JP2014015039A - インクジェット印刷用シート - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明のインクジェット印刷用シートは、基材シート1と、基材シート1表面に形成されている漆喰及び有機バインダーを含む印刷層3とからなり、印刷層3は、更に、グリセリン、水溶性ポリマー及び非イオン性界面活性剤からなる群より選択された少なくとも一種の添加剤を含有している。
【解決手段】このインクジェット印刷用シートでは、印刷後の漆喰の炭酸化が促進され、漆喰の炭酸化による印刷画像の堅牢性や耐候性が迅速に発揮される。
【選択図】図1
【解決手段】このインクジェット印刷用シートでは、印刷後の漆喰の炭酸化が促進され、漆喰の炭酸化による印刷画像の堅牢性や耐候性が迅速に発揮される。
【選択図】図1
Description
本発明は、インクジェット印刷用シートに関するものであり、漆喰(Shikkui)を含む印刷層にインクジェットによる印刷が施されるインクジェット印刷用シートに関する。
パーソナルコンピュータやデジタルカメラの一般家庭への普及に伴い、鮮明なフルカラーの画像をプリントすることが可能なインクジェットプリンタが、価格が安価なこともあって、広く使用されている。インクジェットプリンタに用いる印刷用記録紙としては、通常の上質紙やコート紙では性能の点で使用困難であり、紙面に付着したインクが速やかに内部に吸収されること、紙面上でのインク滴の拡がりや滲みが抑制され、鮮明な画像が形成されること、得られる画像が長期にわたって色落ちなどを生じない堅牢性に優れていることなどの特性が要求される。
このような特性を印刷面(紙面)に付与するために、種々の無機固体物質を結着剤とともに紙面に塗布し或いは紙内に充填することが提案されている。例えば特許文献1には、無機固体物質として合成シリカ或いはその塩を用いること、特許文献2には、マグネシウムや亜鉛などの2価金属の弱酸塩や酸化物を被覆層として紙面に設けること、特許文献3には、天然または合成のゼオライト、ケイソウ土、合成雲母等を含有する被覆層を紙面に設けること、特許文献4,5には、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、酸性白土、活性白土等の白色顔料によりインク吸収層を設けること、特許文献6には、多孔質球状ケイ酸塩粒子を充填することが提案されている。
しかしながら、上記のような従来公知の印刷用紙は、インクジェットプリンタ以外のレーザプリンタなどに使用されるものも含めて、いずれも得られる画像は、写真のようなフラットな画像であり、絵画調の深みのある画像を形成し得るものはなかった。
また、上記のような従来公知の印刷用紙に印刷した場合、紫外線やオゾンからインク成分を保護する機能は無く、長期間の保存には適していなかった。
また、上記のような従来公知の印刷用紙に印刷した場合、紫外線やオゾンからインク成分を保護する機能は無く、長期間の保存には適していなかった。
ところで、本出願人は、基材シート上に形成される印刷層に漆喰が配合されている印刷用シートを開発し、特許文献7により提案した。
このような印刷用シートによれば、インクジェットプリンタを用いての印刷により、凹凸感があり、絵画調の深みがあり、堅牢で且つ鮮明な印刷画像を形成することができ、しかも、得られる印刷画像は、耐候性に極めて優れているという従来のインクジェット印刷用紙には見られない優れた利点を有する。
このような印刷用シートによれば、インクジェットプリンタを用いての印刷により、凹凸感があり、絵画調の深みがあり、堅牢で且つ鮮明な印刷画像を形成することができ、しかも、得られる印刷画像は、耐候性に極めて優れているという従来のインクジェット印刷用紙には見られない優れた利点を有する。
しかしながら、本出願人が開発した漆喰含有印刷層を有する印刷用シートにおいても、未だ解決すべき課題が残されている。
即ち、漆喰(Shikkui)とは消石灰(水酸化カルシウム)と水との混練物であり、lime plasterと呼ばれることもある。即ち、この消石灰が空気中に炭酸ガスと反応しての炭酸化によって固化して炭酸カルシウムを生成するというものである。上記の印刷層には、このような漆喰が完全に炭酸化する前の状態で配合されており、かかる漆喰含有印刷層に画像を印刷するときには、印刷層に形成される表面の凹凸が印刷画像に反映され、凹凸感があり深みのある印刷画像が形成されると共に、印刷画像が炭酸化カルシウムにより被覆され、堅牢性が付与されるばかりか、紫外線等の劣化要因から画像を形成しているインク成分を保護し、色あせなどが有効に防止され、優れた耐候性を示すのである。
しかるに、上記の特性、特に堅牢性や耐候性が発揮されるのは、漆喰中の水酸化カルシウムが十分に炭酸化された後であり、これらの特性は、印刷後、直ちに発現するわけではない。従って、印刷後の漆喰の炭酸化を促進することが求められているのが現状である。
従って、本発明の目的は、漆喰を含む印刷層が基材シート上に形成されているインクジェット印刷用シートにおいて、印刷後の漆喰の炭酸化が促進され、漆喰の炭酸化による印刷画像の堅牢性や耐候性を迅速に発揮せしめることにある。
本発明によれば、基材シートと、該基材シート表面に形成されている漆喰及び有機バインダーを含む印刷層とからなるインクジェット印刷用シートにおいて、
前記印刷層は、更に、グリセリン、水溶性ポリマー及び非イオン性界面活性剤からなる群より選択された少なくとも一種の添加剤を含有していることを特徴とするインクジェット印刷用シートが提供される。
前記印刷層は、更に、グリセリン、水溶性ポリマー及び非イオン性界面活性剤からなる群より選択された少なくとも一種の添加剤を含有していることを特徴とするインクジェット印刷用シートが提供される。
本発明のインクジェット印刷用シートにおいては、
(1)前記印刷層は、前記有機バインダー当り5乃至50重量%の量で前記添加剤を含んでいること、
(2)前記有機バインダーが(メタ)アクリル樹脂であること、
(3)前記水溶性ポリマーは、水に対する溶解度が10質量%以上であること、
(4)前記非イオン界面活性剤は、10以上のHLBを有していること、
が好適である。
(1)前記印刷層は、前記有機バインダー当り5乃至50重量%の量で前記添加剤を含んでいること、
(2)前記有機バインダーが(メタ)アクリル樹脂であること、
(3)前記水溶性ポリマーは、水に対する溶解度が10質量%以上であること、
(4)前記非イオン界面活性剤は、10以上のHLBを有していること、
が好適である。
