JP7356326B2 - 皮膚成分の分析方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1は、経皮吸収された製剤等に含まれた有効成分の角層への浸透度合いを分析して可視化するため、粘着シートを用いてテープストリッピング操作により、ヒトの角層を皮膚の最外層から順次採取(1層目~5層目)する方法を開示している。
一方で、例えば、顔の頬部、目の周り、口の周り等の体の各部位、あるいはもう少し広く体を分類し、例えば、顔全体、腕全体等に含まれる皮膚成分を複数の採取部分に細分化して分析し、当該分析結果に基づいて、顔等の採取対象領域における皮膚成分の分布を俯瞰することに着目し、それを実現できる発明を提案している文献は見つかっていない。
まず、本発明の実施形態を列記して説明する。
本発明の一実施形態に係る皮膚成分の分析方法は、皮膚の採取対象領域から皮膚成分を粘着シートで採取する工程と、前記粘着シートで採取された前記皮膚成分を、前記採取対象領域における複数の採取部分ごとに分け、各前記採取部分で採取された皮膚成分を分析する工程と、各前記分析結果を集約し、前記採取対象領域における前記皮膚成分の分析結果の分布を俯瞰する工程とを含む。
この方法によれば、複数の採取部分を反映したマップに分析結果の分布が表示されるので、皮膚成分の状態の分布を簡単に把握することができる。
この方法によれば、分析結果(定量値)が定量区分(定量値の大きさ)に応じてグループ分けされ、マップに可視化されるので、皮膚成分の定量値の大まかな大小関係を簡単に把握することができる。
この方法によれば、定量区分ごとに互いに異なったカラーで可視化されるので、可視化された定量区分を一見するだけで、採取対象領域における皮膚成分の定量値の大小関係を簡単に把握することができる。
この方法によれば、コンピュータを使用して可視化するので、定量区分のカラー表示にあたって、色相・明度・彩度が異なる様々なカラーを使用することができる。
本発明の一実施形態に係る皮膚成分の分析方法では、前記採取部分の皮膚成分を分析する工程は、前記採取対象領域に対して行列状の前記採取部分を割り当て、当該行列状の前記採取部分のそれぞれの皮膚成分を分析する工程を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る皮膚成分の分析方法では、前記採取部分の皮膚成分を分析する工程は、前記採取部分で採取された角層の面積を測定する工程を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る皮膚成分の分析方法では、前記角層の面積を測定する工程は、前記角層を採取した前記粘着シートを分散媒に入れて前記粘着シートから前記角層を剥離させ、前記分散媒に前記角層を分散させる工程と、前記粘着シートから剥離された前記角層を染色する工程と、染色された前記角層の面積に基づいて、前記採取部分に含まれる前記角層の面積を算出する工程とを含んでいてもよい。
例えば、粘着テープ上で角層同士が重なり合っていると、重なり合っている各角層の面積をそれぞれ正確に測定することが困難である。しかしながら、上記の方法であれば、角層同士が重なり合っていても、分散媒中で粘着シートから角層がバラバラになるので、角層の面積を正確に算出することができる。
本発明の一実施形態に係る皮膚成分の分析方法では、前記皮膚成分を採取する工程は、対象人物の顔の左右いずれかの採取対象半面の前記採取対象領域の皮膚成分を採取する工程を含み、前記皮膚成分を分析する工程は、前記採取対象半面側の分析結果を、前記採取対象半面の反対側の非採取対象半面の分析結果として採用する工程を含んでいてもよい。
<本発明の実施形態の詳細な説明>
次に、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
しかしながら、本発明は、角層の面積分布を分析する方法に限らず、粘着シートで採取された皮膚成分を分析し、皮膚の採取対象領域における皮膚成分の分析結果の分布を俯瞰することを目的としている。つまり、以下で説明する角層の面積分布を分析する方法は、本発明のほんの一例に過ぎず、本発明は、他の形態で実施することもできる。
