JP3722471B2 - 水性インクジェット印刷用シートとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
インクジェット印刷は、文字や画像等の情報に対応して、プリンタのノズルからインクを紙やプラスチックフィルム等の印刷用シート上に噴射し、それに付着、定着させることによって、その文字や画像等の情報を印刷用シート上に印刷して、印刷像を形成するものである。以下、印刷用シート上にインクジェット印刷によって形成された文字や画像等を印刷像という。このようなインクジェット印刷によれば、低沸点有機溶剤型インクを用いるときは、インクが速やかに乾燥して、ノズルが詰まりやすいので、従来、溶剤が主として水からなる水性インクが多く用いられている。
【0002】
このような水性インクジェットインクは、着色剤として顔料、染料又はこれらの混合物を水に分散乃至溶解させたものであり、フルカラー印刷には、青色(シアン、C)、赤色(マゼンタ、M)、黄色(イエロー、Y)、黒色(ブラック、B)のインクをそれぞれ4つのノズルから噴射させ、それらの色の重なりによって、目的の色を得る。最近、ライトシアンとライトマゼンタの2色を追加した6ヘッドのプリンタも開発されている。
【0003】
従って、このようなインクジェットインクによる印刷用シートは、水性インクを吸収し、定着させる機能を有することが必要である。そこで、従来は、図2に示すように、基材1の合成樹脂フィルムの上にポリエーテルポリオールをポリオール成分とする吸水性ポリウレタン樹脂を主成分とするインク吸収層2を設けてなるものが広く用いられている。
【0004】
しかし、最近においては、インクジェット印刷の技術の動向として、印刷用シート上に印刷像を速やかに形成するために、プリンタを高速作動させると共に、印刷像の発色性(色濃度)を一層、鮮明にするために、インク噴射量を増加させる傾向にある。このような技術の動向のなかで、上述したような従来の印刷用シートによれば、水性インクの吸収性や乾燥性が不十分であって、インクが印刷用シート上で滲んで、印刷像を不鮮明とし、また、印刷像の色濃度も十分とはいえない。
【0005】
そこで、印刷用シートの水性インクの吸収性や乾燥性を改善することを目的として、インク吸収層に水溶性や水膨潤性の樹脂を加え、又はその割合を増やすときは、印刷用シートが耐水性に劣ることとなる。例えば、そのような印刷用シートにインクジェット印刷を施した後、水分に接触させると、インクが流れて、印刷像が滲んで不鮮明となる。このような印刷用シートは、耐水性に劣るので、これにインクジェット印刷を施して、例えば、屋外看板としての用途に供することができない。
【0006】
また、従来、印刷用シートにおいて、インク吸収層の樹脂成分、即ち、バインダーとしては、水性インクの吸収性を有するように、例えば、前述したような吸水性ポリウレタン樹脂が多く用いられている。このポリウレタン樹脂は、水性インク中の水分を吸収して膨潤するので、水性インクの吸収性にはすぐれているが、反面、光によって劣化しやすく、従って、耐候性に乏しい欠点がある。他方、ポリウレタン樹脂のなかでも、耐候性にすぐれるものとして、ポリカーボネートポリオールをポリオール成分とするポリウレタン樹脂が知られているが、吸水性がないので、従来、水性インクジェット印刷のための印刷用シートのインク吸収層の材料としては用いられていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の水性インクジェット印刷における上述したような問題を解決するためになされたものであって、水性インクの吸収性と乾燥性と印刷像の発色性にすぐれ、更に、耐水性と耐候性にすぐれるインク吸収層を備えるインクジェット印刷用シートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、基材の表面にインク吸収層中間層とインク吸収層表面層とをこの順序で有する水性インクジェット記録シートであって、上記インク吸収層中間層は、ポリエチレンオキシド鎖を含むポリエーテルポリオールをポリオール成分として含むポリウレタン樹脂100重量部と共に、炭酸カルシウムとシリカと架橋ポリアクリル酸塩から選ばれる少なくとも一種の吸水剤1〜300重量部とからなり、厚みが0.5〜50μmの範囲にあり、上記インク吸収層表面層は、ポリカーボネートポリオールをポリオール成分とし、脂肪族ポリイソシアネートをポリイソシアネート成分として得られる平均粒径3.0μm以下のポリウレタン樹脂粒子の水性エマルジョンからのポリウレタン樹脂100重量部と、アセトアセチル化ポリビニルアルコール10〜500重量部と、炭酸カルシウムとシリカとから選ばれる少なくとも1種の吸水剤5〜500重量部とからなり、厚みが5〜100μmの範囲にあることを特徴とする水性インクジェット記録シートが提供される。
