JP2019106400A - 電子デバイス用の基板、電子デバイス、および電子デバイスの製造方法 - Google Patents

電子デバイス用の基板、電子デバイス、および電子デバイスの製造方法 Download PDF

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裕輔 澄川
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Takahiro Tsutsui
喬紘 筒井
平林 弘光
Hiromitsu Hirabayashi
弘光 平林
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Abstract

【課題】電気的な特性をもつパターンを高精度に形成すること。【解決手段】電子デバイス用の基板としての記録材1は、微粒子浸透層1600と、溶媒吸収層1601と、を含む。微粒子浸透層1600は、パターンを形成するための導電性微粒子2000と、溶媒1607と、含むインク1003が浸透可能な空隙を有する。溶媒吸収層1601は、微粒子浸透層1600の、パターンが形成される側と逆側に位置して、溶媒1607が浸透可能な空隙を有する。溶媒吸収層1601の平均空隙径は、導電性微粒子2000の平均粒子径より小さい。【選択図】図11

Description

本発明は、導電性および絶縁性などの種々の電気的な特性をもつパターンを含む電子デバイス用の基板、電子デバイス、および電子デバイスの製造方法に関するものである。
特許文献1には、導電性および絶縁性の電気的な特性をもつパターンを電子デバイスの基板上に形成するために、それらのパターンの形成材料としての微粒子と、溶媒と、を含むインクを用いる方法が記載されている。電子デバイスの基板には、かつインク中の微粒子は浸透させず、かつインク中の溶媒を浸透させる吸着層が形成されている。基板に形成すべき所望のパターンの形状に応じて、吸着層の表面にインクを付与することにより、そのインク中の溶媒は吸着層に吸収され、そのインク中の微粒子は、吸着層の表面に残留して所望のパターンを形成する。
特開平11−274681号公報
しかし、特許文献1における吸着層の表面は外部に解放された面であるため、その表面にインクを付与したときに、そのインク中の微粒子が広がってパターンの成形位置の外に出ることがあり、この場合には精細なパターンが形成できない。特に、パターンを厚く形成するためにインクを多量に付与した場合には、精細なパターンが形成できなくなる。例えば、導電性のパターンの電気抵抗を低くするためには、そのパターンを厚く形成する必要がある。
本発明の目的は、電気的な特性をもつパターンを高精度に形成可能な電子デバイス用の基板、電子デバイス、および電子デバイスの製造方法を提供することにある。
本発明の電子デバイス用の基板は、電気的な特性をもつパターンが形成可能な電子デバイス用の基板であって、前記パターンを形成するための導電性微粒子と、溶媒と、含むインクが浸透可能な空隙を有する微粒子浸透層と、前記微粒子浸透層の、前記パターンが形成される側と逆側に位置して、前記溶媒が浸透可能な空隙を有する溶媒吸収層と、を含み、前記溶媒吸収層の平均空隙径は、導電性微粒子の平均粒子径より小さいことを特徴とする。
本発明によれば、微粒子浸透層と溶媒吸収層との間に、溶媒吸収層に吸収されないインク中の微粒子によって電気的なパターンを形成する。これにより、微粒子の広がりを抑えつつ、微粒子浸透層と溶媒吸収層との界面に微粒子を圧縮させて、精細なパターンを形成することができる。したがって、インクを多量に付与することによって、厚くて精細なパターンを形成することができる。また、微粒子浸透層と溶媒吸収層の少なくとも一方を溶融膜化してパターンの保護膜を形成することにより、パターンの長期信頼性を確保することもできる。
本発明の電子デバイス用の基板としての記録材の断面図である。 電極パターンの形成例の説明図である。 導電性微粒子の浸透拡散の説明図である。 比較例としての記録材の説明図である。 電極パターンと絶縁パターンの形成例の説明図である。 本発明の電子デバイスとしての記録物の説明図である。 記録物の他の例の説明図である。 空隙の解消工程の説明図である。 溶融膜化工程の説明図である。 絶縁性溶解インクの使用例の説明図である。 インクの吸収メカニズムの説明図である。 導電性微粒子と絶縁性微粒子とによるパターンの形成例の説明図である。 本発明の電子デバイスとしての記録物の製造方法の説明図である。 記録物の他の製造方法の説明図である。 記録物のさらに他の製造方法の説明図である。 記録物のさらに他の製造方法の説明図である。 記録物のさらに他の製造方法の説明図である。 記録物のさらに他の製造方法の説明図である。 記録物のさらに他の製造方法の説明図である。 記録物の製造装置の説明図である。 記録物と他の基板との接続方法の説明図である。 センサの説明図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態における電子デバイス用の基板は、インクジェット方式によって電極パターン(導電パターン)が形成される基板(以下、「記録材」もいう)としての適用例である。
[記録材の基本的構成と機能]
本例の電子デバイス用の基板としての記録材1には、図1(a)のように、空隙径の異なる2層以上の空隙吸収型のインク受容層が順次積層されている。これらのインク受容層は電気絶縁性であって、少なくとも導電性微粒子を含む液体(以下、「インク」という)を用いて、インクジェット方式によって電極パターンが形成される。具体的に、電極パターンの非記録面側(電極パターンが形成される面と逆側(記録材1の裏面側))のインク受容層は、厚膜の溶媒吸収層1601であって、導電性微粒子よりも十分に小さな空隙が形成されている。溶媒吸収層1601の上側(記録材1の表面側)のインク受容層は、薄膜の微粒子浸透層1600であって、加圧加熱によって熔融膜化可能な材料を用いて、導電性微粒子よりも十分に大きな空隙径になるように空隙が形成されている。このような記録材1上に、インクジェット記録装置を用いて、導電性微粒子を含むインクによって電極パターンを形成する。その後、加熱装置を用いて微粒子浸透層1600を熔融膜化する。これにより、微粒子浸透層1600の空隙構造を解消し、その底部は、導電性微粒子を固定しながら膜化させると共に、微粒子浸透層1600の上部は、膜化させることにより、膜化された導電性微粒子の表面に絶縁膜を形成する。
また、図1(b)のように、基材50上に、後述する複数層のインク受容層1700,1706,1600を順次設けて記録材1を構成してもよい。これにより、溶媒吸収層1601および微粒子浸透層1600などのインク受容層の膜化を伴う、記録材1の生産性の向上、インクジェット記録の際の記録材1の搬送性の向上、転写時のハンドリング性、溶媒吸収層の剥離性を向上させることができる。インクジェット方式による電極パターンの記録後に、基材50を支持体としてそのまま利用する場合には、導電性微粒子を含むインク中の溶媒成分を乾燥させた上、微粒子浸透層1600と同様に、溶媒吸収層1601を熔融膜化させることが好ましい。また、導電性微粒子を含むインクによって電極パターンを記録した後に、不揮発性の絶縁性樹脂成分を溶解させたインクによって、電極パターンを覆ってもよい。そのインクによって、溶媒吸収層1601における微粒子浸透層1600との界面近傍から、導電性微粒子を含むインク中の溶媒成分をさらに下層部に押し出しながら、電極パターン直下の溶媒吸収層1601の部分の空隙を埋めることができる。
また、少なくとも溶媒吸収層1601における微粒子浸透層1600との界面付近は、微粒子浸透層1600と同様に、加熱処理によって熔融膜化するように構成しておいてよい。これにより、空隙構造を解消させて、膜化した導電性微粒子(導電性微粒子膜)の裏面の絶縁性を確保することができる。一方、溶媒吸収層1601を除去することにより、導電性微粒子膜の裏側の界面を外部に露出させて、他の電極パターンおよび電子素子の電極端子などとの電極接合が可能となる。
微粒子浸透層1600は、加熱処理されることによって熔融膜化するように構成されている。そのため、導電性微粒子を含むインクによって電極パターンを記録してから、後述する支持体と合わせて加圧加熱することにより、微粒子浸透層1600を接着層として活用して、電極パターンを支持体に転写することができる。また、微粒子浸透層1600の表面に、接着剤を離散的に設けた接着層を形成、あるいは、支持体への接着性に優れた第2の微粒子浸透層を設けることにより、記録材1を電極パターンの転写材として用いることができる。これにより、記録材1は、インクジェット方式により記録された電極パターンを、種々の支持基板、電気素子、および他の回路基板に対して接着(転写)可能な転写材として用いることができる。
また、微粒子浸透層および溶剤吸収層は、それぞれ、複数の層に分けて順次形成することも可能である。いずれの層も空隙吸収型のインク受容層としての基本的な機能を有していて、空隙径が記録面側から非記録面側に向かって順次小さくなり、インクの毛細管力が記録面側から非記録面側に向かって順次大きくなるように構成されればよい。
また、図1(c)のように、記録材1の基本構成において、基材50、溶媒吸収層、微粒子浸透層、および微粒子浸透層の境界面のいずれかに、それらの層の材質および製膜方法などを考慮して、必要に応じて密着層1603を設けてもよい。その密着層1603によって、層間の密着性を向上させて、層間の不如意の剥離を抑制することができる。但し、層間において毛細管現象によるインクの浸透が必要な場合、密着層1603は、毛細管現象によるインクの移動を妨げないように、親水性を考慮した材料などによって極薄の膜状に構成する必要がある。また、後述するように、加熱により熔融膜化した導電性微粒子の保護層1650から溶媒吸収層1601を除去する場合には、溶媒吸収層1601と微粒子浸透層1600との間に、極薄膜の離型層1701を設けてもよい。
[導電性微粒子を含むインクの吸収]
記録材1において、空隙構造の微粒子浸透層1600の空隙径は、インクに含まれる導電性微粒子よりも十分に大きい。そのため微粒子浸透層1600は、毛細管力が小さくインク吸収速度はやや遅く、その分、流路抵抗は小さい。これにより、図11(a)のように、微粒子浸透層1600の表面に付与された導電性微粒子2000を含むインク1003は、導電性微粒子2000も含めて、ゆっくりではあるがスムーズに微粒子浸透層1600内に浸透し吸収される。一方、厚膜の溶媒吸収層1601の平均空隙径は、インク1003に含まれる導電性微粒子2000の径よりも十分に小さい。そのため、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面において、インク中の導電性微粒子2000と溶媒成分1607とが固液分離され、微粒子浸透層1600の底部の界面に、稠密で薄い導電性微粒子2000の膜1606が形成される。空隙の毛細管現象によってインクを吸収する場合、空隙径が小さいほどインクの毛細管力が高くなる。そのため、空隙径を小さくすることにより、ほとんど全ての溶媒成分1607は、微粒子浸透層1600に残ることなく溶媒吸収層1601に速やかに吸収される。
溶媒吸収層1601は、このような微粒子浸透層1600よりも毛細管力が格段に大きいため、インクの吸収速度も格段に速い。そのため、微粒子浸透層1600の表面から吸収されて浸透してきたインクの一部が溶媒吸収層1601との界面に到達したときに、その一部のインク中の溶媒成分1607が溶媒吸収層1601に吸収され始める。そのため、その一部のインクに連なるインクも順次吸収される。すなわち、溶媒成分1607が溶媒吸収層1601に吸収されると、微粒子浸透層1600の流抵抗が小さいために、インクは、その粘度および表面張力によって千切れることなく、溶媒吸収層1601に順次浸透し始める。
このように、記録材1においては、空隙の小さな溶媒吸収層1601による大きな毛細管力によって、空隙の大きな微粒子浸透層1600内におけるインクの滞留時間を短くできる。そのため、溶媒成分1607は、加熱により熔融膜化する微粒子浸透層1600内に残留しにくい。
また、インク中のほぼ全ての溶媒成分1607は、十分な吸収容量を有する空隙構造を維持する厚膜の溶媒吸収層1601に吸収される。そのため、インクジェット方式によって記録材1に電極パターンを記録した直後であっても、特別な乾燥装置および乾燥時間を必要とせずに、記録材1を加熱処理することによって微粒子浸透層1600を熔融膜化させることができる。これは、毛細管力が最も大きくて、かつ、吸収容量の大きな厚膜の溶媒吸収層1601が、その空隙構造を維持したまま、インク中のほぼ全ての溶媒成分1607を吸収保持するからである。すなわち、記録材1の加熱処理によって導電性微粒子膜と絶縁膜を形成しても、溶媒吸収層1601に吸収保持された溶媒成分1607に逆流および染み出しが生じにくいため、それに起因する導電性微粒子膜および絶縁膜の劣化の発生を抑制することができる。ただし、導電性粒子膜の裏面の絶縁層として、溶媒吸収層1601を利用する場合には、溶媒吸収層1601の空隙構造を解消する前に、溶媒成分1607を十分に乾燥させることが必要となる。
なお、導電性微粒子2000を含むインクの液滴が極端に小さくて、その液滴の1つ(単ドット)によってパターンを形成する場合には、そのインクの先端部分が微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面まで到達しないおそれがある。この場合には、微粒子浸透層1600の内部にインクが単ドットとして孤立して滞留するおそれがある。しかしながら、インクの液滴が極端に小さい場合でも、複数の液滴(複数ドット)を記録材1に付与することにより、後続のインク滴は、先行のインク滴と一体化して、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面に到達する。これにより、後続のインク滴も吸収浸透させることができる。
記録材1に、導電性に優れた電極パターンを形成する場合には、微粒子浸透層1600に付与されるインク量が多くなるため、そのインクの先端部分が溶媒吸収層1601との界面に到達しやすい。したがって、ほぼ全ての溶媒成分1607が溶媒吸収層1601に吸収されると共に、導電性微粒子2000は、固液分離されて微粒子浸透層1600の底部の界面に導電性微粒子膜を形成する。また、インクが付与される微粒子浸透層1600は、空隙吸収型のインク受容層であるため、導電性微粒子2000を含むインクをスムーズに吸収できて、インクの定着性に優れている。したがって、微粒子浸透層1600の表面におけるインクの滞留が少なく、後続して着弾するインクの液滴によるインクの跳ねおよび飛散りを抑制して、電極パターンの形成精度を高めることができる。また、微粒子浸透層1600におけるインクの滞留時間が短いため、インクの平面方向への滲み出しを抑制して、高精細な電極パターンの形成が可能となる。また、微粒子浸透層1600の表面に着弾したインクの先端が溶媒吸収層1601との界面に速やかに到達するように、さらに好ましくは、微粒子浸透層1600の膜厚がインクの液滴に較べて小さくなるように、記録材1は、薄膜に構成することが望ましい。
[導電性微粒子膜および表面絶縁層の形成]
前述したように、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面においてインクが固液分離され、導電性微粒子2000によって膜(導電性微粒子膜)1606が形成され、溶媒成分1607は溶媒吸収層1601に吸収される。微粒子浸透層1600の底部が位置する溶媒吸収層1601との界面においては、毛細管力が格段に大きい溶媒吸収層1601がインク中の溶媒成分1607を吸収する。そのため、微粒子浸透層1600の底部において導電性微粒子2000が固液分離される際に、導電性微粒子2000は、圧縮されながら薄膜で稠密な導電性微粒子膜1606を形成する。導電性微粒子2000が薄膜状に稠密に堆積した導電性微粒子膜1606は、導電性に優れる。また、溶媒吸収層1601の大きな毛細管力によって、インクの全ては導電性微粒子2000を含めて微粒子浸透層1600の底部に向けて吸収される。そのため、微粒子浸透層1600の表層は、導電性微粒子2000が残ることなく、絶縁性の高い空隙構造を維持する。
[導電性微粒子膜および電極パッドの厚膜形成]
厚膜の溶媒吸収層1601によって多量の溶媒成分1607が吸収できるため、インク滴を重ねて付与することより、厚膜の導電性微粒子膜を形成することが可能であり。さらに、図12(a)のように、微粒子浸透層1600の表面に、外部に露出するように台地状に堆積した電極パッド部(電気接続部)2023、および厚膜の導電性微粒子膜を形成することも可能である。微粒子浸透層1600の表面に着弾したインク1003は、微粒子浸透層1600内の空隙に吸収されて浸透する際に、平面方向にも拡散する。その平面方向の浸透拡散幅を微粒子浸透層1600の膜厚とほぼ同程度とすることにより、インクが厚膜の溶媒吸収層全体に亘って浸透拡散する場合に較べて、薄膜の微粒子浸透層1600におけるインクの平面方向の浸透拡散幅は軽微となる。その結果、電極パターンの形成解像度の劣化を抑制することができる。
このように、微粒子浸透層1600を薄膜に構成して導電性微粒子2000の平面方向の浸透拡散を抑制することにより、微粒子浸透層1600の表層に、絶縁性の空隙構造を残すこと、厚膜の電極パターンおよび厚膜のパッド電極部を形成すること、が可能となる。
図3(a),(b)は、比較例としての記録材の説明図である。この比較例としての記録材は、インク中の導電性微粒子2000が浸透可能な微粒子浸透層1600が厚膜の単層とされ、その単層の微粒子浸透層1600のみによって、導電性微粒子2000を含むインク1003を吸収するように構成されている。単ドットを形成するように1つのインク滴が付与された場合、図3(a)のように、導電性微粒子2000は、微粒子浸透層1600の表層から半球状に分散されて吸収される。このような導電性微粒子2000によって形成される電極パターンは、隣接する電極パターンと分離されるものの、導電性微粒子2000同士が密接し難いために高い導電性が得られなかった。電極パターンの高い導電性を得るためにインクを重ねて付与した場合には、図3(b)のように、インクが平面方向にも膜厚方向にも均等に浸透拡散するため、導電性微粒子2000が大きな半球状に分散して吸収される。導電性微粒子2000が平面方向に過剰に浸透し拡散することにより、隣接する電極パターン同士が重なり易くなって、電極パターン形成の解像度の劣化が生じやすくなる。しかも、導電性微粒子2000が膜厚方向に広くまばらに分散するため、電極パターンの高い導電性も得られにくい。
図4(a),(b)は、他の比較例としての記録材の説明図である。この比較例としての記録材は、インク中の導電性微粒子2000を浸透させずに、溶媒成分1607のみを吸収可能な微溶媒吸収層1601が厚膜の単層とされている。その単層の溶媒吸収層1601のみによって、導電性微粒子2000を含むインク1003が吸収される。単ドットを形成するように1つのインク滴が付与された場合、図4(a)のように、溶媒吸収層1601の表面にてインクが固液分離される。この結果、導電性微粒子2000によって薄く稠密に堆積して良好な電極パターンが形成され、溶媒成分1607は溶媒吸収層1601に全て吸収される。また、このような導電性微粒子2000によって形成される電極パターンは、隣接する電極パターンとも良好に分離される。
しかしながら、より高い導電性の電極パターンを形成するために、インクを重ねて付与した場合、導電性微粒子2000は、その周りに支えるものが無い完全開放面である溶媒吸収層1601の表面に順次堆積する。このような導電性微粒子2000を厚く積み上げるためにインクを重ねて付与した場合には、図4(b)のように、導電性微粒子2000が平面方向へも拡がって、低い丘状に堆積することになり、電極パターンの形成の解像度が低下する。また、インクで重ねて付与して導電性微粒子2000の量を増やす場合には、先に着弾したインク滴によって、溶媒吸収層1601の表面に導電性微粒子2000が丘状に堆積し、その導電性微粒子2000の上に、次に着弾したインク滴が着弾することになる。この場合には、インク滴の
着弾の衝撃によって導電性微粒子200が飛び散って、電極パターンの形成の解像度が低下するおそれがある。
[低濃度インク]
インクジェット方式に適するインクは、その保存中に、インク中の導電性微粒子を沈降させることなく、インクの吐出口からインク滴を安定的に吐出し、かつインクのリフィル性を確保することが要求される。その要求に応える粘度および表面張力を維持するために、通常、インク中の導電性微粒子は重量比10%以下に抑制されている。すなわちインクは、水、アルコール、あるいは揮発性溶剤などを主たる溶媒成分とし、さらに溶媒成分の一部として、蒸発を抑制して安定使用を実現するための不揮発性溶剤、および表面張力などを調製するための界面活性剤などが加えられている。そのため、インクの重量比90%以上は溶媒成分となる。固形成分として分散される導電性微粒子の濃度を高くした場合には、高濃度の電極パターンが形成しやすくなる。しかし、インクの粘度が著しく上昇するために、電極パターンの高速形成が難しくなると共に、インクの吐出動作の待機時にインクの固着および固形成分の沈降などが生じやすくなり、インクの吐出の安定性が低下するおそれがある。したがって、インク中の導電性微粒子は、重量比5%程度以下に設定することが好ましい。
本発明の記録材1において、導電性微粒子2000は、微粒子浸透層1600の空隙構造によって支えられながら順次堆積するため、導電性微粒子2000の平面方向の広がり抑制される。したがって、低濃度の導電性微粒子を含むインクを重ねて付与することにより、電極パターンを形成する導電性微粒子2000の密度を高くすることができる。また、導電性微粒子2000を台形形状に高く堆積させることができ、電極パターンの形成の解像度が低下しにくい。また、インクを重ねて付与することによって導電性微粒子2000を順次堆積させる場合、先に着弾したインク滴は、その溶媒成分1607が速やかに溶媒吸収層1601に吸収され、その導電性微粒子2000が微粒子浸透層1600の底部に台地状に堆積する。したがって、次に着弾するインク滴は、微粒子浸透層1600における空のままの空隙構造の表面に着弾することになり、導電性微粒子2000の飛び散りが発生しにくい。つまり、厚膜の溶媒吸収層1601に十分な溶媒吸収容量を持させて、導電性微粒子2000が重量比5%程度以下の低濃度のインクを重ねて付与することにより、十分な高さの台形状であって、解像度に優れた導電微粒子膜を形成することができる。
[微粒子浸透層の熔融膜化]
記録材1を加熱処理することより、微粒子浸透層1600の底部側は、導電性微粒子を包み込むように熔融膜化して強固な導電性微粒子の保護膜を形成することができ、また微粒子浸透層1600の表面側は、絶縁性保護膜を形成することができる。
導電性微粒子の保護膜は、空隙構造が解消されることによって導電性微粒子2000の露出を抑制する。また、導電性微粒子の保護膜が導電性微粒子2000を包み込んで保持するため、電極パターンが形成された基板、および、その基板を含む電子デバイスの電気的特性を長期に亘って安定的に維持することができる。また、図12(a)のように、微粒子浸透層1600の表面に露出するように電極パッド部2023を台地状に堆積させる場合には、熔融膜化した微粒子浸透層1600によって、高く堆積した導電性微粒子2000が周りからも支えられる。したがって、形状が安定して、導電性に優れた電極パッド部2023を形成することができる。
従来の記録媒体において、導電性微粒子として金属微粒子を用い、インクジェット法でパターン電極を形成した場合、金属微粒子同士の接着性は低い。そのため、特に、表面に露出した電極パッド部においては強度が弱く、擦過などにより電極パッド部が削れてしまう場合があった。パターン電極の擦過性を向上させるために、ラミネートフィルム等を電極の上に重ねて用いた場合には、電極パッド部の表面がラミネートフィルムで覆われるために、電気的な接続ができなかった。本発明のパターン電極記録材によれば、導電性微粒子を包みこむように微粒子浸透層が熔融膜化し、熔融膜化した微粒子浸透層によって、導電性微粒子同士が強固に接着されるため、擦過性に優れ、十分に強度を持った電極パッド部を表面に形成することができる。
また、熔融膜化した微粒子浸透層1600の表面は、絶縁層、および他の電極回路を有する支持体に対する接着層として活用することも可能である。そのため、記録材1に、インクジェット方式によって電極パターンを形成してから、それを支持体と合わせて加圧加熱することによって、種々の支持体上に対する電極パターンの転写、および接続が可能である。
[溶媒吸収層の2層構造]
溶媒成分1607の乾燥後、溶媒吸収層1601を加熱しても熔融膜化させて、少なくとも導電性微粒子膜1606の近傍における溶媒吸収層1601の部分の空隙構造を解消することにより、その部分を絶縁性保護膜として活用することも可能である。一方、溶媒吸収層1601を除去して、空隙構造の溶媒吸収層1601自体をなくしてもよく、また、導電性微粒子膜1606の裏面を露出させて、それを他の電極と結合させてもよい。
また、図6(a)のように記録材1を構成してもよい。この記録材1においては、基材50上に、極薄膜の離型層1701を介して、溶媒の吸収特性に優れた厚膜の第2の溶媒吸収層1706と、薄膜の第1の溶媒吸収層1700と、が積層されて、2層の溶媒吸収層が構成されている。さらに、薄膜の微粒子浸透層1600と、接着層2002と、が順次積層されている。接着層2002は、接着剤1000Aが海島状に配置されており、また、図7(a)のように記録材1を構成してもよい。この記録材1においては、基材50の代わりに、搬送性に優れた厚膜の第2の溶媒吸収層1706を用いられる。その溶媒吸収層1706は、極薄膜の離型層1701を介して第1の溶媒吸収層1700の下側に積層されることによって、2層の溶媒吸収層が構成されている。さらに、薄膜の微粒子浸透層1600と、接着剤1000Bをまだら状に配置した層と、が順次積層されている。
微粒子浸透層1600は、その空隙径が導電性微粒子よりも十分に大きくなるように構成され、第1の溶媒吸収層1700は、その空隙径が導電性微粒子よりも十分に小さくなるように、小さな微粒子を用いて構成されている。さらに、第2の溶媒吸収層1706は、その空隙径が第1の溶媒吸収層1700の空隙径よりもさらに小さくなるように、第1の溶媒吸収層1700の微粒子よりもさらに小さな微粒子を用いて構成されている。そのため、薄膜の第1の溶媒吸収層1700の毛細管力は、薄膜の微粒子浸透層1600よりも十分に大きく、また、厚膜の第2の溶媒吸収層1706の毛細管力は、薄膜の第1の溶媒吸収層1700よりもさらに大きい。
