JP2018159865A - 機能性材料膜パターンの記録方法および記録物 - Google Patents

機能性材料膜パターンの記録方法および記録物 Download PDF

Info

Publication number
JP2018159865A
JP2018159865A JP2017057966A JP2017057966A JP2018159865A JP 2018159865 A JP2018159865 A JP 2018159865A JP 2017057966 A JP2017057966 A JP 2017057966A JP 2017057966 A JP2017057966 A JP 2017057966A JP 2018159865 A JP2018159865 A JP 2018159865A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fine particle
layer
functional
ink
solvent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017057966A
Other languages
English (en)
Inventor
喬紘 筒井
Takahiro Tsutsui
喬紘 筒井
裕輔 澄川
Yusuke Sumikawa
裕輔 澄川
平林 弘光
Hiromitsu Hirabayashi
弘光 平林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Finetech Nisca Inc
Original Assignee
Canon Finetech Nisca Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Finetech Nisca Inc filed Critical Canon Finetech Nisca Inc
Priority to JP2017057966A priority Critical patent/JP2018159865A/ja
Publication of JP2018159865A publication Critical patent/JP2018159865A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Optical Filters (AREA)
  • Electroluminescent Light Sources (AREA)
  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)

Abstract

【課題】製造工程や製造装置が複雑化することなく、生産性の低下を抑制し、生産コストの増加を抑制することができ、一方で、ロール状やシート状など種々の形態の支持体に機能性膜を形成することが可能であり、生産性に優れ幅広い用途に適用可能な機能性材料膜パターンの記録方法および信頼性の高い記録物を提供すること。
【解決手段】基材、溶媒吸収層、微粒子浸透層が積層された記録材の微粒子浸透層に、第一の機能性微粒子分散インクで画素枠パターンの記録を行い、光を照射して画素枠を形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、インクジェット方式による機能性材料膜パターンの記録方法およびその記録方法により得られる記録物に関する。
有機EL表示基板やプリント配線、カラーフィルタ等を製造する場合には、機能性材料を画素毎に形成する必要がある。従来から、機能性材料を画素毎に形成するために、種々の方法が検討されている。例えば、真空蒸着法等、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ドクターブレード法または各種記録法が挙げられる。
近年、上述した機能材料を画素毎に効率的に形成する方法として、インクジェット法が注目されている。例えば特許文献1には、基板上に、無機酸化物の多孔質体から成る吸着層を設けて、溶媒を吸収して滲み出し抑制する電子デバイスの形成方法が示されている。この方法によれば、吸着層の空隙径が導電性材料の粒子径よりも小さく、溶媒のみ吸収するように構成されており、インク受容層への溶媒の吸収速度が速い。そのため、素子パターン材料となる溶質(導電性の電極材料・絶縁膜の材料)は、順次溶媒吸着層表面に堆積するため、導電粒子のにじみが改善された細線のゲート電極を形成することができる。
また、このゲート電極の導電性粒子の表面には、ゲート絶縁膜となる二酸化シリコンを含有する溶液をインクジェット法でゲート電極上にさらに直描することで、絶縁膜を形成することができる。この絶縁膜は、加熱処理で溶媒を蒸発させたりアニールすることで、ゲート絶縁膜のパターンがゲート電極と吸着層との上に多孔質化して定着する。この多孔質化した絶縁膜は、導電性微粒子を保護固定することができる。さらには他の機能層をインクジェットで描画させた場合にも、多孔質化した細孔にインクの溶媒が浸透することにより、インクの溶媒は、ゲート絶縁膜、ゲート電極を介して吸着層に向けて徐々に浸透する。これによって、描画形成したパターンは型崩れすることなく、ゲート絶縁膜上に定着することができる。
しかし、溶質成分である電極構成材を高濃度で記録した場合には、完全開放面である吸着層表面においては、導電性材料を高く積み上げようとするほど平面方向への滲み出しが発生し易くなるため、滲み出しを抑制しながら均一に高く積み上げることは難しい。また、重ね打ちなどにより導電微粒子を高く堆積させようとすると、後続インク液滴の着弾衝撃により、先着して堆積し始めた導電微粒子が飛び散ったり、吸着層表面に何ら支えるものが無い完全開放面で微粒子を堆積させると、端部が徐々に崩れて拡がり始め、高さのない丘状に拡がって堆積するなど解像度の低下が生じ易い。すなわち、厚膜で微細な電極パターンは形成しにくい場合があった。
さらに、インク中の溶質成分である導電性微粒子の生成方法に拠っては、ある程度の粒度分布が生ずるため、粒度分布の小粒子径部分の超微粉は多孔質層の空隙よりも小さくなる場合があり、電極パターン材料の超微粒子がインク中に含まれることがある。吸着層の空隙径よりも小さな超微粒子は、溶媒成分とともに吸着層内に吸収拡散されるため、導電性の超微粒子による吸着層内での漏れ電流が発生する場合もあり、吸着層の絶縁性が低下する懸念がある。また有機EL素子などに代表される機能材料の中で、水や溶媒に溶解している溶液系のインクを用いた場合は、多孔質の空隙にインク全体が浸透してしまう場合がある。多孔質の空隙に他の機能性材料が混入してしまうと、機能性材料の機能が著しく低下する場合がある。
また、多孔質構造の電極パターン表面に多孔質構造の絶縁膜を形成しているため、使用条件に拠っては、空隙構造での吸水あるいは吸湿による絶縁性の劣化など、電極パターンの特性低下が懸念される。さらに、汚染液体や汚染気体などが空隙構造に侵入することで、腐食なども生じ易くなるので長期の信頼性が懸念される。
さらに、高温の加熱処理によって電極パターンの膜強度を向上させるために、セラミックやガラスなどの硬質の耐熱性基板を用いる必要があるので、大きな面積で均一に多孔質の吸着層を設けるのは難しく、大面積の電極パターンを生産するのは困難であった。また、樹脂フィルムなど可撓性のある基材を用いることができないため、インク受容層を塗工した基材を連続塗工が可能なロール状で形成することが困難であるため、生産性の課題や用途上の制約もあった。
以上のように、従来のインクジェット方式の記録法により機能性材料をパターン形成する場合には、特定の画素に形成された機能材料が、隣接する画素に流出して混じり合って機能性材料自体の機能が低下する場合があり、生産性や用途上の課題があった。
そこで、特許文献2には、有機材料の流出を防止する画素枠をフォトリソグラフィー工程により形成し、画素枠で囲まれた領域(画素枠内)に、薄膜材料液を充填して所定の厚さの薄膜層を形成する表示装置の製造方法が開示されている。すなわち、シリコン基板上に感光性樹脂(フォトレジスト)を塗布し、露光装置を用いてフォトマスクに描かれたバンクのパターンを焼き付けた上で、露光した基板を現像液に浸して余分な部分の感光性樹脂を除去することで、基板上に構造的な画素枠(バンク)が形成される。このような構造的な画素枠を形成することにより、機能材料を同一基板の個別電極上にパターニング成膜する場合、薄膜材料液体がバンクを超えて流れ出るという事態を防止し、平坦且つ均一の厚みで、むらなどの無い安定した特性の機能性薄膜層を高精度に比較的簡単に歩留まりよく形成することができ、高精細な微細パターニングを可能とすることができる。
特開平11−274681号公報 特開2006−86128号公報
しかし、特許文献2の方法では、フォトリソグラフィー工程で画素枠を形成する場合は、現像や露光工程を必要とするため、事前にマスクを準備する必要があり、さらには現像や露光工程後には不要部分を除去する除去工程などが必要となる。特にマスク工程は、個別電極との位置あわせが困難となる場合が多く、製造工程や製造装置が複雑化することになり、生産性を低下させる要因の一つとなっている。また作業工数の増加に伴い生産コストも高くなってしまう。
よって本発明は、製造工程や製造装置が複雑化することなく、生産性の低下を抑制し、生産コストの増加を抑制することができ、一方で、ロール状やシート状など種々の形態の支持体に機能性膜を形成することが可能であり、生産性に優れ幅広い用途に適用可能な機能性材料膜パターンの記録方法および信頼性の高い記録物を提供することを目的とする。
そのため本発明の機能性材料膜パターンの記録方法は、加熱によって熔融膜化可能な材料で形成され、第1の空隙径を備えた空隙構造を有する微粒子浸透層と、前記加熱を行なっても空隙構造が維持可能な材料で形成され、前記第1の空隙径よりも小さな第2の空隙径を備えた空隙構造を有する溶媒吸収層と、を積層した第1の記録材に、前記第1の空隙径よりも小さく前記第2の空隙径よりも大きい粒子径を備え、光を照射されることで発熱する第1の機能性微粒子を含む第1の液体を塗布して、前記微粒子浸透層に画素枠パターンを形成する画素枠パターン形成工程と、前記画素枠パターンに光を照射して画素枠を形成する画素枠形成工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、製造工程や製造装置が複雑化することなく、生産性の低下を抑制し、生産コストの増加を抑制することができ、一方で、ロール状やシート状など種々の形態の支持体に機能性膜を形成することが可能であり、生産性に優れ幅広い用途に適用可能な機能性材料膜パターンの記録方法および信頼性の高い記録物を実現することができる。
(a)から(f)は、記録材を示した断面図である。 (a)から(c−2)は、記録材に画素枠の形成方法を示す図である。 記録材に機能性材料をパターン形成する方法を示す図である。 加圧加熱による空隙消滅工程を示す図である。 記録材のインク吸収メカニズムを示す図である。 記録材の画素枠の補強する方法を示す図である。 (a)から(c)は、空隙消滅工程を示す図である。 空隙除去工程の別の例を示す図である。 (a)、(b)は、空隙消滅工程の別の例を示す図である。 (a)、(b)は、記録物を製造する一体型の製造装置を示した図である。 (a−1)から(c)は、多層記録物の製造方法を示す図である。 (a)、(b)は、本実施例で用いた光照射装置を示した図である。 (a)から(f)は、カラーフィルタの製造方法を示す図である。 (a)から(g)は記録材を用いた電極パッドの製造方法を示す図である。 (a)から(f)は、記録材を用いた画素電極の製造方法を示す図である。 (g)から(l)は、記録材を用いた画素電極の製造方法を示す図である。 (a)から(g)は、有機EL素子の製造方法を示す説明図である。 (h)から(l)は、有機EL素子の製造方法を示す説明図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[記録材の基本的構成と機能]
図1(a)から(f)は、本発明の記録材1を示した断面図であり、図2(a)から(c−2)は、本発明の記録材に画素枠の形成方法を示す図であり、図3は、本発明の記録材1に機能性材料をパターン形成する方法を示す図である。本発明の記録材1は、空隙径の異なる2層以上の空隙吸収型インク受容層を順次積層した、少なくとも機能性微粒子分散インクを用いてインクジェットパターン記録可能な記録材である。図1(a)に示すように、記録材1は、裏面となる非記録面側のインク受容層を機能性微粒子よりも十分に小さな細孔により構成された空隙構造で厚膜の溶媒吸収層1601とし、かつ表層となる記録面側のインク受容層を機能性微粒子よりも十分に大きな空隙径になるように、加熱によって熔融膜化可能な材料により空隙構造が構成された薄膜の微粒子浸透層1600として構成されている。
本発明の記録材1は、微粒子浸透層1600側から、機能性微粒子分散インク1003で記録することで、機能性材料のパターン画像を形成することができる。例えば機能性微粒子分散インク1003として第一の機能性微粒子分散インクでパターン画像の記録を行うことで図2(b−2)に示すように、画素枠のパターン記録を行うことができる。そして、画素枠パターンが形成された部分に光照射することにより、微粒子浸透層1600底部の第一の機能性微粒子膜1603が光を吸収して発熱するとともに、その熱で上部にある微粒子浸透層1600のみが溶融膜化することで、空隙が消滅し画像枠3000を形成することができる。このようにして、図2(c−1)、(c−2)に示すように、機能性インクの超微粒子や溶媒成分が浸透できない構造的な画素枠3000を選択的に形成することができる。
このようにして形成した画素枠3000で囲われた微粒子浸透層3001に、機能性微粒子分散インクとして、第二の機能性微粒子分散インクでパターン記録することで、機能材料のパターン画像3002を形成する(図3(b−1)参照)。さらに、加熱装置を用いて、画素枠内の微粒子浸透層3001を熔融膜化して空隙構造が消滅することで、微粒子浸透層底部が機能性微粒子を固定しながら膜化して、第二の機能性微粒子保持膜3004を形成するとともに、画素枠内の微粒子浸透層3001の空隙構造を消滅させる(図3(d−1)参照)。空隙の消滅した画素枠内の第二の機能性微粒子保持膜3004の表面には、第三の機能性インクで記録して、第三の機能性材料膜3006を形成することができ、複数の材料の機能性膜を積層した多層機能性膜を形成することができる(図3(e−1)参照)。
また、溶媒吸収層1601や微粒子浸透層1600などのインク受容層の膜化形成時の生産性向上、インクジェット記録の際の搬送性向上、さらに接着転写時のハンドリング性や溶媒吸収層1601の剥離性を向上させるために、図1(b)に示すように、基材50上に順次複層のインク受容層を設けて記録材を構成してもよい。インクジェット記録後にも、基材50を支持体としてそのまま利用する場合には、溶媒成分を乾燥させた上で、微粒子浸透層1600と同様に、溶媒吸収層1601を熔融膜化させることが好ましい。あるいは、第二の機能性微粒子分散インクで記録材1のパターン画像を記録した後に、不揮発性の絶縁性樹脂成分を溶解させた樹脂溶解インクを用いて、パターン画像を覆うように記録する。これによって、微粒子浸透層1600との界面近傍の溶媒吸収層1601から第二の機能性微粒子分散インクの溶媒成分をさらに下層部に押し出しながら、第二の機能性微粒子膜の直下部の溶媒吸収層1601の空隙を樹脂溶解インクで埋めてもよい。
さらに、溶媒吸収層1601を複層で設けて、少なくとも微粒子浸透層1600との界面付近における溶媒吸収層1700を、微粒子浸透層1600と同様に加熱処理によって熔融膜化するように構成しておき、空隙構造を消滅させることで第二の機能性微粒子膜の裏面の保護性能も確保することができるようにしてもよい。逆に、溶媒吸収層1601を除去することで、第二の機能性微粒子膜の裏側の界面を直接露出させて、パターン画像が記録された、機能性材料に接続してもよい。
図4は、加圧加熱による空隙消滅工程を示す図である。微粒子浸透層1600は、加熱処理することで熔融膜化するように構成されているので、図4(a)に示すように、第二の機能性微粒子分散インク1003でパターン画像を記録した上で、支持体55と合わせて加圧加熱することで、図4(b)に示すように、微粒子浸透層1600を接着層として活用して、支持体55にパターン画像を転写形成することができる。記録材1は、さらに図1(d)のように、微粒子浸透層1600の表面に接着剤1000をまだら状もしくは海島状に離散的に設けた接着強化層1012を形成したり、あるいは図1(f)のように、支持体55への接着性に優れた第二の微粒子浸透層1680を設けるなどして、パターン画像転写材として用いれば、インクジェット記録されたパターン画像を種々の支持体55へ接着(転写)可能な転写材として活用することも可能である。
また、微粒子浸透層1600や溶剤吸収層1601を、各々複数の層に分けて順次形成することも可能であるが、何れも空隙吸収型のインク受容層としての基本的な機能を有し、空隙径を非記録面側に向かって順次小さくする構成で、インクの毛細管力が非記録面側に向かって順次大きくなるように構成してあればよい。また、図1(e)、(f)に示すように、本発明の記録材1の基本構成において、基材50、溶媒吸収層1601、多層の溶媒吸収層、微粒子浸透層1600又は多層の微粒子浸透層の何れかの境界面に各々の層の材質・製膜方法などを考慮して、不如意な層間剥離を防止して密着性を向上させるための密着層1604を必要に応じて設けてもよい。但し密着層1604は、層間でインクの毛細管浸透が必要な場合は、毛細管現象によるインクの移動を妨げないように親水性を考慮した材料などで極薄膜状に構成する必要がある。さらに、加熱により熔融膜化した微粒子保護膜1650から溶媒吸収層1601を除去する場合には、溶媒吸収層1601と、微粒子浸透層1600との間に極薄膜の離型層1701を設けてもよい。
[高速な溶媒浸透性]
機能性微粒子分散インク1003の吸収浸透に関してさらに詳述すると、本発明の記録材1では、微粒子浸透層1600の空隙構造が機能性微粒子の粒子径よりも十分に大きな空隙径により構成されていることから、毛細管力が弱く流路抵抗は小さいので、図2(b−1)に示すように、微粒子浸透層1600の表面に記録された機能性微粒子分散インク1003は、機能性微粒子も含めてスムーズに微粒子浸透層1600内に浸透吸収される。
図2(b−2)に示すように、厚膜の溶媒吸収層1601の平均細孔径は、機能性微粒子の粒子径よりも十分に小さくなるように空隙を構成している。よって、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に機能性微粒子が固液分離されて、稠密で薄膜状の機能性微粒子膜1603が微粒子浸透層1600の底部界面に形成される。空隙の毛細管現象によってインクを吸収する際には、空隙の細孔径が小さいほどインクの毛細管力が強くなるので、ほとんど全ての溶媒成分1607は、微粒子浸透層1600に残ることなく溶媒吸収層1601に速やかに吸収される。
溶媒吸収層1601の毛細管力が格段に強くインク吸収速度も格段に速いので、微粒子浸透層1600表面から吸収浸透してきた機能性微粒子分散インク1003の一部が、溶媒吸収層1601との界面に到達すると、機能性微粒子分散インク1003の溶媒成分が吸収される。これによって、微粒子浸透層1600内にある後続の機能性微粒子分散インクも順次吸収される。すなわち、溶媒吸収層1601による高速な溶媒成分の吸収が始まると、微粒子浸透層1600の流抵抗が小さいためにインクの粘度・表面張力によりインクが千切れることなく、微粒子浸透層1600内に残っている機能性微粒子分散インク1003も溶媒吸収層1601へ順次浸透し始める。
このように、本発明の記録材1では、空隙の小さな溶媒吸収層1601によるさらに強い毛細管力によって、空隙の大きな微粒子浸透層での機能性微粒子分散インク1003の滞留時間を短くできるため、加熱により熔融膜化する微粒子浸透層内への溶媒成分の残留が生じにくい。また、機能性微粒子分散インク1003のほぼ全ての溶媒成分は、厚膜で十分な溶媒浸透容量を有する空隙構造を維持する溶媒吸収層1601に速やかに吸収されているため、機能性微粒子分散インク1003を用いたインクジェット記録直後であっても、特別な乾燥手段や時間を必要とせずに、加熱処理することで微粒子浸透層1600を熔融膜化させることが可能である。
すなわち、毛細管力が最も強くて、かつインク溶媒浸透容量の大きな厚膜の溶媒吸収層1601が、空隙構造を維持したままほぼ全ての溶媒成分を吸収保持している。よって、加熱処理によって機能性微粒子膜を形成しても、溶媒成分の逆流や染み出しによる膜質劣化が生じにくい。ただし機能性微粒子膜を保護層として裏面溶媒吸収層を活用する場合には、溶媒吸収層1601の空隙構造を消滅させる前に、溶媒成分を十分に乾燥させることが必要である。
本発明の記録材1で機能性微粒子分散インク1003の液滴が極端に小さい場合には、単ドットだけの記録部においては、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面まで機能性微粒子分散インク1003の先端が到達せずに、微粒子浸透層1600の内部に機能性微粒子分散インクが孤立して滞留する場合がある。しかし、機能性微粒子分散インク1003の液滴が極端に小さい場合でも、複数ドットが着弾する高濃度の記録部では、後続の機能性微粒子分散インク1003が吸収浸透することによって先着の機能性微粒子分散インクに一体化して押し出されて、その先端が溶媒吸収層1601との界面に到達する。これによって、後続の機能性微粒子分散インク1003も順次吸収浸透し始めることができる。
本発明の記録材1に、機能性微粒子で高濃度の機能性材料のパターン記録を行う場合には、微粒子浸透層1600に記録される機能性微粒子分散インク1003が多くなるので溶媒吸収層1601との界面に到達し易く、ほぼ全ての溶媒成分は溶媒吸収層1601に吸収され、機能性微粒子は固液分離されて微粒子浸透層1600の底部の界面に機能性微粒子分散膜が形成される。また、インクジェット記録面である微粒子浸透層1600は、空隙吸収型のインク受容層であるので、膨潤吸収型のインク受容層に較べてスムーズに機能性微粒子分散インク1003を吸収することができるため定着性に優れる。そのため、表面でのインク滞留が少なく、後続して着弾するインク液滴によるインク跳ねや飛散りが少なく記録精度が高い。また、微粒子浸透層1600でのインク滞留時間が少ないので、機能性微粒子分散インク1003の平面方向への滲み出しも抑制されるため高精細な機能材料のパターンの形成が可能である。本発明の記録材1は、微粒子浸透層1600の表面に記録された機能性微粒子分散インク1003の先端が溶媒吸収層1601との界面に速やかに到達し易いように、微粒子浸透層1600の膜厚は機能性微粒子分散インク1003の液滴に較べて小さくなるように薄膜に構成することが望ましい。微粒子浸透層1600を薄膜に構成することで、微粒子浸透層1600の表面に記録された機能性微粒子分散インク1003が平面方向に広く浸透拡散する前に、機能性微粒子分散インク1003の先端が溶媒吸収層1601との界面に到達して、溶媒成分1607が素早く溶媒吸収層1601に吸収される。これによって、微粒子浸透層1600では機能性微粒子分散インク1003の機能性微粒子は、微粒子浸透層1600における平面方向への浸透拡散が抑制されて、高精細なパターン画像を形成することが可能である。
[薄膜稠密な機能性微粒子膜の形成]
