構造物は、地震などに伴って振動するときには、単一の固有振動数で振動するとは限らず、互いに異なる複数の固有振動数で、すなわち複数の振動モードで振動するのが通常である。これに対し、上述した従来のようなマスダンパおよび支持部材から成る1基の付加振動系の固有振動数は、ただ1つである。このため、構造物の複数の振動モードによる振動を適切に抑制すべく、構造物の複数の固有振動数に付加振動系の固有振動数を同調させるには、少なくとも構造物の固有振動数と同じ数の複数の付加振動系を設けなければならない。その結果、付加振動系の設置数が増大し、ひいては、制振装置の大型化およびコストの増大を招いてしまう。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、複数の振動モードによる構造物の振動を、単一の付加振動系を用いて適切に抑制でき、それにより、装置の小型化および製造コストの削減を図ることができる構造物の制振装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、支持体に立設された構造物の振動を抑制するための構造物の制振装置であって、上下方向に延び、上端部が構造物の上端部に連結され、下端部が支持体に連結されるとともに、圧縮剛性および引張剛性が互いに異なる値に設定された支持部材と、支持部材に直列に連結され、回転可能な回転マスを有するとともに、構造物が振動したときに、支持部材を介して伝達される構造物の変位を回転マスの回転運動に変換するマスダンパと、を備えることを特徴とする。
地震時などに構造物が振動すると、構造物が高層の場合には特に、構造物のせん断変形よりも曲げ変形が卓越するため、構造物の振動は、その上端側が横方向に繰り返し往復動するような態様(以下「構造物の揺動」という)で行われる。上述した構成によれば、支持体に立設された構造物の上端部に、支持部材の上端部が連結され、この支持部材の下端部は支持体に連結されるとともに、支持部材には、回転マスを有するマスダンパが直列に連結されている。構造物が上述したように揺動すると、その変位が支持部材を介して伝達されることによって、回転マスが回転し、支持部材およびマスダンパから成る付加振動系が振動する。これにより、付加振動系の固有振動数が構造物の固有振動数に同調した状態で、構造物の振動エネルギが付加振動系で吸収されることによって、構造物の振動が抑制される。
また、振動時に、構造物が曲げ変形を伴いながら揺動することと、構造物の変位が上下方向に延びる支持部材を介してマスダンパに伝達されることから、支持部材には圧縮荷重と引張荷重が交互に作用する。上述した構成によれば、支持部材の圧縮剛性および引張剛性が互いに異なる値に設定されているので、支持部材およびマスダンパから成る付加振動系の固有振動数として、支持部材に圧縮荷重が作用したときと、引張荷重が作用したときで、互いに異なる大きさの固有振動数を得ることができる。
このため、支持部材の圧縮剛性および引張剛性を適宜、設定することにより、構造物の互いに異なる所望の2つの固有振動数に対して、付加振動系の固有振動数を多重同調させることができる。すなわち、支持部材に圧縮荷重が作用したときの付加振動系の固有振動数を、構造物の1つの固有振動数に同調させるとともに、引張荷重が作用したときの付加振動系の固有振動数を、構造物の他の1つの固有振動数に同調させることができる。これにより、前述した従来の場合と異なり、複数の振動モードによる構造物の振動を、単一の付加振動系を用いて適切に抑制できる。その結果、付加振動系の設置数を減らすことが可能になり、それにより、装置の小型化および製造コストの削減を図ることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構造物の制振装置において、支持部材の圧縮剛性およびマスダンパの諸元は、支持部材の圧縮剛性およびマスダンパの諸元に応じて定まる、支持部材およびマスダンパから成る付加振動系の固有振動数が構造物の所定の第1固有振動数に同調するように、設定され、支持部材の引張剛性およびマスダンパの諸元は、支持部材の引張剛性およびマスダンパの諸元に応じて定まる付加振動系の固有振動数が第1固有振動数とは異なる構造物の所定の第2固有振動数に同調するように、設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、支持部材の圧縮剛性およびマスダンパの諸元は、支持部材の圧縮剛性およびマスダンパの諸元に応じて定まる、支持部材およびマスダンパから成る付加振動系の固有振動数が、構造物の所定の第1固有振動数に同調するように、設定されている。また、支持部材の引張剛性およびマスダンパの諸元は、支持部材の引張剛性およびマスダンパの諸元に応じて定まる、付加振動系の固有振動数が、構造物の第1固有振動数とは異なる所定の第2固有振動数に同調するように、設定されている。