JP2019111651A - 記録媒体、記録物、および記録物の製造方法 - Google Patents

記録媒体、記録物、および記録物の製造方法 Download PDF

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裕輔 澄川
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Abstract

【課題】インク受容層に含まれる発光粒子の加水分解を抑制し、発光特性を向上させることが可能な記録媒体を提供すること。【解決手段】基材上に、顔料と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層が形成された記録媒体であって、前記インク受容層は、前記溶媒および前記顔料の浸透を可能とする顔料浸透層と、前記顔料を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層と、を有し、前記基材側から、前記溶媒吸収層、前記顔料浸透層の順に積層されており、前記顔料浸透層に発光粒子を含む、ことを特徴とする記録媒体。【選択図】図1

Description

本発明は、顔料インクで画像形成する場合に好適な記録媒体、記録媒体を用いた記録物、記録物の製造方法に関する。
記録物の意匠性の向上を目的として発光体が利用されている。発光体を記録物に含有させて特定の条件下で発光を視認することにより、瞬時に記録物の真贋の判別が可能であることから偽造防止に有効である。
例えば、特許文献1では、基材と、この基材に対して剥離可能であり、かつホットメルト接着性粒子及び蓄光顔料を含む転写層とで構成された転写シートが開示されている。さらに、特許文献1では、転写シートの転写層にインクジェット記録方式で画像を記録し、その転写層を、被転写体と接触させて加熱した後、基材から剥離して、被転写体に記録画像を転写する方法も開示されている。
特開2003−312196号公報 特許第5944947号公報
しかしながら、蓄光顔料は、水に触れると加水分解し、発光強度や発光持続時間といった発光特性が低下する性質を有する。したがって、特許文献1に記載された転写層に水性インクで記録した場合に、蓄光顔料は転写層に残留するインク溶媒(主に水)に長時間曝され、発光特性が著しく低下する場合があった。
また、蓄光顔料は平均粒子径が比較的大きいことから(ミクロンサイズ)、これを含有する転写層は必然的に平滑性が下がり、被転写体への接触面積が低下して接着性が低下する場合があった。さらに、転写層上に接着層を設けると、転写層のインク吸収性が低下するばかりか、インクが記録媒体の表面に残留して被転写体への接着を阻害し、接着性も改善されないという問題もあった。
本発明では、上記課題を解決するために、基材上に、顔料と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層が形成された記録媒体において、前記インク受容層が、前記溶媒および前記顔料の浸透を可能とする顔料浸透層と、前記顔料を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層と、を有し、前記基材側から、前記溶媒吸収層、前記顔料浸透層の順に積層されており、かつ、前記顔料浸透層が蓄光顔料を含有するように構成した。
このような記録媒体とすることで、インク受容層に付与された水性顔料インクが、顔料浸透層と溶媒吸収層の界面で固液分離され、顔料は顔料浸透層の底部に堆積し、水を含む溶媒成分は溶媒吸収層に吸収される。よって、顔料浸透層には水分を含有した溶媒成分がほとんど残留しないため、蓄光顔料が加水分解されにくく、良好な発光特性が得られる。
さらに、本発明の他の実施形態において、前記顔料浸透層上に、顔料浸透層の表面に露出部を残すように熱可塑性樹脂を離散的に配置させた接着層を設けた記録媒体を提供する。
このような記録媒体とすることで、付与されたインクは、接着層をバイパス的に通過し、瞬時に顔料浸透層の露出部に接して、顔料浸透層に引きずり込まれるように吸収されるため、記録媒体の表面にインクが残留することが無く、インクジェット印刷により記録した場合でも被接着体との接着性が良好となる。
また、本発明の他の実施形態は、剥離層を有する基材上に、顔料と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層が形成された記録媒体において、前記インク受容層が、前記溶媒および前記顔料の浸透を可能とする顔料浸透層と、前記顔料を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層と、前記顔料浸透層上に、顔料浸透層の表面に露出部を残すように熱可塑性樹脂を離散的に配置させた接着層と、を有し、前記基材側から、前記溶媒吸収層、前記顔料浸透層、前記接着層の順に積層されており、かつ、前記顔料浸透層が蓄光顔料を含有するように構成した転写用記録媒体を提供する。
本発明によれば、発光特性に優れた記録媒体を提供することができる。また、優れた発行特性を有しながら、画像支持体への転写性が良好な転写用記録媒体を提供することができる。
(a)本発明の第一の実施形態の記録媒体の断面図である。(b)本発明の第二の実施形態の記録媒体の断面図である。(c)本発明の第三の実施形態の記録媒体の断面図である。 (a−1)本発明の記録媒体の記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。(a−2)本発明の記録媒体の記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。(b−1)従来の記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。(b−2)従来の記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。 (a−1)本発明の記録媒体の記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。(a−2)本発明の記録媒体の記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。(a−3)本発明の記録媒体の記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。(b−1)従来の記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。(b−2)従来の記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。(b−3)従来の記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。 本発明の顔料浸透層上に熱可塑性樹脂を離散的に設けた記録媒体におけるインクの吸収メカニズムの説明図である。 本発明の記録物の製造方法の説明図である。 本発明の記録物の製造方法の説明図である。 本発明の記録物の製造方法の説明図である。 本発明の記録物の製造装置の説明図である。 本発明の記録物の製造装置の説明図である。 (a)本発明の第一の実施形態の記録媒体の断面図である。(b)本発明の第二の実施形態の記録媒体の断面図である。(c)本発明の第三の実施形態の記録媒体の断面図である。(d)本発明の第三の実施形態の記録媒体の断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されず、その発明特定事項を有する全ての対象を含むものである。
A.第一の実施形態
[1]記録媒体
本発明の記録媒体の第一の実施形態について、図を用いて説明する。本発明の第一の実施形態においては、図1(a)に示すように、基材50上に、顔料と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層53が形成された記録媒体を提供する。詳細には、前記インク受容層53は、前記溶媒および前記顔料の浸透を可能とする顔料浸透層1600と、前記顔料を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層1601と、を有し、前記基材側から、前記溶媒吸収層1601、前記顔料浸透層1600の順に積層されている。さらに、前記顔料浸透層1600は、発光粒子1700を含む。
本発明においては、顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601はそれぞれ空隙を有する空隙吸収型のインク受容層53であって、溶媒吸収層1601の空隙構造は顔料粒子よりも十分に小さな細孔により構成され、顔料浸透層1600の空隙構造は顔料粒子よりも十分に大きな空隙径により構成されている。
従来技術では、図2(b−1)に示すように、発光粒子を含むインク受容層53の一層のみで形成され、ミクロンサイズの巨大な発光粒子によって形成された空隙は顔料よりも大きく、一般的な顔料インクで記録した場合、インクはインク受容層内部に吸収される。この場合、図2(b−2)に示すように、インクは固液分離されないままインク受容層53内部に浸透し、インク溶媒と蓄光顔料などの発光粒子と常に接した状態となるため、水に弱い蓄光顔料が加水分解し、発光特性が低下する場合があった。
これに対し、図2(a−1)に示すように、本発明の記録媒体1の発光粒子を含む顔料浸透層1600の表面に、顔料インク1003を用いて顔料画像の記録を行うと、顔料浸透層1600の平均細孔径は、顔料インク1003の色材である顔料粒子径よりも大きくなるように空隙を形成しているので、顔料浸透層1600内の空隙を毛細管現象によってスムーズに浸透していく。一方、厚膜の溶媒吸収層1601の平均細孔径は、顔料粒子径よりも小さくなるように空隙を形成しているので、図2(a−2)に示すように、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面でインクが顔料粒子1606と、溶媒1607と、に固液分離される。その結果、顔料粒子は顔料浸透層1600の底部に稠密で薄膜状の顔料画像1606を形成する。そして、インクの溶媒成分1607は空隙の細孔径が小さく、毛細管力の強い溶媒吸収層1601にほとんど全てが吸収され、顔料浸透層1600に残ることはほぼない。したがって、水性顔料インクで記録媒体1にインクジェット記録されたとしても、インク溶媒に含まれる水分と、水に弱い蓄光顔料などの発光粒子と、は長時間接することがないため、記録媒体1の発光特性を良好に維持することができる。
さらに、本発明は顔料浸透層1600を薄膜で形成することにより、顔料インクの吸収による広がりを適切に制御し、画像濃度および記録解像度などの記録特性に優れた記録媒体を提供することができることを見出した。すなわち、図3(a−1〜a−3)に示すように、本発明の記録媒体1は、顔料浸透層1600が薄膜で設けられており、顔料インクが顔料浸透層1600と固液分離した時点で、インクは不必要に広がって吸収されることが無い。そのため、顔料浸透層底部に稠密な顔料膜を形成することができ、高濃度でシャープな画像が得られる。逆に図3(b−1〜b−3)は、従来の記録媒体を示したものであるが、発光粒子を含むインク受容層53が一層で形成され、顔料インクが内部に浸透吸収する場合には、顔料粒子1606を含む顔料インク1003は、インク受容層53の全体に浸透拡散する。その結果、顔料インク1003が滲み過ぎて画像にじみが発生し、インクのドットが拡がって記録解像度が低下する場合がある。
以下、各構成要素ごとに説明する。
[1−1]基材
基材50は、インクジェット記録画像を形成する画像記録時において、記録媒体のカールを抑制し、搬送性を良好にする搬送層としての機能を有する。また、基材の搬送性をさらに向上させるために、滑り性の改善などの為に公知の搬送補助層などを裏面側に設けてもよい。
基材50の材料には、透明なものあるいは不透明、無色、白色、着色されたものいずれも使用することができ、顔料画像を視認する方向および用途に応じて自由に選択することができる。本発明の記録媒体1における基材は、インク受容層53を形成する面とは反対側の面に、機械的強度や耐水層としての物理的な裏面保護膜やUV・オゾン保護層としての保護機能を有する保護層を設けることも可能である。その場合は、保護層の吸収波長と、発光粒子の吸収波長と、十分に離れていることが好ましい。
基材50の厚みは特に限定されないが、記録媒体1の形状や用途に応じて、良好な搬送性や熱伝達性を確保できるように材料強度や搬送性を考慮して、適宜選択出来ればよい。例えば、画像の記録および転写を高速で行うためにロール状の記録媒体1をロールツーロール搬送する場合には、基材の厚みを好ましくは5μm以上、より好ましくは15μm以上とすることにより記録媒体1の搬送性を向上させることができる。また基材の厚みを100μm以下、より好ましくは50μm以下とすることにより良好な熱伝達性が得られる。一方、カットシートおよびプレート状の記録媒体用の基材は、耐カール性および供給性能などの観点から、機械的強度に優れた厚い基材を搬送層として用いることが好ましく、この場合には、基材の厚みを30μm以上、より好ましくは50μm以上とすればよい。
機械的特性および熱的特性の観点から、基材の好ましい材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を挙げることができる。基材を構成する樹脂は、記録媒体1の用途に応じて適宜選択すればよく、特に制限されず、以下のような様々な材質のものを用いることができる。例えば、基材を構成する樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のポリフッ化エチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等の脂肪族ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体樹脂;三酢酸セルロース、セロハン等のセルロース系樹脂;ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、1種を単独で用いること、または2種以上を複合あるいは積層して用いることができる。また、樹脂の中にシリカ、アルミナ、グラファイト等のフィラーを添加し、熱伝導性を高めたものを用いてもよい。フィラーとしては、上記以外にも公知のものを用いることができる。
その他の材質としてガラス、金属板、木材なども使用することができる。
[1−2]インク受容層
本発明のインク受容層53は、前記溶媒および前記顔料の浸透を可能とする顔料浸透層1600と、前記顔料を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層1601と、を有し、前記基材50側から、前記溶媒吸収層1601、前記顔料浸透層1600の順に積層されている。
[1−2−1]顔料浸透層
記録媒体1における顔料浸透層1600は、インクジェット記録方式によって付与される顔料インクの顔料を浸透させる層である。顔料浸透層1600は空隙吸収型であり、細孔構造による毛細管現象によって、インクを速やかに浸透させるための空隙を有し、顔料粒子よりも大きな空隙を構成するものであればよい。本発明の顔料浸透層1600は発光粒子を含み、必要に応じて、発光粒子を結着するための樹脂、インク浸透速度を調整するための無機微粒子や樹脂微粒子などを含有してもよい。
顔料インク1003の顔料粒子に比べて、顔料浸透層1600における平均細孔径は大きく、顔料インク1003は、顔料粒子も含めて薄膜の顔料浸透層1600内に浸透拡散する。一方、後述するように、溶媒吸収層1601における平均細孔径は顔料インク1003の顔料粒子に比べて小さいため、顔料粒子は、溶媒吸収層1601内に浸透できず、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に薄膜で稠密な顔料画像1606を形成する。
本願発明の顔料浸透層1600は、層の厚みを1μm〜10μmとすることにより、良好な顔料浸透性および顔料拡散性が得られる。顔料浸透層1600が10μmを超える場合には、顔料浸透層1600において顔料インクが拡散浸透する時間が長くなるため、インクが、より高いインク吸収速度を有する溶媒吸収層1601へ到達するまでに、やや長い時間が掛かる。そのため、顔料浸透層1600内における顔料インクの溶媒の滞留時間が長くなり、顔料の浸透拡散が過大になって、画像のにじみが生じるおそれがある。また、顔料浸透層1600内における顔料インクの滞留時間が長くなることにより、顔料浸透層1600の内部に、色材である顔料粒子がより広く分散して残されやすくなる。そのため、顔料浸透層1600の底部に薄膜状の稠密な顔料画像が形成できなくなり、画像発色性も低下するおそれがある。同様に、顔料浸透層1600にインクの溶媒の滞留時間が長くなり、インクが残留しやすくなると、残留したインク溶媒の水によって発光粒子が加水分解し、発光特性が低下する場合がある。また、顔料浸透層1600の空隙を顔料粒子より十分に大きくするために大粒径の無機微粒子を用いて空隙を構成しているため、顔料浸透層1600の透明度が低下して画像の視認性の低下するおそれがある。一方、顔料浸透層1600が1μmよりも薄い場合には、顔料浸透層1600内から顔料の一部が外表面(インク着弾面)側へ溢れて画像の低下を招くおそれがある。
発光特性に優れ、視認性が高く、高濃度かつ高精彩な画像の記録が必要な場合には、好ましくは、顔料浸透層1600の厚みを2μm〜8μmに調整すればよい。
顔料浸透層1600は、複数の層に分けて順次形成することも可能である。複数の層からなる顔料浸透層1600は、空隙吸収型のインク受容層53としての基本的な機能を有すると共に、顔料粒子が浸透拡散可能な空隙構造を有して、毛管力が外表面(インク着弾面)側から基材50側に向かって順次大きくなるように構成してもよい。
(発光粒子)
本発明の顔料浸透層1600は発光粒子1700を含む。発光粒子1700は顔料浸透層1600の空隙構造を主として形成する。顔料浸透層1600は、発光粒子とインク溶媒中の水との接触時間を短くするために、顔料浸透層1600に着弾したインクが顔料浸透層1600中に素早く浸透し、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601の界面で固液分離し、インク溶媒が溶媒吸収層1601に素早く吸収されるように構成される。したがって、顔料浸透層1600の毛管力より溶媒吸収層1601の毛管力が十分に大きくなるように、顔料浸透層1600の空隙構造を主として形成する発光粒子1700の平均粒子径が制御される。
また、発光粒子1700の粒子径が小さくなると、耐水性が低下する場合がある。発光粒子1700が多少分解されたとしても発光性が低下することが無いように粒子径を制御して、発光粒子自体の耐水性を確保してもよい。
発光粒子自体の発光性と耐水性を確保するため、顔料浸透層1600に含まれる発光粒子1700の平均粒子径を、溶媒浸透層に含まれる微粒子の平均粒子径よりも十分大きくすればよい。後述するように、想定される溶媒吸収層1601を構成する微粒子の2次粒子の平均粒子径は約140nm程度であるから、発光粒子の平均粒子径を、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上とすることができる。平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定することができる。