図5は、本発明の記録材1のインク吸収メカニズムを示す図である。前述の如く、本発明の記録材1では、溶媒吸収層1601の空隙構造は、機能性微粒子よりも十分に小さな細孔により構成されていることから、図5(a−1)に示すように、機能性微粒子分散インクは微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面で固液分離されて機能性微粒子膜3002を形成する。そして、機能性微粒子分散インク1003の溶媒成分1607のみが溶媒吸収層1601に吸収される。すなわち、微粒子浸透層1600の底部の溶媒吸収層1601との界面では、毛細管力が格段に強い溶媒吸収層1601が機能性微粒子分散インクの溶媒成分1607を速やかに吸収する。よって、微粒子浸透層1600底部で機能性微粒子が固液分離される際の機能性微粒子分散インクの流れが速いため、機能性微粒子1603が圧縮されながら薄膜稠密な機能性微粒子膜3002を形成する。また、溶媒吸収層1601の強い毛細管力によって、記録されたインクの全ては機能性微粒子を含めて微粒子浸透層1600の底部に向けて吸収されるので、微粒子浸透層1600表層側には機能性微粒子が残ることが無い。
[多量の溶媒浸透]
一方で、本発明の記録材1は、厚膜の溶媒吸収層1601により多量の溶媒成分を吸収することができるため、機能性微粒子分散インクを重ねて記録することで、厚膜の機能性微粒子膜を形成することが可能である。さらに、図5(a−2)に示すように、微粒子浸透層1600の表面に露出するように、断面が台形状に堆積した厚膜の機能性微粒子膜3002を形成することも可能である。微粒子浸透層1600の表面に着弾した機能性微粒子分散インクは、微粒子浸透層1600内の空隙に吸収浸透する際に平面方向にも拡散するが、その浸透拡散幅は薄膜の微粒子浸透層1600の膜厚とほぼ同程度である。よって、厚膜の溶媒吸収層1601全体に亘って浸透拡散する場合に較べて、薄膜の微粒子浸透層1600での浸透拡散幅は軽微であり、解像度の劣化も軽微である。
このように、本発明の記録材1では、微粒子浸透層1600を薄膜に構成することで機能性微粒子の平面方向への浸透拡散を抑制することができる。これによって、表層に空隙構造を残すことも、厚膜の機能性微粒子膜のパターン画像を形成することも、表層まで露出した機能性微粒子膜を形成することも可能であり、いずれの場合にも解像度の劣化を抑制した高精細なパターン画像を形成することが可能である。
比較例として、図5(b−1)、(b−2)に示すように、機能性微粒子が浸透可能な微粒子浸透層1600を厚膜に単層で構成して、記録された全ての機能性微粒子分散インク1003を単層の微粒子浸透層1600だけで吸収するように構成した。図5(b−1)に示すように、機能性微粒子分散インク1003が単ドットの場合には、微粒子浸透層1600の表層から内部に向けて半球状に機能性微粒子2001が分散されて吸収される。隣接するパターン画像とは分離されているが、機能性微粒子同士は密接しにくいため、各機能性微粒子が有する特性機能が得られなかった。高い機能性材料の特性を得るために機能性微粒子分散インクを重ねて記録すると、図5(b−2)に示すように、機能性微粒子分散インク1003が平面方向にも膜厚方向にも均等に浸透拡散する。そのため、機能性微粒子2001が平面方向に拡がって大きな半球状に分散して吸収定着される。機能性微粒子分散インクが平面方向に過剰に浸透拡散することで、隣接するパターン画像同士が重なり易くなるので、記録解像度の劣化が生じ易くなる。
別の比較例として、図5(c−1)、(c−2)に示すように、機能性微粒子を浸透させずに、溶媒成分のみを吸収可能な溶媒吸収層1601を厚膜に単層で構成して、記録された全ての機能性微粒子分散インク1003の溶媒成分を単層の溶媒吸収層1601だけで吸収するように構成した。この場合、図5(c−1)に示すように、単ドットでは、溶媒吸収層1601の表面で機能性微粒子2000が固液分離されて薄膜稠密に堆積して良好なパターン画像が形成されるとともに、溶媒成分は溶媒吸収層1601に全て吸収される。また、隣接するパターン画像とも良好に分離されている。
しかし、より高い特性を得るために、機能性微粒子分散インクを重ねて記録すると、単層の溶媒吸収層1601で構成されたインク受容層では、機能性微粒子が周りに支えるものが無い完全開放面である溶媒吸収層の表面に順次堆積する。よって、機能性微粒子を高く積み上げようとすれば、図5(c−2)に示すように平面方向へも拡がりやすく、低い丘状に機能性微粒子2000が堆積することになり、パターン画像の解像度が劣化してしまう。また、機能性微粒子分散インクで重ね打ちを行って、機能性微粒子の量を増やす場合には、先に着弾して溶媒吸収層の表面に堆積している丘状の機能性微粒子の上に、次弾のインク液滴が直撃して着弾することになるので、その着弾衝撃による機能性微粒子分散インクの飛び散りが生じることで、パターン画像の解像度が低下する懸念もある。
[高濃度な機能性微粒子保持膜の形成]
インクジェット適性に優れた機能性微粒子分散インクは、吐出後に機能性微粒子が沈降しないようにするとともに、吐出口での安定した液滴形成やリフィル特性が得られる粘度や表面張力を維持するために、通常、機能性微粒子は質量比10%以下に抑制している。すなわち機能性微粒子分散インクは、水やアルコールあるいは揮発性溶剤などを主たる溶媒成分として、蒸発を抑制して安定使用するための不揮発性溶剤や、表面張力などを調製する界面活性剤などを溶媒成分の一部として加えている。そして、機能性微粒子分散インクの質量比90%以上を溶媒成分としている。
固形成分として分散される機能性微粒子の濃度を高くすると、高濃度のパターン画像が得やすくなるが、機能性微粒子分散インクの粘度が著しく上昇するため高速の記録が難しくなる。更に、インクジェット記録の待機時に固着や沈降などが生じ易くなり安定性にも劣るので、機能性微粒子分散インクの機能性微粒子は、質量比5%程度以下にするのが好ましい。
本発明の記録材1では、機能性微粒子が微粒子浸透層1600の空隙構造で支えられながら順次堆積するので、機能性微粒子の堆積する高さに対して平面方向の広がりが抑制される。そのため、低濃度の機能性微粒子分散インクを重ね打ちすることで機能性微粒子の記録密度を高くすることができる。また、機能性微粒子をさらに高くしても、台形形状に堆積するため、パターン画像の解像度が劣化しにくい。
また、機能性微粒子分散インクで重ね打ちを行って機能性微粒子を順次堆積させる場合にも、先に着弾した機能性微粒子分散インクは、溶媒成分が速やかに溶媒吸収層に吸収され、機能性微粒子は微粒子浸透層底部に台地状に堆積している。このため、次弾のインク液滴は、空のままの空隙構造の表面に着弾することになるので、機能性微粒子の飛び散りが発生しにくい。すなわち本発明の記録材1では、厚膜の溶媒吸収層1601には十二分な溶媒浸透容量を持たせることで、インクジェット適性を高めた質量比5%以下の低濃度の機能性微粒子分散インクを用いて、高精度で安定した複数回の重ね打ち記録をすることで、十分な高さの台形状で解像度に優れた機能性粒子膜を形成することができる。
[画素枠形成]
本発明においては、機能性微粒子分散インクとして、第一の機能性微粒子分散インクを用いることで、記録材1の顔料浸透(微粒子浸透層)に画素枠のパターン記録を行う。図2(b−2)に示すように、第一の機能性微粒子分散インクは、微粒子浸透層1600に速やかに吸収され、溶媒吸収層1601との界面で固液分離されて、微粒子浸透層1601の底部界面に薄膜稠密に圧縮された第一の機能性微粒子膜1603を形成する。そして、第一の機能性微粒子分散インクの溶媒成分1607は、厚膜の溶媒吸収層1601に速やかに吸収される。
第一の機能性微粒子分散インクは、微粒子浸透層1600の底部に形成された第一の機能性微粒子膜1603が光を吸収すると発熱するように構成されている。これは、第一の機能性微粒子分散インクをブラックの顔料分散インクで構成することで発熱する作用を得ている。前述したしように、微粒子浸透層1600を薄膜に構成することで第一の機能性微粒子の平面方向への浸透拡散を抑制できるので、にじみも無く解像度の劣化が少ない高精細な画素枠パターンの形成が可能になる。
この画素枠パターンを記録した第一の機能性微粒子膜1603に光照射を行うと、図2(c−1)に示すように、第一の機能性微粒子膜1603が光を吸収して発熱し、その発熱した熱により、微粒子浸透層1600における第一の機能性微粒子膜1603が形成されている上部の空隙構造のみが選択的に溶融膜化して、空隙構造が消滅した画素枠3000が形成される。このようにすることで、図2(c−2)に示すように、後述する第二の機能性分散インクで画素枠3000内に機能性材料をパターン形成した場合に、第二の機能性微粒子分散インクの超微粒子や溶媒成分が隣接する画素へ混入しない構造的な画素枠3000を形成することができる。
尚、画素枠3000を形成するにあたり、ブラック顔料インクで重ね記録を行い、表層まで露出したブラック顔料粒子の厚膜の機能性微粒子膜を形成して、画素枠を形成することも可能ではある。しかし、微粒子浸透層1600の空隙をブラック顔料粒子で密に埋めたとしても、ブラック粒子間には微小な空隙が存在するため、空隙を完全に消滅させることは困難である。従って、機能性微粒子はほぼ浸透できないが、機能性微粒子の超微粒子やインク溶媒は、浸透性がやや低下するものの浸透する場合がある。すなわち、第二の機能性微粒子分散インクで画素枠内に記録した場合には、画素枠を浸透して隣接する画素へ記録材料が流れ出して混入する虞がある。
したがって本発明においては、光照射により微粒子浸透層1600を選択的に溶融膜化して、空隙構造が完全に消滅した構造的な画素枠3000を構成することで、第二の機能性微粒子分散インクの超微粒子や溶媒成分の隣接する画素への混入を防止している。
本発明において、光照射は、レーザー光照射装置あるいはフラッシュ露光装置により行う。レーザー光照射は、レーザー光照射装置を用いて、レーザー走査して、ブラックインクでインクジェット記録した画素枠パターンを形成した領域をレーザー光で照射する。これによって、レーザー光照射した部分の微粒子浸透層1600を溶融して空隙を消滅させて、画素枠3000を作製すことができる。また、フラッシュ露光する場合は、インクジェット記録した記録材表面全面にフラッシュ露光することで、ブラック顔料記録された微粒子浸透層の空隙のみが熔融膜化して空隙が消滅して、画素枠3000を作製すことができる。フラッシュ露光は記録材1の全面を露光するため、位置合わせ不要であるが、露光エネルギーの効率は悪い。
以上、本発明においては、インクジェット記録と光照射だけの簡易な工程で構造的な画素枠を形成することができる。
[第四の機能性微粒子分散インクを用いる方法]
図6は、本発明の記録材の画素枠の補強する方法を示す図である。第一の機能性微粒子分散インクで形成した画素枠パターンの第一の機能性微粒子膜1603に光照射することで、第一の機能性微粒子膜上部の微粒子浸透層1600が熔融膜化すると、空隙内を熔融膜化した成分が埋め尽くし空隙が消滅する。これによって画素枠3000が形成されるが、その画素枠3000は、熔融膜化した微粒子浸透層1600における溶融前の空隙率に応じて膜厚減少が発生する。すなわち、図2(c−1)に示すように、形成される画素枠の上面中央部が凹んで、凹み部3007が生じる場合がある。
このような場合、画素枠上面中央部の高さが、レーザー未照射の部分よりも低くなる。そして、後述する第二の機能性微粒子分散インクで、画素枠内に記録すると、第二機能性微粒子分散インクが構造的な画素枠3000を超えて流れ出る場合があり、構造的な画素枠の機能が低下する虞がある。
そこで、必要に応じて図6(a−2)に示すように、第四の機能性微粒子分散インクで画素枠のパターンニング記録を行い、第一の機能性微粒子膜の上部の微粒子浸透層の空隙を第四の機能性微粒子3008で満たしてもよい。第四の機能性微粒子3008を含む第四の機能性微粒子分散インクは、樹脂粒子を溶媒成分に分散させた画素枠補強インクである。第四の機能性微粒子3008で画素枠形成部分の微粒子浸透層1600の空隙を埋めることで、図6(a−3)のように、光照射で形成される画素枠部分3009の高さは光照射前の高さとほぼ同一に保たれる。
第四の機能性微粒子3008の粒子径は、第一の機能性微粒子と同様に、溶媒吸収層1601の空隙径よりも小さく、微粒子浸透層の空隙よりも大きく形成する。従って、第四の機能性微粒子分散インクで記録すると、第四の機能性微粒子分散インクは微粒子浸透層1600に速やかに吸収され、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面で固液分離して、第一の機能性微粒子膜1603の上部に第四の機能性微粒子が滲み過ぎることなく圧縮堆積する。これによって高精細で稠密な第四の機能性微粒子膜が形成される。
第一の機能性粒子膜1603における空隙は微小な空隙であるため、第四の機能性微粒子分散インクの第四の機能性微粒子3008はほぼ浸透できないが、インク溶媒成分は浸透することができる。従って、溶媒成分は、第一の機能性微粒子膜1603を介して、ほぼ全てが溶媒吸収層1601に吸収され、熔融膜化する微粒子浸透層1600にはインク中の液体成分である溶媒はほぼ残らない。
第四の機能性微粒子分散インクでの記録は、微粒子浸透層1600の空隙を、第四の機能性微粒子3008で全て満たすように、微粒子浸透層1600の表面から溢れる程度に記録するとよい。第四の機能性微粒子3008が微粒子浸透層1600の表面から溢れる程度に記録することで、微粒子浸透層1600の表面よりも画素枠部分3009を高く形成することができる。このように微粒子浸透層1600よりも画素枠部分3009を高く形成することで、後述する第二の機能性微粒子分散インクで画素枠内に機能性材料をパターン形成した場合に、第二の機能性微粒子分散インクが画素枠3000を超えて流れ出る不具合を防止することができる。
このように、第四の機能性微粒子分散インクを多量に打ち込むことで、厚膜の溶媒吸収層で大量の溶媒を吸収し、高濃度な第二の機能性微粒子膜による画素枠3000を形成することができる。尚、画素枠3000は、第一の機能性微粒子分散インクで記録した後に第四の機能性微粒子分散インクで記録し、光照射して画素枠を作製すると、図6(a−3)に示すように台形の枠ができる。このようにすると、画素枠3000で囲われた部分の開口を広く形成することができ、画素枠内に第二の機能性微粒子分散インクで形成する機能性材料の形成領域を広くすることができる。
一方で画素枠は、図6(b−1)に示すように、第四の機能性微粒子分散インクで記録した後に、図6(b−2)に示すように、第一の機能性微粒子分散インクで記録し、図6(b−3)に示すように、光照射して画素枠を作製することもできる。このような場合、光の吸収効率を高くすることができる。また、逆台形の画素枠ができ、画素枠領域を広く形成することができる。このような方法は、第一の機能性微粒子分散インクは、黒色であることから、画素枠に遮光壁の効果を付与する場合に好ましい。
[画素枠内へのパターン記録]
図3(b−1)に示すように、画素枠内の微粒子浸透層3001には、インクジェット方式の記録により、第二の機能性微粒子分散インクを塗布することで、第二の機能性材料を画素毎に高精細に形成することができる。画素枠内にはインク吸収性に優れた二層構造の空隙吸収型のインク吸収層が空隙を維持しているため、画素枠内に、第二の機能性微粒子分散インクで記録することで、微粒子浸透層の底部界面に稠密な第二の機能性微粒子膜3002を形成することができる。
第二の機能性微粒子分散インクは、種々の機能性微粒子を溶媒成分に分散して構成されており、より具体的にはカラーフィルタに用いられるものとしてカラー顔料インク、電極や配線パターンに用いられるものとして導電性微粒子インク、有機EL素子などの正孔輸送層に用いられるものとして導電性の高分子分散インクが挙げられる。第二の機能性微粒子の粒子径は、第一の機能性微粒子と同様に、溶媒吸収層1601の空隙径よりも小さく、微粒子浸透層1600の空隙よりも大きく形成されている。そのため、第二の機能性微粒子分散インクで画素枠内の微粒子浸透層1600に記録すると、第二の機能性微粒子分散インクは、微粒子浸透層1600に速やかに吸収され、溶媒吸収層1601との界面で固液分離される。
これにより第二の機能性微粒子は、薄膜の浸透層底部に滲み過ぎることなく圧縮堆積することで、高精細で稠密な第二の機能性微粒子膜3002が形成され、溶媒成分1607はほぼ全てが溶媒吸収層1601に吸収される。したがって、画素枠内で熔融膜化する微粒子浸透層3001には、インク中の液体成分である溶媒はほぼ残らない状態となる。
このとき、構造的な画素枠の空隙構造は消滅しているため、図3(b−2)に示すように、第二の機能性微粒子分散インクの超微粒子(粒子径分布の小粒子に相当する部分)や第二の機能性微粒子の溶媒成分は、構造的な画素枠に浸透して、隣接する画素へ流出することはなく、機能性微粒子の画素間の混入が抑制される。
[高濃度な導電性微粒子保持膜の形成・インクジェット適性に優れた低濃度インクの重ね記録]
本発明においては、構造的な画素枠を形成することから、画素枠内に低濃度の第二の機能性微粒子分散インクを重ね打ちすることで、第二の機能性微粒子の記録密度を高くすることができる。すなわち、図3(c)に示すように、第二の機能性微粒子が微粒子浸透層1600の空隙構造で支えられながら順次堆積して、かつ構造的な画素枠3000により第二の機能性微粒子の堆積する高さに伴う平面方向の広がりが抑制されるため、第二の機能性微粒子を厚く台地状に堆積させて記録密度の高い第二の機能性微粒子膜3002とすることができる。
また、画素枠内の微粒子浸透層3001の底部に第二の機能性微粒子膜3002を形成した後、別の機能を有する第二の機能性微粒子分散インクで記録することもでき、第二の機能性微粒子膜を多層化することができる。この場合は、第二の機能性微粒子膜3002上で、別の機能を有する第二の機能性微粒子分散インクが固液分離することで、第二の機能性微粒子膜3002上に第二の機能性微粒子3003を堆積させる。このとき、先に形成した第二の機能性粒子膜3002に存在する空隙は微小であるため、別の機能を有する第二の機能性微粒子分散インクの第二の機能性微粒子はほぼ浸透することができない。しかし、溶媒成分1607は浸透することができる。従って、溶媒成分1607は、先に形成した第二の機能性微粒子膜3002を介して、ほぼ全てが溶媒吸収層1601に吸収される。
また、微粒子浸透層1600は空隙吸収型であることから、インクを重ね打ちしても、インクが空隙吸収型のインク受容層に速やかに吸収されるため、隣接する画素へインクの飛び散りによる混色を抑制することができる。また、第二の機能性微粒子分散インクで重ね打ちを行って、機能性微粒子を順次堆積させる場合、先に着弾した第二の機能性微粒子分散インクは、溶媒成分が速やかに溶媒吸収層に吸収され、導電性微粒子は微粒子浸透層底部に台地状に堆積している。そのため、次に打たれるインク液滴は、空のままの空隙構造の表面に着弾することになるので、第二の機能性微粒子の飛び散りが発生しにくく、機能性材料のパターン画像の解像度が劣化しにくい。
[微粒子浸透層の加熱処理]
本発明においては、図3(d−1)に示すように、画素枠内の微粒子浸透層3001に第二の機能性微粒子分散インクで、パターン記録を行った後、微粒子浸透層1600を加熱処理することにより、微粒子浸透層1600が、微粒子浸透層底部形成された薄膜の第二の機能性微粒子膜3002を包むように溶融膜化することで、機能性微粒子保持膜3004を形成する。また、第二の機能性微粒子膜3002上に第二の機能性微粒子3003がある場合には、第二の機能性微粒子3003を包むように溶融膜化することで、機能性微粒子保持膜3005を形成する。このとき微粒子浸透層1600の上部は、溶融膜化した微粒子浸透層1600が微粒子保護膜1650となるため、機能性微粒子が直接露出することも抑制される。そのため、機能性微粒子は、機能性微粒子間の距離を縮めながらしっかりと微粒子浸透層1600に保持されることから、長期間に亘って安定した機能を維持することができる。
また、微粒子浸透層1600の表面に第二の機能性微粒子が露出するように、台地状に堆積した場合にも、熔融膜化した微粒子浸透層が高く堆積した第二の機能性微粒子を周りから支えることで、安定した形状で第二の機能性微粒子膜を形成することが可能である。
また、加熱処理によって、構造的な画素枠を残しながら、画素枠内の微粒子浸透層3001が第二の機能性材料を包み込むように溶融膜化して、機能性微粒子保持膜を形成することで、微粒子浸透層1600の空隙は消滅する。このとき、微粒子浸透層1600の空隙率に応じて膜厚減少が発生するため、図3(d−1)に示すように、微粒子浸透層1600が凹み、機能性微粒子保持膜3004、3005の表面は凹状になる。すなわち、記録材1の表面は、高く形成された構造的な画素枠3000と、画素枠内には凹み部3010が形成される。
従って、図3(e−1)に示すように、この機能性微粒子保持膜3004、3005の上部の画素枠内の凹み部3010に、第三の機能性インクを用いて、第三の機能性材料膜3006を形成することができる。ここで、第三の機能性インクは、構造的な画素枠3000、画素枠内の微粒子浸透層1600の空隙が消滅しているため、機能性材料が溶媒に分散しているインクだけでなく、機能性材料が溶媒に溶解しているインクを使用することができる。このような第三の機能性インクとしては、有機ELの発光層を形成する有機発光インクが挙られる。
また、図3(c)のように、加熱処理する前の第二の機能性微粒子膜3002や第二の機能性微粒子3003の状態で用いる場合には、第三の機能性インクとして樹脂溶解インクを用いることもできる。この場合、樹脂溶解インクの溶媒成分が界面から押し出され、第二の機能性微粒子膜の周囲には、樹脂溶解インクで樹脂膜が半球状に形成される。溶媒吸収層1601に樹脂溶解インクを保持させ、乾燥して樹脂溶解インクの揮発性溶媒成分を蒸発させることで溶媒吸収層の空隙を消滅させることができる。
図3(e−2)に示すように、第三の機能性インクは、構造的な画素枠3000の空隙が消滅しているため、構造的な画素枠3000に浸透して隣接する画素に流れ出ることがない。更に、画素枠内の微粒子浸透層3001の空隙も消滅しているため、第二の機能性微粒子膜へ流れ出ることもない。
尚、第三の機能性インクで画素枠内にパターン形成する場合は、画素枠内の微粒子浸透層3001の空隙が消滅していることからインクを吸収することができない。そのため、インク滴は画素枠内に丘状に残存する。この第三の機能性インクの溶媒を乾燥することで、第二の機能性微粒子膜の上部に第三の機能性材料膜を積層することができる。尚、画素枠3000内の凹み部3010に、第三の機能性インクで重ね記録する場合は、第三の機能性インクは、先に着弾して溶媒吸収層の表面に堆積している丘状の第三の機能性インクの上に、次弾のインク液滴が直撃して着弾することになる。そのため、その着弾衝撃による第三の機能性インクが隣接する画素へ飛び散り、パターン画像の記録解像度が低下する場合があるので注意が必要である。このような場合には、第三の機能性インクの吐出速度を遅くしたり、次弾のインクの着弾位置を前弾インクと重なり合わないように着弾位置を調整するなどして飛び散りを防止すればよい。
[接着転写]
本発明の記録材1は、図4(b)に示すように、種々の支持体55と張り合わせて加圧加熱することで、構造的な画素枠、および画素枠内の微粒子浸透層3001を支持体55と接着転写してもよい。すなわち熔融膜化した微粒子浸透層の表面は、支持体55への接着層として活用することも可能である。これは支持体55との加圧加熱により、画素枠内の微粒子浸透層3001および構造的な画素枠部分の微粒子浸透層1600を再度熔融膜化することで、支持体55に接着することが可能となる。さらに加熱圧着により、機能性インクでパターン形成した画素枠内の微粒子浸透層3001はさらに機能性微粒子間の粒子間距離を縮めながら、機能性粒子を包み込むように溶融膜化するため、強固な微粒子保護膜1650を形成することができる。
