JP2015016395A - 複層シートおよびその製造方法 - Google Patents
複層シートおよびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2015016395A JP2015016395A JP2013143353A JP2013143353A JP2015016395A JP 2015016395 A JP2015016395 A JP 2015016395A JP 2013143353 A JP2013143353 A JP 2013143353A JP 2013143353 A JP2013143353 A JP 2013143353A JP 2015016395 A JP2015016395 A JP 2015016395A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- layer
- resin
- sheet
- stucco
- plaster
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】 漆喰含有層が基材シート上に形成されている積層シートにおいて、水性顔料インクあるいは水性染料インクを使ったインクジェット印刷をしても、光沢差の発生を防止することが可能であると共に、堅牢性に優れた複層シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 基材シートと、該基材シートの上面に積層され且つ半固化状態の漆喰を含む漆喰層とを有する積層シートの漆喰層側に、着色材料を塗布して描画を行い、次いで漆喰層上に樹脂層を形成し複層シートを製造する。該樹脂層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂のうちいずれか1種類、または2種類以上の樹脂を組み合わせたもので、これら樹脂は、有機溶媒溶液中に2〜30重量%の濃度で、且つ粘度が1〜10mP・sに調製された樹脂溶液を樹脂層が0.5〜10g/m2の塗工量になるように塗工して製造することが好ましい。
【選択図】 図2
【解決手段】 基材シートと、該基材シートの上面に積層され且つ半固化状態の漆喰を含む漆喰層とを有する積層シートの漆喰層側に、着色材料を塗布して描画を行い、次いで漆喰層上に樹脂層を形成し複層シートを製造する。該樹脂層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂のうちいずれか1種類、または2種類以上の樹脂を組み合わせたもので、これら樹脂は、有機溶媒溶液中に2〜30重量%の濃度で、且つ粘度が1〜10mP・sに調製された樹脂溶液を樹脂層が0.5〜10g/m2の塗工量になるように塗工して製造することが好ましい。
【選択図】 図2
Description
本発明は、複層シートに関するものであり、より詳細には、基材シートの上面に積層され且つ半固化状態の漆喰を含む漆喰層とを有する積層シートの漆喰層側に、着色材料を塗布して描画を行い、次いで漆喰層上に樹脂層を形成することを特徴とする描画された複層シートの製造方法に関する。
パーソナルコンピュータやデジタルカメラの一般家庭への普及に伴い、鮮明なフルカラーの画像をプリントすることが可能なインクジェットプリンタが、価格が安価なこともあって、広く使用されている。インクジェットプリンタに用いる印刷用記録紙としては、通常の上質紙やコート紙では性能の点で使用困難であり、紙面に付着したインクが速やかに内部に吸収されること、紙面上でのインク滴の拡がりや滲みが抑制され、鮮明な画像が形成されること、得られる画像が長期にわたって色落ちなどを生じない堅牢性に優れていることなどの特性が要求される。
このような特性を印刷面(紙面)に付与するために、種々の無機固体物質を結着剤とともに紙面に塗布し或いは紙内に充填することが提案されている。例えば特許文献1には、無機固体物質として合成シリカ或いはその塩を用いること、特許文献2には、マグネシウムや亜鉛などの2価金属の弱酸塩や酸化物を被覆層として紙面に設けること、特許文献3には、天然または合成のゼオライト、ケイソウ土、合成雲母等を含有する被覆層を紙面に設けること、特許文献4,5には、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、酸性白土、活性白土等の白色顔料によりインク吸収層を設けること、特許文献6には、多孔質球状ケイ酸塩粒子を充填することが提案されている。
しかしながら、上記のような従来公知の印刷用紙は、インクジェットプリンタ以外のレーザプリンタなどに使用されるものも含めて、いずれも得られる画像は、写真のようなフラットな画像であり、絵画調の深みのある画像を形成し得るものはなかった。
また、上記のような従来公知の印刷用紙に印刷した場合、紫外線やオゾンからインク成分を保護する機能は無く、長期間の保存には適していなかった。
ところで、本出願人は、基材シート上に形成される漆喰層に漆喰が配合されている印刷用シートを開発し、既に提案した(特許文献7)。
このような印刷用シートによれば、インクジェットプリンタを用いての印刷により、凹凸感があり、絵画調の深みがあり、堅牢で且つ鮮明な印刷画像を形成することができ、しかも、得られる印刷画像は、耐候性に極めて優れているという従来のインクジェット印刷用紙には見られない優れた利点を有する。
しかしながら、本出願人が開発した漆喰を含有した漆喰層を有する印刷用シートにおいても、未だ解決すべき課題が残されている。
即ち、漆喰とは消石灰(水酸化カルシウム)と水との混練物であり、この消石灰は、塗布され、乾燥すると、空気中の炭酸ガスと反応し、その炭酸化によって炭酸カルシウムを生成すると同時に固化するという特性(気硬性)を有する材料である。上記の漆喰層には、このような漆喰が完全に炭酸化する前の状態で保持されており、かかる漆喰含有漆喰層に画像を印刷するときには、漆喰層に形成される表面の凹凸が印刷画像に反映され、凹凸感があり深みのある印刷画像が形成されると共に、印刷画像が炭酸化カルシウムにより被覆され、堅牢性が付与されるばかりか、紫外線等の劣化要因から画像を形成しているインク成分を保護し、色あせなどが有効に防止され、優れた耐光性を示すのである。
しかるに、
漆喰を含有した漆喰層を有する印刷用シートでは、特に顔料系水性インクを使用したインクジェットで印刷した場合において、印刷しない部分と高濃度に印刷された部分の光沢差が生じることがある。顔料系水性インクが漆喰層の表面に吐出されると、前述のごとくインク中の水分に漆喰層中の水酸化カルシウムが溶出し炭酸カルシウムの被膜を形成するわけであるが、顔料系水性インクが高濃度で吐出された場合、水酸化カルシウムの溶出が多くなり、その後の炭酸化による炭酸カルシウムの被膜がより強固に生成されることになり、印刷されていない部分や低濃度で印刷された部分と光沢差が生じてしまう。
漆喰を含有した漆喰層を有する印刷用シートでは、特に顔料系水性インクを使用したインクジェットで印刷した場合において、印刷しない部分と高濃度に印刷された部分の光沢差が生じることがある。顔料系水性インクが漆喰層の表面に吐出されると、前述のごとくインク中の水分に漆喰層中の水酸化カルシウムが溶出し炭酸カルシウムの被膜を形成するわけであるが、顔料系水性インクが高濃度で吐出された場合、水酸化カルシウムの溶出が多くなり、その後の炭酸化による炭酸カルシウムの被膜がより強固に生成されることになり、印刷されていない部分や低濃度で印刷された部分と光沢差が生じてしまう。
このような光沢差の発生により、印刷濃度の低下、色調の大きな変化、画像品質の低下などが生じることとなり、画像本来の価値を損ねてしまうため、これらの解決方法が求められていた。
したがって、本発明の目的は、漆喰含有層が基材シート上に形成されている積層シートにおいて、水性顔料インクあるいは水性染料インクを使ったインクジェット印刷をしても、光沢差の発生を防止することが可能であると共に、堅牢性に優れた複層シートの製造方法および該製造方法によって記録された複層シートを提供することにある。
