JP3635742B2 - 角質細胞採取用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、角質細胞に基づいて皮膚の表面状態を評価する場合に、角質細胞の採取のために使用する角質細胞採取用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、皮膚の表面状態を調べるために、角質細胞を分析する手法が知られている。例えば、チェンバーを皮膚に当てて非イオン界面活性剤水溶液に角質細胞を分散させ、分散した角質細胞を遠心分離器によって沈殿させて集め、角質細胞の状態を解析する方法がある(McGinley,Journal of Investigative Dermatology,vol.53,p107(1969) )。
【0003】
また、粘着テープの粘着面に皮膚を当て、その粘着面に角質細胞を採取した後、この角質細胞を有機溶媒に溶かし、遠心分離器により角質細胞を沈殿させて集め、これをスライドガラスに移し取り、解析する方法がある。あるいは、スライドガラスに粘着物を塗布し、このスライドグラスを肌に当て、これにより角質細胞の状態を解析する方法がある(篠,香粧品科学会誌,No.2,13(1978))。
【0004】
水溶性粘着剤を用いた粘着テープにより角質細胞を肌から採取した後、角質細胞を粘着剤と共に水溶性溶媒に分散させ、メンブレンフィルターで濾過して角質細胞を直接又は再分散後スライドガラス上に移して角質細胞の状態を解析する方法がある(河合,日本皮膚科学会誌,Vol99,No.9,p999(1989))。
【0005】
これらの方法において解析手法としては、予め採取した角質細胞を染色した後、細胞の顕微鏡観察、細胞数のカウント、細胞の面積の測定、有核細胞出現率の測定等が行われる。
【0006】
しかしながら、このような従来の方法によると、角質細胞を溶剤で処理するために角質細胞に含まれている成分が除去され、角質細胞が損傷を受け、正確な解析ができないという問題がある。また角質細胞の測定に、染色その他繁雑な前処理操作が必要とされ、迅速に解析を行うことができないという問題もある。
【0007】
このような問題に対して、本発明者は先に、肌に透明粘着テープを当てて肌から角質細胞を剥離させ、その粘着面に角質細胞を付着させることにより採取し、角質細胞の付着した透明粘着テープに平行光線を照射してその透過光を検出し、検出した光をデジタル信号に変換して透過光量を算出し、得られた透過光量と、別途染色法によって求めた細胞数との透過光量との関係に基づいて角質細胞数をカウントする簡易細胞数測定方法を提案した(特開平7−55707号公報)。この方法によると、角質細胞を従来に比して容易に採取でき、さらに角質細胞の数を短時間に測定し、皮膚の状態を判定することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特開平7−55707号公報に記載の簡易細胞数測定方法で使用する透明粘着テープは、単に基材シートに粘着面を形成したものからなっており、その使用方法としては、粘着面を肌に当てて肌から角質細胞を付着させ、次いで、その角質細胞を付着した透明粘着テープをそのままテープホルダーで保持し、細胞数測定装置に装着し、透過光量の測定を行う。このため、透明粘着テープの粘着面に角質細胞を付着させた後は、不用な汚れが付着しないようにただちに光量測定にかけるか、あるいは専用の保存容器に保管することが必要とされていた。したがって、この透明粘着テープの使用の場は、細胞数測定装置あるいは専用の保存容器を備えている店頭や検査機関に限られ、被験者が皮膚の状態の判定を受けるためには、そのような店頭や検査機関に出向くことが余儀なくされている。 しかしながら、被験者にとって、皮膚の状態を知るためにわざわざ店頭や検査機関に出向くのは繁雑である。さらに、被験者が店頭等で透明粘着テープを用いて角質細胞の採取を受ける際には、被験者は化粧を落とし、皮膚を清浄にする必要がある。このため、手軽に角質細胞の採取を受けることができないという問題もある。さらにまた、角質細胞の検査機関にとっては、角質細胞の採取を手軽に行うことができないために、透明粘着テープに採取された角質細胞と当該皮膚の表面状態との関係について、不特定多数の被験者のデータを収集することができず、それ故に表面状態の判定の信頼性を向上させることができないという問題がある。
