JP6402889B2 - 制振構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、制振構造物に関する。
従来、例えば、複数の建物間や、内側構造と内側構造を囲繞するように設けられた外側構造の両構造間などを制振装置で連結する連結制振は、効果的に地震時の応答を低減させることができる(例えば、特許文献1参照)。
また、このような連結制振において、制振装置に慣性質量ダンパーを採用し、且つ制振装置を建物の下層部に集中配置すると、オイルダンパー等を単独で用いる場合と比較し、さらに制振装置による効果を発揮させることができ、合理的な制振システムを実現することができる。
特開2010−112013号公報
しかしながら、上記の連結制振システムは、2以上の構造体(建物)を制振装置で連結するため、建築計画との整合上、必然的に適用範囲が限られることになる。このため、単一の多層構造の建物に対しても連結制振システムのような合理的な制振システムを適用し、その制振性能を向上させる手法が強く望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑み、単一の多層構造の構造体に対しても連結制振システムのような合理的な制振システムを適用し、その制振性能を向上させることを可能にする制振構造物を提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の制振構造物は、多層構造の構造体に制振装置を設置してなる制振構造物であって、前記構造体が、剛構造領域と、前記剛構造領域よりも剛性が小さい柔構造領域とを備えて構築され、前記構造体に外力が作用した際の前記剛構造領域と前記柔構造領域の変形差が入力されるように前記制振装置が配設されるとともに、前記構造体を下層部と中層部と上層部に分け、前記構造体の下層部に前記剛構造領域と前記柔構造領域と前記制振装置を設け、前記制振装置を設置した制振階層の直上の1階層は、該1階層の前記柔構造領域の剛性を他の階層の前記柔構造領域の剛性の2倍とし、該1階層の前記剛構造領域の剛性を他の階層の前記剛構造領域の剛性の1/2倍とし、且つ、前記制振装置として主系の慣性質量ダンパーと付加振動系の直列バネを設け、前記慣性質量ダンパーと直列バネから定まる固有の振動数に同調するように、バネ値が設定されていることを特徴とする。
また、本発明の制振構造物においては、前記制振装置が床位置に配設されていることが望ましい。
本発明の制振構造物においては、多層構造の構造体(建物など)を剛構造領域と、意図的にこの剛構造領域よりも剛性を小さくした柔構造領域とを備えて構築し、例えばこれら剛構造領域と柔構造領域の連結部分に制振装置を設置することで、地震等により構造体に外力が作用した際に、剛構造領域と柔構造領域の大きな変位差を制振装置に入力させることが可能になる。また、構造体内の剛性差を利用した1棟完結の制振システムを構築することができ、連結制振システムと比較して建築計画的な自由度を大きく、適用範囲を広くすることが可能になる。
これにより、単一の多層構造の構造体に対しても連結制振システムのような合理的な制振システムを具備・実現させることができ、その制振性能を効果的に向上させることが可能になる。
また、本発明の制振構造物においては、構造体の下層部に剛構造領域と柔構造領域と制振装置を設けることによって、すなわち低層集中制振システムを構成することで、従来の制振構造よりも大きな応答低減効果を得ることが可能になる。
また、本発明の制振構造物においては、制振装置として主系の慣性質量ダンパーと付加振動系の直列バネを設け、慣性質量ダンパーと直列バネから定まる固有の振動数に同調するように、バネ値が設定されていることにより、小さな慣性質量でも制振性能に優れた同調型制振機構を構成することが可能になる。また、小さな慣性質量でも同調型制振機構とすることができ、高振動数域での加速度応答を低減することが可能になる。