上記課題に鑑み、本発明者等は鋭意検討を行い、光沢差の発生がなく、且つ長期耐久性が高い複層シートを見出し、さらに検討を進め本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、基材シートと、該基材シートの上面に積層され且つ半固化状態の漆喰を含む漆喰層とを有する積層シートの漆喰層側に、着色材料を塗布して描画を行い、次いで漆喰層上に樹脂層を形成することを特徴とする描画された複層シートの製造方法、および該製造方法により得られた複層シートが提供される。
本発明の複層シートにおいては、
(1)基材シートと、該基材シートの上面に積層され且つ半固化状態の漆喰を含む漆喰層とを有する積層シートの漆喰層側に、着色材料を塗布して描画を行い、次いで漆喰層上に樹脂層を形成することを特徴とする製造方法、
(2)前記樹脂層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂のうちいずれか1種類、または2種類以上の樹脂を組み合わせたものであること、
(3)アクリル樹脂層の形成を前記樹脂の有機溶媒溶液の塗工によって行うこと、
(4)樹脂の塗工量が0.5〜10g/m2であること、
(5)樹脂の有機溶媒溶液中の樹脂濃度が2〜30重量%であること、
(6)樹脂の有機溶媒溶液の粘度が1〜10mP・sであること、
(7)基材シートと、その基材シートの上の着色材料を含有する固化漆喰層と、固化漆喰層上の前記樹脂層とを有する複層シートであること、
が好適である。
(1)基材シートと、該基材シートの上面に積層され且つ半固化状態の漆喰を含む漆喰層とを有する積層シートの漆喰層側に、着色材料を塗布して描画を行い、次いで漆喰層上に樹脂層を形成することを特徴とする製造方法、
(2)前記樹脂層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂のうちいずれか1種類、または2種類以上の樹脂を組み合わせたものであること、
(3)アクリル樹脂層の形成を前記樹脂の有機溶媒溶液の塗工によって行うこと、
(4)樹脂の塗工量が0.5〜10g/m2であること、
(5)樹脂の有機溶媒溶液中の樹脂濃度が2〜30重量%であること、
(6)樹脂の有機溶媒溶液の粘度が1〜10mP・sであること、
(7)基材シートと、その基材シートの上の着色材料を含有する固化漆喰層と、固化漆喰層上の前記樹脂層とを有する複層シートであること、
が好適である。
本発明の複層シートにおいては、該基材シートの上面に積層され且つ半固化状態の漆喰を含む漆喰層とを有する積層シートの漆喰層側に、着色材料を塗布して描画を行った後、漆喰層上に樹脂層を形成することが顕著な特徴であり、このような製造方法により、長期耐久性が高い複層シートを得ることができる。
半固化状態の漆喰を含む漆喰層を有する積層シートの漆喰層側に、インクジェット印刷等で描画を行った後、漆喰層上に樹脂層を形成することで、光沢差を効果的に抑制することができる。即ち、この樹脂層は、樹脂の粒子層を形成するため、描画された漆喰層表面に入射した光が乱反射を起こすことにより、光沢差を抑制する効果を有する。
半固化状態の漆喰を含む漆喰層を有する積層シートの漆喰層側に、インクジェット印刷等で描画を行った後、漆喰層上に樹脂層を形成することで、光沢差を効果的に抑制することができる。即ち、この樹脂層は、樹脂の粒子層を形成するため、描画された漆喰層表面に入射した光が乱反射を起こすことにより、光沢差を抑制する効果を有する。
したがって、このような樹脂層は、完全にフィルム化されていない状態で描画された漆喰層の表面に形成されており、通気性も損なわれないため、漆喰層の炭酸化が進行し、その結果、前述のごとく色材成分が炭酸カルシウムで被覆され、堅牢性が付与されるばかりか、紫外線等の劣化要因から画像を形成しているインク成分を保護し、色あせなどが有効に防止され、優れた耐候性を示すのである。
また、本発明の印刷用シートにおいても、本出願人が提案した特許文献7の印刷用シートと同様、印刷層表面の凹凸が大きく、このため、形成される印刷像は、凹凸感があり、深みのある絵画調のものとなり、壁画に近い感じとなり、写真画像とは全く異質のものとなる。
本発明においては、基材シートと、該基材シートの上面に積層され且つ半固化状態の漆喰を含む漆喰層とを有する積層シートの漆喰層側に、着色材料を塗布して描画を行い、次いで漆喰層上に樹脂層を形成する複層シートの製造方法および該製造方法により得られた複層シートが提案される。
前記積層シートとしては、特許第5039701号に開示のものが好適に採用できる。当該複層シートを図1および図2を参照してより詳しく説明すると、以下の通りである。
本発明における複層シートは、基材シート1と、その上に形成された半固化状態の漆喰を含む漆喰層2とから形成される積層シート3の漆喰層2の表面にインクジェット等で描画が行われ、着色材を含む漆喰層2が形成される。さらに描画後前には、必要により漆喰層2上に保護シート4が設けられている。即ち、この積層シート3における漆喰層2は漆喰を含むものであり、必要により設けられる上記の保護シート4を引き剥がした後、露出した漆喰層2の表面に描画が施されるものである。以下、構成要素毎にさらに詳しく説明を行う。
<基材シート1>
基材シート1は、その表面に漆喰を含む漆喰層2が形成できるものであれば、特に制限されず、任意の材料で形成されていてよい。例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリレート等のビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂などの各種の樹脂シート乃至樹脂フィルム、或いは紙などからなっていてもよいし、また、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等の繊維状物からなる織布または不織布であってもよく、木材系パルプ、または非木材系パルプ等の繊維状パルプからなるパルプ紙からなっていてもよい。さらには、これらの複合体、積層フィルムあるいはシートであってもよい。
基材シート1は、その表面に漆喰を含む漆喰層2が形成できるものであれば、特に制限されず、任意の材料で形成されていてよい。例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリレート等のビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂などの各種の樹脂シート乃至樹脂フィルム、或いは紙などからなっていてもよいし、また、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等の繊維状物からなる織布または不織布であってもよく、木材系パルプ、または非木材系パルプ等の繊維状パルプからなるパルプ紙からなっていてもよい。さらには、これらの複合体、積層フィルムあるいはシートであってもよい。
但し、一般的には、基材シート1は可撓性を有しており、適度の腰の強さを有しているものであることが好ましい。このような基材シート1では、これを折り曲げても折り目が形成され難く、この基材シート1上に設けられる漆喰を含む漆喰層2に割れ目が形成されるなどの不都合を有効に抑制することができるからである。このような基材シート1の材質は、かなり制限されることとなるが、一般的には、広葉樹や針葉樹を原料とする木材系パルプ中性紙、または、楮、三椏、雁皮等を原料とする非木材系パルプ中性紙、或いは木材系パルプと非木材系パルプを混合した混抄パルプ中性紙紙が好適に利用される。
このようなパルプ中性紙は、可撓性や曲げ強さを有し、しかも漆喰層2との密着性を良好なものとすることができる。さらに、このようなパルプ中性紙は、隠ぺい性にも優れているため、本発明において好適に使用される。
また、基材シート1の表面は、漆喰を含む漆喰層2との密着性を高めるために、コロナ処理などを行って親水性を向上させてもよく、サンドブラスト処理などを行って密着面積を増やしてもよく、これにより、以下に述べる漆喰層2と基材シート1との接合強度を一層向上させることができる。
また、上記の基材シート1の厚みは、例えば後述する描画をインクジェット印刷で行うのであれば、当該インクジェット印刷に用いるプリンタの仕様に応じて、この積層シートが容易にプリンタを通すことができるような厚みに設定すればよい。
<漆喰層2>