【0009】
本発明は以上のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、角質細胞に基づく皮膚の表面状態の分析を、不特定多数の被験者を対象として、簡便に、信頼性高く行えるようにするために、角質細胞を任意の場所で容易に採取できるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するために、基材シートとカバーシート基材とが積層され、
基材シート及びカバーシート基材は共に透明であり、
基材シートは、角質細胞を付着する粘着面を有し、
カバーシート基材は、基材シートの粘着面に貼着するカバーシート領域を有し、
カバーシートが、カバーシート基材に形成された切り込み線と一本の折れ線とで囲まれた領域からなり、
カバーシート基材は、カバーシート領域を除いて基材シートと固着している角質細胞採取用シートを提供する。
【0012】
このような本発明の角質細胞採取用シートによれば、粘着面を皮膚に当て、その粘着面に角質細胞を付着させることにより角質細胞を採取した後、その上にカバーシートを貼着させることができるので、採取した角質細胞を保護することが可能となる。したがって、被験者はこの角質細胞採取用シートを用いて自宅等で素肌状態でいるときに随時角質細胞を採取し、その採取面をカバーシートで保護し、これを検査機関に送付して角質細胞の検査を受けることが可能となる。よって、被験者にとっては手軽に検査を受けることが可能となる。
【0013】
一方、検査機関にとっては、この角質細胞採取用シートを、新聞広告、雑誌、郵送等で不特定多数の被験者に頒布し、被験者に角質細胞を採取した角質細胞採取用シートを作製してもらい、その角質細胞採取用シートを回収することができるので、不特定多数の被験者の角質細胞を簡便に得ることが可能となる。よって、角質細胞採取用シートに採取された角質細胞と当該皮膚との関係について多数の基礎データを収集し、これに基づいて当該皮膚の表面状態を判定する際の判定の信頼性を向上させることが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0015】
図1は本発明の角質細胞採取用シートの一態様の模式図である。同図に示した角質細胞採取用シート1は、基材シート2とカバーシート4aからなり、基材シート2の表面には角質細胞を付着する粘着面3が形成されている。
【0016】
ここで、基材シート2としては、従来より角質細胞を採取するために使用されている粘着テープの基材シートと同様とすることができ、例えば、厚さ20〜500μm程度のポリテレフタル酸エチレン(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等とすることができる。また、角質細胞を採取した角質細胞採取用シート1をそのまま透過光量測定等の光学的測定にかけられるように、基材シート及び後述するカバーシートは共に透明材料から形成することが好ましい。
【0017】
基材シート2上の粘着面3は、この面を皮膚に当てることによりここに角質細胞を付着させる面である。粘着面3を形成する粘着剤としては、皮膚に当て角質細胞を剥離し得る粘着力があり、被験者に痛み等の不快感を与えないものが好ましく、粘着力としては、180°以下のピールテスト(23℃、65%RH)において25mm幅のステンレスに対する初期接着力が700g程度が好ましい。このような粘着剤としては、澱粉、デキストリン、アラビアゴム、メチルセルロース、カゼイン、セラック、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸エステル等をあげることができる。また、粘着剤としては皮膚への安全性の点から、水溶性粘着剤が好ましい。このような水溶性粘着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリアクリル酸エステル系粘着剤等をあげることができる。
【0018】