これにより、支持部材に圧縮荷重が作用したときの付加振動系の固有振動数を、構造物の所望の第1固有振動数に同調させるとともに、引張荷重が作用したときの付加振動系の固有振動数を、構造物の所望の第2固有振動数に同調させることができるので、請求項1で述べた効果を有効に得ることができる。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の構造物の制振装置において、支持部材は、構造物を中心として互いに対称に配置された一対の支持部材で構成され、一対の支持部材の圧縮剛性同士および引張剛性同士はそれぞれ、互いに同じ値に設定されており、マスダンパは、一対の支持部材にそれぞれ連結された一対のマスダンパで構成されていることを特徴とする。
前述したように、地震時などに構造物が揺動するのに伴い、支持部材には圧縮荷重と引張荷重が交互に繰り返し作用する。上述した構成によれば、一対の支持部材が、構造物を中心として互いに対称に配置されているので、構造物の揺動に伴い、一対の支持部材の一方に圧縮荷重が作用するときには、それと同時に、他方の支持部材に引張荷重が作用するという関係が得られるとともに、各支持部材には圧縮荷重と引張荷重が交互に繰り返し作用する。
また、これら一対の支持部材の間では、圧縮剛性同士が互いに同じ値に設定され、引張剛性同士が互いに同じ値に設定されるとともに、マスダンパが、一対の支持部材にそれぞれ連結された一対のマスダンパで構成されている。このため、構造物の揺動中、互いに異なる圧縮剛性および引張剛性に基づく多重同調が常時、行われる。したがって、請求項2で述べたマスダンパの諸元、支持部材の圧縮剛性および引張剛性の設定と相まって、構造物の揺動中、一対の支持部材およびマスダンパから成る一対の付加振動系全体として、その2つの固有振動数を構造物の固有振動数に常に多重同調させることができるので、請求項1による効果をより有効に得ることができる。
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の構造物の制振装置において、支持部材の圧縮剛性および引張剛性ならびにマスダンパの諸元は、当該支持部材の圧縮剛性および引張剛性ならびにマスダンパの諸元に応じて定まる、支持部材およびマスダンパ成る付加振動系全体の固有振動数が、構造物の所定の1次固有振動数に同調するように、設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、支持部材には圧縮荷重と引張荷重が交互に繰り返し作用するのに伴い、支持部材の圧縮剛性および引張剛性とマスダンパの諸元に応じて定まる付加振動系全体としての固有振動数を構造物の一次固有振動数に同調させることができ、したがって、請求項2の場合とは異なる制振特性を得ることができる。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の構造物の制振装置において、構造物に設けられ、支持部材のマスダンパとの連結部に近い部分を係止することによって、支持部材のねじれを防止するためのねじれ防止機構をさらに備えることを特徴とする。
構造物の変位が支持部材を介してマスダンパに伝達され、回転マスが回転する際には、マスダンパの反力トルクが支持部材に伝達されることによって、支持部材が大きくねじられるおそれがある。ここで、ボールねじの摩擦がない理想的な状態において、マスダンパの反力トルクTnは、マスダンパの軸方向反力Pnとボールねじのリード長Ld(ピッチ)に比例し、Tn=(Pn×Ld)/(2π)で表される。この反力トルクによる支持部材のねじれは、構造物に設けられたねじれ防止機構により、支持部材を係止し、その回転を拘束することによって、防止される。したがって、支持部材を介してマスダンパに伝達される構造物の変位を、マスダンパの反力トルクの影響を受けることなく、回転マスの回転運動に良好に変換でき、それにより、構造物の振動の抑制を適切に行うことができる。また、支持部材のマスダンパとの連結部に近い部分が係止されるので、支持部材のねじれ防止を効果的に行うことができる。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の構造物の制振装置において、支持部材は、その長さ方向の途中の部位に当接部を有し、構造物に設けられ、支持部材の当接部が当接することによって、支持部材の座屈を防止するための座屈防止機構をさらに備えることを特徴とする。
前述したように、構造物の揺動中、支持部材には圧縮荷重と引張荷重が交互に作用するので、この圧縮荷重によって支持部材が座屈するおそれがある。上述した構成によれば、支持部材は、その長さ方向の途中の部位に当接部を有しており、この当接部が座屈防止機構に当接することによって、支持部材の座屈が防止される。これにより、構造物の変位を支持部材を介してマスダンパに良好に伝達でき、構造物の振動の抑制をより適切に行うことができる。