また、分析試料についても、角層に限らず、皮膚成分全般を広く採用することができる。皮膚成分は、発生源が体内・体外を問わず、皮膚の表層に分布する物質であればよい。例えば、体内や皮膚下層から分泌または合成されて皮膚の表層に分布する物質として、角層(角層内成分を含む)、細胞間脂質、細胞表層の脂質、汗の成分、菌等が挙げられる。一方、例えば、体外から塗布または付着して皮膚の表層に分布する物質として、(皮膚上の)チリ、花粉、粒子状物質(例えば、PM2.5等)、タバコの煙に含まれる成分等の大気中物質等が挙げられる。
それでは以下に、顔の角層を採取し、顔における角層の面積分布を分析する方法を詳細に説明する。
この方法では、まず、採取対象領域2の角層を採取する(ステップS1)。この実施形態では、採取対象領域2は、顔の左半面であるが、もちろん顔の右半面であってもよい。
角層の採取に先立って、この実施形態では、まず、図2および図3に示すように、対象人物1(角層提供者)の採取対象領域2に複数の採取セクション4を設定する。なお、この採取セクション4を設定する工程は、前述したように、皮膚の採取対象領域における皮膚成分の分析結果の分布を俯瞰するという本発明の目的に照らして、もちろん省略することができる。
角層採取用マスク5は、図6に示すように、一方面に粘着面6および他方面に非粘着面7を有するシート基材8と、シート基材8の粘着面6に積層された剥離シート9とを含んでいる。剥離シート9は、シート基材8の粘着面6に貼り合わせることによって、シート基材8に取り外し可能に積層されている。
各シート側セクション11は、前述の採取セクション4に合わせて、図4に示すように正方形状であってもよいし、長方形状であってもよい。また、正方形状の場合、各シート側セクション11は、一辺が1cm~2cmであってもよい。なお、第2区画パターン10のシート側セクション11は、この実施形態では互いに同じ大きさで統一されているが、小、中、大というように複数の大きさに区分されていてもよい。
第1切れ込み17は、角層採取用マスク5の外周縁19を起点にして、途中で屈曲した直線状もしくは曲線状に形成されている。例えば、採取対象領域2に比較的大きな凸部がある場合、第1切れ込み17は、当該凸部の外形に沿って形成された形状であってもよい。この実施形態では、第1切れ込み17は、顔の凸部である鼻の外形に沿って形成されている。
そして、上記の角層採取用マスク5を用いて角層を採取するには、例えば、まず、分割された剥離シート9の一部をシート基材8から剥離し、シート基材8の粘着面6の一部を露出させる。この実施形態では、図7に示すように、剥離シート9の第1部分15(顔の中心線側)を剥離する。次に、シート基材8の余白13、およびシート基材8の剥離シート9が残った部分を指で摘まみ、例えば鏡を見ながら、透明なシート基材8を通して鼻の位置を確認しながら、揺動部20の下方のシート基材8の部分を鼻の下端部に位置合わせして貼り付ける。その状態から、揺動部20を鼻の中央部に貼り付けると共に、シート基材8の残りの部分を額、目の周り、口の周り、顎に貼り付ける。
(1)目の周り、口の周り等の該当箇所に対応する箇所に予め開口が形成されたマスク5としてもよい。
(2)目の周り、口の周り等の該当箇所にかかる負担を軽減するため、該当箇所に接する部分の粘着力を弱くしてもよい。
(3)目の周り、口の周り等の該当箇所をコットン等で保護した上で、マスク5を貼り付けてもよい。
次に、分割された剥離シート9の残りの部分をシート基材8から剥離し、シート基材8の粘着面6の残りの部分を露出させる。この実施形態では、剥離シート9の上部分31、中部分32および下部分33を順に剥がし、剥離シート9が剥がされたシート基材8の部分28,29,30から先に顔に貼り付けていく。まず、図8に示すように、剥離シート9の上部分31を剥離することによって、一対の第1部分22および第2部分23のうち第1部分22を含むシート基材8の上部分28を露出させる。
次に、角層を採取したシート基材8を所望のサイズ(シート側セクション11ごと)に分類する(図1のステップS2)。この実施形態では、シート基材8を第2区画パターン10のライン21に沿って分断し、各シート側セクション11を切り分ける。シート基材8は、例えば、はさみ、カッターナイフ等の刃物で分断することができる。
