JP2014019969A - 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及びその織編物 - Google Patents

潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及びその織編物 Download PDF

Info

Publication number
JP2014019969A
JP2014019969A JP2012159672A JP2012159672A JP2014019969A JP 2014019969 A JP2014019969 A JP 2014019969A JP 2012159672 A JP2012159672 A JP 2012159672A JP 2012159672 A JP2012159672 A JP 2012159672A JP 2014019969 A JP2014019969 A JP 2014019969A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mol
composite fiber
woven
shrinkable polyester
polyester
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012159672A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5992238B2 (ja
Inventor
Naomi Kida
尚実 木田
Takao Okochi
隆雄 大河内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Ester Co Ltd
Original Assignee
Nippon Ester Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Ester Co Ltd filed Critical Nippon Ester Co Ltd
Priority to JP2012159672A priority Critical patent/JP5992238B2/ja
Publication of JP2014019969A publication Critical patent/JP2014019969A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5992238B2 publication Critical patent/JP5992238B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Multicomponent Fibers (AREA)
  • Woven Fabrics (AREA)

Abstract

【課題】織編物とした場合にストレッチ性、表面平滑性及びソフト性に優れる潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及び織編物を提供する。
【解決手段】多塩基酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールを含む高熱収縮性ポリエステル(A)と低熱収縮性ポリエステル(B)とがサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型に接合した潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条であり、次式を満足すること。4≦Ma≦10(I)3≦Mb≦10(II)Mc≦2.0(III)7≦Ma+Mb≦14(IV)Ma:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率(mol%)Mb:ネオペンチルグリコールの含有率(mol%)Mc:ジエチレングリコールの含有率(mol%)
【選択図】図1