したがって、微粒子浸透層1600に付与されたインクは、微粒子浸透層1600と第1の溶媒吸収層1700との界面において固液分離され、微粒子浸透層1600の底部に、薄膜で稠密な導電性微粒子膜1606が形成される。溶媒成分1607のほぼ全ては、第1の溶媒吸収層1700に吸収され始める。薄膜の第1の溶媒吸収層1700に吸収された溶媒成分1607は、その先端部が厚膜の第2の溶媒吸収層1706に到達することにより、毛細管力がより大きい第2の溶媒吸収層1706に吸収され始める。そして、最終的には、ほぼ全ての溶媒成分1607が厚膜の第2の溶媒吸収層1706に吸収される。熔融膜化される微粒子浸透層1600と第1の溶媒吸収層1700には、溶媒成分1607がほとんど残留しない。そのため、インクジェット方式によるインク付与の直後においても、加熱による微粒子浸透層1600の加熱熔融が可能である。
図7(a)の記録材1において、溶媒成分1607のほぼ全てを吸収した厚膜の第2の溶媒吸収層1706は、薄膜の微粒子浸透層1600と、まだら状に離散的に配置した接着剤1000Bと、の加熱熔融後に、離型層1701を境として剥離除去が可能である。これにより、図7(b)のように、絶縁性保護膜1702と、導電性微粒子の保護膜と、を含む基板2016を製造することができる。その基板2016は、電極パターンの形成物としての電子デバイスとして用いることができる。絶縁性保護膜1702は第1の溶媒吸収層1700によって形成され、保護膜1650は、導電性微粒子膜1606を包み込むように熔融膜化した微粒子浸透層1600によって強固に形成される。
空隙構造を保持したままの第2の溶媒吸収層1706は、導電性微粒子の保護膜1650に対する機械的な保護層として機能させることができる。また、極薄膜の離型層1701の代わりに、加熱によっても熔融膜化しない第1の溶媒吸収層を、第2の溶媒吸収層を剥離するための剥離層として機能させることも可能である。第1の溶媒吸収層は、微粒子を結合樹脂で連結することによって空隙構造とされており、その結合樹脂の割合を減らすことによって、微粒子の凝集形態の破壊(凝集破壊)が生じやすくなる。そのため、第2の溶媒吸収層に較べて、やや大きい微粒子を用いて第1の溶媒吸収層の空隙径をやや大きくすると共に、第1の溶媒吸収層における微粒子/結合樹脂の比率を大きくすることにより、第1の溶媒吸収層を剥離層として機能させることができる。すなわち、微粒子浸透層の加熱熔融後に第2の溶媒吸収層を剥離する際に、第1の溶媒吸収層は、その内部に破壊(凝集破壊)が生じやすい剥離層として機能する。微粒子浸透層との界面における第1の溶媒吸収層の微粒子は、微粒子浸透層の結合樹脂とも連結しているため、凝集破壊の際に微粒子浸透層側に残りやすく、極薄層ではあるものの機械的な保護層としても機能する。
[絶縁性保護膜]
第1の溶媒吸収層1700は、微粒子浸透層1600と同様な絶縁性の材質であって、より小さな樹脂微粒子を用いて構成することができる。このような溶媒吸収層1700を加圧加熱して熔融膜化させることにより、空隙構造を解消させた絶縁性保護膜を形成することができる。
図6(a)のような記録材1に、インクジェット方式によって電極パターンを形成した後に、その記録材1と支持体55とを合わせて加圧加熱することにより、微粒子浸透層1600と同様に、海島状の接着層2002を熔融膜化させることができる。このように熔融膜化する接着層2002は、図6(b)のように、支持体55との接着用の接着強化膜1705として機能させることができる。また、剥離層1701を境として、溶媒成分を吸収保持した第2の溶媒吸収層1706を基材50とともに剥離除去することにより、図6(b)のような基板2016を製造することができる。この基板2016においては、支持体55上に、接着強化膜1705と、導電性微粒子膜1606を包み込むように保持する導電性微粒子の保護膜1650と、絶縁性の保護膜1702と、が順次積層されている。
また、図7(a)のような記録材1に、インクジェット方式によって電極パターンを形成し、その後、その記録材1と支持体55とを合わせて加圧加熱してから、第2の溶媒吸収層1706を剥離除去してもよい。これにより、図6(b)のような基板2016を製造することができる。この基板2016においては、支持体55上に、まだら状に形成された接着強化部1704と、導電性微粒子膜1606を包み込むように保持して、支持体と接着する導電性微粒子の保護膜1650と、絶縁性保護膜1702と、が順次積層されている。
図6(b)および図7(b)の基板2016は、第1の溶媒吸収層1700の空隙構造が十分に解消されて、表層に絶縁性保護膜1702が形成されているため、保護膜1650の導電性微粒子が外部に露出することを防止することができる。また、絶縁性保護膜1702によって、電極パターンの表面の機械的強度が向上すると共に、基板2016の表面および端面から侵入しようとする有害な汚染液体および有害ガスなどによる導電性微粒子の汚染を抑制することができる。したがって基板2016は、導電性微粒子膜1606の長期の保存性に優れる。また、溶媒成分を含む第2の溶媒吸収層1706を除去する際に、第1の溶媒吸収層1700は、その空隙構造が解消されて、絶縁性の保護膜として導電性微粒子の保護膜1650を保護する。そのため、空隙構造における専用溶剤の残留、および専用溶剤による導電性微粒子の汚染などを懸念することなく、専用溶剤を用いる溶解洗浄工程によって、第2の溶媒吸収層1706を除去することができる。
[まだら状の接着剤]
上述したように、記録材1は、加圧加熱により熔融膜化する空隙吸収型の薄膜の微粒子浸透層と、導電性微粒子を固液分離して溶媒成分を吸収する空隙吸収型の厚膜の溶媒吸収層と、を含む。さらに、図7(a)のように、微粒子浸透層1600の表面に接着剤1000Bをまだら状に離散的に配置することにより、絶縁性を向上させたり、支持体55に対する記録材1の接着性をより向上させたりすることができる。接着剤1000Bは、加圧加熱により熔融可能であり、かつ、導電性微粒子を含むインクをほぼ吸収しない絶縁性の樹脂材料である。微粒子浸透層1600が露出する露出部1001を残すように、接着剤1000Bをまだら状に離散的に配置する。
接着剤1000Bは、直方体を成すように配置してもよいが、微粒子浸透層1600の空隙よりも大きくて、微粒子浸透層1600の表面との接触面積が小さくなる粒子状であることが好ましい。また、個々の接着剤1000Bが微粒子浸透層1600と接触する幅は、微粒子浸透層1600内におけるインクの平面方向の浸透性を考慮して、微粒子浸透層1600の膜厚の2倍よりも小さくすることが好ましい。
図11(a)のように、接着剤1000Bがない微粒子浸透層1600の表面に着弾したインク1003は、微粒子浸透層1600に速やかに吸収される。図11(b)のように、接着剤1000Bに着弾したインク1003は、接着剤1000Bには吸収されないため、その表面を滑り落ちる。インク1003の一部は、露出している微粒子浸透層1600の表面に到達すると、その内部に吸収され、その後、インク1003の全ても速やかに微粒子浸透層1600内に引き込まれる。微粒子浸透層1600内において、インク1003は、膜厚方向だけではなく平面方向にも拡散して浸透するため、接着剤1000Bの直下にも回り込む。インク1003が付与されないホワイトポイントの発生を抑制して、微粒子浸透層1600の底部の隅々に導電性微粒子膜1606を形成することができる。すなわち、空隙構造の微粒子浸透層1600の毛細管効果により、インク1003が微粒子浸透層1600内の平面方向にも浸透拡散して、インク1003をほぼ吸収しない接着剤1000の直下にも導電性微粒子2000が入り込むことができる。
インク1003は、微粒子浸透層1600の浸透異方性に応じて、その膜厚方向および平面方向に拡がりながら吸収される。微粒子浸透層1600の浸透異方性は、インクジェット方式によって画像を記録する場合におけるインクドットの拡がりの制御と同様に、微粒子浸透層1600の設計および製膜をすればよい。すなわち、インク1003によって大きめのドットを形成する場合には、微粒子浸透層1600の膜厚方向の浸透性よりも平面方向の浸透性を高くする。一方、インク1003によって小さめのドットを形成する場合には、微粒子浸透層1600の平面方向の浸透性よりも膜厚方向の浸透性を高めると共に、微粒子浸透層1600の膜厚を調整すればよい。
また、微粒子浸透層1600に浸透異方性を持たせずに、インク1003を等方的に浸透させることによって、微粒子浸透層1600の生産性を向上させることができる。この場合には、微粒子受浸透層1600の膜厚などを調整して、インク1003のドットが所望の拡がりとなるように、微粒子受浸透層1600全体の浸透拡散性を制御すればよい。微粒子浸透層1600におけるインク1003の浸透性が等方的である場合には、微粒子浸透層1600の厚みにほぼ相当する幅でドットが拡がる。そのため、個々の接着剤1000Bが微粒子浸透層1600の表面と接触する幅を、微粒子浸透層1600の膜厚の2倍よりも小さくすることにより、接着剤1000Bの直下におけるホワイトポイントの発生を抑制することができる。
このような接着剤は、微粒子浸透層に接触する面積が小さければ、粒子状でなくても構わず、直方体状の接着剤を離散的に配置してもよい。また、接着剤上に着弾したインクが、接着剤の表面を伝って微粒子浸透層の表面に速やかに到達できるように、接着剤を構成する樹脂材料として、インクを吸収しにくい材質であって絶縁性のものを選定することが好ましい。接着剤の材料が、インクが滞留しにくくて、その表面を滑るように流れるものであれば、接着剤として、微粒子浸透層との接触面積が小さい粒子状であって、体積が大きな大粒径とすることが好ましい。また、着弾したインクが、接着剤同士の間に一時的にブリッジ状に跨って滞留しないように、個々の接着剤の間隔をインク滴の大きさよりも大きくして、接着剤をまだら状に離散的に配置することが好ましい。
本発明の記録材は、導電性微粒子膜を形成した後に、支持体と合わせて加圧加熱することによって、微粒子浸透層と接着剤とを熔融膜化して、支持体に接着(転写)することができる。接着剤の樹脂材料は、インクの吸収性を考慮する必要がなく、種々の支持体と、熔融膜化する微粒子浸透層と、の接着性向上を重視して選定すればよい。例えば、支持体として、熔融膜化する微粒子浸透層だけでは接着しにくいガラス表面などがあり、このような種々の支持体に合わせて、接着剤の樹脂材料を選定すればよい。また、種々の支持体に対する記録材の接着性(転写性)を向上させるために、複数の種類の樹脂材料によって接着剤を構成してもよい。
図7(a)のようなまだら状に配された接着剤1000Bは、微粒子浸透層1600と共に熔融膜化することによって、絶縁性をもつ強力な接着部を形成する。そのため、図7(b)のように、支持体55に対する導電性微粒子の保護膜1650が接着(転写)を補助して、その接着を強固なものとすることができる。すなわち、図7(b)のように、ガラスなどの支持体55との接着性に優れた接着剤1000Bが熔融膜化して、導電性微粒子の保護膜1650と支持体55との接着面に、離散的に接着強化部1704が形成される。その接着強化部1704によって、接着性(転写性)を向上させることができる。さらに、大粒径の接着剤1000Bを用いて、それが熔融したときの体積を十分に大きくすることにより、支持体55と導電性微粒子の保護膜1650との間の全面に亘って、接着強化膜1705を形成することができる。これにより、さらに接着性(転写性)を向上させることができる。
このように本発明の記録材は、薄膜の微粒子浸透層の表面に、接着剤をまだら状に離散的に配置することにより、種々の支持体に対する接着性(転写性)を向上させることができ、かつ、ホワイトポイントの発生を抑制することができる。これらの結果、接着性(転写性)と記録特性とが共に優れた記録材を提供することができる。
[海島状の接着剤]
図6(a)のように、微粒子浸透層1600の表面に、接着剤1000Aを微細な海島状に離散的に分布させてもよい。接着剤1000Aは、前述したように、加圧加熱により熔融接着可能であって、インクをほぼ吸収しない絶縁性の接着剤であって、微粒子浸透層1600の露出部1001(海部)と、接着剤1000Aが微粒子浸透層1600を覆う島部と、を形成する。このような接着剤1000Aによって、海島状の接着強化膜1705が形成される。
このような接着剤1000A上に着弾したインク滴は、その着弾時の衝撃によって高速で変形し、その一部が露出部1001において微粒子浸透層1600の表面に接触することにより、その微粒子浸透層1600内にスムーズに吸収され始める。そのため、接着強化膜1705を構成する接着剤1000Aもしくは接着剤1000Aの凝集部は、インク滴よりも格段に大きくならないように構成し、さらには、インク滴の大きさよりも小さい間隔で微細な海島状に配置することが好ましい。インク吸収の基点となる露出部1001は、適切な間隔で配することが重要である。例えば、想定されるインクジェット方式によって形成されるインクの1ドットの領域に、露出部1001が少なくとも1つ以上存在するように、微細な海島状に接着剤1000Aを配置すればよい。
海島状の接着剤1000Aは、まだら状に配した図7(a)の接着剤1000Bに較べて、より均一かつより多めに付与して、より接着性を向上させることができる。すなわち、接着剤1000Aもしくはその凝集部の間隔が小さいため、微粒子浸透層1600が熔融膜化した際に、離散的に配置された接着剤1000A同士が連結しやすい。そのため、導電性微粒子の保護膜1650と、支持体55と、の間に、それらの全面に亘ってほぼ均一な接着強化膜1705を形成して、接着性をばらつきなく安定的に向上させることができる。接着剤1000Aとしては、まだら状に配する図7(a)の接着剤1000Bと同様に、インクを吸収しにくい材質であって、絶縁性の樹脂微粒子を用いることができる。ただし、接着剤1000Aの粒子径は、接着剤1000Bよりも小さくする必要があり、インク滴の径よりも小さければより好ましい。
上述したように、微粒子浸透層1600内では、空隙構造の毛細管効果により、膜厚方向と同様に平面方向にもインクが浸透拡散する。そのため、接着剤1000Aが微粒子浸透層1600の表面を覆う幅を、微粒子浸透層1600の膜厚の2倍よりも小さくすることにより、接着剤1000Aの直下にもインクを回り込ませることができる。粒子状の接着剤1000Aは、島部を形成する個々の接着剤1000Aが微粒子浸透層1600の表面を覆う幅が、微粒子浸透層の膜厚よりも小さくなるように配することが好ましい。微粒子浸透層1600内におけるインクの浸透拡散によって、表層自体が接着剤1000Aによって覆われた微粒子浸透層1600の部分の下部に対して、インクが浸透して回り込む。そのため、接着剤1000Aの配置および構造に応じて、微粒子浸透層1600の浸透性および膜厚などを適切に調整することにより、接着剤1000Aの直下における微小なホワイトポイントの発生を抑制することができる。この結果、微粒子浸透層1600の全域に亘って、導電性微粒子2000による稠密なパターンを形成することができる。
[接着性の強化]
微粒子浸透層を熔融膜化して、記録材1を支持体55に接着(転写)する場合には、その接着性をより向上させるために、図1(c)のように、第1の微粒子浸透層1670の表面に第2の微粒子浸透層1680を設けてもよい。第2の微粒子浸透層1680は、加熱により熔融膜化する材料を用い形成され、絶縁性であって支持体55との接着性に優れた薄膜の層である。
第2の微粒子浸透層1680は、第1の微粒子浸透層1670に比して、空隙が大きくて毛細管力が小さい。そのため、第2の微粒子浸透層1680は、インクの浸透性を考慮して、第1の微粒子浸透層1600よりもさらに薄膜に形成することが好ましい。第2の微粒子浸透層1680の表面に着弾したインク滴は、その空隙構造の微粒子浸透層1680によって吸収され始め、そのインク滴の先端部が微粒子浸透層1680,1670の界面に到達してから、第1の微粒子浸透層1670内に吸収される。このとき、第2の微粒子浸透層1680の流路抵抗が小さいため、インク滴の先端部に続くインク滴の後続部は、千切れることなく、第1の微粒子浸透層1680内に吸収され始める。第2の微粒子浸透層1680も、導電性微粒子2000よりも十分に大きな空隙径をもつ空隙構造であるため、毛細管力はそれほど大きくない。しかし、第2の微粒子浸透層1680内における流路抵抗が小さいため、薄膜の第2の微粒子浸透層1680の表面に付与されたインクは、導電性微粒子と共にスムーズに薄膜の第1の微粒子浸透層1670内に浸透吸収される。
一方、溶媒吸収層1601は、その空隙構造が導電性微粒子よりも十分に小さな空隙により構成されていて、毛細管力が格段に大きい。このような溶媒吸収層1601は流路抵抗が大きいため、インク中の導電性微粒子は、第1の微粒子浸透層1670と溶媒吸収層1601との界面において固液分離され、インク中の溶媒成分のみが溶媒吸収層1601に吸収される。すなわち、第2の微粒子浸透層1680から第1の微粒子浸透層1670に吸収浸透してきたインクは、その先端部が溶媒吸収層1601に到達すると、溶媒吸収層1601の格段に大きな毛細管力によって、インク中の溶媒成分が吸収され始める。その結果、微粒子浸透層1680,1670内において、インクの先端部に連なるインクの後続部も順次吸収される。すなわち、微粒子浸透層1680,1670の流抵抗が小さいために、微粒子浸透層1680,1670に残っているインクの部分は、インクの粘度および表面張力により、千切れることなく溶媒吸収層1601に順次浸透し始める。
このように、空隙の小さな溶媒吸収層1601による大きな毛細管力によって、空隙の大きな微粒子浸透層1680,1670内におけるインクの滞留時間を短くすることができる。したがって、インク中の溶媒成分は、加圧加熱により熔融膜化する微粒子浸透層1680,1670内に残留しにくく、支持体55に対する記録材1の接着性(転写性)が優れたものとなる。また、インク中の溶媒成分のほぼ全ては、厚膜で十分な吸収容量を有する空隙構造を維持する溶媒吸収層1601に吸収される。また、導電性微粒子は、第2の微粒子浸透層1680にも残らず通過して、第1の微粒子浸透層1670と溶媒吸収層1601との界面において、稠密に圧縮されながら固液分離される。この結果、第1の導電性微粒子浸透層1670の底部に、高精細な導電性微粒子膜1606を形成される。
このような導電性微粒子膜1606を形成した後に、支持体55と合わせて加圧加熱することにより、微粒子浸透層1680,1670を熔融膜化して、記録材1を支持体55に接着(転写)することができる。第2の微粒子浸透層1680を形成する樹脂材料は、種々の支持体、および熔融膜化する第1の微粒子浸透層1670との接着性を重視して選定される。第2の微粒子浸透層1680を接着強化膜1707として機能させて、第1の微粒子浸透層1670が熔融膜化するだけでは接着しにくい支持体55(ガラス表面など)に対する記録材1の接着性(転写性)を向上させることができる。また、記録材1を支持体55に接着(転写)しない場合、絶縁性に優れた第2の微粒子浸透層は、第1の微粒子浸透層と同時に加熱して熔融膜化することにより、保護膜1650上の絶縁性保護膜1702に重なる絶縁性の強化保護膜として活用することができる。
[第2の微粒子浸透層]
溶媒吸収層1601の表面上に、空隙構造の大きさが異なる2層の微粒子浸透層を順次設け、2種類の第1および第2インクを用いて電極パターンを形成することも可能であり、それらのインクには、粒径が異なる大小の導電性微粒子が分散されている。すなわち、小粒径の導電性微粒子を分散させた第1インクと、それよりも大粒径の導電性微粒子を分散させた第2インクと、を用いて、2種類の電極パターンを順次形成することが可能である。第1の微粒子浸透層1670の空隙径は、第1インク中の導電性微粒子の粒子径よりも十分に大きく、かつ第2インク中の導電性微粒子の粒子径よりも小さく設定されている。第2の微粒子浸透層1680の空隙径は、第2インク中の導電性微粒子の粒子径よりも十分に大きく設定されている。溶媒吸収層1601の空隙径は、第1インク中の導電性微粒子の粒子径よりも十分に小さく設定されている。
先ず、空隙径の大きな第2の微粒子浸透層1680の表面に、小粒径の導電性微粒子を含む第1インクを付与することにより、第1の微粒子浸透層1670と溶媒吸収層1601との界面に、小粒径の導電性微粒子が稠密に堆積した第1の導電性微粒子膜を形成する。その第1の導電性微粒子膜は、第1の電極パターンに対応する。次に、第2の微粒子浸透層1680の表面に、大粒径の導電性微粒子を含む第2インクを付与することにより、第1および第2の微粒子浸透層1670,1680の界面に、大粒径の導電性微粒子が稠密に堆積した第2の導電性微粒子膜が形成される。その第2の導電性微粒子膜は、第2の電極パターンに対応する。
第1および第2インク中の溶媒成分のほぼ全ては、毛細管力が大きい厚膜の溶媒吸収層1601に吸収される。第1および第2の微粒子浸透層1670,1680の上層部には、インク中の導電性微粒および溶媒成分がいずれも残らず、微粒子浸透層1670,1680の空隙構造は、加熱により熔融膜化可能な絶縁性の材料によって維持される。それらの微粒子浸透層1670,1680を加熱処理して熔融膜化することにより、第1の導電性微粒子の保護膜、第1の絶縁性保護膜、第2の導電性微粒子の保護膜、および第2の絶縁性保護膜が順次積層された、2層の電極パターンを形成することができる。また、第1インクを部分的に重ねて付与することにより、微粒子浸透層1670,1680の界面まで第1インク中の導電性微粒子を厚く堆積させて、上下の電極パターンを接続するパッド電極部を形成することも可能である。
[導電性微粒子および絶縁性微粒子を含むインク]
記録材1に対しては、種々のインクジェット記録装置を用いて、導電性微粒子を含むインクによって電極パターンを形成することができる。そのインクには、主成分としての水および揮発性溶媒と、添加剤としての不揮発性溶媒などと、を混合した溶媒成分中に、導電性微粒子が均一に分散されている。前述したように、溶媒吸収層の空隙を導電性微粒子よりも十分に小さくすると共に、微粒子浸透層の空隙構造の空隙径を導電性微粒子よりも十分に大きくすることにより、微粒子浸透層と溶媒吸収層との界面においてインクが固液分離される。その結果、微粒子浸透層の底部に稠密な導電性微粒子膜が形成され、インク中の溶媒成分のほぼ全てが溶媒吸収層に吸収される。薄膜の微粒子浸透層の空隙は、最も大粒径の導電性微粒子を含むインクにおける導電性微粒子の粒子径より十分に大きくし、厚膜の溶媒吸収層の空隙は、最も小粒径の導電性微粒子を含むインクにおける導電性微粒子の粒子径より十分に小さくすればよい。
微粒子浸透層は、種々の支持体との接着転写性を重視して、薄膜に設計すればよい。一方、溶媒吸収層は、インクのにじみ過ぎによる解像度の低下を考慮する必要がなく、毛細管力を大きくして、インク中の溶媒成分の十分な吸収容量が得られるように、その吸収性を重視して厚膜に設計すればよい。本発明の記録材にインクを付与するために、大きな導電性微粒子を含むインクを吐出可能なインクジェット記録装置、および小さな導電性微粒子を含むインクを吐出可能なインクジェット記録装置のいずれも利用可能である。
このように本発明の記録材は、インク中の溶媒成分の吸収性に優れた厚膜の空隙吸収型の溶媒吸収層と、加熱により空隙構造が解消されて熔融膜化が可能な薄膜の空隙吸収型の微粒子浸透層と、を積層して構成される。空隙構造の溶媒吸収層における空隙径は、導電性微粒子よりも十分に小さく設定され、空隙構造の微粒子浸透層における空隙径は、導電性微粒子よりも十分に大きく設定される。また、このような記録材にインクを付与するための、種々のインクジェット記録装置を用いることができる。記録材にインクを付与した後に、加熱膜化装置あるいは加熱加圧による接着装置(転写装置)などを用いて、記録材を加熱、あるいは記録材を種々の支持体と合わせて加圧加熱する。これにより、導電性微粒子膜が形成された微粒子浸透層を熔融膜化して、導電性微粒子の保護膜を形成しながら絶縁性保護膜を形成する。あるいは、記録材を支持体に接着(転写)してから、空隙構造を維持して溶媒成分を吸収している溶媒吸収層を除去する。これらの結果、電極パターンの形成物として、高精細で電気絶縁性に優れた電子デバイスを作成することができる。
また溶媒成分に、加熱により熔融膜化する絶縁性微粒子を分散したインクを併用することも可能である。絶縁性微粒子を含むインクを併用することにより、さらに高精細な電極パターンを形成して、微粒子浸透層を加熱して熔融膜化する際に、空隙構造の解消による膜厚変化を補って膜を平坦化することも可能である。また、電極パターンの形成物における電気絶縁性をさらに向上させることも可能である。さらに、絶縁性樹脂を溶媒成分に溶解したインクを併用することにより、溶媒吸収層の空隙構造をインクで充たして、導電性微粒子の保護膜の裏面の絶縁性を向上させることも可能である。
[溶媒吸収層]
記録材1の溶媒吸収層1601は、前述したように、インク中の導電性微粒子よりも十分に小さな空隙構造による毛細管現象によって、インク中の溶媒成分を速やかにかつ大量に吸収するための、厚膜のインク受容層である。溶媒吸収層をシート状に形成するための材料は、導電性微粒子の大きさよりも十分に小さい空隙構造を形成して、空隙構造内に溶媒成分を十分に吸収可能であって、搬送性およびハンドリング性に優れた十分な厚みをもたせることができる材料であればよい。溶媒吸収層の形成材料としては、セルロースナノファイバー単体、もしくは樹脂との複合体であって、シート状に加工された多孔性セルロースナノファイバーシート等を用いることができる。また、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等をクレイズ処理したもの、あるいは、それらに炭酸カルシウムが分散されたフィルムを延伸加工したものを用いることもできる。例えば、ポリエチレンを主成分とする材料に炭酸カルシウムが分散されたフィルムを延伸加工することによって、多孔質溶媒吸収層を構成することができる。あるいは、クレイズ加工によって、空隙を有する空隙構造の溶媒吸収層を形成してもよい。クレイズ加工においては、フィルムを、その分子配向方向に対して略並行となるように所定の角度で折り曲げ、その上面および下面に圧力を掛けながら引っ張る。これにより、分子束(フィブリル)と孔(ボイド)とが形成され、それらが部分的に連結して、全体としてスポンジ構造を成すように貫通する空隙が形成される。
[基材の併用]
