JP2018069601A - 転写材、記録物、記録物の製造装置、および記録物の製造方法 - Google Patents

転写材、記録物、記録物の製造装置、および記録物の製造方法 Download PDF

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Takahiro Tsutsui
喬紘 筒井
裕輔 澄川
Yusuke Sumikawa
裕輔 澄川
平林 弘光
Hiromitsu Hirabayashi
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Abstract

【課題】耐水性および耐候性に優れた高解像度の画像を記録可能とし、かつ画像支持体に対して良好な接着性を得ることが可能な転写材を提供する。
【解決手段】顔料粒子と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層が、剥離層1701を介して基材50上に形成されている。インク受容層は、複数の空隙吸収型の層を含む。インク受容層の表面側の層は、溶媒および顔料粒子の浸透を可能とする溶融可能な顔料浸透層1600であり、インク受容層の中の基材50側の層は、顔料粒子を浸透させず、浸透を可能とする溶媒吸収層1601である。
【選択図】図2

Description

本発明は、画像を記録可能な転写材、転写材によって画像が転写された記録物、記録物の製造装置および記録物の製造方法に関するものである。本発明の記録物は、例えば、ラベル、IDカード、包装材、建材、その他の様々な分野において使用可能である。
インクジェット方式を用いて十分な濃度の画像を形成するためには、画像支持体上に、多くのインクを受容可能とするインク受容層を予め設けておくことが望ましい。画像支持体が紙や樹脂フィルムなどのシート状の画像支持体の場合、公知の汎用塗布装置によってインク受容層を形成することが可能である。しかし、立体形状をなす物体や、可撓性を有していない部材、例えば、樹脂板、ガラス板や金属板などにインク受容層を設けることは困難であり、これらはインクジェット方式による記録には適していない。
このため、記録媒体にインクジェット記録を行った後、別途プライマー膜などの接着層を設け、このプライマー膜を介して画像支持体に画像が形成された記録媒体を転写することも提案・実施されている。但し、この場合には、画像を記録した画像転写材のインク受容層と画像支持体との間に、接着性に優れたプライマー膜を形成する工程と、プライマー膜を介してインク受容層と画像支持体とを接着させる工程とが必要になる。そこで、インクジェット方式によって記録した画像を、プライマー膜を用いずに、画像支持体(被転写材)に接着することで画像の転写を行う転写材が、特許文献1および特許文献2に提案されている。
特許文献1には、多孔質の接着剤層と、その接着剤層の下方に形成したインク受容層と、が設けられた転写材(転写型画像形成シート材)が開示されている。この転写材では、インクジェット記録装置によって付与されたインクが、多孔質の接着剤層を透過した後、インク受容層に吸収される。インク受容層には、インクを吸収して膨潤する膨潤吸収型のインク受容層が用いられている。
特許文献1に開示の膨潤吸収型のインク受容層は、インク受容層がインクを吸収するとインク受容層が部分的に膨潤して平滑でなくなり、それに伴って、表面を形成する多孔質の接着剤層にも凹凸が生じる。その結果、画像支持体とインク受容層とを接着させる場合、その表面の凹凸によって転写フィルムと画像支持体との密着性が低下するため、画像支持体とインク受容層とを接着させることが困難になる場合がある。
また、多孔質の接着剤層は毛管力によってインクを浸透させる性質をもつため、多孔質の接着剤層がインクを吸収する速度は速い。一方、水溶性樹脂を主体として形成されたインク受容層は、水溶性高分子の網目構造中にインクを吸収するため、インクの吸収に長時間を要する。このため、接着剤層に着弾したインク滴は、多孔質の接着剤層を素早く透過してインク受容層との界面まで到達するが、膨潤吸収型のインク受容層は吸収速度が遅いため、接着剤層におけるインク受容層表面との隣接部分でインクの滞留が生じてしまう。その結果、画像を形成するインクのドットが接着剤層内で広がって、画像にじみや解像度の低下を引き起こすことがある。
一方、インク受容層としては、前述の膨潤吸収型の他に、微細な空隙構造にインクを受容する空隙吸収型のインク受容層もある。空隙吸収型のインク受容層では、画像記録物の表面などに付着した水分がインク受容層に吸収され易い。画像記録物の表面に付着した水分がインク受容層に吸収された場合、インク受容層で一旦定着したインクの染料色材が再度溶解して拡散し、画像に滲みを生じさせることがある。また、インク受容層には、水分以外にも、汚染水や有害ガスなどが侵入し易く、これらによって画像が汚染されることがある。特に、空隙吸収型のインク受容層に対して染料インクを用いて画像を記録した記録物は、耐水性、耐ガス性が低く、長期保存性を期待することはできない。
これに対し顔料インクによって形成された画像は、顔料粒子1606自体の耐候性が高いため、染料インクによって記録された画像に比べ良好な保存性が得られる。従って、顔料粒子1606を浸透可能とし、かつ十分なインク吸収容量を有する厚さの空隙構造を備えたインク受容層を形成することによって、顔料インクを吸収浸透させることが可能な転写材を構成することも可能である。
このような転写材として、特許文献2には、顔料インクを浸透させる空隙構造を有するインク浸透層と、このインク浸透層を通過したインクを受容するためのインク受容層と、を備えた転写材(転写フィルム)が開示されている。インク受容層としては、インクを吸収するための多数の空隙が形成された空隙型のインク受容層が用いられている。
特許文献2には、インクと同極性に荷電調節した熱可塑性樹脂粒子の空隙構造によりインクを浸透させるインク浸透層と、インクと逆極性に荷電調節したインク受容粒子の空隙構造によりインク色材を受容固定するインク受容層と、保護層と、支持体と、からなる転写フィルムが開示されている。
特開平9−240196号公報 特許5864160/特開2013−39791号公報
ところで、特許文献2のようにインク受容層が2層構造をなす転写材では、上層である加熱接着性のインク浸透層1670に、インク(色材および溶剤)を残さないように透過させ、下層のインク受容層53に全てのインクを吸収・定着させる構造としている。これは、接着層となるインク浸透層にインク(液体)が残ると画像支持体への接着性および転写性が低下するためである。
しかしながら、特許文献2では、図19(b−1)、(b−2)に示すように、下層の空隙吸収型のインク受容層53で溶剤および色材を全て吸収させる構成を採るため、インクの浸透距離が長くなり、画像の滲みが大きくなるため画像の解像度が低下する、という課題が生じる(図19(b−3)参照)。特に、顔料インクを用いる場合は、顔料粒子が浸透・透過できるように、インク浸透層1670およびインク受容層53のそれぞれに、大きな空隙を有する空隙構造を形成する必要がある。大きな空隙をインク受容層53に形成すると、インク受容層53の毛細管力が弱くなり、インク吸収特性が低下する。このため、顔料インクが滞留し易くなり、画像が滲み易くなるため、画像の解像度が低下する。
また、顔料粒子を浸透吸収可能とする大きな空隙をインク浸透層に形成した場合、インク浸透層1670での毛細管力が低下するため、インク浸透層1670における顔料インクの吸収浸透速度が低下して、インク浸透層1670での顔料インクの滞留時間が長くなる。このため、インク受容層へ53とインクが吸収されることにより、インク浸透層1670からインク受容層53に連なっていた顔料インクが千切れてインク浸透層1670に残留し易くなる。この場合、インク浸透層1670における接着転写性が著しく損なわれることとなる。
また、空隙吸収型のインク受容層では、空隙内に色材が定着して顔料粒子表面が直接露出しているので、耐候性に優れた顔料粒子であっても、汚染液体や有害ガスなどで汚染され、画像の長期保存性が低下することもある。また、画像の保存性を高めるべく、記録物の表面に保護層を設けたとしても、記録物の端面では、依然としてインク受容層の空隙構造が外気に連通していることから、長期保存性を確保するには至らない。
また、特許文献2には、インク浸透層53をインクと同極性に帯電させることで、顔料インクがインク浸透層に留まるのを抑制し、かつインク受容層をインクとは逆極性に帯電させることで色材の定着・固定を促進する技術が開示されている。しかしながら、インク浸透層53をインクと同極性とし、インク受容層53をインクと逆極性とするような荷電調節を行うためには、熱可塑性樹脂粒子、荷電調節材、インク受容粒子、およびバインダーなどのインク材料を、色材の帯電特性に応じて選定しなければならず、材料選択に制約が生じる。また、使用可能なインクジェット記録装置も制限されることとなり、汎用性に欠けるものとなる。
さらに特許文献2では、インクジェット画像の記録後に、インクの浸透をさらに促進するための無色のインク浸透液をインクジェット方式で重ねて吐出し、そのインク浸透液によって、インク浸透層1670に残留したインクをインク受容層53に押し出すことが記載されている。しかし、この場合には、インク浸透液も含めて大量のインクを吸収できるように転写材のインク受容層53をさらに厚くする必要があり、その分、画像を形成するためのインクが平面方向に浸透吸収されることとなる。このため、画像はさらに滲み易くなる。また、インク浸透液を吐出するための機構を別途設けることが必要となり、装置が大型化するなどの課題も生じる。このようにインク浸透液を用いる技術は種々の課題があり実現性に乏しい。
以上説明したように、特許文献2に記載の転写材では、インク浸透層1670と同様に、下層のインク受容層53にあっても顔料粒子が通過できるような大きな空隙を形成している。このため、インク浸透層1670にインクが残り易くなって接着転写性が不安定になると共に、大きな画像滲みが発生することによって解像度が低下するという課題があり、良好な記録特性と接着性を実現するには至っていない。
本発明は、耐水性および耐候性に優れた高解像度の画像を記録可能とすると共に、画像支持体に対して良好な接着性を得ることが可能な転写材、転写材に記録された画像を転写してなる記録物、並びにその製造装置および製造方法の提供を目的とする。
本発明は、顔料粒子と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層が、剥離層を介して基材上に形成された転写材であって、前記インク受容層は、複数の空隙吸収型の層を含み、前記インク受容層の表面側の層は、前記溶媒および前記顔料粒子の浸透を可能とする溶融可能な顔料浸透層であり、前記インク受容層の中の基材側の層は、前記顔料粒子を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層であることを特徴とする。
また、本発明は、上記転写材に顔料インクを付与して画像を記録する記録部と、前記画像が記録された前記転写材を画像支持体に接着する接着部と、を備えることを特徴とする記録物の製造装置である。
本発明によれば、耐水性および耐候性に優れた高解像度の画像を記録することが可能になると共に、画像支持体に対して良好な接着性を得ることが可能になる。すなわち、本発明に係る転写材では、顔料画像は顔料浸透層底部に形成され、溶媒成分はほぼ全てが速やかに溶媒吸収層に吸収され、溶融膜化する顔料浸透層にはインク中の液体成分である溶媒はほとんど残らない。従って、顔料浸透層底部に、高濃度で薄膜稠密な顔料画像を形成することができると共に、インクジェット記録直後であっても、転写材を画像支持体に接着転写することが可能になる。さらに、底部に顔料画像を形成した顔料浸透層は、加圧加熱処理によって、顔料画像を包み込むように溶融膜化するため、顔料粒子が直接露出することはなく、顔料画像は顔料浸透層内に確固に保持される。このため、本発明に係る記録物は長期保存性に優れる。
本発明の実施形態に係る転写材の一例を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る空隙吸収型の複層インク受容層における顔料インクの吸収、および転写剥離のメカニズムの説明図である。 記録物の製造方法の一例を説明ための工程図である。 単層構造のインク受容層に生じやすいホワイトポイントの説明図である。 両面同時転写および両面同時剥離を可能とする記録物の製造装置を示す図である。 追記可能な記録物の製造方法の説明図である。 記録物の一例の、製造方法の説明図である。 本発明の実施例2−1の記録物の製造方法を示す図である。 本発明の実施例2−2の記録物の製造方法を示す図である。 本発明の実施例3の記録物の製造方法を示す図である。 本発明の実施例4の記録物の製造方法を示す図である。 本発明の実施例5の記録物の製造方法を示す図である。 本発明の実施例6−1の記録物の製造方法を示す図である。 本発明の実施例6−2の記録物の製造方法を示す図である。 本発明の比較例1の記録物の製造方法を示す図である。 本発明の比較例2の記録物の製造方法を示す図である。 溶媒吸収層が溶融膜化する記録物の製造方法を示す図である。 複数層の顔料浸透層もしくは複数層の溶媒吸収層もしくは密着層を有するインクジェット転写材の断面図である。 転写材における顔料インクの浸透拡散の程度と、記録特性と、の関係の説明図である。 多層の顔料浸透層を有する転写材とその転写材から製造される記録物の断面図である。 接着強化剤の間隔と着弾したインクとの関係を示す図である。 接着強化剤の加熱圧着後の膜化状態を示す記録物の断面図である。 溶媒吸収層を剥離して製造される記録物の製造方法の説明図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[実施形態の基本構成]
図1は、本発明の実施形態に係る転写材の基本構成を示す断面図である。本例における転写材1は、インクジェット方式によって顔料画像を記録可能とし、かつ種々の画像支持体に転写可能な構成を有する。転写材1は、基本的には、基材50と、基材50の一方の面(図では上面)に複数の層を順次積層したインク受容層16と、インク受容層16と基材50との間に設けた剥離層1701とを有する。インク受容層16は、本例では、基材50側に設けた溶媒吸収層1601と、溶媒吸収層1601の表面側(図中、上側)に積層した顔料浸透層1600とを有する2層構造をなしている。
溶媒吸収層1601は、顔料インクの溶媒の吸収性に優れた空隙構造を有する空隙吸収型の層であり、十分な溶媒吸収容量を確保できるように、比較的厚膜に形成されている。溶媒吸収層1601の空隙構造は、顔料粒子1606よりも十分に小さな空隙により構成されており、顔料インクに含まれる顔料粒子1606の浸透を阻止する。一方、顔料浸透層1600は、顔料インクの顔料粒子1606および溶媒を透過させることが可能な空隙構造を備えた空隙吸収型の層である。この顔料浸透層の空隙構造は顔料粒子1606よりも十分に大きな空隙直径を有している。この顔料浸透層1600は加熱によって溶融膜化して接着性を帯びる薄膜の層で構成されている。剥離層1701は、インク吸収層1601の表面を損傷することなく、基材50と共にインク吸収層1601の表面から剥離させることができる。
図2は、図1に示す本例の空隙吸収型の複層インク受容層における顔料インクの吸収、および転写剥離のメカニズムを示す説明図である。本例の転写材1への画像を形成は、前述のインクジェット記録装置によって行なう。インクジェット記録装置は、記録ヘッド102Hから、滴状の顔料インク1003を、転写材1の顔料浸透層1600に向けて吐出することで画像を形成する(図2(a−1)参照)。顔料浸透層1600の平均細孔直径は顔料インク1003の色材である顔料粒子1606の平均直径よりも大きい。このため、顔料浸透層1600の表面(図中、上面)に着弾したインク1003は、図2(a−1)に示すように、顔料浸透層1600に形成された空隙内を毛細管力によってスムーズに浸透していく。
厚膜の溶媒吸収層1601の平均細孔直径は、顔料粒子1606の直径よりも小さい。このため、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に到達したインクのうち、溶媒成分1607は溶媒吸収層1601内に吸収される。一方、顔料粒子1606は溶媒吸収層1601内には浸透せず、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に保持される。その結果、図2(a−2)に示すように、顔料粒子1606と溶媒成分1607とが界面で分離(固液分離)される。溶剤1003から分離された顔料粒子1606は、顔料浸透層1600の底部に保持され、稠密で薄膜状の顔料画像1609を形成する。このような空隙吸収型のインク受容層では、空隙の空隙直径が小さいほど毛管現象による吸引力(毛細管力)が大きく、溶媒成分1607の吸収速度は高くなる。このため、顔料浸透層1600より大きな毛細管力が作用する溶媒浸透層1601に、ほとんど全ての溶媒成分1607が速やかに吸収される。従って、顔料浸透層1600には、ほとんど溶媒成分は残留しない。
画像が形成された転写材1は、転写装置によって、所定の画像支持体50の一面に接着される。接着に際しては、画像が形成された転写材1の顔料浸透層1600を画像支持体50の一面に重ね合わせ(図2(b))、それらを、転写装置の一対の加圧加熱ローラ21、22で加圧しつつ加熱する。これにより、顔料浸透層1601は溶融して膜化し、溶融した顔料浸透層1600が画像支持体50の一面に接着する。その後、溶媒吸収層1601から基材50を剥離することで、図2(c)に示すように、顔料画像が転写された記録物を作成することができる。
以上のように、本例の転写材1では、顔料浸透層1601が顔料粒子1606よりも十分に大きな空隙径を有する空隙構造を備えている。このため、顔料浸透層1601に発生する毛細管力は小さく、ここでのインク吸収速度はやや遅くなる。しかし、流路抵抗は小さいことから、顔料浸透層1600の表面に記録された顔料インク1003は、顔料粒子1606も含めてスムーズに顔料浸透層内に浸透吸収される。
一方、溶媒吸収層1601の空隙構造は顔料粒子1606よりも十分に小さな細孔によって構成されていることから、ここに発生する毛細管力は、顔料浸透層1600の空隙構造に発生する毛管力に比べて格段に大きく、溶媒成分1607の吸収速度も格段に速い。また、溶媒吸収層1601は顔料粒子1606よりも小さい空隙を有するため流路抵抗が大きい。そのため、顔料粒子1606は顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面で保持され、溶媒成分1607のみが溶媒吸収層1601に高速で吸収される。顔料浸透層1601の表面から吸収、浸透されてきた顔料インク1003の一部が溶媒吸収層1601の界面に到達すると、溶媒吸収層1601の格段に大きな毛細管力によって、顔料インク1003の溶媒成分1607は高速で吸収され始める。
溶媒成分1607が高速で吸収され始めると、顔料浸透層1600は流抵抗が小さいことから、顔料浸透層1600内に残っている顔料インク1003も、その粘度および表面張力によって、千切れることなく高速で浸透し始める。つまり、顔料浸透層1600への浸透初期にはインクの浸透速度はあまり早くないが、顔料インクの一部が溶媒吸収層1601に到達すると、その後は溶媒吸収層1601が溶媒成分1607を高速で吸収するため、これに伴って顔料浸透層1600に存在する後続の顔料インク1003も溶媒浸透層1601との界面へ向けて高速に浸透していく。
このように、本例における転写材1では、小さな空隙を有する溶媒吸収層1601が溶媒成分を高速に吸収するため、大きな空隙を有する顔料浸透層1600においては顔料インクが高速に浸透される。また、溶媒吸収層1601は、顔料浸透層1600に吐出された顔料インクの全ての溶媒成分を十分に吸収できる厚さに形成されている。このため、顔料浸透層1600に吐出された顔料インク1003の溶媒成分1607は、ほぼ全てが速やかに溶媒吸収層1601に吸収され、顔料浸透層1600内にはほとんど残留しない。従って、転写材1および画像支持体55に対する加圧過熱処理において、転写材1に良好な接着性を発現させることができ、画像支持体55と転写材1との間に良好な接着状態を得ることができる。
また、顔料浸透層1600に吐出されたインクは、短時間で溶媒浸透層1601に吸収されることから、インクジェット記録の後、特別な乾燥工程や乾燥時間を介さずに、速やかに加圧加熱処理を開始できる。すなわち、インク吸収速度が速く、かつインク吸収容量の大きな厚膜の溶媒吸収層1601が、その空隙構造を維持したまま、ほぼ全ての溶媒成分1607を吸収保持しているので、顔料画像を記録後に速やかに画像支持体55に接着しても、溶媒成分1607の逆流や染み出しによる接着性の低下が生じにくい。
また、顔料インク1003の液滴が極めて小さい場合、単一のドット(単ドット)が記録された部分では、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面まで顔料インクが到達せず、顔料浸透層1600の内部に顔料インクが孤立した状態で滞留することもある。しかしながら、孤立した顔料インク1003の溶媒成分1607の量が十分に小さいことから、極少量の溶媒成分の周囲にある多量の樹脂微粒子(顔料浸透層)が、加圧加熱処理によって極少量の液体成分を包み込むように溶融膜化する。このため、溶融膜化した顔料浸透層の接着面に溶媒成分1607が染み出すことはなく、顔料浸透層1600の接着転写性が阻害されることはない。また、顔料インク1003の液滴が極端に小さい場合でも、複数ドットが着弾する高濃度の記録部では、後続の顔料インク1003の吸収浸透によって先着の顔料インク1003が押し出されて、その先端が溶媒吸収層1601との界面に到達する。このため、後続の顔料インク1003も高速で溶媒吸収層1601へ向けて吸収浸透されていく。従って、高濃度記録部では、顔料インク1003の溶媒成分1607がより確実に溶媒吸収層へと到達し、ほぼ全ての溶媒成分1607が溶媒吸収層1601に吸収される。また、顔料粒子1606は固液分離されて顔料浸透層1600底部の界面に保持されるため、稠密で高濃度の顔料画像が形成される。以上のように、顔料浸透層1600の表面から記録された顔料インク1003は、溶媒吸収層1601との界面に速やかに到達することが望ましく、そのためには、顔料浸透層1600は、顔料インクの液滴より小さくなるように薄膜に構成することが望ましい。
また、本例の転写材1では、溶媒吸収層1601の空隙構造は顔料粒子1606よりも十分に小さな細孔により構成されている。このため、図19(a−2)に示すように顔料粒子1606は溶媒吸収層1601との界面で固液分離され、顔料インク1003の溶媒成分1607のみが溶媒吸収層1601に高速で吸収される。すなわち、顔料浸透層1600の底部と溶媒吸収層1601との界面では、毛細管力が格段に大きい溶媒吸収層1601が顔料インク1003の溶媒成分1607を高速で吸収するので、顔料浸透層1600底部で顔料粒子1606が固液分離される際の顔料インク1003の流れが速いため、顔料粒子1606が圧縮されながら薄膜稠密な顔料画像を形成する。
色材である顔料粒子1606が薄膜状に稠密に堆積した顔料画像は、光吸収特性に優れ発色性に優れる。本例では、顔料インク1003の主体をなす溶媒成分1607を溶媒吸収層1601で全て吸収できるように十分な厚さに形成され、大きな吸収容量を確保している。このため、顔料浸透層1600は固液分離された顔料粒子1606を全て収納できるだけの空隙容量があれば良く、薄層に構成することができる。従って、図19(a−1)に示すように、顔料浸透層1600の表面に着弾した顔料インク1003は、顔料浸透層1600内の空隙に吸収浸透する際に平面方向にも拡散するが、その浸透拡散幅は薄膜の顔料浸透層1600の膜厚とほぼ同程度となる。従って、従来のように、厚膜の溶媒吸収層全体に亘って顔料粒子が浸透拡散する場合に較べて、薄膜の顔料浸透層1600での浸透拡散幅は軽微であり、解像度の劣化も軽微である。一般に、顔料画像の画像設計上では、隣接する顔料ドットが重なり合って各々の画素を埋めるようにしている。このため、顔料浸透層1600の膜厚は、顔料ドットの所望のにじみ量に合わせて調整すれば良い。
このように、本例の転写材では、インク受容層を少なくとも2層以上に機能分離して固液分離させることで、厚膜の溶媒吸収層1601で顔料インク1003の主体をなす溶媒成分1607を全て吸収できるように十分な厚さで大きな吸収容量を確保させている。このため、高密度で高速なカラー記録を行う場合など、短時間に多量の顔料インク1003を吸収させる場合にも、画像にじみを懸念することなく顔料インク1003を高濃度に記録(図19(a−3))することが可能である。従って、本例の転写材1を用いることにより、高濃度で高精細な顔料画像を形成することが可能になる。さらに、転写材への画像の形成動作から画像支持体への転写工程までを短時間で行うことが可能になり、記録物の生産性を高めることが可能になる。
本例の転写材1は、図2(b)および(c)に示すように、画像支持体55に当接させた状態で、加熱ローラ21、21により加圧加熱処理(図2(b))を行うことにより、顔料浸透層1600が溶融膜化して画像支持体55に接着される。この際、顔料浸透層1600は顔料画像1606を包み込むように溶融膜化するため、強固な顔料画像保持膜1650が形成される(図2(c)参照)。この後、少なくとも顔料画像保持膜1650を画像支持体55に残すように、基材50を剥離することによって、インクジェット画像転写記録物が得られる。