Description

本発明は、潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条に関するものであり、特に織編物とした場合に、ストレッチ性、表面平滑性及びソフト性に優れる潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及び該複合繊維糸条を用いた織編物に関する。
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略する。)に代表されるポリエステル樹脂からなる繊維は、優れた機械的特性と化学的特性を有しており、広範な用途に使用されている。この用途の一つとして、ストレッチ性を有する織編物がある。
織編物にストレッチ性を付与する繊維として、熱収縮特性の異なるポリエステル樹脂をサイドバイサイド型、又は偏心芯鞘型に接合した潜在捲縮性ポリエステル複合繊維が数多く提案されている。該潜在捲縮ポリエステル複合繊維は、製織編後に熱処理を加えて捲縮を発現することにより、織編物にストレッチ性を与えることができる。
上記ストレッチ性に加え、膨らみ感のあるソフトな風合いを織編物に付与するものとして、極限粘度の異なる2種類のPETがサイドバイサイド型に接合され、繊維横断面における該2種類のPETの接合面が特定形状に湾曲している複合繊維及び複合マルチフィラメントが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかし、近年では、上記マルチフィラメントからなる織編物より、さらにストレッチ性に優れる織編物が求められている。
上記マルチフィラメントからなる織編物にさらなるストレッチ性を付与する方法として、該マルチフィラメントの単糸繊度を大きくする方法、または該マルチフィラメントを製糸する際の熱固定温度を下げる方法が考えられる。
しかし、上記のように単糸繊度が大きいものとすると、得られる織編物は、表面平滑性が悪くなる上、シボ立ち欠点が発生し、風合いが硬くなるといった問題があった。また、上記のように熱固定温度を下げると、潜在捲縮を発現させるための熱処理を行った際に上記マルチフィラメントの収縮が大きくなり、風合いが硬くなるといった問題もあった。
以上のように、織編物とした場合に、従来より優れたストレッチ性を有し、かつ、表面平滑性及び風合いに優れる潜在捲縮性ポリエステル繊維糸条は未だ得られていないのが現状である。
特開平11−241229号公報 特開2000−212838号公報
本発明は、前記従来技術における様々な問題点を解決し、織編物とした場合に、従来より優れたストレッチ性を有し、かつ、表面平滑性及びソフト性に優れる潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及び該複合繊維糸条からなる織編物を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は次の(1)〜(4)の通りである。
(1)多塩基酸成分としてテレフタル酸を含み、多価アルコール成分としてエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールを含む高熱収縮性ポリエステル(A)と、ポリエチレンテレフタレート又はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる低熱収縮性ポリエステル(B)とがサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型に接合した潜在捲縮性ポリエステル複合繊維が集束してなる糸条であって、前記高熱収縮性ポリエステル(A)の全多価アルコール成分に対する前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率(Ma(mol%))が式(I)を満たし、前記高熱収縮性ポリエステル(A)の全多価アルコール成分に対する前記ネオペンチルグリコールの含有率(Mb(mol%))が式(II)を満たし、前記高熱収縮性ポリエステル(A)の全多価アルコール成分に対する前記ジエチレングリコールの含有率(Mc(mol%))が式(III)を満たし、前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率と前記ネオペンチルグリコールの含有率の合計(Ma+Mb)(mol%)が式(IV)を満たし、前記糸条が三次元スパイラル状の顕在捲縮を有することを特徴とする潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条。
4≦Ma(mol%)≦10 ・・・(I)
3≦Mb(mol%)≦10 ・・・(II)
Mc(mol%)≦2.0 ・・・(III)
7≦Ma+Mb(mol%)≦14 ・・・(IV)
Ma:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率(mol%)
Mb:ネオペンチルグリコールの含有率(mol%)
Mc:ジエチレングリコールの含有率(mol%)
(2)前記潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条の顕在捲縮率(C0(%))及び潜在捲縮率(C100(%))が式(V)及び(VI)を満たすことを特徴とする上記(1)記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条。
0<C0(%)≦18 ・・・(V)
30≦C100(%)≦50 ・・・(VI)
C0(%)=[(L0−L1)/L0]×100
C100(%)=[(A0−A1)/A0]×100
L1:糸条に90.91×10-3cN/dtexの張力を掛けながら枷取りし、枷に1.67×10-4cN/dtexの荷重を掛け30分放置した後の枷長
L0:L1測定後、荷重を1.67×10-4cN/dtexから90.91×10-3cN/dtexに代えた際の枷長
A1:糸条に90.91×10-3cN/dtexの張力を掛けながら枷取りし、枷に1.67×10-4cN/dtexの荷重をかけ30分沸水処理した後に1.76×10-3cN/dtexの荷重を掛け、30分放置した後の枷長
A0:A1測定後、荷重を1.76×10-3cN/dtexから4.4×10-2cN/dtexに代えた際の枷長
(3)上記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体が下記化学式(1)で表される化合物からなることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条からなる織編物。
本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条は、潜在捲縮発現性及び熱安定性に優れたものとなり、該糸条を用いた織編物は従来より優れたストレッチ性を有し、かつ、表面平滑性及びソフト性に優れたものとなる。
本発明の糸条を構成する複合繊維の複合形状の一実施態様であるサイドバイサイド型を表す該複合繊維の横断面模式図である。 本発明の糸条を構成する複合繊維の複合形状の一実施態様である偏心芯鞘型を表す該複合繊維の横断面模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)は、テレフタル酸とエチレングリコールからなるエチレングリコール単位を主体とし、その共重合成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体(以下、BPAEOと略する。)を含む必要がある。そして、該BPAEOは、下記化学式(1)で表されるように、ビスフェノールA1mol部に対しエチレンオキサイド1〜4mol部付加した化合物からなることが好ましく、下記化学式(1)中、m+n=2である化合物からなることがより好ましい。