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の構造物の制振装置において、座屈防止機構は、構造物に設けられた基部と、基部に設けられ、支持部材の当接部が当接する被当接部とを有し、被当接部および当接部の少なくとも一方が、滑性を有する材料で構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、座屈防止機構は、構造物に基部を介して設けられた被当接部を有しており、この被当接部に支持部材の当接部が当接することによって、支持部材の座屈が防止される。また、構造物が揺動するのに伴い、支持部材は、その当接部が被当接部に接触した状態で、上下方向に交互に移動する。本発明によれば、互いに接触する被当接部および当接部の少なくとも一方が、滑性を有する材料で構成されているので、この支持部材の上下方向の移動を円滑に行うことができる。その結果、構造物の変位を支持部材を介してマスダンパに良好に伝達でき、構造物の振動の抑制をさらに適切に行うことができる。
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の構造物の制振装置において、座屈防止機構の基部には、弾性材で構成された取付部が設けられ、被当接部は、取付部を介して基部に取り付けられていることを特徴とする。
上述したように、支持部材の移動は、構造物の揺動に伴って生じるので、座屈防止機構の被当接部に対して傾いた(回転角が発生した)状態で行われることがある。本発明によれば、この被当接部が、弾性材で構成された取付部を介して取り付けられている。この構成により、支持部材が被当接部に対して傾いた状態で移動する場合には、取付部が支持部材に追従して弾性変形することによって、支持部材の傾き(回転角)が吸収される。これにより、支持部材の当接状態を保ちながら、その移動を円滑に行わせることができ、したがって、構造物の変位を支持部材を介してマスダンパに良好に伝達することができる。
請求項9に係る発明は、請求項6に記載の構造物の制振装置において、座屈防止機構は、構造物に設けられた基部と、基部に設けられ、支持部材の当接部が当接する被当接部とを有し、被当接部は、支持部材と接触するとともに、移動する支持部材を回転しながら案内するガイドローラで構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、請求項6の場合と同様、座屈防止機構の被当接部に、支持部材の当接部が当接することによって、支持部材の座屈が防止される。また、この被当接部はガイドローラで構成されており、ガイドローラは、支持部材と接触するとともに、支持部材が移動する際に回転し、支持部材を案内する。したがって、請求項6の場合と同様、支持部材の移動を円滑に行わせながら、構造物の変位を支持部材を介してマスダンパに良好に伝達でき、構造物の振動の抑制をさらに適切に行うことができる。
請求項10に係る発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の構造物の制振装置において、マスダンパに設けられ、マスダンパにその軸線方向に作用する荷重が所定の制限荷重に達したときに、マスダンパによる構造物の変位から回転マスの回転運動への変換を制限する制限機構をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、マスダンパにその軸線方向に作用する荷重が所定の制限荷重に達したときに、構造物の変位を回転マスの回転運動に変換するマスダンパの動作が、制限機構によって制限される。これにより、マスダンパの反力の過大化が防止されるので、前述した請求項4および5に係る発明の作用と相まって、支持部材のねじれおよび座屈を確実に防止することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1に示す構造物Bは、高層のビルであり、地盤に設けられた基礎Fに立設されている。制振装置1は、支持部材2およびマスダンパ3で構成された複数の付加振動系Aを備える。この制振装置1は、この付加振動系Aの固有振動数を、地震時などに振動する構造物Bの固有振動数に同調させることによって、構造物Bの振動エネルギを付加振動系Aで吸収し、抑制するものである。
図1および図2に示すように、付加振動系Aは、構造物Bの外周に沿うように計10基、設けられている。具体的には、構造物Bを中心として、図1の奥行方向(図2の上下方向)に対向する位置に各3基、左右方向に対向する位置に各2基、それぞれ互いに対称に配置されている。
各支持部材2は、構造物Bの外側に配置され、上下方向に延びており、その上端部は構造物Bの上端部、例えば最上部のブレース階FBに連結されるとともに、下端部にはマスダンパ3が連結されている。図3に示すように、支持部材2は、上下方向に互いに接合・固定された複数の柱材4で構成されている。各柱材4は、中空の角柱状の鋼材で構成されており(図4参照)、その上下の各端部にはフランジ4aが一体に設けられている。