シート状にフィルム化することによって溶媒吸収層を形成する以外に、基材50上に、微粒子と、必要に応じてバインダーと、を含む塗工液を塗工して乾燥させることによっても、空隙吸収型の溶媒吸収層を形成することができる。すなわち、インクジェット方式による電極パターンの形成時における記録材1の搬送性の向上、および記録材1の接着(転写)時のハンドリング性を向上させるために、シート状の基材50の上に、複数のインク受容層を順次設けることもできる。基材上に、溶媒吸収層および微粒子浸透層などのインク受容層を順次設けることによって、それらの製膜を伴う記録材1の生産性を向上させることができる。導電性微粒子と同程度もしくはさらに小さな粒径の微粒子と、必要に応じてバインダーと、を用いて、基材50上に、導電性微粒子よりも十分に小さな隙間にインクの溶媒成分を吸収して、導電性微粒子を分離可能な溶媒吸収層を形成することができる。
記録材1に基材50を設けた場合には、支持体55への記録材1の接着(転写)後に、剥離または溶解洗浄などによって、溶媒吸収層と共に基材50も除去してもよい。また、基材50を残す場合には、少なくとも微粒子浸透層と接する界面付近の、溶媒吸収層の空隙構造を解消すればよい。基材50は、電極パターンの形成時において、記録材1のカールを抑制して、搬送性を向上させる搬送層としての機能をもつ。また、記録材1の搬送性をさらに向上させるために、所定の滑り性をもつ公知の補助層などを基材50の裏面側に設けてもよい。また、基材50としては、透明、不透明、あるいは有色なもののいずれも選択することができる。
基材の好ましい材料は、特に制限されない。機械的特性と熱的特性の観点から、基材の好ましい材料として、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)からなるグループから選択されるプラスチックフィルムが挙げられる。
基材がロール状である場合、その厚みは、好ましくは5μm以上かつ100μm以下、より好ましくは15μm以上かつ50μm以下とすることにより、記録材の搬送性を向上させることができる。記録材がカットシート状またはプレート状である場合には、耐カール性および供給性などの観点から、搬送層として、機械的強度および固さに優れる厚い基材を用いることが好ましく、その場合、基材の厚みは、30μm以上かつ300μ以下、より好ましくは50μm以上かつ200μ以下とすればよい。
このように、基材の厚みは、記録材の搬送性および材料強度を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されない。基材は、記録材の用途に応じて、良好な搬送性を維持することができればよい。記録材を転写材として使用する場合には、接着工程(転写工程)における加圧加熱時に、薄膜状のガラス板または樹脂フィルムなどの支持体側からの熱伝達によって、微粒子浸透層を熔融膜化させることもできる。また、微粒子浸透層の熔融膜化において、支持体側からの熱伝達よりも、基材側からの溶媒吸収層を介しての熱伝達の方が支配的である場合には、基材による熱抵抗を考慮して、加圧加熱の条件を調整すればよい。
[溶媒吸収層による固液分離]
溶媒吸収層を形成する樹脂微粒子の大きさは、インクジェット方式によって付与されるインク中の導電性微粒子の大きさを考慮して、導電性微粒子よりも十分小さい溶媒吸収層の空隙構造が得られるように設定すればよい。その空隙構造を形成する微粒子としては、公知の材料を用いればよく、無機微粒子および樹脂微粒子のいずれであってもよい。所望の性能に応じて、後述する材料から選択することができる。また、必要に応じて、そのような微粒子に適したバインダーを併用してもよく、そのバインダーとしては公知の材料を用いることができ、後述する水溶性樹脂等を用いてもよい。例えば、水溶性樹脂をバインダーとして用いることにより、水性のインクが溶媒吸収層内に吸収される過程において、溶媒吸収層の空隙の内壁に対するインクの濡れ性を向上させて、インクの吸収速度を高くすることができる。
本発明者らの検討によれば、微粒子およびバインダーによって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層の空隙径の平均(平均細孔直径)は、5nm〜100nmの程度が好ましい。平均空隙径が5nm未満の場合には、十分なインクの吸収容量を得るためには溶媒吸収層を相当に厚くしなければならず、インクの溢れが生じて、微粒子浸透層に未吸収のインク溶媒が残存するおそれがある。また、平均空隙径が100nmより大きい場合には、溶媒吸収層と微粒子浸透層との界面においてインクが十分に固液分離できず、導電性微粒子が溶媒吸収層内部にも浸透拡散するおそれがある。この場合には、溶媒吸収層側の絶縁性が不十分となるおそれがある。
平均空隙径を上記の範囲とすることができれば、溶媒吸収層に用いる微粒子およびバインダーの粒子径は特に限定されない。微粒子が無機微粒子の場合には、一次粒子径が5nm〜100nm、凝集した二次粒子径として20nm〜500nm程度のものを用いることにより、良好な空隙構造が得られる。また、微粒子が樹脂微粒子の場合には、平均粒子径が20nm〜500nm程度のものを用いることにより、良好な空隙構造が得られる。
一般に、導電性微粒子の平均粒子径は、40nm〜110nm程度である。溶媒吸収層の平均空隙径は、導電性微粒子の平均粒子径より小さくすることが好ましい。例えば、平均粒子径が90〜110nmの大粒径の導電性微粒子を含むインクを用いる場合には、溶媒吸収層の平均空隙径を10〜85nmとすることで、良好で安定した溶媒吸収性および固液分離性を得ることができる。
また、平均空隙径を上記の範囲とするための微粒子として、好ましくは、一次粒子径が10nm〜85nm、かつ凝集した二次粒子径が50nm〜400nmの無機微粒子、または平均粒子径が50〜400nmの樹脂微粒子等を用いることができる。40〜50nmの小粒径の導電性微粒子を含むインクを用いる場合には、溶媒吸収層の平均空隙径を10nm〜35nmに調整することが好ましい。このような調整により、溶媒の吸収性および固液分離性をさらに向上させて、溶媒吸収層の絶縁性および透明性を高めて、電子デバイス用の基板、および電子デバイスの用途を拡大することができる。
平均空隙径を上記の範囲とするための微粒子としては、一次粒子径が10nm〜35nm、かつ凝集した二次粒子径が50nm〜200nmの無機微粒子、または平均粒子径が50〜200nmの樹脂微粒子がより好ましい。小粒径の導電性微粒子を含む第1インクの平均粒子径を40nm〜50nm、大粒径の導電性微粒子を含む第2インクの平均粒子径を100nm〜110nmとした場合、溶媒吸収層の平均空隙径は10nm〜35nm程度が好ましい。平均空隙径をこのような範囲とすることにより、第1インクも所望の界面において良好に固液分離させることができる。このような範囲の平均空隙径とするための微粒子としては、一次粒子径が10nm〜35nm、かつ凝集した二次粒子径として50nm〜200nmの無機微粒子、もしくは平均粒子径が50nm〜200nmの樹脂微粒子を好ましく用いることができる。
溶媒吸収層の厚みは、インクの溶媒成分の吸収容量と、記録材の搬送性およびハンドリング性と、の観点から厚くすることが好ましい。しかし、記録材の接着(転写)時に微粒子浸透層を熔融膜化する際に、溶媒吸収層を介しての熱伝達が支配的である場合には、溶媒吸収層はあまり厚くしないほうがよい。本発明者等の検討によれば、溶媒吸収層の厚みを20μm〜300μmとすることにより、良好な溶媒成分の吸収性と、記録材の搬送性およびハンドリング性と、を得ることができた。また記録材の搬送性およびハンドリング性は、基材を併用することによって向上させることできるため、溶媒吸収層の厚みを10μm〜80μmとしても良好な溶媒成分の吸収性が得られた。ただし、支持体が厚い場合、および支持体の材質が熱伝導性に劣る場合などにおいては、溶媒吸収層の熱伝達性を考慮する必要があるため、溶媒吸収層の厚みを20μm〜80μmとすることが好ましい。さらに基材を併用する場合には、溶媒吸収層の厚みは10μm〜60μmとすればよい。
[溶媒吸収層の空隙容積および空隙率]
本発明者らの検討によれば、微粒子およびバインダーによって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層の空隙容量は、インク中の全ての溶媒成分を吸収するためには、0.1cm3/g〜約3.0cm3/g程度であれば十分であった。溶媒吸収層が薄く、その空隙容積が0.1cm3/g未満の場合には、溶媒成分の吸収性能が十分に得られず、インクが溢れて、微粒子浸透層に未吸収の溶媒成分が残存するおそれがある。
溶媒吸収層の空隙容積が3.0cm3/gを超える場合には、溶媒吸収層自体の機械的強度が弱くなって、溶媒吸収層内にクラックおよび粉落ちが生じやすくなる。微粒子およびバインダーによって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層において、上記の範囲の空隙容量を有する場合には、空隙率が60%〜90%程度であった。溶媒吸収層の空隙率が60%以下の場合には、インクの吸収容量が十分に得られず、インクが溢れて、微粒子浸透層に未吸収のインク溶媒が残存するおそれがある。また、空隙率が90%を超える場合には、溶媒吸収層の強度が弱くなり、溶媒吸収層内にクラックおよび粉落ちが生じやすくなる。
[溶媒吸収層の空隙構造の維持]
溶媒吸収層内の全域に、バインダーによって結着された微粒子間の空隙をほぼ均一に配置することによって、インクをほぼ等方的に浸透させることができる。微粒子として、無機微粒子もしくは加熱温度よりも高いガラス転移温度をもつ樹脂微粒子を用いることにより、加熱加圧によっても空隙を維持することができる。無機微粒子を水溶性樹脂のバインダーによって結合させることによって空隙が形成された溶媒吸収層は、無機微粒子が非常に硬いため、圧力および熱によっても空隙構造が壊れにくく、加圧加熱しても空隙構造をほぼ維持することができる。したがって、吸収されたインクの溶媒成分を空隙構造の内部に保持することができ、また溶媒成分の蒸気が発生した場合には、その蒸気を空隙構造の内部に封じ込めることができる。また、インクの液体成分である水などの主要溶媒または不揮発性溶剤を微粒子浸透層の表面に染み出させることなく、微粒子浸透層を熔融膜化させることができる。
これらの結果、導電性微粒子膜を支持体に良好に接着(転写)することができる。すなわち、インクの溶媒成分が微粒子浸透層に逆流するおそれがないため、インクによる電極パターンの形成直後であっても、溶媒吸収層内に吸収された溶媒成分の乾燥を待つことなく、速やかに、加圧加熱によって微粒子浸透層を熔融膜化させることができる。したがって、接着工程(転写工程)を速やかに実行し、溶媒成分を乾燥するための膨大な乾燥エネルギーおよび時間を要することなく、効率的な微粒子浸透層の熔融膜化および支持体への接着(転写)を実現することができる。
[溶媒吸収層の無機微粒子および樹脂微粒子]
無機微粒子を構成する無機材料の種類は、特に制限されない。また、無機微粒子と水溶性樹脂とより構成される空隙吸収型の溶媒吸収層は、特別な配向処理を要することなく作製できるため、その生産性も良好である。ただし、無機材料はインク吸収性が高いものであることが好ましい。これらの無機材料からなる無機微粒子としては、アルミナ、アルミナ水和物、SiO2、SiNx、Al2O3、Ta2O5、BST、PZTからなる群より選択される、少なくとも1種の物質からなる微粒子等が好ましい。
無機微粒子の代わりに、加圧加熱による接着(転写)時にも熔融変形しにくくて、熔融温度Tgが接着温度(転写温度)よりも高い樹脂微粒子を用い、その樹脂微粒子をバインダー樹脂により結合して、空隙吸収型の溶媒吸収層を形成することも可能である。熔融温度Tgが転写温度よりも高い樹脂微粒子を用いて空隙構造を形成することにより、加圧加熱時の熱によっても粒子構造が維持されるため、樹脂粒子が熔融して空隙が潰れることがない。また、転写温度よりも軟化熔融温度が高い樹脂微粒子は、熔融温度Tgが高い樹脂微粒子であり、一般には、樹脂微粒子を構成する分子構造が剛直であるものが多く、比較的硬い粒子である。そのため、空隙は圧力によって潰れにくい。樹脂微粒子を構成する樹脂材料の種類は、特に制限されないが、インクの溶媒成分との親和性が高くて、常温において安定した空隙構造が維持できる樹脂材料であることが好ましい。このような樹脂としては、アクリル系樹脂、酢ビ樹脂、塩ビ樹脂、エチレン/酢ビ共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂、またはそれらの共重合体樹脂が好ましい。
[溶媒吸収層の水溶性樹脂]
バインダーとして用いられる水溶性樹脂は、25℃において、水と十分に混和する樹脂、あるいは水に対する溶解度が1(g/100g)以上の樹脂である。また、無機微粒子または樹脂微粒子と合わせて、空隙吸収型の溶媒吸収層を形成する場合、水溶性樹脂は、無機微粒子または樹脂粒子を結着するバインダーとして機能する。水溶性樹脂としては、例えば、澱粉、ゼラチン、カゼイン及びこれらの変性物;ポリビニルアルコール(完全けん化、部分ケン化、低けん化等)ポリ(メタ)アクリル酸又はその共重合体樹脂、等を挙げることができる。水溶性樹脂の中でも、ポリビニルアルコール、特に、ポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより得られる、けん化ポリビニルアルコールは、第1の溶媒吸収層用のバインダーとして好ましい。特に、けん化度70〜100mol%のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。けん化度とは、ポリビニルアルコールの酢酸基と水酸基との合計モル数に対する水酸基のモル数の百分率を意味する。また、水溶性樹脂は、重量平均重合度が2,000〜5,000のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。
水溶性樹脂は、1種を単独で用いることができ、または2種以上を混合して用いることもできる。「2種以上」とは、けん化度、および重量平均重合度等の特性が異なるものも含まれる。また、熔融膜化可能な第1の溶媒吸収層用あるいは微粒子浸透層用のバインダーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸またはその共重合体樹脂が好ましい。
[基材上に形成される溶媒吸収層]
溶媒吸収層の生産性、電極パターンの形成時における記録材の搬送性、および記録材の接着(転写)後における溶媒吸収層の剥離性を向上させて、ハンドリング性に優れた記録材を構成するために、基材を併用することができる。その場合には、搬送性およびハンドリング性の向上のために、必要以上に基材を厚くすることなく、溶媒吸収層を溶媒成分の吸収に十分な膜厚の10μm〜80μmに調整すればよい。
少なくとも無機微粒子または樹脂微粒子と、水溶性樹脂と、を媒体と適宜混合して塗工液を調製し、公知の塗膜装置を用いて、その塗工液を基材の表面に塗布して乾燥させることによって、所望の空隙構造を有する溶媒吸収層を形成することができる。塗工方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、スロットダイコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法などを挙げることができる。その他の添加剤として、用途に応じて、例えば、界面活性剤、導電性微粒子分散剤、増粘剤、消泡剤、インク定着剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤などを塗工液に加えてもよい。
塗工液中の無機微粒子または樹脂微粒子の粒子濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、塗膜速度と膜の均一性との観点から、塗工液の全質量に対して、粒子を10質量%以上かつ30質量%以下とすることが好ましい。また、空隙吸収型の溶媒吸収層を形成するために、水溶性樹脂の量は、無機微粒子または樹脂微粒子の100質量部に対して、3.3〜20質量部、好ましくは3.3質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上15質量部以下とする。水溶性樹脂の量をこのような範囲とすることにより、インクの吸収性を良好とし、溶媒吸収層内の全域に、水溶性樹脂によって結着された微粒子間の空隙をほぼ均一に配置して、インクの溶媒成分をほぼ等方的に浸透させることができる。水溶性樹脂の量を3.3質量部以下にした場合には、無機微粒子または樹脂微粒子を結着するためのバインダーの量が少ないために、溶媒吸収層の強度が低下して、ひび割れおよび粉落ちが発生するおそれがあるため、好ましくない。一方、水溶性樹脂の量を20質量部以上とした場合には、水溶性樹脂の量が多くなるため、水溶性樹脂が溶媒吸収層の空隙を埋めて、溶媒成分の吸収性が損なわれるため好ましくない。
塗工液の塗工量は、固形分換算で10g/m2以上かつ40g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を10g/m2以上、好ましくは15g/m2以上とすることにより、インク中の溶媒成分の吸収性に優れた溶媒吸収層を形成することができる。一方、塗工量を40g/m2以下、より好ましくは30g/m2以下とすることにより、厚膜の溶媒吸収層を乾燥させる際に、カールが発生し難くなる。
[密着層]
基材を併用する場合に、基材上に公知の塗膜装置を用いて予め密着層を設けておいて、その密着層の上に、溶媒吸収層を塗工することもできる。密着層を形成する密着剤の種類は特に限定されないが、例えば、熱可塑性の合成樹脂、天然樹脂、ゴム、ワックス等を用いることができる。また、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。密着層は、公知の塗工装置により、基材上に密着層の組成物を塗工して乾燥させることによって形成できる。その塗工液中の粒子濃度は、塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、塗膜速度と膜の均一性との観点から、塗工液の全質量に対して、0.1質量%以上かつ5質量%以下とすることが好ましい。このような塗工液の塗工量は、固形分換算で0.1g/m2以上かつ1g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を0.1g/m2以上、好ましくは1g/m2以下とすることにより、溶剤吸収層と基材との密着性を良好に保つことができる。また、溶剤吸収層を基材に密着させることにより、溶媒吸収層の剥離性を向上させることができる。
また、密着層を設ける以外の、密着性を向上させる方法としては、基材または第2の溶媒吸収層の界面に、予め、コロナ放電処理またはプラズマ放電処理によって表面の改質処理を施す方法、およびIPAまたはアセトン等の有機溶剤を塗工する方法がある。このような方法により、塗れ性を改良して密着性を向上させてもよい。
[微粒子浸透層]
微粒子浸透層は、加熱または加圧加熱により熔融膜化して、空隙構造が解消可能な絶縁性の材料によって形成され、空隙径が導電性微粒子よりも十分に大きな空隙構造であればよい。すなわち、微粒子浸透層は、インクジェット方式によって電極パターンを形成する際に、導電性微粒子を含むインクをスムーズに浸透拡散して吸収する空隙吸収型の薄膜のインク受容層である。
[微粒子浸透層の空隙径]
微粒子浸透層の樹脂微粒子の大きさは、導電性微粒子の大きさを考慮して、空隙構造の微粒子浸透層における空隙が導電性微粒子よりも十分に大きくなるように、設定すればよい。本発明者らの検討によれば、無機微粒子および水溶性樹脂によって構成される空隙吸収型の溶媒吸収層の空隙径の平均(平均細孔直径)は、50nm〜200nmの程度が好ましい。通常用いられている導電性微粒子の大きさは、40nm〜110nm程度である。したがって、例えば、90nm〜110nm程度の比較的大きい導電性微粒子を浸透拡散させるためには、600nm〜1.8μm程度の樹脂微粒子を用いて、120nm〜180nm程度の空隙構造を構成すればよい。また、40nm〜50nm程度の比較的小さい導電性微粒子を含むインクを用いる場合は、300nm〜1.8μm程度の樹脂微粒子を用いて、60nm〜180nm程度の空隙構造を構成すればよい。
本発明者らの検討によれば、導電性微粒子の浸透性の他、膜強度およびインクの吸収速度などを考慮した場合、樹脂微粒子および水溶性樹脂によって構成される微粒子浸透層の空隙径の平均(平均細孔直径)は、50nm〜200nmの程度が好ましい。平均空隙径が50nm以下の空隙構造の微粒子浸透層では、インク中のほとんどの導電性微粒子がスムーズに浸透できず、微粒子浸透層の表面および内部に導電性微粒子が残ってしまう。そのため、微粒子浸透層を熔融膜化して支持体へ接着(転写)する際に、接着性のない導電性微粒子が支持体と導電性微粒子保護膜との間に挟まれて、接着性(転写性)が低下するおそれがある。一方、平均空隙径が200nm以上の場合には、微粒子浸透層の膜強度が弱くなり、記録材の搬送時にクラックおよび粉落ちが生じやすくなる。
[微粒子浸透層の膜厚]
微粒子浸透層が浸透異方性を持たない場合、インクは、膜厚方向および平面方向のいずれにも等方的に浸透拡散する。そのため、導電性微粒子の所望の形態の拡がりを得るためには、微粒子浸透層全体の浸透性を制御すると共に、所望のインク吸収量に応じて微粒子浸透層の膜厚などを調整すればよい。微粒子浸透層の厚みを1μm〜10μmとすることにより、導電性微粒子の良好な浸透性および拡散性を得ることができた。
本発明の記録材においては、微粒子浸透層の表面に着弾したインクが微粒子浸透層内に浸透し、そのインクの先端部は、微粒子浸透層と、溶媒吸収層と、の界面にまで速やかに到達する。仮に、微粒子浸透層が厚くなり過ぎた場合には、インクのほぼ全ての溶媒成分が溶媒吸収層に吸収できなくなって、接着性(転写性)が低下するおそれがある。また、インク滴の大きさよりも微粒子浸透層が厚くなった場合には、インクが微粒子浸透層と溶媒吸収層との界面に到達できず、溶媒成分も含む全てのインクが微粒子浸透層内に吸収されるおそれがある。この場合には、インクの固液分離ができないために、微粒子浸透層の底部に稠密に圧縮された導電性微粒子膜が形成できなくなるおそれもある。したがって、微粒子浸透層の表面に着弾したインクが、微粒子浸透層と、インクの吸収速度の速い溶媒吸収層と、の界面に速やかに接触できるように、微粒子浸透層は薄く形成することが好ましい。
また、微粒子浸透層の空隙を導電性微粒子より十分に大きくしているため、その空隙の毛細管力も弱くなり、インクを微粒子浸透層内へ引きずり込む吸収速度も低下し、インクが微粒子浸透層と溶媒吸収層との界面に到達にまでの時間が長くなりやすい。したがって、微粒子浸透層の膜厚が10μmを超えることは好ましくない。一方、微粒子浸透層が1μmよりも薄い場合には、電極パターンを高濃度に形成するときに、微粒子浸透層内に導電性微粒子の全てを収納することができず、その一部が表面へ溢れて、導電性微粒子膜の擦過性が低下するおそれがある。そのため、高解像度で高濃度の導電性微粒子膜を形成する場合などには、微粒子浸透層の厚みを2μm〜5μmに調整することがより好ましい。
[微粒子浸透層の熔融膜化]
本発明の記録材においては、加熱または加圧加熱によって、微粒子浸透層を構成する微粒子とバインダーとがインク中の導電性微粒子を包み込みながら熔融膜化して、溶媒吸収層の表面に強固な導電性微粒子の保護膜(絶縁性保護膜)を形成する。そのため、微粒子浸透層は、熔融温度Tgが接着温度(転写温度)よりも低い樹脂材料の樹脂微粒子を用いて構成され、また必要に応じて、その樹脂微粒子をバインダー樹脂によって結合することにより構成されている。その樹脂微粒子は、導電性微粒子よりも十分に大きな空隙構造を形成するための比較的大きい粒子である。
加熱によって微粒子浸透層が熔融膜化せずに、微粒子浸透層の空隙構造が残った場合には、残留した空隙による吸水および吸湿作用によって、電極パターンからのもれ電流、および電極パターンの汚染劣化が生じるおそれがある。また、加熱により微粒子浸透層を熔融膜化した後に、溶媒吸収層を除去する場合には、微粒子浸透層を形成する樹脂材料としては、溶媒吸収層に用いられる結合材としての水溶性樹脂との親和性が低いものが好ましい。さらに、その微粒子浸透層を形成する樹脂材料としては、支持体に導電性微粒子の保護膜を形成して転写される微粒子浸透層に用いられる樹脂微粒子と、その結合材としての水溶性樹脂と、の親和性が低いものが好ましい。微粒子浸透層の加熱時に、溶媒吸収層の結合材である水溶性樹脂が熔融した場合でも、その水溶性樹脂と、微粒子浸透層に用いられる樹脂材料と、の親和性が低いために、それらは互いに接着しにくく、溶媒吸収層の剥離が容易となる。
[微粒子浸透層の熔融膜化温度]
このように、加熱前には空隙を構成する粒子状態にある微粒子浸透層は、加熱により熔融膜化するように、熔融膜化温度の低い樹脂微粒子と、バインダーである水溶性樹脂と、によって構成される。また、少なくとも樹脂微粒子と水溶性樹脂の一方には、導電性微粒子または支持体の表面との接着性に優れた絶縁性の樹脂材料を用いることが好ましい。樹脂微粒子の粒子状態および膜状態は、樹脂微粒子の熔融膜化温度Tgに応じて容易にコントロールすることができる。その熔融膜化温度Tgは、記録材の製造時の乾燥温度よりも高く、かつ加熱による接着(転写)時の加熱温度よりも低い範囲にあればよい。本発明者らの検討によれば、好ましい熔融膜化温度Tgは30℃〜120℃程度であった。樹脂微粒子の熔融膜化温度Tgが30℃以下である場合には、記録材を室温で保存したときに、加圧されていなくても、微粒子浸透層が熔融膜化して導電性微粒子インクの吸収浸透性が低下しまう場合がある。一方、樹脂微粒子の熔融膜化温度Tgが120℃以上である場合には、微粒子浸透層を熔融膜化するための加熱温度も高くなる。インクジェット方式による電極パターンの形成直後に記録材を高温に加熱した場合には、溶媒吸収層に吸収されたインクの溶媒成分が加熱されて多量に蒸発するために加熱効率が低下し、過大な熱量が必要となる。
樹脂微粒子の溶融膜化温度Tgは、インクジェット方式による電極パターンの形成後における記録材の乾燥温度よりも高く、かつ接着(転写)時の加熱温度よりも低い範囲(溶融膜化温度Tgは、30℃〜120℃程度)にあればよい。記録材の乾燥温度を適宜制御することにより、溶融膜化可能な顔料浸透層を安定的に形成することができる。
[微粒子浸透層の形成材料]
微粒子浸透層は、前述したように、加圧加熱される前は空隙を形成する粒子状態にあり、加圧加熱された後は、溶融膜化する樹脂微粒子と、樹脂粒子のバインダーとなる水溶性樹脂と、によって構成される。
