JP2014013201A - 成分分布可視化装置、成分分布可視化方法、及び成分分布可視化プログラム - Google Patents

成分分布可視化装置、成分分布可視化方法、及び成分分布可視化プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】角質層内の成分分布を容易に可視化する。
【解決手段】角質層内の成分分布を可視化するための成分分布可視化装置であって、所定の粘着部材により採取された角質層の各層を所定の質量分析により分析して、前記各層の面及び深さ方向の成分量情報が含まれた質量分析データを取得する質量分析手段と、前記質量分析手段により得られた前記各層の面及び深さ方向の成分量情報が含まれた質量分析データを用いて、前記各層の成分分布画像を取得する画像取得手段とを有することにより上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本願は、成分分布可視化装置、成分分布可視化方法、及び成分分布可視化プログラムに関する。
従来から、例えば経皮吸収型の製剤等に含まれる有効成分が角質層へどの程度浸透しているか評価するため、有効成分の角質層への浸透の度合いを視覚的に表すことが求められている。一方、角質層は、一層あたり約0.001mm、全層でも約0.020mmと極めて薄いため、角質層を構成する個々の層に存在する成分の多寡を明瞭かつ簡便に可視化する手法は現在のところ存在していない。
例えば、従来における角質層・顆粒層から基底膜を含む表皮中の大まかな分布を示す方法としては、蛍光標識した有効成分を皮膚に浸透させ、切り出した皮膚の断面を蛍光顕微鏡や共焦点レーザ顕微鏡(Confocal Laser Scanning Microscope:CLSM)により観察する方法や、飛行時間質量分析計(Time Of Flight Secondary Ion Mass Spectrometer:TOF−SIMS)等の表面計測手法が知られている。
しかしながら、上述した従来の方法では、蛍光標識により経皮吸収性が変化する可能性を否定できず、切り出した皮膚の断面を観察するため、ヒトの皮膚に容易に適用することができない。また、TOF−SIMS等ではイオン化効率が良くないことに加え、断面に存在する分子の絶対数が少なく、内因性分子の影響を受ける等の理由からSN(Signal to noise)比の明確なイメージが得られることが少ない。更に、上述したように角質層の厚みは約0.001mm程度と薄いため、角質層間の分子分布の違いを明確に区別可能な解像度及び感度を両立する手法は存在しない。
開示の技術は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、角質層内の成分分布を容易に可視化する成分分布可視化装置、成分分布可視化方法、及び成分分布可視化プログラムを提供することを目的とする。
本発明の一観点によれば、上記目的を達成するために、角質層内の成分分布を可視化するための成分分布可視化装置であって、所定の粘着部材により採取された角質層の各層を所定の質量分析により分析して、前記各層の面及び深さ方向の成分量情報が含まれた質量分析データを取得する質量分析手段と、前記質量分析手段により得られた前記各層の面及び深さ方向の成分量情報が含まれた質量分析データを用いて、前記各層の成分分布画像を取得する画像取得手段とを有することを特徴とする。
開示の技術によれば、角質層内の成分分布を容易に可視化することが可能となる。
本実施形態に係る成分分布可視化装置の一例を示す図である。 本実施形態に係る成分分布可視化処理の実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。 本実施形態に係る成分分布可視化処理の一例を示すフローチャートである。 経皮吸収性を評価する試料の調製方法を説明するための図である。 角質層を採取するための粘着シートの構造の一例を示す図である。 ガラス基板上に貼り付けた粘着シートの一例を示す図である。 DESI質量分析について説明するための図である。 各層の成分分布画像の取得を説明するための図である。 角質層の各層の成分分布画像の一例を示す図である。 ヒートマップ表示とマスクロマトグラムとの関係を示す図である。 経皮吸収の状態を可視化する方法を説明するための図である。 本実施形態に係る経皮吸収状態の可視化方法を説明するための図である。 本実施形態の可視化方法で得られた角層内成分分布の一例を示す図である。 図9の各例に対応する角質層内の成分分布画像を示す図である。 角質層内の成分分布画像のバリエーションの一例を示す図である。 標準品の成分分布画像を用いた定量法を説明するための図(その1)である。 標準品の成分分布画像を用いた定量法を説明するための図(その2)である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<成分分布可視化装置について>
まず、本実施形態において、角質層内の成分分布を可視化する成分分布可視化装置の機能構成例について説明する。図1は、本実施形態に係る成分分布可視化装置の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像処理装置10は、入力手段11と、出力手段12と、記憶手段13と、質量分析手段14と、画像取得手段15と、データ処理手段16と、定量化手段17と、送受信手段18と、制御手段19とを有するように構成される。
入力手段11は、例えば成分分布可視化装置10を使用するユーザ等からの成分分布可視化処理に関する各種指示の開始/終了、設定等の入力を受け付ける。なお、入力手段11は、例えばPC(Personal Computer)等の汎用のコンピュータであればキーボードやマウス等のポインティングデバイスを含む。また、入力手段11は、例えば音声等により入力可能なマイク等の音声入力デバイスであっても良い。