【0009】
更に、本発明によれば、ポリエチレンオキシド鎖を含むポリエーテルポリオールをポリオール成分として含むポリウレタン樹脂100重量部と共に、炭酸カルシウムとシリカと架橋ポリアクリル酸塩から選ばれる少なくとも一種の吸水剤1〜300重量部とを含む溶剤型コーティング剤を基材の表面に塗布して、インク吸収層中間層を形成し、次いで、ポリカーボネートポリオールをポリオール成分とし、脂肪族ポリイソシアネートをポリイソシアネート成分として得られる平均粒径3.0μm以下のポリウレタン樹脂粒子の水性エマルジョンに、そのポリウレタン樹脂100重量部に対して、アセトアセチル化ポリビニルアルコール10〜500重量部と、炭酸カルシウムとシリカとから選ばれる少なくとも1種の吸水剤5〜500重量部とを含有させた水性コーティング剤を上記インク吸収層中間層の上に塗布して、インク吸収層表面層を形成することを特徴とする上記水性インクジェット印刷用シートの製造方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、インクの吸収性と乾燥性と印刷像の発色性をまとめて印刷性ということとする。
【0011】
本発明による水性インクジェット印刷用シート(以下、単に、印刷用シートということがある。)は、図1に示すように、基材1の表面にインク吸収層中間層3とインク吸収層表面層4とをこの順序で有する。
【0012】
本発明において、上記基材は、特に限定されるものではないが、例えば、本発明による記録シートを屋内、屋外の看板、垂れ幕、シャッター、車両内広告用粘着シート等として用いる場合を考慮すれば、合成樹脂フィルムであることが好ましく、例えば、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム、塩化ビニル樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、二軸延伸ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを例示することができる。しかし、必要に応じて、本発明によれば、基材として、紙、合成紙、樹脂板、金属板、セラミックス板、布帛等も用いられる。
【0013】
このような基材上のインク吸収層中間層と表面層の2つのインク吸収層のうち、中間層は、ポリエチレンオキシド鎖を含むポリエーテルポリオールをポリオール成分として含むポリウレタン樹脂100重量部と炭酸カルシウムとシリカと架橋アクリル酸塩から選ばれる少なくとも一種の吸水剤1〜300重量部とからなり、厚みが0.5〜50μmの範囲にある。
【0014】
このような中間層は、ポリエチレンオキシド鎖を含むポリエーテルポリオールをポリオール成分として含むポリウレタン樹脂100重量部を有機溶剤に溶解させてなる溶液に炭酸カルシウムとシリカと架橋アクリル酸塩から選ばれる少なくとも一種の吸水剤1〜300重量部を加え、攪拌、混合することによって、溶剤型コーティング剤とし、これを基材の表面に塗布し、乾燥させることによって、形成させることができる。
【0015】
ここに、上記ポリウレタン樹脂は、吸水性で水膨潤性を有するので、水性インクジェット印刷に際して、後述する表面層が吸収しきれなかった水性インク中の水性溶媒を吸収、膨潤し、かくして、インク吸収層表面層のインク吸収性を補って、得られる印刷用シートのインク吸収性を高める働きを有する。
【0016】
更に、本発明によれば、上記溶剤型コーティング剤は、一般に、合成樹脂フィルムに親和性を有するので、基材として、合成樹脂フィルムを用いるとき、これに容易に塗布することができ、しかも、このように、合成樹脂フィルムからなる基材上に形成された中間層は、後述する表面層を基材上に形成するのためのプライマー層としての機能をも有する。
【0017】
本発明によれば、炭酸カルシウム、シリカ又は架橋ポリアクリル酸塩は、中間層における吸水剤として用いられており、これらを上記ポリウレタン樹脂と組合わせることによって、中間層のインク吸収性と乾燥性を更に高め、特に、後述する表面層と共に、得られる印刷用シートのインク吸収性と乾燥性を更に高めるものである。
【0018】