本発明において、漆喰層2は、漆喰を含むものであり、消石灰(水酸化カルシウム)の粉末と水との混練物に有機バインダーを加えたものを、基材シート1の表面にコーティングして形成される。
本発明において、漆喰層2は、漆喰を含むものであり、消石灰(水酸化カルシウム)の粉末と水との混練物に有機バインダーを加えたものを、基材シート1の表面にコーティングして形成される。
即ち、この漆喰層2を空気中に放置した場合、消石灰が炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムを生成することにより、さらに固化が進行し、その表面硬度が増大していくこととなり、一般的には、消石灰の90重量%以上が炭酸化した段階で表面硬度がほぼ最高値に到達する。
本発明の複層シートでは、基材シート上の漆喰層において、半固化状態、即ち炭酸化されていない消石灰が少なくとも20重量%残存している状態でインクジェット印刷等により描画が行われ、印刷後に炭酸化が進行することとなる。その結果、インクに含まれていた色材成分が炭酸化と共に、生成する炭酸カルシウムの被膜に包含されることとなり、紫外線やオゾンなどによる色材成分の劣化を効果的に抑制することができるのである。さらには、印刷後に炭酸化が進行すると高い表面硬度となり、優れた堅牢性を示し、描画像の傷付き等を有効に防止することができるわけである。
本発明において、漆喰層2は、水酸化カルシウム(消石灰)が少なくとも20重量%は炭酸化する前の段階にある必要がある。好ましくは、この漆喰前駆体中の水酸化カルシウムが40重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上に保持されている状態で本発明の製造方法に供されることが好ましい。即ち、水酸化カルシウムの含有量が上記範囲よりも多いことにより、炭酸化により生成する炭酸カルシウムの量が十分な量となり、その結果、画像の堅牢性が向上し、色落ちなどを生じ難くなる傾向がある。また、炭酸化による描画された像の保護効果が向上し、紫外線やオゾンなどによる像の劣化抑制効果が低下するおそれを減じる。さらには、水酸化カルシウム量が多いと、漆喰層2の表面の親水性が高くなり、インクジェットによる描画が滲んだりするなどの不具合が起き難くなる利点もある。
前記漆喰層中の水酸化カルシウムは、上記目的を達成するために多いほどよいが、あまり多すぎると漆喰層2の靱性が不十分となり、描画工程中に漆喰層2の破損等を生じ易くなるため、漆喰層2中に、漆喰層2を構成する全成分中85重量%以下、好ましくは、80重量%以下の割合とすることが好ましい。
尚、漆喰層における水酸化カルシウムの割合は、強熱減量法あるいはX線回折により確認することができる。
本発明において、前記漆喰層2における水酸化カルシウムの含有量の調整は、漆喰層2の形成に用いる水酸化カルシウムの炭酸化率及び後述する有機バインダー、適宜配合される他の添加剤(無機細骨材、吸液性無機粉体など)の配合量によって調整することができる。
この炭酸化率は、前述したスラリーの調製に用いた消石灰の重量に対し、生成した炭酸化カルシウムの重量割合を示す。
上記調整方法のうち、漆喰層2の形成に用いる水酸化カルシウムの炭酸化率を調整する方法を採用する場合、炭酸化率の上限は、70重量%、特に40重量%とすることが望ましい。即ち、炭酸化が過度に進みすぎた場合、漆喰層2の表面が緻密化され、印刷インクの漆喰層内部への浸透性が低下する傾向がある。
このような炭酸化による表面の緻密化の程度は、前述した特許文献7の実施例にも示されているように、漆喰層2表面の耐摩擦度によって判定することができ、JIS A 6921に準拠した耐摩擦度が4級以下の状態で炭酸化を止めておくことが好適である。
本発明においては、後述する描画後に漆喰層2を大気中に放置することにより、漆喰層2中の水酸化カルシウムが炭酸化して炭酸化カルシウムとなるわけであるが、このような漆喰層2の靭性等を向上させるために、漆喰層2には、有機バインダーが配合される。このような有機バインダーは、漆喰層2のマトリックスを形成するものであり、ポリマーのエマルジョン固形分の形で漆喰層2中に存在する。
このポリマーのエマルジョンは、水媒体中にモノマー、オリゴマー或いはこれらの重合体等が分散したものであり、例えば(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリウレタン、スチレン/ブタジエンゴム系等の重合体のエマルジョンが代表的である。
このようなポリマーのエマルジョンは、乾燥工程で、媒体(水)が蒸発してエマルジョン中のポリマー成分が漆喰層2中に残存することとなる。即ち、このようなエマルジョンの固形分(即ちポリマー)が過度に存在すると、印刷インクや着色材を含む着色液の漆喰層2中への浸透性が低下する傾向がある。従って、漆喰層2の靭性を高め且つインクの浸透性を確保するために、一般に、漆喰層2における有機バインダー(ポリマーエマルジョン)の固形分は、5〜50重量%の範囲であることが好ましい。
本発明における漆喰層2中には、上記の有機バインダー以外にも、漆喰層2の物性を調整するための各種添加剤、例えば各種繊維材、無機細骨材、吸液性無機粉体等が配合されていてよい。これらの添加剤は、漆喰層2の強度等の物理特性を向上させるものである。
繊維材の例としては、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、金属繊維等を挙げることができる。また、繊維の形状としては短繊維、長繊維、織布、不織布等の形状のものが使用できるが、これらのうち短繊維は漆喰層2の靱性および切断加工性の向上に特に有効である。このような短繊維の長さおよび直径は特に制限されないが、長さは1mm〜10mm、特に2mm〜6mmであり、直径は5〜50μm、特に10〜30μmであることが、漆喰層2の靱性をより向上させ、場合によっては、切断加工性においても優れたものとするために好適である。
また、無機細骨材は、平均粒子径が0.01〜2mm程度の範囲内にある無機粒状物であり、この範囲内で、漆喰層2の厚みの1/2以下の平均粒子径を有するもの、具体的には、珪砂、寒水砂、マイカ、施釉珪砂、施釉マイカ、セラミックサンド、ガラスビーズ、パーライト、或いは炭酸カルシウムなどを挙げることができる。
また、本発明においては、漆喰層2にてポリマーエマルジョンを用いることによる親水性インクとの親和性の低下を補い、また漆喰層2の水酸化カルシウムの炭酸化の進行に伴い低下する吸液性を補うため、吸液性無機粉体を併用することもできる。この吸液性無機粉体は、多孔質であり、吸油量が100ml/100g以上と高い、微細な無機粉末、例えばレーザ回折散乱法で測定される体積換算での平均粒径(D50)が0.1μm以下のアルミナ粉末、ゼオライト粉末などである。
即ち、前述したポリマーエマルジョンは、靭性を向上させ、さらには基材シート1と漆喰層2との密着性(接合強度)を高めるためには有効であるが、反面、漆喰層2の親水性を低下させる。このため、例えば親水性インクなどを用いて印刷を行った場合、インクをはじいてしまい、印刷画像が滲んでしまうなどの不都合を生じることがある。しかるに、上述した吸液性無機粉体の使用は、印刷インクの漆喰層への吸収性を向上させるため、上記の不都合を有効に防止し得る点で好適である。特に、この吸液性無機粉体は、1乃至10重量%程度の量で漆喰層2中に配合されていることが好ましい。
本発明において、漆喰層2中に配合され得る各種添加剤は、その目的に応じて、それぞれ1種単独でも、2種以上が配合されていてもよいが、何れにしろ、印刷インクの漆喰層2への浸透や固定が損なわず、且つ漆喰層2の表面の親水度が損なわれない程度の量で配合すべきであり、例えば、消石灰が炭酸化して形成される炭酸カルシウムの含有量(即ち、炭酸化率100重量%のときの炭酸カルシウム含有量)が50重量%以上に維持される範囲において、各種の添加剤が配合されることが望ましい。
さらに、本発明においては、各種親水化剤を前述した消石灰と水との混練物に配合しておくこともできる。このような親水化剤の使用により、漆喰層2の親水性を高め、印刷後に残存している水酸化カルシウムの炭酸化を促進させることができる。
このような親水化剤としては、グリセリン、水溶性ポリマー及び非イオン性界面活性剤が使用され、それぞれ、1種単独で或いは2種以上を組みあわせて使用することができる。