一方、発光粒子1700の平均粒子径は、顔料浸透層1600の機械的強度を保ち、かつ、顔料、溶媒を含むインクが顔料浸透層1600内を素早く透過して溶媒吸収層1601に接するように制御することが好ましい。インクの定着時間を数秒〜数十秒程度と想定すれば、発光粒子の平均粒子径が好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下で、インクの一部が顔料浸透層内を素早く透過するだけの毛管力を持ち、機械的強度を与え、溶媒の染み出し等がなく、画像を定着させることができる。すなわち、顔料浸透層1600に含まれる発光粒子1700の平均粒子径を、溶媒吸収層1601に含まれる微粒子の3倍以上30倍以下、好ましくは7倍以上21倍以下に制御することで、溶媒吸収層1601の毛管力が、顔料浸透層1600より十分に大きくなり、発光特性を良好にすることができる。
本発明の記録媒体1において、発光粒子、微粒子および水溶性樹脂などによって構成される空隙吸収型の顔料浸透層1600の細孔直径の平均(平均細孔直径)は、50nm〜250nmの程度である。一般に、インク中の顔料粒子の平均粒子径は、40nm〜110nm程度であるため、大粒径の顔料粒子を含む顔料インクを用いる場合には、好ましくは、顔料浸透層1600の平均細孔直径が120nm〜250nm程度となるように調整すればよい。平均細孔直径が50nm未満の場合には、顔料粒子が顔料浸透層1600内に十分に浸透拡散できず、顔料浸透層1600の露出部に固液分離して堆積してしまうおそれがある。また、平均細孔直径が250nm以上の場合には、顔料浸透層1600の強度が弱くなって、クラックおよび粉落ちが生じ易くなるおそれがある。また、空隙が大きくなることに伴って空隙の毛細管力も弱くなるため、顔料インクを顔料浸透層1600内へ引き込むためのインク吸収速度も低下するおそれもある。インク吸収速度が低下することで溶媒吸収層1601までの到達時間も長くなり、顔料浸透層1600にインクが残りやすくなるため、残ったインク溶媒によって発光粒子が加水分解し、発光特性が低下する場合がある。
本発明において、空隙容量、空隙率、および空隙の細孔直径は、BET法により算出できる。「BET法」とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、細孔容積は、窒素脱着等温線よりBJH法によって計算された細孔半径0.7〜100nmの細孔容積である。また、平均細孔半径とは、窒素脱着等温線よりBJH法によって求められた累積細孔容積分布曲線において、細孔半径0.7〜100nmの累積細孔容積の1/2の累積細孔容積を有する半径である。本発明において、平均細孔直径とは、平均細孔半径を2倍することにより算出した値である。空隙率は、細孔容積の全細孔容積に対する割合である。吸着気体としては、通常、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表す方法としては、BET式(Brunauer、Emmett、Tellerの式)が知られており、比表面積決定に広く用いられている。
顔料浸透層1600における発光粒子1700の含有量は、特に限定されず、顔料浸透層1600の強度および発光特性、インク吸収性等を考慮して適宜調整すればよい。顔料浸透層1600に含まれる発光粒子1700の含有量を顔料浸透層1600の総量100質量部に対して50〜90質量部に調整すれば、顔料浸透層1600の機械的強度およびインク吸収性が良好となり、優れた発光特性を確保することができる。発光粒子の含有量が顔料浸透層1600の総質量の90%を超えると、顔料浸透層1600の強度が低下し、クラックや粉落ちが起こりやすくなる。また、発光粒子1700の含有量が顔料浸透層1600の総質量に対して50%を下回ると、発光粒子濃度が低下し、得られる記録媒体1の発光強度が低下する。
本発明の発光粒子1700の材質は特に限定されず、用途に応じて、蛍光体、蓄光顔料などを用いることができる。いずれも公知の材質を用いることができる。蓄光顔料は発光特性に優れるが、加水分解されやすいため、水分に長時間触れるとすぐに発光特性が低下する性質を持っている。しかし、本発明の記録媒体1は、インク溶媒中の水が発光粒子1700に接触しにくい構成となっており、発光特性が特に良好にできる蓄光顔料が好適に使用することができる。
蓄光顔料としては特に限定されず公知の材質を用いることができる。蓄光顔料は、太陽光、電灯光、紫外線などの照射によって貯蔵されたエネルギーを暗所において光に変えて発光する固体状物質である。具体的には、無機酸化物などで構成された母結晶と、発光中心として用いられる微量(例えば、母結晶を構成する金属原子に対して0.002〜20モル%程度)の賦活剤とを含んでいる。例えば、「ZnS:Cu(緑色)」で表される蓄光顔料は、ZnSで構成された母結晶に対して、賦活剤としてCuを用いた顔料であって、緑色の発光を示す蓄光顔料を意味する。
蓄光顔料としては、具体的には、酸化物系蓄光顔料[SrAl24:Eu,Dy(黄緑色)、Sr4Al1425:Eu,Dy(青緑色)、CaAl24:Eu,Dy(紫色)、ZnO:Zn(白緑色)、Y23:Eu(赤色)、Al23:Cr(赤色)など]、酸化硫化物系蓄光顔料[Y22S:Eu(赤色)、Gd22S:Tb(黄緑色)など]、硫化物系蓄光顔料[ZnS:Cu(緑色)、ZnS:CaS:Bi(紫青色発光)、ZnS:Mn(橙色)、ZnS:Ag(青色)、ZnCdS:Cu(黄〜橙色発光)、CaSrS:Bi(青色)など]、ハロゲン化物系蓄光顔料[BaF(Cl,Br):Eu(青色)など]、ケイ酸塩系蓄光顔料[Zn2SiO4:Mn(緑色)など]、リン酸塩系蓄光顔料、特許文献1記載の顔料[Ca5(PO4)3(Cl,F)など]等が例示できる。
これらの蓄光顔料のうち、発光持続性の点から、下記式(1)で表される組成を有する母結晶を含む蓄光顔料が好ましい。
MAl24 (1)
(式中、Mは周期表第2A族金属原子から選択された少なくとも一種を表す)
周期表第2A族金属原子としては、例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。前記母結晶に対する賦活剤としては、例えば、ユウロピウムEu、セリウムCe、プラセオジウムPr、ネオジウムNd、サマリウムSm、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、イッテルビウムYb、ルテチウムLuなどのランタノイド金属原子が例示できる。これらの賦活剤のうち、ユウロピウムを賦活剤とし、他のランタノイド金属原子を共賦活剤として用いるのが好ましい。
このような蓄光顔料としては、例えば、カルシウム含有蓄光顔料(CaAl24:Eu,Nd、CaAl24:Eu,Sm、CaAl24:Eu,Tm、CaAl24:Eu,Nd,La、CaAl24:Eu,Nd,Gd、CaAl24:Eu,Nd,Dy、CaAl24:Eu,Nd,Ho、CaAl24:Eu,Nd,Erなど)、ストロンチウム含有蓄光顔料(SrAl24:Eu、SrAl24:Eu,Dy、SrAl24:Eu,Nd、SrAl24:Eu,Mn、SrAl24:Eu,Sn、SrAl24:Eu,Biなど)、バリウム含有蓄光顔料(BaAl24:Eu,Ndなど)などが例示できる。これらのうち、ストロンチウム含有蓄光顔料(例えば、SrAl24:Eu,Dyなど)が好ましい。
市販品の蓄光顔料としては、根本特殊化学(株)製、「GSS」、根本特殊化学(株)製、「N夜光」NEW−G300M、NEW−BG300M、NEW−V300M、リ−ド社製の商品名、「R−Bright」B−10、B−15、B−25、B−50などが挙げられる。
これらの蓄光顔料は、単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。
(樹脂)
本発明の顔料浸透層1600は、空隙を構成する発光粒子1700と、無機微粒子や樹脂微粒子などとを結着するためのバインダーとして機能する樹脂を含有してもよい。樹脂としては、水溶性樹脂などを用いることが好ましい。樹脂として水溶性樹脂を用いれば、空隙がより親水性となってぬれ性が向上し、インクが吸収されやすくなり、溶媒吸収層1600のインクの残留が少なくなって、発光特性が向上する。
水溶性樹脂は、25℃において、水と十分に混和する樹脂、あるいは水に対する溶解度が1(g/100g)以上の樹脂である。水溶性樹脂としては、例えば、澱粉、ゼラチン、カゼイン及びこれらの変性物;ポリビニルアルコール(完全けん化、部分ケン化、低けん化等)ポリ(メタ)アクリル酸又はその共重合体樹脂、等を挙げることができる。水溶性樹脂の中でも、ポリビニルアルコール、特に、ポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより得られる、けん化ポリビニルアルコールが好ましい。インク受容層53は、けん化度70〜100mol%のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。けん化度とは、ポリビニルアルコールの酢酸基と水酸基の合計モル数に対する水酸基のモル数の百分率を意味する。インク受容層53は、重量平均重合度が2,000〜5,000のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。水溶性樹脂は、1種を単独で用いることができ、または2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、けん化度、重量平均重合度等の特性が異なるものも含まれる。
樹脂の量は、発光粒子1700や無機微粒子や樹脂微粒子の総量100質量部に対して、水溶性樹脂3.3〜20質量部とすることが好ましい。樹脂の量を、好ましくは3.3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることにより、空隙が圧力や熱によっても崩れることがない、適度な強度を有する空隙型のインク受容層53を形成することができる。その結果、加圧時にも空隙構造が壊れて、インク溶媒が顔料浸透層1600に染み出すことがなく、発光特性が良好となる。一方、樹脂の量を、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下とすることにより、顔料浸透層1600内の空隙のバインダー量を最適な量にすることができる。この場合、顔料浸透層1600のインクの吸収性が良好となり、顔料浸透層1600へのインク残留が発生しにくくなって、発光特性が向上する。
また、本発明は、樹脂によって結着された微粒子間の空隙を顔料浸透層1600内の全域にほぼ均一に配置して、インクをほぼ等方的に浸透させることができる。なお、樹脂の量を3.3質量部以下にした場合には、発光粒子や無機微粒子を結着するためのバインダー量が少ないために、顔料浸透層1600の強度が低下して、インク受容層53のひび割れおよび粉落ちが発生するおそれがあるため、好ましくない。一方、水溶性樹脂の量を20質量部以上とした場合には、水溶性樹脂の量が多くなるため、水溶性樹脂が顔料浸透層1600の空隙を埋め、インクの吸収性が損なわれることとなる。
(樹脂粒子)
本発明の顔料浸透層1600は熱可塑性樹脂をさらに含み、一部が溶融膜化可能な空隙型顔料浸透層1600を構成してもよい。熱可塑性樹脂は粒子であってもよい。
樹脂微粒子は、樹脂材料からなる微粒子である。樹脂微粒子を水溶性樹脂で結合させることにより、顔料浸透層1600で顔料インクを吸収浸透させる空隙構造を形成することができる。
樹脂微粒子を構成する樹脂材料の種類としては、特に制限はないが、顔料インクの顔料成分や溶媒成分との親和性が高く、常温では安定した空隙構造を維持できる樹脂材料であることが好ましい。また、顔料浸透層1600に用いた場合に、加圧加熱によって溶融膜化する温度を安定して制御しやすい樹脂材料であることが好ましい。このような樹脂としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂、またはそれらの共重合体樹脂が好ましい。接着性、透明性、表面質感、インク吸収性などの観点から、より好ましくはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂である。
樹脂粒子の含有量は、顔料浸透層1600中の発光粒子の発光を妨げるものでなければよく、好ましくは顔料浸透層総量100質量部に対して8〜40質量部含まれる。
また、樹脂粒子の粒径は、発光粒子よりも小さいものが好ましい。好ましくは、0.01μm〜0.5μmである。
溶融膜化可能な顔料浸透層1600は、加圧加熱により、顔料浸透層底部に形成された稠密な顔料画像を包み込むように膜化するため、顔料粒子を完全に固定化することができる。その結果、顔料浸透層1600と顔料粒子との結着力が強固なものとすること可能となるため、溶融膜化可能な顔料浸透層1600は、顔料画像の強固な保護膜となる。また、グラビア印刷などの汎用印刷と同様に、色材である顔料粒子が、顔料画像保持膜の底部に、薄膜稠密に凝縮しながら透明な樹脂で包み込まれている状態が保たれているため、高精彩で、油絵のように重厚な深みのある画像形成が可能となる。
本発明の顔料浸透層1600では、内部に顔料粒子を浸透拡散させるために、顔料粒子よりも十分に大きな空隙構造を形成しているが、可視光波長と同程度の大きな樹脂微粒子が含まれ得る。そのため、顔料浸透層1600の表面や空隙構造には、樹脂微粒子が剥き出しとなり、無数の凹凸が存在する。また、これらが、完全に溶融膜化せずに空隙構造を残した場合には、樹脂微粒子表面や空隙での可視光散乱が生じて、透明な画像支持体55から見る際の顔料画像の視認性が低下する場合もある。そのため、顔料浸透層1600は、加圧加熱時には、自身の空隙構造を完全に解消しながら、溶融膜化してもよい。顔料浸透層1600の一部を溶融膜化させた場合、発光粒子を溶融膜化した顔料浸透層1600が包み込む。その結果、顔料浸透層1600の空隙はほぼなくなるため、発光粒子が湿気や水分に接触することがほぼなくなり、発光粒子が加水分解しにくくなって、発光特性も向上する。
(無機微粒子)
本発明の顔料浸透層1600は無機微粒子をさらに含んでもよい。無機微粒子は、無機材料からなる微粒子である。無機微粒子は、溶媒吸収層1601に顔料インクの溶媒成分を高速に移動させ、顔料を浸透させるための空隙を形成する際のバインダーとなる。無機微粒子を構成する無機材料の種類としては、特に制限はない。ただし、インク吸収能が高く、発色性に優れ、高品位の画像が形成可能な無機材料であることが好ましい。これらの無機材料からなる無機微粒子の中でも、アルミナ及びアルミナ水和物からなる群より選択される少なくとも1種の物質からなるアルミナ微粒子やシリカ微粒子等が好ましい。
[1−2−2]溶媒吸収層
本発明の記録媒体1における溶媒吸収層1601は、インクジェット記録方式によって付与される顔料インクの顔料を浸透させず、液体成分である溶媒成分を浸透し、受容吸収する層である。溶媒吸収層1601は空隙吸収型であることが好ましく、細孔構造による毛細管現象によって、インクを速やかに吸収するための空隙を有し、顔料粒子よりも小さな空隙を構成するものであればよい。このような溶媒吸収層1601の空隙構造は、粒子径が可視光波長(380nm〜780nm程度)よりも十分に小さな微粒子とバインダーとによって形成することにより、空隙構造と微粒子表面における可視光散乱によるヘイズ劣化を抑制して、画像の視認性を高めることができる。また、溶媒吸収層1601の透明性を向上させつつ、インクの液体成分の吸収容量を向上させるためには、溶媒吸収層1601を複数の層に分けてもよい。溶媒吸収層1601は、空隙吸収型のインク受容層53としての基本的な機能を有して、インクの吸収速度が顔料浸透層1600側から基材50側に向かって順次大きくなる構成であればよい。
空隙吸収型の溶媒吸収層1601は、細孔構造による毛細管現象によって、顔料インクの液体成分を速やかに吸収するための空隙を有していればよい。例えば、珪藻土、スポンジ、マイクロファイバー、吸水性ポリマーで構成されたもの、樹脂微粒子と水溶性樹脂とから構成されたもの、無機微粒子と水溶性樹脂とから構成されたもの等が挙げることができる。空隙吸収型の溶媒吸収層1601としては、無機微粒子と水溶性樹脂とを含有させて形成した微細な空隙構造に、顔料インクの液体成分を受容する構成とすることが好ましい。無機微粒子と水溶性樹脂とより構成される空隙吸収型の溶媒吸収層1601は、樹脂により係合させた粒子の隙間に、顔料インクの液体成分を吸収するための空隙を形成することにより、その空隙に多量の液体成分をすばやく吸収することができる。その結果、顔料浸透層1600にインクの溶媒成分が残留せず、発光粒子1700の加水分解が起こりにくいため、発光特性が良好となる。
さらに、加圧などにより溶媒吸収層1601の空隙構造が壊れると、インクの液体成分が顔料浸透層1600の表面に染み出したり、インクの液体成分が気化して、層間に空気層などを生じたりした場合には、層どうしの接着が阻害されるおそれがある。また、顔料浸透層1600に染み出したインクの液体成分の水で発光粒子が加水分解して発光特性が低下するおそれがある。しかし、無機微粒子を水溶性樹脂のバインダーによって結合させることにより、無機微粒子が非常に硬い材質であるため、空隙が設けられた溶媒吸収層1601は、圧力や熱によっても空隙構造が壊れにくく、インク定着後も空隙構造をほぼ保持することが可能となる。この結果、溶媒吸収層1601は、吸収したインクを内部に保持することができ、また蒸気が発生しても内部に封じ込めることができる。また、インクの液体成分が個々の空隙内で気化して蒸気が発生したとしても、層間に空気層などが形成されないように蒸気を各々の空隙内に封じ込めて、層構造を保持することができる。また、加圧等により空隙が潰れたりせずに、空隙構造がほぼ維持されることにより、インクの液体成分である水などの主要溶媒、および不揮発性溶剤を表面に染み出させることなく、発光特性を良好とすることができる。
また、無機微粒子と水溶性樹脂とより構成される空隙吸収型の溶媒吸収層1601は、特別な配向処理なくても安定的に作製することができ、生産性も良好である。
本発明者らの検討によれば、無機微粒子および水溶性樹脂によって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層1601の空隙容量は、0.1cm3/g〜約3.0cm3/g程度である。細孔容積が0.1cm3/g未満の場合には、十分な溶媒吸収性能が得られず、顔料浸透層1600に未吸収のインク溶媒が残存し、残存したインク溶媒の水によって発光粒子1700が加水分解し、発光特性が低下するおそれがある。また、細孔容積が3.0cm3/gを超える場合には、溶媒吸収層1601の強度が弱くなり、溶媒吸収層1601内にクラックおよび粉落ちが生じ易くなる。また溶媒吸収層1601の強度が弱い場合には、加圧等により溶媒吸収層1601が壊れ、インク溶媒の染み出しが発生し、発光特性が低下するおそれがある。
無機微粒子および水溶性樹脂により構成される空隙吸収型の溶媒吸収層1601が上記の空隙容量を有する場合、溶媒吸収層1601の空隙率は、60%〜90%程度であった。
