以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の第1実施形態によるばね機構1を示している。以下、便宜上、図1の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」として説明する。図1に示すように、ばね機構1は、左右方向(軸線方向)に延びる円筒状の本体部2と、本体部2の左部に左右方向に移動可能に部分的に収容された丸棒状のロッド3と、本体部2に収容された左右一対のプレート5L、5R、第1皿ばねユニット6L、6R及び第2皿ばねユニット7L、7Rを備えている。なお、図2では、便宜上、一部の構成要素の符号を省略している。
本体部2は、円板状の左右の側壁2a、2bと、両側壁2a、2bの間に設けられた円筒状の周壁2cと、周壁2c内の右部に設けられた円板状の収容壁2dとを一体に有している。これらの壁2a〜2dは互いに同軸状に配置されており、左側壁2a及び収容壁2dには、左右方向に貫通する挿入孔2e、2fがそれぞれ同軸状に形成されている。上記のロッド3は、左側壁2aの挿入孔2e及び収容壁2dの挿入孔2fに、滑り材8、8をそれぞれ介して挿入され、左右方向に延びるとともに、本体部2から左方に突出しており、その右端部が右側壁2bと収容壁2dの間に位置している。各滑り材8は、滑性の高い材料、例えばフッ素樹脂などで構成されている。また、ロッド3の左右方向の中央には、フランジ4が一体に設けられており、フランジ4は、ロッド3と一緒に、本体部2に左右方向に移動可能に収容されている。
上記の左右のプレート5L、5Rは、ドーナツ板状に形成され、左右方向に貫通する挿入孔5a、5aが同軸状に設けられており、これらの挿入孔5a、5aには、ロッド3が挿入されている。また、左右のプレート5L、5Rは、本体部2及びロッド3に対して左右方向に移動可能である。さらに、左プレート5Lは、左側壁2aとフランジ4の間に配置され、右プレート5Rは、右側壁2bとフランジ4の間に配置されている。左右の第1皿ばねユニット6L、6Rの各々は、左右方向に積層された複数の皿ばね6aで構成されており、荷重に対して線形な剛性を有している。また、各皿ばね6aは、その中央の孔にロッド3が挿入されており、左右のプレート5L、5Rよりも小さい外径を有している。なお、図1及び図2では、便宜上、皿ばね6aの中央の孔が、ロッド3に対してかなり大きめに描かれているが、実際には、両者の間の隙間は非常に小さい。このため、複数の皿ばね6aの軸線が径方向に大きくばらつくことはない。
また、左側の第1皿ばねユニット6Lは、フランジ4と左プレート5Lの間に挟持されるとともに、所定の第1圧縮荷重Fp1が予め付与されている。右側の第1皿ばねユニット6Rは、フランジ4と右プレート5Rの間に挟持されるとともに、左側の第1皿ばねユニット6Lと同様、所定の第1圧縮荷重Fp1が予め付与されている。左右の第1皿ばねユニット6L、6Rの各々の剛性は、皿ばね6aの数及び積層の仕方によって定まり、図1は、6個の皿ばね6aを直列に積層した場合の例を示している。
図3(a)〜(i)は、皿ばね6aの数と積層の仕方(直列/並列)のバリエーションの一例を示しており、図4は、各バリエーションにおける皿ばね6aの圧縮量(mm)と荷重(kN)との関係(以下「圧縮量−荷重関係」という)を示している。なお、図3(b)〜(i)では便宜上、皿ばね6aの符号を1つのみ付している。また、図4において、Raは、皿ばね6aが1つであるとき(図4(a))の圧縮量−荷重関係を表し、Rbは、2つの皿ばね6aを直列に積層したとき(図4(b))の圧縮量−荷重関係を、Rcは、3つの皿ばね6aを直列に積層したとき(図4(c))の圧縮量−荷重関係を、それぞれ表している。
さらに、図4において、Rdは、2つの皿ばね6aを並列に積層したとき(図3(d))の圧縮量−荷重関係を表し、Reは、並列に積層した2つの皿ばね6aを1組として直列に2組、積層したとき(図3(e))の圧縮量−荷重関係を表し、Rfは、並列に積層した2つの皿ばね6aを1組として直列に3組、積層したとき(図3(f))のたわみ−荷重関係を表している。また、図4において、Rgは、3つの皿ばね6aを並列に積層したとき(図3(g))の圧縮量−荷重関係を表し、Rhは、並列に積層した3つの皿ばね6aを1組として直列に2組、積層したとき(図3(h))の圧縮量−荷重関係を表しており、Riは、並列に積層した3つの皿ばね6aを1組として直列に3組、積層したとき(図3(i))の圧縮量−荷重関係を表している。
皿ばね6a単体の剛性をksとすると、皿ばね6aを並列にn個、積層したときには、第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1は、n・ksとなる。また、皿ばね6aを直列にn個、積層したときには、第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1は、ks/(n+1)となる。皿ばね6aの数と積層の仕方(直列/並列)を、図3に示すような各種のバリエーションを適宜、用いて設定することにより、第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1が調整される。
また、周壁2cには、円環状の左右一対のストッパ9L、9Rが一体に設けられている。これらの左右のストッパ9L、9Rは、左右のプレート5L、5Rに外側からそれぞれ当接されることによって、両者5L、5Rが本体部2に対してフランジ4側に移動するのをそれぞれ阻止するためのものである。左右のストッパ9L、9Rの内径は、皿ばね6aの外径よりも大きく、かつ、左右のプレート5L、5Rの外径よりも小さく設定されている。
前記左右の第2皿ばねユニット7L、7Rの各々は、第1皿ばねユニット6L、6Rと同様、左右方向に積層された複数の皿ばね7aで構成され、荷重に対して線形な剛性を有しており、その中央の孔に、ロッド3が挿入されている。なお、図1及び図2では、便宜上、皿ばね7aの中央の孔が、ロッド3に対してかなり大きめに描かれているが、実際には、両者の間の隙間は非常に小さい。このため、複数の皿ばね7aの軸線が径方向に大きくばらつくことはない。
また、左側の第2皿ばねユニット7Lは、左側壁2aと左プレート5Lの間に挟持されるとともに、所定の第2圧縮荷重Fp2が予め付与されている。右側の第2皿ばねユニット7Rは、収容壁2dと右プレート5Rの間に挟持されるとともに、左側の第2皿ばねユニット7Lと同様、第2圧縮荷重Fp2が予め付与されている。第2圧縮荷重Fp2は、前記第1圧縮荷重Fp1よりも大きく設定されている。左右の第2皿ばねユニット7L、7Rの各々の剛性k2は、第1皿ばねユニット6L、6Rと同様の手法でそれぞれ設定される。図1などは、6個の皿ばね7aを直列に積層した場合の例を示している。
また、上記の第2圧縮荷重Fp2に起因する左右の第2皿ばねユニット7L、7Rの反力は、左右のプレート5L、5Rをフランジ4側にそれぞれ押圧するように作用し、それにより、左右のプレート5L、5Rは、左右のストッパ9L、9Rに、外側からそれぞれ当接している。また、前記第1圧縮荷重Fp1に起因する左右の第1皿ばねユニット6L、6Rの反力は、フランジ4を右方及び左方にそれぞれ押圧するように作用し、それにより、ロッド3及びフランジ4は、本体部2に対して、図1に示す中立位置に保持されている。
また、右側壁2bには、棒状の支持部材SUが同軸状に一体に設けられており、支持部材SUは、右側壁2bから右方に突出している。さらに、ロッド3の左端部及び支持部材SUの右端部にはそれぞれ、第1取付具FL1及び第2取付具FL2が、自在継ぎ手を介して取り付けられている。
以上の構成のばね機構1では、外力の入力によりロッド3が本体部2に対して左方に移動すると、ロッド3と一体のフランジ4が左方に移動し、左側の第1皿ばねユニット6Lを押圧する。このフランジ4による押圧力は、第1皿ばねユニット6Lから左プレート5Lに伝達され、さらに左側の第2皿ばねユニット7L及び左側壁2aを介して、本体部2に伝達される。この場合において、図2(a)に示すように、本体部2に対する中立位置からのロッド3の変位(以下「ロッド変位」という)dが第1所定値d1以下のときには、第2皿ばねユニット7Lが縮まず、第1皿ばねユニット6Lが弾性的に縮む。この場合、フランジ4が左方に移動することによって、右側の第1皿ばねユニット6Rに予め付与された圧縮荷重(以下「圧縮予荷重」という)が第1圧縮荷重Fp1よりも小さくなるものの、フランジ4の変位が第1圧縮荷重Fp1による第1皿ばねユニット6Rの圧縮量(以下「予圧縮量」という)よりも小さいため、第1皿ばねユニット6Rの圧縮予荷重は、値0にはならない。
以上により、ロッド変位dが第1所定値d1以下のときには、一対の第1皿ばねユニット6L、6Rの反力がフランジ4を左右方向に挟み込むように作用し、両者6L、6Rが全体として剛性を発揮する。このため、各第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性をk1とすると、一対の第1皿ばねユニット6L、6Rの全体の剛性は、各第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1の2倍(2・k1)になる。