カバーシート4aは、図2に示すように、矩形のカバーシート基材4に切り込み線4x、一本の折れ線4yを設けることにより形成されており、これら切り込み線4xと折れ線4yとカバーシート基材4の縁部4zで囲まれた略円形の領域が、粘着面3を保護するカバーシート4aとなっている。なお、本発明において、カバーシート基材4に形成する切り込み線4x、折れ線4yは図2の態様に限られず、これらで囲まれるカバーシート4aは種々の形状とすることができる。さらに、カバーシート4aは、その縁部の一部をカバーシート基材4の縁部4zと共通とすることなく、切り込み線4xと折れ線4yのみから囲まれる領域としてもよい。したがって、例えば、図3に示したように、カバーシート基材4に切り込み線4xと折れ線4yとを形成することにより、略円形のカバーシート4aを形成してもよい。あるいはまた、図4に示すように、カバーシート基材4に一本の切り込み線4xと一本の折れ線4yとを形成し、カバーシート基材4の縁部4zと共通する2辺とこれら切り込み線4x及び折れ線4yで囲まれた矩形領域をカバーシート4aとしてもよい。
【0019】
カバーシート4aの大きさについては特に制限はないが、取扱い性の点から、通常、一辺3mm〜50mm程度の矩形状あるいはそれと同等の円形状とすることが好ましい。
【0020】
角質細胞採取用シート1において、カバーシート基材4のカバーシート4a以外の領域は、基材シート2と固着している。これに対して、カバーシート4aは角質細胞採取用シート1の未使用時には粘着面3に貼着しているが、角質細胞の採取時には図1の矢印aのように粘着面3から剥離し、粘着面3を露出させ、粘着面3に角質細胞を採取することを可能とし、角質細胞の採取後は、矢印bのように再度粘着面3に貼着できるようにする。また、採取した角質細胞の検査時には、必要に応じて再度粘着面3から剥離し、粘着面3に付着している角質細胞を溶媒処理等にかけられるようにすることが好ましい。このように、カバーシート4aを粘着面3に対して剥離と貼着を繰り返すことができるようにするためには、カバーシート基材4として、厚さ10〜200μm程度のシリコーンフィルム、ポリエチレンフィルム等を使用することが好ましく、なかでも、細胞の状態保持の点から、シリコーンフィルムを使用することが好ましい。また、カバーシート基材4は、上述のように、角質細胞を採取した角質細胞採取用シート1をそのまま透過光量測定等の光学的測定にかけられるようにするため、透明材料から形成することが好ましい。
【0021】
カバーシート基材4のカバーシート4a以外の領域と基材シート2とを固着させるためには、両者を接着剤で接着させればよい。
【0022】
以上のような角質細胞採取用シート1の使用方法としては、上述のようにカバーシート4aを粘着面3から剥離して粘着面3を露出させ、その粘着面3を皮膚に当てて粘着面3に角質細胞を付着させ、カバーシート4aを粘着面3に貼着し、粘着面3に付着した角質細胞を保護する。これにより、この角質細胞採取用シートは、郵送その他の手段で搬送可能となる。
【0023】
本発明の角質細胞採取方法は、このような角質細胞採取用シート1の使用方法を不特定多数の被験者に適用し、不特定多数の被験者からの角質細胞の採取を可能とするものである。即ち、本発明の角質細胞採取方法においては、まず、検査機関等が角質細胞採取用シート1を被験者に頒布する。ここで、頒布の態様としては、例えば、新聞広告、雑誌の紙面に仮貼着してもよく、郵送等で送付してもよく、被験者が自由に持ち帰れるように店頭に置いてもよい。また、このような角質細胞採取用シート1の頒布に際しては、被験者の年齢、日常の肌状態等を記入する問診票も共に頒布することが好ましい。
【0024】
角質細胞採取用シート1を入手した被験者は、上述のようにして角質細胞を採取し、採取した角質細胞をカバーシートで保護することによりその角質細胞採取用シートを搬送可能な状態にし、次いでその角質細胞採取用シートを郵送等により検査機関等に送付するか、あるいは所定の回収ボックスに投函する。この場合、角質細胞採取用シートと共に、所定事項を記入した問診票も送付あるいは投函することが好ましい。
【0025】