出力手段12は、入力手段11により入力された内容や、入力内容に基づいて実行された内容等の出力を行う。なお、出力手段12は、例えばディスプレイやスピーカ等を含む。また、出力手段12は、プリンタ等の印刷デバイスを有していても良い。なお、上述した入力手段11と出力手段12は、例えば成分分布可視化装置10がスマートフォンやタブレット端末等の場合、例えばタッチパネルのように入出力一体型の構成であっても良い。
記憶手段13は、本実施形態において必要となる各種情報を記憶する。具体的には、本実施形態における成分分布可視化処理を実行するための各種プログラムや各種設定情報等を記憶する。また、記憶手段13は、上述した各種情報を必要に応じて所定のタイミングで書き込んだり、読み出したりすることができる。
なお、記憶手段13は、多種の情報の集合物であり、例えばキーワード等を用いて情報を検索し、抽出することができるように体系的に構成されているデータベースとしての機能も有していても良い。更に、記憶手段13に記憶される情報は、送受信手段18を介して通信ネットワークに接続された外部装置にアクセスして取得しても良い。
質量分析手段14は、ユーザの指示等に応じて、所定の粘着シート(例えばスキンチェッカー(登録商標)等)により採取された角質層の各層を所定の質量分析(例えば、DESI(Desorption Electrospray Ionization:脱離電界噴霧イオン化)等)により分析して、各層の面及び深さ方向の成分量情報が含まれた質量分析データを取得する。なお、質量分析手段14による質量分析データ取得例については、後述する。また、取得された質量分析データ等は、記憶手段13に記憶される
画像取得手段15は、質量分析手段14により得られた各層の面及び深さ方向の成分量情報が含まれた質量分析データを用いて、角質層の各層に含まれた成分(例えば、経皮吸収された製剤等に含まれた有効成分等)の分布画像(成分分布画像)を取得する。なお、画像取得手段15により取得された成分分布画像は、出力手段12により画面に表示させたり、記憶手段13に記憶させる。
データ処理手段16は、画像取得手段15により得られた各層の成分分布画像の画素データを所定の方向にビニング(binning)する。また、データ処理手段16は、画素データがビニングされた各層の成分分布画像を、所定の方向に所定の圧縮率で圧縮し、圧縮した画像を用いて角質層内の成分分布画像を生成する。
ここで、所定の方向とは、例えば角質層に含まれた成分が浸透していく深さ方向等を示す。また、所定の圧縮率とは、例えば1/5や1/10等の所定の圧縮率であり、例えば画像取得手段15により取得される層の数に対応して圧縮率を設定することができるが、これに限定されるものではない。
また、データ処理手段16は、予め設定された複数の角質層内の成分分布の表現バリエーションの中から少なくとも1つを用いて生成しても良い。データ処理手段16は、生成した角質層内の成分分布画像を出力手段12等の画面に出力させてユーザ等に提示したり、記憶手段13に記憶させたり、送受信手段18を介して外部装置に送信したりすることが可能である。なお、データ処理手段16による生成された角質層内の成分分布画像例については、後述する。
上述のように角質層内において可視化されるデータは、例えば製剤等に含まれる有効成分に限定されるものではない。
定量化手段17は、画像取得手段15により、採取された角質層の各層上に所定の成分を液下して得られた画像を用いて定量化を行う。なお、定量化手段17による具体的な定量化例については、後述する。
送受信手段18は、例えば通信ネットワーク等を用いて接続可能な外部装置から成分分布可視化処理を実現するための実行プログラムや、各処理に必要な情報等を送受信することが可能なインターフェースである。したがって、送受信手段18は、例えば外部装置等から最新のパラメータ情報等を取得したり、各種情報を外部装置等に送信したりことが可能である。
制御手段19は、画像処理装置10の各構成全体の制御を行う。例えば、制御手段19は、質量分析データの取得や、画像の取得及び生成における処理等のうち少なくとも1つを制御する。
<成分分布可視化装置10:ハードウェア構成例>
本実施形態では、上述した成分分布可視化装置10の各機能をコンピュータに実行させる実行プログラム(成分分布可視化プログラム)を生成し、例えば汎用のPC、サーバ等にインストールすることにより、各処理を実現する。図2は、本実施形態に係る成分分布可視化処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、コンピュータ本体は、入力装置21と、出力装置22と、ドライブ装置23と、補助記憶装置24と、メモリ装置25と、各種制御を行うCPU(Central Processing Unit)26と、ネットワーク接続装置27とを有するよう構成され、これらはシステムバスBで相互に接続されている。
入力装置21は、例えばユーザ等が操作するキーボードやマウス等のポインティングデバイス、マイク等の音声入力デバイス等を有し、ユーザ等からのプログラムの実行等、各種操作信号を入力する。
出力装置22は、本実施形態における処理を行うコンピュータ本体を操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するディスプレイを有し、CPU26が実行する制御プログラムの実行経過や結果等を表示する。
ここで、本発明においてコンピュータ本体にインストールされる実行プログラムは、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリやCD−ROM等の可搬型の記録媒体28等により提供される。記録媒体28は、ドライブ装置23にセット可能であり、記録媒体28に含まれる実行プログラムが、記録媒体28からドライブ装置23を介して補助記憶装置24にインストールされる。