本発明者らの検討によれば、無機微粒子および水溶性樹脂によって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層1601の細孔直径の平均(平均細孔直径)は、5nm〜100nmの程度である。平均細孔直径が5nm未満の場合には、十分なインク吸収容量が得られず、インクが溢れて、顔料浸透層1600に未吸収のインク溶媒が残存し、残存したインク溶媒の水によって発光粒子が加水分解し、発光特性が低下するおそれがある。また、平均細孔直径が100nm以上の場合には、顔料粒子が顔料浸透層1600との界面で十分に固液分離できずに溶媒吸収層1601内部にも浸透拡散して、画像の発色性および解像性が不十分となるおそれがある。また、溶媒吸収層1601の強度が弱くなるため、クラックおよび粉落ちが生じ易くなったり、加圧等により溶媒吸収層1601が壊れ、インク溶媒の染み出しが発生し、発光特性が低下したり場合がある。
無機微粒子として、一次粒子径が5nm〜100nm、凝集した二次粒子径として20nm〜500nm程度のものを用いることにより、良好な空隙構造を得ることができる。さらに良好で安定したインク溶媒吸収性、顔料固液分離性および光学的により高い透明性を得るためには、好ましくは、一次粒子径が10nm〜40nm、凝集した二次粒子径として50nm〜200nmの無機微粒子を用いればよい。一般に、顔料粒子の平均粒子径は40nm〜110nm程度であるため、小粒径の顔料粒子を含む顔料インクを用いる場合には、好ましくは、溶媒吸収層1601の平均細孔直径が10nm〜40nmとなるように調整すればよい。
また、溶媒吸収層1601の厚みを10μm〜50μmとすることにより、良好なインク溶媒吸収性が得られる。視認性が高く、高濃度かつ高精彩の画像の記録が要求される場合などには、好ましくは、溶媒吸収層1601の厚みを15μm〜30μmとなるように調整すればよい。
さらに、本発明の溶媒吸収層1601は樹脂微粒子を含んでもよい。樹脂微粒子は、樹脂材料からなる微粒子である。樹脂微粒子を水溶性樹脂で結合させることにより、溶媒吸収層1601で顔料インクの溶媒成分を吸収させる空隙構造を形成することができる。
樹脂微粒子を構成する樹脂材料の種類としては、特に制限はないが、顔料インクの溶媒成分との親和性が高く、常温では安定した空隙構造を維持できる樹脂材料であることが好ましい。また、溶媒吸収層1601に用いた場合に、加圧加熱によって溶融膜化する温度を安定して制御しやすい樹脂材料であることが好ましい。このような樹脂としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン/ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂、またはそれらの共重合体樹脂が好ましい。接着性、透明性、表面質感、インク吸収性などの観点から、より好ましくはアクリル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂である。
また、溶媒吸収層1601は、空隙を形成している樹脂微粒子が加熱により軟化溶融するものであっても、顔料インクに含まれる少量の不揮発性溶剤が保持できるように構成すればよい。溶媒吸収層1601が軟化溶融して膜化することにより、溶媒吸収層1601の空隙および樹脂粒子界面の光散乱によって生ずる透明性の低下を抑制することができる。この結果、顔料浸透層1600の底部に薄膜状に形成された稠密な顔料画像は、溶媒吸収層1601側からの視認性が向上する。また、軟化溶融状態となって透明に膜化した溶媒吸収層1601は、顔料浸透層1600に形成された顔料画像1606の強固な保護膜としても機能する。したがって、空隙構造を維持したままの溶媒吸収層1601に比べて、汚染液体および有害ガスなどによる汚染をより防止することができると共に、耐擦過性などの機械的強度を向上させて、記録物73の長期保存性を向上させることができる。
さらに、本発明の記録媒体1は、顔料浸透層1600の上に、保護層を形成してもよい。例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン/ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂、またはそれらの共重合体樹脂の保護層を形成してもよい。
[2]記録媒体の製造方法
[2−1]基材の提供
上記された基材が記録媒体1の製造のために提供される。記録媒体1の基材50は、公知の塗膜装置によって、基材50上に、溶媒吸収層1601と密着する密着層を予め設けておいてもよい。また、基材50に表面改質を行ってもよい。基材50の表面を粗面化する表面改質を行うことにより、基材50の濡れ性を向上させて、塗膜性を向上させることができる。表面改質の方法としては、特に制限はない。例えば、基材50の表面に、予めコロナ放電処理またはプラズマ放電処理を行う方法;基材50の表面にIPAやアセトン等の有機溶剤を塗工する方法等を挙げることができる。
[2−2]溶媒吸収層の形成方法
溶媒吸収層1601は、少なくとも無機微粒子または樹脂微粒子と、水溶性樹脂と、を適当な媒体と混合して塗工液を調製し、これを基材50の表面に塗布して乾燥させることによって形成できる。用途に応じて、その他の添加剤として、例えば、界面活性剤、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、インク定着剤、ドット調整剤、着色剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤などを塗工液に加えてもよい。塗工液中の無機微粒子または樹脂微粒子の粒子濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。ただし、塗膜速度と膜の均一性の観点から、塗工液の全質量に対して、10質量%以上かつ30質量%以下とすることが好ましい。
溶媒吸収層1601は、前述した基材50の表面に、上記の塗工液を塗工することによって形成することできる。その塗工後は、必要により塗工液の乾燥を行う。塗工方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、スロットダイコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法などを挙げることができる。
塗工液の塗工量は、固形分換算で10g/m2以上、かつ40g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を10g/m2以上、好ましくは15g/m2以上とすることにより、インク中の溶媒成分の吸収性に優れた溶媒吸収層1601を形成することができる。一方、塗工量を40g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下とすることにより、塗工層を乾燥させる際に、記録媒体1にカールが発生し難くなる。
[2−3]顔料浸透層の形成方法
顔料浸透層1600は、少なくとも発光粒子1700と、水溶性樹脂と、を適当な媒体と混合して塗工液を調製し、これを溶媒吸収層1601の表面に塗布して乾燥させることによって形成することができる。
塗工液中の無機微粒子または樹脂微粒子の粒子濃度は、溶媒吸収層1601と同様に、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。塗膜速度と膜の均一性の観点からは、塗工液の全質量に対して、10質量%以上、かつ30質量%以下とすることが好ましい。塗工液の塗工量は、固形分換算で1g/m2以上、かつ10g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を1g/m2以上、好ましくは10g/m2以下とすることにより、良好な顔料浸透性および顔料拡散性を確保することができる。塗工方法としては、溶媒吸収層1601の形成方法と同等の方法を用いることができる。
また、基材50上に、溶媒吸収層1602の塗工液および顔料浸透層1600の塗工液を、スライドダイコーター、スロットダイコーター、あるいはカーテンコーターを使用して同時に塗工することにより、溶媒吸収層1601、および顔料浸透層1600を同時に形成してもよい。この方法においては、溶媒吸収層1601、および顔料浸透層1600の各々の塗工液の粘度および表面張力を適切に調整することにより、各々の塗工液を乾燥の過程において混合させることなく、それらを製膜することができる。すなわち、溶媒吸収層1601および顔料浸透層1600の空隙を埋めることなく、溶媒吸収層1601および顔料浸透層1600を形成することができる。
[3]記録物の製造方法
本発明の記録媒体1は、基材50上に積層された空隙吸収型のインク受容層53(溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600)の上方から、顔料インクを用いてインクジェット記録方式により画像を記録する画像記録工程を経て、顔料浸透層1600に顔料画像が形成されて、記録物が得られる。以下記録物の製造方法の各工程について説明する。
[3−1]インクジェット方式による画像記録方法
インクジェット記録方式は、記録ヘッドに形成された複数のノズルから、記録媒体1のインクジェット記録面に対してインク(インク滴)を吐出することによって、画像を記録する方式である。使用するインクジェット記録方式の種類は特に限定されず、例えば、サーマルインクジェット方式またはピエゾ方式のどちらも使用できる。サーマルインクジェット方式は、駆動パルスに応じた熱エネルギーをノズル内のインクに付与して、そのインクを膜沸騰させて気泡を生じさせ、この気泡によってノズルからインク滴を吐出させる。このようなサーマルインクジェット記録方式は、高解像度で高品位な画像を高速記録できるため好ましい。
インクジェット記録装置は、記録ヘッドを記録媒体1の表面に接触させることなく、極めて良好で安定した画像を記録することができる。シリアルスキャン方式の場合には、記録ヘッドがインクを吐出しつつ主走査方向に移動する動作と、主走査方向と交差(例えば、直交)する副走査方向に記録媒体としての転写体を搬送する動作と、を繰り返すことによって画像を記録する。このようなシリアルスキャン方式においては、記録ヘッドから吐出するインク滴を小さくして、高品位な画像を容易に記録することができる。また、このようなシリアルスキャン方式のプリンタとしては、顔料インクを用いて記録するものであればよく、公知の小型のインクジェットプリンタ、あるいは大判プリンタを使用することができる。また、シリアルスキャン方式において、同一の記録領域に対して、記録ヘッドを複数回走査させて画像を記録してもよく、この場合には、同一の記録領域に、所定の時間差をもって顔料インクが複数回着弾(分割重複走査)されることになる。この場合にも、顔料インクの蒸発速度に比べて、空隙吸収型の顔料浸透層1600のインクの吸収速度が十分に速いため、インクミストの飛び散りも生ぜず、また安全性の高い水系の顔料インクを用いているために、安全かつ解像度の高い高品位な画像が得られる。
一方、フルライン方式の記録の場合には、インクの吐出口およびインク流路などからなるノズルを複数集積した長尺なマルチノズルヘッドが用いられる。そして、吐出口の配列方向と交差(例えば、直交)する方向に、記録媒体としての転写体を連続的に搬送しつつ、マルチノズルヘッドからインクを吐出することによって画像を記録する。本発明の記録媒体1は、インクを高速吸収するため、このようなフルライン方式のプリンタを利用することにより、高解像度で高品位な画像を高速に記録することができる。なお、記録媒体1に画像を記録する際には、記録画像を視認する方向に応じて、反転画像あるいは正像を記録すればよく、その画像は使用用途に応じて選択することができる。
[3−1−1]顔料インク
本発明の記録媒体1は、顔料粒子が浸透拡散可能な顔料浸透層1600を用いることにより、記録媒体1の全面に亘って適切な顔料画像を形成し、良好な記録特性を提供することができる。様々な用途に適用可能な記録画像の保存性および耐久性を考慮すると、これらの性能が高い顔料インクを好ましく用いることができる。
また、水系顔料インクは、インクの成分の内、60〜80%が溶媒としての水成分であり、20%〜30%がその他の溶媒成分、1〜10%が顔料成分によって構成されている。このように水性顔料インクは、溶媒成分のほとんどが水溶性および不揮発性であり、かつ不活性成分(反応性が少ない)であるため、人体に対する刺激性が少ない。そのため、画像の記録後に、刺激的な溶媒成分が長時間に亘って揮発し続けることがなく、活性の高い成分が未反応のまま残存することがない。したがって水系顔料インクは、揮発性溶剤を主体とする溶剤インク、または活性成分を含む(反応性の高い)モノマーを用いているUVインクなどと比較して、極めて安全性が高く、好ましく用いることができる。
顔料インク中の色材濃度(顔料濃度)は、特に規定はされない。ただし、好ましくは0.5%以上10%以下、より好ましくは1%以上5%以下である。色材濃度をこのような範囲に調整することにより、画像の視認性と接着性とを両立させることができる。顔料浸透層1600の内部に浸透した色材顔料のほぼ全量を、顔料浸透層1600の内部に収納するためには、色材濃度を厳密に調整する必要がある。顔料濃度は、顔料色材が顔料浸透層1600から漏れないように、顔料色材が溶媒吸収層1601の空隙を満たさない範囲、かつ画像の視認性を向上させることができる範囲において、できる限り高く調整することが好ましい。すなわち、顔料浸透層1600内に顔料が受容されるように、顔料濃度および記録密度に応じて、顔料浸透層1600の空隙容量を調整すればよい。インクの顔料濃度を高くして、記録密度を高くする場合には、空隙容量を大きくして、顔料色材を空隙内部に全て収納できるようにすればよい。このようにインクの顔料濃度を調整することにより、インクの粘度を最適に制御して、インクの吐出時におけるインクの流動性を向上させることができる。この結果、記録ヘッドのノズルへのインク供給性、ひいてはインクの吐出安定性を向上させることができる。
顔料インクは、インクの顔料色材の平均粒子径と、顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601のそれぞれの平均細孔直径と、に応じて吸収状態が異なる。想定される顔料インクの平均粒子径に対して、顔料浸透層1600の平均細孔直径を大きくし、溶媒浸吸収層1601の平均細孔直径を小さくすればよい。一般に、顔料粒子の平均粒子径は40nm〜110nm程度であり、高精細な画像が得られる小粒径の顔料粒子を含む顔料インクを用いる場合、顔料粒子の平均粒子径は40nm〜50nm程度である。一方、安価で安定的な大粒径の顔料粒子を含む顔料インクを用いる場合、顔料粒子の平均粒子径は90nm〜110nm程度である。したがって、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601の平均細孔径は、想定される顔料インクに合わせて調整すればよい。
顔料粒子の大きさに応じて顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601の空隙の大きさが調整された記録媒体1を用いることにより、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に、稠密で高精細な顔料画像を形成することができる。
顔料インク中の顔料成分としては、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、およびスルホン基のうちの少なくとも1種の官能基またはその塩を結合された自己分散顔料、あるいは顔料粒子の周りを樹脂で被覆した樹脂分散型の顔料を用いることができる。本発明の記録媒体1においては、顔料粒子によって、顔料浸透層1600の底部に稠密な顔料画像を薄膜状に形成するため、顔料浸透層1600の表層には、顔料粒子が残留しない。このことは、顔料粒子自体が接着性をもたない自己分散顔料を用いる場合にも好適である。
また、樹脂分散型の顔料は、インク媒体と分離した後の顔料粒子同士の結着力を高めて、顔料浸透層1600の底部に強固な薄膜状の顔料画像を形成することができる。顔料インク中の液体成分である溶媒は、顔料浸透層1600よりもインク吸収速度がさらに速い溶媒吸収層1601に、ほぼ全量が吸収されるため、顔料画像の水分がほとんど残らない。そのため、樹脂分散型の顔料粒子は、顔料分散用に加えられた分散樹脂により近接して、より強固に互いに結合する。また、分散樹脂のSP値は、インク受容層53の水溶性樹脂のポリビニルアルコールなどのSP値に近い。そのため、熱によって分散樹脂、水溶性樹脂、および熱可塑性樹脂が溶融すると、両者の相溶性が高まり、樹脂分散顔料は顔料浸透層1600にも強固に接着される。顔料粒子の周りを被覆する樹脂としては、酸価が100〜160mgKOH/gである(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。酸価を100mgKOH/g以上とすると、サーマル方式でインクを吐出するインクジェット記録方式において、インクの吐出安定性が向上する。一方、酸価を160mgKOH/g以下とすると、顔料粒子に対して相対的に疎水性を有するようになり、インクの定着性および耐滲み性が良好となる。したがって、インクの高速定着および画像の高速記録に適する。
ここで酸価とは、1gの樹脂を中和するために必要となるKOHの量(mg)であり、その親水性を示す指標となり得るものである。また、この場合の酸価は、樹脂分散剤を構成する各モノマーの組成比から、計算により求めることもできる。具体的な顔料分散体の酸価の測定方法としては、電位差滴定により酸価を求める、Titrino(Metrohm製)等を使用することができる。
[3−1−1−1]顔料インクの浸透拡散性
本発明においては、インクジェット記録用の顔料インクの表面張力および粘度が適切に制御されることにより、インクは、その一部が顔料浸透層1600に接してから、インク吸収速度の速い顔料浸透層1600に吸収され始める。そして、その一部に連なる他のインクの部分は、途切れることなく顔料浸透層1600に引き込まれる。このようなインクの粘度ηは、1.5〜10.0mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは、1.6〜5.0mPa・s、特に好ましくは1.7〜3.5mPa・sである。一方、インクの表面張力γは、25〜45mN/mであることが好ましい。
インクの表面張力および粘度は、顔料浸透層1600に浸透した顔料インクが、顔料も含めて薄膜の顔料浸透層1600内に浸透拡散するように調整する。
顔料浸透層1600を通過した顔料インクは、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に到達すると、顔料インクの顔料成分と、水成分および溶剤成分と、に固液分離する。そして、顔料浸透層1600側における顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に、薄膜で稠密な顔料画像を形成する。また、顔料インクの溶媒成分は、インク吸収速度が顔料浸透層1600よりも高い溶媒吸収層1601に吸収されるため、高濃度の画像形成が可能になる。また、上記のように顔料インクの粘度を調整することにより、インクの吐出時におけるインクの流動性が向上し、ノズルへのインク供給性、ひいてはインクの吐出安定性も向上する。また、上記のようにインクの表面張力を調整することにより、インクを吐出時に、インクの吐出口におけるインクのメニスカスを維持することができる。
インクの粘度は、JIS Z 8803に準拠し、温度25℃の条件下において、E型粘度計(例えば、東機産業製「RE−80L粘度計」等)を用いて測定した値を意味するものとする。インクの粘度は、界面活性剤の種類および量の他、水溶性有機溶媒の種類および量等により調整することができる。