さらに、本発明の制振構造物においては、制振装置を床位置に設置することで、層間に制振用の壁や斜材を設ける場合のように平面計画に制約が生じることをなくすことができる。
本発明の一実施形態に係る制振構造物を示す図である。 本発明の一実施形態に係る制振構造物を示す図である。 本発明の一実施形態に係る制振構造物に設けられる制振装置の一例を示す図である。 シミュレーションで用いた制振構造物を示す図である。 シミュレーションで用いた制振構造物の解析モデルを示す図である。 シミュレーション結果を示す図である。
以下、図1から図6を参照し、本発明の一実施形態に係る制振構造物について説明する。
本実施形態の制振構造物Aは、例えば、図1、図2に示すようにマンションやオフィスビル等の多層構造の建物(構造体)であり、制振装置1を設置して地震時の応答低減効果を得るように構成されている。
また、本実施形態の制振構造物Aは、剛構造領域2と、意図的に剛構造領域2よりも剛性が小さい柔構造領域3とを備えて構築されている。さらに、この制振構造物Aは、下層部と中層部と上層部に分けた際に、下層部に位置する部分に、剛構造領域2と柔構造領域3と制振装置1が設けられるように構成されている。すなわち、低層集中制振システムを構成するようにして制振装置1等が配設されている。
さらに、本実施形態の制振構造物Aでは、制振装置1として、慣性質量ダンパーが用いられている。また、このとき、制振装置1として、慣性質量ダンパーと粘性系ダンパーと履歴系ダンパーが選択的に組み合わせて設けることが好ましい。さらに、制振装置1として主系の慣性質量ダンパーと付加振動系の直列バネを設け、慣性質量ダンパーと直列バネから定まる固有の振動数に同調するように、バネ値が設定されている。また、制振装置1は、建物下部の高さ方向に1箇所、もしくは複数箇所に設置されるとともに、床位置に(床と同高さ位置に)配設されている。
そして、上記構成からなる本実施形態の制振構造物Aにおいては、例えば、図1に示すように、地下外壁によって剛構造領域2を形成し、コアを柔構造にして柔構造領域3を形成したり、図2に示すように、下層部のコア側を剛構造にして剛構造領域2を形成し、その周囲の構造を柔構造にして柔構造領域3を形成するなどすると、地震などによって制振構造物Aの建物に外力が作用した際に、剛構造領域2と柔構造領域3に変形量の差(変形差)が生じる。
これにより、剛構造領域2と柔構造領域3の大きな変形差に応じた大きな変形量が制振装置1に生じ、連結制振システムに準じる制振性能が発揮されることになる。
また、本実施形態では、制振装置1として主系の慣性質量ダンパー(慣性質量機構)と付加振動系の直列バネ(付加ばね機構)を設け、慣性質量ダンパーと直列バネから定まる固有の振動数に同調するように、バネ値(慣性質量と付加ばねの値)が設定されている。
ここで、本実施形態の制振装置1の一例を図3に示す。この制振装置1は、回転慣性質量機構5と付加ばね機構6を備えるとともに、回転慣性質量機構5と付加ばね機構6を直列に連結配置して構成されている。また、直列に接続した回転慣性質量機構5と付加ばね機構6からなる制振装置1はその軸線O1方向を水平方向に配して設置される。
回転慣性質量機構5は、中心軸線O1を制振装置1の軸線O1と同軸上に配して設けられたボールねじ7と、ボールねじ7に螺着して配設されたボールナット8と、ボールナット8に取り付けられ、ボールナット8の回転に従動して回転する回転錘9とを備えて構成されている。
ボールねじ7は、その一端7aに構造体に接続するためのボールジョイントやクレビスなどの連結部材10が取り付けられている。
また、ボールねじ7に螺着したボールナット8は、軸受け11に支持されている。軸受け11は、軸線O1周りに回転不能に且つ軸線O1方向に移動不能に固設される円環状の外輪11aと、外輪11aの内孔内に配されて軸線O1周りに回転可能に支持された円環状の内輪11bとを備えて形成されている。そして、ボールねじ7が軸受け11の内輪11bの中心孔に挿通して配設されるとともに、ボールナット8が軸受け11の内輪11bに固設されている。これにより、ボールナット8は、軸線O1周りに回転可能に、且つ軸線O1方向に移動不能に配設されている。