本発明のインクジェット印刷用シートにおいては、漆喰を含む印刷層に、有機バインダーと共に、グリセリン、水溶性ポリマー及び非イオン性界面活性剤からなる群より選択された少なくとも一種の添加剤が配合されていることが顕著な特徴であり、このような添加剤の配合により、印刷後の漆喰の炭酸化が促進され、該印刷層の印刷面は短時間で堅牢性の高いものとなり、初期段階から優れた耐傷付性を示すこととなる。
上記の添加剤の配合により、漆喰の炭酸化が促進される理由は正確に解明されたわけではないが、本発明者等は、この印刷層の表面(印刷面)の親水性が高められているからではないかと推定している。
即ち、この印刷用シートは、密封した状態で保存されており、このため、印刷層には一部の水酸化カルシウムが炭酸化せずに残存した状態にあると共に、その表面は極めて多孔質の状態となっている。このような印刷層にインクジェット印刷が施され、その表面が大気中に曝された場合、その印刷層の親水性が高いと、水分を吸収し易くなり、インク液滴が迅速に吸収されることとなる。この結果、印刷像の表面には速やかに水膜が形成され、この水膜を通して、大気中の炭酸ガスが迅速に吸収され、残存する水酸化カルシウムの炭酸化が促進されることとなる。
ところで、印刷層中には、靭性を高め、固形分粒子の離脱を防止して印刷層を安定に保持せしめるために、有機バインダーが配合される。また、有機バインダーは、基材シートとの密着性を高めるためにも必要である。このような有機バインダーは、親水性というよりも親油性であり、水分を吸収しにくい性質のものである。しかるに、前述した添加剤は、何れも有機バインダーを含む印刷層中に均一に分散可能であるばかりか、高い親水性を示す。この結果、これらの添加剤は、有機バインダーを含む印刷層に親水性を付与する親水化剤として機能し、印刷層に高い親水性が付与される結果として、上述した原理にしたがって、インクジェット印刷後の印刷層に残存している水酸化カルシウムを速やかに炭酸化するものと考えられるのである。
本発明では、このような炭酸化の促進により、インクジェット印刷後の初期の状態から耐候性が向上する。さらには、より早く表面硬度が増大し、炭酸カルシウムの保護効果が発現することとなる。このため、印刷画像が形成された印刷面は、堅牢性が高く、初期段階から耐擦過性の高いものとなるわけである。
即ち、この印刷用シートは、密封した状態で保存されており、このため、印刷層には一部の水酸化カルシウムが炭酸化せずに残存した状態にあると共に、その表面は極めて多孔質の状態となっている。このような印刷層にインクジェット印刷が施され、その表面が大気中に曝された場合、その印刷層の親水性が高いと、水分を吸収し易くなり、インク液滴が迅速に吸収されることとなる。この結果、印刷像の表面には速やかに水膜が形成され、この水膜を通して、大気中の炭酸ガスが迅速に吸収され、残存する水酸化カルシウムの炭酸化が促進されることとなる。
ところで、印刷層中には、靭性を高め、固形分粒子の離脱を防止して印刷層を安定に保持せしめるために、有機バインダーが配合される。また、有機バインダーは、基材シートとの密着性を高めるためにも必要である。このような有機バインダーは、親水性というよりも親油性であり、水分を吸収しにくい性質のものである。しかるに、前述した添加剤は、何れも有機バインダーを含む印刷層中に均一に分散可能であるばかりか、高い親水性を示す。この結果、これらの添加剤は、有機バインダーを含む印刷層に親水性を付与する親水化剤として機能し、印刷層に高い親水性が付与される結果として、上述した原理にしたがって、インクジェット印刷後の印刷層に残存している水酸化カルシウムを速やかに炭酸化するものと考えられるのである。
本発明では、このような炭酸化の促進により、インクジェット印刷後の初期の状態から耐候性が向上する。さらには、より早く表面硬度が増大し、炭酸カルシウムの保護効果が発現することとなる。このため、印刷画像が形成された印刷面は、堅牢性が高く、初期段階から耐擦過性の高いものとなるわけである。
また、本発明の印刷用シートにおいても、本出願人が提案した特許文献7の印刷用シートと同様、印刷層表面の凹凸が大きく、このため、形成される印刷像は、凹凸感があり、深みのある絵画調のものとなり、壁画に近い感じとなり、写真画像とは全く異質のものとなる。
図1を参照して、本発明の印刷用シートは、基材シート1と、その上に形成された印刷層3とから形成されており、さらに印刷層3上には、必要により保護シート5が設けられている。即ち、この印刷用シートにおける印刷層3は漆喰を含むものであり、必要により設けられる上記の保護シート5を引き剥がした後、露出した印刷層3の表面に印刷が施されるものである。
<基材シート1>
基材シート1は、その表面に漆喰を含む印刷層3が形成できるものであれば、特に制限されず、任意の材料で形成されていてよい。例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリレート等のビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂などの各種の樹脂シート乃至樹脂フィルム、或いは紙などからなっていてもよいし、また、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等の繊維状物からなる織布または不織布であってもよく、さらには、これらの複合体、積層フィルムあるいはシートであってもよい。
基材シート1は、その表面に漆喰を含む印刷層3が形成できるものであれば、特に制限されず、任意の材料で形成されていてよい。例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリレート等のビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂などの各種の樹脂シート乃至樹脂フィルム、或いは紙などからなっていてもよいし、また、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等の繊維状物からなる織布または不織布であってもよく、さらには、これらの複合体、積層フィルムあるいはシートであってもよい。
但し、一般的には、基材シート1は可撓性を有しており、適度の腰の強さを有しているものであることが好ましい。このような基材シート1では、これを折り曲げても折り目が形成され難く、この基材シート1上に設けられる漆喰を含む印刷層3に割れ目が形成されるなどの不都合を有効に抑制することができるからである。このような基材シート1の材質は、かなり制限されることとなるが、一般的には、ガラス繊維混抄紙が好適に使用される。