導電性微粒子を包み込むように膜化して、強固な保護膜を形成する電気絶縁性の樹脂粒子の材料としては、例えば、PMMA、PS、フェノール系高分子、アクリル系高分子、ポリイミドのようなイミド系高分子、アリールエーテル高分子、アミド系高分子、フッ素系高分子、p−キシレン系高分子、ビニルアルコール系高分子、パリレン等が挙げられる。
[溶媒吸収層上における微粒子浸透層の製膜]
空隙構造の微粒子浸透層は、少なくとも樹脂微粒子と、水溶性樹脂と、を媒体に適宜混合して塗工液を調製し、これを溶媒吸収層の表面に塗布してから乾燥させることによって、形成することができる。空隙構造の溶媒吸収層上に微粒子浸透層を製膜する場合には、予め湿し水または浸し水などの処理によって、溶媒吸収層の空隙を液体で満たしてから、微粒子浸透層用の塗工液を塗工してもよい。毛細管力の大きな溶媒吸収層の表面に、微粒子浸透層用の塗工液を塗工する場合には、微粒子浸透層用の塗工液の水分と共に、水溶性樹脂が溶媒吸収層の空隙に浸透して、その空隙が埋まってしまうおそれがある。また、微粒子浸透層を形成する樹脂粒子として、溶媒浸透層の空隙よりも大きな樹脂粒子を用いてはいるものの、その微粒子の不十分なカットなどのために、溶媒浸透層の空隙よりも小粒径の樹脂微粒子が塗工液に含まれる場合もある。このような場合には、小粒径の樹脂微粒子によって溶媒吸収層の空隙が埋まってしまうおそれがある。
また、微粒子浸透層用の塗工液中の水分が溶媒吸収層の空隙内に急速に浸透して、その水分と、溶媒吸収層の空隙に残存する空気と、が置き換わる過程において、気泡が発生するおそれがある。このような気泡は、微粒子浸透層用の塗工液を介して排出される際に微粒子浸透層用の塗工液中にトラップされて、塗工不良を引き起こすおそれがある。このようなおそれがある場合には、上述したように、溶媒吸収層の表面を予め湿し水または浸し水などにより処理して、溶媒吸収層の空隙を液体で満たしてから、微粒子浸透層形成用の塗工液を塗工すればよい。このような湿し水または浸し水が溶媒吸収層の空隙を埋めることにより、微粒子浸透層用の塗工液の塗工前に、溶媒吸収層の空隙内の空気を系外に放出することができる。しかも、微粒子浸透層用の塗工液を塗工する際に、溶媒吸収層の空隙への水溶性樹脂および微細な樹脂微粒子の侵入を防止することができる。
微粒子浸透層用の塗工液中における樹脂微粒子の粒子濃度は、溶媒吸収層と同様に、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。塗膜速度と膜の均一性の観点から、樹脂微粒子の粒子濃度は、塗工液の全質量に対して10質量%以上かつ30質量%以下とすることが好ましい。また、塗工液の塗工量は、固形分換算で1g/m2以上かつ10g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を1g/m2以上、好ましくは10g/m2以下とすることにより、導電性微粒子の良好な浸透性および拡散性を得ることができる。
また、微粒子浸透層用の塗工液の塗工方法としては、溶媒吸収層の形成方法と同様の方法を用いることができる。しかし、熔融膜化可能な微粒子浸透層を形成するためには、微粒子浸透層用の塗工液の塗工後における乾燥温度を厳密制御する必要がある。すなわち、微粒子浸透層を形成する樹脂微粒子として、支持体に対する接着(転写)時の加圧加熱によって熔融膜化する材料が選定されるため、電極パターンを含む記録材の製造工程においては、樹脂微粒子が粒子状態を維持して空隙構造を形成する必要がある。そのために、微粒子浸透層の形成時の乾燥温度は、樹脂微粒子の熔融膜化温度Tgよりも低く設定する。微粒子浸透層の形成時に、樹脂微粒子の熔融膜化温度Tg以上の温度によって長時間加熱乾燥した場合には。樹脂微粒子が熔融軟化して空隙構造が保持できなくなるため、乾燥条件の設定には注意が必要である。一方、微粒子浸透層の形成時の乾燥温度が高い場合には、塗工スピードを高めることができるため、生産性の面においては、微粒子浸透層の形成時の乾燥温度をできるだけ高くするほうが好ましい。
[溶媒吸収層の複層構成]
溶媒吸収層を複層構成としてもよい。例えば、微粒子浸透層側に配置した第1の溶媒吸収層の下部に、第2の溶媒浸透層を配置してしてもよい。第1の溶媒吸収層は、加熱によって熔融膜化可能な樹脂微粒子とバインダー樹脂とによって、導電性微粒子よりも十分に小さな空隙が形成され、接着(転写)時に熔融膜化して空隙構造を解消する空隙吸収型の薄膜の層である。第2の溶媒吸収層は、加熱後にも空隙構造を維持しながら溶媒成分を保持する層である。
[第1の溶媒吸収層の形成材料]
第1の溶媒吸収層を形成する樹脂微粒子の径は、導電性微粒子と同程度もしくはさらに小さく、かつ第2の溶媒吸収層を形成する無機微粒子よりはやや大きく、微粒子浸透層を形成する樹脂微粒子と同様の材質であるものの、その樹脂微粒子よりも格段に小さい。このような小径の樹脂微粒子を用いて、微粒子浸透層と同様に、第2の溶媒吸収層に第1の溶媒吸収層を積層することができる。
このように、樹脂微粒子の粒子径を選定することにより、第1の溶媒吸収層に、導電性微粒子よりも小さく、かつ第2の溶媒吸収層の空隙よりもやや大きな空隙を構成することができる。これにより、第1の溶媒吸収層は、微粒子浸透層との界面においてインク中の導電性微粒子を分離すると共に、インク中の溶媒成分を吸収することができる。より小さな空隙が構成されて、インク吸収速度がより高い第2の溶媒吸収層に対して、インク中の溶媒成分を速やかに移動させるために、第1の溶媒吸収層は薄膜に構成するのが好ましい。
第1の溶媒吸収層には溶媒成分は残留しにくいため、インクジェット方式による電極パターンの形成直後においても、微粒子浸透層と同様に、加熱による熔融膜化が可能である。すなわち、第2の溶媒吸収層が高い毛細管力を有し、かつ十分な膜厚によって多量の溶媒成分の吸収容量を有しているため、溶媒成分ほぼ全ては、薄膜の第1の溶媒吸収層を速やかに通過して、厚膜の第2の溶媒吸収層に吸収される。したがって、第1の溶媒吸収層を微粒子浸透層と同様の樹脂材料によって形成してから、微粒子浸透層と同様に加熱して熔融膜化させることにより、強固な透明保護膜を形成することができる。
第1の溶媒吸収層は、微粒子浸透層と同様に、加熱前には空隙を構成する粒子状態にあり、加熱により溶融膜化するように、樹脂微粒子と、バインダーとなる水溶性樹脂と、によって構成される。第1の溶媒吸収層は、導電性微粒子を分離できるように、導電性微粒子よりも十分に小さな空隙を構成するために、微粒子浸透層で使用したものと同様に、加熱により熔融膜化する電気絶縁性の樹脂材料によって形成された樹脂微粒子を用いることが好ましい。ただし、第1の溶媒吸収層における樹脂微粒子は、微粒子浸透層における樹脂微粒子よりも小粒径である。
第1の溶媒吸収層における樹脂微粒子の溶融膜化温度Tgは、インクジェット方式による電極パターンの形成後の乾燥温度よりも高く、かつ加熱圧着時の加熱温度よりも低い範囲(30℃〜120℃程度)にあればよい。乾燥温度を適切に制御することにより、溶融膜化可能な第1の溶媒吸収層が形成できる。
[密着層の材料]
第1の溶媒吸収層を熔融膜化して、それを微粒子浸透層の表面に保護膜として残す場合には、第1の溶媒吸収層と微粒子浸透層との間に密着層を設けてもよい。その密着層の形成材料としては、第1の溶媒吸収層および微粒子浸透層におけるバインダーとしての水溶性樹脂のいずれに対しても、高い親和性を有する材料を選択することが好ましい。このような材料としては、例えば、熱可塑性の合成樹脂、天然樹脂、ゴム、ワックス等を用いることができる。このような密着層の厚さは、第1の溶媒吸収層と微粒子浸透層のインク吸収性を損なわないように薄くする。特に、密着層を撥水性の材料によって形成する場合、密着層の厚さは、第1の溶媒吸収層と同程度、もしくはさらに薄くすればよい。さらに、粒子状の密着剤の塗工液によって密着層を塗工する場合には、微細な密着剤の粒子が第1の溶媒吸収層の空隙に入り込まないように、第1の溶媒吸収層の表面を予め湿し水または浸し水などによって処理する。このような処理によって、溶媒吸収層の空隙を液体で満たしてから、密着剤を塗工すればよい。
[離型層]
溶媒吸収層と微粒子浸透層との間、もしくは第1の溶媒吸収層と第2の溶媒吸収層との間などに、極薄膜の離型層を設けることにより、支持体に対する記録材の接着(転写)後に、溶媒吸収層を安定的に除去することができる。溶媒吸収層と微粒子浸透層の界面に離型層を設けておくことにより、微粒子浸透層が支持体に転写されて、支持体上に強固な導電性微粒子の保護膜が形成された後に、溶媒吸収層を容易に除去することができる。したがって厚膜の溶媒吸収層は、毛細管力および吸収容量などを含むインクの吸収性に特化するように構成して、その機能を向上させることができる。
離型層は、極薄膜の一様な層であってもよく、または離型剤が離散的に配された層であってもよい。具体的には、離型層を海島状またはまだら状に設けてもよい。撥インク性の離型剤を用いる場合には、その離型剤を離散的に配して離型層を形成してもよい。この場合には、吸収されたインクの一部は、離型層から露出した下層にすばやく触れることができ、良好な剥離性とインク吸収性とを両立させることができる。
[離型層の材質]
このような離型剤の材料としては、例えば、シリコーンワックスなどのワックス類に代表されるシリコーンワックス、シリコーン樹脂などのシリコーン系材料、フッ素樹脂などのフッ素系材料、ポリエチレン樹脂等、が挙げられる。剥離層は、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、スロットダイコーティング法等によって、剥離性を含有する組成物(離型剤)を溶媒吸収層上に塗工してから、乾燥させることにより形成できる。
離型層は、溶媒吸収層側の表面と、微粒子浸透層側の表面と、の間に挟まれる。溶媒吸収層側の表面は、溶媒吸収層を構成する微粒子の表面、またはその微粒子を結合して空隙構造を形成する水溶性樹脂の表面である。微粒子浸透層側の表面は、微粒子浸透層を構成する樹脂微粒子の表面、または空隙構造を形成する水溶性樹脂の表面である。離型層は、溶媒吸収層側と微粒子浸透層の空隙構造を阻害しないように、極薄の膜状に付着される。離型層に用いる離型剤(型材材料)の種類は特に限定されないが、離型性に優れ、かつ接着(転写)時の加熱によっても容易に熔融しない材料であることが好ましい。また、離型材料としては、支持体に転写される層(微粒子浸透層など)に用いられる樹脂微粒子または結合材としての水溶性樹脂に対して、接着しにくい材料が好ましい。溶媒吸収層の結合材である水溶性樹脂が加熱されて熔融した場合でも、微粒子浸透層に用いられる樹脂材料と、離型材料と、の親和性が低ければ、それらは互いに接着しにくく、それらの境界面における剥離が容易となる。
一般に、離型剤は、離型機能と共に撥水性を有する。そのため、溶媒吸収層と微粒子浸透層との境界面に離型層を付加する場合には、溶媒吸収層の毛細管力によるインクの吸収特性を損なわないように、離型層の厚さを極めて薄くする必要がある。一般に、導電性微粒子の平均粒子径は40nm〜110nm程度であるため、溶媒吸収層の平均空隙径は、それよりも小さい5〜100nmに調整する。離型層の厚さは、溶媒吸収層の空隙径と同程度、または、それらよりも薄くすればよい。離型層の厚みが溶媒吸収層の空隙径よりも小さければ、微粒子浸透層内の50nm〜200nm程度の大きな空隙構造をスムーズに浸透してきたインクの慣性力によって、そのインク中の溶媒成分の先端部が、撥水性の極薄の離型層を乗り越えることができる。その溶媒成分は、親水性の材料を用いて小さな空隙が形成された毛細管力の高い溶媒吸収層に到達することにより、その溶媒吸収層に吸収される。
このように、親水性に劣る離型層を形成した場合にも、その離型層の厚みを溶媒吸収層の空隙径よりも小さくすることにより、インク中の溶媒成分は、微粒子浸透層内を浸透してきたインクの慣性力によって離型層を乗り越えることができる。したがって、溶媒吸収層における溶媒成分の高速な吸収を阻害しないように、離型層を形成することができる。同様に、第1の溶媒吸収層と第2の溶媒吸収層との界面に離型層を設ける場合には、離型層の厚みを第1の溶媒吸収層の空隙径よりも小さくすることにより、インク中の溶媒成分の速やかな吸収を実現することができる。また、離型性を向上させるために、他の層との界面における、溶媒吸収層の微粒子または結合材の表面に、離型性の溶剤等を極薄に塗布または表面改質処理を行うことにより、離型層を特別に設けることなく、溶媒吸収層の界面における離型性を向上させてもよい。その場合には、溶媒吸収層の空隙構造の内面が離型剤の浸透または蒸気などにより汚染されて、溶媒吸収層の親水性が低下しないように、注意することが必要である。
[溶媒吸収層に対する離型層の形成方法]
離型層は、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、スロットダイコーティング法等によって、前述したような剥離性を含有する組成物を塗工して、乾燥させることにより形成できる。その塗工液中における離型剤の濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。塗膜速度および膜の均一性の観点から、塗工液の全質量に対して、離型剤を0.1質量%以上かつ5質量%以下とすることが好ましい。塗工液の塗工量は、固形分換算で0.1g/m2以上かつ1g/m2以下とすることが好ましい。塗工量を0.1g/m2以上、好ましくは1g/m2以下とすることにより、基材と溶媒浸透層(または保護層)との剥離性を良好に保つことができる。
撥水性の離型剤を塗工する場合には、溶媒吸収層の表面を、予め湿し水または浸し水などにより処理して、溶媒吸収層の空隙を液体で満たしてから、離型剤の塗工液を塗工すればよい。湿し水または浸し水が溶媒吸収層の空隙を埋めることにより、離型剤の塗工液の塗工前に、溶媒吸収層の空隙に存在する空気を系外に放出することができる。さらに、溶媒吸収層の空隙への離型剤の侵入による毛細管力の低下を防止することができる。また、グラビア法などの転写印刷法によって、離型剤を溶媒吸収層に極薄に転写させてもよい。また、特別な離型層を設けずに、基材に表面改質を行って剥離性を向上させてもよい。また、基材の表面を不活性化するための表面改質を行ってもよい。その表面改質の方法は特に制限されず、例えば、基材の表面に、アルミニウム、亜鉛または銅などの金属、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂などを蒸着する方法などが挙げられる。これらの表面処理により、基材と溶媒吸収層との剥離性を高めて、支持体への接着(転写)後に、溶媒吸収層を基材から剥離しやすくすることができる。
溶媒吸収層の除去
溶媒吸収層は、溶剤を用いて溶解除去しやすいように構成することもできる。例えば、第2の溶媒吸収層のバインダーをポリビニルアルコールにより構成し、それに接する第1の溶媒吸収層あるいは微粒子浸透層をポリ(メタ)アクリル酸またはその共重合体樹脂により構成する。そして、微粒子浸透層と第1の溶媒吸収層とを熔融膜化して空隙構造を解消することにより、導電性微粒子膜を包み込むように、その表裏に保護膜を形成する。第2の溶媒吸収層の空隙構造にジメチルスルホキシドなどの溶剤を吸収浸透させることにより、その第2の溶媒吸収層のバインダーを溶解して、その第2の溶媒吸収層を剥離除去することができる。
すなわち、加熱後にも空隙構造を維持している第2の溶媒吸収層に、溶解液としてジメチルスルホキシドを吸収浸透させることにより、第2の溶媒吸収層の金属微粒子を結合させているPVA樹脂が溶解により破壊される。その後、このように結合崩壊された第2の溶媒吸収層をブレードなどによって掻き取り、その表面を水で洗い流すことにより、第2の溶媒吸収層を除去することができる。この場合、微粒子浸透層と第1の溶媒吸収層は熔融膜化して空隙構造が存在しないため、それらに対してはジメチルスルホキシドが浸透できず、微粒子浸透層と第1の溶媒吸収層とを構成するアクリル樹脂がジメチルスルホキシドによって溶解されない。したがって、導電性微粒子の保護膜は溶解されずに保護される。
[接着層]
微粒子浸透層の表面に、支持体との接着層または絶縁性保護膜の強化層を形成するために、接着剤をまだら状、または海島状に離散的に設けた接着層を付加することもできる。接着剤の材質は、種々の支持体および用途に応じて選択すればよく、1種もしくは複数種を選択してもよい。例えば、特定の支持体への接着性に優れた接着剤と、微粒子浸透層への接着性に優れた接着剤と、を選択して混合させた接着剤によって、接着層を形成してもよい。これにより、支持体と導電性微粒子の保護膜のどちらに対しても良好に接着性を得ることができる。接着剤としては特に限定されず、公知の接着剤を使用できる。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が使用でき、その中でも熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、PET、アクリル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチック系の支持体に対する接着性に優れた接着剤としては、ポリウレタン系、アクリル系、もしくはそれらを混合物した接着剤の樹脂微粒子が好ましい。また、ガラスまたは金属などの支持体との接着性に優れた接着剤としては、ポリウレタン系、オレフィン系の接着剤もしくはそれらを混合物した接着剤の樹脂微粒子が好ましい。
[微粒子浸透層上への接着層の形成方法]
接着剤を含有する塗工液を微粒子浸透層の表面に塗布することによって、接着層を形成することができる。接着剤は、その接着剤に覆われずに露出する露出部が粒子浸透層の表面に残こるように、微粒子浸透層の表面にまだら状または海島状に離散的に設けることができる。接着層用の塗工液中における接着剤の濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。その塗工液中の接着剤の濃度は、塗工液の塗工性などを考慮して、適宜決定すればよい。塗膜速度と接着剤の均一性の観点からは、塗工液の全質量に対して、接着剤を0.5質量%以上かつ20質量%以下とすることが好ましい。塗工方法としては、空隙吸収型の微粒子浸透層の表面に接着剤を離散的に設けるために、グラビアコーティング法を用いることが好ましい。その場合、グラビアロールの溝の線数は、好ましく200線程度、より好ましくは300線程度とすることが好ましい。その線数が600線を超えると、隣接する接着剤同士の間隔が狭くなり過ぎて、隣接する接着剤同士の間にインク滴が跨り易くなり、インクが微粒子浸透層の表面に到達するまでの時間が長くなるおそれがある。
基材上に形成された微粒子浸透層の表面に、粒子状の接着剤の塗工液を塗工する場合には、接着剤粒子が微粒子浸透層の空隙に入り込まないようにする必要である。微粒子浸透層の空隙よりも大きな接着剤粒子を用いたとしても、接着剤粒子が2次凝集体である場合、または粒度分布がシャープではなく微粒子のカットが不十分である場合などにおいては、微粒子浸透層の空隙よりも小粒径の接着剤が含まれるおそれがある。接着剤の表面にインクをほとんど残すことなく速やかに吸収するためには、微粒子浸透層の空隙構造が重要である。そのため、接着剤の塗工液の塗工前に、予め、微粒子浸透層と溶媒吸収層の空隙構造を浸し水などにより処理して、微粒子浸透層と溶媒吸収層の空隙を液体で満たしてから、接着層用の塗工液を塗工する。これにより、微粒子浸透層の空隙へ微細な接着剤粒子の侵入を防止することができる。
接着剤は、加熱圧着時に加熱により軟化熔融して膜化する材料によって構成されており、接着剤の塗膜後の乾燥工程においても十分な配慮が必要となる。すなわち、塗膜後の着剤は、その接着剤が軟化熔融する膜化温度以下、あるいはガラス転移温度以下で乾燥することが好ましい。粒子浸透層の露出部が、インクジェット方式による導電パターンの形成を可能とする空隙構造を維持できていれば、乾燥工程の温度および時間は、接着剤の表面が多少熔融軟化して微粒子浸透層に接着するように調整してもよい。接着剤が軟化熔融膜化する温度を予め測定しておき、微粒子浸透層の空隙構造の保持、微粒子浸透層に対する接着剤の接触面積の増大による微粒子浸透層の露出部の減少の抑制、および生産性の向上を図るように、乾燥温度と燥時間を設定することが好ましい。また、接着剤に複数種の粒子を含ませてもよく、あるいは、ある1つの粒子に、粒子状で残存する接着剤粒子のバインダーとしての機能、および微粒子浸透層の水溶性樹脂との接着性を向上させる機能を持たせてもよい。この場合、乾燥温度は、バインダーとして機能する接着剤の膜化温度以上、かつ粒子状で残存する接着剤粒子の膜化温度以下とすることが好ましい。このように、接着剤の性質に応じて乾燥温度を適宜選択することにより、インクジェット方式による導電パターンの記録特性と、接着性(転写性)と、を両立させることができる。
接着剤の塗工液は、乾燥工程において水分が蒸発するため、塗工後の成膜時には接着剤の濃度が高くなる。乾燥前においては、接着剤の塗工液を構成する接着剤粒子は、ほぼ単粒子として分散されている。一方、乾燥工程において接着剤の濃度が高くなったときには、接着剤粒子の分散が破壊されやすくなり、接着剤粒子同士の衝突および合一により、複数の粒子が凝集するおそれがある。このように複数の粒子が凝集した状態で成膜することにより、微粒子浸透層の表面に、接着剤を離散的に設けることができる。したがって、接着剤を単粒子で離散的に設ける場合には、乾燥前の接着剤塗工液の濃度を低くすればよく、一方、接着剤を複数の粒子が凝集した状態で離散的に設ける場合には、乾燥前の接着剤塗工液の濃度を高くすればよい。このように、乾燥前の接着剤塗工液の濃度を適宜調整することにより、成膜時における接着剤の離散状態を調整することができる。接着剤の離散状態は、電子デバイス用の基板および電子デバイスの用途に応じて制御することができる。
また、転写ローラまたは転写フィルムなど表面上に、離型層を介して、粘着性の接着剤をまだら状あるいは海島状に離散させた塗工膜を設けておき、その塗工膜を微粒子浸透層の表面に圧着転写してもよい。転写ローラまたは転写フィルムなどの表面に形成した接着剤の離散パターンを、そのまま微粒子浸透層の表面に転写できるため、接着剤の離散状態を任意にコントロールすることができる。このような方法においては、微粒子浸透層の空隙への接着剤粒子の浸透を考慮する必要がなく、微粒子浸透層に浸し水等による特別な処理を行うことなく、微粒子浸透層の表面に接着剤を離散的に形成することができる。接着剤を含有する塗工液を塗布して、微粒子浸透層の表面に接着剤を海島状に離散的に設けるためには、塗工液中の接着剤の濃度は、塗工液の全質量に対して2質量%以上かつ40質量%以下とすればよい。
[接着層としての第2の微粒子浸透層]
図1(c)のように、薄膜の第1の微粒子浸透層1670の表面に、接着層として、支持体との接着性に優れた薄膜の絶縁性の第2の微粒子浸透層1680を付加的に設けてもよい。第2の微粒子浸透層1680は、加圧加熱により熔融膜化して導電性微粒子膜を保持する第1の微粒子浸透層1670とは異なり、支持体55への接着性がより優れた絶縁性の材質である。大きな空隙が構成された第2の微粒子浸透層1680を設けることにより、支持体への接着性(転写性)を向上させることができる。
第2の微粒子浸透層1680の形成材料としては、種々の支持体との接着性と、熔融膜化する第1の微粒子浸透層1670との接着性と、を考慮した材料を選定すればよい。第2の微粒子浸透層1680を形成する樹脂材料は、支持体の種類、例えば、熔融膜化する第1の微粒子浸透層1670の樹脂材料だけでは接着しにくいガラスなどの種々の支持体に合わせて、選定すればよい。これにより、種々の支持体に対する記録材の接着性(転写性)を向上させることができる。第2の微粒子浸透層1680は、第1の微粒子浸透層1670と同様に、加圧加熱の前は空隙を構成する粒子状態にあり、加圧加熱により溶融膜化する樹脂微粒子と、その樹脂粒子のバインダーとなる水溶性樹脂と、によって構成される。さらに、第2の微粒子浸透層1680は、ガラスなどの支持体に対する接着性が良好な樹脂材料によって構成することが好ましい。
このような、樹脂粒子の材料としては、アクリル系高分子が好ましい。第2の微粒子浸透層1680には、第1および第2の導電性微粒子よりも十分に大きく、かつ第1の微粒子浸透層1670の空隙よりもやや大きな空隙構造を構成する。そのために、第2の微粒子浸透層1680における樹脂粒子としては、第1の微粒子浸透層1670を構成する樹脂粒子よりも粒子径がやや大きいものを使用する。これにより、導電性微粒子の浸透性に優れた空隙構造を有する第2の微粒子浸透層1680を得ることができる。第2の微粒子浸透層1680は、その膜厚が1μm〜3μm程度であり、熔融膜化した際に、支持体と導電性微粒子の保護膜との間の全面に亘って、それらの面における凹凸および空隙を埋めて一様な接着膜が形成できる体積があればよい。
[第1および第2のインクと、第1および第2の微粒子浸透層と、の組み合わせ]
2層の電極を形成するために、溶媒吸収層の表面上に、空隙の大きさが異なる2層の微粒子浸透層を設けることも可能である。具体的には、空隙径のやや小さな第1の微粒子浸透層と、それよりも空隙径が大きな第2の微粒子浸透層と、を設け、インクとして、小粒径の導電性微粒子を含む第1のインクと、大粒径の導電性微粒子を含む第2のインクと、を用いる。第1のインクは、第1の微粒子浸透層と溶媒吸収層との界面において固液分離されて、第1の電極パターンを形成し、一方、第2のインクは、第1の微粒子浸透層と第2の微粒子浸透層との界面において固液分離されて、第2の電極パターンを形成する。このような電極パターンが形成された記録材の全体を加熱して、第1および第2の微粒子浸透層を溶融膜化(必要に応じて溶媒吸収層も熔融膜化)することにより、2層の電極と、それらの間の絶縁膜と、を同時に形成することができる。
第1の微粒子浸透層において、上述した平均空隙径の範囲の空隙を形成するためには、一次粒子径が55nm〜85nm、凝集した二次粒子径として550nm〜850nmの無機微粒子、もしくは平均粒子径が550〜850nmの樹脂微粒子が好ましい。第2の微粒子浸透層において、上述した平均空隙径の範囲の空隙を形成するためには、一次粒子径が115nm〜180nm、凝集した二次粒子径として1.2μm〜1.8μmの無機微粒子、もしくは平均粒子径が1.2μm〜1.8μmの樹脂微粒子を用いることが好ましい。
例えば、第1のインクにおける導電性微粒子の平均粒子径は40nm〜50nm、第2のインクにおける導電性微粒子の平均粒子径は100nm〜110nmとすることができる。このような場合には、第1の微粒子浸透層における平均空隙径は55nm〜85nm程度、第2の微粒子浸透層における平均空隙径は115nm〜200nm程度とすることが好ましい。このような範囲に平均空隙径を設定することにより、第1および第2のインクは、それぞれ所望の界面において良好に固液分離される。この結果、絶縁膜内に導電性微粒子が入り込みにくく、2層の電極間に形成される絶縁膜の絶縁性が良好に維持される。