これらの内、水溶性ポリマーは、水に対する溶解度(25℃)が10質量%以上のポリマーであり、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールポリアクリル酸ブロック共重合体、ポリビニルアルコールポリアクリル酸エステルブロック共重合体、ポリグリセリン等を例示することができる。
また、非イオン界面活性剤としては、HLBが10以上、特に12〜18のものが好適に使用される。例えば、HLBがかかる範囲であることを条件として、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルのホルマリン縮合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが非イオン界面活性剤として好適に使用される。
本発明において、上記の親水化剤は、その種類によっても異なるが、通常、漆喰層の有機バインダー100質量部当り1乃至50質量部の量で配合されていることが、前述した親水性面を形成する上で好適である。
即ち、親水化剤の量が上記範囲よりも多くすることにより、インクジェット等による印刷後の漆喰の炭酸化を促進効果が良好となる。また、上記範囲以下とすることにより、親水性が過度に高められてしまうことを防止し、インクジェット印刷等を行う時の漆喰層2の表面硬度の低下を抑制し、印刷時の漆喰層2の破損等を生じ難くする効果を与える。
上記のような漆喰層2の厚みは、インクジェット印刷等が可能な適宜の範囲に設定されるが、一般的には、0.05乃至1.0mm、特に0.1乃至0.3mm程度の範囲が好適である。即ち、上記厚み以上にすることにより、描画したときに、印刷インクの浸透による画像固定性が低下したり、或いは凹凸などによって発現する画像の深みが損なわれたりするおそれを防止できる。また、上記厚み以下とすることにより経済的に有利となり、さらには折り曲げによって折り目が形成され難くなるなど、描画に際して用いるインクジェットプリンタが制限されるおそれなどを生じ難くなる。
<積層シート3の製造>
上述した本発明の積層シート3は、漆喰層2を形成するための漆喰スラリー(水と消石灰との混練物)中に、有機バインダーとなるポリマーのエマルジョンと共に、前記特許文献7に開示されている印刷シートと同様の方法により製造される。
上述した本発明の積層シート3は、漆喰層2を形成するための漆喰スラリー(水と消石灰との混練物)中に、有機バインダーとなるポリマーのエマルジョンと共に、前記特許文献7に開示されている印刷シートと同様の方法により製造される。
即ち、漆喰層2を形成するための基材シート1の一方の表面に、有機バインダーを含み、さらに必要に応じて配合される各種添加剤が配合された漆喰スラリーを塗布すると同時に、必要に応じて保護シート4を貼着し、適度に乾燥して漆喰層2を形成することにより、この積層シート3を製造することができる。
<保護シート4>
上記積層シートは、その製造直後から本発明の製造方法に供されるまでの間、時間をおいて保管される場合がある。このような場合、当該積層シートは漆喰層2の表面を保護するために、漆喰層2の上面に、保護シート4を設けておくこともできる。
上記積層シートは、その製造直後から本発明の製造方法に供されるまでの間、時間をおいて保管される場合がある。このような場合、当該積層シートは漆喰層2の表面を保護するために、漆喰層2の上面に、保護シート4を設けておくこともできる。
これは漆喰層2は、無機粒子(水酸化カルシウムや炭酸カルシウムの粒子)から形成されているため、比較的脆く、外部からの圧力によって傷が付いたりして商品価値が低下するおそれがあるためである。この保護シート4は、本発明の描画時には引き剥がされるものであるが、引き剥がしに際して漆喰層2の表面の一部を脱落させて表面に顕著な凹凸を形成させるという機能を発現させるため、例えば、200〜4000mN/25mm、特に、800〜2000mN/25mmの剥離強度で設けられているのがよい。即ち、剥離強度を上記範囲以下にすることにより印刷時に保護シート4を引き剥がすことが容易となり、また、剥離強度を上記範囲以上にすることにより、保護シート4を剥がしたときに漆喰層2の表面に十分な大きさの凹凸を形成することができる。
尚、前記剥離強度は、JIS−K6854−2の接着剤−剥離接着強さ試験方法−第2部:180度剥離に準じ、幅25mmの試験体を用い、引張速度300mm/分で引っ張ることにより測定した値である。
上記のような保護シート4は、保護機能を有し且つ上記のような剥離強度で漆喰層2上に設けることが可能である限り、任意の材料から形成されていてよいが、一般的には、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等の繊維状物からなる織布または不織布などが保護シート4として使用される。また、保護シート7として、非通気性のシート、例えばシリコンペーパーなどを用いて、漆喰層2の保護機能と同時に、印刷時までの間に漆喰層2の炭酸化を防止するという機能を持たせることも可能である。
保護シート4の厚みは、適度な保護機能が発現する程度のものであればよく、一般的には0.01乃至2.0mm程度である。
<積層シート3>
上記のようにして得られる本発明の積層シート3は、適宜設けられている保護シート4を貼着した状態、或いは、保護シート4を剥がした状態で得られるが、漆喰層2は、これを大気中に放置しておくと、漆喰の炭酸化が進行していくため、印刷適性(例えば画像の浸透・固定性)などが低下してしまう。このような不都合を回避するため、印刷時点まで、炭酸化を抑制しておく必要がある。
上記のようにして得られる本発明の積層シート3は、適宜設けられている保護シート4を貼着した状態、或いは、保護シート4を剥がした状態で得られるが、漆喰層2は、これを大気中に放置しておくと、漆喰の炭酸化が進行していくため、印刷適性(例えば画像の浸透・固定性)などが低下してしまう。このような不都合を回避するため、印刷時点まで、炭酸化を抑制しておく必要がある。
即ち、このような漆喰層2の炭酸化を抑制するために、例えば、適度の大きさに裁断された長尺の積層シート3をロール状に巻取り、このロールを非通気性のフィルムで包装して保存することができる。また、裁断された積層シート3を一枚ずつ非通気性のフィルムで保存しておくこともできるし、多数枚の積層シート3を積み重ね、このような積載物を非通気性のフィルムで保存しておくこともできる。
さらには、保護シート4が貼着されている場合は、非通気性のフィルムを、保護シート4の上面及び基材シート1の裏面にラミネートして保存しておくことも可能である。
上述した非通気性のフィルムとしては、特に制限されるものではなく、一般に包装用フィルムとして使用されている各種の樹脂フィルムが使用されるが、コスト等の観点から、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリオレフィンフィルムが最も好適である。
上記のようにして得られる積層シート3は、包装フィルムを除去し、次いで保護シート4が存在する場合は、保護シート4を引き剥がして、漆喰層2の表面を露出させた状態で印刷等により描画されるわけであるが、大きな湿度変化に対しても、反りなどが生じることがなく、この面に描画が施される。
<描画方法>
本発明における描画は、インクジェット等により施される。用いるインクとしては、インクジェット印刷に用いられる公知の着色材(インク)が使用出来るが、水溶性染料が溶解し或いは顔料が水(或いは水/アルコール混合溶媒など)に分散された親水性のインクが最も好適である。このような親水性のインクを用いた場合には、漆喰層2上に滲みがなく且つ安定に保持された鮮鋭な画像を形成することができるとともに、前述のごとくインク中の水分に漆喰に含まれる水酸化カルシウムが溶出し、インクのpHを効果的に高めることができるため、ブロンジングを有効に抑制することができる。用いる印刷機としては、公知のインクジェットプリンタが使用でき、インクジェットによる描画は、同一の漆喰層2の表面に複数回行うことも可能である。