補助記憶装置24は、ハードディスク等のストレージ手段であり、本実施形態に係る実行プログラムやコンピュータに設けられた制御プログラム等を記憶し、必要に応じて入出力を行う。
メモリ装置25は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等であり、CPU26により補助記憶装置24から読み出された実行プログラム等を格納する。なお、上述した補助記憶装置24やメモリ装置25は、1つの記憶装置として一体型に構成されていてもよい。
CPU26は、OS(Operating System)等の制御プログラム、及びメモリ装置25に格納されている実行プログラムに基づいて、各種演算や各ハードウェア構成部とのデータの入出力等、コンピュータ全体の処理を制御することで、本実施形態に係る成分分布可視化処理を実現する。なお、プログラム実行中に必要な各種情報等は、補助記憶装置24から取得し、実行結果等を格納してもよい。
ネットワーク接続装置27は、インターネットやLAN(Local Area Network)等に代表される通信ネットワーク等と接続することにより、実行プログラムを通信ネットワークに接続されている外部装置等から取得したり、プログラムを実行することで得られた実行結果又は本実施形態における実行プログラム自体を外部装置等に提供したりする。
上述したハードウェア構成により、本実施形態に係る成分分布可視化処理を実行することが可能となる。また、実行プログラムをインストールして、汎用のパーソナルコンピュータ等で実現しても良い。
<成分分布可視化処理例>
次に、本実施形態に係る成分分布可視化処理の一例を説明する。図3は、本実施形態に係る成分分布可視化処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、成分分布可視化装置10は、予め上腕部の部位から粘着シートで角質層を採取し、採取した角質層の各層をDESI質量分析により分析し、分析により各層の対象領域(Region of Interest:ROI)の質量分析データを取得する(S01)。
次に、成分分布可視化装置10は、S01の処理により得られた対象領域の質量分析データを用いて、例えば各層の対象領域に含まれる所定成分の分子のイオンの位置と強度との関係を所定の色のイメージで可視化した成分分布画像を生成して取得する(S02)。
次に、成分分布可視化装置10は、S02の処理により得られた各層の成分分布画像の画素データを所定の方向にビニングする(S03)。
次に、成分分布可視化装置10は、S03の処理により画素データがビニングされた各層の成分分布画像を、所定の方向に所定の圧縮率で圧縮し、圧縮した画像を用いて角質層内の成分分布画像を生成する(S04)。
次に、成分分布可視化装置10は、S04の処理により得られた角質層内の成分分布画像を画面に表示する(S05)。
なお、成分分布可視化装置10は、必要に応じて、S01の処理で採取した角質層の各層上に所定成分を滴下し、S02の処理で得られる画像を用いて定量化を行う(S06)。
ここで、成分分布可視化装置10は、処理を終了するか否かを判断し(S07)、例えばユーザによる終了指示等により、処理を終了する場合(S07において、YES)、処理を終了する。また、処理終了しない場合(S07において、NO)、S01の処理に戻る。
なお、上述した処理では、S04の処理において、ビニングされた各層の成分分布画像を、所定の方向に所定の圧縮率で圧縮しているが、本実施形態においてはこれに限定されるものではなく、例えば圧縮を行なわなくても良い。
<テープストリッピングによる角質層採取>
図4は、経皮吸収性を評価する試料の調製方法を説明するための図である。図4の例では、例えば試料に「IPSA(登録商標) Metabolizer モイストホワイト W1(化粧液・試作品)」(4MSK(4−methoxy salycilic acid potassium salt)、約1%配合)を用いる。
まず、上腕部31を石鹸洗浄後、約30分待つ。次に、図4(A)に示すように、例えば上腕部31の40×40mmの領域32に対して、上述した試料を約0.7g塗布し、室温で1時間静置する。次に、試料を塗布した領域32を石鹸で洗浄する。
次に、図4(B)に示すように、例えばスキンチェッカー(プロモツール株式会社)等の粘着シート40で領域32の角質層を採取し、粘着シート40の粘着部に付着した角質層に対して、例えばDESI質量分析を行う。なお、粘着シート40は、粘着部材の一例である。粘着部材を用いた角質層の採取には、例えば一般的なセロハンテープ等を用いても良く、粘着性を有するその他の部材を用いても良い。
図5は、角質層を採取するための粘着シートの構造の一例を示す図である。図5に示すように、粘着シート40は、例えば透明樹脂等からなる支持体41と、角質層剥離用粘着部42とを有している。更に、角質層剥離用粘着部42は、粘着部保護用剥離シート43を有している。角質層剥離用粘着部42は、使用の際に粘着部保護用剥離シート43を剥がして用いる。
なお、図5に示す粘着シートの形状やサイズについては、これに限定されるものではない。また、粘着シートを用いた経皮吸収試験の手法については、標準的な方法を用いることができるため、ここでの説明は省略する。
本実施形態では、例えば被験者を健常なヒト(40代、男性1名)とし、被験者の角質層が付着した粘着シート40の粘着面を中心部分から短冊状(例えば約5mm×35mm)に切り取り、例えばガラス基板上に両面テープを用いて貼り付ける。
図6は、ガラス基板上に貼り付けた粘着シートの一例を示す図である。まず、図6(A)に示すように、粘着シート40を用いてテープストリッピング操作により、ヒトの角質層を皮膚の最外層から順次採取(1層目〜5層目)していく。
また、図6(B)に示すように、採取順に粘着シート40の粘着面をガラス基板上に配置し、各層の対象領域(ROI)を、例えば34mm幅×5mm高さとして設定し、対象領域(ROI)に対してDESI質量分析による分析を行う。