次に、上記の基本構成に対する変形例を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の変形例において、上記基本構成と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、その説明の詳細は省く。
[変形例1]
図23は本実施形態における変形例1を示す図である。図23(a)に示すように、溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600の間に剥離層1701を設けることによって転写材1Aを構成することも可能である。この転写材1Aでは、画像支持体55に転写材1Aを接着した後、基材50を剥離層1701と共に溶媒吸収層1601から剥離させることによって、図23(b)に示すような画像転写記録物を得ることができる。
すなわち、この転写材1Aでは、画像支持体55に接着転写する際に加圧加熱処理を施すことで、底部に画像1606を形成した溶融膜化可能な顔料浸透層1600を、顔料画像を包み込むように溶融膜化させることができる。これにより、画像支持体55上に強固な顔料画像保持膜1650を形成することができる。顔料画像保持膜1650では、空隙が除去されて膜化するため、顔料粒子1606が直接露出することはなくなり、顔料画像保持膜1650に確固に保持されるため、長期保存性に優れた画像転写記録物が得られる。また、顔料浸透層1600が顔料粒子1606を包み込むように溶融膜化することで顔料画像がさらに稠密に凝集するため、光吸収特性が向上すると共に、顔料浸透層1600の空隙が除去されて光の散乱が抑制されるため、顔料画像の発色性はさらに向上する。
[変形例2]
図8は本実施形態における変形例2を示す図である。本例における転写材1Bは、図8(a)に示すように、基材50上に剥離層1701を介して保護層1703を設け、溶媒吸収層1601との間に密着層(図示せず)を設けた構成を備える。この場合、転写材1Bを画像支持体55へ接着転写した後に基材50を剥離することで、図8(c)に示すような転写画像記録物を作成することができる。すなわち、画像支持体55と、顔料画像1609を保持した顔料保持膜1650と、空隙構造に溶媒を吸収した溶媒吸収層1601と、密着層1603を介して溶媒吸収層1601上に残された保護層1703とからなる転写画像記録物を作成することができる。この転写画像記録物は、溶媒吸収層1601に保持された空隙構造の表面が保護層1703によって保護されているため、画像表面に優れた機械的強度が得られる。さらに、表面から溶媒吸収層1601の空隙構造に汚染液体、有害ガスなどが表面から浸入するのを阻止することができ、顔料画像の汚染や劣化を低減することができる。
[変形例3]
図17は本実施形態における変形例3を示す図である。
本例における転写材1Cは、図17(a)に示すように、厚膜の溶媒吸収層1601も加圧加熱処理により溶融膜化するように構成されており、この点が上記基本構成と異なる。この転写材1Cを使用する場合、顔料インク1003を用いてインクジェット画像記録を行った後、厚膜の溶媒吸収層1601に吸収した揮発性の溶媒成分1607を十分に乾燥させる工程や時間及び装置などを設けることが好ましい。これによれば、顔料画像1606を記録した転写材を、画像支持体55と重ね合わせて加熱ローラ21により加圧加熱(図17(b))することで、顔料浸透層1600と同様に、溶媒吸収層1601を溶融膜化(図17(d))することができる。但し、顔料インク1003の溶媒成分1607の中には、乾燥時間を設けたとしても、不揮発性溶剤などが溶媒吸収層1601に残る場合がある。このため、加圧加熱処理により溶媒吸収層1601の空隙を形成している樹脂微粒子が軟化溶融しても、顔料インク1003の溶媒に含まれる少量の不揮発性溶剤を保持できるように構成すれば良い。
画像支持体55に転写材1Cを接着した後、顔料画像保持膜1650と透明保護膜1660とを画像支持体55に残すように、基材50を剥離することによって、透明保護膜1660を有する画像転写記録物が得られる。この画像転写記録物では、前記のように、顔料浸透層1600が顔料画像1606を包み込むように溶融膜化するため、画像支持体55に接着した強固な顔料画像保持膜1650を形成することができる。さらに、厚膜の溶媒吸収層1601においても溶融して空隙が除去された、厚膜で強固な透明保護膜1660が形成されるため、転写画像記録物の表面側の機械的強度や耐光性を向上させることができる。また、転写画像記録物の端面からの汚染液体や有害ガスなどの侵入を完全に防止できるので、顔料粒子1606が直接的に露出することを完全に防止できる。このため、画像転写記録物の長期の画像保存性は格段に優れたものとなる。また、溶媒吸収層1601の空隙構造を解消して透明保護膜1660を形成することで、厚膜の溶媒吸収層1601におけるヘイズ劣化も大幅に改善されるので画像視認性も向上する。
[変形例4]
図11は本実施形態における変形例4を示す図である。本例における転写材では、図11(a)に示すように、基材50上に設けた溶媒吸収層1601が、溶媒吸収特性に優れた厚膜の第1の溶媒吸収層1611と、剥離層1701を介して第1の溶媒吸収層1611に積層した薄膜の第2の溶媒吸収層1700とによって構成されている。また、顔料浸透層1600は、上記の基本構成と同様に、顔料粒子1606よりも十分に大きな空隙径を有する空隙構造を備えている。一方、第2の溶媒吸収層1700は、顔料粒子1606よりも十分に小さい空隙径を有する空隙構造を備え、第1の溶媒吸収層1601は第2の溶媒吸収層1601よりもさらに小さな空隙径を有する空隙構造を備えている。
そのため、薄膜の第2の溶媒吸収層1700の毛細管力は、薄膜の顔料浸透層1600よりも十分に大きく、また、厚膜の第1の溶媒吸収層1601の毛細管力は、薄膜の第2の溶媒吸収層1700よりもさらに大きく構成されている。したがって、顔料浸透層1600に記録された顔料インク1003は、顔料浸透層1600と第2の溶媒吸収層1700との界面で高速に固液分離されて、顔料浸透層1600底部に薄膜稠密な顔料画像1606を形成する。また、顔料浸透層1600と第2の溶媒吸収層1700との界面に達した溶媒成分1607は、第2の溶媒吸収層1700に吸収されていく。薄膜の第2の溶媒吸収層1700に吸収された溶媒成分1607の先端が厚膜の第1の溶媒吸収層1601との界面に到達すると、より大きな毛細管力を発生させる第1の溶媒吸収層1601側に速度を増して吸収され始める。すなわち、第1の溶媒吸収層1601には、第2の溶媒吸収層1700よりもさらに小さな微粒子を用いて第2の溶媒浸透層1700よりも小さな空隙が形成されているため、ここに発生する毛細管力は第2の溶媒浸透層の毛細管力よりもさらに一段と大きくなる。そして、最終的には、極薄膜の剥離層1701を介して、ほぼ全ての溶媒成分1607が厚膜の第1の溶媒吸収層1601に吸収される。従って、溶融膜化する顔料浸透層1650には、溶媒成分1607がほぼ残留していない状態となるため、インクジェット記録による画像の記録直後でも加圧加熱処理による接着転写が可能になる。
画像支持体への転写材1Dの接着転写後には、溶媒成分1607をほぼ全て吸収した厚膜の第1の溶媒吸収層1601を、剥離層1701を介して基材50と共に剥離させる。これにより、図11(d)に示すように、画像支持体55上に、顔料画像1606を包み込むように溶融膜化した強固な顔料画像保持膜1650と、表層に薄膜の第2の溶媒吸収層1700とが残された画像転写記録物を得ることができる。薄膜の第2の溶媒吸収層1700は、顔料粒子1606よりも小さく、可視光波長よりも十分に小さな微粒子を用いて構成することが可能である。このため、画像転写記録物においてヘイズ劣化を抑制することができる。第2の溶媒吸収層1700は空隙構造を保持したままではあるが、顔料画像保持膜1650の保護層として機能させることができる。また、厚膜でほぼ全ての溶媒成分1607を吸収した第1の溶媒吸収層1601は、基材50と共に画像支持体55から剥離される。従って、ヘイズ劣化を懸念することなく、厚膜で十分な溶媒吸収容量を持たせるように構成することが可能であり、より高濃度での画像形成が可能となる。
[変形例5]
図12は本実施形態における変形例5を示す図である。本例の転写材1Eでは、上記変形例と同様に、基材50上に設けた溶媒吸収層を、第1の溶媒吸収層1601と、この第1の溶媒吸収層1601に剥離層1701を介して第2の溶媒吸収層1700とを設けた構成を有する(図12(a)参照)。但し、本例における第1の溶媒吸収層は、加圧加熱処理により溶融膜化し透明保護膜を形成するよう構成されており、この点が変形例4と異なり、他の構成は変形例4と同様である。
本例の転写材1Eにあっても、顔料浸透層1600に記録された顔料インク1003は、第2の溶媒吸収層1700との界面で高速に固液分離されるため、薄膜の顔料浸透層1600底部には薄膜稠密な顔料画像が形成される。溶媒成分は、薄膜の第2の溶媒吸収層1700を介して、最終的には、ほぼ全てが厚膜の第1の溶媒吸収層1601に吸収される(図12(b))。この際、溶融膜化する顔料浸透層1600と第2の溶媒浸透層1700には、溶媒成分1607がほぼ残留していないので、インクジェット記録による画像の記録直後でも加圧加熱による接着転写を行うことが可能である。溶媒成分1607をほぼ全て吸収した厚膜の第1の溶媒吸収層1601は、剥離層1701を介して基材50と共に剥離することが可能である。
本例では、顔料画像を記録した転写材1Eを画像支持体55に当接させた後、加熱ローラによって加圧加熱処理を行うことにより、顔料浸透層1600と同時に第2の溶媒吸収層1700が溶融膜化する。これにより、画像支持体55上には、顔料画像が記録された強固な顔料画像保持膜1650と、第2の溶媒吸収層1700が溶融膜化して形成された透明保護膜1702とが形成された画像転写記録物(図12(c)参照)が得られる。この画像転写記録物の第2の溶媒吸収層1700からは空隙が完全に除去されて、表層がヘイズ劣化の少ない透明保護膜となるため、顔料粒子1606が直接的に露出することを完全に防止できる。従って、転写画像記録物の画像表面には、優れた機械的強度が得られると共に、転写画像記録物の表面や端面から、有害な刺激光、汚染液体、及び有害ガスなどが浸入することはなくなる。よって、長期の画像保存性に優れた転写画像記録物を得ることができる。
[変形例6]
図3は本実施形態における変形例6を示す図である。図3に示すように、本例の転写材1Fは、上記の基本構成と同様に、基材50と、加圧加熱処理により溶融膜化する空隙吸収型で薄膜の顔料浸透層1600と、顔料粒子1606を固液分離して溶媒成分1607を吸収可能な空隙吸収型で厚膜の溶媒吸収層1601とを備える。基本構成と異なる点は、図3(a)に示すように、加圧加熱処理により溶融膜化して画像支持体55への接着転写性を向上させる接着強化剤1002が顔料浸透層1600の表面に離散的に設けられている点である。このような構成を採ることにより、転写材1Fでは画像支持体に対して強固な接着性を得ることができると共に、以下に説明するような画像の形成されないホワイトポイントの発生を回避することができる。
ここで、ホワイトポイントの発生について、図4を参照しつつ説明する。図4に示すように、空隙が顔料粒子1606の大きさよりも小さいインク受容層53の表面に、加圧加熱により溶融可能であり、かつ顔料インク1003をほぼ吸収しない樹脂材料1002を接着強化剤として離散的(まだら状)に設けたとする。このような画像転写材では、インク受容層53が直接露出したインク受容層53の表面で顔料粒子1606が顔料インク1003から固液分離することになり、インク受容層53内へは浸透しにくくなる。
したがって、離散的に配した非インク吸収性樹脂材料1002がインク受容層53の表面を覆った接着強化剤の直下部におけるインク受容層53には、顔料粒子1606が回り込めない部分が形成される。これが、色材が記録できない非画像部としてのホワイトポイント1608であり、このホワイトポイントが発生した場合、エリアファクターが減少して画像濃度が低下する。また、インク受容面上に固液分離された顔料粒子1606を保護する方法としては、加圧加熱処理によって溶融膜化させた接着強化剤だけで顔料粒子1606の全てを覆い込むことも考えられる。しかし、この場合には、多量の接着強化剤を設ける必要があり、エリアファクターがさらに劣化してしまう。また、インク受容層と溶融膜化した接着強化剤との間に、接着性のない顔料粒子1606が図4に示すように厚く挟み込まれてしまうと、顔料粒子1606とインク受容層53との境界で接着不良が発生する場合がある。
これに対し、図3(a)に示す本例の転写材1Fには、顔料浸透層1600の表面に、加圧加熱処理により溶融可能であり、かつ顔料インク1003をほぼ吸収しない樹脂材料1002が、接着強化剤1000として離散的に配置されている。すなわち、顔料浸透層1600が直接露出した露出部1001を残すように、接着強化剤1000が離散的に配置されている。接着強化剤1002は、立方体のような膜状のものでも良いが、顔料浸透層1600表面との接触面積が小さくなるように、顔料浸透層1600の空隙よりも大きな粒子状のものが、より好ましい。また、個々の接着強化剤粒子1002が顔料浸透層1600と接触する幅は、顔料浸透層1600内における顔料インク1003の平面方向の浸透性を考慮すると、顔料浸透層1600の膜厚の2倍よりも小さいことが好ましい。
顔料浸透層1600側から着弾した顔料インク1003は、図3(b)に示すように接着強化剤1002には吸収されず、顔料浸透層1600へと流れる。そして、顔料浸透層1600が直接露出した露出部1001に顔料インク1003の液滴の一部が接触することにより、空隙構造を有する顔料浸透層1600の内部に、顔料インク1003の液滴の全てが速やかに引きずり込まれる。顔料浸透層1600の平均細孔径は、顔料インク1003の色材である顔料粒子1606径よりも十分に大きくなるように形成されているため、顔料粒子1606も顔料浸透層1600内に入り込むことが可能である。顔料インク1003は、顔料粒子1606よりも大きな空隙が形成されている顔料浸透層1600の内部へ、速やかに浸透拡散する。顔料浸透層1600へと浸透拡散した顔料インクは、顔料粒子1606よりも小さい空隙を有する溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600との界面で、顔料画像1606と溶媒成分1607とに固液分離される(図3(c)参照)。
また、顔料浸透層1600内では、図3(b)に示すように、顔料インク1003は膜厚方向だけでなく、膜平面方向にも拡散浸透するため、図3(c)に示すように、接着強化剤1000の直下にも顔料インク1003を回り込ませることができる。これにより、非画像部となるホワイトポイントの発生が抑制された高濃度の顔料画像1606を顔料浸透層1600底部に形成することができる。
すなわち、顔料浸透層1600の空隙構造における毛細管力によって顔料浸透層1600内に顔料インクを浸透拡散させることで、顔料インク1003をほぼ吸収しない接着強化剤1002の直下にも、顔料粒子1606を入り込ませることが可能となり、エリアファクターを向上させることができる。顔料浸透層1600の内部に吸収浸透した顔料インク1003は、顔料浸透層1600の浸透異方性に応じて、膜厚方向および水平方向に拡がりながら吸収される。顔料浸透層1600の浸透異方性は、インクジェット記録による画像設計の根幹となるインクドットの拡がりを適切に制御できるように設計、製膜することにより定めることができる。すなわち、大きめのインクドットを必要とする場合には膜厚方向の浸透性よりも水平方向の浸透性を高くし、逆に、小さめのインクドットを必要とする場合には水平方向の浸透性よりも膜厚方向の浸透性を高めると共に顔料浸透層1600の膜厚を調整すれば良い。
さらに、浸透異方性を持たせずに、等方的に浸透させることで顔料浸透層1600の製膜生産性を向上させる場合には、所望のインクドットの拡がりが得られるように顔料受浸透層全体の浸透拡散性を制御すると共に、膜厚を調整すれば良い。顔料浸透層1600の顔料インク1003浸透性が等方的であれば、顔料浸透層1600の厚みにほぼ相当する幅でドットが拡がる。従って、個々の接着強化剤が顔料浸透層1600と接触する幅が、顔料浸透層1600の膜厚の2倍よりも小さくなるものであれば、接着強化剤の直下にホワイトポイントが発生するのを抑制することができる。接着強化剤が顔料浸透層1600に接触する面積が小さければ、接着強化剤は、粒子状をなすものでなくても良く、膜状をなす接着強化剤を離散的に配置しても良い。
また、接着強化剤上に着弾した顔料インク1003が接着強化剤の表面を伝って顔料浸透層1600の表面に速やかに到達できるように、接着強化剤を構成する樹脂材料には、顔料インク1003を吸収しにくいものを選定することが好ましい。さらに、顔料インク1003が表面を滑るように流れる材料としては、顔料浸透層1600との接触面積が小さくなるように、粒子状をなし、かつ接着剤体積の大きな大粒径の接着強化剤を利用することが好ましい。また、図21に示すように、着弾した顔料インクの液滴1003が、接着強化剤同士の間に一時的にブリッジ状に跨ってしまうと、顔料浸透層1600への接触が遅れる。これを避けるため、個々の接着強化剤の間隔は、顔料インク1003の液滴の大きさよりも離してまだら状(離散的)に配置することが好ましい。
本例の転写材1Fを画像支持体55に接着転写する場合には、まず、図3(c)に示すように顔料画像を形成する。次いで、顔料画像の形成された転写材1Fを画像支持体55に当接させて加圧加熱(図3(d))する。これにより、転写材1Fの顔料浸透層1600と接着強化剤1000とが共に溶融膜化して画像支持体55に接着転写される。接着強化剤1002に使用する樹脂材料には、顔料インク1003の吸収性を考慮する必要はなく、種々の画像支持体および溶融膜化する顔料浸透層1600との接着性向上を重視して選定すれば良い。例えば、溶融膜化する顔料浸透層1600だけでは接着しにくいガラス表面や、金属表面など、画像支持体の種類に合わせて接着強化剤の樹脂材料を選定すれば良い。また、種々の画像支持体に対しても、接着強化剤としての効果(接着転写性の向上効果)が発揮されるように、複数の種類の樹脂材料によって接着強化剤を構成しても良い。
前述のように、顔料インク1003の液体成分である溶媒成分1607は、ほとんど全てが溶媒吸収層1601に吸収されており、顔料浸透層1600には残っていない。そのため、顔料画像を記録した直後に、顔料浸透層1600と接着強化剤1000とを溶融膜化しても、ほぼ全ての溶媒成分1607を吸収している溶媒吸収層1601の空隙構造は維持されているため、溶媒成分1607の染み出しが生じることはない。従って、本例では、溶媒の染み出しによる、画像転写記録物の表面の汚れや加熱ローラ表面の汚れが発生することはなく、種々の画像支持体に対して転写材1Fを良好に接着転写することができる。
また、図3(d)に示すように、顔料浸透層1600は接着強化剤1002とともに、顔料画像1606を包み込むように溶融膜化して空隙が除去された状態となるため、画像支持体55上には、強固な顔料画像保持膜1650が形成される。このため、画像支持体に対して転写体1Fを、より強固に接着転写することができる。また、顔料画像保持膜1650は、接着強化剤1002とも合わせて溶融膜化しているので、顔料浸透層1600だけを溶融膜化した顔料画像保持膜に比べて、より厚膜で強固な保持膜となるため、顔料画像に対する保護機能はより向上する。
ここで、接着強化剤の使用例を図22に示す。図22(a)は、ガラスや金属などの画像支持体との接着性に優れた接着強化剤を溶融膜化させて、顔料画像保持膜1650と画像支持体との接着面に離散的に接着強化部1704を形成した状態を示している。これによれば、ガラスや金属などに対しても、転写材1Fの接着転写性を向上させることができる。また、図22(b)は、十分な体積を有する大粒径の接着強化剤を用いて、画像支持体と顔料画像保持膜との間に連続した接着強化膜1705を形成した状態を示している。これ場合には、接着面積がさらに広がり、さらに強固に転写材1Fを画像支持体55に接着転写させることができる。
上記のように、本例の画像転写材1Fでは、加圧加熱処理によって溶融可能な樹脂材料1002により構成される接着強化剤1002を、薄膜の顔料浸透層1600の表面に、まだら状に離散的に配置している。このため、画像支持体55に応じた樹脂材料の接着強化剤1002を用いることにより、ホワイトポイントの発生を抑制しつつ優れた接着転写性を確保することができる。
[変形例7]
図20は本実施形態における変形例7を示す図である。本例の転写材1Gは、図20(a)に示すように、加圧加熱により溶融膜化する空隙吸収型の顔料浸透層1600を複数の層で構成している。すなわち、溶媒吸収層1601に積層された第1の顔料浸透層1681と、この第1の顔料浸透層1682に積層された第2の顔料浸透層1682とにより構成されている。第1の顔料浸透層1681は、樹脂粒子により顔料粒子より大きな空隙が形成された空隙構造を備え、溶媒吸収層1601との界面で固液分離された顔料粒子からなる顔料画像を保持する。また、第2の顔料浸透層1681は、第1の顔料浸透層1681とは異なる樹脂粒子により第1の顔料浸透層より大きな空隙が形成された空隙構造を備える。
第2の顔料浸透層1682は、溶融膜化する第1の顔料浸透層1681および種々の画像支持体との接着性向上を重視した樹脂材料を選定して大き目の空隙を形成すれば良い。この樹脂材料は第1の顔料浸透層1681とは別の樹脂材料を使用することも可能である。例えば、溶融膜化する第1の顔料浸透層1681の樹脂材料だけでは接着しにくいガラス表面や、金属表面など、種々の画像支持体に合わせて、第2の顔料浸透層1681の樹脂材料を選定して構成すれば良い。これにより、種々の画像支持体への接着転写性を向上させることができる。また、第2の顔料浸透層1682は、第1の顔料浸透層1681に較べて空隙が大きいため、毛細管力が小さい。従って、顔料インク1003の浸透性を考慮して、第1の顔料浸透層1681よりも薄膜に構成することが好ましい。
第2の顔料浸透層1682の表面に着弾した顔料インク1003の液滴は、第2の顔料浸透層1681の空隙構造によって速やかに浸透する。第2の顔料浸透層1682に浸透したインクの先端が、空隙の小さい第1の顔料浸透層1681との界面に到達すると、空隙がやや小さく毛細管力がやや大きい第1の顔料浸透層1681に速度を速めて吸収され始める。このとき、空隙が大きい第2の顔料浸透層1682は流路抵抗が小さいため、後続の顔料インク1003も千切れることなく追従して、やや早い速度で吸収され始める。すなわち、第1の顔料浸透層1681は、顔料粒子1606よりも十分に大きな空隙を有していることから、大きな毛細管力は発生せず、インク吸収速度も速くない。しかし、流路抵抗は小さいので、より薄膜で空隙構造が小さい第2の顔料浸透層1682の表面に記録された顔料インク1003は、顔料粒子1606も含めてスムーズに薄膜の第1の顔料浸透層1681内に浸透吸収される。
一方、溶媒吸収層1601の空隙構造は、顔料粒子1606よりも十分に小さな細孔を有する空隙構造を備えていることから、毛細管力が格段に大きく、インク吸収速度も格段に速い。また、顔料粒子1606よりも空隙が小さく流路抵抗も大きいため、顔料粒子1606は溶媒吸収層1601と第1の顔料浸透層1681との界面で固液分離され、顔料インク1003の溶媒成分1607のみが溶媒吸収層1601に高速で吸収される。すなわち、第2の顔料浸透層1682の表面から第1の顔料浸透層1681に吸収浸透してきた、顔料インク1003の一部が溶媒吸収層1601と第2の顔料浸透層1681との界面に到達すると、溶媒吸収層1601の格段に大きな毛細管力によって、顔料インク1003の溶媒成分1607が高速で吸収され始める。このため、第2の顔料浸透層1682や第1の顔料浸透層1681内にある後続の顔料インク1003の浸透速度も急速に早まる。
溶媒吸収層1601によって高速に溶媒成分1607の吸収が始まると、第2の顔料浸透層1682や第1の顔料浸透層1681は流抵抗が小さいため、第2の顔料浸透層1600や第1の顔料浸透層1600に残っている顔料インク1003も高速で浸透し始める。この際、インクの粘度・表面張力によって、顔料浸透層1601内に存在しているインクは千切れることなく連続的に溶媒浸透層1601内に浸透していく。そして、最終的には、顔料浸透層1601に付与された顔料インクの溶媒成分は、ほとんど全てが溶媒吸収層1600に吸収・保持される。従って、複数の層からなり、毛細管力が比較的小さい顔料浸透層1600であっても、顔料インク1003における溶媒成分の滞留時間を短くすることができる。また、顔料浸透層1600に付与された顔料インクのほぼ全ての溶媒成分が溶媒吸収層1601に吸収されるため、顔料浸透層1600には殆ど溶媒成分1607が残留しない。よって、インクジェット記録により画像を形成した後、特別に乾燥手段や乾燥時間を設けずに加圧加熱処理を行ったとしても、溶融した顔料浸透層1600には良好な接着性を維持することができる。すなわち、インクジェット記録直後であっても、画像支持体55に対する接着転写処理を速やかに開始することができる。
また、加圧加熱処理によって顔料浸透層1600が溶融膜化しても、溶媒を吸収保持した溶媒吸収層1601は空隙構造を維持するため、溶媒吸収層1601からの溶媒成分1607の逆流や染み出しが生じることはない。従って、画像支持体55へと転写体1Gが接着された後、溶媒成分によって転写体1Gの接着性が低下することもない。さらに、第1の顔料浸透層1681と溶媒吸収層1601との界面で、顔料粒子1606は薄膜稠密に圧縮されながら固液分離されるため、薄膜の第1の顔料浸透層1600の底部に、高濃度かつ高精細な顔料画像1606を形成することができる。