また、図2(b)に示すように、ロッド3が左方に移動した場合において、ロッド変位d(本体部2に対する中立位置からのロッド3の変位)が第1所定値d1よりも大きく、かつ第2所定値d2以下のときには、第2皿ばねユニット7Lが依然として縮まないものの、フランジ4の変位が右側の第1皿ばねユニット6Rの予圧縮量を上回ることによって、右側の第1皿ばねユニット6Rの圧縮予荷重が値0になり、その剛性を発揮しなくなる。以上により、この場合には、左側の第1皿ばねユニット6Lがその剛性(k1)を発揮する。
さらに、図2(c)に示すように、ロッド3が左方に移動した場合において、ロッド変位dが第2所定値d2よりも大きいときには、フランジ4の押圧力が、第2皿ばねユニット7Lの第2圧縮荷重Fp2を上回る。これにより、左プレート5Lが左ストッパ9Lから離れて左方に移動するとともに、第1及び第2皿ばねユニット6L、7Lが弾性的に縮み、両者6L、7Lの剛性が発揮される。この場合、第1及び第2皿ばねユニット6L、7Lが互いに直列に設けられているので、第1及び第2皿ばねユニット6L、7Lの全体の剛性は、第1及び第2皿ばねユニット6L(6R)、7L(7R)の剛性k1、k2を互いに乗算した値を、両者k1、k2を互いに加算した値で除算した値((k1・k2)/(k1+k2))になり、第1皿ばねユニット6Lの剛性k1よりも低くなる。
外力の入力によりロッド3が本体部2に対して右方に移動した場合には、上記と左右逆の動作が行われる。
以上の動作から明らかなように、ロッド変位dと、ばね機構1の反力(=荷重。以下「ばね機構反力」という)Frとの関係、すなわち、ばね機構1の剛性は、例えば図5のように表される。図5では、ロッド3が左方及び右方にそれぞれ移動したときのロッド変位dを、−及び+でそれぞれ表している。図5に示すように、ばね機構1は、3段の線形な剛性(トリリニア)を有し、ロッド変位dが大きいときの剛性が、ロッド変位dが小さいときの剛性よりも低く、また、その差が比較的大きい。
以上のように、第1実施形態によるばね機構1によれば、3段の線形な剛性を有しており、ロッド変位dが比較的大きいときの剛性((k1・k2)/(k1+k2))を、ロッド変位dが比較的小さいときの剛性(2・k1)よりも低くできるとともに、その差をより大きくすることができる。この場合、第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1を、第2皿ばねユニット7L(7R)の剛性k2よりも高く設定することによって、ロッド変位dが小さいときの剛性と、大きいときの剛性との差を、さらに大きくすることができる。
次に、図6を参照しながら、本発明の第2実施形態によるばね機構11について説明する。このばね機構11は、第1実施形態と比較して、本体部12の構成と、ロッド3が本体部12の左方に加え、右方に突出していることが主に異なっている。図6において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図6に示すように、本体部12は、ドーナツ板状の左右の側壁12a、12bと、両側壁12a、12bの間に一体に設けられた円筒状の周壁12cを有している。左右の側壁12a、12bには、左右方向に貫通する挿入孔12d、12eが同軸状にそれぞれ設けられており、これらの挿入孔12d、12eには、ロッド3が、前記滑り材8を介して挿入されている。図6と図1の比較から明らかなように、ばね機構11におけるフランジ4や、第1皿ばねユニット6L、6Rなどの位置関係は、第1実施形態のそれと同様であり、左側の第2皿ばねユニット7Lは、左側壁12aと左プレート5Lの間に、右側の第2皿ばねユニット7Rは、右側壁12bと右プレート5Rの間に、前記第2圧縮荷重Fp2を付与された状態でそれぞれ挟持されている。また、ロッド3の右端部には、前記第2取付具FL2が、自在継ぎ手を介して取り付けられている。
以上の構成により、第2実施形態によるばね機構11によれば、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
次に、図7及び図8を参照しながら、本発明の第3実施形態によるばね機構21について説明する。このばね機構21は、第1実施形態と比較して、ロッド3に、前述したフランジ4に代えて、左右一対のフランジ4L、4Rが一体に設けられていることと、周壁2cに一体に設けられたドーナツ板状の仕切壁2hが、左右のフランジ4L、4Rの間に配置されていることが、主に異なっている。図7及び図8において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。なお、図8では、一部の構成要素の符号を省略している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
左フランジ4Lはロッド3の左部に、右フランジ4Rはロッド3の右部に、それぞれ一体に設けられており、これらの左右のフランジ4L、4Rの間に、左側から順に、左側の第2皿ばねユニット7L、左プレート5L、左側の第1皿ばねユニット6L、仕切壁2h、右側の第1皿ばねユニット6R、右プレート5R、及び右側の第2皿ばねユニット7Rが配置されている。仕切壁2hには、左右方向に貫通する挿入孔2iが同軸状に設けられており、この挿入孔2iには、ロッド3が滑り材8を介して挿入されている。
また、周壁2cには、前記ストッパ9L、9Rが設けられておらず、これらに代えて、円環状の左右一対のストッパ22L、22Rが、ロッド3に一体に設けられている。左右のストッパ22L、22Rは、左側及び右側の第1皿ばねユニット6L、6Rの径方向の内側にそれぞれ配置されており、左右のプレート5L、5Rは、外側から左右のストッパ22L、22Rにそれぞれ当接しており、それにより、左右のプレート5L、5Rがロッド3に対して仕切壁2h側に移動するのがそれぞれ阻止されている。
また、左側の第1皿ばねユニット6Lは、仕切壁2hと左プレート5Lの間に挟持され、右側の第1皿ばねユニット6Rは、仕切壁2hと右プレート5Rの間に挟持されており、第1実施形態と同様、両者6L、6Rには、所定の第1圧縮荷重Fp1が予め付与されている。第1皿ばねユニット6L、6Rの皿ばね6aの中央の孔の径は、左右のストッパ22L、22Rの外径よりも大きく、皿ばね6aの外径は、周壁2cの内径よりも若干、小さい。なお、図7及び図8では、便宜上、皿ばね6aの外径が、周壁2cの内径に対してかなり小さめに描かれているが、実際には、両者6a、2cの間の隙間は非常に小さい。このため、複数の皿ばね6aの軸線が、径方向に大きくばらついたり、ロッド3から径方向に大きくずれたりすることはない。
さらに、左側の第2皿ばねユニット7Lは、左フランジ4Lと左プレート5Lの間に挟持され、右側の第2皿ばねユニット7Rは、右フランジ4Rと右プレート5Rの間に挟持されており、第1実施形態と同様、両者7L、7Rには、所定の第2圧縮荷重Fp2が予め付与されている。また、第1圧縮荷重Fp1に起因する左右の第1皿ばねユニット6L、6Rの反力は、仕切壁2hを右方及び左方にそれぞれ押圧するように作用し、それにより、仕切壁2h及び本体部2は、ロッド3に対して、図7に示す中立位置に保持されている。
以上の構成のばね機構21では、外力の入力により本体部2がロッド3に対して左方に移動すると、本体部2と一体の仕切壁2hが左方に移動し、左側の第1皿ばねユニット6Lを押圧する。この仕切壁2hによる押圧力は、第1皿ばねユニット6Lから左プレート5Lに伝達され、さらに左側の第2皿ばねユニット7L及び左フランジ4Lを介して、ロッド3に伝達される。この場合において、図8(a)に示すように、ロッド3に対する中立位置からの本体部2の変位(以下「本体部変位」という)d’が第1所定値d1以下のときには、第2皿ばねユニット7Lが縮まず、第1皿ばねユニット6Lが弾性的に縮む。この場合、仕切壁2hが左方に移動することによって、右側の第1皿ばねユニット6Rに予め付与された圧縮予荷重が第1圧縮荷重Fp1よりも小さくなるものの、フランジ4の変位が第1圧縮荷重Fp1による第1皿ばねユニット6Rの予圧縮量よりも小さいため、第1皿ばねユニット6Rの圧縮予荷重は、値0にはならない。
以上により、本体部変位d’が第1所定値d1以下のときには、一対の第1皿ばねユニット6L、6Rの反力が仕切壁2hを左右方向に挟み込むように作用し、両者6L、6Rが全体として剛性を発揮するため、一対の第1皿ばねユニット6L、6Rの全体の剛性は、第1実施形態と同様、各第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1の2倍(2・k1)になる。