各上下2つの柱材4、4は、それらのフランジ4a、4aを互いに突き合わせた状態で、各フランジ4aに形成された複数の孔(図示せず)にそれぞれボルト5を挿入するとともに、各ボルト5にダブルナット7をねじ込み、締め付けることによって、互いに連結されている。
また、一方の柱材4のフランジ4aとダブルナット7の間には、皿ばね6が設置されている。図5に示すように、皿ばね6は、4枚のばね座金6aを交互に異なる向きで重ねた、いわゆる直列4段タイプのものである。
図6は、上記の構成の支持部材2に作用する軸荷重Fと変形量δとの関係を示している。同図において、傾きθTは支持部材2の引張剛性を表し、傾きθCは支持部材2の圧縮剛性を表す。すなわち、柱材4、4の連結部に皿ばね6が上述したように設置されるため、支持部材2に引張荷重が作用したときには、皿ばね6がたわむので、支持部材2の引張剛性θHは、柱材4と皿ばね6の剛性を合わせたものになる。これに対し、支持部材2に圧縮荷重が作用したときには、皿ばね6はたわまないので、支持部材2の圧縮剛性θCは、柱材4の剛性に一致する。その結果、図6に示すように、支持部材2の引張剛性θTは、圧縮剛性θCよりも小さくなる。
なお、皿ばね6を設置する柱材4、4の連結部の数は、任意に設定することが可能であり、その数が増えるほど、直列に配置される皿ばね6の数が多くなるため、支持部材2の引張剛性θTはより小さくなる。また、例示した直列4段タイプの皿ばね6に代えて、ばね座金6aの枚数が異なる皿ばね、あるいは並列型の皿ばねを採用することが可能であり、それによっても、支持部材2の引張剛性θTを調整することができる。
図7に示すように、マスダンパ3は、内筒11、ボールねじ12、回転マス13、および制限機構14を有している。内筒11は、円筒状の鋼材で構成されている。内筒11の一端部は開口しており、他端部は、マスダンパ3の反力によっては回転しない程度の摩擦を有する自在継手15aを介して、第1フランジ15に回転自在に且つ軸線方向に移動不能に取り付けられている。
また、ボールねじ12は、ねじ軸12aと、ねじ軸12aに多数のボール12bを介して螺合するナット12cを有しており、内筒11と同軸状でかつ直列に配置されている。ねじ軸12aの一端部は、上述した内筒11の開口に収容されており、ねじ軸12aの他端部は、マスダンパ3の反力によっては回転しない程度の摩擦を有する自在継手16aを介して、第2フランジ16に回転自在に且つ軸線方向に移動不能に取り付けられている。ナット12cの一端部は、クロスローラベアリング17を介して内筒11に嵌合しており、それにより、ナット12cは、内筒11に回転自在に支持されている。
回転マス13は、比重の大きな材料、例えば鉄で構成され、円筒状に形成されている。また、回転マス13は、内筒11およびボールねじ12の外側に同軸状に配置され、両者11、12を覆っている。回転マス13の第1フランジ15側の端部は、ラジアルベアリング18を介して、内筒11に嵌合しており、それにより、回転マス13は、内筒11に回転自在に支持されている。また、回転マス13と内筒11の間には、一対のリング状のシール材19、19が設けられている。これらのシール材19、19、回転マス13および内筒11によって形成された空間には、シリコンオイルで構成された粘性体20が充填されている。
以上のように構成されたマスダンパ3では、内筒11とねじ軸12aの間に相対変位が発生すると、この相対変位がボールねじ12で回転運動に変換された状態で、制限機構14を介して回転マス13に伝達されることによって、回転マス13が回転する。以下、このように内筒11とねじ軸12aの間の相対変位を回転マス13の回転運動に変換するマスダンパ3の動作を、「マスダンパ3の回転変換動作」という。
上記の制限機構14は、このマスダンパ3の回転変換動作を制限するものであり、リング状の回転滑り材14aと、複数のねじ14bおよびばね14c(2つのみ図示)で構成されている。回転滑り材14aは、回転マス13とボールねじ12のナット12cとの間に配置されている。この回転滑り材14aが配置された回転マス13の部分には、複数のばね収容孔13aが形成されている。これらのばね収容孔13aは、周方向に等間隔に配置され、径方向に貫通している。各ばね収容孔13aには、ねじ14bがねじ込まれるとともに、ねじ14bと回転滑り材14aの間にばね14cが収容されている。
以上の構成により、ねじ14bを強く締め付けると、回転滑り材14aがばね14cの付勢力でナット12cに強く押し付けられることによって、回転マス13は、回転滑り材14aを介してナット12cに一体に連結された状態になる。