インクの表面張力は、温度25℃の条件下において、自動表面張力計(例えば、協和界面科学製「CBVP−Z型」等)により、白金プレートを用いたプレート法によって測定した値を意味するものとする。インクの表面張力は、界面活性剤の添加量、水溶性有機溶剤の種類、および含有量等により調整することができる。
[3−1−2]白インク
本発明においては、任意の画像の記録後もしくは記録前に、顔料浸透層1600の少なくとも一部に、白インク(白色のインク)を用いてインクジェット記録を行ってもよい。用途に応じて、顔料浸透層1600に記録された画像の背景となるように、白インクで記録すれば、隠蔽性が向上し、画像の視認性を向上させることができる。白インクの白色顔料粒子の平均粒子径が顔料浸透層1600の平均細孔直径よりも大きい場合には、溶媒吸収層1601の表面で、白色顔料成分と、水成分および溶媒成分と、が固液分離する。白色インクの組成物としては、インクジェット記録方法において通常使用されている任意の白色インクの組成物を用いることができる。このような白色顔料としては、公知の材料を適用可能であり、例えば、無機白色顔料、有機白色顔料、白色の中空ポリマー微粒子を挙げることができる。
[3−2]記録物の製造装置
上述のインクジェット記録媒体を用いて記録物を製造する製造装置を説明する。本発明の記録媒体1に画像を記録する装置としては、顔料インクを用いて記録するものであれば、公知の小型のインクジェットプリンタ、あるいは大判プリンタを使用することができる。
[4]記録物
本発明の第一の実施形態では、図1(a)に示す記録媒体1に、図2(a)のように記録ヘッドにより記録媒体1の記録面すなわち顔料浸透層1600側にインクを付与して、画像1606を記録する。このとき、付与されたインクの一部が溶媒浸透層に接すると、毛管力の強い溶媒浸透層に瞬時に吸収され、前述したように、顔料浸透層1600の底部に薄膜状の稠密な顔料画像1606を形成し、溶媒成分は固液分離して溶媒吸収層1601に吸収される。したがって、顔料浸透層1600に含まれる発光粒子1700にインク溶媒の水が長時間触れることがないため、発光粒子1700が加水分解されることが無く、発光特性に優れた記録物(図10(a))が得られる。
B.第二の実施形態
[1]記録媒体
本発明の記録媒体の第二の実施形態について、図を用いて説明する。本発明の第二の実施形態においては、図1(b)に示すように、基材50上に、顔料と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層53と、当該インク受容層53の表面に熱可塑性樹脂1002を離散的に配置させた接着層1012とを設けた記録媒体1を提供する。詳細には、前記インク受容層53は、前記溶媒および前記顔料の浸透を可能とする顔料浸透層1600と、前記顔料を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層1601と、を有し、前記基材側から、前記溶媒吸収層1601、前記顔料浸透層1600の順に積層されている。さらに、接着層1012は、顔料浸透層1600の表面に顔料浸透層の露出部1001を残すように、熱可塑性樹脂1002を離散的に配置する。また、前記顔料浸透層1600は、発光粒子1700を含む。さらに、本発明の第二の実施形態の記録媒体は、当該接着層1012により画像支持体55と接着することができる。
本発明の第二の実施形態の記録媒体において、基材50ならびに顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601を含むインク受容層53には、上記第一の実施形態で説明した材料を用いることができる。
[1−1]接着層
本発明の接着層1012は、顔料浸透層1600の表面に顔料浸透層の露出部1001を残すように、熱可塑性樹脂1002を離散的に配置し、形成される。顔料浸透層1600の表面に熱可塑性樹脂1002を離散的に設けることにより、接着層1012は、熱可塑性樹脂1002が集まった熱可塑性樹脂部としての島部1000と、熱可塑性樹脂1002のないバイパス部としての海部1004と、を含む。海部1004に対応する顔料浸透層1600の表面は、外部に直接露出する露出部1001となる。
[1−2]熱可塑性樹脂
[1−2−1]熱可塑性樹脂とインク滴の大きさ
接着層1012を形成する熱可塑性樹脂1002、もしくは熱可塑性樹脂の凝集部(熱可塑性樹脂部)の大きさが、顔料インクのインク滴1003よりも十分に小さければ、インク滴の一部は、海状に露出した顔料浸透層1600に直ちに接触して、上述のように速やかに顔料浸透層1600に吸収される。一方、熱可塑性樹脂1002もしく熱可塑性樹脂部の表面上の面積がインク滴1003の大きさに対応する程度である場合、接着層1012の熱可塑性樹脂部1002の中心付近に着弾したインク滴1003は、着弾直後に、そのインク滴の一部がインク受容層53の露出部に直ちに接触できないおそれがある。その場合、そのインク滴は、着弾衝撃によってマイクロ秒からミリ秒のオーダーの速さで変形して拡がることにより、熱可塑性樹脂部1000に吸収される前に、着弾衝撃により変形した一部がバイパス部を介してインク受容層53の露出部に接触することができる。インクジェット記録における一般的な顔料インクのインク滴は高速で飛翔し、着弾衝撃によって円柱状に拡がり、直径がインク滴の直径Dの約2倍、高さがインク滴の約1/6のインク滴となることが知られている。
図4は、接着層1012における熱可塑性樹脂部1000の上部付近に着弾したインク滴1003が吸収されるメカニズムの説明図である。図4(a),(b)のように、接着層1012における熱可塑性樹脂部1000に着弾して広がったインク1003は、熱可塑性樹脂部1000からはみ出す。そのはみ出したインク1003の一部は、図4(c)のように、熱可塑性樹脂部1000の相互間の空間(バイパス部1004)をバイパス的に通過して、顔料浸透層1600の露出部1001に垂れ込む。このように垂れ込むインクの一部は、熱可塑性樹脂部1000の中を通ることなく、顔料浸透層1600の露出部1001に直ちに接することができる。インクジェット記録用のインクは、表面張力や粘度が適切に制御されている。そのため、図4(d),(e),(f)のように、露出部1001に接したインクの一部がインク吸収速度の速い顔料浸透層1600に吸収され始めると、それに連なる他の部分のインクも途切れることなく、顔料浸透層1600に引き込まれる。つまり、露出部1001に接したインクの一部に連なる他の部分のインクも、熱可塑性樹脂部1000の外側を順次バイパス的に通過して、顔料浸透層1600に引き込まれる。このように顔料浸透層1600に吸収されたインクは、層状に構成されたインク受容層53の内部に順次浸透していく。インク1003は熱可塑性樹脂部1000にほぼ吸収されず、インク吸収速度の速い空隙吸収型の顔料浸透層1600の露出部1001に引きずり込まれるように、主体的に素早く吸収されるため、熱可塑性樹脂部1000の表面もしくは内部には残留しにくい。
また、熱可塑性樹脂1002もしくは熱可塑性樹脂部の表面の面積がインク滴1003よりも大きく、着弾衝撃により変形して拡がったインクの一部がバイパス部を介して顔料浸透層1600の露出部に接触できない場合には、熱可塑性樹脂部1000にインクが残るおそれがある。その場合には、良好な画像を記録することが難しくなり、接着性を低下させうる。したがって、熱可塑性樹脂1002もしくは熱可塑性樹脂の凝集部(熱可塑性樹脂部)は、インクジェット記録に用いられる顔料インクのインク滴1003よりも大きくならないように構成し、より好ましくは、インク滴1003の大きさよりも十分に小さくする。
さらに、熱可塑性樹脂部1000の表面もしくは内部にインクの一部が残存すると、後述する加熱転写により熱可塑性樹脂1002を溶融させたときに、その残存するインクが熱可塑性樹脂1002の表面に浮き出て画像支持体55と熱可塑性樹脂1002との境界面にて膜化し、接着不良を生ずることがあった。また加熱転写時に、残存するインクの成分の一部が蒸発し、画像支持体55と熱可塑性樹脂1002との間に蒸気層などを形成して、接着不良を生じることがあった。本発明の記録媒体1は、熱可塑性樹脂部1000の表面もしくは内部にインクがほぼ残留せず、顔料インクのほぼ全ての液体成分が溶媒吸収層1601に速やかに吸収されるため、インクジェット記録後、即時に加熱転写しても接着阻害が生じにくく、良好な接着性を得ることができる。
[1−2−2]熱可塑性樹脂の形状
顔料浸透層1600の上に接着層1012を形成する熱可塑性樹脂を離散的に設けた構造においては、顔料浸透層1600に形成される顔料画像に、熱可塑性樹脂1002の直下部にインクが回り込まないホワイトポイント(非画像部)が発生しないように、顔料浸透層1600および熱可塑性樹脂1002を設定する。すなわち、顔料浸透層1600の露出部をなるべく大きくし、かつ露出部の相互間の距離を小さくすると共に、熱可塑性樹脂1002の下部が顔料浸透層1600の表層と接する部分の面積を可能な限り小さく設定する。一方、良好な接着性を得るためには、溶融軟化した際に熱可塑性樹脂1002が互いに結合して膜化し易いように、十分な量の熱可塑性樹脂1002を離散的に配置することが好ましい。
粒子状の熱可塑性樹脂1002を用いることにより、熱可塑性樹脂1002の下部と顔料浸透層1600との接触面積を小さくしつつ、接着層1012の中層もしくは上層において十分な熱可塑性樹脂1002の体積を確保することが可能となる。例えば、粒子形状を主体とする熱可塑性樹脂1002、あるいは多面体形状を主体とする熱可塑性樹脂等を用いることができる。このような熱可塑性樹脂を用いることにより、空隙吸収型の顔料浸透層1600の露出部の面積を最大にしつつ、インク吸収性を可能な限り良好とし、さら接着性を担保することができる。記録媒体1の製膜生産性を考慮した場合、熱可塑性樹脂1002としては、特別な配向処理などを必要としない球状の粒子形状のものが好ましい。このような粒子形状と同様に、高次の多面体も好ましく用いることができる。本発明の記録媒体1では、接着層1012の下部に、顔料粒子が浸透拡散可能な顔料浸透層1600を備えているため、熱可塑性樹脂の直下のホワイトポイントが発生し難い。また、膜状の熱可塑性樹脂1002を離散的に設けてもよい。
[1−2−3]熱可塑性樹脂の粒子径
記録媒体1の製膜過程において、熱可塑性樹脂1002が顔料浸透層1600の空隙に入り込んで、その空隙を埋めた場合には、インク吸収性が大幅に低下するおそれがある。そのため、粒子状の熱可塑性樹脂を用いる場合には、その平均粒子径が顔料浸透層1600の空隙径よりも小さくならないように、接着剤の平均粒子径および顔料浸透層1600の平均細孔直径を設定することが好ましい。一方、前述したように、接着層1012の上に着弾したインクを千切ることなく、顔料浸透層1600の露出部1001に引き込んで吸収させるためには、想定されるインク滴の大きさよりも熱可塑性樹脂1002の平均粒子径を小さく設定することが好ましい。具体的に、熱可塑性樹脂1002の平均粒子径は、150nmよりも大きく、5μmよりも小さいことが好ましい。熱可塑性樹脂1002の平均粒子径を150nmよりも大きくすることにより、熱可塑性樹脂1002の粒子径が空隙吸収型の顔料浸透層1600の空隙径より十分大きくなるため、熱可塑性樹脂1002が顔料浸透層1600の空隙の中に入り込みにくくなる。ただし、熱可塑性樹脂1002の粒子が塗工液中において凝集しやすいものである場合には、平均粒子径が150nm以下の接着剤の粒子を用いてもよい。この場合には、製膜時に熱可塑性樹脂1002の粒子を凝集させて、顔料浸透層1600の空隙を埋めない大きな2次粒子を形成させればよい。このように、熱可塑性樹脂1002の平均粒子径は150nmよりも小さくてもよく、熱可塑性樹脂1002の性質に応じて、顔料浸透層1600の空隙を埋めないように、適宜、熱可塑性樹脂1002の平均粒子径が調整できればよい。また、比較的大きい顔料粒子を想定して、顔料浸透層1600の空隙を比較的大きくする場合には、平均粒子径が200nm以上に大きい熱可塑性樹脂1002を用いることが好ましい。また、熱可塑性樹脂1002の粒子の凝集体によって接着部を構成する場合には、個々の島状の熱可塑性樹脂部1000の面積を小さくしやすいように、平均粒子径が2μm以下の熱可塑性樹脂1002の粒子を用いることが好ましい。
[1−2−4]熱可塑性樹脂部の間隔
顔料インクが接着層1012に残らずに、その全てを顔料浸透層1600に吸収されるためには、インク吸収の基点となる顔料浸透層1600の露出部1001を適切な間隔で配するほうがよい。そのため、想定されるインクジェット記録の1画素に、海部1004が少なくとも1つ以上、すなわち、インク吸収速度の速い顔料浸透層1600の露出部1001が1つ以上存在する。これにより、顔料インク1003は島部(熱可塑性樹脂部)1000の上に残らず、顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601に速やかに吸収されて、接着不良を引き起こさない。また、1画素に1つ以上の露出部1001が存在することにより、着弾したインクは、その着弾位置に対応する画素から大きく外れずに、顔料浸透層1600に吸収されて浸透拡散する。そのため、熱可塑性樹脂1002の直下にも顔料粒子が拡散浸透して、ホワイトポイントの発生を抑制することができる。また、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との境界面にて、顔料粒子と溶媒成分とが固液分離して薄膜状の稠密な顔料画像を形成するため、画像の記録特性も良好となる。インクジェット記録方式によっては、1画素を複数のインク滴によって記録する場合がある。この場合には、インク滴が1画素よりも小さくなるため、そのインク滴の大きさに応じて、1画素に存在する露出部1001の数を増やせばよい。
[1−2−5]熱可塑性樹脂のその他の構成
熱可塑性樹脂1002は一種でも複数種使用してもよく、少なくとも、インク受容層53と接する熱可塑性樹脂1002は粒子形状をほぼ保持していることが重要である。インク受容層53と接する熱可塑性樹脂1002が粒子形状をほぼ保持していることにより、インクの色材が熱可塑性樹脂1002の下部に回り込みやすくなり、インクジェットによる画像の記録特性が向上する。
例えば、粒径の異なる熱可塑性樹脂1002を使用してもよい。粒径の大小は、熱可塑性樹脂1002の体積に関係する。粒径が大きいと、熱可塑性樹脂1002の体積も大きくなり、画像支持体55との接着面積も大きくなるため、接着性を向上させることができる。したがって、粒径の大きい熱可塑性樹脂1002は、画像支持体55への親和性に優れたものとし、粒径の小さい熱可塑性樹脂1002は、粒径の大きい熱可塑性樹脂同士、および粒径の大きい熱可塑性樹脂1002と顔料浸透層1600とのバインダーとすることもできる。粒径の小さい熱可塑性樹脂1002をバインダーとすることにより、粒径の大きい熱可塑性樹脂の粒子間の空隙構造をほぼ維持しつつ、接着層1012を成膜することが可能となる。
接着性を良好にするために、複数の熱可塑性樹脂粒子によって構成することもできる。例えば、記録物の用途に応じた耐候性を考慮して、複数の材質の熱可塑性樹脂1002を用いることができる。具体的には、接着層1012のバインダーとして作用する小粒径の熱可塑性樹脂、極性溶媒でも剥離しにくい大粒径の熱可塑性樹脂、および非極性溶媒でも剥離しにくい大粒径の熱可塑性樹脂等の、複数種類の材質の樹脂を用いてもよい。また、大粒径の熱可塑性樹脂として、特定の画像支持体に対して優れた接着性を現す材質の樹脂を複数種用いてもよい。表面が粗い紙などの画像支持体と接着する場合には、一部が軟化溶融して、粗い表面にも密着できるようなクッション性のよい接着剤を用いてもよい。また、接着層1012は単層でも複層でもよい。例えば、顔料浸透層1600に接着しやすい層と、画像支持体55に接着しやすい層と、を含むように、それぞれの層に接着機能を分けてもよい。熱可塑性樹脂は、その熱可塑性樹脂の膜化温度以上の温度で十分な時間をかけて加圧加熱することにより、接着層1012を軟化溶融膜化させることができる。
[1−2−6]熱可塑性樹脂の量(体積)
熱可塑性樹脂1002の量は、記録媒体1および記録物の用途に応じて調整すればよい。例えば、強い接着力が要求される場合には、軟化溶融して、画像支持体55と顔料浸透層1600との接着面の凹凸を吸収するように膜化できる量であることが好ましい。一方、転写後の顔料浸透層1600を画像支持体55から引き剥がして、画像支持体55を再利用する場合などにおいては、熱可塑性樹脂の接着力は弱くてもよい。この場合には、熱可塑性樹脂の量を少なくすることができる。また、加圧加熱による転写時に熱可塑性樹脂1002を軟化溶融させる際に、加圧力、加熱温度、および加圧加熱時間などを調整することにより、顔料浸透層1600と画像支持体55の間の全面に亘って熱可塑性樹脂1002を膜化させないようにすることも可能である。また、加圧粘着型の熱可塑性樹脂1002を顔料浸透層1600の上に離散的に設けて、島状の接着層1012を形成してもよい。また、接着力を弱く調整した場合には、顔料浸透層1600の露出部1001の面積を大きくして、インクによる画像の記録特性を向上させることができる。
[1−2−7]膜状の熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂1002は粒子状に限定されず、例えば、膜状の熱可塑性樹脂1002を用いて、海島状の接着層1012を形成することもできる。顔料を含む顔料インクを等方的に浸透拡散させる顔料浸透層1600を用いる場合、その顔料浸透層1600の厚みと同程度の範囲において、熱可塑性樹脂1002の直下部に顔料インクが回り込むため、ホワイトポイント(非画像部)の発生を抑制することができる。したがって、島状に離散的に配置された膜状の熱可塑性樹脂1002を表面から視た平面的な大きさは、顔料浸透層1600の厚みと同程度、もしくは、それよりも小さくすればよい。
膜状の熱可塑性樹脂1002は、熱可塑性樹脂部(島部)1000が顔料浸透層1600の膜厚よりもやや小さく、顔料浸透層1600の表層面積に対して熱可塑性樹脂部1000の面積比率が50%以下になるように、顔料浸透層1600の表面に離散的に配置されている。溶媒吸収層1601の厚みは、着弾した全ての顔料インクの溶媒成分を吸収できるように、想定される顔料インクのインク滴1003の大きさと同等、もしくは、それよりも厚い。また、顔料浸透層1600の厚みは、溶媒吸収層1601の厚みよりも小さく、インク滴の大きさに対して同等、もしくは、それよりも小さい。一方、個々の熱可塑性樹脂部1000の大きさは、顔料浸透層1600の厚みと同程度、もしくは、それよりも小さい。したがって、接着部1000の個々の大きさは、インク滴の大きさに対して同等、もしくは、それよりも小さい。
上述したように、インク滴1003は、着弾時の衝撃によって水平方向に約2倍程度に広がる。そのため、熱可塑性樹脂部(島部)の大きさがインク滴と同程度であっても、熱可塑性樹脂部1000上に着弾したインク滴は、着弾衝撃により変形して熱可塑性樹脂部1000から十分にはみ出し、顔料浸透層1600の露出部1001に垂れ込むことができる。また、一部が顔料浸透層1600に接した顔料インクは、インク吸収速度の速い空隙吸収型の顔料浸透層1600内に速やかに引き込まれるため、熱可塑性樹脂1002には残らない。また、顔料インクは、顔料浸透層1600の内部において、インク吸収速度のより速い溶媒吸収層1601に向けて浸透拡散する。同時に、顔料インクは、熱可塑性樹脂1002の直下の顔料浸透層1600の内部にも浸透拡散し、膜状の熱可塑性樹脂1002の直下の部分にも色材である顔料が回り込むことにより、ホワイトポイント(非画像部)の発生を抑制することができる。