[接着性強化まだら状接着剤付加]
本発明の記録材1は、加圧加熱により熔融膜化する薄膜の微粒子浸透層1600と、導電性微粒子を固液分離して溶媒成分を吸収する空隙吸収型で厚膜の溶媒吸収層1601とで構成している。また、支持体55への接着性をより向上させるために、図1(d)に示すように、微粒子浸透層1600の表面に、加圧加熱により熔融可能で、かつ第二の機能性微粒子分散インクをほぼ吸収しない絶縁性の樹脂材料を接着剤1000として離散的に配置することができる。この方法では、微粒子浸透層1600が直接露出した露出部1001を残すように、接着剤1000をまだら状に離散的に構成する。接着剤1000を構成する粒子の形状は、直方体的なものでもよいが、微粒子浸透層1600の表面との接触面積が小さくなるように、粒子状で微粒子浸透層1600の空隙よりも大きなものが好ましい。
また、個々の接着剤1000が微粒子浸透層1600と接触する幅は、微粒子浸透層1600内における第二の機能性微粒子分散インクの平面方向の浸透性を考慮すると、微粒子浸透層1600の膜厚の2倍よりも小さくなるものが好ましい。
接着剤1000の無い微粒子浸透層1001の表面に着弾した第二の機能性微粒子分散インクは、微粒子浸透層1001に速やかに吸収されるが、接着剤1000に架かって着弾した第二の機能性微粒子分散インクは、接着剤1000には吸収されないため、その表面を滑り落ちる。そして、第二の機能性微粒子分散インクの液滴が接着剤1000の表面を伝わって、その一部が空隙構造の直接露出している微粒子浸透層1001の表面に到達すると、毛細管力によって内部に吸収されるので、第二の機能性微粒子分散インクの液滴の全ても速やかに引き込まれる。
微粒子浸透層1600内では、第二の機能性微粒子分散インクは膜厚方向だけでなく、膜平面方向にも拡散浸透するため、接着剤1000の直下にも第二の機能性微粒子分散インクが浸透し回り込む。これによって非画像部となるホワイトポイントの発生を抑制した上で、微粒子浸透層底部の隅々に第二の機能性微粒子膜を形成することができる。すなわち、空隙構造の毛細管効果により微粒子浸透層内平面方向にも浸透拡散することで、第二の機能性微粒子分散インクをほぼ吸収しない接着剤1000の直下にも第二の機能性微粒子が入り込むことが可能となる。
微粒子浸透層1600の内部に吸収浸透した第二の機能性微粒子分散インクは、微粒子浸透層1600の浸透異方性に応じて、膜厚方向および平面方向に拡がりながら吸収される。微粒子浸透層1600の浸透異方性は、インクジェット記録画像設計の根幹となるインクドットの拡がりを適切に制御することができるように設計、製膜すればよい。すなわち、大きめのインクドットを必要とする場合は、膜厚方向の浸透性よりも平面方向の浸透性を高くすればよい。逆に、小さめのインクドットを必要とする場合には、平面方向の浸透性よりも膜厚方向の浸透性を高めると共に、微粒子浸透層の膜厚を調整すればよい。
また、浸透異方性を持たせずに、等方的に浸透させることで微粒子浸透層1600の製膜生産性を向上させる場合は、所望のインクドットの拡がりになるように機能性微粒子受浸透層全体の浸透拡散性を制御して膜厚などで調整すればよい。微粒子浸透層1600の第二の機能性微粒子分散インクの浸透性が等方的であれば、微粒子浸透層1600の厚みにほぼ相当する幅でドットが拡がる。よって、個々の接着剤1000が微粒子浸透層表面と接触する幅が、微粒子浸透層1600の膜厚の2倍よりも小さくなるものであれば、接着剤直下のホワイトポイントの発生を抑制することができるので好ましい。
また、接着剤1000が微粒子浸透層1600に接触する面積が小さければ、粒子状でなくても構わず、接着剤1000を離散的に配置してもよい。また、接着剤上に着弾した第二の機能性微粒子分散インクが、接着剤表面を伝って微粒子浸透層1001の表面に速やかに到達することができるように、接着剤1000を構成する樹脂材料が第二の機能性微粒子分散インクを吸収しにくい材料を選定することが好ましい。さらに、第二の機能性微粒子分散インクが滞留し難く表面を滑るように流れる材料であれば、微粒子浸透層との接触面積が小さい粒子状で、接着剤体積の大きな大粒径の接着剤1000を利用することが好ましい。また、着弾した第二の機能性微粒子分散インクの液滴が、接着剤同士の間に一時的にブリッジ状に跨って滞留してしまわないように、個々の接着剤の間隔を、機能性微粒子分散インクの液滴の大きさよりも離して、まだら状に離散的に配置することが好ましい。
本発明の記録材1は、第二の機能性微粒子膜を形成した後に、支持体55と合わせて加圧加熱することで、微粒子浸透層1600と接着剤1000とを、熔融膜化して接着転写することができる。接着剤1000は、第二の機能性微粒子分散インクの吸収性を考慮する必要が無く、種々の支持体55と熔融膜化する微粒子浸透層1600との接着性向上を重視して樹脂材料を選定すればよい。例えば、熔融膜化する微粒子浸透層1600だけでは接着しにくいガラス表面など、種々の支持体55に合わせて樹脂材料を選定して接着剤1000を選定すればよく、また種々の支持体55への接着転写性を向上させるために、複数の種類の樹脂材料によって接着剤を構成してもよい。
まだら状に配した接着剤1000は、微粒子浸透層1600とともに熔融膜化して強力な接着部を形成することで、第二の機能性微粒子保持膜が支持体55に接着転写するのを補助して、強固に接着転写することができる。すなわち、ガラスなどの支持体55との接着性に優れた接着剤1000とが熔融膜化して、第二の機能性微粒子保持膜と支持体55との接着面に、離散的に接着強化部を形成することで、接着転写性を向上させることができる。さらに、大粒径の接着剤1000を用いて熔融時の体積が十分であれば、支持体55と第二の機能性微粒子保持膜との間に全面に亘って接着強化膜が形成されることで、さらに強固に接着転写される。
上記のように、本発明の記録材1では、薄膜の微粒子浸透層1600の表面に、接着剤1000をまだら状に離散的に配置することで、種々の支持体55への接着転写性に優れ、かつホワイトポイントを発生させることの無い、接着転写性と記録特性とに優れた記録材とすることができる。
[海島状接着剤付加]
さらに、本発明の記録材は、微粒子浸透層1600の表面に、加圧加熱により熔融接着可能で、かつ、機能性微粒子分散インクをほぼ吸収しない接着剤1000Aを、微細な島状に離散的に分布させるとともに、空隙吸収型の微粒子浸透層の表面が直接露出した露出部1001を海状に残した形で、海島状の接着強化層1012を設けることもできる。海島状の接着強化層では、機能性微粒子分散インクの液滴が接着剤1000A上に着弾しても、着弾衝撃によって液滴が高速で変形することで、機能性微粒子分散インクの一部が、海状の露出部1001で微粒子浸透層の空隙構造の表面に接触すると、微粒子浸透層内にスムーズに吸収され始める。そのため、接着強化層を構成する接着剤もしくは接着剤の凝集部は、インクジェット記録に用いられる機能性微粒子分散インクの液滴よりも格段に大きくならないように構成されていれば良く、さらには、液滴の大きさよりも小さく微細に配置されていればより好ましい。
すなわち、インク吸収の基点となる微粒子浸透層の露出部を適切な間隔で配することが重要であるため、想定されるインクジェット記録の1画素に、海部である微粒子浸透層の露出部1001が少なくとも1つ以上存在するように、微細な島状に接着剤を配置して海島状の接着強化層を構成すれば良い。まだら状に設けた接着剤に較べて、海島状の接着強化層では接着剤の量をより均一かつより多めに付与することができるので、接着性をさらに向上させることができる。
すなわち、接着強化層を構成する接着剤もしくは接着剤の凝集部の間隔も微細に小さくなっていることから、微粒子浸透層が熔融膜化した際に離散的に配置された接着剤同士が連結し易いため、機能性微粒子保持膜と支持体との間に全面に亘ってほぼ均一な接着強化膜を形成することができるので、ばらつきなく接着安定性を向上できる。海島状の接着強化層に用いる粒子状の接着剤は、まだら状に設ける場合の接着剤と同様で機能性微粒子分散インクを吸収しにくい材質の樹脂微粒子を用いることができるが、粒子径に関しては、まだら状の接着剤よりも小さくする必要がある。また、離散的に配置する島状の接着強化剤の粒子径が、機能性微粒子分散インクの液滴径よりも小さければ、さらに好ましい。
また、微粒子浸透層1600内では、空隙構造の毛細管効果により膜厚方向と同様に平面方向にも機能性微粒子分散インクが浸透拡散するので、島状に配置された個々の接着剤1000Aが微粒子浸透層の表面を覆う幅が、微粒子浸透層の膜厚の2倍よりも小さくなるように構成することで、接着剤の直下にも機能性微粒子分散インクが回りこむことが可能である。個々の接着剤1000Aが微粒子浸透層の表面を覆う幅が、微粒子浸透層の膜厚よりも小さくなるように、粒子状の接着剤を配置することがより好ましい。なお、微粒子浸透層内での浸透拡散によって、表層自体が接着剤で覆われた部分であっても、その下部の微粒子浸透層内にも機能性微粒子インクが浸透して回り込めることから、接着剤の配置・構造に応じて、微粒子浸透層の浸透性・膜厚などを適切に調整することで、接着剤直下に発生し易い微小な非画像部としてのホワイトポイントが発生しにくく、微粒子浸透層全域に亘って稠密な機能性微粒子のパターン画像を形成することが可能となる。
[複数層の微粒子浸透層]
本発明の記録材1には、図1(f)に示すように、微粒子浸透層1600を熔融膜化して支持体55へ接着転写する際の接着性をより向上させるために、薄膜の第一の微粒子浸透層1600の表面に、支持体55との接着性に優れた薄膜の第二の微粒子浸透層1680を設けてもよい。加圧加熱により熔融膜化して機能性微粒子膜を保持するのに適した第一の微粒子浸透層1600とは異なり、支持体55への接着性がより優れた材質であって、さらに大きな空隙で構成された第二の微粒子浸透層1680を設けることで、支持体55への接着転写性を強化することができる。第二の微粒子浸透層1680は、種々の支持体55との親和性・接着性と、熔融膜化する第一の微粒子浸透層1600との親和性・接着性とを、重視した材料を選定すればよい。
例えば、熔融膜化する第一の微粒子浸透層1600の樹脂材料だけでは接着しにくいガラス表面など、種々の支持体55に合わせて、第二の微粒子浸透層1680の樹脂材料を選定して構成すればよく、種々の支持体55への接着転写性を向上させることができる。第二の微粒子浸透層1680は、第一の微粒子浸透層1600に較べて空隙が大きいために、毛細管力が弱くなるので、機能性微粒子分散インクの浸透性を考慮して、第一の微粒子浸透層1600よりもさらに薄膜に構成することが好ましい。
第二の微粒子浸透層1680の表面に着弾した機能性微粒子分散インクの液滴は、第二の微粒子浸透層1680の空隙構造によって吸収され、空隙がやや小さく毛細管力がやや強い第一の微粒子浸透層1600との界面に機能性微粒子分散インクの先端が到達すると、第一の微粒子浸透層1600に吸収される。このとき、第二の微粒子浸透層1680の流路抵抗が小さいため、後続の機能性微粒子分散インクも千切れることなく追従して、第一の微粒子浸透層1600に吸収される。
第一の微粒子浸透層1600の空隙構造も、機能性微粒子よりも十分に大きな空隙径で構成されていることから、毛細管力はそれほど強くない。しかし、流路抵抗は小さいので、薄膜の第二の微粒子浸透層1680の表面に記録された機能性微粒子分散インクは、第二の機能性微粒子も含めてスムーズに薄膜の第一の微粒子浸透層内に浸透吸収される。一方、溶媒吸収層1601の空隙構造は機能性微粒子よりも十分に小さな細孔により構成されていることから、毛細管力が格段に強い。また、機能性微粒子よりも空隙が小さく流路抵抗も大きいため、機能性微粒子は溶媒吸収層1601との界面で固液分離され、機能性微粒子分散インクの溶媒成分のみが溶媒吸収層側に速やかに吸収される。
すなわち、第二の微粒子浸透層表面から第一の微粒子浸透層1600に吸収浸透してきた、機能性微粒子分散インクの一部が溶媒吸収層1601との界面に到達すると、溶媒吸収層1601の格段に強い毛細管力によって、機能性微粒子分散インクの溶媒成分が速やかに吸収されるので、第二の微粒子浸透層1680や第一の微粒子浸透層内にある後続の機能性微粒子分散インクも順次速やかに溶媒吸収層に吸収される。。
このように本発明の記録材1では、空隙の小さな溶媒吸収層によるさらに強い毛細管力によって、空隙の大きな複層の微粒子浸透層における機能性微粒子分散インクの滞留時間を短くすることができる。このため、加圧加熱により熔融膜化する複層の微粒子浸透層内への溶媒成分の残留が生じにくく、加圧加熱による支持体55への接着転写性に優れる。また、機能性微粒子分散インクの溶媒成分はほぼ全てが、厚膜で十分な溶媒浸透容量を有する空隙構造を維持する溶媒吸収層1601に吸収される。また、機能性微粒子は、第二の微粒子浸透層1680にも残らず通過して、第一の微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面で薄膜稠密に圧縮されながら固液分離されることで、薄膜の第一の微粒子浸透層1600の底部に高精細な機能性微粒子膜を形成する。
本発明の記録材1は、第二の機能性微粒子膜を形成した後に、支持体55と合わせて加圧加熱することで、第一の微粒子浸透層1600と第二の微粒子浸透層1680とを、熔融膜化して接着転写することができる。第二の微粒子浸透層1680は、種々の支持体55と熔融膜化する第一の微粒子浸透層1600との接着性向上を重視して、異なる樹脂材料が選定されて構成されている。そのため、第一の微粒子浸透層1600だけが熔融膜化するのでは接着しにくいガラス表面などの種々の支持体55への接着転写性を向上させる接着強化膜として機能させることができる。
[空隙構造の消滅あるいは除去]
図8は、空隙消滅工程の別の例を示す図である。本発明においては、記録材1に第二の機能性微粒子分散インクで機能材料パターンを記録し、溶媒成分1607を乾燥した後に、溶媒吸収層1601を熔融膜化したり、溶媒吸収層1601を第三の機能性微粒子分散インクで充填したり、溶媒吸収層剥離・溶媒吸収層溶解除去するなどしてもよい。特に、図8(a)から(c−2)に示すように、機能性微粒子分散インクが超微粉1606を含む場合には、溶媒吸収層1601に超微粉1606を含む溶媒が浸入拡散する場合があるので、超微粉1606を含む機能性微粒子分散インクの溶媒成分を界面から遠ざける。そして、第三の機能性微粒子分散インクで充填したり、溶媒吸収層1601を剥離して除去したりすることで、超微粉1606を含む溶媒が浸入拡散することによる弊害(機能性材料の機能低下、例えば漏れ電流等)を解消することができる。
溶媒吸収層1601が空隙構造を維持したままの状態では、汚染気体や有害液体が溶媒吸収層の空隙から侵入する場合があり長期保存性が低下する場合がある。また、溶媒吸収層1601を除去した上で、他の機能性膜と合わせて加圧加熱することによって、微粒子浸透層1600を再溶融して接着することで、多層機能膜を形成することができる。
[溶媒吸収層の熔融膜化]
図7(a)から(c)は、空隙消滅工程を示す図である。図7(a)に示すように、第二の機能性微粒子分散インク、および第三の機能性微粒子分散インクで画素枠内の微粒子浸透層3001に画素枠パターンの記録を行った後、図7(b)に示すように、溶媒吸収層1601に浸透している溶媒成分1607を乾燥させ、その後、加熱処理する。これによって図7(c)に示すように、溶媒吸収層1601も熔融膜化するなどして、少なくとも第二の機能性微粒子膜近傍の溶媒吸収層1601の空隙構造を消滅させれば、溶媒吸収層1601を保護膜として活用することが可能である。
[基材、溶媒吸収層の剥離とマルチレイヤー転写]
図11(a−1)から(c)は、本発明の多層記録物の製造方法を示す図である。図4(c)に示すように、支持体55に転写後、溶媒吸収層1601自体を除去してもよく、第二の機能性微粒子保持膜の裏面を直接露出させて他の機能性粒子膜と結合させてもよい。すなわち図11(a−1)に示すように、第二の機能性微粒子膜3002の裏面を直接露出させた第二の機能性微粒子保持膜3004と、別途作製した記録材(図11(a−2))の画素枠内の微粒子浸透層3001からあふれる程度に高く積み上げられた第二の機能性微粒子膜(3020、3021)と、を位置合わせして重ね合わせて加熱圧着することで、第二の機能性微粒子保持膜3004の裏面を他の機能性粒子膜と結合することができる。
このとき、別途作製した記録材α(図11(a−2))の微粒子浸透層1600は、第二の機能性微粒子膜(3020、3021)を包み込むように熔融膜化して、第二の機能性微粒子保持膜(3024、3025)を形成しながら、図11(a−1)に示した、第二の機能性微粒子膜3002が直接露出している第二の機能性微粒子保持膜3004と接着される。
また、別途作製した記録材αの画素枠内の微粒子浸透層3001も再度熔融膜化することにより、図11(a−1)の記録材βと接着することができる(図11(b))。その後、別途用意した記録材αから、図11(c)に示すように、溶媒吸収層1601と基材50とを除去してもよい。このとき、別途用意した記録材αの第二の機能性微粒子保持膜(3024、3025)の裏面を直接露出させる。
このような同様の操作を繰り返すことにより、さらに別の機能性粒子膜と結合させることもできる。すなわち、本発明の記録物は、第二の機能性微粒子分散インクを用いたインクジェット記録により、パターン画像を形成して繰り返し転写することで、多層構成の機能性材料膜を形成することもできる。
[2層構成:凝集破壊、溶解除去、第二の溶媒吸収層の剥離]
さらに、基材50上に溶媒浸透特性に優れた厚膜の第二の溶媒吸収層1706と薄膜の第一の溶媒吸収層1700とを複層に積層して2層の溶媒吸収層を構成した上で、薄膜の微粒子浸透層1600を順次積層させたもので記録材を構成して、溶媒吸収層剥離あるいは溶媒吸収層溶解除去してもよい。また、基材50を用いる代わりに、搬送性に優れた厚膜の第二の溶媒吸収層1706を用いて2層の溶媒吸収層を設け、その溶媒吸収層1601と、薄膜の微粒子浸透層1600とを順次積層させた記録材を構成して、溶媒吸収層剥離あるいは溶媒吸収層溶解除去してもよい。
ここで、第一の溶媒吸収層1700と第二の溶媒吸収層1706とによって、溶媒吸収層を複層で設けた場合の記録材について説明する。この記録材では、第二の溶媒吸収層1706の空隙径は、第一の溶媒吸収層1700の空隙径よりもさらに小さくなるように、小さな微粒子を用いて構成している。そのため、薄膜の第一の溶媒吸収層1700の毛細管力は、薄膜の微粒子浸透層1600よりも十分に強く、また厚膜の第二の溶媒吸収層1706の毛細管力は、薄膜の第一の溶媒吸収層1700よりもさらに強く構成されている。したがって、図8(a)に示すように、微粒子浸透層1600に記録された第二の機能性微粒子分散インクは、第一の溶媒吸収層1700との界面で速やかに固液分離されて、微粒子浸透層1600底部に薄膜稠密な第二の機能性微粒子膜3002を形成しつつ、ほぼ全ての溶媒成分1607は第一の溶媒吸収層1700に吸収される。
薄膜の第一の溶媒吸収層1700に吸収された溶媒成分1607の先端が厚膜の第二の溶媒吸収層1706との界面に到達すると、より強い毛細管力の第二の溶媒吸収層1706側に速度を増して吸収されて、最終的には、ほぼ全ての溶媒成分1607が厚膜の第二の溶媒吸収層1706に吸収される。したがって、熔融膜化する微粒子浸透層1600と第一の溶媒吸収層1700とには、溶媒成分1607がほぼ残留していない。そのため、図8(b)に示すように、インクジェット記録直後でも加熱処理による微粒子浸透層1600の加熱熔融が可能である。
このとき、第一の溶媒吸収層1700を、微粒子浸透層1600と同様な材質でより小さな樹脂微粒子を用いて構成することで、加熱により熔融膜化させて空隙構造を消滅させた保護膜1710を形成することもできる。第二の溶媒吸収層1706は、空隙構造を保持したままではあるが、機能性微粒子保持膜の機械的な保護層として機能させることができる。また、薄膜の微粒子浸透層1600の加熱熔融後に、溶媒成分1607をほぼ全て吸収した厚膜の第二の溶媒吸収層1706を、剥離除去することで、図8(c−1)に示すように、表層に第二の機能性微粒子保持膜3004、3005と、裏面に薄膜の溶融膜化した保護膜1710が残された機能材料のパターン記録物を得ることができる。このとき、剥離される第二の溶媒吸収層1706に第二の機能性微粒子分散インクの超微粉1606と溶媒成分1607とが含まれている。
また、第二の溶媒吸収層1706の凝集破壊を利用して、加熱によっても熔融膜化しない第一の溶媒吸収層1700を、第二の溶媒吸収層1706の剥離層として機能させることも可能である。第二の溶媒吸収層1706の空隙構造は、微粒子を結合樹脂で連結させて構成しているが、結合樹脂の割合を減らすと微粒子の凝集破壊が生じ易くなる。そのため、第一の溶媒吸収層1700に較べて、比較的大きな微粒子を用いて空隙径を大きくするとともに、微粒子/結合樹脂の比率を大きくして第二の溶媒吸収層1706を構成する。これによって、微粒子浸透層1600の加熱熔融後に第二の溶媒吸収層1706を剥離する際に、第二の溶媒吸収層1706が層内凝集破壊を生じて剥離層として機能する。微粒子浸透層1600との界面における第一の溶媒吸収層1700の微粒子は、微粒子浸透層の結合樹脂とも連結しているため、凝集破壊の際に微粒子浸透層側に残り易く、極薄層ではあるが機械的な保護層としても機能する。
[溶媒吸収層溶解除去]
また、図8(c−2)に示すように、専用の溶解液2007に浸漬させて第二の溶媒吸収層1706の空隙構造に溶解液を吸収させた上で洗い流す溶解洗浄工程によって溶解除去することで第二の溶媒吸収層1706を剥離してもよい。溶解液2007は、溶媒吸収層の空隙構造を形成している結合樹脂を溶解可能な溶剤であって、かつ熔融膜化した機能性微粒子保持膜や機能性微粒子、および支持体55を劣化させにくい材質のものを用いることが好ましい。例えば、溶媒吸収層のバインダーをポリビニルアルコール、微粒子浸透層1600をポリ(メタ)アクリル酸又はその共重合体樹脂で構成とすることで、微粒子浸透層1600と第一の溶媒吸収層1700とを熔融膜化した後に、第二の溶媒吸収層1706の空隙構造に、ジメチルスルホキシドなどの溶剤を吸収浸透させることで、第二の溶媒吸収層1706のバインダーを溶解して剥離することもできる。
すなわち、加熱後でも空隙構造を維持している第二の溶媒吸収層1706に、溶解液2007としてジメチルスルホキシドを吸収浸透させることで、第二の溶媒吸収層1706の金属微粒子を結合させているPVA樹脂を溶解により破壊する。次に、結合崩壊させた第二の溶媒吸収層1706をブレードなどで掻きとり、その表面を水で洗い流すことにより、第二の溶媒吸収層1706を除去することもできる。このとき、微粒子浸透層1600および第一の溶媒吸収層1700には空隙構造が存在しないので、ジメチルスルホキシドは浸透することがでない。さらに微粒子浸透層1600および第一の溶媒吸収層1700を構成しているアクリル樹脂は、ジメチルスルホキシドで溶解しないため、第二の機能性微粒子保持膜は溶解されずに支持体55に転写される。
[樹脂溶解インクによる空隙消滅工程]
図9(a)、(b)は、空隙消滅工程の別の例を示す図である。第二の機能性微粒子分散インクで記録した後、図9(a)に示すように、樹脂を溶媒で溶解させた第三の機能性微粒子分散インク(樹脂溶解インク)2020を第二の機能性微粒子分散インクの記録部および非記録部の上部に記録してもよい。