図6(C)は、ガラス基板上に貼り付けた粘着シートを示す実例画像である。実例では、例えば75×25mmのガラス基板(スライドガラス)上に両面テープで貼り付けて用いる。なお、図6(C)に示す白ドット部分は、位置マーカーを示している。
ここで、上述した1回のテープストリッピング操作により何層の角質層が採取されるか、均一性がどの程度かという点に関しては、採取部位や、年齢、紫外線暴露の程度等によるため、厳密には顕微鏡観察等で別途検討する必要があるが、例えば1回のテープストリッピング操作あたり角質層1層採取したと仮定する。
<DESI質量分析>
次に、上述した対象領域に対して行なわれるDESI質量分析について説明する。図7は、DESI質量分析について説明するための図である。
図7(A)に示すように、上述した対象領域(ROI)に含まれる試料表面50に対して、ノズル(Sprayer Tip)51の先端部から2〜3μL/min程度の所定の水/有機溶媒混液(例えばギ酸0.1%、アセトニトル50%)をNガスによりスプレー状に吹き付ける。このとき、ノズル51の先端部に3kV程度の電圧をかけることで、エレクトロスプレー現象により帯電した液滴が生成され、これをNガスにより試料表面50に対してジェット状に噴霧する。
スパッタ現象により対象領域(ROI)の試料表面50から叩き出された分子は、気相(及び凝縮相)での電荷交換、ドロプレットピックアップ(Droplet Pickup)等によりイオン化され、ガスジェットによる慣性及び大気圧下での電界(電場勾配)により、質量分析計の入口部(MS(Mass Spectrometry) Inlet(例えば、局所サンプリング用延長加熱キャピラリー))52に導かれる。
入口部52に到達した分子イオンは、高真空(10−5〜10−10Torr)の質量分析計内部に導入され、質量(厳密にはイオンの質量を電荷で割ったm/z)とその強度の情報として記録される。このm/zは、各々の分子に固有であり、その強度がイオンの量に比例するため、例えば1回のDESI質量分析により、複数の分子の定性・定量情報を得ることが可能となる。
また、MS/MS(タンデム質量分析)を行う質量分析計では、目的イオンを装置内で単離し、ガスとの衝突で解裂した断片(フラグメント)イオンを検出することで、特異性の高い定性分析や、検出下限が低い高感度定量が可能となる。
このように、DESI質量分析により、試料表面50に付着した角質層の各層に含まれる多成分を1度に分析(同定・定量)することが可能となる。また、吹き付ける溶媒の組成や流量を制御することにより0.001〜0.1mm程度の深さの分子まで抽出することが可能であるため、対象領域に対してテープストリッピングした角質層の各層中に含まれる分子を全て検出することも可能である。また、例えばテープストリッピングを用いればほぼ非侵襲に試料を採取可能であるため、ヒトの皮膚での解析も容易である。
本実施形態では、上述したDESI質量分析により得られたデータを質量分析データとして質量分析手段14により取得する。
ここで、図7(A)に示すαは、入射角(Incident Angle)を示し、図7に示すβは、集光角(Collection Angle)を示す。また、dは、ノズル51の先端部から試料表面50までの距離を示し、dは、試料表面50から入口部52の中心部までの距離を示す。dは、ノズル51の先端部から入口部52の中心部までの距離を示す。
上述したDESI質量分析を用いて、目的イオンのシグナル強度(感度)を向上させるためには、試料表面50と、ノズル51と、入力部52との位置関係が重要となる。例えば実験により、目的イオンのシグナル強度、安定性の関係を確認して、最適条件を調べた結果、最適値はd=1.75mm、d=3.5mm、d=0.5mm、α=60°であったが、dやαを変えると他のパラメータも付随して変わるため、試料ごとに個別に最適化する必要がある。
また、最適値は、ノズル51から噴射される液滴、Nガス圧力(流速)、試料表面50に付着している試料等の状態、分析対象の試料分子の分子量・極性等により変わるため、その都度、適宜修正する。なお、上述したα、β、d、dは、図7(B)に示すような範囲(α=0〜90°、β=5〜10°、d=1〜10mm、d=0〜2mm)に設定するのが標準的である。
また、図7に示す試料表面50は、XY方向に任意の速度で精密かつ正確に動かすことが可能であるため、ノズル51と入力部52との相対位置を一定に保ちながら、所定の時間ごとにスパッタ位置を変えていくことで、各ポイントでの質量分析データ(上述した定性・定量情報等)を連続的に取得することが可能である。
したがって、本実施形態では、質量分析手段14により、試料表面上の測定ポイント(XY)、検出したイオンの質量及び強度の計4次元の質量分析データを上述した各層に対して取得する。画像取得手段15は、この質量分析データから、後述する専用ソフトウェアを用いることにより、任意の分子のイオンの試料表面上及び層ごとの位置と強度との関係を、所定の色のイメージで可視化(ビジュアル化)した成分分布画像を得ることが可能となる。この成分分布画像により、複数の分子の各層における空間的位置とその量を、簡便かつ直感的に示すことが可能となる。
<各層の成分分布画像の取得について>
次に、上述した各層における質量分析データを用いて可視化される各層の成分分布画像の取得方法について説明する。図8は、各層の成分分布画像の取得を説明するための図である。なお、図8(A)、図8(B)、図8(D)に示す(1)〜(6)は、それぞれの測定位置に対応している。
