JP5587806B2 - バネ部材 - Google Patents

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本発明は皿バネを用いて構成されるバネ部材、特に簡易な構成でありながら引張力および圧縮力の双方に対して対応し得るバネ部材に関する。
周知のように皿バネはコンパクトに大きな耐荷重性能を持つバネ部材として種々の機器に使用されている。
特に、特許文献1に示されるように複数の皿バネを直列あるいは並列に組み合わせて用いることで変形性能や耐荷重を増すことができることから、コイルバネよりコンパクトでローコストに所定の性能が得られるメリットがある。
しかしながら、皿バネ単体では圧縮力にしか対応できないので、圧縮力のみならず引張力にも対応できるバネ要素とするためには、たとえば特許文献2に示されるように圧縮力に対応するための皿バネ群と引張力に対応するための皿バネ群を組み合わせて用いる必要がある。
図9はそのようなバネ部材の一例を示すもので、シリンダー1内に両方向に変位可能なピストン2を配設し、(a)に示すような皿バネ3を(b)に示すようにピストン2の両側にそれぞれ多数(図示例では8枚づつ)直列に重ねた2組の皿バネ群3Aとして収容した構成とされたものである。
このバネ部材では、ピストン2に連結したロッド4とシリンダー1の一端に設けたクレビス5との間に生じる圧縮力に対しては、一方(図示例ではピストン2の右側)の皿バネ群3A全体をピストン2により一方向(図示例では右方)に押圧して弾性的に圧縮することで対応し、引張力に対しては他方(同、左側)の皿バネ群3A全体をピストン2により逆方向(同、左方)に押圧して弾性的に圧縮させることで対応することができる。
特開2010−38228号公報 特開2000−243424号公報
上記のように2組の皿バネ群を組み合わせて圧縮力と引張力の双方に対応する構成のバネ部材では、多数の皿バネを必要とするばかりでなく、バネ部材全体として構成の簡略化、コンパクト化、ローコスト化には自ずと限界がある。
上記事情に鑑み、本発明は、皿バネを用いたバネ部材として、全体の構成が十分に簡略かつコンパクトでローコストでありながら圧縮力と引張力の双方に対応し得る有効適切なバネ部材を提供することを目的とする。
本発明は、互いに離接する方向に相対変位可能な二部材間に介装されて、前記二部材間に生じる相対変位によって弾性的に伸縮するバネ部材であって、シリンダー要素と、該シリンダー要素に対して軸方向に相対変位可能に挿入されたロッド要素と、該ロッド要素の先端部に組み付けられて前記シリンダー要素内に収容されたバネ要素により構成されて、前記ロッド要素の基端部および前記シリンダー要素に対して前記二部材がそれぞれ連結可能とされ、前記バネ要素は複数枚の皿バネを直列および/または並列に重ねてなる1組の皿バネ群の両端側に平板状の押板がそれぞれ配設され、前記複数枚の皿バネおよび前記押板の軸中心には貫通孔が形成され、前記ロッド要素は前記バネ要素の全体に対して軸方向に相対変位可能に前記貫通孔に挿通せしめられているとともに、該ロッド要素には前記各押板の外側の位置に該押板の軸方向の移動を規制するストッパーが設けられていて、該ストッパーの間において前記バネ要素の全体が前記ロッド要素の軸方向両側に弾性的に変位可能な状態で組み付けられ、前記シリンダー要素の軸方向両端部には、前記ロッド要素が延出可能な挿通孔が形成された蓋体が配設され、前記ロッド要素の基端部が前記シリンダー要素から外方に前記挿通孔を介して延出せしめられた状態で該ロッド要素の先端部が前記シリンダー要素内に挿入されて、前記各押板がそれぞれ前記シリンダー要素の両端部に設けられた前記蓋体の内面に対して押圧可能な状態で前記バネ要素の全体が前記シリンダー要素内に収容されてなり、前記ロッド要素が前記シリンダー要素に対して軸方向両側に相対変位した際に、いずれか一方の押板が前記蓋体に対して押圧されるとともに他方の押板が前記ストッパーにより前記シリンダー要素の内側に向かって押圧されて前記バネ要素の全体が弾性的に圧縮可能に構成されてなることを特徴とする。
本発明のバネ部材によれば、引張時および圧縮時のいずれにおいても1組の皿バネ群が圧縮されて一定のバネ剛性を有するバネ部材として機能するから、従来のバネ部材のように2組の皿バネ群を必要とせず、したがって従来と同等のバネ剛性を持つものであっても皿バネの所要枚数を半減できるし、バネ部材全体の所要長さも半減でき、その結果、構成の十分な簡略化と小形化および低価格化を実現し得るものである。