さらに、ボールナット8に回転錘9が一体に固設されている。回転錘9は例えば略円筒状に形成され、ボールねじ7を内部に挿通し、ボールねじ7と互いの軸線O1を同軸上に配した状態でボールナット8に固着して配設されている。
次に、付加ばね機構6は、円筒状に形成された外筒12と、外筒12よりも外径が小の円筒状に形成され、外筒12の内部に互いの軸線O1を同軸上に配して設けられた内筒13と、外筒12と内筒13の間に配設された付加ばね(ばね部材)14とを備えて構成されている。
外筒12は、所定長さの高軸剛性かつ高曲げ剛性の中空円筒体であって、その他端12b(図中左側の端部)に内部を閉塞させるように円板状の接続板15が固着され、この接続板15に、制振装置1の他端を構造体に接続するためのボールジョイントやクレビスなどの連結部材16が取り付けられている。また、外筒12の一端12a側(図中右側の端部)には、内筒13を挿通させる挿通孔を中心に貫通形成した円環状の支持板17が内部を閉塞させるように固着されている。
また、外筒12には、一端12a側に、支持板17に固着して設けられ、外筒12を内筒13に対して軸線O1方向に案内して相対的に進退させるためのリニアガイド18が設けられている。さらに、外筒12には、他端12b側に、内面から径方向内側に突出し、他端12bから軸線O1方向一端12a側に向けて延びる凸部19が設けられている。また、この凸部19は、制振装置1のストローク量に応じた軸線O1方向の長さ寸法で形成されている。
内筒13は、所定長さの高軸剛性かつ高曲げ剛性の中空円筒体であって、支持板17の挿通孔に他端13b側から挿通して外筒12内に配設され、一端13a側を外筒12から外側に配して設けられている。また、このとき、内筒13は、その一端13aを、ボールねじ7を回転可能に軸支する軸受け11の外輪11aに固着し、内輪11bの内孔と互いの軸線O1が同軸上に配されるようにして設けられている。さらに、内筒13は、他端13bと外筒12の他端12bに固着された接続板15との軸線O1方向の間に所定の間隔(制振装置1のストローク量を規定する間隔)を設けて外筒12内に配設されている。
また、内筒13には、外筒12の支持板17から外側に延設された一端13aに、径方向外側に突出し、軸線O1方向に延び、リニアガイド18が係合して外筒12を内筒13に対して軸線O1方向に案内し相対回転せずに進退させるためのリニアガイドレール20が設けられている。さらに、内筒13には、その他端13bに、内筒13の外径よりも大きく、外筒12の内径よりも小さい直径を有する円板状の係止板21が固着されている。
また、内筒13の他端13b側には、内筒13の外径と略等しい内径を備え、外筒12の内径よりも僅かに小さい外径を備えて略円環状に形成されたストローク規定板22が、その中心孔に内筒13の他端13b側を挿通して取り付けられている。このストローク規定板22は、外筒12の内面に当接する外周ローラー22aと、内筒13の外面に当接する内周ローラー22bを備えている。そして、ストローク規定板22は、これらローラー22a、22bによって外筒12と内筒13のそれぞれに対し、相対的に軸線O1方向に進退自在に設けられている。また、このとき、ストローク規定板22は、外筒12の凸部19の軸線O1方向一端に当接することで、外筒12に対し、さらなる軸線O1方向他端12b側への移動が規制され、内筒13の係止板21に当接することで、内筒13に対し、さらなる軸線O1方向他端13b側への相対移動が規制されている。
次に、付加ばね機構6のばね部材(付加ばね)14は、内筒13の外面と外筒12の内面の間、且つストローク規定板22と支持板17の軸線O1方向の間に設けられている。本実施形態において、ばね部材14は、複数枚の皿バネが直列に重ねられた1組の皿バネ群を複数組軸線O1方向に並設して構成されている。なお、図3では軸線O1方向中間部分のばね部材14を省略して図示している。