また、第2の顔料浸透層1680の樹脂材料は、図20(b)に示すように、種々の画像支持体および第1の顔料浸透層1600との接着性向上を重視して、第1の顔料浸透層1600とは異なる樹脂材料が用いられている。このため、薄膜の第1の顔料浸透層1681のみでは強固な接着状態が得られにくいガラス表面や金属表面などの画像支持体に対しても、本例の転写材1Gでは、第1、第2の顔料浸透層が接着強化膜1707として機能し、強固な接着状態が得られる。また、図20(c)に示すように、第2の顔料浸透層1682に、背景隠蔽性などの光学的付加効果を有する光学的散乱粒子などを加えて空隙を形成すれば、溶融膜化した第2の顔料浸透層1709を、図20(d)に示すように、光学的効果膜として機能させることができる。
なお、以上説明した基本構成例および変形例に示す転写材は、種々のインクジェット記録装置を用いて、顔料インク1003によるインクジェット記録を行うことが可能である。顔料インク1003は、主成分としての水や揮発性溶媒と添加剤としての不揮発性溶媒などを混合した溶媒成分1607に、色材である顔料粒子1606が均一に分散されている。
また、本例の転写材1Gは、厚膜に形成された溶媒吸収層1601の空隙構造を、顔料粒子1606よりも十分に小さな細孔により構成し、薄膜の顔料浸透層1600の空隙構造を、顔料粒子1606よりも十分に大きな空隙径により構成している。これにより、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面で顔料粒子1606が固液分離されて顔料浸透層1600の底部に薄膜稠密な顔料画像が形成され、溶媒成分のほぼ全てが溶媒吸収層1601に高速に吸収される、というインク吸収メカニズムを実現している。従って、種々のインクジェット記録装置に対応するためには、使用が想定される顔料インク1003の中で、最も大粒径の顔料粒子1606より十分に大きな空隙を有する薄膜の顔料浸透層1600を構成する必要がある。さらに、溶媒吸収層1601については、最も小粒径の顔料粒子1606よりも十分に小さい空隙を有する厚膜の層によって構成することが必要となる。さらに、顔料浸透層1600は、種々の画像支持体との接着転写性を重視して薄膜に設計することが好ましい。また、溶媒吸収層1601は、にじみ過ぎによる解像度の低下を懸念する必要はない。従って、大きな毛細管力と十分な溶媒吸収容量が得られるように、溶媒吸収性を重視して顔料浸透層1600膜厚に設計することができる。
以上のように構成された転写材によれば、粒子径が異なる複数種の顔料インクにも対応可能となり、種々のインクジェット記録装置によって、にじみの少ない稠密で高濃度の顔料画像を形成することが可能になる。また、顔料画像記録後の転写材と画像支持体とを当接させて加圧加熱処理を行うことにより、溶融膜化した顔料浸透層が画像の保護膜および接着剤として機能する。すなわち、転写材は溶融した顔料浸透層を接着剤として画像支持体に接着され、画像は溶融膜化した顔料浸透層によって包み込まれた状態で保護される。この後、基材を剥離することで、画像を包み込むように溶融膜化した顔料浸透層と、溶媒浸透層と、画像支持体とを含む画像転写記録物が作成される。
[実施形態の具体的構成]
以下、本発明の実施形態を、より具体的に説明する。
(1)転写材の構成
(1.1)多層のインク受容層における密着性の向上
本実施形態における転写材1のインク受容層は、基本的には、図1に示すように、基材50上に順次積層した空隙吸収型の顔料浸透層1600と、空隙吸収型のインク受容層16とを備える。但し、インク受容層16としては、図18(c)に示す例のように、溶剤吸収層を複数の層1601、1655に分けて順次形成したり、また、顔料浸透層を図18(d)に示す例のように、複数の層1600、1658に分けて順次形成したりすることも可能である。いずれの例も空隙吸収型のインク受容層としての基本的な機能を有し、インクの吸収速度が基材50側に向かって順次高くなるように構成してあれば良い。
また、基材50、溶媒吸収層1600もしくは多層の溶媒吸収層1601、顔料浸透層1600もしくは多層の顔料浸透層1600、の何れかの界面に各々の層の材質・製膜方法などを考慮し、密着性を向上させるための密着層1603を必要に応じて設けても良い。図18(a)は、溶媒吸収層1601と基材50との間に、図18(b)は顔料浸透層1600と溶媒浸透層1601との間に、それぞれ密着層1603を設けた例を示している。図18(c)は、多層の溶媒吸収層を構成する1601と1655との間に、図18(d)は多層の顔料浸透層を構成する1600と1658との間に、それぞれ密着層1603を設けた例を示している。但し、密着層1603は、層間で毛細管力による顔料インク1003の浸透が必要な場合には、毛細管現象による顔料インク1003の移動を妨げないように親水性を考慮した材料などでごく薄い膜状に構成する必要がある。
(1.2)転写材の画像視認方向による構造上の差異
本実施形態における転写材1は、用途に応じて基材50と溶媒吸収層1601とを介して、あるいは顔料浸透層1600を介して画像を視認することができるように構成することができる。例えば、基材50と溶媒吸収層1601を介して画像を視認可能に構成する場合には、転写材1に反転画像を記録する。このような場合、顔料浸透層1600の底部に記録された顔料画像を厚膜の溶媒吸収層1601とさらに厚く機械的強度に優れた透明な基材50とで覆うこととなる。従って、基材50および溶媒吸収層1601は、顔料画像の強固な保護層としても作用する。
また、基材と溶媒吸収層1601は、光学的な透明性が必要となる。特に、溶媒吸収層1601においては、高いインク吸収速度が得られると共に、光学的な透明性に優れた構成をとることが必要となる。このような条件を満たす溶媒吸収層1601の構成としては、例えば、可視光の波長よりも格段に小さな平均細孔径を有する空隙構造を備え、かつその空隙構造によって十分なインク吸収容量に相当する細孔容積を確保し得る厚膜に構成することが必要となる。あるいは、溶媒吸収層1601を加圧加熱処理によって溶融膜化可能な材料で構成し、顔料画像の記録した後、溶媒吸収層1601で吸収した溶媒成分を十分に乾燥させた上で、顔料浸透層1600を溶融膜化して透明化しても良い。
一方、顔料浸透層1600を介して画像を視認可能とする場合には、転写材1に正像画像を記録する。このような場合、顔料浸透層1600の底部に記録された顔料画像を溶融膜化して透明な接着層とし、この接着層を用いて画像支持体50に転写材1を接着する。これにより、透明な顔料浸透層1600と画像支持体50とにより、画像支持体側から視認可能な記録物を構成することができる。なお、厚膜の溶媒吸収層1601や基材50に設けられた保護層は、光学的な透明性を低くすることが好ましい。例えば、保護層を不透明あるいは白色に形成すれば、画像以外の部分に不要な背景映像が保護層を通じて視認されることはなくなり、より鮮明に画像を視認することが可能になる。また、溶媒吸収層1601は、空隙構造を構成する微粒子の大きさを、可視光の波長と同等またはそれより大きなものを用いて小さな空隙構造を構成するようにし、溶媒浸透層の透明性を低下させるようにしても良い。あるいは、白色隠蔽層、蛍光燐光蓄光発光層としての光学的な機能を有する保護層を、剥離層を介して基材と溶媒吸収層1601との間に設けてもよい。
(1.3)基材
基材50は、第1のインクジェット記録画像を形成する画像記録時において、インクジェット転写材1のカールを抑制し、搬送性を良好にする搬送層としての機能を有する。また、基材の搬送性をさらに向上させるために、滑り性の改善などの為に公知の搬送補助層などを裏面側に設けても良い。また、基材は、透明なものあるいは不透明、有色なものいずれも選択することができ、顔料画像を視認する方向および用途に応じて自由に選択することができる。本発明のインクジェット転写材における基材は、機械的強度や耐水層としての物理的な裏面保護膜やUV・オゾン保護層としての保護機能を有する保護層を設けることも可能であるが、さらに、白色隠蔽層、蛍光燐光蓄光発光層としての光学的な機能を有する保護層として活用することも可能である。
(1.3.1)基材の材料
基材を構成する樹脂は、機械的特性と熱的特性から、基材としてはポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましいが、インクジェット転写材の用途に応じて適宜選択すればよく、特に制限されない。例えば、基材としては樹脂をベースとした樹脂フィルムやガラス、金属板、木材紙をベースとしたもの、マグネットシートを用いてもよい。
転写材がロール状である場合は、基材の厚みは好ましくは5μm以上、100μm以下、より好ましくは15μm以上50μm以下とすることにより、インクジェット転写材の搬送性を向上させることができる。逆に、カットシートやプレート状のインクジェット転写材の為の基材は、耐カール性や給紙性能などから、機械的強度や固さに優れている厚い基材を搬送層として用いるのが好ましく、基材厚みは30μm以上300μ以下、より好ましくは50μm以上150μ以下とすればよい。すなわち、基材の厚みは、搬送性や材料強度を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。用途に応じて、良好な搬送性を維持していればよい。
(1.4)保護層
転写材の基材は、画像の記録面の耐候性、耐摩擦性、および耐薬品性などの耐久性を向上させるために、保護層を含んでいてもよい。透明な保護層は、JIS K7375に準拠して測定される全光線透過率が50%以上、好ましくは90%以上のシートに相当する。
したがって、保護層には、無色透明の保護層の他、半透明の保護層、着色された透明の保護層、白色などに着色された保護層なども含まれる。保護層の種類は特に限定されない。保護層としては、耐候性、耐摩擦性、および耐薬品性などの耐久性に優れ、インク受容層との相溶性が高い材質からなるシートおよびフィルムが好ましい。
保護層は、1種あるいは複数の樹脂成分を用いて形成してもよい。好ましくは、異なるガラス転移温度を有する2種類の樹脂成分(樹脂成分E1、樹脂成分E2)を含有する。樹脂成分E1のガラス転移温度Tg1は、50℃より大きくかつ90℃未満であり、樹脂成分E2のガラス転移温度Tg2は、90℃以上かつ120℃以下であり、樹脂成分E1を造膜させて、少なくとも樹脂成分E2は、保護層中に粒子状態で残存している。転写後に加熱した部分の樹脂成分E2を膜状態にすることで箔切れ性を向上させることができる。 樹脂成分E1の材質としては、特に限定されないが、アクリル系樹脂は、比較的低温においての造膜が可能であるため好ましく使用できる。
樹脂成分E2の材質としては、ウレタン系樹脂が好ましく、適度な柔らかさを付与し、かつ、べたつきを抑えることができる。
(1.5)剥離層
基材の一部の層や溶媒吸収層1601の一部または全部を特定の機能層として画像支持体側に転写させる際に、層間に剥離層を設けることで安定した層間剥離を行うことが可能である。また、本発明の転写材において、図18に示すように、基材層50、保護層1703、溶媒吸収層1601、多層の溶媒吸収層1601、顔料浸透層1600の間に適宜剥離層1701を設けることで、用途に応じて最適な機能を転写画像に付与することが可能である。剥離層1603を、図18(e)に示すように基材50と保護層1623との界面、または図18(a))に示すように基材50と溶媒吸収層1601との界面に設けることにより、転写工程における剥離性を制御することができる。さらに、図11に示すように、溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600との界面に剥離層1603を設けて、転写時に溶媒吸収層1601も剥離することにより、顔料浸透層1600と1600が画像支持体55に転写されて、溶媒吸収層1601が基材50と共に剥離される。この場合、厚膜の溶媒吸収層1601による画像への光学的な影響は一切発生しないため、溶媒吸収層1601は、光学的特性、柔軟性、箔切れ性などを考慮せずに、インク吸収速度および吸収容量などのインク吸収性に特化して機能を向上させることが可能となる。
(1.5.1)離型層の材質
剥離層に用いる離型剤の種類は特に限定されない。好ましくは、離型性に優れ、ヒートローラの熱が発生する熱によって容易に溶融しない材料である。また、離型剤としては、保護層に使用される材料、溶媒吸収層1601または顔料浸透層1600に使用される水溶性樹脂などの、剥離する層の結合材とは、SP値が離れているものが好ましい。SP値が離れることによって、離型剤と、剥離する層の材料と、の相溶性が低くなるため、基材と、保護層、溶媒吸収層1601または顔料浸透層1600と、の境界面における剥離が容易となる。
このような離型剤の材料としては、例えば、シリコーンワックスなどのワックス類に代表されるシリコーンワックス、シリコーン樹脂などのシリコーン系材料;フッ素樹脂などのフッ素系材料;、ポリエチレン樹脂等、が挙げられる。なお、一般的に、離型剤は離型機能を有すると同時に撥水機能を有する。そのため、溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600との境界面に剥離層を付加する場合には、溶媒吸収層1601のインク吸収速度を損なわないように、離型層の厚さを薄くする。具体的には、良好な離型機能を有しかつ溶媒吸収層1601のインク吸収速度を損なわない、離型層の厚さとして、乾燥状態において0.005μm以上10μm以下、より好ましく0.005μm以上、好ましくは0.03μm以下とする。
(1.6)密着層
転写材を構成する各層の間に、必要に応じて密着層を設けることも可能である。例えば、図18(a)〜(d)に示すように、基材50、保護層1703、溶媒吸収層1600もしくは多層の溶媒吸収層1601、顔料浸透層1600もしくは多層の顔料浸透層1600の何れかの境界面に密着層を必要に応じて設けても良い。特に、剥離層を設ける必要がない層の境界面には、密着層1603を設けることにより、インク受容層の搬送時の粉落ちや、画像支持体に残す層の接着転写時の層間剥離などを防止することができる。密着層を構成する密着剤の種類は特に限定されない。但し、密着剤としては、基材、保護層および単一層からなる溶媒吸収層もしくは多層の溶媒吸収層1601、単一層からなる顔料浸透層もしくは多層の顔料浸透層1600を構成する水溶性樹脂の、いずれにも近いSP値を有する材料を選択することが好ましい。このような材料としては、例えば、熱可塑性の合成樹脂、天然樹脂、ゴム、ワックス等を用いて形成することができる。なお、保護層、溶媒吸収層1601、顔料浸透層1600との界面や、多層の溶媒吸収層1601および多層の顔料浸透層1600の界面に密着層を付加する場合、各々のインク吸収速度を損なわないように、密着層の厚さを薄くすることが好ましい。具体的には、良好な密着機能を有しかつ溶媒浸透層インク吸収速度を損なわない密着層の厚さとしては、乾燥状態で0.01μm以上10μm以下とする。より好ましくは0.1μm以上、1μm以下とすることが好ましい。また密着層は顔料浸透層1600に形成された画像の視認性を向上するため、白色顔料や蛍光燐光発光層を含有していてもよい。
さらに、密着性を向上させる他の方法としては、表面改質処理を行う方法もある。表面改質処理としては、例えば、予めコロナ放電処理やプラズマ放電処理を行ったり、IPAやアセトン等の有機溶剤を塗工したりする方法がある。また、密着性を向上させる、さらに他の方法としては、密着層を設けず、基材、保護層の構成材料、および単一層からなる溶媒吸収層もしくは多層の溶媒吸収層1601、単一層からなる顔料浸透層もしくは多層の顔料浸透層1600の表面を改質する方法がある。また、各層の塗れ性を改良する(低下させる)ことによって密着性を向上させてもよい。
(1.7)溶媒吸収層
転写材における溶媒吸収層1601は、インクジェット記録方式によって付与される顔料インク1003の溶媒成分1607を受容・吸収する層である。本実施形態におけるインク受容層は、顔料粒子よりも小さい空隙を有する細孔構造の毛細管現象によって、インクを速やかに吸収することを可能とする空隙吸収型の層である。空隙吸収型の溶媒吸収層1601は、無機微粒子と水溶性樹脂とを含有させて、微細な空隙構造にインクを受容する構成とすることが好ましい。
無機微粒子と水溶性樹脂より構成される空隙吸収型の溶媒吸収層1601は、樹脂で結合させた無機微粒子の間に、インクを吸収するための空隙を形成することにより形成し、その空隙にインクを吸収させることができる。また、水溶性樹脂によって結着された無機微粒子間の空隙が、インク受容層内の全域にほぼ均一に配置されることによって、インクをほぼ等方的に浸透させることができる。また、顔料浸透層1600を溶融膜化するための加熱圧着処理を実施した際に、インク受容層の空隙構造が壊れてインクの液体成分が顔料浸透へ染み出したり、インクの液体成分が突沸して溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600との間に空気層などが発生したりする場合には、顔料浸透層1600の溶融膜化が阻害される可能性もある。
しかし、無機微粒子を水溶性樹脂のバインダーで結合させることによって空隙が設けられたインク受容層は、無機微粒子が非常に硬い材質であるため、圧力や熱によっても空隙構造が壊れにくく、加熱圧着後も空隙構造をほぼ保持することが可能である。このため、吸収したインクをその内部に保持することができ、また蒸気が発生してもその内部に封じ込めることができる。また、加熱圧着時の熱によっても空隙構造が維持されていれば、インクの溶媒成分が個々の空隙内で突沸して蒸気が発生したとしても、接着面に空気層などが形成されないように、それを各々の空隙内で封じ込めることができる。このため、顔料浸透層1600の溶融膜化を良好とすることができる。
また、加圧加熱処理時において、空隙が潰れたり溶解したりせずに空隙構造が維持されるようにすれば、顔料インクの主要溶媒である水や不揮発性溶剤が表面に染み出すことはなく、顔料浸透層1600を適正に溶融膜化させることができる。すなわち、顔料インク1003によるインクジェット記録直後であっても、顔料浸透層1600には顔料インク1003の溶媒成分が逆流する可能性は少ない。このため、溶媒吸収層1601内に吸収された溶媒の乾燥を待つことなく、速やかに画像支持体55への加圧加熱による接着転写工程を行うことができる。
すなわち、溶媒成分1607を乾燥するための膨大な乾燥エネルギーや時間を必要とせず、簡易な工程で効率的に顔料浸透層1600の溶融膜化を実現することができる。また、無機微粒子と水溶性樹脂とにより構成される空隙吸収型のインク受容層は、特別な配向処理なくても作製できるため、生産性も良好である。本発明者らの検討によれば、無機微粒子および水溶性樹脂によって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層1601の空隙容量は、0.1cm3/g〜約3.0cm3/g程度であった。溶媒吸収層1601が薄く、細孔容積が0.1cm3/g未満の場合には、十分なインク吸収性能が得られず、インクが溢れて、顔料浸透層1600に未吸収のインク溶媒が残存するおそれがある。
また、溶媒吸収層1601がやや大き目の空隙構造で厚く構成され、細孔容積が3.0cm3/gを超える場合には、溶媒吸収層1601の強度が弱くなり、溶媒吸収層1601内にクラックや粉落ちが生じ易くなる。無機微粒子および水溶性樹脂で構成される空隙吸収型の溶媒吸収層1601において、上記の空隙容量を有する場合、インク受容層の空隙率は60%〜90%程度であった。溶媒吸収層1601の空隙率が60%以下の場合には、十分なインク吸収容量が得られず、インクが溢れて、顔料浸透層1600に未吸収のインク溶媒が残存してしまう場合があった。
また、空隙率が90%を超える場合には、溶媒吸収層1601の強度が弱くなり、溶媒吸収層1601内にクラックや粉落ち、が生じ易くなるおそれがある。本発明者らの検討によれば、無機微粒子および水溶性樹脂によって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層1601における空隙直径の平均(平均細孔直径)は、5nm〜100nmの程度が好ましい。平均細孔直径が5nm未満の場合には、溶媒吸収層1601を相当に厚くしないと十分なインク吸収容量が得られないので、インクが溢れて、顔料浸透層1600に未吸収のインク溶媒が残存するおそれがある。また、平均細孔直径が100nmより大きい場合には、顔料粒子1606が顔料浸透層1600との界面で十分に固液分離できずに、溶媒吸収層1601内部にも顔料粒子が浸透拡散してしまうことにより、画像の発色性や解像性が不十分になる場合がある。
無機微粒子として、1次粒子径が5nm〜100nm、凝集した2次粒子径が20nm〜500nm程度のものを用いることにより、良好な空隙構造が得られた。さらに良好で安定したインク溶媒吸収性と顔料固液分離性が得られ、かつ光学的に更に高い透明性を得るためには、好ましくは、1次粒子径が10nm〜40nm、凝集した2次粒子径が50nm〜200nmとなる無機微粒子を用いれば良い。一般に、顔料粒子1606の平均粒子径は、40nm〜110nm程度であるので、小粒径の顔料粒子1606を用いた顔料インク1003を用いる場合には、好ましくは、溶媒吸収層1601の平均細孔直径が10nm〜40nmとなるように調整すれば良い。また、溶媒吸収層1601の厚みを10μm〜50μmとした場合には、良好なインク溶媒吸収性が得られた。しかし、さらに高い視認性と、さらに高濃度、高精彩の画像記録が必要となる場合には、溶媒吸収層1601の厚みが15μm〜30μmとなるように調整すれば良い。
本実施形態において、空隙容量、空隙率、および空隙の空隙直径は、BET法により算出できる。「BET法」は、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積が求められる。また、空隙容積は、窒素脱着等温線よりBJH法によって計算された細孔容積であり、細孔半径0.7〜100nmの細孔容積を求めることができる。
また、平均細孔直径とは、窒素脱着等温線よりBJH法に基づき累積細孔容積分布曲線によって求めた空隙半径0.7〜100nmの累積空隙容積に、1/2を乗じて求めた累積細孔容積を有する半径を2倍したものである。空隙率は、空隙容積の全細孔容積に対する割合である。
一方、吸着気体としては、通常、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表す方法としてはBET式(Brunauer、Emmett、Tellerの式)が知られており、比表面積の決定に広く用いられている。
本実施形態における転写材の溶媒吸収層1601として、無機微粒子の代わりに、加圧加熱による接着転写時に溶融変形しにくいように、溶融温度Tgが転写温度よりも高い樹脂微粒子を用いている。この樹脂微粒子をバインダー樹脂により結合して、空隙が形成された空隙吸収型のインク受容層を形成することも可能である。樹脂微粒子の中でも溶融温度Tgが転写温度よりも高い樹脂微粒子を用いて空隙構造を形成すれば、加圧加熱時処理における熱によっても粒子構造が維持されるため、樹脂粒子の空隙が潰れることがない。
また、接着転写温度よりも軟化溶融温度が高い樹脂微粒子は、高Tg樹脂であり、一般に、樹脂微粒子を構成する分子構造が剛直であるものが多く、比較的硬い粒子である。そのため、圧力によって空隙が潰れにくい。このように、加圧加熱処理を実施しても、圧力や加熱によっても空隙が潰れることはなく、顔料インクの溶媒成分である水や不揮発性溶剤などが顔料浸透に逆流して染み出すことはなく、顔料浸透層1600の良好な溶融膜化を実現することができる。
インクジェット転写材の溶媒吸収層1601として、上記とは逆に、加圧加熱時に溶融変形しやすい樹脂微粒子をバインダー樹脂によって結合することにより空隙を形成した空隙吸収型のインク受容層を用いることも可能である。顔料インク1003の溶媒成分1607の中で、不揮発性溶剤を除く主要な溶媒成分1607としては、水やアルコールなどの揮発性溶剤を用いるのが一般的であり、溶媒吸収層1601に吸収された後でも乾燥させることが可能である。
例えば、図17(a)に示すように、転写材に、顔料インク1003を用いてインクジェット記録を行った後、乾燥のための工程、時間、または装置を設けて、溶媒浸透層1601に溶媒成分1607がほぼ残存しない状態まで十分に乾燥させる(図17(b))。これにより、溶媒浸透層1600内に含まれる不揮発性溶剤はごく少量となり、溶媒吸収層1601の樹脂微粒子を軟化溶融させた際にも、顔料浸透層1600へと逆流することはなくなる。この後、図17(c)に示すように加熱圧着処理を施すことによって顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601とが一体化して溶融膜化する。これにより、図17(d)に示すように強化顔料保護膜1651と、膜化した透明の溶媒吸収層1660とが形成される。
このように、加圧加熱処理により溶媒吸収層1601の空隙を形成している樹脂微粒子が軟化溶融しても、少量の不揮発性溶剤1607を溶媒吸収層1601内に保持することができる(図17(c))。また、加熱圧着処理によって溶媒吸収層1601が溶融膜化すると、溶媒吸収層1601の空隙や樹脂粒子界面による光散乱によって生じる透明性の低下が抑制される。このため、顔料浸透層1600の底部に稠密な薄膜状に形成された顔料画像の、溶媒吸収層1601側からの視認性を向上させることができる。また、軟化溶融して透明に膜化した溶媒吸収層1601は、顔料浸透層1600に形成された顔料画像1606の強固な保護膜としても機能する。従って、図17(c)に示す転写材は、溶媒吸収層1601が空隙構造を維持したままの転写材に比べて、汚染液体や有害ガスなどによる耐汚染性や、耐擦過性などの機械的強度を向上させることができ、長期保存性を向上させることができる。