次に、例えば顕微鏡で角層を撮影することによって、角層36の画像を取得する(ステップS7)。その後、得られた画像をコンピュータで処理することによって、図11に示すように、各シート側セクション11で採取された角層36の形状が解析される(ステップS8)。例えば、図11では、シート基材8の5番、9番および12番の各シート側セクション11で採取された角層36の画像を示す。
なお、この実施形態では、顔の左半面の角層の面積分布のみをモニタ38にヒートマップ化しているが、顔の中心線を軸として、角層の面積分布は概ね左右対称と考えられるので、得られた左半面のデータに基づいて、右半面の角層の面積分布をヒートマップ化してもよい。つまり、顔の採取対象半面(この実施形態では、左半面)の角層の面積を算出することによって、顔の採取対象半面の分析結果を非採取対象半面の分析結果として採用し、非採取対象半面(この実施形態では、右半面)の角層の面積も算出できるので、より少ない作業量で、顔全体の角層の面積分布を分析することができる。
つまり、角層採取用マスク5を使用することによって、シート基材8の各シート側セクション11の角層の面積を個別に算出することができる。そして、シート基材8の第2区画パターン10の各シート側セクション11と、採取対象領域2の各採取セクション4との対応関係を確認することによって、シート基材8の各シート側セクション11から得られた角層の面積の算出結果に基づいて、各採取セクション4における角層の面積を簡単に分析することができる。そして、得られた採取セクション4の分析結果を集めれば、採取対象領域2における角層の面積分布を精度よく判別することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
例えば、前述の角層採取用マスク5は、顔の角層以外の皮膚成分を採取するための皮膚成分採取用マスクとして使用することもできる。また、採取対象領域2が顔以外の場合には、例えば、図13および図14に示すように、シート基材8および剥離シート9が積層された皮膚成分採取用シート41としてもよい。図13および図14では、一例として、長方形状の皮膚成分採取用シート41を示している。この場合にも、角層採取用マスク5と同様に、シート基材8に第2区画パターン10を形成しておけばよい。このような皮膚成分採取用シート41は、皮膚の様々な部位の皮膚成分の分析に自由に使用することができる。むろん、顔の一部分(例えば、額、頬等)に使用してもよい。
また、角層の面積の分布測定以外の分析目的の場合の分析方法の一例は、次の通りである。
また、角層のニトロ化分布を測定する場合には、皮膚の採取対象領域に粘着させた後の粘着シートを、ニトロ化チロシン抗体を用いた抗体染色することで観察したり、例えばPBS(-)に浸漬して超音波破砕機で処理後、市販のニトロ化チロシン定量キットによって定量したりすればよい。
また、前述の角層の面積の分析方法では、1枚の角層採取用マスク5を使用して採取対象領域2の角層を一括して採取したが、採取セクション4ごとに別々のシート等で角層を採取してもよい。例えば、各採取セクション4に粘着シール等を1枚ずつ貼ることによって各採取セクション4の角層を採取し、各粘着シールを分割せずにそのまま、剥離・分散溶液35中に分散させてもよい。この場合、シートの貼り付けの作業性は低下するが、採取セクション4ごとにシートを分割しなくてもよいので、この点では作業性が向上する。このような方法であっても、個々のシートで採取された成分の分析結果を集めることによって、採取対象領域2における角層の面積の分布を俯瞰することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
2 採取対象領域
3 第1区画パターン
4 採取セクション
5 角層採取用マスク
11 シート側セクション
35 剥離・分散溶液
36 角層
37 コンピュータ
38 モニタ
39 マップ
40 区画パターン
42 3次元画像
Claims (13)
- 皮膚の採取対象領域から皮膚成分を粘着シートで採取する工程と、