高熱収縮性ポリエステル(A)がBPAEOを共重合成分として含むことにより、複合繊維中における高熱収縮性ポリエステル(A)が占める部分の熱収縮性が、該複合繊維中における低熱収縮性ポリエステル(B)が占める部分の熱収縮性に比して顕著に高くなる。これにより、前記複合繊維及び該複合繊維が集束してなる糸条は、三次元スパイラル状の顕在捲縮を有し、かつ、製糸後の熱処理により、例えば該糸条を用いた織編物を熱処理することにより、三次元スパイラル状の潜在捲縮が発現する潜在捲縮発現性に優れたものとなる。ここで、三次元スパイラル状とはコイル(螺旋)バネ状である三次元的な形態をいう。
上記BPAEOの代わりに、エチレンオキサイドが付加していない化合物、すなわちビスフェノールAを用いると、多塩基酸成分との反応性が悪くなって重合度が上がらず、さらには、高熱収縮性ポリエステル(A)も熱安定性に乏しいものとなる。そこで、エチレンオキサイドが付加しているBPAEOを用いることにより、多塩基酸成分との反応性を高めることができる。
BPAEOが、前記化学式(1)で表される化合物からなる場合、得られる複合繊維糸条は潜在捲縮発現性に特に優れたものとなり、該糸条からなる織編物はソフト性に特に優れたものとなるので好ましい。さらに、前記化学式(1)中、m+n=2である化合物からなる場合、高熱収縮性ポリエステル(A)のガラス転移点はより高いものとなることから、得られる複合繊維糸条は潜在捲縮発現性、風合いに加え、熱安定性にも優れたものとなるのでより好ましい。
本発明において、BPAEOの含有率は、高熱収縮性ポリエステル(A)の全多価アルコール成分に対し4〜10mol%の範囲にある必要があり、4〜7mol%であることが好ましい。
前記含有率が4mol%未満であると、得られる複合繊維糸条を用いて織編物とした場合に、該織編物は十分なストレッチ性が得られない。また、該含有率が10mol%を超えると、紡糸での操業性が著しく悪くなり、得られる複合繊維糸条を用いた織編物の品位が悪くなるばかりでなく、得られる複合繊維糸条のみを用いて織編物とした場合には、該織編物は表面平滑性が悪くなり、さらにシボ立ち欠点が発生する。該含有率が4〜7mol%である場合、得られる複合繊維糸条からなる織編物は表面平滑性に特に優れたものとなるので好ましい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)は、共重合成分としてさらにネオペンチルグリコール(以下、NPGと略することがある。)を含む必要がある。
高熱収縮性ポリエステル(A)が共重合成分としてBPAEOに加えNPGを含むことにより、得られる複合繊維糸条からなる織編物はソフト性に特に優れたものとなる。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)の全多価アルコール成分に対するNPGの含有率は、3〜10mol%の範囲にある必要があり、4〜9mol%であることが好ましい。
前記含有率が3mol%未満であると、得られる複合繊維糸条を用いて織編物とした場合に、該織編物はソフト性に劣るものとなる。また、10mol%を超えると、紡糸時に複合繊維のニーリングが過度に生じ、紡糸安定性が悪くなる。該含有率が4〜9mol%である場合には、前記織編物はソフト性及び表面平滑性に特に優れたものとなるので好ましい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)がBPAEO及びNPGを共重合成分として含むことにより、得られる複合繊維糸条は、該糸条からなる織編物に高いストレッチ性と優れたソフト性を与えることができる。この理由は明らかではないが、NPGが前記複合繊維糸条にソフト性を与えることと、前記BPAEOによって与えられた高い潜在捲縮発現性能を熱処理等により発現させたスパイラル捲縮が相俟って、前記織編物に優れたソフト性を与えることができるものと推測される。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)における全多価アルコール成分に対するジエチレングリコール(以下、DEGと略することがある。)の含有率は2mol%以下であることが必要である。
本発明において、DEGは、高熱収縮性ポリエステル(A)の融点及び結晶性の低下を招くものであり、意図的に含有させるもののほか、該高熱収縮性ポリエステル(A)の重合に際し副生物として生成するものである。
直接重合法によるポリエステルの重合に際しては、エステル交換反応時にDEGの副生を伴う。前記含有率が2.0mol%を超える場合は、高熱収縮性ポリエステル(A)の結晶性の低下を招く。高熱収縮性ポリエステルとしてイソフタル酸(以下、IPAと略することがある。)を必須の共重合成分とするポリエステルは公知である。しかし、本発明者等は、該ポリエステルは該IPAを共重合することに起因してDEGの副生量が多くなることを知得した。そこで、本発明においては、該IPAを必須の共重合成分として用いず、前記BPAEO及び前記NPGを必須の共重合成分として用いることにより、高熱収縮性ポリエステル(A)におけるDEGの含有量を2.0mol%以下とし、得られる複合繊維の結晶性が高いものとなり、該複合繊維からなる織編物は優れたストレッチ性を示しながらソフト性に優れたものとなる。
なお、前記含有率が0.1mol%未満であると、重合の反応工程を高度に制御することが必要となるのでコスト高となりやすい。前記含有率が0.5〜1.8mol%であると、コスト性と得られる複合繊維糸条の性能との兼ね合いの点で好ましい。
DEGの副生を抑制する方法としては、共重合成分としてIPAを選択しないことのほか、触媒量及び重合条件を適切に選択することが挙げられる。
本発明において、BPAEOの共重合量とNPGの含有率の合計は7〜14mol%であることが必要であり、11〜13mol%であることが好ましい。
前記含有率の合計が7mol%以下であると、得られる複合繊維糸条を用いて織編物とした場合に、該織編物は十分なストレッチ性、及びソフト性が得られない。また、前記共重合量の合計が14mol%を超えると、得られる複合繊維糸条を用いて織編物とした場合に、該織編物はストレッチ性は良好なものの、表面平滑性が悪く、シボ立ちが目立つため好ましくない。該含有率が11〜13mol%であると、該織編物はストレッチ性に特に優れたものとなるので好ましい。
そして、高熱収縮性ポリエステル(A)は、多塩基酸成分がテレフタル酸を95mol%以上含むポリエステルであることが特に好ましい。さらに、高熱収縮性ポリエステル(A)は、テレフタル酸、エチレングリコール、BPAEO、NPG及びDEGのみからなるポリエステルであることが特に好ましい。
高熱収縮性ポリエステル(A)が上記ポリエステルであることにより、得られる複合繊維糸条は潜在捲縮発現性及び結晶性に優れたものとなりやすく、該複合繊維糸条からなる織編物は、ストレッチ性とソフト性が特に優れたものとなりやすい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合成分を含有させても良い。
例えば、テレフタル酸以外の多塩基酸成分としては、イソフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、水添ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、オルソフタル酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
また、エチレングリコール、BPAEO、NPG及びDEG以外の多価アルコール成分としては、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加体、トリシクロデカングリコール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