一方、用途によっては顔料浸透層1600側からの画像視認性が重要になる場合がある。この場合は、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に稠密で薄膜状に記録された顔料画像に対して、溶媒吸収層1601もしくは基材50を背景隠蔽層として活用することが可能である。すなわち、溶媒吸収層1601もしくは基材50は、白色隠蔽層として光学的に白色または半透明とすることが好ましい。例えば、基材50の保護層に白色顔料を添加したり、白色の樹脂層を用いたり、金属膜などを付加して光散乱層にしておくことも可能である。背景保護層として溶媒吸収層1601を活用する場合には、溶媒吸収層1601に小さめの空隙を構成するための小粒径の微粒子に加えて、光学的に可視光を散乱し易い大粒径の金属微粒子もしくは樹脂微粒子、あるいは中空樹脂微粒子などを加えても良い。さらに、基材50上の保護層または溶媒吸収層1601に、蛍光体微粒子などの発光粒子を付加することで、蛍光燐光蓄光発光層として活用し、さらなる画像視認性の向上を図ることも可能である。また、顔料浸透層1600側からの画像視認性が求められるような用途では、溶媒吸収層1601自体も、透明性などの光学的特性に制約されない。つまり、溶媒吸収層1601の本来の機能である溶媒成分の高速吸収性・大容量吸収性など、液体の吸収特性に特化して設計すれば良い。従って、顔料浸透層側から画像を視認するような用途で転写材を使用する場合には、転写材の基本的な機能であるインク吸収性をさらに高めることが可能になり、高精細・高画質で視認性に優れた画像を転写することができる。
(1.8)顔料浸透層
本実施形態における転写材の顔料浸透層1600は、インクジェット記録方式によって付与される顔料インク1003の浸透・拡散・吸収を行う層である。顔料浸透層1600は、樹脂によって結合された微粒子間に空隙が形成された空隙吸収型の層であり、空隙に生じる毛細管現象によって、顔料インク1003の溶媒成分および顔料成分を速やかに吸収・浸透・拡散させる。
顔料浸透層1600の表面に付与された顔料インクは、顔料浸透層1600に形成された空隙を浸透し、顔料浸透層1600の浸透異方性に応じて、膜厚方向および平面方向に拡がりながら吸収される。顔料浸透層1600の浸透異方性は、インクジェット記録画像の根幹となるインクドットの拡がりを適切に制御できるように設計すれば良い。すなわち、やや大きめのインクドットを必要とする場合は、顔料浸透層1600の膜厚方向の浸透性よりも平面方向(インク受容層の表面に沿う方向)の浸透性を高くするとともに厚めに構成すれば良い。逆に、小さめのインクドットで高解像度な画像を必要とする場合には、顔料浸透層1600の平面方向の浸透性よりも膜厚方向の浸透性を高めると共に、顔料浸透層1600の膜厚をさらに薄めに構成すれば良い。また、顔料浸透層1600に浸透異方性を持たせないことで顔料浸透層1600の製膜生産性を向上させる場合には、インクを等方的に浸透させるように構成してもよい。この場合には、所望のインクドットの拡がりが得られるように顔料浸透層1600全体の浸透性を制御するとともに、所望のインク吸収量に応じて顔料浸透層1600の膜厚などを調整すれば良い。
顔料浸透層1600は溶融膜化可能な樹脂材料によって構成されている。溶融膜化可能な顔料浸透層1600が、加圧加熱処理により、顔料浸透層1600底部に形成された稠密な顔料画像を包み込むように膜化する。このため、顔料粒子1606を完全に固定化することができ、顔料浸透層1600と顔料粒子1606との結着力は強固なものとなる。従って、顔料浸透層1600は、顔料画像の強固な保護膜となる。また、グラビア印刷などの汎用印刷と同様に、色材である顔料粒子1606が、顔料画像保持膜の底部に、薄膜稠密に凝縮しながら透明な樹脂で包み込まれている状態が保たれるため、高精彩で、油絵のように重厚な深みのある画像を形成することが可能となる。
顔料浸透層1600では、内部に顔料粒子1606をスムーズに浸透拡散させるため、顔料粒子1606よりも十分に大きな空隙構造が形成されるように、可視光波長と同程度の大きな樹脂微粒子を用いている。従って、顔料浸透層1600の表面や空隙構造には、樹脂微粒子が剥き出しのままの無数の凹凸が存在する。このため、顔料浸透層1600を完全に溶融膜化せずに空隙構造を残した場合には、樹脂微粒子表面や空隙で可視光の散乱が生じて、透明な画像支持体から見る際の顔料画像の視認性が低下する場合もある。そこで、顔料浸透層1600は、加圧加熱処理による画像支持体55への接着転写時に、自身の空隙構造を完全に解消しつつ、顔料浸透層1600と画像支持体との接着面に生じる凹凸を完全に埋めながら、溶融膜化することが好ましい。
従って本実施形態における溶融膜化可能な顔料浸透層1600は、加圧加熱する前は空隙を構成するために粒子状態をなす一方、加圧加熱した後には溶融膜化する樹脂微粒子と、これらを接着する水溶性樹脂とで構成されている。樹脂微粒子と水溶性樹脂の少なくとも一方は、顔料粒子1606や画像支持体表面との接着性に優れた樹脂材料を用いることが好ましい。樹脂微粒子は溶融膜化温度Tgにより、粒子状態もしくは膜状態を容易にコントロールすることができる。すなわち、本発明においては、溶融膜化温度Tgが、インクジェット転写材を製造する際の乾燥温度よりも高く、かつ加熱圧着時の加熱温度よりも低い範囲にあればよい。
本発明者らの検討によれば、好ましい溶融膜化温度Tgは30℃〜120℃程度であった。溶融膜化温度Tgが30℃以下のであると、室温で保存した場合において、加圧されていなくても、顔料浸透層1600が溶融膜化してしまう場合がある。一方、溶融膜化温度Tgが120℃以上であると、基材側から加圧加熱して顔料浸透層1600を溶融膜化する温度も高くなることから、溶媒吸収層1601に吸収した顔料インク1003の溶媒成分1607が多量に蒸発することで加熱効率が低下して、過大な熱量が必要となってしまう場合もある。通常用いられている顔料粒子1606の大きさは、40nm〜110nm程度である。このため、薄膜の顔料浸透層1600の空隙が顔料粒子1606よりも十分に大きくなるように、インクジェット記録装置で想定される顔料粒子1606の大きさを考慮して、樹脂微粒子の大きさを決めれば良い。
例えば、90nm〜110nm程度の、大きめの顔料粒子1606を浸透拡散させるためには、250nm〜1μm程度の樹脂微粒子を用いて、120nm〜300nm程度の空隙構造を構成すれば良い。また、40nm〜50nm程度の、小粒径の顔料粒子1606を用いた高画質な顔料インク1003を想定する場合は、120nm〜500nm程度の樹脂微粒子を用いて、60nm〜100nm程度の空隙構造を構成すれば良い。
本発明者らの検討によれば、顔料粒子1606の浸透性以外の観点、例えば、膜強度やインク吸収速度などの観点も考慮すると、樹脂微粒子および水溶性樹脂によって構成される空隙吸収型の顔料浸透層1600に形成される空隙の直径の平均(平均細孔直径)は、60nm〜300nm程度にすることが好ましい。平均細孔直径が60nm以下の顔料浸透層1600では、ほとんどの顔料インク1003の顔料粒子1606が浸透できずに、顔料浸透層1600の表面に残ってしまう。そのため、顔料浸透層1600を溶融膜化して画像支持体へ接着転写する際に、接着性の無い顔料粒子1606が画像支持体と顔料保持膜との間に挟まれてしまい、接着転写性が低下してしまうおそれがある。
一方、平均細孔直径が300nm以上の場合には、顔料浸透層1600の膜強度が弱くなることで、インクジェット記録の搬送時に、クラックや粉落ちが生じ易くなるおそれがある。さらに、空隙が大きくなるとともに空隙の毛細管力も弱くなるので、顔料インク1003を顔料浸透層1600内へ引きずり込む速度、すなわちインク吸収速度も低下し、顔料インク1003が顔料浸透層1600表面に滞留する時間が長くなる。そのため、カラー画像を高速で記録する場合などのように、顔料インク1003が着弾する時間間隔が短くなったり、着弾密度が高くなったりすると、顔料浸透層1600表面で画像にじみが発生して画像品位が低下するおそれがある。
そこで、樹脂微粒子として、1次粒子径が50nm〜200nm、凝集した2次粒子径が250nm〜1μm程度の樹脂微粒子を用いた。これにより、良好な空隙構造が得られた。さらに良好で安定したインク吸収性と顔料浸透性を得るためには、1次粒子径が100nm〜150nm、凝集した2次粒子径が500nm〜800nmの樹脂微粒子を用いることが好ましい。また、顔料浸透層1600の厚みを1μm〜10μmとすると、顔料インクは、良好な顔料浸透性及び顔料拡散性を示した。さらに、顔料浸透層1600が1μmよりも薄くなると、顔料浸透層1600内に記録された顔料の全てを収納しきれずに表面へ溢れて顔料浸透層1600の表面に顔料粒子が付着するため、耐擦過性の低下が懸念された。
また、本実施形態では、顔料浸透層1600の空隙を顔料粒子1606より十分に大きくしている。このため、顔料浸透層1600の空隙における毛細管力は弱く、顔料インク1003を顔料浸透層1600内へ引きずり込むためのインク吸収速度は遅くなり、顔料インク1003が顔料浸透層1600表面に滞留する時間は長くなる。そのため、10μmを超える膜厚で、顔料浸透層1600を構成することは好ましくない。例えば、高速で高密度にカラー記録を行うなど、顔料インク1003の着弾間隔と密度がさらに高くなると、顔料浸透層1600表面で画像にじみが発生して画像品位の低下することが懸念される。
また、本実施形態における転写材では、顔料浸透層1600の表面に着弾した顔料インク1003のインク液滴の先端が、顔料浸透層1600内の空隙を浸透して、インク吸収性に優れた溶媒吸収層1601との界面に速やかに到達することが必要である。従って、顔料浸透層1600の膜厚が厚くなり過ぎると、顔料インク1003のほぼ全ての溶媒成分1607を溶媒吸収層1601で吸収できなくなるおそれがある。溶媒吸収層1601が溶媒成分を吸収し切れず、顔料浸透層1600内に溶媒成分が残留した場合、顔料接着転写性の低下が懸念される。特に、顔料浸透層1600の膜厚が、顔料インク1003液滴の大きさよりも厚くなった場合、顔料インク1003が溶媒吸収層1601との界面に到達できずに、顔料浸透層1600内に吸収されてしまうことがある。この場合、溶融膜化した顔料浸透層の接着転写性が低下することに加えて、顔料インク1003が固液分離されないため、顔料浸透層1600底部に薄膜稠密な顔料画像を形成できなくなり、画像記録特性が著しく低下するおそれがある。従って、視認性に優れ、高濃度で高精彩の画像記録に適した転写材を構成する場合には、顔料浸透層1600の厚みを2μm〜5μmとすることが好ましい。
(1.9)空隙吸収型のインク受容層の材料
次に、インク受容層の構成材料について詳細に説明する。
(1.9.1)無機微粒子
無機微粒子は、無機材料からなる微粒子であり、本実施形態の溶媒吸収層1601に好ましく用いることができる。無機微粒子は、溶媒吸収層1601に顔料インク1003の溶媒成分1607を高速に受容吸収するための空隙を形成する機能を有する。無機微粒子を構成する無機材料の種類は、特に制限されない。ただし、インク吸収能が高く、発色性に優れ、高品位の画像が形成可能な無機材料であることが好ましい。これらの無機材料からなる無機微粒子の中でも、アルミナ及びアルミナ水和物からなる群より選択される少なくとも1種の物質からなるアルミナ微粒子やシリカ微粒子等が好ましい。
(1.9.2)樹脂微粒子
樹脂微粒子は、樹脂材料からなる微粒子である。樹脂微粒子を水溶性樹脂で結合させることにより、顔料浸透層1600で顔料インク1003を吸収浸透させたり、溶媒吸収層1601で顔料インク1003の溶媒成分1607を吸収させたりする空隙構造を形成することができる。
樹脂微粒子を構成する樹脂材料の種類としては、特に制限はない。但し、顔料インク1003の顔料成分や溶媒成分1607との親和性が高く、常温では安定した空隙構造を維持できる樹脂材料であることが好ましい。また、顔料浸透層1600や溶媒吸収層1601に用いた場合に、加圧加熱処理によって溶融膜化する温度を安定して制御しやすい樹脂材料であることが好ましい。このような樹脂としては、アクリル系樹脂、酢ビ樹脂、塩ビ樹脂、エチレン/酢ビ共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂、またはそれらの共重合体樹脂が好ましい。
(1.9.3)水溶性樹脂
水溶性樹脂は、25℃において、水と十分に混和する樹脂、または水に対する溶解度が1(g/100g)以上の樹脂である。また、無機微粒子や樹脂微粒子と合わせて、空隙吸収型のインク受容層に用いる場合、水溶性樹脂は、無機微粒子を結着するバインダーとして機能する。水溶性樹脂としては、例えば、澱粉、ゼラチン、カゼイン及びこれらの変性物;ポリビニルアルコール(完全けん化、部分ケン化、低けん化等)ポリ(メタ)アクリル酸又はその共重合体樹脂、等を挙げることができる。水溶性樹脂の中でも、ポリビニルアルコール、特に、ポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより得られる、けん化ポリビニルアルコールが好ましく、けん化度70〜100mol%のポリビニルアルコールが好ましい。けん化度とは、ポリビニルアルコールの酢酸基と水酸基の合計モル数に対する水酸基のモル数の百分率を意味する。インク受容層は、平均重合度が2,000〜5,000のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。
水溶性樹脂は、1種を単独で用いることができ、または2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、けん化度、平均重合度等の特性が異なるものも含まれる。
水溶性樹脂の量は、無機微粒子や樹脂微粒子の100質量部に対して、3.3〜20質量部とすることが好ましい。水溶性樹脂の量を、好ましくは3.3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることにより、空隙が圧力や熱によっても崩れることがない、適度な強度を有する空隙型のインク受容層を形成することができる。
一方、水溶性樹脂の量を、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下とすることにより、インク受容層内の空隙のバインダー量を最適な量にすることができる。そのため、インクの吸収性を良好とし、水溶性樹脂によって結着された微粒子間の空隙をインク受容層内の全域にほぼ均一に配置して、インクをほぼ等方的に浸透させることができる。なお、水溶性樹脂の量を3.3質量部以下にした場合には、無機微粒子や樹脂微粒子を結着するためのバインダー量が少ないために、インク受容層の強度が低下して、インク受容層のひび割れおよび粉落ちが発生するおそれがあるため、好ましくない。一方、水溶性樹脂の量を20質量部以上とした場合には、水溶性樹脂の量が多くなるため、水溶性樹脂がインク受容層の空隙を埋めて、インクの吸収性が損なわれるため好ましくない。
(1.9.4)接着強化剤
本実施形態における転写材(図3(a)参照)は、必要に応じて、顔料浸透層1600の表面が直接露出した部分を残すように、接着強化剤が離散的に設けられている。画像を形成後(図3(c)参照)、加圧加熱処理を行うことで(図3(d)参照)、顔料浸透層1600と一緒に溶融膜化する。その結果、さらに強固な接着性を有する画像保持膜1650を形成することができる(図3(e)参照)。
接着強化剤1002は、インクをほぼ吸収しない樹脂材料からなる。図3(a)に示すように、顔料浸透層1600の表面に接着強化剤1002を離散的に設けることにより、顔料浸透層1600の表面が直接露出する露出部1001を構成する。
(1.9.4.1)接着強化剤の大きさ及び間隔とインク滴の大小
接着強化剤の中心付近に着弾した顔料インク1003液滴は、着弾直後には、その一部が顔料浸透層1600の露出部に直接接触できない場合がある。その場合でも、顔料インク1003液滴が、マイクロ秒〜ミリ秒のオーダーで、着弾衝撃によって変形しながら接着強化剤の表面を伝わって瞬時に拡がる。これにより、顔料浸透層1600の露出部にその一部が垂れ込めれば、残りの部分も顔料浸透層1600に速やかに吸収され始める。
一般的なインクジェット記録においては、顔料インク1003の液滴は高速で飛翔してきて着弾すると、液滴直径の約2倍の直径に拡がることが知られている。従って、想定される顔料インク1003液滴の大きさの2倍を超えないように、個々の接着強化剤の大きさを構成すれば良い。さらに、個々の接着強化剤同士の間隔が、顔料インク1003の液滴の大きさよりも小さいと、隣接する接着強化剤の間に着弾して跨るように拡がるおそれがある。この場合、着弾衝撃によって変形しても、顔料インク1003液滴の一部が速やかに顔料浸透層1600の露出部に到達しないこともある(図21)。したがって、隣接する接着強化剤の間隔は、想定される顔料インク1003液滴の大きさよりも大きく配置することが好ましい。すなわち、隣接する接着強化剤の間隔が大きければ、顔料インク1003液滴の一部が着弾後、速やかに顔料浸透層1600の露出部に接触することができる。このため、接着強化剤の影響を受けずに、顔料インク1003液滴の全てがスムーズに顔料浸透層1600に顔料浸透層1600に吸収される。
(1.9.4.2)接着強化剤の形状、粒径、及び接触部の大きさと顔料浸透層の膜厚との関係
本実施形態の転写材は、顔料浸透層1600内において平面方向にも顔料インク1003が拡散浸透することで、接着強化剤の直下部にも顔料インク1003が拡がって画像形成できるので、個々が膜状の形状である接着強化剤を用いることも可能である。しかしながら、顔料インク1003を吸収しない接着強化剤の直下部では、非画像部となるホワイトポイントが発生し易い。このため、個々の接着強化剤の体積が大きくても、顔料浸透層1600との接触面積が小さくなるように、離散的に設ける個々の接着強化剤は粒子状の形状にすることが好ましい。また、薄膜の顔料浸透層1600において、顔料インク1003が平面方向に拡がることができる幅は、顔料浸透層1600の膜厚と同程度である。従って、接着強化剤の両側から顔料インク1003が浸透するとしても、離散的に設ける接着強化剤で覆われる幅が顔料浸透層1600の膜厚の2倍を超えないように構成することが好ましい。
接着強化材としては、例えば、粒子形状を主体とする接着強化剤、あるいは多面体形状を主体とする接着強化剤等を用いることができる。インクジェット転写材の製膜生産性を考慮すると、接着強化材としては、特別な配向処理などを必要としない球状の粒子形状のものが好ましい。このような粒子形状を主体とする接着強化剤としては、樹脂微粒子などが挙げられる。一方、転写材の製膜過程で、接着強化剤が顔料浸透層1600の空隙に入り込んで空隙を埋めてしまうとインク吸収性が大幅に低下する場合がある。そのため、顔料浸透層1600の空隙径より大きな粒径の粒子状の接着強化剤を用いることが好ましい。
通常用いられている顔料粒子1606の大きさは、40nm〜110nm程度である。このため、薄膜の顔料浸透層1600の空隙が顔料粒子1606よりも十分に大きくなるように、顔料浸透層1600には、120nm〜1μm程度の樹脂微粒子を用い、60nm〜300nm程度の空隙構造を構成している。従って、接着強化剤の粒子径は、顔料浸透層1600の空隙に埋めこまれないように、300nmよりも大きな接着強化剤を用いれば良い。また、顔料インク1003の液滴の液滴径は、8μm〜20μm程度であるので、その2倍を超えないように、20μmよりも小さな接着強化剤を用いれば良い。さらに、隣接する接着強化剤の間の距離が、顔料インク1003の液滴の液滴径よりも大きくなるように、20μmよりも大きな間隔で接着強化剤を離散的に配置すれば良い。0.1μm程度の球状の顔料粒子1606が、数μm程度の球状の接着強化剤の直下において、顔料浸透層1600の表面からは入り込めない領域は、1μmよりも小さな幅である。このため、顔料浸透層1600の膜厚が1μm以上の厚さに形成されていれば、顔料インク1003を平面方向へも浸透拡散させることができ、接着強化剤直下でのホワイトポイントの発生を抑制することができる。
(1.9.4.3)接着強化剤のその他の構成
接着強化剤は、少なくとも顔料浸透層1600と接する接着強化剤は粒子形状をほぼ保持していることが重要である。接着強化材が粒子形状を保持することにより、顔料粒子1606が接着強化剤の下部に回り込み易くなり、インクジェット方式による画像の記録特性を損なうことなく、接着転写性を向上させることができる。また、接着強化材は、一種で構成しても、複数種を使用して構成しても良い。例えば、材質や粒径の異なる複数の接着材料を用いて接着強化剤を構成しても良い。用途に応じて、種々の画像支持体への接着転写性や記録物の耐候性を考慮して、極性溶媒でも剥離しにくい接着材料と、非極性溶媒でも剥離しにくい接着材料とを組み合わせるなど、複数種類の材質の樹脂を用いることが可能である。
(1.9.4.4)接着強化剤の量(体積)
接着強化剤の量(熔融後の体積)は用途に応じて調整すればよい。例えば、ガラスや金属などの画像支持体への強い接着転写力を必要とする場合は、十分な接着強化剤を用いることが好ましい。図3(e)に示すように、加圧加熱処理の後、溶融膜化した多量の接着強化剤が、顔料浸透層1600が溶融膜化した顔料画像保持膜1650全体を膜状に覆いながら、接着強化膜1705を形成できるように構成すれば良い。
一方、樹脂板など比較的接着し易い画像支持体55へ接着転写し、記録材の用途としても極性溶媒浸漬後の剥離強度などの高度な保存性を要求されない場合などには、接着強化剤の量は少なく構成しても良い。例えば、図22(a)に示すように、顔料浸透層1600が溶融膜化した顔料画像保持膜の接着力を補助するように、顔料画像保持膜1650と画像支持体55との接着界面に、接着強化部1704を離散的に形成しても良い。
図3(e)に示すように、顔料浸透層1600は接着強化剤1000とともに、顔料画像1606を包み込むように溶融膜化することで空隙が除去される。これによって画像支持体上には、より強固な顔料画像保持膜1650が形成されると共に、顔料画像保持膜1650によって、転写材は画像支持体55に対して強固に接着転写される。すなわち、顔料画像保持膜1650は接着強化剤1000とも合わせて溶融膜化しているため、顔料浸透層1600だけを溶融膜化した顔料画像保持膜に比べて、より厚膜で強固な保持膜として顔料画像を保護することができる。さらに、ガラスや金属などの画像支持体55との接着性に優れた接着強化剤を溶融膜化させて、図22(a)に示すように、顔料画像保持膜1650と画像支持体との接着面に離散的に接着強化部1704を形成すれば、接着転写性を向上させることができる。また、大粒径の接着強化剤を用いて十分な体積を得るようにすれば、図22(b)に示すように、画像支持体と顔料画像保持膜との間に、接着強化膜1705が形成されてさらに強固に接着転写される。
(1.9.4.5)接着強化剤の材料
接着強化材の材質は、種々の画像支持体や用途に合わせて、選択すれば良い。接着剤は、1種類の材質からなるもの、または複数種類の材質を混合したもの、のいずれを用いても良い。例えば、特定の画像支持体への接着性に優れた接着剤と、顔料浸透層1600への接着性に優れた接着剤と、を選択して混合させた接着層としてもよく、これにより、画像支持体とインク受容層のどちらにも良好に接着させることができる。
例えば、PET、PVC、PET−G、アクリル、ポリカーボネート、POM、ABS、PE、PPなどのプラスチック系の画像支持体との接着性に優れた接着強化剤としては、ポリウレタン系、アクリル系、もしくはそれらを混合物した接着剤が好ましい。また、ガラスや金属などの画像支持体との接着性に優れた接着強化剤としては、ポリウレタン系、オレフィン系の接着剤もしくはそれらを混合物した接着剤が好ましい。また、紙、木材等の画像支持体表面に凹凸がある画像支持体との接着性に優れた接着強化剤としては、酢酸ビニル系の接着剤が好ましい。さらに、顔料画像の保護性能に優れた接着強化剤と、顔料浸透層1600への密着性に優れた接着強化剤とを併用しても良く、用途に応じて最適なものを選択すれば良い。
(2)画像支持体
(2.1)画像支持体の材質
画像支持体の材質は、特に制限されない。画像支持体としては、例えば、樹脂を構成材料とする画像支持体(樹脂ベース支持体)、紙を構成材料とする画像支持体(紙ベース支持体)等を挙げることができる。さらに、本実施形態における転写材は、ガラスや金属などの種々の画像支持体にインクジェット画像を転写することができる。画像支持体との良好な接着性を得るためには、画像支持体の特性に応じた接着剤を適宜選定して、後述するように接着層を海島状(離散的)に形成すればよい。樹脂ベース支持体を構成する樹脂は、画像支持体の用途に応じて適宜選択すればよく、特に制限されない。例えば、基材と同様の材質のものを用いることができる。
(3)インクジェット転写材の製造方法
(3.1)基材の形成方法
基材50は、公知の方法によって製造可能であり、用途に応じて、基材50の両面あるいは片面にヒートシール層を形成する構成などを採用することができる。また、基材50は、用途に応じて、5μm〜300μの厚さを有するものが用いられる。機械的特性と熱的特性の面で好ましい基材50の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムを活用する場合が多い。基材50上に溶媒吸収層1601や保護層を設けるにあたり、基材50との剥離性を向上させる目的で、基材50上に、公知の塗膜装置で予め剥離層を設けておくこともできる。