第1の微粒子浸透層をやや大きな膜厚とした場合には、インクの浸透吸収時間がやや長くはなるものの、第1および第2の電極パターンの間に、より十分な絶縁性を持つ絶縁膜を形成することができる。この場合には、例えば、第1の微粒子浸透層の膜厚を3〜7μm程度とし、第2の微粒子浸透層の膜厚を1〜3μm程度とすることが好ましい。第2の微粒子浸透層が薄膜であるために、第2の電極パターンの表面における絶縁性保護膜の絶縁性が不足する場合には、第2の微粒子浸透層と絶縁性フィルムとを合わせて再び加圧加熱してもよい。これにより、第2の微粒子浸透層を再び熔融膜化させて、第2の微粒子浸透層と絶縁性フィルムとの接着により絶縁性を向上させることができる。
[電極パターンの形成方法]
電極パターンの形成方法は、導電性微粒子を含むインクを用いて電極パターンを形成する記録工程(電極形成工程)と、電極パターンの周囲における微粒子浸透層の空隙を解消して、電極パターン電極の表面に絶縁膜を形成する空隙解消工程と、を含む。必要に応じて、溶媒吸収層の空隙を解消して、その裏面に絶縁層を形成する工程、および、絶縁性微粒子を含むインクを用いて絶縁パターンを記録して、絶縁膜を強化する工程を含んでもよい。さらに、導電性微粒子を微粒子浸透層の膜厚以上に堆積させて、記録材の表面に電極接続部を形成する工程、および、電極パターンと、微粒子浸透層を熔融膜化した絶縁膜と、を支持体に転写する転写工程等を含んでもよい。
[電極パターン]
図2(a)のように、導電性微粒子2000を含むインクを用いて、インクジェット方式により、薄膜の微粒子浸透層1600と厚膜の溶媒吸収層1601と間の界面に、導電性微粒子2000を、微粒子浸透層1600の膜厚を超えない高さに堆積させる。これにより、微粒子浸透層1600の底部に、にじみの少ない稠密な薄膜の導電性微粒子膜を形成して、高解像度の電極パターンを形成することができる。微粒子浸透層の上層部には、導電性微粒および溶媒成分のいずれも残らず、加熱により熔融膜化可能な絶縁性の材料により構成される空隙構造が維持される。加熱処理して微粒子浸透層1600を熔融膜化させることにより、導電性微粒子の保護膜を覆うように絶縁性保護膜が積層された電極を形成することができる。厚膜の溶媒吸収層1601は十分な量の溶媒成分の吸収が可能であるため、導電性微粒子2000を含むインクを重ね打ちして、十分な膜厚で導電率に優れた導電性微粒子膜を高解像度に形成することができる。
また、図2(b)のように、導電性微粒子2000の一部を微粒子浸透層1600の表面に溢れださせるように、導電性微粒子2000を、微粒子浸透層1600の膜厚を超える高さ以上に堆積させてもよい。これにより、他の電極と接続可能な電極パッド部2023を形成することができる。導電性微粒子2000は、微粒子浸透層1600の平面方向に関しては、微粒子浸透層1600の膜厚相当分よりも大きくは滲み出しにくく、台形形状に堆積されるため、解像度の低下が抑制される。また、微粒子浸透層1600の膜厚を超えないように導電パターンを多重記録することにより、絶縁性保護膜を残しながら厚膜の導電性微粒子膜を形成して、導電率を向上させつつ、解像度の高い電極を形成することもできる。その後の空隙解消工程において、絶縁性の微粒子浸透層1600を加熱して、導電性微粒子膜を包み込みながら微粒子浸透層1600を熔融膜化させる。これにより、表層が絶縁性保護膜によって覆われた電極部と、露出する電極パッド部2023と、を形成することができる。
[絶縁性微粒子を含むインクによる絶縁部の形成]
電極パターンの形成方法は、絶縁性微粒子を含むインクを用いて絶縁部を形成する工程を含んでもよい。例えば、図12(a)のように、導電性微粒子2000による電極パターンの形成前に、予め、絶縁性微粒子を含むインクによって、少なくとも電極パターンの外周に位置する絶縁パターンを形成してもよい。その絶縁性微粒子により微粒子浸透層1600の空隙に先埋めし、その絶縁性微粒子を堆積させて絶縁性の枠部2021を形成してから、その枠部2021の内側に、導電性微粒子2000を含むインク1003によって電極パターンを形成してもよい。このように、電極パターンの周囲における微粒子浸透層1600の空隙構造を絶縁性微粒子により先埋めしてから、絶縁性の枠部2021を形成しておくことにより、電極パターンの形成時において、導電性微粒子2000は、枠部2021からはみ出し難くなる。この結果、さらににじみの少ない高精細な電極パターン2022を形成して、その後における記録材1の加圧加熱により、図12(b)のように、電極パターン2022に対応する高精細な電極を形成することができる。
特に、電極パッド部2023のように導電性微粒子2000を高く堆積させる場合、枠部2021は、導電性微粒子2000のはみ出しを十分に抑制して、大きな効果を発揮する。導電性微粒子2000を含むインク1003が枠部2021上にはみ出して着弾した場合、そのインク1003は、枠部3021の内側の微粒子浸透層1600に対して流れ込みやすい。すなわち、その枠部2021上のインク1003は、絶縁性微粒子によって格子状に空隙を埋められた枠部3021に対してよりも、絶縁性微粒子によって空隙が埋められていな枠部3021の内側の微粒子浸透層1600に対して流れ込みやすい。したがってインク1003は、枠部2021内に位置する微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1601との界面において固液分離され、導電性微粒子2000が稠密に圧縮堆積される。
[記録材の表面の平坦化]
導電性微粒子2000を含むインクを用いて、枠部3021内に電極パターン2022と電極パッド部2023とを記録した後に、絶縁性微粒子2001を含むインクを用いて、電極パッド部2023を除く記録材1の全面に、絶縁性の強化画像を記録してもよい。これにより、熔融膜化時における微粒子浸透1600の膜厚の降下量を均一化して、熔融膜化後における記録材の表面を平坦化することができる。
微粒子浸透層1600を加熱して熔融膜化させる場合、微粒子浸透層1600は、その空隙体積に応じて膜厚が減少する。微粒子浸透層1600は、導電性微粒子2000を含むインクによって電極パターンを記録される場合に、その電極パターンに対応する部分の空隙が導電性微粒子2000によって埋められる。結果的に、微粒子浸透層1600は、その空隙が不均一に埋められることにより、熔融時における空隙分の体積減少量も不均一となり、電極パターンが位置する記録材1の表面に凹凸が生じるおそれがある。このような凹凸は、接着(転写)および電極の接続などの後工程において、接着不良等を招くおそれがある。
図12(a)のように、絶縁性微粒子2001を含むインクを用いて、導電性微粒子2000および絶縁性微粒子2001を堆積させることにより、記録材1の全面に亘って、それらの微粒子が微粒子浸透層1600の空隙を埋める量を均一化することができる。その後、図12(b)のように、記録材1を加熱して微粒子浸透層1600を熔融膜化することにより、平坦性に優れた記録物1を作成することができる。また、導電性微粒子2000を堆積させた電極パターン2022に重ねて、絶縁性微粒子2001を堆積させることによって、電極パターン2022の表面の絶縁性を強化することができる。絶縁性微粒子2001を用いて絶縁性の強化画像を記録して、絶縁性を強化する平坦部2024を形成することにより、微粒子浸透層1600の単位面積当たりにおける、膜厚方向の空隙の体積量が記録材1の表面全体において均一化される。これにより、微粒子浸透層1600の膜厚の減少量を均一化して、熔融膜化後における記録材1の表面を平坦化することができる。図12(a)のように、導電性微粒子2000を微粒子浸透層1600の表面まで溢れさせて、電極パッド部2023を形成する場合、絶縁性微粒子2001は、必ずしも微粒子浸透層1600の表面まで溢れさせなくてもよい。微粒子浸透層1600の表面近くまで絶縁性微粒子2001が体積していれば、加熱加圧時の圧力によって、微粒子浸透層1600の表面を十分に平坦化することができる。
第1の電極パターンを形成する第1の導電性微粒子膜の表面に、絶縁性微粒子を含むインクを重ねて、微粒子浸透層膜内に収まるように絶縁性微粒子を堆積させることにより、微粒子浸透層の中間部に、絶縁性強化の保護膜を形成することもできる。絶縁性強化の保護膜の上部における微粒子浸透層に空隙構造が残されている場合には、その絶縁性強化の保護膜上に、導電性微粒子を含むインクを再び用いて第2の電極パターンを記録して、第2の導電性微粒子膜を形成することができる。導電性微粒子および絶縁性微粒子を堆積させて微粒子浸透層の空隙を埋めた場合でも、それらの微粒子間、および、それらの微粒子と空隙の壁との間には、微小な空隙構造が維持されている。それらの間には、微粒子がほぼ浸透できなくなるが、インクの溶媒成分は、流路抵抗がやや高くなるもののスムーズに吸収浸透することができる。また、電極パターンを重ねて記録することにより、例えば、微粒子浸透層の中間部にまで厚く導電性微粒子を堆積させて、第1の導電性微粒子膜の一部を電極パッド部とし、その電極パッド部に、第2の導電性微粒子膜を直接接続させてもよい。また、第1および第2の導電性微粒子膜は、絶縁性強化の保護膜も含めて、同一のインクジェット記録装置を用いて順次連続して記録することが可能であるため、それぞれの記録パターンを高精度に位置合わせすることができる。また、必要に応じて、第2の絶縁性強化の保護膜を形成してもよい。
微粒子浸透層1600の表面に接着層2002を設けることにより、接着強化膜1705を形成して、絶縁性の種々の支持体55に対する記録材1の接着性(転写性)を向上させることができる。また溶媒吸収層は、図17(a)のように、加熱により熔融膜化可能な第1の溶媒吸収層1700と、インクの溶媒成分の吸収性に優れた厚膜の第2の溶媒吸収層1706と、の2層構造としてもよい。第1の溶媒吸収層1700を熔融膜化してから、図17(c)のように、溶媒成分を吸収した第2の溶媒吸収層1706を除去してもよい。これにより、記録材1の裏面に、第1の溶媒吸収層1700が溶融膜化した絶縁性保護膜1702を形成することができる。また、必要に応じて、絶縁性保護膜1702と絶縁性の支持体55とを合わせて加圧加熱して、図17(c)のように、絶縁性保護膜1702を再熔融させて支持体55を接着させることにより、記録材1の裏面の絶縁性を強化することもできる。
また、微粒子浸透層1600は、第1および第2の微粒子浸透層1670,1680の2層構造として、同一のインクジェット記録装置における複数の記録ヘッドを用いることにより、位置合わせ精度が優れた複数層の電極パターンを形成することができる。具体的には、図17(a)のように、インクジェット記録装置における第1の記録ヘッド2018Aから、第1の導電性微粒子2027を含むインクを吐出して第1の電極パターンを形成する。その後、図17(b)のように、同一のインクジェット記録装置における第2の記録ヘッド2018Bから、第2の導電性微粒子2028を含むインクを吐出して第2の電極パターンを形成する。さらに、このような記録材1と絶縁性の支持体とを合わせて加圧加熱する簡単な積層工程によって、記録材の表裏面の絶縁性を強化することもできる。
[多層構造の微粒子浸透層]
微粒子浸透層は、空隙径が異なる複数の層によって構成することができ、この場合には、粒径が異なる導電性微粒子を含む複数のインクを用いて多層の電極パターンを形成することができる。例えば、図17(a),(b)のように、微粒子浸透層1600は、空隙径が比較的小さい第1の微粒子浸透層1670と、空隙径が比較的大きい第2の微粒子浸透層1680と、の2層構造とし、導電性微粒子を含むインクとして第1および第2のインクを用いる。第1のインクは、粒子径が比較的小さい導電性微粒子2027を含み、第1の微粒子浸透層1670の下層部の界面において固液分離可能なインクである。第2のインクは、粒子径が比較的大きい導電性微粒子2028を含み、第2の微粒子浸透層1680の下層部の界面において固液分離可能なインクである。第1および第2のインクは、同一のインクジェット記録装置における記録ヘッド2018A,2018Bから吐出させることができる。
図17(a)のように、記録ヘッド2018Aから吐出された第1のインクは、第1の微粒子浸透層1670の底部に位置する界面において固液分離されることにより、その界面に、第1の導電性微粒子2027によって第1の電極パターンを形成する。第1の導電性微粒子2027を第1の微粒子浸透層1670の膜厚よりも小さくなるように堆積した場合、第1の電極パターンの上部における第1の微粒子浸透層1670の部分は、図17(c)のように、溶融膜化されることにより絶縁性保護膜2029となる。また、第1の導電性微粒子2027を第1の微粒子浸透層1670の膜厚以上に堆積させることにより、第2の電極パターンとの接続用の電極パッド部2023を形成することができる。
電極パッド部2023を除く第1の電極パターンの部分の絶縁性を向上させるために、同一のインクジェット記録装置における記録ヘッドから、粒子径が比較的小さい絶縁性微粒子2001を含むインクを吐出してもよい。第1の微粒子浸透層1670の空隙を埋めるように、絶縁性微粒子2001を堆積させることにより、第1の電極パターンの部分の絶縁性を向上させることができる。その絶縁性微粒子2001は第1の微粒子浸透層1670に浸透可能であればよく、第1の微粒子浸透層1670の底部の界面においてインクから固液分離される。
図17(a)のように第1の電極パターンを形成した後、図17(b)のように、記録ヘッド2018Bから第2のインクを吐出して第2の電極パターンを形成する。その第2のインクは、第2の微粒子浸透層の1680の底部に位置する界面において固液分離され、その界面に、第2の導電性微粒子2028によって第2の電極パターンが形成される。第2の微粒子浸透層1680の上部は、溶融膜化されることによって、図17(c)のように第2の電極パターンの絶縁性保護膜2030となる。同一のインクジェット記録装置における記録ヘッドから、第2の微粒子浸透層1680の空隙を埋める粒子径の絶縁性微粒子を含むインクを吐出することにより、第2の電極パターンの部分の絶縁性を向上させることもできる。また、同一のインクジェット記録装置における記録ヘッドから他の記録ヘッドから、第2の微粒子浸透層1680の底部の界面において固液分離される粒子径の絶縁性微粒子を含むインクを吐出してもよい。この場合には、第2の微粒子浸透層1680の空隙を埋めように、その絶縁性微粒子を堆積させることができる。
第1および第2の微粒子浸透層1670,1680の空隙が微粒子によって埋められている場合でも、インクに含まれる微粒子間、および微粒子と空隙の壁との間には、微小な空隙構造が維持されている。そのため、流路抵抗はやや高くなるものの、インクの溶媒成分はスムーズに吸収浸透される。したがって、第1および第2のインクにおける導電性微粒子および溶媒成分は、第1の溶媒吸収層1700を介して、厚膜の第2の溶媒吸収層1706にほぼ全てが吸収される。記録材を加熱して微粒子浸透層1670,1680を熔融膜化させることにより、図18(c)のように、第1の電極パターン、電極パッド部2023、および第2の電極パターンが絶縁性保護膜2029,2030によって覆われる。この結果、多層構造の微粒子浸透層を含む絶縁性の優れた電子デバイスを製造することができる。
また、導電性微粒子によって形成される第1および第2の電極パターンのいずれか一方の代わりに、色材粒子、遮光粒子、および発光粒子等の光学的機能性の微粒子が分散されたインクを用いて、光学的パターンを形成することも可能である。
例えば、図18(a)のように、同一のインクジェット記録装置における記録ヘッド2018Aおよび2018Cから、導電性微粒子2000および絶縁性微粒子2001を吐出して、第1のパターン画像として、電極パターンおよび絶縁層を形成する。その後、図18(b)のように、第2のパターン画像として、記録ヘッド2018Dからブラック顔料2031を含む顔料インクを吐出し、遮光粒子となるブラック顔料2031によってブラックマトリックス画像を形成する。さらに、記録ヘッド2018E,2018F,2018Gからレッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の色材を含むインクを吐出して、カラーフィルター画像を形成してもよい。この方法により、同一のインクジェット記録装置を用いて、電極パターン画像と、光学的なカラーフィルター画像と、を連続的に形成することができ、それぞれの層を位置合わせしながら積層するプロセスが不要となる。その後、図18(c)のように、接着層2002に支持体55を重ねて加圧加熱してから、基材50と第2の溶媒吸収層1706を剥離することができる。その結果、電極パターン画像とカラーフィルター画像との位置合わせ精度の高い、カラーフィルター付の電極パターンを含む電子デバイスを簡易な工程によって製造することができる。
[導電性微粒子インク]
導電性微粒子を含むインクとしては、特に限定されないが、高温の焼成を要することなく通電可能なものが好ましい。例えば、導電性の金属微粒子あるいは導電性ポリマーを溶媒中に分散したインク、または融点を降下させて導電接続しやすいように、粒子径がナノレベルにまで小さく調製された金属のナノ分散粒子等を含むインクが挙げられる。
インクの成分の内、60〜80%は、溶媒成分としての水およびアルコールなどの安全な揮発性成分であり、30%〜50%は、その他の溶媒成分、1〜10%は導電性微粒子である。水性の導電性微粒子を含むインクは、その30%〜50%である、その他の溶媒成分のほとんどは水溶性であって、反応性が低い不活性成分であるため、人体に対する刺激性が小さい成分ある。したがって、電極パターンの記録後に、有害な溶媒成分が長時間に亘って揮発し続けるようなことが無く、また活性の高い成分が未反応のまま残存するようなこともない。そのため、水性の導電性微粒子を含むインクは、揮発性溶剤を主体とする溶剤インク、反応性の高い活性成分を含むモノマーを用いているUVインクなどと比較して、好ましく用いることができる。
導電性微粒子を含むインクは、インクの導電性微粒子の平均粒子径と、微粒子浸透層および溶媒吸収層における平均空隙径と、に応じて、記録材1に対する吸収浸透状態が異なる。記録材1としては、想定される導電性微粒子の平均粒子径に対して、微粒子浸透層の平均空隙径が大きく、溶媒浸吸収層の平均空隙径が小さいものを用いればよい。
一般に、導電性微粒子の平均粒子径は40nm〜110nm程度である。例えば、高精細な画像(電極パターン)が記録可能な小粒径の導電性微粒子を含むインクの場合、その導電性微粒子の平均粒子径は40nm〜50nm程度である。一方、安価であってかつ安定的な大粒径の導電性微粒子を含むインクの場合、その導電性微粒子の平均粒子径は90nm〜110nm程度である。したがって、インクに含まれる導電性微粒子の平均粒子径に合わせて、微粒子浸透層および溶媒吸収層の平均空隙径を調整すればよく。これにより、微粒子浸透層と溶媒吸収層との界面に、稠密で高精細な導電性微粒子膜を形成し、インクの溶媒成分のほぼ全量を溶媒吸収層に速やかに吸収させることができる。インクジェット方式によって、記録材1に画像(電極パターン)を記録した後、記録剤1を加熱して、絶縁性の微粒子浸透層を熔融膜化することにより、導電性微粒子の保護膜の表面側が絶縁性保護膜によって覆われた記録物を製造することができる。
インク中の導電性微粒子を構成する金属の種類は特に限定されない。その金属の具体例としては、貴金属、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、亜鉛等を挙げることができる。これらの金属の中では、貴金属が好ましい。金属微粒子は微細化に伴って低融点化するため、低温で焼結可能となり、金属結合した膜の形成が可能となる。そのため、常温処理することにより、金属光沢を有すると共に、電気伝導性および耐擦過性に優れた配線および電気回路等のパターンを記録することができる。また、このようなパターンの微細化により、粒子同士の物理的かつ確率的な接触による従来の導電経路の形成に対して、原子的に結合した金属膜により導電経路が形成でき、バルクの比抵抗に近い導電性がることが得られる。貴金属の具体例としては、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。
金属微粒子は、粉砕等で微粒子化したものでもよい。しかし、(i)高分子分散樹脂を含有する溶剤に金属化合物を溶解させた溶液中、または(ii)金属化合物を溶剤に溶解した後に高分子分散樹脂を添加した溶液中に、金属化合物を金属に還元して調製した、金属のコロイド溶液であることが好ましい。金属化合物の具体例としては、塩化金酸、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。
金属微粒子を分散させる高分子分散樹脂としては、金属微粒子に対する親和性の高い官能基が導入された、両親媒性の共重合体であることが好ましい。このような高分子分散樹脂によって分散された導電性ポリマーインクとしては、π 共役系オリゴマー、若しくはπ共役系ポリマーを含むことが好ましい。例えば、JP WO2004/030072に記載された導電性ポリマー、または特開平11−195790号公報に記載された多環縮合体などを用いることができる。これらのπ共役系オリゴマー及びπ 共役系ポリマーの中でも、チオフェン、ビニレン、チェニレンビニレン、フェニレンビニレン、p − フェニレン、または、これらの置換体を繰返し単位とし、かつ該繰返し単位の数nが4〜19であるオリゴマー、もしくは該繰返し単位の数nが20以上であるポリマーよりなる、群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、これらの繰返し単位のうち、2種以上を繰返し単位として有し、かつ該繰返し単位の数nが4〜 19であるオリゴマー、もしくは該繰返し単位の数nが20以上であるポリマーも好ましく用いることができる。特に、チオフェンもしくはその置換体を含むオリゴマーまたはポリマーを用いることが好ましい。具体的には、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸錯体(PEDOT/PSS錯体)(バイエル社、BaytronP等)が挙げられる。また、本発明において用いる導電性ポリマーとしては、上記のπ共役系オリゴマーまたはπ共役系ポリマーに、ドーピング処理が施された材料を用いるのが好ましい。
導電性微粒子は、インクの媒体と分離した後の導電性微粒子同士の結着力を高めることにより、微粒子浸透層の底部に強固な薄膜状の導電性微粒子膜を形成することができる。インク中の液体成分である溶媒は、微粒子浸透層よりも毛細管力の大きい溶媒吸収層に対して、ほぼ全量が吸収されるため、導電性微粒子膜にはほとんど残らない。そのため、樹脂分散型の導電性微粒子は、互いに近接することにより、導電性微粒子の分散用に加えられた分散樹脂によってより強固に結合する。本発明においては、インクジェット方式において用いられるインクの表面張力および粘度が適切に制御される。このようなインクの粘度ηは、1.5〜15.0mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは、1.6〜15.0mPa・sである。一方、インクの表面張力γは、25〜45mN/mであることが好ましい。
インクの表面張力および粘度は、導電性微粒子を含むインクが微粒子浸透層の表面に接した後に、速やかに微粒子浸透層に吸収されるように制御すればよい。あるいは、インクの表面張力および粘度は、溶媒吸収層に、インクの溶媒成分のみが速やかに吸収されように制御すればよい。また、インクの粘度を上記の範囲に調整することにより、インクの吐出時におけるインクの流動性を向上させて、ノズルに対するインクの供給性、ひいてはインクの吐出安定性を向上させることができる。また、インクの表面張力を上記の範囲に調整することにより、インクの吐出時に、吐出口におけるインクのメニスカスを維持することができる。また、微粒子浸透層の表面に接着剤をまだら状あるいは海島状に離散的に設けた場合に、インクの表面張力および粘度を上述した範囲に制御することが好ましい。すなわち、記録材の記録面に着弾したインクの一部が接着剤からはみ出して、微粒子浸透層の露出部に垂れ込むときに、そのインクが接着剤の表面において千切れないようにすることができるからである。
[導電性微粒子の濃度]
インク中における導電性微粒子の濃度は、特に規定されないが、好ましくは0.5%以上10%以下、より好ましくは1%以上5%以下である。導電性微粒子の濃度をこのような範囲に調整することにより、インクジェット方式に用いられるインクにおける電極パターンの記録適性を良好にすることができる。さらに、本発明の記録材においては、厚膜の溶媒吸収層によってインクの溶媒成分の全てを吸収することができる。そのため、低濃度の導電性微粒子を含むインクを重ねて記録することにより、画像(電極パターン)の濃度を確保しながら、画像の記録適性をさらに向上させることができる。すなわち、インク中における導電性微粒子の濃度を上述した範囲に調整することにより、インクの粘度を最適に制御して、インクの吐出時におけるインクの流動性を向上させることができる。この結果、記録ヘッドのノズルに対するインクの供給性、ひいてはインクの吐出安定性を向上させることができる。
[絶縁性微粒子を含むインク]
微粒子浸透層および溶媒吸収層を熔融膜化させることにより、それらの空隙内を熔融膜化した成分が埋め尽くして空隙が解消されるため、空隙率に応じて膜厚が減少する。空隙率が大きく、膜厚の減少が大きい場合には、絶縁性微粒子を含むインクによってパターン記録し、その絶縁性微粒子によって、微粒子浸透層および溶媒吸収層の空隙を埋めてもよい。
導電性微粒子によって形成した電極パターンに対して、熔融膜化する絶縁性微粒子を堆積させてもよい。例えば、電極パターンの形成前に、絶縁性微粒子を含むインクによって、電極パターンの形成位置の外周(もしくは、ネガ画像を記録するように電極パターンの形成位置以外の全面)における微粒子浸透層の空隙を埋めるように絶縁性微粒子の堆積層を形成する。その後に、導電性微粒子を含むインクによって電極パターンを形成してよもよい。絶縁性微粒子を含むインクによるネガ画像の記録部に、絶縁性微粒子を含むインクによって画像(パターン)を記録することにより、熔融膜化後における記録物の表面の平坦性を良好に確保することができる。電極パターンおよび電極パッドの形成後に、電極パッド以外のネガ画像部に、熔融膜化する絶縁性微粒子をさらに堆積させて、絶縁性保護膜を強化してもよい。