本発明における描画は、インクジェット等により施される。用いるインクとしては、インクジェット印刷に用いられる公知の着色材(インク)が使用出来るが、水溶性染料が溶解し或いは顔料が水(或いは水/アルコール混合溶媒など)に分散された親水性のインクが最も好適である。このような親水性のインクを用いた場合には、漆喰層2上に滲みがなく且つ安定に保持された鮮鋭な画像を形成することができるとともに、前述のごとくインク中の水分に漆喰に含まれる水酸化カルシウムが溶出し、インクのpHを効果的に高めることができるため、ブロンジングを有効に抑制することができる。用いる印刷機としては、公知のインクジェットプリンタが使用でき、インクジェットによる描画は、同一の漆喰層2の表面に複数回行うことも可能である。
上記のようにして印刷画像が印刷された漆喰層2は、既に述べたように、これを大気中に放置することにより、大気中の炭酸ガスを吸収し、残存する水酸化カルシウムの炭酸化が進行し、固化が進行し、例えば、印刷描画後、200時間程度で、耐候性や堅牢性に優れた特性を示し、印刷後のかなり早い初期段階から優れた特性が発揮され、また、紫外線等からインク中の色材成分を保護することができ、長期間、安定に保持される。
また、得られる印刷像は、凹凸のある多孔質の漆喰に浸透して固定されて壁画調となり、写真画像などを比較すると、深みのあるものとなる。
<描画間の保管容器>
本発明においては着色材の複数回の塗布は間隔を開けて行われてもよい。その場合、当該間隔は一般的には数分〜数ヶ月である。間隔が1時間程度までであれば、大気中で保管しても炭酸化が著しく進行してしまい80重量%を超えることは通常ないが、それ以上の間隔を設ける場合には、各塗布の間、積層シートの保管を、炭酸ガス透過度が1,000cm3/cm2・24hrs・1atm以下の保管容器にて行うことが好適である。当該保管容器の材質としては、樹脂、金属、ガラス等の公知の如何なる材質でもよいが、特に好ましくは、樹脂製のフィルムである。このようなフィルムとしては、特に制限されるものではなく、一般に包装用フィルムとして使用されているポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどの各種樹脂フィルムが使用されるが、本発明においては、特に限定されるものではなく、さらに、これらの単層若しくは多層構造のフィルムを使用することもできる。例えば、ガスバリア性の高いナイロン、ポリエチレンテレフタレートに良好なシール特性を有するポリエチレンを積層することにより、低い炭酸ガス透過度とシール性を併せ持つフィルムを得ることができる。
本発明においては着色材の複数回の塗布は間隔を開けて行われてもよい。その場合、当該間隔は一般的には数分〜数ヶ月である。間隔が1時間程度までであれば、大気中で保管しても炭酸化が著しく進行してしまい80重量%を超えることは通常ないが、それ以上の間隔を設ける場合には、各塗布の間、積層シートの保管を、炭酸ガス透過度が1,000cm3/cm2・24hrs・1atm以下の保管容器にて行うことが好適である。当該保管容器の材質としては、樹脂、金属、ガラス等の公知の如何なる材質でもよいが、特に好ましくは、樹脂製のフィルムである。このようなフィルムとしては、特に制限されるものではなく、一般に包装用フィルムとして使用されているポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどの各種樹脂フィルムが使用されるが、本発明においては、特に限定されるものではなく、さらに、これらの単層若しくは多層構造のフィルムを使用することもできる。例えば、ガスバリア性の高いナイロン、ポリエチレンテレフタレートに良好なシール特性を有するポリエチレンを積層することにより、低い炭酸ガス透過度とシール性を併せ持つフィルムを得ることができる。
<樹脂層5の形成>
本発明の製造方法においては、上記着色材量による描画後、漆喰層上に樹脂層が形成される。本発明における樹脂層5は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂のうちいずれか1種類、または2種類以上の樹脂を組み合わせたものが好適に使用される。これらの樹脂は、インクジェット等で描画が施された漆喰層2表面上に塗工される。これにより、漆喰層表面において発生しやすい光沢差を効果的に抑制するとともに、擦過性の向上および防汚性を付与する。
本発明の製造方法においては、上記着色材量による描画後、漆喰層上に樹脂層が形成される。本発明における樹脂層5は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂のうちいずれか1種類、または2種類以上の樹脂を組み合わせたものが好適に使用される。これらの樹脂は、インクジェット等で描画が施された漆喰層2表面上に塗工される。これにより、漆喰層表面において発生しやすい光沢差を効果的に抑制するとともに、擦過性の向上および防汚性を付与する。
本発明におけるアクリル樹脂は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体等のアクリル系のモノマーから構成されるポリマーである。そのようなアクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる樹脂が挙げられる。
また、ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネート化合物とポリマーポリオールとを溶液重合などの公知の方法で反応させ、必要に応じて鎖伸長剤または反応停止剤を使用することによって得られる樹脂である。上記のイソシアネート化合物は、従来のポリウレタン樹脂の合成に使用されるものであればよく、例えば、1,2−プロピレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;1,3−または1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
上記のイソシアネート化合物と反応させるポリマーポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。上記のポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸と多価アルコールとの反応で得られるポリエステルポリオールやラクトン環の開環重合で得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
上記の多価カルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの脂肪族、脂環族および芳香族の多価カルボン酸が挙げられる。
また、上記の多価カルボン酸と反応する多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族、脂環族および芳香族などの多価アルコールが挙げられる。
また、ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのオキシラン化合物をエチレングリコール、1,2−プロパンジオールなどの多価アルコールを重合開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
上記のポリウレタン樹脂は、必要に応じて適度の分子量やガラス転移温度に調整するために、合成中にエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオールなどのアルコール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどのアミン類などの公知の鎖伸長剤および低級アルコール系、アミン系などの公知の鎖伸長停止剤を適宜添加して調整する公知の製造方法を適用することができる。
また、フッ素樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリエステル系、アクリル系、シリコーン系、エポキシ系、ウレタン系樹脂等を基本樹脂とし、その分子内にフッ素化アルキル基を付与させた一般的なものが挙げられる。ポリマータイプとしては、例えばランダムオリゴマー型、グラフトポリマー型、ブロックコポリマー型等のいずれでもよい。
また、上記フッ素含有(メタ)アクリレートモノマーとは、例えば、トリフルオロアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル等が挙げられる。