また、図8(b)に示すように、本体部2が左方に移動した場合において、本体部変位d’が第1所定値d1よりも大きく、かつ第2所定値d2以下のときには、第2皿ばねユニット7Lが依然として縮まないものの、仕切壁2hの変位が右側の第1皿ばねユニット6Rの予圧縮量を上回ることによって、右側の第1皿ばねユニット6Rの圧縮予荷重が値0になり、その剛性を発揮しなくなる。以上により、この場合には、第1実施形態と同様、左側の第1皿ばねユニット6Lがその剛性k1を発揮する。
さらに、図8(c)に示すように、本体部2が左方に移動した場合において、本体部変位d’が第2所定値d2よりも大きいときには、仕切壁2hの押圧力が、第2皿ばねユニット7Lの第2圧縮荷重Fp2を上回る。これにより、左プレート5Lが左ストッパ22Lから離れて左方に移動するとともに、第1及び第2皿ばねユニット6L、7Lが弾性的に縮み、両者6L、7Lの剛性k1、k2が発揮される。この場合、第1実施形態と同様、第1及び第2皿ばねユニット6L、7Lが互いに直列に設けられているので、第1及び第2皿ばねユニット6L、7Lの全体の剛性は、(k1・k2)/(k1+k2)になり、第1皿ばねユニット6Lの剛性k1よりも低くなる。
外力の入力により本体部2がロッド3に対して右方に移動した場合には、上記と左右逆の動作が行われる。
以上のばね機構21の構成及び動作から明らかなように、第3実施形態によるばね機構21によれば、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
なお、本発明によるばね機構に関する第3実施形態では、ロッド3を、本体部2から軸線方向の一方(左方)に突出させているが、第2実施形態(図6)と同様、軸線方向の両方に突出させてもよい。その場合には、左側壁12aを省略するとともに、仕切壁2hを周壁2cの左端部に一体に設けてもよく、あるいは、右側壁12bを省略するとともに、仕切壁2hを周壁2cの右端部に一体に設けてもよい。前者の場合には、左フランジ4L、左側の第1及び第2皿ばねユニット6L、7Lならびに左プレート5Lが、本体部12に収容されず、その外側に配置される。後者の場合には、右フランジ4R、右側の第1及び第2皿ばねユニット6R、7Rならびに右プレート5Rが、本体部12に収容されず、その外側に配置される。あるいは、左右の側壁12a、12b及び周壁2cを省略するとともに、仕切壁2hを、軸線方向に比較的長いブロック状に形成してもよい。この場合には、仕切壁2h及び本体部が互いに共通の部材で構成されることになる。
次に、図9〜図11を参照しながら、本発明の第4実施形態によるばね機構31について説明する。このばね機構31は、第1実施形態と比較して、第1皿ばねユニット6に関連する構成が主に異なっている。図9において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。なお、図10では、一部の構成要素の符号を省略している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図9に示すように、本体部2には、左右一対のフランジ32L、32R、第1プレート33L、33R及び第2プレート34L、34Rと、第1皿ばねユニット6と、第2皿ばねユニット7L、7Rが収容されている。左右のフランジ32L、32Rは、ロッド3に一体に設けられており、本体部2の左側壁2aと収容壁2dの間に、左右方向に互いに間隔を存した状態で配置されている。
左側及び右側の第1プレート33L、33Rは、ドーナツ板状に形成され、左右のフランジ32L、32Rの間に、左右方向に互いに間隔を存した状態で配置されている。また、左側及び右側の第1プレート33L、33Rには、左右方向に貫通する挿入孔33a、33aがそれぞれ同軸状に設けられている。これらの挿入孔33a、33aには、ロッド3が挿入されており、各挿入孔33aの径は、左右のフランジ32L、32Rの外径よりも小さい。さらに、第1プレート33L、33Rは、本体部2及びロッド3に対して左右方向に移動可能である。
上記の第1皿ばねユニット6は、第1実施形態と同様、左右方向に積層された複数の皿ばね6aで構成され、荷重に対して線形な剛性を有しており、左側及び右側の第1プレート33L、33Rの間に、所定の第1圧縮荷重FP1が付与された状態で挟持されている。また、皿ばね6aの中央の孔には、ロッド3が挿入されている。なお、図9及び図10では、皿ばね6aの中央の孔が、ロッド3に対してかなり大きめに描かれているが、実際には、両者の間の隙間は非常に小さい。このため、複数の皿ばね6aの軸線が径方向に大きくばらつくことはない。第1圧縮荷重FP1に起因する第1皿ばねユニット6の反力は、左側及び右側の第1プレート33L、33Rを、左右のフランジ32L、32R側にそれぞれ押圧するように作用する。これにより、左側及び右側の第1プレート33L、33Rは、左右のフランジ32L、32Rに内側からそれぞれ当接している。
左側及び右側の第2プレート34L、34Rは、第1プレート33L、33Rと同様、ドーナツ板状に形成されている。左側の第2プレート34Lは、左側の第1プレート33Lに外側から当接するとともに、第1プレート33Lと左側壁2aの間に配置されている。右側の第2プレート34Rは、右側の第1プレート33Rに外側から当接するとともに、第1プレート33Rと収容壁2dの間に配置されている。左側及び右側の第2プレート34L、34Rの各々には、左右方向に貫通する挿入孔34aが同軸状に設けられており、左側の第2プレート34Lの挿入孔34aには、左フランジ32Lが挿入され、右側の第2プレート34Rの挿入孔34aには、右フランジ32Rが挿入されている。また、第2プレート34L、34Rは、本体部2及びロッド3に対して左右方向に移動可能である。
また、周壁2cには、前記左右のストッパ9L、9Rに代えて、左右のストッパ35L、35Rが一体に設けられており、これらのストッパ35L、35Rは、左側及び右側の第2プレート34L、34Rに外側からそれぞれ当接されることによって、両者34L、34Rが本体部2に対して第1皿ばねユニット6側に移動するのをそれぞれ阻止するためのものである。左右のストッパ35L、35Rの内径は、第1皿ばねユニット6及び第1プレート33L、33Rの外径よりも大きく、また、第2プレート34L、34Rの外径よりも小さい。
また、左側の第2皿ばねユニット7Lは、左側壁2aと左側の第2プレート34Lの間に、所定の第2圧縮荷重FP2が予め付与された状態で挟持されており、その中央の孔に、ロッド3及び左フランジ32Lが挿入されている。右側の第2皿ばねユニット7Rは、収容壁2dと右側の第2プレート34Rの間に、上記の第2圧縮荷重FP2が予め付与された状態で挟持されており、その中央の孔に、ロッド3及び右フランジ32Rが挿入されている。なお、図9及び図10では、第2プレート34L、34R及び第2皿ばねユニット7L、7Rの外径が、周壁2cの内径よりもかなり小さく描かれているが、実際には、両者の間の隙間は非常に小さい。このため、第2プレート34L、34R及び複数の皿ばね7aの軸線が、径方向に大きくばらついたり、ロッド3から径方向に大きくずれたりすることはない。
また、上記の第2圧縮荷重FP2に起因する左右の第2皿ばねユニット7L、7Rの反力は、左側及び右側の第2プレート34L、34Rを第1皿ばねユニット6側にそれぞれ押圧するように作用する。これにより、左側の第2プレート34Lは、左ストッパ35L及び左側の第1プレート33Lに外側から当接しており、右側の第2プレート34Rは、右ストッパ35R及び右側の第1プレート33Rに外側から当接している。なお、左側及び右側の第2プレート34L、34Rは、左側及び右側の第1プレート33L、33Rにそれぞれ当接していなくてもよい。
以上の構成のばね機構31では、第1皿ばねユニット6及び第2皿ばねユニット7L、7Rの反力が前述したように各種の部品に作用することによって、ロッド3及び左右のフランジ32L、32Rは、本体部2に対して、図9に示す中立位置に保持されている。
この状態から、ロッド3を本体部2に対して左方に移動させるような外力がロッド3に入力されると、ロッド3と一体の右フランジ32Rが、右側の第1プレート33Rを押圧し、当該押圧力は、第1皿ばねユニット6、左側の第1プレート33L、左側の第2プレート34L、左側の第2皿ばねユニット7L及び左側壁2aを介して、本体部2に伝達される。この場合、第1皿ばねユニット6に第1圧縮荷重FP1が予め付与されているため、この第1圧縮荷重FP1を超える押圧力が第1皿ばねユニット6に作用しない限り、第1皿ばねユニット6は縮まず、ロッド3は中立位置に位置したままになる。
そして、上述した右フランジ32Rの押圧力が第1圧縮荷重FP1を超えると、図10(a)に示すように、ロッド3が、これと一体の左右のフランジ32L、32Rと一緒に、中立位置から左方に移動し、右側の第1プレート33Rが、右側の第2プレート34Rから離れるとともに、左フランジ32Lが、左側の第1プレート33Lから離れる。この場合、ロッド変位(本体部2に対する中立位置からのロッド3の変位)Dが所定値DR以下のときには、左側の第2皿ばねユニット7Lが縮まず、第1皿ばねユニット6が弾性的に縮み、その剛性K1が発揮される。