前記粘着シートで採取された前記皮膚成分を、前記採取対象領域を平面的に分割することにより割り当てられた複数の採取部分ごとに分け、各前記採取部分で採取された皮膚成分を分析する工程と、
各前記分析結果を集約し、前記複数の採取部分間の皮膚成分の分析結果を比較することにより、前記採取対象領域における前記皮膚の表面方向の前記皮膚成分の分析結果の分布を俯瞰する工程とを含む、皮膚成分の分析方法。 - 皮膚の採取対象領域から皮膚成分を粘着シートで採取する工程と、
前記粘着シートで採取された前記皮膚成分を、前記採取対象領域における複数の採取部分ごとに分け、各前記採取部分で採取された皮膚成分を分析する工程と、
各前記分析結果を集約し、前記採取対象領域における前記皮膚成分の分析結果の分布を俯瞰する工程とを含み、
前記採取部分の皮膚成分を分析する工程は、前記採取部分で採取された角層の面積を測定する工程を含む、皮膚成分の分析方法。 - 前記分析結果の分布を俯瞰する工程は、前記複数の採取部分を反映したマップに前記分析結果の分布を表示して可視化する工程と、前記可視化された表示を俯瞰する工程とを含む、請求項1または2に記載の皮膚成分の分析方法。
- 前記皮膚成分の分析結果は、各前記採取部分における前記皮膚成分の所定の定量値の結果を含み、
前記分析結果の分布を俯瞰する工程は、前記可視化のために、前記所定の定量値を複数の定量区分に分類する工程をさらに含む、請求項3に記載の皮膚成分の分析方法。 - 前記可視化の工程では、前記複数の定量区分ごとに互いに異なったカラーで前記定量区分を表示する、請求項4に記載の皮膚成分の分析方法。
- 前記可視化の工程では、コンピュータのモニタに前記定量区分をカラーで表示する、請求項5に記載の皮膚成分の分析方法。
- 前記採取部分の皮膚成分を分析する工程は、前記採取対象領域に対して行列状の前記採取部分を割り当て、当該行列状の前記採取部分のそれぞれの皮膚成分を分析する工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の皮膚成分の分析方法。
- 前記採取部分の皮膚成分を分析する工程は、前記採取部分で採取された角層の面積を測定する工程を含む、請求項1および請求項1を引用する請求項3~7のいずれか一項に記載の皮膚成分の分析方法。
- 前記角層の面積を測定する工程は、
前記角層を採取した前記粘着シートを分散媒に入れて前記粘着シートから前記角層を剥離させ、前記分散媒に前記角層を分散させる工程と、
前記粘着シートから剥離された前記角層を染色する工程と、
染色された前記角層の面積に基づいて、前記採取部分に含まれる前記角層の面積を算出する工程とを含む、請求項2または8に記載の皮膚成分の分析方法。 - 前記皮膚成分を採取する工程は、対象人物の顔の前記採取対象領域の皮膚成分を採取する工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の皮膚成分の分析方法。
- 前記皮膚成分を採取する工程は、対象人物の顔の左右いずれかの採取対象半面の前記採取対象領域の皮膚成分を採取する工程を含み、
前記皮膚成分を分析する工程は、前記採取対象半面側の分析結果を、前記採取対象半面の反対側の非採取対象半面の分析結果として採用する工程を含む、請求項10に記載の皮膚成分の分析方法。 - 前記皮膚成分を前記粘着シートで採取する工程に先立って、前記皮膚の採取対象領域を平面的に分割することにより前記採取対象領域に前記複数の採取部分を割り当てる工程をさらに含み、
前記皮膚成分を前記粘着シートで採取する工程は、前記複数の採取部分に対して1対1で対応付けられたシート側分割部分が形成された粘着シートを使用して前記皮膚成分を採取する工程を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の皮膚成分の分析方法。 - 前記複数の採取部分を割り当てる工程は、前記採取対象領域を平面的にラインで分割することにより、前記ラインで区画された複数の採取セクションを割り当てる工程を含む、請求項12に記載の皮膚成分の分析方法。
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