これにより、ばね部材14による付勢力でストローク規定板22に軸線O1方向他端側に押圧する力が作用し、通常時には、この付勢力を受けたストローク規定板22が凸部19に当接してそれ以上軸線O1方向他端側に移動しないように設けられている。また、この状態で、ストローク規定板22に内筒13に設けられた係止板21が当接される。
そして、内筒13に対して外筒12が軸線O1方向一端側に相対変位する際には、すなわち、制振装置1に圧縮側の力が作用した際には、凸部19にストローク規定板22が押圧され、これとともに内筒13に対してストローク規定板22が軸線O1方向一端13a側に相対変位し、ばね部材14が縮む。また、内筒13に対して外筒12が軸線O1方向他端側に相対変位する際には、すなわち、制振装置1に引張側の力が作用した際には、係止板21にストローク規定板22が押圧され、これとともに外筒12に対してストローク規定板22が軸線O1方向一端12a側に相対変位し、ばね部材14が縮む。
これにより、本実施形態の付加ばね機構6は、ばね部材14が縮むことで外力を吸収するとともに圧縮力と引張力の双方の外力に対応できるように構成されている。
なお、ストローク規定板22や支持板17のばね部材14と当接する面や、外筒12の内面、内筒13の外面に硬質ゴム等の緩衝材が取り付け、付加ばね機構6の作動時に騒音(機械音)が発生したり、摩耗が生じることを防止するように構成してもよい。
そして、図1、図2、図3に示すように、地震が発生し、制振構造物Aに振動エネルギーが作用すると、剛構造領域2と柔構造領域3を備えて構成されていることで、これら剛構造領域2と柔構造領域3の間に大きな変位差が生じる。
このように剛構造領域2と柔構造領域3の間に大きな変形差が生じると(入力されると)、この変位差に応じて回転慣性質量機構5のボールねじ7が軸線O1方向に進退し、軸受け11の内輪11bに支持されたボールナット8が回転するとともに回転錘9が回転する。これにより、回転錘9の実際の質量の数千倍もの慣性質量効果が得られ、オイルダンパーなどの従来の制振装置を設置した場合と比較し、応答変位が大幅に低減することになる。
また、剛構造領域2と柔構造領域3の間の大きな変形差が入力されると、回転慣性質量機構5によって慣性質量効果が発揮されるとともに、付加ばね機構6にも相対振動が作用する。そして、制振装置1に圧縮側の力が作用し、付加ばね機構6の内筒13に対して外筒12が軸線O1方向一端側に相対変位する際には、凸部19にストローク規定板22が押圧され、これとともに内筒13に対してストローク規定板22が軸線O1方向一端13a側に相対変位し、ばね部材14が縮む。また、制振装置1に引張側の力が作用し、内筒13に対して外筒12が軸線O1方向他端側に相対変位する際には、係止板21にストローク規定板22が押圧され、これとともに外筒12に対してストローク規定板22が軸線O1方向一端12a側に相対変位し、ばね部材14が縮む。
これにより、地震によって剛構造領域2と柔構造領域3の間に大きな変形差が生じることで、その大きさに応じて付加ばね機構6のばね部材14が縮み、圧縮と引張の双方で変位の一部が吸収される。よって、付加ばね機構6による振動吸収効果によって、制振構造物Aに高振動数域で過大な力が作用することが防止され、制振構造物Aの応答加速度が増大することを確実に防止できる。
すなわち、本実施形態の制振構造物Aにおいては、上記のように回転慣性質量機構5による慣性質量効果で応答変位が効果的に低減され、且つ付加ばね機構6による高振動数成分を吸収させる振動吸収効果が効果的に発揮され、応答加速度の増大を防止できる。
ここで、中央にRCコア部A1、その外周に住戸部A2を備えた建物(制振構造物)Aに対し、RCコア部A1と外周住戸部A2を上記の回転慣性質量機構5と付加ばね機構6からなる制振装置1で連結した場合(本実施形態の制振構造物(制振建物)Aにした場合)の効果を確認するために行ったシミュレーションについて説明する。