さらに、図10(b)に示すように、ロッド3が左方に移動した場合において、ロッド変位Dが所定値DRよりも大きいときには、右フランジ32Rの押圧力が、第2皿ばねユニット7Lの第2圧縮荷重FP2を上回る。これにより、左側の第2プレート34Lが左ストッパ35Lから離れて左方に移動するとともに、第1皿ばねユニット6及び左側の第2皿ばねユニット7Lが弾性的に縮み、両者6、7Lの剛性K1、K2が発揮される。この場合、第1及び第2皿ばねユニット6、7Lが互いに直列に設けられているので、第1及び第2皿ばねユニット6、7Lの全体の剛性は、第1及び第2皿ばねユニット6、7L(7R)の剛性K1、K2を互いに乗算した値を、両者K1、K2を互いに加算した値で除算した値((K1・K2)/(K1+K2))になり、第1皿ばねユニット6の剛性K1よりも低くなる。
外力の入力によりロッド3が本体部2に対して右方に移動した場合には、上記と左右逆の動作が行われる。
以上の動作から明らかなように、ばね機構31におけるロッド変位Dと、ばね機構31の反力(以下「ばね機構反力」という)FRとの関係、すなわち、ばね機構31の剛性は、例えば図11のように表される。図11では、ロッド3が左方及び右方にそれぞれ移動したときのロッド変位を、−及び+でそれぞれ表している。図11に示すように、ばね機構31は、2段の線形な剛性(バイリニア)を有し、ロッド変位Dが大きいときに、ロッド変位Dが小さいときよりも、その剛性が低い。
以上のように、第4実施形態によるばね機構31によれば、2段の線形な剛性を有しており、ロッド変位Dが比較的大きいときの剛性((K1・K2)/(K1+K2))を、ロッド変位Dが比較的小さいときの剛性K1よりも低くすることができる。この場合、第1皿ばねユニット6の剛性K1を、第2皿ばねユニット7L(7R)の剛性K2よりも高く設定することによって、ロッド変位Dが比較的大きいときのばね機構31の剛性と、比較的小さいときのばね機構31の剛性との差を、より大きくすることができる。ちなみに、第1皿ばねユニット6の剛性K1を、第2皿ばねユニット7L(7R)の剛性K2以下に設定してもよいことは、もちろんである。
なお、本発明によるばね機構に関する第4実施形態では、本発明における一対の押圧部としての左右のフランジ32L、32Rを、左側壁2aと収容壁2dの間に配置しているが、軸線方向(左右方向)に延長し、左側壁及び収容壁の挿入孔にそれぞれ挿入するとともに、左側壁及び収容壁からそれぞれ突出させてもよい。また、第4実施形態では、ロッド3を、本体部2から軸線方向の一方(左方)に突出させているが、第2実施形態(図6)と同様、軸線方向の両方に突出させてもよい。その場合には、右側壁12bを省略するとともに、収容壁2dを周壁2cの右端部に一体に設けてもよい。
次に、図12を参照しながら、本発明の第5実施形態によるばね機構41について説明する。このばね機構41は、第1実施形態と比較して、フランジ4に代えて、摩擦プレート42がロッド3に一体に設けられている点のみが異なっている。図12において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
摩擦プレート42は、摩擦係数が比較的安定している材料、例えばフッ素樹脂などで構成され、比較的厚い円板状に形成されており、ロッド3に同軸状に設けられている。また、摩擦プレート42は、その外周面が周壁2cの内周面に接触している。ロッド3が本体部2に対して左右方向に移動したときに、摩擦プレート42と周壁2cの間で摩擦力が発生し、この摩擦力は、本体部2に対するロッド3の変位を減衰させるように作用する。
また、ばね機構41では、第1実施形態のばね機構1と異なり、第1皿ばねユニット6L(6R)の第1圧縮荷重Fp1と、第2皿ばねユニット7L(7R)の第2圧縮荷重Fp2が互いに同じ値に設定されている。このことと、図2を用いて説明したばね機構1の動作から明らかなように、ばね機構41のロッド変位(本体部2に対するロッド3の変位)dと、第1及び第2皿ばねユニット6L(6R)、7L(7R)の全体の反力(以下「皿ばね反力」という)Fsとの関係は、例えば図13(a)のように表される。同図に示すように、ロッド変位dが第1所定値d1以下のときには、第1実施形態と同様、第2皿ばねユニット7L(7R)が剛性を発揮せず、左側及び右側の第1皿ばねユニット6L、6R全体が剛性を発揮するので、第1及び第2皿ばねユニット6L(6R)、7L(7R)の全体の剛性は、2・k1になる。
また、ロッド変位dが第1所定値d1よりも大きいときには、第1実施形態と異なり、第1及び第2皿ばねユニット6L(6R)、7L(7R)の両方が縮み、それらの剛性が発揮されるので、第1及び第2皿ばねユニット6L(6R)、7L(7R)の全体の剛性は、k1・k2/(k1+k2)になる。
さらに、ばね機構41では、前述したように、本体部2に対するロッド3の移動に伴い、ロッド変位dを減衰させる摩擦減衰力が、摩擦プレート42と周壁2cの間で発生する。ロッド変位dと、この摩擦減衰力Ffとの関係は、例えば図13(b)のように表される。また、ばね機構41のばね機構反力Fr’は、上述した皿ばね反力Fsと、摩擦減衰力Ffとを足し合わせたものになるので、例えば図14(a)のように表される。
以上のように、第5実施形態によるばね機構41によれば、ロッド変位dが摩擦プレート42及び周壁2cの間で発生する摩擦力によって減衰されるので、ダンパとして機能することができる。
なお、本発明によるばね機構に関する前述した第1〜第5実施形態では、第1皿ばねユニット6L、6R、6に、第1圧縮荷重Fp1、FP1を予め付与しているが、付与しなくてもよい。その場合には、皿ばね6aとその付近の部品(フランジ4など)との間、及び、フランジ32L(32R)と第1プレート33L(33R)との間に、軸線方向に隙間がそれぞれ設けられていてもよい。また、第2実施形態によるばね機構11に関し、第5実施形態で説明した摩擦プレート42を、フランジ4に代えて、ロッド3に一体に設けてもよい。このことは、第3実施形態によるばね機構21についても同様に当てはまり、左右のフランジ4L、4Rに代えて、摩擦プレート42をロッド3に一体に設けてもよい。また、第4実施形態によるばね機構31に関し、摩擦プレート42をロッド3の右端部に一体に設けてもよい。
また、第5実施形態では、摩擦プレート42をロッド3に一体に設けているが、本体部2(周壁2c)に一体に設けてもよい。この場合には、摩擦プレートの径方向の中央に軸線方向に貫通する挿入孔が同軸状に形成されるとともに、この挿入孔にロッド3が挿入され、摩擦プレートとロッド3の間で発生する摩擦力が、ロッド変位dを減衰させるように作用する。また、この場合、ロッド3が挿入される左側壁2a及び収容壁2dを摩擦プレートとして兼用してもよい。このような摩擦プレートに関するバリエーションは、第1〜第4実施形態についても同様に適用可能である。この場合、第2実施形態に関しては、右側壁12bを摩擦プレートとして兼用してもよく、第3実施形態に関しては、仕切壁2hを摩擦プレートとして兼用してもよい。
さらに、第5実施形態では、本発明における減衰要素として、周壁2c及び摩擦プレート42を用いているが、ロッド変位(本体部変位)を減衰させる他の適当な減衰要素、例えば、粘性流体を用いた減衰要素を用いてもよい。その場合には、本体部内に、粘性流体を充填可能な流体室が画成され、この流体室内に、ロッドと一体のピストンが摺動可能に設けられるとともに、このピストンに、流体室内のピストンの両側における粘性流体の圧力を調整するための調整弁が設けられる(本出願人による特願2015−195620号を参照)。この場合、この流体室として、左側壁2a、周壁2c及び収容壁2dで画成された空間を用いるとともに、このピストンを、摩擦プレート42に代えて設けてもよい。あるいは、流体室として、収容壁2d、周壁2c及び右側壁2bで画成された空間を用いるとともに、このピストンを、ロッドの右端部に設けてもよい。このような減衰要素に関するバリエーションは、第1〜第4実施形態についても適宜、適用可能である。
なお、本発明による減衰要素付きのばね機構は、例えば、構造物の振動を抑制するためのダンパとして用いることができる。この場合、構造物が高層の建物であるときには、例えば、建物の上下の梁に連結され、その連結の仕方は任意である。例えば、上下の梁に、減衰要素付きのばね機構をブレース状に連結してもよく、あるいは、一対の減衰要素付きのばね機構をV字状又は逆V字状に連結してもよい。あるいは、上下の梁に、V字状又は逆V字状の鋼材で構成されたブレース材や、上下方向に延びる鋼材を介して、減衰要素付きのばね機構を水平に延びるように連結してもよい。また、この場合、減衰要素付きのばね機構を、上下の梁に代えて、梁及び建物の基礎に連結してもよく、建物に代えて、鉄塔や橋梁などに適用してもよい。