剥離層は、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、スロットダイコーティング法等により、前述した剥離性を含有する組成物を基材50に塗工し、乾燥することで形成する。塗工液中の剥離層1701の濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すれば良く、特に限定されない。しかし、塗膜速度と膜の均一性の観点から、塗工液の全質量に対して、0.1質量%以上かつ5質量%以下とすることが好ましい。塗工液の塗工量は、固形分換算で0.1g/m2以上かつ1g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を0.1g/m2以上、好ましくは1g/m2以下とすることにより、基材50と溶剤浸透層1601、または保護層との剥離性を良好に保つことができる。また、特別な剥離層1701を設けずに、基材50に表面改質を行って剥離性を向上させても良い。基材の表面を不活性化する表面改質を行っても良い。表面改質の方法としては、特に制限はない。例えば、基材の表面にアルミニウム、亜鉛及び銅を金属や、フッ素樹脂やシリコーン樹脂などを蒸着するなどが挙げられる。これらの表面処理によって基材50と溶媒吸収層1601との剥離性を高めることにより、転写材を画像支持体55へ接着転写した後に、基材50から溶媒吸収層1601を剥離し易くすることができる。
(3.2)基材上への保護層の形成方法
(3.2.1)保護層の形成方法
保護層を形成する際には、まず、樹脂成分E1と樹脂成分E2とを混合した保護層用塗工液を調整しておく。次いで、剥離層を設けた基材の表面に保護層用塗工液を塗工して、乾燥(加熱)させる。これにより、保護層を形成することができる。保護層用の塗工液には、本発明の効果を妨げない限り、各種の添加剤を含有させることができる。また、保護層は、樹脂成分を含む塗工液を塗工して、乾燥させることにより形成することができる。
保護層用の塗工液の塗工量は、固形分換算で1〜40g/m2とすることが好ましく、さらに好ましくは2〜30g/m2、さらにより好ましくは4〜20g/m2である。塗工量を好ましくは1g/m2以上、さらに好ましくは2g/m2以上、さらにより好ましくは4g/m2以上とすることにより、保護層の耐水性や耐擦過性を確保することができる。一方、塗工量を、好ましくは40g/m2以下、さらに好ましくは30g/m2以下、さらにより好ましくは20g/m2以下とすることにより、保護層の透明性を用途に応じて向上させることができる。さらに、加熱圧着の際の熱伝導を良好として、保護層とインク受容層との密着性(転写性能)を向上させることもできる。
保護層を形成する場合には、保護層に含有されている樹脂成分E1を造膜させて、樹脂成分E2を粒子状態とするための乾燥(加熱)工程を含んでもよい。すなわち、保護層の形成時の乾燥温度を、樹脂成分E1のガラス転移温度Tg1以上、かつ樹脂成分E2のガラス転移温度Tg2よりも小さくして樹脂成分E1を造膜させることにより、樹脂成分E2が粒子として残存している保護層を製造することができる。
また、基材50もしくは保護層には、表面改質を行ってもよい。基材の表面を粗面化する表面改質を行うことにより、基材の濡れ性を向上させて、保護層の塗膜性を向上させることができる。表面改質の方法としては、特に制限はない。例えば、透明保護層の表面に、予めコロナ放電処理またはプラズマ放電処理を行う方法;基材の表面にIPAやアセトン等の有機溶剤を塗工する方法等を、表面改質の方法として挙げることができる。これらの表面処理は、基材50と透明保護層との結着性を高めて、それらの強度を向上させることもできるため、転写前における基材50からの透明保護層の剥離を抑制することができる。同様に、基材50に剥離層を介して保護層を設け、その保護層の表面改質を行うことにより、保護層と溶媒吸収層1601との密着性を高めることもできる。
(3.3)保護層と溶媒吸収層との密着層の形成方法
基材50上に剥離層1701を介して保護層を設けた場合、保護層と溶媒吸収層1601との密着力を高める目的で、保護層上に、公知の塗膜装置で予め密着層を設けておき、その後、溶媒吸収層1601を設けることもできる。密着層は、所定の塗工装置によって、基材に前述した密着層を含有する組成物を塗工し、乾燥することで形成する。
塗工液中の密着層の粒子濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すれば良く、特に限定されない。但し、塗膜速度と膜の均一性の観点から、塗工液の全質量に対して、0.1質量%以上かつ5質量%以下とすることが好ましい。塗工液の塗工量は、固形分換算で0.1g/m2以上かつ1g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を0.1g/m2以上、好ましくは1g/m2以下とすることにより、溶剤浸透層と基材との密着性を良好に保つことができる。
(3.4)溶媒吸収層1601の形成方法
溶媒吸収層1601は、少なくとも無機微粒子又は樹脂微粒子と、水溶性樹脂とを、適宜媒体と混合して塗工液を調製し、これを基材の表面に塗布して乾燥させることによって空隙構造を形成することができる。用途に応じて、その他の添加剤を加えることも可能である。例えば、界面活性剤、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、インク定着剤、ドット調整剤、着色剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤などを選択的に塗工液に加えても良い。塗工液中の無機微粒子又は樹脂微粒子の粒子濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、塗膜速度と膜の均一性の観点から、塗工液の全質量に対して、10質量%以上かつ30質量%以下とすることが好ましい。
溶媒吸収層1601は、前述した基材の表面に、上記の塗工液を塗工することにより形成することできる。その塗工後は、必要により塗工液の乾燥を行う。塗工方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、スロットダイコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法などを挙げることができる。
塗工液の塗工量は、固形分換算で10g/m2以上かつ40g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を10g/m2以上、好ましくは15g/m2以上とすることにより、インク中の溶媒成分1607の吸収性に優れた溶媒吸収層1601を形成することができる。また、塗工量を40g/m2以下、より好ましくは30g/m2以下とすることにより、塗工層を乾燥させる際に、インクジェット転写材にカールが発生し難くなる。
なお、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601の密着層を設ける場合は、密着剤と適当な媒体を混合した塗工液を調製し、これを溶媒吸収層1601の表面に塗布して乾燥させることによって形成することができる。また、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。さらに、粒子状の密着剤の塗工液で密着層を塗工する場合、微細な密着剤粒子が溶媒浸透層の空隙に入り込まないように、溶媒吸収層1601の表面を予め湿し水・浸し水などで処理して、溶媒吸収層1601の空隙を液体で充たしてから、密着剤を塗工すればよい。
(3.5)顔料浸透層の形成方法
顔料吸収層は、少なくとも樹脂微粒子と、水溶性樹脂とを、適宜媒体と混合して塗工液を調製し、これを溶媒吸収層1601の表面に塗布して乾燥させることによって、空隙構造を形成することができる。但し、溶媒吸収層1601の表面に顔料浸透層1600形成用の塗工液を塗工する場合は、溶媒吸収層1601の空隙に顔料浸透層1600の塗工液の水分とともに水溶性樹脂も浸透することにより、溶媒吸収層1601の空隙が埋まってしまう場合がある。また、顔料浸透層1600は、溶媒浸透層1601の空隙よりも大きな樹脂粒子を用いているが、粒度分布がシャープでなく微粒子カットが不十分な場合など、空隙よりも小粒径の樹脂微粒子が塗工液に含まれる場合もある。この場合、溶媒吸収層1601の空隙が埋まってしまうおそれがある。本実施形態の転写材における溶媒浸透層では、溶媒浸透層にインク中の水分や溶媒成分1607をほぼ全量や速やかに吸収できるように高いインク吸収速度を保持する必要がある。このため、溶媒吸収層1601に空隙を保持しておくことは重要である。また、顔料浸透層1600の塗工液の水分が溶媒吸収層1601の空隙内に急速に浸透して、溶媒吸収層1601の空隙に残存する空気と置き換わる過程では気泡が発生することがある。この気泡が、顔料浸透層1600の塗工液を介して排出される際に、顔料浸透層1600の塗工液中でトラップされてしまうと、塗工面に気泡が残るという、塗工不良を引き起こす場合もある。
このような塗工不良を回避するためには、溶媒吸収層1601の表面を、予め、湿し水・浸し水などで処理して、溶媒吸収層1601の空隙を液体で充たしてから、顔料浸透層1600形成用の塗工液を塗工すればよい。湿し水・浸し水が、溶媒吸収層1601の空隙を埋めることにより、顔料浸透層1600形成用の塗工液を塗工する前に溶媒吸収層1601の空隙に存在する空気を系外に放出することができる。さらに、顔料浸透層形成用の塗工液の塗工において、水溶性樹脂や微細な樹脂微粒子の空隙への侵入を防止することができる。
なお、塗工液中の樹脂微粒子の粒子濃度は、溶媒吸収層1601と同様に塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、塗膜速度と膜の均一性の観点から、塗工液の全質量に対して、10質量%以上かつ30質量%以下とすることが好ましい。塗工液の塗工量は、固形分換算で1g/m2以上かつ10g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を1g/m2以上、好ましくは10g/m2以下とすることにより、良好な顔料浸透性及び顔料拡散性を示すことができる。
また、塗工方法としては、溶媒吸収層1601と同等の方法を用いることができる。なお、溶融膜化可能な顔料浸透層1600の形成には、顔料浸透層1600の塗工液を塗工した後の乾燥温度を厳密に制御する必要がある。顔料浸透層1600を形成する樹脂微粒子は、画像支持体55への接着転写時に加圧加熱処理することで、溶融膜化する材料が選定されている。そのため、転写材の製造工程では、樹脂微粒子が粒子状態を維持して空隙構造を形成するように、顔料浸透層1600の形成時の乾燥温度を、樹脂微粒子の溶融膜化温度Tgよりも低く設定することが必要となる。顔料浸透層1600の形成時に、樹脂微粒子が溶融膜化する温度以上の温度で長時間加熱乾燥を行なうと、樹脂微粒子が溶融軟化して空隙構造が保持できなくなるので、乾燥条件には細心の注意が必要である。一方、顔料浸透層1600の形成時の乾燥温度が高いと塗工スピードを高めることができる。従って、生産性の面においては、顔料浸透層1600の形成時の乾燥温度をできるだけ高くするほうが好ましい。
(3.6)接着強化層の形成
本実施形態の転写材は、基材50上に積層された空隙吸収型のインク受容層である溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600の表面に、接着強化剤を含有する塗工液を塗布する。この際、顔料浸透層1600の表面には、接着強化剤をまだら状に離散的に設け、顔料浸透層1600の表面が直接露出する露出部が残こるように構成する。塗工液中の接着強化剤の濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。塗工液中の接着強化剤の濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して、適宜決定すればよい。但し、塗膜速度と接着強化剤の均一性の観点からは、塗工液の全質量に対して、2質量%以上かつ40質量%以下とすることが好ましい。
塗工方法としては、空隙吸収型の顔料浸透層1600の表面に、接着強化剤を離散的に設ける必要があるため、グラビアコーティング法を用いることが好ましい。その場合、グラビアロールの溝の線数は、好ましくは、200線程度、より好ましくは300線程度とすることが良い。グラビアロールの溝の線数が600線を超えると、隣接する接着強化剤同士の間隔が狭くなりすぎて、顔料インク1003の液滴が隣接する接着強化剤同士が跨り易くなり、顔料浸透層1600の表面に到達するまでの時間が長くなる場合がある。
また、基材50上に形成された顔料浸透層1600の表面に、粒子状の接着強化剤の塗工液を塗工する場合、接着強化剤粒子が顔料浸透層1600の空隙に入り込まないように注意が必要である。接着強化剤粒子には、顔料浸透層1600の空隙よりも大きな粒子を用いているが、接着強化剤粒子が2次凝集体であったり、粒度分布がシャープでなく微粒子カットが不十分な場合などには、空隙よりも小粒径の接着強化剤が塗工液に含まれる場合もある。本実施形態における転写材の顔料浸透層1600では、接着強化剤表面に顔料インク1003をほとんど残さずに、顔料インクのほぼ全てを速やかに吸収できるようにする必要がある。従って、顔料浸透層1600が、空隙構造を維持していることは極めて重要である。
そのため、接着強化剤の塗工液を塗る前には、予め顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601の空隙構造を浸し水などで処理して、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601の空隙を液体で充たしてから、保護膜強化剤の塗工液を塗工することが好ましい。これにより、微細な接着強化剤粒子が顔料浸透層1600の空隙へと侵入することを防止することができる。
また、接着強化剤は、加熱圧着処理によって加熱されると軟化溶融膜化する材料で構成されているため、接着強化剤の塗膜後の乾燥工程の温度には十分な配慮が必要である。すなわち、接着強化剤が軟化溶融する膜化温度、あるいはガラス転移温度以下で乾燥工程を行なうことが好ましい。但し、顔料浸透層1600の露出部が顔料インク1003を吸収浸透させ得る空隙構造を維持できれば、乾燥工程において接着強化剤の表面が多少溶融軟化して顔料浸透層1600に接着するように、乾燥工程の温度や時間を調整しても良い。乾燥時間の設定に際しては、接着強化剤が予め軟化溶融膜化する温度を測定しておき、測定された温度に基づいて適正な乾燥時間を設定すれば良い。すなわち、顔料浸透層1600の空隙構造が維持され、顔料浸透層1600に直接接触する接着強化剤の面積が増大して顔料浸透層1600の表面露出部が減少せず、かつ生産性に優れた乾燥温度や乾燥時間を設定することが好ましい。
また、接着強化剤に複数種の粒子を含ませ、ある1つの粒子に、粒子状で残存する接着強化剤粒子のバインダーとしての機能、および顔料浸透層1600の水溶性樹脂との接着性を向上させる機能を持たせてもよい。このような場合には、バインダーとして機能する接着強化剤の膜化温度以上、かつ粒子状で残存する接着強化剤粒子の膜化温度以下に乾燥温度を設定することが好ましい。このように、接着強化剤の性質に応じて乾燥温度を適宜選択することにより、インクジェットの記録特性と接着転写性とを両立させることができる。
また、接着強化剤の塗工液は、乾燥前においては、接着強化剤の塗工液を構成する接着強化剤粒子はほぼ単粒子として分散されている。しかし、乾燥の過程において塗工液中の水分が蒸発すると、塗工成膜時には接着強化剤の濃度が高くなるため、接着強化剤粒子の分散が破壊されやすくなる。その結果、接着強化剤粒子同士の衝突・合一が生じ、複数の粒子が凝集する場合がある。接着強化剤の塗工液は、このように複数の粒子が凝集した状態でも成膜することができるため、顔料浸透層1600の表面に、接着強化剤を離散的に設けることができる。
したがって、接着強化剤を単粒子で離散的に設ける場合には、乾燥前の接着強化剤塗工液の濃度を低くすればよく、一方、接着強化剤を複数の粒子が凝集した状態で離散的に設ける場合には、乾燥前の接着強化剤塗工液の濃度を高くすればよい。このように、乾燥前の接着強化剤塗工液の濃度を適宜調整することにより、成膜時における接着強化剤の離散状態を調整することができる。接着強化剤の離散状態は、転写材および記録物の用途に応じて制御することができる。
また、転写ローラや転写フィルムなど表面上に、剥離層1701を介して、まだら状に離散した形で粘着性の接着強化剤の塗工膜を設けておき、顔料浸透層1600の表面に塗工膜を圧着転写しても良い。これによれば、転写ローラや転写フィルムなど表面形成した接着強化剤の離散パターンを、そのまま顔料浸透層1600の表面に転写できることから、顔料浸透層1600表面に形成された接着強化剤の離散状態を任意にコントロールすることができる。この方法によれば、顔料浸透層1600の空隙への接着強化剤粒子の浸透を考慮する必要がないため、顔料浸透層1600に浸し水等の特別な処理を行うことなく、顔料浸透層1600の表面に接着強化剤を離散的に形成できる。
(4)記録物の製造方法
(4.1)顔料インク1003
本実施形態の転写材では、顔料粒子1606が浸透拡散可能な顔料浸透層1600を用いることで、顔料浸透層1600の底部に稠密な顔料画像を形成し、溶媒浸透層に顔料インク1003の水成分および溶媒成分1607をほぼ全量浸透させる構成を採る。これによって記録特性と保護性能とを両立させることができる。様々な用途に適用可能な記録画像の保存性・耐久性を考慮すると、本発明の転写材には、顔料インク1003が好ましく用いられる。顔料インク1003においては、インクの顔料粒子1606の平均粒子径と、顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601それぞれの平均細孔直径と、に応じて顔料インク1003の吸収状態が異なる。すなわち、想定される顔料インク1003の平均粒子径と比較して、顔料浸透層1600の平均細孔直径が大きく、溶媒浸吸収層の平均細孔直径が小さな転写材を用いれば良い。
一般に、顔料粒子1606の平均粒子径は、40nm〜110nm程度である。従って、高精細な画像が得られる小粒径の顔料粒子1606を用いた顔料インク1003では、顔料粒子1606の平均粒子径は40nm〜50nm程度である。一方、安価で安定的な大粒径の顔料粒子1606を用いた顔料インク1003では、顔料粒子1606の平均粒子径は90nm〜110nm程度である。このため、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601の平均細孔径を、想定される顔料インク1003に合わせて調整することが必要である。すなわち、顔料粒子1606の大きさに対し、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601それぞれの空隙の大きさを適切に組合せた転写材を用いることによって、顔料浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に稠密で高精細な顔料画像を形成することができる。また、顔料インク1003の溶媒である液体成分は溶媒吸収層1601に速やかにほぼ全量が吸収され、顔料浸透層1600には液体成分がほとんど残らない。このため、インクジェット記録後、加熱ローラ21などを用いた加圧加熱処理により顔料浸透層1600を速やかに溶融膜化することが可能になり、高速記録を実現することが可能になる。顔料インク中の顔料成分としては、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、及びスルホン基のうちの少なくとも1種の官能基もしくはその塩が結合された自己分散顔料、または顔料粒子1606の周りを樹脂で被覆した樹脂分散型の顔料を用いることができる。
また、樹脂分散型の顔料は、インク媒体と分離した後の顔料粒子1606同士の結着力を高めて、顔料浸透層1600の底部に強固な薄膜状の顔料画像を形成することができる。顔料インク1003中の液体成分である溶媒は、顔料浸透層1600よりもインク吸収速度がさらに速い溶媒吸収層1601にほぼ全量が吸収されるため、顔料画像の溶媒成分1607は、顔料浸透層1600にはほとんど残らない。そのため、樹脂分散型の顔料粒子1606は、互いに近接することで、顔料分散用に加えられた分散樹脂によってより強固に互いに結合する。また、分散樹脂のSP値は、顔料浸透層1600の水溶性樹脂のポリビニルアルコールなどのSP値に近い。そのため、加圧加熱時の熱によって分散樹脂、水溶性樹脂が溶融すると、両者の相溶性が高まり、樹脂分散顔料は顔料浸透層1600内で強固に接着される。
顔料粒子1606の周りを被覆する樹脂としては、酸価が100〜160mgKOH/gである(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。酸価を100mgKOH/g以上とすると、サーマル方式でインクを吐出するインクジェット記録方式において、インクの吐出安定性が向上する。一方、酸価を160mgKOH/g以下とすると、顔料粒子1606に対して相対的に疎水性を有するようになり、インクの定着性および耐滲み性が良好となる。したがって、インクの高速定着および高速記録に適する。ここで酸価とは、1gの樹脂を中和するために必要となるKOHの量(mg)であり、その親水性を示す指標となり得るものである。また、この場合の酸価は、樹脂分散剤を構成する各モノマーの組成比から計算により求めることもできる。具体的な顔料分散体の酸価の測定方法としては、電位差滴定により酸価を求める、Titrino(Metrohm製)等を使用することができる。
本実施形態の転写材では、インクジェット記録用のインクの表面張力や粘度が適切に制御されることによって、顔料浸透層1600の表面の露出部に接した顔料インク1003の一部が顔料浸透層1600に吸収され始めると、その他の顔料インク1003も顔料浸透層1600内部に引き込まれてゆく。このようなインクの粘度ηは、1.5〜10.0mPa・sであることが好ましく、より好ましい粘度ηは、1.6〜5.0mPa・sであり、さらに好ましい粘度ηは1.7〜3.5mPa・sである。一方、インクの表面張力γは、25〜45mN/mであることが好ましい。すなわち、インクの表面張力や粘度は、着弾した顔料インク1003が顔料浸透層1600の表面に接した後、速やかに顔料浸透層1600に吸収され、かつ溶媒吸収層1601側に、溶媒成分1607のみが高速に吸収されように制御すれば良い。また、インクの粘度を上記の範囲に適切に調整することにより、インクの吐出時におけるインクの流動性が向上し、ノズルへのインク供給性、延いてはインクの吐出安定性も向上する。また、インクの表面張力を上記の範囲に調整することにより、インク吐出時に、インク吐出口のメニスカスを維持することができる。
なお、顔料浸透層1600の表面にまだら状に接着強化剤を設けた場合においても、上記の範囲内にインクの表面張力や粘度を制御すれば、転写材の記録面に着弾したインクの一部が接着強化剤からはみ出してインク受容層の露出部に垂れ込む場合に、接着強化剤表面においてインクが千切れないように制御することができる。さらには、インクの一部が接着強化剤の相互間の空間をバイパス的に通過して、吸収性に優れた顔料浸透層1600の表面の露出部に接した後、そのインクが顔料浸透層1600に引きずり込まれて吸収されるように、制御することもできる。
インクの粘度は、JIS Z 8803に準拠し、温度25℃の条件下、E型粘度計(例えば、東機産業製「RE−80L粘度計」等)を用いて測定した値を意味するものとする。インクの粘度は、界面活性剤の種類や量の他、水溶性有機溶媒の種類や量等により調整することができる。インクの表面張力は、温度25℃の条件下において自動表面張力計(例えば、協和界面科学製「CBVP−Z型」等)を用い、白金プレートを用いたプレート法によって測定した値を意味するものとする。インクの表面張力は、界面活性剤の添加量、水溶性有機溶剤の種類及び含有量等により調整することができる。
(4.1.1)顔料濃度
本実施形態において、インク中の色材濃度は特に規定はされない。但し、好ましい色材濃度は0.5%以上10%以下であり、より好ましくは1%以上5%以下である。色材濃度をこのような範囲とすることにより、画像の視認性と擦過性とを両立させることができる。特に、顔料インク1003の場合、顔料浸透層1600内部に浸透した顔料粒子1606を顔料浸透層1600内部にほぼ全て収納するためには、顔料浸透層1600の空隙容量に対応させて色材濃度を厳密に制御する必要がある。すなわち、顔料粒子1606が顔料浸透層1600の空隙を満たしてしまい、顔料粒子1606が溢れない範囲であり、かつ画像の視認性を向上させることができる範囲において、顔料濃度をできる限り高くすることが好ましい。要は顔料浸透層1600内で顔料粒子1606を全て受容できるように、顔料濃度や記録密度に応じて、顔料浸透層1600の空隙容量を調整すれば良い。すなわち、インクの顔料濃度を高くして、顔料濃度や記録密度を高くする場合は、空隙容量を高くして、顔料粒子1606を空隙内部に全て収納できるようにすれば良い。インク濃度を上述した範囲に制御してインクの粘度を最適な状態に制御することにより、インクの吐出時におけるインクの流動性を向上させることが可能になり、記録ヘッドのノズルへのインク供給性、延いてはインクの吐出安定性を向上させることができる。
(4.2)インクジェット方式による画像記録方法
次に、本発明のインクジェット転写材に、顔料画像を記録するインクジェット画像記録方法について説明する。インクジェット記録方式とは、記録ヘッドに形成された複数のノズルから、転写材のインクジェット記録面に対してインク(インク滴)を吐出して画像を記録する方式である。転写材への記録に用いるインクジェット記録方式の種類は特に限定されず、サーマルインクジェット方式やピエゾ方式のいずれも使用可能である。