また、高熱収縮性ポリエステル(A)には、本質的な特性を損なわない限り、ヒンダードフェノール系化合物のような抗酸化剤、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料、酸化セリウムのような耐光性改良剤、難燃剤、制電剤、導電性付与剤、抗菌剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、セラミック等種々の改質剤や添加剤を含有していても良い。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度は0.58〜0.80であることが好ましい。高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度が0.58未満では、十分なスパイラル捲縮発現性を有する複合繊維糸条が得られにくくなる。また、該極限粘度が0.80を超えると、紡糸時にニーリングが発生し、糸切れが多発する等、紡糸操業性が著しく悪化しやすい。また、後述するように、低熱収縮性ポリエステル(B)として好ましい実施形態の一つであるPETを用いた場合は、該PETの通常使用する極限粘度が0.58〜0.66であるので、前記高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度は0.70〜0.80が好ましい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)のガラス転移温度(Tg)は、70〜80℃が好ましく、75〜80℃が特に好ましい。
前記Tgが70℃未満では、前記高熱収縮性ポリエステル(A)の結晶性が低く、得られる複合繊維糸条は熱安定性に劣るものとなりやすい。通常のPETのTgは78℃程度であるため、ナフタレンジカルボン酸などのポリエステルの剛直性が高くなる成分を共重合しない限り高熱収縮性ポリエステル(A)のTgは80℃を超えることは無いが、該Tgが80℃を超えるほど剛直性が高くなる成分を共重合すれば潜在捲縮の発現を阻害しやすいため好ましくない。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)がBPAEO及びNPGを共重合成分とするポリエステルであることから、例えば従来技術であるIPAを共重合成分とするポリエステルと比較して得られる複合繊維の結晶性を高いものとすることができる。その結果、高熱収縮性ポリエステル(A)のTgは比較的高いものとなるので、本発明の複合繊維糸条は熱安定性に優れたものとなる。さらに、高熱収縮性ポリエステル(A)のTgが上記範囲を満たすように、高熱収縮性ポリエステル(A)の共重合組成及び比率を調整することができ、これにより複合繊維糸条を得る際の紡糸、延伸熱処理の温度を高くすることが可能となり、得られる複合繊維糸条は潜在捲縮を発現させるための熱処理によって風合いが柔らかいものとなる。
本発明において、低熱収縮性ポリエステル(B)は、PETまたはエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであれば特に限定されるものではないが、高熱収縮性ポリエステル(A)より熱収縮性が低いことを必要とするため、エチレンレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%以上であるPETとすることが好ましい。
本発明において、低熱収縮性ポリエステル(B)には、高熱収縮性ポリエステル(A)と同様に、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合成分を含有させてもよい。さらに、ヒンダードフェノール系化合物のような抗酸化剤、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料、酸化セリウムのような耐光性改良剤、難燃剤、制電剤、抗菌剤、セラミック等種々の改質剤や添加剤を含有させてもよい。
本発明において、低熱収縮性ポリエステル(B)の極限粘度は0.44〜0.66であることが好ましい。低熱収縮性ポリエステル(B)の極限粘度が0.44未満では、紡糸時にニーリングが発生し、糸切れが多発する等、紡糸操業性が悪化しやすく、極限粘度が0.66を超えると、十分なスパイラル捲縮発現性を有する複合繊維糸条が得られ難くなる。また、上記のように低熱収縮性ポリエステル(B)として好ましい実施形態の一つであるPETを用いた場合は、前記低熱収縮性ポリエステル(B)の極限粘度は0.58〜0.66が好ましい。
本発明の複合繊維において、高熱収縮性ポリエステル(A)と低熱収縮性ポリエステル(B)との極限粘度差は特に限定されないが、0.07以上0.25以下とすることが望ましい。
上記極限粘度差が0.07未満の場合には、得られる複合繊維糸条の潜在捲縮の発現が不十分となりやすく、得られる織編物はストレッチ性が劣るものとなりやすい。一方、上記極限粘度差が0.25を越えると、各ポリエステルの複合流が紡糸口金から吐出される際、複合繊維の屈曲が過度に進み、該複合繊維が紡糸口金に付着して切断が生じやすく、安定して紡糸を行うことが困難となりやすい。
また、本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)と低熱収縮性ポリエステル(B)との質量比率(A/B)は、40/60〜60/40の範囲が好ましい。この範囲を外れると、得られる複合繊維糸条は、十分な捲縮性能を発現することが困難となりやすい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)及び低熱収縮性ポリエステル(B)は、複合繊維の長手方向に沿ってサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型に接合される必要がある。
図1(A)及び(B)は、本発明の糸条を構成する複合繊維の複合形状の一実施態様であるサイドバイサイド型を表す該複合繊維の横断面模式図である。本発明におけるサイドバイサイド型として、図1(A)に示す2種類のポリエステルの接合面が直線的でほぼ等分に接合されているものや、図1(B)に示す該接合面が湾曲して接合されているものが挙げられる。
そして図2は、本発明の糸条を構成する複合繊維の複合形状の一実施態様である偏心芯鞘型を表す該複合繊維の横断面模式図である。本発明における偏心芯鞘型として、図2に示す一方のポリエステルが鞘、他方のポリエステルが芯となり、芯部と鞘部の中心が一致していないものが挙げられる。なお、本発明においては、鞘部を高熱収縮性ポリエステル(A)、芯部を低熱収縮性ポリエステル(B)とすることが好ましい。
なお、本発明の複合繊維糸条を構成する複合繊維の繊度は特に限定されないが、0.9dtex以上、2dtex以下であることが好ましい。該繊度が、0.9dtex以上であると、得られる複合繊維糸条は、捲縮性能の発現が優れたものとなり、十分なストレッチ性能を有する織編物を得られやすくなる。一方、前記繊度が2dtex以下であると、得られる複合繊維糸条からなる織編物は、ソフト性が良好なものとなりやすい。
本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条は、三次元スパイラル状の顕在捲縮を有していることが必要である。
三次元スパイラル状の顕在捲縮とは、前述のように、コイル(螺旋)バネ状である三次元的な形態を有する捲縮であり、本発明においては、本発明の糸条を構成する複合繊維が該顕在捲縮を有しているとともに、該複合繊維が収束してなる糸条としても該顕在捲縮を有している。前記顕在捲縮は、主に、前記複合繊維を構成する2種類のポリエステル間の熱収縮率差に起因して、紡糸、延伸等の過程で生じるものである。特に、紡糸の際の紡速を2000m/min以上とすると、該顕在捲縮が生じやすくなる。