また、前述したように、減衰要素付きのばね機構は、図14(a)に示すような剛性を有している。一方、図14(b)は、一般的なばね機構のロッド変位dgとばね機構反力Fgとの関係を示しており、そのばね機構反力Fgの最大値FMAXは、本発明によるばね機構反力Fr’の最大値FMAXと同じであり、また、FgがFMAXのときのロッド変位dgは、Fr’がFMAXのときのロッド変位dと同じである。図14(a)と図14(b)との比較から明らかなように、ばね機構反力Fr’が値0であるときのロッド変位dは、一般的なばね機構のばね機構反力Fgが値0であるときのロッド変位dgよりも小さい。このことから明らかなように、本発明による減衰機構付きのばね機構によれば、これが適用された構造物の残留変位を抑制しながら、その振動を適切に抑制することができる。
さらに、第5実施形態では、摩擦プレート42を、ロッド3に一体に設けるとともに、周壁2cとの間に摩擦力を発生させるようにしているが、周壁2cとの間に摩擦力を発生させずに、ロッドに軸線方向に移動可能に嵌合させるとともに、摩擦プレートとロッドの間に摩擦力を発生させてもよい。
また、第1〜第5実施形態(以下、総称して「実施形態」という)では、本発明における第1及び第2弾性体として、第1及び第2皿ばねユニット6、6L、6R、7L、7Rをそれぞれ用いているが、荷重に対して線形な剛性を有する他の適当な弾性体、例えば、コイルばねやゴムなどを用いてもよい。さらに、実施形態では、本体部2やロッド3などの軸線方向に直交する断面は、円形状であるが、角形状でもよい。また、実施形態に関し、周壁2cに代えて、軸線方向に延びるとともに周方向に並んだ複数のボルトを用いるとともに、これらのボルトに、左右の側壁2a、2bなどを一体に設けてもよい。
さらに、実施形態では、フランジ4、32L、32R、プレート5L、5R、第1及び第2プレート33L、33R、34L、34Rを、周方向に連続する円板状に形成しているが、周方向に部分的に設けてもよい。同様に、実施形態では、左右のストッパ9L、9R、22L、22Rを周方向に連続する円環状に形成しているが、周方向に部分的に設けてもよい。なお、これまでに述べたばね機構1、11、21、31、41に関するバリエーションを適宜、組み合わせて採用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
次に、本発明の実施形態によるばね機構を備えた振動抑制装置について説明する。図15は、本発明の第1実施形態による振動抑制装置51を示している。同図に示すように、この振動抑制装置51は、基礎Fに立設された高層の建物Bの免震層ILに、免震装置として設けられたものであり、前述したばね機構1と、複数の免震支承52を備えている(2つのみ図示)。
各免震支承52は、積層ゴムタイプのものであり、本出願人による特願2015−173662号の図2などに記載された免震支承と同様に構成されているので、その構成について簡単に説明する。免震支承52は、上下一対のフランジ53、53と、両フランジ53、53の間に設けられた積層ゴム54とを、一体に有している。上側のフランジ53は建物Bの底面に、下側のフランジ53は基礎Fに、ボルトなどを用いて、それぞれ連結されている。建物Bは免震支承52で支持されており、地震の発生中、免震支承52の免震効果(絶縁効果)によって、基礎Fの振動が吸収され、建物Bの振動が長周期化(抑制)される。
ばね機構1は、地震により水平方向に変位した建物Bを図15に示す所定の初期位置に復帰させるために用いられており、前述した第1取付具FL1は第1連結部材EN1に、第2取付具FL2は第2連結部材EN2に、それぞれ取り付けられている。これらの第1及び第2連結部材EN1、EN2は、鋼材で構成されており、前者EN1は建物Bの底面に、後者EN2は基礎Fに、それぞれ取り付けられている。以上により、ばね機構1は、その本体部2が基礎Fに連結され、ロッド3が建物Bに連結されており、水平に延びている。
以上のように、第1実施形態による振動抑制装置51によれば、免震支承52により建物Bの振動が基礎Fに対して長周期化させられ、その免震効果(絶縁効果)が得られることによって、建物Bの振動が抑制される。また、ばね機構1が、振動により変位した建物Bを初期位置に復帰させるために、建物B及び基礎Fに連結されている。前述したように、ばね機構1は、3段の線形な剛性を有し、ロッド変位dが大きいときに、ロッド変位dが小さいときよりも、その剛性が低くなる(図5参照)。したがって、免震支承52の免震効果を確保しながら、振動により変位した建物Bを、ばね機構反力Frで初期位置に適切に復帰させることができる。
なお、本発明による振動抑制装置に関する第1実施形態では、ばね機構1を用いているが、前記ばね機構11、21、31、41を用いてもよい。ばね機構11を用いる場合には、その本体部2が、例えば、後述する連結部材EN(図16参照)を用いて建物Bに連結される。また、第1実施形態では、本体部2を基礎Fに、ロッド3を建物Bに、それぞれ連結しているが、これとは逆に、本体部2を建物Bに、ロッド3を基礎Fに、それぞれ連結してもよい。さらに、第1実施形態では、本発明における免震支承として、積層ゴムタイプの免震支承52を用いているが、積層ゴム及びすべり板などを組み合わせたもの(本出願人のホームページに掲載の「弾性すべり系積層ゴム」を参照)や、リニアガイドタイプのものを用いてもよい。
また、第1実施形態では、本発明における上層部及び下層部として、建物B及び基礎Fをそれぞれ用いているが、構造物の中層部に免震層を設けるとともに、構造物の上層部及び下層部をそれぞれ用いてもよい。さらに、第1実施形態は、本発明による振動抑制装置51を高層の建物Bに適用した例であるが、本発明はこれに限らず、他の適当な構造物、例えば鉄塔や橋梁などにも適用可能である。また、第1実施形態に関し、前述したばね機構1、11、21、31、41に関するバリエーションを適用してもよいことは、もちろんである。さらに、以上の振動抑制装置51に関するバリエーションを適宜、組み合わせて採用してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
次に、図16を参照しながら、本発明の第2実施形態による振動抑制装置61について説明する。以下の説明では、便宜上、図16の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」とする。この振動抑制装置61は、高層の建物Bに付加振動系として設けられたものであり、前述したばね機構11と、左右一対のマスダンパ62L、62Rを備えている。建物Bは、互いに井桁状に組み合わされた上下の梁BU、BD及び左右の柱PL、PRを有しており、上梁BUと左柱PLとの接合部分、及び上梁BUと右柱PRとの接合部分には、V字状のブレース材TBの左端部及び右端部が、それぞれ連結されている。ブレース材TBは、非常に高い剛性を有する鋼材で構成されている。また、ブレース材TBの中央の下端部には、非常に高い剛性を有する鋼材で構成された連結部材ENが、一体に設けられている。
ばね機構11は、その本体部2が連結部材ENに取り付けられており、左右方向に延びている。各マスダンパ62L(62R)は、本出願人による特許5314201号の図3などに記載されたマスダンパと同様に構成されているので、その構成について簡単に説明する。マスダンパ62L(62R)は、内筒63と、内筒63に対して軸線方向に移動可能なねじ軸64と、内筒63に回転可能に支持された回転マス65を有している。ねじ軸64は、複数のボールを介してナットに螺合しており(いずれも図示せず)、両者とともにボールねじを構成している。内筒63に対するねじ軸64の変位は、ねじ軸64を含むボールねじで回転運動に変換された状態で回転マス65に伝達され、それにより、回転マス65が回転する。
また、内筒63には第1取付具66が、ねじ軸64には第2取付具67が、それぞれ自在継ぎ手を介して取り付けられている。これらの自在継ぎ手は、回転マス65の反力トルクにより、内筒63及びねじ軸64が第1及び第2取付具66、67に対してそれぞれ回転しない程度の摩擦力を有している。さらに、左右のマスダンパ62L、62Rは、ばね機構11を中央として、左右対称に設けられており、左右方向に延びている。左マスダンパ62Lの第1取付具66は、左連結部材ENLを介して、下梁BDと左柱PLとの接合部分に連結されており、第2取付具67は、ばね機構11の第1取付具FL1に直接、連結されている。また、右マスダンパ62Rの第1取付具66は、右連結部材ENRを介して、下梁BDと右柱PRとの接合部分に連結されており、第2取付具67は、ばね機構11の第2取付具FL2に直接、連結されている。左右の連結部材ENL、ENRは、非常に高い剛性を有する鋼材で構成されている。
以上の構成の振動抑制装置61では、建物Bの振動に伴って上下の梁BU、BDの間で左右方向に相対変位が発生すると、この相対変位が、ブレース材TB、ばね機構11、左右の連結部材ENL、ENRを介して、左右のマスダンパ62L、62Rに伝達され、その結果、回転マス65、65が回転する。その際、ばね機構11の第1及び第2皿ばねユニット6L(6R)、7L(7R)の剛性k1、k2が、前述したようにロッド変位dに応じて発揮されることにより、ばね機構11及び回転マス65、65によって付加振動系が構成される。ちなみに、ブレース材TB及び左右の連結部材ENL、ENRは、その剛性が非常に高いので、ほとんど変形せず(剛性の寄与度が非常に小さい)、付加振動系の剛性要素としては、ほとんど機能しない。