[1−2−8]接着層の厚み
顔料浸透層1600の露出部1001にインクを引き込むように吸収させるため、着弾して広がったインクの一部が熱可塑性樹脂部1000からはみ出して顔料浸透層1600の露出部1001に垂れ込むときに、そのインクが千切れないように、接着層1012の厚みを制御することが好ましい。すなわち、インクの粘度および表面張力を考慮して、接着層1012上のインクと、顔料浸透層1600の露出部1001に接したインクと、が千切れないように接着層1012の厚みを制御することが好ましい。
また接着層1012の厚みは、視認性と接着性が良好となるように調整することが重要である。接着性を良好にするためには、接着層1012が軟化して溶融膜化する際に画像支持体55の表面凹凸を吸収できる程度に、接着層1012の厚みを調整する必要がある。また、画像支持体55との接着性が劣る場合には、熱可塑性樹脂1002の総量が多くなるように、接着層1012の厚みを厚くすればよい。このように、熱可塑性樹脂1002の厚みは、使用する熱可塑性樹脂1002および画像支持体55の種類に応じて適宜調整すればよい。
[1−2−9]熱可塑性樹脂部の面積、露出部の面積
本発明において、顔料浸透層1600の露出部1001の面積は、顔料浸透層1600の全面積の50%以上を占めることが好ましい。顔料浸透層1600の露出部1001の面積は、インクの粘度、表面張力、および浸透異方性等を考慮して、エリアファクターがほぼ100%になるように、顔料浸透層1600の全表面に対する露出部の面積の比率(面積比率)を調整すればよい。例えば、顔料浸透層1600内にほぼ等方的にインクが浸透する場合、インクジェット方式により安定に吐出可能な水系インクのにじみ率は約2倍となり、インク滴の直径は、着弾して浸透すると約2倍に広がることが知られている。ほぼ等方的に浸透したインクは、顔料浸透層1600内において水平方向に約25%程度広がるため、顔料浸透層1600の露出部1001の面積比率が50%以上であれば、エリアファクターをほぼ100%として、白抜けが無く、高濃度の濃度を得ることができる。また、顔料浸透層1600の露出部1001の面積が50%以上とすることで、インクが吸収されやすくなり、顔料浸透層1600および接着層1012にインクが残留しにくくなって、発光特性や接着性が良好となる。
次に、露出部の面積の測定方法について説明する。図5に示すように、記録媒体1の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察し、熱可塑性樹脂の粒子が顔料浸透層1600と接している部分の直径Bを測定する。具体的には、顔料浸透層1600と接している熱可塑性樹脂の粒子100個の直径の平均値を算出し、その平均値から熱可塑性樹脂の粒子の1つが顔料浸透層1600と接している部分の面積(接触面積)を算出する。次に、記録媒体1の記録面側からのSEMの投影図より、顔料浸透層1600と接する熱可塑性樹脂の粒子の数を算出して、個々の熱可塑性樹脂の粒子が顔料浸透層1600と接する部分の総和としての接触面積の全面積を求める。測定範囲の全面積から、熱可塑性樹脂の粒子が顔料浸透層1600と接する部分の接触面積の総和を引くことにより、表面に熱可塑性樹脂がない顔料浸透層1600の露出部1001の面積(露出部面積)を算出することができる。また、記録面側からのSEMの投影図から、上方から熱可塑性樹脂部1000を見たときの面積(熱可塑性樹脂部面積)を確認することができる。
[1−2−10]熱可塑性樹脂の材料
接着層1012を形成する熱可塑性樹脂は、インクをほぼ吸収しない熱可塑性樹脂、もしくはインクを吸収したとしても吸収速度が遅い熱可塑性樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂はインクの吸収には直接的に関与しないため、その熱可塑性樹脂の材質は、インクとは関係なく画像支持体55との接着性を重視して選定することができる。したがって本発明の記録媒体1は、様々な画像支持体55と接着することができる。具体的に、使用者は、記録媒体1と接着される特定の画像支持体55の材質に応じて、その画像支持体55に対する接着性に優れた熱可塑性樹脂を公知の熱可塑性樹脂の中から選択して用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩かポリビニル(PVC)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、アクリル、ポリカーボネート、ポリアセタール樹脂(POM)、アクリロニトリルブチレンスチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン(PE)ポリプロピレン(PP)などのプラスチック、紙、ガラス、木材、金属等の特定の画像支持体55との接着性に優れたものを選択して用いることができる。熱可塑性樹脂として、具体的には、有機天然系の材質として、しょうふ、デキストリン、そくい等のでんぷん系、にかわ、カゼイン、大豆タンパク等のたんぱく系、天然ゴム系、漆、松やに、ろう、アスファルトなどが挙げられる。
有機合成系の材質としては、酢酸ビニル系、ポリオール系、ポリビニルアセタール系、酢酸ビニル共重合系、エチレン酢酸ビニル系、塩化ビニル系、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、セルロース系、オレフィン系、スチレン系、ユリア系、メラミン系、フェノール系、レゾルシノール系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系、ポリアミド系、ポリ弁図イミダゾール系、ポリイミド系、イソシアネート系、クロロプレンゴム系、二トリルゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリサルファイド系、ブチルゴム系、シリコーンゴム系、アクリルゴム系、変性シリコーンゴム系、ウレタンゴム系、シリル化ウレタン樹脂系などが挙げられる。
また、無機系の材質としては、ケイ酸ソーダ等の水ガラス系、ポルトランドセメント、しっくい、石膏、マグネシアセメント、リサージセメント等のセメント系、セラミックス系などが挙げられる。
熱可塑性樹脂1002は、上記の材質のみに限定されない。熱可塑性樹脂1002は、1種もしくは複数種選択してもよい。例えば、特定の画像支持体55への接着性に優れた熱可塑性樹脂と、顔料浸透層1600への接着性に優れた熱可塑性樹脂と、を選択して混合させた接着層1012としてもよく、これにより、画像支持体55とインク受容層53のどちらにも良好に接着することができる。
特定の画像支持体55への接着性に優れた熱可塑性樹脂としては、外的刺激によって特定の画像支持体55への接着性が発現するような、刺激活性型の熱可塑性樹脂を用いてもよい。刺激活性型の熱可塑性樹脂としては特に限定されず、公知の刺激活性型の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、熱、圧力、水、光、反応剤等を外的刺激とする刺激活性型熱可塑性樹脂が挙げられる。例えば、刺激活性型熱可塑性樹脂として、熱を外的刺激とし、熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱することによって樹脂が溶融して、画像支持体55との接着性が発現する熱可塑性樹脂を主成分とする感熱型熱可塑性樹脂を用いてもよい。または、刺激活性型熱可塑性樹脂として、圧力を外的刺激とし、常温で短時間、わずかな圧力を加えるだけで画像支持体55に接着可能な感圧型熱可塑性樹脂、すなわち粘着剤を用いてもよい。または、刺激活性型熱可塑性樹脂として、水を外的刺激とし、乾燥状態の熱可塑性樹脂に水を塗布して湿潤状態にすることより接着性を発現させる水活性型熱可塑性樹脂、すなわち再湿性熱可塑性樹脂を用いてもよい。ただし、水活性型熱可塑性樹脂を用いる場合には、接着時に接着面に水が付着するため、インクの色材としては耐水性のものが好ましく、例えば、耐水染料でもよく、より好ましくは顔料である。
熱可塑性樹脂の色および透明性は、記録媒体1および記録物の使用目的に応じて決めればよい。熱可塑性樹脂は透明であってもよく、半透明または不透明であってもよく、あるいは着色されていてもよい。例えば、顔料画像を基材側と接着層1012側の両面から視認可能とする場合には、転写後の接着層1012は透明であってもよい。また、顔料画像を基材側からのみ視認可能とする場合には、熱可塑性樹脂が背景色として着色されていてもよく、画像支持体55を背景色とする場合には熱可塑性樹脂が透明であってもよい。また、記録した顔料画像の画像視認性を向上させるための背景色として、転写後の接着層1012を白色としてもよい。その場合には、熱可塑性樹脂の粒子径を可視光の波長よりも大きくてもよく、または、接着層1012の熱可塑性樹脂1002に白色顔料などを加えてもよい。また、記録内容を接着層1012側から視認可能とする場合、熱可塑性樹脂は、完全な溶融膜化などにより高い透明性が有することが好ましい。
[1−2−11]再剥離可能な接着材料
海島状の接着層1012は、転写時の膜化状態を自由にコントロールできるように設計可能である。すなわち、海島状の接着層1012に含まれる熱可塑性樹脂全体を溶融軟化させることにより完全な膜を形成して、接着層1012を面接着の状態にして転写することが可能である。また、海島状の接着層1012に含まれる熱可塑性樹脂の表面だけを溶融軟化させて、接着層1012を点接着の状態にして転写することも可能である。接着層1012の大部分、あるいは全部を完全に膜化して転写することにより、接着面積を最大限に増やし、面接着の状態として接着性を良好とすることができる。また、接着層1012を完全に膜化させて、海島状の接着層1012のバイパス部を埋めてしまうことにより、得られた記録物に対する水、薬品などの液体、およびオゾンなどの気体の進入の大幅に抑えて、耐水性および耐薬品性などの耐候性を向上させることもできる。一方、接着層1012をあまり膜化させずに点接着の状態として転写することにより、画像支持体55などを剥離可能とすることができる。
[1−2−12]加圧粘着材料
上述したように、顔料インクは、顔料浸透層1600内にて浸透拡散され、熱可塑性樹脂1002の直下部にも回り込んで画像を記録可能であるため、粒子状の熱可塑性樹脂に限定されない。例えば、膜状の加圧粘着材料の熱可塑性樹脂を用いて、加圧粘着性の接着層1012を海島状に形成することも可能である。
一般的に、加圧粘着剤は膜化温度Tgが低いため、室温状態にて膜化しており、粘着剤自体が接着性を有している。このような粘着剤を用いることにより、引き剥がし強度が調整しやすくなる。すなわち、離散的に配する膜状の加圧粘着材料の粘着剤の量を多くし、あるいは強粘着の粘着剤を使用することにより、加熱工程を必要とせずに、加圧工程のみで画像支持体55に転写することができる。また、調整された引き剥がし強度以上の力により画像支持体55を剥離して、それを再利用することも可能となる。
一方、離散的に配する膜状の加圧粘着材料の粘着剤の量を少なくし、あるいは微粘着の粘着剤を使用することにより、画像支持体55に転写する際、画像支持体55に対する記録媒体1の仮止、および貼り直しが可能となる。したがって、画像支持体55と記録媒体1とを張り合わせる際に、それらの位置合わせを簡単かつ正確に行うことができる。例えば、熱によって接着性を現す熱可塑性樹脂1002と、微粘着の粘着剤と、を併用してもよい。この場合には、インクジェット記録装置600により顔料画像1606を形成した後、記録媒体1を手で押さえて撫でる程度の軽圧によって、画像支持体55に記録媒体1を仮固定する。その後、加熱ローラ装置21により加圧加熱し、接着層1012を軟化溶融により膜化させて画像支持体55と本接着させる。この結果、画像支持体55と記録媒体1との位置合わせが容易となり、転写時におけるしわの発生を抑制することができる。
[2]記録媒体の製造方法
本発明の第二の実施形態の記録媒体の基材50ならびに顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601を含むインク受容層53は、上記第一の実施形態で説明した方法で提供および製造することができる。
[2−1]接着層の形成
基材50上に積層されたインク受容層53の顔料浸透層1600の表面に、熱可塑性樹脂1002を含有する接着層1012用の塗工液を塗布して、顔料浸透層1600の表面に熱可塑性樹脂を島状に離散的に設ける。その結果、顔料浸透層1600の表面が露出する露出部1001を残すように、接着層1012を形成することができる。塗工液中の熱可塑性樹脂1002および機能性材料の濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。塗工液中の接着粒子濃度は、塗工液の塗工性および熱可塑性樹脂部の離散性などを考慮して、適宜決定すればよい。ただし、塗膜速度と膜の均一性の観点からは、塗工液の全質量に対して、2質量%以上、かつ40質量%以下とすることが好ましい。塗工方法としては、空隙吸収型の顔料浸透層1600の表面に、接着層1012の熱可塑性樹脂1002を離散的に設ける必要があるため、グラビアコーティング法で行うことが好ましい。その場合、グラビアロールの溝の線数は、好ましく200線、より好ましくは300線、さらに好ましくは600線である。その線数が多くなるほど、インクジェット記録による画像の1画素内に、1つ以上の顔料浸透層1600の露出部1001を容易に形成することができる。また線数を増やすことより島部と島部との間隔が短くなり、熱可塑性樹脂1002の少しの流動によって、島部と島部とが接して膜を形成することができる。この結果、転写時の溶融膜化時間が短くなって、転写の高速化が可能となる。
基材50上に形成された顔料浸透層1600の表面に、粒子状の熱可塑性樹脂1002の塗工液によって接着層1012を塗工する場合には、熱可塑性樹脂粒子は顔料浸透層1600の空隙に入り込まない大きさを選択する。
また、複数の粒子が凝集した状態で成膜されることにより、顔料浸透層1600の表面に、接着層1012の熱可塑性樹脂を離散的に設けてもよい。接着層1012の熱可塑性樹脂1002の離散状態は、記録媒体1および記録物の用途に応じて制御することができる。
また、転写ローラまたは別の転写フィルムなど表面上に、島状に離散して設けた粘着性の接着剤によって樹脂膜を形成しておき、それを顔料浸透層1600の表面に圧着転写してもよい。転写ローラまたは転写フィルムなど表面に形成した樹脂膜は、その離散パターンのまま顔料浸透層1600に転写できるため、顔料浸透層1600の表面に形成された熱可塑性樹脂の離散状態を任意にコントロールすることができる。この方法によれば、顔料浸透層1600の空隙への熱可塑性樹脂1002の浸透を考慮する必要がない。
さらに、基材上に溶媒吸収層1601の塗工液、顔料浸透層1600の塗工液、および接着層1012の塗工液を、スライドダイコーター、スロットダイコーター、あるいはカーテンコーターを使用して同時に塗工することにより、溶媒吸収層1601、顔料浸透層1600、および接着層1012を同時に形成してもよい。この方法においては溶媒吸収層1601、顔料浸透層1600、接着層1012の各々の塗工液の粘度および表面張力を適切に調整することにより、各々の塗工液を乾燥の過程において混合させることなく、それらを製膜することができる。すなわち、溶媒吸収層1601および顔料浸透層1600の空隙を埋めることなく、これらの層を形成することができ、さらに接着層1012の熱可塑性樹脂1002を離散的に顔料浸透層1600に設けることができる。
[3]記録物の製造方法
本発明の第二の実施形態の記録媒体1は、上記第一の実施形態の記録媒体1を用いた製造方法と同様に、インク受容層53の上方から、顔料インクを用いてインクジェット記録方式により画像を記録する画像記録工程を経て、顔料浸透層1600に顔料画像が形成されて、記録物73が得られる。第二の実施態様の記録物はさらに、接着層1012を介して画像支持体55にヒートローラーなどで加熱圧着する工程を経て、顔料インクで記録された画像を画像支持体55に転写させた記録物73を得ることができる。以下記録物の製造方法の各工程について説明する。
[3−1]インクジェット方式による画像記録方法
本発明の第二の実施形態の記録媒体1は、上記第一の実施形態の記録媒体1を用いた製造方法と同様のインクジェット記録方式により画像を記録することができる。
[3−1−1]顔料インクの浸透拡散性
本発明において、インクの表面張力および粘度は、記録媒体1の記録面に着弾したインクの一部が、熱可塑性樹脂部1000からはみ出して顔料浸透層1600の露出部1001に垂れ込む場合に、接着層1012の表面においてインクが千切れないように調整する。さらに、インクの表面張力および粘度は、インクの一部が接着層1012における熱可塑性樹脂部1000の相互間の空間をバイパス的に通過して、吸収速度の速い顔料浸透層の露出部1001に接した後、そのインクが顔料浸透層1600に引き込まれて吸収されるように調整する。また、インクの表面張力および粘度は、顔料浸透層1600に浸透した顔料インクが、顔料も含めて薄膜の顔料浸透層1600内に浸透拡散するように調整する。
このように顔料インクの粘度を調整することにより、その顔料インクは、顔料浸透層1600の浸透異方性に応じて、顔料浸透層1600の膜厚方向および水平方向に拡がりながら拡散して浸透する。これにより、顔料インクの顔料色材は、顔料浸透層1600と接する熱可塑性樹脂の直下の部分にも回り込む。この結果、ホワイトポイント(非画像部)の発生を抑制して、高精彩の画像を記録することができる。さらに、顔料浸透層1600を通過した顔料インクは、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に到達すると、顔料インクの顔料成分と、水成分および溶剤成分と、に固液分離する。その結果、溶媒吸収層1601側における顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に、薄膜で稠密な顔料画像を形成する。また、顔料インクの溶媒成分は、インク吸収速度が顔料浸透層1600よりも高い溶媒吸収層1601に吸収されるため、高濃度の画像形成が可能になる。また、上記のように顔料インクの粘度を調整することにより、インクの吐出時におけるインクの流動性が向上し、ノズルへのインク供給性、ひいてはインクの吐出安定性も向上する。また、上記のようにインクの表面張力を調整することにより、インクを吐出時に、インクの吐出口におけるインクのメニスカスを維持することができる。
インクの粘度は、JIS Z 8803に準拠し、温度25℃の条件下において、E型粘度計(例えば、東機産業製「RE−80L粘度計」等)を用いて測定した値を意味するものとする。インクの粘度は、界面活性剤の種類および量の他、水溶性有機溶媒の種類および量等により調整することができる。
インクの表面張力は、温度25℃の条件下において、自動表面張力計(例えば、協和界面科学製「CBVP−Z型」等)により、白金プレートを用いたプレート法によって測定した値を意味するものとする。インクの表面張力は、界面活性剤の添加量、水溶性有機溶剤の種類、および含有量等により調整することができる。
[3−2]転写方法
記録媒体1の接着層1012を介して、顔料浸透層1600に顔料インクを付与することにより画像を記録(例えば、インクジェット記録)する。画像を視認する方向に応じて、その画像として、正像あるいは反転画像を記録する。次に、離散的に配された熱可塑性樹脂1002を介して記録媒体1を画像支持体55に転写することによって記録物を得る。