上述したように、スパッタ位置を変えていくことで測定位置ごとに質量分析データを取得することが可能となる。そこで、図8(A)に示すように、例えば対象領域(ROI)に対してX−Y座標を設定し、X方向の移動速度と移動距離、Y方向のステップ数と移動距離(ステップサイズ)を設定する。図8(A)の例では、例えば5mm×5mmの対象領域(ROI)に対し、X方向の移動速度0.2mm/秒、移動距離5mmとして、Y方向のステップ数を20、ステップサイズ0.25mm(ステップ数20×0.25mm=移動距離5mm)と設定する。
図8(A)の例では、例えば右上の始点(例えば(1))からライン状に、例えば25秒間、測定モードに対応して取得される質量スペクトル(質量分析データ)が1つのデータセットとなる。これを、Y方向下側に0.25mmずつ19回ステップを繰り返すことで、計20セットのデータが得られる。
図8(B)は、質量分析データの一例であり、例えば、図8(A)に示す測定位置で得られたm/z167のマスクロマトグラムとm/z167に該当する分子イオンを含むMSスペクトルを示している。なお、マスクロマトグラムは、所定のイオンの強度トレースにより得られる。
図8(C)は、図8(B)に示すマスクロマトグラムのデータを、データ処理手段16により、例えばFireFly(登録商標)等のソフトウェアを用いてデータ変換するときに、ユーザにより設定される画面の一例を示している。ここでは、データ変換におけるビニング(区分け幅)等が設定される。例えば図8(A)に示すY方向のデータポイント数が行数やステップサイズで決まるのに対し、図8(A)に示すX方向では、測定マスレンジ、スキャンレート、自動取り込みゲインの設定値等でデータポイント数が変化する。
そこで、データ処理手段16は、空間分解能をXY方向とも同一とみなし、対象領域(ROI)のXY比と測定データのXY比を一定にする場合には、例えばX方向のデータポイント数を、Y方向の分解能に合わせるように設定されたビニング(例えばビニング数や区分け時間を設定)に基づき、ビニング処理を実行する。
なお、MS/MS測定等、シグナルの絶対強度が弱い(質量分析計に入るイオン量が絶対的に少ない)場合に、イオントラップ型の質量分析計では自動的にスキャン時間が長くなり、X方向のデータポイント数が減少するため、Y方向の分解能に合わせてビニングすると、X方向側のデータが欠損することもある。このような場合には、例えばMaximum Injection Time及びMicroscans等の値を調整し、測定周波数の下限値を規定すると良い。
図8(D)は、画像取得手段15により、例えば、図8(C)のビニング設定等により変換されたデータをBioMap(登録商標)等のソフトウェアを用いて可視化した画像を示している。図8(D)に示す画像は、例えば所定のm/z分子のイオンの位置と強度の関係が所定の色のイメージで表現された画像(成分分布画像)である。
図8(D)では、例えばシグナル強度の高さを赤−青の色味で示している(例えば、高強度が赤、中間が緑、低強度が青とした赤−青スケールのヒートマップ等)。このように、分子固有の質量を持つ成分が二次元空間のどこにどの程度存在するかを、分布と強度のイメージングデータとして示すことが可能となる。
なお、図8(D)に示す画像を生成するときの空間分解能に対して、上述した図7の入力部52の加熱キャピラリー温度が影響するため、加熱キャピラリー温度についても最適値を設定しておくと良い。
<角質層の各層の成分分布画像の具体例>
次に、上述した質量分析データを用いて、画像取得手段15により取得される各層の成分分布画像の具体例について説明する。図9は、角質層の各層の成分分布画像の一例を示す図である。
図9(A)に示すように、例えば、幅34mm×高さ5mmの対象領域(ROI)の右上を始点に、対照部(製品無塗布部)、第5層〜第1層の順に、所定の移動速度(例えば0.125mm/秒×272秒)でライン状に質量スペクトルを取得し、所定のステップサイズ(例えば0.2mm)で、順次に下方向に移動することによりデータセット(質量分析データ)を25本分取得する。
ここで、質量分析の測定モードは、m/z50−250のMSスキャン測定に加え、特異性の確認のため、m/z167からのMS/MSプロダクトイオン測定も行う。
図9(B)〜図9(D)は、上述のように取得された質量分析データを用いて、画像取得手段15により取得された各層の成分分布画像を示している。例えば、図9(B)及び図9(C)は、m/z50−250のMSスキャン測定により得られた成分分布画像の一例を示し、図9(D)は、特異性の確認のため、m/z167からのMS/MSプロダクトイオン測定により得られた成分分布画像の一例を示す。
より具体的には、図9(B)は、上述した4MSKに相当するm/z167の成分分布画像を示しており、図9(C)は、例えばm/z187の成分分布画像を示しており、図9(D)は、4MSKに相当するm/z167のMS/MSプロダクトイオン測定で生成したm/z123の成分分布画像を示している。
図9(B)に示す成分分布画像では、上述した化粧液から角質層内に移行(経皮吸収)した4MSK(m/z167)の存在量が二次元平面上の赤−青スケールで赤く明瞭に表示されている。また、角質層の各層間の違いや角質層表面の二次元分布の違いが明確に表示されている。
図9(D)の成分分布画像に赤−青スケールで表示されているm/z123は、4MSKからCOが脱離した特徴的な断片イオンである。したがって、m/z167→123のMS/MSプロダクトイオン測定により得られるシグナルは、ほぼ一義的に4MSK由来として帰属可能である。
図9(B)の画像と、図9(D)の画像と比較すると、観測した対象領域(ROI)が異なるため二次元分布の様相は異なるが、角質層間の量の傾向は同一であり、今回の条件下では、第2層、3層に4MSKが多く局在していることが示されている。
なお、第5層目の右隣に「対照」と表記した試料は、上述した化粧液を塗布せずに同様の洗浄操作を行った部位から採取した角質層である。対照部位では、m/z167、m/z167→123ともシグナルが観測されていないことから、図9(B)及び図9(D)に示したm/z167、m/z167→123とも角質層内の4MSKを特異的に検出しているといえる。