勿論、皿バネ単体としてのバネ剛性やそれらの枚数を調整することで任意の変形性能や耐力に幅広く対応できるから、様々な用途のバネ部材として広く適用可能であり、特に構造物を対象とする制振機構の構成要素としてのバネ部材として用いて好適である。
本発明の一実施形態であるバネ部材の概略構成図である。 同、作動状態を示す図である。 同、皿バネ単体の形状例を示す図である。 同、皿バネ群の構成例(皿バネの組み合わせパターンの例)を示す図である。 同、荷重−変形特性の設計例を示す図である。 本発明の他の実施形態であるバネ部材の概略構成図である。 本発明のさらに他の実施形態であるバネ部材の概略構成図である。 本発明のバネ部材を制振機構に適用する場合の一例を示す図である。 従来一般のバネ部材を示す図である。
図1に本発明の一実施形態であるバネ部材10の概略構成を示す。なお、本発明のバネ部材10の構成要素のうち、図9に示した従来のバネ部材と同様に機能する部材については同一符号を付してある。
本実施形態のバネ部材10は、シリンダー要素1(以下では単にシリンダー1と略す)と、シリンダー1に対して軸方向に相対変位可能に挿入されたロッド要素4(以下では単にロッド4と略す)と、ロッド4の先端部に組み付けられてシリンダー1内に収容されたバネ要素11により構成されている。
本実施形態におけるバネ要素11は、複数枚(図示例では8枚)の皿バネ3が直列に重ねられた1組の皿バネ群3Aの両端側に押板12(12a、12b)がそれぞれ配設されたもので、そのバネ要素11の全体に対してロッド4が軸方向に相対変位可能に挿通せしめられており、そのロッド4には各押板12の外側の位置にそれぞれストッパー13(13a、13b)としての加力ボルトが螺着されて、それらストッパー13の間においてバネ要素11の全体がロッド4の軸方向両側に弾性的に変位可能な状態で組み付けられている。
そして、ロッド4の基端部がシリンダー1から外方(図示例では左方)に延出せしめられた状態でその先端部がシリンダー2内に挿入されることにより、各押板12がそれぞれシリンダー1の両端部に設けられている環状の蓋体14(14a、14b)の内面に対して押圧可能な状態でバネ要素11の全体がシリンダー1内に収容されている。
なお、シリンダー1内にバネ要素11を収容する際には、シリンダー1内にバネ要素11を収容してからシリンダー1に対して蓋体14を装着してボルト締結すれば良いが、あるいはシリンダー1を円周方向に2分割(ないしさらに多分割)しておいてそれらをバネ要素11の外側に装着して一体に連結するか、もしくはシリンダー1を長さ方向に2分割しておいてそれらの内側にバネ要素11を収容してから一体に連結すれば良い。
いずれにしても、図示例のように押板12に当接する皿バネ3は大径側(図3に示す大径寸法Dの面)が押板11に面する向きに配置することが好ましい。
また、ロッド4は各皿バネ3の変形や変位をガイドする部材として機能するので、そのロッド4の硬度はHRC55以上とし、皿バネ3と接触する周面は平滑な円筒面とすることが好ましい。
本実施形態のバネ部材10は、通常のバネ部材と同様に互いに離接する方向に相対変位可能な二部材(図示せず)の間に介装されて、たとえば制振機構の構成要素としてのバネ要素として機能するものであって、それら二部材の一方がロッド4の基端部に対して連結され、他方がシリンダー1に設けられているクレビス5に対して連結されるようになっている。
そして、上記の二部材の間に相対変位ないし相対振動が生じた際には、上記のバネ要素11の全体が両方向に弾性的に圧縮されることにより、このバネ部材10全体が所定のバネ剛性をもって軸方向両側に弾性的に伸縮するようになっている。
すなわち、このバネ部材10が図1(a)に示す状態で二部材間に介装されている状態から、二部材どうしが離間する方向に相対変位を生じて図2(a)に示すようにバネ部材10の両端に対して引張力が作用した際には、ロッド4がシリンダー1から抜き出る方向に変位してバネ部材10全体が伸張するが、その際、奥側(図示右側)のストッパー13aによって奥側(同)の押板12aがシリンダー1内に引き込まれて皿バネ群3Aの全体がその押板12aにより一方向(図示左方向)に変位するとともに、手前側(図示左側)の押板12bが手前側(同)の蓋体14bに対して押圧され、これによりバネ要素11全体が弾性的に圧縮される。
逆に、二部材どうしが接近する方向に相対変位を生じて図2(b)に示すようにバネ部材10の両端に対して圧縮力が作用した際には、ロッド4がシリンダー1に対して押し込まれる方向に変位してバネ部材10全体が縮退するが、その際、手前側(図示左側)のストッパー13bによって手前側(同)の押板12bがシリンダー1内に押し込まれて皿バネ群3Aの全体がその押板12bにより逆方向(図示右方向)に変位するとともに、奥側(図示右側)の押板12aが奥側(同)の蓋体14aに対して押圧され、これによりバネ要素11全体が弾性的に圧縮される。
