:外観に剥離等の欠陥が全く認められない。
○:外観に剥離、潜傷等の欠陥が1%未満
△:外観に剥離、潜傷等の欠陥が2%未満
×:外観に剥離、潜傷等の欠陥が40%以上
【0046】
[プレス成形後−性能]
◎:面精度不良の発生無し。
×:面精度不良の発生が1個以上発生
注)面精度不良とは、被成形ガラス表面の剥離やダメージに起因して、プレス後のレンズに発生する表面形状不良
【0047】
[プレス成形後−形状]
◎:カン,ワレの発生無し。
×:カン、ワレ発生がサンプルの1個以上発生
【0048】
【表1】
ガラス組成1
Figure 0003986054
【0049】
【表2】
ガラス組成2
Figure 0003986054
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、ガラス光学素子用被成形ガラス等の洗浄に用いる洗浄水であって、充分な洗浄力を有し、ガラスへのダメージや潜傷の発生を防止し、洗浄水を用いて洗浄したガラスをプレス成形しても、面精度不良やカン、ワレの発生を防止できる洗浄水を提供することができる。
さらに本発明によれば、上記洗浄水の製造方法、上記洗浄水を用いた洗浄方法及びガラス光学素子用被成形ガラスの製造方法を提供できる。
加えて本発明によれば、上記洗浄水を用いた、プレス成形時に、ガラスの揮発成分が融着や曇りを誘発することを抑えることができるガラス光学素子の製造方法を提供することができる。
【0051】
本発明の洗浄水を用いると、ガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄方法において、従来の水系洗浄機、水系洗剤、本発明の洗浄水を用いながら、充分な洗浄を行い、かつ過度な表面変質層及びダメージや潜傷を防止することができる。また、プレス成形に有利な表面変質層を制御して形成することができ、融着や成形されたガラス素子表面の曇りなども防止できる。

Claims (10)

  1. アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するガラスの洗浄に用いる洗浄水であって、電気伝導率が80〜220μS/cmの範囲になる量のアルカリ金属イオンを含有し、pHが7を超え8以下であり、かつ他の陽イオン(水分子から派生するものを除く)は実質的に含有しないことを特徴とする洗浄水。
  2. アルカリ金属イオン含有量が、15〜50ppmである、請求項1の洗浄水。
  3. アルカリ金属イオンがNaイオンである、請求項1または2記載の洗浄水。
  4. アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するガラスがガラス光学素子用被成形ガラスである請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄水。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄水を、ガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄工程に用いることを特徴とするガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄方法。
  6. 洗浄したガラス光学素子用被成形ガラスの製造方法であって、ガラス光学素子用被成形ガラスの洗浄に請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄水を用いることを特徴とする製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄水を用いて、ガラス光学素子用被成形ガラスを洗浄し、洗浄された被成形ガラスを加熱軟化し、成形型によってプレス成形する工程を含む、ガラス光学素子の製造方法。
  8. 洗浄水が、逆浸透水にアルカリ金属イオンを添加する工程を含む方法で調製された水である、請求項7に記載の製造方法。
  9. アルカリ金属イオンの添加工程が、アルカリ性の軟水を、逆浸透水に添加することによって行われる請求項8に記載の製造方法。
  10. アルカリ性の軟水が、原水をアルカリ金属イオン型陽イオン交換樹脂でイオン交換した水である請求項9記載の製造方法。
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