また、図9(C)は、4MSKとは異なるm/z187を示す成分の分布画像を示している。この分子の構造は未同定ではあるが、明らかに4MSKと異なる角質層間分布が示されている。この分子の構造は、上述した対照部位の角質層からも検出されたことから、皮膚由来の内因性分子と推定され、角質層の深部ほどその強度が高かった。
上述したように、DESI質量分析により、複数の分子を解析するとともに、有効成分のみならず内因性分子や基剤成分の経皮吸収動態も同時に解析可能である。このようなDESI質量分析のデータを用いて可視化される成分分布画像は、視覚に訴え、分かりやすいため、経皮吸収性を制御した処方の開発にも有用となる。
<成分分布画像とマスクロマトグラムとの関係>
次に、上述した画像取得手段15により得られる各層の成分分布画像のヒートマップ表示と、DESI質量分析により得られるマスクロマトグラムとの関係について説明する。図10は、ヒートマップ表示とマスクロマトグラムとの関係を示す図である。
図10(A)は、各層におけるm/z167を示す成分の分布画像を示しており、図10(B)は、図10(A)に示す成分分布画像を得るために用いられたマスクロマトグラムの一例を示している。図10(A)に示すLine1〜6は、図10(B)に示すLine1〜6のマスクロマトグラムに対応している。
例えば、図10(B)に示すLine1におけるm/z167分子の強度が強い部分は、図10(A)の成分分布画像上で赤く表示されており、図10(B)に示すm/z167の強度に対応させて、図10(A)の成分分布画像上で赤−青のヒートマップ表示がなされている。
このように、図10(A)は、図10(B)に示す強度情報に基づいた色表示がなされているため、図10(A)に示す成分分布画像により、分子固有の質量を持つ成分が二次元空間のどこにどの程度存在するかを表示することが可能である。
<経皮吸収状態を可視化する方法>
次に、上述した角質層の断面方向における経皮吸収状態(成分分布)を可視化する方法を説明する。図11は、経皮吸収の状態を可視化する方法を説明するための図である。なお、図11の例では、従来手法との違いを明確化するために、図11(A)に従来の可視化方法を示し、図11(B)に本実施形態における可視化方法を示す。
図11(A)に示すように、例えば従来の可視化方法では、所定の領域の表皮を切り出し、1層あたり約1μm程度の角質層が含まれた切片の断面を観測面(データ取得面)として可視化する。この方法では、単に表面近傍のみの観測のため低感度の結果しか得られず、ヒトの皮膚への応用が困難となる。また、角質層間における経皮吸収の差についても、観測できる分解能の制約から把握することができない。
これに対し、図11(B)に示す本実施形態の可視化方法では、上述したテープストリッピング操作で採取した角質層(各層約1μm程度)の平面(図11(B)の矢印方向から見た面)を観測面(データ取得面)とし、この観測面から得られた情報を集約及び積層して断面方向の情報とすることで、成分分布を高感度に可視化する。
すなわち、図11(B)の観測面から得られる情報は、上述したようにDESI質量分析により約1μmの層に含まれる成分を層の深さ方向(例えばZ方向となる矢印60方向)で検出し、それを面全体(XYZの三次元)の成分分布情報として取得する。したがって、従来の切片の断面方向の表面近傍のみを観測する従来の可視化方法と比べて高感度な(SNが良い)結果が得られる。以下、本実施形態の可視化方法について具体的に説明する。
図12は、本実施形態に係る経皮吸収状態の可視化方法を説明するための図である。図12(A)は、テープストリッピングにより採取した角質層の対象領域を示し、図12(B)は、上述した各層の成分分布画像を示す。また、図12(C)及び図12(D)は、角質層内の成分分布画像を示す。
まず、図12(A)に示す所定の対象領域(例えば34×5mm)に対して、例えば高さ方向(すなわち、角質層の深さ方向(断面方向))の移動速度を0.125mm/秒とし、例えば幅方向のステップサイズを0.2mmとしてスキャン測定を行い、幅方向のデータ数を25としてデータを取得する。このとき、高さ/幅比は、34/5となっている。
データ処理手段16は、上述したデータから画像取得手段15により生成された各層の成分分布画像の画素を取得し、図12(A)に示す対象領域から取得したデータの高さ方向のビニングを行うことで、図12(B)及び図12(C)に示す各層の成分分布画像を生成する。
図12(B)の例は、二次元平面上の成分分布を、図12(A)に示す対象領域(ROI)と同様のXY比で表しており、観測平面と相似の画像を表示するため、高さ方向のビニング数(データポイント数)を170としている。
図12(C)の例は、角質層の断面上の成分分布として表すため、高さ方向(すなわち縦方向)のビニング数を例えば25としている。なお、幅方向(すなわち横方向)のデータポイント数は、図12(B)及び図12(C)ともに、横方向に0.2mmステップで取得したデータ数の25である。図12(C)の例では、データ処理手段16により、画像の幅方向と高さ方向に含まれる画素数が揃えてあるが、これに限定されるものではない。
ここで、データ処理手段16は、例えば図12(B)や図12(C)に示すような高さ方向のビニングを行う場合に、高さ方向における画像の隣接する所定数の画素を1つの画素としてビニングし、例えばその隣接する所定数の画素データの平均値がその1つの画素のデータとなるよう処理する。
すなわち、ビニング処理では、例えば複数の画素を用いて1つの画素を生成し、それを各方向に移動することで、全体として画素が調整された画像が生成される。これにより、図12(B)に示す成分分布画像や図12(C)に示す成分分布画像において、高さ方向の画像の平滑化が行なわれた成分分布画像を得ることが可能となる。特に、図12(C)では、図12(B)よりも多くの画素を用いて平滑化されているため、成分分布が認識しやすい画像を生成することができる。