本発明における顕在捲縮率(C0)は、0<C0(%)≦18であることが好ましく、中でも0.5≦C0(%)≦18であることがより好ましい。
ここで、顕在捲縮率(C0)とは下記式で表せるものである。
C0(%)=[(L0−L1)/L0]×100
L1:糸条に90.91×10-3cN/dtexの張力を掛けながら枷取りし、枷に1.67×10-4cN/dtexの荷重を掛け30分放置した後の枷長
L0:L1測定後、荷重を1.67×10-4cN/dtexから90.91×10-3cN/dtexに代えた際の枷長
顕在捲縮率が18%を越えると、得られる複合繊維糸条のみからなる織編物とした場合、該織編物は、表面平滑性が悪い上、シボ立ち欠点が発生しやすい。また、顕在捲縮率が0.5%未満であると、得られる複合繊維糸条からなる織編物は、ストレッチ性に乏しいものとなりやすい。
また、本発明における潜在捲縮率(C100)は、30≦C100(%)≦50であることが好ましく、35≦C100(%)≦45であることがさらに好ましい。
ここで、潜在捲縮率(C100)とは、下記式で表せるものである。
C100(%)=[(A0−A1)/A0]×100
A1:糸条に90.91×10-3cN/dtexの張力を掛けながら枷取りし、枷に1.67×10−4cN/dtexの荷重をかけ30分沸水処理した後に1.76×10-3cN/dtexの荷重を掛け、30分放置した後の枷長
A0:A1測定後、荷重を1.76×10-3cN/dtexから4.4×10-2cN/dtexに代えた際の枷長
潜在捲縮率を30%以上とすることにより、他素材との組合わせや、加工条件の選定を問わず、得られる複合繊維糸条からなる織編物は特に優れたストレッチ性能を発揮することができる。従って、潜在捲縮率が30%未満であると、前記織編物は優れたストレッチ性能を得られにくくなる。また、顕在捲縮率が50%を越えると、得られる複合繊維糸条のみからなる織編物とした場合、該織編物は表面平滑性が悪くなりやすく、シボ立ち欠点が発生しやすくなる。潜在捲縮率が35≦C100(%)≦45であると、得られる複合繊維糸条からなる織編物はストレッチ性及び表面平滑性が特に優れたものとなるのでさらに好ましい。
前記顕在捲縮率及び潜在捲縮率は、高熱収縮性ポリエステル(A)及び低熱収縮性ポリエステル(B)の共重合成分及び極限粘度、並びに、複合繊維糸条を構成する複合繊維の繊度を適切なものにすることにより調整することができる。
次に本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条の製造方法ついて、一例を挙げて説明する。
本発明の複合繊維糸条は、通常の複合溶融紡糸装置により製造することができる。まず、紡糸口金の背面で、高熱収縮性ポリエステル(A)と低熱収縮性ポリエステル(B)をサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型になるように合流させ、同一紡糸口から複合繊維を紡糸する。その際、紡糸温度は両ポリエステルの極限粘度によって適宜選定されるが、通常、280℃〜310℃の範囲が好ましい。
紡出した複合繊維は、冷却固化した後、紡糸油剤を付与して収束させて複合繊維束とし、1000m〜4000m/分の速度で引取り、一旦捲取り、延伸機により熱延伸を施すか、あるいは引取った複合繊維束を捲取らず連続して熱延伸することにより、本発明の複合繊維糸条を得ることができる。
上記製法における延伸倍率は、引取った時点での複合繊維の残留伸度によって適宜選定され、延伸後の残留伸度が15〜40%の範囲になるように選定することが好ましい。残留伸度がこの範囲より高いと、十分な捲縮性能が発現されず、また、残留伸度がこの範囲より低いと、延伸時に複合繊維の切断が発生する等、操業的に問題があり、好ましくない。
そして、本発明の複合繊維糸条を用いて織編物とする際、このまま経糸や緯糸として用いることができるが、他の糸と混繊して用いてもよい。また、仮撚加工を施してもよく、仮撚混繊してもよい。また、実撚を付与したり、実撚混繊したりしてもよく、またこれらを組み合わせたものでもよい。
本発明の複合繊維糸条の潜在捲縮は、熱処理を施すことにより潜在捲縮が発現するものであるため、工程通過性等の作業性を考慮すると、本発明の複合繊維糸条を製編織等により織編物にした後、沸水処理を施して潜在捲縮を発現させることが好ましい。中でも染色工程で沸水処理を行い、発現させることが好ましい。
次に、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条からなる織編物(以下、本発明の織編物と略することがある。)について説明する。
本発明の織編物は、上記した本発明の複合繊維糸条からなり、従来より優れたストレッチ性を有し、かつ、表面平滑性及びソフト性に優れたものである。
発明の効果をより高めるためには、本発明の織編物における本発明の複合繊維糸条の混用率が40質量%以上であることが好ましい。また、本発明の複合繊維糸条によれば、本発明の織編物を、該複合繊維糸条のみからなる織編物とした場合にも、該織編物は表面平滑性が良好でありシボ立ち欠点の発生も少ない。
本発明の織編物の組織としては、特に限定されるものではない。本発明の織編物は、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条を用い、公知の方法により製織もしくは製編し、必要に応じて精練、リラックス、染色等を施せばよい。例えば、精練、リラックス、染色のいずれかの工程において、前記糸条の潜在捲縮を顕在化させることができ、その結果として織編物にストレッチ性能を具備させることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例において測定及び評価は次の通りに行った。
(1)高熱収縮性ポリエステル(A)の各構成成分の含有率
高熱収縮性ポリエステル(A)からなるチップを、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとを容量比1/20で混合した混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて1H−NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(2)極限粘度(V(A)、V(B))
ポリエステルをフェノールとテトラクロロエタンの1:1混合溶媒で溶解し、ウベローデ粘度計を使用して、20℃で測定した。
(3)高熱収縮性ポリエステル(A)のガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)の測定
セイコー電子工業社製示差走査熱量計SSC5200を用いて、10℃/分の昇温速度で測定した。
(4)複合繊維繊度
JIS L 1013 正量繊度A法により測定した複合繊維糸条の正量繊度をフィラメント数で割った値を複合繊維繊度とした。
(5)強伸度
JIS L 1013 引張強さ及び伸び率により測定した。
(6)潜在捲縮率及び顕在捲縮率
前述の方法により算出した。
(7)ストレッチ性、表面平滑性(シボ立ち)及びソフト性
得られた複合繊維糸条を用いて平織組織に製織し、10人のパネラーによる官能評価を行った。各々の試料でストレッチ性が高い、表面平滑性が良い(シボ立ちがない)及びソフト感が優れるものを10点満点として1〜10点の10段階で評価し10人の平均値で示した(6点以上を合格とした)。
実施例1
高熱収縮性ポリエステル(A)として、エチレンテレフタレート単位を主体とし、前述の化学式(1)中、m+n=2であるBPAEOを全多価アルコール成分に対し7mol%、NPGを全多価アルコール成分に対し4mol%を含む極限粘度0.74の共重合ポリエステル(全多価アルコール成分に対するDEGの含有率=1.7mol%)を用い、低熱収縮性ポリエステル(B)として、実質的にPETからなる極限粘度0.64のポリエステルを用いた。