また、この状態からねじ14bを緩めると、その締付度合が低くなり、マスダンパ3の軸線方向に作用する荷重(以下「軸荷重」という)が、ねじ14bの締付度合に応じて定まる制限荷重に達するまでは、回転マス13がナット12cと一体に回転する。一方、マスダンパ13の軸荷重が制限荷重に達すると、回転滑り材14aとナット12cまたは回転マス13との間に滑りが発生することによって、マスダンパ3の回転変換動作が制限される。この状態では、回転滑り材14aとナット12cまたは回転マス13との間に発生する摩擦抵抗によって、マスダンパ3の回転変換動作の制限により低下した回転マス13の回転慣性力が補われる。
以上の構成のマスダンパ3は、その第1フランジ15が支持部材2の下端部に接続されるとともに、第2フランジ16が基礎Fに接続されており、それにより、支持部材2に直列に連結されている。また、地震時などに、図8に示すように構造物Bが揺動すると、構造物Bの変位が、支持部材2を介してマスダンパ3に伝達される。それに伴い、マスダンパ3の回転変換動作によって、回転マス13が回転するとともに、支持部材2に圧縮荷重および引張荷重が交互に繰り返し作用し、支持部材2およびマスダンパ3から成る付加振動系Aが振動する。これにより、構造物Bの振動エネルギが付加振動系Aで吸収されることによって、構造物Bの振動が抑制される。
この場合、付加振動系Aのマスダンパ3の諸元(回転マス13の回転慣性質量md、粘性体20の粘性係数cd、および制限機構14の制限荷重Fr)および支持部材2の引張剛性θTは、回転慣性質量mdおよび引張剛性θTによって定まる付加振動系Aの固有振動数fd1(=sqrt(θT/md)/(2π))(以下「第1固有振動数」という)が、構造物Bの振動モードが一次モードのときの固有振動数(以下「一次固有振動数」という)に同調するように、設定されている。
また、マスダンパ3の諸元および支持部材2の圧縮剛性θCは、回転マス13の回転慣性質量mdおよび圧縮剛性θCによって定まる付加振動系Aの固有振動数fd2(=sqrt(θC/md)/(2π))(以下「第2固有振動数」という)が、構造物Bの振動モードが二次モードのときの固有振動数(以下「二次固有振動数」という)に同調するように、設定されている。これらの設定は、定点理論に基づいて行われる。
制振装置1はさらに、ねじれ防止機構31および座屈防止機構41を備えている。ねじれ防止機構31は、上述したマスダンパ3の回転変換動作に伴ってマスダンパ3から作用する大きな反力トルクによる支持部材2のねじれを防止するためのものである。また、座屈防止機構41は、構造物Bの揺動に伴って作用する圧縮荷重による支持部材2の座屈を防止するためのものである。
図1に示すように、ねじれ防止機構31は、マスダンパ3の直上に配置され、座屈防止機構41は、ねじれ防止機構31よりも上側の4箇所に、互いに等間隔に配置されている。図9および図10に示すように、本実施形態では、両機構31、41は、互いに同じ構成を有しており、構造物Bに設けられた拘束用のスラブ32と、スラブ32に取り付けられた滑り板33などで構成されている。
スラブ32は、構造物Bに一体に設けられたコンクリート製のものであり、構造物Bの外周に沿って水平に延びている(図1および図2参照)。スラブ32には、支持部材2に対応する位置に、複数の矩形の拘束孔32aが形成されており、各拘束孔32aに支持部材2が挿入されている。
滑り板33は、滑性を有する材料、例えばフッ素樹脂で構成されており、拘束孔32aの四方の壁面にそれぞれ貼り付けられている。また、支持部材2の四方の外面には、拘束孔32aに対応する位置に、ステンレスなどで構成された当接板2aがそれぞれ貼り付けられており、これらの当接板2aは、若干の隙間をもって滑り板33に対向している。
以上の構成により、マスダンパ3の回転変換動作に伴い、マスダンパ3から支持部材2に反力トルクが作用することにより、支持部材2が若干、回転すると、支持部材2がねじれ防止機構31の拘束孔32aの縁部で係止されることによって、その回転が拘束される。これにより、マスダンパ3の大きな反力トルクが作用した場合でも、それによる支持部材2のねじれを確実に防止することができる。また、ねじれ防止機構31がマスダンパ3の直上に配置され、支持部材2のマスダンパ3との連結部に近い部分を係止するので、支持部材2のねじれ防止を効果的に行うことができる。
また、構造物Bの揺動に伴い、支持部材2に圧縮荷重が作用することにより、支持部材2が若干たわむと、支持部材2が座屈防止機構41の拘束孔32aの縁部に当接することによって、その変位が拘束される。これにより、圧縮荷重が作用したときの支持部材2の座屈を確実に防止することができる。
以上のように支持部材2のねじれおよび座屈が防止される結果、構造物Bの変位を、支持部材2を介してマスダンパ3にロスなく伝達しながら、回転マス13の回転運動に良好に変換でき、したがって、構造物Bの振動を適切に抑制することができる。また、支持部材2が当接板2aを介して滑り板33に当接するので、支持部材2が拘束孔32aに対して上下方向に相対的に移動するときの摩擦抵抗が低減され、それにより、支持部材2の移動を円滑に行えるとともに、構造物Bの変位の伝達ロスをさらに抑制することができる。