インクジェット記録装置は、記録ヘッドを本発明の顔料浸透層1600表面に接触させる必要がなく、極めて良好で安定した画像を記録することができる。シリアルスキャン方式においては、記録ヘッドから吐出するインク滴を小さくして、高品位な画像を容易に記録することができる。また、シリアルスキャン方式においては、同一の記録領域に対して複数回の記録ヘッドの走査によって所定の時間差をもって顔料インク1003を複数回着弾(分割重複走査)させることが可能である。この場合にも、顔料インク1003の蒸発速度に比べて空隙吸収型の顔料浸透層1600のインク吸収速度が十分に速いため、顔料浸透層1600の表面にはインクは残留しにくく高い接着転写性を維持することができる。
一方、フルライン方式の場合には、吐出口の配列方向と交差(例えば、直交)する方向に、転写材を連続的に搬送しつつ、マルチノズルヘッドからインクを吐出することによって、高解像度で高品位な画像を高速に記録することができる。高速なカラー記録により、顔料インク1003を高速かつ高密度で記録しても、本実施形態における転写材は、高画質の画像を形成することができると共に、画像支持体に対する良好な接着転写性を得ることができる。本実施形態の転写材は、インク吸収性に優れた空隙吸収型の薄膜の顔料浸透層1600と、高速に溶媒成分を吸収する溶媒吸収容量の大きな厚膜の溶媒吸収層1601とで構成されているため、顔料インク1003が転写材の表面で滞留しにくい。このため、本実施形態の転写材によれば、カラー画像を形成した場合にも、にじみが抑制された高品質の画像を形成することができ、かつ、良好な接着転写性を得ることができる。なお、インクジェット転写材に顔料画像を記録する際には、画像を視認する方向に応じて、反転画像あるいは正像画像を記録すればよく、その画像は使用用途に応じて選択することができる。
(4.3)加圧加熱処理
本実施形態では、顔料インク1003を用いて転写材に画像を形成した後、転写材を画像支持体に当接させた状態で加圧加熱処理することにより、顔料浸透層1600が溶融膜化して画像支持体55に接着する。その後、画像支持体から基材を剥離することで、顔料画像が転写された記録物を作成することができる。加圧加熱処理において、顔料浸透層1600は顔料画像を包み込むように溶融膜化することで、顔料粒子1607を完全に固定化することができ、溶融膜化した顔料画像保持膜が画像支持体に強固に接着する。なお、記録物の画像を視認する方向に応じて、インクジェット記録装置によって、正像画像あるいは反転画像を記録することができる。
本実施形態では、溶媒吸収層1601を無機微粒子と水溶性樹脂とで形成し、加圧加熱処理においても空隙構造を維持するように構成することが可能である。この場合、溶媒吸収層1601は、加圧加熱処理においても溶媒成分1607を保持するため、溶媒成分1607の乾燥処理を行わなくても、顔料浸透層1600に対して加圧加熱処理を行うことが可能である。すなわち、加圧加熱処理によって顔料浸透層1600の樹脂微粒子が溶融膜化しても、溶媒吸収層1601は、その空隙構造を維持し、吸収した溶媒成分1607および溶媒の蒸気を内部に封じ込める。このため、溶融膜化した顔料浸透層1600には良好な接着転写性を得ることができる。前述のように、本実施形態では、顔料画像を保持する顔料浸透層1600と画像支持体とを当接させた状態で、加圧加熱処理することで転写材を画像支持体に接着させるようにしている。しかし、手動操作のアイロンなどで顔料浸透層1600に十分な圧と十分な熱を加えて画像支持体に加熱圧着することもできる。この他、顔料浸透層を加熱する加熱装置としては、ヒートローラ、加熱ファン、加熱ベルト、熱転写ヘッド等を用いた装置を使用することも可能である。
(4.3.1)ヒートローラによる加圧加熱処理
本実施形態では、所定の熱や圧力を加えて顔料浸透層1600の樹脂微粒子を溶融膜化するので、上記の加圧加熱処理の中でも、加圧および加熱の均一性の観点から、ヒートローラと加圧ローラを併用した構成を採ることが好ましい。具体的には、転写材の顔料浸透層1600に画像1606を形成した後、画像の形成された転写材を画像支持体55に重ね合わせて、加熱したヒートローラ21と加圧ローラ22との間を通して搬送する。これにより、顔料浸透層1600が溶融膜化し、画像支持体55には転写材が接着転写される。
また上記のように、ヒートローラと加圧ローラとを併用して加圧加熱処理を行なう場合、顔料浸透層1600が溶融膜化しても、溶媒吸収層1601の空隙構造が維持されるように、加熱圧着時の熱や圧力を制御することが重要である。図2(b)に示すように、ヒートローラ21と加圧ローラ22とによって加圧加熱されることにより、顔料浸透層1600は溶融膜化されるが、溶媒吸収層1601に吸収された顔料インク1003の溶媒成分1607は空隙構造に保持されたままである。空隙構造を維持することにより、加熱圧着時の熱や圧力によってインクの液体成分が溶媒吸収層16011607の空隙内で突沸して蒸気が発生したとしても、各々の空隙内に蒸気を封じ込めることができ、この結果、顔料浸透層1600に空気層などが形成されず、顔料浸透層1600の溶融膜化を良好とすることができる。また、加熱圧着によっても、溶媒吸収層1601が空隙構造を維持することにより、圧力による空隙の潰れ、および加熱による空隙が溶解を抑制し、インクの液体成分である不揮発性溶剤が顔料浸透層1600に染み出すことを防止して、顔料浸透層1600を溶融膜化させて画像支持体に良好に接着転写することができる。
加熱圧着の温度は、顔料浸透層1600の樹脂微粒子が溶融膜化する温度以上になるように制御する。こうすることで、顔料浸透層1600が顔料画像を包み込むように膜化することで、顔料粒子1606を完全に固定化することができ、強固な顔料画像保持膜を形成して画像支持体に接着転写することが可能になる。また、顔料浸透層1600の表面に離散的に接着強化剤を配したインクジェット転写材を用いた場合は、接着強化剤も溶融膜化する温度以上になるように制御する。離散的に配した接着強化剤が顔料浸透層1600と一体化して画像支持体に接着することで、顔料画像保持膜を強固に接着転写することが可能になる。また、加熱圧着温度は、溶媒吸収層1601の空隙構造を必要以上に潰すことなく、加熱圧着後も空隙構造を維持するように制御することも重要である。すなわち、加熱によって、空隙が溶解してインクの液体成分である不揮発性溶剤が表面に染み出さないように、空隙を構成する成分の溶解温度以下で加熱圧着させることが好ましい。また、インクの水や溶媒成分1607が個々の空隙内で突沸や蒸気しないように、特に水の沸点以下で転写させることが好ましい。
加熱圧着の圧力は、0.5kg/cm以上かつ7.0kg/cm以下とすることが好ましい。加熱圧着の圧力を0.5kg/cm以上とすることにより、顔料浸透層1600が顔料画像を包み込むように膜化することで、顔料粒子1606を完全に固定化することができ、強固な顔料画像保持膜とすることが可能になる。一方、加熱圧着の圧力を7.0kg/cm以下とすることにより、溶媒吸収層1601の空隙構造を必要以上に潰すことなく空隙を維持し、インクの液体成分である不揮発性溶剤が表面に染み出すことを防止して、顔料浸透層1600の溶融膜化を良好とすることができる。ヒートローラ21として、加熱源を内蔵した金属筒の表面に、耐熱性と離型性とに優れたフッ素樹脂層を設けて構成することが好ましいが、さらに、所望の加熱圧接幅を得るための弾性層としてフッ素ゴム層などを積層しても良い。また、ヒートローラ21の機能を、加熱部材としての平板状のセラミックヒータと、伝熱搬送部材としてのポリイミド等の耐熱性フィルムの表面にフッ素樹脂層やフッ素ゴム層などの耐熱離型層とを設けたフィルム型加熱圧着搬送体を用いても良い。
また、加圧ローラ22としては、シリコーンローラを使用することが好ましい。シリコーンローラはSP値が8.7付近になるため、顔料浸透層1600の表面が加圧ローラ22に直接接触した場合でも、顔料浸透層1600の表面が加圧ローラ22に接着し難くなる。シリコーンローラの表面に、さらに離型性に優れたフッ素樹脂表面を積層させるなど、離型性と加圧加熱性に優れた構成としても良い。
(4.4)記録物の製造装置
本実施形態における記録物の製造装置について、図5を参照しつつ説明する。本実施形態における製造装置は、転写材に顔料画像の記録を行う記録部100(図5(a))と、画像が記録された転写材を画像支持体に接着転写させる転写部(接着部)200(図5(b))と、画像支持体に接着転写された転写材から基材を剥離させる剥離部300(図5(c))と、を備える。製造装置を構成する記録部100、転写部200、および剥離部300は、全て一体的に構成することも可能であるが、各部が独立した装置を構成するものであっても良い。
記録部100は、転写材1に顔料画像を記録するインクジェット記録装置によって構成されている。このインクジェット記録装置は、転写材1を搬送する搬送部103と、搬送部に転写材1を給送する給送部101と、搬送部103により搬送された転写材1に記録を行う記録ヘッド102Hを搭載した画像形成部102とを備える。インクジェット記録装置には、シリアル型のインクジェット記録装置、あるいはフルライン型のインクジェット記録装置など、記録方式が異なる種々の装置が存在する。しかし、本実施形態における転写材1は、いかなる記録方式のインクジェット記録装置にも適用可能である。なお、図5では、モータ104の駆動力によって周回運動を行なう搬送ベルトによって搬送部103が構成されているが、搬送部の構成は特に限定されない。
また、転写部200は、図5(b)に示すように一対のヒートローラ21,加圧ローラ22を備え、両ローラ間を通過する画像支持体と転写材に対して加圧加熱処理を行う。両ローラ21、22を通過する間に、転写材1の顔料浸透層は溶融して接着性を帯び、これを接着剤として転写材1601は画像支持体55に接着転写される。また、剥離部300は、画像支持体に転写された転写材のうち、基材50と剥離層1701を、溶媒吸収層1601から離間する方向(図5(c)の矢印方向)へと引っ張り、溶媒吸収層1610から剥離させる。なお、製造装置の各部は、制御装置(図示せず)によって制御されている。制御装置は、CPU、ROM、およびRAMなどを有するコンピュータなどによって構成することが可能である。
(5)インクジェット画像転写記録物
IDカードなどの用途あるいは、インテリア用の写真プレートなどの記録物の用途においては、白色あるいは有色のアクリル板などの不透明な画像支持体を用いて記録物を作成する。このような場合は、記録物は、溶媒吸収層1601や透明保護層を介して画像の視認性するため、転写材に画像を記録する場合は、反転画像を記録する。以下、転写材に反転画像を記録して記録物について詳述する。
(5.1)基材の全てが剥離される記録物
搬送層を含む基材の全てが剥離される転写材と、この転写材を用いて作成した記録物と、について説明する。搬送層を含む基材の全てが剥離される転写材1は、図5(a)に示すように、基材50上に、空隙吸収型の溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600とを設け、その顔料浸透層1600の表面により、構成される。記録物を作成する際には、まず、図5(b)に示すように、記録ヘッド102Hから吐出される顔料インク1003によって、接着層1012を介して、転写材1に反転画像を記録する。次に、図5(c)に示すように、転写材1と画像支持体55とを重ねて、加熱ローラ21および加圧ローラ22で加圧および加熱することによって、顔料浸透層1600を溶融膜化しながら、転写材を画像支持体55に接着(転写)させる。その後、図5(d)に示すように、搬送層(基材50の全部)を剥離することにより、図5(e)に示すような記録物73を得る。
記録物73においては、顔料浸透層1600は第1の画像は顔料粒子1606を包み込むように膜化して顔料画像の透明な保護膜となるため、顔料粒子1606を完全に固定化することができ、溶融膜化した顔料画像保持膜が画像支持体に強固に接着する。
また、このようにして作製した記録物73は、図5(e)のように、最表層が溶媒吸収層1601となるため、この記録物73の表面に対して、第2の次画像(顔料画像)1622の形成が可能である。また、前述したように、溶媒吸収層1601は、加熱圧着による転写によっても空隙構造が維持されるように形成されているため、インク吸収性に優れた記録表面を再形成することができる。これにより、顔料浸透層1600に記録されて改竄できない顔料画像1606に加えて、加筆および捺印などによって新たな画像の記録(追記)も可能となる。このような追記は、例えば、記録物がIDカード、社員証、マイナンバー、パスポート等の公的文書の通知等の用途に使用される場合に好ましい。第2の画像1622は、図5(f)のように記録ヘッド102Hを用いたインクジェット記録、あるいは加筆および捺印等によって、追記することができる。
(5.2)基材の一部が剥離される記録物
基材50の一部(搬送層)のみが剥離される転写材を用いて製造した記録物は、クレジットカード等の各種セキュリティーカードの分野、およびパスポート等に用いることができる。このような用途においては、より高いレベルの耐久性およびセキュリティー性が要求される。このような用途の記録物においては、基材に、透明保護層および予め画像が記録された記録層などの機能層を、単層あるいは複層として設けてもよい。
基材が機能層を含む転写材は、図7(a)のように、保護層などの機能層1623を含む基材50上に、空隙吸収型の溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600とを設けて構成される。ここに示す機能層1623は、例えば、透明保護層、または予め画像が記録された前記録層などである。
記録物を作成する際には、まず、図21(b)のように、インクジェット記録ヘッド102Hから吐出される顔料インク1003によって、転写材1の顔料浸透層1600に顔料画像(反転画像)1606を記録する。次に、図7(c)のように、転写材1と画像支持体55とを重ね合わせて、加熱ローラ21に加圧および加熱することによって、顔料浸透層1600を溶融膜化しながら、転写体1を画像支持体55に接着(転写)する。その後、図7(d)のように、機能層1623を除く基材50の一部(搬送層)を剥離する。これにより、図7(e)のように、透明保護層または記録層などの機能層1623が積層された記録物73を作製することができる。このような記録物73は、その最表層が保護層、ホログラム層、あるいは前記録層などの機能層1623であるため、高い耐久性およびセキュリティー性を得ることができる。また、記録物73においては、顔料浸透層1600は第1の画像は顔料粒子1606を包み込むように膜化して顔料画像の透明な保護膜となるため、顔料粒子16061607を完全に固定化することができ、溶融膜化した顔料画像保持膜が画像支持体55に強固に接着する。
(5.3)両面同時転写
本実施形態においては、転写材1に反転画像を記録後、図5(b)に示すように、折り曲げて画像支持体55を挟み込み、加熱圧着後、転写材1の基材50を剥離することにより、記録された顔料画像1606、1624を画像支持体の両面に同時に転写することができる。すなわち、図5(a)に示す記録装置100で、転写材1の顔料浸透層1600に画像支持体の両面に転写する反転の顔料画像1606,1624を記録し、図5(b)に示すように、反転の顔料画像1606,1624が記録された転写材1を折り曲げて、画像支持体55を挟み込む。そして、それらの転写材1と画像支持体55を、上下の加熱ローラ21によって構成された両面加圧加熱式の転写装置101に挿入し、加圧加熱処理を行なう。これにより、顔料画像1606が反転記録された顔料浸透層1600を画像支持体55の表面に、顔料画像1624が反転記録された顔料浸透層1600を裏面にそれぞれ密着して接着する。その後、図5(c)に示すように、手動により、基材50の表裏面を溶媒吸収層1601から剥離することにより、記録画像1606、1624を画像支持体の両面に転写することができる。このとき、顔料浸透層1600は加熱圧着により、溶融して顔料画像1606および1624を包み込むように膜化するため、顔料粒子1606、16024を完全に固定化することができると共に、溶融膜化した顔料画像保持膜が画像支持体に強固に接着する。溶媒吸収層1601は、空隙構造を保持できるように構成されているため、顔料インク1003の溶媒成分1607,1625は溶媒吸収層1601に残っていてもよい。
(5.4)片面正像記録
インテリア用の写真プレートなどを作成する場合には、ガラス板およびアクリル板などの透明な画像支持体を用いて記録物を作成する場合がある。このような場合は、記録物は画像支持体側から顔料画像を視認するため、転写材には正像画像を記録する。以下、転写材に正像画像を記録して記録物を作成する場合について説明する。
ここで使用する転写材としては、基材を剥離可能とする転写材を用いる。この転写材は、図7(a)に示すように、基材50と、剥離層1701と、保護層1623と、この基材50上に積層された空隙吸収型の溶媒吸収層1601と、溶媒吸収層1601上に積層された顔料浸透層1600と、を備えている。
記録物を作成する際には、まず、図7(b)に示すように、インクジェット記録ヘッド102Hから吐出される顔料インク1003によって、転写材1の顔料浸透層1600に顔料画像(正像)1606を記録する。次に、図7(c)に示すように、転写材1と画像支持体55とを重ね合わせ、それらを加熱ローラ21によって加圧および加熱する。これにより、顔料浸透層1600は溶融して顔料画像1606を包み込むように膜化して接着性を帯びた顔料保持膜1650となり、この樹脂層1650が透明な画像支持体55に接着(転写)する。その後、図7(d)のように、保護層1623を除く基材50と共に剥離層1701を剥離することにより、記録物を得ることができる。この記録物は、図7(e)に示すように、透明の保護層で形成される画像支持体55側から、記録した顔料画像および機能層1623に形成された画像を視認することができる。
以下、本発明のより具体的な実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例によって制限を受けるものではない。なお、以下の記載における「部」、「%」は特に断らない限り質量基準である。
[ポリビニルアルコール水溶液1の調製]
ポリビニルアルコール(商品名「PVA235」、クラレ製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。なお、ポリビニルアルコールは、平均重合度が2300、けん化度が98〜99mol%であった。
[溶媒吸収層塗工液1の調製]
シリカ水溶液(商品名「スノーテックスST−OL」(固形分(SiO2)濃度 20%、平均1次粒子径40nm)日産化学工業株式会社製)を100部と、ポリビニルアルコール水溶液1を25部加え、スタティックミキサーにより混合し、溶媒吸収層塗工液1を得た。
[溶媒吸収層塗工液2の調製]
シリカ水溶液(商品名「スノーテックスO」(固形分(SiO2)濃度 20%、平均粒子径10nm)日産化学工業株式会社製)を100部とポリビニルアルコール水溶液1を50部加え、スタティックミキサーにより混合し、溶媒吸収層塗工液2を得た。
[溶媒吸収層塗工液3の調製]
第1のガラス製反応容器に攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素ガス導入管を備えつけた後、ノニオン系乳化剤としてアクアロンRN−30(第1工業製薬(株)製)6g、アニオン系乳化剤アクアロンHS−30(第1工業製薬(株)製)6g、メチルメタアクリレート100.0g、エチルアクリレート20.0g、2−ヒドロキシルエチルアクリレート10.0g、メタクリル酸5.0gを用い、水275gを入れ攪拌し総量427.0gの混合物を調整した。次にこの混合物の36gを取り出し、同様の第2の反応容器に移した後、窒素ガス導入下73℃で40分間乳化を行った。次いで重合開始剤としてペルオキソニ硫酸アンモニウム17gを水36gに溶解し、乳化液に添加した。その後、混合物の残量を第1の反応容器より取り出し100分間かけて、第2の反応容器内に徐々に滴下し、73℃で重合を行った。混合物残量を滴下終了した後、73℃で80分間攪拌を継続し、エマルジョン水溶液1(Tg:78℃、樹脂固形分35.0%)を合成した。この分散粒子の平均1次粒径は10nmであった。次に、エマルジョン水溶液1を100部とポリビニルアルコール水溶液1を43.75部加え、スタティックミキサーにより混合し、溶媒吸収層塗工液3を得た。
[溶媒吸収層塗工液4の調製]
溶媒吸収層塗工液3の調製と同様にして、チルアクリレート20.0g、エチルアクリレート115.0g、2−ヒドロキシルアクリレート5.0g、メタクリル酸10.0gとして、エマルジョン水溶液2(Tg:90℃、樹脂固形分35.0%)を合成した。この分散粒子の平均1次粒径は40nmであった。次に、エマルジョン水溶液2を100部と、ポリビニルアルコール水溶液1を43.75と、をスタティックミキサーにより混合して、溶媒吸収層塗工液4を得た。
[溶媒吸収層塗工液5の調製]
シリカ水溶液(商品名「スノーテックスST−Ak−PS−S」(固形分(SiO2)濃度 16%、平均1次粒子径120nm)日産化学工業株式会社製)を100部と、ポリビニルアルコール水溶液1を25部加え、スタティックミキサーにより混合し、溶媒吸収層塗工液5を得た。
[顔料浸透層塗工液1の調製]
エマルジョン水溶液1と同様にして、懸濁重合により、固形分濃度20%、平均1次粒子径180nm、Tg:78℃のエマルジョン水溶液3を得た。尚、ノニオン系乳化剤としてアクアロンRN−30(第1工業製薬(株)製)およびアニオン系乳化剤アクアロンHS−30(第1工業製薬(株)製)を使用しなかった。次に、エマルジョン水溶液3を100部とポリビニルアルコール水溶液1を25部加え、スタティックミキサーにより混合し、顔料浸透層塗工液1を得た。
[顔料浸透層塗工液2の調製]
エマルジョン水溶液1と同様にして、懸濁重合により、固形分濃度20%、平均1次粒子径120nm、Tg:78℃のエマルジョン水溶液4を得た。次に、エマルジョン水溶液3を100部とポリビニルアルコール水溶液1を25部加え、スタティックミキサーにより混合し、顔料浸透層塗工液2を得た。
[顔料浸透層塗工液3の調製]
エマルジョン水溶液3を100部、三井化学製ケミパールS−300(固形分濃度50%、平均2次粒子径500nm)を3部と、第2の接着粒子の蓄光発光粒子として、根本化学社製N夜光Luminova BGL−300FFを3部とイオン交換水10部と、加えてエマルション溶液5を得た。次に、エマルジョン水溶液5を100部とポリビニルアルコール水溶液1を25部加え、スタティックミキサーにより混合し、顔料浸透層塗工液3を得た。
[顔料浸透層塗工液5の調製]
エマルジョン水溶液1と同様にして、懸濁重合により、固形分濃度20%、平均1次粒子径200nm、Tg:78℃のエマルジョン水溶液5を得た。次に、エマルジョン水溶液3を100部とポリビニルアルコール水溶液1を25部加え、スタティックミキサーにより混合し、顔料浸透層塗工液2を得た。
[保護層塗工液1の調製]
アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃、固形分濃度45%)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第1工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg103℃、固形分濃度35%)を1部と、ポリビニルアルコール水溶液1を0.5部と、を分攪拌混合して、保護層塗工液1を得た。
[保護層塗工液2の調製]
VANORA社製DXA4081(固形分濃度50%)を50部と、JSR社製中空樹脂粒子水溶液(商品名「SX8022−04EM」、固形分濃度28.2%)を50部と、根本化学社製N夜光Luminova BGL−300FFを5部と、アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃、固形分濃度45%)を90部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第1工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg103℃、固形分濃度35%)を10部と、ポリビニルアルコール水溶液1を5部と、を5分攪拌混合し、保護層塗工液2を得た。
[接着層強化材塗工液1の調製]
三井化学性ケミパールV−300(固形分濃度40%、平均2次粒子径μ)を10部と、イオン交換水部90部と、を5分攪拌混合して、接着層塗工液1を得た。
[基材A]
基材として、PET基材(商品名「テトロンG2」 厚さ50μm 帝人デュポンフィルム株式会社製)用いた。次に基材表面に、離型剤としての中京油脂社製ポリロン788を塗工して、剥離層1701を形成して基材Aを調整した。その塗工にはグラビアコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は0.5g/m2とした。乾燥温度は60℃とした。
[大粒子径顔料インクの調製]
<(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の合成>