ガラス繊維混抄紙は、木材パルプにガラス繊維を混合して抄紙したものであり、可撓性や曲げ強さを有し、しかも印刷層3との密着性を良好なものとすることができる。さらに、このようなガラス繊維混抄紙以外にも、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等の化学繊維をバインダー繊維として混抄された合成紙を使用することができる。本発明において、基材シート3として最も好適に使用されるガラス繊維混抄紙は、北越製紙株式会社より、「MPS−01」の商品名で市販されている。
ガラス繊維混抄紙は、木材パルプにガラス繊維を混合して抄紙したものであり、可撓性や曲げ強さを有し、しかも印刷層3との密着性を良好なものとすることができる。さらに、このようなガラス繊維混抄紙以外にも、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等の化学繊維をバインダー繊維として混抄された合成紙を使用することができる。本発明において、基材シート3として最も好適に使用されるガラス繊維混抄紙は、北越製紙株式会社より、「MPS−01」の商品名で市販されている。
また、基材シート1の表面は、漆喰を含む印刷層3との密着性を高めるために、コロナ処理などを行って親水性を向上させてもよく、サンドブラスト処理などを行って密着面積を増やしてもよく、これにより、以下に述べる印刷層3と基材シート1との接合強度を一層向上させることができる。
また、上記の基材シート1の厚みは、インクジェット印刷に用いるプリンタの仕様に応じて、この印刷用シートが容易にプリンタを通すことができるような厚みに設定される。
<印刷層3>
本発明において、印刷層3は、漆喰を含むものであり、消石灰(水酸化カルシウム)の粉末と水との混練物に有機バインダー及び親水化剤として使用される添加剤を加えたものを、基材シート1の親水性の面にコーティングして形成される。
本発明において、印刷層3は、漆喰を含むものであり、消石灰(水酸化カルシウム)の粉末と水との混練物に有機バインダー及び親水化剤として使用される添加剤を加えたものを、基材シート1の親水性の面にコーティングして形成される。
即ち、この印刷層3を空気中に放置した場合、消石灰と炭酸カルシウムとの混練物が空気中の炭酸ガスを吸収し、消石灰が炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムを生成することにより、さらに固化が進行し、その表面硬度が増大していくこととなり、一般的には、消石灰の85%以上が炭酸化した段階で表面硬度がほぼ最高値に到達する。
本発明の印刷用シートでは、炭酸化されていない消石灰が残存している状態でインクジェット印刷が行われ、印刷後に炭酸化が進行することとなるが、後述する添加剤(以下、親水化剤と呼ぶことがある)の配合により、この印刷層3の表面の親水性が高められているため、印刷後の炭酸化が促進され、漆喰による特性がより短時間で発揮され、その耐候性や堅牢性が短時間で発揮されることとなる。即ち、形成されるインクジェットによる印刷像は、光による色褪せなどが印刷像形成の初期段階から有効に防止され、さらには、印刷後の早い段階から高い表面硬度となり、優れた堅牢性を示し、印刷像の傷付き等を有効に防止することができるわけである。
本発明の印刷用シートでは、炭酸化されていない消石灰が残存している状態でインクジェット印刷が行われ、印刷後に炭酸化が進行することとなるが、後述する添加剤(以下、親水化剤と呼ぶことがある)の配合により、この印刷層3の表面の親水性が高められているため、印刷後の炭酸化が促進され、漆喰による特性がより短時間で発揮され、その耐候性や堅牢性が短時間で発揮されることとなる。即ち、形成されるインクジェットによる印刷像は、光による色褪せなどが印刷像形成の初期段階から有効に防止され、さらには、印刷後の早い段階から高い表面硬度となり、優れた堅牢性を示し、印刷像の傷付き等を有効に防止することができるわけである。
本発明において、印刷層3は、インクジェット印刷の水酸化カルシウム(消石灰)が完全に炭酸化する前の段階にあればよいが、好ましくは、この漆喰前駆体中の水酸化カルシウムが、少なくとも10重量%、好ましくは15重量%以上に保持されている状態でインクジェット印刷が行われるようにするのがよい。即ち、水酸化カルシウムの含有量が上記範囲よりも少ないと、画像の堅牢性が低下し、色落ちなどを生じ易くなる傾向がある。また、印刷インクを印刷層3の表面に施して印刷を行なったとき、印刷インク中に溶出し、表面に浮き上がる水酸化カルシウムの量が少なくなるため、印刷画像の保護効果が低下し、紫外線等による印刷画像の劣化抑制効果が低下するおそれを生じる。さらには、水酸化カルシウム量が少ないと、印刷層3の表面の親水性が低くなり、インクジェット印刷後の炭酸化が遅くなることもある。
前記印刷層中の水酸化カルシウムは、上記目的を達成するために多いほどよいが、あまり多すぎると印刷層3の靱性が不十分となり、印刷工程中に印刷層3の破損等を生じ易くなるため、印刷層3中に、85重量%以下、好ましくは、80重量%以下の割合とすることが好ましい。
尚、印刷層における水酸化カルシウムの割合は、X線回折により確認することができる。
尚、印刷層における水酸化カルシウムの割合は、X線回折により確認することができる。
本発明において、前記印刷層3における水酸化カルシウムの含有量の調整は、印刷層3の形成に用いる水酸化カルシウムの炭酸化率及び後述する有機バインダー、親水化剤、適宜配合される他の添加剤(無機細骨材、吸液性無機粉体など)の配合量によって調整することができる。
この炭酸化率は、前述したスラリーの調製に用いた消石灰の重量に対し、生成した炭酸化カルシウムの重量割合を示す
この炭酸化率は、前述したスラリーの調製に用いた消石灰の重量に対し、生成した炭酸化カルシウムの重量割合を示す
上記調整方法のうち、印刷層3の形成に用いる水酸化カルシウムの炭酸化率を調整する方法を採用する場合、炭酸化率の上限は、80%、特に40%とすることが望ましい。即ち、炭酸化が過度に進みすぎた場合、印刷層3の表面が緻密化され、印刷インクの浸透性が低下する傾向がある。
このような炭酸化による表面の緻密化の程度は、前述した特許文献7の実施例にも示されているように、印刷層3表面の耐摩擦度によって判定することができ、対摩擦度が4級以下の状態で炭酸化を止めておくことが好適である。