絶縁性微粒子の材料は、樹脂を溶媒に溶解した溶液を塗布した後、その溶剤を除去することによって膜を形成するものであればよく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂溶液、微粒子分散液等種々の樹脂および微粒子を挙げることができる。樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、BTレジン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂などを挙げることができる。優れた耐熱性と光透過性を獲得するための、微粒子分散液を採用することもできる。微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アクリル樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリスチレン、尿素樹脂、ホルムアルデヒド縮合物などの微粒子が挙げられる。微粒子は、乾燥により堆積して凝集することにより、絶縁層として使用することができる。また、粒子間および基板粒子間において密着性を向上させるため、粒子の表面に感光性あるいは感熱性の表面処理を施してもよい。
[絶縁性微粒子を含むインクの物性、および絶縁性微粒子の濃度]
絶縁性微粒子を含むインクの粘度は、1〜50mPa・sの範囲内であることが好ましい。インクジェット方式によってインクを付与する構成において、インクの粘度が1mPa・sより小さい場合には、ノズルの周辺部がインクの液滴によって汚染され易くなる。一方、インクの粘度が50mPa・sより大きい場合には、ノズルにおけるインクの目詰まりの発生頻度が高くなり、円滑なインク滴の吐出が難しくなる。インクの粘度は、より好ましくは5〜20mPa・sの範囲内である。
絶縁性微粒子を含むインクの25℃における表面張力は、20mN/m以上であることが好ましい。インクの表面張力が20mN/m未満の場合には、インク滴が着弾後に濡れ広がって、平坦な膜が形成でき難くなる。インクの表面張力は、20〜80mN/mの範囲であることがより好ましい。インクの表面張力が80mN/mを超える場合には、インクジェット方式のノズルに目詰まりが発生しやすくなるからである。インクの表面張力は、特に、20〜50mN/mであることが好ましい。インク中の絶縁性微粒子の濃度は特に規定はされず、例えば、前述したインク中の導電性微粒子の濃度と同程度に調整すればよい。
[絶縁性溶解インク]
微粒子浸透層および溶媒吸収層の空隙は、絶縁性溶解インクを埋めることによっても解消することができる。絶縁性溶解インクは、粒子を含まず、少なくとも絶縁性物質を含む液体である。絶縁性溶解インクとしては、例えば、絶縁性樹脂を溶媒に溶解したもの、あるいは、揮発性の低い絶縁性溶媒などを用いてもよい。絶縁性樹脂としては、特に限定されず、公知のもの用いることができ、例えば、前述した絶縁性微粒子を含むインクに用いられるものと同じ材質のものを用いることができる。絶縁性溶媒としては公知の材質を用いればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェニルキシリルエタン、ジイソプロピルナフタレン、ナフテン系炭化水素、ヘキサン、ドデシルベンゼン、シクロヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素、エクソン化学(株)製のアイソパーG,H,L,M、エクソールD30,D40,D80,D110,D130、シェル社製シェルゾールA,AB、日本石油(株)製ナフテゾルL,M,H等の脂肪族または芳香族炭化水素類、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ジクロロメタン、臭化エチル等のハロゲン化炭化水素類、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリシクロヘキシル等のリン酸エステル類、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸エステル類、オレイン酸ブチル、ジエチレングリコールジベンゾエート、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸オクチル、マレイン酸ジブチル、酢酸エチル等のカルボン酸エステル類、イソプロピルビフェニル、イソアミルビフェニル、塩素化パラフィン、ジイソプロピルナフタレン、1,1−ジトリルエタン、1,2−ジトリルエタン、2,4−ジ−tert−アミノフェノール、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−tert−オクチルアニリン等が挙げられる。これらの中から、所望の性能に応じたものを選択して用いればよい。また、絶縁性溶媒は、これらに限定されるものではない。これらの絶縁性溶媒は、それぞれ単独、または2種類以上を混合しても用いることができる。絶縁性溶解インクの物性は特に限定されず、前述の絶縁性微粒子を含むインクの粘度および表面張力と同程度に調整することが好ましい。
[インクジェット記録装置]
インクジェット方式によってパターンを記録する装置としては、記録ヘッドに形成された複数のノズルから、導電性微粒子を含むインクなどを吐出して、記録材の記録面にパターン(電極パターンなど)を記録するインクジェット記録装置を用いることができる。インクの吐出方式は特に限定されず、例えば、サーマルインクジェット方式およびピエゾ方式のいずれも使用することができる。インクジェット記録装置は、記録ヘッドを微粒子浸透層の表面に接触させる必要がないため、極めて良好で安定した画像(パターン)を記録することができる。また、記録方式は特に限定されず、例えば、シリアルスキャン方式またはフルライン方式などであってもよい。シリアルスキャン方式においては、記録ヘッドから吐出するインク滴を小さくして、高品位な画像を容易に記録することができる。また、シリアルスキャン方式においては、同一の記録領域に対して、記録ヘッドの複数回の走査によって、所定の時間差をもってインクを複数回着弾(分割重複走査)させることができる。この場合、例えば、導電性微粒子を含むインクの蒸発速度に比べて、空隙吸収型の微粒子浸透層におけるインクの吸収速度が十分に速いため、微粒子浸透層の表面にはインクが残留しにくく、高い接着性(転写性)を維持することができる。一方、フルライン方式の場合には、吐出口の配列方向と交差(例えば、直交)する方向に、記録材を連続的に搬送しつつ、マルチノズルヘッドからインクを吐出することによって、高解像度で高品位な画像を高速に記録することができる。
記録材1は、十分な溶媒吸収容量を有する溶媒吸収層1601を備えているため、複数のヘッドから吐出したインクを重ねて画像(パターン)を記録することができる。例えば、図5(a)のように、導電性微粒子を含むインクを吐出するための3つの記録ヘッド2018Aを3列に備え、かつ絶縁性微粒子を含むインクを吐出するための3つの記録ヘッド2018Cを3列に備えたインクジェット記録装置を用いることができる。この場合には、それぞれのインクを3回の重ね打ちすることができる。したがって、インクジェット方式に対する適性に優れた低濃度のインク(導電性微粒子2000および絶縁性微粒子2001などを含むインク)を用いることにより、高精度の安定した画像の記録が可能となる。また、導電性微粒子2000を含むインクの濃度が低くても3回の重ね打ちすることにより、高濃度の電極パターンを記録することができる。このような電極パターンの重ね記録において、図3(a)のように、絶縁性微粒子2001によって電極パターンのネガパターンを記録することができる。絶縁性微粒子2001によって、予め、微粒子浸透層1600の底部の空隙構造を格子状に埋めることにより、高濃度の電極パターンを記録して場合でも、導電性微粒子2000を含むインクの滲みを抑制することができる。
[空隙構造の解消]
記録材に電極パターンを形成する場合には、インクジェット方式による電極パターンの記録後に、少なくとも微粒子浸透層の空隙、必要に応じて溶媒吸収層の空隙を解消することにより、導電性微粒子膜の周囲に絶縁性保護膜を形成することができる。
[微粒子浸透層の空隙解消]
図9のように、加熱ローラ21と加圧ローラ22とを用いて、導電性微粒子2000によって電極パターンが形成された記録材を加圧加熱することにより、微粒子浸透層1600は、その界面底部に形成された導電性微粒子膜を包み込むように熔融膜化される。すなわち、絶縁性の微粒子浸透層1600の空隙構造が解消されて、導電性微粒子膜の表面に絶縁性保護膜1650が形成される。微粒子浸透層1600は、空隙構造を解消しながら圧縮されて熔融膜化するため、導電性微粒子2000同士がさらに近接して、導電性微粒子膜の導電率がさらに向上する。また、図9のように、絶縁性の溶媒吸収層1601に吸収させたインクの溶媒成分を乾燥させた後に、溶媒吸収層1601を加圧加熱することにより、微粒子浸透層1600と同時に、溶媒吸収層1601も熔融膜化させて絶縁性保護膜1703を形成してもよい。これにより、導電性微粒子膜の表面および裏面を絶縁性保護膜1650,1703によって覆い、電極パターンを外気から十分に遮断して、その長期信頼性を向上させることができる。
微粒子浸透層1600を熔融膜化させて空隙構造を解消させる場合、微粒子浸透層1600は、その空隙が埋められながら圧縮されるため、空隙の量に応じて膜厚が減少する。図12(b)のように、導電性微粒子2000によって形成された電極パターン2022上の部分2024に、熔融膜化する絶縁性微粒子2001を含むインクによって絶縁パターンを形成してもよい。これにより、微粒子浸透層1600の空隙を絶縁性微粒子2001によって埋めておくことができ、その後の空隙解消による微粒子浸透層1600の膜厚の降下は、生じにくくなる。また、微粒子浸透層1600と、その空隙に堆積した絶縁性微粒子2001と、を同時に熔融膜化することにより、強固な絶縁性保護膜1650を形成することもできる。図12(b)のように、電極パターン2022および電極パッド部2023以外の部分2024に、絶縁性微粒子2001を含むインクを付与して、微粒子浸透層1600の空隙を絶縁性微粒子2001によって埋めてもよい。その後、微粒子浸透層1600の空隙を解消することにより、平坦な絶縁性保護膜1650を形成することができる。
また、微粒子浸透層あるいは微粒子浸透層上の接着層と、支持体と、を合わせて加圧加熱することにより、微粒子浸透層の空隙を解消すると共に、電極パターンを他の支持体に転写することができる。微粒子浸透層あるいは微粒子浸透層上の接着層と、他の支持体と、を合わせて加圧加熱することにより、微粒子浸透層の空隙解消と同時に、他の支持体への転写も可能であるため、生産性を高めることができる。
[溶媒吸収層の空隙解消]
図9のように、電極パターンの記録時に溶媒吸収層1601に保持された溶媒成分を乾燥させてから、加圧加熱することにより、微粒子浸透層1600と同時に溶媒吸収層1601を熔融膜化して、導電性微粒子膜の裏面に絶縁性保護膜1703が形成できる。吸水性および吸湿性が高い微粒子浸透層1600の空隙、および厚膜の溶媒吸収層1601の空隙を解消することにより、導電性微粒子膜の表裏両面に絶縁性保護膜1650,1703を形成して、吸水および吸湿による漏れ電流を防止することができる。溶媒吸収層1601に保持されたインク溶媒が加熱加圧時に溢れ出ないように、溶媒成分を乾燥させる工程が必要になるものの、強固な厚膜の絶縁性保護膜1703を電極パターンの裏面にも形成できる。記録材の搬送性を向上させるための基材50は、記録物のハンドリング性の向上のために残してもよく、また必要に応じて剥離などによって除去してもよい。
[漏れ電流の抑制]
導電性微粒子2000を含むインク1003における粒度分布によっては、著しく粒子径の小さい導電性微粒子の超微粉が含まれることがある。電極パターンの記録時に、導電性微粒子の超微粉が固液分離されずに、溶媒成分と共に溶媒吸収層1601に入り込んだ場合には、溶媒吸収層1601の絶縁性が低下して、漏れ電流が発生するおそれがある。このような場合には、図10(a)のように、溶媒中に絶縁性樹脂を溶解させた絶縁性溶解インク2020を付与すればよい。すなわち、インク1003による電極パターンの記録後(あるいは、絶縁性微粒子2001を含むインクによる絶縁パターンの記録後)に、インク1003の記録部、および、その周囲の非記録部に絶縁性溶解インク2020を付与する。
導電性微粒子の超微粉を含む溶媒成分1607が溶媒吸収層1601の界面上部に半球状に残る未乾燥状態において、電極パターンの記録部、および、その近傍に絶縁性溶解インク2020を付与する。これにより、導電性微粒子の超微粉を含む溶媒成分1607が溶媒吸収層1601の界面近傍から押し出されて、導電性微粒子膜の下層近傍に、絶縁性溶解インク2020による絶縁膜が半球状に形成される。溶媒成分1607のない非記録部に絶縁性溶解インク2020を付与した場合には、絶縁性溶解インク2020が界面の空隙を埋めて半球状の絶縁層を形成する。記録部および非記録部に付与された絶縁性溶解インク2020の浸透拡散の拡がり方に応じて、導電性微粒子の超微粉を含む導電性の溶媒成分1607は、絶縁性溶解インク2020によって押し出される。その結果、電極パターンの下層近傍には、導電性微粒子の超微粉を含む溶媒成分1607が存在しなくなる。このように絶縁性溶解インク2020を付与した後は、図10(b)のように、記録材1を加熱して、溶媒成分1607を乾燥させながら、微粒子浸透層1600および溶媒吸収層1601を熔融膜化する。これにより、裏面側の保護膜1703の絶縁性に優れた電極パターンの記録物2016を作成して、導電性微粒子の超微粉に起因する漏れ電流の発生を抑制することができる。
溶媒吸収層1601が熔融膜化しにくい材質によって形成されている場合には、絶縁性溶解インク2020を溶媒吸収層1601に付与してもよい。これにより、導電性微粒子膜の周囲の溶媒吸収層1601の空隙を絶縁性溶解インク2020中の絶縁性樹脂で埋めて空隙を解消し、絶縁性の保護層を形成することもできる。
図19(a)のように、導電性微粒子2000を含むインク1003によって電極パターンを記録した後に、図19(b)のように、絶縁性溶解インク2020を微粒子浸透層1600側から浸透させる。これにより絶縁性溶解インク2020は、導電性微粒子の超微粉を含む溶媒成分1607を溶媒浸透層1601の界面から押し出しながら、溶媒吸収層1601全体に保持される。図19(c)のように、絶縁性溶解インク2020の揮発性の溶媒成分が乾燥により蒸発されることにより、絶縁性溶解インク2020の絶縁性樹脂2039は、導電性微粒子膜の周囲における溶媒吸収層1601の空隙構造の解消を補助する。より具体的には、溶媒吸収層1601として、熔融膜化しにくい空隙構造を有するセルロースナノファイバーフィルムを用い、図19(a)のように、導電性微粒子2000を含むインクによって電極パターンを記録する。その後、図20(b)のように、微粒子浸透層1600側から絶縁性溶解インク2020を付与する。これにより、図19(c)のように、微粒子浸透層1600の空隙を解消して、電極パターンの表面に絶縁性保護膜1650を形成すると共に、少なくとも導電性微粒子膜の直下に絶縁性保護膜を形成する。すなわち、絶縁性溶解インク2020の溶媒成分の乾燥後に残された絶縁性樹脂2039によって、少なくとも導電性微粒子膜の直下の溶媒吸収層1601の空隙を埋めることにより、電極パターンの裏面に絶縁性保護膜が形成される。
[複層構造の溶媒吸収層]
記録材1における溶媒吸収層1601は、図8のような複層構造としてもよい。図8における溶媒吸収層1601は、導電性微粒子2000に接する熔融膜化可能な第1の溶媒吸収層1700と、最も小さな空隙を維持して溶媒成分1607を保持する第2の溶媒吸収層1706と、によって構成される。加圧加熱によって、微粒子浸透層1600および第1の溶媒吸収層1700の空隙を解消して、導電性微粒子2000の表裏に絶縁性保護膜1650、1702を形成させた直後に、第2の溶媒吸収層1601を除去してもよい。第2の溶媒吸収層1706の空隙は、加圧加熱後にも維持される。そのため、インクの溶媒成分1607を保持した状態の第2の溶媒吸収層1706を加圧加熱した場合にも、インクの溶媒成分1607は、第2の溶媒吸収層1706から溢れず、不如意な漏れ電流等の発生要因となるおそれがない。
また、導電性微粒子2000を含むインクに、第1の溶媒吸収層1700の界面において固液分離しきれない小さな導電性微粒子2000の超微粉が含まれていた場合、その微粒分は、第2の溶媒吸収層1706に溶媒成分1607と共に吸収される。この場合には、絶縁性の第1の溶媒吸収層1700が絶縁性の保護膜1650となるため、漏れ電流の発生を抑制することができる。また、第2の溶媒吸収層1706を除去することにより、その溶媒吸収層1706に保持された溶媒成分1607を特別に乾燥させる必要がなくなるため、溶媒成分の乾燥工程が不要となり、生産性を高めることができる。また、図8のように、微粒子浸透層1600および第1の溶媒吸収層1700の空隙が解消されて、電極パターンの表裏に絶縁性の保護膜1650および1702が形成される。そのため、吸水、吸湿に起因する漏れ電流の発生、および、水分、ガスによる電極パターンの酸化劣化等を抑制して、電極パターンの記録物2016の長期的な信頼性を高めることができる。
第2の溶媒吸収層1706は、不図示の剥離ローラを用いて剥離してもよい。第2の溶媒吸収層1706を剥離除去する場合には、基材50を併用してもよい。基材50上に第2の溶媒吸収層1706を設けることにより、第2の溶媒吸収層1706と基材50を一緒に除去することができる。この場合には、第2の溶媒吸収層1706が角度を付けて剥離しやすくなり、その剥離性が向上する。また、基材50を併用することにより記録材の搬送性およびハンドリング性が向上する。さらに剥離性を向上させるために、図1(c)のように、離型層1701および密着層1603を設けてもよい。
第2の溶媒吸収層1706を除去する以外に、その溶媒吸収層1706の空隙を解消する他の方法としては、その溶媒吸収層1706の構成材料を溶解可能な溶解液を用いる方法がある。すなわち、その溶解液を第2の溶媒吸収層1706の空隙に吸収させて、溶媒吸収層1706を溶解除去する。この方法の場合には、溶解液が電極パターンに接しないように、溶解液に浸漬させる前に、微粒子浸透層1600および第1の溶媒吸収層1700を熔融膜化して、電極パターンの表裏に絶縁性保護膜1650および1702を形成する。これにより、溶解液に浸漬させる前に、電極パターンの周囲の微粒子浸透層1600および第1の溶媒吸収層1700の空隙を解消させることができる。
[転写(接着)工程]
微粒子浸透層1600もしくは接着層2002と、支持体55と、を合わせて加圧加熱することにより、電極パターンを支持体55に転写(接着)することができる。具体的には、図13(a)のように、基材50上に溶媒吸収層1601と微粒子浸透層1600とが順次設けられた記録材に、導電性微粒子2000を含むインクによって電極パターンを記録する。その後、微粒子浸透層1600と、支持体55としてのガラス基板と、を合わせて加圧加熱する。これにより、図13(b)のように、微粒子浸透層1600を熔融膜化させて、電極パターンの表面に絶縁性保護膜1650を形成しながら、電極パターンをガラス基板に転写させることができる。図13(b)のように、必要に応じて、インクの溶媒成分1607を保持した溶媒吸収層1601と、基材50と、を剥離してもよい。
[微粒子浸透層および溶媒吸収層の再溶融]
加熱による熔融膜化(空隙構造の解消)工程とは別の接着工程のために、微粒子浸透層、溶媒吸収層、あるいは接着層を再溶融させることができる。電気素子、他の回路基板、または絶縁性フィルムなどと、記録材と、を合わせて加圧加熱することにより、露出した微粒子浸透層および溶媒吸収層、あるいは微粒子浸透層上の接着層を再熔融させる。これにより、それらの層を絶縁性の接着層として機能させて、電気素子、他の回路基板、または絶縁性フィルムなどに対して、電極パターンを接着させることができる。
図12(b)のように、電極パッド部2023は、導電性微粒子2000が微粒子浸透層1650の表面に溢れることによって形成されており、電気素子または他の回路基板との接続が可能である。微粒子浸透層1600は、保護膜1650として一度熔融膜化されてから再熔融されることにより、電極パッド部2023を電気素子または他の回路基板などの電極部に接続するための接着層として機能させることができる。その場合には、図1(b)のように、微粒子浸透層1600上に、接着剤1000を離散的(例えば、まだら状、または海島状)あるいは多孔質膜状に設けて、電極パッド部2023の全てが覆わないようにする。接着剤1000によって電極パッド部2023の接着力を強化することにより、導電性に優れた電極接着部を形成することができる。
[微粒子浸透層の再溶融による電気素子との接着]
図19(c)のように、溶媒吸収層1601と微粒子浸透層1600とを含む記録材に電極パターンを形成した後に、差込口2038を穿孔(穿孔処理)し、図19(d)のように、その差込口2038に電気素子2035の接続端子を差し込んでもよい。その後、保護膜1650として一度熔融膜化され微粒子浸透層1600を再熔融させながら、電気素子2035を接着することができる。さらに、半田付け2034をおこなってもよい。
[微粒子浸透層の再溶融による絶縁性フィルムとの接着]
溶媒吸収層を剥離して微粒子浸透層を露出させた場合には、微粒子浸透層を再熔融させて絶縁性フィルムを接着することにより、電極パターンの裏面に絶縁性保護膜を形成することができる。例えば、図16(a)のように、基材50上に溶媒吸収層1601と微粒子浸透層1600が形成された記録材に、導電性微粒子2000を含むインクによって電極パターンが記録される。その後、図16(b)のように、支持体としての絶縁性フィルム2026に電極パターンが転写されると共に、溶媒吸収層1601と基材50が剥離されることにより、一度熔融膜化して絶縁性保護膜1650となった微粒子浸透層1650が露出される。その後、図16(c)のように、微粒子浸透層1650を再溶融させて絶縁性フィルム2026を接着することにより、電極パターンの表裏両面に、絶縁性保護膜としての絶縁性フィルム2026を備えることができる。
[微粒子浸透層の再溶融による基板電極部などとの接着]
溶媒吸収層を除去した場合には、微粒子浸透層を再熔融させることにより、表面に露出した導電微粒子膜に基板電極部または電気素子などを加熱圧着して接続することができる。基板電極部を接続する場合には、図21(a)のように、電極パターンと、絶縁性保護膜1650として溶融膜化された微粒子浸透層1600と、を支持体55に転写し、絶縁性保護膜1650と、電極パターンを形成する導電性微粒子膜と、を表面に露出させる。その後、図21(b)のように、絶縁性保護膜1650として溶融膜化されている微粒子浸透層1600を再熔融させて、基板2036と接着させることにより、露出する導電性微粒子膜と基板電極部2037とを電気接続することができる。この場合、微粒子浸透層1600は、絶縁性保護膜1650および基板2036との絶縁性接着層として機能する。
[電極端子による電極パッド部の形成]
電極パターンの表裏が絶縁性保護膜で覆われている場合には、突起の付いた電極端子を電極パターンに圧着して接続することにより、絶縁性保護膜を破りながら電極パッド部を形成することができる。例えば、図14(b)のように、電極パターンを形成する導電性微粒子膜1606の表裏が絶縁性保護膜1650、1702によって十分に覆われている場合には、電極パターンに接続される電極部を外に取出することができない。しかし、電極パターンの裏面側の絶縁性保護膜1702を破りながら、突起の付いた電気端子2026を電極パターンに圧着して接続させることにより、図14(c)のように、電極パッド部としての電気端子2026を設けることができる。
[湿度センサの形成]
本発明においては,電極パターンの周囲に様々な回路を設けることにより、多種多様なセンサを作成することができる。例えば、本発明の記録材に、図22(e)に示すように、くし歯状の電極パターン2043を作成し、その後、感湿性高分子によって電極パターン2043および電極パターン2043の対向間隙を覆うように、機能膜として感湿膜2042を積層する。これにより、湿度センサ2044を作成することができる。くし歯状の電極パターン2043は、基板の表面の面に沿う方向に間隔を空けて配置され、基板の表面における電極パターン2043と電極パターン2043との間に感湿性高分子が配置されている。
湿度センサ2044は、図22(a)のような記録材によって形成することができる。図22(a)の記録材は、基材50上に、最も小さな空隙を維持して溶媒成分1607を保持する第2の溶媒吸収層1706と、熔融膜化可能な第1の溶媒吸収層1700と、微粒子浸透層1600と、が順次設けられている。この記録材に、インクジェット方式により、導電性微粒子2000を含むインクを付与して、微粒子浸透層1600に、くし歯状の電極パターン2043に対応する厚膜の電極パターン2022を形成する。その後、図22(b)に示すように、感湿性高分子材料2041によって電極パターン2022および電極パターン2022の対向間隙を覆うように、つまり感湿膜2042を形成するように、感湿性高分子材料2041が分散されたインクを塗布する。その塗布方法としては、例えば、インクジェット方式、あるいはロールコート、スピンコート、フローコート、ドクタブレードコート、バーコート等の公知の方法が挙げられる。感湿性高分子材料2041が分散されたインクは、導電性微粒子2000が分散されたインクと同様に吸収される。すなわち、感湿性高分子材料2041が分散されたインクは、微粒子浸透層1600と溶媒吸収層1700との界面で固液分離し、その感湿性高分子材料2041は微粒子浸透層1600に堆積し、その溶媒は溶媒吸収層1700に吸収される。
感湿性高分子材料2041が分散されたインクは、その感湿性高分子材料2041によって電極パターン2022および電極パターン2022の対向間隙を覆われるように、微粒子浸透層1600の表面から溢れ出る程度に付与される。これにより、厚膜の感湿膜2042が形成されることになる。その後、図22(c)に示すように、加熱処理することにより、微粒子浸透層1600は、導電性微粒子2000および感湿性高分子材料2041を包み込むように熔融膜化しながら、くし歯状の電極パターン2043および感湿膜2042を強固に形成する。このように微粒子浸透層1600は、熔融膜化することにより、くし歯状の電極パターン2043の絶縁性保護膜1650を形成することができる。また、第1の溶媒吸収層1700は、熔融膜化することにより空隙が消滅し、くし歯状の電極パターン2043および感湿膜2042の裏面に保護膜1702を形成する。さらに、図22(d)に示すように、保護膜1702から、基材50および第2の溶媒吸収層1706を剥離除去することにより、空隙を形成する溶媒吸収層1706が除去できる。