これら吸収剤の割合が上記ポリウレタン樹脂100重量部に対して1重量部よりも少ないときは、中間層のインク吸収性と乾燥性を高める効果に乏しく、他方、300重量部よりも多いときは、中間層の被膜強度が低く、基材や表面層との接着強度が弱くなって、得られる印刷用シートにインク吸収層の割れや剥がれが生じやすくなるので、実用上、好ましくない。
【0019】
上記シリカは、特に限定されるものではないが、しかし、平均粒径が1〜15μm、特に、1〜10μmの範囲にあり、比表面積と細孔容積の大きいものが好ましく用いられる。このようなシリカは、水性インク中の水分をよく吸収するので、中間層のインクの吸水性と乾燥性を高めることができ、更に、そのようなシリカは、その細孔内に水性インク中の着色剤を捕捉するので、鮮明な印刷像を形成するのに寄与する。
【0020】
炭酸カルシウムも、特に限定されるものではないが、しかし、平均粒径が0.1〜5μmの範囲にあるものが好ましく用いられる。
【0021】
架橋ポリアクリル酸塩は、既に、吸水剤としてよく知られており、部分的に架橋構造を有するポリアクリル酸塩であり、吸水性と膨潤性を有する。通常、10〜50μm程度の粒径をもつものが好ましく用いられる。
【0022】
本発明において、インク吸収層中間層は、0.5〜50μmの厚みを有することが好ましい。厚みが0.5μmよりも小さいときは、基材や表面層との接着強度が十分でない。他方、50μmを越える厚みとすることは、性能の点からは問題はないが、不必要に製造費用を高めることとなる。
【0023】
次に、本発明によるインク吸収層表面層は、ポリカーボネートポリオールをポリオール成分とし、脂肪族ポリイソシアネートをポリイソシアネート成分として得られる平均粒径3.0μm以下のポリウレタン樹脂粒子の水性エマルジョンからのポリウレタン樹脂100重量部と、アセトアセチル化ポリビニルアルコール10〜500重量部と、炭酸カルシウムとシリカとから選ばれる少なくとも1種の吸水剤5〜500重量部とからなり、厚みが5〜100μmの範囲にある。
【0024】
このような表面層は、ポリカーボネートポリオールをポリオール成分とし、脂肪族ポリイソシアネートをポリイソシアネート成分として得られる平均粒径3.0μm以下のポリウレタン樹脂粒子の水性エマルジョンに、そのポリウレタン樹脂100重量部に対して、アセトアセチル化ポリビニルアルコール10〜500重量部と炭酸カルシウムとシリカとから選ばれる少なくとも1種の吸水剤5〜500重量部とを加え、攪拌、混合して、水性コーティング剤とし、これを上述した中間層の上に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。
【0025】
このような水性コーティング剤は、基材が合成樹脂フィルムからなるときは、その表面に直接に塗布しても、弾かれるので、均一に塗布することができず、従って、均一な膜厚のインク吸収層を形成することができない。しかし、本発明によれば、上述したように、基材上に吸水性、膨潤性ポリウレタン樹脂からなる中間層を形成しているので、上記水性コーティング剤は、そのような中間層に親和性を有しており、かくして、中間層の表面に容易に均一に塗布することができ、均一な膜厚の表面層を形成することができる。
【0026】
しかし、中間層上に水性コーティング剤を塗布し、乾燥して、エマルジョンを造膜させた後は、形成されるポリウレタン樹脂は、吸水性でも膨潤性でもないので、例えば、得られる印刷用シートは、これを水に浸漬しても、インク吸収層表面層が水に溶解し、又は膨潤することがなく、耐水性にすぐれている。
【0027】
更に、上述したように、樹脂粒子が平均粒径3.0μm以下である水性エマルジョンを用い、これを造膜して表面層を形成するので、このような表面層は、エマルジョン樹脂粒子の粒子性を継承した多数の微細な細孔を有する多孔質構造を有する。従って、本発明によれば、表面層は、このような多孔質構造中に水性インクの溶媒を捕捉することができるので、インク吸収性と乾燥性にすぐれる。しかし、樹脂粒子の平均粒径が3.0μmを越えるときは、エマルジョン自体が安定性において十分でないうえに、形成される表面層において、多孔質構造の空隙率が高すぎて、被膜強度が小さく、また、耐水性も悪い。
【0028】
アセトアセチル化ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールにジケテンを反応させて得られる一種のアセタール化ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコール自体は、水溶性であるので、これを表面層中に配合すれば、水性インクの吸水性には寄与するが、しかし、得られる印刷用シートを水に浸漬すれば、表面層からポリビニルアルコールが抽出されて、表面層を粗面とし、印刷像を破壊する。