図4、図5に示すように、本シミュレーションでは、約54m×42mの矩形平面を有するRC造31階建てのマンションを想定し、基準階の高さを3.25m、建物高さを約100mとしている。また、平面中央部に、最上階までRCコア部A1が設けられている。さらに、外周の住戸部A2とRCコア部A1間を、特定の階において制振装置1で連結している。また、制振階より上層は外周住戸部A2とRCコア部A1を剛床で連結し、制振階より下層は外周住戸部A2とRCコア部A1を連結せずに独立としている。
さらに、制振階直上の1層のみは、外周住戸部A2の剛性を2倍に割増し、且つRCコア部A1の剛性を1/2倍に低減させている。
次に、外周住戸部A2とRCコア部A1の解析モデルは、いずれも31質点系弾性曲げせん断直列多質点系モデルとし、下から4質点目、5質点目を制振装置にて連結する。また、下から6質点目以上は両端ピンの剛部材にて連結する(剛床連結)。さらに、外周住戸部A2とRCコア部A1の下から6層目(5質点目の上)は、それぞれ剛性を倍増、半減させる。
また、上記のモデル化による建物諸元は、1次固有周期を2.25秒、総重量を約63000tonとしている。
次に、本シミュレーションでは、4つの検討ケースについてシミュレーションを行い、その結果を比較した。
ケース1は、外周住戸部A2とRCコア部A1の4質点目、5質点目を連結しない非連結ケースとした。
ケース2は、外周住戸部A2とRCコア部A1の下から5質点目を両端ピンの剛部材(剛床)で連結し、4質点目を非連結にした。
ケース3は、外周住戸部A2とRCコア部A1の下から5質点目をオイルダンパー(従来の制振装置)4台で連結し、4質点目をオイルダンパー(従来の制振装置)4台で連結した。
ケース4は、外周住戸部A2とRCコア部A1の下から5質点目を慣性質量ダンパー(本実施形態の制振装置1)4台で連結し、さらに4質点目を慣性質量ダンパー(本実施形態の制振装置1)4台で連結した。
ここで、オイルダンパーは、1台あたり、減衰係数C=650kN・s/cm(ダッシュポットでモデル化)とした。また、慣性質量ダンパーの1台あたりの諸元は、慣性質量ψ=10000ton、減衰係数Cψ=7.2kN・s/cm、付加ばね(直列ばね)K=1200kN/cmとした。
なお、上記のいずれのダンパーも実製品をイメージしており、本来リリーフによる非線形性状を示すが、本シミュレーションでは初期特性による線形解析にて検討を行った。
次に、各ケースのシミュレーションの結果を図6に示す。図6は、外周住戸部A2の最上階における地動変位に対する基礎からの相対応答変位(図6(a))、及び地動加速度に対する絶対応答加速度(図6(b))の周波数伝達関数を示している。なお、図6の横軸は振動数Hz、縦軸は応答倍率を示している。
この結果から、非連結のケース1に対して、剛部材連結のケース2は曲線のピークが僅かに高周波側に移動しているが、応答低減効果はほとんどないことが確認された。オイルダンパーを設置したケース3は曲線のピークが低減することが確認されたが、その低減効果は小さい。慣性質量ダンパーを設置したケース4は、曲線のピークが2山化してケース3よりもさらに低減し、最も応答低減効果が大きくなることが確認された。すなわち、ケース4は、明確な応答低減効果が認められた。
なお、ケース3においては、大容量のオイルダンパーを用い、当該位置に設置可能な範囲で極力大きな容量を確保するようにしたが、計算上さらに容量を増やしたとしても(もしくは減じても)大きな応答改善効果はなく、ケース4の効果に達し得ないことを確認している。