また、支持部材2の引張剛性θTが圧縮剛性θCよりも小さいとともに、マスダンパ3の諸元および引張剛性θTは、それらによって定まる付加振動系Aの第1固有振動数が構造物Bの一次固有振動数に同調するように設定され、マスダンパ3の諸元および圧縮剛性θCは、それらによって定まる付加振動系Aの第2固有振動数が構造物Bの二次固有振動数に同調するように設定されている。これにより、構造物Bが2つの振動モードで振動する場合に、1基の付加振動系Aによって多重同調を行うことができる。
また、構造物Bを中心として互いに対称に配置された2基の付加振動系A、Aを一対とみなした場合、構造物Bの揺動中、構造物Bが中立位置にあるタイミングを除き、それらのいずれか一方の支持部材2には圧縮荷重が作用し、それと同時に、他方の支持部材2には引張荷重が作用する。したがって、構造物Bの揺動中、互いに異なる圧縮剛性および引張剛性に基づく多重同調がほぼ絶え間なく行われるので、構造物Bの振動を効果的に抑制することができる。
さらに、マスダンパ3の軸荷重が所定の制限荷重に達したときに、マスダンパ3の回転変換動作が制限機構14で制限されることによって、マスダンパ3の反力の過大化が防止されるので、支持部材2のねじれおよび座屈をさらに確実に防止することができる。
次に、図11〜図13を参照しながら、第2実施例による座屈防止機構について説明する。この座屈防止機構51は、上述した第1実施例の座屈防止機構41に対して、弾性シート34を付加したものである。なお、両図では、第1実施例と同じ構成要素については同じ符号が付されており、このことは、後述する他の図についても同様である。
弾性シート34は、例えばゴムで構成されており、拘束孔32aの四方の壁面にそれぞれ貼り付けられている。滑り板33は、各弾性シート34にこれを覆うように貼り付けられている。他の構成は、第1実施例の座屈防止機構41と同じである。
この構成によれば、図13に示すように、支持部材2が拘束孔32aに対して傾いた状態で上下方向に移動する場合には、弾性シート34が支持部材2に追従して弾性変形することによって、支持部材2の回転角が吸収される。これにより、支持部材2の当接状態を保ちながら、その移動を円滑に行わせることができ、したがって、構造物Bの変位を支持部材2を介してマスダンパ3に良好に伝達することができる。
なお、図14に示すように、上記の弾性シート34を用いずに、支持部材2との滑り板33の接触部分の長さを小さくしてもよい。この構成によっても、上記の第2実施例と同様、支持部材2の回転角を吸収しながら、その移動を円滑に行わせることができる。
次に、図15および図16を参照しながら、第3実施例による座屈防止機構について説明する。この座屈防止機構61は、第1実施例の座屈防止機構41と比較し、当接板2aと滑り板33に代えて、ガイドローラを用いたものである。
図16に示すように、このガイドローラ62は、ねじ付きの軸部63と、この軸部63と同軸状に一体に設けられた円柱状の本体部64と、本体部64の外周面にベアリング(図示せず)を介して回転自在に取り付けられた円筒状の回転体65などで構成されている。
一方、スラブ32の支持部材2に対応する位置には、複数の矩形のローラ取付孔32bが形成されており、各ローラ取付孔32bに支持部材2が挿入されている。また、ローラ取付孔32bの四方の壁面には、鋼材などから成るステイ66がそれぞれ設けられている。各ステイ66は取付孔32bの壁面から直角に内方に延び、その先端部の側面にはねじ穴(図示せず)が形成されている。ガイドローラ62は、その軸部63を各ステイ66のねじ穴にねじ込むことによって、ステイ66に取り付けられている。この状態では、4つのガイドローラ62の回転体65の外周部が、支持部材2の四方の外面にそれぞれ接触している。
以上の構成により、支持部材2が上下方向に移動すると、ガイドローラ62の回転体65が回転することによって、支持部材2が案内される。したがって、支持部材2の当接状態を保ちながら、その移動を円滑に行わせることができる。
次に、図17〜図19を参照しながら、第4実施例による座屈防止機構について説明する。この座屈防止機構71は、第3実施例の座屈防止機構61と比較し、ガイドローラ62に代えて、ボールローラを用いたものである。
図19に示すように、このボールローラ72は、ボルト状の本体部73と、本体部73に設けられたサブボール74およびメインボール75などで構成されている。本体部73の軸部にはねじ73aが形成され、本体部73の頭部には、半球状のボール収容穴73bが形成されている。このボール収容穴73bの底部に、回転自在の多数のサブボール74が埋め込まれている。また、メインボール75は、その半部がボール収容穴73bに収容され、サブボール74に点接触しており、それにより、本体部73に対して任意の方向の軸線回りに回転自在である。メインボール75の残りの半部は、本体部73の外部に突出している。