このようにして、湿度センサ2044を作成することができる。図22(d)における湿度センサ2044は、図22(e)の湿度センサ2044のXXIId−XXIId線に沿う断面である。感湿性高分子は、水分を吸収して放出する性質を有しており、保持する水分の量に応じて誘電率が変化する。したがって、電極パターン2043の相互間の静電容量を測定することにより、この湿度センサ2044が晒されている外気の湿度を計測することができる。感湿性高分子としては、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリメチルアミノエチルメタアクリレート塩、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の酸または塩等のポリイミドが挙げられる。これらの感湿性高分子材料をメタノール、エタノールなどの溶剤に分散して、感湿性高分子が分散されたインクとすることができる。
[加熱装置]
記録材における溶媒吸収層および接着層側、もしくは支持体側から、手動操作の加熱アイロンなどによって加熱することにより、少なくとも微粒子浸透層、必要に応じて、微粒子浸透層と溶媒吸収層とを熔融膜化させて、それらの空隙を解消することができる。このような空隙解消のための加熱装置としては、例えば、公知のヒートローラ、フィルム定着ユニット、加熱ファン、加熱ベルト、熱転写ヘッド等を用いる加熱装置を挙げることができる。加熱と同時に加圧が可能な加圧加熱装置は、支持体、他の基板、電気素子、絶縁性フィルムと組み合わせて、転写(接着)用の温度と圧力を制御することにより、空隙解消と同時に、支持体等に対して電極パターンを転写(接着)することができる。このような加圧加熱装置は、転写装置および接着装置として機能する。
[ヒートローラを用いる加圧加熱装置]
加圧加熱装置としては、加圧加熱の均一性の観点から、ヒートローラと加圧ローラとを併用したものが好ましい。微粒子浸透層に導電性微粒子膜が形成された記録材を、加熱したヒートローラと加圧ローラとの間を通して搬送することにより、微粒子浸透層、必要に応じて、微粒子浸透層と溶媒吸収層とを熔融膜化して、空隙構造を解消することができる。
加熱温度は、少なくとも微粒子浸透層が熔融膜化する温度以上に制御する。これにより、微粒子浸透層が導電性微粒子膜を包み込むように熔融膜化され、微粒子浸透層の空隙構造を解消しながら導電性微粒子を十分に固定化して、導電性微粒子の強固な保持膜を形成することができる。加熱圧着時の熱および圧力を制御することにより、溶媒吸収層の空隙を解消することができ、また逆に、加熱圧着後にも溶媒吸収層の空隙を維持することもできる。空隙を解消する場合には、溶媒吸収層の空隙を構成する材質のガラス転移温度以上に加熱すればよく、空隙を解消しない場合には、そのガラス転移温度よりも低い温度で加熱すればよい。
導電性微粒子2000によって電極パターンが形成された記録材は、図8のように、ヒートローラ21と加圧ローラ22とによって加圧加熱することができる。これにより、微粒子浸透層1600は、導電性微粒子膜1606を包み込むように熔融膜化して空隙が解消され、絶縁性保護膜1650を形成する。このとき、インクの溶媒成分1607を溶媒吸収層1601の空隙構造に保持されたままとすることにより、溶媒吸収層は、加熱圧着によっても空隙構造を維持する。これにより、微粒子浸透層1600への溶媒成分1607の染み出しを抑制して、溶媒成分1607による導電性微粒子2000の汚染を防止することができる。また、溶媒吸収層1601の個々の空隙内において、それらの空隙内に保持されているインクの溶媒成分1607が突沸または蒸発しないように制御することにより、溶媒成分1607の蒸発熱による加熱効率の低下を抑制することができる。したがって、水の沸点以下の温度によって加熱させることが好ましい。
本発明者らの検討の結果、加熱加圧時の圧力は、0.5kg/cm以上かつ7.0kg/cm以下が好ましいことが分かった。圧力を0.5kg/cm以上とすることにより、微粒子浸透層が導電性微粒子膜を包み込むように熔融膜化して、導電性微粒子膜の表面側および裏面側に位置する空隙構造を解消して、導電性微粒子を十分に固定化することができる。この結果、導電性微粒子の強固な保護膜を形成することができる。一方、圧力を7.0kg/cm以下とすることにより、溶媒吸収層の空隙構造を必要以上に潰すことなく、インクの溶媒成分である不揮発性溶剤が表面に染み出すことを抑制して、溶媒成分による導電性微粒子の汚染を防止することができる。
ヒートローラ21は、加熱源を内蔵した金属筒の表面に、耐熱性と離型性とに優れたフッ素樹脂層を設けた構成とすることが好ましい。さらに、所望の加熱圧接幅を得るための弾性層として、フッ素ゴム層などを積層してもよい。また、セラミックヒータと、フィルム型の加熱圧着搬送体と、によって、ヒートローラ21と同様の機能を発揮することもできる。セラミックヒータは、加熱部材としての平板状のヒータであり、フィルム型の加熱圧着搬送体は、伝熱搬送部材としてのポリイミド等の耐熱性フィルムの表面に、フッ素樹脂層またはフッ素ゴム層などの耐熱離型層を設けた搬送体である。フィルム型の加熱圧着搬送体を用いることにより、加圧加熱して熔融膜化した微粒子浸透層の表面の平滑性を向上させることができる。ヒートローラ21を用いる構成においては、微粒子浸透層とヒートローラの間に高平滑性のフィルムを挟んで加圧加熱することにより、微粒子浸透層の表面の平滑性を向上させることができる。
また、加圧ローラ22としては、シリコーンローラを用いることが好ましい。シリコーンローラは微粒子浸透層との親和性が低いため、微粒子浸透層の表面が加圧ローラ22に直接接触した場合でも、それらは接着し難い。シリコーンローラの表面に、さらに離型性に優れたフッ素樹脂などを積層させることによって、離型性と加圧加熱性とを向上させることができる。
より具体的には、加熱加圧装置として、ダイニック社製のD−10、フジテックス社製のLPD3223 CLIVIA等の公知のラミネーターを使用することができる。ラミネーターとしては、一対のヒートローラ21と加圧ローラ22を備えて、記録材を加熱圧着できるものであればよい。
[転写装置]
転写部を構成する転写用の加圧加熱装置としては、空隙の解消部を構成する空隙解消用の加圧加熱装置と同様のものを用いることができる。空隙解消用の加圧加熱装置における温度および圧力を転写用に温度および圧力に設定し、記録材と支持体とを合わせて加圧加熱すればよい。これにより、微粒子浸透層の空隙を解消すると同時に、支持体に電極パターンを転写することがきる。このように、空隙解消用の加圧加熱装置を転写用の加圧加熱装置として機能させることができる。
所定の熱や圧力を加えて微粒子浸透層を熔融膜化させるためには、転写用の加圧加熱装置として、加圧加熱の均一性の観点から、ヒートローラと加圧ローラとを併用した構成のものが好ましい。記録材における微粒子浸透層に導電性微粒子膜を形成した後、その記録材と支持体とを合わせて、加熱したヒートローラと加圧ローラとの間を通して搬送することにより、微粒子浸透層を熔融膜化して、記録材と支持体とを接着(転写)することができる。微粒子浸透層を熔融膜化する際には、加熱圧着後にも溶媒吸収層の空隙構造が維持されるように、加熱圧着時の熱および圧力を制御することが重要である。
図8のように、ヒートローラ21と加圧ローラ22とによって加圧加熱されることにより、微粒子浸透層1600は、導電性微粒子膜1606を包み込むように熔融膜化して保護膜1650を形成し、不図示の支持体に接着(転写)される。溶媒吸収層1601に吸収されたインクの溶媒成分1607は、その溶媒吸収層1601の空隙構造に保持されたままである。溶媒吸収層1601の空隙構造が加熱圧着によっても維持されることにより、微粒子浸透層1650への溶媒成分1607の染み出しによる接着阻害を抑制することができる。また、溶媒吸収層1601の空隙構造が維持されることにより、溶媒吸収層1601の空隙内において、溶媒成分1607が加熱圧着時の熱や圧力によって突沸して蒸気が発生したとしても、その蒸気を各々の空隙内に封じ込めることができる。そのため、導電性微粒子の保護膜1650内、および、その保護膜1650と支持体との間に空気層などが形成されにくくなり、保護膜1650を支持体に良好に接着(転写)することができる。一方、溶媒吸収層の空隙構造を消滅させる場合には、溶媒吸収層の溶媒を完全に乾燥させておくことが重要であり、例えば、転写工程の前に別途乾燥工程を設けるなどして、溶媒を完全に蒸発乾燥させてもよい。
加熱圧着時の温度は、微粒子浸透層が熔融膜化する温度以上に制御する。これにより、微粒子浸透層が導電性微粒子膜を包み込むように膜化して、導電性微粒子を十分に固定化することができ、強固な導電性微粒子の保護膜を形成して支持体に接着(転写)することができる。また、微粒子浸透層の表面に離散的に接着剤が配された記録材を用いる場合には、接着剤も熔融膜化する温度以上になるように、加熱圧着時の温度を制御する。離散的に配された接着剤が微粒子浸透層と一体化して支持体に接着することにより、導電性微粒子の保護膜を強固に接着(転写)することができる。また、加圧加熱時の温度は、溶媒吸収層の空隙構造を必要以上に潰すことなく、その空隙構造を加圧加熱後も維持するように制御することも重要である。また、溶媒吸収層の空隙内に保持されているインクの溶媒成分が、個々の空隙内において突沸または蒸発しないように制御することにより、溶媒成分の蒸発熱による加熱効率の低下を抑制することができる。したがって、水の沸点以下の温度によって転写させることが好ましい。
本発明者らの検討の結果、加熱圧着時の圧力は、0.5kg/cm以上かつ7.0kg/cm以下が好ましいことが分かった。加熱圧着時の圧力を0.5kg/cm以上とすることにより、微粒子浸透層が導電性微粒子膜を包み込むように膜化して、導電性微粒子を十分に固定化することができ、強固な導電性微粒子の保護膜を形成することができる。一方、加熱圧着時の圧力を7.0kg/cm以下とすることにより、溶媒吸収層の空隙構造を必要以上に潰すことなく空隙を維持して、インクの溶媒成分である不揮発性溶剤の表面への染み出しを抑制することができる。この結果、支持体と導電性微粒子の保護膜との接着性(転写性)を高めることができる。転写用の加圧加熱装置におけるヒートローラおよび加圧ローラの材質、および、その他の具体的な構成等は、空隙解消用の加圧加熱装置と同様である。
[支持体の材質]
支持体の材質は、特に制限されず、基材と同様のものが使用できる、絶縁性フィルム、ガラスなどの種々の透明な支持体に、電極パターンを形成する導電性微粒子膜を転写することができる。支持体の転写面と、電極パターンが記録された記録材の記録面と、を重ね合わせてから、加圧加熱装置によって微粒子浸透層を熔融膜化させることにより、導電性微粒子の保護膜を支持体に転写することができる。必要に応じて、記録材に対する電極パターンの記録と同時に、位置合わせ用のマーキング画像を記録することにより、そのマーキング画像を用いて、支持体の転写位置に対して記録材を高精度に位置合わせすることができる。
[溶媒吸収層の剥離除去]
記録材に電極パターンを記録した後、導電性微粒子膜の周囲、すなわち微粒子浸透層の界面付近に位置する溶媒吸収層の空隙を解消する。接着(転写)工程において微粒子浸透層のみを熔融膜化して、その空隙を解消する場合、厚膜の溶媒吸収層は、接着(転写)工程の後に、剥離ローラによって所定の剥離角度を与えることにより剥離除去することができる。さらに、離型層を設けて、溶媒吸収層を剥がし易くしてもよい。記録材の搬送性などを考慮して、基材上に溶媒吸収層を設けた場合には、より高い張力を伴って剥離角度を与えて、基材と共に溶媒吸収層を容易に剥離除去することができる。溶媒吸収層を剥離するために、空隙構造を維持した溶媒吸収層に大きな剥離張力を加えたときには、その溶媒吸収層が伸びるおそれがある。このような場合には、伸縮しにくい基材を溶媒吸収層に密着させて、その基材に、剥離のための張力を加えることにより、溶媒吸収層に安定した剥離角度を与えて剥離することができる。
[溶媒吸収層の溶解除去]
溶媒吸収層を専用の溶解液に浸漬させて、溶媒吸収層の空隙構造に溶解液を吸収させてから洗い流す溶解洗浄工程によって、溶媒吸収層を溶解除去してもよい。溶解液としては、溶媒吸収層の空隙構造を形成する結合樹脂を溶解可能な溶剤であって、かつ、熔融膜化した導電性微粒子の保護膜、導電性微粒子、および支持体を劣化させにくい材質のものを用いることが好ましい。溶解液を用いる場合には、パターン画像に影響しないように微粒子浸透層を溶融膜化して、空隙構造を消滅させてから、溶解液に浸漬させることが好ましい。このような溶解除去は剥離時に記録材に力がかからないため、比較的強度の低い薄膜の電極パターンの記録物の作成に好ましく用いることができる。例えば、支持体への転写無しに、微粒子浸透層を溶融膜化してから厚膜の溶媒吸収層を剥離し、溶融膜化した薄膜の微粒子浸透層のみを残して薄膜の記録物としてもよい。また、電極パターンが記録された記録材を恒温槽に入れて加熱し、支持体に転写すること無く、微粒子浸透層1600を溶融膜化して空隙を消滅してから、記録材を溶解液に浸漬して、溶媒吸収層1601および基材50を剥離してもよい。この場合には、薄膜フィルム状の電極パターンの記録物を作成することができる。 [溶媒吸収層の空隙解消]
溶媒吸収層が熔融膜化しにくい場合、例えば、セルロースナノファイバーシート等を溶媒吸収層に用いる場合は、記録物を絶縁性溶解インクに浸漬させるなどして、導電性微粒子膜の周囲の溶媒吸収層における空隙を埋めることにより、その空隙を解消してもよい。絶縁性溶解インクは、インクジェット記録装置を用いて付与してもよく、あるいは、記録物を絶縁性溶解インクに浸漬させる装置を用いて付与してもよい。電極パターンを形成するインクに含まれる導電性微粒子は粒度分布を持ち、その粒子径が著しく小さい超微粉が若干量含まれる場合がある。粒子径が著しく小さい超微粉が溶媒吸収層内に入り込んだ場合には、絶縁性が低下して、漏れ電流等の発生原因となるおそれがある。導電性微粒子を含むインクおよび絶縁性微粒子を含むインクによるパターンの記録の後に、絶縁性溶解インクを付与することにより、前述したように、インクの溶媒成分と共に、導電性微粒子の超微粉を絶縁性溶解インクによって押し出すことができる。この結果、微粒子浸透層の界面に、絶縁性溶解インクを半球状に配置して、記録パターンの裏面側の絶縁性を確保することができる。
[記録物の製造装置]
電極パターンが形成された記録物の製造装置は、例えば、インクジェット方式により電極パターンを記録材に記録するインクジェット記録部と、微粒子浸透層および溶媒吸収層の空隙を解消するための空隙解消部と、を含む。必要に応じて、その他構成を加えてもよい。
図20は、インクジェット記録部、転写部、および空隙解消部を一体的に含む製造装置の概略図である。本例の製造装置は、供給部2008によって送り出されて用意される記録材1に、インクジェット記録部2009によって電極パターンおよび絶縁パターンを記録する。インクジェット記録部2009aは、絶縁性微粒子を含むインクをインクジェット方式により記録材1に付与し、インクジェット記録部2009bは、導電性微粒子を含むインクをインクジェット方式により記録材1に付与して、電極パターンを記録する。位置合わせ部2011は、支持体供給部2010から供給される支持体55と、記録材1と、を重ね合わせ、(加圧)加熱部2012は、支持体55と記録材1とを(加圧)加熱して、それらを接着(転写)する。溶媒吸収層の空隙を解消するための空隙解消部としての剥離除去部2013は、溶媒吸収層と共に基材を剥離し、溶媒吸収層回収部2015は、剥離された溶媒吸収層と基材とを収納する。排出部2014は、電子デバイス用の基板および電子デバイスなどとしての記録物(転写物)2016を排出して集積する。本例の製造装置は、これらの機能部の全てを一体型的に含むように構成されていることにより、記録物2016の生産性を向上させることができる。また、インクジェット記録装置、支持体の重ね合わせ装置、加圧加熱による転写装置、および空隙解消装置などは、それらの装置の生産性に応じた最適化を図るために、それらの装置を分離させてもよい。また、必要に応じて、インクの溶媒成分を乾燥させるための乾燥装置、および電極パターンに電気素子の端子を接続するために、挿入孔を形成する穿孔装置等を備えてもよい。
[記録物]
電子デバイス用の基板および電子デバイスなどとしての記録物においては、導電性微粒子によって、少なくとも微粒子浸透層底部に電極パターンを形成し、少なくとも微粒子浸透層を熔融膜化させて、その空隙構造を解消させることができる。これにより、電極パターンの表面に絶縁性保護膜を形成することができる。導電性微粒子は、薄膜の微粒子浸透層の膜厚と同程度にしか平面方向に拡散浸透しないため、稠密な薄膜の導電性微粒子膜によって、高濃度で高精度な薄膜の電極パターンを形成することができる。また、厚膜の溶媒吸収層を備えることにより、大量のインクを用いて、高精細な厚膜の電極パターンを形成することもできる。
少なくとも微粒子浸透層が熔融膜化されて、その空隙構造が解消され、電極パターンの表面に絶縁性保護膜が形成されることにより、絶縁性に優れた電極パターンを形成することができる。十分な膜厚をもつ微粒子浸透層は、絶縁性に優れた絶縁性保護膜となる。さらに電極パターンの下部の溶媒吸収層を熔融膜化して、その空隙構造を解消することにより、電極パターンの裏面側にも絶縁性保護膜を形成することができる。これにより、絶縁性および長期保存性に優れた記録物を製造することができる。
記録物は、絶縁性の微粒子浸透層を熔融膜化して形成された絶縁性保護膜、または、その微粒子浸透層上に付与された絶縁性微粒子を熔融膜化して形成された絶縁性保護膜を含むものであってもよい。さらに記録物は、導電性微粒子を微粒子浸透層から溢れ出させることによって形成された電極パッド部などを含むものであってもよい。
[実施例]
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例によっていかなる制限を受けるものではない。なお、以下の記載における「部」、「%」は特に断らない限り質量基準である。
[基材A]
基材Aとして、PET基材(商品名「テトロンG2」 厚さ50μm 帝人デュポンフィルム株式会社製)用いた。
[基材B]
基材Bとして、ポリイミド基材(商品名「カプトン300H/300V」 厚さ75μm 東レ・デュポン株式会社製)用いた。
[基材C]
基材Cとして、PET基材(商品名「テトロンG2」 厚さ100μm 帝人デュポンフィルム株式会社製)用いた。
[絶縁性フィルムA]
絶縁性フィルムAとして、絶縁性ポリイミドフィルム(商品名「カプトン50H/50V」 厚さ12.5μm 東レ・デュポン株式会社製)用いた。
[透明絶縁性フィルムA]
透明絶縁性フィルムAとして、PET基材(商品名「テトロンG2」 厚さ25μm 帝人デュポンフィルム株式会社製)用いた。
[透明絶縁性のセルロースナノファイバーシート]
イオン交換水中に、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を3重量%濃度になるように分散させてから、ダブルディスクリファイナーを用いて、数平均繊維長1.0mm以下となるまでサイクリングにて叩解した。数平均繊維長が1.0mm以下となったセルロース繊維分散液を、高圧ホモジナイザー(LAB−1000)によって800barの条件で10回処理することにより、微細化セルロース繊維の原料を得た。そのセルロース繊維の原料を100重量部とし、これに対してグリコールエーテル系開孔剤(商品名:ハイソルブDB 東邦化学製)を350重量部、親水性高分子バインダーとして1重量%濃度でイオン交換水に溶解したカルボキシメチルセルロース(商品名:サンローズMAC−500LC 日本製紙ケミカル製)を10重量部添加した。そして、最終的に、固形分濃度が2重量%となるように水を加えた塗料とした。その塗料をホモミキサー(株式会社アズワン製)によって均一に混ざるまで分散して、スラリー1とした。
また、カットファイバーとして、平均繊維径3.5μm、繊維長3mmのポリエチレンテレフタレート繊維(TA04PN、帝人ファイバー製)を100重量部、これに対して、親水性高分子バインダーとして、1重量%濃度でイオン交換水に溶解したカルボキシメチルセルロース(商品名:サンローズMAC−500LC 日本製紙ケミカル製)を10重量部添加した。そして、最終的に固形分濃度が2重量%となるように水を加え、ホモミキサーによって均一に混ざるまで分散して、スラリー2とした。
カットファイバーの配合率がセルロース繊維およびカットファイバーの合計量の50重量%となるように、スラリー1とスラリー2とを50:50の重量比率(繊維ベース)で混合し、それらが均一になるまでスターラーにより300rpmで撹拌して、塗料を調合した。調合した塗料は、厚さ100μmのPETフィルム上に、WET膜厚が0.10mmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、120℃の熱風および赤外線ヒータを用いて12分間乾燥させた。このようにして得られた塗工膜をトルエン中でPETフィルムから剥離して、そのトルエンを揮発させることにより、厚さ50μm、空隙径20nmのセルロースナノファイバーシートを得た。
[水溶性樹脂溶液1の調製]
ポリビニルアルコール(商品名「PVA235」、クラレ製)をイオン交換水に溶解して、固形分含量が8%の水溶液樹脂溶液1を調製した。ポリビニルアルコールは、平均重合度が2300、けん化度が98〜99mol%であった。
[水溶性樹脂溶液2の調製]
アクリル系の水溶性樹脂としての(商品名「NS−625」、高松油脂製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8%の水溶性樹脂溶液2を調製した。
[溶媒吸収層塗工液1の調製](40nm樹脂粒子)
第1のガラス製反応容器に攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素ガス導入管を備え付けた後、ノニオン系乳化剤としてアクアロンRN−30(第1工業製薬(株)製)6g、アニオン系乳化剤アクアロンHS−30(第1工業製薬(株)製)6g、メチルメタアクリレート100.0g、エチルアクリレート20.0g、2−ヒドロキシルエチルアクリレート10.0g、メタクリル酸5.0gを用い、それに水275gを入れて攪拌し、総量427.0gの混合物を調整した。次に、この混合物の36gを取り出し、同様の第2の反応容器に移した後、窒素ガス導入下において73℃で40分間乳化を行った。次に、重合開始剤としてペルオキソニ硫酸アンモニウム17gを水36gに溶解し、乳化液に添加した。その後、混合物の残量を第1の反応容器より取り出し、それを100分間掛けて第2の反応容器内に徐々に滴下し、73℃で重合を行った。混合物の残量の滴下を終了した後、73℃で80分間攪拌を継続して、エマルジョン水溶液1(Tg:78℃、樹脂固形分35.0%)を合成した。この分散粒子の平均1次粒径は40nmであった。次に、エマルジョン水溶液1を100部と、水溶性樹脂溶液2を43.75部と、加え、スタティックミキサーにより混合して、溶媒吸収層塗工液1を得た。
[溶媒吸収層塗工液2の調製](10nm無機微粒子)
シリカ水溶液(商品名「スノーテックスO」(固形分(SiO2)濃度 20%、平均粒子径10nm)日産化学工業株式会社製)を100部と、水溶性樹脂水溶液2を50部と、加えて、スタティックミキサーにより混合し、溶媒吸収層塗工液2を得た。
[微粒子浸透層塗工液1の調製](一次粒子径180nmの樹脂粒子)
エマルジョン水溶液1と同様にして、懸濁重合により、固形分濃度20%、平均1次粒子径180nm、Tg:78℃のエマルジョン水溶液3を得た。なお、ノニオン系乳化剤としては、アクアロンRN−30(第1工業製薬(株)製)およびアニオン系乳化剤アクアロンHS−30(第1工業製薬(株)製)を使用しなかった。次に、エマルジョン水溶液3を100部と、水溶性樹脂溶液2を25部と、加えて、スタティックミキサーにより混合し、微粒子浸透層塗工液1を得た。
[微粒子浸透層塗工液2の調製](一次粒子径120nm樹脂粒子)
エマルジョン水溶液1と同様にして、懸濁重合により、固形分濃度20%、平均1次粒子径120nm、Tg:78℃のエマルジョン水溶液4を得た。次に、エマルジョン水溶液3を100部と、水溶性樹脂溶液2を25部と、加え、スタティックミキサーにより混合して、微粒子浸透層塗工液2を得た。
[接着層塗工液1の調製]
三井化学性ケミパールV−300(固形分濃度40%、平均2次粒子径μ)を10部と、イオン交換水部90部と、を5分攪拌混合して、接着層塗工液1を得た。
離型剤塗工液1の調製]
型剤として中京油脂社製ポリロン788を用いた。
[導電性微粒子を含むインクの調整]
特開平11−080647号公報に記載の方法にしたがって、銀微粒子分散体(銀コロイド)を調製した。具体的には、硝酸酸性の100mM硝酸銀水溶液100mLをビーカーに入れ、高分子分散樹脂(商品名「ディスパービック180」、ビックケミー社製)5gを加えた。高分子量顔料分散樹脂を十分に溶解させた後、トリエタノールアミン5mLをさらに加えて、銀微粒子分散体(銀コロイド)を得た。それぞれの成分を下表1に示す配合比で十分混合して溶解させた後、ポアサイズ2μmのフィルターにより加圧濾過し、導電性微粒子を含むインクとして、導電性インクAおよび導電性インクBを調製した。
Figure 2019106400
[絶縁微粒子を含むインクの調整]
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−865:大日本インキ化学工業株式会社、商品名)14.5g、アミノトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(LA−3018−50Pの固形物のみを使用:大日本インキ化学工業株式会社、商品名)10.5g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)0.013gをガンマブチローラクトン(25℃における蒸気圧2.3×102Pa)75.0gに溶解して、粒子径が55nm、粘度が15mPa・s、表面張力が44mN/mの絶縁微粒子を含むインクを得た。
[絶縁性溶解インクの調整]
絶縁性溶解インクとして、サンハヤト株式会社製のハヤコートマーク2EFを用いた。