本発明における樹脂層の形成は、前記樹脂の有機溶媒溶液(樹脂溶液)の塗工によって行うことができる。塗工する樹脂溶液は、樹脂の濃度が2〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは、5〜20重量%である。即ち、樹脂溶液中の樹脂の濃度が2重量%以上とすることにより、樹脂層を形成するために噴霧する樹脂溶液の量が低減でき、経済的に有利になるだけでなく、多量に漆喰層に含浸する有機溶媒を少なくでき、漆喰層中のバインダー成分を溶解し複層シートの強度が低下する恐れを防止できる。また、樹脂溶液中の樹脂の濃度を30重量%以下にすることにより、塗工する際の樹脂溶液の塗布量をコントロールするのが容易となる。
前記有機溶媒は、以下に説明する所望の粘度になれば、公知の溶媒が採用できる。たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、ホワイトスピリット、トルエン、キシレン等の炭化水素類などが挙げられる。このような有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。本発明において好適に用いられるのは、アルコール類、または炭化水素類である。
また、塗工する樹脂溶液の20℃における粘度は、1〜15mP・sが好ましく、さらに好ましくは、2〜10mP・sである。即ち、樹脂溶液の20℃における粘度が、1mP・s以上とすることにより、樹脂溶液を塗工した場合、漆喰層への過剰な侵入が起きにくく、表面への樹脂層の形成がされやすい。また、樹脂溶液の20℃における粘度が、15mP・s以下とすることにより均一な樹脂層の形成が容易となる。
本発明において、樹脂層の形成は、描画の直後に行ってもよいし、漆喰層の炭酸化が十分に進行してから行っても良い。
樹脂層の形成を炭酸化が十分に進行する前に行う場合、樹脂層の形成における塗布量は、0.5〜10g/m2が好ましく、さらに好ましくは、1〜5g/m2である。即ち、樹脂の塗工量が0.5g/m2以上とすることにより、形成される良好な樹脂層が形成され確実に光沢差が解消される。また、樹脂の塗工量を10g/m2以下とすることにより、漆喰層表面に形成される樹脂の被膜が薄くなり、炭酸化を阻害することがなくなり、漆喰層の堅牢性が十分なものとなる。
漆喰層の炭酸化が十分に進行してから樹脂層の形成を行う場合には、炭酸化の進行阻害を考慮する必要がないため、上記上限に囚われるものではないが、経済性などを考慮すると、やはり同等の量を上限とすることが好ましい。
本発明における樹脂溶液の塗工方法は、特に制限されず、公知の技術を適用することができる。例えば、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーティング、あるいは刷毛による塗工が採用されるが、本発明においては、空気、プロパンガス、ジメチルエーテルなどを使用するスプレーコーティングによる塗工方法、または刷毛、筆等に樹脂溶液を含ませて漆喰層に塗工する方法が好適である。
上記塗工の後は、有機溶媒を除去するために乾燥が必要である。乾燥は熱風による加熱乾燥あるいは過熱をしない自然乾燥が採用される。乾燥温度は、10〜80℃が好ましく、より好ましくは15〜60℃、さらに好ましくは、20〜40℃である。即ち、温度が高い方が乾燥が早いが、高すぎると色材の退色や変色などが起こる可能性がある。
このようにして、着色材料を含有する漆喰層の上に樹脂層5が形成されるが、該樹脂層5は、漆喰層への炭酸ガスの侵入を完全に阻害しないため、樹脂層の形成を描画直後に行っても、既に述べたように、これを大気中に放置することにより、大気中の炭酸ガスを吸収し、残存する水酸化カルシウムの炭酸化が進行し、固化が進行し、例えば、印刷後、400時間程度で、耐候性や堅牢性に優れた特性を示し、印刷後のかなり早い初期段階から優れた特性が発揮され、また、紫外線等からインク成分を保護することができ、長期間安定に保持されるとともに、光沢差を効果的に抑制した画像を得ることができる。また、得られる印刷像は、凹凸のある多孔質の漆喰に浸透して固定されて壁画調となり、写真画像などを比較すると、深みのある画像となる。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下に、実験例で用いた各試験方法および材料を示す。
(1)漆喰層の炭酸化率:
強熱減量法により、漆喰層中の水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムを定量し、水酸化カルシウムの炭酸カルシウムへの変化率を炭酸化率として算出した。
強熱減量法により、漆喰層中の水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムを定量し、水酸化カルシウムの炭酸カルシウムへの変化率を炭酸化率として算出した。
(2)漆喰面の表面硬度:
JIS K 5600−5−4に準拠した鉛筆引っかき硬度試験機「No.533−S」(安田精機製作所製)を用いて測定を行った。
JIS K 5600−5−4に準拠した鉛筆引っかき硬度試験機「No.533−S」(安田精機製作所製)を用いて測定を行った。
(3)耐候性試験:
各実施例及び比較例に示す条件で作製された積層シート(A4判)を用意した。その積層シートにインクジェットプリンタ(エプソン製PX−5500型、顔料が分散された水溶性インク使用)により、イエローを50%濃度で印刷したものを各シート2枚ずつ用意した。各々1枚ずつを紫外線照射用蛍光ランプ(三菱電機製、蛍光ランプ、型式:FL30SBL−360)により、500uW/cm2の強度の紫外線を照射し、残りの1枚ずつは、暗所に保存した。
各実施例及び比較例に示す条件で作製された積層シート(A4判)を用意した。その積層シートにインクジェットプリンタ(エプソン製PX−5500型、顔料が分散された水溶性インク使用)により、イエローを50%濃度で印刷したものを各シート2枚ずつ用意した。各々1枚ずつを紫外線照射用蛍光ランプ(三菱電機製、蛍光ランプ、型式:FL30SBL−360)により、500uW/cm2の強度の紫外線を照射し、残りの1枚ずつは、暗所に保存した。
一定時間、紫外線を照射した用紙と暗所に保存した用紙を取り出し、分光色差計(日本電色工業製、ハンディ型簡易分光色差計、型番:NF333)でイエローについて、JIS Z 8730に準じて、紫外線照射部分と未照射部分の各色のL*、a*、b*表色系における色差(△Ey)を求めた。
△Ey:イエローの領域における紫外線照射部分と未照射部分の色差
尚、色の変化が大きいとこの値が大きくなる。評価基準を以下に示す。
○:△Ey<2.5、(耐候性良好)
△:2.5<△Ey<5.0、(耐候性が若干悪い)
×:△Ey>5.0、(耐候性が悪い)
(4)無印刷部と顔料インク印刷部の光沢差の評価:
水性顔料系インクを搭載したインクジェットプリンタ(セイコーエプソン製、型式:PX−5500)を用いて画像を印刷し、無印刷部と印刷部の光沢差を目視で観察し評価した。評価基準を以下に示す。
○:光沢差がないか、ほとんど分からない。
△:光沢差が若干分かる。
×:光沢差がはっきりと分かる。
尚、色の変化が大きいとこの値が大きくなる。評価基準を以下に示す。
○:△Ey<2.5、(耐候性良好)
△:2.5<△Ey<5.0、(耐候性が若干悪い)
×:△Ey>5.0、(耐候性が悪い)
(4)無印刷部と顔料インク印刷部の光沢差の評価:
水性顔料系インクを搭載したインクジェットプリンタ(セイコーエプソン製、型式:PX−5500)を用いて画像を印刷し、無印刷部と印刷部の光沢差を目視で観察し評価した。評価基準を以下に示す。
○:光沢差がないか、ほとんど分からない。
△:光沢差が若干分かる。
×:光沢差がはっきりと分かる。
(5)基材シートA:
木材パルプ紙:富士共和製紙製 「インクジェット原紙」
(厚み0.17mm、目付量160g/m2)
(6)消石灰:宇部マテリアルズ製「高純度消石灰CH」
(7)水性エマルジョンA:
アクリル酸共重合体ラテックス:旭化成工業株式会社製「ポリトロン」
(コモノマー含量25重量%、固形分40重量%)
(8)保護シートA:
不織布:ユニセル株式会社製「BT−1306WM」(品番)
(9)グリセリン:和光純薬製
(10)樹脂溶液A:
アクリル樹脂(東亜合成製、グレード:UC−3000、平均分子量:1万)を濃度が3重量%になるようにエタノールに溶解した。
木材パルプ紙:富士共和製紙製 「インクジェット原紙」
(厚み0.17mm、目付量160g/m2)
(6)消石灰:宇部マテリアルズ製「高純度消石灰CH」
(7)水性エマルジョンA:
アクリル酸共重合体ラテックス:旭化成工業株式会社製「ポリトロン」
(コモノマー含量25重量%、固形分40重量%)
(8)保護シートA:
不織布:ユニセル株式会社製「BT−1306WM」(品番)
(9)グリセリン:和光純薬製
(10)樹脂溶液A:
アクリル樹脂(東亜合成製、グレード:UC−3000、平均分子量:1万)を濃度が3重量%になるようにエタノールに溶解した。
(11)樹脂溶液B:
ウレタン樹脂(荒川化学工業製、グレード:ユリアーノW321)を濃度が3.5重量%になるようにIPAで希釈した。
ウレタン樹脂(荒川化学工業製、グレード:ユリアーノW321)を濃度が3.5重量%になるようにIPAで希釈した。
<実施例1、2>
(積層シートの製造)
消石灰100重量部、水性エマルジョンA50重量部、水30重量部、グリセリン5重量部を混練し、消石灰スラリーを得た。次に、基材シートA(500×600mm)を使用し、その表面に得られた消石灰スラリーをロールコーターで塗布し、直後に保護シートAをスラリー表面に密着させ、60℃の乾燥機中で20分間乾燥させた。このようにして製造された積層シートにおいて、製造直後の耐摩擦度を測定した結果、3級であった。また、炭酸化率は51重量%であった。
(積層シートの製造)
消石灰100重量部、水性エマルジョンA50重量部、水30重量部、グリセリン5重量部を混練し、消石灰スラリーを得た。次に、基材シートA(500×600mm)を使用し、その表面に得られた消石灰スラリーをロールコーターで塗布し、直後に保護シートAをスラリー表面に密着させ、60℃の乾燥機中で20分間乾燥させた。このようにして製造された積層シートにおいて、製造直後の耐摩擦度を測定した結果、3級であった。また、炭酸化率は51重量%であった。
(樹脂層の形成)
また、積層シートの製造において得られた積層シートの漆喰層表面に200mm×100mmの大きさで水性顔料インクを用いたインクジェットで印刷し、26℃の室内にて30分間放置し乾燥させた。この時の光沢差の評価は×であった。
その後、アクリル樹脂溶液Aを電動スプレー(精和産業製、パワースプレーP−45)に入れて、表1に示す塗工量(1.8および5.5g/m2)となるように積層シートの漆喰層表面の全面に吹き付け、40℃の乾燥器中で1時間乾燥させ、樹脂層を形成させた複層シートを得た。
また、積層シートの製造において得られた積層シートの漆喰層表面に200mm×100mmの大きさで水性顔料インクを用いたインクジェットで印刷し、26℃の室内にて30分間放置し乾燥させた。この時の光沢差の評価は×であった。
その後、アクリル樹脂溶液Aを電動スプレー(精和産業製、パワースプレーP−45)に入れて、表1に示す塗工量(1.8および5.5g/m2)となるように積層シートの漆喰層表面の全面に吹き付け、40℃の乾燥器中で1時間乾燥させ、樹脂層を形成させた複層シートを得た。
(光沢差、耐侯性、表面硬度、炭酸化率)
つづいて、得られた樹脂層を形成させた複層シートにおいて、無印刷部と顔料インク印刷部の光沢差の評価、表面硬度の測定および炭酸化率の測定結果を表2に示す。さらに、40日間放置した後の樹脂層を形成させた複層シートの表面硬度の測定、炭酸化率の測定および耐光性試験の結果を表2に示す。
つづいて、得られた樹脂層を形成させた複層シートにおいて、無印刷部と顔料インク印刷部の光沢差の評価、表面硬度の測定および炭酸化率の測定結果を表2に示す。さらに、40日間放置した後の樹脂層を形成させた複層シートの表面硬度の測定、炭酸化率の測定および耐光性試験の結果を表2に示す。
<実施例3、4>
実施例1および実施例2の積層シートの製造において得られた積層シートの漆喰層表面に200mm×100mmの大きさで水性顔料インクを用いたインクジェットで印刷し、26℃の室内にて30分間放置し乾燥させた。この時の光沢差の評価は×であった。
実施例1および実施例2の積層シートの製造において得られた積層シートの漆喰層表面に200mm×100mmの大きさで水性顔料インクを用いたインクジェットで印刷し、26℃の室内にて30分間放置し乾燥させた。この時の光沢差の評価は×であった。
その後、実施例1および実施例2で用いた樹脂溶液Aを樹脂溶液Bに変えた以外は同様な操作を行い、樹脂層を形成し(樹脂塗工量:2.0および7.4g/m2)、同様に光沢差、耐侯性、表面硬度、炭酸化率について測定を行った。その結果を表1および表2に示す。
<比較例1>
(積層シートの製造)
炭酸カルシウム100重量部、水性エマルジョンA50重量部、水20重量部、グリセリン5重量部を混練し、炭酸カルシウムスラリーを得た。次に、基材シートA(500×600mm)を使用し、その表面に得られた炭酸カルシウムスラリーをロールコーターで塗布し、直後に保護シートAをスラリー表面に密着させ、60℃の乾燥機中で20分間乾燥させ、炭酸カルシウムを印刷層とする積層シートを得た。
(積層シートの製造)
炭酸カルシウム100重量部、水性エマルジョンA50重量部、水20重量部、グリセリン5重量部を混練し、炭酸カルシウムスラリーを得た。次に、基材シートA(500×600mm)を使用し、その表面に得られた炭酸カルシウムスラリーをロールコーターで塗布し、直後に保護シートAをスラリー表面に密着させ、60℃の乾燥機中で20分間乾燥させ、炭酸カルシウムを印刷層とする積層シートを得た。
(光沢差、表面硬度、耐候性試験の評価)
さらに、積層シートの製造により得られた炭酸カルシウムを印刷層とする積層シートの炭酸カルシウム層の表面に200mm×100mmの大きさで水性顔料インクを用いたインクジェットで印刷し、25℃の室内にて30分間放置し乾燥させた。このようにして得られた炭酸カルシウムを印刷層とする複層シートにおいて、無印刷部と顔料インク印刷部の光沢差の評価を行った。その結果を表1に示す。
さらに、積層シートの製造により得られた炭酸カルシウムを印刷層とする積層シートの炭酸カルシウム層の表面に200mm×100mmの大きさで水性顔料インクを用いたインクジェットで印刷し、25℃の室内にて30分間放置し乾燥させた。このようにして得られた炭酸カルシウムを印刷層とする複層シートにおいて、無印刷部と顔料インク印刷部の光沢差の評価を行った。その結果を表1に示す。
また、得られた炭酸カルシウムを印刷層とする複層シートについての表面硬度を測定した。さらに、40日間放置した後の炭酸カルシウムを印刷層とする複層シートの表面硬度の測定と耐光性試験を行った。それらの結果を表2に示す。
(比較例2、3)
比較例1で得られた炭酸カルシウムを印刷層とする積層シートの印刷面の全面に、樹脂溶液A(比較例2)、または樹脂溶液B(比較例3)を電動スプレー(精和産業製、パワースプレーP−45)に入れて、表1に示す塗工量となるように吹き付け、40℃の乾燥器中で1時間乾燥させ、樹脂層を形成させた炭酸カルシウムを印刷層とする複層シートを得た。
比較例1で得られた炭酸カルシウムを印刷層とする積層シートの印刷面の全面に、樹脂溶液A(比較例2)、または樹脂溶液B(比較例3)を電動スプレー(精和産業製、パワースプレーP−45)に入れて、表1に示す塗工量となるように吹き付け、40℃の乾燥器中で1時間乾燥させ、樹脂層を形成させた炭酸カルシウムを印刷層とする複層シートを得た。
(光沢差、耐侯性、表面硬度)
このようにして得られた樹脂層を形成させた炭酸カルシウムを印刷層とする複層シートにおいて、無印刷部と顔料インク印刷部の光沢差の評価を行った。その結果を表1に示す。
このようにして得られた樹脂層を形成させた炭酸カルシウムを印刷層とする複層シートにおいて、無印刷部と顔料インク印刷部の光沢差の評価を行った。その結果を表1に示す。
また、得られた複層シートについての表面硬度を表2に示す。さらに、40日間放置した後の複層シートの表面硬度、および耐光性試験の結果を表2に示す。
1:基材シート
2:漆喰層
3:積層シート