このような炭酸化による表面の緻密化の程度は、前述した特許文献7の実施例にも示されているように、印刷層3表面の耐摩擦度によって判定することができ、対摩擦度が4級以下の状態で炭酸化を止めておくことが好適である。
本発明においては、印刷層3を画像の印刷後に大気中に放置することにより、印刷層3中の水酸化カルシウムが炭酸化して炭酸化カルシウムとなるわけであるが、このような印刷層3の靭性等を向上させるために、印刷層3には、有機バインダーが配合される。このような有機バインダーは、印刷層3のマトリックスを形成するものであり、ポリマーのエマルジョン固形分の形で印刷層3中に存在する。
このポリマーのエマルジョンは、水媒体中にモノマー、オリゴマー或いはこれらの重合体等が分散したものであり、例えば(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、スチレン/ブタジエンゴム系等の重合体のエマルジョンが代表的である。
このポリマーのエマルジョンは、水媒体中にモノマー、オリゴマー或いはこれらの重合体等が分散したものであり、例えば(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、スチレン/ブタジエンゴム系等の重合体のエマルジョンが代表的である。
このようなポリマーのエマルジョンは、乾燥工程で、媒体(水)が蒸発してエマルジョン中のポリマー成分が印刷層3中に残存することとなる。即ち、このようなエマルジョンの固形分(即ちポリマー)が過度に存在すると、印刷画像(印刷インク)の印刷層3中への浸透性が低下する傾向がある。従って、印刷層3の靭性を高め且つインクの浸透性を確保するために、一般に、印刷層3における有機バインダー(ポリマーエマルジョン)の固形分は、3〜50重量%の範囲であることが好ましい。
ところで、本発明においては、印刷層3の表面を前述した親水度の親水性面とすることが必要であり、このような観点から、(メタ)アクリル樹脂を有機バインダーとして用いることが最も好適である。
(メタ)アクリル樹脂としては、ポリアクリル酸やポリ(メタ)アクリレートが代表的であるが、このような(メタ)アクリル樹脂の特性が損なわれない範囲において、エチレン系不飽和二重結合を有する不飽和化合物(エチレンやスチレンなど)が共重合されていてもよい。例えば、このような不飽和化合物に由来する共重合体単位が30質量%以下の量で樹脂中に含まれていてもよい。また、ここで使用される(メタ)アクリル樹脂は、非水溶性であるという点で、水に対する溶解度の高い水溶性ポリマーとは異なる。
(メタ)アクリル樹脂としては、ポリアクリル酸やポリ(メタ)アクリレートが代表的であるが、このような(メタ)アクリル樹脂の特性が損なわれない範囲において、エチレン系不飽和二重結合を有する不飽和化合物(エチレンやスチレンなど)が共重合されていてもよい。例えば、このような不飽和化合物に由来する共重合体単位が30質量%以下の量で樹脂中に含まれていてもよい。また、ここで使用される(メタ)アクリル樹脂は、非水溶性であるという点で、水に対する溶解度の高い水溶性ポリマーとは異なる。
さらに、本発明においては、上記の有機バインダーに加えて、親水化剤を前述した消石灰と水との混練物に配合しておくことが必要であり、このような親水化剤の使用により、印刷層3の親水性を高め、印刷後に残存している水酸化カルシウムの炭酸化を促進させることができる。
このような親水化剤としては、グリセリン、水溶性ポリマー及び非イオン性界面活性剤が使用され、それぞれ、1種単独で或いは2種以上を組みあわせて使用することができる。
これらの内、水溶性ポリマーは、水に対する溶解度(25℃)が10質量%以上のポリマーであり、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールポリアクリル酸ブロック共重合体、ポリビニルアルコールポリアクリル酸エステルブロック共重合体、ポリグリセリン等を例示することができる。
また、非イオン界面活性剤としては、HLBが10以上、特に12〜18のものが好適に使用される。例えば、HLBがかかる範囲であることを条件として、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルのホルマリン縮合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが非イオン界面活性剤として好適に使用される。
本発明において、好適な親水化剤は、グリセリン及び水溶性ポリマーであり、最も好ましくは、グリセリンである。
本発明において、上記の親水化剤は、その種類によっても異なるが、通常、有機バインダー(特に好ましくは(メタ)アクリル樹脂)100質量部当り5乃至50質量部の量で配合されていることが、前述した親水性面を形成する上で好適である。
即ち、親水化剤の量が上記範囲よりも少ない場合には、印刷後の漆喰の炭酸化を促進効果が低くなり、また、必要以上に多く配合すると、親水性が過度に高められてしまい、インクジェット印刷を行う時の印刷層3の表面硬度が必要以上に低下し、印刷時の印刷層3の破損等を生じ易くなる傾向がある。
さらに、印刷層3中には、上記の有機バインダーや親水化剤以外にも、印刷層3の物性を調整するための各種添加剤、例えば各種繊維材、無機細骨材、吸液性無機粉体等が配合されていてよい。これらの添加剤は、印刷層3の強度等の物理特性を向上させるものである。
繊維材の例としては、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、金属繊維等を挙げることができる。また、繊維の形状としては短繊維、長繊維、織布、不織布等の形状のものが使用できるが、これらのうち短繊維は漆喰層3の靱性および切断加工性の向上に特に有効である。このような短繊維の長さおよび直径は特に制限されないが、長さは1mm〜10mm、特に2mm〜6mmであり、直径は5〜50μm、特に10〜30μmであることが、印刷層3の靱性をより向上させ、場合によっては、切断加工性においても優れたものとするために好適である。
また、無機細骨材は、平均粒子径が0.01〜2mm程度の範囲内にある無機粒状物であり、この範囲内で、印刷層3の厚みの1/2以下の平均粒子径を有するもの、具体的には、珪砂、寒水砂、マイカ、施釉珪砂、施釉マイカ、セラミックサンド、ガラスビーズ、パーライト、或いは炭酸カルシウムなどを挙げることができる。
また、本発明においては、印刷層3にてポリマーエマルジョンを用いることによる親水性インクとの親和性の低下、印刷層3の水酸化カルシウムの炭酸化の進行に伴い低下する吸液性を補うため、吸液性無機粉体を併用することもできる。この吸液性無機粉体は、多孔質であり、吸油量が100ml/100g以上と高い、微細な無機粉末、例えばレーザ回折散乱法で測定される体積換算での平均粒径(D50)が0.1μm以下のアルミナ粉末、ゼオライト粉末などである。