また、図12(B)に示す各層の成分分布画像は、図11(B)で説明したように、約1μmの厚さの角質層の各層の三次元の成分分布情報を表しているため、図12(C)に示すように、図12(B)に示す画像を高さ方向(すなわち縦方向)のビニング数を25に少なくすることは、角質層の各層の断面から見た画像に近似する。
更に、本実施形態では、図12(C)に示す画像に対して、データ処理手段16は、画像のXY比率(X:高さ方向、Y:幅方向)を変更し、X方向に圧縮して、図12(D)に示す角質層内の成分分布画像を生成する。なお、図12(D)の例では、圧縮率を1:0.2(高さ/幅比:5/25)としているが、これに限定されるものではない。図12(D)に示すように圧縮処理を行うことで、角質層としての成分分布として捉えることができ、所定の成分が角質層内のどの層まで浸透しているかや、角質層内のどの層に所定の成分が高濃度に存在するか等を視覚的・直感的に把握することができる。
図13は、本実施形態の可視化方法で得られた角質層内の成分分布画像の一例を示す図である。なお、図13(A)は、上述のように対象領域(ROI)と同様のXY比となるように高さ方向のデータポイント数をビニングした成分分布画像を単純に圧縮した画像を示し、図13(B)は、上述した図12(C)と図12(D)に示す角質層内の成分分布画像、すなわち角質層を断面方向から見た画像に近似させるビニングを行なった成分分布画像を示す。
図13(B)の例では、上述したように、高さ方向のビニング数を通常より少なく調整してから圧縮しているため、図13(A)に示す単純な圧縮画像と比較して、角質層内のどの層に所定の成分が高濃度に存在するか視覚的・直感的に分かりやすく、かつより自然に表現されており、角質層の各層を断面方向から見るイメージと近くなっている。
更に、図14は、図9の各例に対応する角質層内の成分分布画像を示す図である。図14(A)は、図9(B)の4MSKに相当するm/z167の角質層内の成分分布画像を示し、図14(B)は、図9(C)のUnknownに相当するm/z187の角質層内の成分分布を示している。なお、図14(A)、(B)はともに、上述した図12(C)、(D)と同様のビニング処理及び圧縮処理を施したものである。
図14(A)に示す角質層内の成分分布画像では、図9(B)に対応して角質層の第2層目と第3層目にm/z167の成分がより高濃度に存在していることが示されている。また、同様に、図14(B)に示す角質層内の成分分布画像でも、図9(C)に対応して角質層の第4層目と第5層目にm/z187の成分がより高濃度に存在していることが示されている。
上述したように、角質層の各層の成分分布画像を取得するのに用いられる二次元平面データ(テープストリッピングした各層の成分の位置と量の情報)を、角質層を断面として見たときの深さ方向に重ねた積層情報として用いる。このとき、単に平面情報のXY比を変えて積層するのではなく、ビニング操作によりデータを平滑化することで、角質層を断面方向から見たときの情報に近似することが可能となる。
このように角質層内の成分分布画像を可視化することで、解像度が高い装置や手法を使うことなく、角質層間における経皮吸収の差を明確に区別して把握することが可能となる。
<表現方法のバリエーション例>
ここで、上述した角質層内の成分分布画像は、例えばヒートマップ表示による画像例を用いて説明したが、本実施形態において生成される画像例については、これに限定されるものではない。例えば蛍光プローブを用いた検出法等を模したバリエーションとして表示させても良い。
図15は、角質層内の成分分布画像のバリエーションの一例を示す図である。図15(A)は、上述したヒートマップ表示の角質層内の成分分布画像の一例を示す図であり、図15(B)は、青−白スケール(Blue−White scale)で表示した角質層内の成分分布画像の一例を示す図である。
また、図15(C)は、黒−白スケール(Black−White scale)で表示した角質層内の成分分布画像の一例を示す図であり、図15(D)は、赤い温度スケール(Red Temperature scale)で表示した角質層内の成分分布画像の一例を示す図である。
更に、図15(E)は、緑−白スケール(Green−White
scale)で表示した角質層内の成分分布画像の一例を示す図である。
なお、図15(A)〜(E)は、同一の角質層内の成分分布を示し、表示方法を変化させたものである。また、バリエーションの種類は、図15(A)〜(E)に示す例に限定されるものではない。本実施形態では、上述したバリエーションのうち、予め成分の内容等に応じた表現方法を少なくとも1つ設定しておき、設定されたバリエーションで角質層内の成分分布画像を生成して、画面に表示すると良い。
<定量化について>
ここで、上述したDESI質量分析での定量には、測定部位の状態に依存した目的シグナルの強度変化を補正するため、安定同位体標識した内部標準が不可欠とされている。一方、ヒトの皮膚中成分の定量を行う場合、内部標準物質の添加は安全性上不可能である。
そこで、本実施形態では、内部標準法による定量の代替法として、外部標準法(絶対検量線法)による定量を行う。
図16、図17は、標準品の成分分布画像を用いた定量法を説明するための図(その1、その2)である。図16(A)の例では、テープストリッピングした角質層上に滴下した4MSKの成分分布画像から得た定量結果(1回目、2回目)が示されている。
図16(A)に示すように、角質層の適度な疎水性のため、滴下した試料溶液は良好な円形を示している。乾燥後のスポットから得られた成分分布画像は、各スポットとも適度に均質であり、滴下した試料がほぼ均質に分布していることを示している。