未乾燥で溶媒成分1607の残った記録部に樹脂溶解インクを付与した場合は、インクの溶媒成分1607が界面から押し出され、第二の機能性微粒子膜3002、3003の周囲には樹脂溶解インク2020で樹脂膜が半球状に形成される。また、溶媒成分1607のない非記録部に樹脂溶解インク2020を付与した場合は、樹脂溶解インク2020が界面の空隙を埋めて半球状の樹脂膜を形成する。
記録部および非記録部に記録された樹脂溶解インク2020の浸透拡散の拡がり方に応じて、第二の機能性微粒子の超微粉1606を含む第二の機能性微粒子分散インクの溶媒1607は、樹脂溶解インク2020によって下方へと押し出され、パターン画像の周囲には超微粉1606を含むインク溶媒1607は存在しなくなる。このような状態で図9(b)に示すように、加熱して溶媒を乾燥しながら微粒子浸透層1600および樹脂成分を熔融膜化することで、機能性微粒子の超微粉1606による機能の低下が抑制され、パターン画像裏面の保護性能に優れた記録物を作製することができる。
樹脂2039が溶媒吸収層1601の空隙を埋めることで、第二の機能性微粒子膜周囲の空隙構造消滅を補助することができる。また樹脂溶解インクによって、溶媒吸収層1601の空隙を埋めることができるため、溶媒吸収層1601を熔融膜化させる時に膜厚降下が生じにくく、パターン画像裏面の保護膜をさらに強固に形成することもできる。この方法は、特に熔融膜化しにくい細孔構造を有するセルロースナノファイバーフィルムを溶媒吸収層1601として用い、第二の機能性微粒子分散インクを記録後、樹脂溶解インク2020を付与する場合に有効であり、樹脂溶解インク2020で、第二の機能性微粒子膜3002直下の溶媒吸収層1601の空隙を樹脂2039によって埋めて、保護膜を形成することができる。
また、機能性樹脂微粒子分散インクで記録した後、最後に樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶解インクに記録材を浸漬させるなどして、溶媒吸収層1601界面からインク溶媒成分1607を押し出しながら、溶媒吸収層1601に樹脂溶解インク2020を保持させ、乾燥して樹脂溶解インク2020の揮発性溶媒成分を蒸発させることで溶媒吸収層1601の空隙を消滅させてもよい。
[材料構成]
[記録材の作製方法]
[厚膜の溶媒吸収層]
本発明の記録材1の溶媒吸収層1601は、機能性微粒子よりも十分に小さな細孔構造による毛細管現象の作用によって、機能性微粒子分散インクの液体成分である溶媒成分1607を速やかにかつ大量に吸収するための厚膜のインク受容層である。したがって、溶媒吸収層1601自体をシート状に膜化する場合の材料としては、空隙構造内に溶媒成分を十分に吸収可能で、搬送性やハンドリング性に優れた十分な厚みで、機能性微粒子の大きさより十分に小さい細孔が形成されている材料を用いればよい。
細孔構造を有する溶媒吸収層1601としては、セルロースナノファイバー単体もしくは樹脂との複合体でシート状に加工された多孔性セルロースナノファイバーシート等を用いることができる。また、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等を、クレイズ処理あるいは炭酸カルシウムを分散させたフィルムを延伸加工したものを用いることができる。
例えば、ポリエチレンを主成分として、炭酸カルシウムを分散させたフィルムを延伸加工して得られる多孔質溶媒吸収層を延伸加工することで、多孔質溶媒吸収層を製造することができる。あるいは、クレイズ加工により、溶媒吸収層1601に細孔構造を形成してもよい。クレイズ加工は、フィルムをその分子配向方向に対して略並行に所定の角度で折り曲げ、その上面および下面に圧力を掛けながら、引っ張ることで、分子束(フィブリル)と孔(ボイド)とが形成され、それらが部分的に連結して、全体としてスポンジ構造を成すように貫通する細孔を形成することができる。
[基材]
シート状にフィルム化する溶媒吸収層以外にも、基材上に微粒子と必要に応じてバインダーとを含む塗工液を塗工、乾燥して、微粒子と必要に応じてバインダーとを空隙吸収型の溶媒吸収層を形成してもよい。本発明の記録材1には、インクジェット記録の際の搬送性向上や、さらに接着転写時のハンドリング性を向上させるために、シート状の基材の上に順次複層のインク受容層を設けて記録材を構成することもできる。基材上に、溶媒吸収層1601や微粒子浸透層1600などのインク受容層を順次設けることで、各々の製膜時の生産性を向上させることもできる。基材50を設けた場合は、支持体55への接着転写後に剥離または溶解洗浄するなどして、溶媒吸収層と一緒に基材50も除去してもよいし、基材50を残す場合には、少なくとも微粒子浸透層1600と接する界面付近の溶媒吸収層1601の空隙構造を消滅させればよい。
基材50は、画素枠パターンを形成する画像記録時において、記録材1のカールを抑制し、搬送性を良好にする搬送層としての機能を有する。また、基材50の搬送性をさらに向上させるために、滑り性の改善などの為に公知の搬送補助層などを裏面側に設けてもよい。また基材50は、透明なものあるいは不透明、有色なものいずれも選択することができる。
好ましい基材の材料としては、特に制限されないが、機械的特性と熱的特性とから、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)からなるグループから選択されるプラスチックフィルムが挙げられる。基材50の厚みは、基材50がロール状である場合は、好ましくは5μm以上、100μm以下、より好ましくは15μm以上50μm以下とすることにより、記録材の搬送性を向上させることができる。
逆に、カットシートやプレート状の記録材の為の基材50は、耐カール性や給紙性能などから、機械的強度や固さに優れている厚い基材50を搬送層として用いるのが好ましく、基材厚みは30μm以上300μ以下、より好ましくは50μm以上200μ以下とすればよい。すなわち、基材50の厚みは、搬送性や材料強度を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。用途に応じて、良好な搬送性を維持していればよい。なお、接着転写工程における加圧加熱時には、薄膜状のガラス板や樹脂フィルムなどの支持体側からの熱伝達を行って微粒子浸透層1600を熔融膜化させることもできるが、逆に、支持体側よりも、基材側から溶媒吸収層を介して微粒子浸透層1600へ熱伝達されて熔融膜化されるのが支配的である場合もあるため、基材50を設けた場合はその分の熱抵抗を考慮した上で、加圧加熱条件を調整すればよい。
[機能性微粒子を固液分離する空隙径と膜厚]
厚膜の溶媒吸収層の空隙は機能性微粒子よりも十分小さくなるように、インクジェット記録装置で想定される機能性微粒子の大きさを考慮して、所望の空隙構造が得られるように、無機微粒子および樹脂微粒子の大きさを決めればよい。必要に応じて微粒子に適したバインダーを併用してもよく、バインダーとしては公知の材料を用いればよく、後述する水溶性樹脂等を用いてもよい。水溶性樹脂をバインダーとして用いれば、水性インクが溶媒吸収層内に吸収される過程で、水性インクによる溶媒吸収層の空隙内壁への濡れ性が向上するため、インク吸収速度が良好となる。
本発明者らの検討によれば、無機微粒子と水溶性樹脂および樹脂微粒子と水溶性樹脂によって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層の細孔直径の平均(平均細孔直径)は、5nm〜100nmの程度が好ましい。平均細孔直径が5nm未満の場合には、溶媒吸収層を相当に厚くしないと十分なインク吸収容量が得られないので、インクが溢れて、微粒子浸透層1600に未吸収のインク溶媒が残存するおそれがある。
また、平均細孔直径が100nmより大きい場合には、機能性微粒子が微粒子浸透層1600との界面で十分に固液分離できずに、溶媒吸収層内部にも浸透拡散してしまうことにより、画素枠パターンの解像性が不十分となる場合がある。上記平均細孔直径が得ることができれば、溶媒吸収層1601に用いられる無機微粒子および樹脂微粒子の粒子径は特に限定されない。無機微粒子としては、一次粒子径が5nm〜100nm、凝集した二次粒子径として20nm〜500nm程度のものを用いれば、良好な空隙構造が得られた。
機能性微粒子の平均粒子径は、40nm〜110nm程度であるが、90nm〜110nmの大粒径の機能性微粒子を用いた機能性微粒子分散インクを用いる場合には、好ましくは、溶媒吸収層の平均細孔直径は10nm〜85nmとすることで、さらに良好で安定したインク溶媒吸収性と機能性微粒子固液分離性および光学的により高い透明性を得ることができる。上記範囲の平均細孔直径を形成する粒子としては、好ましくは、一次粒子径が10nm〜85nm、凝集した二次粒子径として50nm〜400nmの無機微粒子および樹脂微粒子を用いればよい。
40nm〜50nmの小粒径の機能性微粒子を用いた機能性微粒子分散インクを用いる場合には、好ましくは溶媒吸収層1601の平均細孔直径が10nm〜35nmとなるように調整することで、さらに良好で安定したインク溶媒吸収性と機能性微粒子の固液分離性および光学的により高い透明性を得ることができる。上記範囲の平均細孔直径を形成する粒子としては、好ましくは、一次粒子径が10nm〜35nm、凝集した二次粒子径として50nm〜200nmの無機微粒子を用いればよい。
また、溶媒吸収層1601の厚みに関しては、溶媒成分の吸収容量と、記録材1としての搬送性やハンドリング性を考慮した場合は厚くすることが好ましいが、接着転写時に微粒子浸透層1600を熔融膜化する際に溶媒吸収層1601を介して熱伝達させるのが主体的な場合は厚くしない方が好ましい。発明者等の検討に拠れば、溶媒吸収層1601の厚みを20μm〜300μmとすることで、良好なインク溶媒吸収性と搬送性・ハンドリング性が得られた。また、搬送性・ハンドリング性に関しては基材50を併用することで向上させることが可能であるので、溶媒吸収層1601の厚みを10μm〜80μmとしても良好なインク溶媒吸収性が得られた。ただし、支持体55が厚く熱伝導性に劣る材質の場合などには、溶媒吸収層1601での熱伝達性を考慮する必要が有るため、好ましくは溶媒吸収層1601の厚みは20μm〜80μmとなるように調整すればよい。さらに、基材50を併用する場合には、溶媒吸収層1601の厚みは10μm〜60μmとなるように調整すればよい。
[溶媒吸収の空隙容量と空隙率]
本発明者らの検討によれば、無機微粒子および水溶性樹脂および樹脂微粒子と水溶性樹脂によって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層の空隙容量は、0.1cm3/g〜約3.0cm3/g程度であれば、機能性微粒子分散インクの全ての溶媒成分を吸収するのに十分であった。溶媒吸収層が薄く、細孔容積が0.1cm3/g未満の場合には、十分な溶媒吸収性能が得られず、インクが溢れて、微粒子浸透層に未吸収のインク溶媒が残存するおそれがある。また、溶媒吸収層1601がやや大き目の空隙で厚く構成され、細孔容積が3.0cm3/gを超える場合には、溶媒吸収層自体の機械的強度が弱くなり、溶媒吸収層内にクラックや粉落ちが生じ易くなる。
無機微粒子および水溶性樹脂で構成される空隙吸収型の溶媒吸収層において、上記の空隙容量を有する場合、インク受容層の空隙率は60%〜90%程度であった。溶媒吸収層の空隙率が60%以下の場合には、十分なインク吸収容量が得られず、インクが溢れて、微粒子浸透層に未吸収のインク溶媒が残存してしまう場合があった。また空隙率が90%を超える場合には、溶媒吸収層の強度が弱くなり、溶媒吸収層内にクラックや粉落ちが生じ易くなるおそれがある。
[空隙構造維持]
また、バインダーによって結着された微粒子間の空隙が、インク受容層内の全域にほぼ均一に配置されることによって、インクをほぼ等方的に浸透させることができる。微粒子を無機微粒子もしくは加熱温度よりも高いガラス転移温度を持った樹脂微粒子を用いれば、加圧加熱によっても空隙を維持することが可能な溶媒吸収性を形成することができる。また、無機微粒子を水溶性樹脂のバインダーで結合させることによって空隙が設けられたインク受容層は、無機微粒子が非常に硬い材質であるため、圧力や熱によっても空隙構造が壊れにくく、転写時に加圧加熱しても空隙構造をほぼ保持することが可能であるので、吸収した溶媒成分をその内部に保持することができ、また溶媒成分の蒸気が発生してもその内部に封じ込めることができる。
そのため、インクの液体成分である水などの主要溶媒や不揮発性溶剤を接着転写面に染み出させることなく、微粒子浸透層を熔融膜化させることができる。すなわち、画素枠形成後の記録材の画素枠内に機能性材料インクでインクジェット記録した直後であっても、微粒子浸透層には機能性材料インクの液体成分である溶媒が逆流する恐れが少ない。そのため、溶媒吸収層内に吸収された多量の溶媒成分の乾燥を待つことなく、速やかに支持体への加圧加熱による接着転写工程を行うことが可能である。すなわち、溶媒成分を乾燥する為の膨大な乾燥エネルギーや時間を必要とせず、簡易な工程で効率的に微粒子浸透層の熔融膜化が実現できる。
[無機微粒子又は熔融しにくい樹脂微粒子]
無機微粒子を構成する無機材料の種類としては、特に制限はない。また、無機微粒子と水溶性樹脂より構成される空隙吸収型のインク受容層は、特別な配向処理なくても作製できるため、生産性も良好である。ただし、インク吸収能が高い無機材料であることが好ましい。無機微粒子としては、アルミナおよびアルミナ水和物、SiO2、SiNx、Al2O3、Ta2O5、BST、PZTからなる群より選択される少なくとも1種の物質からなる微粒子等が好ましい。
無機微粒子の代わりに、加熱処理や加圧加熱による接着転写時にも熔融変形しにくい、熔融温度Tgが加熱処理温度および転写温度よりも高い樹脂微粒子をバインダー樹脂により結合して、空隙が形成された空隙吸収型の溶媒吸収層1601を形成することも可能である。樹脂微粒子の中でも熔融温度Tgが加熱処理温度および転写温度よりも高い樹脂微粒子を用いて空隙構造を形成することで、加熱時あるいは加圧加熱時の熱によっても粒子構造が維持されるため、樹脂粒子が熔融して空隙が潰れることがない。また、加熱処理温度および接着転写温度よりも軟化熔融温度が高い樹脂微粒子は、高Tg樹脂であり、一般に、樹脂微粒子を構成する分子構造が剛直であるものが多く、比較的硬い粒子である。そのため、圧力によって空隙が潰れにくい。
また、溶媒吸収層の樹脂微粒子を用いる場合は、第一の機能性微粒子が吸収した熱で溶媒吸収層の熔融しない温度である熔融温度Tgに制御することも重要である。すなわち、光照射による画素枠形成時において、第一の機能性微粒子の発熱により、樹脂微粒子が熔融温度Tg以上に加熱されてしまうと、溶媒吸収層1601の空隙が消滅してしまう。そして、画素枠内に第一の機能性微粒子分散インクで記録した場合に、固液分離した第一の機能性微粒子分散インクの溶媒成分が溶媒吸収層1601に吸収されにくくなる場合があり、固液分離性能が低下して、機能材料を画素毎に高精細に形成することが困難になる場合がある。
樹脂微粒子を構成する樹脂材料の種類としては、特に制限はないが、機能性微粒子分散インクの溶媒成分との親和性が高く、常温では安定した空隙構造を維持できる樹脂材料であることが好ましい。このような樹脂としては、アクリル系樹脂、酢ビ樹脂、塩ビ樹脂、エチレン/酢ビ共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂、またはそれらの共重合体樹脂が好ましい。
[水溶性樹脂]
水溶性樹脂は、温度が25℃において、水と十分に混和する樹脂、あるいは水に対する溶解度が1(g/100g)以上の樹脂である。また、無機微粒子や樹脂微粒子と合わせて、空隙吸収型のインク受容層に用いる場合、水溶性樹脂は、無機微粒子あるいは樹脂粒子を結着するバインダーとして機能する。水溶性樹脂としては、例えば、澱粉、ゼラチン、カゼインおよびこれらの変性物;ポリビニルアルコール(完全けん化、部分ケン化、低けん化等)ポリ(メタ)アクリル酸又はその共重合体樹脂、等を挙げることができる。
水溶性樹脂の中でも、ポリビニルアルコール、特に、ポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより得られるけん化ポリビニルアルコールは、第一の溶媒吸収層のバインダーとして好ましい。特に、けん化度70〜100mol%のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。けん化度とは、ポリビニルアルコールの酢酸基と水酸基の合計モル数に対する水酸基のモル数の百分率を意味する。また、質量平均重合度が2,000〜5,000のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。水溶性樹脂は、1種を単独で用いることができ、または2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、けん化度、質量平均重合度等の特性が異なるものも含まれる。また微粒子浸透層1600あるいは第二の溶媒吸収層のバインダーとしてはポリ(メタ)アクリル酸又はその共重合体樹脂が好ましい。
[基材上に溶媒吸収層を形成する方法]
溶媒吸収層1601の生産性を向上させるとともに、インクジェット記録時の記録材1の搬送性や接着転写時の溶媒吸収層の剥離性を向上させるなど、ハンドリング性に優れた記録材1とするために基材50を併用することも可能であり、その場合は、搬送性やハンドリング性の向上の為に必要以上に厚くすることなく、溶媒吸収層を10μm〜80μmと溶媒成分の吸収に十分な膜厚になるように調整すればよい。少なくとも無機微粒子又は樹脂微粒子と、水溶性樹脂とを、適宜媒体と混合して塗工液を調製し、公知の塗膜装置を用いて基材の表面に塗工液を塗布して乾燥させることによって所望の空隙構造を有する溶媒吸収層を形成することができる。塗工方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、スロットダイコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法などを挙げることができる。用途に応じて、その他の添加剤として、例えば、界面活性剤、機能性微粒子分散剤、増粘剤、消泡剤、インク定着剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤などを塗工液に加えてもよい。塗工液中の無機微粒子又は樹脂微粒子の粒子濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、塗膜速度と膜の均一性の観点から、塗工液の全質量に対して、10質量%以上かつ30質量%以下とすることが好ましい。
また、水溶性樹脂の量を、無機微粒子や樹脂微粒子の100質量部に対して、3.3〜20質量部、好ましくは3.3質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上15質量部以下とすることにより、空隙吸収型の溶媒吸収層を形成することができる。この範囲にすることで、インクの吸収性を良好とし、水溶性樹脂によって結着された微粒子間の空隙を溶媒吸収層内の全域にほぼ均一に配置して、機能性微粒子分散インクの溶媒成分をほぼ等方的に浸透させることができる。なお、水溶性樹脂の量を3.3質量部以下にした場合には、無機微粒子や樹脂微粒子を結着するためのバインダー量が少ないために、溶媒吸収層の強度が低下して、ひび割れおよび粉落ちが発生するおそれがあるため、好ましくない。
一方、水溶性樹脂の量を20質量部以上とした場合には、水溶性樹脂の量が多くなるため、水溶性樹脂が溶媒吸収層の空隙を埋めて、溶媒成分の吸収性が損なわれるため好ましくない。塗工液の塗工量は、固形分換算で10g/m2以上かつ40g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を10g/m2以上、好ましくは15g/m2以上とすることにより、機能性微粒子分散インク中の溶媒成分の吸収性に優れた溶媒吸収層を形成することができる。一方、塗工量を40g/m2以下、より好ましくは30g/m2以下とすることにより、厚膜の溶媒吸収層を乾燥させる際に、カールが発生し難くなる。
[薄膜の微粒子浸透層]
本発明の記録材1における微粒子浸透層1600は、加熱によって熔融膜化して空隙構造を消滅させることが可能な材料を用いて、機能性微粒子よりも十分に大きな細孔径になるように空隙構造が構成されて溶媒吸収層と積層されていればよい。すなわち、インクジェット記録の際には、機能性微粒子を含めて機能性微粒子分散インクをスムーズに浸透拡散吸収することが可能な、空隙吸収型の薄膜のインク受容層である。
[空隙径]
薄膜の微粒子浸透層の空隙は、機能性微粒子よりも十分に大きくなるように、インクジェット記録装置で想定される機能性微粒子の大きさを考慮して、所望の空隙構造が得られるように、樹脂微粒子の大きさを決めればよい。本発明者らの検討によれば、無機微粒子および水溶性樹脂によって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層の細孔直径の平均(平均細孔直径)は、50nm〜200nmの程度が好ましい。通常用いられている機能性微粒子の大きさは、40nm〜110nm程度であるので、例えば、90nm〜110nm程度の、大きめの機能性微粒子を浸透拡散させるためには、600nm〜1.8μm程度の樹脂微粒子を用いて、120nm〜180nm程度の空隙構造を構成すればよい。また、40nm〜50nm程度の、小粒径の機能性微粒子を用いた高画質な機能性微粒子分散インクを想定する場合は、300nm〜1.8μm程度の樹脂微粒子を用いて、60nm〜180nm程度の空隙構造を構成すればよい。
本発明者らの検討によれば、機能性微粒子の浸透性以外にも、膜強度やインク吸収速度などの観点も考慮すると、樹脂微粒子および水溶性樹脂によって構成される空隙吸収型の微粒子浸透層の細孔直径の平均(平均細孔直径)は、50nm〜200nmの程度にすることが好ましい。平均細孔直径が50nm以下の空隙構造の微粒子浸透層では、ほとんどの機能性微粒子分散インクの機能性微粒子が浸透できずに、微粒子浸透層の表面に機能性微粒子が残ってしまう。そのため、微粒子浸透層を熔融膜化して支持体へ接着転写する際に、接着性の無い機能性微粒子が支持体と微粒子浸透層との間に挟まれてしまい、接着転写性が低下してしまうおそれがある。一方、平均細孔直径が200nm以上の場合には、微粒子浸透層の膜強度が弱くなることで、インクジェット記録の搬送時に、クラックや粉落ちが生じ易くなるおそれがある。
[膜厚]
微粒子浸透層に浸透異方性を持たせない場合には、インクが膜厚方向にも平面方向にも等方的に浸透拡散する。よって、高解像度の画素枠を形成するために、所望の形で機能性微粒子の拡がりが得られるように、微粒子浸透層全体の浸透性を制御するとともに、所望のインク吸収量に応じて微粒子浸透層の膜厚などを調整すればよい。微粒子浸透層の厚みは1μm〜10μmとすることで、良好な機能性微粒子の浸透性および機能性微粒子の拡散性を示した。
本発明の記録材1では、微粒子浸透層の表面に着弾した機能性微粒子分散インクのインク液滴が微粒子浸透層内に順次浸透することで、細孔でインク吸収性が格段に優れている溶媒吸収層との界面にまで、その機能性微粒子分散インクの先端が速やかに到達することが必要である。そのため、微粒子浸透層の膜厚が厚くなりすぎると、機能性微粒子分散インクのほぼ全ての溶媒成分を溶媒吸収層で吸収できなくなる恐れがあり、画素枠の解像度の低下が懸念される。