したがって、本実施形態の制振構造物Aにおいては、多層構造の構造体(建物など)を剛構造領域2と、意図的にこの剛構造領域2よりも剛性を小さくした柔構造領域3とを備えて構築し、例えばこれら剛構造領域2と柔構造領域3の連結部分に制振装置1を設置することで、地震等により構造体に外力が作用した際に、剛構造領域2と柔構造領域3の大きな変位差を制振装置1に入力させることが可能になる。また、構造体内の剛性差を利用した1棟完結の制振システムを構築することができ、連結制振システムと比較して建築計画的な自由度を大きく、適用範囲を広くすることが可能になる。
これにより、単一の多層構造の構造体に対しても連結制振システムのような合理的な制振システムを具備・実現させることができ、その制振性能を効果的に向上させることが可能になる。
また、本実施形態の制振構造物Aにおいては、構造体の下層部に剛構造領域2と柔構造領域3と制振装置1を設けることによって、すなわち低層集中制振システムを構成することで、従来の制振構造よりも大きな応答低減効果を得ることが可能になる。
さらに、本本実施形態の制振構造物Aにおいては、制振装置1として、慣性質量ダンパーを設けることにより、もしくは慣性質量ダンパーとオイルダンパーを組み合わせて設けることにより、あるいは慣性質量ダンパーと粘性系ダンパーと履歴系ダンパーを選択的に組み合わせて設けることにより、オイルダンパーのみを用いた従来の制振構造物では実現できなかった大きな応答低減効果を得ることが可能になる。
また、本実施形態の制振構造物Aにおいては、制振装置1として主系の慣性質量ダンパーと付加振動系の直列バネを設け、慣性質量ダンパーと直列バネから定まる固有の振動数に同調するように、バネ値が設定されていることにより、小さな慣性質量でも制振性能に優れた同調型制振機構を構成することが可能になる。また、小さな慣性質量でも同調型制振機構とすることができ、高振動数域での加速度応答を低減することが可能になる。
さらに、本実施形態の制振構造物Aにおいては、制振装置1を床位置に設置することで、層間に制振用の壁や斜材を設ける場合のように平面計画に制約が生じることをなくすことができる。
以上、本発明に係る制振構造物の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
1 制振装置
2 剛構造領域
3 柔構造領域
5 回転慣性質量機構
6 付加ばね機構
7 ボールねじ
7a 一端
8 ボールナット
9 回転錘
10 連結部材
11 軸受け
11a 外輪
11b 内輪
12 外筒
12a 一端
12b 他端
13 内筒
13a 一端
13b 他端
14 付加ばね(ばね部材)
15 接続板
16 連結部材
17 支持板
18 リニアガイド
19 凸部
20 リニアガイドレール
21 係止板
22 ストローク規定板
22a ローラー
22b ローラー
A 制振構造物(建物、構造体)
A1 RCコア部
A2 外周住戸部
O1 軸線

Claims (2)

  1. 多層構造の構造体に制振装置を設置してなる制振構造物であって、
    前記構造体が、剛構造領域と、前記剛構造領域よりも剛性が小さい柔構造領域とを備えて構築され、
    前記構造体に外力が作用した際の前記剛構造領域と前記柔構造領域の変形差が入力されるように前記制振装置が配設されるとともに、前記構造体を下層部と中層部と上層部に分け、前記構造体の下層部に前記剛構造領域と前記柔構造領域と前記制振装置を設け、
    前記制振装置を設置した制振階層の直上の1階層は、該1階層の前記柔構造領域の剛性を他の階層の前記柔構造領域の剛性の2倍とし、該1階層の前記剛構造領域の剛性を他の階層の前記剛構造領域の剛性の1/2倍とし、
    且つ、前記制振装置として主系の慣性質量ダンパーと付加振動系の直列バネを設け、前記慣性質量ダンパーと直列バネから定まる固有の振動数に同調するように、バネ値が設定されていることを特徴とする制振構造物。
  2. 請求項1記載の制振構造物において、
    前記制振装置が床位置に配設されていることを特徴とする制振構造物。
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