また、図16(B)に示すように、検量線は2.5〜250ngの間でr=0.996〜0.998と良好な直線性を示している。なお、2セットの繰り返しの再現性も良好であった。
更に、図16(B)に示すような検量線に基づいて、外部標準法でテープストリッピングの角質層(図9又は図14)中の4MSK量を見積もると、第1層が2.2ng/mm、第2層〜第5層がそれぞれ4.2、4.0、2.7、1.9ng/mmであった(図17)。
約0.001mmのテープストリッピングの角質層から全ての4MSKが抽出・検出されていると仮定すると計14.9ng/mmが角質層内に経皮吸収されて移行していることになる。上述した図4の試料調製方法で説明したように、この場合の4MSKの適用量は4.38μg/mmなので(1%、4MSK×0.7g/40×40mm)、第5層までの経皮吸収率は0.34%と見積もることができる。
例えば、従来の手法(例えば瞬間接着剤で剥離した角質層(複数層)中の4MSK量をLC/MSで測定した場合)の4MSKの経皮吸収率は約1%以下とされていることから、上述した手法でもほぼ妥当な定量値が得られるといえる。
上述したように、成分分布画像を用いることで、成分分布の高精度な定量化を実現することが可能となる。なお、上述した定量化は、定量化手段17によって実現することができ、定量化する内容については、これに限定されるものではない。
上述したように、本実施形態によれば、角質層内の成分分布を容易に可視化することが可能となる。また、製剤だけでなく基剤や活性剤等、複数の成分を一度に観測・評価することも可能なため、処方開発にも有用となる。更に、テープストリッピングにより得られる角質層の各層の二次元平面データは、IR(赤外吸収スペクトル)やラマンスペクトル等の幅広い分析データにも使えるため汎用性がある。
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
10 成分分布可視化装置
11 入力手段
12 出力手段
13 記録手段
14 質量分析手段
15 画像取得手段
16 データ処理手段
17 定量化手段
18 送受信手段
19 制御手段
21 入力装置
22 出力装置
23 ドライブ装置
24 補助記憶装置
25 メモリ装置
26 CPU
27 ネットワーク接続装置
28 記録媒体
31 上腕部
32 領域
40 粘着シート
41 支持体
42 角質層剥離用粘着部
43 粘着部保護用剥離シート
50 試料表面
51 ノズル
52 入口部

Claims (11)

  1. 角質層内の成分分布を可視化するための成分分布可視化装置であって、
    所定の粘着部材により採取された角質層の各層を所定の質量分析により分析して、前記各層の面及び深さ方向の成分量情報が含まれた質量分析データを取得する質量分析手段と、
    前記質量分析手段により得られた前記各層の面及び深さ方向の成分量情報が含まれた質量分析データを用いて、前記各層の成分分布画像を取得する画像取得手段とを有することを特徴とする成分分布可視化装置。
  2. 前記画像取得手段により得られた各層の成分分布画像の画素データを所定の方向にビニングするデータ処理手段を有することを特徴とする請求項1に記載の成分分布可視化装置。
  3. 前記データ処理手段は、
    前記画素データがビニングされた各層の成分分布画像を、前記所定の方向に所定の圧縮率で圧縮し、圧縮した画像を用いて角質層内の成分分布画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の成分分布可視化装置。
  4. 前記データ処理手段は、
    前記角質層の深さ方向に対応させて配置された各層の成分分布画像の画素データを、前記深さ方向にビニングすることを特徴とする請求項2又は3に記載の成分分布可視化装置。
  5. 前記質量分析手段は、
    前記角質層の各層をDESI質量分析により分析して、前記質量分析データを取得することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成分分布可視化装置。
  6. 角質層内の成分分布を可視化するための成分分布可視化方法であって、
    所定の粘着部材により採取された角質層の各層を所定の質量分析により分析して、前記各層の面及び深さ方向の成分量情報が含まれた質量分析データを取得する質量分析手順と、
    前記質量分析手順により得られた前記各層の面及び深さ方向の成分量情報が含まれた質量分析データを用いて、前記各層の成分分布画像を取得する画像取得手順とを有することを特徴とする成分分布可視化方法。
  7. 前記画像取得手順により得られた各層の成分分布画像の画素データを所定の方向にビニングするデータ処理手順を有することを特徴とする請求項6に記載の成分分布可視化方法。
  8. 前記データ処理手順は、
    前記画素データがビニングされた各層の成分分布画像を、前記所定の方向に所定の圧縮率で圧縮し、圧縮した画像を用いて角質層内の成分分布画像を生成することを特徴とする請求項7に記載の成分分布可視化方法。
  9. 前記データ処理手順は、
    前記角質層の深さ方向に対応させて配置された各層の成分分布画像の画素データを、前記深さ方向にビニングすることを特徴とする請求項7又は8に記載の成分分布可視化装置。
  10. 前記質量分析手順は、
    前記角質層の各層をDESI質量分析により分析して、前記質量分析データを取得することを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の成分分布可視化方法。
  11. コンピュータを、
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成分分布可視化装置が有する各手段として機能させるための成分分布可視化プログラム。
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