一方、スラブ32のローラ取付孔32bの四方の壁面にはそれぞれ、2つのねじ穴(図示せず)が形成されている。ボールローラ72は、その本体部73のねじ73aを各ねじ穴にねじ込むことによって、ローラ取付孔32bの壁面に取り付けられている。この状態では、ボールローラ72は、ローラ取付孔32bの壁面から支持部材2に向かって水平に延び、そのメインボール75は、支持部材2の外面に、若干の隙間をもって対向している。
以上の構成により、支持部材2が上下方向に移動すると、これに接触するメインボール75が回転することによって、支持部材2が案内される。この場合、メインボール75は、支持部材2に点接触するとともに、任意の方向の軸線回りに回転自在であるので、支持部材2の動きに良好に追従しながら回転する。したがって、図17(b)に示すように支持部材2が傾いた場合でも、支持部材2の当接状態を保ちながら、その移動を円滑に行わせることができる。
なお、上述した実施形態では、構造物Bの揺動中、構造物Bの一次固有振動数および二次固有振動数の多重同調を常時、行うようにするために、一対の付加振動系A、Aが構造物Bを中心として互いに対称に配置され、それらの支持部材2の圧縮剛性θC、θC同士、および引張剛性θT、θT同士は、それぞれ同じ値に設定されている。
本発明は、これに限らず、付加振動系A、圧縮荷重θCおよび引張剛性θTの様々な設定が可能である。例えば、付加振動系Aを一対で構成せずに、構造物Bの片側のみに配置してもよい。これにより、構造物Bが一方に揺動するときに、引張剛性θTに基づく構造物Bの一次固有振動数の同調を行うとともに、構造物Bが他方に揺動するときに、圧縮剛性θCに基づく構造物Bの二次固有振動数の同調を行うことができる。すなわち、構造物Bの揺動中、1基の付加振動系Aによって、構造物Bの一次および二次固有振動数の多重同調を間欠的に行うことができる。
また、上記のように、支持部材2の引張剛性θTおよび圧縮剛性θCのそれぞれに基づき、構造物Bの一次固有振動数および二次固有振動数を同調するのに代えて、引張剛性θT、圧縮剛性θCおよびマスダンパ3の諸元の設定を変えることにより、それらに応じて定まる支持部材2およびマスダンパ2から成る付加振動系A全体の固有振動数を、構造物Bの1次固有振動数に同調させるようにしてもよい。これにより、上記の場合とは異なる制振特性を得ることができる。
あるいは、付加振動系A、Aを一対で構成するとともに、それらの圧縮剛性θC、θCおよび引張剛性θT、θTをすべて互いに異ならせてもよい。これにより、一対の付加振動系A、Aによって、構造物Bのより多くの固有振動数の同調を行うことができる。
このような設定により、構造物Bの揺動に伴って一対の支持部材2、2に圧縮荷重および引張荷重が交互に繰り返し作用したときに、一対の支持部材2、2およびマスダンパ3、3の全体から成る付加振動系Aの固有振動数を構造物Bの一次固有振動数に同調させることができ、したがって、制振装置の制振効果を良好に得ることができる。
上記以外にも、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、マスダンパ3を、構造物Bの最下層部に配置しているが、これに限らず、例えば図20(a)(b)にそれぞれ示すように、構造物Bの中層部や最上層部に配置してもよい。
この場合、ねじれ防止機構31は、支持部材2のねじれ防止を効果的に行うために、マスダンパ3が中層部に配置されるときには、それに近い上下両側にそれぞれ配置され、マスダンパ3が最上層部に配置されるときには、その直下に配置される。また、構造物Bの他の高さ位置に、複数の座屈防止機構41がほぼ等間隔に配置される。このような構成により、前述した実施形態による効果を同様に得ることができる。
また、付加振動系Aの平面的な配置についても、図2に示した例に限らず、様々な配置パターンが可能である。例えば、図21は、構造物Bの四隅にスラブ32をそれぞれ設け、各スラブ32に4基の付加振動系Aを取り付けることによって、計16基の付加振動系Aを構造物Bを中心として対称に配置したものである。構造物Bの角部付近では、中央部と比較して、構造物Bの変位が大きく、それに応じて支持部材2の軸荷重も大きくなるので、このような付加振動系Aの配置によって制振効果をより有効に得ることができる。
また、図22に示すように、付加振動系Aを構造物Bの内部に配置してもよい。この場合には、ねじれ防止機構および座屈防止機構を設置するための基部として、各階のスラブSやパイプスペースPSを利用することができる。これにより、実施形態のような外付けのスラブ32は不要になり、構造物Bの外部に制振装置がまったく現れないので、構造物Bの外観を良好に保つことができる。