さらに、微粒子浸透層の膜厚が、機能性微粒子分散インク液滴の大きさよりも厚くなった場合には、機能性微粒子分散インクは溶媒吸収層との界面に到達できずに、溶媒成分も含めて全てが微粒子浸透層内に吸収されてしまう場合もある。すなわち、機能性微粒子分散インクの固液分離ができないために、微粒子浸透層底部に薄膜稠密に圧縮された機能性微粒子膜を形成することができなくなると同時に、機能性微粒子分散インクは微粒子浸透層内を膜厚分にだけ浸透拡散することから、高解像度の画素枠のパターンの形成が困難になる恐れがある。すなわち、溶媒吸収層との界面に、着弾した機能性微粒子分散インクの先端が速やかに接触できるように、微粒子浸透層は薄膜に構成することが好ましい。
また、微粒子浸透層の空隙を機能性微粒子より十分に大きくしていることから、空隙の毛細管力も弱くなる。そのため、機能性微粒子分散インクが微粒子浸透層と溶媒吸収層との界面に到達するまでの時間が長くなりやすいので、10μmを超える膜厚で微粒子浸透層を構成することは好ましくない。一方、微粒子浸透層が1μmよりも薄くなると、高濃度で記録した場合には、微粒子浸透層内に記録された機能性微粒子の全てを収納しきれずに表面へ溢れて、接着性のない機能性微粒子により、接着転写性の低下が懸念される。そのため、高解像度で高濃度の機能性微粒子膜を形成する場合などには、微粒子浸透層の厚みが2μm〜5μmとなるように調整することがより好ましい。
[微粒子浸透層が熔融膜化するのが必須要件]
本発明の記録材は、画素枠形成時においては、第一の機能性微粒子膜に光照射することで、機能性微粒子膜が発熱し、この発熱した熱によって、微粒子浸透層を構成する樹脂粒子が熔融膜化して、空隙を消滅させた構造的な画素枠を形成する。このため、微粒子浸透層は、機能性微粒子膜が発熱した熱による加熱で、熔融膜化して空隙が消滅するように、熔融温度Tgが、機能性微粒子膜が発熱した温度よりも低い樹脂材料であって、機能性微粒子よりも十分に大きな空隙構造を形成するように大きめの樹脂微粒子で、構成している。
さらには、記録材1は、加熱または加圧加熱することで、微粒子浸透層を構成する微粒子とバインダーとが機能性微粒子を包み込みながら熔融膜化して、溶媒吸収層表面に強固な機能性微粒子保持膜を形成することができるように、微粒子浸透層は、加熱、または加圧加熱による接着転写時に、熔融変形可能なように、熔融温度Tgが転写温度よりも低い樹脂材料で構成されている。また必要に応じて、この樹脂微粒子をバインダー樹脂により結合させて構成している。
加熱によって微粒子浸透層が熔融膜化せずに、微粒子浸透層の空隙構造を残した場合には、残留した空隙を介して、吸水、吸湿が発生し、汚染劣化が発生する場合がある。また、加熱により微粒子浸透層を熔融膜化した後に溶媒吸収層除去する場合は、溶媒吸収層に用いられる結合材としての水溶性樹脂と、支持体に機能性微粒子保持膜を形成して転写される微粒子浸透層に用いられる樹脂微粒子や結合材としての水溶性樹脂との親和性が低いものが好ましい。微粒子浸透層の加熱時に、溶媒吸収層の結合材である水溶性樹脂が加熱されて熔融した場合でも、微粒子浸透層に用いられる樹脂材料との親和性が低いことによって、互いに接着しにくくなるため溶媒吸収層の剥離が容易となる。
[熔融温度]
微粒子浸透層は、加熱した後には熔融膜化する熔融膜化温度の低い樹脂微粒子とバインダーである水溶性樹脂とで構成されている。また、少なくとも樹脂微粒子と水溶性樹脂の一方は、機能性微粒子や支持体表面との接着性に優れた樹脂材料を用いることが好ましい。
樹脂微粒子は、粒子状態もしくは膜状態を、熔融温度Tgにより容易にコントロールすることができる。すなわち、本発明においては、熔融温度Tgが、記録材1を製造する際の乾燥温度よりも高く、光を吸収した機能性微粒子膜が発熱した加熱温度よりも低くかつ加熱処理時の加熱温度よりも低く、かつ加圧加熱による接着転写時の加熱温度よりも低い範囲にあればよい。本発明者らの検討によれば、好ましい溶融温度Tgは30℃〜120℃程度であった。溶融温度Tgが30℃以下であると、室温で保存した場合において、加圧されていなくても、微粒子浸透層が熔融膜化して機能性微粒子分散インクの吸収浸透性が低下しまう場合がある。
一方、溶融温度Tgが120℃以上であると、加熱して微粒子浸透層を熔融膜化する温度も高くなることから、過大な熱量が必要となってしまう場合もある。樹脂微粒子の溶融温度Tgは、インクジェット記録材を製造する際の乾燥温度よりも高く、かつ加熱温度よりも低い範囲(溶融温度Tgは30℃〜120℃程度)にあればよく、乾燥温度を制御することにより、溶融膜化可能な顔料浸透層が製造される。このような、樹脂粒子の材料としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましい。また、TFT駆動電極を作製する場合には、一般に電気絶縁性を示す必要があることから、PMMA、PS、フェノール系高分子、アクリル系高分子、ポリイミドのようなイミド系高分子、アリールエーテル高分子、アミド系高分子、フッ素系高分子、p−キシレン系高分子、ビニルアルコール系高分子、パリレン等が好ましく用いられる。
[空隙のある溶媒吸収層上への微粒子浸透層の製膜方法]
空隙のある溶媒吸収層上への微粒子浸透層を製膜するには、溶媒吸収層1601の表面を、予め湿し水・浸し水などで処理して、溶媒吸収層1601の空隙を液体で充たしてから、微粒子浸透層1600形成用の塗工液を塗工すればよい。微粒子浸透層1600は、少なくとも樹脂微粒子と、水溶性樹脂とを、適宜媒体と混合して塗工液を調製し、これを溶媒吸収層の表面に塗布して乾燥させることによって、空隙構造を形成することができる。但し、溶媒吸収層の表面に微粒子浸透層形成用の塗工液を塗工する場合は、溶媒吸収層1601の空隙に微粒子浸透層1600の塗工液の水分とともに水溶性樹脂も浸透することにより、溶媒吸収層1601の空隙が埋まってしまう場合がある。
また、溶媒吸収層1601の空隙よりも大きな樹脂粒子を用いているが、粒度分布がシャープでなく微粒子カットが不十分な場合など、空隙よりも小粒径の樹脂微粒子が塗工液に含まれる場合もあり、溶媒吸収層1601の空隙が埋まってしまう場合がある。本発明の記録材1における溶媒吸収層1601では、溶媒吸収層1601にインク中の水分や溶媒成分をほぼ全量や速やかに吸収できるように、高いインク吸収速度を保持するために空隙は重要である。さらに微粒子浸透層1600の塗工液の水分が、溶媒吸収層の空隙内に急速に浸透して、溶媒吸収層の空隙に残存する空気と置き換わる過程で発生した気泡が、微粒子浸透層1600の塗工液を介して排出される際に、微粒子浸透層1600の塗工液中でトラップされてしまい、塗工面に気泡が残る塗工不良を引き起こす場合もある。
このような場合には、溶媒吸収層1601の表面を予め湿し水・浸し水などで処理して、溶媒吸収層1601の空隙を液体で充たしてから、微粒子浸透層形成用の塗工液を塗工すればよい。湿し水・浸し水が、溶媒吸収層1601の空隙を埋めることにより、微粒子浸透層形成用の塗工液を塗工する前に溶媒吸収層の空隙に存在する空気を系外に放出することができ、かつ微粒子浸透層形成用の塗工液を塗工する際に、水溶性樹脂や微細な樹脂微粒子が溶媒吸収層の空隙へ侵入するのを防止することができる。
尚、塗工液中の樹脂微粒子の粒子濃度は、溶媒吸収層と同様に塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、塗膜速度と膜の均一性の観点から、塗工液の全質量に対して、10質量%以上かつ30質量%以下とすることが好ましい。塗工液の塗工量は、固形分換算で1g/m2以上かつ10g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を1g/m2以上、好ましくは10g/m2以下とすることにより、良好な機能性微粒子浸透性および機能性微粒子拡散性を示すことができる。また、塗工方法としては、溶媒吸収層の形成方法で記載した同等の方法を用いることができる。
尚、熔融膜化可能な微粒子浸透層1600の形成には、微粒子浸透層1600の塗工液を塗工後の乾燥温度を厳密制御する必要がある。すなわち、微粒子浸透層1600を形成する樹脂微粒子は、加熱処理、および支持体への接着転写時に加圧加熱することで、熔融膜化する材料が選定されている。そのため、記録材の製造工程では、樹脂微粒子が粒子状態を維持して空隙構造を形成するように、微粒子浸透層1600の形成時の乾燥温度を、樹脂微粒子の熔融温度Tgよりも低く設定すればよい。微粒子浸透層1600の形成時に、樹脂微粒子の熔融膜化温度以上での温度で長時間加熱乾燥すると、樹脂微粒子が熔融軟化して空隙構造が保持できなくなるので、乾燥条件には細心の注意が必要である。一方で、微粒子浸透層の形成時の乾燥温度が高いと塗工スピードを高めることができるため、生産性の面においては、微粒子浸透層の形成時の乾燥温度をできるだけ高くする方が好ましい。
[溶媒吸収層複層構成]
本発明の記録材1は、溶媒吸収層1601を複層で構成してもよい。例えば、加熱処理および加圧加熱によって熔融変形可能な樹脂微粒子をバインダー樹脂で結合することで機能性樹脂微粒子よりも十分に小さな空隙が形成され、加熱処理および加圧加熱による接着転写時には熔融膜化して空隙構造が消滅する空隙吸収型で薄膜の第一の溶媒吸収層を微粒子浸透層側に配置し、加圧加熱後にも空隙構造を維持し、インク溶媒を保持する第二の溶媒吸収層を第一の溶媒吸収層下部の基材側に配置して構成してもよい。
[溶媒吸収層複層構成の第一の溶媒吸収層の材料例]
第一の溶媒吸収層は、第二の機能性微粒子と同程度かさらに小さな粒子径であって、第二の溶媒吸収層を構成する無機微粒子よりはやや大きな粒子径であって、微粒子浸透層と同様の材質ながら格段に小粒子径の樹脂微粒子を用いて、微粒子浸透層と同様に第二の溶媒吸収層に積層すればよい。第一の溶媒吸収層は、樹脂微粒子の粒子径を上述の如く適宜選定することで第二の機能性微粒子よりも小さく、かつ第二の溶媒吸収層の細孔よりもやや大きな空隙構造を構成することができる。すなわち、第一の溶媒吸収層は、微粒子浸透層との界面で第二の機能性微粒子を分離するとともに、溶媒成分を速やかに吸収することが可能となる。より小さな空隙径に構成されることで、より毛細管力の大きな第二の溶媒吸収層側へ溶媒成分を速やかに移動させることが重要であるので、第一の溶媒吸収層よりも薄膜に構成する。
また、第一の溶媒吸収層には、溶媒成分は残留しにくいため、インクジェット記録直後でも加圧加熱による熔融膜化が可能である。すなわち、第二の溶媒吸収層は、高い毛細管力を有し、十分な膜厚により多量の溶媒吸収容量を有するため、ほぼ全ての溶媒成分は、薄膜の第一の溶媒吸収層を速やかに通過して、厚膜の第二の溶媒吸収層に吸収される。第一の溶媒吸収層を微粒子浸透層と同様の樹脂材料で構成し、支持体への接着転写時に加圧加熱することで、微粒子浸透層と同様に膜化溶融させて強固な透明保護膜を形成することができる。
溶融膜化可能な第一の溶媒吸収層1700を設ける場合は、微粒子浸透層と同様に、加熱する前は空隙を構成するために粒子状態をなす一方、加熱処理した後には溶融膜化する樹脂微粒子と、樹脂粒子のバインダーとなる水溶性樹脂とで構成されている。ただし、第一の溶媒吸収層1700は、第二の機能性微粒子を固液分離できるように、第二の機能性微粒子よりも十分に小さな空隙を構成するために、微粒子浸透層1600に用いる熔融膜化可能な樹脂微粒子よりも、さらに小粒径の樹脂微粒子を用いる。樹脂微粒子の溶融温度Tgは、インクジェット記録材を製造する際の乾燥温度よりも高く、かつ加熱処理時の加熱温度よりも低い範囲(溶融温度Tgは30℃〜120℃程度)にあればよく、乾燥温度を制御することにより、溶融膜化可能な第一の溶媒吸収層が製造される。
[第一の溶媒吸収層と微粒子浸透層との界面に設ける密着層の材料]
基材50を併用する場合に、基材上に公知の塗膜装置を用いて予め密着層を設けておいた上で、溶媒吸収層を塗工して設けることもできる。また、溶媒吸収層を複層で構成し、第一の溶媒吸収層を熔融膜化して微粒子浸透層の表面に保護膜として残す場合に、第一の溶媒吸収層と微粒子浸透層との間に密着層を設けてもよい。基材50と溶媒吸収層および第一の溶媒吸収層と微粒子浸透層、各々を構成するバインダーとなる水溶性樹脂組合せに対して、いずれにも高い親和性を有する材料を選択することが好ましい。
このような材料としては、例えば、熱可塑性の合成樹脂、天然樹脂、ゴム、ワックス等を用いて形成することができる。尚、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。密着層は、公知の塗工装置により、基材に密着層を含有する組成物を、塗工して、乾燥することで形成する。塗工液中の密着層の粒子濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、塗膜速度と膜の均一性の観点から、塗工液の全質量に対して、0.1質量%以上かつ5質量%以下とすることが好ましい。塗工液の塗工量は、固形分換算で0.1g/m2以上かつ1g/m2以下とすることが好ましい。
塗工量を0.1g/m2以上、好ましくは1g/m2以下とすることにより、溶剤吸収層と基材との密着性を良好に保つことができ、溶媒吸収層の剥離性を向上させることができる。また、その厚さを極薄くすることで、第一の溶媒吸収層と微粒子浸透層との界面に密着層を付加する場合には、各々のインク吸収の連続性を損なわないようにすることができる。特に、密着層を構成する材料が撥水性である場合には、第一の溶媒吸収層の空隙径と同程度かさらに薄く構成すればよい。さらに、粒子状の密着剤の塗工液で密着層を塗工する場合、微細な密着剤粒子が第一の溶媒吸収層の空隙に入り込まないように、第一の溶媒吸収層の表面を予め湿し水・浸し水などで処理して、第一の溶媒吸収層の空隙を液体で充たしてから、密着剤を塗工すればよい。密着性を向上させる別の方法として、基材や第二の溶媒吸収層の界面を、予めコロナ放電処理やプラズマ放電処理を行って表面改質処理を施したり、IPAやアセトン等の有機溶剤を塗工したりすることによって、塗れ性を改良し密着性を向上させてもよい。
[極薄膜の離型層]
[離型層の機能と材料説明]
本発明の記録材1において、溶媒吸収層と微粒子浸透層との間、もしくは第一の溶媒吸収層と第二の溶媒吸収層との間などに、極薄膜の離型層を設けることで、支持体への接着転写後に安定した溶媒吸収層除去を行うことが可能である。溶媒吸収層と微粒子浸透層との界面に離型層を設けておき、微粒子浸透層とが支持体に転写されて支持体上に強固な機能性微粒子保持膜が形成された後に、溶媒吸収層を容易に除去することができる。厚膜の溶媒吸収層は、インク吸収容量などのインク吸収性に特化して機能を向上させることが可能となる。離型層は極薄膜の一様な層で設けてもよいし、離型剤を離散的に配した層で設けてもよい。
具体的には海島状に設けてもよいし、まだら状に設けてもよい。離型剤を離散的に配した離型層とすることで、離型剤が撥インク性を持っている場合でも、吸収されたインクの一部が露出した下層にすばやく触れることができるため、インク吸収の連続性が低下することなく、良好な剥離性とインク吸収性を両立することができる。
[離型層の材質]
このような離型剤の材料としては、例えば、シリコンワックスなどのワックス類に代表されるシリコンワックス、シリコン樹脂などのシリコン系材料、フッ素樹脂などのフッ素系材料、ポリエチレン樹脂等、が挙げられる。剥離層は、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、スロットダイコーティング法等により、前述した剥離性を含有する組成物を溶媒吸収層上に塗工し、乾燥することで形成することができる。
離型材料は、溶媒吸収層と微粒子浸透層との界面において、溶媒吸収層を構成する微粒子の表面や微粒子を結合して空隙構造を形成する水溶性樹脂の表面と、微粒子浸透層を構成する樹脂微粒子の表面や空隙構造を形成する水溶性樹脂の表面との間に挟まれており、各々の空隙構造を阻害しないように極薄膜状に付着させている。離型層に用いる離型剤の種類は特に限定されないが、好ましくは、離型性に優れ、ヒートローラの熱が発生する熱によって容易に熔融しない材料である。また離型材料としては、微粒子浸透層に用いられる樹脂微粒子や結合材としての水溶性樹脂に接着しにくいものが好ましい。
接着転写時の加圧加熱時によって、溶媒吸収層の結合材である水溶性樹脂が加熱されて熔融した場合でも、微粒子浸透層に用いられる樹脂材料と、離型材料との親和性が低ければ、互いに接着しにくく境界面における剥離が容易となる。なお、一般的に離型剤は、離型機能を有すると同時に撥水性を有する場合がある。そのため、溶媒吸収層と微粒子浸透層との境界面に離型層を付加する場合には、溶媒吸収層の毛細管力によるインク吸収特性を損なわないように離型層の厚さを極薄く形成する必要がある。
一般に、機能性微粒子の平均粒子径は、40nm〜110nm程度であるので、溶媒吸収層の平均細孔直径はそれよりも小さく、5nm〜100nmとなるように調整している。離型層の厚さとしては、溶媒吸収層の空隙径と同程度かさらに薄くすればよい。すなわち、溶媒吸収層の小さな空隙構造の界面に設けられている極薄膜の離型層の厚みが空隙径よりも小さければ、微粒子浸透層内の50nm〜200nm程度の大きな空隙構造をスムーズに浸透してきた機能性微粒子分散インクの慣性力によって押し出された機能性微粒子分散インクの溶媒成分の先端が、撥水性であっても極薄層の離型層を乗り越えることが可能となる。
さらに、親水性の材料を用いて小さな空隙が構成された毛細管力が強い溶媒吸収層の空隙構造に到達することで、溶媒吸収層による速やかな溶媒成分の吸収が始まる。以上のように、溶媒吸収層との界面に親水性に劣る離型層が構成されていても、溶媒吸収層の空隙径よりも薄い膜であれば、微粒子浸透層内を浸透してきた機能性微粒子分散インクの慣性力によって乗り越えることができ、溶媒吸収層での溶媒成分の連続的な吸収を阻害しない。第一の溶媒吸収層と第二の溶媒吸収層との界面に離型層を設ける場合にも、第一の溶媒吸収層の空隙径よりも薄く離型層を構成することで、溶媒成分の連続的な吸収を実現することができる。
また、離型性を向上させる別の方法として、溶媒吸収層の界面の微粒子や結合材の表面に、離型性の溶剤等を極薄膜に塗布したり、表面改質処理を行ったりすることによって、個別に離型層を設けずに溶媒吸収層の界面での離型性を向上させてもよい。その場合、溶媒吸収層内部の空隙構造内面が離型剤の浸透や蒸気などにより汚染されることで親水性が低下しないように注意が必要である。
[溶媒吸収層に離型層を形成する方法]
離型層は、基材に前述した剥離性を含有する組成物を、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、スロットダイコーティング法等により塗工して、乾燥することで形成する。塗工液中の離型層の濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、塗膜速度と膜の均一性の観点から、塗工液の全質量に対して、0.1質量%以上かつ5質量%以下とすることが好ましい。塗工液の塗工量は、固形分換算で0.1g/m2以上かつ1g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を0.1g/m2以上、好ましくは1g/m2以下とすることにより、基材と溶剤浸透層または保護層との剥離性を良好に保つことができる。撥水性の離型剤を塗工する場合は、溶媒吸収層の表面を予め湿し水・浸し水などで処理して、溶媒吸収層の空隙を液体で充たしてから離型剤の塗工液を塗工すればよい。
湿し水・浸し水が、溶媒吸収層の空隙を埋めることにより、離型剤の塗工液を塗工する前に溶媒吸収層の空隙に存在する空気を系外に放出することができ、かつ溶媒吸収層の空隙へ離型剤が侵入して、毛細管力が低下するのを防止することができる。また、グラビア法などの転写記録法によって離型剤を溶媒吸収層に極薄膜に転写させてもよい。
[第二の微粒子浸透層]
[支持体への接着性向上させる接着強化膜、複数層構成]
第二の微粒子浸透層を設ける場合は、第二の微粒子浸透層は、第一の微粒子浸透層と同様に、加圧加熱する前は空隙を構成するために粒子状態をなす一方、加圧加熱した後には溶融膜化する樹脂微粒子と、樹脂粒子のバインダーとなる水溶性樹脂とで構成された上で、さらにガラスなどの支持体への接着性が良好な樹脂材料で構成されることが好ましい。このような樹脂粒子の材料としては、アクリル系高分子が好ましい。
尚、機能性樹脂微粒子よりも十分に大きく、かつ第一の微粒子浸透層の細孔よりもやや大きな空隙構造を構成することができるように、樹脂微粒子の粒子径のとしては、上述した第一の微粒子浸透層を構成する樹脂粒子の粒子径よりやや大きなものを使用する。これによって、機能性樹脂微粒子の浸透性に優れる空隙構造を有する微粒子浸透層を得ることができる。膜厚としては、1μm〜3μm程度の薄膜で、熔融膜化した際に、支持体と機能性微粒子保持膜との間の全面に亘って、凹凸や空隙を埋めて一様な接着強化膜を形成することができるだけの体積があればよい。
[接着強化材の材料例]
接着剤や接着強化層の材質は、種々の支持体や用途に合わせて、選択すればよい。接着剤は、1種もしくは複数種選択してもよい。例えば、特定の支持体への接着性に優れた接着剤と、微粒子浸透層への接着性に優れた接着剤と、を選択して混合させた接着強化層としてもよく、これにより支持体と機能性微粒子保持膜とのどちらにも良好に接着することができる。例えば、PET、アクリル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチック系の支持体との接着性に優れた接着剤としては、ポリウレタン系、アクリル系、もしくはそれらを混合物した接着剤の樹脂微粒子が好ましい。また、ガラスや金属などの支持体との接着性に優れた接着剤としては、ポリウレタン系、オレフィン系の接着剤もしくはそれらを混合物した接着剤の樹脂微粒子が好ましい。
[微粒子浸透層に接着強化層を形成する方法]
本発明の記録材1は、基材上に積層された空隙吸収型のインク受容層である溶媒吸収層と微粒子浸透層の表面に、接着剤を含有する塗工液を塗布して、微粒子浸透層の表面に接着剤をまだら状もしくは海島状に離散的に設けることにより、微粒子浸透層の表面が直接露出する露出部が残こるように構成することも可能である。塗工液中の接着剤の濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。塗工液中の接着剤の濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して、適宜決定すればよい。但し、塗膜速度と接着剤の均一性の観点からは、塗工液の全質量に対して、0.1質量%以上かつ40質量%以下とすることが好ましい。
塗工方法としては、空隙吸収型の微粒子浸透層の表面に、接着剤を離散的に設ける必要があるためグラビアコーティング法で行うことが好ましい。その場合、グラビアロールの溝の線数は、好ましく200線程度、より好ましくは300線程度とすることが好ましい。600線を超えると、隣接する接着剤同士の間隔が狭くなりすぎて、機能性微粒子分散インクの液滴が隣接する接着剤同士に跨り易くなり、微粒子浸透層の表面に到達するまでの時間が長くなる場合がある。基材上に形成された微粒子浸透層の表面に、粒子状の接着剤の塗工液を塗工する場合、接着剤粒子が微粒子浸透層の空隙に入り込まないように注意が必要である。微粒子浸透層の空隙よりも大きな接着剤粒子を用いているが、接着剤粒子が2次凝集体であったり、粒度分布がシャープでなく微粒子カットが不十分であったりした場合など、空隙よりも小粒径の接着剤が塗工液に含まれる場合もある。