【0029】
そこで、本発明によれば、ポリビニルアルコールのインク吸収性を保持しつつ、水不溶性とするために、アセトアセチル化したものである。即ち、アセトアセチル化ポリビニルアルコールは、吸水性、膨潤性を有するが、水不溶性であるので、表面層にインク吸収性と乾燥性を付与し、表面層の平面方向へのインクの広がり、即ち、滲みを防止して、鮮明な印刷像を形成する。
【0030】
本発明によれば、このようなアセトアセチル化ポリビニルアルコールは、表面層において、上記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、10〜500重量部の割合で用いられる。表面層において、上記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、アセトアセチル化ポリビニルアルコールの割合が10重量部よりも少ないときは、形成される表面層が十分なインク吸収性と乾燥性もたず、印刷像に滲みを生じる。特に、インク噴射量を300%や400%とした場合、表面層においてインクが水平方向に浸透して、滲みを生じる。しかし、上記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、アセトアセチル化ポリビニルアルコールの割合が500重量部よりも多いときは、このアセトアセチル化ポリビニルアルコールに基づく表面層の吸水性と膨潤性が過度となり、例えば、得られる印刷用シートを水に浸漬したとき、被膜強度が低下し、場合によっては、表面層の破壊に至り、結果として、印刷像が破壊される。
【0031】
更に、本発明によれば、表面層にも、炭酸カルシウムとシリカから選ばれる少なくとも一種の吸水剤を分散させて、上記アセトアセチル化ポリビニルアルコールと組合わせて、表面層のインク吸収性と乾燥性を一層高めている。吸水剤としての炭酸カルシウムとシリカについては、上述したとおりである。
【0032】
このような吸水剤は、上記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、5〜500重量部の範囲で用いられる。吸水剤の割合が上記ポリウレタン樹脂100重量部に対して5重量部よりも少ないときは、表面層のインク吸収性と乾燥性の向上の効果に乏しく、他方、500重量部を越えるときは、ポリウレタン樹脂のバインダー機能を損ない、被膜強度が小さくなり、得られる印刷用シートの表面層に割れや剥がれが生じるので好ましくない。
【0033】
本発明において、インク吸収層表面層は、5〜100μmの厚みを有することが好ましい。厚みが5μmよりも小さいときは、水性インク中の水性溶媒の吸収性に劣り、印刷像が平面方向に滲みやすい。しかし、厚みが100μmを越えるときは、インクの着色剤が表面層内に深く浸透しすぎて、印刷像の色濃度が小さく、不鮮明となる。
【0034】
このように、本発明による印刷用シートは、基材の表面にインク吸収層中間層と表面層とをこの順序にて積層してなるものであるが、例えば、図1に示すように、必要に応じて、基材1の裏面に粘着剤層5と離型フィルム6をこの順序にて有していてもよい。上記粘着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0035】
例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムにシリコーン処理を施し、この処理面に粘着剤を塗布し、乾燥させた後、基材フィルムに上記粘着剤層を介してポリエチレンテレフタレートフィルムを接着することによって、裏面に上記粘着剤層と離型フィルムをこの順序にて有する基材フィルムを得る。次いで、このような基材フィルムの表面に上述したようにして、インク吸収層中間層と表面層を積層すれば、基材フィルムの表面にインク吸収層を有し、裏面に粘着剤層と離型フィルム層を有する印刷用シートを得ることができる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
参考例1
(粘着剤層を備えた基材フィルムの製造)
平均重合度800のポリ塩化ビニル100重量部に可塑剤DOP(ジオクチルフタレート)25重量部と共に安定剤と酸化チタン顔料の適量を加え、溶融混練した後、カレンダー加工によって、基材フィルムとしての厚み80μmの塩化ビニル樹脂フィルムを得た。
【0038】