前記高熱収縮性ポリエステル(A)及び低熱収縮性ポリエステル(B)を複合紡糸型溶融押出機に等量供給し、紡糸温度295℃で溶融し、紡糸孔を48個有する紡糸口金の背面で両ポリエステルを合流させ、サイドバイサイド型に接合して紡出した複合繊維を冷却固化した後、油剤を付与しながら該複合繊維を収束して複合繊維束とし、表面速度が3000m/分の引取りローラーを介して捲取機で捲取った。次いで、捲取った複合繊維束を延伸機に供給し、表面温度85℃のローラーと170℃のホットプレートを介して、1.60倍に延伸し、56デシテックス/48フィラメントの潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条を得た。なお、前記極限粘度、前記Tg及び前記Tmは、高熱収縮性ポリエステル(A)及び低熱収縮性ポリエステル(B)のチップを用いて測定し、前記複合繊維繊度、前記強伸度、前記顕在捲縮率及び潜在捲縮率の測定は、前記潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条からサンプリングしたものを用いて行った。
上記のようにして得られた潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条を経糸と緯糸に用いて経密度110本/2.54cm、緯密度80本/2.54cmの平織の織物を製織し、精練後、100℃の沸水中で30分間処理し、次いで風乾して織物を得た。得られた織物について、上記ストレッチ性、表面平滑性(シボ立ち)及びソフト性の評価を行った。
実施例2及び3
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEOの含有率及び高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
実施例4
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEO及びNPGの含有率及び高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
実施例5
低熱収縮性ポリエステル(B)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
実施例6
複合繊維の複合形状を、サイドバイサイド型に代えて偏心芯鞘型とした以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
実施例7
高熱収縮性ポリエステル(A)の構成成分のうち、BPAEOとしてビスフェノールA1mol部にエチレンオキサイドが4mol部付加した化合物であるBPAEOを用いた以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
実施例8
高熱収縮性ポリエステル(A)の構成成分のうち、BPAEOとしてビスフェノールA1mol部にエチレンオキサイドが1mol部付加した化合物であるBPAEOを用いた以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
実施例9
高熱収縮性ポリエステル(A)の構成成分のうち、BPAEOとしてビスフェノールA1mol部にエチレンオキサイドが3mol部付加した化合物をであるBPAEOを用いた以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
比較例1
高熱収縮性ポリエステル(A)の構成成分のうち、NPGの代わりにIPAを用いた以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
比較例2
高熱収縮性ポリエステル(A)の構成成分のうち、BPAEOの代わりにビスフェノールA(以下、BPAと略する。)を用いた以外は、実施例1と同様とした。
比較例3及び4
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEOの含有率及び高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
比較例5及び6
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるNPGの含有率及び高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
比較例7
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEOの含有率及び高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更し、複合繊維の複合形状をサイドバイサイド型に代えて偏心芯鞘形とした以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
比較例8
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEO及びNPGの含有率を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸条及び織物を得た。
得られた繊維と織物の評価結果を併せて、表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜9において、高熱収縮性ポリエステル樹脂(A)はDEGの含有率が2mol%未満であり、得られた複合繊維糸条はいずれも所望の顕在捲縮率及び潜在捲縮率を満たし、得られた織物はストレッチ性、表面平滑性及びソフト性のいずれも良好であった。中でも、実施例1、3〜6の複合繊維糸条は、BPAEOとしてビスフェノールA1mol部にエチレンオキサイドが2mol部付加した化合物であるBPAEOを用い、該BPAEOの含有率とNPGの含有率の合計(Ma+Mb)(mol%)が7〜14mol%の範囲内であったことから、得られた複合繊維糸条は高熱収縮性ポリエステル(A)のTgも高く熱安定性にも優れたものであり、得られた織物は優れたソフト性を示しつつ、ストレッチ性に特に優れたものであった。
一方、比較例1の複合繊維糸条は、NPGに代えてIPAを使用したことから、高熱収縮性ポリエステル樹脂(A)はDEGの含有率が2mol%以上となり、得られた織物はソフト性に劣るものとなった。
比較例2の複合繊維糸条は、BPAEOに代えてBPAを使用したことから、重合工程において多塩基酸成分であるテレフタル酸との反応性が悪くなり、高熱収縮性ポリエステル(A)チップを得ることができなかった。
比較例3の複合繊維糸条は、BPAEOの含有率が10mol%を超えたものであったことから、得られた織物は表面平滑性が悪く、ソフト性にも劣るものとなった。
比較例4の複合繊維糸条は、BPAEOの含有率が4mol%未満であり、BPAEOの含有率とNPGの含有率との合計(Ma+Mb)が7mol%未満であったことから、得られた織物はストレッチ性及びソフト性に劣るものとなった。
比較例5の複合繊維糸条は、NPGの含有率が3mol%未満であったことから、得られた織物はソフト性に劣るものとなった。
比較例6の複合繊維糸条は、NPGの含有率が10mol%を超えたものであったことから、紡糸時に複合繊維のニーリングが過度に生じ、複合繊維糸条を得ることができなかった。
比較例7の複合繊維糸条は、BPAEOの含有率が10mol%を超えたものであり、BPAEOの含有率とNPGの含有率との合計(Ma+Mb)が14mol%を超えたものであったことから、得られた織物は、表面平滑性及びソフト性に劣り、シボ立ちも目立った。
比較例8の複合繊維糸条は、BPAEOの含有率とNPGの含有率との合計(Ma+Mb)が14mol%を超えたものであったことから、得られた織物は表面平滑性及びソフト性に劣り、シボ立ちも目立った。