この付加振動系の固有振動数は、定点理論に基づいて、前述したロッド変位dが第1所定値d1以下であるときに、建物Bの固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように(ほぼ同じになるように)、設定される。この場合、ばね機構11の剛性は2・k1であるので、付加振動系の固有振動数f61は、回転マス65、65の回転慣性質量mm及びばね機構11の剛性2・k1を用いて、f61=sqrt{2・k1/mm}/(2・π)で表され、当該付加振動系の固有振動数f61の設定は、回転マス65、65の回転慣性質量mm及び第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1を調整することによって、行われる。
以上のように、第2実施形態による振動抑制装置61によれば、ばね機構11が、回転マス65を有するマスダンパ62L(62R)と直列に上梁BU及び下梁BDに連結されている。また、建物Bの振動に伴って発生した上梁BUと下梁BDの間の相対変位が、ばね機構11を介してマスダンパ62L(62R)に伝達されることによって、回転マス65が回転する。以上により、ばね機構11及び回転マス65によって付加振動系を構成できるので、この付加振動系の固有振動数f61を建物Bの固有振動数に同調(共振)させることによって、建物Bの振動を適切に抑制(吸収)することができる。
また、前述したように、ばね機構11は、3段の線形な剛性を有し、ロッドd変位が比較的大きいときに、ロッド変位dが比較的小さいときよりも、その剛性が低くなる(図5参照)。さらに、上梁BUと下梁BDの間の相対変位が比較的小さく、ロッド変位dが第1所定値d1以下のときに、付加振動系の固有振動数f61が建物Bの固有振動数に同調するように、第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1及び回転マス65の回転慣性質量mmが設定されている。以上により、上梁BUと下梁BDの間の相対変位が大きくなったときに、ばね機構11の剛性が低下することで、付加振動系の固有振動数f61が建物Bの固有振動数に同調しなくなるので、マスダンパ62L(62R)の反力が共振現象により過大化するのを防止することができる。
なお、本発明による振動抑制装置に関する第2実施形態では、本体部2を上梁BUに、ばね機構11及び左右のマスダンパ62L、62Rを下梁BDに、それぞれ連結しているが、これとは上下逆に、本体部2を下梁BDに、ばね機構11及び左右のマスダンパ62L、62Rを上梁BUに、それぞれ連結してもよく、その場合には、ブレース材TBは、逆V字状に設けられる。また、第2実施形態に関し、左右のマスダンパ62L、62Rの一方を省略してもよく、その場合には、ブレース材TBに代えて、上下方向に延びる鋼材を用いてもよい。
さらに、第2実施形態では、ばね機構11を用いているが、前記ばね機構1、21、31、41を用いてもよい。この場合、上下の梁BU、BDへのばね機構1、21、31、41及びマスダンパの連結の仕方は、任意である。例えば、ばね機構1、21、31、41及びマスダンパを、V字状又は逆V字状のブレース材、あるいは上下方向に延びる鋼材を介して、上下の梁BU、BDに連結するとともに、水平に延びるように配置してもよい。あるいは、ばね機構1、21、31、41及びマスダンパを、上下の梁BU、BDに、斜めにブレース状に連結してもよい。あるいは、ばね機構1、21、31、41及びマスダンパを備える一対の振動抑制装置を、上下の梁BU、BDに、V字状又は逆V字状に連結してもよい。また、第2実施形態に関し、前述したばね機構1、21、31、41に関するバリエーションを適用してもよいことは、もちろんである。さらに、第2実施形態では、ボールねじ式のマスダンパ62L、62Rを用いているが、他の適当なマスダンパ、例えば、ラックとピニオンの組み合わせで入力変位が回転運動に変換されるマスダンパを用いてもよい。
次に、図17〜図19を参照しながら、本発明の第3実施形態による振動抑制装置71について説明する。この振動抑制装置71は、前述したばね機構1と、ボールねじ72及び左右一対のスラスト軸受け73L、73Rを備えており、ばね機構1とマスダンパを一体化した構成を有している。図17において、ばね機構1と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、便宜上、図17の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」として、ばね機構1と異なる点を中心に説明する。
振動抑制装置71では、本体部2は、比重の比較的大きい材料、例えば鉄で構成されており、マスダンパの回転マスとして兼用されている。すなわち、本体部2及び回転マスは、互いに共通の部材で構成されている。また、本体部2は、ロッド3によって回転可能に支持されており、本体部2の右側壁2bには、ばね機構1と異なり、前記支持部材SUが設けられておらず、左右方向に貫通する挿入孔2jが同軸状に設けられている。上記のボールねじ72は、本体部2の右部に設けられており、ねじ軸72aと、ねじ軸72aに多数のボール72bを介して螺合するナット72cを有している。
ねじ軸72aは、右側壁2bの挿入孔2jに、前記滑り材8を介して挿入されるとともに、左右方向に延びている。また、ねじ軸72aは、本体部2の右部に左右方向に移動可能にかつ同軸状に部分的に収容されており、本体部2から右方に突出している。ナット72cは、右側壁2bの右面に同軸状に取り付けられており、その中央のねじ孔が、挿入孔2jに連通している。さらに、ねじ軸72aの右端部には、第2取付具FL2が、自在継ぎ手を介して取り付けられている。第1及び第2取付具FL1、FL2の自在継ぎ手は、後述するように回転する本体部2の反力によるトルクにより、ロッド3及びねじ軸72aが第1及び第2取付具FL1、FL2に対してそれぞれ回転しない程度の摩擦力を有している。
前記の左右のスラスト軸受け73L、73Rは、フランジ4の左面及び右面に、それぞれ同軸状に取り付けられている。また、左スラスト軸受け73Lは、フランジ4と左側の第1皿ばねユニット6Lの間に挟持され、右スラスト軸受け73Rは、フランジ4と右側の第1皿ばねユニット6Rの間に挟持されており、各スラスト軸受け73L、73Rの径方向の中央の孔には、ロッド3が挿入されている。
以上の構成の振動抑制装置71は、図18に示すように、例えば、建物Bの上梁BU及び下梁BDにブレース状に連結される。この場合には、上記の第1取付具FL1が、上梁BUと左柱PLとの接合部に固定された第1連結部材EN1’に取り付けられ、第2取付具FL2が、下梁BDと右柱PRとの接合部に固定された第2連結部材EN2’に取り付けられている。第1及び第2連結部材EN1’、EN2’は、非常に高い剛性を有する鋼材で構成されている。
建物Bの振動に伴って上下の梁BU、BDの間に相対変位が発生し、それにより、振動抑制装置71に引張力が作用すると、ロッド3及びねじ軸72aが、本体部2に対して左方及び右方にそれぞれ移動する。それに伴い、上下の梁BU、BDの間の相対変位は、ロッド3、フランジ4、左スラスト軸受け73L、左側の第1皿ばねユニット6L、左プレート5L、左側の第2皿ばねユニット7L、左側壁2a、ねじ軸72a、及びナット72cを介して、回転運動に変換された状態で本体部2に伝達され、それにより、本体部2がロッド3に対して回転する。
また、建物Bの振動に伴う上下の梁BU、BDの間の相対変位の発生によって、振動抑制装置71に圧縮力が作用すると、ロッド3及びねじ軸72aが、本体部2に対して右方及び左方にそれぞれ移動する。それに伴い、上下の梁BU、BDの間の相対変位は、ロッド3、フランジ4、右スラスト軸受け73R、右側の第1皿ばねユニット6R、右プレート5R、右側の第2皿ばねユニット7R、収容壁2d、ねじ軸72a、及びナット72cを介して、回転運動に変換された状態で本体部2に伝達され、それにより、本体部2がロッド3に対して回転する。
図2と図17との比較から明らかなように、この場合にも、ロッド変位d(ロッド3の変位)に応じて、第1及び第2皿ばねユニット6L(6R)、7L(7R)の剛性が、図5を参照して説明したように発揮される。
振動抑制装置71では、上述した動作から明らかなように、回転マスとして兼用された本体部2と、第1及び第2皿ばねユニット6L(6R)、7L(7R)は、互いに直列に連結された関係にある。このため、振動抑制装置71のモデル図は、ロッド変位dが第1所定値d1以下のときには、例えば図19(a)のように表され、d1<d≦d2のときには、例えば図19(b)のように表され、d>d2のときには、例えば図19(c)のように表される。