別に、片面にシリコーン処理した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを離型フィルムとし、このシリコーン処理表面にアクリル系粘着剤を乾燥厚み30μmとなるように塗工し、乾燥させた。これを上記塩化ビニル樹脂フィルムの貼り合わせて、裏面に粘着剤層と離型フィルムとを有する基材フィルムを得た。
【0039】
実施例1
吸水性ポリウレタン樹脂(三洋化成工業(株)製サンプレンHMP−17A、ポリエチレンオキシド鎖を含むポリエーテルポリオールをポリオール成分として含むポリウレタン樹脂。溶液として市販されている。)100重量部に吸水剤としてシリカ(塩野義製薬(株)製カープレックスBS312AM、平均粒径7.2μm)1重量部と溶媒としてジメチルホルムアミド100重量部を加え、攪拌、混合して、中間層用の溶剤型コーティング剤を調製した。このコーティング剤を参考例1で調製した基材フィルムの表面に塗布し、乾燥させて、厚み10μmのインク吸収層中間層を形成した。
【0040】
次に、ポリウレタン樹脂水性エマルジョン(大日本インキ化学工業(株)製ボンディック2250、ポリカーボネートポリオールをポリオール成分とし、脂肪族ポリイソシアネートをポリイソシアネート成分として得られるポリウレタン樹脂の水性エマルジョン、樹脂粒子平均粒径0.2μm)を樹脂分が100重量部になるように秤量し、これにアセトアセチル化ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製Z−200)を固形分で100重量部を加え、攪拌、混合し、更に、これに炭酸カルシウム5重量部を加え、攪拌、混合して、インク吸収層表面層用の水性コーティング剤を調製した。
【0041】
このインク吸収層表面層用コーティング剤を上記インク吸収層中間層の上に塗布し、乾燥させて、厚み30μmのインク吸収層表面層を形成して、本発明による印刷用シートとした。
【0042】
この印刷用シートについて、印刷性(インク吸収性、乾燥性及び印刷像の発色性)、耐水性及び耐候性を下記のようにして評価し、更に、インク吸収層表面層と中間層と基材フィルムの間の接着強度を下記のようにして測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0043】
印刷性
水性顔料インクを用いるフルカラーインクジェットプリンタJV−2((株)ミユキエンジニアリング製)にて上記印刷用シートのインク吸収層表面層にインク噴射量C100%、M100%、Y100%、K100%、CM200%、CY200%、MY200%、CMY300%、CMYK400%で20mm×20mmの四角形を所謂べた塗りにて印刷して、印刷用シートのインクの吸収性と乾燥性と印刷像の発色性を目視とノギスを用いる計測によって行った。上記において、例えば、インク噴射量C100%とは、青色(シアン、C)インク用のインクヘッドから噴射することができる最大のインク量を噴射して印刷を行ったという意味である。また、例えば、CMYK400%とは、青色(シアン、C)インク用のインクヘッドから噴射することができる最大のインク量を噴射し、以下、同様にして、順次に、赤色(マゼンタ、M)、黄色(イエロー、Y)、黒色(ブラック、K)用のインクヘッドから噴射することができる最大のインク量を噴射して、印刷を行ったという意味である。
【0044】
インク吸収性については、印刷した四角形の縦横の寸法が21×21mm以内のときを○、印刷した四角形の少なくとも一辺の長さが21mmを越えるときを×とした。
【0045】
インク乾燥性については、上記CMYK400%噴射による印刷像の乾燥時間が10分以内であるときを○、10分を越えるときを×とした。
【0046】
印刷像の発色性については、印刷像が鮮明でインク濃度が高いときを○、印刷像に濃度むらがあり、又は不鮮明であるときを×とした。
【0047】
耐水性
上記印刷性の評価のために印刷用シートに印刷を施したものを40℃の温水に7日間浸漬した後、取り出し、自然乾燥させて、外観の変化がないかどうかを目視にて調べた。外観の変化がないときを○、印刷像においてインクの流れがあり、又はインク吸収層に変化がみられる場合を×とした。
【0048】
耐候性
上記印刷性の評価のために印刷用シートに印刷を施したものをサンシャインウエザオメーター(ブラックパネル温度63℃)で200時間の試験後、外観変化の有無を目視にて調べた。外観の変化がないときを○、印刷像においてインクの流れや褪色があり、又はインク吸収層に変化がみられる場合を×とした。
【0049】
インク吸収層表面層とインク中間層と基材フィルムとの間の接着性