本発明の記録材1における微粒子浸透層では接着剤表面に機能性微粒子分散インクをほとんど残すことなく速やかに吸収できるように空隙構造は重要である。そのため、接着剤の塗工液を塗る前に、予め微粒子浸透層と溶媒吸収層の空隙構造を浸し水などで処理して、微粒子浸透層と溶媒吸収層の空隙を液体で充たしてから、保護膜強化剤の塗工液を塗工することにより、微細な接着剤粒子が微粒子浸透層の空隙への侵入を防止することができる。また接着剤は、加熱圧着によりに加熱されると軟化熔融膜化する材料で構成されており、接着剤の塗膜後の乾燥工程にも十分な配慮が必要である。
すなわち、接着剤が軟化熔融する膜化温度、あるいはガラス転移温度以下で乾燥することが好ましい。もちろん微粒子浸透層の露出部が機能性微粒子分散インクでのインクジェット記録に見合うだけの空隙構造を維持できていれば、乾燥工程において接着剤の表面が多少なりとも熔融軟化して微粒子浸透層に接着するように、乾燥工程の温度や時間を調整することは構わない。したがって予め軟化熔融膜化する温度を測定しておき、微粒子浸透層の空隙構造を保持しつつ、また接着剤が微粒子浸透層に直接接触する面積が増大することで微粒子浸透層の表面露出部が減少しない様に、かつ生産性に優れた乾燥温度や乾燥時間に設定することが好ましい。
接着剤に複数種の粒子を含ませ、ある1つの粒子に、粒子状で残存する接着剤粒子のバインダーとしての機能および微粒子浸透層の水溶性樹脂との接着性を向上させる機能を持たせてもよい。このような場合には、バインダーとして機能する接着剤の膜化温度以上、かつ粒子状で残存する接着剤粒子の膜化温度以下で乾燥することが好ましい。このように、接着剤の性質に応じて乾燥温度を適宜選択することにより、インクジェットの記録特性と接着転写性とを両立させることができる。また、接着剤の塗工液は、乾燥の過程において塗工液中の水分が蒸発するため、塗工成膜時には接着剤の濃度が高くなる。
そのため、乾燥前においては、接着剤の塗工液を構成する接着剤粒子はほぼ単粒子として分散されており、乾燥の過程において接着剤塗工液の濃度が高くなると、接着剤粒子の分散が破壊されやすくなり、接着剤粒子同士の衝突・合一により、複数の粒子が凝集する場合がある。接着剤塗工液は、このように複数の粒子が凝集した状態でも成膜されることにより、微粒子浸透層の表面に、接着剤を離散的に設けることができる。したがって、接着剤を単粒子で離散的に設ける場合には、乾燥前の接着剤塗工液の濃度を低くすればよく、一方、接着剤を複数の粒子が凝集した状態で離散的に設ける場合には、乾燥前の接着剤塗工液の濃度を高くすればよい。
このように、乾燥前の接着剤塗工液の濃度を適宜調整することにより、成膜時における接着剤の離散状態を調整することができる。接着剤の離散状態は、インクジェットパターン電極記録材および記録物の用途に応じて制御することができる。また、転写ローラや転写フィルムなど表面上に、離型層を介して、まだら状もしくは海島状に離散した形で粘着性の接着剤の塗工膜を設けておき、微粒子浸透層の表面に圧着転写してもよい。転写ローラや転写フィルムなど表面形成した接着剤の離散パターンを、そのまま微粒子浸透層の表面に転写できることから、微粒子浸透層表面に形成された接着剤の離散状態を任意にコントロールすることができる。この方法によれば、微粒子浸透層の空隙への接着剤粒子の浸透を考慮することないため、微粒子浸透層に浸し水等の特別な処理を行うことなく、微粒子浸透層の表面に接着剤を離散的に形成することができる。
[インクジェット記録方法]
本発明のインクジェットパターン画像形成方法においては、本発明の記録材に機能性微粒子分散インクを用いて、インクジェット記録を行うことで、薄膜の微粒子浸透層の底部界面に、平面方向へのにじみの少ない薄膜稠密な機能性微粒子膜を形成することで高解像度のパターン画像を形成することができる。
本発明の記録材1は、厚膜の溶媒吸収層を持つために十分な溶媒成分を吸収することができるので、第一の機能性微粒子分散インクを用いることで、高精度なパターン画素枠パターンを高解像度に形成することができる。このとき、微粒子浸透層の上層部には、第一の機能性微粒子分散インクの溶媒成分も残らずに、加熱により熔融膜化可能な材料で空隙構造が維持されている。光照射により、第一の機能性微粒子膜が光を吸収して発熱することで、微粒子浸透層が、加熱処理されてその熱により、熔融膜化することで、第一の機能性微粒子保持膜を覆うように保護膜が積層された、信頼性に優れた画素枠パターンを形成することができる。
また、インクジェット記録特性の安定した低濃度の第四の機能性微粒子分散インクを多重記録により重ね打ちして、微粒子浸透層の膜厚を超える高さ以上に厚膜の第四の機能性微粒子粒子膜を形成して、画素枠を補強することもできる。この場合、第四の機能性微粒子分散インクは、平面方向には微粒子浸透層の膜厚相当分よりも大きくは滲み出しにくく、台形形状に第四の機能性微粒子が堆積されるため、解像度の低下が抑制できる。微粒子浸透層の膜厚に相当する高さ以上に第四の機能性微粒子を堆積させることで、光照射して微粒子浸透層および第四の機能性微粒子を熔融膜化した場合に、微粒子浸透層の空隙消滅に伴う微粒子浸透層の膜厚の減少を防止することができる。これによって、構造的な画素枠を平坦化することができる。その後、画素枠内には、第二の機能性微粒子分散インクで記録することで、機能性材料を画素ごとにパターン記録することができる。
第二の機能性微粒子分散インクでパターン記録する場合は、低濃度の第二の機能性微粒子分散インクを重ね打ちして、十分な膜厚で第二の機能性微粒子膜を高解像度に形成してもよく、多重記録により厚膜の第二の機能性微粒子膜を形成してよく、微粒子浸透層の膜厚を超える高さ以上に多重記録して、第二の機能性微粒子が微粒子浸透層の表面から一部溢れるように堆積させて、第二の機能性微粒子膜を形成することができる。尚、異なる種類の第二の機能性微粒子分散インクを用いれば、多層の機能性微粒子膜を形成することができる。さらに加熱処理を行い、空隙を消滅させた後の画素枠内には、溶液系の第三の機能性インクにより、多層の機能性微粒子膜を形成することができる。
加熱処理により、第二の機能性微粒子を包み込むように微粒子浸透層が溶融膜化して、画素枠内の微粒子浸透層の空隙は消滅して、さらには、画素枠の空隙も消滅することから、第三の機能性インクの溶媒成分は画素枠内および画素枠の微粒子浸透層に浸透して拡散することなく、第二の機能性微粒子膜に表面に第三の機能性膜を積層することができる。
[機能性微粒子分散インク]
水系機能性微粒子分散インクは、インクの成分の内、60%〜80%が溶媒成分としての水およびアルコールなどの安全な揮発性成分であり、20%〜30%がその他の溶媒成分、1%〜10%が機能性微粒子で構成されている。水性機能性微粒子分散インクにおいては、その他の溶媒成分のほとんどは水溶性であり、不揮発性であり、かつ不活性成分(反応性がすくない)のため、人体に対する刺激性が少ない成分で構成されている。従って、画像記録後に、有害な溶媒成分が長時間に亘って揮発し続けたり、あるいは活性の高い成分が未反応のまま残存しないため、揮発性溶剤を主体とする溶剤インクや、活性成分を含む(反応性の高い)モノマーを用いているUVインクなどと比較して、極めて安全性が高いため、特に好ましく用いられる。このような溶媒としては、例えばグリセリンやエチレングリコールなど多価アルコールが挙げられる。
機能性微粒子分散インクにおいては、インクの機能性微粒子の平均粒子径と、微粒子浸透層と溶媒吸収層それぞれの平均細孔直径と、に応じて機能性微粒子分散インクの吸収浸透状態が異なる。すなわち、想定される機能性微粒子分散インクの平均粒子径に対して、微粒子浸透層の平均細孔直径が大きく、溶媒浸吸収層の平均細孔直径が小さな記録材を用いればよい。一般に、機能性微粒子の平均粒子径は、40nm〜110nm程度である。例えば、高精細な画像が得られる小粒径の機能性微粒子を用いた機能性微粒子分散インクを用いる場合には、機能性微粒子の平均粒子径は40nm〜50nm程度である。一方、安価で安定的な大粒径の機能性微粒子を用いた機能性微粒子分散インクを用いる場合には、機能性微粒子の平均粒子径は90nm〜110nm程度である。
したがって、微粒子浸透層と溶媒吸収層との平均細孔径を、想定される機能性微粒子分散インクに合わせて調整することで、微粒子浸透層と溶媒吸収層との界面に稠密で高精細な機能性微粒子膜を形成することができ、機能性微粒子分散インクの溶媒成分は溶媒吸収層に速やかにほぼ全量が吸収される。
[第一の機能性微粒子分散インク]
記録材に第一の機能性微粒子分散インクで、画素枠のパターン記録を行うことで、微粒子浸透層の底部に第一の機能性微粒子膜を形成することができる。その後、画素枠のパターン画像形成部分に光照射することにより、第一の機能性微粒子膜が発熱して、機能性微粒子膜上部の微粒子浸透層を熔融膜化することで、空隙が消滅した構造的な画素枠を形成することができる。このような、第一の機能性微粒子分散インク中の機能性微粒子成分としては、光を吸収して発熱する顔料であればよい。すなわち第一の機能性微粒子分散インクとしては、前述した溶媒成分に顔料を分散したものが挙げられ、具体的には黒色の顔料インクが挙げられる。このような黒色の顔料成分としてはカーボンブラック等が挙げられる。
黒色顔料としては、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、およびスルホン基のうちの少なくとも1種の官能基またはその塩を結合された自己分散顔料粒子、あるいは顔料粒子の周りを樹脂で被覆した樹脂分散型の顔料粒子を用いることができる。また、樹脂分散型の顔料粒子は、インク媒体と分離した後の顔料粒子同士の結着力を高めて、微粒子浸透層の底部に強固な薄膜状の顔料粒子膜を形成することができる。黒色顔料インク中の液体成分である溶媒は、微粒子浸透層よりも毛細管力が大きい溶媒吸収層にほぼ全量が吸収されるため、顔料粒子膜の溶媒成分はほとんど残らない。そのため樹脂分散型の顔料粒子は、近接することで顔料粒子分散用に加えられた分散樹脂によってより強固に互いに結合する。
[第四の機能性微粒子分散インク]
記録材に第一の機能性微粒子分散インクで画素枠パターンをインクジェット記録後、さらに第四の機能性微粒子分散インクで画素枠パターン記録を行うことで画素枠を補強してもよい。第四の機能性微粒子で画素枠部分の微粒子浸透層の空隙内を満たすことで、光照射による微粒子浸透層の空隙消滅に伴う膜厚の減少を改善することができる。また、第四の機能性微粒子が微粒子浸透層1600の表面から溢れる程度に記録することで、微粒子浸透層よりも画素枠3009を高く形成することができる。第四の機能性微粒子分散インクとしては前述した溶媒成分に樹脂粒子を分散したものが挙げられる。
樹脂微粒子の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を挙げることができる。例えば樹脂成分は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン変性ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、BTレジン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂などがあるが特に制限するものではない。
[画素枠内に機能性インクで記録]
構造的な画素枠を形成した記録材の画素枠内の微粒子浸透層に、第二の機能性微粒子分散インクで記録することで、機能材料を画素毎に高精細にパターン形成することができる。第二の機能性微粒子分散インクとしては、カラーフィルタ用途として、赤色顔料インク、緑色顔料インク、青色顔料インク、電極やプリント配線用としては導電性微粒子インク、導電性樹脂分散インク、絶縁性微粒子インクが挙げられる。
[カラーフィルタ形成用インク]
画素枠内に耐候性に優れた赤色顔料インク、緑色顔料インク、青色顔料インクを用いてインクジェット記録を行うことで、高精度・高画質なカラーフィルタのパターン記録を行うことが可能である。赤色顔料インク、緑色顔料インク、青色顔料インクは、前述した溶媒成分に、赤色顔料、緑色顔料、青色顔料の顔料粒子を分散したものである。上述した顔料粒子のとしては、ピグメントイエロー83、93、110、139、ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド177、254、ピグメントバイオレット23、37、ピグメントブルー15、15:16、ピグメントグリーン7、36等が挙げられる。
[導電性微粒子インク]
画素枠内に、導電性微粒子インクで、インクジェット記録を行うことにより、電極パターン記録を行うことができる。導電性微粒子インクは導電性粒子を前述した溶媒で分散して構成されている。導電性微粒子成分としては、金属微粒子を構成する金属の種類は特に限定されない。金属の具体例としては、貴金属、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、亜鉛等を挙げることができる。これらの金属のなかでも、貴金属が好ましい。金属微粒子は微細化していくと低融点化するため低温で焼結可能となり、金属結合した膜形成が可能となる。このため常温処理することで、金属光沢を有するとともに、電気伝導性及び耐擦過性に優れた配線や電気回路等を記録することができる。また、微細化により、従来の粒子同士の物理的且つ確率的な接触による導電経路の形成から、原子的に結合した金属膜により導電経路を形成することができるため、バルクの比抵抗に近い導電性が得られる。
なお、貴金属の具体例としては、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。金属微粒子は、粉砕等で微粒子化したものでもよいが、(i)高分子分散樹脂を含有する溶剤に金属化合物を溶解させて得られた溶液中において、又は(ii)金属化合物を溶剤に溶解した後に高分子分散樹脂を添加して得られた溶液中において、金属化合物を金属に還元して調製された金属のコロイド溶液であることが好ましい。なお、金属化合物の具体例としては、塩化金酸、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。
[導電性樹脂分散インク]
画素枠内の微粒子浸透層には、導電性樹脂分散インクで、インクジェット記録を行うことにより、有機EL素子の正孔輸送層のパターン記録を行うことができる。導電性樹脂分散インクは導電性の水性高分子樹脂粒子を前述した溶媒で分散して構成されている。水性高分子の材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、およびポリ(4−スチレンスロフォン酸)があげられる。さらに、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリ(p−フォエニレンビニリデン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体が挙げられる。
低分子の正孔輸送材料の場合は、高分子バインダーに分散せて用いてもよい。また高分子バインダーとしては電荷輸送を極度に阻害しないものであればよく、たとえば、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等があげられる。この中でも、有機EL材料の正孔輸送層を形成するには、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、およびポリ(4−スチレンスロフォン酸)を混合して用いることが好ましい。
[絶縁性微粒子インク]
尚、導電性微粒子インクで画素枠内の微粒子浸透層に導電性微粒子膜のパターン電極画像を記録した後に、機能性微粒子膜の外周やその表面を絶縁性微粒子インクで記録して、絶縁性微粒子を導電性微粒子膜に堆積して、パターン電極に絶縁膜を形成することができる。このようにすることで、加熱処理での空隙消滅に伴う微粒子浸透層の膜厚減少を防止することができる。あるいは、絶縁性微粒子インクで電極画像以外の部分を記録する絶縁膜強化工程を設けてもよい。予め絶縁性微粒子インクで少なくともパターン電極外周を記録し、絶縁性微粒子で微粒子浸透層の空隙を先埋めし、絶縁性微粒子を堆積させてから、導電性微粒子インクでパターン電極内にインクジェット記録してもよい。
パターン電極画像周囲の微粒子浸透層の空隙構造を絶縁性微粒子で先埋めしておくことで、導電性微粒子インク記録時に導電性微粒子が絶縁性微粒子で埋められた枠からはみ出し難くなり、にじみの少ない精細なパターン電極画像を形成することも可能となる。導電性微粒子インクを各々の枠の中へ着弾させた場合、導電性微粒子インクの液滴が若干絶縁性微粒子の枠上にはみ出して着弾したとしても、絶縁性微粒子で格子状に空隙を埋められた枠よりも、微粒子浸透層底部の界面が絶縁性微粒子で埋められていない枠内の部分へ導電性微粒子インクを流れ込ませ易くなるので、後続の導電性微粒子は枠内の界面で固液分離して薄膜稠密に圧縮堆積され易い。
このような絶縁性微粒子としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂溶液、微粒子分散液等種々の樹脂や微粒子を挙げることができる。例えば、樹脂成分は、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン変性ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、BTレジン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂などがあるが、特に制限するものではない。また、耐熱性と優れた光透過性を獲得できるという点で、微粒子分散液を採用することもできる。微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アクリル樹脂、有機シリコン樹脂、ポリスチレン、尿素樹脂、ホルムアルデヒド縮合物などの微粒子が挙げられる。
[第三の機能性インク]
第三の機能性インクは、機能性材料が溶媒に溶解している溶液系のインクである。従って、微粒子浸透層に空隙が存在する場合は、空隙の内部までインクが浸透する。このような第三の機能性インクとしては有機発光インクや樹脂溶解インクが挙げられる。
[有機発光インク]
有機発光インクは、有機EL素子の有機発光層を形成するのに最適である。画素枠内に第二の機能性微粒子膜を形成し、加熱処理して画素枠内の空隙が消滅した第二の機能性微粒子保持膜の表面に、有機発光インクでインクジェット記録を行うことで、有機発光層パターンを形成する。有機発光インクは、蛍光およびりん光を発光する有機物の発行材料を溶媒成分に溶解したものである。具体的には、発光材料としては、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、等を挙げることができる。
[樹脂溶解インク]
樹脂溶解インクは、溶媒吸収層の空隙を消滅させる場合に有効なインクである。画素枠内に第二の機能性微粒子膜を形成した後、加熱処理の前に、第二の機能性微粒子膜の表面に樹脂溶解インクで記録すると、樹脂溶解インクは、第二の機能性微粒子膜の微小な空隙を介して、溶媒吸収層までインクが浸透し溶媒吸収層の内部に浸透する。その後、溶媒成分を乾燥することにより、溶媒吸収層の空隙構造は維持したまま、樹脂が膜化することで溶媒吸収層の空隙が消滅する。このような樹脂溶解インクは、水溶性の樹脂を溶媒成分に溶解したものである。樹脂成分としては、低分子材料で、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、などが挙げられる。
[各インクの物性]
本発明においては、インクジェット記録用のインクの表面張力や粘度が適切に制御される。このようなインクの粘度ηは、1.5〜10.0mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは、1.6〜5.0mPa・s、特に好ましくは1.7〜3.5mPa・sである。一方、インクの表面張力γは、25〜45mN/mであることが好ましい。すなわち、インクの表面張力や粘度は、着弾した機能性微粒子分散インクが微粒子浸透層の表面に接した後、速やかに微粒子浸透層1600に吸収されるように、かつ毛細管力が顔料浸透層よりも格段に高くなるように構成された溶媒吸収層側に、溶媒成分のみが速やかに吸収されように制御すればよい。また、インクの粘度を上記の範囲に適切に調整することによりインクの吐出時におけるインクの流動性が向上し、ノズルへのインク供給性、ひいてはインクの吐出安定性も向上する。
また、インクの表面張力を上記の範囲に調整することにより、インクを吐出時に吐出口のメニスカスを維持することができる。尚、微粒子浸透層の表面にまだら状に接着剤を設けた場合でも、上述した範囲内にインクの表面張力や粘度制御することで、記録材の記録面に着弾したインクの一部が接着剤からはみ出してインク受容層の露出部に垂れ込む場合に、接着剤表面においてインクが千切れないように制御することができる。
[各インクの濃度]
本実施形態において、インク中の機能性微粒子の濃度は特に規定はされない。但し、好ましくは0.5%以上10%以下、より好ましくは1%以上5%以下である。濃度をこのような範囲とすることにより、各インクが有する機能とインクジェット記録適性とを両立させることができる。
尚、微粒子浸透層内の空隙を機能性材料でほぼ全て収納するためには、微粒子浸透層の空隙容量に対応させて濃度を厳密に制御する必要がある。すなわち、機能性微粒子が微粒子浸透層の空隙を満たして機能性材料があふれ出す程度に濃度をできる限り高くすることが好ましい。つまり、微粒子浸透層内で機能性材料を全て受容できるように、濃度や記録密度に応じて、微粒子浸透層の空隙容量を調整すればよい。
さらに、本発明の記録材では、厚膜の溶媒吸収層で全ての溶媒成分を吸収できるように構成することが可能なので、低濃度の機能性微粒子分散インクを重ね記録することで、画像の視認性を確保しながらインクジェット記録適性をさらに向上させることができる。すなわちインク濃度を上述した範囲に制御することにより、インクの粘度を最適に制御して、インクの吐出時におけるインクの流動性を向上させて、記録ヘッドのノズルへのインク供給性、延いてはインクの吐出安定性を向上させることができる。
[インクジェット記録装置]
インクジェット記録方装置は、記録ヘッドに形成された複数のノズルから、記録材の記録面に対して、機能性微粒子分散インク滴および機能性インク滴を吐出して画像を記録する装置である。インクジェット記録方式の種類は特に限定されず、サーマルインクジェット方式やピエゾ方式のどちらも使用することができる。インクジェット記録装置は、記録ヘッドを本発明の微粒子浸透層表面に接触させる必要が無く、極めて良好で安定した画像を記録することができる。シリアルスキャン方式においては、記録ヘッドから吐出するインク滴を小さくして高品位な画像を容易に記録することができる。
また、シリアルスキャン方式において、同一の記録領域に対して複数回の記録ヘッドの走査によって所定の時間差をもって各インクを複数回着弾(分割重複走査)させた場合にも、各インクの蒸発速度に比べて空隙吸収型の微粒子浸透層のインク吸収速度が十分に速いため、微粒子浸透層の表面にインクが残留しにくい。一方、フルライン方式の場合には、吐出口の配列方向と交差(例えば、直交)する方向に、記録材を連続的に搬送しつつ、マルチノズルヘッドからインクを吐出することによって、高解像度で高品位な画像を高速に記録することができる。
[画素枠形成装置]