このように、本実施形態のバネ部材10によれば、引張時および圧縮時のいずれにおいても1組の皿バネ群3Aが圧縮されて引張力および圧縮力の双方に対応可能であるから、図9に示した従来のバネ部材のように2組の皿バネ群を必要とせず、したがって従来と同等のバネ剛性を持つものであっても皿バネ3の所要枚数を半減できるし、バネ部材10全体としての所要長さも半減でき、その結果、構成の十分な簡略化と小形化およびローコスト化を実現し得るものである。
勿論、皿バネ3単体としてのバネ剛性や、それらの枚数を調整することで、任意の変形性能や耐力に幅広く対応できる。
そのためには、皿バネ3単体の形状および寸法(図3に示す大径寸法D、小径寸法d、全高H、ライズh、板厚t)を、その素材である鋼材の弾性特性に応じて任意に設定すれば良い。
また、皿バネ3の枚数や配列パターンは、皿バネ群3A全体として所望のバネ剛性が得られるように、たとえば図4に示すような様々なパターンで任意に設計すれば良い。
その場合、皿バネ3を同じ向きに重ねる並列配列とすれば耐力(荷重)を増大させることができ、逆向きに重ねる直列配列とすれば変形性能を増大させることができるから、バネ部材10全体として所定の荷重に必要な枚数を並列とし、所定の変形に必要な枚数を直列にすれば良い。
なお、いずれにしても、皿バネ単体の変形性能δは皿バネ単体のライズhに対して
δ≦0.75h とすると良い。
また、皿バネ単体の耐力pは変形がδのときの反力とすると良く、それにより荷重F−変形(たわみ)δの関係がほぼ線形となる。具体的には、バネ部材10全体の変形量x、負担力Fとして、直列枚数≧x/δ、並列枚数≧F/p となるようにすると良い。
以上で本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態はあくまで好適な一例に過ぎず、本発明はたとえば以下のような設計的変更や応用が可能である。
本発明のバネ部材10は図5(a)に示すような線形の荷重−変形特性とすることが好ましく、そのためには通常時において皿バネ3と押板12とが当接しており、かつ押板12と蓋体14とが当接している状態として、それらの間に隙間がなくかつ皿バネ群3Aに予圧縮荷重がない状態としてバネ部材10を組み立てれば良い。
そして、そのためには各構成部品の各部の寸法や厚みを予め厳密に加工しておけば良いが、必要に応じてそれらの間に適宜厚さのスペーサを介装して微調整すれば良い。
また、後述するように、押板12の蓋体14やストッパー13との接触部にゴムシート16(図7参照)をつけ、音を軽減するようにしても良い。
但し、皿バネ3と押板12との間、あるいは押板12と蓋体14との間、もしくは皿バネどうしの間に、敢えて隙間を確保しておいたり、バネ要素11に対して予め予圧縮荷重を付与しておくことにより、本発明のバネ部材10に非線形の特性を持たせることも可能である。
すなわち、バネ要素11に対して上記のような隙間δ0を確保しておけばその特性は図5(b)に示すようなスリップ型となり、また、バネ要素11に予圧縮力F0を付与しておけばその特性は図5(c)に示すような特性となるから、バネ部材10の用途や使用目的に応じて最適な特性となるような設計とすれば良い。
上記実施形態のバネ部材10では、相対変位可能な二部材に対してロッド4およびクレビス5を連結するものとしたが、クレビス5を省略してシリンダー1自体を部材に対して直接連結することでも良い。
その場合、図6に示すようにシリンダー1の断面形状を角形に変更してその一面にフランジ部を設けることにより、これをベースプレート1aとして対象部材に対して直接的にボルト締結することが考えられる。
上記実施形態では、ロッド要素を単なるロッド4とし、シリンダー要素を単なるシリンダー1として構成したが、本発明のロッド要素とは「皿バネ3の内側にあって皿バネ群3A両端で押板12外側のストッパー13と一体化したもの」であれば良く、シリンダー要素とは「皿バネ3の外側にあって2つの押板12間隔を一定以下に保持するもの」であればよく、その限りにおいてシリンダー要素およびロッド要素の形態は任意である。
シリンダー要素およびロッド要素の形状を変更した場合の実施形態を図7に示す。図7に示す実施形態では図1に示した実施形態とは左右を反転させているが、両者に共通する要素には同一符号を付している。