インク吸収層表面層に10mm幅のセロハンテープを貼り、その上で荷重3kgのローラを10往復させた後、温度23℃において、引張試験機にてセロハンテープを300mm/分で180°剥離して、セロハンテープとフィルムとの間の接着力を測定した。接着力が150g/10mm幅以上のときを○(接着性がよい)、150g/10mm幅未満のときを×(接着性が悪い)とした。
【0050】
実施例2
表1に示すように、実施例1と同様にして、インク吸収層中間層の形成において、吸水剤として炭酸カルシウム(白石中央研究所(株)製カルライトKT、平均粒径2.3μm)300重量部を用いて、厚み50μmの中間層を形成した。
【0051】
次に、実施例1と同様にして、インク吸収層表面層の形成において、ポリウレタン樹脂水性エマルジョン(樹脂粒子平均粒径15μm)の樹脂分100重量部に対して、アセトアセチル化ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製Z−200)を固形分で10重量部とシリカ(前記と同じ。)200重量部を用いて、厚み50μmの表面層を形成して、本発明による印刷用シートを得た。
【0052】
この印刷用シートについて、実施例1と同様にして、印刷性、耐水性及び耐候性を評価し、更に、インク吸収層表面層と中間層と基材フィルムの間の接着強度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0053】
実施例3
表1に示すように、実施例1と同様にして、インク吸収層中間層の形成において、吸水剤として架橋ポリアクリル酸塩(三洋化成工業(株)製サンフレッシュST−100SP、平均粒径10μm)100重量部を用いて、厚み1μmの中間層を形成した。
【0054】
次に、実施例1と同様にして、インク吸収層表面層の形成において、ポリウレタン樹脂水性エマルジョン(前記ボンディック2250)の樹脂分100重量部に対して、アセトアセチル化ポリビニルアルコール(前記Z−200)を固形分で500重量部と炭酸カルシウム(前記カルライトKT)250重量部とシリカ(前記カープレックスBS312AM)250重量部を用いて、厚み20μmの表面層を形成して、本発明による印刷用シートを得た。
【0055】
この印刷用シートについて、実施例1と同様にして、印刷性、耐水性及び耐候性を評価し、更に、インク吸収層表面層と中間層と基材フィルムの間の接着強度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0056】
実施例4
表1に示すように、実施例1と同様にして、インク吸収層中間層の形成において、吸水剤として、シリカ(前記カープレックスBS312AM)100重量部と炭酸カルシウム(前記カルライトKT)100重量部と架橋ポリアクリル酸塩(前記サンフレッシュST−100SP)100重量部を用いて、厚み10μmの中間層を形成した。
【0057】
次に、実施例1と同様にして、インク吸収層表面層の形成において、ポリウレタン樹脂水性エマルジョン(前記ボンディック2250)の樹脂分100重量部に対して、アセトアセチル化ポリビニルアルコール(前記Z−200)を固形分で200重量部と炭酸カルシウム(前記カルライトKT)150重量部とシリカ(前記カープレックスBS312AM)150重量部を用いて、厚み5μmの表面層を形成して、本発明による印刷用シートを得た。
【0058】
この印刷用シートについて、実施例1と同様にして、印刷性、耐水性及び耐候性を評価し、更に、インク吸収層表面層と中間層と基材フィルムの間の接着強度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0059】
比較例1
表1に示すように、実施例1と同様にして、インク吸収層中間層の形成において、吸水剤として、シリカ(前記カープレックスBS312AM)20重量部を用いて、厚み10μmの中間層を形成した。表面層をこの上に形成することなく、これを印刷用シートとした。
【0060】
この印刷用シートについて、実施例1と同様にして、印刷性、耐水性及び耐候性を評価し、更に、インク吸収層表面層と中間層と基材フィルムの間の接着強度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0061】
比較例2
基材フィルムの表面にインク吸収層中間層を形成することなく、基材フィルムの表面に、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂水性エマルジョン(前記ボンディック2250)の樹脂分100重量部に対して、アセトアセチル化ポリビニルアルコール(前記Z−200)を固形分で100重量部と炭酸カルシウム(前記カルライトKT)5重量部を用いて、厚み30μmのインク吸収層を形成して、印刷用シートとした。