検査機関はこのようにして角質細胞を採取した角質細胞採取用シートを回収する。これにより、検査機関は不特定多数の被験者から角質細胞を得、さらに問診票に記入された事項も含めて角質細胞と皮膚の表面状態について多くの基礎データを収集することが可能となる。
【0026】
角質細胞を採取した角質細胞採取用シート1は、任意の測定方法あるいは細胞検査方法に供することができる。例えば、簡易細胞数測定装置(特開平7−55707号公報)を使用して角質細胞を採取した角質細胞採取用シート1の透過光量を測定し、皮膚から剥離した細胞数を求め、それに基づいて皮膚の状態を判定してもよく、あるいは角質細胞採取用シート1に採取されている角質細胞の拡大画像を撮り、角質細胞の形状から皮膚の状態を判定してもよい。このような光学的測定あるいは画像観察に角質細胞採取用シート1を使用する場合には、所定の測定装置あるいは画像観察装置に装着するのに適したホルダーを角質細胞採取用シート1に取り付けてもよい。これにより、装置への装着時を容易にし、迅速に光学測定や画像観察を行うことが可能となる。このようなホルダーとしては、例えば、図5に示したように、角質細胞採取用シート1の枠状のホルダー5をあげることができる。このホルダー5は、矩形枠状のホルダー5aとコの字状のホルダー5bからなっており、矩形枠状のホルダー5aには、図示したように粘着剤6が塗布されている。そこで、このホルダー5に角質細胞採取用シート1を取り付ける場合には、矩形枠状のホルダー5aとコの字状のホルダー5bとを矢印のように畳み、この間に角質細胞採取用シート1を挟み、圧着する。あるいは、粘着剤6に代えて、矩形枠状のホルダー5aとコの字状のホルダー5bとに互いに勘合する溝を形成しておき、両者を圧着することによりこれらが固定されるようにしてもよい。このようなホルダー5の構成材料としては、厚さ0.2〜5mm程度のボール紙、プラスチック板等を使用することができる。
【0027】
また、角質細胞採取用シート1に対して行う検査方法としては、必要に応じて、角質細胞採取用シート1に採取されている角質細胞を溶剤処理し、成分分析を行ってもよい。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、角質細胞の採取を容易に任意の場所で行うことが可能となる。したがって、被験者は手軽に角質細胞に基づく皮膚の表面状態の分析を受けることが可能となる。一方、検査機関は、不特定多数の被験者から角質細胞を簡便に採取することが可能となり、皮膚の表面状態と角質細胞の関係について多量の基礎データを収集することが可能となる。したがって、角質細胞に基づく皮膚の表面状態の分析を、信頼性高く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の角質細胞採取用シートの模式図である。
【図2】角質細胞採取用シートを構成するカーバーシートの説明図である。
【図3】角質細胞採取用シートを構成するカーバーシートの説明図である。
【図4】角質細胞採取用シートを構成するカーバーシートの説明図である。
【図5】ホルダーの模式図である。
【符号の説明】
1 角質細胞採取用シート
2 基材シート
3 粘着面
4 カーバーシート基材
4a カーバーシート
5 ホルダー
Claims (4)
- 基材シートとカバーシート基材とが積層され、
基材シート及びカバーシート基材は共に透明であり、
基材シートは、角質細胞を付着する粘着面を有し、
カバーシート基材は、基材シートの粘着面に貼着するカバーシート領域を有し、
カバーシートが、カバーシート基材に形成された切り込み線と一本の折れ線とカバーシート基材の縁部とで囲まれた領域、又はカバーシート基材に形成された切り込み線と一本の折れ線とで囲まれた領域からなり、
カバーシート基材は、カバーシート領域を除いて基材シートと固着している角質細胞採取用シート。 - 基材シートが、透明なポリテレフタル酸エチレンフィルムからなる請求項1記載の角質細胞採取用シート。
- 粘着面が、水溶性粘着剤から形成されている請求項1又は2記載の角質細胞採取用シート。
- カバーシートが、シリコーンフィルムからなる請求項1〜3のいずれかに記載の角質細胞採取用シート。
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