[RGBKの顔料インクの調整]
水100重量部/エチレングリコール50重量部の溶液に、CF AQ−023(御国色素製、顔料水分散液)23gを混合して、ビーズミルにより攪拌し、さらに、塩酸を添加してpH3とすることにより、レッド画素用のR顔料インクを調製した。R顔料インクの平均2次粒子径は、51nmであった。同様に、CF AQ−010(御国色素製、顔料水分散液)20gを用いて、ブルー画素用のB顔料インクを調製した。B顔料インクの平均2次粒子径は、52nmであった。同様に、CF AQ−016(御国色素製顔料水分散液)21gを用いて、グリーン画素用のG顔料インクを調製した。G顔料インクの平均2次粒子径は、53nmであった。同様に、CF AQ−022(御国色素製、顔料水分散液)23gを用いて、ブラックマトリックス用のK顔料インクを調製した。K顔料インクの平均2次粒子径は、50nmであった。
1:[電界が掛けられる電極パターンのための記録材および記録物の実施例]
[記録材1−1]
溶媒吸収層塗工液2を基材Aの表面に塗工してから乾燥させることにより、記録材の構成素材として、基材A上に溶媒吸収層を形成した。乾燥後の塗工量は40g/m2とした。溶媒吸収層の厚さは40μmであった。この溶媒吸収層の表面に、湿し水による処理を行いながら微粒子浸透層塗工液1を塗工し、その後、乾燥させることにより、溶媒吸収層上に微粒子浸透層を形成した。乾燥後の塗工量は3g/m2とした。微粒子浸透層の厚さは3μmであった。その後、微粒子浸透層の表面に、湿し水による処理を行いながら接着層塗工液1を塗工し、その後、乾燥させることにより、溶媒吸収層の表面に接着剤が離散的に配された接着層を形成した。離散的に配された接着層の乾燥後の塗工量は、1.0g/m2とした。離散的に配された接着層の厚さは、1.0μmであった。これにより、空隙構造を保持する厚膜の溶媒吸収層と、熔融膜化可能な薄膜の微粒子浸透層と、接着剤を離散的に配した接着層と、を含む記録材1−1を製造した。
[記録物1−1]
記録材1−1に、導電性微粒子を含むインクを用いて、第1の画像をインクジェット方式により記録して、配線パターンが記録された記録物1を得た。その後、この記録物1の接着層および微粒子浸透層の表面と、ガラス基板と、を合わせてから加熱加圧することにより、微粒子浸透層を溶融膜化して絶縁性保護膜を形成しながら、ガラス基板に接着した。その後、空隙構造にインクの溶媒成分を保持したままの溶媒吸収層と、基材と、を剥離ローラにより剥離除去して、記録物1−1を得た。微粒子浸透層の底部に頭出し(外部に露出)された導電性微粒子膜は、電極パッド部として活用することができる。配線パターンを記録する記録装置としては、インクの吐出エネルギー発生素子としてピエゾ素子を用いる、ピエゾヘッドが搭載されたEPSON PX−S160Tを使用した。
[記録材1−2]
溶媒吸収層塗工液2を基材Aの表面に塗工してから乾燥させることにより、記録材の構成素材として、基材A上に第2の溶媒吸収層を形成した。乾燥後の塗工量は40g/m2とした。第2の溶媒吸収層の厚さは40μmであった。この第2の溶媒吸収層の表面に、湿し水による処理を行いながら溶媒吸収層塗工液1を塗工し、その後、乾燥させることにより、第2の溶媒吸収層上に第1の溶媒吸収層を形成した。乾燥後の塗工量は10g/m2とした。第1の溶媒吸収層の厚さは10μmであった。さらに、第1の溶媒吸収層の表面に、湿し水による処理を行いながら微粒子浸透層塗工液1を塗工し、その後、乾燥させることにより、第1の溶媒吸収層上に微粒子浸透層を形成した。乾燥後の塗工量は3g/m2とした。微粒子浸透層の厚さは3μmであった。その後、微粒子浸透層の表面に、湿し水による処理を行いながら接着層塗工液1を塗工し、その後、乾燥させることによって、溶媒吸収層の表面に接着剤が離散的に配された接着層を形成した。離散的に配された接着層の乾燥後の塗工量は、1.0g/m2とした。離散的に配された接着層の厚さは、1.0μmであった。
このようにして、基材上に、空隙構造を保持する厚膜の第2の溶媒吸収層と、熔融膜化可能な薄膜の第1の溶媒吸収層と、微粒子浸透層と、接着剤が離散的に設けられた接着層と、を含む記録材1−2を製造した。
溶媒吸収層、微粒子浸透層、および接着層の塗工にはグラビアコーターを用い、それらの塗工速度は5m/分、乾燥温度は60℃とした。この微粒子浸透層の空隙径、および溶媒吸収層の空隙径は、BET法により測定した。微粒子浸透層の空隙径は120nmであり、第1の溶媒吸収層の空隙径は40nm、第2の溶媒吸収層の空隙径は10nmであった。
[記録物1−2]
記録材1―2に、絶縁性微粒子を含むインクを用いて、インクジェット方式により、電極パターンの記録部以外の全面に絶縁パターンを記録した。その後、導電性微粒子を含むインクを用いて、第1の画像(電極パターン)をインクジェット方式により記録した。その後、この記録物の微粒子浸透層と、ガラス基板と、を合わせてから加熱加圧することにより、微粒子浸透層および第1の溶媒吸収層を溶融膜化し、空隙構造を解消して絶縁性保護膜を形成しながら、ガラス基板に接着した。その後、これらの接着物をDMSO溶液中に15分間浸漬させた後、基材と、インクの溶媒成分のほぼ全てを含む第2の溶媒吸収層と、を剥離した。第1の溶媒吸収層が熔融膜化した薄膜の絶縁膜に、それを突き破ることが可能な突起を有する電極端子を合わせて、熱圧着することにより、その絶縁膜を再熔融させた。これにより、電極パターンが外部と接続可能な記録物1−2を得た。配線パターンを記録する記録装置としては、インクの吐出エネルギー発生素子としてピエゾ素子を用いる、ピエゾヘッドが搭載されたEPSON PX−S160Tを使用した。
2:[電流を流す電極パターンのための記録材および記録物の実施例]
[記録材2−1]
基材Aの代わりに基材Bを使用し、微粒子浸透層上に接着層を設けなかった以外は、実施例1−1と同様の方法により記録材2−1を製造した。
[記録物2−1]
記録材2−1に、導電性微粒子を含むインクを用いて第1の画像(電極パターン)をインクジェット方式により記録した。第1の画像は、例えば、フレキシブルケーブルの配線パターンである。溶媒吸収層に含まれるインクの溶媒成分を十分に除くように、記録物を乾燥させた後、絶縁性フィルムAを微粒子浸透層に合わせて加圧加熱した。これにより、溶媒吸収層と微粒子浸透層とを熔融膜化させながら、絶縁性フィルムと接着させて記録物2−1を得た。
[記録材2−2]
微粒子浸透層上に接着層を設けなかった以外は、実施例1−1と同様の方法によって、記録材2−2を製造した。
[記録物2−2]
記録材2−2に、絶縁性微粒子を含むインク1を用いて、インクジェット方式により、電極パターンの画像部以外の全面に絶縁パターンを記録した。その後、導電性微粒子を含むインクを用いて第1の画像(電極パターン)をインクジェット方式により記録した。その後、この記録物の微粒子浸透層と絶縁性フィルムとを合わせてから加熱加圧することにより、微粒子浸透層を溶融膜化し、その空隙構造を解消して絶縁性保護膜を形成しながら、絶縁性フィルムに接着した。インクの溶媒成分を保持した溶媒吸収層と、基材と、を剥離ローラにより剥離してから、露出した微粒子浸透層と絶縁性フィルムとを合わせて加圧加熱した。これにより、微粒子浸透層を再溶融させて絶縁性フィルムと接着させ、記録物2−2を得た。
3:[2層の電極パターンのための記録材および記録物の実施例]
[記録材3−1]
溶媒吸収層塗工液2を基材Cの表面に塗工してから乾燥させることにより、記録材の構成素材として、基材C上に溶媒吸収層を形成した。乾燥後の塗工量は50g/m2とした。溶媒吸収層の厚さは50μmであった。この溶媒吸収層の表面に、湿し水による処理を行いながら微粒子浸透層塗工液1を塗工し、その後、乾燥させることにより、溶媒吸収層上に微粒子浸透層を形成した。乾燥後の塗工量は10g/m2とした。微粒子浸透層の厚さは、10μmであった。その後、微粒子浸透層の表面に、湿し水による処理を行いながら接着層塗工液1を塗工し、その後、乾燥させることにより、溶媒吸収層の表面に接着剤が離散的に配された接着層を形成した。その接着層の乾燥後の塗工量は、1.0g/m2とした。その接着層の厚さは1.0μmであった。これにより、空隙構造を保持する厚膜の溶媒吸収層と、熔融膜化可能な薄膜の微粒子浸透層と、接着剤が離散的に配された接着層と、を含む記録材3−1を製造した。
[記録物3−1]
記録材3−1に、絶縁性微粒子を含むインクを用いて、インクジェット方式により、第1の画像(電極パターン)の記録部以外の全面(ネガパターン部)に絶縁パターンを記録して、第1の画像の記録部の外周における空隙を埋めた。その後、導電性微粒子を含むインクを用いて、インクジェット方式により第1の画像(電極パターン)を記録した。第1の画像は、例えば、静電容量型のタッチパネル用のX配線パターンである。その後、絶縁性微粒子を含むインクを用いて、インクジェット方式により、微粒子浸透層の膜厚を超えない範囲において、その微粒子浸透層の空隙を埋め尽くすように、記録材の全面に絶縁パターンを記録した。その後、導電性微粒子を含むインクを用いて、インクジェット方式により、第2の画像(電極パターン)を記録した。第2の画像は、例えば、静電容量型のタッチパネル用のY配線パターンである。
その後、微粒子浸透層および接着層表面と、ガラス基板と、を合わせて加圧加熱することにより、微粒子浸透層と絶縁性微粒子とを熔融膜化してガラス基板に接着する。これにより、絶縁膜(静電容量膜)によって分離された第1および第2の電極パターンを形成した。インクの溶媒成分を保持した溶媒吸収層は、剥離ローラを用いて、基材と共に剥離した。その後、透明絶縁性フィルム1と合わせて加圧加熱することにより、導電性微粒子の保護膜を再び熔融膜化させて、熱ラミネートにより録物3−1を製造した。
[記録材3−2]
接着層と微粒子浸透層(第1の微粒子浸透層)との間に第2の微粒子浸透層を設けた以外は、記録材1−2と同様にして、記録材3−2を製造した。第2の微粒子浸透層は、第1の微粒子浸透層の表面に、湿し水による処理を行いながら微粒子浸透層塗工液2を塗工した後に、乾燥させることにより形成した。乾燥後の塗工量は3g/m2とした。第2の微粒子浸透層の厚さは3μmであった。
[記録物3−2]
記録材3−2に、導電性微粒子を含む第1インクを用いて、インクジェット方式により、第1の微粒子浸透層の底部に第1の画像(電極パターン)を記録した。第1の画像は、例えば、静電容量型のタッチパネル用のX配線パターンである。その後、導電性微粒子を含む第2インクを用いて、インクジェット方式により、第2の微粒子浸透層の底部に第2の画像(電極パターン)を記録した。第2の画像は、例えば、静電容量型のタッチパネル用のY配線パターンである。
その後、微粒子浸透層および接着層の表面と、ガラス基板と、を合わせて加圧加熱することにより、第1および第2の微粒子浸透層を熔融膜化しながらガラス基板に接着して、絶縁膜(静電容量膜)によって分離された第1および第2の電極パターンを形成した。溶媒成分を保持した溶媒吸収層は、剥離ローラを用いて、基材と共に剥離した。その後、透明絶縁性フィルム1と合わせて加圧加熱することにより、導電性微粒子の保護膜を再び熔融膜化させて、熱ラミネートにより記録物3−2を製造した。
4:[カラーフィルター付き電極パターンのための記録材および記録物の実施例]
[記録物4−1]
図18(a)のように、記録材1−2に、絶縁性微粒子2001を含むインクを記録ヘッド2018Cから吐出して、カラーフィルター用の第1の画像(電極パターン)の記録部以外の全面(ネガパターン部)に絶縁パターンを記録した。次に、導電性微粒子2000を含むインクを記録ヘッド2018Aから吐出して、カラーフィルター用の個別電極としての第1の画像(電極パターン)および電極パッド部を形成した。その後、再度、絶縁性微粒子2001を含むインクによって記録材全面に絶縁パターンを記録した。その後、図18(b)のように、ブラックマトリクス用のブラック顔料インクを記録ヘッド2018Dから吐出して、電極パターンの外周に遮光壁(ブラックマトリックス)となる画素枠を記録した。その後、個別電極の内部に、RGB顔料インクを記録ヘッド2018E,2018F,2018Gから吐出して、各々の色のフィルター画像を記録した。
その後、図18(c)のように、微粒子浸透層1600および接着層2002の表面と、支持体55としてのガラス基板と、を合わせて加圧加熱した。これにより、接着層2002、微粒子浸透層1600、および第1の溶媒吸収層1700を熔融膜化させながら、色材粒子保護膜、導電微粒子保護膜(微粒子浸透層)、絶縁保護膜(第1の溶媒吸収層)をガラス基材に接着した。このような記録物をDMSO溶液中に15分間浸漬し、図18(c)のうように、インクの溶媒成分のほぼ全てを含む第2の溶媒吸収層1706と、基材50と、を溶解剥離することにより、記録物4−1を製造した。記録装置としては、インクの吐出エネルギー発生素子としてピエゾ素子を用いる、ピエゾヘッドが搭載されたEPSON PX−S160Tを使用した。
5:[電気接続用の電極パターンのための記録材および記録物の実施例]
[記録材5−1]
溶媒吸収層としての透明絶縁性のセルロースナノファイバーシートの表面上に、湿し水による処理を行いながら微粒子浸透層塗工液1を塗工し、その後、乾燥させることにより、溶媒吸収層上に熔融膜化可能な微粒子浸透層を形成して、記録材5−1を製造した。乾燥後の塗工量は10g/m2とした。微粒子浸透層の厚さは10μmであった。
[記録物5−1]
記録材5−1に、絶縁性微粒子を含むインクを用いて、インクジェット方式により、第1の画像(電極パターン)の記録部以外の全面(ネガパターン部)に絶縁パターンを記録した。その後、導電性微粒子を含むインクを用いて、インクジェット方式により第1の画像(電極パターン)を記録した。さらに、絶縁性微粒子を含むインクを用いて、微粒子浸透層の全面に、その微粒子浸透層の膜厚内に納まるように絶縁パターンを記録した。その後、記録物を乾燥させてから絶縁性溶解インクに15分浸漬させてかれ、記録物全体を加熱処理する。これにより、絶縁性粒子、微粒子浸透層、および溶媒吸収層内に吸収された絶縁性樹脂を熔融膜化させて、導電性微粒子膜の近傍の空隙構造を解消して、導電性微粒子膜の表裏に絶縁膜を形成した。さらに、公知の穿孔処理により、電気素子の端子を差し込むための挿入孔を設けてから、公知の方法によって、電気素子の実装および半田付けなどを行って、記録材5−1を製造した。
6:[記録材および記録物の比較例]
[記録材6(比較例)]
基材Aの表面に微粒子浸透層塗工液1を塗工してから乾燥させることにより、記録材6を製造した。乾燥後の塗工量は40g/m2とした。微粒子浸透層の厚さは40μmであった。微粒子浸透層の塗工にはグラビアコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥温度は60℃とした。
[記録物6(比較例)]
記録材6に、導電性微粒子を含むインク1を用いて、インクジェット方式により、電極パターンを記録した。その電極パターンが記録された記録材6の微粒子浸透層と、支持体であるガラスの表面と、を合わせて、それらをヒートローラと加圧ローラとにより加圧加熱して、記録材6をガラスに接着(転写)させた。その後、基材を剥離することにより、比較例としての記録物6を得た。
記録物6においては、厚膜の微粒子浸透層が熔融膜化して、支持体としてのガラスに接着したものの、その接着性は低く、また記録された電極パターンにおける滲みが大きく、その記録解像度が低かった。しかも、電極パターン内に導電性微粒子がまばらに存在し、また微粒子浸透層が熔融膜化した絶縁性保護膜には、導電性微粒子の超微粉が混入した。そのため、漏れ電流が発生するおそれがあり、電極パターンの導電性も低かった。
[記録材7(比較例)]
基材Aの表面に溶媒吸収層塗工液2を塗工してから乾燥させることにより、記録材7を製造した。乾燥後の塗工量は40g/m2とした。溶媒吸収層の厚さは40μmであった。微粒子浸透層の塗工にはグラビアコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥温度は60℃とした。
[記録物7(比較例)]
記録材7に、導電性微粒子を含むインク1を用いて、インクジェット方式により、電極パターン記録した。市販のガラス接着用プライマーシートを用いて、溶媒吸収層上に接着層を形成した。その後、電極パターンが記録された記録材7の接着層と、支持体であるガラスの表面と、を合わせて、それらをヒートローラと加圧ローラとにより加圧加熱することにより、記録材7を支持体に接着(転写)させた。その後、基材を剥離してから、突起の付いた電極端子を溶媒吸収層に圧着接続することにより、比較例としての記録物7を得た。
記録物7においては、厚膜の溶媒吸収層が熔融膜化しないため、電極パターンが記録された記録材7を直接支持体に接着(転写)させることができず、電極パターンの記録後に接着層を設ける工程が必要であった。
記録物7に、多量のインクによって電極パターンを記録した場合には滲みが大きく、その記録解像度が低かった。また、溶媒吸収層が熔融膜化しないため、溶媒吸収層の空隙が維持されたままとなり、長期信頼性が低下する。さらに、導電性微粒子が溶媒吸収層内に浸透しないため、溶媒吸収層底部に、電極パターンを外部に接続するための取り出し部を形成することができず、その接続のための工程を追加する必要があった。
[記録材および記録物の実施例の評価]
上述した1から5の実施例においては、厚膜の溶媒吸収層がインクの溶媒成分を大量に吸収するため、インクによる高濃度の電極パターンの記録が可能となり、高密度な導電性微粒子膜を形成することができた。また、薄膜の微粒子浸透層によって導電性微粒子の滲み過ぎを抑制し、厚膜の溶媒吸収層によってインクの溶媒成分を大量に吸収させることにより、導電性微粒子の濃度が低いインクを用いることができる。すなわち、導電性微粒子の濃度が低いインクを複数回重ねて付与することにより、導電性微粒子の濃度が高いインクを用いなくても、導電性が良好な微細かつ厚膜の電極パターンを高密度に安定的に形成することができた。電極パターンの記録後に、絶縁性の微粒子浸透層を加圧加熱して熔融膜化させることにより、微粒子浸透層の空隙構造を解消し、電極パターンの表面に絶縁性保護膜を形成して、長期保存性を高めることができた。
実施例1の記録材1−1は、微粒子浸透層の表面に、接着剤を離散的に配した接着層を設けるため、画像の記録特性に優れ、かつ良好な接着性によって電極パターンを支持体に接着(転写)することができた。
実施例1の記録材1−2は、溶媒吸収層を複層構成として、第1の溶媒吸収層を熔融膜化可能な薄膜とし、第2の溶媒吸収層をインクの溶媒成分の吸収が可能な厚膜とすることにより、第2の溶媒吸収層は、加圧加熱後にも空隙維持してインクの溶媒成分を保持する。また、第2の溶媒吸収層を熔融膜化して、電極パターンの裏面にも絶縁性保護膜を形成することにより、さらに長期保存性を向上させることができる。また、絶縁性微粒子によって画素枠を形成することにより、導電性微粒子の滲みがさらに抑制できた。また、電極パターンの記録部以外の全面に絶縁性微粒子を堆積させることにより、強固な絶縁性保護膜が形成でき、しかも粒子浸透層の表面を平坦化することができて、接着性がより良好となった。また、導電性微粒子の超微粉を含むインクの溶媒成分の全てを第2の溶媒吸収層を保持させてから、その第2の溶媒吸収層を剥離することにより、漏れ電流の発生を防止することができる。第2の溶媒吸収層は、加圧加熱後にも空隙を維持することが可能であるため、インクの溶媒成分を除去するための乾燥工程を必要とすることなく、電極パターンの記録直後に加熱圧着することができて、生産性を向上させることができる。
実施例2の記録材2−1において、微粒子浸透層の膜厚以上にまで導電性微粒子を積み上げて、微粒子浸透層の表面に、電極パターンの電気的な取り出し口である電極パッド部を形成することができた。電極パターンの表面側の絶縁性保護膜を再溶融させて、絶縁性フィルムと接着させることにより、電極パターンの表面に、より強固な絶縁性保護膜を形成することができた。
実施例2の記録材2−2により、ロール状の連続した支持体上に対して、大面積の電極パターンを簡易な工程により高い生産性をもって形成することができた。導電性微粒子の超微粉を含むインクの溶媒成分を保持した溶媒吸収層を剥離してから、露出した微粒子浸透層を再溶融させて絶縁性フィルムと接着させることにより、導電性微粒子の超微粉に起因する漏れ電流の発生を抑制することができる。また、電極パターンの裏面に強固な絶縁性保護膜を形成することができた。
実施例3の記録材3−1により、第1の電極パターン上に、絶縁性微粒子を堆積させて溶媒浸透可能な絶縁層を形成してから、第2の電極パターンを形成して、位置合わせ精度に優れた多層の電極パターンを作成することができた。
実施例3の記録材3−2に対しては、導電性微粒子を含むインクとして、小空隙構造の第1の微粒子浸透層の底部にて固液分離可能な第1インクを用いて、第1の電極パターンを記録した。また、導電性微粒子を含むインクとして、大空隙構造の第2の微粒子浸透層の底部において固液分離可能な第2インクを用いて、第2の電極パターンを記録した。第1および第2の電極パターンの位置合わせ精度が高く、それらの電極パターンの滲みが抑制された多層の電極パターンを作成することができた。
実施例4の記録材4−1により、他の機能性粒子膜と位置合わせ精度よく積層させた電極パターンを形成することができた。実施例5の記録材5−1においては、絶縁性溶解インクを用いることにより、熔融膜化しにくい溶媒吸収層の空隙を解消することができ、長期保存性に優れた電極パターンを形成して、その電極パターンを電気素子と接続することができた。
(他の実施形態)
本発明は、導電パターンおよび絶縁パターンの他、種々の電気的な特性をもつパターンが形成可能な電子デバイス用の基板、および、そのようなパターンを含む種々の電子デバイスに対して、広く適用することができる。それらのパターンは、微粒子と溶媒とを含むインクによって形成可能であればよい。また、本発明の電子デバイスは、基板としての記録材に形成されたパターンを含むものであればよく、その記録材の全てまたは一部を含む構成、あるいは、その記録材の全てまたは一部が接着(転写)された構成であってもよい。また、本発明の電子デバイスの形態は、平板状のみに特定されず任意であり、例えば、種々の電気装置への組み込みに適した形態とすることもできる。
1 記録材(電子デバイス用の基板)
1003 インク
1600 微粒子浸透層
1601 溶媒吸収層
1607 溶媒成分
1670 第1の微粒子浸透層
1680 第2の微粒子浸透層
1700 第1の溶媒吸収層
1706 第2の溶媒吸収層

Claims (14)

  1. 電気的な特性をもつパターンが形成可能な電子デバイス用の基板であって、
    前記パターンを形成するための導電性微粒子と、溶媒と、含むインクが浸透可能な空隙を有する微粒子浸透層と、
    前記微粒子浸透層の、前記パターンが形成される側と逆側に位置して、前記溶媒が浸透可能な空隙を有する溶媒吸収層と、を含み、
    前記溶媒吸収層の平均空隙径は、導電性微粒子の平均粒子径より小さいことを特徴とする電子デバイス用の基板。
  2. 前記溶媒吸収層の平均空隙径は5nm〜100nmの範囲であり、
    前記導電性微粒子の平均粒子径は40nm〜110nmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス用の基板。
  3. 前記溶媒吸収層は、第1の溶媒吸収層と、前記第1の溶媒吸収層の、前記微粒子浸透層が存在する側と逆側に位置する第2の溶媒吸収層と、を含み、
    前記第2の溶媒吸収層は、前記第1の溶媒吸収層よりも前記空隙が小さいことを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス用の基板。
  4. 前記第1の溶媒吸収層と前記第2の溶媒吸収層との間に、離型層を備えることを特徴とする請求項3に記載の電子デバイス用の基板。
  5. 前記第1の溶媒吸収層は、溶融膜化が可能であることを特徴とする請求項3または4に記載の電子デバイス用の基板。
  6. 前記微粒子浸透層は、溶融膜化が可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子デバイス用の基板。
  7. 電気的な特性をもつパターンが形成された電子デバイスであって、
    請求項1から6のいずれか1項に記載の電子デバイス用の基板と、
    前記導電性微粒子が、前記溶媒吸収層と前記微粒子浸透層との界面から順次、前記微粒子浸透層の内部に堆積することによって形成されたパターンと、
    を含むことを特徴とする電子デバイス。
  8. 前記溶媒吸収層は、第1の溶媒吸収層と、前記第1の溶媒吸収層の、前記微粒子浸透層が存在する側と逆側に位置する第2の溶媒吸収層と、を含み、
    前記第1の溶媒吸収層は、溶融膜化されて保護膜を構成することを特徴とする請求項7に記載の電子デバイス。
  9. 前記微粒子浸透層は、溶融膜化されて保護膜を構成することを特徴とする請求項7または8に記載の電子デバイス。
  10. 前記導電性微粒子によって形成された導電パターンの上部に、絶縁性微粒子によって形成された絶縁パターンが形成されていることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の電子デバイス。
  11. 前記導電性微粒子を前記微粒子浸透層の厚み以上に堆積させることによって形成される電気接続部を含むことを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の電子デバイス。
  12. 電気的な特性をもつパターンが形成された電子デバイスの製造方法であって、
    請求項1から6のいずれかに記載の電子デバイス用の基板を用意する工程と、
    前記パターンを形成するための導電性微粒子と、溶媒と、含むインクを前記微粒子浸透層に付与し、前記溶媒吸収層に吸収されない前記導電性微粒子を、前記溶媒吸収層と前記微粒子浸透層との界面から順次、前記微粒子浸透層の内部に堆積させて前記パターンを形成する工程と、
    を含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
  13. 前記微粒子浸透層を溶融膜化させる工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の電子デバイスの製造方法。
  14. 前記導電性微粒子を前記微粒子浸透層の厚み以上に堆積させることによって、電気接続部を形成する工程を含むことを特徴とする請求項12または13に記載の電子デバイスの製造方法。
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