このように、振動抑制装置71では、ばね機構1及び本体部2によって付加振動系を構成することができる。ちなみに、第1及び第2連結部材EN1’、EN2’は、その剛性が非常に高いので、ほとんど変形せず(剛性の寄与度が非常に小さい)、付加振動系の剛性要素としては、ほとんど機能しない。また、この付加振動系の固有振動数は、定点理論に基づいて、建物Bの固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように(ほぼ同じになるように)、設定される。ロッド変位dが第1所定値d1以下のときには、付加振動系の固有振動数f71は、本体部2の回転慣性質量をmとすると、f71=sqrt{(2・k1)/m}/(2・π)で表され、当該付加振動系の固有振動数f71の設定は、本体部2の回転慣性質量m及び第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1を調整することによって、行われる。
この場合、本体部2の回転慣性質量mの調整は、本体部2の左右の側壁2a、2b、周壁2c及び収容壁2dの径・肉厚、ならびに、ボールねじ72のピッチの少なくとも1つを設定することによって、行われる。また、第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1の調整は、前述したようにその皿ばね6aの数及び積層の仕方を設定することによって、行われる。
以上のように、第3実施形態による振動抑制装置71によれば、建物Bの振動に伴って発生した上梁BUと下梁BDの間の相対変位は、ロッド3、フランジ4、スラスト軸受け73L(73R)、第1皿ばねユニット6L(6R)、左プレート5L(右プレート5R)、第2皿ばねユニット7L(7R)、左側壁2a(収容壁2d)、ねじ軸72a、及びナット72cを介して、回転運動に変換された状態で本体部2に伝達され、それにより、本体部2がロッド3に対して回転する。これにより、回転マスとしての本体部2による回転慣性質量効果が得られるので、建物Bの振動を適切に抑制することができる。
この場合、本体部2への上梁BUと下梁BDの間の相対変位の伝達に伴い、フランジ4、第1皿ばねユニット6L(6R)、左プレート5L(右プレート5R)、第2皿ばねユニット7L(7R)及び左側壁2a(収容壁2d)から成る相対変位の伝達経路上において、軸線方向の押圧力(アキシャル荷重)が発生する。ロッド変位dが比較的小さく、第2皿ばねユニット7L(7R)が縮んでいないときには、前記第2圧縮荷重Fp2に起因する第2皿ばねユニット7L(7R)の押圧力によって、左プレート5L(右プレート5R)が、本体部2と一体の左ストッパ9L(右ストッパ9R)に当接しているので、本体部2と一体の左側壁2a(収容壁2d)と、第2皿ばねユニット7L(7R)と、左プレート5L(右プレート5R)は、互いに一体の状態にある。振動抑制装置71によれば、フランジ4と左側の第1皿ばねユニット6Lの間、及びフランジ4と右側の第1皿ばねユニット6Rとの間に、左右のスラスト軸受け73L、73Rが設けられているので、本体部2をロッド3に対して適切に回転させることができる。
また、本体部2及びばね機構1の第1及び第2皿ばねユニット6L(6R)、7L(7R)によって、付加振動系を構成することができる。したがって、この付加振動系の固有振動数f71を構造物の固有振動数に同調(共振)させることによって、建物Bの振動を適切に抑制(吸収)することができる。この場合、ばね機構1が、3段の線形な剛性を有し、ロッド変位dが比較的大きいときに、ロッド変位dが比較的小さいときよりも、その剛性が低くなる。また、上梁BUと下梁BDの間の相対変位が比較的小さく、ロッド変位dが第1所定値d1以下のときに、付加振動系の固有振動数f71が建物Bの固有振動数に同調するように、第1皿ばねユニット6L(6R)の剛性k1及び本体部2の回転慣性質量mが設定されている。以上により、上梁BUと下梁BDの間の相対変位が大きくなったときに、ばね機構1の剛性が低下することで、付加振動系の固有振動数f71が建物Bの固有振動数に同調しなくなるので、振動抑制装置71の反力が共振現象により過大化するのを防止することができる。
また、本体部2、第1及び第2皿ばねユニット6L(6R)、7L(7R)により付加振動系を構成できるので、回転マスとともに付加振動系を構成するために一般的に用いられる鋼材などのばね機能を有する取り付け部材を介さずに、振動抑制装置71を上下の梁BU、BDに連結することが可能になる。さらに、本体部2と回転マスが互いに共通の部材で構成されているので、振動抑制装置71を比較的簡単に構成することができる。また、振動抑制装置71は、前述した構成から明らかなように、ばね機構1及びマスダンパを一体化した構成を有するので、第2実施形態による振動抑制装置61よりも小型化を図ることができる。
なお、本発明による振動抑制装置に関する第3実施形態では、左スラスト軸受け73Lを、フランジ4に設けているが、左側の第1皿ばねユニット6L及び左プレート5Lから成る相対変位の伝達経路上における他の適当な部位に設けてもよい。このことは、右スラスト軸受け73Rについても同様に当てはまり、右スラスト軸受け73Rを、右側の第1皿ばねユニット6R及び右プレート5Rから成る相対変位の伝達経路上における他の適当な部位に設けてもよい。
また、第3実施形態では、ばね機構1を用いているが、前述したばね機構21又は41を用いてもよい。ばね機構21を用いる場合には、左スラスト軸受け73Lは、仕切壁2h、左側の第1皿ばねユニット6L及び左プレート5Lから成る相対変位の伝達経路上に設けられ、右スラスト軸受け73Rは、仕切壁2h、右側の第1皿ばねユニット6R及び右プレート5Rから成る相対変位の伝達経路上に設けられる。さらに、第3実施形態に関し、ばね機構1、21及び41に関する前述したバリエーションを適用してもよいことは、もちろんである。
次に、図20を参照しながら、本発明の第4実施形態による振動抑制装置81について説明する。この振動抑制装置81は、前述したばね機構31と、ボールねじ82及び左右一対のスラスト軸受け83L、83Rを備えており、ばね機構31とマスダンパを一体化した構成を有している。図20において、ばね機構31と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、便宜上、図20の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」として、ばね機構31と異なる点を中心に説明する。
振動抑制装置81では、前述した第3実施形態による振動抑制装置71と同様、本体部2は、比重の比較的大きい材料、例えば鉄で構成されており、マスダンパの回転マスとして兼用されている。すなわち、本体部2及び回転マスは、互いに共通の部材で構成されている。また、本体部2は、ロッド3によって回転可能に支持されており、本体部2の右側壁2bには、ばね機構31と異なり、前記支持部材SUが設けられておらず、左右方向に貫通する挿入孔2jが同軸状に設けられている。上記のボールねじ82は、本体部2の右部に設けられており、前記ボールねじ72と同様、ねじ軸82aと、ねじ軸82aに多数のボール82bを介して螺合するナット82cを有している。
ねじ軸82aは、前述した第3実施形態のねじ軸72aと同様、右側壁2bの挿入孔2jに、前記滑り材8を介して挿入されるとともに、左右方向に延びている。また、ねじ軸82aは、本体部2の右部に左右方向に移動可能にかつ同軸状に部分的に収容されており、本体部2から右方に突出している。ナット82cは、第3実施形態のナット72cと同様、右側壁2bの右面に同軸状に取り付けられており、その中央のねじ孔が、挿入孔2jに連通している。さらに、ねじ軸82aの右端部には、第2取付具FL2が、自在継ぎ手を介して取り付けられている。第1及び第2取付具FL1、FL2の自在継ぎ手は、後述するように回転する本体部2の反力によるトルクにより、ロッド3及びねじ軸82aが第1及び第2取付具FL1、FL2に対してそれぞれ回転しない程度の摩擦力を有している。
上記の左右のスラスト軸受け83L、83Rは、左右のフランジ32L、32Rの右面及び左面に、それぞれ同軸状に取り付けられている。また、左スラスト軸受け83Lは、左フランジ32Lと左側の第1プレート33Lの間に配置され、右スラスト軸受け83Rは、右フランジ32Rと右側の第1プレート33Rの間に配置されており、各スラスト軸受け83L、83Rの径方向の中央の孔には、ロッド3が挿入されている。以上の構成の振動抑制装置81は、第3実施形態による振動抑制装置71と同様、例えば、建物Bの上梁BU及び下梁BDにブレース状に連結される(図18参照)。
建物Bの振動に伴って上下の梁BU、BDの間に相対変位が発生し、それにより、振動抑制装置81に引張力が作用すると、ロッド3及びねじ軸82aが、本体部2に対して左方及び右方にそれぞれ移動する。それに伴い、上下の梁BU、BDの間の相対変位は、ロッド3、右フランジ32R、右側のスラスト軸受け83R、右側の第1プレート33R、第1皿ばねユニット6、左側の第1プレート33L、左側の第2プレート34L、左側の第2皿ばねユニット7L、左側壁2a、ねじ軸82a、及びナット82cを介して、回転運動に変換された状態で本体部2に伝達され、それにより、本体部2がロッド3に対して回転する。