撹拌装置と、滴下装置と、温度センサと、上部に窒素導入装置を有する還流装置と、を取り付けた反応容器に、メチルエチルケトン1,000部を仕込み、そのメチルエチルケトンを撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸2−ヒドロキシエチル63部、メタクリル酸141部、スチレン417部、メタクリル酸ベンジル188部、メタクリル酸グリシジル25部、重合度調整剤(商品名「ブレンマーTGL」、日本油脂社製)33部、及びペルオキシ−2−エチルヘキサン酸−t−ブチル 67部を混合して得た混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で10時間反応を継続させて、酸価110mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)89℃、重量平均分子量8,000の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液(樹脂分:45.4%)を得た。
<水性顔料分散体1の調製>
冷却機能を備えた混合槽に、フタロシアニン系ブルー顔料1,000部、上記の合成により得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液、25%水酸化カリウム水溶液、及び水を仕込み、撹拌及び混合して混合液を得た。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)は、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で40%の比率となる量を用いた。また、25%水酸化カリウム水溶液としては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)が100%中和される量を用いた。さらに、水は、得られる混合液の不揮発分を27%とする量を用いた。得られた混合液は、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置に通し、循環方式により4時間分散させた。分散液の温度は40℃以下に保持した。
混合槽から分散液を抜き取った後、水10,000部で混合槽と分散装置との流路を洗浄し、洗浄液と分散液とを混合して希釈分散液を得た。得られた希釈分散液を蒸留装置に入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、濃縮分散液を得た。室温まで放冷した濃縮分散液を撹拌しながら2%塩酸を滴下して、pH4.5に調整した後、ヌッチェ式濾過装置にて固形分を濾過して水洗した。得られた固形分(ケーキ)を容器に入れ、水を加えた後、分散撹拌機を使用して再分散させ、25%水酸化カリウム水溶液によってpH9.5に調整した。その後、遠心分離器を使用し、6000Gで30分間かけて粗大粒子を除去した後、不揮発分を調整して、平均2次粒子径が90nmの水性顔料分散体1(水性シアン顔料分散体1(顔料分:14% 酸価110))を得た。
フタロシアニン系ブルー顔料を、カーボンブラック系ブラック顔料、キナクリドン系マゼンタ顔料又はジアゾ系イエロー顔料に変更したことを除いては、水性シアン顔料分散体と同様にして、平均2次粒子径が91nmの水性ブラック顔料分散体1、平均2次粒子径が93nmの水性マゼンタ顔料分散体1、又は平均2次粒子径が90nmの水性イエロー顔料分散体1を得た。
[大粒子径顔料インク10032の調製]
<水性顔料分散体2の調製>
顔料インク1003としては、市販のカーボンブラック「45L」(2次粒子径40nm、DBP吸油量45ml/100g、三菱化学社製)100gを、水1000mlによく混合、微分散した後、これに次亜塩素酸ソーダ(有効塩素酸塩濃度12%)300gを滴下して、100〜104℃で10時間撹拌して湿式酸化した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンティス社製)で濾過し、表面改質カーボンブラック粒子が洩れるまで水洗した。このウエットケーキを水5キロリットルに再分散し、電導度2mSまで逆浸透膜で脱塩し、更に、表面改質カーボンブラック濃度15質量%に濃縮して水性顔料分散体2を得た。また、カーボンブラック系ブラック顔料をフタロシアニン系ブルー顔料、キナクリドン系マゼンタ顔料又はジアゾ系イエロー顔料に変更したことを除いては、カーボンブラック系ブラック顔料分散体と同様にして、平均2次粒子径が42nm水性シアン顔料分散体2、平均2次粒子径が45nmの水性マゼンタ顔料分散体2、又は平均2次粒子径が48nmの水性イエロー顔料分散体2を得た。
[インクの調製]
下表1に示す組成(合計:100部)となるように、水性顔料分散体1および水性顔料分散体2および各成分を容器に投入し、プロペラ撹拌機を使用して30分以上撹拌した。その後、孔径0.2μmのフィルター(日本ポール社製)で濾過して、顔料インク1003を調製した。なお、表1中の「AE−100」は、アセチレングリコール10モルエチレンオキサイド付加物(商品名「アセチレノールE100」、川研ファインケミカル製)を示す。なお、上記の顔料インク1003の平均2次粒子径を表1に示す
Figure 2018069601
[実施例1]
次に、本発明の実施例1を、図6を参照しつつ説明する。
(転写材1の製造)
溶媒吸収層1601塗工液1を基材Aの表面に塗工してから乾燥させることにより、転写材の構成素材として、基材Aと溶媒吸収層1601とを含む積層シート1を製造した。乾燥後の塗工量は25g/m2とした。溶媒吸収層1601の厚さは25μmであった。その後、基材Aと溶媒吸収層1601とを含む積層シート1の表面に、湿し水による処理を行いながら顔料浸透層1600塗工液1を塗工した後に、乾燥させることにより、転写材の構成素材として、基材Aと溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600とを含む転写材1(図6(a))を製造した。乾燥後の塗工量は5g/m2とした。顔料浸透層1600の厚さは5μmであった。溶媒吸収層1601および顔料浸透層1600の塗工にはグラビアコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥温度は60℃とした。転写材1の顔料浸透層1600の空隙の細孔直径、および溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径をBET法により測定した。顔料浸透層1600の空隙の細孔直径は180nmであり、溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径は40nmであった。
(記録物1の製造)
転写材1に、樹脂分散顔料インク10031を用いて第1の画像(反転画像)を記録(図6(b))した。その後、その転写材を画像支持体に加熱圧着(図6(c))させてから、基材Aを剥離(図6(d))することにより、実施例1の記録物1(図6(e))を得た。次に、記録物1の溶媒吸収層1601の表面に、樹脂分散顔料インク10031により、第2の画像(正像)を記録(図6(f))した。さらに、溶媒吸収層1601にサインペンによって加筆し、かつ朱肉によって捺印した。第1の画像および第2の画像を記録する製造装置の記録部として、シリアルヘッドを搭載した顔料インクジェットプリンタ(商品名「PIXUS PRO−1」、キヤノン株式会社製)を用いた。このプリンタに、前述の樹脂分散顔料インク10031を搭載し、きれいモード(吐出量4pl、解像度1200dpi、カラー記録)によって、画像を記録した。画像支持体としては、1mm程度の厚みのPET製のカード(商品名「ペットカード」、合同技研株式会社製)を用いた。転写剥離装置としては、ダイニック社製のDC−10を用いた。加熱圧着の条件は、温度160℃、圧力3.9Kg/cm、搬送速度50mm/secとした。顔料浸透層1600は溶融膜化し、溶媒吸収層1601は空隙を維持するように転写を行った。
実施例1においては、薄い顔料浸透層1600を浸透したインクは、溶媒吸収層1601に接することにより、その溶媒吸収層1601に瞬時に引き込まれる。溶媒吸収層1601の平均細孔直径は顔料の平均粒子径よりも小さいため、顔料インク1003は、顔料浸透層1600の底部において固液分離される。これにより、インクの顔料粒子1606は、顔料浸透層1600の底部において薄膜状の稠密な画像1606を形成する。その画像の彩度は良好であった。また、顔料浸透層1600が薄く形成されているため、インクのドットが広がり過ぎる前にインクが溶媒浸透層に到達して、顔料浸透層1600の底部にて顔料粒子1606が固液分離される。そのため、ドット系を適切に制御して、稠密な薄膜状の顔料画像を形成することができ、解像度の高い画像においても、にじみは見られなかった。
固液分離したインクの溶媒1607は、厚く形成された溶媒吸収層1601にほぼ完全に吸収された。そのため、インクの溶媒は、接着層および顔料浸透層1600に残存しない。また、溶媒吸収層1601が無機微粒子と水溶性樹脂からなる強固な空隙構造体であるため、転写後にも空隙構造が維持される。従って、水分を蒸発させる乾燥動作を行うことなく、画像の記録直後に加熱圧着による転写を行っても、溶媒吸収層1601に吸収された溶媒が逆流することはなく、転写性が良好であった。
また、画像支持体に圧接する顔料浸透層1600の圧接部の顔料浸透層1600を構成する樹脂粒子が軟化溶融することで顔料浸透層1600は膜化され、画像支持体55と顔料浸透層1600との接着面積が増えて、接着性は良好であった。このとき、顔料浸透層1600は第1の顔料画像を包み込むように膜化して、顔料保持膜1650を形成し、第1の画像1606の強固な保護膜となることを確認した。また、基材Aを剥離する際には、画像支持体55に圧接する溶媒吸収層1601の圧接部においては、水溶性樹脂が軟化しても無機微粒子の空隙構造が維持されており、インクの溶媒成分1607が保持された。
転写材1は、溶媒吸収層1601の細孔直径が可視光の波長よりも小さいため、ヘイズが低く、透明性が高い。したがって、図6(e)、(g)のように、視認者が矢印1646の視認方向から第1の画像1606を見たときに、その画像濃度は良好であった。
また、記録物1は、図6(e)に示すように、転写後に基材Aを剥離することにより溶媒吸収層1601が露出した状態となる。そのため、その露出した溶媒吸収層1601に対しては、図6(g)に示すように、インクジェット等による第2の画像(正像)1657の追記、および、筆記用具による加筆、捺印等が可能となる。顔料浸透層1600に形成された第1の画像1606は、溶媒吸収層1601に覆われて偽造および改竄されにくいため、セキュリティー性の高い記録物1が作成できた。
[実施例2−1]
次に、本発明の実施例2−2を、図8を参照しつつ説明する。
(転写材2−1の調整)
保護層塗工液1を基材Aの表面に塗工してから乾燥させることにより、転写材の構成素材として、基材Aと保護層とを含む積層シート2を製造した。乾燥後の塗工量は5g/m2とした。次に溶媒吸収層1601塗工液1を保護層1623の表面に塗工してから乾燥させることにより、転写材の構成素材として、基材Aと保護層と溶媒吸収層1601とを含む積層シート2を製造した。乾燥後の塗工量は25g/m2とした。溶媒吸収層1601の厚さは35μmであった。
その後、基材Aと溶媒吸収層1601とを含む積層シート2の表面に、湿し水による処理を行いながら顔料浸透層1600塗工液1を塗工した後に、乾燥させることにより、転写材の構成素材として、基材と保護層と溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600とを含む転写材2−1を製造した(図8(a))。乾燥後の塗工量は5g/m2とした。顔料浸透層1600の厚さは5μmであった。保護層の塗工、溶媒吸収層1601の塗工、顔料浸透層1600の塗工にはグラビアコーターを用い、塗工速度は5m/分、転写材2−1の顔料浸透層1600の空隙の細孔直径、および溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径をBET法により測定した。顔料浸透層1600の空隙の細孔直径は180nmであり、溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径は40nmであった。
(記録物2−1の製造)
転写材2−1に、樹脂分散顔料インク10031を用いて第1の画像(反転画像)を記録した(図8(b))。その後、図8(b)に示す転写材を画像支持体に加熱圧着させてから、PETの基材を剥離することにより、実施例2−1の記録物2−1(図8(c))を得た。第1の画像を記録する製造装置の記録部として、実施例1と同様のものを用いた。画像支持体としては、1mm程度の厚みのPET製のカード(商品名「ペットカード」、合同技研株式会社製)を用いた。転写剥離装置としては、ダイニック社製のDC−10を用いた。加熱圧着の条件は、温度160℃、圧力3.9Kg/cm、搬送速度50mm/secとした。顔料浸透層1600は溶融膜化し、溶媒吸収層1601は空隙を維持するように転写を行った。
本実施例2−1は、転写材2−1が基材Aと溶媒吸収層1601との間に設けた保護層1703を設けている点が実施例1と異なる。従って、記録物2−1(図8(c))は、保護層1703により、溶媒吸収層1601に保持された空隙構造の表面を保護することで、画像表面の機械的強度を向上させることができた。さらに、記録物の表面から溶媒吸収層1601の空隙構造に侵入しようとする、汚染液体、有害ガスなどによる汚染を防止することができた。
[実施例2−2]
次に、本発明の実施例2−2を、図9を参照しつつ説明する。
(転写材2−2の調整)
実施例2−1の保護層塗工液1を保護層塗工液2に変更し、かつ溶媒吸収層1601塗工液1を溶媒吸収層1601塗工液2に変更した以外は実施例2−1と同様にして、転写材2−2を得た(図9(a))。転写材2−2の顔料浸透層1600の空隙の空隙直径、および溶媒吸収層1601の空隙の空隙直径をBET法により測定した。顔料浸透層1600の空隙の空隙直径は180nmであり、溶媒吸収層1601の空隙の空隙直径は10nmであった。
(記録物2−2の製造)
記録物2−2は、転写材2−2に樹脂分散顔料インク10032を用いて、第1の画像(正像画像)を記録した(図9(b))。その後、その転写材2−2を、20mm厚の透明アクリル板の画像支持体と加熱圧着させてから、基材Aを剥離することにより、実施例2−2の記録物2−2を得た(図9(c))。なお、画像記録装置および転写剥離装置としては、実施例2−1と同様のものを用いて正像画像を記録した。また加熱圧着の条件は、実施例2−1と同様に行った。顔料浸透層1600は溶融膜化し、溶媒吸収層1601は空隙を維持するように転写を行った。
本実施例2−2は、下記の点において実施例2−1と異なる。すなわち、本実施例2−2においては、高画質な正像画像を形成するために小粒径の顔料インク10032を用いている。また記録物2−2においては、保護層が白色顔料粒子1656を含んでおり白色散乱層として機能している。
記録物2−2は、高画質で長期保存性が求められる写真インテリア物などに好適にもちいることができる。小粒径の顔料インク10032を用いることより、高解像度かつ高濃度な顔料画像を記録することができた。記録物2−2は、顔料画像1606を、画像支持体55を介して視認するため、溶媒吸収層1601を構成は、溶媒吸収層1601の空隙に構造によるヘイズ低下による透明性の低下などを受ける必要がない。このため、溶媒吸収層1601の厚みをインク吸収性に特化して厚く形成することができ、高精細および高画質であって視認性に優れた顔料画像とすることができた。
また、画像支持体55が透明な場合には、転写画像の背景が透明となって、背景からの反射光がないため、転写画像の視認性が劣るおそれがある。しかし実施例2−2においては、顔料画像の背景の保護層1703が白色顔料1656含むことにより、が白色散乱層として機能するため、その白色散乱層を背景とする転写画像は、コントラストが高くなって視認性が良好となった。さらに、保護層1703によって、記録物の裏面の転写画像1606を保護することができた。
また記録物2−2における顔料浸透層1600は、転写後に軟化溶融して膜化させることにより、顔料浸透層1600の空隙がなくなり、顔料浸透層1600はほぼ透明の顔料保持膜1650となった。したがって、図9(b)のように、矢印1646の視認方向から、画像支持体55、顔料保持膜1601を介して第1の画像1606を見たときに、その画像濃度は極めて良好であった。
一方、長期保存性の観点から、画像を記録するためのインクとして、耐候性に優れた顔料粒子1606を色材とする顔料インク10032を用いている。このため、耐光性、耐オゾン性、耐水性に優れた顔料画像1606が得られた。また、顔料保持膜1650は、インクジェット記録時には、樹脂微粒子と結合樹脂とによって形成されている空隙に、顔料粒子1606が稠密に内在し、転写時には、それらの樹脂微粒子と結合樹脂とが軟化溶融して顔料粒子1606を包み込むように膜化する。この結果、耐擦過性などの機械的強度、および長期保存性に優れた記録物2−2が得られた。
また、記録物2−2の製造装置の転写部において顔料浸透層1600を軟化溶融させて膜化した際に、非転写部において粒子状態を維持し、転写部において膜化状態となる。そのため、転写の境界部における顔料浸透層1600には、膜化状態と粒子状態の違いが生じて、画像支持体55の端部における切れ性が良好となり、高品質の写真インテリア用の記録物2−2が得られた。
[実施例3]
次に、本発明の実施例3を、図10を参照しつつ説明する。
(転写材3の調整)
実施例2−1の溶媒吸収層塗工液1を溶媒吸収層塗工液3に変更し、顔料浸透層塗工液1を顔料浸透層塗工液2に変更した以外は実施例2−2と同様にして、転写材3を得た(図10(a))。転写材3の顔料浸透層1600の空隙の空隙直径、および溶媒吸収層1601の空隙の空隙直径をBET法により測定した。顔料浸透層1600の空隙の空隙直径は120nmであり、溶媒吸収層1601の空隙の空隙直径は10nmであった。
(記録物3の製造)
転写材3に、樹脂分散顔料インク10031を用いて第1の画像(反転画像)を記録し、乾燥手段によって顔料インク1003の溶媒成分1607を乾燥した(図10(b))。図10(b)に示す転写材3を画像支持体55に加熱圧着させてから、基材Aを剥離することにより、実施例3の記録物3(図10(c))を得た。インクジェット記録装置、転写装置、および剥離装置としては、実施例1と同様のものを用いた。画像支持体としては、2mm白色のアクリルプレートを用いた。加熱圧着の条件は実施例1と同様である。このとき、顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601は溶融膜化するように転写を行った。
本実施例3は、実施例2−1と異なる。すなわち、実施例3においては、溶媒吸収層1601が軟化溶融して膜化可能な樹脂微粒子によって構成されており、溶媒吸収層1601が、転写後に軟化溶融して膜化され、透明膜化した溶媒吸収層1655を形成する点が異なる。記録物3は、高画質で長期保存性が求められる写真インテリア物など好適に用いられる。本実施例3においては、画像支持体への転写後に加圧加熱によって溶媒吸収層1601も軟化溶融して、透明膜化した溶媒吸収層1655を形成する。このため、視認者は、図10(c)の矢印1646方向から、保護層1703と透明膜化した溶媒吸収層1655とを通して見る。このとき、膜化した溶媒吸収層1655は透明であるため、溶媒吸収層1601のヘイズが低くなり、画像の視認性が向上していることも確認できた。
記録物3においては、記録物2−1と同様に、顔料浸透層1600が顔料保持膜1650を形成して顔料画像1606を保護するとともに、顔料浸透層1600の溶融膜化により、画像支持体55に強固に接着した。また、長期保存性の観点から、耐候性に優れた顔料粒子1606を色材とする顔料インク1003を用いているため、耐光性、耐オゾン性、耐水性に優れた顔料画像が得られた。また、顔料浸透層1600および溶媒吸収層1601は、空隙を形成する樹脂微粒子と結合樹脂とが溶融膜化して空隙構造がなくなるため、記録物の端面からの液体やガスなど侵入を防止できた。この結果、長期保存性が極めて高い記録物3を得ることができた。
[実施例4]
次に、本発明の実施例4を、図11を参照しつつ説明する。
(転写材4の製造)
基材として、PET基材(商品名「テトロンG2」 厚さ50μm 帝人デュポンフィルム株式会社製)用いた。この基材の表面に、東洋紡社製バイロナールMD−1985を塗工した後、それを乾燥させることにより、基材上に、機能層としての密着層を形成した。乾燥後の塗工量は0.5g/m2とした。次に、密着層の表面に、溶媒吸収層1601塗工液2を塗工することにより、第1の溶媒吸収層1601を形成した。乾燥後の塗工量は25g/m2とした。溶媒吸収層1601の厚さは25μmであった。第1の溶媒吸収層1601の表面に、中京油脂社製ポリロン788(固形分濃度3%)を、インク溶媒の浸透吸収を妨げないように極めて薄く塗工して、剥離層を設けた。この剥離層によって、転写後に、溶媒吸収層1601を顔料浸透層1600から剥離し易くした。この剥離層の表面に溶媒吸収層1601塗工液1を塗工することにより、第2の溶媒吸収層1601を形成した。乾燥後の塗工量は6g/m2とした。溶媒吸収層1601の厚さは6μmであった。この第2の溶媒吸収層1601の表面に、顔料浸透層1600塗工液1を塗工することにより顔料浸透層1600を形成して、転写材4(図11(a))を製造した。乾燥後の塗工量は5g/m2とした。顔料浸透層1600の厚さは5μmであった。密着層の塗工、溶媒吸収層1601を塗工、顔料浸透層1600の塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥温度は60℃とした。転写材4の顔料浸透層1600の空隙の空隙直径は180nm、第1の溶媒吸収層1601の空隙の空隙直径は10nm、第2の溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径は40nmであった。
(記録物4の製造)
転写材4に、前述した顔料インク10031を用いて第1の画像(反転画像)をインクジェット方式により記録した(図11(b))。次に、図11(b)の転写材を画像支持体55である20mm厚の白色アクリル板の表面に顔料浸透層1600を合わせて、それらをヒートローラと加圧ローラとにより加圧加熱して接着(転写)させた。インクジェット記録装置、転写装置、および剥離装置としては、実施例1と同様のものを用いた。その後、基材、密着層、インク溶媒成分1607のほぼ全てを含んだ第1の溶媒吸収層1601、および剥離層1701を剥離して、本実施例4の記録物4(図11(c))を得た。この記録物4においては、画像支持体55上に、第2の溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600が積層され、その顔料浸透層1600は、薄膜状に稠密に記録された高画質な顔料画像(反転画像)を包み込むように膜化している。
実施例4は、基材と第1の溶媒吸収層1601との間に密着層1603を設け、かつ第1の溶媒吸収層1601と第2の溶媒吸収層1700との間に剥離層1701を設けることにより、転写時に基材と共に第1の溶媒吸収層1601が剥離される。この点が実施例2−1と異なる。
また、記録物4は、転写材4の顔料浸透層1600を20mm厚の白色アクリル板からなる画像支持体55に接着(転写)し、インク溶媒成分1607を多量に含んだ第1の溶媒吸収層1601は、剥離層1701によって、基材と共に第2の溶媒吸収層1700から剥離されることによって製造される。従って、溶融膜化する顔料浸透層1600には、溶媒成分1607がほとんど残留していないので、インクジェット記録直後でも加圧加熱による接着転写が可能であった。
また、接着転写後に、溶媒成分1607のほぼ全てを吸収した厚膜の第1の溶媒吸収層1600を剥離層1701を介して基材とともに剥離することで、画像支持体55上に顔料画像を包み込むように溶融膜化した強固な顔料画像保持膜1650と、表層に薄膜の第2の溶媒吸収層1700が残された記録物4を得ることができた。薄膜の第2の溶媒吸収層1700は、可視光波長よりも十分に小さな微粒子を用いて構成することが可能であるので、ヘイズ劣化を抑制できた。また、第2の溶媒吸収層1700は空隙構造を保持したままではあるが、顔料画像保持膜1650の保護層として機能させることができた。従って、転写材4は厚膜でほぼ全ての溶媒成分1607を吸収した第1の溶媒吸収層1601は、基材と一緒に剥離されるので、ヘイズ劣化を懸念することなく、厚膜で十分な溶媒吸収容量を持たせるように構成することが可能である。また、多量のインクを用いて画像を形成することができ、高濃度での画像形成が可能であった。
[実施例5]
次に、本発明の実施例5を、図12を参照しつつ説明する。
(転写材5の製造)
実施例4の第2の溶媒吸収層1601の形成において、溶媒吸収層塗工液1を溶媒吸収層塗工液4に変更した以外は実施例4と同様にして、転写材5(図12(a))を製造した。その塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は6g/m2とした。乾燥温度は60℃とした。溶媒吸収層1601の厚さは6μmであった。転写材5の顔料浸透層1600の空隙の細孔直径は180nmであり、第1の溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径は10nmであり、第2の溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径は40nmであった。
(記録物5の製造)