本発明においては、転写工程において、溶媒吸収層1601が水分を十分に含んだ状態でも良好に転写することができる。空隙吸収型の溶媒吸収層1601は、前述したように、インクを多量に吸収でき、かつ転写時に溶媒吸収層1601の空隙構造が壊れにくく、転写後も空隙構造を保持することが可能である。そのため、溶媒吸収層1601の内部に吸収したインクの溶媒は、転写時に、熱可塑性樹脂およびバインダーが溶融しても溶媒吸収層1601の内部に保持することができ、また、蒸気が発生しても溶媒吸収層1601の内部に封じ込めることができる。したがって、水分を十分に含んだ状態でも良好に転写することができる。また、顔料浸透層1600上に離散的に配された熱可塑性樹脂の接着層1012において、その熱可塑性樹脂1002は、インクをほぼ吸収しない、もしくはインクを吸収したとしても吸収速度が遅い熱可塑性樹脂である。そのため、接着層1012の表面および接着層1012の内部にはインクが残りにくい。この結果、接着層1012に転写を阻害するインクが残留しにくく、記録媒体1を画像支持体55に良好に転写することができる。
本発明において好ましい接着方法は、熱可塑性樹脂1002の特性に応じて選択することができる。例えば、熱可塑性樹脂1002に刺激応答性の材料を使用した場合、熱可塑性樹脂1002が水活性型であれば、記録媒体1に画像を形成した後に、水塗布装置を用いる水塗布工程によって水を塗布する。これにより、離散的に配した熱可塑性樹脂の接着層1012に、接着性を発現させることができる。また、熱可塑性樹脂1002が紫外線活性型であれば、記録媒体1に画像を形成した後に、紫外線照射装置を用いる紫外線照射工程によって紫外線を照射する。これにより、離散的に配した熱可塑性樹脂の接着層1012に、接着性を発現させることができる。
熱可塑性樹脂1002が熱活性型および自己溶融型であれば、記録媒体1に画像を形成した後に、加熱装置を用いる加熱工程によって加熱することにより、離散的に配した熱可塑性樹脂の接着層1012に接着性を発現させることができる。加熱装置としては、加熱ファン、加熱ベルト、熱転写ヘッド等を用いる装置が挙げられるが、これに限られるものではない。
熱可塑性樹脂が粘着型であれば、離散的に配した熱可塑性樹脂の接着層1012は、それ自体が接着性を発現している状態にあるため、圧着工程によって圧着することにより、離散的に配した熱可塑性樹脂の接着層1012に接着性を発現させることができる。熱可塑性樹脂1002が複数の材料により構成されている場合には、複数の装置を組み合わせによる複数の転写工程を含んでもよい。
[3−2−1]画像支持体
画像支持体55としては、例えば、樹脂を構成材料とする画像支持体(樹脂ベース支持体)、紙を構成材料とする画像支持体(紙ベース支持体)等を挙げることができる。さらに、本発明の転写材は、ガラスや金属などの種々の画像支持体にインクジェット画像を転写することができる。画像支持体55の材質としては、特に制限されず、画像支持体の材質に応じて、画像支持体と良好に接着可能な熱可塑性樹脂を適宜選定して、顔料浸透層1600上に海島状に形成した記録媒体1を用いればよい。樹脂ベース支持体を構成する樹脂は、画像支持体の用途に応じて適宜選択すればよく、特に制限されず、例えば、前述の基材と同様の材質のものを用いることができる。
[3−2−2]ヒートローラ転写
本発明においては、熱可塑性樹脂として、熱や圧力により軟化溶融膜化して接着性を発現する熱可塑性の粒子を用いることが好ましいため、転写方法として、加熱と圧着とを併用した加熱圧着工程により転写方法を用いることが好ましい。このような転写のための構成としては、ヒートローラと加圧ローラとを併用した構成が挙げられる。
図9の例では、画像が形成された記録媒体1と、画像支持体55と、を重ね合わせてから、それらを、加熱されたヒートローラ21と加圧ローラ22との間に通す。前述したように、記録媒体1の顔料浸透層1600には顔料画像1606が形成され、その顔料浸透層1600を、接着層1012を介して画像支持体55と重ね合わせてから、それらをヒートローラ21と加圧ローラ22との間を通して搬送する。これにより、離散的に配した熱可塑性樹脂1002の接着層1012を介して、記録媒体1と画像支持体55とが接着され、記録物を得ることができる(工程(c))。熱可塑性樹脂1002は、加圧加熱により軟化溶融した接着層1012となることにより、画像支持体55と強固に接着する。
また本発明においては、加熱圧着によって、顔料浸透層1600に顔料画像1606が記録された記録媒体1を画像支持体55に転写する場合に、加熱圧着後にも溶媒吸収層1601の空隙構造が維持されるように、加熱圧着時の熱や圧力が制御される。図9に示すように、ヒートローラ21と加圧ローラ22とによって加圧加熱により、粒子状の熱可塑性樹脂1002は溶融して膜化されるものの、溶媒吸収層1601に吸収された顔料インクの溶媒成分1607は、空隙構造に保持されたままである。このように空隙構造を維持することにより、加熱圧着時の熱や圧力によって、インクの液体成分が溶媒吸収層1601の空隙内において突沸して、蒸気が発生したとしても、その蒸気を各々の空隙内に封じ込めることができる。この結果、接着面に空気層などが形成されずに、接着性を良好とすることができる。また、転写時に溶媒吸収層1601の空隙構造が維持されず、圧力による空隙の潰れ、および加熱による空隙の溶解が抑制されるため、インクの液体成分である不揮発性溶剤の染み出しを防止して、接着性を良好とすることができる。また本発明の記録媒体1を用いた方法によれば、加熱加圧による顔料浸透層1600から水を含むインク溶媒の染み出しを防ぐことができるため、発光粒子に水分が触れにくく、発光粒子の加水分解が起こりにくくなり、発光特性が良好となる。
加熱圧着時の温度は、離散的に配した熱可塑性樹脂1002が接着性を発現する、ガラス転移温度以上に制御する。これにより、離散的に配した熱可塑性樹脂を介して、画像支持体55に記録媒体1を転写させることができる。より好ましくは、空隙吸収型のインク受容層53(溶媒吸収層1601および顔料浸透層1600)を形成する水溶性樹脂が溶解するガラス転移温度以上に、加熱圧着の温度を制御する。これにより、インク受容層53の水溶性樹脂と、熱可塑性樹脂と、が互いに溶融して接着し、接着性が向上させることができる。
また、加熱圧着時の温度は、画像支持体と記録媒体1を加熱圧着させる際に、溶媒吸収層1601の空隙構造を必要以上に潰すことなく、接着後も空隙構造を維持するように制御される。すなわち、加熱によって、空隙が溶解してインクの液体成分である不揮発性溶剤が表面に染み出さないように、空隙を構成する成分の溶解温度以下で転写させることが好ましい。また、インクの水および溶媒成分が個々の空隙内で突沸や蒸気しないように、特に、水の沸点以下の温度で転写させることが好ましい。
加熱圧着時の圧力は、0.5kg/cm以上、かつ7.0kg/cm以下とすることが好ましい。加熱圧着時の圧力を0.5kg/cm以上とすることにより、接着層1012を介して、顔料画像1606が記録された顔料浸透層1600の表面を画像支持体55に密着させて、画像支持体55と記録媒体1とを圧着させることができる。すなわち、顔料浸透層1600と画像支持体55との間に、顔料浸透層1600の微細な凹凸によって生じる空間を、離散的に配した熱可塑性樹脂1002の軟化溶融した熱可塑性樹脂によって、十分に満たして膜化することができる。一方、加熱圧着時の圧力を7.0kg/cm以下とすることにより、画像支持体55と記録媒体1とを加熱圧着させる際に、溶媒吸収層1601の空隙構造を必要以上に潰すことなく維持することができる。この結果、顔料インクの液体成分である水および不揮発性溶剤が表面に染み出すことを防止して、接着性を良好とすることができる。
[3−3]記録物の製造装置
本発明の第二の実施形態の記録媒体1を用いて記録物73を製造する製造装置を説明する。本発明の記録媒体1に画像を記録する装置としては、顔料インクを用いて記録するものであれば、公知の小型のインクジェットプリンタ、あるいは大判プリンタを使用することができる。また、記録媒体1を画像支持体に接着転写して、必要に応じて、基材を剥離する装置としては、ダイニック社製のD−10や、フジテックス社製のLPD3223 CLIVIA等の公知のラミネーターが使用できる。ラミネーターとしては、一対のヒートローラ21,加圧ローラ22を備えており、それらのローラ間を画像支持体と記録媒体1が通過する際に、記録媒体1の顔料浸透層1600が画像支持体に加熱圧着されるであればよい。
また、画像支持体55の裏面側に接する加圧ローラ22としては、離型性に優れたシリコーンローラを使用することが好ましい。シリコーンローラはSP値が8.7付近になるため、ヒートローラ21と加圧ローラ22との間に画像支持体55が存在しないときでも、つまり離散的に配した熱可塑性樹脂の接着層1012を有する顔料浸透層1600の表面が直接的に加圧ローラ22に接するときでも、顔料浸透層1600の表面を転写させないようにできる。したがって、離散的に配した熱可塑性樹脂を介して、インク受容層53の表面が加圧ローラ22へ不如意に接着することが防止できる。
[4]記録物
本発明の第二の実施形態では、図6(a)に示す記録媒体1に、図6(b)のように記録ヘッド600により記録媒体11の記録面すなわち顔料浸透層1600側にインクを付与して、画像1606を記録する。ついで、画像支持体55を接着層を形成した面に加熱圧着させ、画像支持体55に画像1606を転写し(図6(c))、記録物が得られる(図9(c))。このように、本発明により、特別なインク受容層を設けられていない種々の画像支持体55に、安全性の高い水系顔料インクを用いて、高精細なインクジェット画像を転写および形成することが可能である。
[4−1]接着層を膜化させた記録物
また、本発明の記録媒体1における海島状の接着層1012は、転写時に膜化される状態を自由にコントロールすることができる。すなわち、接着層1012に含まれる熱可塑性樹脂全体を溶融軟化させて完全に膜化し、接着層1012を面接着の状態にして、転写することも可能である。あるいは、接着層1012に含まれる熱可塑性樹脂の表面だけを溶融軟化させ、接着層1012を点接着の状態にして転写することも可能である。接着層1012の大部分あるいは全部を完全に膜化して転写することにより、接着面積を最大限に増やして、接着性を良好にすることができる。さらに、接着層1012を完全に膜化させて、海島状の接着層1012のバイパス部を埋めてしまうことにより、記録物を構成したときに、水または薬品などの液体、およびオゾンなどの気体の進入を大幅に抑えて、耐水性および耐薬品性などの耐候性を向上させることもできる。加えて、海島状の接着層1012に含まれる機能性材料を隠蔽性粒子とし、接着層1012を膜化させて、隠蔽性粒子を全面に広げることにより、隠蔽性をより向上させることもできる。
また、接着層1012をあまり膜化させずに転写することにより、インク受容層53(顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601)と画像支持体とを剥離可能とすることができる。接着層1012を完全に膜化して面接着の状態にして転写した場合、製造された記録物を水に浸漬したときには、顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601の端部からしか水は吸収されない。そのため、顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601の膨潤は非常に遅くなる。この結果、長時間の浸漬によって顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601が膨潤したとしても、膨潤した顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601は画像支持体55の全面を押すだけであって、顔料浸透層1600と画像支持体55とを引き剥がす剥離力は発生しない。
一方、接着層1012を点接触の状態にして転写した場合には、製造された記録物を水に浸漬したときに、水を吸って膨潤した露出部1001の顔料浸透層1600が画像支持体55を押して、熱可塑性樹脂1002と画像支持体55を引き剥がす方向に力が働く。その力が顔料浸透層1600と画像支持体55とを引き剥がす剥離力となるため、顔料浸透層1600と画像支持体55との剥離が可能となる。このように接着層1012を点接触の状態で転写した場合には、海島状の接着層10121012のバイパス部1004は維持されているため、水がバイパス部1004を通って熱可塑性樹脂全体に急速に染み渡り、短時間で画像支持体55の引き剥がしが可能となる。さらに、記録物を温度の高い水などに漬けて、顔料浸透層1600の膨潤率を高くすることにより、さらに短時間で顔料浸透層1600を画像支持体55から容易に引き剥がしが可能となる。また、画像支持体55をリサイクルして利用することもできる。
画像支持体55の再利用を図る上において、本発明の記録媒体1に顔料インクによって画像を記録することは有利である。すなわち、顔料画像1606は、顔料浸透層1600内の底部に薄膜状に稠密に形成されていて画像支持体55に直接接しないため、画像支持体55の再利用時の障害となる画像支持体55への画像移りの発生を抑えることができる。仮に、空隙径の小さいインク受容層53(溶媒吸収層1601)の表面において顔料インクを固液分離させる記録媒体1の場合には、転写時に、インク受容層53上において固液分離して形成された顔料画像と、画像支持体55と、が直接接するおそれがある。そのため、画像支持体55に顔料画像が転写される画像移りが発生して、画像支持体に記録情報が残る場合があり、画像支持体55の再利用性が低下するおそれがある。
C.第三の実施形態
[1]記録媒体
本発明の記録媒体の第三の実施形態について、図を用いて説明する。本発明の第三の実施形態は、図1(c)に示すように、剥離層1701を有する基材50上に、顔料と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層53と、当該インク受容層53の表面に熱可塑性樹脂1002を離散的に配置させた接着層1012とを設けた記録媒体1を提供する。詳細には、前記インク受容層53は、前記溶媒および前記顔料の浸透を可能とする顔料浸透層1600と、前記顔料を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層1601と、を有し、前記基材側から、前記溶媒吸収層1601、前記顔料浸透層1600の順に積層されている。さらに、接着層1012は、顔料浸透層1600の表面に顔料浸透層の露出部1001を残すように、熱可塑性樹脂1002を離散的に配置する。また、前記顔料浸透層1600は、発光粒子1700を含む。さらに、本発明の第三の実施形態の記録媒体は、当該接着層1012により画像支持体55と接着し、ついで基材50を剥離して、記録物73を提供することができる。
上記剥離層1701は、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との間に設けてもよい(図示せず)。溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600の界面において、基材と溶媒吸収層1601とを一体的に剥離する場合には、基材上に、溶媒吸収層1601と密着する密着層を予め設けておいてもよい。
また、剥離後に露出することとなる、剥離層1701の基材50とは反対側の面に、保護層1703を設けてもよい(図7(a)−(c)参照)。
本発明の第三の実施形態の記録媒体において、顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601を含むインク受容層53、ならびに接着層1012には、上記第一の実施形態および第二の実施形態で説明した材料を用いることができる。
第三の実施形態の記録媒体1において、基材50は上記第一の実施形態および第二の実施形態で説明した材料を用いることができる。さらに、基材50として、搬送層と透明保護層、ホログラム層、記録層などの機能層をさらに備えた積層構造体(図示せず)を用いてもよい。該搬送層と機能層との間には、剥離層を設けることができる。
[1−1]剥離層
本発明において、剥離層1701を、基材50上に、または溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600との間に設けることができる。
剥離層1701は、離型剤と適当な媒体とを混合した塗工液を調製し、これを基材50または溶媒吸収層1601の表面に塗布して乾燥させることによって形成することができる。離形剤は液体状でも粒子状であってもよい。また、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。
塗工液中の離型剤の粒子濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。塗膜速度と膜の均一性の観点からは、塗工液の全質量に対して、0.1質量%以上かつ5質量%以下とすることが好ましい。塗工液の塗工量は、固形分換算で0.1g/m2以上、かつ1g/m2以下とすることが好ましい。溶媒吸収層1601上に剥離層を形成する場合、塗工量を0.1g/m2以上、好ましくは1g/m2以下とすることにより、溶剤浸透層へのインク中の水成分および溶媒成分の吸収速度を良好に保つことができる。
[1−2]保護層
本発明の記録媒体1は、転写および剥離工程後に、転写した記録物の画像の記録面の耐候性、耐摩擦性、および耐薬品性などの耐久性を向上させるために、保護層1703を含んでいてもよい。保護層には、無色透明の保護層の他、半透明の保護層、着色された透明の保護層、白色などに着色された保護層なども含まれる。透明な保護層は、JIS K7375に準拠して測定される全光線透過率が50%以上、好ましくは90%以上のシートに相当する。保護層の種類は特に限定されない。保護層としては、耐候性、耐摩擦性、および耐薬品性などの耐久性に優れ、インク受容層53との相溶性が高い材質からなるシートおよびフィルムが好ましい。保護層は、1種あるいは複数の樹脂を用いて形成してもよい。例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン/ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂、またはそれらの共重合体樹脂を用いることができる。
保護層1703は、用途に応じて、転写後に透明、半透明、または不透明であってもよく、また着色されていてもよい。転写後に保護層が所望の光学的特性となるように、適宜、保護層材料を選択して、保護層の厚み等を調整することができる。
保護層1703用の塗工液の媒体としては、水性媒体を用いることが好ましい。水性媒体としては、水;水と水溶性有機溶剤との混合溶媒;等を挙げることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;等を挙げることができる。