また、建物Bの振動に伴う上下の梁BU、BDの間の相対変位の発生によって、振動抑制装置81に圧縮力が作用すると、ロッド3及びねじ軸82aが、本体部2に対して右方及び左方にそれぞれ移動する。それに伴い、上下の梁BU、BDの間の相対変位は、ロッド3、左フランジ32L、左スラスト軸受け83L、左側の第1プレート33L、第1皿ばねユニット6、右側の第1プレート33R、右側の第2プレート34R、右側の第2皿ばねユニット7R、収容壁2d、ねじ軸82a、及びナット82cを介して、回転運動に変換された状態で本体部2に伝達され、それにより、本体部2がロッド3に対して回転する。
図9と図20との比較から明らかなように、この場合にも、ロッド変位D(ロッド3の変位)に応じて、第1及び第2皿ばねユニット6、7L(7R)の剛性が、図11を参照して説明したように発揮される。
振動抑制装置81では、上述した動作から明らかなように、回転マスとして兼用された本体部2と、第1及び第2皿ばねユニット6、7L(7R)は、互いに直列に連結された関係にある。このため、振動抑制装置81のモデル図は、ロッド変位Dが所定値DR以下のときには、例えば図21(a)のように表され、D>DRのときには、例えば図21(b)のように表される。
このように、振動抑制装置81では、ばね機構31の第1及び第2皿ばねユニット6、7L(7R)と、本体部2とによって付加振動系を構成することができ、この付加振動系の固有振動数は、定点理論に基づいて、ロッド変位Dが所定値DR以下のときに建物Bの固有振動数(例えば1次の固有振動数)に同調(共振)するように(ほぼ同じになるように)、設定される。ロッド変位Dが所定値DR以下のときには、付加振動系の固有振動数f81は、本体部2の回転慣性質量をmとして、f81=sqrt{(K1)/m}/(2・π)で表され、当該付加振動系の固有振動数f81の設定は、本体部2の回転慣性質量m及び第1皿ばねユニット6の剛性K1を調整することによって、行われる。
この場合、本体部2の回転慣性質量mの調整は、前述した第3実施形態による振動抑制装置71の場合と同様、本体部2の左右の側壁2a、2b、周壁2c及び収容壁2dの径・肉厚、ならびに、ボールねじ82のピッチの少なくとも1つを設定することによって、行われる。また、第1皿ばねユニット6の剛性K1の調整は、前述したようにその皿ばね6aの数及び積層の仕方を設定することによって、行われる。
以上のように、第4実施形態による振動抑制装置81によれば、建物Bの振動に伴って発生した上梁BUと下梁BDの間の相対変位が、ロッド3、左フランジ32L(右フランジ32R)、左スラスト軸受け83L(右スラスト軸受け83R)、左側の第1プレート33L、第1皿ばねユニット6、右側の第1プレート33R、第2プレート34R(34L)、第2皿ばねユニット7R(7L)、収容壁2d(左側壁2a)、ねじ軸82a、及びナット82cを介して、回転運動に変換された状態で本体部2に伝達される。これにより、回転マスとしての本体部2がロッド3に対して回転し、本体部2による回転慣性質量効果が得られるので、建物Bの振動を適切に抑制することができる。
この場合、本体部2への上梁BUと下梁BDの間の相対変位の伝達に伴い、左フランジ32L(右フランジ32R)、左側の第1プレート33L、第1皿ばねユニット6、右側の第1プレート33R、第2プレート34R(34L)、第2皿ばねユニット7R(7L)、収容壁2d(左側壁2a)から成る相対変位の伝達経路上において、軸線方向の押圧力(アキシャル荷重)が発生する。ロッド変位Dが比較的小さく、第2皿ばねユニット7L(7R)が縮んでいないときには、前記第2圧縮荷重FP2に起因する第2皿ばねユニット7L(7R)の押圧力によって、左側及び右側の第2プレート34L、34Rが本体部2に設けられた左右のストッパ35L、35Rにそれぞれ当接しているので、左側壁2a(収容壁2d)と、第2皿ばねユニット7L(7R)と、第2プレート34L(34R)は、互いに一体の状態にある。振動抑制装置81によれば、左フランジ32Lと左側の第1プレート33Lの間、及び、右フランジ32Rと右側の第1プレート33Rの間に、左右のスラスト軸受け83L、83Rがそれぞれ設けられているので、本体部2をロッド3に対して適切に回転させることができる。
また、本体部2及び第1及び第2皿ばねユニット6、7L(7R)によって、付加振動系を構成することができる。したがって、この付加振動系の固有振動数f81を建物Bの固有振動数に同調(共振)させることによって、建物Bの振動を適切に抑制(吸収)することができる。この場合、ばね機構31が、2段の線形な剛性を有しており、ロッド変位Dが比較的大きいときに、入力変位が比較的小さいときよりも、その剛性が低くなる。また、上梁BUと下梁BDの間の相対変位が比較的小さく、ロッド変位Dが所定値DR以下のときに、付加振動系の固有振動数f81が建物Bの固有振動数に同調するように、第1皿ばねユニット6の剛性K1及び本体部2の回転慣性質量mが設定されている。以上により、上梁BUと下梁BDの間の相対変位が大きくなったときに、付加振動系の固有振動数f81が建物Bの固有振動数に同調しなくなるので、振動抑制装置81の反力が共振現象により過大化するのを防止することができる。
また、本体部2、第1及び第2皿ばねユニット6、7L(7R)により付加振動系を構成できるので、回転マスとともに付加振動系を構成するために一般的に用いられる鋼材などのばね機能を有する取り付け部材を介さずに、振動抑制装置81を上下の梁BU、BDに連結することが可能になる。さらに、第3実施形態による振動抑制装置71の場合と同様、本体部2と回転マスが互いに共通の部材で構成されているので、振動抑制装置81を比較的簡単に構成することができる。また、振動抑制装置81は、前述した構成から明らかなように、ばね機構31及びマスダンパを一体化した構成を有するので、第2実施形態による振動抑制装置61よりも小型化を図ることができる。
なお、本発明による振動抑制装置に関する第4実施形態では、左スラスト軸受け83Lを左フランジ32Lに、右スラスト軸受け83Rを右フランジ32Rに、それぞれ設けているが、第1プレート33L、33R、第1皿ばねユニット6及び第2プレート34L、34Rから成る相対変位の伝達経路上における適当な部位に設けてもよい。この場合、第1プレート33L、33R及び第1皿ばねユニット6から成る相対変位の伝達経路上にスラスト軸受けを設けるときには、単一のスラスト軸受けを用いれば足り、その場合には、第1プレート33L、33Rは、ロッド3に対して回転可能に設けられる。さらに、第4実施形態に関し、ばね機構31に関する前述したバリエーションを適用してもよいことは、もちろんである。
また、本発明による振動抑制装置に関する前述した第3及び第4実施形態では、本体部2及び回転マスを、互いに共通の部材で構成しているが、互いに別個の部材で構成してもよい。この場合、回転マスを本体部の外側に一体に設けることによって、回転マスの回転慣性質量の調整を容易に行うことができる。また、回転マスを本体部の内側に一体に設けてもよく、本発明はこのような構成を排除するものではない。
さらに、第3及び第4実施形態では、ロッド3を上梁BUに、ねじ軸72a、82aを下梁BDに、それぞれ連結しているが、これとは逆に、ロッド3を下梁BDに、ねじ軸72a、82aを上梁BUに、それぞれ連結してもよい。また、第3及び第4実施形態では、振動抑制装置71、81を上下の梁BU、BDに、ブレース状に連結しているが、上下方向に延びる鋼材や、V字状又は逆V字状の鋼材で構成されたブレース材を介して、水平に延びるように連結してもよい。あるいは、一対の振動抑制装置71、71、81、81を、V字状又は逆V字状に、ブレース状に連結してもよい。
さらに、第2〜第4実施形態では、本発明における第1及び第2部位として、上下の梁BU、BDをそれぞれ採用し、2層間の層間変位を抑制しているが、他の適当な部位を採用してもよい。例えば、第1及び第2部位として、互いの間に1つ以上の梁が設けられた上下の梁をそれぞれ採用し、3層以上の間の層間変位を抑制してもよく、あるいは、建物Bが立設された基礎、及び梁をそれぞれ採用してもよい。
また、第2〜第4実施形態では、振動抑制装置61、71、81を左右方向に延びる梁BU、BDに連結することによって、建物Bの振動による左右方向の変位を抑制しているが、前後方向に延びる梁に連結することによって、建物の振動による前後方向の変位を抑制してもよい。さらに、第2〜第4実施形態は、本発明による振動抑制装置61、71、81を建物Bに適用した例であるが、本発明は他の適当な構造物、例えば、鉄塔や橋梁などに適用可能である。また、これまでに述べた振動抑制装置61、71、81に関するバリエーションを適宜、組み合わせて採用してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。