本実施形態では、上記実施形態では単なるシリンダーとしていたシリンダー要素1を両側の蓋体14を連結材15によって連結した構成とし、単なるロッドとしていたロッド要素4をやや大径かつ段付きの形態とし、また押板12を皿バネ群3Aの両側に座金の形態で装着し、それら押板12の外表面にゴムシート16を装着して蓋体14およびストッパー13との当接時の騒音発生を防止するようにしているが、その他は上記実施形態と同様に構成されており同様に機能するものである。
本発明のバネ部材10は様々な用途、目的のバネ要素として広く適用可能であるが、特に建物等の構造物を対象とする制振機構の構成要素として好適に適用可能であり、その一例を図8に示す。
これは、建物における柱20と梁21(21a、21b)により構成される架構フレーム内に設置されて層間変形を制御するためのもので、上階の梁21aに対して固定したV型ブレース22の下端部を接合治具23を介して下階の梁21bに対して面内相対変位可能に支持し、その接合治具23と下階の梁21bとの間に慣性質量ダンパー24と本発明のバネ部材10とを直列に接続し、さらに接合治具23と下階の梁21bに固定したダンパー取り付け治具25との間にオイルダンパー26を接続したもので、それら慣性質量ダンパー24と本発明のバネ部材10とオイルダンパー26とによって同調型制振機構を構成したものである。
この場合、バネ部材10として図6に示したようにシリンダー1を角形としたものを用いて、そのベースプレート1aを下階の梁21bに対して直接接続すれば、納まりおよび施工性に優れる。
このような制振機構において、バネ要素として従来一般のコイルバネや図9に示したような2組の皿バネ群による従来一般のバネ部材を用いる場合には、その寸法が長大になって納まりが困難になる場合があるが、それに代えて上記のように本発明のバネ部材10を用いることによりバネ要素としての所要長さを十分に短縮し得て支障なく納めることが可能である。
さらに、上記の制振機構において、本発明のバネ部材10とオイルダンパー26とを一体化することも考えられる。すなわち、本発明のバネ部材10におけるシリンダー1とオイルダンパー26のシリンダーとを一体化し、本発明のバネ部材10におけるロッド4とオイルダンパー26におけるロッドとを一体化すれば、バネ要素と減衰要素とをコンパクトに一体化させることが可能である。
1 シリンダー(シリンダー要素)
1a ベースプレート
3 皿バネ
3A 皿バネ群
4 ロッド(ロッド要素)
5 クレビス
10 バネ部材
11 バネ要素
12(12a、12b) 押板
13(13a、13b) ストッパー
14(14a,14b) 蓋体
15 連結材
16 ゴムシート
20 柱
21(21a、21b) 梁
22 V型ブレース
23 接合治具
24 慣性質量ダンパー
25 ダンパー取り付け治具
26 オイルダンパー

Claims (1)

  1. 互いに離接する方向に相対変位可能な二部材間に介装されて、前記二部材間に生じる相対変位によって弾性的に伸縮するバネ部材であって、
    シリンダー要素と、該シリンダー要素に対して軸方向に相対変位可能に挿入されたロッド要素と、該ロッド要素の先端部に組み付けられて前記シリンダー要素内に収容されたバネ要素により構成されて、前記ロッド要素の基端部および前記シリンダー要素に対して前記二部材がそれぞれ連結可能とされ、
    前記バネ要素は複数枚の皿バネを直列および/または並列に重ねてなる1組の皿バネ群の両端側に平板状の押板がそれぞれ配設され、前記複数枚の皿バネおよび前記押板の軸中心には貫通孔が形成され、
    前記ロッド要素は前記バネ要素の全体に対して軸方向に相対変位可能に前記貫通孔に挿通せしめられているとともに、該ロッド要素には前記各押板の外側の位置に該押板の軸方向の移動を規制するストッパーが設けられていて、該ストッパーの間において前記バネ要素の全体が前記ロッド要素の軸方向両側に弾性的に変位可能な状態で組み付けられ、
    前記シリンダー要素の軸方向両端部には、前記ロッド要素が延出可能な挿通孔が形成された蓋体が配設され、
    前記ロッド要素の基端部が前記シリンダー要素から外方に前記挿通孔を介して延出せしめられた状態で該ロッド要素の先端部が前記シリンダー要素内に挿入されて、前記各押板がそれぞれ前記シリンダー要素の両端部に設けられた前記蓋体の内面に対して押圧可能な状態で前記バネ要素の全体が前記シリンダー要素内に収容されてなり、
    前記ロッド要素が前記シリンダー要素に対して軸方向両側に相対変位した際に、いずれか一方の押板が前記蓋体に対して押圧されるとともに他方の押板が前記ストッパーにより前記シリンダー要素の内側に向かって押圧されて前記バネ要素の全体が弾性的に圧縮可能に構成されてなることを特徴とするバネ部材。
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