図12(a)、(b)は、本実施例で用いた光照射装置を示した図である。本発明において、光照射は、レーザー光照射装置あるいはフラッシュ露光装置を用いて行うことができる。レーザー光照射は、図12(a)に示すように、レーザー光線がスコープ13で微粒子浸透層1600の下部の第一の機能性微粒子膜と同じ形状に絞られ、集光レンズ14で集光されて第一の機能性微粒子膜に照射される。フラッシュ露光は、フラッシュ露光装置により、行うことができる。図12(b)に示すように、フラッシュランプ7は、円弧状ランプが用いられ、対応する反射鏡9もの扇形とされたものが用いられている。これにより、フラッシュランプ7で発光した光は、反射鏡9によって光の方向が制御され、第一の機能性微粒子膜に均一な照度となるように一方向から記録表面全体を照明する。
[加熱処理装置]
本発明においては、図3(d−1)に示すように、画素枠内の微粒子浸透層に第二の機能性微粒子分散インクで、パターン記録を行った後、微粒子浸透層1600を加熱処理することにより、微粒子浸透層1600が、薄膜の微粒子浸透層底部形成された第二の機能性微粒子膜を包みこむように溶融膜化することで、機能性微粒子保持膜を形成し、長期間に亘って安定した機能を維持することができる。本発明の記録材1は、記録材の溶媒吸収層側もしくは支持体側から、手動操作の加熱アイロンなどで走査したり、加熱ファン、加熱ベルトで、微粒子浸透層に十分な熱を加えてもよいし、公知のヒートローラ等を利用して加熱圧着してもよい。
[支持体と記録材との貼り合せ]
また、本発明においては、支持体55に、画素枠および画素枠内に記録した機能性材料のパターン記録画像を転写することができる。支持体55は特に制限されない。例えば、透明な樹脂フィルム、ガラスなどの種々の透明な支持体の材質が好ましい。支持体55の転写面と、パターン記録された本発明の記録材の記録面とを位置あわせをして重ね合わせた上で、加圧加熱装置により画素枠内の微粒子浸透層1600が機能性材料を包み込むように熔融膜化することで機能材料のパターン画像を支持体55に転写することができる。また、画素枠の微粒子浸透層は、加圧加熱装置により再度溶融膜化することで、支持体55に接着転写する。必要に応じて記録材上のパターン電極画像の記録時に同時に位置合わせ用マーキング画像を記録しておき、支持体55の転写位置と高精度に位置合わせしながら重ね合わせてもよい。
[加圧加熱転写装置]
加圧加熱装置としては、本発明の記録材1は、記録材の溶媒吸収層側もしくは支持体側から、手動操作の加熱アイロンなどで走査することで、微粒子浸透層1600に十分な圧と十分な熱を加えて支持体に加熱圧着することもできる。転写物の生産性を高めるために、公知のヒートローラ、加熱ファン、加熱ベルト、熱転写ヘッド等を利用してもよい。
[ヒートローラによる加熱圧着]
本発明においては、所定の熱や圧力を加えて微粒子浸透層を熔融膜化するので、上記の加熱圧着方法の中でも、加圧加熱の均一性の観点から、ヒートローラと加圧ローラとを併用した構成を用いて加熱圧着することが好ましい。本発明においては、画素枠が形成された記録材の画素枠内の微粒子浸透層に機能性材料インクでパターン画像を形成した後、支持体と合わせて、加熱したヒートローラと加圧ローラとの間を通して搬送することにより、画素枠内の微粒子浸透層を熔融膜化、さらに画素枠の微粒子浸透層を再度溶融膜化して接着転写することができる。尚、微粒子浸透層を熔融膜化する際、加熱圧着後にも溶媒吸収層受容層の空隙構造が維持されるように、加熱圧着時の熱や圧力を制御することが重要である。
図6に示すように、ヒートローラ21と加圧ローラ22とによって加圧加熱されることにより、画素枠内の微粒子浸透層は、機能性材料を包み込むように熔融膜化して機能性材料保持膜を形成して支持体に接着転写されるが、溶媒吸収層に吸収された機能性材料インクの溶媒成分は空隙構造に保持されたままである。加熱圧着によっても、溶媒吸収層が空隙構造を維持することにより、溶媒成分が微粒子浸透層に染み出して接着阻害を引き起こすことを防止することができる。また、空隙構造を維持することにより、加熱圧着時の熱や圧力によって溶媒成分が溶媒吸収層の空隙内で突沸して蒸気が発生したとしても、各々の空隙内に蒸気を封じ込めることができる。よって、機能性材料保持膜内や支持体の転写面との間に空気層などが形成されにくいために、機能性材料保持膜を支持体に良好に接着転写することができる。
加熱圧着の温度は、微粒子浸透層が熔融膜化する温度以上になるように制御する。こうすることで、微粒子浸透層が機能性材料を包み込むように溶融膜化することで、機能性材料を完全に固定化することができ、強固な機能性材料保持膜を形成して支持体に接着転写することが可能になるまた、加圧加熱温度は、溶媒吸収層の空隙構造を必要以上に潰すことなく、加圧加熱後も空隙構造を維持するように制御することも重要である。また、溶媒吸収層が保持している機能性材料インクの溶媒成分が個々の空隙内で突沸や蒸発しないように構成することで、蒸発熱による加熱効率低下を防止することができるので、特に水の沸点以下で転写させることが好ましい。
本発明者らの検討では、加熱圧着の圧力は、4.9N/cm2以上かつ68.6N/cm2以下とすることが好ましい。加熱圧着の圧力を4.9N/cm2以上とすることにより、微粒子浸透層が機能性材料を包み込むように溶融膜化することで、機能性材料を完全に固定化することができ、強固な機能性材料保持膜とすることが可能になる。一方、加熱圧着の圧力を68.6N/cm2以下とすることにより、溶媒吸収層の空隙構造を必要以上に潰すことなく空隙を維持し、インクの液体成分である不揮発性溶剤が表面に染み出すことを防止して、支持体55への機能性材料保持膜の良好な接着転写を実現することができる。
ヒートローラ21として、加熱源を内蔵した金属筒の表面に、耐熱性と離型性とに優れたフッ素樹脂層を設けて構成することが好ましいが、さらに所望の加熱圧接幅を得るための弾性層としてフッ素ゴム層などを積層してもよい。また、ヒートローラ21の機能を、加熱部材としての平板状のセラミックヒータと、伝熱搬送部材としてのポリイミド等の耐熱性フィルムの表面にフッ素樹脂層やフッ素ゴム層などの耐熱離型層とを設けたフィルム型加熱圧着搬送体を用いてもよい。また加圧ローラ22としては、シリコンローラを使用することが好ましい。シリコンローラは、離型機能を有しているため、微粒子浸透層の表面が加圧ローラ22に直接接触した場合でも、微粒子浸透層の表面が加圧ローラ22に接着し難くなる。シリコンローラの表面に、さらに離型性に優れたフッ素樹脂表面を積層させるなど、離型性と加圧加熱性に優れた構成としてもよい。
記録材1を支持体55に転写して、基材を剥離する具体的な装置としては、ダイニック社製のD−10や、フジテックス社製のLPD3223 CLIVIA等の公知のラミネータを使用することができる。ラミネータとしては、一対のヒートローラ21、加圧ローラ22を備えており、それらのローラ間を支持体と記録材とが通過する際に、記録材の微粒子浸透層が支持体に加熱圧着されるものであればよい。
[溶媒吸収層除去装置]
厚膜の溶媒吸収層は、接着転写工程の後に、剥離ローラ等で所定の剥離角度を与えることで剥離除去することができるが、さらに離型層を設けて剥がし易くしてもよい。搬送性などを向上させるために基材上に溶媒吸収層を設けた場合には、より高い張力で剥離角度を与え易くなるので、基材50と一緒に溶媒吸収層1601を剥離除去し易くすることができる。すなわち支持体55に対して所定の剥離角度を与えて溶媒吸収層を角度剥離する際に、空隙構造を維持した溶媒吸収層に大きな剥離張力を加えると伸び易い場合もある。そのため、伸縮しにくい基材50を溶媒吸収層1601に密着させて併用するとともに、基材に剥離張力を加えるようにすることで安定した角度剥離ができる。
[インクジェット記録・転写・剥離除去の一体型製造装置]
図10(a)、(b)は、本発明の記録物を製造する一体型の製造装置を示した図である。記録物を製造する製造装置は、図10(a)に示すように、記録材1を送り出す供給部2008と、インクジェット記録方式により第一の機能性微粒子分散インクあるいは第4の機能性微粒子分散インクで画素枠パターン画像を記録するインクジェット記録部2017と、画素枠のパターン画像にレーザー光を照射するレーザー光照射部2018と、を備えている。更に製造装置は、インクジェット記録方式により第二の機能性微粒子分散インクで画素枠内に機能材料パターンを記録する記録部2019と、画素枠内の微粒子浸透層を熔融膜化する加熱処理部2021と、インクジェット記録方式により第三の機能性微粒子分散インクで画素枠内に機能材料パターンを記録する記録部2022とを備えている。
更に製造装置は、支持体55を供給する供給部2010と、供給された支持体を記録材と重ね合わせる位置合わせ部2011と、支持体55と記録材1とを加圧加熱する加圧加熱部2012と、溶媒吸収層と一緒に基材を剥離する剥離除去部2013と、を備えている。更に製造装置は、剥離した溶媒吸収層1601と基材50とを収納する溶媒吸収層回収部2015と、転写物を排出して集積する排出部2016と、を備え、これらを全て一体型的に構成した製造装置で記録物を製造する。
あるいは図10(b)のように、画素枠のパターン画像にレーザー光を照射するレーザー光照射部2018の代わりにフラッシュ露光を行う、フラッシュ露光部2023を設けてもよい。また、インクジェット記録装置、支持体重ね合わせ装置、加圧加熱転写装置と、溶媒吸収層除去装置など、各々の生産性に合わせて最適化するために、各々分離させてもよい。
[記録物の作製例]
[実施例]
本発明の記録材には、空隙が除去されてインクが浸透しない画素枠が形成されているため、画素枠内にパターン記録された機能性インクは、画素枠を浸透して隣接する画素に滲み出すことがないため、高濃度でにじみのない高精度の機能性材料を画素枠ごとにパターン形成した記録物を得ることができる。以下に本発明の記録材1を用いた記録物について、例を挙げて説明する。
[基材]
基材50として、PET基材(商品名「テトロンG2」厚さ25μ 帝人デュポンフィルム株式会社)を用いる。
[水溶性樹脂溶液の調整]
ポリビニルアルコール(商品名「PVA235」、クラレ製)をイオン交換水に溶解して固形分8%の水溶性樹脂溶液を得た。
[溶媒吸収層塗工液の調整]
シリカ分散液(商品名「スノーテックス0」固形分 20% 平均粒子径10nm 日産化学工業社製)を100部と水溶性樹脂を27.8部加えてスタティックミキサで混合して溶媒吸収層塗工液を得た。
[微粒子浸透層塗工液の調整]
第1のガラス製反応容器に攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素ガス導入管を備えつけた後、ノニオン系乳化剤としてアクアロンRN−30(第1工業製薬(株)製)6g、アニオン系乳化剤アクアロンHS−30(第1工業製薬(株)製)6g、メチルメタアクリレート100.0g、エチルアクリレート20.0g、2−ヒドロキシルエチルアクリレート10.0g、メタクリル酸5.0gを用い、水275gを入れ攪拌し総量422.0gの混合物を調整する。次にこの混合物の36gを取り出し、同様の第2の反応容器に移した後、窒素ガス導入下73℃で40分間乳化を行う。次いで重合開始剤としてペルオキソニ硫酸アンモニウム17gを水36gに溶解し、乳化液に添加する。その後、混合物の残量を第1の反応容器より取り出し100分間かけて、第2の反応容器内に徐々に滴下し、73℃で重合を行う。混合物残量を滴下終了した後、73℃で80分間攪拌を継続し、エマルジョン水溶液(Tg:78℃、樹脂固形分35.0%)を合成する。この分散粒子の平均1次粒径は120nmであった。次に、エマルジョン水溶液を100部と水溶性樹脂溶液を23.75部加え、スタティックミキサにより混合し微粒子浸透層塗工液を得る。
[離型層形成用塗布液]
離型剤として中京油脂社製のポリロン788を用いる。
[第一の機能性微粒子分散インク、黒顔料インク]
レーザー吸収インクとしては、キヤノンファインテック製の黒顔料インクを用いた。この顔料インクの平均粒子径は90nmであった。
[第四の機能性微粒子分散インクの調整、画素枠補強インク]
第四の機能性微粒子分散インクとしては、アクリルエマルションとして、AN-1170(DIC社製 Tg60℃)を用いた。この分散液を、溶液と混合してビーズミルにて撹拌して、粒子径80nmの画素枠補強インクを調整する。
[第二の機能性微粒子分散インク、RGBカラー顔料インクの調整]
機能性粒子としては、赤色の顔料粒子としてCF AQ−023(御国色素製、顔料分散液)、青色の顔料粒子としてCF AQ−110(御国色素製、顔料分散液)、緑色の顔料粒子として、CF AQ−016(御国色素製、顔料分散液)を用いる。この分散液を、溶媒と混合して、ビーズミルにて撹拌することで、平均粒子径は、赤色顔料インクは50nm、青色顔料インクは52nm、緑色顔料インクは53nmのRGBカラー顔料分散機インクを調整する。
[第二の機能性微粒子分散インク、導電性粒子分散インクの調整]
容量1Lの容器中でITO粉(三井金属鉱業社製、一次粒子の平均粒径20nm)180gと溶媒としての純水378gを混合し、さらに表面張力調整剤として2−n−ブトキシエタノール42gを添加したものを、ビーズミルにより、湿式解砕処理を行いスラリーを得た。次に、スラリー中へジルコニア系カップリング剤(松本純薬工業社製ZB120)120.8gを添加し、さらに湿式メディアミル(メデイア:φ0.8mmジルコニアビーズ)により、湿式解砕処理を行いスラリーを得た。これを溶媒と混合して、粒子径45nmの導電性粒子分散インクを得た。
[第二の機能性微粒子分散インク、導電性高分子分散インク]
機能性インクの機能性材料としては、PEDOT/PSS水溶液(Clevious P VP CH8000,H.C.STARC社製)を用いた。この分散液を溶液と混合して、粒子径40nmの導電性高分子分散インクを調整する。
[第二の機能性微粒子分散インク、絶縁微粒子インクの調整]
絶縁性樹脂微粒子として、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−865:大日本インキ化学工業株式会社)とアミノトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(LA−3018−50P:大日本インキ化学工業株式会社の固形物のみを使用)を用いて、これを溶媒と混合して粒子径55nmの絶縁微粒子インクを得た。
[第三の機能性インク、有機発光インク]
機能性インクの機能性材料としては、赤色発光材料にはシアノポリフェニレンビニレン、緑色発光材料にはポリフェニレンビニレン、青色発光材料にはポリフェニレンビニレンおよびポリアルキルフェニレン(いずれもケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジー社製)を使用した。有機EL材料は液状であって、これを溶媒と混合して溶液系の有機発光インクを調整する。
[第三の機能性インク、樹脂溶解インクの調整]
サンハヤト株式会社製のハヤコートマーク2EFを溶媒と混合して溶解させて、溶液系の樹脂溶解インクとして用いる。
[実施例1]カラーフィルタの製造
[記録材の調整]
図13(a)から(f)は、本発明の記録材1を用いたカラーフィルタの製造方法を示す図である。基材上に溶媒吸収層塗布液を塗工してから乾燥させることにより、基材50上に溶媒吸収層1601を形成する。次に溶媒吸収層1601の表面に離型層形成用塗布液を塗布してから、乾燥させることにより、基材50上に溶媒吸収層1601と離型層1701とを積層する。さらに、この離型層1701の表面に微粒子浸透層塗工液を塗布することにより、基材50上に溶媒吸収層1601と離型層1701と微粒子浸透層1600を形成した記録材1を作製する(図13(a))。
それぞれの乾燥後の塗工量は、溶媒吸収層が40g/m2、離型層が0.5g/m2、微粒子浸透層が2g/m2であり、塗工にはグラビアコータを用いて、塗工速度は5m/分、乾燥温度は60℃とした。尚、記録材1の微粒子浸透層1600のおよび溶媒吸収層1601の細孔直径をBET法により測定した。溶媒吸収層1601の細孔直径は10nmで、微粒子浸透層1600の空隙は120nmであった。
[画素枠の形成]
記録材1の微粒子浸透層面側から、図10(a)に示した記録材1の製造装置により、第一の機能性微粒子分散インクとして黒色顔料インクを吐出することで、画素枠のパターン記録を行う。このとき黒顔料インクは、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601の界面で固液分離して、黒顔料粒子は、微粒子浸透層1600の底部に薄膜稠密に堆積して、機能性微粒子膜1603を形成した。一方の溶媒成分1607は、溶媒吸収層1601に吸収された(図13(b))。その後、画素枠部分にレーザー光照射装置を用いて、レーザー照射を行うことで、画素枠パターンが形成されている部分の黒色顔料粒子膜が、レーザー光を吸収して発熱することで、黒色顔料粒子膜の上部の微粒子浸透層1600が溶融膜化して、その空隙が消滅し、記録材1に画素枠3000を形成した(図13(c))。インクジェット画像記録装置としてはピエゾ方式のインクジェット記録装置を用いる。
[カラーフィルタ転写物の調整]
記録材1の画素枠内の微粒子浸透層3001に、インクジェット記録装置により、機能性微粒子分散インクとして、RGB顔料分散インクを吐出することで、機能性材料のパターン記録を行う。記録は画素ごとに、赤色、青色、緑色のパターン記録を行った。インクジェット記録装置としてはピエゾ方式のインクジェット記録装置を用いた。このとき、図13(d)に示すように、機能性微粒子分散インクの赤色顔料粒子インク、青色顔料粒子インク、緑色顔料粒子インクは、微粒子浸透層3001と溶媒吸収層1601との界面で固液分離して、赤色顔料粒子、青色顔料粒子、緑色の顔料粒子は、微粒子浸透層3001の底部に薄膜稠密に高濃度で堆積して第二の機能性微粒子膜3002を形成する。一方、顔料粒子インクの溶媒成分1607は、溶媒吸収層1601に吸収される。
また、画素枠3000の空隙は消滅しているため、各々インクは、画素枠3000に浸透して隣接する画素へ流出することはなく、にじみがなく高精細な機能性材料のパターンを高濃度で形成することができる。また、画素枠3000の底部に形成された第一の機能性微粒子膜としての黒色粒子膜1603は、画素枠内のカラー粒子膜3002のブラックマトリックスとして機能する。
その後、この記録材1の微粒子浸透層1600を支持体55であるガラス表面に微粒子浸透層1600を合わせて、ヒートローラと加圧ローラにより加圧加熱して接着転写させる(図13(e))。このとき画素枠内の微粒子浸透層3001は、加圧加熱で溶融膜化して、機能性材料の顔料粒子を包み込むように溶融膜化するとともに、強固な顔料保持膜1650を形成してガラス基板と接着する。一方、画素枠の微粒子浸透層1600は、加熱圧着により、再度溶融膜化してガラス基板と接着する。その後、基材50とインクの溶媒成分1607のほぼすべてを含んだ溶媒吸収層1601とを、剥離層1701を介して剥離することによりカラーフィルタ転写物を得た。
以上から、顔料保持膜は、空隙構造が消滅していることで、耐候性に優れた顔料粒子が顔料粒子各々を包み込んでしっかりと保持されていることから、長期保存性に優れるカラーフィルタ転写物を得ることができた。また、加圧加熱による接着転写工程の後に、空隙構造を維持して溶媒成分を大量に吸収している厚膜の溶媒吸収層を除去することで、不要な溶媒成分や厚膜の溶媒吸収層によるヘイズ劣化が大幅に改善されるので、高精細で光透過吸収特性に優れたカラーフィルタ転写物が得られる。
[実施例2]電極形成
[記録材の調整]
[溶媒吸収層]
図14(a)から(g)は、本発明の記録材1を用いた電極パッドの製造方法を示す図である。記録材1における溶媒吸収層1601としては、セルロースナノファイバーシートの多孔質フィルム(王子ホールディングス製の厚さ40μ、平均細孔直径16μm)を用いた。この溶媒吸収層1601の表面に微粒子浸透層塗工液を塗布することにより、溶媒吸収層1601と離型層1701と微粒子浸透層1600とを形成した記録材1を作製した(図14(a))。それぞれの乾燥後の塗工量は、微粒子浸透層が2g/m2であり、塗工にはグラビアコータを用いて、塗工速度は5m/分、乾燥温度は60℃とした。尚、記録材1の微粒子浸透層1600の空隙および溶媒吸収層1601の細孔直径をBET法により測定した。その結果、溶媒吸収層1601の細孔直径は20nmで、微粒子浸透層1600の空隙は120nmであった。
[画素枠の形成]
記録材1にインクジェット記録装置で画素枠パターンを記録した状態を図14(b)に、その後、記録した画素枠パターンにレーザー照射を行い、画素枠3000を形成した状態を図14(c)に示す。
[電極形成]
画素枠3000を形成した記録材1の画素枠内に、図10(a)に示したインクジェット記録装置により、第二の機能性微粒子分散インクとして、導電性微粒子インクを吐出して電極パターン記録を行う。このとき図14(d)に示すように、導電性微粒子インクは、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面で固液分離して、導電性粒子は、微粒子浸透層1600の底部に薄膜稠密に高濃度で堆積して導電性微粒子膜3002を形成する。一方、導電性微粒子インクの溶媒成分1607は、溶媒吸収層1601に吸収される。また、画素枠3000における微粒子浸透層1600の空隙は消滅しているため、各々インクは画素枠3000に浸透して隣接する画素へ流出することはなかった。よって、にじみがなく高精細な電極パターンを高濃度で形成することができる。このとき画素枠内の一部分において導電性微粒子インクで複数回重ね打ちし、微粒子浸透層1600の上部から導電性粒子が露出するまで、導電性粒子を積み上げてポスト部3030を形成する(図14(d))。
次に、図14(e)に示すように、画素枠内の微粒子浸透層の導電性微粒子膜の外周やその表面(ポスト部以外)および画素枠内の導電性微粒子で記録していない非記録部を、絶縁性微粒子インクで記録する。導電性微粒子膜の上部の微粒子浸透層1600に着弾した絶縁性微粒子インクは、導電性微粒子膜3002との界面で固液分離して、導電性微粒子膜3002の上部に絶縁性微粒子が稠密に堆積して絶縁性微粒子膜3031を形成する。一方、絶縁性微粒子インクの溶媒成分1607は、導電性微粒子膜に微小に存在する空隙を介して溶媒吸収層1601に浸透する。
また、非記録部の微粒子浸透層1600に着弾した絶縁性微粒子インクは、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面で固液分離して、絶縁性粒子は、微粒子浸透層1600の底部に薄膜稠密に高濃度で堆積して絶縁性粒子膜を形成する。一方、非記録部の微粒子浸透層1600に着弾した絶縁性微粒子インク溶媒成分は溶媒吸収層1601に吸収される。このとき、絶縁性微粒子で微粒子浸透層の空隙を満たすようにした。また、画素枠3000の微粒子浸透層の空隙は消滅しているため、各々インクは、画素枠に浸透して隣接する画素へ流出することはなく、にじみがなく高精細な電極パターンを高濃度で形成することができる。
ただし、導電性微粒子の超微粒子は、溶媒吸収層1601の空隙よりも小さいため、溶媒吸収層1601の内部までに浸透して、溶媒吸収層側の絶縁性が低下し漏れ電流が発生する場合がある。また溶媒吸収層1601には、空隙が残存しているため、溶媒吸収層1601が吸水、吸湿することで漏れ電流が発生する場合がある。