Claims (4)

  1. 多塩基酸成分としてテレフタル酸を含み、多価アルコール成分としてエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールを含む高熱収縮性ポリエステル(A)と、ポリエチレンテレフタレート又はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる低熱収縮性ポリエステル(B)とがサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型に接合した潜在捲縮性ポリエステル複合繊維が集束してなる糸条であって、
    前記高熱収縮性ポリエステル(A)の全多価アルコール成分に対する前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率(Ma(mol%))が式(I)を満たし、
    前記高熱収縮性ポリエステル(A)の全多価アルコール成分に対する前記ネオペンチルグリコールの含有率(Mb(mol%))が式(II)を満たし、
    前記高熱収縮性ポリエステル(A)の全多価アルコール成分に対する前記ジエチレングリコールの含有率(Mc(mol%))が式(III)を満たし、
    前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率と前記ネオペンチルグリコールの含有率の合計(Ma+Mb)(mol%)が式(IV)を満たし、
    前記糸条が三次元スパイラル状の顕在捲縮を有することを特徴とする潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条。
    4≦Ma(mol%)≦10 ・・・(I)
    3≦Mb(mol%)≦10 ・・・(II)
    Mc(mol%)≦2.0 ・・・(III)
    7≦Ma+Mb(mol%)≦14 ・・・(IV)
    Ma:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率(mol%)
    Mb:ネオペンチルグリコールの含有率(mol%)
    Mc:ジエチレングリコールの含有率(mol%)
  2. 前記潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条の顕在捲縮率(C0(%))及び潜在捲縮率(C100(%))が式(V)及び(VI)を満たすことを特徴とする請求項1記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条。
    0<C0(%)≦18 ・・・(V)
    30≦C100(%)≦50 ・・・(VI)
    C0(%)=[(L0−L1)/L0]×100
    C100(%)=[(A0−A1)/A0]×100
    L1:糸条に90.91×10-3cN/dtexの張力を掛けながら枷取りし、枷に1.67×10-4cN/dtexの荷重を掛け30分放置した後の枷長
    L0:L1測定後、荷重を1.67×10-4cN/dtexから90.91×10-3cN/dtexに代えた際の枷長
    A1:糸条に90.91×10-3cN/dtexの張力を掛けながら枷取りし、枷に1.67×10-4cN/dtexの荷重をかけ30分沸水処理した後に1.76×10-3cN/dtexの荷重を掛け、30分放置した後の枷長
    A0:A1測定後、荷重を1.76×10-3cN/dtexから4.4×10-2cN/dtexに代えた際の枷長
  3. 前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体が下記化学式(1)で表される化合物からなることを特徴とする請求項1又は2記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条からなる織編物。
JP2012159672A 2012-07-18 2012-07-18 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及びその織編物 Active JP5992238B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012159672A JP5992238B2 (ja) 2012-07-18 2012-07-18 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及びその織編物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012159672A JP5992238B2 (ja) 2012-07-18 2012-07-18 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及びその織編物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014019969A true JP2014019969A (ja) 2014-02-03
JP5992238B2 JP5992238B2 (ja) 2016-09-14