即ち、前述したポリマーエマルジョンは、靭性を向上させ、さらには基材シート1と印刷層3との密着性(接合強度)を高めるためには有効であるが、反面、印刷層3の親水性を低下させる。このため、前述した親水化剤の使用にもかかわらず、例えば親水性インクなどを用いて印刷を行った場合、インクをはじいてしまい、印刷画像が滲んでしまうなどの不都合を生じることがある。しかるに、上述した吸液性無機粉体の使用は、印刷インクの吸収性を向上させるため、上記の不都合を有効に防止し得る点で好適である。特に、この吸液性無機粉体は、0.5乃至10重量%程度の量で印刷層3中に配合されていることが好ましい。
即ち、前述したポリマーエマルジョンは、靭性を向上させ、さらには基材シート1と印刷層3との密着性(接合強度)を高めるためには有効であるが、反面、印刷層3の親水性を低下させる。このため、前述した親水化剤の使用にもかかわらず、例えば親水性インクなどを用いて印刷を行った場合、インクをはじいてしまい、印刷画像が滲んでしまうなどの不都合を生じることがある。しかるに、上述した吸液性無機粉体の使用は、印刷インクの吸収性を向上させるため、上記の不都合を有効に防止し得る点で好適である。特に、この吸液性無機粉体は、0.5乃至10重量%程度の量で印刷層3中に配合されていることが好ましい。
本発明において、印刷層3中に配合され得る各種添加剤は、その目的に応じて、それぞれ1種単独でも、2種以上が配合されていてもよいが、何れにしろ、印刷インクの印刷層3への浸透や固定が損なわず、且つ印刷層3の表面の親水度が損なわれない程度の量で配合すべきであり、例えば、消石灰が炭酸化して形成される炭酸カルシウムの含有量(即ち、炭酸化率100%のときの炭酸カルシウム含有量)が50重量%以上に維持される範囲において、各種の添加剤が配合されることが望ましい。
上記のような印刷層3の厚みは、印刷可能な適宜の範囲に設定されるが、一般的には、0.05乃至0.5mm、特に0.1乃至0.25mm程度の範囲が好適である。即ち、この厚みが過度に薄いと、画像を印刷したときに、印刷インクの浸透による画像固定性が低下したり、或いは凹凸などによって発現する画像の深みが損なわれたりするおそれがある。また、あまり厚いと経済的に不利となったり、折り曲げによって折り目が形成され易くなるなど、印刷に際して用いるプリンタが制限されるおそれなどを生じるからである。
<保護シート5>
また、印刷層3は、無機粒子(水酸化カルシウムや炭酸カルシウムの粒子)から形成されているため、比較的脆く、外部からの圧力によって傷が付いたりして商品価値が低下するおそれがある。従って、印刷用シートの製造直後から一般需要者による印刷時までの間に印刷層3の表面を保護するために、印刷層3の上面に、保護シート5を設けることもできる。この保護シート5は、印刷時には引き剥がされるものであるが、引き剥がしに際して印刷層3の表面の一部を脱落させて表面に顕著な凹凸を形成させるという機能を有するものであるため、例えば、200〜4000mN/25mm、特に、800〜2000mN/25mmの剥離強度で設けられているのがよい。即ち、剥離強度が過度に高いと、印刷時に保護シート5を引き剥がすことが困難となってしまい、また、剥離強度があまり低いと、保護シート5を剥がしたときに印刷層3の表面に十分な大きさの凹凸を形成することが困難となるおそれがあるからである。
また、印刷層3は、無機粒子(水酸化カルシウムや炭酸カルシウムの粒子)から形成されているため、比較的脆く、外部からの圧力によって傷が付いたりして商品価値が低下するおそれがある。従って、印刷用シートの製造直後から一般需要者による印刷時までの間に印刷層3の表面を保護するために、印刷層3の上面に、保護シート5を設けることもできる。この保護シート5は、印刷時には引き剥がされるものであるが、引き剥がしに際して印刷層3の表面の一部を脱落させて表面に顕著な凹凸を形成させるという機能を有するものであるため、例えば、200〜4000mN/25mm、特に、800〜2000mN/25mmの剥離強度で設けられているのがよい。即ち、剥離強度が過度に高いと、印刷時に保護シート5を引き剥がすことが困難となってしまい、また、剥離強度があまり低いと、保護シート5を剥がしたときに印刷層3の表面に十分な大きさの凹凸を形成することが困難となるおそれがあるからである。
尚、前記剥離強度は、JIS−K6854−2の接着剤−剥離接着強さ試験方法−第2部:180度剥離に準じ、幅25mmの試験体を用い、引張速度300mm/分で引っ張ることにより測定した値である。
上記のような保護シート5は、保護機能を有し且つ上記のような剥離強度で印刷層3上に設けることが可能である限り、任意の材料から形成されていてよいが、一般的には、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等の繊維状物からなる織布または不織布などが保護シート5として使用される。また、保護シート5として、非通気性のシート、例えばシリコンペーパーなどを用いて、印刷層3の保護機能と同時に、印刷時までの間に印刷層3の炭酸化を防止するという機能を持たせることも可能である。
保護シート5の厚みは、適度な保護機能が発現する程度のものであればよく、一般的には0.01乃至2.0mm程度である。
<印刷用シートの製造>
上述した本発明の印刷用シートは、印刷層3を形成するための漆喰スラリー(水と消石灰との混練物)中に、有機バインダーとなるポリマーのエマルジョンと共に、前述した親水化剤を配合することを除けば、それ自体公知の特許文献7に開示されている印刷用シートと同様の方法により製造される。
即ち、印刷層3を形成するための基材シート1の一方の表面に、有機バインダー及び親水化剤を含み、さらに必要に応じて配合される各種添加剤が配合された漆喰スラリーを塗布すると同時に、必要に応じて保護シート5を貼着し、適度に乾燥して印刷層3を形成することにより、この印刷用シートを製造することができる。
上述した本発明の印刷用シートは、印刷層3を形成するための漆喰スラリー(水と消石灰との混練物)中に、有機バインダーとなるポリマーのエマルジョンと共に、前述した親水化剤を配合することを除けば、それ自体公知の特許文献7に開示されている印刷用シートと同様の方法により製造される。