まず、転写材5の接着層1012側から、前述した顔料インク10031を用いて第1の画像(反転画像)1606をインクジェット方式により記録した(図12(b))。次に、(図12(b))の転写材を画像支持体55である20mm厚の白色アクリル板の表面と顔料浸透層1600とを重ね合わせて、それらをヒートローラと加圧ローラとにより加圧加熱して接着(転写)させた。その後、基材、密着層、インク溶媒成分1607のほぼ全てを含んだ第1の溶媒吸収層1601、および剥離層を剥離して、本実施例5の記録物5(図12(c))を得た。インクジェット記録装置および転写剥離装置は、実施例1と同様のものを用いた。
この記録物5においては、画像支持体55上に溶融膜化された第2の溶媒吸収層と、溶融膜化された顔料浸透層とが積層された状態となる。顔料浸透層1600は、薄膜状に稠密に記録された高画質な顔料画像(反転画像)を包み込むように膜化され、第2の溶媒吸収層1700も溶融膜化される。
本実施例5は、転写により第2の溶媒吸収層1701が溶融膜化する点において、実施例4と異なる。記録物5は、転写材5の顔料浸透層1600および第2の溶媒吸収層1700を溶融膜化しながら、20mm厚の白色アクリル板からなる画像支持体55に接着(転写)される。この後、インク溶媒成分1607を多量に含んだ第1の溶媒吸収層1601を、剥離層1701によって、基材と共に第2の溶媒吸収層1700から剥離することによって記録物が得られる。
顔料浸透層1600は、転写時に、顔料画像1606を包み込むように膜化して顔料保持層1650を形成する。また、第2の溶媒吸収層1700も溶融膜化して、透明膜化した第2の溶媒吸収層(透明保護膜)1702を形成する。顔料保持層1650の表面に透明膜化した第2の溶媒吸収層1702をすることで、極めて強固な透明保護層を形成する。顔料保持層1650および透明膜化した第2の溶媒吸収層1702は、膜化により、空隙が埋まるため、端部からの汚染液体および有害ガスなどの浸入による汚染を防止できる。従って、記録物5は耐擦過性などの機械的強度を向上させて、記録物の長期保存性を飛躍的に向上させることができた。また、顔料保持層1650および透明膜化した第2の溶媒吸収層1702は透明な膜となるため、画像の視認性も良好であった。記録物5は、高画質で長期保存性が求められる写真インテリア物などに用いて好適であった。
[実施例6−1]
次に、本発明の実施例6−1を、図13を参照しつつ説明する。
(転写材6−1の製造)
保護層塗工液1を基材Aの表面に塗工してから乾燥させることにより、転写材の構成素材として、基材Aと保護層とを含む積層シート3を製造した。乾燥後の塗工量は5g/m2とした。次に溶媒吸収層1601塗工液1を保護層の表面に塗工してから乾燥させることにより、転写材の構成素材として、基材と保護層と溶媒吸収層とを含む積層シート4を製造した。乾燥後の塗工量は25g/m2とした。溶媒吸収層1601の厚さは25μmであった。
その後、基材Aと保護層と溶媒吸収層1601とを含む積層シート4の表面に、湿し水による処理を行いながら顔料浸透層塗工液1を塗工した後、乾燥させた。これにより、転写材の構成素材として、基材Aと保護層と溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600とを含む積層シート5を製造した。乾燥後の塗工量は5g/m2とした。顔料浸透層1600の厚さは5μmであった。さらに、積層シート5における顔料浸透層1600表面に、接着層塗工液1を塗工して乾燥させることにより、顔料浸透層1600の表面にまだら状の接着強化材を設けた。すなわち、顔料浸透層1600の表面に、インク吸収性に劣る接着強化材をまだら状に離散的に設けた。すなわち、顔料浸透層1600の表面が露出した部分が残こるように接着強化材を形成し、転写材6−1を製造した(図13(a))。保護層の塗工、溶媒吸収層1601の塗工、顔料浸透層1600の塗工、接着強化材の塗工には、グラビアコーターを用い、塗工速度は5m/分とした。乾燥温度は60℃とした。
転写材6−1の顔料浸透層1600の空隙の細孔直径、および溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径をBET法により測定した。顔料浸透層1600の空隙の細孔直径は180nmであり、溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径は40nmであった。転写材6−1の断面をSEMによって観察し、個々の接着強化剤の間隔を観察した。その結果、接着強化剤の間隔は、顔料インク1003の液滴径(10μm)の大きさよりも離れて、まだら状に離散的に配置されていることを確認した。
(記録物6−1の製造)
転写材6−1に、樹脂分散顔料インク10031を用いて第1の画像(反転画像)を記録した(図13(b))。その後、(図13(a))に示す転写材を画像支持体55に加熱圧着させてから、基材Aを剥離することにより、実施例6−1の記録物6−1を得た(図13(c))。画像記録装置および転写剥離装置として、実施例1と同様のものを用いた。画像支持体5には、画像支持体として厚さ1mmの透明アルミ板を用いた。加熱圧着の条件は、実施例1と同様である。
本実施例6−1は、顔料浸透層1600表面に接着強化材をまだら状に離散的に設ける点において、実施例2−1と異なる。また、画像支持体55として、アルミ板のような金属を用いる点で、実施例2−1と異なる。
顔料浸透層1600に引き込まれたインクは顔料浸透層1600内をほぼ等方的に浸透し、接着剤の下部にも等しく画像1606を形成する。従って、接着層の上方からインクを付与して画像を記録しても、接着強化剤1002の直下部にホワイトポイント(空白部)が形成されることはなく、エリアファクターを高めて、転写材の全面に亘って十分な濃度の画像を記録できた。また、得られた記録画像は、画像の彩度も良好で、解像度の高い画像においても、にじみは見られなかった。
また、水分を蒸発させる乾燥処理を行うことなく、画像の記録直後に加熱圧着処理による転写を行っても、溶媒吸収層1601に吸収された溶媒が逆流することはなく、良好に画像支持体に転写することができた。顔料浸透層1600は接着強化剤1002とともに、顔料画像1606を包み込むように溶融膜化して空隙が除去された。これにより、画像支持体55上には、より強固な顔料画像保持膜1650が形成されると共に、画像支持体55に強固に接着転写することができた。このとき、強固な顔料画像保持膜1650は接着強化剤1000とも合わせて溶融膜化しているので、顔料浸透層1600だけを溶融膜化した顔料画像保持膜に比べて、より厚膜で強固な保持膜として顔料画像を保護することができた。
[実施例6−2]
(転写材6−2の製造)
実施例6−1の、積層シート4の表面に、湿し水による処理を行いながら顔料浸透層1600塗工液2を塗工し、その後、乾燥させることにより、転写材の構成素材として、基材Aと保護層と溶媒吸収層と第1の顔料浸透層とを含む積層シート6を製造した。第1の顔料浸透層の乾燥後の塗工量は2.5g/m2とした。第1の顔料浸透層の厚さは2μmであった。さらに、積層シート6における第1の顔料浸透層の表面に、顔料浸透層塗工液3を塗工し、その後、乾燥させることにより、転写材の構成素材として、基材Aと保護層と溶媒吸収層と第1の顔料浸透層と第2の顔料浸透層を含む積層シート7を製造した。第2の顔料浸透層1600の乾燥後の塗工量は1.5g/m2とした。
積層シート7の第2の顔料受容層表面に接着層塗工液1を塗工して乾燥させることにより、第2の顔料浸透層1600の表面にまだら状の接着強化材1002を設けた。すなわち、第2の顔料浸透層1600の表面に、インク吸収性に劣る接着強化材をまだら状に離散的に設けることにより、第2の顔料浸透層1600の表面が露出した部分が残るように接着強化材を形成して、転写材6−2を製造した(図14(a))。
顔料浸透層1600の塗工、接着強化材の塗工液の塗工にはグラビアコーターを用い、塗工速度は5m/分とした。また、乾燥温度は60℃とした。転写材6−2の第1の顔料浸透層1600の空隙の細孔直径および第1の顔料浸透層1600の空隙の細孔直径および溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径をBET法により測定した。第1の顔料浸透層1600の空隙の細孔直径は120nm、第2の顔料浸透層1600の空隙の細孔直径は200nm、溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径は40nmであった。転写材6−2の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察し、個々の接着強化剤の間隔を観察した。その結果、接着強化剤の間隔は、顔料インク1003の液滴径(10μm)の大きさよりも離れて、まだら状に離散的に配置されていることを確認した。
(記録物6−2の製造)
まず、転写材6−2に、前述した顔料インク2を用いて第1の画像(正像画像)をインクジェット方式により記録した(図14(b))。次に、(図14(b))に示す転写材を、画像支持体55である1mm厚の透明のガラスの表面に重ね合わせて、それらをヒートローラと加圧ローラとにより加圧加熱して接着(転写)させた。その後、基材Aを剥離して、本実施例6−2の記録物6−2(図14(c))を得た。画像記録装置および転写剥離装置として、実施例1と同様のものを用いた。
本実施例6−2は、顔料浸透層が2層構成としており、顔料浸透層1600を機能分離して、第1の顔料浸透層1600は顔料粒子保持性を、第2の顔料浸透層1680は画像支持体との接着転写性や視認性を向上させる光学的効果を付与している点が、実施例6−1と異なる。
転写材6−2においては、顔料粒子1606は、第1の顔料浸透層1600の底部で、薄膜稠密な画像を形成するため、高精細な顔料画像であった。また、顔料インク1003の浸透性を考慮して、第1の顔料浸透層1600および第2の顔料浸透層1680を共に薄膜に構成すると共に、第2の顔料浸透層1680の膜厚を第1の顔料浸透層1600よりも薄くしている。このため、インクドットが広がり過ぎる前にインクが溶媒浸透層1601に到達して、第1の顔料浸透層1600の底部にて固液分離される。従って、ドット径が適切に制御された顔料画像1606を形成でき、高解像度の画像においても、画像滲みは見られなかった。
また、転写時においては、特に、固液分離したインクの溶媒1607はほぼ完全に溶媒吸収層1601に吸収されており、加圧加熱処理によって溶融膜化する複層の顔料浸透層1600内には溶媒成分1607は残存しない。また、加圧加熱処理を行っても、溶媒吸収層1601の空隙構造が維持されているため、インクジェット記録直後であっても、特別な乾燥手段や時間を設けずに、転写材を画像支持体55に良好に転写することが可能であった。
第1の顔料浸透層1600は、転写時に、顔料画像1606を包み込むように膜化して顔料保持層1650を形成するため、顔料粒子の保持性が向上した。さらに、第2の顔料浸透層1680は、種々の画像支持体55と、溶融膜化する第2の顔料浸透層1709との接着性向上を重視して、ガラスと接着しやすい樹脂材料で構成されている。従って、第1の顔料浸透層1680の溶融膜化だけでは接着しにくいガラスに対しても接着させることができ、転写性が良好であった。すなわち、溶融膜化した第2の顔料浸透層1709は接着強化膜として機能した。また、まだら状に配された接着強化材1002が第2の顔料浸透層1680と一体化して膜化することによりガラスとの接着性はさらに強化された。
また、第2の顔料浸透層1680は、背景隠蔽性などの光学的な付加効果を有する光学的散乱粒子として、蛍光材料1708を加えて空隙を形成した構成を備えている。通常、蛍光発光粒子および蓄光発光粒子は、水分によって発光特性の劣化が生じやすい。しかし、本実施例においては、顔料インク1003中の水分を含む溶媒成分1607のほぼ全量が溶媒吸収層1601に吸収されているため、水分による発光特性の劣化も生じにくかった。従って、溶融膜化した第2の顔料浸透層1709は、背景隠蔽層として機能し、顔料画像の視認性を高める効果がある。さらに蛍光保護層に含まれる蛍光粒子が発光することにより、暗めの室内における顔料画像の視認性をさらに高めることができ、写真インテリア物などに用いて好適である。
[比較例1]
次に、本実施例に対する比較例1を、図15を参照しつつ説明する。
(転写材7の製造)
実施例1の積層シート1の溶媒吸収層塗工液1を溶媒吸収層塗工液5に変更して、基材Aの表面に溶媒吸収層塗工液5を塗工してから乾燥させ、転写材の構成素材として、基材Aと溶媒吸収層1601とを含む積層シート8を製造した。その後、基材Aと第1の顔料浸透層1600とを含む積層シート8の表面に、湿し水による処理を行いながら顔料浸透層1600塗工液5を塗工し、その後、乾燥させる。これにより、転写材の構成素材として、基材Aと溶媒吸収層1601と顔料浸透層1600とを含む比較例1の転写材7(図15(a))を製造した。
顔料浸透層1600の塗工にはグラビアコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は5g/m2とした。乾燥温度は60℃とした。顔料浸透層1600の厚さは5μmであった。転写材7の顔料浸透層1600の空隙の細孔直径、および溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径をBET法により測定した。溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径は120nmであり、顔料浸透層1600の空隙の細孔直径は200nmであった。
(記録物7の製造)
転写材7に、樹脂分散顔料インク2を用いて第1の画像(反転画像)を記録した(図15(b))。その後、図15(b)に示す転写材を画像支持体55に加熱圧着処理によって接着させてから、基材Aを剥離することにより、比較例1の記録物7(図15(c))を作成した。インクジェット記録装置、転写装置、および剥離装置は、実施例1と同様のものを用いた。画像支持体55としては、1mm程度の厚みのPET製のカード(商品名「ペットカード」、合同技研株式会社製)を用いた。加熱圧着の条件は、実施例1と同様である。
この比較例1においては、溶媒吸収層1601の平均細孔直径を顔料浸透層1600の平均細孔直径より小さくして、インク吸収速度が、溶媒吸収層1601が顔料浸透層1600よりも速くなるように構成されている。また、溶媒吸収層1601の平均細孔直径および顔料浸透層1680の平均細孔直径は顔料の平均2次粒子径よりも大きい。
第1の製造装置の記録部において吐出されて、顔料浸透層1600に着弾した顔料インク1003は、顔料浸透層1600表面に接した瞬間に顔料浸透層1600に瞬時に引き込まれる。薄い顔料浸透層1600を浸透した顔料インクは、溶媒吸収層1601に接すると、溶媒吸収層1601のインク吸収力がやや大きいため、溶媒吸収層1601では顔料インクが速度を早めて吸収される。溶媒吸収層1601の平均細孔直径は顔料粒子1606の平均粒子径よりも大きいため、顔料インク1003は溶媒吸収層1601内部を拡散浸透する。従って比較例1の溶媒吸収層1601は顔料浸透層1600として機能する。
溶媒吸収層1601のインク吸収速度は、実施例1の溶媒吸収層1601と比較すると格段に遅い。このため、図15(c)に示すように、顔料インク1003は、その一部が千切れて、溶媒吸収層1601の表面もしくは内部に残留した。従って、転写時においては、残留したインクの成分の一部が蒸発し、蒸気層などを形成して溶融膜化不良を引き起こし、接着性が低下した。
また、インク吸収速度は、実施例1の溶媒吸収層1601と比較すると格段に遅いため、顔料インク1003は、溶媒吸収層1601をゆっくりとした速度で浸透拡散する。このため、顔料インク1003は、溶媒吸収層1601内で滞留しやすく、溶媒吸収層1601の内部を水平方向にインクが広がりながら、顔料粒子1606を含む顔料インク1003が浸透拡散する。従って、画像ドットが拡がり過ぎて、画像にじみが発生して、記録解像度が低下した。
[比較例2]
次に、本実施例に対する比較例2を、図16を参照しつつ説明する。
(転写材8の製造)
溶媒吸収層塗工液1を基材Aの表面に塗工してから乾燥させることにより、転写材の構成素材として、基材Aと溶媒吸収層1601とを含む積層シート9を製造した。乾燥後の塗工量は25g/m2とした。溶媒吸収層1601の厚さは25μmであった。その後、積層シート9の表面に、接着層塗工液1を塗工して乾燥させることにより、溶媒吸収層1601の表面に、インク吸収性に劣るまだら状の接着強化材1002を設けた。接着強化材1002は、溶媒吸収層1601の表面に露出した部分が残こるように離散的に設けた。以上により、比較例2の転写材8を製造した(図16(a))。
溶媒吸収層1601の塗工、接着強化材の塗工にはグラビアコーターを用い、塗工速度は5m/分とした。また、乾燥温度は60℃とした。転写材8の溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径をBET法により測定した。溶媒吸収層1601の空隙の細孔直径は40nmであった。また転写材8の断面をSEMによって観察し、個々の接着強化剤の間隔を観察した。その結果、接着強化剤の間隔は、顔料インク1003の液滴径(10μm)の大きさよりも離れて、まだら状に離散的に配置されていることを確認した。
(記録物8の製造)
転写材8に、樹脂分散顔料インク10031を用いて第1の画像(画像)を記録した(図16(b))。その後、図16(b)に示すその転写材を画像支持体に加熱圧着させてから、基材Aを剥離することにより、記録物8(図16(c))を得た。像記録装置および転写剥離装置として、実施例1と同様のものを用いた。画像支持体としては、厚さ1mmの透明ガラス板を用いた。加熱圧着処理の条件は、実施例1と同様である。この比較例2は、溶媒吸収層1601の顔料浸透層1600を形成していない点が、実施例6−1と異なる。
比較例2に示す転写材では、溶媒吸収層1601の空隙直径が、顔料インク1003の顔料粒子1606の2次粒子径よりも小さい。また、接着強化剤1002にはインクが吸収されない。従って、溶媒吸収層1601側から、着弾した顔料インク1003は、接着強化剤1002には吸収されず、顔料インク1003の液滴の一部が、インク吸収速度の速い空隙構造を有する溶媒吸収層1601の露出部1001に接触する(図16(b))。溶媒吸収層1601の表面に接した顔料粒子1606は、溶媒吸収層1601の露出部の界面で固液分離される。すなわち、顔料粒子1606は溶媒吸収層1601に浸透せずに表面に残り、溶媒成分1607のみが溶媒吸収層1601内に速やかに浸透する。このため、接着強化材1002と溶媒吸収層1601の表面とが接する部分の直下部には、顔料粒子1606が回り込めず、色材が記録できないホワイトポイント1608(空白部)が発生し、画像濃度が低下した。
また、接着強化粒子の体積を大きくした場合には、前述のホワイトポイントの発生による画像濃度の低下、およびインク吸収性の低下がより顕著になるため、接着強化粒子の体積には制限がある。このため、顔料粒子1606と画像支持体55とが直接接触する部分が多くなることで、顔料粒子1606と画像支持体が直接接触する部分で接着不良が発生した。
[評価]
以下に、上記各実施例および各比較例の転写材を用いて作成した記録物の画像特性、接着性(転写性)を評価した結果を示す。
(画像特性(画像にじみ、濃度))
各実施例および各比較例における転写材に、第1の画像としてBKのベタ100%画像を記録した記録物の、画像特性(画像のにじみ、画像濃度)を評価した。ブラックインク画像の光学濃度は、光学反射濃度計(商品名「RD−918」、グレタグマクベス社製)を用いて測定し、滲みの評価は目視により行なった。その結果を表2および表3に示す。表2および表3の「記録特性」の評価項目において、○、△、×は、それぞれ以下の結果を表している。
○:画像濃度が1.5以上で、にじみがない
△:画像濃度が1.0以上1.5未満で、あるいは画像にじみが若干ある
×:画像濃度が1.0未満あるいは、画像がにじんでいる
(接着性/転写性)
各実施例および各比較例の転写材に第1の画像としてBK(ブラック)のインクで、ベタ100%画像を記録した記録物の接着性試験を行った。記録物にカッターで5mm四方の切れ目を入れ、透明シートの表面にセロテープ(登録商標)を貼り付けて、勢いよく該テープを剥がした際の透明シートの状態を評価した。その結果を表2および表3に示す。表2および表3の「接着性/転写性」の評価項目において、◎、○、△、×は、それぞれ以下の結果を表してしている。
◎:全体の3%未満の剥離あり
○:全体の3%以上10%未満の剥離あり
△:全体の10%以上15%未満の剥離あり
×:全体の15%以上の剥離あり
実施例または比較例の実施例または比較例の転写材に、第1の画像としてBK(ブラック)のインクでベタ100%画像を記録した記録物の、長期保存性を評価した。長期保存性は、オゾン暴露による退色・変色を、上記記録物をオゾン暴露試験機(スガ試験機社製、特注品)に入れて、40℃、55%RH(Relative Humidity)の条件下で濃度10ppmのオゾンに12時間暴露し、保存前後で記録された画像の色味変化を評価した。評価は、ブラックインク画像の光学濃度を、光学反射濃度計(商品名「RD−918」、グレタグマクベス社製)を用いて測定し、下記式(1)より残存OD(Optical Density)率を算出し評価した。その結果を表2および表3に示す。表2および表3の「長期保存性」の評価項目において、◎、○、△、×は、それぞれ以下の結果を表してしている。
◎:残OD率 95%以上
○:残OD率 90%以上95%未満
△:残OD率 80%以上90%未満
×:残OD率 80%未満
Figure 2018069601
Figure 2018069601
1 インクジェット転写材
21 ヒートローラ
22 加圧ローラ
100 記録部
102H 記録ヘッド
200 転写部
300 剥離部
1000接着強化材
1001露出部
1003 顔料インク
1600 顔料浸透層(第1の顔料浸透層1600)
1601 溶媒吸収層(第1の溶媒吸収層1601)
1603 密着層
1606 顔料粒子
1607 溶媒成分
1608 ホワイトポイント
1656 白色顔料粒子
1650 顔料画像保持膜
1660 透明保護層
1680 第2の顔料浸透層
1700 第2の溶媒吸収層1601
1701 剥離層
1702 第2の溶媒吸収層 透明保護膜
1703 保護層

Claims (12)

  1. 顔料粒子と溶媒とを含む顔料インクが付与されるインク受容層が、剥離層を介して基材上に形成された転写材であって、
    前記インク受容層は、複数の空隙吸収型の層を含み、
    前記インク受容層の表面側の層は、前記溶媒および前記顔料粒子の浸透を可能とする溶融可能な顔料浸透層であり、
    前記インク受容層の基材側の層は、前記顔料粒子を浸透させず、前記溶媒の浸透を可能とする溶媒吸収層であることを特徴とする転写材。
  2. 前記顔料浸透層に形成される空隙の平均細孔直径は、前記顔料粒子の平均粒子径より大きく、
    前記溶媒吸収層に形成される空隙の平均細孔直径は、前記顔料粒子の平均粒子径より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の転写材。
  3. 前記顔料浸透層は、樹脂粒子と水溶性樹脂で構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の転写材。
  4. 前記顔料浸透層の表面に、インク吸収性の低い接着強化材を離散的に設けた接着層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の転写材。
  5. 溶媒吸収層と顔料浸透層の少なくとも一方が複数の層で構成され、
    前記複数の層は、前記基材側に向けて顔料インクのインク吸収速度が順次高くなるように空隙構造が設定されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の転写材。
  6. 前記接着層、前記顔料浸透層、前記溶媒吸収層のうち、少なくとも1つの層が、加圧加熱によって溶融膜化する材料で構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の転写材。
  7. 前記顔料浸透層は、加圧加熱処理により溶融膜化して接着性を帯びる材料で構成されていること特徴とする、請求項6に記載の転写材。
  8. 前記剥離層と前記溶媒吸収層の間に保護層が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の転写材。
  9. 画像支持体と、顔料インクにより画像が記録されたインク受容層と、が積層された記録物であって、
    前記インク受容層は、請求項1から7のいずれか1項に記載の転写材から転写されたものであることを特徴とする記録物。
  10. 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の転写材に顔料インクを付与して画像を記録する記録部と、
    前記画像が記録された前記転写材を画像支持体に接着する接着部と、
    を備えることを特徴とする記録物の製造装置。
  11. 前記画像支持体に接着された前記転写材から、少なくとも前記基材を剥離させる剥離部を、さらに備えることを特徴とする請求項10に記載の記録物の製造装置。
  12. 請求項1から7のいずれか1項に記載の転写材に顔料インクを付与して画像を記録する記録工程と、
    前記画像が記録された前記転写材を画像支持体に接着する工程と、
    を備えることを特徴とする記録物の製造方法。
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