保護層1703用の塗工液には、本発明の効果を妨げない限り、各種の添加剤を含有させることができる。また、保護層1703は、樹脂を含む塗工液を、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、スロットダイコーティング法等により塗工して、乾燥させることにより形成することができる。保護層1703用の塗工液の塗工量は、固形分換算で1〜40g/m2とすることが好ましく、さらに好ましくは2〜30g/m2、さらにより好ましくは4〜20g/m2である。塗工量を好ましくは1g/m2以上、さらに好ましくは2g/m2以上、さらにより好ましくは4g/m2以上とすることにより、保護層の耐水性や耐擦過性を確保することができる。一方、塗工量を、好ましくは40g/m2以下、さらに好ましくは30g/m2以下、さらにより好ましくは20g/m2以下とすることにより、保護層の透明性を用途に応じて向上させることができる。さらに、加熱圧着の際の熱伝導を良好として、保護層とインク受容層53との密着性(転写性能)を向上させることもできる。
[2]記録媒体の製造方法
本発明の第三の実施形態の記録媒体の基材50、顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601を含むインク受容、ならびに接着層1012は、上記第一の実施形態および第二の実施形態で説明した方法で提供および製造することができる。熱可塑性樹脂1002を単粒子で離散的に設けた場合には、離散的に配された各々の熱可塑性樹脂1002の強度が低くて、引き剥がし時に順次島部が破壊されやすくなり、引き剥がし強度が低くなる場合がある。一方、熱可塑性樹脂1002を複数の粒子が凝集した状態で離散的に設けた場合には、離散的に配された各々の熱可塑性樹脂1002の強度が高くなり、引き剥がし強度を高めることが可能である。
[2−1]剥離層の形成
基材50上、または、溶媒吸収層1601の表面に、上記剥離層1701の塗工液を塗布して、剥離層1701を設ける。
剥離層1701は、基材50または溶媒吸収層1601に対して、前ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、スロットダイコーティング法等により、上述した離型剤を含有する組成物を塗工して、乾燥することにより形成される。
また、基板50上に保護層1703を設けた後、保護層1703の表面に剥離層1701を形成してもよい。保護層1703は、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、スロットダイコーティング法等によって、予め剥離層を設けた基材の表面に保護層用塗工液を塗工して、乾燥(加熱)させることにより、形成することができる。
また、基材50もしくは保護層1703には、表面改質を行ってもよい。基材の表面を粗面化する表面改質を行うことにより、基材50の濡れ性を向上させて、保護層1703の塗膜性を向上させることができる。表面改質の方法としては、特に制限はない。例えば、透明保護層1703の表面に、予めコロナ放電処理またはプラズマ放電処理を行う方法;基材50の表面にIPAやアセトン等の有機溶剤を塗工する方法等を挙げることができる。これらの表面処理は、基材50と透明保護層1703との結着性を高めて、それらの強度を向上させることもできるため、転写前における基材50からの透明保護層1703の剥離を抑制することができる。同様に、基材50に剥離層1701を介して保護層1703を設けて、その保護層1703の表面改質を行うことにより、保護層1703と溶媒吸収層1601との密着性を高めることもできる。
さらに、基材50上に、製造する記録媒体1の構造に即して、密着層の塗工液、溶媒吸収層1601の塗工液、剥離層1701の塗工液、顔料浸透層1600の塗工液、および接着層1012の塗工液を、スライドダイコーター、スロットダイコーター、あるいはカーテンコーターを使用して同時に塗工することにより、密着層、溶媒吸収層1601、剥離層1701、顔料浸透層1600、および接着層1012を同時に形成してもよい。この方法においては、密着層、溶媒吸収層1601、剥離層1701、顔料浸透層1600、接着層1012の各々の塗工液の粘度および表面張力を適切に調整することにより、各々の塗工液を乾燥の過程において混合させることなく、それらを製膜することができる。
[3]記録物の製造方法
本発明の第三の実施形態の記録媒体1は、上記第一の実施形態および第二の実施形態の記録媒体1を用いた製造方法と同様に行なうことができる。具体的には、インク受容層53(溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600)の上方から、顔料インクを用いてインクジェット記録方式により画像を記録する画像記録工程を経て、顔料浸透層1600に顔料画像が形成されて、記録物73が得られる。その後、接着層1012を介して画像支持体にヒートローラーなどで加熱圧着する工程を経て、顔料インクで記録された画像を画像支持体55に転写させた記録物を得ることができる。本発明の第三の実施形態の記録物は、さらに、画像が転写された記録物から、基材50を剥離して、記録物73(図10(c)および(d))を提供する。以下、記録物の製造方法の各工程について説明する。
[3−1]転写記録物の製造
本発明の第三の実施形態の記録媒体1は、上記第一の実施形態および/または第二の実施形態の記録媒体1を用いた製造方法と同様のインクジェット記録方式により画像を記録することができる。さらに、画像が形成された記録媒体1に対し、第二の実施形態の記録媒体1に対して行なったように加熱圧着を行い、画像を画像支持体55に転写することができる。
[3−2]剥離方法
本発明の第三の実施形態において、上記のとおり、画像支持体55に画像を転写された記録物73は、基材50を分離部材および剥離ローラを用いて剥離することができる。上述したように、接着層1012は、加熱ローラ21と加圧ローラ22とによって加圧加熱されることにより膜化して、顔料画像1606が底部に形成された顔料浸透層1600と、画像支持体55と、を接着する。その後、分離部材および剥離ローラによって、顔料画像1606が形成された顔料浸透層1600、溶媒成分1607を吸収した溶媒吸収層1601、および保護層1703を画像支持体55に残すようにして、基材50が分離される。
基材が加熱時に剥離される熱時剥離タイプのものである場合には、加熱圧着後、温度が下がらないうちに、直ちに基材50を剥離することが好ましい。基材50が熱時剥離タイプの場合は、分離爪を備えた剥離機構、または剥離ロールを用いて、基材50を剥離することが好ましい。このような剥離方法は、記録媒体1をロール・ツー・ロール(roll to roll)によって供給する場合、つまりロール状の記録媒体を繰り出して供給し、その記録媒体1から剥離した基材50をロール状に巻き取る場合に、生産性を高めることができる。
基材が冷温時に剥離される冷時剥離タイプの場合には、温度が下がっても基材を剥離することができるため、ロールおよびピール機構による剥離だけではなく、手動による剥離も可能になる。したがって、冷時剥離タイプの基材は、特に、記録媒体1がカットシート状に加工されている場合に好適である。
[4]記録物の製造装置
本発明の第三の実施形態の記録媒体1を用いて記録物73を製造する製造装置を説明する。ただし、本発明の記録媒体を製造するのに用いることができる製造装置は一例をしめすものであって、下記の実施形態に限定されるものではない。
図8(a)のインクジェット記録装置は、搬送機構410によってカットシート状の記録媒体1を矢印A1方向に搬送しつつ、記録ヘッド600によって、記録媒体1の顔料浸透層1600に顔料画像1606、1624を記録する。その後、図8(b)のように、顔料画像1606,1624が記録された記録媒体1を折り曲げて、画像支持体55を挟み込む。そして、それらの記録媒体1と画像支持体55を、上下の加熱ローラ21によって構成された両面加圧加熱式の転写装置に挿入して加圧加熱することにより、顔料浸透層1600を画像支持体55の表裏面に密着させる。その後、図8(c)に示すように、手動により、基材50の表裏面を溶媒吸収層1601から剥離する。溶媒吸収層1601は、空隙構造を保持できるように構成されているため、顔料インクの溶媒成分1607、1625は溶媒吸収層1601に残っていてもよい。このような、一体型の装置は、例えば、特許文献2に記載されているものも使用できる。
基材50を剥離する際の剥離角度θは0〜165°であり、さらに好ましくは90°〜165°である。この剥離角度θを設定することにより、箔切れ性を良好にすることができる。搬送角度θは、上記の角度のみに限定されない。
加熱圧着および剥離の工程においては、公知の2本ロールタイプ、あるいは4本ロールタイプのラミネート機を使用してもよい。4本ロールタイプは、2本ロールタイプに比べて加熱圧着時の熱が伝わりやすく、剥離工程を容易に行うことができるため好ましい。
本発明において、基材50の全てが剥離される記録媒体1を用いる場合には、離散的に配された熱可塑性樹脂を介して、反転画像を記録することができる。その後、画像が記録された記録媒体1を画像支持体に転写(接着)した後、剥離工程により基材50の全部を剥離する。これにより、画像が記録された顔料浸透層1600が、離散的に配された熱可塑性樹脂を介して画像支持体に積層された、記録物73を得ることができる。
また、基材50が透明保護層、ホログラム層、記録層などの機能層をさらに備えた積層構造体の場合には、記録媒体1と画像支持体とを接着した後の剥離工程において、基材50の搬送層(基材の一部)のみを剥離してもよい。これにより、それらの機能層と一体化した溶媒吸収層1601と、顔料画像が記録された顔料浸透層1600と、が熱可塑性樹脂1002を介して画像支持体55に積層された、記録物73を得ることできる。
[5]記録物
本発明の第三の実施形態では、図6(a)に示す記録媒体1に、図6(b)のように記録ヘッド600により記録媒体1の記録面すなわち顔料浸透層1600側にインクを付与して、画像1606を記録する。ついで、画像支持体55を接着層を形成した面に加熱圧着させ、画像支持体55に画像1606を転写し(図6(c))、さらに基材50を剥離して(図6(d))、記録物73が得られる(図10(c)および(d))。
[5−1]基材の全てが剥離される記録物
本発明の第三の実施形態の記録媒体1として、搬送層を含む基材の全てが剥離される記録媒体1と、この記録媒体1を用いて作成した記録物と、について説明する。
搬送層を含む基材の全てが剥離される記録媒体1は、図6(a)のように、基材50上に、空隙吸収型の溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600とを設け、その顔料浸透層1600の表面に、接着層1012として熱可塑性樹脂1002を離散的に設けることにより、構成される。顔料浸透層1600の表面には、接着層1012の熱可塑性樹脂部1000が位置する部分と、熱可塑性樹脂のないバイパス部と、が形成される。記録物を作成する際には、まず、図6(b)のように、インクジェット記録ヘッド600から吐出される顔料インクによって、接着層1012を介して、記録媒体1に反転画像を記録する。その際、顔料インクの一部は、接着層1012における熱可塑性樹脂部1000の相互間の空間をバイパス的に通過して、顔料浸透層1600の露出部1001に接する。これにより、顔料インクは、顔料浸透層1600に引き込まれるようにして吸収される。顔料インクは、顔料浸透層1600内を拡散浸透して溶媒吸収層1601との界面に到達すると、顔料浸透層1600と、顔料粒子よりも空隙が小さい溶媒吸収層1601と、の界面にて固液分離する。これにより、顔料浸透層1600の界面側の底部に、薄膜状の稠密な顔料画像1606が形成され、溶媒成分1607のほぼ全量は、インク吸収速度がより高い溶媒吸収層1601側に吸収される。次に、図6(c)のように、離散的に配された熱可塑性樹脂1002によって、画像が記録された記録媒体1を画像支持体55に接着(転写)させる。その後、図6(d)のように、搬送層(基材50の全部)を剥離することにより、図6(e)のような記録物73を得る。
このようにして作製した記録物73(図10(c))は、前述したように発光特性および接着性に優れる。さらに、最表層が溶媒吸収層1601となるため、この記録物73の表面に対して、第2の画像(顔料画像)の形成が可能である。また、前述したように、溶媒吸収層1601は、加熱圧着による転写によっても空隙構造が維持されるように形成されているため、インク吸収性に優れた記録表面を再形成することができる。これにより、顔料浸透層1600に記録されて改竄できない顔料画像1606に加えて、加筆および捺印などによって新たな画像の記録(追記)も可能となる。具体的には、記録媒体1に接着層1012側から、予めセキュリティー性の高い文字情報等を含む顔料画像(反転画像)1606を記録した記録物を作成する。その後、必要に応じて、その記録物の表面に第2の画像(顔料画像;正像)を形成することができる。
[5−2]基材の一部が剥離される記録物
本発明の第三の実施形態の記録媒体1の他の実施態様において、基材50は搬送層と、保護層などの機能層とを含む積層構造体である。機能層1703は、例えば、透明保護層、または予め画像が記録された前記録層などである。顔料浸透層1600の表面には、接着層1012の熱可塑性樹脂部1000が位置する部分と、熱可塑性樹脂のないバイパス部(顔料浸透層1600の露出部1001)と、が形成される。
記録物を作成する際には、まず、図7(b)のように、インクジェット記録ヘッド600から吐出される顔料インクによって、記録媒体1の顔料浸透層1600に顔料画像(反転画像)1606を記録する。次に、反転画像が記録された記録媒体1と画像支持体55とを重ねて、離散的に配された熱可塑性樹脂1002を加熱ローラ21に加圧および加熱することによって、記録媒体1を画像支持体55に接着(転写)する。その後、図7(c)のように、機能層1703を除く基材50の一部(搬送層)を剥離する。これにより、画像支持体上に、接着層1012と、顔料画像1606と、顔料画像1606を保持した顔料浸透層1600と、空隙構造に溶媒を吸収した溶媒吸収層1601と、溶媒吸収層1601上に残された表面の保護層1703とが、形成されたインクジェット転写画像記録物(図7(c))を作成できる。
保護層1703により、溶媒吸収層1601に保持された空隙構造の表面を保護することで、画像表面の機械的強度を向上させるとともに、記録物の表面から溶媒吸収層1601の空隙構造に侵入しようとする、汚染液体、有害ガスなどによる汚染を防止することができる。
このような記録物73は、前述の通り、発光特性、画像支持体との接着性、画像特性に優れ、その最表層が保護層、ホログラム層、あるいは前記録層などの機能層1703であるため、高い耐久性およびセキュリティー性を得ることができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例によっていかなる制限を受けるものではない。なお、以下の記載における「部」、「%」は特に断らない限り質量基準である。
[アルミナ水和物分散液1の調製]
ベーマイト構造(擬ベーマイト構造)を有するアルミナ水和物A(商品名「Disperal HP14」、サソール製)20部を純水79.6部中に添加し、さらに酢酸0.4部を添加して解膠処理を行うことにより、20%のアルミナ水和物分散液1を得た。アルミナ水和物分散液1におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は140nmであった。
[蓄光分散液1の調製]
蓄光顔料(商品名「N夜光」、根本特殊化学製)20部を純水80.0部中に添加することにより、20%の蓄光顔料分散液1を得た。蓄光顔料分散液1における蓄光顔料微粒子の平均粒子径は2.5μmであった。
[蓄光分散液2の調製]
蓄光顔料(商品名、「E Z C B 0 3 − S」、イージブライト製)20部に純水80.0部中に添加することにより、20%の蓄光顔料分散液2を得た。蓄光顔料分散液2における蓄光顔料微粒子の平均粒子径は4.0μmであった。
[蓄光分散液3の調製]
蓄光顔料(商品名「N夜光」、根本特殊化学製)20部を、純水79.6部中に添加して、ビーズミルでさらに分散し、20%の蓄光顔料分散液3を得た。蓄光顔料分散液3における蓄光顔料微粒子の平均粒子径は0.5μmであった。
[蓄光分散液4の調製]
蓄光顔料(商品名、「蓄光顔料301B」、ルミナス製)20部に純水80.0部中に添加して、ビーズミルでさらに分散し、20%の蓄光顔料分散液4を得た。蓄光顔料分散液4における蓄光顔料微粒子の平均粒子径は6.0μmであった。
[蓄光分散液5の調製]
蓄光顔料(商品名「N夜光」、根本特殊化学製)20部に純水79.6部中に添加して、ビーズミルでさらに分散し、20%の蓄光顔料分散液5を得た。蓄光顔料分散液5における蓄光顔料微粒子の平均粒子径は0.2μmであった。
[ポリビニルアルコール水溶液1の調製]
これとは別に、ポリビニルアルコール(商品名「PVA235」、クラレ製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。なお、ポリビニルアルコールは、平均重合度が3,500、けん化度が87〜89mol%であった。
[ポリビニルアルコール水溶液2の合成]
ポリビニルアルコール(商品名「PVA124」、クラレ製)をイオン交換水に溶解して、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液2を調製した。ポリビニルアルコールは、平均重合度が2300、けん化度が98〜99mol%であった。
[保護層形成用塗工液の合成]
アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃、固形分濃度45%)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg103℃、固形分濃度35%)を1部と、ポリビニルアルコール水溶液2を0.5部と、加えて5分攪拌混合し、保護層形成用の塗工液を得た。
[溶媒吸収層形成用の塗工液1の調製]
アルミナ水和物分散液1(100部)に、ポリビニルアルコール水溶液1を27.8部加え、スタティックミキサーにより混合し、溶媒吸収層形成用の塗工液1を得た。
[顔料浸透層形成用の塗工液1の調製]
蓄光分散液1(100部)に、ポリビニルアルコール水溶液1を27.8部加え、ミキサーにより混合し、顔料浸透層形成用の塗工液1を得た。
[顔料浸透層形成用の塗工液2の調製]
蓄光分散液2(100部)に、ポリビニルアルコール水溶液1を27.8部加え、さらに純水100部を加え、ミキサーにより混合し、顔料浸透層形成用の塗工液2を得た。
[顔料浸透層形成用の塗工液3の調製]
蓄光分散液3(100部)に、ポリビニルアルコール水溶液1を27.8部加え、ミキサーにより混合し、顔料浸透層形成用の塗工液3を得た。
[顔料浸透層形成用の塗工液4の調製]
蓄光分散液4(100部)に、ポリビニルアルコール水溶液1を27.8部加え、ミキサーにより混合し、顔料浸透層形成用の塗工液4を得た。
[顔料浸透層形成用の塗工液5の調製]
蓄光分散液5(100部)に、ポリビニルアルコール水溶液1を27.8部加え、ミキサーにより混合し、顔料浸透層形成用の塗工液5を得た。
[熱可塑性樹脂水溶液1の調製]
サイデン化学株式会社製サイビノールRMA−63(平均粒子径1μm)5部に、イオン交換水45部を加え、熱可塑性樹脂水溶液1を得た。
[熱可塑性樹脂水溶液2の調製]
サイデン化学株式会社製サイビノールRMA−63(平均粒子径1μm)5部に、イオン交換水10部を加え、熱可塑性樹脂水溶液2を得た。
[記録媒体1の製造]