なお、このように付加振動系Aを構造物Bの内部に配置した場合には、支持部材2が構造物Bの床を貫通するため、その防火区画を行うことが必要になる。図23は、その対策を施した例である。この例は、支持部材2のフランジ4aと支持部材2が貫通するスラブSとの間に、可撓性の耐火帯Rを、支持部材2とスラブSの間の隙間を覆うように、たるませた状態で取り付けたものである。これにより、支持部材2の上下方向の移動を許容するとともに、防火区画を実現することができる。また、意匠性を考慮すると、耐火帯Rは天井裏に設置することが好ましい。
また、実施形態では、ねじれ防止機構31および座屈防止機構41を構成する基部として、コンクリート製のスラブ32を用いているが、これに代えて、例えば鋼材を組み立てたものを用いてもよい。
さらに、実施形態では、支持部材2の柱材4を角柱状とし、それに対応して拘束孔32aを矩形状としているが、この構成には限らない。例えば、座屈防止機構41については、支持部材2の側方への変位を拘束できればよいので、断面円形の柱材と、この柱材が嵌合する円形の拘束孔を採用できる。また、ねじれ防止機構31については、支持部材2の回転を拘束できればよいので、上記の断面円形の柱材の外周面にリブなどの突部を設けるとともに、この突部が回転不能に係合する溝を拘束孔に形成してもよい。
また、実施形態では、支持部材2の引張剛性θTが圧縮剛性θCよりも小さく設定されているが、この剛性の大小関係を逆にしてもよい。図24は、そのような剛性を有する支持部材2の2つの例を示す。すなわち、これらの支持部材2は、上下2つの柱材4、4のフランジ4a、4aの間をボルト5およびダブルナット7で締め付けるとともに、フランジ4a、4aの間に、弾性材としてゴム材41(同図(a))または皿ばね42(同図(b))を介在させたものである。
この構成では、支持部材2に圧縮荷重が作用したときのみ、弾性材が変形するので、図25に示すように、支持部材2の圧縮剛性θCは、引張剛性θTよりも小さくなる。なお、弾性材の設置数が増えるほど、直列に配置される弾性材の数が多くなり、支持部材2の圧縮剛性θCがより小さくなるので、弾性材の設置数によって、支持部材2の圧縮剛性θCを調整することができる。
また、このように設定された支持部材2の圧縮剛性θCおよび引張剛性θTに基づいて多重同調を行う場合、マスダンパ3の諸元とより小さな圧縮剛性θCは、それらによって定まる付加振動系Aの第1固有振動数が構造物Bの一次固有振動数に同調するように設定され、マスダンパ3の諸元とより大きな引張剛性θTは、それらによって定まる付加振動系Aの第2固有振動数が構造物Bの二次固有振動数に同調するように設定される。
以上、本発明の種々の変形例について説明したが、その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
地震時などに構造物が振動すると、構造物が高層の場合には特に、構造物のせん断変形よりも曲げ変形が卓越するため、構造物の振動は、その上端側が横方向に繰り返し往復動するような態様(以下「構造物の揺動」という)で行われる。上述した構成によれば、支持部材は、上下方向に互いに接合された複数の柱材で構成されており、支持体に立設された構造物の上端部に、支持部材の上端部が連結され、この支持部材の下端部は支持体に連結されるとともに、支持部材には、回転マスを有するマスダンパが直列に連結されている。構造物が上述したように揺動すると、その変位が支持部材を介して伝達されることによって、回転マスが回転し、支持部材およびマスダンパから成る付加振動系が振動する。これにより、付加振動系の固有振動数が構造物の固有振動数に同調した状態で、構造物の振動エネルギが付加振動系で吸収されることによって、構造物の振動が抑制される。
また、振動時に、構造物が曲げ変形を伴いながら揺動することと、構造物の変位が上下方向に延びる支持部材を介してマスダンパに伝達されることから、支持部材には圧縮荷重と引張荷重が交互に作用する。上述した構成によれば、支持部材を構成する複数の柱材が、圧縮荷重が作用したときの支持部材のばね定数である圧縮ばね定数と、引張荷重が作用したときの支持部材のばね定数である引張ばね定数とが互いに異なる値になるように連結されていることで、支持部材の圧縮ばね定数および引張ばね定数が互いに異なる値に設定されているので、支持部材およびマスダンパから成る付加振動系の固有振動数として、支持部材に圧縮荷重が作用したときと、引張荷重が作用したときで、互いに異なる大きさの固有振動数を得ることができる。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の構造物の制振装置において、支持部材は、構造物を中心として互いに対称に配置された一対の支持部材で構成され、一対の支持部材の圧縮ばね定数同士および引張ばね定数同士はそれぞれ、互いに同じ値に設定されており、マスダンパは、一対の支持部材にそれぞれ連結された一対のマスダンパで構成されていることを特徴とする。