即ち、印刷層3を形成するための基材シート1の一方の表面に、有機バインダー及び親水化剤を含み、さらに必要に応じて配合される各種添加剤が配合された漆喰スラリーを塗布すると同時に、必要に応じて保護シート5を貼着し、適度に乾燥して印刷層3を形成することにより、この印刷用シートを製造することができる。
<印刷用シート>
上記のようにして得られる本発明の印刷用シートは、適宜設けられている保護シート5を貼着した状態、或いは、保護シート5を剥がした状態で製品として市販に供されるが、印刷層3は、これを大気中に放置しておくと、漆喰の炭酸化が進行していくため、印刷適性(例えば画像の浸透・固定性)などが低下してしまう。このような不都合を回避するため、印刷時点まで、炭酸化を抑制しておく必要がある。
上記のようにして得られる本発明の印刷用シートは、適宜設けられている保護シート5を貼着した状態、或いは、保護シート5を剥がした状態で製品として市販に供されるが、印刷層3は、これを大気中に放置しておくと、漆喰の炭酸化が進行していくため、印刷適性(例えば画像の浸透・固定性)などが低下してしまう。このような不都合を回避するため、印刷時点まで、炭酸化を抑制しておく必要がある。
即ち、このような印刷層3の炭酸化を抑制するために、例えば、適度の大きさに裁断された長尺の印刷用シートをロール状に巻取り、このロールを非通気性のフィルムで包装して保存することができる。また、裁断された印刷用シートを一枚ずつ非通気性のフィルムで保存しておくこともできるし、多数枚の印刷用シートを積み重ね、このような積載物を非通気性のフィルムで保存しておくこともできる。
さらには、保護シート5が貼着されている場合は、非通気性のフィルムを、保護シート5の上面及び基材シート1の裏面にラミネートして保存しておくことも可能である。
さらには、保護シート5が貼着されている場合は、非通気性のフィルムを、保護シート5の上面及び基材シート1の裏面にラミネートして保存しておくことも可能である。
上述した非通気性のフィルムとしては、特に制限されるものではなく、一般に包装用フィルムとして使用されている各種の樹脂フィルムが使用されるが、コスト等の観点から、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが最も好適である。
上記のようにして販売される印刷用シートは、包装フィルムを除去し、次いで保護シート5が存在する場合は、保護シート5を引き剥がして、印刷層3の表面を露出させ、この面に印刷が施される。
かかる印刷用シートは、所定の顔料乃至染料が分散乃至溶解したインクを使用し、インクジェットプリンタによって印刷が施される。用いるインクは、水溶性染料が溶解し或いは顔料が界面活性剤などで水(或いは水/アルコール混合溶媒など)に分散された親水性のインクが最も好適である。このような親水性のインクを用いた場合には、印刷層3上に滲みがなく且つ安定に保持された鮮鋭な画像を形成することができる。特に、本発明においては、顔料を使用したインクが好適に使用される。
上記のようにして印刷画像が印刷された印刷層3は、既に述べたように、これを大気中に放置することにより、迅速に、大気中の炭酸ガスを吸収し、残存する水酸化カルシウムの炭酸化が進行し、固化が進行し、例えば、印刷後、120時間程度で、耐候性や堅牢性に優れた特性を示し、印刷後のかなり早い初期段階から優れた特性が発揮され、これを擦ったりしても色落ち等を生じることがなく、また、紫外線等からインク成分を保護することができ、長期間、安定に保持される。
また、得られる印刷像は、凹凸のある多孔質の漆喰に浸透して固定されて壁画調となり、写真画像などを比較すると、深みのあるものとなる。
また、得られる印刷像は、凹凸のある多孔質の漆喰に浸透して固定されて壁画調となり、写真画像などを比較すると、深みのあるものとなる。
本発明の優れた効果を、次の実験例で説明する。
なお、以下に、実験例で用いた各試験方法および材料を示す。
なお、以下に、実験例で用いた各試験方法および材料を示す。
(1)親水性:
親水性は、JIS R 3257にしたがって、印刷層3の表面に純水を滴下し、その時の接触角を測定することにより評価した。
測定装置:自動接触角計(協和界面科学製、型式:DM301)
測定温度:25℃
測定湿度:50%RH
親水性は、JIS R 3257にしたがって、印刷層3の表面に純水を滴下し、その時の接触角を測定することにより評価した。
測定装置:自動接触角計(協和界面科学製、型式:DM301)
測定温度:25℃
測定湿度:50%RH
(2)像のにじみ率:
インクジェットプリンタ(エプソン製PX−5500型、顔料が分散された水溶性インク使用)により、各実施例及び比較例に示す条件で作製した印刷用シートの表面に、直径10mmの円の画像を印刷した。得られた印刷画像(円画像)を市販のカラースキャナーでデジタル画像としてパーソナルコンピュータに読み込み、画像処理ソフトを用いて、転写された色のピクセル数を測定し、インクジェットプリンタ用専用紙(普通紙)に印刷した場合のピクセル数と比較することにより、下記式によりにじみ率(SR)を算出した。
SR=P1/P0
SR:にじみ率(−);通常1以上、にじみが多いと数値が大きくなる。
P1:印刷画像のピクセル数(ピクセル)
P0:インクジェットプリンタ用専用紙に印刷した画像のピクセル数(ピクセル)
インクジェットプリンタ(エプソン製PX−5500型、顔料が分散された水溶性インク使用)により、各実施例及び比較例に示す条件で作製した印刷用シートの表面に、直径10mmの円の画像を印刷した。得られた印刷画像(円画像)を市販のカラースキャナーでデジタル画像としてパーソナルコンピュータに読み込み、画像処理ソフトを用いて、転写された色のピクセル数を測定し、インクジェットプリンタ用専用紙(普通紙)に印刷した場合のピクセル数と比較することにより、下記式によりにじみ率(SR)を算出した。
SR=P1/P0
SR:にじみ率(−);通常1以上、にじみが多いと数値が大きくなる。
P1:印刷画像のピクセル数(ピクセル)
P0:インクジェットプリンタ用専用紙に印刷した画像のピクセル数(ピクセル)
(3)摩擦試験:
JIS−A 6921にしたがって、湿潤時の摩擦試験を行い、5段階評価における耐摩擦度(級)を測定した。
耐摩擦度:1〜5級の5段階評価;耐摩擦度としては5級が最も高い。
JIS−A 6921にしたがって、湿潤時の摩擦試験を行い、5段階評価における耐摩擦度(級)を測定した。
耐摩擦度:1〜5級の5段階評価;耐摩擦度としては5級が最も高い。
(4)耐候性試験:
各実施例及び比較例に示す条件で作製された印刷用紙(A4判)および市販の印刷用紙(A4判)を用意した。それぞれの用紙の1枚を4つの領域に等分割し、その4つの領域にインクジェットプリンタ(エプソン製PX−5500型、顔料が分散された水溶性インク使用)により、黄、赤、青、黒の4色を各領域に印刷したものを各用紙2枚ずつ用意した。各々1枚ずつを紫外線照射用蛍光ランプ(三菱電機製、蛍光ランプ、型式:FL30SBL−360)により、500uW/cm2の強度の紫外線を照射し、残りの1枚ずつは、暗所に保存した。
一定時間、紫外線を照射した用紙と暗所に保存した用紙を取り出し、分光色差計(日本電色工業製、ハンディ型簡易分光色差計、型番:NF333)で黄、赤、青、黒の4色について、JIS Z 8730に準じて、紫外線照射部分と未照射部分の各色のL*、a*、b*表色系における色差(△E1〜△E4)を求めた。さらに、次式によりそれらを平均した△Eavを求めて、耐候性の指標とした。
△Eav=(△E1+△E2+△E3+△E4)/4
尚、色の変化が大きいとこの値が大きくなる。
△E1:黄の領域における紫外線照射部分と未照射部分の色差
△E2:赤の領域における紫外線照射部分と未照射部分の色差
△E3:青の領域における紫外線照射部分と未照射部分の色差
△E4:黒の領域における紫外線照射部分と未照射部分の色差
各実施例及び比較例に示す条件で作製された印刷用紙(A4判)および市販の印刷用紙(A4判)を用意した。それぞれの用紙の1枚を4つの領域に等分割し、その4つの領域にインクジェットプリンタ(エプソン製PX−5500型、顔料が分散された水溶性インク使用)により、黄、赤、青、黒の4色を各領域に印刷したものを各用紙2枚ずつ用意した。各々1枚ずつを紫外線照射用蛍光ランプ(三菱電機製、蛍光ランプ、型式:FL30SBL−360)により、500uW/cm2の強度の紫外線を照射し、残りの1枚ずつは、暗所に保存した。
一定時間、紫外線を照射した用紙と暗所に保存した用紙を取り出し、分光色差計(日本電色工業製、ハンディ型簡易分光色差計、型番:NF333)で黄、赤、青、黒の4色について、JIS Z 8730に準じて、紫外線照射部分と未照射部分の各色のL*、a*、b*表色系における色差(△E1〜△E4)を求めた。さらに、次式によりそれらを平均した△Eavを求めて、耐候性の指標とした。
△Eav=(△E1+△E2+△E3+△E4)/4
尚、色の変化が大きいとこの値が大きくなる。
△E1:黄の領域における紫外線照射部分と未照射部分の色差
△E2:赤の領域における紫外線照射部分と未照射部分の色差
△E3:青の領域における紫外線照射部分と未照射部分の色差
△E4:黒の領域における紫外線照射部分と未照射部分の色差
(A)基材シート:
炭カル紙:王子製紙株式会社製「OKコスモCA135」
(厚み0.18mm、目つけ量138g/m2)
ガラス繊維混抄紙:北越製紙株式会社製「MPS−01」
(厚み0.35mm、目つけ量85g/m2)
(B)水酸化カルシウム:
消石灰:宇部マテリアルズ製「高純度消石灰CH」
(C)無機粉体:
炭酸カルシウム:薬仙石灰製「ホワイト7」
(D)水性エマルジョン:
アクリル酸共重合体ラテックス:
旭化成工業株式会社製「ポリトロン」コモノマー含量25重量%、
固形分40重量%
(E)グリセリン:和光純薬製
(F)水溶性ポリマー:
ポリビニルピロリドン:和光純薬製(平均分子量:35000)
ポリビニルアルコール:和光純薬製(平均重合度:500、完全けん
化型)
ポリエチレングリコール:和光純薬製(平均分子量:300)
(G)非イオン性界面活性剤:
ポリオキシエチレンラウリルエーテル:
花王製「エマルゲン123P」
HLB 16.9
ポリエチレン脂肪酸エステル:
花王製「エマノーン1112」
HLB 13.7
(H)保護シート
不織布A:ユニセル株式会社製「BT−1306WM」(品番)
炭カル紙:王子製紙株式会社製「OKコスモCA135」
(厚み0.18mm、目つけ量138g/m2)
ガラス繊維混抄紙:北越製紙株式会社製「MPS−01」
(厚み0.35mm、目つけ量85g/m2)
(B)水酸化カルシウム:
消石灰:宇部マテリアルズ製「高純度消石灰CH」
(C)無機粉体:
炭酸カルシウム:薬仙石灰製「ホワイト7」
(D)水性エマルジョン:
アクリル酸共重合体ラテックス:
旭化成工業株式会社製「ポリトロン」コモノマー含量25重量%、
固形分40重量%
(E)グリセリン:和光純薬製
(F)水溶性ポリマー:
ポリビニルピロリドン:和光純薬製(平均分子量:35000)
ポリビニルアルコール:和光純薬製(平均重合度:500、完全けん
化型)
ポリエチレングリコール:和光純薬製(平均分子量:300)
(G)非イオン性界面活性剤:
ポリオキシエチレンラウリルエーテル:
花王製「エマルゲン123P」
HLB 16.9
ポリエチレン脂肪酸エステル:
花王製「エマノーン1112」
HLB 13.7
(H)保護シート
不織布A:ユニセル株式会社製「BT−1306WM」(品番)
(製造例1〜3)
表1に示す配合比で消石灰、水性エマルジョン、水、グリセリンを混練し、消石灰スラリーを得た。次に、基材シートとして、炭カル紙(400×300mm)を使用し、その表面に得られた消石灰スラリーをバーコーターで塗布し、直後に不織布A(保護シート)をスラリー表面に密着させ、60℃の乾燥機中で20分間乾燥させた。このようにして製造された印刷用シートにおいて、製造直後の耐摩擦度を測定した結果、全て3級であった。
表1に示す配合比で消石灰、水性エマルジョン、水、グリセリンを混練し、消石灰スラリーを得た。次に、基材シートとして、炭カル紙(400×300mm)を使用し、その表面に得られた消石灰スラリーをバーコーターで塗布し、直後に不織布A(保護シート)をスラリー表面に密着させ、60℃の乾燥機中で20分間乾燥させた。このようにして製造された印刷用シートにおいて、製造直後の耐摩擦度を測定した結果、全て3級であった。
(比較製造例1、2)
前記実施例においてグリセリンを使用しない以外は、同様の組成のスラリーを使用し、印刷層を有する印刷用シートを得た(比較製造例1)。このときの耐摩擦度は3級であった。
また、前記実施例においてグリセリンを使用せず、さらに水酸化カルシウムの代わりに炭酸カルシウムを使用した以外は、同様の組成のスラリーを使用し、印刷層を有する印刷用シートを得た(比較製造例2)。このときの耐摩擦度は2級であった。
これら比較製造例の配合比を表1に示す。
前記実施例においてグリセリンを使用しない以外は、同様の組成のスラリーを使用し、印刷層を有する印刷用シートを得た(比較製造例1)。このときの耐摩擦度は3級であった。