PET基材(商品名「テトロンG2」 厚さ19μm 帝人デュポンフィルム株式会社製)を基材1として、基材1の表面に溶媒吸収層形成用塗工液1を塗工した後、乾燥することにより、基材1上にインク受容層を形成した。塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は20g/m2とした。乾燥温度は60℃とした。溶媒吸収層の厚さは20μmであった。
次に溶媒吸収層の表面に顔料浸透層形成用塗工液1を塗工した後、乾燥することにより、基材1上に溶媒吸収層、顔料浸透層を形成して、記録媒体1を製造した。塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は2g/m2とした。乾燥温度は60℃とした。顔料浸透層の厚さは3μmであった。
[記録媒体2の製造]
記録媒体1の顔料浸透層の表面に熱可塑性樹脂水溶液1を塗工して乾燥させることにより、顔料浸透層の表面に接着層1012の熱可塑性樹脂を離散的に設け、顔料浸透層の表面が直接露出している部分を残すようにした記録媒体2を製造した。塗工液の塗工にはグラビアコーターを用い、塗工速度は5m/分とした。乾燥温度は60℃とした。このとき、グラビアロールの溝の線数は200線とした。島状に形成される接着層1012の厚さは2.0μmであった。記録媒体は、インク受容層を外側、基材を内側にしてロール状に巻くことにより、ロール状記録媒体とした。
記録媒体2の断面をSEMによって観察し、接着剤粒子が顔料浸透層と接している部分の直径を測定した。このとき、顔料浸透層と接している接着剤粒子100個の直径の平均値を算出し、平均値から接着材粒子一つが顔料浸透層と接している部分の面積を算出した。次に、記録面からのSEMの投影図より顔料浸透層と接する接着剤粒子の数を算出して、接着剤が顔料浸透層と接する部分の全面積(図5のB)を求めた。測定範囲の全面積からBを引くことにより、表面に接着剤が無い顔料浸透層の露出部の面積(露出部面積)を算出した。また、記録面側からのSEMの投影図より、直接臨める接着部の面積(接着部面積)を確認した。その結果、接触面積は、接着部面積よりも小さく、露出部面積はインク受容層全面積の75%であった。
[記録媒体3の製造]
保護層形成用の塗工液をPET基材(商品名「テトロンG2)帝人デュポンフィルム株式会社製」)の表面(厚さ19μm)に塗工した後、乾燥させることにより、PET基材上に保護層を形成した基材2を製造した。その塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は5g/m2とした。乾燥温度は90℃とした。保護層の厚みは5μmであった。基材1の代りに基材2を用いた以外は記録媒体2と同様にして、記録媒体3を得た。
[記録媒体4の製造]
記録媒体1の顔料浸透層形成用塗工液1を顔料浸透層形成用塗工液4に変更し、顔料浸透層の厚さを4μmに変更した以外は、記録媒体3と同様にして記録媒体4を得た。
[記録媒体5の製造]
記録媒体1の顔料浸透層形成用塗工液1を顔料浸透層形成用塗工液5に変更した以外は、記録媒体3と同様にして記録媒体5を得た。
[記録媒体6の製造]
記録媒体1の顔料浸透層形成用塗工液1を顔料浸透層形成用塗工液6に変更し、顔料浸透層の厚みを6μmに変更した以外は、記録媒体3と同様にして記録媒体6を得た。
[記録媒体7の製造]
記録媒体1の顔料浸透層形成用塗工液1を顔料浸透層形成用塗工液7に変更した以外は、記録媒体3と同様にして記録媒体7を得た。
[記録媒体8の製造]
記録媒体3の熱可塑性樹脂水溶液1を熱可塑性樹脂水溶液2に変更した以外は、記録媒体1と同様にして記録媒体8を得た。記録媒体8の断面をSEMによって観察し、顔料浸透層の露出部の面積(露出部面積)を算出した。露出部面積はインク受容層全面積の50%であった。
[記録媒体9の製造]
記録媒体3の熱可塑性樹脂水溶液1をサイビノールRMA−63に変更した以外は、記録媒体1と同様にして記録媒体9を得た。記録媒体9の断面をSEMによって観察し、顔料浸透層の露出部はなく、顔料浸透層上に接着層が一様に形成されていた。
[記録媒体10の製造]
PET基材(商品名「テトロンG2」 厚さ19μm 帝人デュポンフィルム株式会社製)を基材1として、基材1の表面に顔料浸透層形成用塗工液1を塗工した後、乾燥することにより、基材1上にインク受容層を形成した。塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は20g/m2とした。乾燥温度は60℃とした。インク受容層の厚さは20μmであった。
(実施例1)
このようにして得られた記録媒体1に、上述した第1の製造装置を用いて、樹脂分散顔料インクにより、画像を記録することにより、実施例1の記録物1を得た。尚、樹脂分散顔料インクの調製法については、後述する。画像を記録する製造装置の記録部としては、シリアルヘッドを搭載した顔料インクジェットプリンタ(商品名「PIXUS PRO−1」、キヤノン株式会社製)を用いた。このプリンタに、樹脂分散顔料インクを搭載し、普通紙モード(吐出量4pl、解像度1200dpi、単色記録)によって、記録デューティー100%の100%ベタ画像を記録した。
[顔料インクの調製]
<(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の合成>
撹拌装置と、滴下装置と、温度センサと、上部に窒素導入装置を有する還流装置と、を取り付けた反応容器に、メチルエチルケトン1,000部を仕込み、そのメチルエチルケトンを撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸2−ヒドロキシエチル63部、メタクリル酸141部、スチレン417部、メタクリル酸ベンジル188部、メタクリル酸グリシジル25部、重合度調整剤(商品名「ブレンマーTGL」、日本油脂社製)33部、及びペルオキシ−2−エチルヘキサン酸−t−ブチル 67部を混合して得た混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で10時間反応を継続させて、酸価110mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)89℃、重量平均分子量8,000の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液(樹脂分:45.4%)を得た。
<水性顔料分散体の調製1>
冷却機能を備えた混合槽に、フタロシアニン系ブルー顔料1,000部、上記の合成により得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液、25%水酸化カリウム水溶液、及び水を仕込み、撹拌及び混合して混合液を得た。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)は、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で40%の比率となる量を用いた。また、25%水酸化カリウム水溶液としては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)が100%中和される量を用いた。さらに、水は、得られる混合液の不揮発分を27%とする量を用いた。得られた混合液は、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置に通し、循環方式により4時間分散させた。分散液の温度は40℃以下に保持した。
混合槽から分散液を抜き取った後、水10,000部で混合槽と分散装置との流路を洗浄し、洗浄液と分散液とを混合して希釈分散液を得た。得られた希釈分散液を蒸留装置に入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、濃縮分散液を得た。室温まで放冷した濃縮分散液を撹拌しながら2%塩酸を滴下して、pH4.5に調整した後、ヌッチェ式濾過装置にて固形分を濾過して水洗した。得られた固形分(ケーキ)を容器に入れ、水を加えた後、分散撹拌機を使用して再分散させ、25%水酸化カリウム水溶液によってpH9.5に調整した。その後、遠心分離器を使用し、6000Gで30分間かけて粗大粒子を除去した後、不揮発分を調整して水性シアン顔料分散体(顔料分:14% 酸価110)を得た。
フタロシアニン系ブルー顔料を、カーボンブラック系ブラック顔料、キナクリドン系マゼンタ顔料又はジアゾ系イエロー顔料に変更したことを除いては、水性シアン顔料分散体と同様にして、水性ブラック顔料分散体、水性マゼンタ顔料分散体、又は水性イエロー顔料分散体を得た。
<インクの調製>
下記表1に示す組成(合計:100部)となるように、水性顔料分散体および各成分を容器に投入し、プロペラ撹拌機を使用して30分以上撹拌した。その後、孔径0.2μmのフィルター(日本ポール社製)で濾過して、顔料インクを調製した。なお、表1中の「AE−100」は、アセチレングリコール10モルエチレンオキサイド付加物(商品名「アセチレノールE100」、川研ファインケミカル製)を示す。
(実施例2)
実施例1の記録媒体1を記録媒体2とした以外は、同様にして、画像記録を行った。その記録媒体2を、上述した第1の製造装置を用いて、画像支持体に加熱圧着させて、基材を剥離して実施例2の記録物2を得た。画像支持体としては、PET製のカード(商品名「ペットカード」、合同技研株式会社製)を用いた。加熱圧着の条件は、温度160℃、圧力3.9Kg/cm、搬送速度50mm/secとした。
(実施例3)
実施例2の記録媒体2を記録媒体3とした以外は、同様にして、画像記録、画像支持体への接着を行った。その記録媒体3を、上述した第1の製造装置を用いて、搬送層であるPET基材を剥離して、実施例3の記録物3を得た。
(実施例4)
実施例3の記録媒体3を記録媒体4とした以外は、同様にして、実施例4の記録物4を得た。
(実施例5)
実施例3の記録媒体3を記録媒体5とした以外は、同様にして、実施例5の記録物5を得た。
(実施例6)
実施例3の記録媒体3を記録媒体6とした以外は、同様にして、実施例6の記録物6を得た。
(実施例7)
実施例3の記録媒体3を記録媒体7とした以外は、同様にして、実施例7の記録物7を得た。
(実施例8)
実施例3の記録媒体3を記録媒体8とした以外は、同様にして、実施例8の記録物8を得た。
(実施例9)
実施例3の記録媒体3を記録媒体9とした以外は、同様にして、実施例9の記録物9を得た。
(比較例1)
実施例1の記録媒体1を記録媒体10とした以外は、同様にして、比較例1の記録物10を得た。
<評価>
(発光特性)
上述した実施例および比較例の記録物の発光特性を評価した。記録物の発光特性は、インクジェット記録前の記録媒体の発光強度に対する、インクジェット記録してから24時間後の記録物の発光強度の割合で評価した。評価は以下の基準で行い、これらの評価結果は表2に示した。
◎◎:インクジェット記録前に比べて、記録後の発光強度が95%以上である。
◎:インクジェット記録前に比べて、記録後の発光強度が90%以上である。
○:インクジェット記録前に比べて、記録後の発光強度が80%以上である。
△:インクジェット記録前に比べて、記録後の発光強度が70%以上、80%未満。
×:インクジェット記録前に比べて、記録後の発光強度が70%未満。
(接着性)
上述した実施例の記録物の接着性を評価した。接着性は、記録媒体を画像支持体に加熱圧着してから、その記録媒体を画像支持体に接着させたときの接着面の状態を観察して評価した。評価は以下の基準で行い、これらの評価結果は表2に示した。
○:画像支持体に良好に転写(接着)する。
△:画像支持体に一部に転写(接着)しない部分がある。
×:画像支持体に全く転写(接着)しない。
(擦過性)
上述した実施例および比較例の記録媒体を用いて、擦過性を評価した。記録物を500gの荷重を掛けたシルホン紙によって50回擦過した。実施例1、比較例1は記録面を、実施例2は基材面、実施例3〜9は基材を剥離して露出した面をそれぞれ擦過した。k陸物の画像の光学濃度を光学反射濃度計(商品名「RD−918」、グレタマクベス製)を用いて測定し、下記式(A)より残存OD率を算出して評価した。評価は以下の基準で行い、これらの評価結果は表2に示した。
残存OD率=(試験後のOD/試験前のOD)×100%
○:残OD率が80%以上。
△:残OD率が50%以上80%未満。
×:残OD率が50%未満。
実施例1に用いられる記録媒体は、基材上に、顔料と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層が形成された記録媒体であって、前記インク受容層は、前記溶媒および前記顔料の浸透を可能とする顔料浸透層と、前記顔料を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層と、を有し、前記基材側から、前記溶媒吸収層、前記顔料浸透層の順に積層されており、前記顔料浸透層に発光粒子を含むように構成されている。このような記録媒体とすることで、インクジェット記録より、インク受容層に付与された水性顔料インクは、顔料浸透層と溶媒吸収層の界面で固液分離され、顔料は顔料浸透層の底部に薄膜稠密に顔料膜を形成し、水を含む溶媒成分は溶媒吸収層に吸収される。加水分解しやすい発光体を含む顔料浸透層には水分を含有した溶媒成分はほとんど残留しないため、発光体が加水分解されにくく、記録媒体の発光特性が良好となる。
実施例2、3は顔料浸透層上に熱可塑性樹脂が離散的に設けられた記録媒体を用いることで、インクジェット記録されたインクはバイパス的に顔料浸透層、溶媒吸収層に瞬時に吸収される。そのため、インクが顔料浸透層および接着層に残留しにくく、発光粒子の加水分解が起こりにくく、特に発光特性が良好である。顔料浸透層および接着層にインクが残りにくいため接着が阻害されにくく、接着性が良好である。
さらに実施例3の記録物は保護層を有しているため、外部から湿気等が侵入しにくく、さらに発光特性は良好となる。実施例3は記録物の顔料画像が保護層、溶媒吸収層、顔料浸透層によって保護されており、耐擦過性が良好である。
実施例4、5は顔料浸透層の発光粒子の平均粒子径が0.5〜4μmに制御されており、顔料浸透層の発光粒子の平均粒子径が溶媒吸収層の平均粒子径の3〜30倍の間に制御されている。そのため、インクが速やかに固液分離されながら、インク溶媒が溶媒吸収層に吸収され、顔料浸透層にはインク溶媒がほぼ残っておらず、発光特性は特に良好である。
実施例6は、顔料浸透層の発光粒子の平均粒子径が4μmより大きく、顔料浸透層の発光粒子の平均粒子径が溶媒吸収層の平均粒子径の30倍より大きくなっている。そのため、顔料浸透層の毛管力が小さく、インクが顔料浸透層を透過しにくくなり、顔料浸透層にインクが残りやすくなるため、発光粒子がやや加水分解されて発光特性がやや劣る。さらに顔料浸透層、接着層に残ったインクが接着を阻害するため、接着性もやや劣る。
実施例7は、顔料浸透層の発光粒子の平均粒子径が0.5μmより小さく、顔料浸透層の発光粒子の平均粒子径が溶媒吸収層の平均粒子径の3倍より小さくなっている。そのため、顔料浸透層の毛管力が小さく、インクが顔料浸透層を透過しにくくなり、顔料浸透層にインクが残りやすくなるため、発光粒子がやや加水分解されて発光特性がやや劣る。さらに顔料浸透層、接着層に残ったインクが接着を阻害するため、接着性もやや劣る。
実施例8は、顔料浸透層の露出部の面積が50%と、75%より小さくなっているため着弾したインクが瞬時に顔料浸透層に接しにくくなっており、顔料浸透層にインクが残留しやすくなるため、発光特性、接着性がやや劣る。
実施例9は、顔料浸透層上に接着層が一様に形成されており、顔料浸透層の露出部が無い。そのため、インクジェット記録時に顔料浸透層にインクがバイパス的に瞬時に吸収されることが無く、顔料浸透層および接着層にインクがある程度残るため、実施例1〜8に比べると、発光特性、接着性がやや劣る。
比較例1は、発光粒子を含むインク受容層が一層で設けられているため、インク受容層に付与されたインクが顔料浸透層に完全に残留し、発光粒子とインク溶媒の水が長時間接触するため、発光特性が低下する。
1 記録媒体
25 製造装置
50 基材
53 インク受容層
55 画像支持体
73 記録物
600 記録ヘッド
1000 島部(熱可塑性樹脂部)
1001 露出部
1002 熱可塑性樹脂
1003 インク
1012 接着層
1600 顔料浸透層
1601 溶媒吸収層
1700 発光粒子
1701 剥離層
1703 保護層

Claims (11)

  1. 基材上に、顔料と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層が形成された記録媒体であって、
    前記インク受容層は、
    前記溶媒および前記顔料の浸透を可能とする顔料浸透層と、
    前記顔料を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層と、を有し、
    前記基材側から、前記溶媒吸収層、前記顔料浸透層の順に積層されており、
    かつ、前記顔料浸透層は発光粒子を含有する
    ことを特徴とする記録媒体。
  2. 前記発光粒子が蓄光顔料である請求項1に記載の記録媒体。
  3. 前記溶媒吸収層が微粒子を含有し、かつ、
    前記発光粒子の平均粒子径が、前記微粒子の平均粒子径の3倍以上30倍以下である請求項1または2に記載の記録媒体。
  4. 前記顔料浸透層上に接着層が形成され、
    前記接着層は、前記顔料浸透層の表面に露出部を残すように熱可塑性樹脂が離散的に設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録媒体。
  5. 前記基材と前記インク受容層の間に、剥離層および/または保護層が設けられている請求項4に記載の記録媒体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録媒体に、顔料と溶媒とを含む顔料インクを付与してなる記録物であって、
    前記顔料は、前記インク受容層の前記溶媒吸収層より表面側に保持されていることを特徴とする記録物。
  7. 画像支持体と、顔料インクにより画像が記録されたインク受容層と、が積層された記録物であって、前記インク受容層は、請求項6に記載の記録物から転写されたものであることを特徴とする記録物。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録媒体に、前記インク受容層側から顔料インクを付与して画像を記録する記録工程を含むことを特徴とする記録物の製造方法。
  9. 請求項4に記載の記録媒体に、前記インク受容層側から顔料インクを付与して画像を記録する記録工程と、
    前記画像が記録された前記記録媒体をインク受容層側から画像支持体に当接し、前記記録媒体と前記画像支持体とを、重ねた状態で加熱および加圧して接着する工程と、を含むことを特徴とする記録物の製造方法。
  10. 請求項5に記載の記録媒体に、前記インク受容層側から顔料インクを付与して画像を記録する記録工程と、
    前記画像が記録された前記記録媒体をインク受容層側から画像支持体に当接し、前記記録媒体と前記画像支持体とを、重ねた状態で加熱および加圧して接着する工程と、を含むことを特徴とする記録物の製造方法。
  11. 前記画像支持体に接着された前記記録媒体から、少なくとも前記基材と前記剥離層とを剥離する剥離工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の記録物の製造方法。
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