【0062】
この印刷用シートについて、実施例1と同様にして、印刷性、耐水性及び耐候性を評価し、更に、インク吸収層表面層と中間層と基材フィルムの間の接着強度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0063】
比較例3〜10
実施例1と同様にして、表1又は表2に示す組成を有するコーティング剤を調製して、インク吸収層中間層を形成し、次いで、表1又は表2に示す組成を有するコーティング剤を調製して、インク吸収層表面層を形成し、かくして、印刷用シートを得た。
【0064】
これらの印刷用シートについて、実施例1と同様にして、印刷性、耐水性及び耐候性を評価し、更に、インク吸収層表面層と中間層と基材フィルムの間の接着強度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1及び表2に示すように、本発明の印刷用シートによれば、印刷性、耐水性、耐候性にすぐれ、更に、インク吸収層中間層とインク吸収層表面層との間やインク吸収層中間層と基材フィルムとの間の接着性もすぐれる。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、好ましくは、合成樹脂フィルムからなる基材の表面にインク吸収層中間層とインク吸収層表面層とをこの順序で設けてなるものであるので、水性インクの吸収性と乾燥性と印刷像の発色性にすぐれ、更に、耐水性と耐候性にすぐれている。従って、本発明による印刷用シートは、例えば、屋外、屋内の看板、垂れ幕、シャッター、車両広告等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明によるインクジェット印刷用シートを示す要部断面図である。
【図2】は、従来のインクジェット印刷用シートを示す要部断面図である。
【符号の説明】
1…基材
2…インク吸収層
3…インク吸収層中間層
4…インク吸収層表面層
5…粘着剤層
6…離型フィルム
Claims (5)
- 基材の表面にインク吸収層中間層とインク吸収層表面層とをこの順序で有する水性インクジェット印刷用シートであって、上記インク吸収層中間層は、ポリエチレンオキシド鎖を含むポリエーテルポリオールをポリオール成分として含むポリウレタン樹脂100重量部と共に、炭酸カルシウムとシリカと架橋ポリアクリル酸塩から選ばれる少なくとも一種の吸水剤1〜300重量部とからなり、厚みが0.5〜50μmの範囲にあり、上記インク吸収層表面層は、ポリカーボネートポリオールをポリオール成分とし、脂肪族ポリイソシアネートをポリイソシアネート成分として得られる平均粒径3.0μm以下のポリウレタン樹脂粒子の水性エマルジョンからのポリウレタン樹脂100重量部と、アセトアセチル化ポリビニルアルコール10〜500重量部と、炭酸カルシウムとシリカとから選ばれる少なくとも1種の吸水剤5〜500重量部とからなり、厚みが5〜100μmの範囲にあることを特徴とする水性インクジェット印刷用シート。
- 基材が合成樹脂フィルムである請求項1に記載の水性インクジェット印刷用シート。
- 基材の裏面に粘着剤層と離型フィルムをこの順序で有する請求項2に記載の水性インクジェット印刷用シート。
- ポリエチレンオキシド鎖を含むポリエーテルポリオールをポリオール成分として含むポリウレタン樹脂100重量部と共に、炭酸カルシウムとシリカと架橋ポリアクリル酸塩から選ばれる少なくとも一種の吸水剤1〜300重量部とを含む溶剤型コーティング剤を基材の表面に塗布して、インク吸収層中間層を形成し、次いで、ポリカーボネートポリオールをポリオール成分とし、脂肪族ポリイソシアネートをポリイソシアネート成分として得られる平均粒径3.0μm以下のポリウレタン樹脂粒子の水性エマルジョンに、そのポリウレタン樹脂100重量部に対して、アセトアセチル化ポリビニルアルコール10〜500重量部と、炭酸カルシウムとシリカとから選ばれる少なくとも1種の吸水剤5〜500重量部とを含有させた水性コーティング剤を上記インク吸収層中間層の上に塗布して、インク吸収層表面層を形成することを特徴とする請求項1に記載の水性インクジェット印刷用シートの製造方法。
- 基材が合成樹脂フィルムである請求項4に記載の水性インクジェット印刷用シートの製造方法。
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