また、前記実施例においてグリセリンを使用せず、さらに水酸化カルシウムの代わりに炭酸カルシウムを使用した以外は、同様の組成のスラリーを使用し、印刷層を有する印刷用シートを得た(比較製造例2)。このときの耐摩擦度は2級であった。
これら比較製造例の配合比を表1に示す。
(実施例1〜3、比較例1、2)
製造例1〜3、比較製造例1、2で得られた製造直後の印刷シートを用い、印刷層厚み、にじみ率および接触角を測定した。それらの結果を表2に示す。
さらに、室内にて0日、5日、20日放置して、印刷層の消石灰(水酸化カルシウム)を炭酸化した。得られた印刷用シートの印刷層における消石灰の割合を表2に示す。ただし、比較例2の印刷用シートについては、炭酸化を行なっていない。
製造例1〜3、比較製造例1、2で得られた製造直後の印刷シートを用い、印刷層厚み、にじみ率および接触角を測定した。それらの結果を表2に示す。
さらに、室内にて0日、5日、20日放置して、印刷層の消石灰(水酸化カルシウム)を炭酸化した。得られた印刷用シートの印刷層における消石灰の割合を表2に示す。ただし、比較例2の印刷用シートについては、炭酸化を行なっていない。
続いて、製造例1〜3、比較製造例1、2で得られた印刷シートを用い、黄、赤、青、黒の4色を印刷し、3時間室内に放置した後、耐候試験を行った。耐候試験は、1ヵ月、4ヶ月経過後について平均色差(△Eav)を測定し、その結果を表3に示す。また、20日間室内に放置した後の耐摩擦度を表3に併せて示す。
(製造例4〜9)
前記製造例1において、グリセリンを表4に示す水溶性ポリマーに変更した以外は同様の配合比で混練し、消石灰スラリーを得た。次に、基材シートとして、ガラス繊維混抄紙(400×300mm)を使用し、その表面に得られた消石灰スラリーをバーコーターで塗布し、直後に不織布A(保護シート)をスラリー表面に密着させ、70℃の乾燥機中で20分間乾燥させた。このようにして製造された印刷用シートにおける製造直後の耐摩擦度はいずれも3級であった。
前記製造例1において、グリセリンを表4に示す水溶性ポリマーに変更した以外は同様の配合比で混練し、消石灰スラリーを得た。次に、基材シートとして、ガラス繊維混抄紙(400×300mm)を使用し、その表面に得られた消石灰スラリーをバーコーターで塗布し、直後に不織布A(保護シート)をスラリー表面に密着させ、70℃の乾燥機中で20分間乾燥させた。このようにして製造された印刷用シートにおける製造直後の耐摩擦度はいずれも3級であった。
(実施例4〜9)
製造例4〜9で得られた製造直後の印刷シートを用い、印刷層厚み、にじみ率および接触角を測定した。それらの結果を表5に示す。
さらに、室内にて0日、5日、20日放置して、印刷層の消石灰(水酸化カルシウム)を炭酸化した。得られた印刷用シートの印刷層における消石灰の割合を表5に示す。
製造例4〜9で得られた製造直後の印刷シートを用い、印刷層厚み、にじみ率および接触角を測定した。それらの結果を表5に示す。
さらに、室内にて0日、5日、20日放置して、印刷層の消石灰(水酸化カルシウム)を炭酸化した。得られた印刷用シートの印刷層における消石灰の割合を表5に示す。
続いて、製造例4〜9で得られた印刷シートを用い、黄、赤、青、黒の4色を印刷し、3時間室内に放置した後、耐候試験を行った。耐候試験は、1ヵ月、4ヶ月経過後について平均色差(△Eav)を測定し、その結果を表6に示す。また、20日間室内に放置した後の耐摩擦度を表6に併せて示す。
(製造例10、11)
前記製造例1において、グリセリンを表7に示す非イオン性界面活性剤に変更した以外は同様の配合比で混練し、消石灰スラリーを得た。次に、基材シートとして、ガラス繊維混抄紙(400×300mm)を使用し、その表面に得られた消石灰スラリーをバーコーターで塗布し、直後に不織布A(保護シート)をスラリー表面に密着させ、70℃の乾燥機中で20分間乾燥させた。このようにして製造された印刷用シートにおける製造直後の耐摩擦度はいずれも3級であった。
前記製造例1において、グリセリンを表7に示す非イオン性界面活性剤に変更した以外は同様の配合比で混練し、消石灰スラリーを得た。次に、基材シートとして、ガラス繊維混抄紙(400×300mm)を使用し、その表面に得られた消石灰スラリーをバーコーターで塗布し、直後に不織布A(保護シート)をスラリー表面に密着させ、70℃の乾燥機中で20分間乾燥させた。このようにして製造された印刷用シートにおける製造直後の耐摩擦度はいずれも3級であった。
(実施例10、11)
製造例10、11で得られた製造直後の印刷シートを用い、印刷層厚み、にじみ率および接触角を測定した。それらの結果を表8に示す。
さらに、室内にて0日、5日、20日放置して、印刷層の消石灰(水酸化カルシウム)を炭酸化した。得られた印刷用シートの印刷層における消石灰の割合を表8に示す。
製造例10、11で得られた製造直後の印刷シートを用い、印刷層厚み、にじみ率および接触角を測定した。それらの結果を表8に示す。
さらに、室内にて0日、5日、20日放置して、印刷層の消石灰(水酸化カルシウム)を炭酸化した。得られた印刷用シートの印刷層における消石灰の割合を表8に示す。
続いて、製造例11、10で得られた印刷シートを用い、黄、赤、青、黒の4色を印刷し、3時間室内に放置した後、耐候試験を行った。耐候試験は、1ヵ月、4ヶ月経過後について平均色差(△Eav)を測定し、その結果を表6に示す。また、20日間室内に放置した後の耐摩擦度を表9に併せて示す。
1:基材シート
3:印刷層
5:保護シート
3:印刷層
5:保護シート
Claims (5)
- 基材シートと、該基材シート表面に形成されている漆喰及び有機バインダーを含む印刷層とからなるインクジェット印刷用シートにおいて、
前記印刷層は、更に、グリセリン、水溶性ポリマー及び非イオン性界面活性剤からなる群より選択された少なくとも一種の添加剤を含有していることを特徴とするインクジェット印刷用シート。 - 前記印刷層は、前記有機バインダー当り5乃至50重量%の量で前記添加剤を含んでいる請求項1に記載のインクジェット印刷用シート。
- 前記有機バインダーが(メタ)アクリル樹脂である請求項1に記載のインクジェット印刷用シート。
- 前記水溶性ポリマーは、水に対する溶解度が10質量%以上である請求項1に記載のインクジェット印刷用シート。
- 前記非イオン界面活性剤は、10以上のHLBを有している請求項1に記載のインクジェット印刷用シート。
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