4:保護シート
5:樹脂層
6:インク
2:漆喰層
3:積層シート
4:保護シート
5:樹脂層
6:インク
Claims (7)
- 基材シートと、該基材シートの上面に積層され且つ半固化状態の漆喰を含む漆喰層とを有する積層シートの漆喰層側に、着色材料を塗布して描画を行い、次いで漆喰層上に樹脂層を形成することを特徴とする描画された複層シートの製造方法。
- 前記樹脂層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂のうちいずれか1種類、または2種類以上の樹脂を組み合わせたものである請求項1記載の製造方法。
- 樹脂層の形成を前記樹脂の有機溶媒溶液の塗工によって行う請求項1記載の製造方法。
- 樹脂の塗工量が0.5〜10g/m2である請求項3記載の製造方法。
- 樹脂の有機溶媒溶液中の樹脂濃度が2〜30重量%である請求項3記載の製造方法。
- 樹脂の有機溶媒溶液の粘度が1〜10mP・sである請求項3記載の製造方法。
- 基材シートと、該基材シートの上の着色材料を含有する固化漆喰層と、固化漆喰層上の樹脂層とを有する複層シート。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013143353A JP2015016395A (ja) | 2013-07-09 | 2013-07-09 | 複層シートおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013143353A JP2015016395A (ja) | 2013-07-09 | 2013-07-09 | 複層シートおよびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015016395A true JP2015016395A (ja) | 2015-01-29 |
Family
ID=52437961
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2013143353A Pending JP2015016395A (ja) | 2013-07-09 | 2013-07-09 | 複層シートおよびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2015016395A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114441573A (zh) * | 2021-12-29 | 2022-05-06 | 广西科技大学 | 一种便于观测石墨烯调控水泥水化晶体形貌的新型扫描电镜试样制备方法 |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005349805A (ja) * | 2004-06-14 | 2005-12-22 | Toshimitsu Ishimaru | 素材に凸凹を付け印刷する方法 |
WO2008013294A1 (fr) * | 2006-07-24 | 2008-01-31 | Tokuyama Corporation | Feuille d'impression |
JP2008037033A (ja) * | 2006-08-09 | 2008-02-21 | Tokuyama Corp | 意匠構造体 |
-
2013
- 2013-07-09 JP JP2013143353A patent/JP2015016395A/ja active Pending
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005349805A (ja) * | 2004-06-14 | 2005-12-22 | Toshimitsu Ishimaru | 素材に凸凹を付け印刷する方法 |
WO2008013294A1 (fr) * | 2006-07-24 | 2008-01-31 | Tokuyama Corporation | Feuille d'impression |
JP2008037033A (ja) * | 2006-08-09 | 2008-02-21 | Tokuyama Corp | 意匠構造体 |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114441573A (zh) * | 2021-12-29 | 2022-05-06 | 广西科技大学 | 一种便于观测石墨烯调控水泥水化晶体形貌的新型扫描电镜试样制备方法 |
CN114441573B (zh) * | 2021-12-29 | 2023-07-28 | 广西科技大学 | 一种便于观测石墨烯调控水泥水化晶体形貌的新型扫描电镜试样制备方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5039701B2 (ja) | 印刷用シート | |
EP1805036B1 (en) | Ink-jet media having an ink-vehicle permeable coating and a microporous coating | |
JP6475325B2 (ja) | 加飾物品及び表面処理物品 | |
JP5886846B2 (ja) | 印刷用シート及び該印刷用シートに印刷面を形成するために用いる型材シート | |
JP2015016395A (ja) | 複層シートおよびその製造方法 | |
JP7094743B2 (ja) | インクジェット用記録媒体、及び、画像記録方法 | |
WO2014203508A1 (ja) | 積層シート | |
JP2009166476A (ja) | 記録紙 | |
JP5501123B2 (ja) | 印刷セット及び印刷画像保護方法 | |
JP7301733B2 (ja) | 印刷用シート | |
WO2013187256A1 (ja) | インクジェット印刷用シート | |
JP2012076314A (ja) | インク受容層形成用塗布液およびインク受容層付記録用シート | |
JP2004175052A (ja) | インクジェット被記録媒体、インクジェット画像形成方法及び印画物 | |
JP2010284881A (ja) | インク受容層付記録用シートおよびインク受容層形成用塗布液 | |
JP2014237283A (ja) | 積層シートへの描画方法 | |
JP2015167902A (ja) | 無機固化層上に顔料が固定された意匠シートの製造方法 | |
JP3722471B2 (ja) | 水性インクジェット印刷用シートとその製造方法 | |
EP4178803A1 (en) | Outdoor-durable inkjet-receptive topcoat formula and article | |
CA3205034A1 (en) | Flexographically-printable, full-color-inkjet-receptive topcoat formula and article | |
JP2019111651A (ja) | 記録媒体、記録物、および記録物の製造方法 | |
JP2004130663A (ja) | インクジェット記録用シート | |
JP2004345110A (ja) | インクジェット記録用シート | |
JP2003305947A (ja) | インクジェット記録用シート | |
JP2004216804A (ja) | インクジェット記録用シート | |
JP2004106381A (ja) | インクジェット記録用紙 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20160317 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20160921 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20160927 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20170321 |