Family

ID=50195205

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012159672A Active JP5992238B2 (ja) 2012-07-18 2012-07-18 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及びその織編物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5992238B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114540981A (zh) * 2020-11-24 2022-05-27 远东新世纪股份有限公司 鞘芯型热黏合纤维及不织布

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS56329A (en) * 1979-06-12 1981-01-06 Toyo Boseki Heat resistant polyester sewing machine thread
WO1995004846A1 (fr) * 1993-08-06 1995-02-16 Kuraray Co., Ltd. Fibre de polyester
JPH09296325A (ja) * 1996-04-26 1997-11-18 Toyobo Co Ltd 複合繊維及びその製造法
JPH10204726A (ja) * 1997-01-16 1998-08-04 Nippon Ester Co Ltd 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維
JP2000345433A (ja) * 1999-06-04 2000-12-12 Nippon Ester Co Ltd ストレッチ性織編物用ポリエステル複合繊維
JP2002227040A (ja) * 1993-08-06 2002-08-14 Kuraray Co Ltd ポリエステル繊維
JP2006083489A (ja) * 2004-09-16 2006-03-30 Nippon Ester Co Ltd 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条、織編物及びその製造方法
JP2009102789A (ja) * 2007-10-02 2009-05-14 Mitsubishi Rayon Co Ltd ポリエステル複合繊維及び織編物

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS56329A (en) * 1979-06-12 1981-01-06 Toyo Boseki Heat resistant polyester sewing machine thread
WO1995004846A1 (fr) * 1993-08-06 1995-02-16 Kuraray Co., Ltd. Fibre de polyester
US5567796A (en) * 1993-08-06 1996-10-22 Kuraray Co., Ltd. Polyester fiber
JP2002227040A (ja) * 1993-08-06 2002-08-14 Kuraray Co Ltd ポリエステル繊維
JPH09296325A (ja) * 1996-04-26 1997-11-18 Toyobo Co Ltd 複合繊維及びその製造法
JPH10204726A (ja) * 1997-01-16 1998-08-04 Nippon Ester Co Ltd 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維
JP2000345433A (ja) * 1999-06-04 2000-12-12 Nippon Ester Co Ltd ストレッチ性織編物用ポリエステル複合繊維
JP2006083489A (ja) * 2004-09-16 2006-03-30 Nippon Ester Co Ltd 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条、織編物及びその製造方法
JP2009102789A (ja) * 2007-10-02 2009-05-14 Mitsubishi Rayon Co Ltd ポリエステル複合繊維及び織編物

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114540981A (zh) * 2020-11-24 2022-05-27 远东新世纪股份有限公司 鞘芯型热黏合纤维及不织布

Also Published As

Publication number Publication date
JP5992238B2 (ja) 2016-09-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO1995004846A1 (fr) Fibre de polyester
JPH11189923A (ja) ポリエステル系複合繊維
JP6489773B2 (ja) 弾性モノフィラメント
JP2013209785A (ja) 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条
JP5992238B2 (ja) 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及びその織編物
JP4631481B2 (ja) ポリエステル芯鞘複合繊維
JP3582466B2 (ja) 高伸縮性ポリエステル系複合繊維
JP6054077B2 (ja) 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維糸条及びその織編物
JP5774820B2 (ja) 異形異繊度混繊糸
JP4923173B2 (ja) ポリエステル織編物
JP4783068B2 (ja) ポリエステル複合繊維
JP6099325B2 (ja) 潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維およびその不織布
JP3057449B2 (ja) モール糸
JP4699072B2 (ja) ストレッチ性ポリエステル複合繊維
JP7189667B2 (ja) ストレッチ性布帛の製造方法
JP2013209775A (ja) 潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維及びその不織布
JP3583402B2 (ja) ポリエステル繊維
JP2007046212A (ja) 複合糸、およびこれを含む布帛製品
JP5992239B2 (ja) 潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維およびその不織布
JP2018048413A (ja) 潜在捲縮性複合繊維、捲縮性複合繊維、及び布帛
WO2018181699A1 (ja) 弾性モノフィラメントおよび織編物
JP2001279562A (ja) 交編編地
JP2010196179A (ja) 皺回復性の優れた制電性ポリエステル混繊糸
JP2008308798A (ja) 顕在捲縮糸
JPH1037022A (ja) ランダム潜在捲縮糸

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150608

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160610

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160802

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160817

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5992238

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150