そこで、図14(f)に示すように、樹脂溶解インク2020で画素枠内の微粒子浸透層にパターン記録を行った。樹脂溶解インクは溶液系であるため、絶縁性微粒子膜の微小空隙、導電性微粒子膜の微小空隙を介して溶媒吸収層に吸収される。このとき、先に吸収された、導電性微粒子インクの溶媒成分1607は、溶媒吸収層1601の界面から押し出され、導電性微粒子膜の周囲には絶縁性の樹脂溶解インク2020で絶縁膜が半球状に形成される。樹脂溶解インクの浸透拡散の拡がり方に応じて、導電性微粒子の超微粉を含む導電性のインク溶媒1607は、樹脂溶解インク2020によって押し出され、パターン電極(導電性微粒子膜)3002の周囲には、超微粉を含む溶媒成分1607は存在しなくなった。
さらに図14(g)に示すように、加圧加熱により乾燥することで、溶媒吸収層1601に浸透した樹脂溶解インク2020の揮発性溶媒成分が蒸発し、樹脂溶解インク2020の樹脂成分2039が残る状態となる。このように、溶媒吸収層1601に樹脂成分2039が残ることによって、溶媒吸収層1601自体の空隙構造は維持しながら(溶融膜化することなく)、導電性微粒子膜3002の周囲の溶媒吸収層1601において空隙構造を(樹脂成分2039によって)消滅することができた。また、加圧加熱により、微粒子浸透層1600も絶縁性微粒子3031や、導電性微粒子膜3002を包み込むように溶融膜化して微粒子浸透層1600の空隙を消滅させた。
以上のように作製したパターン電極は、優れた通電特性を示し、パターン電極の表裏の空隙構造が消滅して絶縁性保護膜を形成できるので、液体、気体の侵入が少なく、長期間の信頼性に優れている。また、ポスト部3030には、電気素子差込口の穿孔処理や、半田浴を行うことで種々の電気素子と接続することができる。
[実施例3]TFT電極形成
[画素枠3の調整]
図15(a)から(f)は、本発明の記録材1を用いた画素電極の製造方法を示す図である。記録材1の微粒子浸透層面側から、図10(a)に示したインクジェット記録装置により、第一の機能性微粒子分散インクとして、黒色顔料インクを吐出することで、画素枠のパターン記録を行う。このとき黒色顔料インクは、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面で固液分離して、黒顔料粒子が微粒子浸透層1600の底部に薄膜稠密に堆積して機能性微粒子膜1603を形成する。一方、黒色顔料インクの溶媒成分1607は、溶媒吸収層1601に吸収される(図15(b))。
その後、画素枠部分にフラッシュ定着装置を用いて、フラッシュ露光することによって、画素枠パターンが形成されている部分の黒色顔料粒子膜1603が発熱して、黒色顔料粒子膜1603の上部の微粒子浸透層1600が溶融膜化する。微粒子浸透層1600が溶融膜化することによって空隙が消滅して、記録材1に画素枠3000を形成する(図15(c))。インクジェット記録装置としてはピエゾ方式のインクジェット記録装置を用いた。
[TFT電極の調整]
[下部の駆動用TFT電極および下部の選択用TFT電極の調整]
その後、画素枠形成後の記録材1の画素枠内に、インクジェット記録装置により第二の機能性微粒子分散インクとして導電性微粒子インクを用いて、画素枠内に電極パターン記録を行う。このとき導電性微粒子インクは、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面で固液分離して、導電性微粒子は、微粒子浸透層1600の底部に薄膜稠密に高濃度で堆積して導電性微粒子膜3002を形成する。一方、導電性微粒子インクの溶媒成分1607は、溶媒吸収層1601に吸収される(図15(d))。
また、画素枠3000の空隙が消滅しているため、導電性微粒子インクは、画素枠3000に浸透して隣接する画素へ流出することはなく、にじみがなく高精細な電極パターンを高濃度で形成することができる。その後、記録材1の微粒子浸透層1600を支持体55であるガラス表面に合わせて、ヒートローラと加圧ローラとにより加圧加熱して接着転写する(図15(e))。その後、基材50とインクの溶媒成分のほぼすべてを含んだ溶媒吸収層1601とを、剥離層1701を介して剥離することにより転写物を得る(図15(f))。
このとき画素枠内の微粒子浸透層3001は、加圧加熱で溶融膜化して、導電性粒子を包み込むように溶融膜化するとともにガラス基板と接着する。さらに転写後の基材50と溶媒吸収層1601とを剥離した、熔融膜化した微粒子浸透層1650の表面には、下部駆動用TFT電極3040および下部選択用TFT電極3041の導電性粒子が露出した状態となる。一方、画素枠内の微粒子浸透層3001は、加熱圧着により、再度溶融膜化してガラス基板と接着する。
[上部の駆動用TFT電極および上部の選択用TFT電極の調整]
図16(g)から(l)は、本発明の記録材1を用いた画素電極の製造方法を示す図である。その後、別の画素枠形成後の記録材1の画素枠内に、インクジェット記録装置により、導電性微粒子インクを吐出することで、電極パターン記録を行う(図16(g))。このとき、一部分を導電性微粒子インクで複数回重ね打ちを行い、微粒子浸透層1600から導電性粒子が露出するまで、導電性粒子を積み上げるように導電性微粒子膜のポスト部3030を形成する。その後、この記録材のポスト部3030と、下部駆動用TFT電極3040とを位置合わせして重ね合わせて、ヒートローラと加圧ローラとにより加圧加熱して、微粒子浸透層溶融膜化することで接着転写する(図16(h))。その後、基材50と、インクの溶媒成分のほぼすべてを含んだ溶媒吸収層1601とを、剥離層1701を介して剥離することにより転写物を得る(図16(i))。
このとき熔融膜化し微粒子浸透層1650の表面には、上部駆動用TFT電極3042および上部選択用TFT電極3043の導電性粒子が露出した状態である。このポスト部分3030と、下部の駆動用TFT電極3040とを重ね合わせて転写することで、下部駆動用TFT電極3040と上部選択用TFT電極3043を接続する貫通したポスト部3030となる。また微粒子浸透層は溶融膜化することで、下部駆動用TFT電極3040および下部選択用電極のゲート絶縁膜1650として作用する。
[画素電極の形成]
さらに、別の画素枠形成後の記録材1の画素枠内に、インクジェット記録装置により、導電性微粒子インクを吐出することで、画素枠内に、電極パターン記録を行った(図16(j))。このとき、一部分を導電性微粒子インクで複数回重ね打ちを行い、微粒子浸透層から導電性粒子が露出するまで、導電性粒子を積み上げるように、導電性微粒子膜のポスト部3030を形成する。その後、この記録材1のポスト部3030を、上部駆動用TFT電極3042と位置合わせして重ね合わせて、ヒートローラと加圧ローラとにより加圧加熱して、微粒子浸透層を溶融膜化することで接着転写する(図16(k))。その後、基材50、インクの溶媒成分のほぼすべてを含んだ溶媒吸収層1601を、剥離層1701を介して剥離することにより転写物を得る(図16(l))。
このとき転写後の基材50と溶媒吸収層1601とを剥離した、熔融膜化した微粒子浸透層1650の表面には、画素電極3044の導電性粒子が露出した状態である。このポスト部分3030は、上部駆動用TFT電極3042と重ね合わせて転写することで、上部駆動用TFT電極3042と画素電極3044とを接続する貫通したポスト部となる。また微粒子浸透層は溶融膜化することで、上部駆動用TFT電極3042および上部選択用電極3043の保護膜1650として作用する。
以上のように、複数の記録材を用いて、電極パターンをインクジェット方式の記録により形成し、多層で転写させることで、駆動用TFT電極および選択用TFT電極と、画素電極が形成された回路基板(転写物)を作製することができる。
[実施例4]有機EL素子作製
図17(a)から(g)は、本発明の記録材を用いた有機EL素子の製造方法を示す説明図である。記録材1の微粒子浸透層面側から、図10(a)に示したインクジェット記録装置により、第一の機能性微粒子分散インクを吐出することで画素枠のパターン記録を行う。このとき黒色顔料インクは、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601の界面で固液分離して、黒顔料粒子は、微粒子浸透層1600の底部に薄膜稠密に堆積して機能性微粒子膜1603を形成する。一方、黒色顔料インクの溶媒成分1607は、溶媒吸収層1601に吸収される(図17(b))。その後、第一の機能性微粒子分散膜の上部第一の機能性微粒子分散インクで画素枠のパターン記録を行った部分に、さらに第4の機能性微粒子3008を含む第4の機能性微粒子分散インク(画素枠補強インク)でパターン記録を行う。
このとき、第四の機能性微粒子分散インクは、第一の機能性微粒子膜の表面で固液分離して、第四の機能性微粒子は、微粒子浸透層の底部に稠密に堆積して機能性微粒子膜を形成する。一方の溶媒成分1607は、第一の機能性微粒子膜1603を介して溶媒吸収層1601に吸収される。尚、第四の機能性微粒子は、微粒子浸透層1600から露出するまで、第四の機能性微粒子分散インクを複数回重ね打ちし、第四の機能性微粒子を積み上げて、第一の機能性微粒子膜が上部の微粒子浸透層の空隙を第四の機能性微粒子で満たす(図17(c))。
その後、画素枠部分にレーザー光照射装置を用いて、第一の機能性微粒子分散インクにより画素枠パターンが形成されている部分にレーザー照射を行う。これによって、画素枠パターンが形成されている微粒子浸透層1600の底部に堆積している第一の機能性微粒子膜1603が、レーザー光を吸収して発熱する。発熱によって、第一の機能性微粒子膜1603の上部の微粒子浸透層1600は溶融膜化して、微粒子浸透層1600の空隙を消滅した画素枠3009を作製する(図17(d))。
このとき第四の機能性微粒子により、画素枠3000は台形状になり、画素枠3009の上部は、実施例1と比較して平滑に保たれる。インクジェット記録装置としてはピエゾ方式のインクジェット記録装置を用いた。
[転写物の調整]
画素枠3009が形成された記録材1の画素枠内に、インクジェット記録装置により、第二の機能性微粒子分散インクの導電性高分子分散インクを吐出することで、正孔輸送層のパターン記録を行う。導電性高分子分散インクは、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面で固液分離して、導電性高分子は、微粒子浸透層1600の底部に薄膜稠密に高濃度で堆積し導電性高分子膜3002を形成する。一方、導電性高分子分散インクの溶媒成分1607は、溶媒吸収層1601に吸収される。このとき導電性高分子分散インクで複数回重ね打ちすることで、微粒子浸透層1600から導電性高分子が露出する程度、導電性高分子を積み上げて、画素枠内の微粒子浸透層3001の空隙を導電性高分子で満たす(図17(e))。
尚、画素枠3009の空隙は消滅しているため、導電性高分子分散インクは、画素枠3009に浸透して隣接する画素へ流出することはなく、にじみがなく高精細な正孔輸送層パターンを高濃度で形成することができる。その後、加熱処理を行い、画素枠内の微粒子浸透層1601の空隙を完全に消滅させた(図17(f))。このとき正孔輸送粒子で満たされた微粒子浸透層1600は、微粒子浸透層1600を溶融膜化することで、残存する空隙が完全に消滅して、残存する空隙に相当する分の微粒子浸透層1600が凹むため、正孔輸送層3004の表面は凹状になる。従って、微粒子浸透層1600よりも高く形成された画素枠3000と凹状の正孔輸送層3004との間に凹み部が形成される。また、加熱処理によって、微粒子浸透層1600が導電性高分子を包み込むように熔融膜化して、強固な導電性高分子保持膜3004を形成することができる。
さらに記録材1の凹み部に、インクジェット記録装置により、第三の機能性インクとして有機発光インクを吐出することで、赤色、青色、緑色のパターン記録を画素ごとに行った(図17(g))。有機発光インクは溶液であるため、加熱処理をせずに、有機発光インクで記録をすると、導電性高分子のみで微粒子浸透層の空隙を満たしただけでは、微粒子浸透層には微小の空隙が残存ため、その空隙内に有機発光材料インクが浸透してしまう。しかしながら、加熱処理によって、正孔輸送層3004に残存する空隙は完全に消滅しているため、インクの溶媒が浸透できなくなることから、有機発光インクで記録した場合に、正孔輸送層3004の上部に有機発光層(4006A、4006B、4006C)を形成することができる。
このとき、有機発光インクの溶媒成分は、正孔輸送層3004の上部に残留するため、パターン記録後に溶媒成分を乾燥させることで、凹み部の画素枠内に有機発光層(4006A、4006B、4006C)を形成する。このとき、有機発光インクは、画素枠に浸透して隣接する画素へ流出することはなく、にじみがなく高精細な機能性材料のパターンを高濃度で形成することができる。また有機発光インクは、画素枠3009に浸透して隣接する画素へ流出することはない。さらには、この画素枠内の凹み部によって、有機発光材料は画素枠3009を超えて、隣接する画素への発光材料インクの流出を防止することができる。
図18(h)から(l)は、本発明の記録材を用いた有機EL素子の製造方法を示す説明図である。この記録材の機能性インクでパターン形成した面を、ガラス基板55上にITO粒子を真空蒸着することで作製した共通透明電極3045と重ね合わせて(図18(h))、ヒートローラと加圧ローラとにより加圧加熱して、微粒子浸透層1600を溶融膜化することで接着転写させた(図18(i))。画素枠3009は、加圧加熱によってつぶれながら微粒子浸透層1600とともに画素枠補強粒子も熔融膜化して支持体55に接着するように構成しており、予め基板上に形成された透明共通電極表面に接着することができる。また画素枠内は、微粒子浸透層全体も再び溶融膜化して圧着されることで、有機発光層が透明共通電極3045に接続される。
その後、基材50と、インクの溶媒成分1607のほぼすべてを含んだ溶媒吸収層1601とを、剥離層1701を介して剥離することにより、共通電極3045上に機能性材料を積層した(図18(j))。加圧加熱による接着転写工程の後に、空隙構造を維持して溶媒成分を大量に吸収している厚膜の溶媒吸収層1601を除去することで、不要な水分や溶媒成分が残留することにより生じる発光材料の劣化や正孔輸送層のリーク不良の発生が改善されるので、有機EL素子の表示品質を大幅に向上させることができた。このとき、基材を剥離した画素枠内の微粒子浸透層表面には正孔輸送層の導電性粒子1603が露出していた。
正孔輸送粒子が露出している面1603を、予め駆動用TFT/選択用TFT付表面電極が形成された回路基板の画素電極3046(個別電極ともいう)と位置あわせ行い、張り合わせて(図18(k))、再度、加熱ローラと加圧ローラとによって加圧加熱を行い両者を接着することで、本発明の有機EL素子基板が作製できる(図18(l))。画素枠3009は、加圧加熱によってつぶれながら微粒子浸透層1600とともに画素枠補強粒子も再度熔融膜化して画素電極と接着することができる。このとき、微粒子浸透層底部の界面に形成された正孔輸送粒子の露出部分は、支持体55B上に形成された画素電極3046と位置あわせして貼り合わせることによって画素電極に接続されて、有機EL素子を作製することができる。尚、有機EL素子の共通電極に実施例3で作製した画素電極を用いても、有機EL素子を作製することができる。
1 記録材
50 基材
55 支持体
1000 接着剤
1001 微粒子浸透層
1003 機能性微粒子分散インク
1600 微粒子浸透層(第一の微粒子浸透層)
1601 溶媒吸収層
1606 超微粉
1607 溶媒成分
1680 第二の微粒子浸透層
1700 第一の溶媒吸収層
1706 第二の溶媒吸収層
3001 画素枠内の微粒子浸透層

Claims (12)

  1. 加熱によって熔融膜化可能な材料で形成され、第1の空隙径を備えた空隙構造を有する微粒子浸透層と、前記加熱を行なっても空隙構造が維持可能な材料で形成され、前記第1の空隙径よりも小さな第2の空隙径を備えた空隙構造を有する溶媒吸収層と、を積層した第1の記録材に、
    前記第1の空隙径よりも小さく前記第2の空隙径よりも大きい粒子径を備え、光を照射されることで発熱する第1の機能性微粒子を含む第1の液体を塗布して、前記微粒子浸透層に画素枠パターンを形成する画素枠パターン形成工程と、
    前記画素枠パターンに光を照射して画素枠を形成する画素枠形成工程と、
    を有することを特徴とする機能性材料膜パターンの記録方法。
  2. 前記第1の液体は、液滴として、前記液滴の径よりも小さい厚さを有した前記微粒子浸透層に塗布されることを特徴とする請求項1に記載の機能性材料膜パターンの記録方法。
  3. 前記画素枠で囲まれた領域に、前記第1の空隙径よりも小さく前記第2の空隙径よりも大きい粒子径を備えた第2の機能性微粒子を含む第2の液体を塗布する第1の塗布工程を更に有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機能性材料膜パターンの記録方法。
  4. 前記第1の塗布工程の後に、前記第2の液体が塗布された領域の上に第3の機能性材料を含む第3の液体を塗布する第2の塗布工程と、
    前記第2の塗布工程の後に、加熱して、溶媒吸収層の空隙を消滅させる空隙消滅工程を更に有していることを特徴とする請求項3に記載の機能性材料膜パターンの記録方法。
  5. 前記第1の塗布工程の後に、前記微粒子浸透層を熔融膜化する熔融膜化工程を更に有していることを特徴とする請求項3に記載の機能性材料膜パターンの記録方法。
  6. 前記熔融膜化工程の後に、前記第2の液体が塗布された領域の上に第3の機能性材料を含む第3の液体を塗布する第3の塗布工程を更に有していることを特徴とする請求項5に記載の機能性材料膜パターンの記録方法。
  7. 前記第1の記録材微粒子浸透層と、前記第1の記録材を支持可能な支持体とを接着する第1の接着工程を更に有していることを特徴とする請求項1〜3、5および6のいずれか1項に記載の機能性材料膜パターンの記録方法。
  8. 前記第1の接着工程の後に、前記第1の記録材から前記溶媒吸収層を除去する第1の溶媒吸収層除去工程を更に有していることを特徴とする請求項7に記載の機能性材料膜パターンの記録方法。
  9. 前記第1の溶媒吸収層除去工程の後に、前記微粒子浸透層の前記支持体と当接しない面に、前記第1の記録材と同じ方法で機能性材料膜パターンが形成された第2の記録材を接着する第2の接着工程を更に有していることを特徴とする請求項8に記載の機能性材料膜パターンの記録方法。
  10. 前記第2の接着工程の後に、前記第2の記録材から前記第2の記録材の溶媒吸収層を除去する第2の溶媒吸収層除去工程を更に有していることを特徴とする請求項9に記載の機能性材料膜パターンの記録方法。
  11. 請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の機能性材料膜パターンの記録方法により記録された記録物。
  12. 加熱によって熔融する材料を含む記録材と、
    前記材料と、光を照射されることで発熱する第1の機能性微粒子と、を含む画素枠と、
    前記画素枠で囲まれた部分に、前記材料と、第2の機能性微粒子と、を有することを特徴とする記録物。
JP2017057966A 2017-03-23 2017-03-23 機能性材料膜パターンの記録方法および記録物 Pending JP2018159865A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017057966A JP2018159865A (ja) 2017-03-23 2017-03-23 機能性材料膜パターンの記録方法および記録物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017057966A JP2018159865A (ja) 2017-03-23 2017-03-23 機能性材料膜パターンの記録方法および記録物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018159865A true JP2018159865A (ja) 2018-10-11

Family

ID=63796635

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017057966A Pending JP2018159865A (ja) 2017-03-23 2017-03-23 機能性材料膜パターンの記録方法および記録物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018159865A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6374418B2 (ja) 転写材、記録物、記録物の製造装置、および記録物の製造方法
US9376584B2 (en) Coating for aqueous inkjet transfer
JP5944947B2 (ja) 転写体および記録物の製造方法
TWI286265B (en) Mask, mask forming method, pattern forming method, and wiring pattern forming method
CN101616535B (zh) 布线基板、及布线基板的制造方法
US10300727B2 (en) Print medium, printed material, and manufacturing method for printed material
US9827789B2 (en) Inkjet printing method
US9333791B2 (en) Decorative film and molded product including the same
KR102645494B1 (ko) 열전사 프린터, 인화물의 제조 방법, 인화물, 열전사 시트와 중간 전사 매체의 조합, 중간 전사 매체, 및 열전사 시트
JP4386161B2 (ja) 導電膜パターンおよびその形成方法、配線基板および電子機器
JP2019106400A (ja) 電子デバイス用の基板、電子デバイス、および電子デバイスの製造方法
JP2018159865A (ja) 機能性材料膜パターンの記録方法および記録物
JP6518296B2 (ja) 転写材、記録物、および記録物の製造方法
JP4895397B2 (ja) 配線基板の製造方法および配線基板の製造装置
JP6548681B2 (ja) 光透過フィルタの製造方法
JP2005057139A (ja) 多層配線基板とその製造方法
JP4212887B2 (ja) 多層回路基板の製造方法
US20180154669A1 (en) Transfer material, printed material, and manufacturing method for printed material
JP2007083227A (ja) 層形成方法、アクティブマトリクス基板の製造方法、および多層配線基板の製造方法
JP6680831B2 (ja) 転写材、記録物の製造装置、および記録物の製造方法
JP2018069601A (ja) 転写材、記録物、記録物の製造装置、および記録物の製造方法
JP2018043362A (ja) 転写材、記録物、転写材の製造方法、記録物の製造方法、記録物の製造装置および転写材の製造装置
TWI284063B (en) Co-extrusion coating die set and process for co-extrusion coating two coating solutions
JP2008294244A (ja) 配線パターンの接続方法、配線シート及び配線シート積層体
CN110754140A (zh) 配线基板的制造方法及导电性墨液